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特開2022-191472新規HPV16非HLA拘束性T細胞ワクチン、その組成物及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191472
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】新規HPV16非HLA拘束性T細胞ワクチン、その組成物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/12 20060101AFI20221220BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20221220BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221220BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20221220BHJP
   C07K 14/01 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
A61K39/12 ZNA
A61K39/39
A61K9/127
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/55
A61P37/04
A61P31/20
C07K14/01
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169842
(22)【出願日】2022-10-24
(62)【分割の表示】P 2019518245の分割
【原出願日】2017-10-04
(31)【優先権主張番号】62/404,458
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509263191
【氏名又は名称】ピーディーエス バイオテクノロジー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PDS BIOTECHNOLOGY CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】フランク ベデュ-アッド
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ コン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ワード
(72)【発明者】
【氏名】ジェロルド ウッドワード
(57)【要約】
【課題】新規ヒトパピローマウイルス免疫原性組成物及びその使用が提供される。
【解決手段】前記組成物は、効果的に加工され、T細胞に交差提示されるように特に選択され、設計されたマルチエピトープペプチド配列の独特の組み合わせを含む。前記組成物に利用されるペプチドは、HLAスーパータイプとの高いレベルの結合を示す。前記免疫原性組成物は、大部分の標的集団に広く適用可能である。前記組成物は、カチオン性脂質等のアジュバントを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HPVペプチド配列を含む組成物であって、前記HPVペプチド配列が、HPV16 E6ペプチド、及び/又はHPV16 E7ペプチドに相当し、及び前記ペプチド配列が、5つのHLAスーパータイプと約5,000nMのIC50の結合親和性を有し、並びに前記ペプチドのいくつかは、マルチエピトープペプチドである、組成物。
【請求項2】
前記ペプチドが、配列番号5、9、10及び11を含む、又は配列番号23、24、25及び26からなるそれらの脂質付加バージョンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ペプチドが、個々のペプチドとして前記組成物中に存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ペプチドが、スペーサーを用いて又はスペーサーを用いずに互いにコンジュゲートされ、特許請求の範囲に記載の配列を包含する単一の長いペプチドを形成する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
さらにアジュバントを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アジュバントが、カチオン性脂質からなる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記カチオン性脂質が、DOTAP、DDA、DOEPC、DOTMA、R-DOTAP、R-DDA、R-DOEPC、R-DOTMA、S-DOTAP、S-DDA、S-DOEPC、S-DOTMA、それらのバリエーション又は類似体からなる請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記HLAスーパータイプが、HLA-A*02:01、HLA-A*03:01、HLA-A*24:02、HLA-B*07:02、及びHLA-B*58:01からなる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
さらにエピトープに対するエンハンサーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
さらに単一エピトープペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記単一エピトープペプチドが、配列番号14、又は配列番号15並びに例えば配列番号27及び28等のそれらの類似体を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ペプチドが、修飾ペプチド、ペプチド類似体、及びそれらの活性断片を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ペプチドが、酸化、ジスルフィド結合により架橋、ペグ化、グリコシル化、リン酸化、パルミトイル化、メチル化、又はビオチン化される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ペプチドが、配列番号5、9、10、11、23、24、25又は26からなり、前記カチオン性脂質が、R-DOTAPを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ペプチドが、カチオン性脂質を含むリボソームに封入される、請求項7に記載の組成物。
【請求項16】
HPVペプチド配列を含む組成物を、対象に投与することを含む、対象においてHPV感染に対する免疫応答を誘導する方法であって、前記HPVペプチド配列が、HPV16 E6ペプチド、及び/又はHPV E7ペプチドに相当し、及び前記ペプチド配列が、5つのHLAスーパータイプと約5,000nMのIC50の結合親和性を有し、並びに前記ペプチドのいくつかは、マルチエピトープペプチドである、方法。
【請求項17】
前記ペプチドが、配列番号5、9、10、11、23、24、25又は26からなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらにアジュバントを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記カチオン性脂質が、DOTAP、DDA、DOEPC、DOTMA、R-DOTAP、R-DDA、R-DOEPC、R-DOTMA、S-DOTAP、S-DDA、S-DOEPC、S-DOTMA、それらのバリエーション又は類似体からなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドが、配列番号5、9、10、11、23、24、25又は26からなり、及び前記カチオン性脂質が、R-DOTAPを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、新規HPV16ワクチン、特に、非HLA拘束性T細胞ワクチン、その組成物及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HPV E6及びE7タンパク質抗原による治療的なワクチン接種は、子宮頸癌、肛門癌、外陰癌、膣癌及び頭頸部癌並びに前癌性腫瘍等のHPV誘発性癌を治療する強い可能性を与えることが実証されている。HPV特異的T細胞応答を誘導するために抗原提示を行う能力は限られているため、HPV治療ワクチン接種への最も早い段階のアプローチは、短い単一のCD8+ペプチドエピトープの包含及び提示に依存していた。拘束性HLA-A2エピトープによるこれらのペプチドに基づくHPVワクチンは、評価された選択されたHLA-A2集団内においてさえも非常に限定された適用性を示した。癌ワクチンのこの重大な欠点を克服するための最近のアプローチは、2つの重要なアプローチ又はプラットフォーム: 1. 改変ウイルス及び細菌等の生存型ベクター内にHPV全長タンパク質コードDNAの送達、2. 全長HPV16 E6及びE7タンパク質配列を網羅する複数の重複する長いマルチエピトープペプチドの使用、に焦点を当てている。両方のアプローチは、幅広い患者集団に対処するために短い単一エピトープのHLA-A2ペプチドを使用することで直面する患者の遺伝的制限を克服することに向けられており、両方のアプローチは、ヒトの臨床試験において有望な見込みを示す。
【0003】
インシリコペプチド結合分析は、免疫原性ペプチドの潜在的結合能を理解するために効率的に用いられてきた。しかしながら、この技術は、単純であるという特徴を有し且つ、それでも多様な遺伝的背景を有する幅広い患者集団の必要性に対応できる可能性を有するより効率的な癌ワクチン設計に用いられていない。
【0004】
T細胞は、細胞内病原体、ウイルス感染細胞及び腫瘍細胞の配乗に関与するもの、並びに移植拒絶及び自己免疫に関与するものを含む、一連の免疫応答を媒介する。T細胞免疫系は、外来細胞並びに改変された自己細胞を認識し、それらを体から排除するように順応される。ペプチド抗原のT細胞認識は、T細胞受容体(TCR)を介して起こる。当該方法は、樹状細胞等の抗原提示細胞(APC)の表面に位置する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子によってペプチド抗原がTCRに提示されることを必要とする。ヒトMHC分子は、ヒト組織適合性白血球抗原(HLA)と称される。ペプチド抗原は、T細胞受容体が、MHC分子と特異的ペプチドの組み合わせによって形成される独特の構造を認識することを可能にする様式でMHC分子に結合される。T細胞機能性の制限的な態様は、MHC分子中の多型、並びにMHCと会合し得る広いスペクトルの独特のペプチドが、所与のMHCペプチドの組み合わせがT細胞クローンの機能によってのみ認識されるように多様な認識パターンをもたらす。
【0005】
抗原提示に関するMHC分子には、クラスI及びクラスIIの2種類がある。MHCクラスI分子は、3つのドメイン並びに膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを有するα鎖からなる。MHCクラスI分子は、広く分布しており、そして全ての有核細胞上に存在する。MHCクラスII分子には、自己会合してヘテロ二量体を形成するα鎖及びβ鎖が含まれる。各鎖は、2つの細胞外ドメイン、並びに膜貫通ドメイン及び細胞ドメインを有する。MHCクラスII分子は、クラスI分子よりも分布が制限されており、例えば、抗原提示細胞(APC)上に存在する。
【0006】
特定の抗原に対して特異的に活性化されている細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)は、抗原を含むか又は発現する細胞を死滅させることが出来る。CTLのTCRは、MHCクラスI分子に関連して抗原を認識する。Tヘルパーリンパ球(「Th細胞」)にとって重要な役割は、CTL応答の最適な誘導であり、それらはまたCTL記憶の維持にも役割を果たし得る。Th細胞のTCRは、MHCクラスII分子との関連で抗原を認識する。
【0007】
抗原認識T細胞を初回抗原刺激するための治療ワクチン接種は、患者の免疫系を活性化することによって早期及び後期疾患の両方を治療することを目的とする癌の能動免疫療法にとって実行可能な選択肢であることが実証されている。治療ワクチン接種によって活性化された様々なメカニズムは、抗原発現癌細胞を特異的に攻撃し、そして正常細胞を無視する。従って、癌治療ワクチンは、原則として、腫瘍増殖の抑制、並びに外科手術、放射線療法及び化学療法等の従来の治療法で難治である再発性腫瘍の治療に有効であり得る。前立腺癌を治療するための癌治療ワクチンは、米国食品医薬品局によって既に承認されている。この大きなブレイクスルーは、改善された安全性及び有効性を提供し得る治療ワクチン接種のための新規アプローチの道を開いた。そのようないくつかのアプローチは、現在、前臨床的及び臨床的に評価されている。一般に健康な個体に投与される予防的抗体誘導ワクチンとは異なり、癌治療ワクチンは、癌患者に投与され、患者自身の免疫応答、特にT細胞応答を強化することによって癌細胞を根絶するように設計されている(Lollini PL, Cavallo F, Nanni P, Forni G. Vaccines for tumour prevention. Nature reviews. Cancer. 2006;6:204-216)。
