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特開2022-191475フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法、及び表示装置の製造方法
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  • 特開-フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法、及び表示装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191475
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法、及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/00 20120101AFI20221220BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20221220BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G03F1/00 Z
G03F1/54
G03F7/20 501
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170224
(22)【出願日】2022-10-24
(62)【分割の表示】P 2019066433の分割
【原出願日】2019-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103676
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 康夫
(72)【発明者】
【氏名】田辺 勝
(72)【発明者】
【氏名】浅川 敬司
(72)【発明者】
【氏名】安森 順一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透光性基板上に、透過量を調整する機能を有する半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのフォトマスクブランクに関し、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が小さい半透光性膜を有するフォトマスクブランク及びフォトマスクを提供する。
【解決手段】半透光性膜30は、露光光に対する透過率が10%以上60%以下、位相差が0度以上120度以下であり、かつ、前記半透過膜の膜厚が、前記透過率及び位相差を得るための設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、露光波長における透過率をその変動幅が±2%以内となるように制御できる特性を有し、前記半透光性膜は、前記透過率及び位相差を得るための設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、該半透光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率は減少する傾向を有することを特徴とするフォトマスクブランク。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有する半透光性膜を少なくとも有するFPD
デバイスを製造するためのフォトマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、露光光に対する透過率が10%以上60%以下、位相差が0度以上
120度以下であり、かつ、前記半透過膜の膜厚が、前記透過率及び位相差を得るための
設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、露光波長における透過率をそ
の変動幅が±2%以内となるように制御できる特性を有し、
前記半透光性膜は、前記透過率及び位相差を得るための設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、該半透光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率は減少する傾向を有する
ことを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項2】
前記半透光性膜の膜厚は、40nm以上120nm以下であることを特徴とする請求項
1記載のフォトマスクブランク。
【請求項3】
前記露光光は、313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光であることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトマスクブランク。
【請求項4】
前記半透光性膜上に遮光膜を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の
フォトマスクブランク。
【請求項5】
前記透光性基板と前記半透光性膜との間に遮光膜パターンを有することを特徴とする請
