(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191420
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】低粘度、高ポリオールの自己発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20221220BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221220BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/02
A61Q1/14
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022166170
(22)【出願日】2022-10-17
(62)【分割の表示】P 2019559709の分割
【原出願日】2018-05-04
(31)【優先権主張番号】17170458.8
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ツァー,シェン・リャン
(72)【発明者】
【氏名】ハーマンソン,ケヴィン・デイビッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高ポリオールで自己発泡性であり、低粘度である組成物を提供する。
【解決手段】自己発泡性組成物であって、前記組成物は、a.20%~70%未満のポリオール、及びb.1.5%~25%の総界面活性剤(ここで、前記総界面活性剤の50%以上が、0.1~0.25のVh/Icao値により規定される界面活性剤であり、Vhは、ミセルコアの疎水基の体積であり、Icは、前記疎水基の長さであり、aoは、ミセル溶液界面で親水基により占められている断面積である)、を含み、製剤の粘度は、25℃で測定した場合、25cP以下であり、組成物は0~0.5%だけ噴射剤ゲルまたはガスを含む、自己発泡性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己発泡性組成物であって、前記組成物は、
a.20%~70%未満のポリオール、及び
b.1.5%~25%の総界面活性剤(ここで、前記総界面活性剤の50%以上が、0
.1~0.25のVh/Icao値により規定される界面活性剤であり、Vhは、ミセル
コアの疎水基の体積であり、Icは、前記疎水基の長さであり、aoは、ミセル溶液界面
で親水基により占められている断面積である)、
を含み、
製剤の粘度は、25℃で測定した場合、25cP以下であり、
組成物は0~0.5%だけ噴射剤ゲルまたはガスを含む、自己発泡性組成物。
【請求項2】
前記ポリオールが液体ポリオールであり、より好ましくはグリセリンである、請求項2
に記載の組成物。
【請求項3】
20~65%未満のポリオールを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記総界面活性剤の51~100%が、0.1~0.25のVh/Icao値により規
定される界面活性剤である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、スルタイン、ベタイン、アルキルタウレート、アルキルグルタメー
トおよびグリシネート、アルキルイセチオネート、アルキルグルコシド、アルキルアンホ
アセテートおよびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1から4のいずれか
に記載の組成物。
【請求項6】
アルキル鎖長がC8-C16、好ましくはC10-C14、より好ましくはC12であ
る、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
泡を製造する方法であって、前記方法は、
a)請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物を提供する工程と、
b)発泡ポンプ中のメッシュを通して、好ましくは200/100メッシュを通して、
前記組成物を吸い出す工程と、
を含み、結果泡となる、方法。
【請求項8】
1.5%~25%の総界面活性剤(得られる組成物全体に対する重量%)と、20%~
70%未満のポリオール(得られる組成物全体に対する重量%)とを含む組成物における
、
0.1~0.25のVh/Icao値により規定される界面活性剤の使用(ここで、V
hは、ミセルコアの疎水基の体積であり、Icは、前記疎水基の長さであり、aoは、ミ
セル溶液界面で親水基により占められている断面積である)であって、
0.1~0.25のVh/Icao値により規定される前記界面活性剤が、前記得られ
る組成物中、前記総界面活性剤の50%以上の量で存在し、前記得られる組成物が、0~
0.5%だけ噴射剤ゲルまたはガスを含み、前記得られる組成物の粘度が、25℃で測定
された場合、25cP以下である、界面活性剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高ポリオールで自己発泡性であり、低粘度である組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自己発泡性組成物が知られている。典型的には、泡の送達は例えば、空気噴射容器など
の空気推進システムを用いることにより、または噴射剤である1つまたは複数のガスを用