【0008】
治療標的としての腫瘍関連抗原
定義された腫瘍関連抗原(TAA)由来のタンパク質に基づく組換えワクチン、又は通常アジュバント又は免疫モジュレーターと組み合わせて投与されるTAAに由来する合成ペプチドワクチンは、自己由来のもの及びDCワクチンよりもコスト及び単純さにおいて顕著な利点を示す。患者の試料又は標本の入手可能性及び個別化ワクチンを調製する複雑な手順は、自己癌ワクチンの広範な使用を制限する。MAGE-1は、T細胞によって認識されるヒト腫瘍抗原をコードすることが報告された最初の遺伝子であり(van der Bruggen P, Traversari C, Chomez P, Lurquin C, De Plaen E, Van den Eynde B, Knuth A, Boon T. A gene encoding an antigen recognized by cytolytic T lymphocytes on a human melanoma. Science. 1991;254:1643-1647.)、及びよく研究され、そして臨床癌ワクチンにおいて用いられてきた。いくつかのTAAの同定は、広範囲の癌に対処するための様々な標的治療ワクチンを開発及び設計する能力を提供した。そのようなTAAいくつかの主要なカテゴリに分類されている。NY-ESO-1、BAGE、MAGE、及びSSX-2等の癌-精巣抗原は、成人の組織では通常発現停止されているが、腫瘍細胞において転写的に再活性化される遺伝子によってコードされている(De Smet C, Lurquin C, van der Bruggen P, De Plaen E, Brasseur F, Boon T. Sequence and expression pattern of the human MAGE2 gene. Immunogenetics. 1994;39:121-129; Gnjatic S, Ritter E, Buchler MW, Giese NA, Brors B, Frei C, Murray A, Halama N, Zornig I, Chen YT, Andrews C, Ritter G, Old LJ, Odunsi K, Jager D. Seromic profiling of ovarian and pancreatic cancer. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2010;107:5088-5093; Hofmann O, Caballero OL, Stevenson BJ, Chen YT, Cohen T, Chua R, Maher CA, Panji S, Schaefer U, Kruger A, Lehvaslaiho M, Carninci P, Hayashizaki Y, Jongeneel CV, Simpson AJ, Old LJ, Hide W. Genome-wide analysis of cancer/testis gene expression. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2008;105:20422-20427; Karbach J, Neumann A, Atmaca A, Wahle C, Brand K, von Boehmer L, Knuth A, Bender A, Ritter G, Old LJ, Jager E. Efficient in vivo priming by vaccination with recombinant NY-ESO-1 protein and CpG in antigen naive prostate cancer patients. Clinical cancer research: an official journal of the American Association for Cancer Research. 2011;17:861-870)。組織分化抗原は、正常細胞由来の抗原であり、正常細胞と腫瘍の両方で共有されているが、黒色腫(gp100、Melan-A/Mart-1及びtyrosinase)(Bakker AB, Schreurs MW, de Boer AJ, Kawakami Y, Rosenberg SA, Adema GJ, Figdor CG. Melanocyte lineage-specific antigen gp100 is recognized by melanoma-derived tumor-infiltrating lymphocytes. J Exp Med. 1994;179:1005-1009..Bakker AB, Schreurs MW, de Boer AJ, Kawakami Y, Rosenberg SA, Adema GJ, Figdor CG. Melanocyte lineage-specific antigen gp100 is recognized by melanoma-derived tumor-infiltrating lymphocytes. J Exp Med. 1994;179:1005-1009)、前立腺癌(PSA、PAP) (Correale P, Walmsley K, Nieroda C, Zaremba S, Zhu M, Schlom J, Tsang KY. In vitro generation of human cytotoxic T lymphocytes specific for peptides derived from prostate-specific antigen. J Natl Cancer Inst. 1997;89:293-300; Kantoff PW, Higano CS, Shore ND, Berger ER, Small EJ, Penson DF, Redfern CH, Ferrari AC, Dreicer R, Sims RB, Xu Y, Frohlich MW, Schellhammer PF. Sipuleucel-T immunotherapy for castration-resistant prostate cancer. The New England journal of medicine. 2010a;363:411-422)及び乳癌(マンマグロビンA)(Jaramillo A, Majumder K, Manna PP, Fleming TP, Doherty G, Dipersio JF, Mohanakumar T. Identification of HLA-A3-restricted CD8+ T cell epitopes derived from mammaglobin-A, a tumor-associated antigen of human breast cancer. International journal of cancer. Journal international du cancer. 2002;102:499-506)等の腫瘍細胞では上昇している。これらの分化関連抗原と同様に、CEA (Tsang KY, Zaremba S, Nieroda CA, Zhu MZ, Hamilton JM, Schlom J. Generation of human cytotoxic T cells specific for human carcinoembryonic antigen epitopes from patients immunized with recombinant vaccinia-CEA vaccine. J Natl Cancer Inst. 1995;87:982-990)、MUC-1 (Finn OJ, Gantt KR, Lepisto AJ, Pejawar-Gaddy S, Xue J, Beatty PL. Importance of MUC1 and spontaneous mouse tumor models for understanding the immunobiology of human adenocarcinomas. Immunologic research. 2011;50:261-268)、HER2/Neu (Disis ML, Wallace DR, Gooley TA, Dang Y, Slota M, Lu H, Coveler AL, Childs JS, Higgins DM, Fintak PA, dela Rosa C, Tietje K, Link J, Waisman J, Salazar LG. Concurrent trastuzumab and HER2/neu-specific vaccination in patients with metastatic breast cancer. Journal of clinical oncology, official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2009;27:4685-4692)、腫瘍抑制遺伝子 (p53) (Azuma K, Shichijo S, Maeda Y, Nakatsura T, Nonaka Y, Fujii T, Koike K, Itoh K. Mutated p53 gene encodes a nonmutated epitope recognized by HLA-B*4601-restricted and tumor cell-reactive CTLs at tumor site. Cancer Res. 2003;63:854-858)、hTERT (Vonderheide RH, Hahn WC, Schultze JL, Nadler LM. The telomerase catalytic subunit is a widely expressed tumor-associated antigen recognized by cytotoxic T lymphocytes. Immunity. 1999;10:673-679) 及び特定の抗アポトーシスタンパク質 (例えば、サバイビン) (Vonderheide RH, Hahn WC, Schultze JL, Nadler LM. The telomerase catalytic subunit is a widely expressed tumor-associated antigen recognized by cytotoxic T lymphocytes. Immunity. 1999;10:673-679 )等の他のいくつかの腫瘍抗原もまた、正常な対応する組織と比較して腫瘍組織において高く上昇している。独特の腫瘍特異的抗原は、多くの場合、突然変異癌遺伝子(ras、B-raf)と称される(Brichard VG, Lejeune D. Cancer immunotherapy targeting tumour-specific antigens: towards a new therapy for minimal residual disease. Expert opinion on biological therapy. 2008;8:951-968)。腫瘍形成過程の促進に関与するこれらの腫瘍特異的抗原を標的とすることは、免疫選択に対して耐性であるという利点を有し、より効果的である可能性がある。多数のそのような腫瘍特異的抗原が同定され利用されてきたが、ヒト集団の間の多種多様な遺伝的プロファイルを考慮すると、そのような群がどのように同定されるかに関わらず、例えば民族性又は地理的場所等の特定の群に対して特異性が増加する抗原を同定する必要がある: 等の様々な理由から、そのような追加の抗体の同定に対する需要が増え続けている。ワクチン製造の加工過程をより正確かつ、簡素化するための製薬業界における必要性が依然としてあり、従って、適切な免疫学的応答の誘発に最も正確に関連する抗原、タンパク質及びペプチドを単利することが継続的な目標である。
【0009】
タンパク質/ペプチドに基づくワクチンは、自己由来又は個別化されたワクチンよりも明らかにコスト面で有利である。しかしながら、それらが、TAAの1つのエピトープのみ又は少数のエピトープを標的とする事実は不利であると考えられる可能性がある。癌ワクチンが最適に有効であるためには、抗原特異的CTL及び抗原特異的CD4+ヘルパーT細胞の両方の誘導が必要であると一般に考えられる。いくつかのポリペプチドワクチン(例えば、Stimuvax(登録商標))は、潜在的にCD4及びCD8エピトープの両方を含む。自己抗原の免疫原性を増強するための別のアプローチは、TAAのペプチド配列を改変してエンハンサーアゴニストエピトープを導入することであり、これは、MHC分子又はT細胞受容体へのペプチド結合を増加させ、より高いレベルのT細胞応答及び/又はより高いT再細胞結合活性をもたらす(Dzutsev AH, Belyakov IM, Isakov DV, Margulies DH, Berzofsky JA. Avidity of CD8 T cells sharpens immunodominance. International immunology. 2007;19:497-507; Jordan KR, McMahan RH, Kemmler CB, Kappler JW, Slansky JE. Peptide vaccines prevent tumor growth by activating T cells that respond to native tumor antigens. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2010;107:4652-4657; Rosenberg SA, Yang JC, Schwartzentruber DJ, Hwu P, Marincola FM, Topalian SL, Restifo NP, Dudley ME, Schwarz SL, Spiess PJ, Wunderlich JR, Parkhurst MR, Kawakami Y, Seipp CA, Einhorn JH, White DE. Immunologic and therapeutic evaluation of a synthetic peptide vaccine for the treatment of patients with metastatic melanoma. Nat Med. 1998;4:321-327)。