求項1乃至3の何れかに記載のフォトマスクブランク。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のフォトマスクブランクを用いるフォトマスクの製造
方法。
【請求項7】
請求項6に記載のフォトマスクのパターンを転写することにより、表示装置を製造する
表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク及びフォトマスクに関し、特に、FPDデバイスを製造する
ためのマスクブランク(フォトマスク用のブランク)、係るマスクブランクを用いて製造
されたフォトマスク(転写マスク)等に関する。
【背景技術】
【0002】
FPD用マスクの分野において、半透光性膜(いわゆるグレートーンマスク用ハーフ透
光性膜)を有するグレートーンマスク(多階調マスクとも言う。)を用いてマスク枚数を
削減する試みがなされている(非特許文献1)。
ここで、グレートーンマスクは、図11(1)に示すように、透明基板(透光性基板)
上に、遮光部1と、透過部2と、グレートーン部3とを有する。グレートーン部3は、透
過量を調整する機能を有し、例えば、図11(1)に示すようにグレートーンマスク用半
透光性膜(ハーフ透光性膜)3a’を形成した領域を形成した領域であって、これらの領
域を透過する光の透過量を低減しこの領域による照射量を低減して、係る領域に対応する
フォトレジストの現像後の膜減りした膜厚を所望の値に制御することを目的として形成さ
れる。
【0003】
グレートーンマスクを、ミラープロジェクション方式やレンズを使ったレンズ方式の大
型露光装置に搭載して使用する場合、グレートーン部3を通過した露光光は全体として露
光量が足りなくなるため、このグレートーン部3を介して露光したポジ型フォトレジスト
は膜厚が薄くなるだけで基板上に残る。つまり、レジストは露光量の違いによって通常の
遮光部1に対応する部分とグレートーン部3に対応する部分で現像液に対する溶解性に差
ができるため、現像後のレジスト形状は、図11(2)に示すように、通常の遮光部1に
対応する部分1’が例えば約1μm、グレートーン部3に対応する部分3’が例えば約0
.4~0.5μm、透過部2に対応する部分はレジストのない部分2’となる。そして、
レジストのない部分2’で被加工基板の第1のエッチングを行い、グレートーン部3に対
応する薄い部分3’のレジストをアッシング等によって除去しこの部分で第2のエッチン
グを行うことによって、1枚のマスクで従来のマスク2枚分の工程を行い、マスク枚数を
削減する。
また、最近では、上記のグレートーンマスクを、近接露光(プロジェクション露光)方
式の大型露光装置に搭載し、カラーフィルター用のフォトスペーサー形成のために用いら
れている。
【0004】
上記図11(1)に示すグレートーンマスクは、例えば、特許文献1に記載しているマ
スクブランクを用いて製造される。特許文献1に記載されているマスクブランクは、透光
性基板上に、透過量を調整する機能を有する半透光性膜を少なくとも有し、前記半透光性
膜は、超高圧水銀灯から放射され、少なくともi線からg線に渡る波長帯域において、半
透光性膜の透過率の変動幅が5%未満の範囲内となるように制御された膜であることを特
徴としている。この半透光性膜としては、具体的に、CrN(膜厚20~250オングス
トローム(2~25nm)、MoSi(膜厚15~200オングストローム(1.5~
20nm)などの材料と膜厚が例示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】月刊FPD Intelligence、p.31-35、1999年5月
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-199700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に例示された材料を用いて、所望の透過率を有する半透光性膜を形成す
る場合、前記半透光性膜の膜厚を制御して行うことになるが、サイズの大きいグレートー
ンマスクを作製する場合には、基板面内での膜厚分布による透過率分布が発生し、面内透
過率均一性が良好なグレートーンマスクの製造が難しくなってきている。
また、マスクブランクにおける半透光性膜の成膜プロセスにおいて、設計膜厚通りに成
膜するが、半透光性膜の膜厚が1.5nm~30nm程度と薄いため、設計膜厚通りに成
膜することは難しく、設計膜厚に対して10%程度の膜厚差が生じることがある。半透光
性膜に関して膜厚による透過率の変動幅について考慮せずに膜設計を行った場合、上記の
ように、半透光性膜の膜厚が設計値からずれたときに、透過率が変化するという問題があ
った。
【0008】
また、特に、グレートーンマスクを近接露光方式の大型露光装置に搭載して、被転写体
にパターン転写を行う場合、グレートーンマスクと被転写体との間隔が狭いために、グレ
ートーンマスク表面に異物が付着するのを防止するペリクルを使用することができない。
従って、通常、複数回グレートーンマスクを使用した後、グレートーンマスク表面に付着
した異物を除去するために、アルカリや酸を用いた薬液洗浄が行なわれるが、上記薬液洗
浄により半透光性膜の膜減りが発生し、半透光性膜の透過率が変化するという問題が発生
している。
【0009】
そこで本発明は、透光性基板上に、透過量を調整する機能を有する半透光性膜を少なく
