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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019138
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】内燃機関の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/05 20060101AFI20220120BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20220120BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20220120BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20220120BHJP
   F02M 26/49 20160101ALI20220120BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
G01M15/05
F02D45/00 345
F02B37/24
E02F9/00 D
F02M26/49
G01M17/007 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122778
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加島 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳央
【テーマコード(参考)】
2D015
2G087
3G005
3G062
3G384
【Fターム(参考)】
2D015CA01
2D015CA02
2G087AA18
2G087AA23
2G087AA30
2G087BB26
2G087BB40
2G087CC01
2G087CC05
2G087CC29
2G087DD01
2G087DD03
2G087FF08
3G005DA02
3G005EA04
3G005EA15
3G005EA16
3G005FA25
3G005GA04
3G005HA12
3G062AA01
3G062AA05
3G062DA02
3G062FA20
3G062GA01
3G384AA01
3G384AA03
3G384AA21
3G384BA03
3G384BA08
3G384BA27
3G384BA51
3G384CA14
3G384DA46
3G384ED07
3G384FA01Z
3G384FA26Z
3G384FA28Z
3G384FA58Z
3G384FA61Z
3G384FA81Z
(57)【要約】
【課題】油圧ポンプと、当該油圧ポンプを駆動する内燃機関とを搭載した産業車両における空気流量検出手段の特性異常を、適切かつより精度よく検出することができる、内燃機関の検査装置を提供する。
【解決手段】油圧ポンプと、クラッチを有することなく油圧ポンプに直結されて油圧ポンプを駆動する内燃機関とを搭載した産業車両の空気流量検出手段を検査する内燃機関の検査装置であって、回転維持要求情報を内燃機関制御装置に送信する回転維持指示部と、内燃機関の負荷を推定する負荷推定部と、基準空気流量を算出する基準空気流量算出部と、空気流量読出要求情報を内燃機関制御装置に送信する空気流量読出指示部と、空気流量読出応答情報を内燃機関制御装置から受信する実空気流量取得部と、基準空気流量と検出した空気流量との流量偏差に基づいて空気流量検出手段の特性が正常であるか異常であるかを判定する特性判定部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と油圧機構を搭載した産業車両の空気流量検出手段の特性を検査する、内燃機関の検査装置であって、
前記産業車両は、
複数の油圧経路と、それぞれの前記油圧経路へ作動油を供給する油圧ポンプと、それぞれの前記油圧経路に設けられた調整バルブとを含む前記油圧機構と、
動力伝達経路を切り離すことが可能なクラッチを有することなく前記油圧ポンプに接続されて前記油圧ポンプを駆動する前記内燃機関と、
前記油圧ポンプ及び前記調整バルブを制御する機体制御装置と、
前記内燃機関を制御するとともに前記空気流量検出手段を用いて前記内燃機関が吸入する空気流量を検出する内燃機関制御装置と、
少なくとも前記内燃機関制御装置に接続されているとともに前記検査装置を着脱可能な通信回線と、
を有しており、
前記検査装置には、
前記内燃機関の回転数と、前記内燃機関の負荷と、に応じた空気流量が設定された空気流量基準特性が記憶されており、
前記検査装置は、
前記内燃機関の回転数を所定回転数に維持する回転維持指示と前記所定回転数が入力されると、前記回転維持指示と前記所定回転数を含む回転維持要求情報を、前記通信回線を介して前記内燃機関制御装置に送信する、回転維持指示部と、
前記所定回転数に維持した前記内燃機関の負荷を、前記内燃機関に接続された前記油圧ポンプの負荷を用いて推定する、負荷推定部と、
推定した前記内燃機関の負荷と、前記所定回転数と、前記空気流量基準特性とに基づいた空気流量である基準空気流量を算出する、基準空気流量算出部と、
前記空気流量検出手段を用いて検出した空気流量を読み出す空気流量読出指示が入力されると、前記空気流量読出指示を含む空気流量読出要求情報を、前記通信回線を介して前記内燃機関制御装置に送信する、空気流量読出指示部と、
前記空気流量検出手段を用いて検出した空気流量を含む空気流量読出応答情報を、前記通信回線を介して前記内燃機関制御装置から受信する、実空気流量取得部と、
前記基準空気流量算出部にて求めた前記基準空気流量と、前記実空気流量取得部にて受信した前記空気流量読出応答情報に含まれている空気流量との偏差である流量偏差を求め、前記流量偏差が所定流量よりも大きい場合は前記空気流量検出手段の特性は異常であると判定し、前記流量偏差が所定流量以下である場合は前記空気流量検出手段の特性は正常であると判定する、特性判定部と、
を有する、
内燃機関の検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の検査装置であって、
前記内燃機関は、タービンに可変ノズルを備えたターボ過給機と、排気ガスの一部を吸気に戻すEGR経路の開度を調整可能なEGR弁と、を有しており、
前記回転維持要求情報には、前記可変ノズルの開度を全開に固定する可変ノズル全開指示と、前記EGR弁の開度を全閉に固定するEGR弁全閉指示と、が含まれている、
内燃機関の検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内燃機関の検査装置であって、
前記検査装置には、予め設定された標準動作状態での前記油圧ポンプ及び前記調整バルブに対して前記油圧ポンプを駆動する回転数に応じた前記油圧ポンプの負荷が設定された油圧ポンプ回転数・負荷特性が記憶されており、
前記検査装置は、
前記油圧ポンプ及び前記調整バルブが、前記標準動作状態に保持された状態において、
