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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191429
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/32 20130101AFI20221220BHJP
   G06F 21/45 20130101ALI20221220BHJP
【FI】
G06F21/32
G06F21/45
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167168
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2018148186の分割
【原出願日】2018-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 里仁
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】太田 恭久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輔
(57)【要約】      (修正有)
【課題】登録者以外の第三者による不正な操作を抑制することができる車両を提供する。
【解決手段】スタートスイッチ装置1は、取得した操作者の生体情報23と予め登録された登録者の登録生体情報50に基づいて第1の生体認証が成立した後、新たに登録生体情報50を登録する操作が行われた場合、再度取得した生体情報23と予め登録された登録者の登録生体情報50に基づいた第2の生体認証の成立によって登録を許可する制御部5を備えて概略構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ボタンと、
前記操作ボタンに配置され、前記操作ボタンを操作する操作者の操作指の生体情報を読み取る生体情報センサと、
取得した前記操作者の生体情報と予め登録された登録者の登録生体情報に基づく生体認証が成立して車両の駆動装置の始動又は始動準備を指示した後、新たな登録生体情報を登録する操作が行われた場合、前記新たな登録生体情報を登録する制御部と、
を備えた車両。
【請求項2】
前記制御部は、取得した前記操作者の生体情報と前記予め登録された登録者の登録生体情報に基づく前記生体認証として第1の生体認証が成立して前記車両の駆動装置の始動又は始動準備を指示した後、前記新たな登録生体情報を登録する操作が行われた場合、再度取得した前記操作者の生体情報と前記第1の生体認証と同じ登録者の登録生体情報に基づいた第2の生体認証の成立によって登録を許可する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の生体認証が成立した後、前記予め登録された登録者の登録生体情報を消去する操作がなされた場合、前記第2の生体認証の成立によって消去を許可する、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の生体認証が不成立だった場合、登録又は消去を許可しない、
請求項2又は3に記載の車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の生体認証より前記第2の生体認証の認証精度を上げる、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の生体認証が成立してから前記操作ボタンにプッシュ操作が行われて前記車両の電源が遮断されるまでの期間における前記第2の生体認証の回数の制限を行う、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、駆動源の始動や停止を指令する始動スイッチと、駆動源を始動させる始動手段と、指紋を読み取る指紋センサと、指紋センサ、始動スイッチからの入力に基づいて始動手段の作動を制御する始動処理を実行する制御手段と、を備えた始動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この始動制御装置の制御手段は、始動スイッチにより始動が指令されたときに、始動手段による始動を実行する前に、指紋センサが読み取った指紋と予め登録された登録指紋とによる指紋照合を行い、一致判定がなされると、利用者が正当な利用者であると認証して始動手段による始動を許可する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-174095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の始動制御装置の中には、例えば、指紋照合の一致判定がなされた後であれば再度の指紋照合なしに、登録指紋の登録や消去が可能となるものがあり、登録者以外の第三者によって登録指紋の登録や消去が行われる可能性がある。