いることにより達成される。出願人は、定義されるように、該系の少なくとも1種の界面
活性剤の、少なくとも50%が、自己発泡性組成物を確実にするための、規定のVh/I
cao(Vhは、ミセルコア中の疎水基の体積を意味し、Icはミセルコア中の疎水基の
長さであり、かつaoはミセル溶液界面で親水基により占められている断面積である)値
を有さねばならないことが認識されている、低粘度で高ポリオール系に気づいていない。
具体的には、0.1~0.25のVh/Icao値を有する界面活性剤は、界面活性剤系
の50%以上を構成しなくてはならない。
【0003】
泡を送達する別の方法は、例えば、De Salvertらによる、米国特許出願公開
第2006/0817283号明細書で開示されている、油中水型エマルションなどのマ
イクロエマルションの使用によるものである。発泡は、アルキルポリグルコシドおよび少
なくとも1つの両性界面活性剤の混合物により達成され、噴射剤ガスは該組成物では使用
されていない。該組成物は局所適用(例えば化粧品)用であり、主にきわめて高い粘度を
有する濃密なクリームとして意図されているようである(段落0033)。低粘度で高ポ
リオール系(自己発泡性組成物用)は開示されていない。
【0004】
Satoらによる、米国特許出願公開第2015/0093348号明細書では、比較
的低粘度の油中水型エマルション(例えば、はるかに高い粘度を通常有するこれまでのシ
ャンプーとは異なる)を開示しており、泡は空気噴射発泡器具を使用して送達される(段
落0022)。規定のVh/Icao値の界面活性剤が50%以上の界面活性剤系を含む
、界面活性剤系を含む高ポリオールであり低粘度である組成物は、開示されていない。
【0005】
Lukenbachらによる、米国特許出願公開第2002/0122772号明細書
では、例えばペンタンといった自己発泡剤を含む、自己発泡性ゲルを開示している。該組
成物は、高粘度組成物でもある。
【0006】
Goldbergらによる、米国特許出願公開第2003/0083210号明細書で
は、自己発泡性揮発剤を有する組成物を開示し、これはエアロゾル供給パッケージを必要
とする。我々の発明の組成物は開示されていない。
【0007】
文献には、ポリオールの使用、特にグリセリンの使用(Satoらによる、米国特許出
願公開第2015/0093348号の表1)を開示するものもあるが、しかし例示的な
量は比較的低い(2%)。記載の通り、規定のVh/Icaoの値の界面活性剤が界面活
性剤系の50%以上を構成する、界面活性剤系を使用する高ポリオール系は、開示されて
いない。
【0008】
出願人は、特にグリセリンといった多量のポリオール(20重量%~70重量%未満)
を有し、規定の界面活性剤系を含む低粘度組成物(粘度は25cp未満)であり、かつ0
~0.5%のゲルまたはガス噴射剤を使用する際に自己発泡剤として認められる、自己発
泡性組成物を開示する、文献に気づいていない。好ましくは、我々の発明の組成物は、自
己発泡性揮発剤が実質的に存在しない状態で得られる。むしろ我々の発明の組成物の泡は
、界面活性剤系の50%以上、好ましくは51~100%以上、好ましくは60~100
%が、0.1~0.25、好ましくは0.1~0.225のVh/Icao値の界面活性
剤からなる、界面活性剤系を使用することで機能が向上する。
【0009】
出願人の同時係属出願である欧州特許第16190191.3号明細書では、出願人は
高グリセリン組成物(40~90%のグリセリンを含有する)を開示しており、この組成
物は、ジカルボキシアミノ酸またはモノカルボキシアミノ酸のN-アシル誘導体を含む界
面活性剤系を含む。本出願は、特に低粘度を有し、界面活性剤系の50~100%、好ま
しくは51~100%が、規定のVh/Icao値の界面活性剤からなる界面活性剤系を
選択することにより、発泡が向上する、自己発泡性組成物に特有のものである。これは、
出願人の過去の出願では認められていない。好ましくは、発泡が、自己発泡性揮発剤(例
えば1つまたは複数の噴射剤ガス)が実質的に存在しない状態(0~0.5%、好ましく
は0~0.1%、より好ましくは0~0.01%、より好ましくは全て存在しない)にて
達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0817283号
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0093348号
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0122772号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0083210号
【発明の概要】
【0011】
本発明は、自己発泡性組成物に関し、該組成物は、
1)20%超~70%未満のポリオール(例えば、グリセリン)を含み、
2)ここで、製剤の粘度が25cP未満であり、ここで、
3)0.75重量%超~25重量%、好ましくは1.0~20重量%、より好ましくは
1.5~20重量%の界面活性剤系(例えば、総界面活性剤の量が0.75~25重量%
)が、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双生イオン界面
活性剤、陽イオン性界面活性剤およびそれらの混合物から成る群から選択される界面活性
剤からなり、界面活性剤系中、50%以上、好ましくは51%以上の界面活性剤が、0.