とも有するFPDデバイスを製造するためのフォトマスクブランク及びフォトマスクに関
し、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が小さい半透光性膜を有するフォトマス
クブランク及びフォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の様々な態様について以下に説明する。
(構成1)
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有する半透光性膜を少なくとも有するFPD
デバイスを製造するためのフォトマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素の何れかを含む遷移金属シリ
サイド系材料、またはクロムと、酸素及び窒素の何れかを含むクロム系材料からなり、
前記半透光性膜は、露光光に対する透過率が10%以上60%以下、位相差が0度以上
120度以下であり、かつ、前記半透光性膜の膜厚が、前記透過率及び位相差を得るため
の設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、露光波長における透過率を
その変動幅が±2%以内となるように制御できる特性を有し、
前記特性が得られるよう屈折率n及び消衰係数kを有する半透光性膜の材料を選定して
なることを特徴とするフォトマスクブランク。
【0011】
(構成2)
前記半透光性膜の膜厚は、40nm以上120nm以下であることを特徴とする構成1
記載のフォトマスクブランク。
(構成3)
前記半透光性膜は、前記透過率及び位相差を得るための設定膜厚に対して±3nmの範
囲で変動した場合において、該半透光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率は減少する
傾向を有することを特徴とする構成1または2に記載のフォトマスクブランク。
【0012】
(構成4)
前記半透光性膜上に遮光膜を有することを特徴とする構成1乃至3の何れに記載のフォ
トマスクブランク。
(構成5)
前記透光性基板と前記半透光性膜との間に遮光膜パターンを有することを特徴とする構
成1乃至3の何れかに記載のフォトマスクブランク。
【0013】
(構成6)
構成1乃至5のいずれかに記載のフォトマスクブランクを用いるフォトマスクの製造方
法。
(構成7)
構成6に記載のフォトマスクのパターンを転写することにより、表示装置を製造する表
示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフォトマスクブランクによれば、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動
を小さく制御できる半透光性膜を有するフォトマスクブランクを提供できる。
また、本発明のフォトマスクの製造方法によれば、半透光性膜の膜厚変動に対する透過
率の変動を小さく制御できる半透光性膜パターンを有するフォトマスクを提供できる。
また、本発明の表示装置の製造方法によれば、フォトマスク起因によるパターン転写の
CDエラーが生じない表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1-1にかかるフォトマスクブランクの膜構成を示す模式図である。
図2】実施の形態1-2にかかるフォトマスクブランクの膜構成を示す模式図である。
図3】実施の形態1-3にかかるフォトマスクブランクの膜構成を示す模式図である。
図4】実験例1-1において、半透光性膜の透過率が40%となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化させたときの半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率の特性を示す図である。
図5】実験例1-2において、半透光性膜の透過率が40%となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化させたときの半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率の特性を示す図である。
図6】実験例1-3において、半透光性膜の透過率が40%となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化させたときの半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率の特性を示す図である。
図7】実験例1-3において、半透光性膜の透過率が30%となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化させたときの半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率の特性を示す図である。
図8】実験例1-1において、半透光性膜の透過率が30%となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化させたときの半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率の特性を示す図である。