【0010】
癌治療ワクチン接種に対する一般的なアプローチは、TAAの配列に由来する正確なMHCヒト白血球抗原(HLA)結合ペプチドでのワクチン接種である。T細胞は、それらの標的抗原を、細胞表面でMHCクラスI分子によって提示される8~10アミノ酸のペプチドとして認識する。そのようなアプローチの主な欠点は、ヒトが異なるペプチド抗原を認識し結合する広範囲のHLA対立遺伝子を有する遺伝的に多様であるという事実である。結果として、短いペプチドに基づく癌ワクチンは、非常に限られた適用性を示し、及び最近のアプローチは、集団の合理的な範囲を提供する目的で、いくつかの場合、10個のペプチドを超える複数のペプチドの包含を必要とした。
【0011】
HPVワクチン
HPV E6及びE7タンパク質は、全てのHPV感染前癌性細胞において、構成的に同時発現され、及びHPV関連子宮頸癌細胞から生検で見出される最も豊富なウイルス転写物である(K. Seedorf, T. Oltersdorf, G. Krammer, W. Rowekamp, Identification of early proteins of the human papilloma viruses type 16 (HPV 16) and type 18 (HPV 18) in cervical carcinoma cells. EMBO J. 6, 139-144 (1987))。p53及び網膜芽腫タンパク質との相互作用のために(D. Pim, A. Storey, M. Thomas, P. Massimi, L. Banks, Mutational analysis of HPV-18 E6 identifies domains required for p53 degradation in vitro, abolition of p53 transactivation in vivo and immortalisation of primary BMK cells. Oncogene 9, 1869-1876 (1994))、E6及びE7は、細胞の形質転換に関与し、そして、HPV関連悪性腫瘍の維持に必要とされる(K. Munger, P. M. Howley, Human papillomavirus immortalization and transformation functions. Virus Res. 89, 213-228 (2002))。特に、E6及びE7特異的細胞性免疫応答は、HPV16関連病変の抗体と関連する(S. Peng, C. Trimble, L. Wu, D. Pardoll, R. Roden, C. F. Hung, T. C. Wu, HLA-DQB1*02-restricted HPV-16 E7 peptide-specific CD4+ T-cell immune responses correlate with regression of HPV-16-associated high-grade squamous intraepithelial lesions. Clin. Cancer Res. 13, 2479-2487 (2007))。Farhatらは、持続性の子宮頚管HPV16感染症を有する女性と比較して、HPV16 E6及びE7に対する陽性酵素結合免疫スポット(ELISpot)応答の割合が、最近解明されたHPV感染症を有する女性において有意に増加すると報告した(S. Farhat, M. Nakagawa, A. B. Moscicki, Cell-mediated immune responses to HPV-16 E6 and E7 antigens as measured by interferon gamma enzyme-linked immunospot in women with cleared or persistent human papillomavirus infection. Int. J. Gynecol. Cancer 19, 508-512 (2009))。従って、HPV E6及びE7抗原は、有望な免疫療法標的であると考えられている。現在まで、タンパク質/ペプチドに基づくワクチンを含む複数のHPV治療用ワクチン(L. Muderspach, S. Wilczynski, L. Roman, L. Bade, J. Felix, L. A. Small, W. M. Kast, G. Fascio, V. Marty, J. Weber, A phase I trial of a human papillomavirus (HPV) peptide vaccine for women with high-grade cervical and vulvar intraepithelial neoplasia who are HPV 16 positive. Clin. Cancer Res. 6, 3406-3416 (2000); W.J. van Driel, M.E. Ressing, G.G. Kenter, R.M.P. Brandt, E.J.T. Krul, A.B. van Rossum, E. Schuuring, R. OVringa, T. Bauknecht, A. Tamm-Hermelink, P.A. van Dam, G.J. Fleuren, W.M. Kast, C.J.M. Melief and J.B. Trimbos, Vaccination with HPV16 Peptides of Patients with Advanced Cervical Carcinoma: Clinical Evaluation of a Phase I-II Trial, Eur J Cancer, Vol. 35, No. 6, pp. 946-952, 1999)は、HPV E6及びE7特異的T細胞の産生及び活性化を刺激することに重点を置いて、開発されてきた。しかしながら、拘束性HLA-A2エピトープによるこれらのペプチドに基づくHPVワクチンは、評価され選択されたHLA-A2集団内でさえも非常に限られた適用性を示した。2009年に、HPV16 E6タンパク質由来の13種の重複ペプチド、及びHPV16 E7ペプチド由来の4種の重複ペプチドを含むHPVペプチドワクチンが、VIN3を有する非拘束性患者集団で試験した場合、強力な抗HPV応答を示すことが報告された。この研究は、非HLA拘束性集団における広範に作用するHPVペプチドワクチンの最初の実証例を提供した(Gemma G. Kenter, Marij J.P. Welters, A. Rob P.M. Valentijn, Margriet J.G. Lowik, Dorien M.A. Berends-van der Meer, Annelies P.G. Vloon, Farah Essahsah, Lorraine M. Fathers, Rienk Offringa, Jan Wouter Drijfhout, Amon R. Wafelman, Jaap Oostendorp, Gert Jan Fleuren, Sjoerd H. van der Burg, and Cornelis J.M. Melief; Vaccination against HPV-16 Oncoproteins for Vulvar Intraepithelial Neoplasia, N Engl J Med 2009;361:1838-47)。
【0012】
Kenterらによるこれらの参考文献、特に最近の文献は、広いHLA適用範囲を提供するペプチドワクチンの開発に対する現在のアプローチに関連する主な欠点を強調している。現在のアプローチは、広い適用範囲を提供し得る免疫原性配列を決定することができないため、抗原タンパク質の全配列をカバーする長いペプチドの開発に焦点を合わせている。その結果、以下の4つの大きな欠点が存在する: 1. ワクチンは複雑であり、大多数のペプチド、例えばKenter et al.においては13種のペプチドの使用を含む; 2. ワクチンは必要以上に高価である; 3. 患者が、治療的又は免疫原性の利益を全くもたらさない可能性がある不要なペプチドを受けることに供される; 及び4. 活性ペプチドが、他のペプチドとの競合的結合により不活性化される可能性がある(この特定の欠点は、上記Kenteret al.によって報告されている)。
【0013】
本発明は、単純で、より費用効果が高く、そして非常に効果的で広範なHLA被覆ペプチドワクチンの開発への効率的なアプローチを報告する。
【0014】
タンパク質/ペプチドに基づくワクチンの免疫賦活性アジュバント
TAAは、本質的に免疫原性が乏しいことを考慮すると、免疫賦活性アジュバントは、ある場合には、効果的な免疫応答性の発生のために必要であり得る。アルミニウム塩(alum)は、ほぼ1世紀にわたり大きな成功を収めているアジュバントとして用いられており、そして保護的液性免疫を促進することに有効であった。しかしながら、alumは、細胞性免疫が防御のために必要とされる疾患に対して最も効果的ではない。自然免疫の活性化が適応免疫応答を促進するために必要であるという過去20年間にわたる認識は、アジュバントがどのように適応免疫を促進するかに関する理論を、根本的に変えた。特に、Charles Janewayの先駆的な研究は、適応免疫応答が、微生物成分によって引き起こされる自然免疫受容体に先行し、それに依存することを実証した(Janeway CA., Jr. The immune system evolved to discriminate infectious nonself from noninfectious self. Immunol Today. 1992;13:11-16)。パターン認識受容体、例えばトール様受容体(TLR)を介した病原体又は病原体関連分子パターン(PAMP)に関連する保存された部分の認識は、微生物病原体又は感染性細胞に対する協調的自然及び適応免疫に関与する(Kawai T, Akira S. Toll-like receptors and their crosstalk with other innate receptors in infection and immunity. Immunity. 2011;34:637-650)。抗原提示細胞(例えば、DC)のTLR媒介活性化は、この過程における重要な段階である。実際に、多くの確立された実験的ワクチンは、感染症に対して保護するためだけでなく、癌に対する治療的予防接種の一部としても、PAMPを取り入れている(Wille-Reece U, Flynn BJ, Lore K, Koup RA, Miles AP, Saul A, Kedl RM, Mattapallil JJ, Weiss WR, Roederer M, Seder RA. Toll-like receptor agonists influence the magnitude and quality of memory T cell responses after prime-boost immunization in nonhuman primates. J. Exp. Med. 2006; 203:1249-1258)。アジュバントとしてのこれらの分子的及び機能的に定義された分子の使用は、ワクチンの合理的な設計を非常に容易にする。
【0015】