前記回転維持指示部からの前記回転維持要求情報の送信と、
前記負荷推定部での前記内燃機関の負荷の推定と、
前記基準空気流量算出部による前記基準空気流量の算出と、
前記空気流量読出指示部からの前記空気流量読出要求情報の送信と、
前記実空気流量取得部による前記空気流量読出応答情報の受信と、
前記特性判定部による判定と、
を実行し、
前記負荷推定部にて、
前記所定回転数の前記内燃機関から駆動されている前記油圧ポンプの回転数となる前記所定回転数と、前記油圧ポンプ回転数・負荷特性とに基づいて、前記内燃機関の負荷に相当する前記油圧ポンプの負荷を推定する、
内燃機関の検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の検査装置であって、
前記通信回線には、前記内燃機関制御装置に加えて前記機体制御装置が接続されており、
前記検査装置には、前記油圧ポンプが供給する前記作動油の温度に応じて前記油圧ポンプの負荷を補正する作動油温度・補正量特性が記憶されており、
前記検査装置は、
前記負荷推定部にて、
前記作動油の温度を読み出す作動油温度読出指示が入力されると、前記作動油温度読出指示を含む作動油温度読出要求情報を、前記通信回線を介して前記内燃機関制御装置または前記機体制御装置に送信して、作動油温度を含む作動油温度読出応答情報を受信し、
受信した前記作動油温度読出応答情報に含まれている作動油温度と、前記作動油温度・補正量特性とに基づいた補正量を算出し、
前記所定回転数と、前記油圧ポンプ回転数・負荷特性とに基づいて求めた前記油圧ポンプの負荷を、前記補正量にて補正する、
内燃機関の検査装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関の検査装置であって、
前記検査装置は、
前記空気流量検出手段の特性の検査を指示するための検査指示入力部を有しており、
前記検査装置は、
前記検査指示入力部から検査の指示が入力されると、
前記回転維持指示部からの前記回転維持要求情報の送信と、
前記負荷推定部での前記内燃機関の負荷の推定と、
前記基準空気流量算出部による前記基準空気流量の算出と、
前記空気流量読出指示部からの前記空気流量読出要求情報の送信と、
前記実空気流量取得部による前記空気流量読出応答情報の受信と、
前記特性判定部による判定と、
を連続的かつ自動的に実行する、
内燃機関の検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を有する内燃機関システムは、吸入した空気(吸気)と燃料を混合して燃焼させて回転動力を発生しており、吸気の流量を検出するための空気流量検出手段を備えている。空気流量検出手段は、内燃機関が吸入する空気流量に応じた検出信号を内燃機関制御装置に出力するが、経年劣化等で特性にズレ等が発生した場合、内燃機関制御装置は、誤った空気流量を検出してしまう。内燃機関制御装置が、誤った空気流量を検出すると、排気ガスの浄化性能の悪化等の可能性があるので、空気流量検出手段が正常に動作しているか否か(特性異常となっているか否か)を精度よく検出することが望まれている。
【0003】
例えば特許文献1には、エンジンが減速運転中かつ燃料カット中にエアフロメータの異常検出を行う、エアフロメータの異常検出装置が開示されている。特許文献1では、過給機を介してエンジンに吸入される吸気の圧力と、過給後の吸気の温度とを用いて、エアフロメータにて測定した吸入空気量を補正した補正吸入空気量を求めている。そして補正吸入空気量が、予め設定した設定吸入空気量の範囲を逸脱した場合にエアフロメータの特性異常を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-48133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーショベル等の産業車両は、一般的には、油圧ポンプを用いて油圧モータや油圧経路に作動油を供給して動作しており、油圧ポンプの駆動源として内燃機関を搭載している。このような産業車両に搭載された内燃機関も空気流量検出手段を備えているので、当該空気流量検出手段の特性異常の検出が望まれている。
【0006】
特許文献1に記載のエアフロメータの異常検出装置では、エンジン(主に一般車両)の運転状態の中で、比較的出現頻度が高く、かつエアフロメータの測定値が比較的安定している、減速運転中かつ燃料カット中に、エアフロメータの異常検出を行っている。しかし、運転状態時には加速や減速を繰り返しながら走行する一般車両に対して、産業車両の運転状態時ではほぼ一定回転数で長時間運転され、減速運転中かつ燃料カット中の出現頻度が低い。また減速燃料カット中は、内燃機関の回転数が下降中であって回転数が安定していないので、実際の空気流量の変動幅も比較的大きい。従って、誤検出を防止するために、比較のための設定吸入空気量の範囲をより広い範囲に設定しなければならず、検出精度が低くなってしまう点で、あまり好ましくない。
【0007】
また、一般車両に搭載された内燃機関の空気流量検出手段の特性異常を検出する別の方法として、減速燃料カット中にクラッチ等を用いて内燃機関の動力伝達経路を切り離し、内燃機関を無負荷で安定的に運転して、その際に空気流量検出手段によって検出された空気流量が、所定空気流量範囲内であるか否かを検出する方法も提案されている。しかし、油圧ポンプと内燃機関を搭載した産業車両では、内燃機関と油圧ポンプがクラッチ等を介することなく直結されており、動力伝達経路を切り離して内燃機関を無負荷で運転することができない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、油圧ポンプと、当該油圧ポンプを駆動する内燃機関とを搭載した産業車両における空気流量検出手段の特性異常を、適切かつより精度よく検出することができる、内燃機関の検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、内燃機関と油圧機構を搭載した産業車両の空気流量検出手段の特性を検査する、内燃機関の検査装置であって、前記産業車両は、複数の油圧経路と、それぞれの前記油圧経路へ作動油を供給する油圧ポンプと、それぞれの前記油圧経路に設けられた調整バルブとを含む前記油圧機構と、動力伝達経路を切り離すことが可能なクラッチを有することなく前記油圧ポンプに接続されて前記油圧ポンプを駆動する前記内燃機関と、前記油圧ポンプ及び前記調整バルブを制御する機体制御装置と、前記内燃機関を制御するとともに前記空気流量検出手段を用いて前記内燃機関が吸入する空気流量を検出する内燃機関制御装置と、少なくとも前記内燃機関制御装置に接続されているとともに前記検査装置を着脱可能な通信回線と、を有している。また前記検査装置には、前記内燃機関の回転数と、前記内燃機関の負荷と、に応じた空気流量が設定された空気流量基準特性が記憶されている。