【0006】
従って本発明の目的は、登録者以外の第三者による不正な操作を抑制することができる車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、操作ボタンと、操作ボタンに配置され、操作ボタンを操作する操作者の操作指の生体情報を読み取る生体情報センサと、取得した操作者の生体情報と予め登録された登録者の登録生体情報に基づく生体認証が成立して車両の駆動装置の始動又は始動準備を指示した後、新たな登録生体情報を登録する操作が行われた場合、新たな登録生体情報を登録する制御部と、を備えた車両を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、登録者以外の第三者による不正な操作を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、実施の形態に係るスタートスイッチ装置の一例が配置された車両内の概略図であり、図1(b)は、スタートスイッチ装置の一例を示す正面図である。
図2図2(a)は、実施の形態に係るスタートスイッチ装置のブロック図の一例であり、図2(b)は、車両のブロック図の一例であり、図2(c)は、生体情報センサが読み取った読取画像の一例を示す概略図である。
図3図3(a)は、実施の形態に係るスタートスイッチ装置が登録する登録生体情報の一例を示す概略図であり、図3(b)は、登録モード又は消去モードの際に再度生体情報の読み取りを促す画像の一例を示す概略図であり、図3(c)は、登録モードの際に表示される表示画像の一例を示す概略図であり、図3(d)は、消去モードの際に表示される表示画像の一例を示す概略図である。
図4図4は、実施の形態に係るスタートスイッチ装置の動作の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る生体情報認証装置は、取得した操作者の生体情報と予め登録された登録者の登録生体情報に基づいて第1の生体認証が成立した後、新たに登録生体情報を登録する操作が行われた場合、再度取得した生体情報と予め登録された登録者の登録生体情報に基づいた第2の生体認証の成立によって登録を許可する制御部を備えて概略構成されている。
【0011】
この生体情報認証装置は、新たに登録生体情報を登録する場合、一回目の生体認証が成立しても二回目の生体認証が成立しないと登録が許可されないので、この構成を採用しない場合と比べて、登録者以外の第三者であると二回目の生体認証が不成立となることから、第三者による不正な操作を抑制することができる。
【0012】
[実施の形態]
(スタートスイッチ装置1の概要)
図1(a)は、実施の形態に係るスタートスイッチ装置の一例が配置された車両内の概略図であり、図1(b)は、スタートスイッチ装置の一例を示す正面図である。図2(a)は、実施の形態に係るスタートスイッチ装置のブロック図の一例であり、図2(b)は、車両のブロック図の一例であり、図2(c)は、生体情報センサが読み取った読取画像の一例を示す概略図である。図3(a)は、実施の形態に係るスタートスイッチ装置が登録する登録生体情報の一例を示す概略図であり、図3(b)は、登録モード又は消去モードの際に再度生体情報の読み取りを促す画像の一例を示す概略図であり、図3(c)は、登録モードの際に表示される表示画像の一例を示す概略図であり、図3(d)は、消去モードの際に表示される表示画像の一例を示す概略図である。
【0013】
なお以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率は、実際の比率とは異なる場合がある。また図2(a)及び図2(b)では、主な信号や情報などの流れを矢印で示している。
【0014】
生体情報認証装置としてのスタートスイッチ装置1は、例えば、図1(a)に示すように、運転席に着座する操作者の前方であってステアリング84の周囲のパネル80、運転席と助手席の間に位置するフロアコンソール81、及びステアリング84などに配置される。このスタートスイッチ装置1は、プッシュ操作(オン操作)により、車両8の駆動装置の始動、又は始動準備を車両8の車両制御部88に指示し、その後になされたプッシュ操作(オフ操作)により、駆動装置の停止を指示することができる。
