(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191405
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】結節性痒疹を治療するための抗掻痒剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20221220BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221220BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221220BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221220BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221220BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221220BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61K31/485
A61P17/04
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/58
【審査請求】有
【請求項の数】47
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165113
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2019543196の分割
【原出願日】2017-10-25
(31)【優先権主張番号】62/412,578
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515138610
【氏名又は名称】トレビ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107674
【弁理士】
【氏名又は名称】来栖 和則
(72)【発明者】
【氏名】シャーシャ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グッド ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ハウィ アマーレ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】結節性痒疹を治療するための抗掻痒剤を提供する。
【解決手段】抗掻痒剤は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むとともに、持続放出型経口剤として調剤され、治療は、当該抗掻痒剤を、前記結節性痒疹に罹患している患者に、用量が漸減しないように予め定められた投薬スケジュールに従って用量を漸増しながら投与する漸増投与工程と、当該抗掻痒剤を継続して前記患者に、前記漸増投与工程の終了時点における最高一日用量に実質的に等しい一日用量で投与する維持投与工程とを含み、前記治療は、その治療後、前記患者の痒み強度の値がベースラインから少なくとも約30%低下するように行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結節性痒疹を治療するための抗掻痒剤であって、
当該抗掻痒剤は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むとともに、持続放出型経口剤として調剤され、
前記治療は、
当該抗掻痒剤を、前記結節性痒疹に罹患している患者に、用量が漸減しないように予め定められた投薬スケジュールに従って用量を漸増しながら投与する漸増投与工程と、
当該抗掻痒剤を継続して前記患者に、前記漸増投与工程の終了時点における最高一日用量に実質的に等しい一日用量で投与する維持投与工程と
を含み、
前記治療は、その治療後、前記患者の痒み強度の値がベースラインから少なくとも約30%低下するように行われる抗掻痒剤。
【請求項2】
前記漸増投与工程は、約90mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する当該抗掻痒剤を前記患者に一日二回投与する工程を含む請求項1に記載の抗掻痒剤。
【請求項3】
前記漸増投与工程は、約180mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する当該抗掻痒剤を前記患者に一日一回投与する工程を含む請求項1に記載の抗掻痒剤。
【請求項4】
前記漸増投与工程は、約180mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する当該抗掻痒剤を前記患者に一日二回投与する工程を含む請求項1に記載の抗掻痒剤。
【請求項5】
前記漸増投与工程は、約360mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する抗掻痒剤を前記患者に一日一回投与する工程を含む請求項1に記載の抗掻痒剤。
【請求項6】
前記治療は、約8週間、10週間、12週間、24週間または50週間行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項7】
前記患者は、中等度または重度の結節性痒疹を有する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項8】
前記治療は、その治療の前に中等度または重度のベースラインの痒みを有する前記患者が、前記治療後に軽度の痒みを経験する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項9】
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、少なくとも一週間、当該抗掻痒剤の用量を漸増する工程を含む請求項1に記載の抗掻痒剤。
【請求項10】
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、約二週間、当該抗掻痒剤の用量を漸増する工程を含む請求項1に記載の抗掻痒剤。
【請求項11】
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、約7~30日間、当該抗掻痒剤の用量を漸増する工程を含む請求項1に記載の抗掻痒剤。
【請求項12】
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、約14~20日間、当該抗掻痒剤の用量を漸増する工程を含む請求項1に記載の抗掻痒剤。
【請求項13】
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、前記患者に当該抗掻痒剤を前記漸増された用量で投与する工程を含む請求項10に記載の抗掻痒剤。
【請求項14】
前記漸増投与工程は、前記患者においてナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩の90mgまたは180mgの有効量が達成されるまで、前記患者に当該抗掻痒剤を前記漸増された用量で投与する工程を含む請求項10に記載の抗掻痒剤。
【請求項15】
前記漸増投与工程は、前記患者に当該抗掻痒剤を一日一回または二回、約30mgの初回用量で投与する工程を含む請求項10に記載の抗掻痒剤。
【請求項16】
前記漸増投与工程は、前記患者に当該抗掻痒剤を約15mg~約60mgの範囲の増分で投与する工程を含む請求項10に記載の抗掻痒剤。
【請求項17】
前記漸増投与工程は、前記患者に当該抗掻痒剤を一日二回、それぞれ、AM(正午前)の投薬量とPM(正午後)の投薬量とで投与する工程を含み、
前記PMの投薬量は、前記AMの投薬量よりも多いかまたは前記AMの投薬量と同じである請求項15に記載の抗掻痒剤。
【請求項18】
前記治療は、その治療の後の有害事象の比率が、前記患者に同じ期間プラセボを投与した後の有害事象の比率と実質的に同じであるように行われる請求項9に記載の抗掻痒剤。
【請求項19】
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒み強度数値評価スケール(NRS)を用いて測定された値のうちの最悪値である最悪痒み強度がベースラインから少なくとも約30%低下することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項20】
前記痒みの減少は、前記最悪痒み強度がベースラインから少なくとも約40%低下することである請求項19に記載の抗掻痒剤。
【請求項21】
前記痒みの減少は、前記最悪痒み強度がベースラインから少なくとも約50%低下することである請求項19に記載の抗掻痒剤。
【請求項22】
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒み強度数値評価スケール(NRS)を用いて測定された値の平均値である平均痒み強度がベースラインから少なくとも約30%低下することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項23】
前記痒みの減少は、前記平均痒み強度がベースラインから少なくとも約40%低下することである請求項22に記載の抗掻痒剤。
【請求項24】
前記痒みの減少は、前記平均痒み強度がベースラインから少なくとも約50%低下することである請求項22に記載の抗掻痒剤。
【請求項25】
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒みに関する生活の質(ItchyQoL)スケールを用いて測定された値がベースラインから少なくとも約10%改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項26】
前記治療は、前記患者が、前記ItchyQoLのうちの症状サブスケールを用いて測定された値のうちの少なくとも約10%の改善により特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項25に記載の抗掻痒剤。
【請求項27】
前記治療は、前記患者が、前記ItchyQoLのうちの機能サブスケールを用いて測定された値のうちの少なくとも約10%の改善により特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項25に記載の抗掻痒剤。
【請求項28】
前記治療は、前記患者が、前記ItchyQoLのうちの感情サブスケールを用いて測定された値のうちの少なくとも約10%の改善により特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項25に記載の抗掻痒剤。
【請求項29】
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒疹病変部の数、表皮剥脱/痂皮を伴う痒疹病変部の数、および/または治癒した痒疹病変部の数というドメインにおいて、痒疹活動度スコア(PAS)が少なくとも約1つのカテゴリー/ステージにおいて改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項30】
前記治療は、前記患者が、表皮剥脱または痂皮を伴う痒疹性病変部をステージ別に測定する痒疹活動度スコア(PAS)が少なくとも約1つのステージにおいて改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項29に記載の抗掻痒剤。
【請求項31】
前記治療は、前記患者が、治癒した病変部をステージ別に測定する痒疹活動度スコア(PAS)が少なくとも約1つのステージにおいて改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項29に記載の抗掻痒剤。
【請求項32】
前記治療は、前記患者が、痒疹病変部の数が少なくとも約1つのカテゴリーにおいて改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項29に記載の抗掻痒剤。
【請求項33】
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒み、灼熱感、および/または刺すような感覚(stinging)の口頭式評価スケール(VRS)のスコアが少なくとも約10%改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項34】
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒疹性病変部の治癒を経験するように行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項35】
前記痒疹性病変部が、結節、丘疹および斑からなる群から選択される請求項34に記載の抗掻痒剤。
【請求項36】
前記治療は、その治療の後、前記患者が、表皮剥脱/痂皮病変部の減少を経験するように行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項37】
前記治療は、その治療の後、前記患者が、病変部の総数の減少を経験するように行われる請求項1~5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項38】
前記治療の期間の長さおよび前記治療中に前記患者に投与される当該抗掻痒剤の一日用量は、前記治療の後、前記患者において、前記結節性痒疹に起因する痒みサイクルが実質的に解消し、それにより、痒み感覚のぶり返しが抑制されるように設定される請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項39】
当該抗掻痒剤は、ナルブフィン塩酸塩、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物およびステアリン酸マグネシウムを含む製剤で投与される請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項40】
前記治療は、約10~80ng/mLのナルブフィン定常状態血漿濃度を前記患者に提供するように行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項41】
前記定常状態血漿濃度は、約30~70ng/mLである請求項40に記載の抗掻痒剤。
【請求項42】
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩の一日用量は、約360mgである請求項40に記載の抗掻痒剤。
【請求項43】
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩の一日用量は、約360mgである請求項41に記載の抗掻痒剤。
【請求項44】
前記治療は、実質的な水利尿効果を生じさせないように行われる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項45】
前記治療は、さらに、少なくとも1つの追加的鎮痒薬を投与する工程を含む請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【請求項46】
前記少なくとも1つの追加的鎮痒薬は、抗ヒスタミン剤およびコルチコステロイドからなる群から選択される請求項45に記載の抗掻痒剤。
【請求項47】
当該抗掻痒剤が前記患者に投与される用量は、前記漸増投与工程において、前記投薬スケジュールであって、
1日目:正午前の投薬量が 0mg、正午後の投薬量が 30mg、
2日目:正午前の投薬量が 0mg、正午後の投薬量が 30mg、
3日目:正午前の投薬量が 30mg、正午後の投薬量が 30mg、
4日目:正午前の投薬量が 30mg、正午後の投薬量が 30mg、
5日目:正午前の投薬量が 30mg、正午後の投薬量が 60mg、
6日目:正午前の投薬量が 60mg、正午後の投薬量が 60mg、
7日目:正午前の投薬量が 60mg、正午後の投薬量が 60mg、
8日目:正午前の投薬量が 60mg、正午後の投薬量が 90mg、
9日目:正午前の投薬量が 90mg、正午後の投薬量が 90mg、
10日目:正午前の投薬量が 90mg、正午後の投薬量が 90mg、
11日目:正午前の投薬量が 90mg、正午後の投薬量が120mg、
12日目:正午前の投薬量が120mg、正午後の投薬量が120mg、
13日目:正午前の投薬量が120mg、正午後の投薬量が120mg、および
14日目:正午前の投薬量が120mg、正午後の投薬量が180mg
というものに従って増量される請求項1ないし5のいずれか一項に記載の抗掻痒剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月25日出願の米国仮出願第62/412,578号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、ナルブフィン(nalbuphine)組成物を使用して患者の結節性痒疹を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
掻痒症、または痒みは、引っ掻きたいという欲求を刺激する感覚である。掻痒症は、複数箇所の非連続的な解剖学的領域まで拡がるか、または身体皮膚表面上の1か所の特定の解剖学的領域に局在していてもよい。掻痒症の原因は完全には解明されていない。掻痒症の発症機序に対し提唱されている病因としては、エリスロポエチン欠乏による貧血または他の兆候、皮膚肥満細胞からのヒスタミン放出、皮膚の乾燥、二次性副甲状腺機能亢進症、皮膚中のリン酸カルシウム沈着増加を伴う高リン血症、およびオピオイドμ受容体の過剰発現を伴う内因性オピオイド作動性システムの変化が挙げられる。
【0004】
結節性痒疹(PN:Prurigo Nodularis)は極めて掻痒性の皮膚疾患であり、表皮剥脱と潰瘍形成を伴う丘疹ならびに結節の痒疹性皮膚病変が存在する。PNの治療選択に関してはさまざまな医療介入が検討されているが、有効な治療法が依然として求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は特に、そのような治療を必要とする患者に有効量の抗掻痒剤を投与することを含む、掻痒症を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、抗掻痒剤は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルである。
【0006】
一部の実施形態では、掻痒症の治療を必要とする患者は、結節性痒疹の患者である。特定の実施形態では、患者は中等度または重度の結節性痒疹を有する。
【0007】
一部の実施形態によると、結節性痒疹を治療する方法は、それを必要とする患者に少なくとも一週間、少なくとも約180mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの一日用量を投与することを含む。一部の実施形態では、結節性痒疹を治療する方法は、それ必要とする患者に少なくとも一週間、少なくとも約360mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの一日用量を投与することを含む。一部の実施形態では、約90mgの抗掻痒剤が一日二回投与される。一部の実施形態では、約180mgの抗掻痒剤が一日一回投与される。一部の実施形態では、約180mgの抗掻痒剤が一日二回投与される。一部の実施形態では、約360mgの抗掻痒剤が一日一回投与される。
【0008】
一部の実施形態では、抗掻痒剤は約8週間投与される。一部の実施形態では、抗掻痒剤は約10週間投与される。一部の実施形態では、抗掻痒剤は約12週間投与される。一部の実施形態では、抗掻痒剤は約18週間投与される。一部の実施形態では、抗掻痒剤は約50週間投与される。
【0009】
一部の実施形態では、治療後、患者は治療前と比較して痒みの実質的な減少を経験する。
【0010】
一部の実施形態では、掻痒症を治療する方法は、患者において定常状態が達成されるまで少なくとも約一週間、抗掻痒剤の用量を漸増する工程をさらに含む。一つの実施形態では、漸増は、患者において定常状態が達成されるまで約2週間実施される。別の実施形態では、漸増は、患者において定常状態が達成されるまで約7日間~約30日間実施される。別の実施形態では、漸増は、患者において定常状態が達成されるまで約12日間~約20日間実施される。
【0011】
ある実施形態では、抗掻痒剤の増加する用量は、患者において定常状態が達成されるまでの漸増の間に投与される。ある実施形態では、抗掻痒剤の増加する用量は、患者において90mgまたは180mgの有効量が達成されるまでの漸増の間に投与される。
【0012】
一つの実施形態では、漸増は、一日に一回または二回の約15mgの用量で開始される。他の実施形態では、漸増は、一日に一回または二回の約30mgの用量で開始される。ある実施形態では、漸増は、約15mg~約30mgの範囲の増分で抗掻痒剤を投与することを含む。ある実施形態では、漸増は、約15mg~約60mgの範囲の増分で抗掻痒剤を投与することを含む。ある実施形態では、一日二回の漸増は、AMの投薬量とPMの投薬量で行われ、この場合において当該PMの投薬量がAMの投薬量よりも多いか、またはAMの投薬量と同じである。
【0013】
本発明の一部の実施形態によれば、抗掻痒剤を用いた治療後の有害事象の比率は、同じ期間プラセボを投与した後の有害事象の比率と実質的に同じである。
【0014】
本発明の一部の実施形態によると、臨床試験により、抗掻痒剤で治療された対象が、プラセボで治療された対象と比較して統計的に有意な痒みの減少を経験したことが示されている。一部の実施形態では、統計的に有意な痒みの減少は、約0.05以下のp値により示される。一部の実施形態では、治療前に中等度または重度のベースラインの痒みがあった患者が、治療後には軽度の痒みを経験する。
【0015】
本発明の一部の実施形態によると、治療後、患者は、最も酷い痒み強度数値評価スケール(NRS:Numerical Rating Scale)の値における少なくとも約30%、40%、または50%の低下により特徴付けられる痒みの減少を経験する。一部の実施形態では、治療後、患者は、平均の痒み強度数値評価スケール(NRS)の値における少なくとも約30%、40%、または50%の低下により特徴付けられる痒みの減少を経験する。
【0016】
本発明の一部の実施形態によると、治療後、患者は、痒みの口頭式評価スケール(VRS:Verbal Rating Scale)値の強度における少なくとも約10%、20%、30%、40%、または50%の低下により特徴付けられる痒みの減少を経験する。一部の実施形態では、治療後、患者は、灼熱感の口頭式評価スケール(VRS)値の強度における少なくとも約10%、20%、30%、40%、または50%の低下により特徴付けられる灼熱感の減少を経験する。一部の実施形態では、治療後、患者は、刺すような感覚(stinging)の口頭式評価スケール(VRS)値の強度における少なくとも約10%、20%、30%、40%、または50%の低下により特徴付けられる刺すような感覚の減少を経験する。
【0017】
本発明の一部の実施形態によると、治療後、患者は、痒みに関する生活の質(ItchyQoL:Itchy Quality of Life)スケール合計スコア、または以下の各サブスケールのいずれかにおける、少なくとも約10%、20%、または30%の改善により特徴付けられる痒みの減少を経験する:症状サブスケールスコア、機能サブスケールスコア、または感情サブスケールスコア。
【0018】
本発明の一部の実施形態によると、治療後、患者は、患者利益インデックス-掻痒症バージョン(PBI-P:Patient Benefit Index-pruritus version)スケールにおける少なくとも約10%、20%、または30%の改善により特徴付けられる痒みの減少を経験する。
【0019】
本発明の一部の実施形態によると、治療後、患者は、痒疹病変の数、表皮剥脱/痂皮を伴う痒疹病変、および/または治癒した痒疹病変の痒疹活動度スコア(PAS:Prurigo Activity Score)ドメインにおける少なくとも1カテゴリー/ステージの改善により特徴付けられる痒みの減少を経験する。