そして前記検査装置は、前記内燃機関の回転数を所定回転数に維持する回転維持指示と前記所定回転数が入力されると、前記回転維持指示と前記所定回転数を含む回転維持要求情報を、前記通信回線を介して前記内燃機関制御装置に送信する、回転維持指示部と、前記所定回転数に維持した前記内燃機関の負荷を、前記内燃機関に接続された前記油圧ポンプの負荷を用いて推定する、負荷推定部と、推定した前記内燃機関の負荷と、前記所定回転数と、前記空気流量基準特性とに基づいた空気流量である基準空気流量を算出する、基準空気流量算出部と、前記空気流量検出手段を用いて検出した空気流量を読み出す空気流量読出指示が入力されると、前記空気流量読出指示を含む空気流量読出要求情報を、前記通信回線を介して前記内燃機関制御装置に送信する、空気流量読出指示部と、前記空気流量検出手段を用いて検出した空気流量を含む空気流量読出応答情報を、前記通信回線を介して前記内燃機関制御装置から受信する、実空気流量取得部と、前記基準空気流量算出部にて求めた前記基準空気流量と、前記実空気流量取得部にて受信した前記空気流量読出応答情報に含まれている空気流量との偏差である流量偏差を求め、前記流量偏差が所定流量よりも大きい場合は前記空気流量検出手段の特性は異常であると判定し、前記流量偏差が所定流量以下である場合は前記空気流量検出手段の特性は正常であると判定する、特性判定部と、を有する、内燃機関の検査装置である。
【0010】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関の検査装置であって、前記内燃機関は、タービンに可変ノズルを備えたターボ過給機と、排気ガスの一部を吸気に戻すEGR経路の開度を調整可能なEGR弁と、を有しており、前記回転維持要求情報には、前記可変ノズルの開度を全開に固定する可変ノズル全開指示と、前記EGR弁の開度を全閉に固定するEGR弁全閉指示と、が含まれている、内燃機関の検査装置である。
【0011】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る内燃機関の検査装置であって、前記検査装置には、予め設定された標準動作状態での前記油圧ポンプ及び前記調整バルブに対して前記油圧ポンプを駆動する回転数に応じた前記油圧ポンプの負荷が設定された油圧ポンプ回転数・負荷特性が記憶されている。また、前記検査装置は、前記油圧ポンプ及び前記調整バルブが、前記標準動作状態に保持された状態において、前記回転維持指示部からの前記回転維持要求情報の送信と、前記負荷推定部での前記内燃機関の負荷の推定と、前記基準空気流量算出部による前記基準空気流量の算出と、前記空気流量読出指示部からの前記空気流量読出要求情報の送信と、前記実空気流量取得部による前記空気流量読出応答情報の受信と、前記特性判定部による判定と、を実行し、前記負荷推定部にて、前記所定回転数の前記内燃機関から駆動されている前記油圧ポンプの回転数となる前記所定回転数と、前記油圧ポンプ回転数・負荷特性とに基づいて、前記内燃機関の負荷に相当する前記油圧ポンプの負荷を推定する、内燃機関の検査装置である。
【0012】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係る内燃機関の検査装置であって、前記通信回線には、前記内燃機関制御装置に加えて前記機体制御装置が接続されており、前記検査装置には、前記油圧ポンプが供給する前記作動油の温度に応じて前記油圧ポンプの負荷を補正する作動油温度・補正量特性が記憶されている。そして前記検査装置は、前記負荷推定部にて、前記作動油の温度を読み出す作動油温度読出指示が入力されると、前記作動油温度読出指示を含む作動油温度読出要求情報を、前記通信回線を介して前記内燃機関制御装置または前記機体制御装置に送信して、作動油温度を含む作動油温度読出応答情報を受信し、受信した前記作動油温度読出応答情報に含まれている作動油温度と、前記作動油温度・補正量特性とに基づいた補正量を算出し、前記所定回転数と、前記油圧ポンプ回転数・負荷特性とに基づいて求めた前記油圧ポンプの負荷を、前記補正量にて補正する、内燃機関の検査装置である。
【0013】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明~第4の発明のいずれか1つに係る内燃機関の検査装置であって、前記検査装置は、前記空気流量検出手段の特性の検査を指示するための検査指示入力部を有しており、前記検査装置は、前記検査指示入力部から検査の指示が入力されると、前記回転維持指示部からの前記回転維持要求情報の送信と、前記負荷推定部での前記内燃機関の負荷の推定と、前記基準空気流量算出部による前記基準空気流量の算出と、前記空気流量読出指示部からの前記空気流量読出要求情報の送信と、前記実空気流量取得部による前記空気流量読出応答情報の受信と、前記特性判定部による判定と、を連続的かつ自動的に実行する、内燃機関の検査装置である。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、内燃機関の回転数と負荷に応じて予めわかっている基準空気流量と、その回転数とその負荷での実際の空気流量とを比較するので、より適切、かつ、より高精度に空気流量検出手段と特性を検査できる。また、クラッチ等を用いて内燃機関の動力伝達経路を切り離すことができないので、直結されている油圧ポンプの負荷を用いて、内燃機関の負荷を推定する。また、内燃機関の回転数(すなわち油圧ポンプの回転数)を所定回転数に維持して検査するので、空気流量の変動幅が小さくなり、より高精度な検査を行うことができる。従って、油圧ポンプと、当該油圧ポンプを駆動する内燃機関とを搭載した産業車両における空気流量検出手段の特性異常を、適切かつより精度よく検出することができる。なお、空気流量検出手段の検出値のズレ(経年劣化等による特性のズレ)は、市場の産業車両の排出ガスに影響する。しかし、上記の検査で空気流量検出手段の特性を正確に検査し、特性にズレがあれば交換することで、市場の産業車両の排出ガスの悪化を未然に防ぐことができる。
【0015】
内燃機関が吸入する空気流量の変動要素として、EGR状態と過給状態が考えられる。第2の発明によれば、EGR状態については、EGR弁を全閉にすることで、EGRによる空気流量の変動を排除している。また過給状態については、可変ノズルを全開にすることで、過給圧を可能な限り低下させ、過給による空気流量の変動を可能な限り低下させている。従って、空気流量検出手段の特性異常を、より精度よく検出することができる。
【0016】
第3の発明によれば、油圧ポンプ及び調整バルブを標準動作状態とすることで、所定回転数で駆動中の油圧ポンプの負荷の変動幅をより小さくすることができる。また、油圧ポンプ回転数・負荷特性を用いることで、適切かつより精度よく、油圧ポンプの負荷を推定することができる。従って、空気流量検出手段の特性異常を、適切かつより精度よく検出することができる。
【0017】
作動油の粘度は温度に応じて変動するので、油圧ポンプが標準動作状態かつ所定回転数で駆動されていても、作動油の温度が変動すれば負荷も変動する。第4の発明によれば、作動油の温度(つまり粘度)に応じて油圧ポンプの負荷を補正するので、より精度よく油圧ポンプの負荷を推定できる。従って、空気流量検出手段の特性異常を、より精度よく検出することができる。
【0018】