【0015】
なお車両8の駆動装置の始動や車両8の電源遷移は、例えば、スタートスイッチ装置1から出力された指示信号Sと、シフト装置などの操作条件と、に基づいて車両制御部88が判断するものとする。
【0016】
具体的には、駆動装置が内燃機関(エンジン)である場合、シフト装置やブレーキ装置の操作条件が満足された状態でなされたプッシュ操作によりエンジンが始動する。また駆動装置がモータである場合、上記の操作条件が満足された状態でなされたプッシュ操作によりモータに電流を供給する始動準備が行われる。さらに駆動装置がエンジンとモータのハイブリッドである場合、上記の操作条件が満足された状態でなされたプッシュ操作により、始動時に優先される駆動装置に対応して始動又は始動準備が行われる。このオン操作の後に行われたオフ操作によって、駆動装置の停止が指示される。
【0017】
またスタートスイッチ装置1は、一例として、操作条件としてブレーキ装置を作動させずにプッシュ操作が行われた場合、OFF(電源をオフ)、ACC(一部の電子機器が使用可能)、ON(全ての電子機器が使用可能)などの電源遷移を実行させるための指示信号Sを出力する。車両制御部88は、例えば、当該指示信号Sと、上記の操作条件と、に基づいて電源を制御する。なお生体情報認証装置は、スタートスイッチ装置1に限定されず、例えば、ドアのロック及びアンロック時の認証、電子機器のログイン時の認証などに用いられても良い。
【0018】
スタートスイッチ装置1は、例えば、図2(a)に示すように、取得した操作者の生体情報23と予め登録された登録者の登録生体情報50に基づいて第1の生体認証が成立した後、新たに登録生体情報50を登録する操作が行われた場合、再度取得した生体情報23と予め登録された登録者の登録生体情報50に基づいた第2の生体認証の成立によって登録を許可する制御部5を備えて概略構成されている。
【0019】
このスタートスイッチ装置1は、例えば、図1(b)に示すように、円筒形の本体10と、操作ボタン12と、を備えている。この操作ボタン12は、本体10の開口102に挿入されている。そしてスタートスイッチ装置1は、例えば、図2(a)に示すように、生体情報センサ2と、登録消去スイッチ3と、スイッチ部4と、を備えている。
【0020】
制御部5は、第1の生体認証が成立した後、予め登録された登録者の登録生体情報50を消去する操作がなされた場合、第2の生体認証の成立によって消去を許可するように構成されている。
【0021】
また制御部5は、第2の生体認証が不成立だった場合、登録又は消去を許可しないように構成されている。
【0022】
この登録生体情報50の登録及び消去は、第1の生体認証の効力が継続している期間に行われる。第1の生体認証の効力が継続している期間とは、例えば、第1の生体認証が成立してから車両8の電源が遮断されるまでの期間である。
【0023】
車両8は、一例として、図2(b)に示すように、タッチパッド85と、メインモニタ86と、サブモニタ87と、車両制御部88と、を備えて概略構成されている。
【0024】
タッチパッド85は、例えば、図1(a)に示すように、フロアコンソール81に配置されている。このタッチパッド85は、例えば、静電容量方式のタッチパッドであり、なされた操作に基づいて操作情報Sを車両制御部88に出力する。
【0025】
メインモニタ86は、一例として、図1(a)に示すように、センターコンソール82に配置されているがこれに限定されない。このメインモニタ86は、例えば、液晶モニタであり、車両制御部88から出力される表示信号Sに基づいて表示を行う。
【0026】
サブモニタ87は、一例として、図1(a)に示すように、運転席から見て正面のインストルメントパネル83に配置されている。このサブモニタ87は、例えば、液晶モニタであり、車両制御部88から出力される表示信号Sに基づいて表示を行う。このサブモニタ87は、例えば、インストルメントパネル83に限定されず、ヘッドアップディスプレイなどのように他の場所に配置されても良い。
【0027】
なお以下では、登録生体情報50の登録及び消去に関するメッセージ画像は、メインモニタ86に表示されるものとするがこれに限定されず、サブモニタ87に表示されても良いし、メインモニタ86とサブモニタ87に表示されても良い。
【0028】