【0020】
本発明の一部の実施形態によれば、掻痒症を治療する方法は、実質的な水利尿効果を生じさせない。本発明の一部の実施形態によれば、治療前の患者と比較して、治療後の患者の筋骨格系の症状の比率は低い。
【0021】
一部の実施形態では、掻痒症を治療する方法はさらに、少なくとも一つの追加的鎮痒薬を投与することをさらに含む。ある実施形態では、少なくとも一つの追加的鎮痒薬は、抗ヒスタミン剤(例えば、ロラタジン)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、カプサイシン、カルシニューリン阻害剤(例えば、タクロリムス)、抗生物質(例えば、テトラサイクリン)、抗けいれん剤(例えばガバペンチン)、免疫抑制剤(例えばメトトレキサート)、抗鬱剤(例えばアミトリプチリン)、神経弛緩剤(例えばクロザピン)、ベンゾジアゼピン(例えばジアゼパム)、免疫調節剤(例えばサリドマイド)、または例えば紫外線療法などの非薬物治療の追加からなる群から選択される。
【0022】
一部の実施形態では、抗掻痒剤は、持続放出型経口剤型である。
【0023】
一部の実施形態では、抗掻痒剤は、ナルブフィン塩酸塩、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、およびステアリン酸マグネシウムを含む製剤で投与される。
【0024】
本方法およびその利点は、実施例を含む、以下の非限定的な詳細な説明によってさらに例示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】最も酷い痒み強度数値評価スケール(NRS)を示す。
【
図2】患者の三つの無作為化群のスクリーニングおよび治療レジメンの概略である。NAL 180=ナルブフィンER錠剤 180mg BID;NAL 90=ナルブフィンER錠剤 90mg BID;およびプラセボBID。
【
図3】すべてのMITT患者(N=62、左)と、完了患者(N=50、右)に対する、最も酷い痒み数値評価スケール(0~10の範囲、0は「痒み無し」、4~6は「中等度の痒み」、そして10は「想定され得る最も酷い痒み」を指す)における、ベースラインから最終観察時までの平均変化を表すグラフである。NAL 180=ナルブフィンER錠剤 180mg BID;NAL 90=ナルブフィンER錠剤 90mg BID、実施例2。
【
図4】治療群(改変治療意図群)による、ベースラインから最終観察された来院時までの7日間の最も酷い痒み強度における減少割合と患者比を表すグラフである。NAL 180=ナルブフィンER錠剤 180mg BID;NAL 90=ナルブフィンER錠剤 90mg BID、実施例2。
【
図5】治療群(改変治療意図群)による、完了者のベースラインから10週目までの7日間の最も酷い痒み強度における減少割合と患者比を表すグラフである。NAL 180 = ナルブフィンER錠剤 180mg BID;NAL 90=ナルブフィンER錠剤 90mg BID、実施例2。
【
図6】(1)NAL 180治療群の患者、および(2)プラセボ群の患者に対する、週ごとのItchyQoL合計スコアを表すグラフである。NAL 180=実施例2のナルブフィンER錠剤180mg BID。
【
図7】実施例3に記載される第II相延長試験(TR03ext)の全体的概略図である。
【
図8】
図8Aは、ベースライン時の実施例2の患者の痒疹性病変を示し、
図8Bは、実施例3に記載される延長試験の50週目での同じ患者の治癒した痒疹性病変を示す(TR03ext)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
数値の直前にある「約」という用語は、範囲(例えば、その値のプラスまたはマイナス10%)を意味する。例えば、「約50」は、本開示の内容が別段を示唆しない限り、またはかかる解釈と矛盾する場合を除き、45~55を意味し、「約25,000」は22,500~27,500を意味し得る。例えば、「約49、約50、約55、…」などの数値の列記において、「約50」は、例えば49.5より大きく、52.5より小さい前値と後値の間の間隔の半分未満に延長される範囲を意味する。さらに、本明細書に提供される「約」という用語の定義を考慮して、「約~未満」の値、または「約~超」の値という文言を理解するべきである。同様に、「約」という用語は、一連の数値または数値範囲(例えば、「約10、20、30」または「約10~30」)の前にある場合、それぞれその一連にある値のすべて、またはその範囲の終点を指す。
【0027】
本開示全体を通して、様々な特許、特許出願、および公表文献が参照される。これらの特許、特許出願および公表文献の開示はその全体で、本開示の日付において当分野の当業者に公知である当分野の状況をさらに詳細に解説するために、全ての目的に対し参照により本明細書に援用される。引用される特許、特許出願および公表文献と本開示の間に不一致がある場合には、本開示が優先される。
【0028】
簡便性を目的として、本明細書、本実施例および請求の範囲に採用される特定の用語を、ここに収集する。別段の規定がない限り、本開示で使用される全ての技術用語および科学用語は、本出願が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与すること」または「投与」という用語は、化合物、または当該化合物の薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、または当該化合物を含む組成物、または当該化合物の薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む組成物のいずれかを患者に直接投与することを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「有害事象」(AE)という用語は、第一のスクリーニングの日またはその後に報告された臨床試験の患者における任意の有害な医学的な出来事と定義される。AEは、必ずしも治療との因果関係を有するわけではない。ゆえにAEは、医薬品(治験薬)との関連の有無に関わらない任意の好ましくない、および意図されない兆候(異常検査所見を含む)であり、または医薬品(治験薬)の使用に一時的に関連する疾患であり得る。典型的な有害事象としては、吐き気、嘔吐、傾眠、めまい、および幻覚が挙げられる。本発明によれば、治療後の有害事象の比率は、同期間、プラセボを投与した後の有害事象の比率と実質的に同じである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、担体、賦形剤、および希釈剤を包含し、これは一つの器官もしくは身体部分から、別の器官もしくは身体部分への薬剤の運搬または輸送に関与する、液体もしくは個体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料などの材料、組成物、またはビヒクルを意味する。
【0032】
「障害」という用語は本開示において、別段の示唆がない限り、疾患、状態、または病気といった用語を意味するよう使用され、および相互交換可能に使用される。
【0033】
「有効量」および「治療有効量」という用語は、本開示において相互交換可能に使用され、患者に投与された時に意図される結果を実現することができる化合物、またはその塩、溶媒もしくはエステルの量を指す。例えば、鎮痒剤の有効量は、患者の掻痒症の少なくとも一つの症状を減少させるために必要とされる量であり、例えば、患者の痒み感覚を減少させるために必要とされる量である。「有効量」または「治療有効量」を含む実際の量は、障害の重大度、患者の大きさおよび健康状態、ならびに投与経路を含むがこれに限定されない、多くの条件に応じて変化するであろう。当業者であれば、医療分野で公知の方法を使用して適切な量を容易に決定できる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能」という文言は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/リスク比に見合った、それら化合物、物質、組成物および/または剤型を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「塩」という用語は、遊離酸のアルカリ金属塩を形成するために一般的に使用される薬学的に許容可能な塩、および遊離塩基の付加塩を形成するために一般的に使用される薬学的に許容可能な塩を包含する。塩の性質は、薬学的に許容可能であれば、重要ではない。「塩」という用語はまた、例えば水和物などの付加塩の溶媒和物、ならびに付加塩の多形体を含む。適切な薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製されうる。そのような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、およびリン酸である。適切な有機酸は、カルボン酸およびスルホン酸を含有する脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪酸、ならびにヘテロシクリルから選択されてもよく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルギン酸、3-ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸、およびガラクツロン酸がある。
【0036】
本明細書において使用される場合、「治療すること」という用語は、患者の障害の少なくとも一つの症状を改善することを指す。治療することは、障害を治癒、改善、または少なくとも部分的に改善することであってもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「治療効果」という用語は、本方法および/または本組成物によりもたらされる望ましいまたは有益な効果を指す。例えば、掻痒症を治療するための方法は、当該方法が少なくとも一つの掻痒症の症状、例えば、患者の痒み感を減少させた場合、治療効果をもたらしている。
【0038】
詳細な説明
本発明によると、掻痒症は、例えば掻きたいという欲をもたらす感覚など、任意の痒みまたは掻痒状態を含む。痒疹は、慢性掻痒が原因で掻きむしることにより誘発される任意のタイプの痒疹性病変(例えば丘疹、結節、斑、および臍窩病変など)によって特徴付けられる掻痒状態である。痒疹性病変には表皮剥脱した、落屑性および/または痂皮性の丘疹、結節ならびに斑が含まれ、多くの場合、白っぽいまたはピンクの中心部分と、色素沈着過剰な境界部分を伴う。
【0039】
European Academy of Dermatology and Venereology(EADV)の痒疹タスクフォース(TFP:Task Force on Pruritus)の合意声明(Pereira,MP et al(2017),“European academy of dermatology and venereology European prurigo project:expert consensus on the definition,classification and terminology of chronic prurigo.”J Eur Acad Dermatol Venereol.2017,doi:10.1111/jdv.14570)はPNに関する最新の医療および科学的データをまとめている。TFPは、結節性痒疹の病因と診断を考察した。掻痒症タスクフォースにより、「慢性痒疹」という用語は、医療従事者により使用される診断的用語であること、そして「慢性痒疹」の診断が例えば丘疹、結節、斑、および臍窩性痒疹、ならびにその他の任意の痒疹の皮膚症状などの痒疹性病変の変形のすべてを包含することが推奨された。したがって結節性痒疹および慢性痒疹は、同じ臨床状態に対する専門用語として相互交換可能に使用されることができる。
【0040】
現在のところ、慢性痒疹の病態生理学を明らかにする公知のバイオマーカーは存在しない。その代わりに慢性痒疹は根幹にある掻痒症の病因から独立した所見によって臨床的に診断される。慢性痒疹の診断的臨床症状には、慢性掻痒症の存在(6週間以上)、繰り返し掻きむしられた跡および/または兆候(例えば表皮剥脱、瘢痕)、ならびに複数の痒疹性病変の局所的または全身的な存在が含まれる。
【0041】
慢性痒疹の痒疹性病変の発現につながる病因または素因は、多くが不明である(Eigelshoven S,et al.“Prurigo nodularis”CME Dermatol.2009;4(3):140-55;“Prurigo nodularis:a benign dermatosis derived from a persistent pruritis”,Acta Dermatovenerol Croat.2008;16(1):38-44;およびSchwartz 2008;and Lee MR,et al.“Prurigo nodularis:a review”,Australas J Dermatol.2005;46(4):211-20を参照)。「反復的な痒みと掻きむしることの悪循環」による反応パターンとしてのPNの病因仮説は、医学界において広く許容されている(Iking A,et al.“Prurigo as a symptom of atopic and non-atopic diseases:aetiological survey in a consecutive cohort of 108 patients”J Eur Acad Dermatol Venereol.2013;27(5):550-7)。結節性痒疹の治療に対しFDAが承認した治療法は現在のところ存在しない。
【0042】
一つの態様において本発明は痒疹を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、かかる治療を必要とする患者に少なくとも約一週間、抗掻痒剤の有効量を投与することを含み、この場合において当該抗掻痒剤は、ナルブフィンであるか、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルである。本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも約90mgまたは180mgの抗掻痒剤が投与される。一部の実施形態では、約90mgの抗掻痒剤が一日二回投与される。一部の実施形態では、約180mgの抗掻痒剤が一日一回投与される。一部の実施形態では、約180mgの抗掻痒剤が一日二回投与される。一部の実施形態では、約360mgの抗掻痒剤が一日一回投与される。
【0043】
別の実施形態では、本発明方法は、慢性痒疹の治療に使用される。ある実施形態では、中等度から重度の慢性痒疹を有する成人患者の痒みの治療に、ナルブフィンHClが使用され、または適応される。
【0044】
別の実施形態では、本発明方法は、結節性痒疹の治療に使用される。ある実施形態では、中等度から重度の結節性痒疹を有する成人患者の痒みの治療に、ナルブフィンHClが使用され、または適応される。
【0045】
本発明の一部の実施形態によれば、本方法は、実質的な有害事象を生じさせることなく、治療効果をもたらす。一部の実施形態では、抗掻痒剤を用いた治療後の有害事象の比率は、同じ期間プラセボを投与した後の有害事象の比率と実質的に同じである。
【0046】
本発明の一部の実施形態によれば、掻痒症を治療する方法は、実質的な水利尿効果を生じさせない。
【0047】
本発明の一部の実施形態によると、掻痒症を治療する方法は、例えば結節および丘疹などの痒疹性病変の治癒をもたらす。一部の実施形態では、治療を通して掻きむしることが減少し、それにより例えば結節、丘疹、病変などの痒疹性病変と関連する、刺すような感覚、灼熱感、痒み、および疼痛が減少する。
【0048】
本発明の一部の実施形態によると、結節性痒疹を治療する方法は、痒疹性病変の治癒をもたらす。ある実施形態では、結節性痒疹を治療する方法は、例えば結節、丘疹および/または斑などの痒疹性病変の治癒をもたらす。
【0049】
本発明の一部の実施形態によると、結節性痒疹を治療する方法は、表皮剥脱病変の量、または痒疹性病変の総数の減少をもたらす。
【0050】
ナルブフィン
本方法に採用されるナルブフィンは、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルと、薬学的に許容可能な担体を混合させることにより、医薬組成物の一部を形成してもよい。さらに当該組成物は、アジュバント、賦形剤、希釈剤、放出改変剤および安定剤からなる群から選択される添加剤を含んでもよい。組成物は、即時放出性製剤、遅延放出性製剤、徐放性製剤または持続放出性製剤であってもよい。
【0051】
ナルブフィンHCl(17-(シクロブチルメチル)-4,5α-エポキシモルフィニアン-3、6α、14-トリオール、塩酸塩)は、合成オピオイドである。構造的にナルブフィンは14個のヒドロキシモルフィンの誘導体である。
【0052】
ナルブフィンHClは現在、注射用製剤でのジェネリック医薬品としてのみ入手可能である。注射用製剤のナルブフィンは、1978年から承認薬物製剤として入手可能である。ヌバイン(Nubain)(登録商標)はイノベーターブランドのナルブフィンの注射用製剤であり、現在販売されているジェネリック生物等価注射用製剤はこれを基にしている。注射用製剤は現在、中等度から重度の疼痛の軽減の用途、バランス麻酔のサプリメント、術前および術後の鎮痛、ならびに陣痛および分娩時の産科用鎮痛に対し承認されている。
【0053】
本発明は抗掻痒剤の薬学的に許容可能なエステルも含む。「エステル」という用語は、エステル官能基(本明細書に記載される)を含有する剤の誘導体を意味し、エステル型が患者に投与されたとき、この誘導体が当該剤を放出することができる。活性成分の放出はインビボで発生する。薬学的に許容可能なエステルは、当分野の当業者に公知の技術によって調製することができる。これらの技術は一般的に所与の化合物中の適切な官能基を修飾する。しかしながらこれら修飾された官能基は、インビボでの化合物代謝によって元の官能基を再現させる。エステルは、ヒドロキシ、カルボン酸、または類似した基が修飾された化合物を含む。
【0054】
ヒドロキシル基の適切な薬学的に許容可能なエステルには、例えばリン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエーテルなどの無機エステルと、そのエステルのインビボ加水分解の結果として元のヒドロキシ基を提供する関連化合物が含まれる。ヒドロキシに対するインビボ加水分解性エステル形成基には、アルカノイル(例えば、C1~10直鎖、分岐または環状アルキル)、ベンゾイル、フェニルアセチルおよび置換ベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(炭酸アルキルエステルをもたらす)、ジアルキルカルバモイルおよびN-(N,N-ジアルキルアミノエチル)-N-アルキルカルバモイル(カルバメートをもたらす)、N,N-ジアルキルアミノアセチルおよびカルボキシアセチルが含まれる。
【0055】
製剤
本発明の方法は、例えばナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルなどの鎮痒剤の適切な量を含有する錠剤、カプセル、丸薬、粉末、顆粒、滅菌非経口溶液または懸濁液、および経口溶液または懸濁液、および油水エマルションなどの単位剤型において、例えばヒトおよび動物などの患者への投与用の様々な製剤を採用してもよい。
【0056】
経口医薬剤型は固体または液体のいずれであってもよい。固形剤形は、錠剤、カプセル、顆粒、およびバルク粉末であってもよい。経口錠剤のタイプには、圧縮され、噛み砕けるトローチ剤および錠剤が含まれ、それらは腸溶コーティングされ、糖衣され、またはフィルムコーティングされてもよい。カプセルは硬質または軟質のゼラチンカプセルであってもよく、一方で顆粒および粉末は、当分野の当業者に公知の他の成分と組み合わされて非発泡性または発泡性の形態で提供されてもよい。他の実施形態では、経口剤型は、浸透圧制御放出経口送達システム(OROS:osmotic-controlled release oral delivery system)であってもよい。他の実施形態では、経口剤型は、基質埋め込み型剤型または関連デバイスを含みうる。一部の実施形態では、本発明の経口剤型は、口腔内で分解する錠剤を含みうる。
【0057】
錠剤で利用される薬学的に許容可能な担体としては、結合剤、潤滑剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、および湿潤剤が挙げられる。
【0058】
液体経口剤型には、非発泡性顆粒から再構成された水溶液、エマルション、懸濁液、溶液および/または懸濁液、ならびに発泡性顆粒から再構成された発泡性調製物が含まれる。
【0059】
水溶液には、例えば、エリキシルおよびシロップが含まれる。エマルションは、水中油または油中水のいずれであってもよい。エリキシルは、透明で甘味がある含水アルコール調製物である。エリキシルで使用される薬学的に許容可能な担体は溶媒を含む。シロップは、例えばスクロースなどの糖の濃縮水溶液であり、防腐剤を含むことができる。エマルションは二相系であり、一つは液相で、もう一つの液相中に小さな顆粒の形態で分散されている。エマルションで使用される薬学的に許容可能な担体は、非水性液体、乳化剤および防腐剤である。懸濁液は、薬学的に許容可能な懸濁剤および防腐剤を使用できる。液体経口剤型へ再構成される非発泡性顆粒中で使用される薬学的に許容可能な物質は、希釈剤、甘味料および湿潤剤を含む。液体経口剤型へ再構成される発泡性顆粒中で使用される薬学的に許容可能な物質は、有機酸および二酸化炭素源を含有してもよい。色彩剤および香味剤は、上記の剤型のすべてで使用できる。
【0060】
本発明製剤の非経口投与は、即時型、徐放型(例えばデポ)、持続型および/または修飾放出型の製剤(例えば本明細書に記載される)の静脈内投与、皮下投与、および筋肉内投与を含む。非経口投与用調製物には、注射準備用の滅菌溶液、使用直前に溶質と混ぜられるための滅菌乾燥可溶性製品が含まれ、皮下錠剤、注射準備用滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと混ぜられるための滅菌乾燥不溶性製品、および滅菌エマルジョンが挙げられる。溶液は水性または非水性のいずれでもよい。非経口調製物で使用される薬学的に許容可能な担体には、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁化剤、および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、キレート剤、およびその他の薬学的に許容可能な物質が含まれる。
【0061】
薬学的に活性な化合物の濃度は調整することができ、それにより望ましい薬理学的効果を生じさせる有効量が注射によってもたらされる。正確な用量は、当分野で公知であるように患者または動物の年齢、体重および状態に依存する。単位用量の非経口調製物は、アンプルまたは針を付けたシリンジ内にパッケージされる。非経口投与用のすべての調製物は、当分野で公知であり、実施されるように滅菌しなければならない。実例として、鎮痒剤を含有する滅菌水溶液の静脈内または動脈内点滴は、有効な投与様式である。
【0062】
直腸投与用の医薬剤型は、全身効果をもたらすための直腸坐剤、カプセルおよび錠剤であってもよい。本明細書で使用される直腸坐剤は、直腸内への挿入用の固形体を意味し、体温で溶けるかまたは軟化し、本発明組成物中に含有される薬理学的および/または治療的に活性な成分を放出する。直腸坐剤で利用される薬学的に許容可能な物質は、融点を上昇させるための基材またはビヒクルおよび剤である。基材の例には、ココアバター(テオブロマ油)、グリセリン-ゼラチン、カルボワックス、ポリオキシエチレングリコール、ならびに脂肪酸のモノ、ジおよびトリグリセリドの混合物が含まれる。様々な基材の組み合わせを使用することができる。坐剤の融点を上昇させるための剤には、鯨蝋およびワックスが含まれる。直腸坐剤は、圧縮法または成形のいずれかによって調製することができる。直腸坐剤の典型的な重量は約2~3gmである。直腸投与用の錠剤およびカプセルは、同じ薬学的に許容可能な物質を使用して、および経口投与用製剤と同じ方法で製造できる。
