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特開2022-191452多結晶媒質中のランダム位相整合に基づいた光パラメトリックデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191452
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】多結晶媒質中のランダム位相整合に基づいた光パラメトリックデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/39 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G02F1/39
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168640
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2020506135の分割
【原出願日】2018-04-17
(31)【優先権主張番号】62/486,338
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506382231
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・セントラル・フロリダ・リサーチ・ファウンデーション,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF CENTRAL FLORIDA RESEARCH FOUNDATION, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンチン・ヴォドピヤーノフ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・ヴァシリエフ
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル・ミロフ
(57)【要約】
【課題】χ(2)非線形性を有するランダム多結晶材料中のRQPMの概念に基づいたOPD、すなわち、効率的超広帯域周波数変換器であって、ポンプ放射から信号放射およびアイドラー放射への、かなり(数十パーセント)のダウンコンバート効率を達成することができる、OPDを提供する。
【解決手段】光パラメトリック発振器(OPO)または光パラメトリック発生器(OPG)から選択される光パラメトリックデバイス(OPD)が、ランダム擬似位相整合プロセス(RQPM-NOE)を用いた非線形相互作用を利用することによって、第1の周波数におけるインカップルされたポンプ放射を、第1の周波数より低い、1つの第2の周波数または異なる第2の周波数で出力信号放射およびアイドラー放射へと変換する非線形光学要素(NOE)で構成される。NOEは、光学セラミックス、多結晶、微結晶およびナノ結晶、微結晶およびナノ結晶のコロイド、ならびにポリマーまたはガラスマトリックス中の微結晶およびナノ結晶の合成物から選択される非線形光学材料から作られる。平均粒度が3波相互作用のコヒーレンス長の程度のものであり、RQPMプロセスを用いて達成可能な最高のパラメトリック利得を有する3波非線形相互作用を可能にするように、非線形光学材料が、NOEの初期試料の微細構造を変更することによって準備される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願の明細書及び図面に記載の光パラメトリックデバイス(OPD)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光パラメトリックデバイス(OPD)に関する。特に、本開示は、二次非線形性を有する多結晶媒質材料中のランダム位相整合に基づいたOPDを提示する。本開示は、多結晶材料の微細構造、および微細構造を特徴付けて最適化する方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