第5の発明によれば、作業者は、検査指示入力部(例えば空気流量検出手段の検査実行用のボタン)を1回操作するだけで、検査装置が自動的に一通りの検査を行ってくれるので、便利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】内燃機関システムと油圧機構を搭載した産業車両の概略構成と、当該産業車両内の通信回線に検査装置を接続した状態を示す図である。
図2】産業車両に搭載された内燃機関システムの構成の例を説明する図である。
図3】検査装置の外観と構成の例を説明する図である。
図4】第1の実施の形態における、検査装置の処理手順を説明するフローチャートである。
図5】標準動作状態時における油圧ポンプの回転数に応じた負荷を示す、油圧ポンプ回転数・負荷特性の例を説明する図である。
図6】作動油の温度に応じた補正量を示す、作動油温度・補正量特性の例を説明する図である。
図7】内燃機関の回転数と負荷に応じた基準空気流量を示す、空気流量基準特性の例を説明する図である。
図8】第2の実施の形態における、検査装置の処理手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
●[産業車両の概略構成(図1)]
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。まず図1を用いて、本実施の形態にて説明する産業車両1の概略構成等について説明する。本実施の形態にて説明する産業車両1は、内燃機関システム2と油圧機構3とを搭載している。内燃機関システム2は内燃機関10(例えばディーゼルエンジン)と、当該内燃機関10を制御する内燃機関制御装置50等を有している。また内燃機関システム2は、内燃機関10が吸入する空気の流量を検出する空気流量検出手段21が設けられており、内燃機関制御装置50は、空気流量検出手段21からの検出信号に基づいて、内燃機関10が吸入する空気流量を検出することができる。
【0021】
油圧機構3は、油圧ポンプ110、調整バルブユニット120、複数の油圧経路130、油圧ポンプ110及び調整バルブユニット120を制御する機体制御装置150等を有している。油圧ポンプ110は、動力伝達経路を切り離すことが可能なクラッチ等を介することなく動力伝達手段100にて内燃機関10に直結されて、内燃機関10によって回転駆動される。また油圧ポンプ110は、調整バルブユニット120に作動油を圧送する。調整バルブユニット120に圧送された作動油は、調整バルブユニット120内の各調整バルブを介して各油圧経路130へと供給される。また油圧機構3は、油圧ポンプ110が圧送する作動油の温度を検出する作動油温度検出手段111が設けられており、機体制御装置150は、作動油温度検出手段111を用いて検出した作動油の温度に基づいて、油圧ポンプ110の制御の補正等を行う。
【0022】
内燃機関制御装置50と機体制御装置150は通信回線T1にて接続されており、種々のデータ等を互いに送受信することができる。また通信回線T1には、別体の検査装置200を着脱可能とするコネクタCが接続されている。作業者は、通信回線T2を介してコネクタCに検査装置200を接続することで、内燃機関システム2や油圧機構3に対して種々の検査を行うことが可能となる。
【0023】
●[内燃機関システム2の概略構成の例(図2)]
次に図2を用いて、内燃機関システム2の概略構成の例について説明する。本実施の形態の説明では、内燃機関10がディーゼルエンジンである例を説明する。
【0024】
以下、内燃機関システム2について、吸気側から排気側に向かって順に説明する。吸気管11Aの流入側には、エアクリーナ(図示省略)、空気流量検出手段21(例えば、空気流量センサ)が設けられている。空気流量検出手段21は、内燃機関10が吸入した空気の流量に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。また空気流量検出手段21には、吸気温度検出手段28A(例えば、吸気温度センサ)、大気圧検出手段23(例えば、大気圧センサ)が設けられている。吸気温度検出手段28Aは、空気流量検出手段21を通過する吸気の温度に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。大気圧検出手段23は、周囲の大気圧に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。
【0025】
吸気管11Aの流出側はコンプレッサ35の流入側に接続され、コンプレッサ35の流出側は吸気管11Bの流入側に接続されている。ターボ過給機30のコンプレッサ35は、排気ガスのエネルギーによって回転駆動されるタービン36にて回転駆動され、吸気管11Aから流入された吸気を吸気管11Bに圧送することで過給する。
【0026】
コンプレッサ35の上流側となる吸気管11Aには、コンプレッサ上流圧力検出手段24A(例えば圧力センサ)が設けられている。コンプレッサ上流圧力検出手段24Aは、吸気管11A内の吸気の圧力に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。コンプレッサ35の下流側となる吸気管11B(吸気管11Bにおけるコンプレッサ35とインタークーラ16との間の位置)には、コンプレッサ下流圧力検出手段24B(例えば圧力センサ)が設けられている。コンプレッサ下流圧力検出手段24Bは、吸気管11B内の吸気の圧力に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。
【0027】
吸気管11Bには、上流側にインタークーラ16が配置されている。インタークーラ16は、コンプレッサ下流圧力検出手段24Bよりも下流側に配置されている。インタークーラ16の下流側には、吸気温度検出手段28B(例えば、吸気温度センサ)が設けられている。吸気温度検出手段28Bは、インタークーラ16にて温度が低下された吸気の温度に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。
【0028】
また内燃機関制御装置50には、回転調整ダイヤル25からの回転設定信号が入力されている。産業車両1には、一般車両のアクセルペダルの代わりに、内燃機関の回転数を指定するための回転調整ダイヤル25が設けられている。内燃機関制御装置50は、回転調整ダイヤル25からの回転設定信号に基づいて、設定回転数を検出し、設定回転数を維持するように内燃機関10を制御する。
【0029】
吸気管11Bの下流側となる吸気マニホルド11Cには、吸気マニホルド圧力検出手段24C(例えば圧力センサ)が設けられており、EGR配管13の流出側が接続されている。そして吸気管11Bの流出側は吸気マニホルド11Cの流入側に接続されており、吸気マニホルド11Cの流出側は内燃機関10の流入側に接続されている。吸気マニホルド圧力検出手段24Cは、吸気マニホルド11Cに流入する直前の吸気の圧力に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。またEGR配管13の流出側(吸気管11Bとの接続部)からは、EGR配管13の流入側(排気管12Bとの接続部)から流入してきたEGRガスが、吸気管11B内に吐出される。