【0063】
組成物は、微粉化された、またはその他の適切な形態で懸濁されることができ、または誘導体化されてより可溶性の活性製品を生成することができる。結果得られる組成物の形態は、意図される投与様式および選択された担体またはビヒクル中の鎮痒剤の溶解度を含む、多くの因子に依存する。効果的な濃度は、掻痒症を治療または緩和するのに充分であり、経験的に決定することができる。濃度は概して化合物の全身投与用濃度よりも高い。
【0064】
結果得られる混合液は、溶液、懸濁液、エマルションなどであってもよく、クリーム、ゲル、軟膏、エマルション、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、発泡体、エアロゾル、灌注、スプレー、坐剤、絆創膏、または局所投与に適した任意の他の製剤として製剤化できる。投与様式は、皮膚、頭皮、眼および/または鼻、頬もしくは舌下の粘膜への局所適用を含みうる。
【0065】
組成物の投与に適した医薬および美容用の担体またはビヒクルには、特定の投与様式に適していると当業者に知られている任意のかかる担体が含まれる。治療された個体に対する重篤な毒性作用を伴わずに治療上有用な効果を発揮するために充分な量の担体中に鎮痒剤を含めることができる。
【0066】
これらの組成物を調製するために、鎮痒剤の重量分率を効果的な濃度で選択ビヒクル中に溶解させ、懸濁させ、分散させ、または別手段で混合させ、掻痒状態が軽減または改善される。概して皮膚が水和するのを助ける皮膚軟化剤または潤滑ビヒクルが、皮膚を乾燥させる例えばエタノールなどの揮発性ビヒクルよりも好ましい。ヒト皮膚で使用するための組成物を調製するための適切な基材またはビヒクルの例は、ワセリン、ワセリンに揮発性シリコンを足したもの、ラノリン、コールドクリーム(USP)、および親水性軟膏(USP)である。
【0067】
本方法で採用される組成物は、皮膚に塗布されたときに掻痒を軽減させることができる。組成物は、必要に応じて一日当たり最大8回までに罹患部分に局所的に投与することができ、それにより痒みの減少および軽減がもたらされる。軽減は一時的または永続的であってもよく、および当該組成物の単回投与後に明らかであってもよい。当該組成物が局所用調製物以外の形態で投与される場合、FDAが確立した安全性ガイドラインの範囲内の、掻痒の軽減を提供するために充分な量で投与されるべきである。患者に投与する適切量の決定は、本発明によって提供される教示と関連する当分野の当業者の技能の範囲内である。
【0068】
局所投与を意図した本発明組成物の溶液は、典型的には約0.01% w/w~約5% w/wの濃度で鎮痒剤の量を送達するために有効な組成物の量を含む。溶液の残りは水、適切な有機溶媒またはその他の適切な溶媒もしくは緩衝液である。溶液または懸濁液として製剤化されたこれらの組成物は、皮膚に適用することもでき、またはエアロゾルもしくは発泡体として製剤化され、スプレー式として皮膚に塗布されることもできる。エアロゾル組成物は典型的には適切な推進剤を25%~80% w/w、好ましくは30%~50% w/w含む。ゲル組成物は、適切な増粘剤を溶液または懸濁液に単に混合することによって製剤化することができる。
【0069】
溶液および懸濁液は、目および粘膜にも局所塗布することができる。特に眼科用途に対して意図される溶液は、0.01%~10% w/wの等張溶液、pH約5~7として適切な塩を用いて製剤されることができ、約0.1% w/wから最大で約5% w/wまたはそれ以上の濃度で本明細書の組成物のうちの一つ以上を含むことが好ましい。適切な眼科溶液は当分野で公知である。
【0070】
局所適用を意図する固体形態の組成物は、唇または他の身体部分への適用を意図するスティック型組成物として製剤化されることができる。そのような組成物は、例えばナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルなどの鎮痒剤の有効量を含有する。存在する鎮痒剤の量は、典型的には約0.01% w/w~約5% w/wである。固体は約40%~98% w/w、好ましくは約50%~90% w/wの皮膚軟化剤も含む。この組成物は、1%~20% w/w、好ましくは5%~15% w/wの適切な増粘剤と、望ましいもしくは必要な場合、乳化剤および水または緩衝液をさらに含んでもよい。
【0071】
さらに、組成物、および組成物を含む調製物は、包帯上に覆われてもよく、バイオ接着剤と混合されてもよく、または帯具に含まれてもよい。ゆえに包帯、バイオ接着剤、帯具、および他のそのような材料と、本明細書に記載されるように製剤化された組成物の組み合わせが提供される。
【0072】
徐放
本方法で採用することができるナルブフィン製剤には、米国仮特許出願60/772,466、60/710,772、および62/011,936、ならびに米国特許出願11/509,347(US2007/0048376として公開)、12/154,496(US2009/0030026として公開)、および14/738,550、ならびにPCT国際特許出願PCT/US2015/035650に記載される経口徐放型ナルブフィン製剤が含まれる。それら各々が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【0073】
「徐放」または「持続放出」とは、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルが制御された速度で製剤から放出され、それによりナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルが長期間にわたり治療上有益な血液レベル(すなわち、有毒レベル以下)に維持されることを意味する。あるいは「徐放」または「持続放出」とは、所望の薬理学的効果が長期間にわたり維持されることを意味する。
【0074】
ナルブフィン注射用製剤(すなわちIVまたはIMまたはSC)の半減期は比較的短いと報告されており、約2~3時間のみである。一部の実施形態では、本方法は、鎮痒効果量のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを含むナルブフィンの経口徐放型製剤を採用してもよい。経口徐放型製剤は放出制御をもたらし、およびボーラス注入または即時放出型経口製剤(例えば少なくとも約8~12時間)で観察されたものよりも低い抗掻痒剤のCmaxを長期間にわたり提供し得る。投与頻度を低下させることで、患者の利便性が向上され、および本方法が遵守される可能性が提供される。投与頻度を低くすることで副作用の減少がもたらされる可能性もある。その理由は、長い時間をかけてより低いピーク濃度の剤に患者が暴露され得るからである。
【0075】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、鎮痒効果が予測期間よりも長いのは、ナルブフィンの腸肝臓再循環に原因がある。ナルブフィンは、例えばUDP-グルクロニルトランスフェラーゼなどの酵素系との酵素反応を介して、インビボでグルクロン酸またはその他のタイプの複合体化代謝物質を形成する。また、胆汁中の親薬剤が胆嚢から腸内に放出され、再吸収された時に、腸肝臓の再循環も発生する可能性もある。一旦形成されると、複合体化ナルブフィン産物は、胆管の分泌を介して胃腸管へと輸送されると考えられ、それによって薬物複合体は切断されてナルブフィンを遊離させ、これが腸から再吸収されうる。徐放性製剤は、インビボ系へナルブフィンをよりゆっくりと放出させて、より多くの薬剤を複合体化させることにより鎮痒効果の持続時間を改善でき、したがって腸からの再循環およびその後の再吸収が可能になる。
【0076】
本方法は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルと、徐放性送達システムを含む組成物を採用してもよい。徐放性送達システムは、(i)少なくとも一つの親水性化合物、少なくとも一つの架橋剤、および少なくとも一つの医薬希釈剤、(ii)少なくとも一つの親水性化合物、少なくとも一つの架橋剤、少なくとも一つの医薬希釈剤、および第一の架橋剤とは異なる少なくとも一つのカチオン性架橋剤、または(iii)少なくとも一つの親水性化合物、少なくとも一つのカチオン性架橋化合物、および少なくとも一つの医薬希釈剤を含む。あるいは他の実施形態では本方法は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルと、徐放性送達システムを含む組成物を採用してもよく、当該システムは、徐放性システム中に疎水性化合物を採用し得る。
【0077】
ナルブフィンは、徐放性送達システム中に均一に分散されてもよい。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約1mg~約240mg、約1mg~約150mg、約1mg~約125mg、または約1mg~約100mgの量で組成物中に存在する。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約5mg~約80mg、約10mg~約70mg、約15mg~約60mg、約40mg~約80mg、約50mg~約70mg、または約45mg~約60mgの量で組成物中に存在する。一つの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、または約240mgの量で組成物中に存在する。別の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約15mg、約30mg、約45mg、約60mg、約90mg、約120mg、または約180mgの量で組成物中に存在する。
【0078】
別の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な例えばHCLの塩は、約15mg、約30mg、約60mg、約90mg、約120mg、または約180mgの量で組成物中に存在する。
【0079】
一部の実施形態では、徐放性送達システムは、約10mg~約420mg、約25mg~約225mg、約21mg~約198mg、または約80mg~約200mg、約80mg~約220mg、約90mg~約210mg、約100mg~約200mg、約110mg~約190mg、約120mg~約180mg、約130mg~約170mg、約140mg~約160mg、約30mg~約60mg、約60mg~約180mg、約30mg~約180mg、約75mg~約150mg、約80mg~約160mg、約90mg~約150mg、約100mg~約140mg、約110mg~約130mg、約100mg~約300mg、約200mg~約300mg、または約200mg~約250mgの量で組成物中に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約75mg~約150mgの量で組成物中に存在する。
【0080】
一部の実施形態では、徐放性送達システムは、約30mg、約60mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約112mg、約115mg、約117mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約225mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約300mg、約320mg、約340mg、約360mg、約380mg、約400mg、または約420mgの量で組成物中に存在する。別の実施形態では、徐放性送達システムは、約112mgの量で組成物中に存在する。
【0081】
組成物中のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの徐放性送達システムの比は概して、約4:1~約1:25である。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの徐放性送達システムに対する比は概して約2.5:1~約1:4である。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する比は概して、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、約2:1~約1:2、約1:1~約1:5、約1:1~約1:4、約1:1~約1:3、約1:1~約1.2、および約1:2~約1:3である。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの徐放性送達システムに対する比は、約1:1、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:4、または約1:5である。
【0082】
一つの実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、徐放性送達システム中に約5重量%~約80重量%の量で存在する。少なくとも一つの架橋剤は、約0.5重量%~約80重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、徐放性送達システム中に約20重量%~約80重量%の量で存在する。別の実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、徐放性送達システム中に約8重量%~約31重量%の量で存在する。少なくとも一つの架橋剤は、約12重量%~約47重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、徐放性送達システム中に約20重量%~約78重量%の量で存在する。別の実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、徐放性送達システム中に約10重量%~約20重量%の量で存在する。少なくとも一つの架橋剤は、約15重量%~約25重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、徐放性送達システム中に約50重量%~約85重量%の量で存在する。一部の実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約22重量%、約24重量%、約26重量%、約28重量%、約30重量%、約32重量%、約34重量%、または約36重量%の量で徐放性層送達システム中に存在する。少なくとも一つの架橋剤は、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約22重量%、約24重量%、約26重量%、約28重量%、約30重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、または約35重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。
【0083】
一部の実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の量で徐放性層送達システム中に存在する。少なくとも一つの架橋剤は、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、または約22重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。一つの実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、徐放性送達システム中に約8重量%、約12重量%、または約20重量%の量で存在する。少なくとも一つの架橋剤は、約12重量%、約18重量%、または約30重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、徐放性送達システム中に約40重量%、約60重量%、または約70重量%の量で存在する。
【0084】
一つの実施形態では、ナルブフィンは、当分野で公知の任意の薬学的に許容可能な塩の形態である。例示的な薬学的に許容可能な塩には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、パモ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリル硫酸、ナフタレンスルホン酸、リノール酸、リノレン酸、およびこれに類するものが含まれるがこれらに限定されない。一つ実施形態では、ナルブフィンの塩酸塩を含む。
【0085】
徐放性送達システムは、少なくとも一つの親水性化合物を含む。親水性化合物は、液体への暴露に伴いナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを持続的な速度で放出するゲルマトリクスを形成することが好ましい。ゲルマトリックスからのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはそのエステルの放出速度は、ゲルマトリクスの構成要素と消化管内の水相との間の薬物の分配係数に依存する。ナルブフィンの親水性化合物に対する重量比は概して、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、および約2:1~約1:2の範囲である。一部の実施形態では、ナルブフィンの親水性化合物に対する重量比は、約10:1~約1:1、約10:1~約2:1、約9:1~約1:1、約8:1~約1:1、約7:1~約1:1、約6:1~約1:1、約5:1~約1:1、約4:1~約1:1、約3:1~約1:1、および約2:1~約1:1の範囲である。一部の実施形態では、ナルブフィンの親水性化合物に対する重量比は、約6:1~約1:1、約5:1~約2:1、約4:1~約3:1、約4:1~約2:1、および約5:1~約2:1の範囲である。一部の実施形態では、ナルブフィンの親水性化合物に対する重量比は、約1:5、約1:4.5、約1:4.4、約1:4、約1:3.5、約1:3.3、約1:3、約1:2.5、約1:2、約1:1、および約1:1.5である。
【0086】
徐放性送達システムは概して、約5重量%~約80重量%の量で親水性化合物を含む。一部の実施形態では、徐放性送達システムは概して、約5重量%~約30重量%、約8重量%~約31重量%、約10重量%~約20重量%、約20重量%~約60重量%、または約40重量%~約60重量%の量の親水性化合物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約8重量%~約31重量%の量で親水性化合物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約10重量%~約20重量%の量で親水性化合物を含む。一部の実施形態では、徐放性送達システムは概して、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の量の親水性化合物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約12重量%の量で親水性化合物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約8重量%の量で親水性化合物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約20重量%の量で親水性化合物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約28重量%の量で親水性化合物を含む。
【0087】
親水性化合物は、親水性であることが当分野で公知の任意の薬学的に許容可能な化合物である。例示的な親水性化合物としては、薬学的に許容可能なゴム、セルロースエーテル、ポリビニルピロリドン、タンパク質由来化合物、およびそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。例示的なガムには、ヘテロポリサッカリドガムおよびホモポリサッカリドガム、例えばキサンタン、トラガカント、ペクチン、アカシア、カラヤ、アルギン酸塩、アガー、グアー、ヒドロキシプロピルグアー、カラギーナン、ローカストビーンガム、およびジェランガムなどが挙げられるがこれらに限定されない。例示的なセルロースエーテルとしては、ヒドロキシアルキルセルロースおよびカルボキシアルキルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの混合物を含む。一部の実施形態では、親水性化合物はゴムである。他の実施形態では、親水性化合物はヘテロポリサッカリドガムである。さらなる実施形態では、親水性化合物はキサンタンガムまたはその誘導体である。キサンタンガムの誘導体としては、例えば、脱アシル化キサンタンガム、キサンタンゴムのカルボキシメチルエステル、およびキサンタンガムのプロピレングリコールエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
別の態様では、徐放性送達システムは、少なくとも一つの架橋剤をさらに含む。一つの実施形態では、架橋剤は、親水性化合物を架橋させて、液体の存在下でゲルマトリクスを形成させることができる化合物である。本明細書で使用される場合、「液体」は、例えば胃腸液、およびインビトロ溶解試験に使用されるものなどの水溶液を含む。徐放性送達システムは概して、約0.5重量%~約80重量%の量で架橋剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは概して、約12重量%~約47重量%の量で架橋剤を含む。別の実施形態では、徐放性送達システムは概して、約20重量%~約30重量%の量で架橋剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは概して、約15重量%~約25重量%の量で架橋剤を含む。一部の実施形態では、少なくとも一つの架橋剤は、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、または約25重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約18重量%の量で架橋剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約12重量%の量で架橋剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約30重量%の量で架橋剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約42重量%の量で架橋剤を含む。
【0089】
例示的な架橋剤としては、ホモポリサッカリドが挙げられる。例示的なホモポリサッカリドとしては、ガラクトマンナンガム、例えばグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、およびローカストビーンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、架橋剤は、ローカストビーンガムまたはグアーガムである。他の実施形態では、架橋剤はアルギン酸誘導体または親水コロイドである。
【0090】
一部の実施形態では、徐放性送達システムが少なくとも一つの親水性化合物と少なくとも一つの架橋剤を含む場合、その親水性化合物の架橋剤に対する重量比は、約1:9~約9:1、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約1:3~約3:1、または約1:2~約2:1である。一部の実施形態では、親水性化合物の架橋剤に対する重量比は、約1:5、約1:4.5、約1:4、約1:3.5、約1:3、約1:2.5、約1:2、約1:1.5、および約1:1である。
【0091】