車両制御部88は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などから構成されるマイクロコンピュータである。この車両制御部88は、例えば、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった車両LAN(Local Area Network)を介してスタートスイッチ装置1と電磁気的に接続されている。
【0029】
(生体情報センサ2の構成)
生体情報センサ2は、例えば、図1(b)に示すように、操作ボタン12の操作面120に読取面20が露出するように配置されている。
【0030】
この生体情報センサ2は、例えば、図1(b)及び図2(c)に示すように、生体情報23として操作指9の指紋を読み取るように構成されている。なお生体情報23は、操作指9の指紋に限定されず、操作指9の静脈、手の平の静脈、目の虹彩、顔などの身体の一部の形状などでも良い。また生体情報センサ2は、例えば、虹彩などのように操作対象から離れていても生体情報23を読み取ることが可能であれば、スタートスイッチ装置1に搭載されていなくても良い。
【0031】
この生体情報センサ2は、例えば、指紋を読み取る場合、光学式、静電容量式、電界強度測定式、感圧式及び感熱式などの指紋を読み取るように構成されたセンサが用いられる。
【0032】
また生体情報センサ2は、例えば、操作指9や手の平の静脈を読み取る場合、照射した近赤外線の反射に基づいて静脈を読み出すように構成されたセンサが用いられる。
【0033】
また生体情報センサ2は、例えば、指紋と静脈の両方を読み取る場合、可視光を照射して撮像した画像を画像処理して指紋と静脈を抽出するように構成されたセンサが用いられる。
【0034】
さらに生体情報センサ2は、例えば、虹彩を読み取る場合、赤外線を照射して撮像した画像を画像処理して虹彩を読み取るように構成されたセンサが用いられる。
【0035】
またさらに生体情報センサ2は、例えば、顔などの身体の一部の形状を読み取る場合、撮像された対象に複数の計測点を設け、この計測点の深度に基づいて対象の凹凸形状を読み取るように構成されたセンサが用いられる。
【0036】
本実施の形態の生体情報センサ2は、一例として、指紋を読み取る静電容量式のセンサである。この生体情報センサ2は、操作者が操作ボタン12にプッシュ操作を行うと、読取面20に接触した操作指9から生体情報23を読み取るように構成されている。なお読取面20は、操作面120に露出せず、操作面120の下方に配置されても良い。
【0037】
生体情報センサ2は、例えば、読取面20の下方に、格子状に行と列に並ぶ複数の検出電極を備えている。この複数の検出電極は、一例として、数万から数十万個形成されると共に、数μmから数十μmの間隔で配置されている。
【0038】
生体情報センサ2は、例えば、列を替えながら行に並ぶ検出電極の静電容量を読み出し、続いて行を替えて検出電極の静電容量を読み出すことを繰り返して全ての検出電極を走査するように構成されている。この走査の周期は、一例として、100ms程度である。
【0039】
生体情報センサ2は、例えば、走査して読み出した複数の静電容量に基づいて形成される読取画像22を制御部5に出力する。この読取画像22は、例えば、1周期分の静電容量に基づいて形成される。
【0040】
具体的には、生体情報センサ2は、例えば、予め設けられたしきい値以上の静電容量を「1」、しきい値より低い静電容量を「0」に分けると共に、検出電極の位置と関連付けて読取画像22を生成する。
【0041】
図2(c)に示す読取画像22は、一例として、上述の「1」の検出電極の位置を黒、「0」の検出電極の位置を白としている。なお図中の丸は、後述する特徴点6の一部を示すために付したものである。
【0042】
静電容量が高い位置は、指紋の山の位置であって検出電極までの距離が近いので、静電容量が高くなる。そして低い位置は、指紋の谷の位置であって検出電極までの距離が遠く、静電容量が低くなる。従って静電容量の高い位置を黒、低い位置を白とすると、一例として、図2(c)に示すような読取画像22が得られる。この読取画像22において黒で示した画像は、読み取られた生体情報23である。
【0043】
なお制御部5は、例えば、読取面20に対する操作指9の接触後に読み取られた複数の読取画像22から特徴点6を抽出するのに適した読取画像22を選択するように構成されても良いし、スイッチ部4がオンしたことをトリガとして読み取った読取画像22を特徴点6の抽出に使用するように構成されても良い。
【0044】
(登録消去スイッチ3の構成)