【0030】
内燃機関10は複数のシリンダ45A~45Dを有しており、インジェクタ43A~43Dが、それぞれのシリンダに設けられている。インジェクタ43A~43Dには、コモンレール41と燃料配管42A~42Dを介して燃料が供給されており、インジェクタ43A~43Dは、内燃機関制御装置50からの制御信号によって駆動され、それぞれのシリンダ45A~45D内に燃料を噴射する。
【0031】
内燃機関10には、クランク角度検出手段22A、カム角度検出手段22B、クーラント温度検出手段28C等が設けられている。クランク角度検出手段22Aは、例えば回転センサであり、内燃機関10のクランクシャフトの回転角度に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。カム角度検出手段22Bは、例えば回転センサであり、内燃機関10のカムシャフトの回転角度に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。内燃機関制御装置50は、クランク角度検出手段22Aとカム角度検出手段22Bからの検出信号に基づいて、各シリンダの工程及び回転角度等を検出することができる。またクーラント温度検出手段28Cは、例えば温度センサであり、内燃機関10内に循環されている冷却用クーラントの温度に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。
【0032】
また内燃機関10のクランクシャフトには、油圧ポンプ110に回転駆動力を伝達するための動力伝達手段100(連結用のシャフト等)が接続されている。内燃機関10と油圧ポンプ110は、動力伝達経路を切り離すことが可能なクラッチ等を介することなく動力伝達手段100にて直結されている。
【0033】
内燃機関10の排気側には排気マニホルド12Aの流入側が接続され、排気マニホルド12Aの流出側には排気管12Bの流入側が接続されている。排気管12Bの流出側はタービン36の流入側に接続され、タービン36の流出側は排気管12Cの流入側に接続されている。
【0034】
排気管12Bには、EGR配管13の流入側が接続されている。EGR配管13は、排気管12Bと吸気管11Bとを連通し、排気管12Bの排気ガスの一部を吸気管11Bに還流させることが可能である。またEGR配管13には、EGRクーラ15、EGR弁14が設けられている。EGR弁14は、内燃機関制御装置50からの制御信号に基づいて、EGR配管13の開度を調整することで、EGR配管13内を流れるEGRガスの流量を調整する。
【0035】
排気管12Bには、排気温度検出手段29が設けられている。排気温度検出手段29は、例えば排気温度センサであり、排気温度に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。
【0036】
排気管12Bの流出側はタービン36の流入側に接続され、タービン36の流出側は排気管12Cの流入側に接続されている。タービン36には、タービン36へ導く排気ガスの流速を制御可能な(タービンへと排気ガスを導く流路の開度を調整可能な)可変ノズル33が設けられており、可変ノズル33は、ノズル駆動手段31によって開度が調整される。内燃機関制御装置50は、ノズル開度検出手段32(例えば、ノズル開度センサ)からの検出信号と目標ノズル開度に基づいて、ノズル駆動手段31に制御信号を出力して可変ノズル33の開度を調整可能である。
【0037】
タービン36の上流側となる排気管12Bには、タービン上流圧力検出手段26A(例えば圧力センサ)が設けられている。タービン上流圧力検出手段26Aは、排気管12B内の排気の圧力に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。タービン36の下流側となる排気管12Cには、タービン下流圧力検出手段26B(例えば圧力センサ)が設けられている。タービン下流圧力検出手段26Bは、排気管12C内の排気の圧力に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力する。
【0038】
排気管12Cの流出側には排気浄化装置61が接続されている。例えば内燃機関10がディーゼルエンジンの場合、排気浄化装置61には、酸化触媒、微粒子捕集フィルタ、選択式還元触媒等が含まれている。
【0039】
内燃機関制御装置50は、CPU51、RAM52、記憶装置53、タイマ54、通信装置55等を有している。内燃機関制御装置50(CPU51)には、上述した種々の検出手段からの検出信号が入力され、内燃機関制御装置50(CPU51)は、上述した種々のアクチュエータへの制御信号を出力する。なお、内燃機関制御装置50の入出力は、上記の検出手段やアクチュエータに限定されるものではない。また、各部の温度や圧力等はセンサを搭載せずに推定計算により算出しても良い。内燃機関制御装置50は、上記の検出手段を含めた各種の検出手段からの検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を検出し、上記のアクチュエータを含む各種のアクチュエータを制御する。記憶装置53は、例えばFlash-ROM等の記憶装置であり、内燃機関の制御や自己診断等を実行するためのプログラムやデータ等が記憶されている。
【0040】
また内燃機関制御装置50(CPU51)は、通信装置55、通信回線T2を介して機体制御装置150と通信可能となるように接続されている。内燃機関制御装置50(CPU51)は、通信回線T1を介して機体制御装置150と、種々のデータ等を互いに送受信することができる。また内燃機関制御装置50(CPU51)は、通信回線T1に接続されたコネクタCに、図1に示す検査装置200が接続された場合、当該検査装置200と、種々のデータやコマンド等を送受信することができる。
【0041】
空気流量検出手段21は、内燃機関10が吸入する空気流量に応じた検出信号を内燃機関制御装置50に出力するが、経年劣化等で特性にズレ等が発生した場合、内燃機関制御装置50は、誤った空気流量を検出してしまう。内燃機関制御装置50が、誤った空気流量を検出すると、排気ガスの浄化性能の悪化等の可能性があるので、以下に説明するように、検査装置200は、空気流量検出手段21の特性が正常であるか異常であるかを判定する。
【0042】
●[検査装置200の構成(図3)]
次に図3を用いて、検査装置200の外観と構成等について説明する。検査装置200は、例えばパーソナルコンピュータであり、表示装置210(タッチパネル等)、入力装置220(キーボード等)、CPU230、RAM241、記憶装置242、タイマ243、通信装置245等を有している。記憶装置242には、種々の検査等を実行するためのプログラムやデータ等が記憶されている。また検査装置200(CPU230)は、回転維持指示部231、負荷推定部232、基準空気流量算出部233、空気流量読出指示部234、実空気流量取得部235、特性判定部236等を有しているが、これらの詳細については後述する。
【0043】
