(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191408
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】免疫刺激組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/54 20170101AFI20221220BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221220BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221220BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20221220BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221220BHJP
C07K 2/00 20060101ALI20221220BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221220BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20221220BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20221220BHJP
C12N 15/117 20100101ALN20221220BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K9/10
A61P37/02
A61K47/56
A61K39/00 G
A61P31/00
A61P35/00
C07K2/00
A61K47/60
A61K47/61
A61K39/39
C12N15/117 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165307
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2020099145の分割
【原出願日】2013-03-15
(31)【優先権主張番号】61/620,518
(32)【優先日】2012-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダレル ジェイ.・アーバイン
(72)【発明者】
【氏名】ハイペン・リウ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リンパ節へのカーゴの送達の増強のための脂質結合体を提供する。
【解決手段】脂質結合体は、代表的には、3個のドメイン:アルブミンに結合する親油性ドメイン、極性ブロックドメイン、およびカーゴ(例えば、分子アジュバントもしくは免疫刺激化合物(例えば、オリゴヌクレオチド)または抗原性ペプチド)を含む。上記カーゴに依存して、上記極性ブロックの長さおよび組成は、アルブミン結合、安定なミセル形成、もしくは細胞への入り込みに向かって平衡を押し進める目的に合わせて作られ得る。上記結合体は、被験体、例えば、癌もしくは感染症を有する被験体に投与されて、上記被験体において強い免疫応答を誘発もしくは増強し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性アルブミン結合結合体であって、
(a)脂質成分;
(b)任意の極性成分;および
(c)免疫調節化合物もしくは分子アジュバント;
を含み、
ここで該免疫調節化合物もしくは分子アジュバントは、該脂質に直接希有号されるか、またはリンカーを介して該脂質に結合され、
該結合体は、該脂質が生理学的条件下でアルブミンに結合するように十分可溶性であり、そして
複数の該結合体は、水性溶液中でミセルを自発的に形成し得る、
両親媒性アルブミン結合結合体。
【請求項2】
前記免疫調節化合物もしくは分子アジュバントは、前記脂質にリンカーを介して結合される、請求項1に記載の結合体。
【請求項3】
前記リンカーは、オリゴヌクレオチドリンカーである、請求項2に記載の結合体。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドリンカーは、「N」個連続したグアニンを含み、ここでNは、0~2の間である、請求項3に記載の結合体。
【請求項5】
構造L-5’-Gn-ON-3’を含み、ここで「L」は前記脂質であり、「G」は、グアニンであり、「n」は0~2であり、「ON」は、前記免疫刺激オリゴヌクレオチドである、請求項4に記載の結合体。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチド結合体は、インビボで被験体に投与される場合、前記免疫刺激オリゴヌクレオチド単独の投与と比較して、前記リンパ節での増大した蓄積を示す、請求項1~5のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項7】
前記脂質は、ジアシル脂質である、請求項1~6のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項8】
前記脂質のアシル鎖は、12~30個の炭化水素ユニットを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項9】
前記免疫刺激オリゴヌクレオチドは、パターン認識レセプターに結合し得る、請求項1~8のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項10】
前記免疫刺激オリゴヌクレオチドは、CpGを含む、請求項9に記載の結合体。
【請求項11】
前記免疫刺激オリゴヌクレオチドは、Toll様レセプターのリガンドである、請求項10に記載の結合体。
【請求項12】
前記免疫刺激オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート(PS)骨格を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドは、20個以上の核酸を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項14】
請求項1~13に記載の複数のオリゴヌクレオチド結合体を含む、ワクチンアジュバン
ト。
【請求項15】
脂質に結合体化された少なくとも3個連続したグアニンを含むリンカーに連結されている免疫刺激オリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド結合体であって、
ここで複数の該オリゴヌクレオチド結合体は、水性溶液中でミセルを自発的に形成し得、そして
該ミセルのうちの36%より多くが、20% ウシ胎仔血清の存在下でインタクトである、
オリゴヌクレオチド結合体。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチド結合体は、構造L-5’-Gn-ON-3’を含み、ここで「L」は、前記脂質であり、「G」は、グアニンであり、「n」は、3~10であり、「ON」は、前記免疫刺激オリゴヌクレオチドである、請求項15に記載のオリゴヌクレオチド結合体。
【請求項17】
請求項15または16のいずれかに記載の複数のオリゴヌクレオチド結合体を含む、ワクチンアジュバント。
【請求項18】
ペプチド抗原を含む両親媒性ペプチド結合体であって、該ペプチド抗原は、
(i)脂質に直接結合体化されているか、または
(ii)脂質に結合体化されているリンカーに連結されており、
ここで該脂質は、生理学的条件下でアルブミンに結合し、
該ペプチド抗原、該リンカー、もしくは組み合わせにおける該ペプチド抗原とリンカーとは、細胞の形質膜へ該脂質が入り込むことを低下もしくは阻害するために十分極性である、
両親媒性ペプチド結合体。
【請求項19】
前記ペプチド抗原は、前記脂質に結合体化されているリンカーに連結される、請求項18に記載のペプチド結合体。
【請求項20】
前記リンカーは、親水性ポリマー、親水性アミノ酸鎖、ポリサッカリドもしくはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項19に記載のペプチド結合体。
【請求項21】
前記リンカーは、「N」個連続したポリエチレングリコールユニットを含み、ここでNは、25~50の間である、請求項19に記載のペプチド結合体。
【請求項22】
前記ペプチド結合体は、インビボで被験体に投与される場合、前記抗原性ペプチド単独の投与と比較して、前記リンパ節において増大した蓄積を示す、請求項18~21のいずれか1項に記載のペプチド結合体。
【請求項23】
前記脂質は、ジアシル脂質である、請求項18~22のいずれか1項に記載のペプチド結合体。
【請求項24】
前記脂質のアシル鎖は、12~30個の炭化水素ユニットを含む、請求項18~23のいずれか1項に記載のペプチド結合体。
【請求項25】
請求項14に記載のアジュバント、および抗原を含む、免疫原性組成物。
【請求項26】
前記抗原は、請求項18~25のいずれかに記載のペプチド結合体である、請求項25に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
請求項17に記載のアジュバント、および抗原を含む、免疫原性組成物。
【請求項28】
被験体における免疫応答を増大させるための方法であって、該方法は、該被験体に、有効量の、請求項25~27のいずれかに記載の免疫原性組成物を投与して、該被験体における免疫応答を増大させる工程を含む、方法。
【請求項29】
前記免疫応答は、コントロールと比較して、TNFもしくはINFを発現する、CD8+ T細胞の数の増大である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記被験体は、癌もしくは感染性疾患を有する、請求項28~29に記載の方法。
【請求項31】
癌もしくは感染性疾患を処置するための方法であって、該方法は、被験体に、有効量の請求項25~27のいずれかに記載の免疫原性組成物を投与して、コントロールと比較して、該癌もしくは感染性疾患の1以上の症状を低減する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連発明の相互参照
本出願は、2012年4月5日に出願された米国特許仮出願第61/620,518号の利益を請求し、その全体が参照によって本開示に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ワクチン技術の分野、およびより具体的には、カーゴに結合体化され、上記カーゴをリンパ節へと効率的に標的化するアルブミン結合脂質に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
サブユニットワクチンは、抗原に対して有効な免疫応答を生成しようとする試みにおいて、ウイルス粒子を導入することなく免疫系にその抗原を提示する。このようなサブユニットワクチンはしばしば、免疫原性が不十分であり、有効な免疫応答を生じるために1種以上のアジュバントの共投与を要する(Perrie,Y., et al., Int. J. Pharm. 364, 272-280 (2008); Zepp, F. Vaccine 28S C14-C24 (2010))。免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば、非メチル化シトシン-ホスフェート-グアニン(「CG」もしくは「CpG」)モチーフを含むもの)は、細胞性および液性両方の免疫応答を刺激するためのアジュバントとして使用され得る(Vollmer, J. & Krieg, A. M. Adv. Drug Delivery Rev. 61, 195-204 (2009); Klinman, D. M. Nat. Rev. Immunol. 4, 249-259 (2004))。ワクチンアジュバントとしてのオリゴヌクレオチドの臨床応用の難点は、上記オリゴヌクレオチドをインビボでリンパ系の免疫細胞へと標的化する効率的なシステムがないことである(Von Beust, B. R., et al. Eur. J. Immunol. 35, 1869-1876 (2005); Bourquin, C., et al., J. Immunol. 181, 2990-2998 (2008))。
【0004】
抗原/アジュバントを注射した場所から二次リンパ節へと輸送することは難しく、リンパ系の複雑な生理機能に依存する(Pal, I. & Ramsey, J. D. Adv. Drug Delivery Rev. 63, 909-922 (2011); Reddy, S. T., et al., Nat. Biotechnol. 25, 1159-1164 (2007))。身体へ導入される抗原/アジュバントは、注射部位で免疫樹状細胞(DC)によって取り込まれ得、次いで、リンパ節へとDC輸送(例えば、抗原もしくは大きな粒子(>200nm)と会合した細胞)を介して運ばれ得る。あるいは、それらは、リンパ管に直接入り得、免疫細胞のかなりの部分が存在している二次リンパ器官(例えば、小粒子(<200nm))に排出し得る(Bachmann, M. F. & Jennings, G. T. Nat. Rev. Immunol. 10, 787-796 (2010); Reddy, S. T., et al., Nat. Biotechnol. 25, 1159-1164 (2007); Singh, M. Vaccine adjuvant and
delivery system. Wiley. (2007); Oyewumi, M. O., et al., Expert Rev. Vaccines 9,
1095-1107 (2010); Cai, S., et al., Adv.
Drug Delivery Rev. 63, 901-908 (2011); Manolova, V., et al. Eru. J. Immunol. 38, 1404-1413 (2008))。
【0005】
可溶性抗原/アジュバント化合物は、上記ワクチンへの短時間の曝露のみを提供して、数時間内にリンパ節を通って流れる(Pape, et al., Immunity 26, 491-502 (2007))。非経口的な注射の後に抗原/アジュバントをリンパ節へ送達することを高めようとする試みは、抗原提示細胞によって優先的にインターナライズされる、デポー形成アジュバントもしくは粒状キャリアの使用を含んだが(Johansena, et al., Journal of Controlled Release, 148, 56-62 (2010), Moon, et al., Adv. Mater., 24, 3724-3746 (2012), Bachmann and Jennings, Nat. Rev. Immunol. 10, 787-796 (2010), Hubbel, et al., Nature, 462, 449-460 (2009), Pal, & Ramsey, J. D. Adv. Drug Delivery Rev., 63, 909-922 (2011), Reddy, et al., J. A. Nat. Biotechnol., 25, 1159-1164 (2007), John, et al., Nature Materials, 11, 250-257 (2012))、これらアプローチは、リンパ系組織へのワクチンの直接注射の有効性に達しなかった(Senti, et al., Curr. Opin. Allergy Clin. Immunol., 9:537-543 (2009))。抗体もしくは他のリガンド標的化樹状細胞への抗原の結合体化に基づく分子標的ワクチンは、DCを流入領域リンパ節に届けるのみならず、全身循環へと排出し、DCを遠位組織にも到達させる(Keler, et al., Oncogene, 26, 3758-67 (2007), Tacken, et al., Nat. Rev. Immunol., 10, 790-802 (2007), Tenbusch, et al., PLoS ONE, 7, e39038 (2012))。このような全身送達は、炎症性のアジュバントも全身的に共投与(予防ワクチンにおける許容できない毒性を生じる可能性があるアプローチ)されなければ、耐性を促進し得る。
【0006】
しかし、抗原/アジュバントを、リンパに存在する抗原提示細胞、特に、CD8+ DCに標的化する(細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導するために重要な工程)ために有効な送達システムは、未だに必要である。なぜなら、CD8+ DCは、クロスプレゼンテーション(MHCクラスI分子内の細胞外抗原をCD8+ T細胞に提示するために必要なプロセス)の能力がある主要なDCであるからである(Smith, C. M., et al., J. Immunol. 170, 4437-4440 (2003); Schnorrer, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103, 10729-10734 (2006); Bedoui, S., et al., Nat. Immunol. 10, 488-495 (2009))。
【0007】
従って、本発明の目的は、リンパ節へのワクチンアジュバントの送達を増大させるための組成物および方法を提供することである。
【0008】
本発明の目的はまた、リンパ節へのワクチン抗原の送達を増大させるための組成物および方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、リンパ節への、ワクチンアジュバントと抗原との組み合わせの送達を増大させるための免疫原性組成物およびその使用法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、免疫応答を誘導するための免疫原性組成物およびその使用法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、ワクチンアジュバントおよび抗原の保持を投与部位および同側流入領域リンパ節で局所的に増大させるための組成物および方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、局所免疫応答を増大させるための方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Perrie,Y., et al., Int. J. Pharm. 364, 272-280 (2008)
【非特許文献2】Zepp, F. Vaccine 28S C14-C24 (2010)
【非特許文献3】Vollmer, J. & Krieg, A. M. Adv. Drug Delivery Rev. 61, 195-204 (2009)
【非特許文献4】Klinman, D. M. Nat. Rev. Immunol. 4, 249-259 (2004)
【非特許文献5】Von Beust, B. R., et al. Eur. J. Immunol. 35, 1869-1876 (2005)
【非特許文献6】Bourquin, C., et al., J. Immunol. 181, 2990-2998 (2008)
【非特許文献7】Pal, I. & Ramsey, J. D. Adv. Drug Delivery Rev. 63, 909-922 (2011)
【非特許文献8】Reddy, S. T., et al., Nat. Biotechnol. 25, 1159-1164 (2007)
【非特許文献9】Bachmann, M. F. & Jennings, G. T. Nat. Rev. Immunol. 10, 787-796 (2010)
【非特許文献10】Reddy, S. T., et al., Nat. Biotechnol. 25, 1159-1164 (2007)
【非特許文献11】Singh, M. Vaccine adjuvant and delivery system. Wiley. (2007)
【非特許文献12】Oyewumi, M. O., et al., Expert Rev. Vaccines 9, 1095-1107 (2010)
【非特許文献13】Cai, S., et al., Adv. Drug Delivery Rev. 63, 901-908 (2011)
【非特許文献14】Manolova, V., et al. Eru. J. Immunol. 38, 1404-1413 (2008)
【非特許文献15】Pape, et al., Immunity 26, 491-502 (2007)
【非特許文献16】Johansena, et al., Journal of Controlled Release, 148, 56-62 (2010)
【非特許文献17】Moon, et al., Adv. Mater., 24, 3724-3746 (2012)
【非特許文献18】Bachmann and Jennings, Nat. Rev. Immunol. 10, 787-796 (2010)
【非特許文献19】Hubbel, et al., Nature, 462, 449-460 (2009)
【非特許文献20】Pal, & Ramsey, J. D. Adv. Drug Delivery Rev., 63, 909-922 (2011)
【非特許文献21】Reddy, et al., J. A. Nat. Biotechnol., 25, 1159-1164 (2007)
【非特許文献22】John, et al., Nature Materials, 11, 250-257 (2012)
【非特許文献23】Senti, et al., Curr. Opin. Allergy Clin. Immunol., 9:537-543 (2009)
【非特許文献24】Keler, et al., Oncogene, 26, 3758-67 (2007)
【非特許文献25】Tacken, et al., Nat. Rev. Immunol., 10, 790-802 (2007)
【非特許文献26】Tenbusch, et al., PLoS ONE, 7, e39038 (2012)