登録消去スイッチ3は、一例として、図1(b)に示すように、本体10に隣接して配置されている。登録消去スイッチ3は、例えば、物理スイッチでも良いし、静電容量方式のタッチスイッチであっても良い。本実施の形態の登録消去スイッチ3は、タッチスイッチとして構成されている。
【0045】
登録者は、例えば、電子キーなどの携帯機による認証と第1の生体認証が成立した後、この登録消去スイッチ3に対してタップ操作又はダブルタップ操作を行うことにより、登録生体情報50の登録モード又は消去モードを指示することができる。
【0046】
登録モードは、新たに登録生体情報50を登録することができるモードである。この登録モードは、例えば、登録消去スイッチ3に対してタップ操作することによって移行することができる。
【0047】
消去モードは、既に登録されている登録生体情報50を消去することができるモードである。この消去モードは、例えば、登録消去スイッチ3に対してダブルタップ操作することによって移行することができる。なおスタートスイッチ装置1は、例えば、登録消去スイッチ3が操作されていない場合、認証モードであるものとする。
【0048】
登録消去スイッチ3は、なされたタップ操作及びダブルタップ操作に応じたモード信号Sを制御部5に出力する。制御部5は、例えば、モード信号Sに基づいて登録モードか消去モードかを判定し、判定したモードに応じた登録消去モード信号Sを生成して車両制御部88に出力する。
【0049】
(スイッチ部4の構成)
スイッチ部4は、一例として、操作ボタン12の操作面120とは反対側となる端部と接触するラバードームスイッチとして概略構成されている。このラバードームスイッチは、例えば、弾性力を生成すると共に可動接点を有するラバードームと、ラバードームが配置され、可動接点と対向する固定接点を有するスイッチ基板と、を備えている。
【0050】
そしてプッシュ操作によって操作ボタン12が本体10に押し込まれると、ラバードームが変形して可動接点が固定接点と導通し、スイッチがオンしたことを示すスイッチ信号Sが制御部5に出力される。そしてスタートスイッチ装置1は、例えば、プッシュ操作が終了すると、ラバードームの弾性力によって操作ボタン12が初期の位置に復帰するように構成されている。
【0051】
(制御部5の構成)
制御部5は、例えば、記憶されたプログラムに従って、取得したデータに演算、加工などを行うCPU、半導体メモリであるRAM及びROMなどから構成されるマイクロコンピュータである。このROMには、例えば、制御部5が動作するためのプログラムが格納されている。RAMは、例えば、登録生体情報50、類似度しきい値51、及び演算結果などを格納する記憶領域として用いられる。また制御部5は、その内部にクロック信号を生成する手段を有し、このクロック信号に基づいて動作を行う。
【0052】
登録生体情報50は、例えば、図3(a)に示すように、登録者名50aと、登録者ごとのテンプレート50bと、を関連付けた情報である。登録者名は、例えば、電子キーや携帯機などに関連して付されても良いし、タッチパッド85などの入力装置の操作によって付されても良く、これらに限定されない。
【0053】
図3(a)に示す登録生体情報50は、一例として、登録者A~登録者Cの生体情報23(指紋)が登録されている。登録者Aは、例えば、テンプレート50bとして指紋Aと指紋Aを登録している。この指紋Aと指紋Aとは、例えば、登録者Aの異なる指のテンプレート50bである。また登録者Bは、例えば、テンプレート50bとして指紋Bを登録している。さらに登録者Cは、例えば、テンプレート50bとして指紋Cを登録している。
【0054】
登録生体情報50の登録とは、例えば、登録者Bが新たに指紋Bとしてテンプレート50bを登録することである。また登録生体情報50の削除とは、例えば、登録者Aが既に登録されている指紋Aを消去することである。
【0055】
このテンプレート50bとは、生体情報23の認証に使用されるものであり、主に特徴点6から構成される。以下では、この特徴点6について説明する。
【0056】
制御部5は、例えば、読取画像22に対して抽出処理を行って特徴点6を抽出する。この抽出処理は、例えば、隆線の抽出処理などである。
【0057】
特徴点6とは、例えば、図2(c)に示すように、中心点、分岐点、端点及び三角州などであるがこれに限定されない。中心点とは、指紋の中心となる点である。分岐点とは、指紋の隆線が分岐している点である。端点とは、隆線が切れている点である。三角州とは、三方向から隆線が集まった点である。
【0058】