この見解を支持して、膀胱癌の治療のために長年使用されてきたBCG(Bacillus Calmette-Guerin(カルメット-ゲラン桿菌))は、比較的有効であり、そしてTLR2及びTLR4を活性化することが示されている(Heldwein KA, Liang MD, Andresen TK, Thomas KE, Marty AM, Cuesta N, Vogel SN, Fenton MJ. TLR2 and TLR4 serve distinct roles in the host immune response against Mycobacterium bovis BCG. Journal of leukocyte biology. 2003;74:277-286)。TLR4の天然リガンドであるLPSは、1960年代には早くも抗癌特性を有すると報告されていた(Mizuno D, Yoshioka O, Akamatu M, Kataoka T. Antitumor effect of intracutaneous injection of bacterial lipopolysaccharide. Cancer research. 1968;28:1531-1537)。モノホスホリルリピドA(MPL)は、S.mnnesotaのエンドトキシンの化学的に修飾された誘導体であり、非常に低い毒性を示すが、LPSの免疫刺激特性の大部分を維持している(Mata-Haro V, Cekic C, Martin M, Chilton PM, Casella CR, Mitchell TC. The vaccine adjuvant monophosphoryl lipid A as a TRIF-biased agonist of TLR4. Science. 2007;316:1628-1632)。MPLが、ウイルス性及び腫瘍関連抗原に対する患者の免疫応答を強力に促進することを多くの研究者が示している(Schwarz TF. Clinical update of the AS04-adjuvanted human papillomavirus-16/18 cervical cancer vaccine, Cervarix. Advances in therapy. 2009;26:983-998)。FDAは、MPLとアルミニウム塩を製剤化したCervarixワクチンを、ヒトパピローマウイルスに対する予防ワクチンとして承認した(Schiffman M, Wacholder S. Success of HPV vaccination is now a matter of coverage. The lancet oncology. 2012;13:10-12)。イミキモド(TLRアゴニスト)は、日光角化症及び表在型基底細胞癌に対するヒトでの使用について、2004年にFDAによって承認された(Hoffman ES, Smith RE, Renaud RC., Jr. From the analyst's couch: TLR-targeted therapeutics. Nat Rev Drug Discov. 2005;4:879-880)。これらのTLRアゴニストは、免疫原性の弱いTAAの免疫原性を促進することにおいて強い可能性を有する。実際に、TLRアゴニストと組み合わせたいくつかのペプチド/タンパク質に基づく癌ワクチンが、臨床試験において試験されている。これらには、TLR3を標的とするアンプリゲン (NCT01355393)、TLR3を標的とするヒストノル (NCT00773097、NCT01585350、NCT01437605)、TLR4を標的とするMELITAC 12.1 (NCT01585350) 及びTLR9を標的とするレシキモド (NCT00960752)を含む。PRRのファミリーは近年非常に拡大しており、従って、癌治療ワクチンのアジュバント活性におけるアジュバント作用のメカニズム並びに他のPRR(例えば、NLR、RLR)の役割を定義することにおける自然免疫経路の役割を調査することに多大な努力が費やされている。
【0016】
病原体関連シグナルを感知することに加えて、PRPはまた、ストレス/ヒートショックタンパク質(HSP)及びHMGB-1等の内因性「アラーミン(alarmin)」も認識する(Lotze MT, Zeh HJ, Rubartelli A, Sparvero LJ, Amoscato AA, Washburn NR, Devera ME, Liang X, Tor M, Billiar T. The grateful dead: damage-associated molecular pattern molecules and reduction/oxidation regulate immunity. Immunol Rev. 2007; 220:60-81; Todryk SM, Melcher AA, Dalgleish AG, Vile RG. Heat shock proteins refine the danger theory. Immunology. 2000;99:334-337)。細胞の固有かつ、高度に保存されたタンパク質成分として、これらの損傷関連分子パターン(DAMP)はまた、細胞傷害の性質及び大きさを宿主免疫系に伝達する。HSPは、細胞内タンパク質の品質管理に関与する分子シャペロンとして作用することが知られているが(Calderwood SK, Murshid A, Prince T. The shock of aging: molecular chaperones and the heat shock response in longevity and aging--a mini-review. Gerontology. 2009;55:550-558; Mayer MP, Bukau B. Hsp70 chaperones: cellular functions and molecular mechanism. Cell Mol Life Sci. 2005;62:670-684)、過去20年間の研究は、特定のHSPが自然及び適応免疫応答の両方を統合することができ、そして免疫療法のための免疫刺激剤として利用できるという概念を確立した(Mayer MP, Bukau B. Hsp70 chaperones: cellular functions and molecular mechanism. Cell Mol Life Sci. 2005;62:670-684; Wang XY, Facciponte JG, Subjeck JR. Molecular chaperones and cancer immunotherapy. Handb Exp Pharmacol. 2006b;172:305-329)。
【0017】
ワクチンの合理的な設計は著しい進歩を有するが、予防的及び治療的の両方に最適化されたワクチンの開発に対する必要性が継続的に存在する。大規模な患者集団に対して広い適用性を有するワクチンの開発、及びそのようなワクチンが特異的かつ、効果的であることが必要とされている。
【発明の概要】
【0018】
本明細書での開示は、任意に1つ以上のアジュバントと組み合わされたHPVペプチド配列を含む新規組成物であって、ここで、前記HPVペプチド配列が、HPV E6ペプチド、及び/又はHPV16 E7ペプチドに相当し、及び前記ペプチド配列が、5種のHLAスーパータイプと約5000nMのIC50の結合親和性を有し、及びいくつかの前記ペプチドが、マルチエピトープである。特定の実施形態において、前記組成物は、カチオン性脂質からなるアジュバントを含み、及び特定の実施形態において、前記カチオン性脂質は、DDA、R-DOTAP、DOTAP、DOTMA又はDOEPC、それらのバリエーション又は類似体からなる。本明細書に開示されている新規組成物は、それらが一般集団の80~90%以上に有効であるという点で現在利用可能なワクチンより優れている。
【0019】
本明細書での開示は、任意にアジュバントと組み合わされたHPVペプチド配列を含む組成物を対象に投与することを含む、対象におけるHPV感染に対する免疫応答を誘導するための方法であって、ここで、前記HPVペプチド配列が、HPV16 E6ペプチド、及び/又はHPV16 E7ペプチドに相当し、及び前記ペプチド配列が、5種のHLAスーパータイプと約5000nMのIC50の結合親和性を有し、及びいくつかの前記ペプチドが、マルチエピトープである。当該方法は、予防的又は治療的であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、対象によるインターフェロン-γアッセイ及び1mg及び3mgのR-DOTAPコホートによる往診(visit)の抗HPV16 E6及びE7の応答を示すグラフを提供する。略語: Bkg=バックグラウンド(縞模様のバー); PBMC=末梢血単核球; R-DOTAP=1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン塩化物のR-エナンチオマー; SFC=SFU=スポット形成単位; Stim=刺激された(透明バー)。データは、3つの組のウェル中の4×105PBMC当たりの平均SFUを表す。縞模様のバーは、培地のみで刺激したウェル中のバックグラウンドSFUを表す。透明バーは、ペプチドプールで刺激したウェル中のSFUを表す。往診2=ワクチン接種前の1日目; 往診3=ワクチン接種1の14日後の15日目; 往診5=ワクチン接種2の14日後の36日目; 往診7=ワクチン接種3の14日後の57日目; 往診9=ワクチン接種3の90日後の133日目。
図2図2は、対象によるインターフェロン-γアッセイ及び10mgのR-DOTAPコホートによる往診の抗HPV16 E6及びE7の応答を示すグラフを提供する。データは、3つの組のウェル中の4×105PBMC当たりの平均SFUを表す。縞模様のバーは、培地のみで刺激したウェル中のバックグラウンドSFUを表す。透明バーは、ペプチドプールで刺激したウェル中のSFUを表す。往診2=ワクチン接種前の1日目; 往診3=ワクチン接種1の14日後の15日目; 往診5=ワクチン接種2の14日後の36日目; 往診7=ワクチン接種3の14日後の57日目; 往診9=ワクチン接種3の90日後の133日目。
図3図3は、配列番号1(白四角)、配列番号7、8、31 32及び31(黒丸)、配列番号7(白丸)、及び配列番号8(黒三角)に対応するペプチドについての腫瘍移植後の刑事的に測定した中央腫瘍サイズに対するペプチドの効果の結果を示す試料腫瘍回帰プロットを提供する。図3において、R-DOTAPのみを含む組成物は、縞模様の四角でマークされたプロットラインによって表される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
以下の詳細な説明は、例示的かつ、説明的なものであり、本明細書に記載された本開示のさらなる説明を提供することを意図する。他の利点及び新規な特徴は、本開示の以下の詳細な説明から当業者が容易に理解し得ると予想する。米国仮特許出願第62/404,458号を含む本明細書で言及された参考文献は、その全体が参考文献として組み込まれる。
【0022】
本明細書に開示されていることは、HLA-A2ヒト化トランスジェニックマウスにおいてスクリーニングされ実証され、及び様々なヒト対象において確認されたように、効果的に加工されT細胞に交差提示されるように設計された、HPV16 E6及びE7に由来する独特なマルチエピトープペプチドを含む、独特なペプチド配列の設計及び使用のための方法である。特定の実施形態において、新規ペプチド配列を含む新規組成物は、2~8種のペプチド配列、2~6種のペプチド配列、又は4種のペプチド配列からなる。ペプチドは、ワクチン等の免疫原性組成物に組み込まれ得る。以下に実証されるように、主要なHLAスーパータイプに対するインシリコペプチド結合分析は、得られた組成物及びワクチンが、集団の80~90%を超えるアドレシング(addressing)に対応していることを裏付けている。本明細書に記載のペプチド組成物の使用を含む非HLA拘束性ヒト臨床試験において、強いT細胞誘導が、全ての対象において確認された。ヒト化トランスジェニックマウスにおける試験と組み合わせたインシリコ結合分析の新規なアプローチを利用して、本願発明者達は、最初に単純で効果的かつ、広く適用可能なペプチドに基づくHPV16癌治療ワクチンを開発した。
【0023】
ヒトにおいてCD8+T細胞の生成及び応答を誘発するように設計されたペプチドに基づくワクチンの設計における重要な考慮事項は、集団中のHLAクラスI分子の多型である。異なるHLA対立遺伝子は、異なるペプチドに結合するため、ペプチドワクチンが、集団の高い割合において免疫原性であるために十分な異なるペプチドを含むことが重要である。本願発明者達は、本願において、ヒトにおけるCD8+T細胞エピトープの正しいプロセシング及び提示を提供するためにHPV16 E6及びE7タンパク質の免疫原性領域をカバーするための新規マルチペプチドワクチンを設計した。一実施形態において、ワクチンは、それらの結合活性及び免疫原性活性に基づいて選択された4つのHPV関連ペプチドを含む。実施例に詳述されるように、本発明者達は、様々なHPVペプチドに結合し得る潜在的なHLA対立遺伝子を予測するために、ELISpot及び腫瘍回帰研究並びにインシリコ分析に取り組んだ。次に、ヒト免疫系が、ペプチドエピトープを提示及び認識する能力をヒト化トランスジェニックマウスにおいて調べ、提示、プロセシング及びその後の抗原特異的CD8+T細胞応答の誘導を確認した。最後に、ヒトT細胞応答を誘導する能力を非HLA拘束性ヒト臨床試験で研究し、そして様々なHLAサブタイプを有する対象において強いT細胞応答を誘導する製剤の能力を確認した。
【0024】