【非特許文献27】Smith, C. M., et al., J. Immunol. 170, 4437-4440 (2003)
【非特許文献28】Schnorrer, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103, 10729-10734 (2006)
【非特許文献29】Bedoui, S., et al., Nat. Immunol. 10, 488-495 (2009)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
アルブミン結合脂質は、カーゴへと結合体化され得、上記カーゴをリンパ節へとインビボで効率的に標的化し得ることが発見された。インビボ導入の際に、上記脂質結合体は、内因性アルブミンに結合し、上記結合体が血流へと急激に流れないようにし、代わりに、それらをリンパ系および流入領域リンパ節(ここでそれらは抗原提示細胞によるアルブミンのフィルタリングに起因して蓄積する)へと再度標的化すると考えられる。上記脂質結合体が、免疫刺激物質(例えば、免疫刺激オリゴヌクレオチドもしくは抗原性ペプチド)を含む場合、上記結合体は、強い免疫応答を誘導し得るかもしくは高め得る。
両親媒性アルブミン結合結合体は、以下:
(a)脂質成分;
(b)任意の極性成分;および
(c)免疫調節化合物もしくは分子アジュバント;
を含み、
ここで上記免疫調節化合物もしくは分子アジュバントは、上記脂質に直接結合されるか、またはリンカーを介して上記脂質へと結合され、ここで上記結合体は、上記脂質が生理学的条件下でアルブミンに結合するように十分に可溶性であり、ここで複数の上記結合体は、水性溶液中でミセルを自発的に形成し得る。
【0015】
脂質-オリゴヌクレオチド結合体および脂質-ペプチド結合体を含む脂質結合体、ならびに免疫応答を刺激するためのそれらの使用が開示される。例えば、リンパ節を標的化するための両親媒性オリゴヌクレオチド結合体は、(i)脂質に直接結合体化されるか、または(ii)脂質に結合体化されているリンカーに連結される免疫刺激オリゴヌクレオチドを含み得る。代表的には、上記脂質は、生理学的条件下でアルブミンに結合する。いくつかの実施形態において、複数の上記オリゴヌクレオチド結合体は、アルブミン含有因子(agent)の添加によって破壊され得る水性溶液中でミセルを自発的に形成し得る。具体的な実施形態において、上記ミセルのうちの64%以上が、20% ウシ胎仔血清の存在下で破壊される。
【0016】
リンパ節を標的化するためのいくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、0個、1個、もしくは2個連続したグアニンを含むオリゴヌクレオチドリンカーを含む。例えば、上記結合体は、構造L-5’-Gn-ON-3’を有し得、ここで「L」は脂質であり、「G」はグアニンであり、「n」は、0~2であり、「ON」は、免疫刺激オリゴヌクレオチドである。
【0017】
上記結合体の脂質は、代表的には、アルブミンに結合する。例示的脂質は、鎖がC12以上の炭化水素ユニットを含むジアシル脂質のようなジアシル脂質である。
【0018】
上記免疫刺激オリゴヌクレオチドは、パターン認識レセプター(例えば、CpG)のリガンドであり得、改変骨格(例えば、ホスホロチオエート(PS)骨格)を有し得る。いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、20個以上の核酸を含む。
【0019】
投与部位もしくはその付近での保持のための結合体もまた、開示される。ミセル安定化結合体といわれ、上記カーゴおよび上記脂質は、代表的には、少なくとも3個連続したグアニンを含むオリゴヌクレオチドリンカーによって連結されている。代表的には、上記結合体は、アルブミンによる破壊に耐性である水性溶液中でミセルを自発的に形成する。特定の実施形態において、上記ミセルのうちの36%より多くが、20% ウシ胎仔血清の存在下でインタクトである。いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチド結合体は、構造L-5’-Gn-ON-3’を有し、ここで「L」は、脂質であり、「G」は、グアニンであり、「n」は、3~10であり、「ON」は、免疫刺激オリゴヌクレオチドである。
【0020】
脂質-ペプチド結合体もまた、開示される。代表的には、上記結合体は、(i)脂質に直接結合体化されるか、または(ii)脂質に結合体化されているリンカーに連結されるペプチド抗原を含む。上記脂質は、代表的には、生理学的条件下でアルブミンに結合する。いくつかの実施形態において、上記ペプチド抗原、上記リンカー、もしくは組み合わせにおけるペプチド抗原とリンカーとは、細胞の形質膜へ上記脂質が入り込むことを低減もしくは阻害するために十分に極性である。
【0021】
脂質-オリゴヌクレオチド結合体、脂質-ペプチド結合体、およびこれらの組み合わせを含む免疫原性組成物もまた、開示される。上記免疫原性組成物は、被験体における免疫応答を増大させるために使用され得る。代表的には、上記被験体は、エフェクター免疫細胞応答を増大させるために、例えば、コントロールと比較して、TNF-αもしくはINF-γを発現するCD8+ T細胞の数を増大させるために、有効量の上記免疫原性組成物を投与される。上記方法は、癌もしくは感染性疾患を有する被験体を処置するために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1-1】
図1Aは、脂質結合体の3個のドメイン:親油性テールに結合体化した溶解を促進する極性ブロックに結合体化されるカーゴ図示する模式図である。
図1Bは、親油性テールに結合体化された免疫刺激オリゴヌクレオチド(CpG)カーゴを含む例示的な脂質-オリゴヌクレオチド結合体を図示する模式図である。
図1Cは、親油性テールに結合体化された極性ブロックに結合体化された抗原性ペプチドカーゴを含む例示的な脂質-ペプチド結合体を図示する模式図である。
図1Dは、オリゴヌクレオチドカーゴに結合体化されたオリゴグアニンリンカーに結合体化されたジアシル脂質テールを含む例示的な脂質-オリゴヌクレオチド結合体である。
図1Eは、ペプチドカーゴに結合体化されたポリエチレングリコール(PEG)リンカーに結合体化されたジアシル脂質テールを含む例示的な脂質-ペプチド結合体である。
図1Fは、フルオレセイン標識遊離CpGのみ(左)、ローダミン標識ウシ血清アルブミン(BSA)と混合したフルオレセイン標識遊離CpG(中央)、およびローダミン標識のみ(右)の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を示す一連のプロットである。
図1Gは、フルオレセイン標識リポ-CpGのみ(左)、ローダミン標識ウシ血清アルブミン(BSA)と混合したフルオレセイン標識リポ-CpG(中央)、およびローダミン標識のみ(右)の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を示す一連のプロットである。
【0023】
【
図1-2】
図1Aは、脂質結合体の3個のドメイン:親油性テールに結合体化した溶解を促進する極性ブロックに結合体化されるカーゴ図示する模式図である。
図1Bは、親油性テールに結合体化された免疫刺激オリゴヌクレオチド(CpG)カーゴを含む例示的な脂質-オリゴヌクレオチド結合体を図示する模式図である。
図1Cは、親油性テールに結合体化された極性ブロックに結合体化された抗原性ペプチドカーゴを含む例示的な脂質-ペプチド結合体を図示する模式図である。
図1Dは、オリゴヌクレオチドカーゴに結合体化されたオリゴグアニンリンカーに結合体化されたジアシル脂質テールを含む例示的な脂質-オリゴヌクレオチド結合体である。
図1Eは、ペプチドカーゴに結合体化されたポリエチレングリコール(PEG)リンカーに結合体化されたジアシル脂質テールを含む例示的な脂質-ペプチド結合体である。
図1Fは、フルオレセイン標識遊離CpGのみ(左)、ローダミン標識ウシ血清アルブミン(BSA)と混合したフルオレセイン標識遊離CpG(中央)、およびローダミン標識のみ(右)の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を示す一連のプロットである。
図1Gは、フルオレセイン標識リポ-CpGのみ(左)、ローダミン標識ウシ血清アルブミン(BSA)と混合したフルオレセイン標識リポ-CpG(中央)、およびローダミン標識のみ(右)の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を示す一連のプロットである。
【0024】
【
図2-1】
図2Aは、例示的なリンパ節標的化両親媒性物質の設計を示す模式図である:疎水性脂質様テール(L)は、上記CpG ODNの5’末端に結合体化され、CpG配列は、完全にホスホロチオエート化した骨格を有する。3つの代替の脂質:コレステロール、アシル(C18)、およびジアシル(C18)が示される。
図2Bは、ウシ胎仔血清(FBS)と2時間にわたって37℃でインキュベートした後のフルオレセイン標識脂質結合体化CpGのサイズ排除HPLCの結果を示す線グラフである。
図2Cは、3.3nmol フルオレセイン標識CpGの皮下注射の24時間後の、種々のフルオレセイン標識処方物(CpG-F、C18-CpG-F、Cho-CpG-F、リポ-CpG-F、IFA中のCpG-F、リポソーム中のCpG-F)中のCpGのインビボでのLN(左のグラフでは、鼠径リンパ節、および右のグラフでは、腋窩リンパ節)蓄積を示す2つの棒グラフである。
図2Dは、CpG-F(鼠径リンパ節(●)および腋窩(auxiliary)リンパ節(■))またはリポ-CpG-F(鼠径リンパ節(▲)および腋窩リンパ節(▼))を注射した後のLNにおけるCpG蛍光の動態(注射用量に対して正規化)を示す線グラフである。
図2Eは、アルブミン結合ドメイン、極性スペーサーおよび上記スペーサーの末端に連結されたカーゴを含むリンパ節標的化両親媒性物質の一般化した設計を示す模式図である。
図2Fは、上記極性ブロックの長さが、3方向平衡:インタクトなミセル、アルブミン結合両親媒性物質(amhiphile)および細胞膜に入り込んだ両親媒性物質のバランスを制御することを示す図である。
図2Gおよび
図2Hは、細胞膜への入り込みおよびリンパ節標的化に対するリポ-(PEG)
n-FITC結合体のポリ(エチレングリコール)(PEG)リンカーの長さを変動させる効果を示す。ここでnは、PEGブロック中の4ユニットオリゴエチレングリコール反復の数である。
図2Gは、種々のPEG長を有する両親媒性物質の細胞の入り込みの定量を示す棒グラフである。
図2Hは、皮下注射の24時間後の種々のフルオレセイン標識処方物(リポ-(PEG)
n-F(n=1、2、4、6、8))中の両親媒性物質のインビボでのLN(左のグラフでは、鼠径リンパ節、および右のグラフでは、腋窩リンパ節)蓄積を示す2つの棒グラフである。
図2Iは、脂質分子量(すなわち、長さ)の関数として両親媒性フルオレセイン標識PEG
2000のLNの取り込みを示す線グラフである。
図2Jは、オリゴヌクレオチド長の関数としての脂質-オリゴヌクレオチド結合体のLNの取り込みを示す線グラフである。
【0025】
【
図2-2】
図2Aは、例示的なリンパ節標的化両親媒性物質の設計を示す模式図である:疎水性脂質様テール(L)は、上記CpG ODNの5’末端に結合体化され、CpG配列は、完全にホスホロチオエート化した骨格を有する。3つの代替の脂質:コレステロール、アシル(C18)、およびジアシル(C18)が示される。
図2Bは、ウシ胎仔血清(FBS)と2時間にわたって37℃でインキュベートした後のフルオレセイン標識脂質結合体化CpGのサイズ排除HPLCの結果を示す線グラフである。
図2Cは、3.3nmol フルオレセイン標識CpGの皮下注射の24時間後の、種々のフルオレセイン標識処方物(CpG-F、C18-CpG-F、Cho-CpG-F、リポ-CpG-F、IFA中のCpG-F、リポソーム中のCpG-F)中のCpGのインビボでのLN(左のグラフでは、鼠径リンパ節、および右のグラフでは、腋窩リンパ節)蓄積を示す2つの棒グラフである。
図2Dは、CpG-F(鼠径リンパ節(●)および腋窩(auxiliary)リンパ節(■))またはリポ-CpG-F(鼠径リンパ節(▲)および腋窩リンパ節(▼))を注射した後のLNにおけるCpG蛍光の動態(注射用量に対して正規化)を示す線グラフである。
図2Eは、アルブミン結合ドメイン、極性スペーサーおよび上記スペーサーの末端に連結されたカーゴを含むリンパ節標的化両親媒性物質の一般化した設計を示す模式図である。
図2Fは、上記極性ブロックの長さが、3方向平衡:インタクトなミセル、アルブミン結合両親媒性物質(amhiphile)および細胞膜に入り込んだ両親媒性物質のバランスを制御することを示す図である。
図2Gおよび
図2Hは、細胞膜への入り込みおよびリンパ節標的化に対するリポ-(PEG)
n-FITC結合体のポリ(エチレングリコール)(PEG)リンカーの長さを変動させる効果を示す。ここでnは、PEGブロック中の4ユニットオリゴエチレングリコール反復の数である。
図2Gは、種々のPEG長を有する両親媒性物質の細胞の入り込みの定量を示す棒グラフである。
図2Hは、皮下注射の24時間後の種々のフルオレセイン標識処方物(リポ-(PEG)
n-F(n=1、2、4、6、8))中の両親媒性物質のインビボでのLN(左のグラフでは、鼠径リンパ節、および右のグラフでは、腋窩リンパ節)蓄積を示す2つの棒グラフである。
図2Iは、脂質分子量(すなわち、長さ)の関数として両親媒性フルオレセイン標識PEG
2000のLNの取り込みを示す線グラフである。
図2Jは、オリゴヌクレオチド長の関数としての脂質-オリゴヌクレオチド結合体のLNの取り込みを示す線グラフである。
【0026】
【
図3】
図3Aは、G四重鎖の安定化CpGアジュバントの一般化した構築および特徴付けを示す模式図である。G四重鎖の安定化CpGミセルは、3個のセグメント:免疫刺激性CpG-ODN、n=1~10のGカルテット形成グアニン、続いて、10-n個の相互作用しないチミジンを含む中心の反復ブロック、およびジアシル脂質テールから構成されるODNから自己アセンブリされる。緩衝液中で、上記ODNは、CpGコロナおよび脂質コアを有する三次元球状ミセルへと自己アセンブリする。K
+の存在下では、グアニン反復は、フーグスティーン水素結合を介してG四重鎖構造を形成し、上記ミセル構造を安定化する。アルブミンの存在下での上記ODNミセルの安定性は、グアニンの数を単純に変化させることによってプログラムされ得る。アルブミンは、不安定化したミセルの脂質部分に結合し(n≦2)、対照的に、安定化したミセル(n>2)は、アルブミン結合を制限し、ミセルアセンブリを保持する。
図3Bは、アルブミンの存在下でG四重鎖ミセルの安定性をアッセイするために使用されるピレンエキシマ蛍光構築物を示す模式図(上)および棒グラフ(下)である。
図3Cは、ウシ胎仔血清(FBS)の存在下でサイズ排除クロマトグラフィーによって測定される場合、G四重鎖CpGミセルの安定性プロフィールを示す線グラフである。
図3Dは、フローサイトメトリーによって決定される、CpG陽性であったB220+細胞、F4/80+細胞、およびCD11c+細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。***,p<0.001; **,p<0.01; *,p<0.05。
【0027】
【
図4】
図4Aは、10μg OVAおよび示されるとおりに1.24nmol CpG処方物の組み合わせで0日目および14日目にs.c.注射を含む免疫化プロトコルが完了して6日後のフローサイトメトリーによりH-2K
b/SIINFEKLテトラマー陽性であるC57Bl/6マウスから単離された末梢血リンパ球のパーセンテージを示す棒グラフである。
図4Bは、6時間の抗原特異的再刺激後のINF-γおよびTNF-α陽性CD8 T細胞の定量を示す棒グラフである。
図4Cは、LN CpG蛍光とSIINFEKLテトラマー染色によって測定される免疫応答との間の相関を示す線グラフである。
図4Dは、CpG、リポ-G
2-CpG、および種々の処置の相対的全身毒性の指標としてのPBSの脾臓重量(mg/g 体重)を示す棒グラフである。
図4Eは、アッセイ設計を示す模式図である。
図4Fは、免疫応答に対するLN標的化の影響(示されるように種々の抗原/アジュバントの組み合わせで免疫化して20日後の抗OVA血清IgG力価)を示すドットプロットである。
【0028】
【
図5】
図5Aは、HPV-16 E7最小ペプチド(E7
49-57)および示されるように1.24nmol CpGとの組み合わせで0日目および14日目でのs.c.注射を含む免疫化プロトコルを完了して6日後のフローサイトメトリーによるHPV-16 E7
49-57陽性であったC57Bl/6マウスから単離されたCD8+細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。
図5Bは、最小ペプチド(Al11、Trp2、およびHPV-16 E7)に関する抗原特異的CD8
+ T細胞応答の程度の尺度として、6時間の抗原特異的再刺激後のINF-γおよびTNF-α陽性CD8 T細胞の定量を示す棒グラフである。
図5Cは、脂質結合体をペプチド(リポペプチド)に指向することが、再刺激後のINF-γおよびTNF-α陽性CD8 T細胞の出現率によって測定されるように、強力な抗原特異的免疫応答を誘発しないことを示す棒グラフである。
図5Dは、Trp2ペプチドワクチンの最終免疫化後7日目に、インビボ細胞傷害性実験によってアッセイされる両親媒性ワクチンの有効性を示す棒グラフである。
図5Eは、カプラン・マイアー曲線であり、
図5Fは、3×10
5 TC-1細胞でのチャレンジ後6日目、13日目および19日目に、両親媒性HPV-16 E7ペプチドワクチン、可溶性ワクチン、もしくはワクチンなしにより処置された皮下(s.c.)TC-1腫瘍の処置後のマウスの腫瘍面積を経時的に示す線グラフである。両親媒性ワクチン処置群と可溶性ワクチン処置群との間の統計的有意差は、アスタリスクによって示される。***,p<0.001; **,p<0.01; *,p<0.05。全てのデータは、平均±s.e.m.(n=3~8)としてプロットした。
【0029】
【
図6】
図6Aは、遊離CpGおよびMPLA、リポ-G
6-CpG-MPLA、もしくはリポ-CpG-MPLAでの処置後のOVA特異的CD8+T細胞%を示す棒グラフである。
図6Bは、遊離CpGおよびMPLA、リポ-G
6-CpG-MPLA、もしくはリポ-CpG-MPLAでの処置後のTNF-αおよびINF-γ陽性CD8+T細胞%を示す棒グラフである。
図6Cは、遊離CpGおよびMPLA、リポ-G
6-CpG-MPLA、もしくはリポ-CpG-MPLAでの処置後のOVA特異的CD8+T細胞%を経時的に示す線グラフである。
図6Dは、遊離CpGおよびMPLA、リポ-G
6-CpG-MPLA、もしくはリポ-CpG-MPLAでの処置後の、血液、脾臓およびリンパ節でのOVA特異的CD8+T細胞%を示す棒グラフである。
【0030】
【
図7-1】
図7Aは、フーグスティーン水素結合によって形成されるG四重鎖構造を示す、免疫刺激性結合体の自己アセンブリによって形成される例示的ミセルの代表的な模式図である。
図7Bは、自己アセンブリされたミセルのサイズプロフィール(直径(nm))を示すグラフである。
図7Cは、1×PBS/20mM K
+中でのG四重鎖安定化ミセルの円偏光二色性分析(CD(mdeg))の結果を示す線グラフである。
【0031】
【
図7-2】
図7Aは、フーグスティーン水素結合によって形成されるG四重鎖構造を示す、免疫刺激性結合体の自己アセンブリによって形成される例示的ミセルの代表的な模式図である。
図7Bは、自己アセンブリされたミセルのサイズプロフィール(直径(nm))を示すグラフである。
図7Cは、1×PBS/20mM K
+中でのG四重鎖安定化ミセルの円偏光二色性分析(CD(mdeg))の結果を示す線グラフである。
【0032】
【
図8-1】
図8Aは、注射の24時間後の鼠径リンパ節(グラフの左半分)および腋窩リンパ節(グラフの右半分)における種々のCpGベースのミセルの定量的蓄積(放射効率)を示す棒グラフである。
図8Bは、注射して72時間後の鼠径リンパ節(グラフの左半分)および腋窩リンパ節(グラフの右半分)において種々のCpGベースのミセルの定量的蓄積(放射効率)を示す棒グラフである。
【
図8-2】
図8Aは、注射の24時間後の鼠径リンパ節(グラフの左半分)および腋窩リンパ節(グラフの右半分)における種々のCpGベースのミセルの定量的蓄積(放射効率)を示す棒グラフである。
図8Bは、注射して72時間後の鼠径リンパ節(グラフの左半分)および腋窩リンパ節(グラフの右半分)において種々のCpGベースのミセルの定量的蓄積(放射効率)を示す棒グラフである。
【0033】
【
図9】
図9は、脂質-ペプチド結合体の代表的模式図である。
【0034】
【
図10】
図10A~10Dは、CpG処方物の単一用量(6.2nmol)で免疫化したマウスの末梢血で誘起された炎症促進性サイトカイン(
図10AではINF-γ;
図10BではTNF-α;
図10CではIL6;
図10DではIL12p40)のミリプレックス分析(milliplex analyses)の結果を示す棒グラフである。血液サンプルを、種々の時間間隔(2時間および24時間)で集め、製造業者の説明書に従って分析した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
免疫刺激オリゴヌクレオチドは、本明細書で使用される場合、免疫応答を刺激(例えば、誘導もしくは増強)し得るオリゴヌクレオチドである。
【0036】
本明細書で使用される場合、CGオリゴデオキシヌクレオチド(CG ODN)は、シトシンヌクレオチド(C)、続いてグアニンヌクレオチド(G)を含む短い1本鎖合成DNA分子である。
【0037】
「免疫細胞」とは、造血起源の、免疫応答において役割を果たす細胞を意味する。免疫細胞は、リンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)、ナチュラルキラー細胞、および骨髄細胞(例えば、単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、および顆粒球)を含む。
【0038】
用語「T細胞」とは、CD4+ T細胞もしくはCD8+ T細胞をいう。用語T細胞は、TH1細胞、TH2細胞およびTH17細胞を含む。