制御部5は、例えば、読取画像22から特徴点6を抽出する。そして制御部5は、例えば、取得した登録生体情報50と、特徴点6が抽出された生体情報23と、を比較し、特徴点6の位置、特徴点6間の距離などに基づいて類似度を算出する。そして制御部5は、スイッチ部4がオンであり、かつ類似度が類似度しきい値51以上であった場合、生体情報23の第1の生体認証が成立したとして指示信号Sを出力する。
【0059】
この類似度しきい値51は、一例として、80%である。つまり制御部5は、例えば、認証に使用する生体情報23の特徴点6の数が80個である場合、64個以上の特徴点6が登録生体情報50の特徴点6と一致すれば、操作者が登録者であると判定する。なお一致とは、特徴点6の位置、特徴点6間の距離などの一致を含んでいる。
【0060】
なお車両制御部88は、例えば、取得した指示信号Sに基づいて第1の生体認証が成立した登録者が登録した車載装置の設定を実行するように構成されても良い。例えば、車載装置がシートの駆動装置であった場合、登録者が登録したシート位置にシートを駆動する。また例えば、車載装置が空調装置であった場合、登録者が登録した設定温度、風量などの設定を行う。さらに例えば、車載装置がミラーの駆動装置であった場合、登録者が登録した位置にミラーを駆動する。なお電磁気的に接続とは、例えば、導電体を介した接続、電磁波の一種である光を介した接続、及び電磁波の一種である電波を介した接続の少なくとも1つを用いた接続である。
【0061】
制御部5は、一例として、スイッチ部4から出力されたスイッチ信号Sをトリガとして読取面20を走査するように生体情報センサ2を制御する。この場合、操作面120に対してプッシュ操作が行われているので、読取面20に対する操作指9の接触面積がプッシュ操作前において操作面120にタッチしている場合より大きく、より多くの特徴点6の抽出が可能となる。
【0062】
(登録生体情報50の登録と消去について)
制御部5は、第1の生体認証が成立したことによる効力が継続している期間において新たに登録生体情報50を登録、又は消去する操作が行われた場合、再度取得した生体情報23と予め登録された登録者の登録生体情報50に基づいた第2の生体認証の成立によって登録又は消去を許可する。
【0063】
・登録について
制御部5は、例えば、登録消去スイッチ3からモード信号Sが入力すると、登録か消去かを判定して登録消去モード信号Sを車両制御部88に出力する。車両制御部88は、例えば、図3(b)に示すように、入力した登録消去モード信号Sに基づいて登録であると判定すると、第2の生体認証を行わせるため、メインモニタ86の表示画面840にメッセージ画像841aを表示させる。
【0064】
このメッセージ画像841aは、一例として、図3(b)に示すように、再度操作指9を読取面20に接触させることを促すように、「操作ボタンにタッチしてください」などのメッセージから構成される。
【0065】
制御部5は、再度操作指9の生体情報23を読み取ると、第2の生体認証を行う。そして制御部5は、第2の生体情報が成立した場合、第2の生体認証が成立したことを示す指示信号Sを車両制御部88に出力する。
【0066】
車両制御部88は、例えば、図3(c)に示すように、入力した指示信号Sに基づいて登録の意思を確認するため、メインモニタ86の表示画面840にメッセージ画像841bを表示させる。
【0067】
このメッセージ画像841bは、一例として、図3(c)に示すように、「指紋を登録しますか」、「はい」、「いいえ」などのメッセージから構成される。操作者は、例えば、タッチパッド85を介して表示画面840に表示されたカーソル842を操作し、「はい」又は「いいえ」の画像を選択してプッシュ操作やダブルタップ操作などによって決定する。
【0068】
「はい」が選択決定された場合、車両制御部88は、「はい」が選択決定されたことを示す登録消去指示情報Sを制御部5に出力する。制御部5は、この登録消去指示情報Sに基づいて、登録消去指示情報Sの取得後に読取面20から読み取った読取画像22に基づいて抽出した特徴点6などからテンプレート50bを生成して登録する。このテンプレート50bは、第2の生体認証に使用された登録生体情報50の登録者名50aの新たなテンプレートとして登録される。
【0069】
また「いいえ」が選択決定された場合、車両制御部88は、「いいえ」が選択決定されたことを示す登録消去指示情報Sを制御部5に出力する。制御部5は、この登録消去指示情報Sに基づいて登録モードから認証モードに移行する。
【0070】
・消去について