第二高調波発生(SHG)、和周波発生(SFG)および差周波発生(DFG)、光パラメトリック発生(OPG)、ならびに他のものを含む、3波混合を用いた非線形周波数変換は、レーザ技術の土台のうちの1つである。本開示の主題であるOPGは、レーザ放射(ポンプ)をより低い周波数で出力放射(信号およびアイドラー(idler))にダウンコンバートする、非線形光学系(NOE)を必然的に有する。特に、NOE結晶では、ポンプ光子が、よりエネルギーが低い信号およびアイドラー光子へと崩壊する。そのような変換は、したがって、直接的なレーザ放射が入手不可能なスペクトルの所望の部分における様々な波長の範囲をもたらす可能性がある。
【0003】
屈折率分散に起因して、新しい周波数への非線形変換効率は、NOE中の弱め合う干渉のために、一般的に低い。この限界を克服するために、NOEは、2つの条件、すなわち、(a)ポンプ光子の崩壊からもたらされる信号光子とアイドラー光子のエネルギーの和が、ポンプ光子のものと等しくなるべきである(図1)ということと、(b)信号波ベクトルとアイドラー波ベクトル(kベクトル)の和が、ポンプ光子のものと等しくなるべきである(図2)ということとを満たすべきである。後者は、運動量変換または位相整合(PM)条件として知られている。
【0004】
複屈折結晶では、結晶の適正な方位によって、完全なPM条件を達成することができる。しかし、複屈折位相整合は、この方法で利用可能な非線形材料の範囲、および/または非線形変換効率について、ある種の制限を課す。複屈折位相整合の制限は、通常の物理学者にはよく知られている。
【0005】
あるいは、周期的に変調される非線形性を有する擬似位相整合(QPM)結晶でPM条件を満たすことができる。この技法は、複屈折結晶の知られている制限の少なくとも一部を克服するのを助ける。驚くことではないが、ここで、過去20年間のこの分野での進展のほとんどは、QPM材料の発展に関している。QPMプロセスの使用についての制限は、大部分は、NOEの製造における課題に関連する。特に、知られている欠点としては、必要なQPM条件を達成するため、試料の微細構造が正確に設計されなければならないことのための製造技術の複雑さが挙げられる。その結果、非常に少数のQPM非線形材料が利用可能であって、基本的に、PPLN、PPLTおよびそれらのファミリー、PPKTP(およびそれらのファミリー)、OP-GaAs、OP-GaPに限られる。QPM材料の費用は、標準的な単結晶および多結晶と比較し非常に高い。技術的な制約によって、QPM非線形材料のサイズが制限される。また、QPM材料中の非線形周波数変換は、入力光線に対する結晶試料の正確な方位および温度制御を必要とする。
【0006】
位相整合に対するさらに別の代替手法は、ランダム擬似位相整合(RQPM)無秩序χ(2)結晶材料に依拠し、それは、拡散および熱伝達も考慮する、ランダムウォークまたは「酔歩」理論によって記載することができる。RQPMは、試料の方位についての必要性をなくす。RQPMプロセスの重要な特徴は、広帯域で平坦な応答であり、これは、多種多様な用途で非常に望ましく、結晶領域が任意に分布することに起因した位相のランダム化から生じ、こうして弱め合う干渉をなくす。
【0007】
しかし、支払うべき代償は、L/Lcoh程度の効率低減係数での完全位相(または擬似位相)整合についての2次依存性とは反対に、RQPMプロセスの出力信号は、試料の長さLで線形に大きくなることであり、ここで、Lcohは、3波混合コヒーレンス長である。それでもなお、RQPMプロセスを利用する非線形デバイスの堅牢性および小型性は、他の技法を超える、少数の議論の余地がない利点を有する。RQPMを達成することが可能な無秩序結晶材料の数は、QPMプロセスに関連する伝統的な非線形材料のものよりも比較にならないほど多い。RQPM結晶材料の費用は、QPM結晶のものよりも大幅に低い。たとえば、光学セラミックスの価格は、QPM材料のもののごく一部(0.1~1%)である。さらに、無秩序結晶材料中のRQPMは、微結晶領域のランダム分布に起因して、伝統的な非線形結晶と比較して、はるかに広いスペクトル帯域幅を可能にすることになる。
【0008】
したがって、ポンプ放射を出力信号放射およびアイドラー放射へと効率的に変換し、一方でRQPM非線形光学要素(RQPM-NOE)におけるRQPMプロセスを用いた3波非線形相互作用を利用するように構成される光パラメトリックデバイス(OPD)の必要がある。
【0009】
RQPMプロセスを用いた3波非線形相互作用を利用してOPDで効率的に使用できる様々な非線形光学材料の別の必要がある。
【0010】
開示されるOPDで使用されるRQPM-NOE材料の微細構造を準備する方法の、さらに別の必要がある。