1~0.25、好ましくは0.1~0.225の値を有する、Vh/Icao値(ここで
、Vhは、ミセルコア中の疎水基の体積(すなわち「界面活性剤分子の疎水体積」であり
;Icは疎水基の長さ(すなわち疎水性部分最長鎖長)であり;aoはミセル溶液界面で
親水基により占められている断面積(すなわち、「親水性部分を通るスライス面積」)で
ある)の界面活性剤からなる。
【0012】
好ましくは、組成物は、以下に記載の技法を用いて視覚的に評価されるように、「自己
発泡体」として適格である泡を提供する。
【0013】
多量のポリオール、好ましくはグリセリンが使用されるため、本発明の組成物は優れた
水和作用を提供する。皮膚水和は、プロトコルにて規定されるように、得られた皮膚コン
ダクタンス値を用いて測定され得る。通常、1000超、好ましくは1100超、より好
ましくは1200以上であるコンダクタンス値(マイクロ秒単位で測定される)は、優れ
た水和作用を定義すると考えられているが、この値は母集団の合計、季節などによって変
動し得る。しかしながらグリセリンを含まない組成物(水により置換)に関しては、プロ
トコル内に記載されるグリセリンに富んだクレンジング剤に対し臨床診断法にて測定され
るように、組成物は少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%高い、測定されたコ
ンダクタンス値を有する。
【0014】
発泡体は、自己発泡性揮発剤(例えば、噴射剤)が使用されない発泡ポンプを使用して
測定される。こうした揮発剤は使用され得るが、本発明の、視覚的に観察される「自己発
泡体」を得るためには必要ではないことを理解されたい。
【0015】
つまり、組成物自身が、プロトコルで規定される発泡ポンプを使用して噴射した後に見
られる、「自己発泡性」特性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】泡の品質を観察するためのプロトコルに従い、視覚的に観察した際、良好な泡対不良な泡が見られる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施例、またはそうでない場合に例示的に指示する場合を除き、材料の量もしくは反応
条件、材料の物理的特性および/または使用を示す本明細書中の全ての数は、用語「約」
により修飾されていると理解されるべきである。
【0018】
全体にわたって使用されるように、範囲は、範囲内にある全ての値を説明することを目
的とした短縮表現として使用される。範囲内の任意の値は、範囲の終点として選択され得
る。および/またはの使用は、一覧からいずれか1つが個別に選択され得る、または一覧
から任意の組合せが選択され得ることを示す。
【0019】
明確にするために記すと、用語「含む(comprising)」は、「含む(inc
luding)」を意味することを意図しているが、必ずしも「から成る(consis
ting of)」、「構成される(composed of)」というわけではない。
言い換えれば、列挙された工程または項目は、網羅的である必要はない。
【0020】
別段の指示がない限り、使用される成分の量を表す全てのパーセンテージは、組成物の
総重量中の材料の有効重量に基づく重量パーセントであり、その合計は100%であると
理解されるべきである。
【0021】
本明細書で見出される本発明の開示は、特許請求の範囲が多数従属項または冗長である
ことなく見出されるべきであるという事実に関係なく、互いに多数従属形式であるような
、特許請求の範囲にて見出される、全ての実施形態を含むものであると考えるべきである
。
【0022】
本発明は自己発泡性組成物に関する。この組成物は、
1)20%超~70%未満のポリオール(例えば、グリセリン)を含み、
2)ここで、該製剤の粘度が25cP未満であり(理論により拘束されることを望むも
のではないが、発泡が向上したことに起因すると考えられる)、仮に界面活性剤系の50