【0039】
用語「T細胞傷害性」とは、CD8+ T細胞活性化によって媒介される任意の免疫応答を含む。例示的な免疫応答としては、サイトカイン生成、CD8+ T細胞増殖、グランザイムもしくはパーフォリン生成、および感染性因子のクリアランスが挙げられる。
【0040】
一般に本明細書で使用される場合、「薬学的に受容可能な」とは、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比と釣り合って過度な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織、器官、および/もしくは体液と接触させた状態で使用するのに適切である、それら化合物、物質、組成物、および/もしくは投与形態をいう。
【0041】
用語「被験体」、「個体」、および「患者」とは、開示される組成物を使用する処置の標的である任意の個体をいう。上記被験体は、脊椎動物、例えば、哺乳動物であり得る。従って、上記被験体は、ヒトであり得る。上記被験体は、症候性もしくは無症候性であり得る。上記用語は、特定の年齢も性別も示さない。従って、成体および新生の被験体は、雄性であろうが雌性であろうが、網羅されることが意図される。被験体は、コントロール被験体もしくは試験被験体を含み得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」とは、改変(例えば、リン酸化もしくはグリコシル化)に拘わらず、任意の長さのアミノ酸の鎖をいう。
【0043】
用語「有効量」もしくは「治療上有効な量」とは、免疫応答を誘導もしくは増強するために、またはそうでなければ所望の薬理学的および/もしくは生理学的効果を提供するために、処置されている障害、疾患、もしくは状態に対する処置を提供するために十分な投与量を意味する。正確な投与量は、被験体依存性の変数(例えば、年齢、免疫系の健康状態など)、疾患、疾患のステージ、および行われている処置のような種々の要因に従って変動する。
【0044】
用語「個体」、「被験体」、および「患者」は、本明細書で交換可能に使用され、哺乳動物(ヒト、齧歯類(例えば、マウスおよびラット)、および他の実験動物が挙げられるが、これらに限定されない)をいう。
【0045】
用語「オリゴヌクレオチド」もしくは「ポリヌクレオチド」とは、複数のヌクレオチドサブユニットを含む合成もしくは単離された核酸ポリマーである。
【0046】
(II.組成物)
リンパ節への結合体の標的化を制御する脂質結合体の構造的特徴が発見された。生理学的条件下で、両親媒性脂質結合体は、
図2Fに示される3方向平衡で存在する。純水中、特定の脂質結合体はミセルを形成するが、血清および細胞の存在下では、これら両親媒性物質は、アルブミンへの結合と、それら親油性テールが細胞膜へ入り込むこととの間で平衡に達する。
【0047】
以下でより詳細に考察されるように、リンパ節を効率的に標的化する脂質結合体は、代表的には、3個のドメイン:アルブミンに結合する親油性ドメイン、極性ブロックドメイン、および分子アジュバントもしくは免疫刺激化合物(例えば、オリゴヌクレオチド)または抗原性ペプチドのようなカーゴを含む。上記カーゴに依存して、上記極性ブロックの長さおよび組成は、アルブミン結合、安定なミセル形成、もしくは細胞の入り込みに向かって平衡を押し進める目的に合わせて作られ得る。以下で開示される設計ガイドラインおよび組成は、低い全身毒性で強い免疫応答を誘導もしくは増強するために使用され得る。なぜなら、免疫刺激化合物は、リンパ節(すなわち、リンパ節標的化結合体)もしくは投与の局所部位にある組織(すなわち、ミセル安定化結合体)へと局在化されるからである。
【0048】
リンパ節を標的化するために任意の特定の脂質結合体の有効性は、アルブミンが水性溶液中で複数の上記結合体によって形成されるミセルを破壊する能力に基づいてアッセイされ得る。例えば、アルブミン含有因子(例えば、ウシ胎仔血清)が、水性溶液中で形成されるミセルのうちの20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%以上を破壊し得る場合、上記結合体は、リンパ節を標的化するように選択され得る。しかし、水性溶液中で形成されるミセルのうちの25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%以上がアルブミンの存在下でインタクトなままである場合、上記結合体は、ミセル安定化結合体として選択され得る。
【0049】
(A.リンパ節標的化結合体)
脂質結合体(例えば、免疫原性組成物において使用するための脂質-オリゴヌクレオチドおよび脂質-ペプチド結合体)が開示される。リンパ節標的化結合体は、投与部位から、リンパを通って、それらが蓄積して免疫細胞を活性化させるリンパ節へと輸送され得る。脂質結合体の効率的なリンパ節蓄積は、上記両親媒性物質がミセルから血清タンパク質結合状態へと分配する能力に依存すると考えられる。
【0050】
リンパ節標的化結合体は、代表的には、3個のドメイン:非常に親油性のアルブミン結合ドメイン(例えば、アルブミン結合脂質)、カーゴ(例えば、分子アジュバントもしくはペプチド抗原)、および上記結合体の溶解度を促進して上記脂質が細胞形質膜へと入り込む能力を低減させる極性ブロックリンカーを含む。よって、いくつかの実施形態において、上記結合体の一般構造は、L-P-Cであり、ここで「L」は、アルブミン結合脂質であり、「P」は、極性ブロックであり、「C」は、カーゴ(例えば、分子アジュバントもしくはポリペプチド)である。いくつかの実施形態において、上記カーゴ自体はまた、極性ブロックドメインとして機能し得、別個の極性ブロックドメインは必要とされない。従って、いくつかの実施形態において、上記結合体は、わずか2個のドメイン:アルブミン結合脂質およびカーゴである。例えば、脂質-オリゴヌクレオチド結合体は、脂質に直接結合体化されるか、または脂質に結合体化されているリンカーに連結される免疫刺激オリゴヌクレオチドを含み得る。脂質-ペプチド結合体は、脂質に直接結合体化されているか、または脂質に結合体化されたリンカーに連結されている抗原性ペプチドを含み得る。
【0051】
脂質結合体化ペプチドは、ワクチン薬剤として周知(リポペプチド)であるが、他方で、ペプチドに直接結合体化された脂質は、リンパ節標的化を示さない。なぜなら、上記結合体は、細胞の存在下でアルブミンへと優先的に分配されるほど十分には可溶性ではないからである;それらは代わりに、細胞膜へとしっかりと入り込み、従って、注射部位に捕捉されたままである。
【0052】
脂質に直接結合体化された抗原性ペプチド(リポペプチド)は、ワクチン効力を増強するためのモダリティーとして広範囲に研究されてきた(Jackson, et al in New Generation Vaccines (2011); Eriksson & Jackson Curr Protein Pept Sci 8, 412-417 (2007); BenMohamed, et al. The Lancet Infectious Diseases 2, 425-431 (2002))。これら分子は、一般には、リンパ節標的化を示さない。これは、
図2Gおよび
図2H中のデータによって例示される。ここでアルブミン結合ジアシルテールに結合した非常に短いPEGリンカーが、インビトロで強力な細胞膜への入り込みをもたらし(2G)、皮下注射後にインビボでリンパ節においてわずかな程度までしか蓄積しない(2H)ことが示されている。さらに、アルブミン結合ジアシルテールに直接連結されたペプチド抗原は、インビボでは検出可能な免疫応答をほとんど誘起しない一方で、リポ-PEG-ペプチドは強いT細胞応答を誘起する(
図5C)。以前報告されたリポペプチドからの第2の差異は、脂質結合およびリンパ節標的化を促進する上記ジアシルテールが、TLR-2および他の免疫刺激レセプターへの結合を介してアジュバント活性を有することが公知であるpam3cys-ペプチド結合体のようなリポペプチドとは異なって、それら自体に対して直接のアジュバント活性を示さないことである。
【0053】
(1.脂質)
本明細書で開示される脂質結合体は、代表的には、疎水性脂質を含む。上記脂質は、直鎖状、分枝状、もしくは環式であり得る。上記脂質は、好ましくは、長さが少なくとも17~18個の炭素であるが、それが良好なアルブミン結合およびリンパ節への適切な標的化を示す場合、より短くてもよい。
【0054】
リンパ節標的化結合体は、送達部位からリンパを通ってリンパ節へと輸送され得る、脂質-オリゴヌクレオチド結合体および脂質-ペプチド結合体を含む。好ましい実施形態において、上記活性は、一部は、上記結合体が上記被験体の血液中のアルブミンと会合する能力に依存する。従って、リンパ節標的化結合体は、代表的には、生理学的条件下でアルブミンに結合し得る脂質を含む。リンパ節を標的化するのに適した脂質は、上記脂質もしくは上記脂質を含む脂質結合体がアルブミンに結合する能力に基づいて選択され得る。上記脂質もしくは脂質結合体がアルブミンに結合する能力を試験するために適した方法は、当該分野で公知であり、以下の実施例で考察される。
【0055】
例えば、一実施形態において、複数の脂質結合体は、水性溶液中でミセルを自発的に形成することを可能とする。上記ミセルは、アルブミン、もしくはウシ胎仔血清(FBS)のようなアルブミンを含む溶液とともにインキュベートされる。サンプルは、
図2Bに図示されるように、結合が起こったか否かを決定するために、例えば、ELISA、サイズ排除クロマトグラフィーもしくは他の方法によって分析され得る。脂質結合体は、アルブミンもしくはウシ胎仔血清(FBS)のようなアルブミンを含む溶液の存在下で、上記ミセルが解離し、上記脂質結合体が、上記で考察されるとおりアルブミンに結合する場合、リンパ節標的化結合体として選択され得る。
【0056】
リンパ節標的化脂質結合体における使用に好ましい脂質の例としては、8~30個の炭素の脂肪族テールを有する脂肪酸(直鎖状の不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸、分枝状の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸、ならびに脂肪酸誘導体(例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、および脂肪酸チオエステル)が挙げられるが、これらに限定されない)、ジアシル脂質、コレステロール、コレステロール誘導体、およびステロイド酸(例えば、胆汁酸);リピドAまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記脂質は、ジアシル脂質もしくは2テールの脂質である。いくつかの実施形態において、上記ジアシル脂質中のテールは、約8~約30個の炭素を含み、飽和、不飽和、もしくはこれらの組み合わせであり得る。上記テールは、エステル結合リンケージ、アミド結合リンケージ、チオエステル結合リンケージ、もしくはこれらの組み合わせを介してヘッド基に結合され得る。特定の実施形態において、上記ジアシル脂質は、リン酸脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、もしくはこれらの組み合わせである。
【0058】
好ましくは、リンパ節標的化結合体は、長さが8個以上の炭素ユニットである脂質を含む。脂質ユニットの数を増大させると、細胞の形質膜への上記脂質の入り込みが低下し得、上記脂質結合体がアルブミンと結合するために自由なままであり、リンパ節へ輸送することを可能にすると考えられる。
【0059】
例えば、上記脂質は、2つのC18炭化水素テールから構成されるジアシル脂質であり得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、リンパ節標的化脂質結合体の調製において使用するための脂質は、1本鎖の炭化水素(例えば、C18)でも、コレステロールでもない。コレステロール結合体は、分子アジュバント(例えば、CpG)の免疫調節およびペプチドの免疫原性を増強するために調査されてきたが、コレステロール結合体は、リポタンパク質と十分に会合するが、アルブミンとは不十分にしか会合せず、最適なアルブミン結合結合体と比較して、ワクチンにおいて不十分なリンパ節標的化および低い免疫原性を示す(
図2C)。
【0061】
(2.カーゴ)
本明細書で開示される結合体のカーゴは、代表的には、免疫刺激オリゴヌクレオチドのような分子アジュバント、またはペプチド抗原である。しかし、上記カーゴはまた、他のオリゴヌクレオチド、ペプチド、Toll様レセプターアゴニストもしくは他の免疫調節化合物、色素、MRI造影剤、フルオロフォアもしくはリンパ節への効率的輸送を必要とする低分子薬物であり得る。
【0062】
(a.分子アジュバント)
脂質-オリゴヌクレオチド結合体が開示される。本明細書で記載されるオリゴヌクレオチド結合体は、代表的には、免疫刺激オリゴヌクレオチドを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記免疫刺激オリゴヌクレオチドは、パターン認識レセプター(PRR)のリガンドとして機能し得る。PRRの例としては、自然免疫応答の開始において役割を果たし、後のより抗原特異的獲得免疫応答にも影響を及ぼすシグナル伝達分子のToll様ファミリーが挙げられる。従って、上記オリゴヌクレオチドは、Toll様ファミリーシグナル伝達分子(例えば、Toll様レセプター9(TLR9))のリガンドとして機能し得る。
【0064】
例えば、非メチル化CpG部位は、ヒトにおける形質細胞様樹状細胞およびB細胞上でTLR9によって検出され得る(Zaida, et al., Infection and Immunity, 76(5):2123-2129, (2008))。従って、オリゴヌクレオチドの配列は、1個以上の非メチル化シトシン-グアニン(CGもしくはCpG(交換可能に使用される))ジヌクレオチドモチーフを含み得る。上記「p」とは、以下でより詳細に考察されるように、DNAのホスホジエステル骨格をいい、CGを含むいくらかのオリゴヌクレオチドは、改変骨格(例えば、ホスホロチオエート(PS)骨格)を有し得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、免疫刺激オリゴヌクレオチドは、連続して、もしくは介在ヌクレオチドによって隔てられているかのいずれかで配置された1つより多くのCGジヌクレオチドを含み得る。上記CpGモチーフは、オリゴヌクレオチド配列の内部に存在し得る。多くのヌクレオチド配列は、CGジヌクレオチドの数および位置、ならびにCGダイマーに隣接する正確な塩基配列におけるバリエーションによりTLR9を刺激する。
【0066】
代表的には、CG ODNは、それらの配列、二次構造、およびヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対する影響に基づいて分類される。その5つのクラスは、クラスA(タイプD)、クラスB(タイプK)、クラスC、クラスP、およびクラスSである(Vollmer, J & Krieg, AM, Advanced drug delivery reviews 61(3): 195-204 (2009)(本明細書に参考として援用される))。CG ODNは、タイプIインターフェロン(例えば、IFNα)の生成を刺激し得、樹状細胞(DC)の成熟を誘導し得る。ODNのいくつかのクラスはまた、間接的なサイトカインシグナル伝達を介するナチュラルキラー(NK)細胞の強力な活性化因子である。いくつかのクラスは、ヒトB細胞および単球成熟の強力な刺激因子である(Weiner, GL, PNAS USA 94(20): 10833-7 (1997); Dalpke, AH, Immunology 106(1): 102-12 (2002); Hartmann, G, J of Immun. 164(3):1617-2 (2000)(これらの各々は、本明細書に参考として援用される))。
【0067】
他のPRR Toll様レセプターとしては、TLR3、およびTLR7(これらは、それぞれ、2本鎖RNA、1本鎖RNAおよび短い2本鎖RNAを認識し得る)、ならびにレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様レセプター(すなわち、RIG-I)および黒色腫分化関連遺伝子5(MDA5)(これらは、サイトゾル中でRNA感知レセプターとして最も知られている)が挙げられる。従って、いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、TLR3、TLR7、もしくはRIG-I様レセプター、またはこれらの組み合わせの機能的リガンドを含む。
【0068】
免疫刺激オリゴヌクレオチドの例、およびこれらを作製するための方法は、当該分野で公知である。例えば、Bodera, P. Recent Pat Inflamm Allergy Drug Discov. 5(1):87-93 (2011)(本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0069】
いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドカーゴは、2個以上の免疫刺激配列を含む。
【0070】
上記オリゴヌクレオチドは、長さ2~100ヌクレオチド塩基の間(例えば、長さ5ヌクレオチド塩基、長さ10ヌクレオチド塩基、長さ15ヌクレオチド塩基、長さ20ヌクレオチド塩基、長さ25ヌクレオチド塩基、長さ30ヌクレオチド塩基、長さ35ヌクレオチド塩基、長さ40ヌクレオチド塩基、長さ45ヌクレオチド塩基、長さ50ヌクレオチド塩基、長さ60ヌクレオチド塩基、長さ70ヌクレオチド塩基、長さ80ヌクレオチド塩基、長さ90ヌクレオチド塩基、長さ95ヌクレオチド塩基、長さ98ヌクレオチド塩基、長さ100ヌクレオチド塩基またはそれより多くを含む)であり得る。
【0071】
上記オリゴヌクレオチドの3’末端もしくは5’末端は、上記極性ブロックもしくは上記脂質に結合体化され得る。好ましい実施形態において、上記オリゴヌクレオチドの5’末端は、上記極性ブロックもしくは上記脂質に連結される。
【0072】
上記オリゴヌクレオチドは、代表的には、複素環式塩基(核酸塩基)、上記複素環式塩基に結合された糖部分、および上記糖部分のヒドロキシル官能基をエステル化するホスフェート部分を含む、DNAもしくはRNAヌクレオチドであり得る。主な天然に存在するヌクレオチドは、複素環式塩基としてウラシル、チミン、シトシン、アデニンおよびグアニン、ならびにホスホジエステル結合によって連結されたリボースもしくはデオキシリボース糖を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、DNAもしくはRNA対応物と比べて、安定性、半減期、または標的レセプターに対する特異性もしくは親和性を改善するように化学的に改変されたヌクレオチドアナログから構成される。化学的改変としては、核酸塩基、糖部分、ヌクレオチド結合、またはこれらの組み合わせの化学的改変が挙げられる。本明細書で使用される場合、「改変されたヌクレオチド」もしくは「化学的に改変されたヌクレオチド」は、上記複素環式塩基、糖部分もしくはホスフェート部分といった構成要素のうちの1つ以上の化学的改変を有するヌクレオチドを定義する。いくつかの実施形態において、上記改変されたヌクレオチドの電荷は、同じ核酸塩基配列のDNAもしくはRNAオリゴヌクレオチドと比較して、低下している。例えば、上記オリゴヌクレオチドは、低い負電荷、電荷なし、もしくは正電荷を有し得る。
【0074】
代表的には、ヌクレオシドアナログは、標準ポリヌクレオチド塩基へのワトソン-クリック塩基対合によって水素結合し得る塩基を支持し、ここで上記アナログ骨格は、オリゴヌクレオチドアナログ分子と、標準ポリヌクレオチド(例えば、1本鎖RNAもしくは1本鎖DNA)中の塩基との間で配列特異的様式においてこのような水素結合を可能にする様式で塩基を提示する。いくつかの実施形態において、上記アナログは、実質的に非荷電の、リン含有骨格を有する。
【0075】
(i.複素環式塩基)
主な天然に存在するヌクレオチドとしては、複素環式塩基としてウラシル、チミン、シトシン、アデニンおよびグアニンが挙げられる。上記オリゴヌクレオチドは、それらの核酸塩基構成要素に対して化学的改変を含み得る。複素環式塩基もしくは複素環式塩基アナログの化学的改変は、標的配列を結合するにあたって結合親和性もしくは安定性を増大させるために有効であり得る。化学的に改変された複素環式塩基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イノシン、5-(1-プロピニル)ウラシル(pU)、5-(1-プロピニル)シトシン(pC)、5-メチルシトシン、8-オキソ-アデニン、プソイドシトシン、プソイドイソシトシン、5および2-アミノ-5-(2’-デオキシ-β-D-リボフラノシル)ピリジン(2-アミノピリジン)、ならびに種々のピロロ-およびピラゾロピリミジン誘導体。サイトゾル危険センサー(cytosolic danger sensor)(例えば、STING)を誘発することが公知の環式ジヌクレオチドが、使用され得る。
【0076】
(ii.糖改変)
オリゴヌクレオチドはまた、改変された糖部分もしくは糖部分アナログを有するヌクレオチドを含み得る。糖部分改変としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:2’-O-アミノエトキシ、2’-O-アミノエチル(amonioethyl)(2’-OAE)、2’-O-メトキシ、2’-O-メチル、2-グアニドエチル(2’-OGE)、2’-O,4’-C-メチレン(LNA)、2’-O-(メトキシエチル)(2’-OME)および2’-O-(N-(メチル)アセトアミド)(2’-OMA)。2’-O-アミノエチル糖部分の置換は、特に好ましい。なぜなら、それらは、中性pHでプロトン化するので、TFOと標的二重鎖との間の電荷反発を抑制するからである。この改変は、リボースもしくはデオキシリボースのC3’-エンド型コンホメーションを安定化し、また、二重鎖のプリン鎖中のi-1ホスフェートと架橋を形成する。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、モルホリノオリゴヌクレオチドである。モルホリノオリゴヌクレオチドは、代表的には、塩基特異的水素結合によって、ポリヌクレオチド中の塩基に結合するために有効な、プリンもしくはピリミジン塩基対合部分を含む2個以上のモルホリノモノマーから構成され、上記モルホリノモノマーは、リン含有結合(1~3原子長を)によって一緒に連結し、1つのモノマーのモルホリノ窒素を隣接するモノマーの5’環外炭素に繋ぐ。上記プリンもしくはピリミジン塩基対合部分は、代表的には、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシルもしくはチミンである。モルホリノオリゴマーの合成、構造、および結合特性は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号、および同第5,506,337号に詳述される。