検査装置200(CPU230)は、通信装置245、通信回線T2、コネクタCを介して通信回線T1に接続されると、通信回線T1に接続されている内燃機関制御装置50及び機体制御装置150(図1参照)と、種々のデータやコマンド等を互いに送受信することができる。なお、空気流量検出手段の検査の一連の処理を連続的かつ自動的に実施するための検査指示入力部211を有する場合、検査指示入力部211は、例えば表示装置210に表示される。
【0044】
●[第1の実施の形態における検査装置200の処理手順(図4図7)]
次に図4に示すフローチャートを用いて、第1の実施の形態における、検査装置200の処理手順の例について説明する。第1の実施の形態では、検査装置200から種々のデータやコマンドを送信する毎に、作業者等からの入力を必要とする。なお、油圧ポンプ110及び調整バルブユニット120の動作状態が変化すると油圧ポンプ110の負荷が変動するので、作業者等は検査の際、油圧ポンプ110及び調整バルブユニット120の動作状態を、油圧ポンプ110の負荷の変動をより小さくすることができる標準動作状態(例えば、全ての油圧経路130への油圧の供給を停止した状態)に保持しておくことが好ましい。また、より高精度の検査を行うために、内燃機関システム2及び油圧機構3を暖機運転後に検査を行うことが、より好ましい。検査装置200(CPU230)は、コネクタCを介して通信回線T1に接続されて起動されると、図4に示すステップS010に処理を進める。
【0045】
ステップS010にて検査装置200は、自身を初期化してステップS020へ処理を進める。なお具体的な初期化の内容については説明を省略する。
【0046】
ステップS020にて検査装置200は、自身の表示装置にメニュー画面(図示省略)を表示してステップS025へ処理を進める。
【0047】
ステップS025にて検査装置200は、表示しているメニュー画面の中から、作業者等が何らかのメニューを選択したか否かを判定する。検査装置200は、何らかのメニューが選択された場合(Yes)はステップS027へ処理を進め、選択されていない場合(No)はステップS020へ処理を戻す。
【0048】
ステップS027へ処理を進めた場合、検査装置200は、選択されたメニューが空気流量検出手段の検査であるか否かを判定する。検査装置200は、選択されたメニューが空気流量検出手段の検査である場合(Yes)はステップS030へ処理を進め、選択されたメニューが空気流量検出手段の検査でない場合(No)は(その他のメニューの処理)へ処理を進める。なお、(その他のメニューの処理)は、検査装置200に用意されている種々の検査であり、説明を省略する。
【0049】
ステップS030にて検査装置200は、作業者等から回転維持指示(コマンド)と所定回転数(データ)が入力されたか否かを判定する。検査装置200は、回転維持指示と所定回転数が入力された場合(Yes)はステップS035へ処理を進め、入力されていない場合(No)はステップS030へ処理を戻す。なお、回転維持指示及び所定回転数は、回転調整ダイヤル25(図1参照)での設定回転数の代わりに、内燃機関10の回転数を所定回転数に強制的に維持するためのコマンド及びデータである。なお所定回転数を予め設定しておき、作業者等からの所定回転数の入力を省略するようにしてもよい。
【0050】
ステップS035へ処理を進めた場合、検査装置200は、入力された回転維持指示と所定回転数を含む回転維持要求情報を、通信回線を介して内燃機関制御装置50に向けて送信し、ステップS040へ処理を進める。なお、内燃機関制御装置50は、回転維持要求情報を受信すると、回転調整ダイヤル25(図1参照)の状態にかかわらず、内燃機関の回転数を所定回転数に維持するように設定されている。
【0051】
なお回転維持要求情報に、EGR弁の開度を全閉に固定する指示であるEGR弁全閉指示と、ターボ過給機の可変ノズルの開度を全開に固定する指示である可変ノズル全開指示とを含ませると、内燃機関が吸入する空気の変動量がより低減されるので、より好ましい。EGR弁全閉指示と可変ノズル全開指示は、作業者等から入力するように設定してもよいし、作業者等から入力されなくても検査装置200が自動的に回転維持要求情報に含ませるようにしてもよい。内燃機関制御装置50は、回転維持要求情報にEGR弁全閉指示が含まれている場合、EGR弁の開度を強制的に全閉にするように設定されている。また内燃機関制御装置50は、回転維持要求情報に可変ノズル全開指示が含まれている場合、可変ノズルの開度を強制的に全開にするように設定されている。
【0052】
ステップS030、S035の処理を実行している検査装置200(CPU230)は、内燃機関の回転数を所定回転数に維持する回転維持指示と所定回転数が入力されると、回転維持指示と所定回転数を含む回転維持要求情報を、通信回線を介して内燃機関制御装置50に送信する、回転維持指示部231(図3参照)に相当する。
【0053】
ステップS040にて検査装置200は、作業者等から作動油温度読出指示(コマンド)が入力されたか否かを判定する。検査装置200は、作動油温度読出指示が入力された場合(Yes)はステップS045へ処理を進め、入力されていない場合(No)はステップS040へ処理を戻す。なお、作動油温度読出指示は、内燃機関制御装置50または機体制御装置150が記憶している作動油温度を読み出すためのコマンドである。
【0054】
ステップS045へ処理を進めた場合、検査装置200は、入力された作動油温度読出指示を含む作動油温度読出要求情報を、通信回線を介して内燃機関制御装置50及び機体制御装置150に向けて送信し、ステップS050へ処理を進める。
【0055】
ステップS050にて検査装置200は、通信回線を介して内燃機関制御装置50または機体制御装置150から、作動油温度を含む作動油温度読出応答情報を受信したか否かを判定する。なお、内燃機関制御装置50または機体制御装置150は、作動油温度読出要求情報を受信すると、作動油温度を含む作動油温度読出応答情報を送信するように設定されている。検査装置200は、作動油温度読出応答情報を受信した場合(Yes)はステップS055へ処理を進め、受信していない場合(No)はステップS050へ処理を戻す。
【0056】
ステップS055にて検査装置200は、受信した作動油温度読出応答情報を記憶装置に記憶してステップS060へ処理を進める。
【0057】
ステップS060にて検査装置200は、内燃機関の負荷を推定してステップS065へ処理を進める。検査装置200は、内燃機関の負荷を直接的に検出することができない、かつ、動力伝達経路を切り離して内燃機関を無負荷の状態にすることができないので、油圧ポンプ負荷を求めることで、以下のように間接的に内燃機関の負荷を求める(推定する)。
【0058】
検査装置200の記憶装置には、図5に示す油圧ポンプ回転数・負荷特性と、図6に示す作動油温度・補正量特性が記憶されている。油圧ポンプ回転数・負荷特性には、油圧ポンプ110が標準動作状態(かつ暖機後)の場合における、油圧ポンプの回転数に対応させて、(実験やシミュレーション等にて求めた)油圧ポンプの負荷が設定されている。作動油温度・補正量特性には、作動油の温度(すなわち、作動油の粘度)に対応させて、(実験やシミュレーション等にて求めた)補正量が設定されており、例えば暖機完了時の作動油温度Taの場合に補正量(補正係数)が1.0となるように設定されている。