図9】実験例3-1において、半透光性膜の透過率が30%となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化させたときの半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率の特性を示す図である。
図10】実験例3-2において、半透光性膜の透過率が30%となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化させたときの半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率の特性を示す図である。
図11】半透光性膜を有するグレートーンマスクを説明するための図であり、(1)は部分平面図、(2)は部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1(実施の形態1-1、1-2、1-3)
実施の形態1では、透光性基板上に、透過量を調整する機能を有する半透光性膜を備え
たフォトマスクブランクについて説明する。
図1は実施の形態1-1にかかるフォトマスクブランク10の膜構成を示す模式図であ
る。
図1に示すフォトマスクブランク10は、透光性基板20と、透光性基板20上に形成
された半透光性膜30とを備える。
【0017】
図2は実施の形態1-2にかかるフォトマスクブランク10の膜構成を示す模式図であ
る。
図2に示すフォトマスクブランク10は、上述の実施の形態1-1のフォトマスクブラ
ンクにおいて、半透光性膜30上に、遮光膜40を備えたフォトマスクブランクである。
【0018】
図3は実施の形態1-3にかかるフォトマスクブランク10の膜構成を示す模式図であ
る。
図3に示すフォトマスクブランク10は、上述の実施の形態1-1のフォトマスクブラ
ンクにおいて、透光性基板20と半透光性膜30の間に、遮光膜40をエッチングにより
所定のパターンに形成された遮光膜パターン40aを備えたフォトマスクブランクである
【0019】
以下、実施の形態1-1から1-3のフォトマスクブランク10を構成する透光性基板
20、半透光性膜30、遮光膜40及びエッチング阻止膜について説明する。
【0020】
[透光性基板20]
透光性基板20は、露光光に対して透明である。透光性基板20は、表面反射ロスが無
いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を
有するものである。透光性基板20は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英
ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス
(SiO-TiOガラス等)などのガラス材料で構成することができる。透光性基板
20が低熱膨張ガラスから構成される場合、透光性基板20の熱変形に起因する位相シフ
ト膜パターンの位置変化を抑制することができる。また、表示装置用途で使用される透光
性基板20は、一般に矩形状の基板であって、該透光性基板の短辺の長さは300mm以
上であるものが使用される。本発明は、透光性基板の短辺の長さが300mm以上の大き
なサイズであっても、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率変動を小さく制御できる半透
光性膜が形成されたフォトマスクブランクである。
【0021】
[半透光性膜30]
半透光性膜30は、遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素の何れかを含む遷移金属シリ
サイド系材料、またクロムと、酸素及び窒素の何れかを含むクロム系材料で構成される。
遷移金属シリサイド系材料における遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(
Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などが好適である
【0022】
また、半透光性膜30は、露光光における光学特性(透過率、膜厚変化に対する透過率
特性、位相差)を調整するために、酸素及び窒素の何れかを含む。
半透光性膜30における窒素は、同じく軽元素成分である酸素と比べて、屈折率と消衰
係数を下げない効果がある。従って、半透光性膜30の膜厚を薄くする効果が得られる。
なお、半透光性膜30に含まれる窒素の含有率は、20原子%以上60原子%以下である
ことが好ましい。
半透光性膜30における酸素は、同じく軽元素成分である窒素比べて、屈折率と消衰係
数を下げる効果がある。従って、半透光性膜30において、所望の透過率を得るための調
整が可能となる。ただし、半透光性膜30に酸素を入れすぎると、パターンのエッチング
特性として透光性基板との界面に喰われが発生しやすくなる。半透光性膜30に酸素が含
まれる場合は、酸素の含有率は、0原子%超30原子%以下であることが好ましい。
また、半透光性膜30には、上述した酸素、窒素の他に、膜応力の低減やウェットエッ
チングレートを制御する目的で、炭素やヘリウム、クリプトン、キセノンなどの希ガスを
含有してもよい。
【0023】
遷移金属シリサイド系材料としては、例えば、遷移金属シリサイドの窒化物、遷移金属
シリサイドの酸化物、遷移金属シリサイドの酸化窒化物、遷移金属シリサイドの酸化窒化