【0078】
上記モルホリノベースのサブユニットの重要な特性としては、代表的には、以下が挙げられる:安定な、非荷電の骨格連結によってオリゴマー形態で連結される能力;形成されるポリマーが相補的塩基の標的核酸(標的RNAを含む)と、高Tmで、10~14塩基程度の短さのオリゴマーとでもハイブリダイズし得るように、ヌクレオチド塩基(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、ウラシルもしくはイノシン)を支持する能力;上記オリゴマーが哺乳動物細胞の中へと能動的に輸送される能力;およびオリゴマー:RNAヘテロ二重鎖がRNAse分解に耐える能力。
【0079】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、塩基対合部分を有し、上記のように非荷電の結合によって繋がれるモルホリノベースのサブユニットを使用する。
【0080】
(iii.ヌクレオチド間結合)
オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド間結合によって繋がれ、ヌクレオチド間とは、2つのヌクレオシド部分の間の化学的結合をいう。DNAもしくはRNAオリゴヌクレオチドのホスフェート骨格に対する改変は、オリゴヌクレオチドの結合親和性もしくは安定性を増大させ得るか、またはオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ消化に対する感受性を低下させ得る。カチオン性の改変(ジエチル-エチレンジアミド(DEED)もしくはジメチル-アミノプロピルアミン(DMAP)が挙げられるが、これらに限定されない)は、上記オリゴヌクレオチドと標的との間の静電反発の低下に起因して、特に有用であり得る。上記ホスフェート骨格の改変はまた、ホスホジエステル結合中の非架橋酸素のうちの1つを硫黄原子で置換することを含み得る。この置換は、ホスホジエステル結合の代わりに、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を作る。ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドは、インビボでより安定であることが示された。
【0081】
低下した電荷を有する改変されたヌクレオチドの例としては、上記で考察されるように、アキラルおよび非荷電のサブユニット間結合を有するホスフェートアナログのような改変されたヌクレオチド間結合(例えば、Sterchak, E. P. et al., Organic Chem., 52:4202, (1987))、ならびにアキラルサブユニット間結合を有する非荷電のモルホリノベースのポリマー(例えば、米国特許第5,034,506号を参照のこと)が挙げられる。いくつかのヌクレオチド間結合アナログとしては、モルホリデート、アセタール、およびポリアミド結合複素環が挙げられる。
【0082】
別の実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、ロックされた核酸(locked
nucleic acid)から構成される。ロックされた核酸(LNA)は、改変されたRNAヌクレオチドである(例えば、Braasch, et al., Chem. Biol., 8(1):1-7 (2001)を参照のこと)。LNAは、DNAとハイブリッドを形成し、これは、DNA/DNAハイブリッドより安定である(ペプチド核酸(PNA)/DNAハイブリッドのものに類似の特性)。従って、LNAは、PNA分子がちょうどそうであるように、使用され得る。LNA結合効率は、いくつかの実施形態において、正電荷をそれに付加することによって増大させられ得る。市販の核酸合成装置および標準のホスホルアミダイトの化学は、LNAを作製するために使用され得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸から構成される。ペプチド核酸(PNA)は、上記オリゴヌクレオチドのホスフェート骨格が、その全体において反復するN-(2-アミノエチル)-グリシンユニットによって置換され、ホスホジエステル結合が代表的には、ペプチド結合によって置換される、合成DNA摸倣物である。種々の複素環式塩基が、メチレンカルボニル結合によって上記骨格に連結される。PNAは、従来のDNAオリゴヌクレオチドに類似している複素環式塩基の間隔を維持するが、アキラルであり中性に荷電した分子である。ペプチド核酸は、ペプチド核酸モノマーから構成される。
【0084】
他の骨格改変は、ペプチドおよびアミノ酸のバリエーションならびに改変を含む。従って、PNAのようなオリゴヌクレオチドの骨格構成要素は、ペプチド結合であり得るか、または代わりに、それらは、非ペプチド結合であり得る。例としては、アセチルキャップ、アミノスペーサー(例えば、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(本明細書ではO-リンカーといわれる)、アミノ酸(例えば、リジン)(これは、PNA中で正電荷が所望される場合に特に有用である)などが挙げられる。PNAの化学的アセンブリの方法は、周知である。例えば、米国特許第5,539,082号、同第5,527,675号、同第5,623,049号、同第5,714,331号、同第5,736,336号、同第5,773,571号および同第5,786,571号を参照のこと。
【0085】
オリゴヌクレオチドは、必要に応じて、上記オリゴヌクレオチドの安定性、および/もしくはその標的に対する親和性の増大のために、いずれかの末端もしくは両末端において、1個以上の末端残基もしくは改変を含む。一般に使用される正に荷電した部分としては、アミノ酸であるリジンおよびアルギニンが挙げられるが、他の正に荷電した部分もまた、有用であり得る。オリゴヌクレオチドはさらに、プロピルアミン基を使用して、分解を妨げるために末端キャップされるように改変され得る。オリゴヌクレオチドを3’もしくは5’キャップするための手順は、当該分野で周知である。
【0086】
いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、1本鎖DNA、1本鎖RNA、もしくは2本鎖RNAである。
【0087】
(b.ペプチド抗原)
脂質-ペプチド結合体が開示される。本明細書で記載されるペプチド結合体は、代表的には、抗原性タンパク質もしくはポリペプチドを含む。
【0088】
上記ペプチドは、2~100アミノ酸(aa)であり得る(例えば、5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、もしくは50アミノ酸が挙げられる)。いくつかの実施形態において、ペプチドは、50アミノ酸より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、>100アミノ酸であり得る。
【0089】
タンパク質/ペプチドは、直鎖状、分枝状もしくは環状であり得る。上記ペプチドは、Dアミノ酸、Lアミノ酸、もしくはこれらの組み合わせを含み得る。上記ペプチドもしくはタンパク質は、上記極性ブロックもしくは脂質に、そのペプチドもしくはタンパク質のN末端もしくはC末端で結合体化され得る。
【0090】
上記タンパク質もしくはポリペプチドは、任意のタンパク質もしくはペプチドであって、免疫系が上記タンパク質もしくはペプチドへの抗体応答およびT細胞応答を発生させる能力を誘導もしくは増大させ得るものであり得る。本明細書で開示される脂質-ペプチド結合体で使用され得る特定のペプチドおよびタンパク質抗原の例は、ワクチン処方物中で使用され得る好ましい抗原に関して以下でより詳細に考察される。
【0091】
脂質-タンパク質ベースのミセルは、ポリエチレングリコール(PEG)部分またはその誘導体もしくはアナログ(これは、疎水性脂質に連結される)に連結(結合)されたペプチド抗原を含む結合体の自己アセンブリによって、水性溶液中で形成され得る。
【0092】
(c.他のカーゴ)
一般に、上記カーゴは、治療剤、予防剤、もしくは診断剤を含み得る。例えば、化学療法薬は、腫瘍を標的化するための目的となる。なぜなら、アルブミンは、EPR効果によって、そしてまた、腫瘍中での迅速な代謝によって腫瘍中に蓄積することが公知であるからである。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される脂質結合体は、検出標識、例えば、フルオレセインもしくはローダミンのようなフルオロフォア、Alexa Fluor色素、DyLight Fluor色素、QuasarおよびCal Fluor色素、シアニン色素(Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7)または他の蛍光色素を含む。上記標識は、カーゴであり得るか、またはカーゴに付加したものであり得る。
【0094】
(3.極性ブロック/リンカー)
上記結合体がリンパ節に効率的に輸送されるように、上記結合体は、可溶性のままであるべきである。従って、極性ブロックリンカーは、上記結合体の溶解度を増大させるために、上記カーゴと上記脂質との間に含まれ得る。上記極性ブロックは、上記脂質が細胞(例えば、注射部位に隣接する組織中の細胞)の形質膜へと入り込む能力を低減するかもしくは妨げる。上記極性ブロックはまた、カーゴ(例えば、PS骨格を含む合成オリゴヌクレオチド)の能力を、投与部位における細胞外マトリクスタンパク質と非特異的に会合しないように低減し得るかもしくは妨げ得る。上記極性ブロックは、アルブミンへ結合するその能力を妨げることなく、上記結合体の溶解度を増大させる。この特徴の組み合わせは、上記結合体が血清もしくは組織液に存在するアルブミンに結合し、上記アルブミンがリンパ節に輸送されリンパ節で保持されるまで、循環中にとどまることを可能にすると考えられる。
【0095】
上記極性ブロックの長さおよび組成は、選択された脂質およびカーゴに基づいて調節され得る。例えば、オリゴヌクレオチド結合体に関しては、上記オリゴヌクレオチド自体は、上記結合体の溶解度を保証するために十分極性であり得る(例えば、長さが10、15、20もしくはそれより多くのヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド)。従って、いくつかの実施形態において、さらなる極性ブロックリンカーは必要ではない。しかし、アミノ酸配列に依存して、いくつかの脂質付加ペプチドは、本質的に不溶性であり得る。これらの場合、極性オリゴヌクレオチドの効果を摸倣する極性ブロックを含むことは望ましいことであり得る。
【0096】
極性ブロックは、本明細書で記載される脂質結合体のうちのいずれか(例えば、脂質-オリゴヌクレオチド結合体および脂質-ペプチド結合体)の一部として使用され得、細胞膜への入り込み/アルブミンへの優先的な分配を低減する。適切な極性ブロックとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:オリゴヌクレオチド(例えば、上記で考察されるもの)、親水性ポリマー(ポリ(エチレングリコール)(MW: 500Da~20,000Da)、ポリアクリルアミド(MW: 500Da~20,000Da)、ポリアクリル酸が挙げられるが、これらに限定されない);親水性アミノ酸(例えば、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、もしくはこれらの組み合わせ)鎖;ポリサッカリド(デキストラン(MW: 1,000Da~2,000,000Da)が挙げられるが、これらに限定されない)、またはこれらの組み合わせ。
【0097】
上記疎水性脂質および上記リンカー/カーゴは、共有結合される。共有結合は、切断不能な結合であっても、切断可能な結合であってもよい。切断不能な結合は、アミド結合もしくはホスフェート結合を含み得、上記切断可能な結合は、ジスルフィド結合、酸切断可能な結合、エステル結合、無水物結合(anhydride bond)、生分解可能な結合、もしくは酵素切断可能な結合を含み得る。
【0098】
(i.エチレングリコールリンカー)
好ましい実施形態において、上記極性ブロックは、1個以上のエチレングリコール(EG)ユニット、より好ましくは、2個以上のEGユニット(すなわち、ポリエチレングリコール(PEG))である。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチド結合体は、タンパク質もしくはペプチド(例えば、ペプチド抗原)およびポリエチレングリコール(PEG)分子またはその誘導体もしくはアナログによって連結された疎水性脂質を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるタンパク質結合体は、PEGに連結されたタンパク質抗原を含み、PEGは、続いて、共有結合的に、またはオリゴミセルへとハイブリダイズするタンパク質-オリゴ結合体の形成を介してかのいずれかで、疎水性脂質もしくは脂質-Gn-ON結合体に連結される。
【0100】
EGユニットの正確な数は、上記脂質および上記カーゴに依存するが、代表的には、極性ブロックは、約1~約100の間、約20~約80の間、約30~約70の間、または約40~約60の間のEGユニットを有し得る。いくつかの実施形態において、上記極性ブロックは、約45~55の間のEGユニットを有する。例えば、1つの好ましい実施形態において、上記極性ブロックは、48個のEGユニットを有する。
【0101】
(ii.オリゴヌクレオチドリンカー)
上記で考察されるように、いくつかの実施形態において、上記極性ブロックは、オリゴヌクレオチドである。上記極性ブロックのリンカー(liner)は、任意の配列を有し得る。例えば、上記オリゴヌクレオチドの配列は、ランダムな配列、またはその分子特性もしくは生化学的特性(例えば、非常に極性である)に関して特異的に選択された配列であり得る。いくつかの実施形態において、上記極性ブロックリンカーは、1つ以上の一連の連続したアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、もしくはこれらのアナログを含む。いくつかの実施形態において、上記極性ブロックリンカーは、一連の連続したアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、もしくはこれらのアナログからなる。
【0102】
一実施形態において、上記リンカーは、1個以上のグアニン、例えば、1~10個の間のグアニンである。カーゴ(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)と脂質テールとの間でグアニンの数を変化させることで、血清タンパク質の存在下でミセル安定性が制御されることが発見された。従って、上記リンカー中のグアニンの数は、血清タンパク質(例えば、アルブミン)に対する上記結合体の所望の親和性に基づいて選択され得る。以下の実施例で例示されるように、上記カーゴがCpG免疫刺激オリゴヌクレオチドであり、上記脂質テールがジアシル脂質である場合、グアニンの数は、水性溶液中で形成されるミセルが血清の存在下で解離する能力に影響を及ぼす:安定化されていないミセル(リポ-G0T10-CG)のうちの20%は、インタクトなままであった一方で、残りの80%は破壊され、FBS成分と結合した。グアニンの存在下では、インタクトなミセルのパーセンテージは、36%(リポ-G2T8-CG)から73%(リポ-G4T6-CG)へと増大し、最終的には、90%(リポ-G6T4-CG)に達した。グアニンの数を8個(リポ-G8T2-CG)および10個(リポ-G10T0-CG)へと増大させても、ミセル安定性はさらに増強されなかった。
【0103】
従って、好ましい実施形態において、リンパ節標的化結合体中のリンカーは、0個、1個、もしくは2個のグアニンを含み得る。以下でより詳細に考察されるように、3個以上連続したグアニンを含むリンカーは、投与部位もしくはその付近で局所適用に十分に適した特性を有するミセル安定化結合体を形成するために使用され得る。
【0104】
(B.ミセル安定化結合体)
ミセル安定化結合体は、送達部位周囲の組織中に蓄積する脂質-オリゴヌクレオチド結合体および脂質-ペプチド結合体のような結合体を含む。上記結合体は、代表的には、アルブミンに結合しない。いくつかの実施形態において、ミセル安定化脂質結合体を調製するために使用される脂質は、上記で考察されるリンパ節標的化脂質結合体で使用される脂質と同じであり、アルブミンへの結合に耐える能力は、上記カーゴ、上記リンカー、もしくはこれらの組み合わせの分子的もしくは生化学的特性によって制御される。いくつかの実施形態において、リンパ節標的化結合体における使用に有効でない脂質は、ミセル安定化結合体において有用である。なぜなら、上記ミセル安定化結合体は、必ずしもアルブミンに結合しなくてもよいからである。
【0105】
ミセル安定化結合体は、上記で考察されるように、血清成分(例えば、アルブミン)によって破壊されないミセルを水性溶液中で自発的に形成する能力に基づいて、選択され得る。上記脂質もしくは脂質結合体がアルブミンに結合する能力を試験するための適切な方法は、当該分野で公知であり、以下の実施例で考察される。例えば、一実施形態において、複数の脂質結合体は、水性溶液中でミセルを自発的に形成させることが可能である。上記ミセルは、アルブミン、またはアルブミンを含む溶液(例えば、ウシ胎仔血清(FBS))とともにインキュベートされる。サンプルは、結合が起こったか否かを決定するために、例えば、ELISA、サイズ分離クロマトグラフィーもしくは他の方法によって分析され得る。脂質結合体は、アルブミンまたはアルブミンを含む溶液(例えば、ウシ胎仔血清(FBS))の存在下で、上記ミセルがインタクトなままであり、上記脂質結合体がアルブミンに結合しない場合、ミセル安定化結合体として選択され得る。
【0106】
ミセル安定化脂質結合体における使用に好ましい脂質の例としては、8~30個の炭素の脂肪族テールを有する脂肪酸(直鎖状の不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸、分枝状の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸、ならびに脂肪酸誘導体(例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、および脂肪酸チオエステル)が挙げられるが、これらに限定されない)、ジアシル脂質、コレステロール、コレステロール誘導体、ならびにステロイド酸(例えば、胆汁酸);リピドAまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
いくつかの実施形態において、上記脂質は、ジアシル脂質もしくは2テールの脂質である。いくつかの実施形態において、上記ジアシル脂質中のテールは、約8~約30個の炭素を含み、飽和、不飽和もしくはこれらの組み合わせであり得る。上記テールは、エステル結合リンケージ、アミノ結合リンケージ、チオエステル結合リンケージ、もしくはこれらの組み合わせを介してヘッド基に連結され得る。特定の実施形態において、上記ジアシル脂質は、ホスフェート脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、もしくはこれらの組み合わせである。
【0108】
上記で考察されるように、いくつかの実施形態において、アルブミンの存在下でのミセルの安定性は、上記リンカーが影響を及ぼす。例えば、オリゴヌクレオチド(例えば、免疫刺激オリゴヌクレオチド)および上記脂質は、3個以上の介在グアニンヌクレオチドによって連結され得る。上記ヌクレオチドは、上記オリゴヌクレオチドの5’末端に位置し得る。グアニンリッチDNA配列は、水素結合を介して四重鎖構造を形成し得、ここでこの構造において、オリゴグアニンが、4個の個々のグアニンリッチDNA配列を一緒に分子的に「接着」する。従って、上記免疫刺激オリゴヌクレオチド結合体は、「G四重鎖」へと自己アセンブリし得る。次いで、これは、疎水性脂質コアおよび核酸コロナを有するミセルを形成するようにアセンブリする。以下の実施例で例示されるように、ミセルの動的安定性は、上記疎水性脂質を上記免疫刺激オリゴヌクレオチドに連結するグアニンヌクレオチドの数を変化させることによって制御され得る。いくつかの実施形態において、上記免疫刺激オリゴヌクレオチドおよび上記疎水性脂質は、上記オリゴヌクレオチドの5’末端において単一のグアニンによって連結される一方で、他の実施形態においては、上記免疫刺激オリゴヌクレオチドおよび上記疎水性脂質は、上記オリゴヌクレオチドの5'末
端において2個のグアニンによって連結される。いくつかの実施形態において、介在オリゴグアニン(Gn)は、3~10個のグアニン(n=3~10)を含む。
【0109】
ミセル安定化結合体のカーゴは、リンパ節標的化結合体、ならびに低分子、オリゴヌクレオチド、もしくはペプチド治療剤(すなわち、当業者が局所送達部位での蓄積のために選択する任意のカーゴ)に関して、上記で考察されるカーゴのうちのいずれかを含み得る。
【0110】
ミセル安定化結合体は、自己アセンブリによって水性溶液中でミセルを自発的に形成し得る。上記ミセルは、疎水性脂質コアおよび親水性表面を有する。水性環境(例えば、水、緩衝液)中でのミセルの形成は、疎水性相互作用によって駆動され、上記ミセルは、上記のとおりのG四重鎖の形成によって安定化される。ミセルは、水性環境中でのカチオン(例えば、カリウム(K+))の存在によってさらに安定化される。上記カチオンは、2つのG四重鎖をつなぎ、上記免疫刺激オリゴヌクレオチドの間の静電相互作用を最小にする。グアニンリッチオリゴヌクレオチド配列は、種々のタイプの構造(例えば、分子内、分子間、パラレル、およびアンチパラレル)へと折りたたまれ得る(Davis, J.
T. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 43, 668-698 (2004))。ミセル自己アセンブリを促進し、オリゴヌクレオチド折りたたみを最小にするために、上記脂質-オリゴヌクレオチド結合体は、上記ミセルのアセンブリを可能にするために純水中に懸濁され得、次いで、カリウム含有緩衝液が、上記G四重鎖を安定化するために添加され得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、均質なミセル集団のミセルは、サイズが実質的に均一である。本明細書で使用される場合、「均質な」集団のミセルは、各々、同じタイプの脂質-オリゴヌクレオチド結合体(例えば、L-5’-Gn-CG-ODN-3’結合体)から同様に構成される。
【0112】
上記で考察されるように、上記ミセルの安定性は、上記極性ブロック中のグアニンヌクレオチドの数を変化させることによって制御され得る。例えば、いくつかの実施形態において、上記結合体は、上記オリゴヌクレオチドの5’末端における1個以上のグアニンヌクレオチドおよび最も5’側にあるグアニンに連結された疎水性脂質を含む。ミセル「安定性」とは、本明細書で使用される場合、血清、アルブミン、もしくは他のタンパク質または脂質の存在下での分解もしくはミセルサイズの変化に対する耐性、および/あるいは細胞の存在下でのサイズもしくは組成の変化に対する上記ミセルの耐性をいう。
【0113】
本明細書で記載されるとおりのミセルの直径は、約3nm~約100nmであり得る。いくつかの実施形態において、ミセルの直径は、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nm、13nm、14nm、15nm、16nm、17nm、18nm、20nm、21nm、22nm、23nm、24nm、25nm、26nm、27nm、28nm、29nm、30nm、31nm、32nm、33nm、34nm、35nm、36nm、37nm、38nm、39nm、40nm、41nm、42nm、43nm、44nm、45nm、46nm、47nm、48nm、49nm、50nm、51nm、52nm、53nm、54nm、55nm、56nm、57nm、58nm、59nm、60nm、61nm、62nm、63nm、64nm、65nm,66nm、67nm、68nm、69nm、70nm、71nm、72nm、73nm、74nm、75nm、76nm、77nm、78nm、79nm、80nm、81nm、82nm、83nm、84nm、85nm、86nm、87nm、88nm、89nm、90nm、91nm、92nm、93nm、94nm、95nm、96nm、97nm、98nm、99nm、もしくは100nmである。いくつかの実施形態において、ミセルの直径は、約20nmもしくは約50nmである。
【0114】
(III.処方物)
(A.薬学的組成物)
脂質結合体を含む薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、非経口投与経路(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)もしくは皮下注射)、経皮投与経路(受動的に、またはイオン導入法もしくはエレクトロポレーションによってのいずれかで)、または経粘膜(鼻、膣、直腸もしくは舌下)投与経路によって、あるいは生分解性インサートを使用して投与するためのものであり得、各投与経路に適した投与形態で処方され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、全身に、例えば、静脈内もしくは腹腔内投与によって、標的とした細胞への上記組成物を送達するために有効な量で、投与される。他の可能な経路は、経皮もしくは経口を含む。
【0116】
特定の実施形態において、上記組成物は、局所的に、例えば、処置される部位への直接注射によって、投与される。いくつかの実施形態において、上記組成物は、注射されるか、またはそうでなければ1以上の腫瘍に直接投与される。代表的には、局所注射は、全身投与によって達成され得るものより大きな上記組成物の局所濃度の増大を引き起こす。いくつかの実施形態において、上記組成物は、カテーテルもしくはシリンジを使用することによって、適切な細胞へと局所送達される。このような組成物を細胞へと局所的に送達する他の手段としては、注入ポンプ(例えば、Alza Corporation(Palo Alto, Calif.)製)を使用すること、または上記組成物をポリマーインプラントの中に組みこむこと(例えば、P. Johnson and J. G. Lloyd-Jones, eds., Drug Delivery Systems (Chichester, England: Ellis Horwood Ltd., 1987)を参照のこと)が挙げられ、これは、上記インプラントの直ぐ近くの領域にナノリポゲル(nanolipogel)の徐放をもたらし得る。
【0117】
さらなる研究が行われるにつれて、種々の患者における種々の状態の処置に適切な投与レベルに関する情報が明らかになり、当業者は、治療の前後関係、レシピエントの年齢、および全身的な健康状態を考慮して、適切な投与を確かめ得る。上記選択された投与量は、所望の治療効果、投与経路、および所望の処置の期間に依存する。一般に、1日に0.001~10mg/kg体重の投与レベルが、哺乳動物に投与される。一般に、静脈内注射もしくは注入に関しては、投与量は、より少なくてもよい。
【0118】
(1.非経口投与のための処方物)
好ましい実施形態において、上記脂質結合体は、水性溶液中で、非経口投与によって投与される。いくつかの実施形態において、上記組成物は、アルブミン、もしくは他の血清タンパク質を含む。
【0119】
上記処方物は、懸濁物もしくはエマルジョンの形態であり得る。一般に、有効量の上記結合体を含む薬学的組成物が提供され、必要に応じて、薬学的に許容され得る希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/もしくはキャリアを含む。このような組成物は、希釈剤、滅菌水、種々の緩衝剤内容物の緩衝化生理食塩水(例えば、Tris-HCl、酢酸、ホスフェート)、pHおよびイオン強度;ならびに必要に応じて、添加剤(例えば、界面活性剤および可溶化剤(例えば、ポリソルベート20もしくはポリソルベート80ともいわれるTWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、ならびに保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)および充填物質(bulking substance)(例えば、ラクトース、マンニトール)を含み得る。非水性溶媒もしくはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油(例えば、オリーブ油およびコーン油)、ゼラチン、および注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)である。上記処方物は、凍結乾燥され得、使用直前に、再溶解/再懸濁され得る。上記処方物は、例えば、細菌保持フィルタを通してフィルタにかけることによって、滅菌剤を上記組成物に組みこむことによって、上記組成物を照射することによって、もしくは上記組成物を加熱することによって、滅菌され得る。
【0120】
(2.局所投与および粘膜投与のための処方物)
上記脂質結合体は、局所適用され得る。局所投与は、肺、鼻、口腔(舌下、口内)、膣、もしくは直腸の粘膜への適用を含み得る。いくらかの場合、上記結合体は、粘膜バリアを横断してアルブミンに経細胞輸送され(transcytosed)得る。
【0121】
組成物は、約5ミクロン未満の空気動力学的直径を有するエアロゾルもしくは噴霧乾燥粒子のいずれかとして送達される場合、吸入すると同時に肺へ送達され得、肺上皮の内側を通って血流へと横断し得る。
【0122】
治療生成物の肺送達のために設計された広い範囲の機械的デバイスが使用され得、これらとしては、ネブライザ、用量計量式吸入器、および粉末吸入器(これらの全ては、当業者が精通している)が挙げられるが、これらに限定されない。市販のデバイスのいくつかの具体例は、Ultravent(登録商標)ネブライザ(Mallinckrodt Inc., St. Louis, Mo.);Acorn(登録商標) IIネブライザ(Marquest Medical Products, Englewood, Colo.);Ventolin(登録商標)用量計量式吸入器(Glaxo Inc., Research Triangle Park, N.C.);およびSpinhaler(登録商標)粉末吸入器(Fisons Corp., Bedford, Mass.)である。Nektar、AlkermesおよびMannkindは全て、上記技術が本明細書で記載される処方物に適用され得る、承認されているかもしくは臨床試験中の吸入可能なインスリン粉末調製物を有する。
【0123】
粘膜への投与のための処方物は、代表的には、噴霧乾燥薬物粒子であり、これは、錠剤、ゲル、カプセル剤、懸濁物もしくはエマルジョンへと組み込まれ得る。標準的な薬学的賦形剤は、任意の調合者(formulator)から入手可能である。経口処方物は、チューイングガム、ゲルストリップ、錠剤、カプセル剤、もしくはロゼンジの形態であり得る。
【0124】
経皮的処方物もまた、調製され得る。これらは、代表的には、軟膏、ローション、スプレー、もしくはパッチであり、これらは全て、標準的技術を使用して調製され得る。経皮的処方物は、浸透増強剤を含み得る。
【0125】
(B.免疫原性組成物)
本明細書で開示される結合体は、免疫原性組成物中で、もしくはワクチン中の成分として使用され得る。代表的には、本明細書で開示される免疫原性組成物は、アジュバント、抗原、もしくはこれらの組み合わせを含む。アジュバントと抗原との組み合わせは、ワクチンといわれ得る。組み合わせて被験体に投与される場合、上記アジュバントおよび抗原は、別個の薬学的組成物で投与され得るか、またはそれらは、同じ薬学的組成物の中で一緒に投与され得る。組み合わせて投与される場合、上記アジュバントが脂質結合体であり得るか、上記抗原が脂質結合体であり得るか、または上記アジュバントおよび上記抗原の両方が脂質結合体であり得る。
【0126】
(1.抗原)
免疫原性組成物は、単独でまたは抗原と組み合わせて投与される、アジュバントである脂質結合体(例えば、免疫刺激オリゴヌクレオチド-脂質結合体)を含み得る。抗原は、ペプチド、タンパク質、ポリサッカリド、サッカリド、脂質、核酸、またはこれらの組み合わせであり得る。上記抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、植物、原生動物、真菌、組織もしくは形質転換細胞(例えば、癌もしくは白血病細胞)に由来し得、細胞全体もしくはその免疫原性成分(例えば、細胞壁成分もしくはその分子成分)であり得る。
【0127】
適切な抗原は、当該分野で公知であり、政府機関および科学機関から市販されている。一実施形態において、上記抗原は、不活性化された生物全体もしくは弱毒化された生物全体である。これら生物は、感染性生物(例えば、ウイルス、寄生生物および細菌)であり得る。これら生物はまた、腫瘍細胞であり得る。上記抗原は、腫瘍またはウイルス源もしくは細菌源由来の精製されたかもしくは部分精製されたポリペプチドであり得る。上記抗原は、異種発現系においてポリペプチド抗原をコードするDNAを発現させることによって生成される組換えポリペプチドであり得る。上記抗原は、抗原性タンパク質の全てもしくは一部をコードするDNAであり得る。上記DNAは、ベクターDNA(例えば、プラスミドDNA)の形態であり得る。
【0128】
抗原は、単一の抗原として提供され得るか、または組み合わせて提供され得る。抗原はまた、ポリペプチドもしくは核酸の複雑な混合物として提供され得る。例示的な抗原は、以下に提供される。
【0129】
(a.ウイルス抗原)
ウイルス抗原は、以下のウイルス科のうちのいずれかのウイルスが挙げられるが、これらに限定されない任意のウイルスから単離され得る: Arenaviridae、Arterivirus、Astroviridae、Baculoviridae、Badnavirus、Barnaviridae、Birnaviridae、Bromoviridae、Bunyaviridae、Caliciviridae、Capillovirus、Carlavirus、Caulimovirus、Circoviridae、Closterovirus、Comoviridae、Coronaviridae(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスのようなコロナウイルス)、Corticoviridae、Cystoviridae、Deltavirus、Dianthovirus、Enamovirus、Filoviridae(例えば、マールブルグウイルスおよびエボラウイルス(例えば、Zaire株、Reston株、Ivory Coast株もしくはSudan株))、Flaviviridae(例えば、C型肝炎ウイルス、デングウイルス1、デングウイルス2、デングウイルス3、およびデングウイルス4)、Hepadnaviridae、Herpesviridae (例えば、ヒトヘルペスウイルス1、3、4、5、および6、ならびにサイトメガロウイルス)、Hypoviridae、Iridoviridae、Leviviridae、Lipothrixviridae、Microviridae、Orthomyxoviridae(例えば、インフルエンザウイルスAおよびBおよびC)、Papovaviridae、Paramyxoviridae(例えば、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、およびヒトRSウイルス)、Parvoviridae、Picornaviridae(例えば、ポリオウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、および口蹄疫ウイルス)、Poxviridae(例えば、ワクシニアおよび痘瘡ウイルス)、Reoviridae(例えば、ロタウイルス)、Retroviridae(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1およびHIV2のようなレンチウイルス)、Rhabdoviridae(例えば、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルスなど)、Togaviridae(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど)、ならびにTotiviridae。適切なウイルス抗原はまた、デングタンパク質M、デングタンパク質E、デングD1NS1、デングD1NS2、およびデングD1NS3の全てもしくは一部を含む。
【0130】
ウイルス抗原は、特定の株(例えば、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、例えば、単純ヘルペス1および2;肝炎ウイルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ(D型)肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス;パラインフルエンザウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、およびリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)に由来し得る。
【0131】
(b.細菌抗原)
細菌抗原は、以下が挙げられるが、これらに限定されない任意の細菌に由来し得る: Actinomyces、Anabaena、Bacillus、Bacteroides、Bdellovibrio、Bordetella、Borrelia、Campylobacter、Caulobacter、Chlamydia、Chlorobium、Chromatium、Clostridium、Corynebacterium、Cytophaga、Deinococcus、Escherichia、Francisella、Halobacterium、Heliobacter、Haemophilus、Hemophilus influenza type B (HIB)、Hyphomicrobium、Legionella、Leptspirosis、Listeria、Meningococcus A、BおよびC、Methanobacterium、Micrococcus、Myobacterium、Mycoplasma、Myxococcus、Neisseria、Nitrobacter、Oscillatoria、Prochloron、Proteus、Pseudomonas、Phodospirillum、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Spirillum、Spirochaeta、Staphylococcus、Streptococcus、Streptomyces、Sulfolobus、Thermoplasma、Thiobacillus、およびTreponema、Vibrio、ならびにYersinia。
【0132】
(c.寄生生物抗原)
寄生生物抗原は、寄生生物から得られ得、例えば、これらに限定されないが、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Candida albicans、Candida tropicalis、Nocardia asteroides、Rickettsia ricketsii、Rickettsia typhi、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydial psittaci、Chlamydial trachomatis、Plasmodium falciparum、Trypanosoma brucei、Entamoeba histolytica、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalisおよびSchistosoma mansoniに由来する抗原が挙げられる。これらは、胞子虫抗原、プラスモジウム抗原(例えば、スポロゾイト周囲のタンパク質(Circumsporozoite protein)、スポロゾイト表面タンパク質、肝臓ステージ抗原、頂端膜関連タンパク質、もしくはメロゾイト表面タンパク質の全てもしくは一部を含む。
【0133】
(d.アレルゲンおよび環境抗原)
上記抗原は、アレルゲンもしくは環境抗原(例えば、天然に存在するアレルゲン(例えば、花粉アレルゲン(樹木、草本、雑草、および牧草の花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(吸入物(inhalant)、唾液および毒液のアレルゲン)、動物の毛髪およびふけのアレルゲン、ならびに食物アレルゲンに由来する抗原が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。樹木、牧草および草本の重要な花粉アレルゲンは、分類学上の目であるFagales、Oleales、Pinalesおよびplatanaceae(特に、カバノキ(Betula)、ハンノキ(Alnus)、ハシバミ(Corylus)、シデ(Carpinus)およびオリーブ(Olea)、シーダー(Cryptomeriaand Juniperus)、プラタナス(Platanus)が挙げられる)、Poales目(例えば、Lolium属、Phleum属、Poa属、Cynodon属、Dactylis属、Holcus属、Phalaris属、Secale属、およびSorghum属の牧草が挙げられる)、Asterales目およびUrticales目(特に、Ambrosia属、Artemisia属、およびParietaria属の草本が挙げられる)に由来する。使用され得る他のアレルゲン抗原としては、Dermatophagoides属およびEuroglyphus属のチリダニ、例えば、Lepidoglyphys、GlycyphagusおよびTyrophagusのコナダニ由来のアレルゲン、ゴキブリ、小虫およびノミ(例えば、Blatella、Periplaneta、ChironomusおよびCtenocepphalides)由来のアレルゲン、哺乳動物(例えば、ネコ、イヌおよびウマ)、鳥類由来のアレルゲン、毒液アレルゲン(刺したり咬んだりする昆虫に由来するアレルゲン(例えば、ハチ(Apidae上科)、スズメバチ(Vespidea上科)およびアリ(Formicoidae上科)を含む分類学上のHymenoptera目に由来するアレルゲンを含む)が挙げられる。使用され得るさらに他のアレルゲン抗原としては、真菌由来(例えば、Alternaria属およびCladosporium属由来)の吸入アレルゲンが挙げられる。
【0134】
(e.癌抗原)
癌抗原は、代表的には、癌細胞によって優先的に発現される抗原であり、すなわち、非癌細胞よりも癌細胞においてより高いレベルで発現され、ある場合には、癌細胞によってのみ発現される。上記癌抗原は、癌細胞内でもしくは癌細胞の表面で発現され得る。上記癌抗原は、MART-1/Melan-A、gp100、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、FAP、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)--C017-1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)、CAP-1、CAP-2、etv6、AML1、前立腺特異的抗原(PSA)、PSA-1、PSA-2、PSA-3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞レセプター/CD3-ζ鎖、およびCD20であり得る。上記癌抗原は、以下からなる群より選択され得る:MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-Xp2(MAGE-B2)、MAGE-Xp3(MAGE-B3)、MAGE-Xp4(MAGE-B4)、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-C4、MAGE-C5)、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7、GAGE-8、GAGE-9、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α-フェトプロテイン、E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120ctn、gp100Pmel117、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、p15、gp75、GM2ガングリオシド、GD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、P1A、EBVコード核抗原(EBNA)-1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1およびCT-7、CD20、もしくはc-erbB-2。
【0135】
(2.アジュバント)
免疫原性組成物は、単独で、もしくはアジュバントと組み合わせて投与される、抗原性ポリペプチド-脂質結合体のような抗原である脂質結合体を含み得る。
【0136】