徐放性送達システムが少なくとも一つの親水性化合物と少なくとも一つの架橋剤を含む場合、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはエステルの、その少なくとも一つの親水性化合物とその少なくとも一つの架橋剤の総量に対する重量比は、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、または約2:1~約1:2である。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、その少なくとも一つの親水性化合物とその少なくとも一つの架橋剤の総計に対する重量比は、約4:1~約1:1、約4:1~約1:1.5、約3:1~約1:1、または約2:1~約1:1である。一つの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、その少なくとも一つの親水性化合物とその少なくとも一つの架橋剤の総計に対する比は、約5:1、約4:1 (すなわち1:0.25)、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1 (すなわち1:0.5)、約1.9:1、約1.8:1、約1.7:1、約1.6:1、約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:3、約1:4、および約1:5である。
【0092】
徐放性送達システムは、当分野で公知の一つ以上の医薬希釈剤をさらに含む。例示的な医薬希釈剤としては、単糖類、二糖類、多価アルコールおよびそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、医薬希釈剤としては例えば、デンプン、マンニトール、ラクトース、デキストロース、スクロース、微結晶セルロース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、およびこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、医薬希釈剤は水溶性である。水溶性の医薬希釈剤の非限定的な例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、またはそれらの混合物が挙げられる。医薬希釈剤の親水性化合物に対する重量比は概して、約1:9~約9:1、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約1:3~約3:1、または約1:2~約2:1である。一部の実施形態では、医薬希釈剤の親水性化合物に対する重量比は概して、約9:1~約1:1.5である。一部の実施形態では、医薬希釈剤の親水性化合物に対する重量比は、約9:1、約8.75:1、約8.5:1、約8.25:1、約8:1、約7.5:1、約7:1、約6.5:1、約6:1、約5.5:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.5:1、または約1:1である。
【0093】
徐放性送達システムは概して、約20%~約80%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約40%~約60%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約20重量%~約70重量%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約50重量%~約85重量%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。一部の実施形態では、徐放性送達システムは、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約20重量%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約30重量%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約40重量%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約50重量%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約60重量%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約70重量%の量で一つ以上の医薬希釈剤を含む。
【0094】
さらなる態様では、徐放性送達システムは、一つ以上のカチオン性架橋化合物を含む。一部の実施形態では、一つ以上のカチオン性架橋化合物は、架橋剤の代わりに使用される。一部の実施形態では、一つ以上のカチオン性架橋化合物は、架橋剤に加えて使用される。一つの実施形態では、一つ以上のカチオン性架橋化合物は、親水性化合物を架橋結合させて、液体の存在下でゲルマトリクスを形成させるのに充分な量で使用される。一部の実施形態では、一つ以上のカチオン性架橋化合物は、約0.5重量%~約30重量%、約0.5重量%~約25重量%、約0.5重量%~約20重量%、約0.5重量%~約15重量%、約0.5重量%~約10重量%、または約0.5重量%~約5重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。一部の実施形態では、一つ以上のカチオン性架橋化合物は、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約6重量%~約14重量%、約7重量%~約13重量%、約8重量%~約12重量%、または約9重量%~約11重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。一部の実施形態では、一つ以上のカチオン性架橋化合物は、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。一つの実施形態では、カチオン性架橋化合物は、約10重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。
【0095】
例示的なカチオン性架橋化合物としては、一価金属カチオン、多価金属カチオン、および無機塩が挙げられるがこれらに限定されず、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、ホウ酸塩、臭化物、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、およびこれらの混合物が挙げられる。例えば、カチオン性架橋化合物としては、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化リチウム、リン酸三カリウム、ホウ酸ナトリウム、臭化カリウム、フッ化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、フッ化ナトリウム、またはそれらの混合物のうちの一つ以上が挙げられるがこれらに限定されない。
【0096】
徐放性送達システムが少なくとも一つの親水性化合物と少なくとも一つのカチオン性架橋化合物を含む場合、その親水性化合物のカチオン性架橋化合物に対する重量比は、約1:9~約9:1、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約1:3~約3:1、または約1:2~約2:1の範囲である。一つの実施形態では、親水性化合物のカチオン性架橋化合物に対する重量比は、約1:3~約3:1の範囲である。一部の実施形態では、親水性化合物のカチオン性架橋化合物に対する重量比は、約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.8:1、約1.6:1、約1.4:1、約1.2:1、約1:1、約1:1.25、約1:1.5、または約1:2である。一つの実施形態では、親水性化合物のカチオン性架橋化合物に対する重量比は、約1:1.25である。一つの実施形態では、親水性化合物のカチオン性架橋化合物に対する重量比は、約1.2:1である。一つの実施形態では、親水性化合物のカチオン性架橋化合物に対する重量比は、約2:1である。一つの実施形態では、親水性化合物のカチオン性架橋化合物に対する重量比は、約2.8:1である。
【0097】
一つの実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、徐放性送達システム中に約5重量%~約80重量%の量で存在する。少なくとも一つのカチオン性架橋剤は、約0.5重量%~約30重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、徐放性送達システム中に約20重量%~約80重量%の量で存在する。別の実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、徐放性送達システム中に約8重量%~約30重量%の量で存在する。少なくとも一つのカチオン性架橋剤は、約10重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、徐放性送達システム中に約20重量%~約70重量%の量で存在する。別の実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、徐放性送達システム中に約5重量%~約30重量%の量で存在する。少なくとも一つのカチオン性架橋剤は、約5重量%~約20重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、徐放性送達システム中に約20重量%~約85重量%の量で存在する。別の実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、徐放性送達システム中に約10重量%~約20重量%の量で存在する。少なくとも一つのカチオン性架橋剤は、約5重量%~約15重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、徐放性送達システム中に約50重量%~約85重量%の量で存在する。
【0098】
一部の実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約22重量%、約24重量%、約26重量%、約28重量%、または約30重量%の量で徐放性層送達システム中に存在する。少なくとも一つのカチオン性架橋剤は、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。一つの実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の量で徐放性層送達システム中に存在する。少なくとも一つのカチオン性架橋剤は、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。一つの実施形態では、少なくとも一つの親水性化合物は、徐放性送達システム中に約8重量%、約12重量%、または約20重量%の量で存在する。少なくとも一つのカチオン性架橋剤は、約10重量%、約12重量%、または約14重量%の量で徐放性送達システム中に存在する。そして少なくとも一つの医薬希釈剤は、徐放性送達システム中に約40重量%、約60重量%、または約70重量%の量で存在する。
【0099】
一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約0.5%~約80%のローカストビーンガム、約5%~約80%のキサンタンガム、約20%~約80%のマンニトール、および約0.5%~80%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約12%~約47%のローカストビーンガム、約8%~約31%のキサンタンガム、約20%~約78%のマンニトール、および約0.5%~25%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約15%~約25%のローカストビーンガム、約10%~約20%のキサンタンガム、約50%~約85%のマンニトール、および約5%~15%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約18%のローカストビーンガム、約12%のキサンタンガム、約60%のマンニトール、および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約12%のローカストビーンガム、約8%のキサンタンガム、約70%のマンニトール、および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約20%のローカストビーンガム、約30%のキサンタンガム、約40%のマンニトール、および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約30%のローカストビーンガム、約20%のキサンタンガム、約40%のマンニトール、および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約42%のローカストビーンガム、約28%のキサンタンガム、約20%のマンニトール、および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0100】
この徐放性システムの構成要素の二つの特性(例えば、少なくとも一つの親水性化合物と少なくとも一つの架橋剤、または少なくとも一つの親水性化合物と少なくとも一つのカチオン性架橋化合物)は、液体への暴露に伴いゲルマトリックスを形成し、化合物/剤の水和反応が素早く、そして高いゲル強度を持つゲルマトリクスを形成する能力がある。徐放性ゲルマトリックスを実現させるために必要なこれら二つの特性は、化合物の特定の組み合わせによって最大化される(例えば、少なくとも一つの親水性化合物と少なくとも一つの架橋剤。または少なくとも一つの親水性化合物と少なくとも一つのカチオン性架橋化合物)。例えば、親水性化合物(例えば、キサンタンガム)は、素早い水和反応をもたらす優れた水ウィッキング特性を有する。親水性化合物を硬いらせん状に並べられた構造に架橋することができる能力を持つ物質(例えば、架橋剤および/またはカチオン性架橋化合物)と親水性化合物の組み合わせにより相乗的に作用して、ゲルマトリックスの予測粘性(すなわち高いゲル強度)よりも高い粘性がもたらされる。
【0101】
一部の実施形態では、徐放性組成物は、一つ以上の湿潤剤(例えば、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化水素化ヒマシ油、ヒマシ油由来のポリエトキシ化脂肪酸、水素化ヒマシ油由来のポリエトキシ化脂肪酸)、一つ以上の潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムなど)、一つ以上の緩衝剤、一つ以上の着色剤、および/または他の従来成分とさらに混合される。
【0102】
一部の実施形態では、本方法に採用される組成物は、追加的な医薬賦形剤を含有してもよい。例えばある実施形態では、フマル酸を本明細書に記載の製剤に添加してもよい。
【0103】
他の実施形態では、例えばOpadry(登録商標)などの非機能性コーティングを本明細書に記載の組成物に添加してもよい。
【0104】
一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物は第二の親水性化合物をさらに含む。一部の実施形態では、第二の親水性化合物はセルロースエーテルである。一部の実施形態では、第二の親水性化合物は、ヒドロキシアルキルセルロースまたはカルボキシアルキルセルロースである。一部の実施形態では、第二の親水性化合物は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはそれらの混合物である。一部の実施形態では、第二の親水性化合物は、エチルセルロースまたはワックス(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、白ワックス、またはカルナウバろうが挙げられるがこれらに限定されない)である。第二の親水性化合物は、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、または12重量%~約18重量%の範囲の量で製剤中に存在する。一部の実施形態では、第二の親水性化合物は、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約30%、約35%、約40%、または約45%の量で製剤中に存在する。
【0105】
一部の実施形態では、第二の親水性化合物のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルに対する重量比は、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、約2:1~約1:2、約1:1~約1:3、または約1:1~約1:2の範囲である。一部の実施形態では、第二の親水性化合物のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルに対する重量比は、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、または約1:5である。
【0106】
一部の実施形態では、第二の親水性化合物の徐放性送達システムに対する重量比は、約10:1~約1:10、約8:1~約1:8、約6:1~約1:6、約4:1~約1:4、約2:1~約1:3、約1:1~約1:10、約1:1~約1:6、または約1:2~約1:6の範囲である。一部の実施形態では、第二の親水性化合物の徐放性送達システムに対する重量比は、約10:1、約8:1、約6:1、約4:1、約2:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。
【0107】
一部の実施形態では、約1mg~200mgのナルブフィン塩酸塩、および約10mg~約420mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤。これらの実施形態では、徐放性送達システムは、約12%~約42%のローカストビーンガム、約8.0%~約28%のキサンタンガム、約20%~約70%のマンニトール、および約5%~約20%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一部の実施形態では、本方法は、約5mg~約80mgのナルブフィン塩酸塩、および約80mg~約360mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤を採用してもよい。一部の実施形態では、本方法は、約50mg~約150mgのナルブフィン塩酸塩、および約100mg~約300mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤を採用してもよい。
【0108】
一部の実施形態では、本方法は、約15mgのナルブフィン塩酸塩、および約25mg~約225mg、例えば約195mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤を採用する。これらの実施形態では、徐放性送達システムは、約14%のローカストビーンガム、約9%のキサンタンガム、約47%のマンニトール、および約8%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0109】
一部の実施形態では、本方法は、約30mgのナルブフィン塩酸塩、および約25mg~約225mg、例えば約180mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤を採用する。これらの実施形態では、徐放性送達システムは、約18%のローカストビーンガム、約12%のキサンタンガム、約60%のマンニトール、および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0110】
一部の実施形態では、本方法は、約60mgのナルブフィン塩酸塩、および約25mg~約225mg、例えば約120mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤を採用する。これらの実施形態では、徐放性送達システムは、約10%のローカストビーンガム、約12%のキサンタンガム、約60%のマンニトール、および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一部の実施形態では、本方法は、約5mg~約80mgのナルブフィン塩酸塩、および約80mg~約360mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤を採用する。
【0111】
一部の実施形態では、本方法は、約120mgのナルブフィン塩酸塩、および約25mg~約250mg、例えば約240mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤を採用する。これらの実施形態では、徐放性送達システムは、約18%のローカストビーンガム、約12%のキサンタンガム、約60%のマンニトール、および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0112】
一部の実施形態では、本方法は、約30mgのナルブフィン塩酸塩、および約25mg~約350mg、例えば約270mgまたは約360mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤を採用する。これらの実施形態では、徐放性送達システムは、約18%のローカストビーンガム、約12%のキサンタンガム、約60%のマンニトール、および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0113】
一部の実施形態では、本方法は、約45~約60mgのナルブフィン塩酸塩、および約100mg~約200mgの徐放性送達システムを含む、経口徐放性固形投与製剤を採用する。これらの実施形態では、徐放性送達システムは、約15%~約25%のローカストビーンガム、約10%~約20%のキサンタンガム、約50%~約85%のマンニトール、および約5%~約15%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0114】
一部の実施形態では、本方法は、約30mgのナルブフィン塩酸塩、約32.4mgのローカストビーンガム、約21.6mgのキサンタンガム、約108mgのマンニトール、約18mgの硫酸カルシウム二水和物、約35mgのヒドロキシプロピルセルロース、および約1.9mgのステアリン酸マグネシウムを含む経口徐放性固形投与製剤を採用する。
【0115】
一部の実施形態では、本方法は、約60mgのナルブフィン塩酸塩、約21.6mgのローカストビーンガム、約14.4mgのキサンタンガム、約72mgのマンニトール、約12mgの硫酸カルシウム二水和物、約30mgのヒドロキシプロピルセルロース、および約1.6mgのステアリン酸マグネシウムを含む経口徐放性固形投与製剤を採用する。
【0116】
一部の実施形態では、本方法は、約120mgのナルブフィン塩酸塩、約43.2mgのローカストビーンガム、約28.8mgのキサンタンガム、約144mgのマンニトール、約24mgの硫酸カルシウム二水和物、約60mgのヒドロキシプロピルセルロース、および約3.2mgのステアリン酸マグネシウムを含む経口徐放性固形投与製剤を採用する。
【0117】
一部の実施形態では、本方法は、約180mgのナルブフィン塩酸塩、約64.8mgのローカストビーンガム、約43.2mgのキサンタンガム、約216mgのマンニトール、約36mgの硫酸カルシウム二水和物、約90mgのヒドロキシプロピルセルロース、約5mgのステアリン酸マグネシウム、および約25mgのフマル酸を含む経口徐放性固形投与製剤を採用する。
【0118】
一部の実施形態では、本方法は、約180mgのナルブフィン塩酸塩、約48.6mgのローカストビーンガム、約32.4mgのキサンタンガム、約162mgのマンニトール、約27mgの硫酸カルシウム二水和物、約60mgのヒドロキシプロピルセルロース、約4mgのステアリン酸マグネシウム、および約25mgのフマル酸を含む経口徐放性固形投与製剤を採用する。
【0119】
一部の実施形態では、本方法は、約30mgのナルブフィン塩酸塩、約32.4mgのローカストビーンガム、約21.6mgのキサンタンガム、約108mgのマンニトール、約18mgの硫酸カルシウム二水和物、約35mgのヒドロキシプロピルセルロース、約1.9mgのステアリン酸マグネシウム、および約7.4mgのOpadry II 白色を含む経口徐放性固形投与製剤を採用する。
【0120】