炭化物などが挙げられる。また、遷移金属シリサイド系材料は、モリブデンシリサイド系
材料(MoSi系材料)、ジルコニウムシリサイド系材料(ZrSi系材料)、モリブデ
ンジルコニウムシリサイド系材料(MoZrSi系材料)であると、ウェットエッチング
による優れたパターン断面形状が得られやすいという点で好ましく、特にモリブデンシリ
サイド系材料(MoSi系材料)であると好ましい。
【0024】
半透光性膜30に含まれる遷移金属とケイ素の原子比率は、遷移金属:ケイ素=1:3
以上1:15以下であることが好ましい。この範囲であると、半透光性膜30の洗浄耐性
(薬液耐性)を高めることができる。さらに洗浄耐性を高める視点からは、半透光性膜3
0に含まれる遷移金属とケイ素の原子比率は、遷移金属:ケイ素=1:4以上1:15以
下、さらに好ましくは、遷移金属:ケイ素=1:5以上1:15以下が望ましい。
【0025】
また、クロム系材料としては、例えば、クロムの窒化物、クロムの酸化物、クロムの酸
化窒化物、クロムの酸化炭化物、クロムの窒化炭化物、クロムの酸化窒化炭化物などが挙
げられる。
【0026】
露光光に対する半透光性膜30の透過率は、半透光性膜30として必要な値を満たす。
半透光性膜30の透過率は、露光光に含まれる所定の波長の光(以下、代表波長という)
に対して、10%以上60%以下であり、より好ましくは、20%以上60%以下であり
、さらに好ましくは、30%以上50%以下である。すなわち、露光光が313nm以上
436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、半透光性膜30は、その波長範
囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した透過率を有する。例えば、露光光がi線、
h線及びg線を含む複合光である場合、半透光性膜30は、i線(波長:365nm)、
h線(波長:405nm)及びg線(波長:436nm)のいずれかに対して、上述した
透過率を有する。
【0027】
また、半透光性膜30の位相差は、露光光に含まれる所定の波長の光(以下、代表波長
という)に対して、0度以上120度以下であり、より好ましくは、0度以上110度以
下、さらに好ましくは0度以上100度以下、さらに好ましくは0度以上90度以下であ
る。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光であ
る場合、半透光性膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した位
相差を有する。例えば、露光光がi線、h線及びg線を含む複合光である場合、半透光性
膜30は、i線(波長:365nm)、h線(波長:405nm)及びg線(波長:43
6nm)のいずれかに対して、上述した位相差を有する。
【0028】
さらに、本発明(本実施の形態1~3)における半透光性膜30の膜厚が、前記透過率
(10%以上60%以下)及び位相差(0度以上120度以下)を得るための設定膜厚に
対して±3nmの範囲で変動した場合において、露光波長における透過率をその変動幅が
±2%以内となるように制御できる特性を有することにより、半透光性膜の膜厚変動に対
する透過率の変動が小さい半透光性膜を有するフォトマスクブランク及びフォトマスクが
得られる。
【0029】
半透光性膜30の材料としては、透過率(10%以上60%以下)及び位相差(0度以
上120度以下)を得るための設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において
、露光波長における透過率をその変動幅が±2%以内となるように制御できる屈折率n、
消衰係数kを有するものを選定する。
【0030】
上記のような屈折率n、消衰係数kの設計思想は、従来の所定の波長帯域(例えば、3
13nm以上436nm以下の波長範囲、この範囲を含むより広い波長範囲)における半
透光性膜の透過率の変動幅を所定の範囲以内となることを重点におく材料設計、屈折率n
、消衰係数kの設計思想とは異なる。
本発明は、上記所定の波長帯域の制約をなくす設計思想であり、例えば、複数の波長に
対する材料設計、屈折率n、消衰係数kの設計思想でなくてよく、例えば、代表波長1つ
に対する材料設計、屈折率n、消衰係数kの設計思想でよい。
【0031】
また、上記のような屈折率n、消衰係数kの設計思想は、従来の露光に寄与する主要波
長(例えば、i線、h線、g線)に対する半透光性膜の透過率の変動幅を所定の範囲以内
することに重点におく従来の材料設計、屈折率n、消衰係数kの設計思想とは異なる。
本発明は、露光に寄与する主要波長(例えば、i線、h線、g線)に対応する制約をな
くす設計思想であり、例えば、代表波長1つに対する材料設計、屈折率n、消衰係数kの
設計思想でよい。
【0032】
基本的に、半透光性膜の膜厚と透過率は逆比例(反比例)の関係にあり、通常は、半透
光性膜の膜厚が増えると透過率が下がる(右肩下がりグラフになる)関係にある。
本発明において、半透過膜の膜厚が増加しても透過率が変動しない現象は、狙いとする
透過率(設定膜厚)の前後で、膜厚が増えると、透過率としては下がっていくはずだが、
裏面反射率が低下することで、透過率の下がる分を補うようなことが起きている。このた