%以上を構成する界面活性剤が、我々が規定した特定の値(Vh、Icおよびaoは上記
で規定されているVh/Icao)により規定されると、驚くべきことに、同時に
a)望ましい低粘度値(発泡およびポンプ効果を目的とする)を維持し、
b)高ポリオール濃度(20重量%超~70重量%未満、好ましくは20重量%~65
重量%、より好ましくは20重量%~60重量%)を含み(高グリセリン値は、界面活性
剤のダメージを最小化しながらより優れた保湿を提供するため、望ましい)、
c)良好な発泡性(以下で規定されるように「自己発泡性」として適格である)を有す
る(発泡性が、消費者に対しクレンジング機能を知らせる別の望ましい特性である)、
組成物を維持することが可能であることが見出されたことが分かった。
【0023】
ポリオール
示されるように、本発明の組成物は、20重量%から70重量%未満、好ましくは20
重量%から65重量%、より好ましくは20重量%から60重量%である、ポリオールを
含む。
【0024】
ポリオールは、好ましくはグリセリン、プロピレン、グリコール、ポリプロピレングリ
コールおよびそれらの混合物などの、液体ポリオールであることが最も好ましい。グリセ
リンが好ましいポリオールであるが、他のポリオールを使用してもよい。他のポリオール
としては、ソルビトール、プロピレン、グリコール、ポリプロピレングリコールおよびそ
れらの混合物(好ましくは、グリセリンと他のポリオールのうち1つとの混合物を含む)
が挙げられる。例えば、ソルビトールなどの固体ポリオールは、液体ポリオールと組み合
わせて存在してもよい。好ましくはグリセリンといった液体ポリオールは、組成物の重量
に基づき、20重量%~70重量%未満、好ましくは20重量%~65重量%、より好ま
しくは20重量%~60重量%の量で好ましくは存在する。仮に固体ポリオールのみが使
用され、かつ固体界面活性剤である場合、当業者は、組成物の粘度範囲を満たすように水
が組成物中に存在することを理解するであろう。
【0025】
使用される量にて、ポリオールは向上した保湿を提供する。これは1000マイクロ秒
以上の測定されたコンダクタンス値により、および/またはグリセリンを含まない対照組
成物に対して20%以上の保湿向上(コンダクタンス値も使用する)により確認される。
コンダクタンス測定は、グリセリンに富んだクレンジング剤に対し、臨床診断法に関する
部分におけるプロトコルに記載される通りに実施される。本発明の組成物を使用すること
で、出願人は、規定材料を使用する発泡ポンプによって吸い出した後に、驚くべきことに
優れた発泡特徴(目視観察により規定される)を維持しつつ、低粘度である組成物(吸い
出しに優れている)において多量のポリオールを提供することが可能である。特定の界面
活性剤系を有し、低粘度を維持する(かつ泡および噴射性を有する)能力は、非常に驚く
べきものであった。「自己発泡性」泡はクリーム状(小さな気泡サイズを有する)であり
、これは(泡がつぶれるというよりも)泡によるすじが積層するもので、該泡のすじは数
分(2~3分)間その形状を維持する。また、該泡は平面上で流れたり広がったりするこ
とがない。これは
図1Aで確認することができる。視覚的に「自己発泡体」ではない泡の
事例は、
図1Bおよび
図1Cで見られる。
【0026】
界面活性剤
本発明の組成物は、0.75重量%超~25重量%、好ましくは1.5~25重量%、
より好ましくは1.5~20重量%、更により好ましくは1.5~15重量%、更により
好ましくは1.5~12重量%の界面活性剤を更に含み、総界面活性剤の50%以上、好
ましくは51%以上が、0.1~0.25、好ましくは0.1~0.225のVh/Ic
ao値を有する。界面活性剤は好ましくは、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性
剤、両性界面活性剤、双生イオン界面活性剤、陽イオン性界面活性剤およびそれらの混合
物から成る群から選択され、総界面活性剤の50%以上、好ましくは51%以上が、0.