【0011】
開示されるRQPM OPDで使用されるRQPM-NOE材料を特徴付ける方法の、さらなる必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、χ(2)非線形性を有するランダム多結晶材料中のRQPMの概念に基づいたOPD、すなわち、効率的超広帯域周波数変換器であって、ポンプ放射から信号放射およびアイドラー放射への、かなり(数十パーセント)のダウンコンバート効率を達成することができる、OPDを提供する。本発明のキー要素は、(i)十分なパラメトリック利得を達成するため、相応して短い長さの光学材料を必要とする、高いピークパワーを有するフェムト秒(fs)パルスの使用、(ii)パラメトリック相互作用のコヒーレンス長に近い平均粒度を有する、無秩序非線形光学材料の使用である。本発明は、高効率なOPOを作成するため、およびRQPMプロセスを用いた透明光学セラミックス中の非線形周波数変換を使用した(2オクターブ幅以上のスペクトルを有する)超広帯域周波数コムを生成するためのステージを設定する。
【0013】
本発明の一態様によれば、光パラメトリックデバイスは、χ(2)非直線性を有するランダム多結晶材料から作られるNOE要素で構成される。NOEは、RQPM-NOEプロセスを用いて、受け取ったポンプ放射を出力信号放射およびアイドラー放射へと変換する。
【0014】
本発明の別の態様によれば、OPDは、RQPMプロセスを用いた非線形相互作用を利用し、光学セラミックス、多結晶、微結晶およびナノ結晶、微結晶およびナノ結晶のコロイド、ならびにポリマーおよびガラスマトリックス中の微結晶およびナノ結晶の合成物からなるグループから選択される、非線形光学材料から作られる。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、非線形相互作用を可能にする、3波相互作用のコヒーレンス長の程度の平均粒度を有する微細構造を有する、開示されたOPDで使用される非線形光学材料に関する。開示される微細構造は、RQPM-NOEプロセスを用いて、最高のパラメトリック利得を達成することを可能にする。
【0016】
本発明の別の態様によれば、以前の態様の非線形材料は、SHG、SFG、DGF非閾値技法を使用して、RQPM-NOEにおけるパラメトリック相互作用の効率の局所分布、すなわち材料マッピングを測定するステップを含む方法を実施することによって最適化することができる。
【0017】
上の態様は、互いに明らかに相補的であり、互いと任意の可能な組合せで使用することができる。さらに、上の態様の各々は、詳細に議論される複数の特徴を含む。各態様の特徴のすべては、非線形光学系において、当業者に知られている確立された物理法則と組合せが矛盾しない限り、互いに使用することができる。さらに、異なる態様の特徴は、様々な組合せで、だが周波数変換プロセスに関係する非線形光学系の確立された条件を損なうことなく、一緒に選択的に使用することもできる。
【0018】
本発明の、上および他の態様および特徴は、詳細にさらに議論され、以下の図面に照らしてより明らかとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】NOE結晶におけるパラメトリック周波数変換についてのエネルギー保存条件の図である。
図2】NOE結晶における効率的なパラメトリック周波数変換についての運動量保存または位相整合条件の図である。
図3】本発明のOPDの全体的な光学図である。
図4A】本発明のOPDの構成の概略図である。
図4B】本発明のOPDの構成の概略図である。
図4C】本発明のOPDの構成の概略図である。
図5】粒度/アニール時間依存性を図示する図である。
図6A】非線形光学の当業者に知られている様々なOPO/OPG方式を図示する図である。
図6B】非線形光学の当業者に知られている様々なOPO/OPG方式を図示する図である。
図6C】非線形光学の当業者に知られている様々なOPO/OPG方式を図示する図である。
図7】SHGを用いて準備されたNOE特徴付けのための設定を示す図である。
図8図7の設定で特徴付けられた試料中のSHG効率分布の擬似カラーマップである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