一実施形態において、本明細書に記載の新規組成物が、アジュバントと組み合わせたHPVペプチド配列を含み、前記HPVペプチド配列が、HPV16 E6ペプチド、及び/又はHPV16 E7ペプチドに相当し、及び前記ペプチド配列が、5種のHLAスーパータイプと約5000nMのIC50の結合親和性を有する。特定の実施形態において、前記ペプチドが、マルチエピトープである。前記ペプチドは、配列番号5、9、10及び11を含む、又は配列番号23、24、25及び26を含むそれらの脂質付加バージョンを含み得る。一実施形態において、前記ペプチドは、個々のペプチドとして組成物中に存在してもよく、又は当業者に公知の方法によって請求項の配列を包含する単一の長いペプチドを形成するために、スペーサーを用いて又はスペーサーを用いずに互いに(任意の順序で)コンジュゲートされ得る。特定の実施形態において、前記HLAスーパータイプは、HLA-A*02:01、HLA-A*03:01、HLA-A*24:02、HLA-B*07:02、及びHLA-B*58:01を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、HBVコアヘルパーペプチド等のエンハンサーアゴニストエピトープ、及び/又は限定されないが、配列番号14によってコードされるペプチド、又は配列番号15及び配列番号27及び28等のそれらの類似体によってコードされるペプチドを含む単一エピトープペプチドをさらに含み得る。本明細書に記載の組成物は、修飾ペプチド、ペプチド類似体、及びそれらの活性断片をさらに含む。特定の実施形態において、ペプチドは、酸化、ジスルフィド結合による架橋、ペグ化、グリコシル化、リン酸化、パルミトイル化、メチル化、ビオチン化、又は有効性及び免疫原性を向上させるための当業者に公知の他の方法によって修飾され得る。一実施形態において、前記組成物の前記アジュバントは、カチオン性脂質からなり、ここで、前記カチオン性脂質は、DOTAP、DDA、DOEPC、DOTMA、R-DOTAP、R-DDA、R-DOEPC、R-DOTMA、S-DOTAP、S-DDA、S-DOEPC、S-DOTMA、及びそれらのバリエーション又は類似体からなる群から選択され得る。一実施形態において、本開示の新規組成物は、配列番号5、9、10及び11に相当するペプチドを含み、前記アジュバントは、カチオン性脂質を含み、前記カチオン性脂質は、R-DOTAPを含む。一実施形態において、本開示の新規組成物は、配列番号23、24、25又は26に相当するペプチドを含み、前記アジュバントは、カチオン性脂質を含み、前記カチオン性脂質は、R-DOTAPを含む。一実施形態において、本開示の新規組成物は、配列番号5、9、10、11、23、24、25又は26に相当するペプチドを含み、前記アジュバントは、カチオン性脂質を含み、前記カチオン性脂質は、R-DOTAPを含む。上記実施形態は、リポソームに任意に封入され得る。上記の実施形態は、医薬的に許容される担体及び賦形剤、アセテート、ホスフェート及びスクロース、トレハロース等の等張化剤等の種々の緩衝液、又はトゥイーン等の界面活性剤及び他の当業者に公知のものと任意に組み合わせられ得る。
【0025】
一実施形態において、本明細書の開示は、プロモーターに動作可能で連結された配列番号5、9、10、11の1つ以上、又は配列番号23、24、25若しくは26の1つ以上を含むポリヌクレオチドをコードする核酸分子を含む組換えベクターを提供する。エピトープ及び/又は単一エピトープペプチドに対するエンハンサーをコードする核酸分子をさらに含むプロモーターに動作可能で連結された配列番号5、9、10、11の1つ以上又は23、24、25若しくは26の1つ以上を含むペプチドをコードする核酸分子を含む組換えベクターもまた提供される。一実施形態において、上記ベクターは、組換えアデノウイルスを含み得る。当業者に知られているように、核酸配列は、通常の分子生物学的技術を用いてクローニングすることができ、又はDNA合成によってデノボで合成され得、これは、DNA合成及び/又は分子クローニングの分野における事業会社による通常の手順を用いることによって行われ得る。
【0026】
一実施形態において、本明細書の開示は、1つ以上のアジュバントと組み合わせたHPVペプチド配列を含む新規組成物を対象に投与することを含む、対象におけるHPV感染に対する免疫応答を誘導する方法を提供し、ここで、前記HPVペプチド配列が、HPV16 E6ペプチド、及び/又はHPV16 E7ペプチドに相当し、及び前記ペプチド配列が、5種のHLAスーパータイプと約5000nMのIC50の結合親和性を有し、いくつかの前記ペプチドが、マルチエピトープである。免疫応答を誘導するための本明細書に開示される方法は、予防目的又は治療目的のために免疫応答を誘導することを含み得る。特定の実施形態において、新規組成物に用いられるペプチドは、配列番号5、9、10、11、23、24、25、26、31、32又は本明細書中に例えば表1~5に記載された他のものからなる群から選択される1つ以上のペプチドを含み得る。ペプチドは、個々のペプチドとして存在してもよく、又は特定の選択されたペプチドを、スペーサーを用いて又はスペーサーを用いずに(任意の順序で)互いにコンジュゲートされ、特許請求の範囲の配列を包含する単一の長いペプチドを形成してもよい。当該方法は、アジュバントがカチオン性脂質からなる組成物の使用を含み得、例えば、カチオン性脂質は、DOTAP、DDA、DOEPC、DOTMA、R-DOTAP、R-DDA、R-DOEPC、R-DOTMA、S-DOTAP、S-DDA、S-DOEPC、S-DOTMA、それらのバリエーション又は類似体を含む。一実施形態において、免疫応答を誘導するための方法は、配列番号5、9、10、11及びR-DOTAPからなるペプチドを含む組成物、又は配列番号23、24、25又は26及びR-DOTAPからなるペプチドを含む組成物を対象に投与することを含み得る。
【0027】
本明細書に記載の方法は、HPV感染を有する対象を治療するための新規HPVペプチド組成物の使用を含み得、ここで、前記感染は、限定されないが、尋常性ゆうぜい、足底ゆうぜい、扁平ゆうぜい、性器ゆうぜい、肛門性器ゆうぜい、肛門形成異常、生殖器癌(外陰、膣、子宮頸部、陰茎、肛門)、頭頚部癌、ゆうぜい状表皮発育異常症、限局性上皮過形成、口腔パピローマ、中咽頭癌、水疱性嚢胞、及び喉頭乳頭腫症を含む症状を含む。
【0028】
例えば、一般的な分子生物学的手法を用いて、例えば、アミノ酸の置換、欠失、付加等により、ペプチドに変更を加えることが出来ることは、当業者に理解され得ると考える。一般に、保存的アミノ酸置換は、機能喪失又はポリペプチドの免疫原性なしに適用され得る。これは、当業者に周知の一般的な手順に従って確認され得る。
【0029】
本明細書に記載のペプチドの範囲はまた、ペプチドの修飾、及びペプチド断片を含む。そのような修飾は、限定されないが、天然及び非天然アミノ酸を含む特定の部位での天然アミノ酸の他の分子による置換を含む。そのような置換は、ペプチドの生理活性を改変し、そして生物学的又は薬理学的アゴニスト又はアンタゴニストを生成し得る。そのような置換は、アラニンに対するバリン等の当業者に公知の保存的置換を含み得る。許容される置換はまた、ロイシンに対するノルロイシン等のアミノ酸の修飾を含み得る。Lアミノ酸に対するDアミノ酸の置換は、本発明の範囲内に包含されることが理解され得る。いくつかの置換は、Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, 2"a ed., J. Stenesh, John Wiley & Sons, 1989に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらなる修飾としては、放射性及び非放射性標識による標識能力を増強するためのペプチド又はその断片中の特定の位置でのチロシン又は他のアミノ酸等のアミノ酸付加、リシン等の分子の付加、放射性及び/又は非放射性標識の付加を含む。
【0030】
さらに、当業者は、開示されたペプチドのアミノ酸配列における、又はペプチド中のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列における個々の置換、欠失又は付加を認識し得、コードされた配列中の単一のアミノ酸又は少数のアミノ酸を変更、付加又は削除(一般的には5%未満、より一般的には1%未満)は、保存的に改変された変異であり、ここで、改変は、アミノ酸の化学的に類似のアミノ酸との置換をもたらす。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野において公知である。以下の6つの群はそれぞれ、互いに保存的な置換であるアミノ酸を含む:
1) アラニン (A)、セリン (S)、スレオニン (T);
2) アスパラギン酸 (D)、グルタミン酸 (E);
3) アスパラギン (N)、グルタミン (Q);
4) アルギニン (R)、リジン (K);
5) イソロイシン (I)、ロイシン(L)、メチオニン (M); バリン (V); 及び
6) フェニルアラニン (F)、チロシン (Y)、トリプトファン (W)
【0031】
脂質アジュバント
カチオン性脂質は、強い免疫刺激アジュバント効果を有することが報告されている。本発明のカチオン性脂質は、任意に抗原と混合されるリポソームを形成し得、そしてカチオン性脂質を単独又は組み合わせて含有し得る。適切なカチオン性脂質種には、以下を含む: 3-β[ 4N-(1N, 8-ジグアニジノスペルミジン)-カルバモイル] コレステロール(BGSC); 3-β[N,N-ジグアニジノエチル-アミノエタン)-カルバモイル] コレステロール(BGTC); N,N1N2N3テトラ-メチルテトラパルミチルスペルミン(セルフェクチン); N-t-ブチル-N'-テトラデシル-3-テトラデシル-アミノプロパン-アミジン(CLONフェクチン); ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB); 1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DMRIE); 2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウムトリフルオロアセテート) (DOSPA); 1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシスペルミル)-プロピルアミド(DOSPER); 4-(2,3-ビス-パルミトイルオキシ-プロピル)-1-メチル-1H-イミダゾール(DPIM) N,N,N',N'-テトラメチル-N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,3 ジオレオイルオキシ-1,4-ブタンジアンモニウムヨウ化物) (Tfx-50); N-1-(2,3-ジオレイルオキシ) プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA) 又は他のN-(N,N-1-ジアルコキシ)-アルキル-N,N,N-三置換アンモニウム界面活性剤; 1,2 ジオレオイル-3-(4'-トリメチルアンモニオ) ブタノール-sn-グリセロール (DOBT) 又はコレステリル(4'トリメチルアンモニア) ブタノエート(ChOTB) トリメチルアンモニウム基が、ブタノールスペーサーアームを介して二重鎖(DOTBの場合)又はコレステリル基(ChOTBの場合)の何れかに結合している場合; DORI (DL-1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム) 又はDORIE (DL-1,2-O-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム) (DORIE) 又はWO 93/03709に記載のその類似体; 1,2-ジオレオイル-3-スクシニル-sn-グリセロールコリンエステル(DOSC); コレステリルヘミスクシネートエステル (ChOSC); リポポリアミン、例えば、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)及びジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES) 又は米国特許番号第5,283,185号に記載のカチオン性脂質、コレステリル-3β-カルボキシル-アミド-エチレントリメチルアンモニウムヨウ化物、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリルカルボキシレートヨウ化物、コレステリル-3-O-カルボキシアミドエチレンアミン、コレステリル-3-β-オキシスクシンアミド-エチレントリメチルアンモニウムヨウ化物、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリル-3-β-ソキシサクシネートヨウ化物、2-(2-トリメチルアンモニオ)-エチルメチルアミノエチル-コレステリル-3-β-オキシサクシネートヨウ化物、3-β-N-(N',N'-ジメチルアミノエタン) カルバモイルコレステロール(DC-chol)、及び3-β-N-(ポリエチレンイミン)-カルバモイルコレステロール; O,O'-ジミリスチル-N-リシルアスパルタート(DMKE); O,O'-ジミリスチル-N-リシル-グルタメート(DMKD); 1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド (DMRIE); 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-エチルスルホコリン(DLEPC); 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルスルホコリン(DMEPC); 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルスルホコリン(DOEPC); 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルスルホコリン(DPEPC); 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルスルホコリン(DSEPC); 1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP); ジオレオイルジメチルアミノプロパン(DODAP); 1,2-パルミトイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン (DPTAP); 1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン (DSTAP)、1,2-ミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン (DMTAP); 及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)。本発明は、本願に開示されているカチオン性脂質の構造的変異体及び誘導体の使用を企図する。