【0059】
検査装置200は、ステップS035にて送信した回転維持要求情報に含まれている所定回転数と、油圧ポンプ回転数・負荷特性とに基づいて、油圧ポンプの負荷を求める。なお、油圧ポンプと内燃機関は直結されているので、内燃機関の回転数=油圧ポンプの回転数である。また検査装置200は、作動油温度読出応答情報に含まれている作動油温度と、作動油温度・補正量特性とに基づいて、補正量(補正係数)を求める。そして検査装置200は、求めた油圧ポンプ負荷に、補正量(補正係数)を乗算して、補正後の油圧ポンプ負荷を求める。この「補正後の油圧ポンプの負荷」=「推定した内燃機関の負荷」である。
【0060】
ステップS040、S045、S050、S055、S060の処理を実行している検査装置200(CPU230)は、所定回転数に維持した内燃機関の負荷を、内燃機関に接続された油圧ポンプの負荷を用いて推定する、負荷推定部232(図3参照)に相当する。
【0061】
ステップS065にて検査装置200は、基準空気流量を求めてステップS070へ処理を進める。検査装置200の記憶装置には、図7に示す空気流量基準特性が記憶されている。空気流量基準特性には、内燃機関の回転数(N1、N2、・・)と、内燃機関の負荷(Q1、Q2・・)に対応させて、(実験やシミュレーション等にて求めた)その内燃機関(暖機後)が吸入する空気流量の基準である基準空気流量が設定されている。
【0062】
検査装置200は、ステップS035にて送信した回転維持要求情報に含まれている所定回転数(=内燃機関の回転数)と、ステップS060にて求めた補正後の油圧ポンプ負荷(=推定した内燃機関の負荷)と、空気流量基準特性とに基づいて、基準空気流量を求める。
【0063】
ステップS065の処理を実行している検査装置200(CPU230)は、推定した内燃機関の負荷と、所定回転数と、空気流量基準特性とに基づいた空気流量である基準空気流量を算出する、基準空気流量算出部233(図3参照)に相当する。
【0064】
ステップS070にて検査装置200は、作業者等から空気流量読出指示(コマンド)が入力されたか否かを判定する。検査装置200は、空気流量読出指示が入力された場合(Yes)はステップS075へ処理を進め、入力されていない場合(No)はステップS070へ処理を戻す。なお、空気流量読出指示は、内燃機関制御装置50が記憶している空気流量(空気流量検出手段を用いて検出した空気流量)を読み出すためのコマンドである。
【0065】
ステップS075へ処理を進めた場合、検査装置200は、入力された空気流量読出指示を含む空気流量読出要求情報を、通信回線を介して内燃機関制御装置50に向けて送信し、ステップS080へ処理を進める。
【0066】
ステップS070、S075の処理を実行している検査装置200(CPU230)は、空気流量検出手段を用いて検出した空気流量(内燃機関制御装置が検出した空気流量)を読み出す空気流量読出指示が入力されると、空気流量読出指示を含む空気流量読出要求情報を、通信回線を介して内燃機関制御装置に送信する、空気流量読出指示部234(図3参照)に相当する。
【0067】
ステップS080にて検査装置200は、通信回線を介して内燃機関制御装置50から、空気流量を含む空気流量読出応答情報を受信したか否かを判定する。なお、内燃機関制御装置50は、空気流量読出要求情報を受信すると、空気流量を含む空気流量読出応答情報を送信するように設定されている。検査装置200は、空気流量読出応答情報を受信した場合(Yes)はステップS085へ処理を進め、受信していない場合(No)はステップS080へ処理を戻す。
【0068】
ステップS085にて検査装置200は、受信した空気流量読出応答情報を記憶装置に記憶してステップS090へ処理を進める。
【0069】
ステップS080、S085の処理を実行している検査装置200(CPU230)は、空気流量検出手段を用いて検出した空気流量を含む空気流量読出応答情報を、通信回線を介して内燃機関制御装置から受信する、実空気流量取得部235(図3参照)に相当する。
【0070】
ステップS090にて検査装置200は、ステップS065にて求めた基準空気流量と、ステップS080にて受信した空気流量読出応答情報に含まれている空気流量とに基づいて、空気流量検出手段が正常であるか異常であるかを判定し、判定結果を表示してステップS020へ処理を戻す。
【0071】
また判定の際、検査装置200は、ステップS065にて求めた基準空気流量と、ステップS080にて受信した空気流量読出応答情報に含まれている空気流量との偏差である流量偏差を求め、流量偏差が所定流量以下で有る場合は正常であると判定し、流量偏差が所定流量よりも大きい場合は異常であると判定する。
【0072】
●[第2の実施の形態における検査装置200の処理手順(図8)]
次に図8に示すフローチャートを用いて、第2の実施の形態における、検査装置200の処理手順の例について説明する。第2の実施の形態では、作業者等が、回転維持指示、作動油温度読出指示、空気流量読出指示等を入力する必要がなく、検査装置200の検査指示入力部から1回指示を入力するだけで、空気流量検出手段の検査を行う一連の処理が連続的かつ自動的に行われる点が異なる。なお、作業者等は検査の際、油圧ポンプ110及び調整バルブユニット120を標準動作状態にしておくことが好ましい点と、内燃機関システム2及び油圧機構3の暖機運転後とすることが好ましい点は、第1の実施の形態と同様である。
【0073】
なお図8に示すフローチャートにおいて、図4に示すフローチャートと同一ステップの処理については第1の実施の形態の処理と同じである。図8に示すフローチャートでは、図4に示すフローチャートに対して、ステップS027の処理がステップS027Aに変更され、ステップS030、S040、S070処理が省略されている。検査装置200(CPU230)は、コネクタCを介して通信回線T1に接続されて起動されると、図8に示すステップS010に処理を進める。
【0074】
ステップS010にて検査装置200は、自身を初期化してステップS020へ処理を進める。なお具体的な初期化の内容については説明を省略する。
【0075】
ステップS020にて検査装置200は、自身の表示装置にメニュー画面(図示省略)を表示してステップS025へ処理を進める。なお、メニュー画面には、空気流量検出手段の検査の一連の処理を連続的かつ自動的に実施するための、検査指示入力部211(図3参照)が表示されている。
【0076】
ステップS025にて検査装置200は、表示しているメニュー画面の中から、作業者等が何らかのメニューを選択したか否かを判定する。検査装置200は、何らかのメニューが選択された場合(Yes)はステップS027Aへ処理を進め、選択されていない場合(No)はステップS020へ処理を戻す。
【0077】