め、透過率と裏面反射率とのバランスが取れ、膜厚の変動に対して透過率の変動がゆるや
かになる現象が起き、膜厚の変動に対する透過率変動が小さくなる。本発明では、裏面反
射率が下がる領域で、狙いとする透過率の近辺にとどまる現象が起きている。
これに対し、狙いとする透過率(設定膜厚)の前後で、膜厚が増えると裏面反射率が上
昇する関係にある場合には、膜厚が増えると単純に透過率が下がることと、裏面反射で損
失する分も増えることで透過光がその分減る、というダブルの効果で、膜厚の変動に対し
て透過率が敏感に変動するという現象が起き、膜厚の変動に対する透過率変動が大きくな
る。
本発明では、狙いとする透過率の近辺で、裏面反射率が底を打っている態様(裏面反射
率が低下から上昇に変化する際に裏面反射率が下がっていない態様)においても、膜厚が
増えると裏面反射率が上昇する関係にある場合に比べ、膜厚の変動に対する透過率変動が
小さくなる。同様に、狙いとする透過率の近辺で、裏面反射率が下がってはいない態様に
おいても、膜厚が増えると裏面反射率が上昇する関係にある場合に比べ、膜厚の変動に対
する透過率変動が小さくなる。
【0033】
半透光性膜30の膜厚は、透過率(10%以上60%以下)及び位相差(0度以上12
0度以下)を得るための設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、露光
波長における透過率をその変動幅が±2%以内となる任意の膜厚を設定することができる

但し、例えば、30nm以下といった薄膜の場合、設計膜厚通りに成膜することが難し
いので、半透光性膜30の膜厚は40nm以上が好ましい。
半透光性膜30をパターニングした際の断面形状や、半透光性膜30をパターニングす
る際のエッチング時間を考慮すると120nm以下が好ましい。
以上の点から、半透光性膜30の膜厚は、40nm以上120nm以下が好ましく、さ
らに好ましくは、45nm以上110nm以下、さらに好ましくは50nm以上100n
m以下が望ましい。
【0034】
半透光性膜30の設定膜厚は、好ましくは、上記膜厚範囲内で任意に定めることができ
る。例えば、半透光性膜30の膜厚を中心値に定めたり、膜減りを考慮して上限値に定め
たり、あるいは、成膜の誤差を考慮して上限値から成膜誤差の分だけ下限値側に定めたり
することができる。
【0035】
半透光性膜30の膜厚と、透過率及び位相差との関係を表すグラフ(さらに、n、kを
変化させて得られるグラフ群)において、半透光性膜30が所定の透過率(10%以上6
0%以下)、位相差(0度以上120度以下)となり、かつ、半透光性膜30の膜厚変動
に対する透過率の変動が小さい箇所(膜厚範囲)、視覚的には上記グラフにおける設定透
過率(横軸)において、膜厚―透過率曲線のなす角が小さな箇所(フラットな箇所)に対
応する半透光性膜30の膜厚と、屈折率n、消衰係数kを設定し、使用する。
【0036】
例えば、半透光性膜30が、金属シリサイド系材料であって、露光光(h線:波長40
5nm)に対する透過率が30%以上50%以下、位相差が0度以上120度以下の場合
においては、半透光性膜30の屈折率nは、2.35以上2.55以下、消衰係数は、0
.2以上0.45以下となる材料を選定する。
また、半透光性膜30が、クロム系材料であって、露光光(h線:波長405nm)に
対する透過率が30%以上50%以下、位相差が0度以上120度以下の場合においては
、半透光性膜30の屈折率nは、2.20以上2.55以下、消衰係数は、0.45以上
0.50以下となる材料を選定する。
半透光性膜30は、スパッタリング法により形成することができる。
【0037】
[遮光膜40]
実施の形態1-2のフォトマスクブランク10は、半透光性膜30上に、露光光の透過
を遮る機能を有する遮光膜40を備えている。実施の形態1-2においては、遮光膜40
は、半透光性膜30と遮光膜40とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は
、好ましくは3以上であり、より好ましくは3.5以上であり、さらに好ましくは4以上
である。
【0038】
遮光膜40の材料としては、露光光の透過を遮る機能を有する材料であれば、特に限定
されない。例えば、遮光膜40の材料としては、クロム系材料や遷移金属シリサイド系材
料を使用することができる。
【0039】
遮光膜40の材料がクロム系材料の場合、クロム(Cr)、または、クロム(Cr)と
、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)のうちの少なくとも一種を含むクロム系材料が挙
げられる。具体的には、Cr、CrN、CrO、CrC、CrON、CrCN、CrCO
、CrCONの材料を使用することができる。
【0040】
また、遮光膜40の材料が遷移金属シリサイド系材料の場合、遷移金属シリサイド、遷
移金属シリサイドの窒化物、遷移金属シリサイドの酸化物、遷移金属シリサイドの炭化物
、遷移金属シリサイドの酸化窒化物、遷移金属シリサイドの酸化炭化物、遷移金属シリサ
イドの窒化炭化物、遷移金属シリサイドの酸化窒化炭化物の材料を使用することができる
。遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チ