1~0.25、好ましくは0.1~0.225のVh/Icao値を有する。
【0027】
この式によれば、Vhはミセルコア中の疎水基の体積を規定し、これはまた、界面活性
剤分子の疎水体積とも呼ばれ得る。Icは疎水基の長さを指し、これは最長の鎖長を指す
。最後に、aoは親水基により占められる断面領域および溶液中のミセル界面を指す。こ
れは親水性部分を通るスライス面積である。
【0028】
この値は、例えばChemSW(登録商標)Incにより発行されるMolecula
r Modeling Pro(登録商標)Software(Revision3.2
)を使用し、所与の界面活性剤を対象として計算することができる。通常、化学構造が入
力され、当業者に周知であるモデルがVh、Icおよびaoを推定するために使用される
。
【0029】
予想外なことに、出願人は、0.1~0.25である、計算されたV
h/I
ca
0値を
有する界面活性剤が、20~70%未満のポリオール(70%以上では、粘度は所望する
場合よりも高くなる)を有する組成物中に、50~100%、好ましくは51~100%
含まれる際、該組成物は視覚的に望ましい「自己発泡体」泡(プロトコルに記載され、か
つ
図1に見られる特性により観察される、「自己発泡体」として適格である)を得ること
が分かった。
【0030】
したがって、20%~70%未満のポリオールを有する組成物中にて、例えば、グルタ
ミン酸ナトリウム(約0.169の計算値を有する。表1を参照)またはアルキルグルコ
シド(0.194の計算値を有する。表1を参照)が50%超の量で使用される場合、こ
れらは「自己発泡体」として認められる。しかしながら、表6および表7に見られるよう
に、実質的に同じ製剤を使用し、界面活性剤がSLES1EO(0.316の計算値を有
する)である場合、実施例のいずれも自己発泡性泡としては認められない。
【0031】
使用可能である好ましい界面活性剤(50%以上の量で使用する場合)は、スルタイン
、ベタイン、アルキルタウレート、アルキルグルタメートおよびグリシネート、アルキル
イセチオネート、アルキルグルコシドならびにアルキルアンホアセテートである。特に好
ましいのは、グルタメート、グリシネートおよびイセチオネートである。
【0032】
通常、使用され、かつ計算される界面活性剤のアルキル鎖長は、C8~C16であり、
好ましくはC10~C14、最も好ましくはC12であり、例えばC12の鎖長のグルコ
シドである。もちろん、仮に鎖長がより長く、計算されたVh/Icao値が0.1~2
5の範囲内にある場合には、界面活性剤は依然として本発明の特許請求の範囲内にある。
【0033】
理論に拘束されることを望むものではないが、計算値(表1を参照)はどれくらい界面
活性剤が充填され、かつどのくらいの水が界面活性剤が通過するポンプ内に形成している
フィルムから流出するかを表すものであると考えられる。
【0034】
別の態様では、本発明は、20~70%未満のポリオールを含む組成物中の自己発泡性
泡(上記で規定される通り)を提供する方法に関する。この方法は、0.1~0.25の
Vh/Icao値を有する50%以上の界面活性剤を使用して配合を立てることを含む。
【0035】
粘度
該組成物の粘度は25cp以下である。こうした粘度は、組成物の自己発泡性の性質を
提供するために必要である。泡を生成するには、組成物は例えばポンプ装置中のメッシュ
を通り噴射され、これは例えば手動ポンプにより噴射される。当業者は、クレンジング組