ステップS027Aへ処理を進めた場合、検査装置200は、選択されたメニューの中から検査指示入力部211(図3参照)が指示(入力または選択)されたか否かを判定する。検査装置200は、空気流量検出手段の検査の一連の処理を連続的かつ自動的に実施するための検査指示入力部211(図3参照)が指示された場合(Yes)はステップS035へ処理を進め、検査指示入力部211が指示されていない場合(No)は(その他のメニューの処理)へ処理を進める。なお、(その他のメニューの処理)は、検査装置200に用意されている種々の検査であり、説明を省略する。
【0078】
ステップS035にて検査装置200は、回転維持指示と(予め設定された)所定回転数を含む回転維持要求情報を、通信回線を介して(自動的に)内燃機関制御装置50に向けて送信し、ステップS045へ処理を進める。なお、内燃機関制御装置50は、回転維持要求情報を受信すると、内燃機関の回転数を所定回転数に維持するように設定されている。
【0079】
なお回転維持要求情報に、EGR弁の開度を全閉に固定する指示であるEGR弁全閉指示と、ターボ過給機の可変ノズルの開度を全開に固定する指示である可変ノズル全開指示とを(自動的に)含ませると、内燃機関が吸入する空気の変動量がより低減されるので、より好ましい。内燃機関制御装置50は、回転維持要求情報にEGR弁全閉指示が含まれている場合、EGR弁の開度を強制的に全閉にするように設定されている。また内燃機関制御装置50は、回転維持要求情報に可変ノズル全開指示が含まれている場合、可変ノズルの開度を強制的に全開にするように設定されている。
【0080】
ステップS045へ処理を進めた場合、検査装置200は、作動油温度読出指示を含む作動油温度読出要求情報を、通信回線を介して(自動的に)内燃機関制御装置50及び機体制御装置150に向けて送信し、ステップS050へ処理を進める。
【0081】
ステップS050にて検査装置200は、通信回線を介して内燃機関制御装置50または機体制御装置150から、作動油温度を含む作動油温度読出応答情報を受信したか否かを判定する。なお、内燃機関制御装置50または機体制御装置150は、作動油温度読出要求情報を受信すると、作動油温度を含む作動油温度読出応答情報を送信するように設定されている。検査装置200は、作動油温度読出応答情報を受信した場合(Yes)はステップS055へ処理を進め、受信していない場合(No)はステップS050へ処理を戻す。
【0082】
ステップS055にて検査装置200は、受信した作動油温度読出応答情報を記憶装置に記憶してステップS060へ処理を進める。
【0083】
ステップS060にて検査装置200は、内燃機関の負荷を推定してステップS065へ処理を進める。なお、内燃機関の負荷を求める(推定する)手順については、第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0084】
ステップS065にて検査装置200は、基準空気流量を求めてステップS075へ処理を進める。なお、基準空気流量を求める手順については、第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0085】
ステップS075にて検査装置200は、空気流量読出指示を含む空気流量読出要求情報を、通信回線を介して(自動的に)内燃機関制御装置50に向けて送信し、ステップS080へ処理を進める。
【0086】
ステップS080にて検査装置200は、通信回線を介して内燃機関制御装置50から、空気流量を含む空気流量読出応答情報を受信したか否かを判定する。なお、内燃機関制御装置50は、空気流量読出要求情報を受信すると、空気流量を含む空気流量読出応答情報を送信するように設定されている。検査装置200は、空気流量読出応答情報を受信した場合(Yes)はステップS085へ処理を進め、受信していない場合(No)はステップS080へ処理を戻す。
【0087】
ステップS085にて検査装置200は、受信した空気流量読出応答情報を記憶装置に記憶してステップS090へ処理を進める。
【0088】
ステップS090にて検査装置200は、ステップS065にて求めた基準空気流量と、ステップS080にて受信した空気流量読出応答情報に含まれている空気流量とに基づいて、空気流量検出手段が正常であるか異常であるかを判定し、判定結果を表示してステップS020へ処理を戻す。
【0089】
また判定の際、検査装置200は、ステップS065にて求めた基準空気流量と、ステップS080にて受信した空気流量読出応答情報に含まれている空気流量との偏差である流量偏差を求め、流量偏差が所定流量以下で有る場合は正常であると判定し、流量偏差が所定流量よりも大きい場合は異常であると判定する。
【0090】
本発明の内燃機関の検査装置200は、本実施の形態で説明した構成、構造、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0091】
また、本発明の検査装置200が対象とする内燃機関は、ディーゼルエンジンに限定されず、ガソリンエンジン等であってもよい。また本実施の形態の説明では、油圧ポンプの負荷を作動油温度で補正する例を説明したが、作動油温度による補正を省略してもよい。また本実施の形態の説明では、回転維持要求情報がEGR弁全閉指示、可変ノズル全開指示を含む例を説明したが、EGR弁全閉指示、可変ノズル全開指示を省略してもよい。
【0092】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(より小さい)(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0093】
1 産業車両
2 内燃機関システム
3 油圧機構
10 内燃機関
11A、11B 吸気管
11C 吸気マニホルド
12A 排気マニホルド
12B、12C 排気管
13 EGR配管
14 EGR弁
15 EGRクーラ
21 空気流量検出手段
22A クランク角度検出手段
22B カム角度検出手段
23 大気圧検出手段
24A コンプレッサ上流圧力検出手段
24B コンプレッサ下流圧力検出手段
24C 吸気マニホルド圧力検出手段
25 回転調整ダイヤル
26A タービン上流圧力検出手段
26B タービン下流圧力検出手段
28A、28B 吸気温度検出手段
28C クーラント温度検出手段
29 排気温度検出手段
30 ターボ過給機
31 ノズル駆動手段
32 ノズル開度検出手段
33 可変ノズル
35 コンプレッサ
36 タービン
41 コモンレール
43A~43D インジェクタ
45A~45D シリンダ
50 内燃機関制御装置
51 CPU
53 記憶装置
55 通信装置
61 排気浄化装置
100 動力伝達手段
110 油圧ポンプ
120 調整バルブユニット
130 油圧経路
150 機体制御装置
200 検査装置
210 表示装置
211 検査指示入力部
220 入力装置
230 CPU
231 回転維持指示部
232 負荷推定部
233 基準空気流量算出部
234 空気流量読出指示部
235 実空気流量取得部
236 特性判定部
242 記憶装置
245 通信装置
C コネクタ
T1、T2 通信回線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8