開示されるシステムに対し、詳細な参照をここで行うことができる。可能な場合には、同じまたは同様の部分またはステップを参照するために、図面および記載において、同じまたは類似の参照番号が使用される。図面は、簡略化した形態であって、正確な寸法ではない。
【0021】
図3を参照すると、本発明の光パラメトリックデバイス(OPD)10の例示的な概略図は、セラミックスベースの非線形光学要素NOE25などといった無秩序χ(2)多結晶材料におけるランダム位相整合(RQPM)に基づく。NOE25は、RQPMプロセスを用いて、光ポンプ12により生成される、第1の周波数ωにおけるインカップルされたポンプ放射を、少なくとも1つのより低い第2の周波数ωで出力信号放射およびアイドラー放射26へとダウンコンバートするように構成される。OPD 10は、光パラメトリック発生器(OPG)または光パラメトリック発振器(OPO)として構成することができる。
【0022】
図1に示されるようなOPD10の構成は、共振空洞または共振器30を必然的に含むOPOを表す。示されるように、4鏡共振器は、光学構成要素14、16、18、および24を含む。図示される共振器は、下で議論されるような、本開示の範囲内で使用することができる共振器の複数の可能な方式のうちのほんの1つである。
【0023】
OPOは、信号周波数またはアイドラー周波数のいずれかで共振するときは、単独で共振することができる。あるいは、OPOは、信号放射とアイドラー放射の両方が同時に共振すると、2重に共振することができる。さらに別の可能性は、3つすべて、すなわちポンプ放射、信号放射、およびアイドラー放射が同時に共振する場合、3重共振OPOである。
【0024】
OPD10の心臓部は、もちろんNOE25である。本開示の範囲内でNOE25のために使用される材料は、光学セラミックス、多結晶、微結晶およびナノ結晶、微結晶およびナノ結晶のコロイド、ならびにポリマーおよびガラスマトリックス中の微結晶およびナノ結晶の合成物からなるグループから選択される。特に、無秩序χ(2)結晶材料は、ZnSe、ZnS、ZnTe、ZnO、CdSe、ZnMgSe、CdMnTe、またはCdZnTeなどといった、2元化合物、3元化合物、または4元化合物を含む、II-VI族半導体から選択される。III-VI族から選択される無秩序材料を使用することも可能である。III族は、GaAs、GaP、GaNを含むことができ、IV族は、Si、SiCにより表すことができ、一方VI族は、たとえば、Gaによって表される。
【0025】
NOE25は、Cr2+、Fe2+を含む遷移金属(TM)またはすべての好適な希土類(RE)金属のイオンでドープすることもできる。TMイオンとREイオンで共ドープされたNOE25は、非線形光学要素が発光、レーザ増幅、およびパラメトリック増幅を同時に実現するのを可能にする本開示の別の顕著な特徴である。信号放射およびアイドラー放射それぞれの所望の周波数における発光を実現するためにドーパントを選択することによって、OPO閾値を減少させる、信号またはアイドラーのいずれかについてのシードが提供される。
【0026】
開示されるOPD中のOPOまたはOPG動作を達成するのを成功するための鍵は、所望の粒度を有する微細構造を有するNOE25の結晶材料を準備することである。RQPMプロセスを用いて最高のパラメトリック利得を可能にするため、平均粒度は、3波相互作用のコヒーレンス長の程度のものであるべきだということが発見されている。
【0027】
本発明のOPD25での実験に使用される材料は、ZnSeである。ZnSeは、2.7eVのバンドギャップを有するII-VI族半導体であり、その傑出した透明度(0.55~20μm)、比較的高い二次非線形性(d14=20pm/V)、高い光損傷閾値、および良好な機械的特性のため、非線形光学系用途の完全な候補である。パターン形成されたGaAs基板上でQPM方位にパターン形成されたZnSe構造が、SHGプロセスおよびDFGプロセスで使用されることが知られている。しかし、パラメトリック発振/生成などといった、他の非線形周波数変換プロセスにおけるZnSeの使用は出願人には知られておらず、とりわけ、試料の不十分な品質によって説明することができる。
【0028】