成物中のポリオールまたは界面活性剤の一般的な増粘効果を認識するであろう。本発明の
文脈において、粘度要件を満たすために、指定された範囲内にて、より少量の界面活性剤
により、より多量のポリオールが可能となり得、その一方でより少量のポリオールにより
、より多量の界面活性剤が可能となり得る。組成物は更に水を含むことが好ましい場合が
ある。粘度測定は、スピンドルサイズ4、20rpmで30秒間回転するよう調整されそ
の後読み取りを行う、標準規格のRV Brookfield粘度計を使用して実施され
る。粘度は室温で測定される。好ましい温度範囲は、23~27℃、好ましくは24~2
6℃、最も好ましくは25℃である。
【0036】
本発明は更に泡を製造する方法に関し、該方法は、
a)先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物を提供する工程と、
b)発泡ポンプ中のメッシュを通して、好ましくは200/100メッシュを通して、
組成物を吸い出す工程と、
を含み、結果泡となる、方法である。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、1.5%~25%の総界面活性剤(得られる組成物
の総量に対する重量%)および20%~70%未満のポリオール(得られる組成物の総量
に対する重量%)を含む組成物における、0.1~0.25のVh/Icao値により規
定される界面活性剤の使用(ここで、Vhは、ミセルコア中の疎水基の体積を意味し、I
cは疎水基の長さであり、かつaoはミセル溶液界面で親水基により占められている断面
積である)に関し、ここで、0.1~0.25のVh/Icao値により規定される界面
活性剤が、得られる組成物中、総界面活性剤の50%以上の量で存在し、得られる組成物
が、0~0.5%だけ噴射剤ゲルまたはガスを含み、得られる組成物の粘度は、25℃で
測定した場合、25cP以下である。
【0038】
[図面]
図1は、泡の品質を観察するためのプロトコルに従い、視覚的に観察した際、良好な泡
対不良な泡が見られる写真である。
【0039】
[実施例]
実験手順
プロトコル
グリセリン豊富なクレンジング剤用の臨床手順―皮膚コンダクタンスを使用した水和測
定
被験者は、18~65歳の男女であり、前腕部にわずかに乾燥肌(0~6の乾燥評価指
標で、0.5~2の目視等級)を有している。研究を完成させるには最低で30人の被験
者が必要である。被験者は、両腕において同等の乾燥スコア(0.5等級以内)を有しな
くてはならない。前腕部上の6か所の部位(各腕上で3か所の部位)で試験を行う。本臨
床研究は、最低30人の被験者による、無作為化、評価者盲検/被験者盲検の正常洗浄管
理下試験であり、統計上有意であると見なされる。
【0040】
管理された洗浄は、4週間(27日間)にわたり各部位で毎日2回実施され、1日2回
の洗浄の間隔は4~5時間であった。牛脂脂肪酸ナトリウム、ヤシ脂肪酸ナトリウム、コ
カミドプロピルベタインを含む、市販の石鹸バーで1日2回洗浄する(試験開始5日前)
ことにより、5日間の調整期間が設けられた。1日目、7日目、14日目、21日目およ
び28日目には、朝になって洗浄する前に、被験者を機器による評価前に、66.6゜F
~71.9°F、24~55%の相対湿度に維持された環境制御室にて少なくとも30分
順応させた。
【0041】
皮膚コンダクタンスはSkicon(MT8Cプローブを備えた200EX;I.B.