【0032】
本発明の特定の態様は、以下の式:
【化1】
(式中、
R1が、四級アンモニウム基であり、Y1が、炭化水素鎖、エステル、ケトン、及びペプチドから選択され、R2及びR3が、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、エステル結合炭化水素、リン酸ジエステル、及びそれらの組み合わせから独立に選択される)
によって表される構造を有する非ステロイド系キラルカチオン性脂質を含む。DOTAP、DMTAP、DSTAP、DPTAP、DPEPC、DSEPC、DMEPC、DLEPC、DOEPC、DMKE、DMKD、DOSPA、DOTMAは、この一般構造を有する脂質の例である。
【0033】
一実施形態において、本発明のキラルカチオン性脂質は、親水基とアミノ基との間の結合が、水溶液中で安定である脂質である。従って、本発明の複合体の特性は、貯蔵中のそれらの安定性である(すなわち、それらの形成後に経時的に小さい直径を維持し、生理活性を経時的に維持するそれらの能力)。カチオン性脂質に使用されるそのような結合は、アミド結合、エステル結合、エーテル結合及びカルバモイル結合を含む。当業者は、2つ以上のカチオン性脂質種を有するリポソームが、本発明の複合体を製造するために用いられることを容易に理解し得る。例えば、2つのカチオン性脂質種、リシル-ホスファチジルエタノールアミン及びβ-アラニルコレステロールエステルを含むリポソームが、特定の薬物送達について開示されている(Brunette, E. et al., Nucl. Acids Res., 20:1151 (1992))。
【0034】
本発明での使用に適し、任意で抗原と混合することに適したキラルカチオン性リポソームを考慮すると、本発明の方法は、上記カチオン性脂質の使用のみに制限されず、カチオン性リポソームが産生され、得られるカチオン電化密度が、免疫応答を活性化及び誘導することに十分である限り、何れかの脂質組成物が用いられ得ることがさらに理解され得る。
【0035】
従って、本発明の脂質は、カチオン性脂質に加えて他の脂質を含み得る。それら脂質は、限定されないが、リゾホスファチジルコリン(1-オレオイルリゾホスファチジルコリン)が例であるリゾ脂質、コレステロール、又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)若しくはジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)を含む中性リン脂質、並びにTween-80及びPEG-PEが例である、ポリエチレングリコール部分を含む種々の親油性界面活性剤を含む。
【0036】
本発明のカチオン性脂質はまた、形成された複合体の正味電荷が正であり及び/又は複合体の表面が正に荷電している限り、負に荷電した脂質並びにカチオン性脂質を含み得る。本発明の負に荷電された脂質は、生理学的pH又はその付近で正味の負電荷を有する少なくとも1つの脂質種又はそれらの組み合わせを含むものである。適切な負に荷電した脂質種は、限定されないが、CHEMS(コレステリルヘミスクシネート)、NGPE(N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン)、ホスファチジルグリセロール及びホスファチジル酸又は同様のリン脂質類似体を含む。
【0037】
本発明の脂質含有薬物送達複合体の製造に用いられるリポソームの製造方法は、当業者に周知である。リポソームの調製の方法論の概要は、リポソーム技術(Liposome Technology)(CFC Press New York 1984); Ostroによるリポソーム(Liposomes by Ostro)(Marcel Dekker, 1987); Methods Biochem Anal. 33:337-462 (1988)及び米国特許番号第5,283,185号において見出され得る。そのような方法は、凍結融解押出及び超音波処理を含む。単層のリポソーム(平均直径約200nm未満)及び多層リポソーム(平均直径約300nm超)の両方は、本発明の複合体を製造するための出発成分として用いられ得る。
【0038】
本発明のカチオン性脂質ワクチンを産生するために利用されるカチオン性リポソームにおいて、カチオン性脂質は、リポソーム中に全リポソーム脂質の約10モル%~約100モル%、又は約20モル%~約80モル%で存在する。中性脂質は、リポソームに含まれる際、全リポソーム脂質の約0モル%~約90モル%、又は約20モル%~約80モル%、又は40モル%~80モル%の濃度で存在し得る。リポソームに含まれる際、負に荷電した脂質は、全リポソーム脂質の約0モル%~約49モル%、又は約0モル%~約40モル%の範囲の濃度で存在し得る。一実施形態において、リポソームは、カチオン性及び中性脂質を、約2:8~約6:4の間の比率で含有する。さらに、本発明の複合体は、複合体を特定の組織又は細胞型に方向付ける標的因子として機能する修飾脂質、タンパク質、ポリカチオン又は受容体リガンドを含み得ることが理解される。標的因子の例は、限定されないが、アシログリコタンパク質、インスリン、低密度リポタンパク質(LDL)、葉酸及び細胞表面に対するモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を含む。さらに、複合体の循環半減期を改変するために、ポリエチレングリコール部分を含む親油性界面活性剤を組み込むことによって正の表面電荷を立体的に遮断することが出来る。
【0039】
カチオン性脂質ワクチンは、スクロース勾配からの回収時に等張スクロース又はデキストロース溶液中に保存され得るか、又はそれらは凍結乾燥され、次いで使用前に等張溶液中で再構成され得る。一実施形態において、カチオン性脂質複合体は、溶液中に保存される。本発明のカチオン性脂質複合体の安定性は、貯蔵中の経時的なカチオン性脂質ワクチンの物理的安定性及び生物学的活性を決定するための特定のアッセイによって測定される。カチオン性脂質ワクチンの物理学的安定性は、当業者に周知の方法、例えば電子顕微鏡法、ゲル濾過クロマトグラフィーによって、又は例えば実施例に記載のコールターN4SD粒度分析器等を用いる準弾性光散乱の測定によってカチオン性脂質複合体の直径及び電荷を決定することによって測定される。カチオン性脂質ワクチンが精製された時点で決定されるように、カチオン性脂質複合体の物理的安定性は、保存されたカチオン性脂質のワクチンの直径が、カチオン性脂質複合体の直径を超えて、100%超、又は50%以下、又は30%以下で増加しない場合、保存に対して「実質的に変化しない」とする。
【0040】
カチオン性脂質を純粋又は実質的に純粋な形態で投与することは可能であるが、それを医薬組成物、製剤又は調製物として存在させることが好ましい。本発明のキラルカチオン性脂質複合体を用いる医薬組成物は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、等張生理食塩水、又は酢酸塩若しくはHepes等の低イオン強度緩衝液等の生理学的適合する無菌緩衝液においてカチオン性脂質ワクチンを含み得る(例示的なpHは、約5.0~約8.0の範囲内である)。キラルカチオン性脂質ワクチンは、エアロゾルとして、又は腫瘍内、動脈内、静脈内、気管内、腹腔内、皮下、及び筋肉内投与用の溶液として投与され得る。
【0041】
本発明の製剤は、当該技術分野において公知の何れかの安定剤を組み込み得る。例示的な安定剤は、リポソーム二重層を硬化し、二重層の崩壊又は不安定化を防ぐことを助け得るコレステロール及び他のステロールである。ポリエチレングリコール、ポリ-、及びモノ-サッカライド等の薬剤もまた、リポソーム表面を改変し、それが血液成分との相互作用のために不安定化されることを防止するためにリポソーム中に組み入れられ得る。他の例示的な安定剤は、単独又は混合物としての何れかで用いられ得るタンパク質、サッカライド、無機酸又は有機酸である。
【0042】
免疫刺激の持続時間を制御、改変、又は延長するために多くの製薬方法が用いられ得る。制御放出調製物は、カチオン性脂質をカプセル化又は封入し、それらをゆっくり放出させるために、ポリエステル、ポリアミノ酸、メチルセルロース、ポリビニル、ポリ(乳酸)及びヒドロゲル等のポリマー複合体を用いることによって達成され得る。リポソームを吸着するために同様のポリマーがまた、用いられ得る。刺激剤の放出プロファイルを改変するために、リポソームは、エマルジョン製剤に包含され得る。あるいは、血液循環における刺激剤の存在の持続時間は、リポソームの表面を、ポリエチレングリコール又は他のポリマー等の化合物、並びにリポソーム及びエマルジョンの循環時間又は半減期を向上させることが出来るサッカライド等の他の物質でコーティングすることによって向上され得る。
【0043】
経口製剤が必要とされる場合、キラルカチオン性脂質は、例えば、スクロース、ラクトース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はアラビアゴム等の当該技術分野において公知の一般的な医薬担体と組み合わせられ得る。カチオン性脂質はまた、全身送達のためにカプセル剤又は錠剤にカプセル化され得る。
【0044】
本開示のキラルカチオン性脂質組成物の投与は、予防目的又は治療目的の何れかのためであり得る。予防的に提供される場合、カチオン性脂質は、何れかの病気の兆候又は症状の前に提供される。治療的に提供される場合、カチオン性脂質は、疾患の発症時又は発症後に提供される。免疫刺激剤の治療的投与は、疾患を軽減又は治療することに役立つ。両方の目的のために、カチオン性脂質は、追加の治療薬又は抗原と共に投与され得る。両方の目的のために、カチオン性脂質は、追加の治療薬又は抗原と共に投与され得る。カチオン性脂質が追加の治療薬又は抗原と共に投与される場合、予防的又は治療的効果は、例えばHPVによって引き起こされる疾患又は障害を含む特定の疾患に対して生じ得る。
【0045】
本発明の製剤は、獣医学用及びヒト用の両方のために、抗原又は薬物分子等の1つ以上の治療成分と共に、R及びSエナンチオマーの混合物として、上記のような純粋なキラルカチオン性脂質のみを含む。製剤は、好都合なことに単位財形で提供され得、そして製薬業界で公知の何れかの方法によって調製され得る。
【0046】
用語
用語「a」又は「an」は、1つ以上を指すことを示す。そのように、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」は、本明細書では互換的に用いられ得る。
【0047】
単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。単語「からなる(consist)」、「からなる(consisting)」、及びその変形は、包括的ではなく、排他的であると解釈されるべきである。
【0048】
本明細書で用いられる際、用語「約(about)」は、別段の定めが無い限り、与えられた基準から10%の変動性を意味する。
【0049】
本明細書で用いられる場合、用語「対象(subject)」及び「患者(patient)」は、互換的に使用され、そして例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、又はサル、チンパンジー、ヒヒ又はゴリラ等の非ヒト霊長類等の哺乳動物を含む。
【0050】
本明細書で用いられる場合、用語「疾患(disease)」、「障害(disorder)」及び「病状(condition)」は、対象における異常な状態を示すために互換的に用いられる。
【0051】
本明細書中で別段の定めが無い限り、本明細書で用いられる技術用語及び化学用語は、当業者によって、及び本出願で用いられる多くの用語に対する一般的な手引きを当業者に提供する出版物を参照することによって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0052】
本開示の組成物は、対象において免疫原性応答を生じるために有効な量のHPVペプチドの組成物を含む。具体的に、治療効果を達成するための組成物の投与量は、製剤、組成物の薬理学的効力、患者の年齢、体重及び性別、治療される病状、患者の症状の重篤度、送達経路、及び患者の応答パターン等の要因に依存する。組成物の治療及び投与量は、単位剤形で投与されてもよく、それに応じて当業者は、相対活性レベルを反映するように単位剤形を調整することも考えられる。用いられる特定の投与量に関する決定(及び1日に投与される回数)は、当業者の裁量の範囲内であり、治療効果を産生するための特定の状況に対する投与量の用量設定によって変化し得る。さらに、当業者は、組成物成分又は希釈度の変化による組成物の有効量の何れかの変化を計算することが可能である。一実施形態において、組成物は、2倍に希釈され得る。他の実施形態において、組成物は、4倍に希釈され得る。さらに他の実施形態において、組成物は、8倍に希釈され得る。
【0053】
従って、本明細書に開示される組成物の有効量は、70kgの哺乳動物、例えばヒト対象に基づいて用量当たり約1mg~約1000mgであり得る。他の実施形態において、治療有効量は、用量当たり約2mg~約250mgである。さらなる実施形態において、治療有効量は、用量当たり約5mg~約100mgである。さらに他の実施形態において、治療有効量は、約25mg~50mg、約20mg、約15mg、約10mg、約5mg、約1mg、約0.1mg、約0.01mg、約0.001mgである。