制御部5は、例えば、登録消去スイッチ3からモード信号Sが入力すると、登録か消去かを判定して登録消去モード信号Sを車両制御部88に出力する。車両制御部88は、例えば、図3(b)に示すように、入力した登録消去モード信号Sに基づいて消去であると判定すると、第2の生体認証を行わせるため、メインモニタ86の表示画面840にメッセージ画像841aを表示させる。
【0071】
制御部5は、再度操作指9の生体情報23を読み取ると、第2の生体認証を行う。そして制御部5は、第2の生体情報が成立した場合、第2の生体認証が成立したことを示す指示信号Sを車両制御部88に出力する。
【0072】
車両制御部88は、例えば、図3(d)に示すように、入力した指示信号Sに基づいて消去する指紋の選択や消去の意思を確認するため、メインモニタ86の表示画面840にメッセージ画像841cを表示させる。
【0073】
このメッセージ画像841cは、一例として、図3(a)及び図3(d)に示すように、第2の生体認証によって登録者Aであると判定された場合、「指紋A」、「指紋A」、「消去」及び「もどる」などのメッセージから構成される。操作者は、例えば、タッチパッド85を介して表示画面840に表示されたカーソル842を操作し、「消去」又は「もどる」の画像を選択してプッシュ操作やダブルタップ操作などによって決定する。
【0074】
なお消去の際のメッセージ画像841cは、例えば、制御部5が記憶する登録生体情報50に基づいて生成される。従って制御部5は、例えば、メッセージ画像841cを生成するための情報を出力するように構成されても良いし、登録生体情報50が車両制御部88と共有されていても良い。
【0075】
「消去」が選択決定された場合、車両制御部88は、「消去」が選択決定された指紋を示す登録消去指示情報Sを制御部5に出力する。制御部5は、この登録消去指示情報Sに基づいて選択決定されたテンプレート50bを消去する。
【0076】
また「いいえ」が選択決定された場合、車両制御部88は、「いいえ」が選択決定されたことを示す登録消去指示情報Sを制御部5に出力する。制御部5は、この登録消去指示情報Sに基づいて消去モードから認証モードに移行する。
【0077】
なお変形例としてテンプレート50bは、一例として、登録消去スイッチ3のように、登録可能な数のスイッチに関連付けられて登録及び消去される。この場合、制御部5は、例えば、図3(c)及び図3(d)に示すようなメッセージ画像841b及びメッセージ画像841cを表示させなくても操作されたスイッチに関連付けて登録と消去を行う。
【0078】
ここで上述の登録と消去は、第1の生体認証と第2の生体認証の登録者が異なっていても認証が成立した場合、登録と消去が可能であった。変形例として制御部5は、第1の生体認証と第2の生体認証において同じ登録者の登録生体情報50を用いて生体認証を行うように構成される。この変形例では、登録生体情報50の登録と消去は、第1の生体認証が成立した登録者に限定される。
【0079】
また他の変形例として制御部5は、第1の生体認証より第2の生体認証の認証精度を上げるように構成される。この変形例では、例えば、第1の生体認証の類似度しきい値51を80%とした場合、第2の生体認証の類似度しきい値51を80%より高い85%や90%などに切り替える。
【0080】
生体認証では、本人拒否率を低く抑えると他人受入率が高く(利便性が高く)なり、他人受入率を低く抑えると、本人拒否率が高く(安全性が高く)なるので、本人拒否率と他人受入率、つまり利便性と安全性とは、トレードオフの関係にあり、他人受入率をゼロにすることができない。従って指紋を登録していない者が何度も生体認証をさせると、認証が成立する可能性がある。
【0081】
この変形例では、第1の生体認証よりも第2の生体認証を厳しくするので、同じ類似度しきい値を使用する場合と比べて、より第三者による登録や消去といった不正な操作を抑制することができる。
【0082】
さらに他の変形例として制御部5は、第2の生体認証の回数の制限を行うように構成される。この回数は、一例として、5回である。制御部5は、認証が不成立となる回数をカウントし、この回数が5回以上となった場合、登録生体情報50の登録や消去を許可しない。この変形例では、第2の生体認証の回数の制限が設定されるので、回数の制限がない場合と比べて、生体認証を繰り返すことによる認証の成立の可能性を低くすることができる。
【0083】
以下に本実施の形態のスタートスイッチ装置1の動作の一例について図4のフローチャートに従って説明する。
【0084】
(動作)