ナルブフィンの徐放性製剤は、経口投与可能な固形投与製剤である。口腔固形製剤の非限定的な例としては、錠剤、複数の顆粒を含むカプセル、舌下錠剤、粉末、顆粒、シロップ、および口腔内投与用の剤型またはデバイス(例えば、バッカルパッチ、バッカル剤など)が挙げられる。一部の実施形態では、錠剤は腸溶コーティングまたは親水性コーティングを有する。
【0121】
徐放性送達システムは、乾式造粒法または湿式造粒法によって調製される、その後にナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルが添加されるが、それら構成要素は凝集技術によって結び付けられ、許容可能な製品が生成され得る。湿式造粒法では、構成要素(例えば、親水性化合物、架橋剤、医薬希釈剤、カチオン性架橋化合物、疎水性ポリマーなど)を一緒に混合し、次いで一つ以上の液体(例えば、水、プロピレングリコール、グリセロール、アルコール)で湿らせて湿った塊を生成し、その後乾燥させる。次いで、乾燥した塊を従来的な装置で徐放性送達システムの顆粒に粉砕する。その後、徐放性送達システムは所望量でナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはエステル、および任意で一つ以上の湿潤剤、一つ以上の潤滑剤、一つ以上の緩衝剤、一つ以上の着色剤、一つ以上の第二の親水性化合物、または他の従来的な成分と混合され、顆粒状組成物が生成される。徐放性送達システムおよびナルブフィンは、例えば、高剪断ミキサーを用いて混合されてもよい。ナルブフィンは、徐放性送達システム中に細かく、および均一に分散されることが好ましい。錠剤の均一なバッチを製造するのに充分な量の顆粒状組成物は、一般的な圧縮圧力、すなわち約2,000~16,000psiで、従来的な製造規模の打錠機で錠剤化される。一部の実施形態では、混合物は、あるポイントまで圧縮され、そのポイントでは液体へ暴露されてもその後に水和されることは困難である。
【0122】
一部の実施形態では、ナルブフィン製剤は、乾燥造粒法または湿潤造粒法により調製される。徐放性送達システムの構成要素は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルとともに添加される。あるいは構成要素のすべてを凝集技術によって結合させて、許容可能な製品を生成してもよい。湿式造粒法では、ナルブフィンまたはその薬学的な塩、溶媒和物もしくはエステルと、構成要素(例えば、親水性化合物、架橋剤、医薬希釈剤、カチオン性架橋化合物、疎水性ポリマーなど)が一緒に混合され、その後に1種以上の液体(例えば水、プロピレングリコール、グリセロール、アルコール)で湿らせて、湿った塊を生成し、その後乾燥させる。次いで、乾燥した塊を従来的な装置で顆粒に粉砕する。任意で一つ以上の湿潤剤、一つ以上の潤滑剤、一つ以上の緩衝剤、一つ以上の着色剤、一つ以上の第二の親水性化合物、またはその他の従来的な成分も造粒に添加される。錠剤の均一なバッチを製造するのに充分な量の顆粒状組成物は、一般的な圧縮圧力、すなわち約2,000~16,000psiで、従来的な製造規模の打錠機で錠剤化される。一部の実施形態では、混合物は、あるポイントまで圧縮され、そのポイントでは液体へ暴露されてもその後に水和されることは困難である。
【0123】
顆粒状組成物の平均粒子サイズは、目方で約50μm~約400μmである。一部の実施形態では、目方での平均粒子サイズは約185μm~約265μmである。顆粒状組成物の平均密度は、約0.3g/mL~約0.8g/mLである。一部の実施形態では、平均密度は約0.5g/mL~約0.7g/mLである。造粒から形成された錠剤は概して約4Kp~約22Kpの硬度である。造粒の平均速度は、約25~約40g/秒である。
【0124】
一部の実施形態では、本方法は、多層固形剤型を採用してもよく、この剤型では各層が異なる速度でナルブフィン塩酸塩を放出するよう製剤化される。例えば一つの実施形態では、第二の層は持続放出層であり、治療上有効な血液レベルが長時間(例えば、約8~約12時間)にわたり維持されるように制御された速度でナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはエステルを放出するよう設計された徐放性送達システムと、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを含む。第一の層は即時放出層であり、第二の層の速度よりも速く、治療上有効な血液レベルに即時で到達する速度(例えば、約1~約2時間)でナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを放出するよう設計されたナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの製剤を含む。一部の実施形態では、第一の層は、徐放性送達システムを含む。一部の実施形態では、第一の層は、徐放性送達システムを含まない。
【0125】
一部の実施形態では、第二の層の第一の層に対する重量比は、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、約2:1~約1:2である。一つの実施形態において、第二の層の第一の層に対する重量比は、約5:1~約1:5である。さらなる実施形態において、第二の層の第一の層に対する重量比は、約1:1~約1:2である。一部の実施形態では、第二の層の第一の層に対する重量比は、約1:1、約1:1.2、約1:1.4、約1:1.6、約1:1.8、または約1:2である。一つの実施形態において、第二の層の第一の層に対する重量比は、約1:2である。一つの実施形態において、第二の層の第一の層に対する重量比は、約1:1.4である。一部の実施形態では、第二の層の第一の層に対する重量比は、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.5:1である。一つの実施形態において、第二の層の第一の層に対する重量比は、約2.5:1である。
【0126】
多層剤型の徐放性送達システムは、(i)少なくとも一つの親水性化合物、少なくとも一つの架橋剤、および少なくとも一つの医薬希釈剤、(ii)少なくとも一つの親水性化合物、少なくとも一つの架橋剤、少なくとも一つの医薬希釈剤、および第一の架橋剤とは異なる少なくとも一つのカチオン性架橋剤、または(iii)少なくとも一つの親水性化合物、少なくとも一つのカチオン性架橋化合物、および少なくとも一つの医薬希釈剤を含む。一部の実施形態では、第一の層が徐放性送達システムを含む場合、第一の層の徐放性送達システムは、第二の層の徐放性送達システムと同じ構成要素を含む(例えば、第一および第二の層は両方とも、上記の実施形態(i)~(iii)のうちの一つである)。他の実施形態では、第一の層の徐放性送達システムは、第二の層の徐放性送達システムとは異なる構成要素を含む(例えば、第一の層は上記の実施形態(i)であり、一方で第二の層は実施形態(iii)である)。いずれかの層の徐放性送達システムが、上記の実施形態(i)~(iii)のうちの一つであり得ることを認識されたい。さらに一部の実施形態では、第一の層は徐放性送達システムを含まないことを認識されたい。
【0127】
徐放性送達システムは概して約10mg~約420mgの範囲の量で第二の層(例えば持続放出層)に存在する。一部の実施形態では、徐放性送達システムは、約110mg~約200mgの範囲の量で第二の層に存在する。一部の実施形態では、徐放性送達システムは、約110mg~約150mgの範囲の量で第二の層に存在する。一部の実施形態では、徐放性送達システムは、約90mg~約150mgの範囲の量で第二の層に存在する。一部の実施形態では、徐放性送達システムは、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、または約200mgの量で第二の層に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約123mgの量で第二の層に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約101mgの量で第二の層に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約92mgの量で第二の層に存在する。別の実施形態では、徐放性送達システムは、約112.5mgの量で第二の層に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約135mgの量で第二の層に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約150mgの量で第二の層に存在する。
【0128】
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは概して、約15mg~約60mgの範囲の量で第二の層に存在する。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約30mg~約60mgの範囲の量で第二の層に存在する。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約45mg~約60mgの範囲の量で第二の層中に存在する。一つの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約15mgの量で第二の層に存在する。一つの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約30mgの量で第二の層に存在する。一つの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約45mgの量で第二の層に存在する。一つの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約15mg、約30mg、約60mg、約90mg、約120mg、または約180mgの量で第二の層に存在する。
【0129】
一部の実施形態では、第二の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する重量比は、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、または約2:1~約1:2である。一つの実施形態では、第二の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する重量比は、約1:2~約1:4である。一つの実施形態では、第二の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する重量比は、約1:1~約1:5である。一部の実施形態では、第二の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する重量比は、約1:1、約1:1.2、約1:1.4、約1:1.6、約1:1.8、約1:2、約1:2.5、約1:3、または約1:3.5である。一つの実施形態では、第二の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する重量比は、約1:2.5である。別の実施形態では、第二の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する重量比は、約1:3.3である。さらなる実施形態では、第二の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する重量比は、約1:3である。さらに別の実施形態では、第二の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する比は、約1:2である。
【0130】
徐放性送達システムが第一の層(例えば即時放出層)に存在する場合、徐放性送達システムは概して約0mg~約50mgの範囲の量で存在する。一部の実施形態では、徐放性送達システムは、約5mg~約25mgまたは約5mg~約15mgの範囲の量で第一の層に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約3mg~約9mgの量で第一の層に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約4mg~約6mgの量で第一の層に存在する。一部の実施形態では、徐放性送達システムは、約2mg、約4mg、約6mg、約8mg、約10mg、約12mg、約14mg、約15mg、約16mg、約18mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、または約50mgの量で第一の層に存在する。一つの実施形態では、徐放性送達システムは、約6mgの量で第一の層に存在する。
【0131】
一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは概して、約5mg~約180mgの範囲の量で第一の層(例えば即時放出層)に存在する。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約5mg~約25mg、または約10mg~約20mgの範囲の量で第一の層に存在する。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約5mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、または約50mgの量で第一の層に存在する。一つの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約15mg、約30mg、約60mg、約90mg、約120mg、または約180mgの量で第一の層に存在する。
【0132】
一部の実施形態では、第一の層が徐放性送達システムを含む場合、第一の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する比は、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、約2:1~約1:2である。一つの実施形態では、第一の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する比は、約2:1~約4:1である。一部の実施形態では、第一の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの徐放性送達システムに対する比は、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.5:1、または約1:1である。一つの実施形態では、第一の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する比は、約2.5:1である。別の実施形態では、第一の層における、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの、徐放性送達システムに対する比は、約3:1である。
【0133】
一部の実施形態では、多層剤形はさらに、医薬崩壊剤を含む。崩壊剤は、即時放出層からのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの溶解および吸収を促進する。医薬崩壊剤の非限定的な例としては、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸デンプン、クロスポビドン、および非修飾デンプンが挙げられる。一つの実施形態では、崩壊剤は、剤形の第一の層(すなわち、即時放出層)内にある。崩壊剤は概して、約1.5mg~約4.5mgの量で層中に存在する。一つの実施形態では、崩壊剤は約3mgの量で存在する。一つの実施形態では、崩壊剤は約2~10重量%の量で層中に存在する。一つの実施形態では、崩壊剤は約5重量%の量で層中に存在する。層が徐放性送達システムを含む場合、その徐放性送達システムの崩壊剤に対する重量比は約5:1~約1:5の範囲内である。一部の実施形態では、徐放性送達システムの崩壊剤に対する比は、約1:1~約3:1の範囲内である。他の実施形態では、徐放性送達システムの崩壊剤に対する比は、約2:1の範囲内である。
【0134】
一部の実施形態では、多層錠剤は、最初に即時放出層と持続放出層混合物を別個に調製することにより調製される。持続放出層は、上述のように調製される。次いで持続放出層の湿潤造粒を乾燥させ、適切なサイズまで粉砕する。ステアリン酸マグネシウムを添加し、粉砕された顆粒と混合する。即時放出層は、一つ以上の希釈剤(例えば、微結晶セルロース)と、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを最初に混合することによって調製される。その後、この混合物は任意で一つ以上の崩壊剤と混合される。この混合物は、ステアリン酸マグネシウムと混合される。最後に、即時放出層混合物と持続放出層混合物を、多層(例えば二層)錠剤へと圧縮する。
【0135】
ある実施形態では、親水性化合物(例えば、キサンタンガム)など、製剤の特定構成要素の化学的性質は、消化管の全長に沿ったナルブフィンの溶解度とpHの変化に対して当該構成要素が実質的に反応しない自己緩衝剤であるとみなされるような性質である。さらには当該構成要素の化学的性質は、例えばポリカーボフィルなどの特定の公知の粘膜付着性物質と類似していると考えられる。粘膜付着性は、口腔送達システムに対して望ましい。したがって徐放性製剤は、消化管内のムチンとゆるく相互作用することができ、これに伴って別の様式が提供され、一定速度のナルブフィン送達が実現する。
【0136】
上述の現象(粘膜付着性)は、徐放性製剤が消化管のムチンおよび液体と相互作用し、一定速度のナルブフィン送達を提供することができるメカニズムである。
【0137】
USP Procedure Drug Release General Chapter <711> Dissolution(参照によりその全体が本明細書に援用される)により測定された場合、本方法において採用される徐放性製剤は概して、1時間後には約15重量%~約50重量%のインビトロ溶解を示し、4時間後には約45重量%~約80重量%のインビトロ溶解を示し、または10時間後には少なくとも約80重量%のインビトロ溶解を示す。一部の実施形態では、徐放性製剤のインビトロおよびインビボの放出特性は、一つ以上の異なる不溶性化合物および/または水溶性化合物の混合物を使用して改変され、異なる可塑剤を使用して改変され、徐放フィルムの厚さを変化させることにより改変され、コーティング中に放出改変化合物をもたらすことを含むことにより改変され、および/またはコーティングを介した通路を提供することによって改変される。一部の実施形態では、溶解速度は、pH6.8、37℃、および15dpmでUSP III型/250mL装置を使用して決定される。一部の実施形態では、溶解速度は、37℃、および15dpmで、pHを変化させる(0~1時間ではpH1.2、1時間後にpH4.5、2時間後にpH6.8)中で実行されるUSP III型/250mL装置を使用して決定される。
【0138】
一部の実施形態では、徐放性製剤は、約6時間後にナルブフィンの約50重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、徐放性製剤は、約6時間後にナルブフィンの約75重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。他の実施形態では、徐放性製剤は、約6時間~約8時間後にナルブフィンの約75重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。さらなる実施形態では、徐放性製剤は、約12時間後にナルブフィンの約80重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。さらに他の実施形態では、徐放性製剤は、約12時間~約24時間後にナルブフィンの約80重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、徐放性製剤は、約8時間~約12時間後にナルブフィンの約80重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。さらに他の実施形態では、徐放性製剤は、約1時間後にナルブフィンの約15重量%~約75重量%のインビトロ溶解を有する。なおさらなる実施形態では、徐放性製剤は、約1時間後にナルブフィンの約50重量%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、徐放性製剤は、約1時間後にナルブフィンの約50重量%、約6時間~約8時間後にナルブフィンの約75重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、徐放性製剤は、約1時間後にナルブフィンの約50重量%、約8時間~約12時間後にナルブフィンの約75重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、徐放性製剤は、約1時間後にナルブフィンの約50重量%、約12時間~約24時間後にナルブフィンの約75重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、徐放性製剤は、約1時間後にナルブフィンの約50重量%、約12時間後にナルブフィンの約80重量%~約100重量%のインビトロ溶解を有する。
【0139】
錠剤が第一の持続放出層と第二の即時放出層を有する多層剤型である場合、その徐放製剤は、約1時間後にナルブフィンの約25重量%~約75重量%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、多層剤型は、約1時間後にナルブフィンの約25重量%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、多層剤型は、約1時間後にナルブフィンの約50重量%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、多層剤型は、約6~8時間後にナルブフィンの約75%~約100%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、多層剤型は、約8~12時間後にナルブフィンの約75%~約100%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、多層剤型は、約12~24時間後にナルブフィンの約75%~約100%のインビトロ溶解を有する。一部の実施形態では、多層剤型は、約12時間後にナルブフィンの約75%~約100%のインビトロ溶解を有する。
【0140】
一部の実施形態では、正常な腎機能または正常に機能しない(例えば、低減した)腎機能のいずれかを有する患者に経口投与された場合、本明細書に記載の徐放性製剤は以下のインビボ特性を示す:(a)ナルブフィンのピーク血漿レベルは、投与後、例えば尿毒症性掻痒症または腎機能障害を有する患者の場合には約4時間~約6時間以内、または例えば腎機能障害を有さない患者の場合には約3時間~約5時間以内に生じる、(b)約30分間の投与から約6時間以内の投与までのナルブフィンの鎮痒効果の発現、(c)ナルブフィンの鎮痒効果期間は、約2~約24時間である、および(d)相対的ナルブフィン生体利用効率は、ナルブフィンの経口投与水溶液と比較して約0.5、約1、約1.5、または約0.5~約1.5である。鎮痒効果の発現時間は、少なくとも投与と掻痒症の重症度に依存し得る。一部の実施形態では、ナルブフィンの鎮痒効果期間は少なくとも約8時間である。一部の実施形態では、ナルブフィンの鎮痒効果期間は少なくとも約9時間である。一部の実施形態では、ナルブフィンの鎮痒効果期間は少なくとも約10時間である。一部の実施形態では、ナルブフィンの鎮痒効果期間は少なくとも約11時間である。一部の実施形態では、ナルブフィンの鎮痒効果期間は少なくとも約12時間である。一部の実施形態では、ナルブフィンの鎮痒効果期間は、約6時間、8時間、10時間、12時間、15時間、または18時間である。一部の実施形態では、相対的ナルブフィン生体利用効率は、ナルブフィンの経口投与水溶液と比較して約0.94である。一部の実施形態では、相対的ナルブフィン生体利用効率は、ナルブフィンの経口投与水溶液と比較して約1.35である。