【0054】
有効量(治療的に投与される場合)は、定期的なスケジュール、すなわち、毎日、毎週、毎月、又は毎年ベースで、又は投与日、週、月等を変えた不規則スケジュールで提供され得る。あるいは、投与されるべき治療上有効な量は、変化し得る。一実施形態において、第1の用量に対する治療有効量は、その後の用量の1つ以上に対する治療有効量よりも高い。他の実施形態において、最初の用量の治療有効量は、その後の用量の1つ以上の用量に対する治療有効量より少ない。同等の投与量は、限定されないが、約2時間毎、約6時間毎、約8時間毎、約12時間毎、約24時間毎、約36時間毎、約48時間毎、約72時間毎、約毎週、約2週間毎、約3週間毎、約2か月毎、約3か月毎、及び約6か月毎を含む、種々の期間にわたって投与され得る。完成した治療過程に相当する投薬の数及び頻度は、医療従事者の判断に従って決定され得る。
【0055】
組成物は、それが選択された特定の病状を考慮して、何れかの経路で投与され得る。組成物は、なかでも、注入、吸入(経口、鼻腔内、気管内を含む)による経口、経眼、経皮(単純な受動拡散製剤を介する、又は例えばイオン導入法、マイクロニードルを用いたマイクロポレーション、ラジオ波焼灼術又は同様のものを用いた促進された送達による)、血管内、皮膚、皮下、筋肉内、舌下、頭蓋内、硬膜外、直腸内、膀胱内、及び膣内に送達され得る。
【0056】
組成物は、そのままで、又は投与のための1つ以上の医薬的担体及び/又は賦形剤と共に製剤化され得る。医薬的担体の量は、ペプチドの溶解度及び化学的性質、選択された投与経路及び標準的な薬理学的慣習によって決定され得る。医薬的担体は、液体でもよく、固体及び液体の両方の担体/マトリックスを組み込んでもよい。種々の適切な液体担体が知られており、当業者によって容易に選択され得る。そのような担体は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、生理食塩水、緩衝生理食塩水、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン(HPβCD)、n-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)及びそれらの混合物を含み得る。同様に、種々の固体(硬質又は軟質)担体及び賦形剤が当業者に知られている。
【0057】
組成物は、単独で投与され得るが、生理学的に適合性のある1つ以上の医薬担体の存在下でも投与され得る。担体は、乾燥形態又は液体形態であり得、そして医薬的に許容される必要がある。液体医薬組成物は、滅菌溶液又は懸濁液であり得る。液体担体が、利用される際、それらは滅菌液体であり得る。液体担体は、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤及びエリキシル剤を調製することに利用され得る。一実施形態において、組成物は、液体担体に溶解され得る。他の実施形態において、組成物は、液体担体に懸濁され得る。製剤業界の当業者は、投与経路に応じて適切な液体担体を選択することが可能である。組成物は、代替的に固体担体に処方され得る。一実施形態において、組成物は、単位剤形、すなわち錠剤又はカプレットに圧縮され得る。他の実施形態において、組成物は、単位剤形、すなわちカプセルに加えられ得る。さらなる実施形態において、組成物は、粉末として投与のために製剤化され得る。固体担体は、様々な機能を果たし得る、すなわち、以下に記載される2つ以上の賦形剤の機能を果たし得る。例えば、固体担体はまた、香味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、流動促進剤、圧縮補助剤、結合剤、崩壊剤、又はカプセル化材料としても作用し得る。一実施形態において、固体担体は、潤滑、可溶化剤、懸濁剤、崩壊剤、又はカプセル化材料として作用する。組成物はまた、適切な量の組成物を含むように細分され得る。例えば、単位投与量は、包装された組成物、例えば、包装された粉末、バイアル、アンプル、プレフィルドシリンジ又は液体を含む小袋であり得る。
【0058】
一実施形態において、組成物は、調節放出送達装置によって投与され得る。本明細書で用いられる「調節放出(modified-release)」は、例えば少なくとも約8時間(例えば、延長された送達(extended delivery))から少なくとも12時間(例えば、持続的送達(sustained delivery))にわたって制御される開示された組成物の送達を指す。そのような装置はまた、即時放出を可能にし得る(例えば、約1時間未満、又は約2時間未満で達成される治療レベル)。適切な調節放出送達装置は、当業者に周知である。
【0059】
本明細書に開示されている組成物を含むキットも提供される。キットは、送達経路用に製剤化された組成物を含む包装又は容器をさらに含み得る。適切には、キットは、投薬に関する説明書及び組成物に関する折込みを含む。
【0060】
多数のパッケージ又はキットは、周期的使用のための医薬組成物を調剤することに関して当該分野において周知である。一実施形態において、パッケージは、各期間のための指標を有する。他の実施形態において、パッケージは、ホイル又はブリスターパッケージ、標識されたアンプル、バイアル又はボトルである。
【0061】
キットの包装手段は、吸入器、シリンジ、ピペット、点眼器、カテーテル、サイトスコープ、トロカール、カニューレ、圧力放出装置、又は製剤が肺等の体の患部に適用され、対象に注入され、膀胱組織に送達され、あるいは、キットの他の成分に適用され、そして混合され得る、他のそのような器具等のそれ自体投与用に適合させることが出来る。
【0062】
これらのキットの1つ以上の構成要素はまた、乾燥形態又は凍結乾燥形態で提供され得る。薬剤又は成分が、乾燥形態として提供される場合、再構成は、一般に適切な溶媒を加えることによる。溶媒はまた、別のパッケージで提供され得ることが想定される。キットは、バイアルを収容するための手段、又は例えばバイアルが保持される射出成形又は吹込成形プラスチック容器等の市販のための厳密に閉じ込められた他の適切な包装手段を含み得る。パッケージの数又はタイプに関係なく、そして上記のように、キットはまた、動物体内への組成物の注入/投与又は配置(placement)を補助するための別個の装置を含む、又はそれと共に包装され得る。そのような装置は、吸入器、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器、カテーテル、サイトスコープ、トロカール、カニューレ、圧力送達デバイス又はそのような医学的に承認された何れかの送達手段であり得る。
【0063】
用語「治療(treat)」、「治療(treating)」、又はそれらの何れかの変形は、患者又は対象における健康上の問題又は健康状態改善するために利用される療法を含むことを意味する。一実施形態において、健康上の問題又は健康状態は、持続的に又は短期間で解消される可能性がある。他の実施形態において、健康上の問題又は健康状態、又は健康上の問題又は状態に特徴的な1つ以上の症状の重症度は、持続的に又は短期間で低下され得る。疼痛治療の有効性を、本明細書に記載されているもの等の何れかの標準的な疼痛指数を用いて決定することができ、又は患者の主観的疼痛に基づいて決定され得る。疼痛の減少又は疼痛を引き起こすはずの刺激に対する反応の減少が報告されている場合、患者は「治療された」と見なされる。
【0064】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとして決して解釈されるべきではない。反対に、他の様々な実施形態、修正、及びそれらの均等物に有することが出来ることが明確に理解され得る。これは、本明細書の記載を読んだ後、本明細書の本質から逸脱することなくそれ自体を当業者に示唆し得る。
【実施例0065】
本発明の完全な理解を助けるために実施例を以下に提供する。現在まで、広い患者の範囲でペプチドワクチンの開発を促進するために、ワクチンは、HPVの全タンパク質配列をカバーする15~30アミノ酸の重複ペプチド配列を含むように開発されてきた。種々のHLA分子への結合ペプチドを決定することが出来るインシリコペプチド結合分析が利用可能であるにもかかわらず、このアプローチは、MHC分子に結合することが出来る全てのペプチド天然に細胞内で加工されるわけではないことが十分に確立されおり、実際のHLA範囲が予想よりも大幅に低い可能性があるため、HLA非依存性ワクチンの設計にはあまり利用されていない。
【0066】
従って、大多数のペプチドを利用することなく、そしてワクチン中の全E6及びE7タンパク質配列を完全に示す必要なしに、広い患者適用範囲を提供し得る単純なHPV治療用ワクチンを首尾よく開発するために、代替アプローチが必要であった。より単純な製剤を設計するために本明細書で開発された加工工程の最初の段階は、HPV16 E6及びE7タンパク質からのペプチドのいくつかのライブラリーの設計であった。次の段階は、ペプチドをスクリーニングし免疫系が特定のペプチドを正しく処理し、MHCクラスI及びクラスIIを介して正しいTエピトープをCD8+及びCD4+T細胞それぞれに提示する能力を確認又は理解するための広範なインビボ研究を行うことであった。この情報を正確に入手する唯一の方法は、T細胞反応を評価するために実際のインビボ研究を経ることである。
【0067】
この研究において、T細胞応答は、C57/B6マウスにおけるTC-1腫瘍モデルを用いた腫瘍回帰試験及びHLA-A2ヒト化トランスジェニックマウスにおけるインターフェロン-ガンマELISPOT試験により評価された。次の段階は、得られたT細胞免疫応答に基づく適切又は好ましいペプチドの選択、及びT細胞応答を全くもたらさないか又は非常に弱いT細胞応答を生じさせた排除であった。次いで、選択された活性ペプチドをインシリコ結合分析によって分析し、種々のHLA分子に対するそれら結合親和性を決定した。インビボデータ及びインシリコ分析を組み合わせた分析の終わりの時点で、その目的は、組み合わせて使用した場合にインシリコ分析によって予測され、ヒト集団の少なくとも90%をカバーすることが出来るインビボ研究に由来する活性ペプチド配列の最小数を選択することであった。最終的に、選択されたペプチドを組み合わせてワクチン製剤とした。次いで、この製剤をT細胞誘導効力について試験し、結合部位についての競合の結果、選択された配列の効力が実質的に減少していないこと、及び全ての含まれたペプチドに対するT細胞応答がなお得られることを確認した。最終的に、予測される適応範囲の広さが、ヒトにおける臨床試験で確認された。
【0068】
本明細書において、配列選択は、C57/B6マウスにおける腫瘍退縮試験、及びHLA-A2ヒト化トランスジェニックマウスにおけるインターフェロン-ガンマELISPOT試験の両方を用いて達成された。腫瘍の回帰を用いて行われたペプチド評価研究において、陽性T細胞応答は、腫瘍の退縮をもたらしたT細胞応答であった。HLA-A2マウスモデルELISPOT試験において、100万脾細胞当たり少なくとも20スポットが、陽性反応であるとみなされた。
【0069】
本明細書に提供されるのは、陽性又は陰性のT細胞応答を示す要約の結果である。提供された詳細内容により、当業者は、第1段階としてインビボ手段によるペプチド配列の広範なスクリーニングの重要性を理解し、そして本発明の全ての段階に沿って従うことが可能になる。
【0070】
また、インシリコ結合分析によるペプチドHLA結合予測が、少なくとも90%の患者適用範囲を確認し、それに対応することを示す説明図がまた、本明細書で提供される。これらの図解により、当該分野の知識を有する者なら誰でも、最初に免疫原生であり得るE6及びE7ペプチド配列を選択し、次にそれらインビボで試験してプロセシング及び提示を確認する加工工程に正しく従うことが出来る。第3に、適切に免疫原性であることが、インビボで示される選択された配列が選択され、そして免疫原性の低い配列が排除される。第4に、各ペプチドの種々のHLAタイプに対する結合親和性を決定するために、ペプチドをインシリコ結合分析に供する。最後に、少なくとも90%の適用範囲を提供すると予測されるペプチドの組み合わせが選択される。本願の場合において、予測を試験し確認するためにヒトの臨床試験が実施された。
【0071】
以下の実施例は、本発明を作製し、実施する例示的な様式を示す。しかしながら、代替の方法を用いて同様の結果を得ることが出来るので、本発明の範囲はこれらの実施例に開示された特定の実施態様に限定されるものではなく、それらは例示にすぎない。本発明を説明するために用いられたペプチド配列を表1に提供する。
【表1】
【0072】
実施例1
C57/B6マウスにおけるTC-1腫瘍退縮からのペプチド配列スクリーニング
この実施例は、それらの効果的なプロセシング及びHPV特異的T細胞誘導及びその後の腫瘍退縮をもたらす重要なエピトープの提示についてのTC-1マウス腫瘍退縮モデルにおけるいくつかのHPV E7ペプチドの評価又はスクリーニングを例示する。
【0073】