上記アジュバントは、ミョウバン(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム);Q.saponariaの木の樹皮から精製されたサポニン(例えば、QS21(HPLC分画で21番目のピークに溶出する糖脂質; Antigenics, Inc., Worcester, Mass.));ポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン(PCPPポリマー; Virus Research Institute, USA)、Flt3リガンド、リーシュマニア伸長因子(精製されたリーシュマニアタンパク質; Corixa Corporation, Seattle, Wash.)、ISCOMS(サポニン、脂質、および抗原を保持し得る孔があるウイルスサイズの粒子の混合物を含む免疫刺激複合体; CSL, Melbourne, Australia)、Pam3Cys、SB-AS4(ミョウバンおよびMPLを含むSmithKline Beechamアジュバントシステム#4; SBB, Belgium)、CRL 1005のようなミセルを形成する非イオン性ブロックコポリマー(これらは、ポリオキシエチレンの鎖が隣接した疎水性ポリオキシプロピレンの直鎖を含む、Vaxcel, Inc., Norcross, Ga.)、ならびにMontanide IMS(例えば、IMS 1312, 可溶性免疫刺激因子Seppicと組み合わせた水ベースのナノ粒子)であり得るが、これらに限定されない。
【0137】
アジュバントは、上記で考察されるもののように、TLRリガンドであり得る。TLR3を介して機能するアジュバントとしては、2本鎖RNAが挙げられるが、これらに限定されない。TLR4を介して機能するアジュバントとしては、リポポリサッカリドの誘導体(例えば、モノホスホリルリピドA(MPLA; Ribi ImmunoChem Research, Inc., Hamilton, Mont.))およびムラミルジペプチド(MDP; Ribi)およびスレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP; Ribi);OM-174(リピドAに関連するグルコサミンジサッカリド; OM
Pharma SA, Meyrin, Switzerland)が挙げられるが、これらに限定されない。TLR5を介して機能するアジュバントとしては、フラジェリンが挙げられるが、これらに限定されない。TLR7および/もしくはTLR8を介して機能するアジュバントとしては、1本鎖RNA、オリゴリボヌクレオチド(ORN)、合成低分子量化合物(例えば、イミダゾキノリンアミン(例えば、イミキモド(R-837)、レシキモド(R-848)))が挙げられる。TLR9を介して機能するアジュバントとしては、ウイルスもしくは細菌起源のDNA、または合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(例えば、CpG ODN)が挙げられる。別のアジュバントクラスは、ホスホロチオエート含有分子(例えば、ホスホロチオエートヌクレオチドアナログ)およびホスホロチオエート骨格結合を含む核酸である。
【0138】
上記アジュバントはまた、油エマルジョン(例えば、フロイントアジュバント);サポニン処方物;ビロソームおよびウイルス様粒子;細菌および微生物の派生物;免疫刺激オリゴヌクレオチド;ADPリボシル化毒素および無毒化誘導体;ミョウバン;BCG;ミネラル含有組成物(例えば、無機塩(例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩など);生体接着物質および/もしくは粘膜接着物質;マイクロ粒子;リポソーム;ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物;ポリホスファゼン;ムラミルペプチド;イミダゾキノロン化合物;ならびに界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペット・ヘモシアニン、およびジニトロフェノール)であり得る。
【0139】
アジュバントはまた、免疫調節因子、例えば、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロン-γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられ得る。
【0140】
(C.組み合わせ治療)
いくつかの実施形態において、上記結合体は、1種以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与される。上記薬剤は、上記結合体と同じ薬学的組成物の中で投与され得るか、または上記結合体および上記さらなる治療剤は、別個の薬学的組成物で投与され得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、上記結合体は、処置される疾患もしくは状態の処置のために使用される従来の治療剤と組み合わせて投与される。従来の治療剤は、当該分野で公知であり、処置される予定の疾患もしくは障害に基づいて、当業者によって決定され得る。例えば、上記疾患もしくは状態が癌である場合、上記結合体は、化学療法薬と共投与され得るか;または上記疾患もしくは状態が細菌感染である場合、上記結合体は、抗生物質と共投与され得る。
【0142】
(IV.使用法)
(A.免疫刺激剤を送達するための方法)
(1.ンパ節標的化)
以下で提示されるデータは、カーゴ(例えば、オリゴヌクレオチド、もしくはペプチド)をアルブミン結合ドメインに結合体化すると、リンパ節への上記カーゴの送達および蓄積が増大し得るという発見を裏付ける。リンパ節は、腋窩および胃を含む身体全体に広く分布してリンパ管によって繋がれている、免疫系の卵形をした器官である。リンパ節は、B細胞、T細胞、および他の免疫細胞の拠点である。リンパ節は、外来粒子のフィルタまたはトラップとして機能し、免疫系の適切な機能において重要である。それらは、リンパ球およびマクロファージといわれる白血球が密に詰まっている。
【0143】
リンパ節標的化結合体は、代表的には、注射部位から、免疫細胞と相互作用するリンパ系二次器官(例えば、リンパ節)へと輸送される。上記結合体のアルブミン結合は、上記結合体が血流へと急速に流れ出てるのを妨げ、それらがフィルタにかけられ、蓄積し、それらの免疫刺激オリゴヌクレオチド、抗原性ペプチド、もしくは他のカーゴを免疫細胞に提示するリンパ管および流入領域リンパ節へと再度標的化するのを妨げると考えられる。
【0144】
上記で考察されるように、アルブミン結合脂質は、非結合体化オリゴヌクレオチドもしくは抗原性ペプチドを投与するのと比較して、例えば、免疫刺激オリゴヌクレオチドもしくは抗原性ペプチドの免疫刺激効果を増大させる上記オリゴヌクレオチドもしくは上記抗原性ペプチドに結合体化され得る。いくつかの実施形態において、アルブミン結合脂質への上記免疫刺激オリゴヌクレオチドもしくはペプチド抗原の結合体化は、非結合体化カーゴと比較して、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍もしくはそれより高く、上記カーゴの蓄積を増大させる。
【0145】
(2.組織特異的標的化)
ミセル安定化結合体は、投与部位もしくはその付近の組織への上記カーゴの送達および蓄積を増大させるために使用され得る。ミセル安定化結合体は、アルブミンのような血清タンパク質による破壊に耐性であると考えられる。従って、それらは、注射部位に、例えば、細胞外マトリクスタンパク質に結合するか、もしくは局所の細胞の細胞膜へと入り込むことによって、蓄積し得る。
【0146】
ミセル安定化結合体は、投与部位での免疫刺激オリゴヌクレオチド、抗原性ペプチド、低分子、および他の標的の局所的蓄積を増大させるために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記免疫刺激オリゴヌクレオチドもしくはペプチド抗原の結合体は、非結合体化カーゴと比較して、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍もしくはそれより高く、上記カーゴの局所的蓄積を増大させる。
【0147】
(B.免疫応答を増大させるための方法)
免疫刺激オリゴヌクレオチドもしくは抗原性ペプチドカーゴを含む脂質結合体は、免疫応答を誘導するか、増大させるかもしくは増強するために有効な量で投与され得る。上記「免疫応答」とは、自然免疫もしくは獲得免疫の活性化もしくは有効性を誘導するか、増大させるか、もしくは永続させる応答をいう。さらに、他のアジュバントの非存在下で投与されるポリペプチド抗原のアルブミン結合脂質結合体は、例えば、アレルゲンもしくは自己免疫抗原への免疫ではなく寛容性を促進するために使用され得る。上記結合体は、リンパ管を介して非経口的に(皮下注射、皮内注射もしくは筋肉内注射によって)、または循環系を介する全身投与によって、送達され得る。リンパ節は、アルブミンに結合した結合体をフィルタにかけ得ることが示される。従って、いくつかの実施形態において、非経口投与は、全身分布を生じさせない。なぜなら、上記結合体は、最も近いリンパ節によって優先的にフィルタにかけられ得るからである。この傾向はまた、脾臓の腫脹のような全身毒性を低減する。
【0148】
よって、いくつかの実施形態において、上記結合体は、免疫応答の必要な部位に近い(すなわち、腫瘍もしくは感染部位に近い)1以上のリンパ節に隣接するかもしくはそこに通じる部位に投与され得る。いくつかの実施形態において、上記結合体は、身体全体の種々の位置に、複数用量で投与される。上記結合体、特に、ミセル安定化結合体もまた、免疫応答の必要な部位(例えば、腫瘍もしくは感染部位)に直接投与され得る。
【0149】
上記免疫応答は、コントロール(例えば、カーゴのみによって、または上記カーゴがリポソームのような代わりの送達ストラテジーを使用して送達されることによって誘導、増大もしくは増強された被験体の免疫応答)と比較して、上記脂質結合体によって誘導、増大もしくは増強され得る。以下でより詳細に考察されるように、いくつかの実施形態において、脂質結合体は、不活性化を低減し、そして/またはT細胞の活性化を延長する(すなわち、T細胞の抗原特異的増殖を増大させ、T細胞によるサイトカイン生成を増強し、T細胞の分化およびエフェクター機能を刺激し、そして/またはT細胞生存を促進する)か、あるいはT細胞枯渇および/もしくはアネルギーを克服する。
【0150】
上記脂質結合体は、例えば、上記カーゴのみを投与する場合に、または代替の送達システムと組み合わせた上記カーゴが、有効でない場合に、免疫応答を誘導するために使用され得る。上記脂質結合体はまた、カーゴのみを投与するのと比較して、免疫応答を増強もしくは改善するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記脂質結合体は、免疫応答を誘導、増大もしくは増強するために必要とされる投与量を低減し得るか;または投与後に免疫系が応答するために必要とされる時間を短縮し得る。
【0151】
脂質結合体は、感染性因子へのその後の曝露に対する被験体の耐性を付与する予防ワクチンもしくは免疫原性組成物の一部として、または既存の抗原(例えば、ウイルスに感染したもしくは癌を有する被験体におけるウイルス抗原)に対する被験体の免疫応答を開始もしくは増強するために使用され得る治療ワクチンの一部として、投与され得る。
【0152】
予防的もしくは治療的な免疫応答の所望の予後は、処置される予定の疾患もしくは状態に従って、または当該分野で周知の原則に従って、変動し得る。例えば、感染性因子に対する免疫応答は、感染性因子のコロニー形成および複製を完全に妨げて、「無菌免疫(sterile immunity)」およびいずれの疾患の症状もないことをもたらす。しかし、感染性因子に対するワクチンは、症状の数、重篤度もしくは持続時間を低下させれば;症状を有する集団中の個体の数を低減させれば;または感染性因子の伝播を低減させれば、有効と考えられ得る。同様に、癌、アレルゲンもしくは感染性因子に対する免疫応答は、疾患を完全に処置してもよいし、症状を軽減してもよいし、疾患に対する治療介入全体の中の一面であってもよい。
【0153】
上記脂質結合体は、上記脂質結合体なしの対応する組成物により得られるエフェクター細胞応答と比較して、構成抗原もしくは抗原性組成物のうちの少なくとも一方に対する改善されたエフェクター細胞応答(例えば、CD4 T細胞免疫応答)を誘導する。用語「改善されたエフェクター細胞応答」とは、脂質結合体なしの同じ組成物の投与後に得られるものより、上記ワクチン組成物の投与後のヒト患者で得られる、より高いエフェクター細胞応答(例えば、CD8もしくはCD4応答)をいう。
【0154】
改善されたエフェクター細胞応答は、免疫学的に初回刺激されていない(unprimed)患者、すなわち、上記抗原に対して血清反応陰性である患者で得られ得る。この血清反応陰性は、上記抗原に一度も出会っていない患者(いわゆる、「無処置」患者)もしくは代わりに、1回遭遇した抗原に応答しなかった患者の結果であり得る。いくつかの実施形態において、上記改善されたエフェクター細胞応答は、免疫不全の被験体で得られる。
【0155】
上記改善されたエフェクター細胞応答は、以下のサイトカインのうちのいずれかを生成する細胞:(1)少なくとも2種の異なるサイトカイン(CD40L、IL-2、IFN-γ、TNF-α)を生成する細胞;(2)少なくともCD40Lおよび別のサイトカイン(IL-2、TNF-α、IFN-γを生成する細胞;(3)少なくともIL-2および別のサイトカイン(CD40L、TNF-α、IFN-γ)を生成する細胞;(4)少なくともIFN-γおよび別のサイトカイン(IL-2、TNF-α、CD40L)を生成する細胞;ならびに(5)少なくともTNF-αおよび別のサイトカイン(IL-2、CD40L、IFN-γ)を生成する細胞、の数を測定することによって、評価され得る。
【0156】
上記サイトカインのうちのいずれかを生成する細胞が、上記で考察されるようにコントロールと比較して、上記ワクチン組成物の投与後により多量にある場合に、改善されたエフェクター細胞応答は存在する。
【0157】
好ましい実施形態において、上記組成物は、IFN-γ、TNF-α、もしくはこれらの組み合わせを生成するT細胞の数を増大させるか、または既存のT細胞でのIFN-γ、TNF-α、もしくはこれらの組み合わせの生成を増大させる。
【0158】
いくつかの実施形態において、上記免疫原性組成物の投与は、代わりにもしくはさらに、コントロールと比較して、脂質結合体を投与した患者において改善されたB記憶細胞応答を誘導する。改善されたB記憶細胞応答は、インビトロでの分化の刺激によって測定される場合、抗原と遭遇したときに抗体分泌形質細胞へと分化し得る末梢血Bリンパ球の頻度の増大を意味することが意図される。
【0159】
さらに別の実施形態において、上記免疫原性組成物は、一次免疫応答ならびにCD8応答を増大させる。上記脂質結合体の投与は、コントロールと比較して、特定の抗原に対して改善されたCD4 T細胞、もしくはCD8 T細胞の免疫応答を誘導する。この方法は、より時間的に持続するCD4 T細胞応答を誘導することを可能にし得る。
【0160】
好ましくは、CD4 T細胞免疫応答(例えば、初回刺激されていない被験体において得られる改善されたCD4 T細胞免疫応答)は、交差反応性CD4 Tヘルパー応答の誘導を含む。特に、交叉反応性CD4 T細胞の量が増大する。用語「交差反応性」CD4応答とは、例えば、インフルエンザ株間で共有されるエピトープをCD4 T細胞が標的化することをいう。
【0161】
(C.処置される疾患)
(1.癌)
開示される脂質結合体は、癌を処置するための宿主の免疫応答を刺激もしくは増強するために有用である。上記提供される組成物および方法で処置され得る癌のタイプとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:膀胱、脳、乳房、子宮頸部、結腸直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭(nasopharangeal)、膵臓、前立腺、皮膚、胃、子宮、卵巣、精巣および血液。
【0162】
処置され得る悪性腫瘍は、上記腫瘍が由来する組織の胚起源に従って本明細書では分類される。癌は、内胚葉組織もしくは外胚葉組織(例えば、皮膚もしくは内臓および腺の上皮の内側)から生じる腫瘍である。肉腫は、生じる頻度としては少なく、中胚葉結合組織(例えば、骨、脂肪、および軟骨)に由来する。白血病およびリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は、単一の細胞として増殖するのに対して、リンパ腫は、腫瘍塊として増殖する傾向にある。悪性腫瘍は、身体の多くの器官もしくは組織において現れて癌を確立し得る。
【0163】
上記結合体は、免疫原性組成物として、もしくはワクチン(例えば、予防ワクチン、または既存の抗原(例えば、ガンを有する被験体における腫瘍抗原)への被験体の免疫応答を開始もしくは増強するために使用され得る、治療ワクチン)の一部として、投与され得る。
【0164】
予防的もしくは治療的な免疫応答の所望の予後は、当該分野で周知の原理に従って、上記疾患に応じて変動し得る。同様に、癌に対する免疫応答は、症状を緩和しても良いし、疾患に対する治療介入全体の中の一面であってもよい。例えば上記脂質結合体の投与は、コントロールと比較して、腫瘍サイズを縮小してもよいし、腫瘍増殖を遅らせてもよい。癌に対する免疫応答の刺激は、処置に影響を及ぼすために、外科的、化学療法的、放射線医学的、液性免疫学的および他の免疫学的アプローチと組み合わせられ得る。
【0165】
(2.感染性疾患)
好ましい実施形態において、上記脂質結合体は、急性もしくは慢性の感染性疾患を処置するために有用である。ウイルス感染は、T細胞によって主に取り除かれるので、T細胞活性の増大は、感染性ウイルス因子のより迅速なもしくは完全なクリアランスが動物もしくはヒト被験体にとって有益である状況では、治療上有用である。従って、上記脂質結合体アンタゴニストは、局所もしくは全身のウイルス感染症(免疫不全(例えば、HIV)、パピローマ(例えば、HPV)、ヘルペス(例えば、HSV)、脳炎、インフルエンザ(例えば、ヒトインフルエンザウイルスA)、および風邪(例えば、ヒトライノウイルス)といったウイルス感染が挙げられるが、これらに限定されない)の処置のために投与され得る。例えば、上記脂質結合体を含む薬学的処方物は、ウイルス性の皮膚疾患(例えば、ヘルペス病変もしくは帯状疱疹)、または性器疣贅を処置するために局所投与され得る。上記脂質結合体はまた、全身性のウイルス疾患(AIDS、インフルエンザ、風邪、もしくは脳炎が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために投与され得る。
【0166】
処置され得る代表的な感染としては、これらに限定されないが、Actinomyces、Anabaena、Bacillus、Bacteroides、Bdellovibrio、Bordetella、Borrelia、Campylobacter、Caulobacter、Chlamydia、Chlorobium、Chromatium、Clostridium、Corynebacterium、Cytophaga、Deinococcus、Escherichia、Francisella、Halobacterium、Heliobacter、Haemophilus、Hemophilus influenza タイプB(HIB)、Histoplasma、Hyphomicrobium、Legionella、Leishmania、Leptspirosis、Listeria、Meningococcus A、BおよびC、Methanobacterium、Micrococcus、Myobacterium、Mycoplasma、Myxococcus、Neisseria、Nitrobacter、Oscillatoria、Prochloron、Proteus、Pseudomonas、Phodospirillum、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Spirillum、Spirochaeta、Staphylococcus、Streptococcus、Streptomyces、Sulfolobus、Thermoplasma、Thiobacillus、ならびにTreponema、Vibrio、Yersinia、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Candida
albicans、Candida tropicalis、Nocardia asteroides、Rickettsia ricketsii、Rickettsia
typhi、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydial psittaci、Chlamydial trachomatis、Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Trypanosoma brucei、Entamoeba histolytica、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalisおよびSchistosoma mansoniを含む微生物によって引き起こされる感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
ある実施形態において、処置もしくは予防される疾患のタイプは、細菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、もしくは細胞内に侵入し、例えば、細胞傷害性Tリンパ球によって攻撃される他の微生物病原体によって引き起こされる慢性の感染性疾患である。
【0168】
好ましい実施形態において、処置される感染症は、肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、もしくはヒトパピローマウイルスによって引き起こされる慢性感染症である。
【実施例0169】
(実施例1:アルブミン結合リポ-オリゴ結合体は、リンパ節に蓄積する)
(材料および方法)
(オリゴヌクレオチド合成)
オリゴヌクレオチドを、自動化DNA合成装置(ABI 394, Applied Biosystems, Inc.)で、1.0マイクロモル濃度のスケールで合成した。全てのDNA合成試薬(コレステリル-TEGホスホルアミダイトおよびDMT-PEG-ホスホルアミダイトを含む)を、GlenresおよびChemgenesから購入し、製造業者の説明書に従って使用した。使用した免疫刺激性CpGオリゴは、1826として公知のタイプB配列であった。脂質ホスホルアミダイトの合成および固相結合体化は、以前の報告に倣った。粒子サイズを、90Plus/ZetaPals粒子サイズおよびξ電位分析装置(Brookhaven Instruments)を使用して、動的光散乱法(DLS)によって決定した。DSPE-PEG2000-マレイミドを、Laysan Bio Inc.から購入した。カルボキシフルオレセイン標識PEG2000-DSPEを、Avanti Polar lipids Inc.から購入した。カルボキシフルオレセイン標識NHS-PEG2000を、nanocs Inc.から購入した。ペプチドを、Genscript Corp.(Piscataway, NJ)から購入した。フロイント不完全アジュバント(IFA)および脂肪酸非含有BSAを、Sigma-Aldrichから購入した。
【0170】
(ジアシル脂質ホスホルアミダイトの合成)
【化1】
【0171】
ジアシル脂質ホスホルアミダイトを、Liu, et al.. J. Angew.