S.,Co.,Ltd.製)を用いて測定された。3つのSkicon測定値が各部位か
ら取得された。表示されたデータは、ベースラインからの平均変化である。1000マイ
クロ秒以上の皮膚コンダクタンス値は、良好な保湿を示す。絶対値は、母集団の合計また
は季節によって変化し得る一方で、グリセリンを含有しない(水で置換される)対照組成
物に対し、コンダクタンス値が20%以上向上することによっても保湿が確認される。
【0042】
研究期間中、被験者は、任意の皮膚ケア製品を試験部位(前腕部)で使用することを避
けるよう求められた。被験者は、ラウロイルイセチオネートナトリウム、ステアリン酸、
牛脂脂肪酸ナトリウムまたはパルミチン酸ナトリウム、ラウリル酸(例えばUnilev
er製のDove(登録商標)bar)を含む市販の石鹸バーを使い、毎晩シャワーを浴
びるよう求められた。しかし、腕に任意のクレンジング製品を塗布することは避けること
を求められた(仮に、シャワー時に残余溶液が処置部位に流れ落ちる(例えば前腕部)場
合には許容される)。
【0043】
V
h/I
ca
0値:V
h/I
ca
0値は、水性溶液中の界面活性剤に対するミセル構造
を予測するために繰り返し使用されてきており、V
hは、ミセルコア中の疎水基の体積を
意味し、I
cはコア中の疎水基の長さであり、かつa
0はミセル溶液界面で親水基により
占められている断面積である。Molecular modeling pro(商標)
revision3.2(ChemSW(商標)Inc.により公開)を使用し、界面活
性剤構造に基づいて界面活性剤における該パラメータを計算した。様々な界面活性剤に対
する計算されたV
h/I
ca
0値を表1に示した。
【表1】
【0044】
一般的に使用されるほとんどの界面活性剤と同様、表1の、測定された界面活性剤のア
ルキル鎖長は、C12(界面活性剤製造時の主たる残留物としてC10またはC14を伴
う)である。それゆえ、ここで使用されるアルキルグルコシドは、例えばC12グルコシ
ドであった。
【0045】
Å(オングストローム):長さの単位。
【0046】
製剤の粘度測定:測定は、スピンドルサイズ4、20rpmで30秒間回転するよう調
整され、その後読み取りを行う標準規格のRV Brookfield粘度計を使用して
実施された。スピンドルは、試料に完全に浸漬されるように配置された。各試料において
測定は3回繰り返された。3つの測定値の平均が試料粘度として報告される。粘度は25
℃で測定された。
【0047】
自己発泡剤に対する泡の品質:本発明では、泡はガス噴射剤の代わりに発泡ポンプを使
用して生成された。使用される発泡ポンプは、Albea Thomaston Inc
(60electric avenue,Thomaston,CT67787)製のも
のであり、200/100メッシュ(サンプルID41350)である。泡は、当該製剤
を含むボトルを伴う清潔なポンプが10回押圧され、生成された泡は廃棄されるといった
ように生成された。次にポンプはボトルを傾け、平坦面上にて1つの姿勢に向いた状態で
、6回続けて押圧された。次に、平坦面上の泡を視覚的に評価した。自己発泡剤に対する
泡の品質は、クリーム状であり、視認できる大きな気泡を認めず、泡によるすじが積層す
るもので、かつ数分間にわたってその形状を維持する。また、泡は平坦面で流れ/広がる
ことがない。こうした泡の一例が
図1Aである。上記の方法により生成され、自己発泡剤
として認められない泡は、多数の大きな気泡を明らかに含み、泡のすじはその形状を維持
することはなく、むしろ泡は水気に富み流れるものか、またはポンプから連続的にすじが
出ないものである(例えば、
図1Bおよび
図1C)。
【0048】
[実施例]
[実施例1]
より優れた皮膚水和効果のため、グリセリン濃度が20%より高く70%より低い範囲内
であるグリセリン含有量を有するクレンジング組成物:
【表2】
【表3】
【0049】