【0141】
一部の実施形態では、徐放性ナルブフィン製剤は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを含む経口単位剤型を提供する。経口剤型は、少なくとも約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間の期間にわたり鎮痒効果を提供する。一部の実施形態では、経口剤型は、約6~18時間、約8~16時間、約8~12時間、約8~約24時間、約12~約24時間、約18~約24時間、または約8~10時間の期間にわたり鎮痒効果を提供する。経口剤型は、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間の期間にわたり鎮痒効果を提供する。
【0142】
一つの実施形態では、経口剤型は鎮痒効果を提供するだけでなく、サイクル効果も解消する。例えば特定の治療期間後には痒み感覚はぶり返さない。
【0143】
一部の実施形態では、経口剤型は、一つ以上のピークと、その後に続くプラトー領域によって特徴付けられるナノブラインの血漿レベルを提供する。プラトー領域は、比較的一定したナルブフィン血漿レベルを有することが特徴である(例えば、ナルブフィン血漿レベルは時々刻々と一貫して増減しない)。一部の実施形態では、プラトー領域は、一定したナルブフィン平均血漿レベルことが特徴である。プラトー領域は、プラトー領域の後にある領域とは対照的であり、その領域ではナルブフィンの血漿レベルは概して時々刻々と減少する。一部の実施形態では、プラトー領域は少なくとも約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、または約12時間の期間を有する。一部の実施形態では、プラトー領域は約1時間~約12時間、約2時間~約10時間、約2時間~約8時間、約2時間~約7時間、または約4時間~約10時間、約4時間~約8時間、または約4時間~約6時間の期間を有する。一部の実施形態では、プラトー領域の各時点のナルブフィン血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの約75%~約125%の範囲である。一部の実施形態では、プラトー領域の各時点のナルブフィン血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの約80%~約120%の範囲である。一部の実施形態では、プラトー領域の各時点のナルブフィン血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの約85%~約115%の範囲である。一部の実施形態では、プラトー領域の各時点のナルブフィン血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの約90%~約110%の範囲である。
【0144】
一部の実施形態では、プラトー領域中に観察されたナルブフィンの最小血漿レベルは、プラトー領域のすべての時点に対する平均血漿レベルの約25%以下である。一部の実施形態では、プラトー領域中に観察されたナルブフィンの最小血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの下に、約20%以下である。一部の実施形態では、プラトー領域中に観察されたナルブフィンの最小血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの下に、約15%以下である。一部の実施形態では、プラトー領域中に観察されたナルブフィンの最小血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの約75%~約100%の範囲である。一部の実施形態では、プラトー領域中に観察されたナルブフィンの最小血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの約80%~約100%の範囲である。一部の実施形態では、プラトー領域中に観察されたナルブフィンの最小血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの約85%~約100%の範囲である。一部の実施形態では、プラトー領域中に観察されたナルブフィンの最小血漿レベルは、プラトー領域の平均血漿レベルの約80%~約95%の範囲である。
【0145】
併用療法
本明細書に記載される方法において、組成物が唯一の活性医薬成分または唯一の活性抗掻痒成分として投与され得るが、他の実施形態では、掻痒症に対して治療上有効であることが知られている、および/または抗掻痒成分の効果を阻害しないことが知られている一つ以上の成分と併用して使用されることもできる。
【0146】
例えば、一部の実施形態では、本方法は、一つ以上の鎮痒剤と併用してナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを用いることができる。一部の実施形態では、鎮痒剤、例えば、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルと併用される追加化合物には、抗ヒスタミン剤、抗炎症性コルチコステロイド、局所抗感染剤および抗真菌剤、抗菌剤、および抗ウイルス剤、細胞障害剤、ならびに抗刺激剤/鎮痛薬が含まれる。他の鎮痒剤には、抗鬱剤、ビタミンD、カッパアゴニスト、コールタールおよびソラレンなどの刺激剤、例えばオンダンセトロンなどの5-HT3アンタゴニスト、例えばシメチジンなどのH2受容体アンタゴニスト、例えばセチリジンなどのH1受容体アンタゴニスト、例えばタクロリムスなどの免疫調節剤、例えばシクロスポリンAなどの免疫抑制剤、μアンタゴニスト、カプサイシン、カンナビノイド、アマゾン熱帯雨林で見いだされた様々なクロトン種由来のラテックス抽出物(例えばZangrado(登録商標))、またはNk1アンタゴニストが挙げられる。一部の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、第二の抗掻痒剤と併用されて投与されない。たとえば一緒に製剤化され、または別個に投与されない。
【0147】
投薬
本発明は、それを必要とする患者に鎮痒剤、すなわちナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはエステルの有効量を投与することにより、掻痒症を治療する方法を提供する。有効量は、掻痒症状を排除または著しく減少させるために十分な量であり、またはそれらの症状を軽減する(例えば、治療前に存在した症状と比較して、例えば痒みなどの症状を減少させる)ために十分な量である。本方法に採用される製剤は徐放製剤中に鎮痒剤を組み込み、それにより当該製剤は、掻痒症治療に対し治療有効なナルブフィンの血漿レベルを提供する。
【0148】
本発明の一部の実施形態によると、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの投与は、統計的に有意な治療効果を提供する。一つの実施形態では、統計的に有意な治療効果は、米国、例えばFDA、またはその他の国における一つ以上の規制当局によって提供される一つ以上の標準または基準に基づいて決定される。別の実施形態では、規制当局が承認した臨床試験設定および/または手順から取得された結果に基づいて、統計的に有意な治療効果が決定される。
【0149】
一部の実施形態では、統計的に有意な治療効果は、少なくとも50、60、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000または2000人の患者集団に基づいて決定される。一部の実施形態では、統計的に有意な治療効果は、無作為化された二重盲検臨床試験設定から得られたデータに基づいて決定される。一部の実施形態では、統計的に有意な治療効果は、約0.05、0.04、0.03、0.02または0.01以下のp値のデータに基づいて決定される。一部の実施形態では、統計的に有意な治療効果は、95%、96%、97%、98%または99%以上の信頼区間のデータに基づいて決定される。一部の実施形態では、統計的に有意な治療効果は、本発明により提供される方法の第III相臨床試験の、例えば米国のFDAによる承認に基づいて決定される。
【0150】
一部の実施形態では、統計的に有意な治療効果は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを用いて、任意で標準治療を併せて治療された患者の無作為化二重盲検臨床試験により決定される。一部の実施形態では、統計的に有意な治療効果は無作為化臨床試験により決定され、当該試験は、主要有効性パラメーターとして数値評価スケール(NRS:Numerical Rating Scale)を、任意選択で掻痒症評価として一般的に受け入れられている任意の他の基準と組み合わせて使用する。
【0151】
一般的に、統計解析には、規制当局、例えば米国のFDAまたは欧州もしくは任意の他国により許可される任意の適切な方法が含まれうる。一部の実施形態では、統計解析には、非階層化分析、ログランク解析、例えば、カプランマイヤー、ヤコブソン-トルアックス(Jacobson-Truax)、グリルケン-ロード・ノビック(Gulliken-Lord-Novick)、エドワード・ナンナリー(Edwards-Nunnally)、ヘージマン-アリンリンデル(Hageman-Arrindel)、および階層型リニアモデリング(HLM:Hierarchical Linear Modeling)およびCox回帰分析が含まれる。
【0152】
本発明によると、鎮痒剤は、結節性痒疹の効果的な症状緩和を提供するために一日一回または二回ベースで投与される。一部の実施形態では、一日総用量は、約60mg、約90mg、約120mg、約180mg、約240mg、約360mg、または約480mgである。一部の実施形態では、鎮痒剤の一日総用量は、結節性痒疹の治療に対し、少なくとも一日当たり約180mgであってもよい。一部の実施形態では、鎮痒剤の一日総用量は、結節性痒疹の治療に対し、少なくとも一日当たり約360mgであってもよい。一部の実施形態では、鎮痒剤の一日総用量は、結節性痒疹の治療に対し、一日当たり約180mgであってもよい。一部の実施形態では、鎮痒剤の一日総用量は、結節性痒疹の治療に対し、一日当たり約360mgであってもよい。
【0153】
一部の実施形態では、結節性痒疹患者の痒みの実質的な減少をもたらすために、一日二回、約90mgの抗掻痒剤が選択される。一部の実施形態では、結節性痒疹患者の痒みの実質的な減少をもたらすために、一日一回、約180mgの抗掻痒剤が選択される。一部の実施形態では、結節性痒疹患者の痒みの実質的な減少をもたらすために、一日二回、約180mgの抗掻痒剤が選択される。一部の実施形態では、結節性痒疹患者の痒みの実質的な減少をもたらすために、一日一回、約360mgの抗掻痒剤が選択される。特定の実施形態では、結節性痒疹(PN)患者の慢性的な痒みの減少をもたらすために、一日二回、約180mgの抗掻痒剤が選択される。
【0154】
掻痒状態の患者の痒みの減少は、様々な方法によって決定されうる。一部の実施形態では、投薬レジメンの有効性は、例えば最も酷い痒みVASなどの掻痒症の視覚的アナログスケール(VAS:Pruritus Visual Analog Scale)試験を介して評価することによって決定することができる。一部の実施形態では、投薬レジメンの有効性は、最も酷い、または平均の痒み強度数値評価スケール(NRS)を介した評価を行うことによって決定することができる。さらにいくつかの他の実施形態では、投薬レジメンの有効性は、最も酷いまたは平均の痒み強度数値評価スケール(NRS)、MOS 睡眠スケール改訂スケール(MOS Sleep-R)、病院不安および鬱スケール(HADS:Hospital Anxiety and Depression Scale)、患者のグローバルインデックススケール(Patient Global index scale)、グローバル医師インデックススケール、患者利益インデックス-掻痒症バージョン(PBI-P:Patient Benefit Index-pruritus version)、痒疹活動度スコア(PAS:Prurigo Activity Score)、痒み、灼熱感および刺すような感覚の口頭式評価スケール(VRS)のスコア、痒みに関する生活の質(ItchyQoL)(Emory University;http://emoryott.technologypublisher.com/tech?title=ItchyQoL%3a_A_Pruritus-Specific_Quality_of_Life_Instrument)、ItchAppを介した患者のグローバル評価(PGA)、vPGA、皮膚科学的生活の質インデックス(DLQI)、アクチグラフィー(actigraphy)、神経線維密度、およびMOR/KOR密度を使用した夜間の掻きむしり行動、ベック鬱病インデックス、またはそれらの任意の組み合わせを介した評価を行うことにより決定されることができる。さらに別の実施形態では、投薬レジメンの有効性は、主要有効性エンドポイントとして最も酷いまたは平均の痒み強度NRSを、副次的有効性エンドポイントの例えばMOS 睡眠スケール改訂スケール(MOS Sleep-R)、病院不安および鬱スケール(HADS)、患者のグローバルインデックススケール、グローバル医師インデックススケール、患者利益インデックス-掻痒症バージョン(PBI-P)、痒疹活動度スコア(PAS)、痒み、灼熱感および刺すような感覚の口頭式評価スケール(VRS)スコア、痒みに関する生活の質(ItchyQoL)、ItchAppを介した患者のグローバル評価(PGA)、vPGA、皮膚科学的生活の質インデックス(DLQI)、アクチグラフィー、神経線維密度、およびMOR/KOR密度を使用した夜間の掻きむしり行動、ベック鬱病インデックス、またはそれらの任意の組み合わせなどと関連させて評価を行うことにより決定されることができる。
【0155】
本発明の一部の実施形態によると、抗掻痒剤の投与頻度、および1投与当たりの投与量は、掻痒症治療に対して治療効果をもたらすよう選択される。ある実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、少なくとも1週間、例えば約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約12週間、約18週間、約24週間、および約50週間、一日一回または一日二回ベースで投与される。ある実施形態では、少なくとも約90mgまたは約90mgのナルブフィン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルが、少なくとも一週間、一日一回または一日二回ベースで投与される。ある実施形態では、少なくとも約180mgまたは約180mgのナルブフィン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルが、少なくとも一週間、一日一回または一日二回ベースで投与される。ある実施形態では、少なくとも約360mgまたは約360mgのナルブフィン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルが、少なくとも一週間、一日一回または一日二回ベースで投与される。
【0156】
一部の実施形態では、治療後、患者は、最も酷いまたは平均の痒み強度数値評価スケール(NRS)の値において治療前と比較して少なくとも約30%の低下により特徴付けられる痒みの実質的な減少を経験する。一部の実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して約30%~約100%、例えば約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の範囲のNRS値の低下により特徴付けられる。
【0157】
一部の実施形態では、治療後、患者は、治療前と比較して痒みに関する生活の質(ItchyQoL)スケールの少なくとも約10%の改善によって特徴付けられるかゆみの実質的な減少を経験する。一部の実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して約10%~約100%の範囲、例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の痒みに関連した生活の質(ItchyQoL)スケールにおける改善を特徴とする。
【0158】
一部の実施形態では、治療の後に、治療前と比較して、MOS睡眠スケール改訂(MOS Sleep-R:MOS Sleep Scale-Revised)スケール、または睡眠障害、いびき、息切れもしくは頭痛、眠気、睡眠の質、または不眠症指標I(Sleep Problems Index I)もしくは不眠症指標IIの各サブスケール解析のいずれかにおいて、少なくとも約20%の改善を特徴とする痒みの実質的な減少を経験する。一部の実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して、MOS睡眠スケール改訂(MOS Sleep-R)スケールにおける改善、または約10%~約100%の範囲、例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の各サブスケールのいずれかにおける改善を特徴とする。
【0159】
一部の実施形態では、患者は治療の後、治療前と比較して病院不安および鬱病スケール(HADS)の睡眠スケールの少なくとも約10%の改善を特徴とする痒みの実質的な減少を経験する。一部の実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して約10%~約100%の範囲、例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の病院不安および鬱病スケール(HADS)における改善を特徴とする。
【0160】
一部の実施形態では、治療後、患者は、治療前と比較して痒み、灼熱感および/または刺すような感覚の口頭式評価スケール(VRS)スコアの少なくとも約10%の改善によって特徴付けられる、痒み、灼熱感、および/または刺すような感覚の実質的な減少を経験する。一部の実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して約10%~約100%の範囲、例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の痒み、灼熱感および/または刺すような感覚の口頭式評価スケール(VRS)スコアにおける改善を特徴とする。
【0161】
一部の実施形態では、患者は治療の後、治療前と比較して少なくとも患者利益インデックス-掻痒症バージョン(PBI-P:Patient Benefit Index-pruritus version)スケールの少なくとも約10%の改善を特徴とする痒みの実質的な減少を経験する。一部の実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して約10%~約100%の範囲、例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の患者利益インデックス-掻痒症バージョン(PBI-P)の改善を特徴とする。
【0162】
一部の実施形態では、患者は治療の後、痒疹活動度スコア(PAS)の少なくとも1カテゴリー/ステージの改善により特徴付けられる痒みの実質的な減少を経験する。特定の実施形態では、治療後、患者は、痒疹病変の数、表皮剥脱/痂皮を伴う痒疹病変、および/または治癒した痒疹病変の痒疹活動度スコア(PAS)ドメインにおいて少なくとも1カテゴリー/ステージの改善をもたらす痒みの減少を経験する。PASは、皮膚検査に関連する7つの定性的および定量的測定からなる。代表的な身体部分における病変部位のタイプ、数、分布、罹患身体部分、および定量的な数が文書化される。最大病変および最も代表的な病変は、高さおよび面積の測定結果の文書化でもってモニタリングされる。痒疹病変の活動度は、それらのステージ(0~4)に基づく割合として記録される。一部の実施形態では、身体上の病変部位の数の測定結果は以下の四つの数値的カテゴリーを有する:0、1~19、20~100および>100。一部の実施形態では、表皮剥脱/痂皮を伴う痒疹病変は、以下の五つのカテゴリーを有する:ステージ4(76%~100%)、ステージ3(51%~75%)、ステージ2(26%~50%)、ステージ1(1~25%)およびステージ0(0%)。一部の実施形態では、治癒した痒疹病変は、以下の五つのカテゴリーを有する:ステージ4(0~24%)、ステージ3(25~49%)、ステージ2(50~74%)、ステージ1(75%~99%)、ステージ0(100%)。
【0163】
一部の実施形態では、鎮痒剤の一日用量は、一日一回または二回の投与であり、その後、患者が掻痒状態からの満足のいく改善を経験するまで漸増される。一日用量は、約5mg~約360mg(例えば、約15mg、約30mg、または約60mg)の範囲の増分で漸増されてもよい。一日用量は、一つ以上の工程で漸増されてもよい。一日の投薬量は、一回の一日投薬量を増加させることにより漸増されてもよく、または一日二回の投薬レジメンの各用量を増加させることにより漸増されてもよい。投薬量は段階的であり、複数の漸増工程がある場合、同じであるか、または異なっていてもよい。
【0164】
一部の実施形態では、漸増は、一日一回または二回の約15mg、約30mgまたは約60mgの鎮痒剤で開始され得る。ある実施形態では、用量は、1~4日ごとに30mgの増分で調整されることができる。患者は、約7日~約30日(例えば、約12日~約20日)にわたり、適切な痒みの軽減がもたらされ、有害反応を最小限に抑える用量まで自己で漸増させることができる。一部の実施形態では、漸増は、患者に定常状態が得られるまで少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、または5週間実施される。
【0165】
ある実施形態では、患者は、最初に15mg、30mgまたは60mgの錠剤で提供され、自己で漸増し、一日一回または二回、最大で約60mg、約90mg、約120mg、約180mg、約240mg、約360mg、または約480mgとなるまで提供されてもよい。一部の実施形態では、例えば結節性痒疹の患者に対して、漸増用量は約15mgまたは約30mgで開始され、次いで徐々に約90mgまたは180mgを一日二回まで増加される。別の実施形態では、例えば結節性痒疹の患者に対して、漸増用量は約15mgまたは約30mgで開始され、次いで徐々に約180mgまたは360mgを一日一回まで増加される。
【0166】
特定の実施形態では、鎮痒剤はナルブフィンであり、以下の表に提示される投薬スケジュールに従って二週間の漸増が行われる。
【0167】
本発明の一部の実施形態によると、本発明の方法は、結節性痒疹の治療に関し、ナルブフィンの治療上有効な血漿レベルを提供する。ナルブフィンの血漿レベルは、例えば定常状態の血漿レベル、AUC、CmaxおよびCminなどの当分野の当業者に公知の薬物動態パラメーターを使用して表現されうる。
【0168】
一部の実施形態では、本方法は、一つ以上の統計的に有意な治療効果と相関するナルブフィンの定常状態血漿レベルを提供する。ある実施形態では、本発明の方法により提供される治療上有効なナルブフィンの定常状態血漿レベルは、約10ng/mL~約80ng/mLであり、約20ng/mL、約25ng/mL、約30ng/mL、約35ng/mL、約40ng/mL、約45ng/mL、約50ng/mL、約55ng/mL、約60ng/mL、約65ng/mL、約70ng/mL、約75ng/mLおよび約80ng/mLの範囲であり、その間のすべての範囲を含む。ある実施形態では、ナルブフィンの治療有効定常状態血漿レベルは、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの一日用量を投与することにより提供され、約360mgである。さらなる実施形態では、ナルブフィンの治療上有効な定常状態血漿レベルは、約180mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを一日二回投与することにより提供される。
【0169】