スタートスイッチ装置1の制御部5は、ステップ1の「Yes」が成立する、つまり操作ボタン12に対してなされたプッシュ操作の際に読み取られた生体情報23と登録生体情報50とに基づく第1の生体認証が成立した場合(Step1:Yes)、第1の生体認証が成立したことを示す指示信号Sを車両制御部88に出力する。車両制御部88は、例えば、この指示信号Sに基づいて駆動装置を始動する。
【0085】
次に制御部5は、ステップ2の「Yes」が成立する、つまりモード信号Sに基づいて登録消去スイッチ3が操作されたと判定した場合(Step2:Yes)、指示されたモードに応じた登録消去モード信号Sを生成して車両制御部88に出力する。車両制御部88は、取得した登録消去モード信号Sに基づいて、例えば、図3(b)に示すメッセージ画像841aを表示させる。
【0086】
次に制御部5は、操作者が操作ボタン12の操作面120にタッチしたことで読み取られた生体情報23と登録生体情報50とに基づいて第2の生体認証を行う。制御部5は、第2の生体認証が成立した場合(Step3:Yes)、登録又は消去を許可することを示す指示信号Sを車両制御部88に出力する。
【0087】
車両制御部88は、取得した指示信号Sに応じて指示されたモードに基づいたメッセージ画像をメインモニタ86に表示させる。そして車両制御部88は、タッチパッド85を介してなされた指示に基づいて登録消去指示情報Sを生成して制御部5に出力する。
【0088】
次に制御部5は、取得した登録消去指示情報Sに基づいて登録生体情報50の登録又は消去を実行し(Step4)、登録生体情報50の登録又は消去を終了する。
【0089】
なおステップ3において制御部5は、第2の生体認証が成立しなかった場合(Step3:No)、登録生体情報50の登録又は消去を許可せず終了する。
【0090】
ここで制御部5は、ステップ2において登録消去スイッチ3の操作を監視している間に、車両8の駆動装置の停止、又は電源遷移を指示するプッシュ操作がなされた場合、登録生体情報50の登録又は消去を終了する。
【0091】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係るスタートスイッチ装置1は、登録者以外の第三者による不正な操作を抑制することができる。具体的には、スタートスイッチ装置1は、新たに登録生体情報50を登録又は消去する場合、一回目の生体認証が成立しても二回目の生体認証が成立しないと登録又は消去が許可されないので、この構成を採用しない場合と比べて、登録者以外の第三者であると二回目の生体認証が不成立となることから、第三者による不正な操作を抑制することができる。
【0092】
スタートスイッチ装置1は、第1の生体認証と第2の生体認証とでは、同じ登録者の登録生体情報50を用いて生体認証がなされるので、この構成を採用しない場合と比べて、登録生体情報50の登録及び消去を第1の生体認証を行った登録者に限定することができる。
【0093】
スタートスイッチ装置1は、第1の生体認証が成立しただけでは、登録生体情報50の登録及び消去を行うことができないので、第1の生体認証が成立したことで登録と消去を実行可能な場合と比べて、第1の生体認証を行った登録者が車両を離れても、第三者が自身の生体情報23を登録したり、既に登録されている登録生体情報50を削除したりする不正な操作を抑制することができる。
【0094】
また他の実施の形態は、取得した操作者の生体情報と予め登録された登録者の登録生体情報に基づいて第1の生体認証が成立した後、新たに登録生体情報を登録する操作が行われた場合、再度取得した生体情報と予め登録された登録者の登録生体情報に基づいた第2の生体認証の成立によって登録を許可する生体情報認証方法を実行させるプログラムやこのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体として提供されても良い。
【0095】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1…スタートスイッチ装置、2…生体情報センサ、3…登録消去スイッチ、4…スイッチ部、5…制御部、6…特徴点、8…車両、9…操作指、10…本体、12…操作ボタン、20…読取面、22…読取画像、23…生体情報、50…登録生体情報、50a…登録者名、50b…テンプレート、51…類似度しきい値、80…パネル、81…フロアコンソール、82…センターコンソール、83…インストルメントパネル、84…ステアリング、85…タッチパッド、86…メインモニタ、87…サブモニタ、88…車両制御部、102…開口、120…操作面、840…表示画面、841a~841c…メッセージ画像、842…カーソル
図1
図2
図3
図4