首尾よく準備されるRQPM ZnSeセラミック試料の例としては、以下の方法が挙げられる。11×6×3mmのサイズを有する、II-VI Inc.社製のZnSe CVDの18の試料は、10-5トルの真空下で水晶アンプルに別個に密封され、固定の温度900℃のオーブン中で、1対の試料が同時にアニールされた。アニール時間は、半日間隔で、6日から10日の範囲であった。アニール後、試料がアンプルから取り外され、2つの未処理試料と一緒に、94~96℃の熱い30重量パーセントのNaOH溶液中で30分間、化学エッチングされた。試料粒子の微細構造のデジタル顕微鏡画像が、平均粒度の点で分析された。未処理試料の粒度が50μmと60μmの間であることが明らかにされた。図5に示されるように、アニールした試料は、8日のアニールで100μmに粒度増加する明らかな傾向を示している。OPO実験に選ばれた試験試料の平均粒度は、≒Lcoh≒100μmの最適値に近かった。
【0029】
あるいは、アニールの代わりに、アニール法にも適用可能である、ガス雰囲気、温度、時間、ドーパント、およびドーパント濃度に加えて圧力、ならびにこれらの環境特性の組合せからなるグループから選択される環境特性を制御することによって、初期試料のホットプレスを利用することができる。
【0030】
さらに別の代替方法は、初期試料を熱アイソタクチック加圧する一方、圧力、温度、時間、ドーパント、およびドーパント濃度ならびにこれらの環境特性の組合せからなるグループから選択される環境特性を制御するステップを含む。上で開示した方法のすべてにとってやはり重要であるのは、任意の所与のプロセスが空気の存在下で、真空中で、またはたとえばHまたはArなどのガス状媒質中で実施されるかについて、特に注意をはらうことである。温度範囲は、室温と融解温度の間に規定される。
【0031】
図4A~4Cは、本発明のOPDの可能な構成を図示する。具体的には、図4AのOPD10は、図3のものと概念的には同様であるが、ポンプレーザ12とNOE25に基づくパラメトリック発振器のそれぞれの、2つの別個の共振器38と36で構成され、NOE25は、今度は、発光イオンでドープすることができる。共振器38と36の各々は、それぞれの周波数弁別器間に画定され、ポンプ共振器38の出力カプラ40は、OPO共振器36の入力カプラ42から離間される。
【0032】
図4BのOPD10は、ポンプレーザおよびOPO共振器の代替構成を特徴とする。示されるように、ポンプレーザ12のレーザ媒質およびOPOのNOE25は、両方の媒質に共通の共振空洞44の内側に配置される。空洞は、共通の共振空洞中の、ポンプ放射、信号放射、およびアイドラー放射の循環を実現するように構成される、高反射周波数弁別器46と低反射率周波数弁別器48の間に画定される。
【0033】
図4Cは、本発明のOPDを示しており、図4Bの方式と同様に、レーザおよびOPO利得要素についての共通の空洞44を有し、周波数弁別器46および48がその間に空洞を画定する。図4Bとは対照的に、モノリシック媒質50は、それがレーザ活性光学中心でドープされると、レーザ媒質および非直線媒質として同時に機能するように構成される。
【0034】
図6A図6Cは、知られている共振器の代替構成を図示する。図6Aを具体的に参照すると、フェムト秒(fs)パルスなどの、短く強いポンプパルスが使用されると仮定して、ポンプ放射を信号放射およびアイドラー放射へと変換するのに、NOE結晶25を通る1回で十分な可能性がある。非線形光学分野の当業者ならよく理解するように、図示される方式は、光パラメトリック発生器(OPG)に関する。より低い強度を有するパルスでは、パラメトリック周波数変換がより弱く、このことによって、図6Bに示されるような、NOE結晶25と組み合わせてOPOを画定する共振器が必要となる。しかし、図3の4鏡環状構成とは対照的に、図6Bの共振器は、ただ2つの鏡、入力カプラ32および出力カプラ34を含む。図6Aおよび図6Bの構成は、パルス光学ポンプ12と組み合わせて開示されている。あるいは、ポンプは、連続波(CW)体制で動作することができる。図6Cは、2つの平面鏡および2つの凹面鏡を有する4鏡OPO空洞を有する、蝶ネクタイ状または環状共振器と一緒に使用されるCWポンプ36を図示する。
【0035】
本開示の範囲は、上で開示された共振器構成に限定されない。たとえば、様々なタイプのマイクロ共振器、すなわちNOE25内に完全に組み込まれた共振器は、非線形光学分野の当業者によく知られており、本開示の部分である。
【0036】