Chem., Int. Ed. 2011, 50, 7252-7255によって記載されるように2工程で合成した。
【0172】
ClCH2CH2Cl(50ml)中の塩化ステアロイル(6.789g, 22.41mmol)の溶液を、ClCH2CH2Cl(100ml)およびトリエチルアミン(2.896g, 22.41mmol)の存在下で1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン(dydroxypropane)(1.0g, 11.10mmol)の溶液に滴下した。上記反応混合物を、室温で2時間撹拌し、次いで、70℃で一晩加熱した。次いで、上記反応混合物を室温へと冷却し、濾過し、固体を、それぞれ、CH2Cl2、CH3OH、5% NaHCO3およびジエチルエーテルで洗浄した。上記固体を真空下で乾燥させて、中間生成物を白色固体として得た(収率: 90%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 6.3 (m, 2H), 3.8 (m, 1H), 3.4-3.2 (m, 4H), 2.2 (t, 4H), 1.6 (m, 4H), 1.3-1.2 (m, 60H), 0.9 (t, 6H)。次いで、上記中間生成物(5.8g, 9.31mmol)およびDIPEA(4.2mL, 18.62mmol)を、無水CH2Cl2(100ml)に溶解した。上記溶液をアイスバスで冷却し、2-シアノエチル N,N-ジイソプロピルクロロホスホルアミダイト(8.6mL, 0.47mmol)を、乾燥窒素下で滴下した。室温で1時間撹拌した後、上記溶液を60℃まで90分間加熱した。上記反応混合物を、5% NaHCO3およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。最終生成物を、アセトンから沈殿させることよによって単離して、4g(55% 収率)のホスホルアミダイトを白色固体として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 6.4 (m, 2H), 3.9 (m, 2H), 3.8 (m, 2H), 3.6 (m, 2H), 3.0-2.9 (m, 2H), 2.6 (t, 2H), 2.2 (m, 4H), 1.6 (m, 6H), 1.3-1.2 (m, 72H), 0.9 (t, 6H). 31P NMR (CDCl3) 154 ppm。
【0173】
(DNA合成および親油性結合体化)
全てのDNAおよびRNA配列を、ABI 394合成装置を使用して、1.0μMスケールで合成した。全ての親油性ホスホルアミダイトを、上記オリゴの5’末端にある最後の「塩基」として結合体化した。親油性ホスホルアミダイトを、ジクロロメタン中に溶解し、いわゆるシリンジ合成技術(syringe synthesis technique)(Storhoff, et al., J Am. Chem. Soc.,
120:1959-1964 (1999))を使用することによって、オリゴに結合させた。簡潔には、脂質ホスホルアミダイト(200μL)を活性化因子(200μL アセトニトリル中の0.2mM 5-エチルチオテトラゾール)と混合し、上記混合物を、2本のシリンジを使用して、CpGカラムの間を10分間前後に押した。あるいは、親油性ホスホルアミダイトをまた、上記DNA合成装置を使用して(15分の結合時間)結合させ得る。上記合成後に、DNAをCpGから切断し、脱保護し、C4カラム(BioBasic-4, 200mm×4.6mm, Thermo Scientific)、100mM トリエチルアミン-酢酸緩衝液(TEAA, pH 7.5)-アセトニトリル(0~30分, 10~100%)を溶出液として使用する逆相HPLCによって精製した。親油性ODNは、代表的には、20分で溶出した一方で、非結合体化ODNは、8分で溶出した。使用した免疫刺激性CpGオリゴは、1826として公知のタイプB配列であった(Ballas, et al., J. Immunol., 167,
4878-4886 (2001))。
【0174】
【0175】
【0176】
化合物1の合成: 300ml 丸底フラスコの中で、D-スレオニノール(0.95g, 9.1mmol)、1-ピレン酪酸(2.88g, 10.0mmol)、DCC(2.06g, 10.0mmol)およびNHS(1.15g, 10mmol)を、50ml DMFに溶解した。上記反応混合物を室温で24時間撹拌した。不溶性のN,N’-ジシクロヘキシルウレアを濾過し、DMFをロータリー真空エバポレーターで除去して、油状の粗製生成物を得た。化合物1を、フラッシュクロマトグラフィーによって精製した(収率: 85%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.1-7.7 (m, 9H), 6.2 (d, 1H), 4.2-3.8 (m, 4H), 3.0 (m, 2H), 2.3-2.2 (m, 4H), 1.2
(d, 3H)。
【0177】
化合物2の合成: 40ml乾燥ピリジン中に化合物1(2.93g, 7.2mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.043g, 0.36mmol)を、乾燥窒素下で100ml 丸底フラスコの中に入れた。この溶液をアイスバスで冷却した。DMT-Cl(2.93g, 8.64mmol)を、窒素下の50mlフラスコの中で10ml乾燥CH2Cl2に溶解し、上記ピリジン溶液に乾燥窒素下でゆっくりと添加した。この反応系をゆっくりと室温へと加温し、24時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、化合物2を、クロマトグラフィー(50:50:3 酢酸エチル:ヘキサン/トリエチルアミン)によって単離した(収率: 75%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.3-7.5 (m, 22H), 6.1 (d, 1H), 4.2-3.9 (m, 2H), 3.7 (d, 6H), 3.4-3.3 (m, 4H), 2.4-2.2 (m, 4H), 1.2 (d, 3H)。
【0178】
化合物3の合成: 化合物2(1g, 1.48mmol)を、CH2Cl2に溶解し、アイスバスで冷却した。次いで、DIPEA(0.57g, 4.44mmol)および2-シアノエチル N,N-ジイソプロピルクロロホスホルアミダイト(0.42g,
1.78mmol)を、乾燥窒素下で添加した。上記反応混合物を、氷上で3時間撹拌した。溶媒をエバポレートし、化合物3を、クロマトグラフィー(50:50:3 酢酸エチル:ヘキサン/トリエチルアミン)によって精製した(収率: 70%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.3-6.6 (m, 21H),
5.82 (d, 1H), 4.4-4.2 (m, 2H), 3.8 (s, 3H), 3.7 (d, 6H), 3.6-3.1 (m, 8H), 2.5 (m, 1H), 2.4-2.2 (m, 5H), 1.3-0.9 (m, 20H). 31P NMR (CDCl3) 149。
【0179】
(サイズ排除クロマトグラフィー)
サイズ排除クロマトグラフィーを、SEC-biosilカラム(200×4.6mmカラムの中に再充填した)を備えたShimadzu HPLCシステムで行った。サンプルを、1×PBS+20mM KClを使用して、流速0.5mL/分で溶出した。代表的な実験において、1×PBS+20mM KCl中の、80μLの5μM リポ-GnT10-nCpG-Famを20μL FBS(Greiner Bio-one)に添加し、サンプルを、短時間ボルテックスして、37℃で2時間インキュベートし、次いで、20mM KClを含む500μL 1×PBSに希釈し、次いで、サンプルをSECによって分析し、FBSを280nmの吸収を使用してモニターした一方で、ODNを480nm(Famピーク)でモニターした。
【0180】
(円偏光二色性分光計測定)
5μM CpG ODNを、20mM KClを含む1×PBSに溶解した。円偏光二色性(CD)スペクトルを、Aviv Model 202 Circular Dichroism Spectrometerで、20℃において記録した。220nmから320nmまでのスキャンを、100nm/分スキャン速度、1nmハンド幅で行った。各スペクトルに関しては、3回のスキャンの平均をとり、緩衝液のスペクトル寄与を差し引いた。
【0181】
(動物および細胞)
動物を、動物のケアに関する連邦政府、州政府、地域およびNIHのガイドラインの下で、USDA検査済みMIT Animal Facilityで飼育した。C57BL/6アルビノマウス(6~8週齢)を、Jackson Laboratoryから得た。細胞を、完全培地(MEM、5% ウシ胎仔血清(Greiner Bio-one)、100U/ml ペニシリンGナトリウムおよび100μg/ml ストレプトマイシン(Pen/Strep)、MEMピルビン酸ナトリウム(1mM)、NaH2CO3、MEMビタミン、MEM非必須アミノ酸(全てInvitrogen)、20μM β-メルカプトエタノール(β-ME))中で培養した。
【0182】
(統計分析)
全てのエラーバーは、SEMを表す。平均値の比較を、独立スチューデントt検定を使用して行った。*, p<0.05; **, p<0.01; ***, p<0.001。Graphpad Prism 5ソフトウェアを使用した。
【0183】
(結果)
アルブミンは、細胞外流体中の主な脂肪酸輸送体として機能する。親油性アルブミン結合ドメインで改変した抗原/アジュバントが、インサイチュ複合体化を介して注射および内因性アルブミンとともに輸送された後に、リンパ器官に蓄積するか否かを試験するために、実験を設計した。このストラテジーを確立するために、モデルワクチンを開発し、このワクチンは、CpG DNAと組み合わせたペプチド抗原、Toll様レセプター9に結合し、強力な分子アジュバントとして機能する非メチル化シトシン-グアニンモチーフを含む1本鎖オリゴヌクレオチドを含む。
【0184】
CpGもしくはペプチド抗原のいずれかに付加され得る最適なアルブミン結合ドメインを同定するために、フルオレセインアミダイトで3’標識された、5’末端(amph-CpGs)を介して種々の親油性テールに連結された一連の両親媒性20塩基ホスホロチオエート(PS)安定化CpGオリゴを、構築し(FAM,
図1A)、これら両親媒性物質と血清タンパク質との相互作用を、サイズ排除クロマトグラフィーによって評価した(SEC,
図2B)。ウシ胎仔血清(FBS)は、SECにおいて5.3分で(血清アルブミンと同時)溶出するタンパク質の主要な画分を示した。水性溶液中のジアシル脂質結合体化CpG(リポ-CpGs)を、ミセルとして溶出した(3.7分)が、20% FBSと2時間のインキュベーション後、このamph-CpGのうちの約46%は、アルブミンと共移行した(
図2B)。対照的に、モノ-アシル-(C18-CpG)およびコレステロール-(Cho-CpG)オリゴの大部分は、血清の存在下もしくは非存在下で非改変CpGに本質的に同一の、5.8分でユニマー(unimer)として溶出した。このことは、血清ヌクレアーゼ分解に対する上記PS骨格の安定性およびアルブミンとの相互作用の欠如を示す(
図2B)。
【0185】
FAM標識リポ-CpGおよびローダミン結合体化アルブミンとの間のFRETの分光光度測定から、溶液中での上記ジアシル脂質両親媒性物質とアルブミンの分子会合が確認された(
図1Fおよび
図1G)。
【0186】
アルブミンに対して種々の親和性を有するCpGが、差次的なLN標的化を示すか否かを決定するために、amph-CpGをマウスの尾の基部にs.c.注射し、24時間後、流入領域鼠径LNおよび腋窩LNを摘出し、IVIS蛍光画像化によってインタクトなまま分析した。C18-CpGおよびCho-CpGは、非改変CpGと比較して、LNにおいてわずかに増大した取り込みを示した。対照的に、リポ-CpGは、LN蓄積において劇的な増大を示し、24時間で可溶性CpGより8倍、および2つのプロトタイプワクチンビヒクルであるフロイント不完全アジュバントもしくはポリ(エチレングリコール)(PEG)被覆リポソーム中で送達されたCpGより遙かに高かった。先の研究によって示されるように、血清ヌクレアーゼに対して上記CpGオリゴを安定化するために使用されるPS骨格は、注射部位での細胞外マトリクスへの非特異的結合を促進し、数日間にわたって、組織からの上記オリゴのゆっくりとしたクリアランスをもたらす。しかし、可溶性CpGレベルは、近位LNにおいて早く低いピークに達し、いずれの時点でも注射した用量の0.3%を上回る蓄積は示さなかった(
図2C)。対照的に、リポ-CpGは、注射後2時間以内にLNで検出され、崩壊する前3日間にわたって蓄積し続け、注射後のその週にわたって可溶性CpGより高い、流入領域LNでのCpGへの曝露の総AUCを与えた。LN蓄積は、TLR-9認識CpGモチーフに依存しなかった。なぜなら非CpGポリチミジン両親媒性物質(リポ-T
20)は、同様に高レベルで、LNで検出されたからである(
図2J)。
【0187】
(実施例2:安定化したミセルは、リンパ節標的化の低下を示す)
(材料および方法)
(フローサイトメトリー)
全ての抗体を、BD pharmingenもしくはebioscienceから購入した。細胞を、FACScantoフローサイトメーター(BD biosciences)で入手し、flowjoソフトウェア(Tree Star Inc. Ashland, OR)を使用して分析した。
【0188】
(細胞内サイトカイン染色(ICCS))
細胞を、96ウェル丸底プレートの中に蒔き、ブレフェルジンAの存在下で6時間、完全培地中37℃で最小ペプチドをパルス(pulse)した。細胞を、抗CD8-APCで染色し、次いで、Cytofix(BD biosciences)を使用して製造業者の説明書に従って固定した。次いで、細胞を洗浄し、透過性にした。次いで、抗INF-γ-PEおよび抗TNF-α-FITCに関する細胞内染色を、BDのプロトコルに従って行った。FACSデータを集め、先に記載されるように分析した。
【0189】
(免疫組織化学染色)
免疫蛍光染色を、リンパ節生検標本の10μm凍結切片に対して行った。FITCの退色を低減するために、切片をVectashield封入剤(Vector Laboratories, Inc. Brulingame, CA)でマウントし、Zeiss LSM 510顕微鏡(Oberkochen, Germany)で見た。リンパ節切片についての染色を、PE標識CD11cおよびAPC標識F4/80、またはPE標識B220およびAPC標識CD3抗体で直接行った。
【0190】
(結果)
実施例1のインビトロ分析は、リポ-CpG分子が血清の存在下でのミセル形態とアルブミン結合形態との間で並行に達することを示す。しかし、これら両親媒性物質によって達成された、増強されたリンパ節蓄積は、どちらかの種によって駆動され得た。これらの可能性を区別するために、ポリグアニン反復を、上記ジアシル脂質とCpG配列との間に導入した。4個以上のグアニン反復を含むリポ-Gn-CpGミセル中の隣接するオリゴ鎖の間のG四重鎖水素結合は、アルブミンが上記脂質テールにアクセスしないように遮断し、上記ミセルを血清の存在下での分解(以下でより詳細に考察される)に対して安定にした。
【0191】
アルブミン結合リポ-CpGおよびリポ-G
2-CpGが、強いLN標的化を示した一方で、Gカルテットが安定化したリポ-G
4-CpGもしくはリポ-G
6-CpGミセルは、s.c.注射後に非常に不十分なLN蓄積を示した(
図8A)。(ここでは種々のオリゴの長さの効果は無視できることに注意のこと。なぜなら、リポ-T
6-CpGは、類似のLN蓄積を示したからである)。注射部位および流入領域LNにおけるCpG蛍光の長期的分析から、リポ-G
4/6-CpG両親媒性物質の低いLN蓄積は、上記安定化したミセルが注入部位から流入しないことに起因したことが示された。多価のミセル形態中の上記PS DNA骨格による非特異的マトリクス結合の増幅は、上記注射部位において安定化したミセルの大部分を不可逆的に捕捉する可能性がある。
【0192】
IVISデータと一致して、CpGもしくはリポ-G
4-CpGの検出可能な蓄積は、流入領域鼠径LNの組織切片でほとんど認められなかった一方で、リポ-CpGおよびリポ-G
2-CpGは、嚢下洞および傍皮質に向かって拡がる濾胞間領域(interfollicular areas)に蓄積した。免疫組織化学分析およびフローサイトメトリー分析は、これらLN蓄積両親媒性物質が、F4/80
+マクロファージおよびCD11c
+樹状細胞と共存することを示した(
図3E)。
【0193】
(実施例3:アルブミン「ヒッチハイク」は、リポ-オリゴ結合体をリンパ節へと標的化する)
(材料および方法)
(アルブミン-CpG結合体)
マウス血清アルブミン(200μL PBS中に10mg)を、20μL DMSOに溶解した0.79mg BMPS(Aldrich)に添加した。上記混合物を、室温で2時間撹拌した。上記混合物をG-25カラムに通すことによって、余分のBMPSを除去した。その後、上記溶液に、246μg ジスルフィド標識フルオレセイン-CpG(20μL 100mM TCEPによって事前活性化)を添加した。上記混合物を、一晩反応させて、余分のCpGを透析し(50K MWCO)、遊離CpGがないことを、サイズ排除クロマトグラフィーによって確認した。
【0194】
(結果)
アルブミン「ヒッチハイク」がCpG分子をLNに最適に標的化するために必要とされる場合、アルブミンへのオリゴの共有結合による結合体化が、類似のLN蓄積をもたらすはずである。これを試験するために、CpGを、マウス血清アルブミン(MSA)に共有結合により結合体化し、リポ-CpGもしくは可溶性CpGに対するこれら結合体のLN取り込みを比較した。上記結合体とリポ-ODNとの間に統計的有意差が認められ、LNにおけるMSA-CpGおよびリポ-CpGの両方の蛍光強度は、可溶性ODNのものより遙かに大きかった。概して、これらデータは、親油性テールに結合体化されたCpGオリゴヌクレオチドの効率的LN蓄積が、上記両親媒性物質がミセルから血清タンパク質結合状態へと分配する能力に依存することを示す。
【0195】
(実施例4:アルブミン結合リポ-オリゴ結合体は、免疫応答を増強する一方、インビボでの全身毒性を最小限にする)
上記免疫応答に対するCpGがLN標的化することの影響を決定するために、マウスを、非改変CpG、IFA中のCpG、アルブミン結合CpG(リポ-G
n-CpG, n=0,2)もしくはG四重鎖安定化CpGミセル(リポ-G
n-CpG, n=4,6)と混合したオボアルブミン(OVA)で免疫化した。動物を0日目に初回刺激し、14日目にブーストし、CD8+ T細胞応答を20日目に分析した。非結合体化CpG(可溶性CpGもしくはIFA中に乳化したCpG)ではなく、脂質結合体化CpGの投与は、非改変CpGのみもしくはIFA中に乳化したCpGと比較して、結果として、OVA
257-264に対して特異的なCD8
+ T細胞の頻度を有意に増大させた。最も強い応答は、アルブミン結合リポ-CpGおよびリポ-G
2-CpGによって誘起された(
図4A)。
【0196】
末梢血リンパ球における細胞内サイトカイン染色は、定性的に同じ傾向を示し、IFN-g生成T細胞およびTNF-a生成T細胞の頻度がアルブミン結合CpG両親媒性物質によって大きく拡がった(
図4B)。非TLRアゴニストリポ-GpC、もしくはOVAと混合した、PEG結合体である48エチレングリコールユニットを有するリポ-(PEG)でのコントロール免疫化は、ジアシル脂質テールの直接アジュバントを除いて、最小限の応答を誘起した。
【0197】
高用量アルブミン結合CpGの反復皮下注射は、全身炎症促進性サイトカイン放出(
図10)および脾臓におけるリンパ球活性化(脾腫,
図4D)によって特徴付けられるように、全身性の非特異的免疫活性化をインビボで誘導しなかった。対照的に、マウスにおける遊離CpGの投与は、全身毒性を生じた(
図10、
図11)。まとめると、これら実験は、リンパ節標的化amph-CpGは、全身免疫活性化を回避すると同時に、大規模なCD8 T細胞応答を誘起し得る強力なアジュバントであることを強く示唆する。
【0198】
(実施例5:アルブミン「ヒッチハイク」は、リポ-ペプチド結合体をリンパ節に標的化する)
(材料および方法)
(フルオレセインPEG両親媒性物質の合成)
PE脂質(1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DMPE; 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DMPE; 1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DPPE; 1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DSPE, Avanti polar lipids. Inc.)を、500μL CHCl3および500μL DMF中に溶解し、1.2当量のフルオレセイン-PEG2000-NHS(creative PEG works Inc.)を添加し、上記反応混合物を一晩撹拌し、上記両親媒性フルオレセインPEG両親媒性物質を、C4カラム(BioBasic-4, 200mm×4.6mm, Thermo Scientific)、溶出液として100mM トリエチルアミン-酢酸緩衝液(TEAA, pH7.5)-メタノール(0~30分, 10~100%)を使用する逆相HPLCによって精製した。
【0199】
(ペプチド両親媒性物質の合成)
N末端システイン改変ペプチドをDMFに溶解し、2当量のマレイミド-PEG2000-DSPE(Laysan Bio, Inc.)と混合し、上記混合物を、室温で24時間撹拌した。生体結合体化(bioconjugation)は、HPLC分析によって本質的に完全であると判定された。次いで、上記ペプチド結合体を10×ddH2Oに希釈し、粉末へと凍結乾燥し、H2Oに再溶解して、-80℃で貯蔵した。
【0200】
(結果)
リポ-CpGの合成は、溶解度が長い極性オリゴヌクレオチドブロックによって促進されるので簡単であるが、アミノ酸配列に依存して、脂質付加ペプチドは、本質的に不溶性であり得る。従って、ペプチド抗原および他の潜在的なワクチン成分へのリポ-CpGで達成されるリンパ節標的化アプローチを一般化するために、極性PEGブロックを介してペプチドカーゴに連結されたジアシル脂質テール(amph-ペプチド; 例えば、
図1C)から構成されるリポ-PEG両親媒性物質を、種々の長さのエチレングリコールスペーサーを使用して生成して、リポ-CpGの長い極性ブロックを摸倣した。
【0201】
この設計におけるPEGブロックの長さは、生理学的条件における3方向平衡のバランスを制御する:純水中のamph-ペプチドおよびリポ-PEGは、ミセルを形成するが、血清および細胞の存在下では、これら両親媒性物質は、アルブミンへの結合とそれらのジアシルテールの細胞膜への入り込みとの間で平衡に達する(
図2F)。短いPEGブロックを有するリポ-PEG-FAM両親媒性物質は、インビトロで血清の存在下で細胞とインキュベートした場合、安定な形質膜入り込みを示し(