表2および表3から、本発明の組成物は、優れた水和効果(1000マイクロ秒以上の
コンダクタンス値を有すると規定される)を提供するために、20~70%のポリオール
(好ましくはグリセリン)を必要とすることが分かる。
【0050】
[実施例2]
自己発泡剤用のグルタメート/CAPB(3:1)界面活性剤混合物:50%グリセリン
量(pH6.5)での界面活性剤濃度
【表4】
【0051】
実施例2より、グリセリン量が製剤中50%である場合、界面活性剤(グルタメート/
CAPB3:1)の総量が、自己発泡性である組成物として規定される界面活性剤系の0
.75%超であり、好ましくは1.5~25%でなければならないことが(比較例2-A
、2-Bより)分かる。
【0052】
[実施例3]
自己発泡剤用のグルタメート/CAPB(3:1)界面活性剤混合物:20%グリセリン
量(pH6.5)での界面活性剤濃度
【表5】
【0053】
再び、実施例3より、グリセリン量が20%のグリセリンである場合、界面活性剤(グ
ルタメート/CAPB3:1)の総量が、自己発泡性である組成物として規定される界面
活性剤系の0.75%超であり、好ましくは1.5~25%でなければならないことが(
比較例3-A、3-Bより)分かる。
【0054】
[実施例4]
自己発泡剤用の9%グルタメート/CAPB(3:1)界面活性剤混合物:グリセリン量
(pH6.5)
【表6】
【0055】
[実施例5]
自己発泡剤用の6%グルタメート/CAPB(3:1)界面活性剤混合物:グリセリン量
(pH6.5)
【表7】
【0056】
実施例4および実施例5から、グリセリン量は、自己発泡性である組成物として規定さ
れるためには、70%未満、好ましくは65%未満でなければならないことが(比較例4
-Aおよび比較例5-Aから)分かる。別の観察では、自己発泡性である組成物として規
定されるためには、製剤粘度が25cP未満であることが必要である。
【0057】
[実施例6]
自己発泡剤用のSLES/CAPB(3:1)界面活性剤混合物:50%のグリセリン量
(pH6.5)での界面活性剤濃度
【表8】
【0058】
[実施例7]
自己発泡剤用のSLES/CAPB(3:1)界面活性剤混合物:20%のグリセリン量
(pH6.5)での界面活性剤濃度
【表9】
【0059】
表8および表9より、SLES/CAPB(3:1)界面活性剤混合物が使用された場
合、試験された製剤は、全て自己発泡性として認められないことが観察された。グリセリ
ン量、または製剤粘度は、実施例4および実施例5に類似していることに注意されたい。
理論に束縛されることを望まないが、界面活性剤混合物の選択は、高グリセリンを含む製
剤が自己発泡剤に適格であるかどうかを決定すると考えられている。SLESは、実施例
6および実施例7の界面活性剤混合物全体において50%超を占める界面活性剤であり、
これは0.25より大きいVh/Ica0を有する(Vhは、ミセルコア中の疎水基の体
積を意味し、Icはコア中の疎水基の長さであり、かつa0はミセル溶液界面で親水基に
より占められている断面積である)。
【0060】
[実施例8]
自己発泡剤用のAPG界面活性剤:50%グリセリン量(pH7)での界面活性剤濃度
【表10】
【0061】
[実施例9]
自己発泡剤用APG界面活性剤:20%グリセリン量(pH7)での界面活性剤濃度
【表11】
【0062】
[実施例10]
自己発泡剤用6%APG界面活性剤:グリセリン量(pH7)
【表12】
【0063】
[実施例11]
自己発泡剤用9%APG界面活性剤:グリセリン量(pH7)
【表13】
【0064】
実施例8、9、10および11より、0.25より小さいVh/Ica0値を有する、
別の界面活性剤であるAPGが使用された場合、再び、我々は最小量の界面活性剤が必要
とされ、かつ組成物は、本発明の自己発泡性組成物として認められる、低粘度を有しなけ
ればならないことを確認したことが分かった。
【外国語明細書】