共振器の上で開示された構成の全部に共通だが、入力鏡もしくは出力鏡の一部、または入力鏡と出力鏡の両方がダイクロイックであってよい。ポンプ放射の入力をOPOの空洞へ、またはOPGへ直接提供する光学要素、ならびに共振器/OPGから信号放射およびアイドラー(および残っているポンプ)放射を取り除くように動作可能な光学カプラは、必ずしも鏡である必要はない。図3に示されるように、共振器内に置かれるくさび22は、ARコーティングまたはミラーコーティングで構成されてもされなくてもよい、カプラ(図示せず)またはデカプラとして機能することができる。
【0037】
図3に戻って、ポンプ12は、本開示の別の顕著な特徴である。上述のように、ポンプ12は、CW体制と、nsパルスおよびサブnsパルス体制の両方で動作することができる。高いピークパワーを有する短い(サブ100fs)ポンプパルスでは、結晶の最適長は典型的には短く(サブmm)、一方3波混合のコヒーレンス長は、比較的長くて(中間IRスペクトル範囲中の約100μm)よいことが発見されている。したがって、RQPMプロセスの減衰係数、L/Lcohは、それほど大きくない。
【0038】
この発見に照らして、最近10年に、TMドープしたII-VI半導体に基づいた超高速レーザの急速な発展が見られた。これらのfsおよびpsレーザでもとりわけ、Cr2+イオンをドープしたZnSおよびZnSeに基づいたもの(波長範囲2~3μm)が、最も頻繁に使用される。Cr:ZnS/ZnSe材料の利点としては、短い(数光サイクルにまで下がる)パルスを生成することを可能にする非常に広い利得帯域幅、励起状態吸収がないこと、室温において蛍光の量子効率が100%に近いこと、60%を上回る変換効率を有するエルビウムおよびツリウムをドープしたファイバレーザによる好都合なポンピングが挙げられる。現在では、Cr:ZnS/ZnSeレーザは、モードロック体制で、7W以上の平均パワーを生成することができ、チャープパルス増幅の体制で、1GW以上のピークパワーを生成することができる。これらのレーザは、GaAsに基づく中間IR OPOのポンピングに非常に好適なことも発見されている。本開示の範囲内で、このタイプのレーザを使用することによって、OPD10のNOE25およびポンプレーザ12について同じ材料の使用が可能になる。したがって、NOE25について使用される上で開示した材料のすべてが、ポンプレーザにとって好適である。
【0039】
超高速レーザを使用して、光学的周波数コムを生成することができる。知られているようにレーザパルスが短くなると、コムにおける周波数の範囲が広くなる。モードロックレーザは、1秒の10の15乗分の1の数倍、または1秒の10億分の1の100万分の1の数倍の間続くフェムト秒パルスを放出するように構成することができる。結果として得られるコムは、数10万の均一に離間した周波数、または歯に及び、広い範囲または広く変化する現象のフレキシブルで正確な測定を可能にすることができる。
【0040】
OPD10は同期してポンピングされる、すなわち、パルスを用いたOPD10のポンピングは、ポンプ放出パルスと同期する。同期には、ポンプパルス繰り返し率とOPOの往復周波数の一致が必要である。一致は、たとえば、機械的制御機構を含む様々な手段によって監視および制御することができ、有利には、機械的制御機構はサーボシステムを含む。測定不一致の場合、機械的制御機構は、共振器の光学構成要素のうちの1つに影響を及ぼし、したがって往復時間を調整するように動作可能なアクチュエータに制御信号を送信する。図3は、サーボシステム52に動作可能に結合されて、たとえば、金でコーティングされたHR鏡20に搭載される圧電要素24を図示する。
【0041】
図7は、ナノ秒4.7μmレーザ源を使用する、SHG(4.7->2.35μm)変換効率の観点から特徴付けられた、準備試料25の微細構造の特徴付けの方法を実施する設定55を図示する。評価目的のSHGの使用の背後の理由は、それがOPOに関する逆プロセスであり、したがってSHG効率は、達成できるOPO利得の直接の指標であることである。逆SHGプロセスの使用の別の利点は、非線形周波数変換について閾値がないことである。この閾値がないプロセスは、微細構造の特徴付けを著しく簡略化する。あるいは、SHGの代わりに、SFG、またはDFGプロセスを同じ目的で実装することができる。
【0042】