一部の実施形態では、本方法は、一つ以上の統計的に有意な治療効果と相関するナルブフィンの平均定常状態AUC0~24時間(ng*時/mLを単位として表される)レベルを提供する。ある実施形態では、本発明により提供されるナルブフィンの治療上有効な平均定常状態AUC0~24時間レベルは、約200ng*時/mL~約1600ng*時/mLの範囲であり、約300ng*時/mL、約400ng*時/mL、約500ng*時/mL、約600ng*時/mL、約700ng*時/mL、約800ng*時/mL、約900ng*時/mL、約1000ng*時/mL、約1100ng*時/mL、約1200ng*時/mL、約1300ng*時/mL、約1400ng*時/mL、および約1500ng*時/mLを含み、その間のすべての範囲を含む。ある実施形態では、ナルブフィンの治療上有効な平均定常状態AUC0~24時間レベルは、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの一日用量を投与することにより提供され、約360mgである。さらなる実施形態では、ナルブフィンの治療上有効な平均定常状態AUC0~24時間レベルは、約180mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを一日二回投与することにより提供される。
【0170】
特定の実施形態では、抗掻痒剤はナルブフィンであり、代謝産物は、グルクロニド(フェノール環およびシクロヘキサン環上にある可能性が最も高い)、二つのヒドロキシル化ナルブフィン代謝物(シクロブタン環上)および三つのケトン(シクロブタン環のヒドロキシル化、続いてカルボニルへの酸化またはシクロブタン環の開環)を含む。一部の実施形態では、ナルブフィン代謝産物は、ナルブフィン3-グルクロニドまたは6-グルクロニドを含む。一部のその他の実施形態では、ナルブフィン代謝産物は、三重ヒドロキシル化ナルブフィン、モノヒドロキシル化ナルブフィン、またはモノグルクロニド化ナルブフィンまたはそれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、抗掻痒剤の一つ以上の代謝産物は、検出可能な抗掻痒活性を持たない。他の実施形態では、抗掻痒剤の一つ以上の代謝産物は、抗掻痒活性を呈する。
【0171】
抗掻痒剤の一つ以上の代謝産物が抗掻痒活性を呈する実施形態では、抗掻痒剤の投薬レジメンは、鎮痒活性を呈する一つ以上の代謝産物のクリアランス速度に応じて上述のように調節および/または漸増されてもよい。そのような鎮痒剤の投薬量調節および/または投薬量漸増は、鎮痒剤および/または同じく鎮痒活性を呈し得る一つ以上の代謝産物いずれかの蓄積を防ぎ、本鎮痒剤で治療された患者における毒性効果を回避することができる。
【0172】
一部の実施形態では、抗掻痒剤は完全に代謝される(例えば、約100%代謝される)。他の実施形態では、抗掻痒剤は完全には代謝されない(例えば、約100%未満代謝される)。例えば一部の実施形態では、抗掻痒剤は、約100%代謝される、約95%代謝される、約90%代謝される、約85%代謝される、約80%代謝される、約75%代謝される、約70%代謝される、約65%代謝される、約60%代謝される、約55%代謝される、約50%代謝される、約45%代謝される、約40%代謝される、約35%代謝される、約25%代謝される、約20%代謝される、約15%代謝される、約10%代謝される、約5%代謝される、約1%代謝される、または約0%代謝される。ある実施形態では、透析可能な剤の量は、例えば、抗掻痒剤またはその一つ以上の代謝産物の血漿レベルなど、蓄積レベルにより測定またはモニタリングされることができる。
【0173】
本明細書に記載される実施形態は、本発明の解説であると理解され、限定として解釈されるべきではない。反対に、本開示は、添付の請求項によって具体化される代替物と均等物を包含する。本明細書に開示される各参照文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0174】
以下の非限定的な例は、本発明の様々な態様を解説する。
【実施例0175】
実施例1
30mg、60mgまたは180mgの持続放出性(ER)ナルブフィン錠剤を以下のように調製した:ナルブフィンHC1、マンニトール、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよび硫酸カルシウム二水和物を高剪断ミキサーに加え、低速で混合物を乾燥させた。顆粒化溶液(注射用水または精製水)を、低速でミキサーに導入した。湿潤造粒法により高速で顆粒化し、流動床プロセッサーで乾燥させた。乾燥した顆粒を粉砕し、従来的なミルを使用してサイズ調整した。粉砕された造粒を拡散(タンブル)ミキサーに移した。ヒドロキシプロピルセルロースと、該当する場合にはフマル酸(180mg製剤のみ)を拡散ミキサーに加え、混合した。その後、ステアリン酸マグネシウムを拡散ミキサーに加え、混合した。回転錠剤プレスを使用して、最終混合物を圧縮した。錠剤は、非機能性Opadry白色コーティングで被覆されてもよい。
【0176】
【0177】
錠剤を非機能性コートで被覆した(表2)。
【0178】
(表2)ナルブフィンHCl ER錠剤、30mg、60mg、または180mgの組成
【0179】
実施例2
この臨床研究は、2重盲検プラセボ対照試験であり、結節性痒疹患者は、90mgのナルブフィンER錠剤の一日二回(BID)、ナルブフィンHCl ER錠剤の180mgBID、またはプラセボ錠剤BIDの標的用量に対し、1:1:1の比率で無作為化された。非鎮静性レスキュー抗ヒスタミン薬の使用(非第一世代H1-抗ヒスタミン剤[Simons FE.Advances in H1-antihistamines.N Engl J Med.2004;351(21):2203-17])の使用が本試験で許可されたが、その使用は記録された。皮膚軟化剤の洗浄は、ローションに含まれる活性物質(例えばメントールまたは尿素など)がない場合に、衛生目的で許可された。米国または欧州において結節性痒疹に対し承認された治療法が存在し無いため、または能動的制御としての役割を果たし得る確立された標準治療が無いために、プラセボ対照剤が選択された。
【0180】
主要目的は、最も酷い痒み強度数値評価スケール(NRS、0[痒み無し]~10[想定される中で最も酷い痒み];範囲0~10;0で「痒み無し」、4~6で「中等度の痒み」、そして10で「想定される中で最も酷い痒み」を指す)を使用して、7日間平均の一日当たりの最も酷い痒み(すなわち最も重度)強度に対する、ナルブフィンHCl ER錠剤の二つの用量の効果(
図1)、ならびに安全性と忍容性を評価することであった。本研究は4か所の北米のサイトと、4か所の欧州のサイトで行われた。スポンサーは、本試験の実施を監督し、独立非盲検データ安全性監視委員会は、試験実施中、およそ月に一回、安全性データをレビューした。
【0181】
参加者
適格とされるためには、患者は結節性痒疹に罹患する必要があった。患者は全身性のPNを有する必要があった。そして患者は、連続した7日間にわたり毎日、NRSを基にした最も酷い痒みの記録を行う必要があり、少なくとも5回の測定結果が記録されなければならなかった。測定結果の平均値は、5以上である必要があった。
対象基準
本試験の対象として適格であるために、患者は以下のすべての基準を満たす必要があった:
1)PN(定義:慢性掻痒に起因する掻痒性結節および/または丘疹が存在する。すなわち掻痒症とPNが無作為化前の少なくとも6週間、活動的に存在していた)に罹患する個体。
2) 同意時に年齢が18歳以上であること。
3)二つの異なる解剖学的領域を含むPN病変として規定される全身性のPN。例えばいずれか2本の手足。または1本の手足と身体のいくつかの体軸部分。さらに患者は、末梢神経系の重複が無い2か所の明確に異なる解剖学的領域を含む1か所の体軸病変でも適格とされた。たとえば頭蓋部分と、胴体部分を含む病変など。本試験の目的に対し、体軸部分は、身体の任意の付属器官ではない部分として定義された。
4)毎日のe-ダイアリーを介して来院2の前の連続する7日間にわたり毎日記録された数値評価スケールを基にした最も酷い痒み(すなわち最も重度)は、少なくとも5回の計測結果が記録された。測定結果の平均値は、5以上である必要があった。注:計算で使用された最後のNRSスコアは、来院2で収集され得た。
5)以下の避妊の要件を遵守することに同意する:
妊娠の可能性がある女性患者は、一つの追加的方法(例えば少なくとも1カ月間、適切な場所に避妊リング。少なくとも3カ月間、安定的なホルモン避妊。または卵管結索、Essure手順、または殺精子剤)に加えて避妊のための一つの障壁的方法(例えばコンドーム、子宮頚管キャップまたはペッサリー)を使用することを必要とした。殺精子剤に加えて障壁的方法を使用する女性患者に対しては、少なくともスクリーニングの14日間、その方法が使用されている必要があった。
禁欲状態であった女性患者は本試験に参加可能であった。しかし性的に活動的となった場合には、適切な避妊手段を使用することの必要性に関してカウンセリングを受けた。このカウンセリングは各試験訪問で行われ、原記録に文書化された。
6)試験の性質およびリスクについて十分に情報が伝えられ、スクリーニング前に書面によるインフォームドコンセントを提出した。
除外基準
患者が以下の基準のいずれかを満たしている場合、適格ではない:
1)以下の状態を起因とする慢性的掻痒症:局所的PN(罹患しているのが1か所の局所のみ。例えば1本の腕のみ)、アミロイド苔癬、または末梢分節神経障害性掻痒症(例えば錯感覚性背痛、腕橈骨掻痒症)。
2)治療の必要がある活動性皮膚病(例えばアトピー性皮膚炎、水疱性類天疱瘡)であり、結節性痒疹または他の皮膚科学的状態の診断へと展開されておらず、治験責任医師の意見においてNRSを評価する技能を混乱させる可能性があった。
3)寄生虫妄想症など治験責任医師の意見において深刻な精神疾患であり、被験薬剤の評価に干渉する可能性があった。
4)ヒト免疫不全ウイルス感染の治療を受けている患者。
5)ジルベール症候群の臨床診断により説明されないかぎり、スクリーニング時、正常範囲の上限の2.5倍超の血清ビリルビン。
6)スクリーニング時、正常範囲の上限の2倍超以上の血清肝アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ酵素。
7)スクリーニング時、推定糸球体濾過率が≦44mL/分/1.73m2。
8)以下の薬剤の使用:
局所抗ヒスタミン剤(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の2週間)
・局所カプサイシン(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の2週間)
・局所カルシネウリン阻害剤(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の2週間)
・局所抗生物質(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の2週間)
・局所ステロイド(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の2週間)
・殺菌作用のある入浴、および殺菌作用のあるクレンジングローション(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の2週間)
・全身抗ヒスタミン剤(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の2週間)
・抗けいれん薬物群(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の4週間)
・全身ステロイド剤(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の4週間)
・ナルトレキソンまたはナロキソン(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の4週間)
・シクロスポリンAおよび他の免疫抑制剤(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の4週間)
・抗鬱剤(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の4週間)
・ベンゾジアゼピン薬物群(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の2週間)
・神経弛緩薬物群(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の2週間)
注:除外された薬剤のウォッシュアウト中、クレンジングローションまたは純皮膚軟化剤(例えばメントール、尿素などの活性物質が無い皮膚軟化剤)を用いたレスキューが許可された。
9)紫外線療法(ソラレンに加えて、紫外線A光[PUVA]、紫外線A光、紫外線B光、エキシマ-)(スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の4週間)。
10)スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集の14日前以内にアヘン剤を投与された患者。
11)New York Heart Associationスケールを使用して評価したときに、クラス2以上のうっ血性心不全の病歴がある患者。
12)Canadian Cardiovascular Society評価スケールを使用して評価したときにグレード2以上の狭心症の病歴がある患者。
13)患者により報告された場合に、過去3ヶ月以内の心室頻拍症、心室性不整脈の病歴、突然死、心筋梗塞または急性冠症候群の家族歴。
14)臨床検査の正常下限を下回る血清カリウム。カリウム補充が処方され、血清カリウムレベルを繰り返してもよい。
15)スクリーニングECGで、QTcF間隔が>450ms。
16)任意のスクリーニング測定結果で心拍数が<50拍/分(bpm)。安静時の心拍数が50bpm未満の患者は、仰臥位で5分後に一回測定を繰り返され、その繰り返し測定中、心拍数がが50bpm未満のままであった場合、スクリーニング不合格とみなされた。
17)スクリーニング期間中、e-ダイアリー NRSおよびVRS収集前の14日以内に心室性不整脈のリスクと関連することが公知の医薬品を使用すること。
18)治験責任医師の意見において、本試験の実施に干渉し得る重大な医学的状態または他の因子。
19)スクリーニング期間中のe-ダイアリー NRSおよびVRS収集の4週間以内に、プラセボを含む、任意の被験薬剤への曝露。
20)悪性腫瘍が確認され、全身性の薬剤を用いて能動的治療を受けた患者(ホルモン治療は医療モニターにより承認された場合には試験登録が許容される可能性がある)。
21)薬物乱用の病歴で、治験責任医師によって決定される場合。
22)ナルブフィンまたはビヒクル成分に対する公知の過敏症またはアレルギー。
23)オピオイドに対する公知の薬物アレルギー。
24)妊娠中または授乳中の女性。
【0182】
結果
初期の主要エンドポイントは、ベースラインから、10週目/最後に観察されたベースライン後の値(LOV:last observed post-baseline value)までで、7日間平均の一日当たりのダイアリーで報告された最も酷い痒み強度NRSのスコアにおける少なくとも30%の減少閾値を実現した患者の割合であった。主要エンドポイントに対し、奏効者は、ベースラインから、10週目/最後に観察されたベースライン後の値(LOV)までで、7日間平均の一日当たりのダイアリーで報告された最も酷い痒み強度NRSのスコアにおける少なくとも30%の減少閾値を実現した患者であった。
【0183】
しかしながら本試験の完了と盲検解除の前に、重要な奏効の定義として、より実質的な50% NRSの減少基準を追加した。この基準に対し、奏効者は、ベースラインから、10週目/最後に観察されたベースライン後の値(LOV)までで、7日間平均の一日当たりのダイアリーで報告された最も酷い痒み強度NRSのスコアにおける少なくとも50%の減少閾値を実現した患者であった。
【0184】
副次的エンドポイントには以下が含まれた:
(1)ベースラインから、評価来院(10週目)までで、7日間平均の一日当たりのダイアリーで報告されたNRS痒み強度における少なくとも30%の減少を有する患者の割合。
(2)ベースラインから、評価来院(10週目)までで、7日間平均の一日当たりのダイアリーで報告されたNRS痒み強度における少なくとも50%の減少を有する患者の割合。
(3)ベースラインと比較した、評価来院(10週目)までの7日間平均の一日当たりの最も酷い痒み強度と、一日当たりの平均痒み強度における、週ごとの平均変化。
(4)ベースラインと比較した、評価来院(10週目)までの個々の7日間平均の一日当たりの痒み、灼熱感、および刺すような感覚の口頭式評価スケール(VRS)における週ごとの平均変化。
(5)ベースライン時および評価来院(10週目)中に記録された痒疹活動度スコア(PAS)により定量的に測定された結節性痒疹の皮膚病変。
【0185】
生活の質に関連した副次的エンドポイントには、痒みに関連した生活の質(Itchy QoLを使用)と、痒みに関連した睡眠障害(MOS Sleep Scale-Rを使用)における、一日目から評価期間中の変化が含まれた。病院不安および鬱病スケール(HADS)を、不安神経症および鬱病の一般的な評価基準として使用した。
【0186】
統計的方法
改変治療意図(MITT:modified intent-to-treat)群は、ベースライン算出NRSと、無作為化治療の間に少なくとも一回のベースライン後NRSを提出した、すべての無作為割当患者からなった。患者は無作為に割り当てられた治療に従い、分析された。
【0187】
主要エンドポイントの最も酷い痒みNRSは、割合の計算によって評価され、各ナルブフィン用量とプラセボの統計検定は、責任サイトを考慮した階層化カテゴリー法のCochran-Mantel-Haenszel検定を使用して行われた。具体的には、(サイトにより)階層化された、ナルブフィンHCl ER 180mg BIDとプラセボの比較に対して報告されたP値、およびナルブフィンHCl ER 90mg BIDとプラセボの比較に対して別個に報告されたP値の2x2の表の形態で、各ナルブフィン群とプラセボが比較された。より低いナルブフィン用量とプラセボのP値は、より高いナルブフィン用量とプラセボのP値が0.05のレベルで統計的に有意であった場合にのみ評価された。すべてのベースライン後来院のデータを使用して、モデルに適合させた。
【0188】
連続的な副次的エンドポイントの有効性解析は、共変量として各エンドポイントに対するベースライン値を含む、治療とサイトの主要効果を用いた混合モデル反復ANCOVAを使用して実施された。このモデルには、反復測定に対する非構造化共分散構造とともに、因子変数として時間(すなわち来院時)、および治療*期間(参照カテゴリーとしてのプラセボを有する)を含んだ。その他の副次的有効性エンドポイントについては、時間因子は、評価が取得された予定試験来院(来院3、来院4、および来院5)に対応した。すべてのベースライン後来院のデータを使用して、モデルに適合させた。
【0189】
別段の特定が無い限り、例えばバイタルサインなどの有効性および安全性の情報についての「ベースライン」は、被験薬剤の最初の投与前に取得された、最後の非欠測評価として規定された(反復評価および予定にない評価を含む)。e-ダイアリーで報告された転帰についてのベースライン(例えば最も酷い強度NRS)は、被験薬剤の最初の投与の7日前での平均奏効として導かれた。
【0190】
介入
治療の最初の2週間では、患者は割り当てられた標的用量に盲検的に強制的に漸増され、活動群の患者は90mg BID(NAL 90)の用量に達し、高用量群の患者は第二週で180mg BID (NAL 180)に達した。被験薬剤は、その週の各日に対してラベリングされた朝の用量と夜の用量を含むブリスターカードにおいて投与された。その後、患者はさらに8週間、被験薬剤の継続用量が続けられ、次いで被験薬剤を洗い流し、痒み強度と安全性についてさらに2週間追跡された。表3は、90mg BID群、180mg BID群、およびプラセボ群の投薬スケジュールを示す。
【0191】
【0192】
試験期間中、漸減は許可されなかったが、継続用量期間(3週目~10週目)の間に6回以上連続して投与し損ねた患者は、医療モニターの承認を受けて、元の用量に戻る前に3日間、朝の投与または夜の投与だけの盲目的再漸増で治療を再開した。患者は、抗ヒスタミン剤などの鎮痒薬のバックグランド投与を維持することが許可され、ならびにこれら薬剤の使用および治療指示が収集された。
【0193】
サンプルサイズの算出
1治療群当たり20名のサンプルサイズ(改変治療意図群)は90%の検定力に基づいており、α=0.05レベルでの両側有意差検定は、少なくとも80%の能動的治療奏効割合に対する、30%以下のプラセボ奏効割合を検出するのに充分であった。奏効は、ベースラインNRS測定値における少なくとも30%の減少と規定された。
【0194】
無作為化
無作為化は、インタラクティブウェブベースのコンピューターシステム(IWRS:interactive web-based computer system)により実施された。試験サイトによる適格性の確認が為された時点で、患者は以下の3治療群のうちの一つに1:1:1の比率で無作為に割り当てられた。(1)ナルブフィンHCl ER錠剤:90mg BID標的用量;(2)ナルブフィンHCl ER錠剤:180mg BID標的用量、および(3)プラセボ錠剤BID。
【0195】
結果
合計87名の患者がスクリーニングされ、63名の患者が無作為化され(ナルブフィン90mgの治療群に22名の患者、ナルブフィン180mg治療群に19名の患者、そしてプラセボ治療群に22名の患者)、合計62名の患者が本試験で治療された(
図2)。治療群全体で、患者のデモグラフィックおよびベースライン特性に顕著な差異はなかった(表4)。
【0196】
【0197】
主要有効性エンドポイントは、MITT群における、ナルブフィンの別個の各用量およびプラセボに対する、ベースラインから10週目/LOVまでの、7日間平均の一日当たりのダイアリーで報告された最も酷い痒み強度NRSスコアにおける少なくとも30%の減少閾値を達成した患者の割合(すなわち奏効者の割合)であった。表5に示す。LOV患者については、統計的有意差は観察されなかった。10週間の試験を完了した患者については、奏効者の割合における統計的有意差が、ナルブフィン180mg治療群とプラセボ治療群との間に記載された(P=0.026)。
【0198】
【0199】
MITT群における、ナルブフィンの別個の各用量およびプラセボに対する、ベースラインから10週目/LOVまでの、7日間平均の一日当たりのダイアリーで報告された最も酷い痒み強度NRSスコアにおける少なくとも50%の減少閾値を達成した患者の割合を表6に示す。LOV患者については、プラセボ群と比較してナルブフィン180mg群における改善傾向をこれらデータが示唆しているが、統計的有意差は観察されなかった。試験を完了した患者については、奏効者の割合における統計的有意差が、ナルブフィン180mg治療群とプラセボ治療群との間に記載されている(P=0.028)。
【0200】
【0201】
図3はすべてのMITT患者(左側で、N=62、左側)および完了患者(N=50、右側)に対する、最も酷い痒み数値評価スケールにおける、ベースラインから最後の観察時までの平均変化のグラフ図である。試験を完了した患者については、最も酷い痒み数値評価スケールにおいてベースラインから最後の観察時までの平均変化に統計的有意差がナルブフィン180mg治療群とプラセボ治療群との間に記載されている(P=0.025)。
【0202】
図4および
図5はそれぞれ、MITT群、および本試験を完了したMITT患者における、ベースラインからLOVおよび10週目までの7日間の最も酷い痒み強度の様々な減少の大きさの中での患者の分布を示す。ナルブフィン180mg用量による治療効果は、最も酷い痒み強度の30%以上の減少レベルで始まり、50%以上の閾値にまで拡がるのが観察でき、そこにおいてナルブフィン180m
g治療群とプラセボ治療群との間の差異が最も明白であった。ナルブフィン180mg治療群とプラセボ治療群との間で観察された奏効割合の差は、本試験を完了した患者に対する奏効閾値の全範囲にわたって、より大きく、より一貫していた。