腫瘍退縮スクリーニング試験において、マウスは0日目に100,000TC-1細胞が移植された。7日目に、腫瘍が十分に確立されたら、取り込み及び提示を促進するために、単独で又はDOTMA、DOEPC又はR-DOTAP等のカチオン性脂質と組み合わせての何れかで製剤化された特定のペプチド配列と共にマウスにワクチンを接種した。これらの試験において、ワクチンは、0.1~3.0mg/mLの濃度の選択されたペプチド及び0.2~3.0mg/mLの濃度のカチオン性リポソームを含有した。パルミトイル鎖を結合することによってペプチド配列が脂質付加された場合、ワクチン接種前にペプチドは、カチオン性リポソームと単純に混合された。脂質付加されていないペプチドの場合において、リポソームが製造され、ペプチドは、従来の薄膜リポソーム調製法によりカプセル化された(F Szoka, and D Papahadjopoulos, Comparative Properties and Methods of Preparation of Lipid Vesicles (Liposomes), Annual Review of Biophysics and Bioengineering, Vol. 9:467-508, 1980)。当業者に周知の他の方法もまた使用され得る。
【0074】
配列番号1(白四角)、配列番号7、8、31 32及び31(黒丸)、配列番号7(白丸)、及び配列番号8(黒三角)に対応するペプチドについての結果を示すサンプル腫瘍回帰プロットを図3に示す。結果は、おそらく、要求されるCD8+T細胞エピトープを提示するための効力の無い能力のために、いくつかのHPV E7配列が効果的な腫瘍退縮をもたらしたが、他はもたらさなかったという事実を強調する。選択の結果を表1に要約する。
【0075】
実施例2
HLA-A2マウスにおけるIFN-G ELISPOT試験によるペプチド配列スクリーニング
この実施例は、ヒト化HLA-A2トランスジェニックマウスにおいてELISPOT試験を用いてT細胞応答を評価するためのアプローチを強調する。これらの試験において、ワクチンは、選択されたペプチドを0.1~3.0mg/mLの濃度で、そして使用時にカチオン性リポソームを0.2~3.0mg/mLの濃度で含有した。ヒト抗原を認識することができるヒト免疫系の成分を有するヒト化HLA-A2トランスジェニックマウスに、0日目及び7日目に100μLのワクチンを接種した。14日目にマウスを屠殺し、マウスから脾細胞を用いた標準的な手法を用いて、HPV特異的免疫応答をインターフェロン-ガンマELISPOTによって評価した(1群当たり4~8個体)。脾細胞を、表2に特定された特定のCD8+T細胞エピトープ又は長いマルチエピトープペプチドで刺激した。具体的な実施例について、百万個の細胞当たりIFN-gスポットの数が列挙される。最低20スポットは、十分な力価のためのカットオフ、及び結合エピトープ試験のための選択であった。長いマルチエピトープペプチド並びに短い単一エピトープペプチドのそれぞれで刺激した際にヒト化トランスジェニックマウスがT細胞免疫応答(> 20スポット)を首尾よく生成する能力は、選択されたペプチドが、効果的に処理され、T細胞に提示されることを裏付ける。これらの試験において、刺激されていない脾細胞及び無関係のペプチドで刺激された脾細胞を両方のアッセイにおいて、ネガティブコントロールとして共に使用した。アッセイにおけるポジティブコントロールには、ConAを使用した。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例3
HPV16ワクチンの免疫原性に関する酸化及び選択された配列の多量体形成等の化学修飾の効果
本試験は、免疫原性及びそれらが加工され、提示され、そしてヒトCD8+HPV特異的T細胞応答を刺激する能力に対する選択されたペプチドの化学修飾の効果を評価するために行われた。配列番号23及び25に相当するペプチドは、システインを含み、これは、酸化時にダイマー及び他のマルチマーの形成をもたらす。配列番号23及び25に相当するペプチドを含有する2つのワクチン製剤が調製された。
【0078】
製剤Aにおいて: 両方のペプチドは、HPLC分析によって確認された高純度の単量体であった。ワクチンは、1.5~1.6mg/mLの各ペプチドを含有した。
【0079】
製剤Bにおいて: 両方のペプチドの有意な酸化及び多量体形成は、HPLC分析によって確認された。
【0080】
ワクチン接種前に、両方の製剤を5.8mg/mLのR-DOTAPと1:1で混合した。
【0081】
ペプチドの免疫原性は、CD8+T細胞を誘導する能力を評価することによって、製剤当たり10個体のHLA-A2マウスにおいて上記の実施例に記載されるように比較された。ELISPOT試験は、上記のように実施された。下記の表3は、ELISPOT試験の結果及びT検定を用いた比較を示す。統計分析の結果は、製剤A及び製剤Bの間の差が、有意性についてP<0.05のp値を満たさないことを示す。本試験は、酸化等の修飾がペプチド配列の免疫原性に悪影響を及ぼさないことを示唆する。
【0082】
【表3】
【0083】
実施例4
4つの選択されたペプチド配列を含むマルチエピトープペプチドワクチンに存在するHPVペプチドに結合することが出来る潜在的なHLA対立遺伝子のインシリコ分析の要約
いくつかのHPV E16及びE17ペプチド配列を、ヒト化HLA-A2マウスにおいて効果的に加工される能力及び上記の実施例に記載されるように抗原特異的T細胞を刺激するために提示される特異的エピトープについてインビボで設計及び評価した。当業者に明らかであるように、ペプチドエピトープ相互作用は、立体化学、補因子の存在及び環境の生化学的性質を含む多数の因子に応じて複雑である。従って、ワクチンにおける最適な効力のための適切なペプチドの選択は、通常でも予測可能な実践でもない。効果的なプロセシングが可能な適切なペプチド配列及び提示されたT細胞エピトープそ同定するための広範なインビボ試験に基づいて、選択されたペプチドは、確立された腫瘍の退縮を誘導する能力又はIFN-ガンマ誘導性HPV特異的T細胞を誘導する能力に基づいてさらに選択され、次いでインシリコ結合分析によって分析し、それらHLA適用範囲を評価した。次いで、予測はヒトでの臨床試験で確認された。
【0084】
HLAスーパータイプ、HLA-A2は、集団の約42%を占める(Sette, A. and J. Sidney, Nine major HLA class I supertypes account for the vast preponderance of HLA-A and -B polymorphism. Immunogenetics, 1999. 50(3-4): p. 201-12)。HPV16 E6及びE7は、HLA2 A2によって提示され得る実験的に確認されたエピトープ、並びに他のHLAタイプによって提示され得るエピトープを発現する。
【0085】
これを行うために、9つの主要HLAスーパータイプ(Sette, A. and J. Sidney, HLA supertypes and supermotifs: a functional perspective on HLA polymorphism. Curr Opin Immunol, 1998. 10(4): p. 478-82)を表す9つの異なるHLA分子に対するペプチド結合親和性が、評価された。9つの主要HLAスーパータイプは、ヒト集団のペプチド結合能の98%以上を占める(Sette, A. and J. Sidney, Nine major HLA class I supertypes account for the vast preponderance of HLA-A and -B polymorphism. Immunogenetics, 1999. 50(3-4): p. 201-12)。HLA結合の評価に適した配列の同定につながる広範なインビボスクリーニング試験、並びに結合部位の競合が、ワクチン製剤中に組み合わされた際に免疫系が特異的T細胞エピトープを加工及び提示する能力を低下させないことを確実にするための確証的な試験は、本明細書に提供される実験例中に記載される。本研究は、ペプチド選択技術及びペプチドスクリーニング技術が利用可能であるが、広い適応性を有する有効なワクチンを作製する加工を最適化するためにペプチドを同定し、選択し、及び組み合わせる加工は、一般的でも直接的でもないことを示す。
【0086】
【表4】
【0087】
表4は、本開示の目的のために、T細胞誘導試験によって同定された4つの好ましいペプチド配列のペプチド結合分析の結果、並びに免疫エピトープデータベース(www.iedb.org)に存在するエピトープ予測ツールを用いてそれらの配列によってカバーされる可能なエピトープを要約する。このツールは、ペプチドと特定のHLAクラスI対立遺伝子との予測結合親和性(IC50)を計算する。5,000nM以下のIC50が、高親和性結合を表すと考えられる500nM未満の結合親和性で生物学的に関連する結合及び提示に十分であると一般に報告されている。現在の分析において、潜在的なHLA結合ペプチドを評価するためのカットオフとして2,000nMが選択された。表4に示されるように、5つの異なるHLAスーパータイプを表す少なくとも5つの異なるHLA分子は、配列番号5、9、10及び11又は23~26内の異なるペプチドの生物学的に有意な結合及び提示の可能性を有することが明らかにされる。これら5つのスーパータイプは、民族性にかかわらず、ヒト集団の90%超の代表的なものとして知られている(Sette, A. and J. Sidney, Nine major HLA class I supertypes account for the vast preponderance of HLA-A and -B polymorphism. Immunogenetics, 1999. 50(3-4): p. 201-12)。
【0088】
実施例5
R-DOTAPを超えた他のカチオン性脂質とHPV-E6及びE7ペプチド配列との適合性及びHPV特異的T細胞応答を誘導する能力
同定された長いHPVペプチドが、DOTAP以外の他のカチオン性脂質と適合性があるか否かを決定するために、配列番号26に相当するペプチドが、2つの他のカチオン性脂質DOTMA及びDOEPCと組み合わせてモデルペプチドとして用いられた。両方のカチオン性脂質の存在下でペプチドがプロセシング及び提示を効果的に受ける能力を評価するために、通常のC57/B6マウスを用いてELISPOT試験を行った。ELISPOT試験は、上記のように行われ、有効なCD8+T細胞誘導を決定することに利用した。
【0089】
製剤1において、1.35mg/mLのDOTMAを、配列番号26に相当する0.5mg/mLのペプチドと1:1v/vで混合した。
【0090】
製剤2において、1.67mg/mLのDOEPCを、配列番号26に相当する0.5mg/mLのペプチドと1:1v/vで混合した。
【0091】
各製剤において、4匹のマウスに0日目及び7日目にワクチン接種した。14日目にマウスを屠殺し、脾細胞をELISPOT試験に利用した。
【0092】
【表5】
【0093】
この試験は、強力なHPV-特異的T細胞応答を誘導するために、種々のカチオン性脂質が同定されたHPV E6及びE7ペプチドと共に使用され得ることを実証する。
【0094】
実施例8
HPV治療ワクチンにおける脂質付加ペプチド(配列番号23~28)及びR-DOTAPカチオン性脂質の使用並びにヒト臨床試験におけるHPV特異的T細胞応答の評価
インビボT細胞応答及びペプチド結合に基づく>90%の集団をカバーする実施例1~4で推定された4つのペプチド(配列番号23~26)を含む6ペプチド製剤、及び配列番号24及び25に既に含まれている2つの追加の単一エピトープペプチド(配列番号27及び28)は、ヒト臨床試験で評価された(臨床試験.gov番号NCT02065973)。製剤中に含まれる2つの単一エピトープペプチドは、含まれる長いペプチド配列のうちの2つに既に含まれているので、さらなる適応範囲を提供しない。
【0095】
この探索試験において、生物学的システムの多様な性質及びヒトでの応答のために、ワクチンに対する免疫応答をIFN-γ及びグランザイム-b ELISPOTの両方によって評価した。各被験者は、R-DOTAP/ペプチド製剤の3回のワクチン接種を受けた。全ての対象は、3週間毎に1回、3回のワクチン接種を受けた。ELISPOTによる免疫モニタリングのために、ワクチン接種前(ベースライン)及び各ワクチン接種の14日~19日後及び最後のワクチン接種の90日後に血液を採取した。ワクチンの広範な適用範囲を確認するために、対象は、HLAタイプによって制限されなかった。対象のPBMCを用いてELISPOT分析を行い、6-ペプチド混合物で刺激してHPV-ペプチドの有効な提示及びT細胞認識を決定した。
【0096】
ヒト臨床試験の結果を以下の表6に示す。ワクチン誘発応答は、一般的に、ベースラインを超える免疫応答の2倍又は3倍の増加として定義される。この試験において、免疫応答は、IFN-γ又はグランザイム-b分析の何れかによるベースラインサンプルと比較してワクチン接種後のT細胞応答の3倍以上の増加として定義された。ベースライン時に420を超すIFN-gスポット(免疫系はおそらく直近のHPV感染に反応している)の非常に強いT細胞応答を示した2人の対象、対象2及び5の両方は、異常値と見なされた(表6)。全ての対象は、HLAタイプについてテストされた。HLA-A2が最も一般的なHLAタイプであるため、対象の半分は、予想通りHLA-A2であった。しかしながら、非HLA-A2対象(HLA-A1、30、3、74、80等)を含む全ての対象は、ワクチンに対する強いT細胞応答を生じた。この研究は、4つのマルチエピトープペプチド、配列番号23~26の組み合わせが、様々な遺伝的背景の患者によって認識され得る広く適用可能なヒトHPV16ワクチンを提供することを確認した。
【0097】
【表6】
図1
図2
図3
【配列表】
2022191472000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載される発明。