SHGマッピングの典型的な結果が、図8に示された、結果として得られる、SHG効率分布の擬似カラーマップ、ヒストグラム65に示される。ヒストグラム65は、結晶領域の整合およびサイズのランダムなばらつきに関する広い分布を明らかにする。わかるように、スポットを囲むOPO増幅で使用されるより明るい「ホット」スポット70が存在する。これらのホットスポット70は、特徴付けられた試料が図3のOPD10に置かれ、複数の所望の位置にNOE25を移動するように、所望の場所の座標が動作可能な手段に送信されたときに、OPO発振を達成するためにさらに使用される。位置の各々は、「有望」と識別され、ポンプ放射の腰部にあるこの場所によって特徴付けられた場所のうちの1つに対応する。このプロセスは、自動化され、実行可能なソフトウェアを有するコンピュータを必要とする。一度特徴付けられて最適化されると、NOEは、本発明のOPDにいつでも組み込むことができる。
【0043】
一連の実験が、図3の設定を使用して行われた。OPOは、62fsパルス持続期間、650mW平均パワー、および79MHzの繰り返し率で、Kerrレンズモードロックした2.35μm Cr2+:ZnSレーザ12によって同期してポンピングされた。蝶ネクタイ環状OPO空洞は、2.35μmポンプには高い透過率(>85%)、3~8μmには高い反射率(>95%)を有するインカップリング誘電体鏡M1 14、30°のオフアクシス角度および30mmの頂点半径を有する2つの金コーティングした放物面鏡M2 16およびM3 18、5つの金コーティングした平面鏡(簡略化のために、設定図にはM4 24だけが示され、他の4つの金の鏡は空洞を折り畳むために使用された)とから構成されていた。コーティングされていない平行平面研磨された1.5mm厚のZnSeセラミック試料25が、ブルースター角で、2つの放物面鏡16と24の間に配置された。OPO信号/アイドラー波を可変アウトカップリングするため、0.3mm厚のZnSeくさびが、空洞の内側で使用された。
【0044】
デバイスは、縮退付近の、2重共振周波数の2分の1モードで動作した。ポンプ閾値を下げることに加えて、この配置は、他の利点を提供する。すなわち、(i)ポンプレーザからのパルス列に対するOPO出力の位相および周波数ロック-正確な中間IR周波数コムを作るための必須条件、および(ii)ポンプの4.7μm分数調波の近傍におけるZnSeのごくわずかな群速度分散に起因する極めて広帯域のスペクトルを達成する可能性である。平均2.35μmポンプパワーの90mWで、OPO動作が達成された。モノクロメータおよびMCT検出器で測定した出力スペクトルは、-40dBレベルで3~7.5μm(1330-3330cm-1)にわたり、4.7μm縮退を中心に置いている(図4)。最大のポンプにおいて、OPO平均パワーは30mWであり、ポンプ消耗は79%もの高さであった。このことは、100%に近いかなりの光子変換効率を得ることができると示している。
【0045】
こうして、開示されたデバイスは、無秩序χ(2)多結晶、ZnSeセラミック中のランダム位相整合に基づいた光パラメトリック発振を実現する。出願者が知っている限りでは、これは、(i)セラミック材料を利用する最初のχ(2)OPOで、(ii)ZnSeに基づいた最初のOPOである。ZnSeセラミックは、方位のパターン形成に基づいたQPM解決策に対する安価な代替形態であり、このデバイスは、広く調整可能なOPOのため、ならびに複数オクターブの周波数コムを生成するための原型として使用することができる。
【0046】
当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を、定型的な実験以下を使用して認識する、または確認することができることになる。開示される概略は、OPOを表しており、ここで開示される構造について刺激になったのは、本発明者に利用可能な多結晶材料の使用にある。したがって、上記の実施形態は例としてのみ提示されており、添付される請求項およびそれらの等価物の範囲内で、本発明を具体的に記載したものの他の方法で実施できることを理解されたい。本開示は、本明細書に記載される、各々の個別の特徴、システム、材料、および/または方法を対象とする。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、材料、および/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、材料、および/または方法が相互に矛盾しない場合には、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 光パラメトリックデバイス、OPD
12 光ポンプ、ポンプレーザ、パルス光学ポンプ
14 光学構成要素