【0203】
ナルブフィン180mg処置群とプラセボ治療群との間のベースライン平均痒み強度NRSスコアからの変化の差は、治療終了時に統計的に有意であった。(LS平均治療差:-1.45;95% CI:-2.764、-0.134;P=0.031)。
【0204】
平均ItchyQoL合計スコアは、すべての治療群において、ベースラインからの各時点で減少していた。平均ItchyQoL合計スコアの減少は、プラセボ治療群と比較してナルブフィン治療の両群のほうが大きかった。ベースラインから10週目までのItchyQoL合計スコアの平均(SD)減少は、ナルブフィン90mg治療群、ナルブフィン180mg治療群、およびプラセボ治療群のそれぞれにおいて-7.79(7.83)、-13.83(13.45)、および-5.45(10.91)であった。
図6は、ナルブフィン180mg治療群とプラセボ治療群の平均ItchyQoL合計スコアを示す。反復測定の混合モデル解析に基づくと、ナルブフィン180mg治療群とプラセボ治療群の間の差は、10週目で統計的に有意であった(LS平均:-8.75、p=0.022)。
【0205】
結論
本試験の主要有効性の結果から、漸増期間において薬剤に対して忍容であって治療を完了することができた対象に対する180mg BID用量でPN患者が鎮痒効果を得たことが示唆される。これは、奏効を、ベースラインから10週間の連続治療で最も酷い痒み強度NRSにおいて50%以上の減少を必要とすると規定したときに最も明白である。
【0206】
本試験を完了したMITT患者のItchyQoLスコアの合計は、プラセボと比較しナルブフィン180mg治療群に対し、10週目で臨床的に意義があり、統計的に有意な平均減少(p=0.022)を示した。したがって、ItchyQoLスコアの変化は、本試験を完了したナルブフィン180mg治療群のPN患者の生活の質における臨床的に意義のある変化を支持するものである。
【0207】
実施例3
この臨床試験は、実施例2に記載された無作為化二重盲検、3並行治療群、プラセボ対照用量範囲の試験の第II相非盲検延長試験(臨床試験TR03ext)であった。無作為化され、その後に実施例2の試験を完了した対象すべてが、本延長試験の参加に適格であった。
【0208】
主要エンドポイントは、本試験の5~50週目の間の治療中に発生したAE(TEAE)の全発生率と性質の記載である。探索的有効性エンドポイントには、治療期間の試験来院とベースラインNRSスコアによる、最も酷い痒みNRS、痒みVRS、およびItchyQoLのベースラインの患者報告転帰測定値からの変化が含まれた。また、PAS基準を使用して経時的な任意の皮膚病変の変化の可能性も評価した。
【0209】
(計画され、そして分析された)患者数
実施例2の試験に無作為化された63名の患者のうち、延長試験に登録された36名の対象は、本試験の治療期間に入り、ナルブフィンHCl ER錠剤投与を受け、本試験の安全性分析群の基礎となった。
【0210】
投薬
延長試験の患者は、忍容性に基づき30mg QD~180mg BIDの用量範囲にわたり漸増された。選択された用量範囲は実施例2の試験に基づいており、患者は30mg QDの用量から、30mg BID、60mg BID、90mg BID、120mg BIDまたは180mg BIDの用量のいずれかへ漸増された。提唱された最も高い用量は180mg BID(360mgの一日用量)であり、現在市販されている非経口投与用製品に対して推奨されている最大量の160mg IV(960mgの経口投与と同等)を用いた毎日の治療よりもずっと下回っていた。表7は、治療期間中の投与を示しており、これは特定の薬剤用量に対する患者の忍容性に依存する。
【0211】
(表7)
1 患者を漸増期間に入れる決定は、来院1aまたは1bの患者から取得された
最も酷い痒みNRSスコアでNRSが5以上であることに基づく。
2 漸増の決定は被験薬剤に対する忍容性に基づき行われるであろう。
3 忍容性のレベルが、患者および/または治験責任医師のいずれかにとって許容できない。
4 TV14前の治療週数は、観察期間で費やされた週数に応じて、患者の過去の観察期間に対して変化するであろう。
【0212】
試験デザイン
各患者に対する試験期間は最長52週間であり、被験薬剤に関しては最長50週間であった。延長試験は、治療期間(ウォッシュアウト安全性追跡期間がその後に続く)と観察期間からなった。直接薬剤治療期間に入った患者(NRS>5)または非薬剤観察期間に入った患者(NRS≦5)は、最初の来院(来院1a)で患者から報告されたNRSスコアに基づいた。最大12週の延長スクリーニング週間については、非薬剤観察期間の患者も、NRSがNRS>5に増加した場合には薬剤治療期間へと移行されることができた。治療期間に入るすべての患者は、試験開始直後または観察期間のある期間後に、30mgから、実施例2で試験された最高用量である180mg BIDまでの範囲の用量に漸増された。観察期間を完了し、そのNRSが12週間にわたりNRS>5を越えなかった患者は、スクリーニング不合格とみなされた。
【0213】
個々の任意の患者に対する合計試験期間は、最長52週間であった。治療期間中に直接入る患者については、薬剤の合計時間は50週間を超えなかった。観察期間から治療期間に入った患者については、二つの試験期間を併せて費やされた合計時間が50週間を越えなかった。薬物治療が行われたすべての患者は、投与期間の終了時に2週間のウォッシュアウトと安全性追跡期間を有した。
【0214】
観察期間の合計時間は12週間を超えなかった。これら12週の延長スクリーニング週間の後、治療期間の適格ではない対象は本試験からスクリーニング不合格とされた。
【0215】
三つのTR03延長試験期間を、表8に要約する。
【0216】
【0217】
【0218】
結果
表9は、最も酷い痒みNRSとVRSにおける、試験週ごとのベースラインからの平均減少を示す。最も酷い痒みの平均(SD)スコアと、痒みVRSの平均(SD)スコアは、試験群において時間とともに減少し続けた。
【0219】
【0220】
表10は、ベースラインから最後に観察された値までの、痒みの数値評価スコア(VRS)のカテゴリー変化による分布を示す。大部分の対象は、ベースラインから最後に観察された値までで、少なくとも1カテゴリーの改善を報告した。
【0221】
【0222】
表11は、ItchyQoLの合計スコアにおける、試験週ごとのベースラインからの平均減少を示す。非盲検試験群の平均ItchyQoL合計スコアは、ベースライン値から、50週間の薬剤治療期間を通じて各来院時で減少していた。
【0223】
【0224】
表12、表13および表14は、少なくとも6カ月間治療を受けた対象、少なくとも9カ月間治療を受けた対象、および本試験の50週間の治療を完了した対象それぞれの治癒病変PASデータを示す。治癒病変の活動度の状態は、以下の評価システムを使用したステージ(0~4)に基づいた割合として報告されている:ステージ0(100%治癒)、ステージ1(75%~99%治癒)、ステージ2(50%~74%治癒)、ステージ3(25%~49%治癒)、ステージ4(0~24%治癒)。したがってステージが高ければ、痒疹皮膚病変はより治癒されている。表12、表13および表14のデータは、多くの対象が、6カ月後(10/16;62.5%)、9カ月後(7/13;53.8%)そして12カ月後(6/12;50%)に、治癒病変の割合において少なくとも1カテゴリーの改善を示したことを示す(シフト表において改善された対象は太字で示されている)。
【0225】
(表12)少なくとも6ヶ月間治療を受けた対象の治癒病変のPASデータ
【0226】
(表13)少なくとも9ヶ月間治療を受けた対象の治癒病変のPASデータ
【0227】
(表14)50週間の治療を受けた対象の治癒病変のPASデータ
【0228】
表15、表16および表17は、少なくとも6カ月間治療を受けた対象、少なくとも9カ月間治療を受けた対象、および本試験の50週間の治療を完了した対象それぞれの表皮剥脱/痂皮病変のPASデータを示す。表皮剥脱/痂皮がある痒疹病変の状態は、以下の評価システムを使用したステージ(0~4)に基づいた割合として報告されている:ステージ0(表皮剥脱/痂皮は0%)、ステージ1(表皮剥脱/痂皮は1%~25%)、ステージ2(表皮剥脱/痂皮は26%~50%)、ステージ3(表皮剥脱/痂皮は51%~75%)、ステージ4(表皮剥脱/痂皮は76%~100%)。したがってステージが高ければ、痒疹皮膚病変はより重度である。表15、表16、および 表17のデータは、多くの対象が、6カ月後(13/16;81.2%)、9カ月後(9/13;69.2%)、および12カ月後(8/12;66.6%)のそれぞれに表皮剥脱/痂皮の割合において少なくとも1カテゴリーの改善(より低いステージ)を示したことを示す(シフト表において改善された対象は太字で示されている)。
【0229】
(表15)少なくとも6ヶ月間治療を受けた対象の表皮剥脱/痂皮のPASデータ
【0230】
(表16)少なくとも9ヶ月間治療を受けた対象の表皮剥脱/痂皮のPASデータ
【0231】
(表17)50週間の治療を受けた対象の表皮剥脱/痂皮のPASデータ
【0232】
図8Aは、ベースライン時の実施例2の患者の痒疹性病変を示し、
図8Bは、実施例3に記載される延長試験の50週目での同じ患者の治癒した痒疹性病変を示す(TR03ext)。
【0233】
結論
非盲検延長の長期間の最も酷い痒みNRSデータおよびVRSが表9に要約され、表5および表6に要約される元の二重盲検試験鎮痒効果の結果と一致している。この結論は、VRS非盲検データの結果(表10)により支持され、少なくとも6か月またはそれ以上被験薬剤で治療された場合に、少なくとも一つのカテゴリーの持続的な改善をすべての対象が報告したことを示す。ItchyQoL計器データも最も酷い痒みNRS所見の改善を支持している(表11)。
【0234】
表15、表16、および表17に示されるPAS表皮剥脱病変のデータと、表12、表13、および表14に示される治癒した痒疹病変データから、ナルブフィンHCl ER治療により多くの対象において痒み-掻きむしりサイクルが有益に変化し得たこと、それにより長期の治療期間(6カ月以上)にわたり痒疹病変の改善がもたらされたことの明白な臨床的証拠があることが示された。
【0235】
本発明によれば、次のいくつかの態様が得られる。
【0236】
(態様1)
結節性痒疹を治療するための抗掻痒剤であって、
当該抗掻痒剤は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むとともに、持続放出型経口剤として調剤され、
前記治療は、
当該抗掻痒剤を、前記結節性痒疹に罹患している患者に、用量が漸減しないように予め定められた投薬スケジュールに従って用量を漸増しながら投与する漸増投与工程と、
当該抗掻痒剤を継続して前記患者に、前記漸増投与工程の終了時点における最高一日用量に実質的に等しい一日用量で投与する維持投与工程と
を含み、
前記治療は、その治療後、前記患者の痒み強度の値がベースラインから少なくとも約30%低下するように行われる抗掻痒剤。
(態様2)
前記漸増投与工程は、約90mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する当該抗掻痒剤を前記患者に一日二回投与する工程を含む態様1に記載の抗掻痒剤。
(態様3)
前記漸増投与工程は、約180mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する当該抗掻痒剤を前記患者に一日一回投与する工程を含む態様1に記載の抗掻痒剤。
(態様4)
前記漸増投与工程は、約180mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する当該抗掻痒剤を前記患者に一日二回投与する工程を含む態様1に記載の抗掻痒剤。
(態様5)
前記漸増投与工程は、約360mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する抗掻痒剤を前記患者に一日一回投与する工程を含む態様1に記載の抗掻痒剤。
(態様6)
前記治療は、約8週間、10週間、12週間、24週間または50週間行われる態様1ないし5のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様7)
前記患者は、中等度または重度の結節性痒疹を有する態様1ないし6のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様8)
前記治療は、その治療の前に中等度または重度のベースラインの痒みを有する前記患者が、前記治療後に軽度の痒みを経験する態様1ないし7のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様9)
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、少なくとも一週間、当該抗掻痒剤の用量を漸増する工程を含む態様1に記載の抗掻痒剤。
(態様10)
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、約二週間、当該抗掻痒剤の用量を漸増する工程を含む態様1に記載の抗掻痒剤。
(態様11)
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、約7~30日間、当該抗掻痒剤の用量を漸増する工程を含む態様1に記載の抗掻痒剤。
(態様12)
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、約14~20日間、当該抗掻痒剤の用量を漸増する工程を含む態様1に記載の抗掻痒剤。
(態様13)
前記漸増投与工程は、定常状態が前記患者で達成されるまで、前記患者に当該抗掻痒剤を前記漸増された用量で投与する工程を含む態様10に記載の抗掻痒剤。
(態様14)
前記漸増投与工程は、前記患者においてナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩の90mgまたは180mgの有効量が達成されるまで、前記患者に当該抗掻痒剤を前記漸増された用量で投与する工程を含む態様10に記載の抗掻痒剤。
(態様15)
前記漸増投与工程は、前記患者に当該抗掻痒剤を一日一回または二回、約30mgの初回用量で投与する工程を含む態様10に記載の抗掻痒剤。
(態様16)
前記漸増投与工程は、前記患者に当該抗掻痒剤を約15mg~約60mgの範囲の増分で投与する工程を含む態様10に記載の抗掻痒剤。
(態様17)
前記漸増投与工程は、前記患者に当該抗掻痒剤を一日二回、それぞれ、AM(正午前)の投薬量とPM(正午後)の投薬量とで投与する工程を含み、
前記PMの投薬量は、前記AMの投薬量よりも多いかまたは前記AMの投薬量と同じである態様15に記載の抗掻痒剤。
(態様18)
前記治療は、その治療の後の有害事象の比率が、前記患者に同じ期間プラセボを投与した後の有害事象の比率と実質的に同じであるように行われる態様9ないし17のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様19)
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒み強度数値評価スケール(NRS)を用いて測定された値のうちの最悪値である最悪痒み強度がベースラインから少なくとも約30%低下することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様1ないし18のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様20)
前記痒みの減少は、前記最悪痒み強度がベースラインから少なくとも約40%低下することである態様19に記載の抗掻痒剤。
(態様21)
前記痒みの減少は、前記最悪痒み強度がベースラインから少なくとも約50%低下することである態様19に記載の抗掻痒剤。
(態様22)
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒み強度数値評価スケール(NRS)を用いて測定された値の平均値である平均痒み強度がベースラインから少なくとも約30%低下することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様1ないし21のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様23)
前記痒みの減少は、前記平均痒み強度がベースラインから少なくとも約40%低下することである態様22に記載の抗掻痒剤。
(態様24)
前記痒みの減少は、前記平均痒み強度がベースラインから少なくとも約50%低下することである態様22に記載の抗掻痒剤。
(態様25)
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒みに関する生活の質(ItchyQoL)スケールを用いて測定された値がベースラインから少なくとも約10%改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様1ないし24のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様26)
前記治療は、前記患者が、前記ItchyQoLのうちの症状サブスケールを用いて測定された値のうちの少なくとも約10%の改善により特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様25に記載の抗掻痒剤。
(態様27)
前記治療は、前記患者が、前記ItchyQoLのうちの機能サブスケールを用いて測定された値のうちの少なくとも約10%の改善により特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様25に記載の抗掻痒剤。
(態様28)
前記治療は、前記患者が、前記ItchyQoLのうちの感情サブスケールを用いて測定された値のうちの少なくとも約10%の改善により特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様25に記載の抗掻痒剤。
(態様29)
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒疹病変部の数、表皮剥脱/痂皮を伴う痒疹病変部の数、および/または治癒した痒疹病変部の数というドメインにおいて、痒疹活動度スコア(PAS)が少なくとも約1つのカテゴリー/ステージにおいて改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様1ないし28のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様30)
前記治療は、前記患者が、表皮剥脱または痂皮を伴う痒疹性病変部をステージ別に測定する痒疹活動度スコア(PAS)が少なくとも約1つのステージにおいて改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様29に記載の抗掻痒剤。
(態様31)
前記治療は、前記患者が、治癒した病変部をステージ別に測定する痒疹活動度スコア(PAS)が少なくとも約1つのステージにおいて改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様29に記載の抗掻痒剤。
(態様32)
前記治療は、前記患者が、痒疹病変部の数が少なくとも約1つのカテゴリーにおいて改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様29に記載の抗掻痒剤。
(態様33)
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒み、灼熱感、および/または刺すような感覚(stinging)の口頭式評価スケール(VRS)のスコアが少なくとも約10%改善することにより特徴付けられる痒みの減少を経験するように行われる態様1ないし32のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様34)
前記治療は、その治療の後、前記患者が、痒疹性病変部の治癒を経験するように行われる態様1ないし33のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様35)
前記痒疹性病変部が、結節、丘疹および斑からなる群から選択される態様34に記載の抗掻痒剤。
(態様36)
前記治療は、その治療の後、前記患者が、表皮剥脱/痂皮病変部の減少を経験するように行われる態様1ないし35のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様37)
前記治療は、その治療の後、前記患者が、病変部の総数の減少を経験するように行われる態様1~36のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様38)
前記治療の期間の長さおよび前記治療中に前記患者に投与される当該抗掻痒剤の一日用量は、前記治療の後、前記患者において、前記結節性痒疹に起因する痒みサイクルが実質的に解消し、それにより、痒み感覚のぶり返しが抑制されるように設定される態様1ないし37のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様39)
当該抗掻痒剤は、ナルブフィン塩酸塩、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物およびステアリン酸マグネシウムを含む製剤で投与される態様1ないし38のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様40)
前記治療は、約10~80ng/mLのナルブフィン定常状態血漿濃度を前記患者に提供するように行われる態様1ないし39のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様41)
前記定常状態血漿濃度は、約30~70ng/mLである態様40に記載の抗掻痒剤。
(態様42)
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩の一日用量は、約360mgである態様40に記載の抗掻痒剤。
(態様43)
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩の一日用量は、約360mgである態様41に記載の抗掻痒剤。
(態様44)
前記治療は、実質的な水利尿効果を生じさせないように行われる態様1ないし43のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様45)
前記治療は、さらに、少なくとも1つの追加的鎮痒薬を投与する工程を含む態様1ないし44のいずれかに記載の抗掻痒剤。
(態様46)
前記少なくとも1つの追加的鎮痒薬は、抗ヒスタミン剤およびコルチコステロイドからなる群から選択される態様45に記載の抗掻痒剤。
(態様47)
当該抗掻痒剤が前記患者に投与される用量は、前記漸増投与工程において、前記投薬スケジュールであって、
1日目:正午前の投薬量が 0mg、正午後の投薬量が 30mg、
2日目:正午前の投薬量が 0mg、正午後の投薬量が 30mg、
3日目:正午前の投薬量が 30mg、正午後の投薬量が 30mg、
4日目:正午前の投薬量が 30mg、正午後の投薬量が 30mg、
5日目:正午前の投薬量が 30mg、正午後の投薬量が 60mg、
6日目:正午前の投薬量が 60mg、正午後の投薬量が 60mg、
7日目:正午前の投薬量が 60mg、正午後の投薬量が 60mg、
8日目:正午前の投薬量が 60mg、正午後の投薬量が 90mg、
9日目:正午前の投薬量が 90mg、正午後の投薬量が 90mg、
10日目:正午前の投薬量が 90mg、正午後の投薬量が 90mg、
11日目:正午前の投薬量が 90mg、正午後の投薬量が120mg、
12日目:正午前の投薬量が120mg、正午後の投薬量が120mg、
13日目:正午前の投薬量が120mg、正午後の投薬量が120mg、および
14日目:正午前の投薬量が120mg、正午後の投薬量が180mg
というものに従って増量される態様1ないし46のいずれかに記載の抗掻痒剤。