図2G)、これは、インビボでアルブミンに対してLNへの移動を遮断した。しかし、上記極性ブロックを48エチレングリコールユニットへと増大させると、アルブミン結合を保持しながら溶液へと分配されたリポ-PEG両親媒性物質が与えられる(
図2G)。このインビトロでの挙動から、インビボでの流入パターンが直接推定された。なぜなら、s.c.注射したリポ-PEG-FAM両親媒性物質は、PEGブロックの長さの増大に伴ってLN蓄積の増大を示したからである(4 EGユニットと比較して、48 EGユニットが増大,
図2H)。
【0202】
類似の傾向が、DNA両親媒性物質に関して認められた;ポリチミジン鎖長を増大させて調製したリポ-Tnオリゴは、オリゴに関してプラトーな蓄積になるまでs.c.注射後にLNにおける増大する蓄積を示した(
図2J)。CpG両親媒性物質と同様に、上記疎水性ブロックの構造も重要であった;長いジアシルテール(≧16炭素、これは、アルブミンに対して高い親和性を示す)を有するリポ-PEG両親媒性物質は、リンパ節で強い蛍光を示した一方で、アルブミンに対して不十分な親和性を有するより短い脂質テールは、低いLN蓄積を示した(
図2I)。
【0203】
(実施例6:リンパ節標的化ワクチンは、免疫応答を誘導する)
(材料および方法)
(ワクチン成分)
最小ペプチドをAnaspecから購入した; オボアルブミンをWorthington Biochemical Corporationから購入した; システイン(Cys)改変ペプチドHPV-16 E749-57(CRAHYNIVTF)、AL-11(CAAVKNWMTQTL)およびTrp-2(CSVYDFFVWL)は、GenScriptが合成し、逆相HPLCによって精製した。DSPE-PEG2000-マレイミドをLaysan Bio Inc.から購入した。CpG ODNを、社内で合成した。IFAを、Sigma-Aldrichから購入した。
【0204】
(ワクチン調製)
マウスに、初回刺激-ブーストレジメンによってワクチン接種した。代表的には、実験での各初回刺激ワクチンおよびブーストワクチンは、以下の成分からなった: 10μg
OVA、20mM K+、10mM Mg+を含む1×PBS中に懸濁した1.24nmol CpG。IFAを使用した実験では、CpG/OVAを、同じ容積のIFAと組み合わせ、徹底的に乳化した。全てのワクチン注射の容積は、100μlであった。ペプチドミセルに関しては、マウスを、20mM K+、10mM Mg+を含む1×PBSに懸濁した1.24nmol CpGと混合した10μgのペプチド-PEG2000-DSPE結合体で初回刺激し、1.24nmol CpGと混合した20μgのペプチド-PEG2000-DSPE結合体でブーストした。マウスの尾の基部にs.c.注射した。
【0205】
(テトラマー染色)
組織サンプルを回収し、単一の細胞懸濁物(脾臓およびリンパ節)を調製した。採血し、赤血球をACK溶解緩衝液で枯渇させた。次いで、細胞を、Fc-ブロッカー(抗マウスCD16/CD32モノクローナル抗体)で遮断し、PE標識テトラマー(Beckman Coulter)および抗CD8-APCで30分間室温において染色した。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。FACSデータを、BD FACScantoフローサイトメーターで集め、flowjoソフトウェアを使用して分析した。分析は、代表的には、CD8+、テトラマー陽性生細胞に対してゲートをかけた。
【0206】
(インビボ細胞傷害性アッセイ)
無処置マウス由来の脾細胞に、10μM SIINFEKLペプチドを30分間パルスしたか、もしくはパルスせず、次いで、細胞を、1μM(パルスした細胞については)もしくは0.1μM(コントロール細胞については)のCFSEのいずれかで10分間、37℃において標識し、徹底的に洗浄した。細胞を1:1比で混合し、10×106個の総細胞を、上記で記載されるとおりのワクチン処方物で予めチャレンジしたマウスにi.v.注射した。18時間後、各レシピエントマウスの脾細胞を、FACSによって分析して、CFSE標識細胞を検出した。
【0207】
(結果)
上記で考察されるリンパ節への化合物の効率的な標的化のための設計ルールに基づいて、ペプチド抗原を市販のDSPE-PEG(18炭素のジアシル脂質テール, 2KDa
PEGブロック)に結合体化して、ワクチン接種研究で使用するためにamph-ペプチドを生成した(
図9)。
【0208】
アルブミン結合とリンパ節保持との間の構造-機能関係性を確立したら、抗原とCpG両親媒性物質とを組み合わせることが、抗原特異的免疫応答の初回刺激に直接付与し得るか否かを試験するために実験を設計した。種々のペプチド抗原(ウイルス抗原(SIV gag、AL11)、腫瘍関連自己抗原(tumor associated self-antigen)(黒色腫抗原, Trp2)、および腫瘍特異的抗原(ヒトパピローマウイルス, タイプ16, E7, HPV-16-E7)を含む)を、マレイミド官能化DSPE-PEG2000に結合体化した。抗原結合体化は、アルブミン結合に有意に影響を及ぼさなかった。
【0209】
ワクチン接種後に、誘起されたCD8 T細胞応答および機能性を、上記で考察されるように、テトラマー技術もしくは細胞内サイトカイン染色(ICS)を使用してモニターした。amph-抗原(DSPE-PEG
2000-ペプチド)およびamph-CpGアジュバント(リポ-G
2-CpG)から構成されるワクチンの投与は、上記の最小ペプチドエピトープの全てに対して劇的に増大した抗原特異的CD8
+ T細胞応答を生じさせた(
図5A~5B)。amph-Trp2+amph-CpGをワクチン接種したマウスでは、CD8
+ リンパ球のうちの平均15%および7%が、それぞれ、IFN-γおよびTNF-αを生成した。対照的に、遊離Trp2を受けた2つのコントロール群は、わずかなCTL活性のみを示した(
図5B)。
【0210】
PEGリンカーなしで脂質を抗原へと直接結合体化すると、免疫応答の劇的な低下が生じた。このことは、長いPEGリンカーが、CD8 T細胞免疫応答を誘起するために必要であることを示す(
図5C)。この観察は、効率的なLN保持が長いPEGスペーサーを要した、先に観察されたLN蓄積データと一致した。上記データは、アルブミン結合ワクチン処方物が多数の機能的な抗原特異的CD8
+ T細胞を誘導し得ることを示す。自己送達処方物で免疫化したマウスは、上記パルスしていないコントロールと比較して、ペプチドパルスした標的集団に対してより強力な細胞傷害性活性を有することは一貫して認められた(
図5D)。
【0211】
(実施例7:リンパ節標的化ワクチンは、治療効力を示す)
免疫化後に生じたCD8応答の治療利益は、ヒトパピローマウイルスタイプ-16(HPV-16)に由来するE7オンコプロテインを発現する、確立された皮下マウス腫瘍TC-1を処置することによって試験した。6~8週齢のC57BL/6マウスに、TC-1腫瘍細胞(3×105細胞/マウス)を左上の側腹部に皮下接種した。触診できる腫瘍が形成された(6日目)後に、マウスを無作為化し、6日目、13日目および19日目に、非結合体化E749-57ペプチドおよびCpGをコントロールとして使用して、マウスの尾の基部に、amph-CpG(リポ-G2-CpG)と組み合わせたamph-HPV(DSPE-PEG-E749-57)で処置した。腫瘍成長を、2~3日ごとに追跡した。
【0212】
図5Eおよび
図5Fに示されるように、腫瘍は、ワクチンを受けていないマウスで急激に成長した。ワクチン両親媒性物質によって処置されたマウスは、数週間にわたって皮下で成長するTC-1腫瘍の成長を阻害した(最初の処置時で直径3~5mm)。対照的に、非結合体化CpGオリゴヌクレオチド+HPV-16 E7ペプチド抗原での処置は、僅かな抗腫瘍効果しか有さず(
図5Eおよび5F)、19日目までに腫瘍成長の一時的な遅れをもたらしたが、その後は、腫瘍が急激に進行した。まとめて考えると、上記結果は、amph-ペプチド抗原とamph-CpGアジュバントとの組み合わせが、抗原特異的CTL応答を劇的に増強し、マウス腫瘍モデルにおいて改善された抗腫瘍免疫をもたらすことを実証する。
【0213】
(実施例8:G四重鎖リンカーは、オリゴヌクレオチドミセルを安定化する)
(材料および方法)
(オリゴヌクレオチド合成)
オリゴヌクレオチドを、自動化DNA合成装置(ABI 394, Applied Biosystems, Inc.)で、1.0マイクロモル濃度スケールで合成した。全てのDNA合成試薬(コレステリル-トリエチレングリコール(TEG)-ホスホルアミダイトおよびDMT-ポリエチレングリコール(PEG)-ホスホルアミダイトを含む)を、GlenresおよびChemgenesから購入し、製造業者の説明書に従って使用した。免疫刺激性シトシン-グアニン(CG)オリゴヌクレオチドは、1826といわれるタイプB配列であった(リポ-Gn-CG: 5’-ジアシル脂質-Gn-TCCATGACGTTCCTGACGTT-3’(配列番号1)。脂質ホスホルアミダイトの合成および固相結合体化は、以前の報告に倣った。粒子サイズを、90Plus/ZetaPals粒子サイズおよびξ電位分析装置(Brookhaven Instruments)を使用して、動的光散乱法(DLS)によって決定した。DSPE-PEG2000-マレイミドを、Laysan Bio Inc.から購入した。カルボキシフルオレセイン標識PEG2000-DSPEを、Avanti Polar lipids Inc.から購入した。
【0214】
(円偏光二色性)
5μMのCGオリゴヌクレオチドを、20mM KClを含む1×リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に溶解した。円偏光二色性(CD)スペクトルを、Aviv Model
202 Circular Dichroism Spectrometerで、20℃において記録した。220nmから320nmまでのスキャンを、100nm/分のスキャン速度、1nmバンド幅で行った。各スペクトルについて、3回のスキャンの平均をとり、緩衝液のスペクトル寄与を差し引いた。
【0215】
(サイズ排除クロマトグラフィー)
サイズ排除クロマトグラフィーを、SEC-biosilカラム(200×4.6mmカラムに再充填した)を備えたShimadzu HPLCシステムで行った。サンプルを、1×PBS+20mM KClを使用して、流速0.5mL/分で溶出した。代表的実験では、フルオレセイン標識DNAミセル(1×PBS+20mM KCl中5μM リポ-GnT10-nCG-Famを80μL)を、20% ウシ胎仔血清(FBS)(20μL)(Greiner Bio-one)とともにインキュベートし、サンプルを短時間ボルテックスし、37℃で2時間インキュベートし、次いで、500μL 1×PBS+20mM KClで希釈した。次いで、サンプルを、SECによって分析した。ウシ胎仔血清(FBS)を、280nmの吸収を使用してモニターした一方で、オリゴヌクレオチドを480nm(Famピーク)でモニターした。
【0216】
(結果)
グアニン(G)リッチ核酸配列は、種々のタイプのG四重鎖構造へと折りたたまれ得る(Davis, J. T. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 43, 668-698 (2004))(例えば、分子内、分子間、パラレル、およびアンチパラレル)。ミセル自己アセンブリを促進し、オリゴヌクレオチド折りたたみを最小限にするために、上記脂質-オリゴヌクレオチド結合体を、先ず、純水に懸濁し、次に、カリウム(K
+)含有緩衝液を添加して、上記G四重鎖を安定化させた。ミセルの形成を、透過型電子顕微鏡、動的光散乱測定、およびサイズ排除クロマトグラフィーによって確認した。
図7Bは、均質なサイズ分布を示す自己アセンブリしたミセルのサイズプロフィールを図示する。
【0217】
円偏光二色性(CD)は、G四重鎖の形成を特徴付けるために行った。リポ-G
0T
10-CGオリゴヌクレオチドのスペクトルは、245nm付近に小さな負のピークおよび278nm付近に正のピークを示した一方で、0から10個にグアニンの数を変化させると、278nmから262nmに向かって正のピークがシフトすることによって明らかにされるように(パラレルG四重鎖の特徴的バンド)、負の245nmバンドを保持しながら、パラレルG四重鎖が誘導された(Paramasivan, S., et al., Methods 43, 324-331 (2007))(
図7C)。
【0218】
G四重鎖安定化CpGアジュバントの設計は、
図3Aに示される。G四重鎖安定化CpGミセルは、3個の異なるセグメント:免疫刺激性CpG-ODN、n=1~10であるGカルテット形成グアニン、続いて10-nの非相互作用チミジンを含む中心反復ブロック、およびジアシル脂質テールから構成されるODNから自己アセンブリされる(
図3A)。ピレンエキシマ蛍光を使用して、アルブミンの存在下でG四重鎖ミセルの安定性をアッセイした(
図3B)。安定化CpGミセルに組みこまれたピレン色素(n>2)は、高濃度のアルブミンの存在下でエキシマ蛍光を保持する。対照的に、アルブミンは、非安定化ミセル(n≦2)の脂質部分に結合し、上記ミセル構造を破壊し、アルブミン濃度依存的な様式でエキシマ蛍光の低下を生じる(
図3B)。血清タンパク質の存在下での上記DNAミセルの安定性もまた、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって調査した(
図3C)。ミセルは、比較的高い分子量を有するので、それらは、3.7分で溶出した一方、FBSは、5.3分で主要なピークを示した。インキュベーションの後、上記非安定化ミセル(リポ-G
0T
10-CG)のうちの20%はインタクトであったが、残りの80%は破壊され、FBS成分と結合した(5.2分でピークに達した)。グアニンの存在下では、インタクトなミセルのパーセンテージは、36%(リポ-G
2T
8-CG)から73%(リポ-G
4T
6-CG)へと増大し、最終的には、90%(リポ-G
6T
4-CG)に達した。グアニンの数を8個(リポ-G
8T
2-CG)および10個(リポ-G
10T
0-CG)に増大させても、ミセル安定性はさらには増強しなかった。グアニンの数を上記CPG-オリゴヌクレオチドと脂質テールとの間で変化させると、FBSピークから明らかなように、血清タンパク質の存在下でのミセル安定性が制御される。
【0219】
まとめると、これら実験は、ミセル破壊条件下での上記G四重鎖ミセル安定性は、グアニンの数を変化させることによって制御され得ることを実証した。
【0220】
(実施例9:G四重鎖リンカーは、リンパ節蓄積および細胞取り込みに影響を及ぼす)
(材料および方法)
(マウス)
C57BL/6アルビノマウス(6~8週齢)を、Jackson Laboratoryから得た。動物を、動物のケアに関する連邦政府、州政府、地域およびNIHのガイドラインの下で、USDA検査済みのMassachusetts Institute
of Technology(MIT) Animal Facilityで飼育した。
【0221】
(骨髄細胞の単離)
骨髄由来樹状細胞を、以前に報告されたように、Inabaの手順の変法に従って調製した。樹状細胞を、500nM CGプローブで12時間活性化し/成熟させ、使用前にPBSで3回洗浄した。細胞を、完全培地(MEM、5% ウシ胎仔血清(Greiner Bio-one)、100ユニット (U)/ml ペニシリンGナトリウムおよび100μg/ml ストレプトマイシン(Pen/Strep)、MEM ピルビン酸ナトリウム(1mM)、NaH2CO3、MEM ビタミン、MEM 非必須アミノ酸(全てInvitrogen)、および20μM β-メルカプトエタノール(β-ME))中で培養した。
【0222】
(インビボ画像化およびフローサイトメトリー)
マウス各群の流入領域リンパ節を、In Vivo Imaging Systems(IVIS(登録商標))およびフローサイトメトリーによって、注射の24時間後および72時間後に分析した。フローサイトメトリー用の全ての抗体を、BD PharmingenもしくはEbioscienceから購入した。
【0223】
(統計的分析)
全てのエラーバーは、SEMを表す。平均値の比較を、独立スチューデントt検定を使用して行った。*, p<0.05; **, p<0.01; ***, p<0.001。GraphPad Prism 5ソフトウェアを使用した。
【0224】
(結果)
リンパ系は、組織から間質液を吸収し、それをリンパ節を介して血液へと戻す。動物実験を行って、リンパ系へのミセル標的化を評価した。色素標識CGオリゴヌクレオチド、IFA中に乳化した色素標識CGオリゴヌクレオチド、もしくは色素標識リポ-Gn-CGミセル(n=0、2、4もしくは6)を、別個のマウス群へと皮下注射した。マウス各群の流入領域リンパ節を、In Vivo Imaging Systems(IVIS(登録商標))およびフローサイトメトリーによって、注射の24時間後および72時間後に分析した。細胞を、FACScantoフローサイトメーター(BD Biosciences)で獲得し、Flowjoソフトウェア(Tree Star Inc. Ashland, OR)を使用して分析した。
【0225】
全てのリンパ節は、視覚的に大きくなり、24時間で最大拡大に達した。24時間および72時間での単離されたリンパ節の蛍光画像化は、異なるマウス群の間で有意差を明らかにした。鼠径リンパ節(近位リンパ節)および腋窩リンパ節(遠位リンパ節)によって保持される中程度に安定したリポ-G
n-CpGミセルの数(n=0もしくは2)は、保持された過剰に安定化したリポ-G
n-CpGミセル(n=4もしくは6)の数より大きく、脂質-G
2-CpGミセルによってピークのリンパ節標的化が達成された(
図8Aおよび
図8B)。注射の72時間後に、樹状細胞(DC)による不安定脂質-G
(0もしくは2)-CpGミセルの取り込みは、可溶性CpGオリゴヌクレオチドと比較して、5倍増大し、マクロファージによる取り込みは8倍増大し、B細胞による取り込みは5倍増大した。対照的に、より安定なリポ-G
(4もしくは6)-CGミセルは、低レベルのリンパ節保持および細胞会合を示した。
【0226】
(実施例10:免疫刺激性ミセルは、抗原特異的CD8+ T細胞増殖を誘導する)
(材料および方法)
マウスCD8+ T細胞増殖を、可溶性CpGオリゴヌクレオチドをコントロールとして使用して、中程度に安定した(リポ-G(0もしくは2)-CpGオリゴ)または過剰に安定した(リポ-G(4もしくは6)-CpGオリゴ)免疫刺激性ミセルでの免疫化/ワクチン接種後に試験した。C57Bl6(B6)マウスに、0日目および14日目にワクチン接種し、20日目もしくは21日目に分析した。代表的には、各注射は、以下の成分を含んだ:10μg オボアルブミン(OVA)抗原(Worthington Biochemical Corporationから購入)および1×PBS(20mM K+および10mM Mg+)中に懸濁した1.24nmol リポ-Gn-CGミセル。オボアルブミン(OVA)を、モデル抗原として使用した。なぜならそれは、B6マウスにおいて十分に研究されたH-2 Kb拘束MHCクラスIエピトープを有するからである。フロイント不完全アジュバント(IFA)を使用した実験では、ある容積の可溶性CpGオリゴヌクレオチドと可溶性OVA抗原とを、等容積のIFAと組み合わせ、乳化した。各ワクチン注射の総容積は、100μlであった。マウスの尾の基部に、皮下注射した。免疫化後、血液サンプルを脾臓およびリンパ節から回収し、単一細胞懸濁物を調製した(赤血球をACK溶解緩衝液によって枯渇させた)。上記血液サンプル調製物を、SIINFEKL特異的CD8+ T細胞増殖を追跡するためにMHCクラスI拘束OVA257-264テトラマー染色によって評価した。システイン(cys)改変ペプチドOVA257-264(CSIINFEKL)を、GenScriptが合成し、逆相HPLCによって精製した。次いで、細胞を、Fc-ブロッカー(抗マウスCD16/CD32モノクローナル抗体)で遮断し、PE標識Kb/SIINFEKLテトラマー(Beckman Coulter)および抗CD8-APCで、室温で30分間染色した。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。BD FACScantoフローサイトメーターでFACSデータを集め、Flowjoソフトウェアを使用して分析した。分析は、代表的には、CD8+、テトラマー陽性生細胞に対してゲートをかけた。
【0227】
(結果)
上記免疫刺激性ミセルの投与は、OVA
257-264に対して特異的なCD8+ T細胞の増殖を生じさせた(
図4Aおよび
図4B)。予測外なことには、中程度に安定化したリポ-G
2-CpGオリゴベースのミセルは、SIINFEKL特異的CD8
+ T細胞増殖を刺激するにあたって最も有効であった。上記不安定リポ-G
2-CpGオリゴベースのミセルの2回目の(ブースト)注射の6日後に、血液中で検出された全てのCD8+ T細胞のちの約33%は、上記抗原に対して特異的であった一方で、全てのCD8+
T細胞のうちのわずか約7%しか、安定化リポ-G
6-CpGオリゴベースのミセルのブースト投与の後に抗原特異的ではなかった。従って、このワクチンによって刺激されたT細胞応答の強度は、リンパ節において最大蓄積を示した中程度に安定化したCpGミセルと直接相関した。
【0228】
CD8
+ T細胞の応答性を試験するために、血中リンパ球を、OVA特異的ペプチドであるSIINFEKLで、エキソビボで6時間再刺激し、サイトカイン、IFN-γおよびTNF-αの生成について分析した。細胞を、96ウェル丸底プレートに蒔き、ブレフェルジンAの存在下で、完全培地中37℃において6時間、最小ペプチドをパルスした。細胞を、抗CD8-APCで染色し、次いで、Cytofix(BD biosciences)を使用して、製造業者の説明書に従って固定した。次いで、細胞を洗浄し、透過性にした。次いで、抗INF-γ-PEおよび抗TNF-α-FITCに対する細胞内染色を、BDのプロトコルに従って行った。FACSデータを集め、記載されるとおりに分析した。繰り返すと、上記不安定化リポ-G
2-CpGオリゴベースのミセルは、上記の知見と相関して、最も有効であった(
図4B)。
【0229】
さらなるインビボ細胞傷害性リンパ球(CTL)アッセイを行って、増殖したCD8+
T細胞集団が機能的であるか否かを評価した。ナイーブマウスの脾細胞に、10μM SIINFEKLペプチドを、30分間パルスしたか、またはパルスしなかった。次いで、細胞を1μM(パルスした細胞について)もしくは0.1μM(コントロール細胞)いずれかのCFSEで、10分間37℃で標識し、徹底的に洗浄した。細胞を、1:1比で混合し、10×106個の総細胞を、上記のとおりにワクチン処方物で予めチャレンジしたマウスへと静脈内(i.v.)注射した。18時間後、各レシピエントマウスからの脾細胞を、FACSによって分析して、CFSE標識細胞を検出した。免疫刺激性リポ-Gn-CGベースのミセルで免疫化したマウスのCD8+ T細胞は、上記ペプチドパルスした標的集団のうちの>97.9%を溶解したのに対して、可溶性CpGオリゴヌクレオチドで免疫化したマウスのCD8+ T細胞は、標的細胞のうちの平均54.6%を溶解した。