16 光学構成要素
18 光学構成要素
20 HR鏡
22 くさび
24 光学構成要素
25 非線形光学要素、NOE、OPD、NOE結晶、準備試料
26 出力信号放射およびアイドラー放射、MIR 出力
30 共振空洞、共振器
32 入力カプラ
34 出力カプラ
36 OPO共振器、CWポンプ
38 ポンプ共振器
40 出力カプラ
42 入力カプラ
44 共振空洞
46 高反射周波数弁別器
48 低反射率周波数弁別器
50 モノリシック媒質
52 サーボシステム
55 設定
65 ヒストグラム
70 ホットスポット
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パラメトリックデバイス(OPD)を提供するステップであって、前記OPDは、
第1の周波数でポンプ放射を出力し、ポンプレーザのポンプパルス繰り返し率と前記OPDの往復周波数を一致させることによって前記OPDが同期ポンピングされるようにパルス発振で動作するように構成されたポンプレーザと、
χ (2) 非線形性を有するランダム多結晶材料から作られ、ランダム擬似位相整合プロセス(RQPM-NOE)による非線形相互作用を利用して、ポンプ放射を受け取り、前記第1の周波数よりも低い少なくとも1つの第2の周波数における出力信号放射およびアイドラー放射へと変換するように構成された非線形光学素子(NOE)と、
光学的周波数を生成するように構成されたポンプレーザと、
を含む、ステップと、
ポンプ放射を前記NOEに導くステップと、
を含むことを特徴する方法。
【請求項2】
前記ポンプレーザは、ピコ秒(ps)またはフェムト秒(fs)パルス持続時間を有するパルス発振で動作するモードロックレーザとして提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記同期ポンピングを維持するように動作するサーボ制御システムを提供するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
共振空洞を提供するステップであって、これにより、前記NOEが
前記共振空洞の外側、
前記共振空洞の内側、または、
前記ポンプレーザの利得要素と前記NOEが、モノリシックに集積されている前記共振空洞の内側、
に配置される、ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記NOEを囲み、光共振器を画定する複数の光学構成要素を提供するステップをさらに含むことを特徴する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポンプレーザは、
Cr 2+ およびFe 2+ をドープした、単結晶または多結晶の形態中の2元化合物(たとえば、ZnSe、ZnS、CdSe)、または
ZnMgSeもしくはCdMnTeを含む単結晶もしくは多結晶の形態中の3元化合物もしくは4元化合物、
からなるグループから選択されるTM: II-VI材料から作られる利得要素に基づくことを特徴とする請求項1に記載に方法。
【請求項7】
前記OPDは縮退付近で動作するように構成され、前記第2の周波数における前記出力信号放射およびアイドラー放射が実質的に等しいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記OPDは、前記ポンプ放射を前記NOEへと結合するように動作可能な少なくとも1つの入力カプラと、前記NOEから前記出力信号放射およびアイドラー放射を分離するように動作可能な少なくとも1つの出力カプラと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記OPDは、前記ポンプ放射を光共振器へインカップルするように動作可能な少なくとも1つの入力カプラと、前記光共振器から前記出力信号放射およびアイドラー放射を分離するように動作可能な少なくとも1つの出力カプラと、を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
光学セラミックス、多結晶、微結晶およびナノ結晶、微結晶およびナノ結晶のコロイド、ならびにポリマーまたはガラスマトリックス中の微結晶およびナノ結晶の合成物からなるグループから選択される非線形光学材料から作られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【外国語明細書】