タン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などが好適である。
【0041】
実施の形態1-2のフォトマスクブランク10が、透光性基板20上に、半透光性膜3
0と遮光膜40が順に接して形成する場合、半透光性膜30と遮光膜40は、エッチング
選択性が異なる材料を選定することが望ましい。ここで、エッチング選択性が異なるとは
、遮光膜40をパターニング可能なエッチャントでは半透光性膜30が実質的にエッチン
グされず、半透光性膜30をパターニング可能なエッチャントでは遮光膜40が実質的に
エッチングされない関係をいう。
【0042】
例えば、半透光性膜30が、クロムが含まれない遷移金属シリサイド系材料である場合
には、遮光膜40はクロム系材料を選択する。また、半透光性膜30が、クロム系材料で
ある場合には、遮光膜40は、クロムが含まれない遷移金属シリサイド系材料を選択する
【0043】
また、実施の形態1-2のフォトマスクブランク10において、半透光性膜30と遮光
膜40を、エッチング選択性が同じ材料を選定することもできる。例えば、半透光性膜3
0と遮光膜40が、クロムが含まれない遷移金属シリサイド系材料や、半透光性膜30と
遮光膜40が、クロム系材料とすることができる。この場合、半透光性膜30と遮光膜4
0との間に、エッチング選択性が異なる材料からなるエッチング阻止膜を備えるのが良い

この場合において、エッチング阻止膜を、エッチング阻止膜兼半透光性膜とすることで
、2種類の半透光性膜を有する4階調(黒、グレー1、2、白の4階調)のフォトマスク
ブランクを製造することができる。例えば、基板上に、クロム系材料からなる半透光性膜
、MoSi系材料からなるエッチング阻止膜兼半透光性膜、クロム遮光膜をこの順に有す
る4階調のフォトマスクブランクを製造することができる。この場合において、クロム系
材料からなる半透光性膜として、後述する実施例3の半透光性膜と同じ特性及び膜厚を有
する半透光性膜を用い、MoSi系材料からなるエッチング阻止膜兼半透光性膜として、
後述する実施例1の半透光性膜と同じ特性及び膜厚を有する半透光性膜を用いることによ
り、2種類の半透光性膜が、それぞれ、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動を小
さく制御できる半透光性膜を有するフォトマスクブランクを製造することができる。
上記の場合において、遮光膜40は、半透光性膜30とエッチング阻止膜と遮光膜40
とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より
好ましくは、3.5以上であり、さらに好ましくは4以上となるように選定される。
【0044】
また、遮光膜40の透光性基板20とは反対側の表面には、露光光の波長帯域において
反射率を低減させる機能を持たせてもよい。この場合、遮光膜40は、主に露光光を遮る
機能を有する遮光層と、反射率を低減させる機能を有する表面反射防止層とを有する積層
構造とすることができる。
遮光膜40は、スパッタリング法により形成することができる。
【0045】
[遮光膜パターン40a]
実施の形態1-3のフォトマスクブランク10は、透光性基板20と半透光性膜30と
の間に遮光膜パターン40aを備えている。実施の形態1-3においては、遮光膜パター
ン40aは、遮光膜パターン40aと半透光性膜30とが積層する部分において、露光光
に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは3.5以上であり、さら
に好ましくは4以上である。
【0046】
遮光膜パターン40aの材料としては、上記遮光膜40と同じ材料を使用することがで
きる。例えば、遮光膜パターン40aと半透光性膜30が同じクロム系材料とすることも
できるし、同じ遷移金属シリサイド系材料とすることもできる。また、遮光膜パターン4
0aがクロム系材料で、半透光性膜30がクロムを含まない遷移金属シリサイド系材料や
、遮光膜パターン40aがクロムを含まない遷移金属シリサイド系材料で、半透光性膜3
0がクロム系材料とすることもできる。
なお、遮光膜パターン40aは、スパッタリング法により成膜した遮光膜40を、エッ
チングによりパターニングすることにより形成することができる。
【0047】
なお、実施の形態1-1、1-2、1-3のフォトマスクブランク10は、半透光性膜
30や遮光膜40上にレジスト膜を備えるものであってもよい。また、実施の形態1-2
、1-2、1-3のフォトマスクブランク10の最上層が半透光性膜30や遮光膜40に
おいて、これらをパターニングする際にマスク層として機能するエッチングマスク膜を形
成しても構わない。この場合、エッチングマスク膜は、半透光性膜30や遮光膜40とエ
ッチング選択性が異なる材料を使用する。
【0048】
上述の実施の形態1-1、1-2、1-3のフォトマスクブランクによれば、半透光性
膜の膜厚変動に対する透過率の変動を小さく制御できる半透光性膜を有するフォトマスク
ブランクを製造することができる。また、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動を
小さく制御できる分、基板面内の透過率均一性がより良好な半透光性膜パターンを有する
フォトマスクを製造することができる。
【0049】
実施の形態2(実施の形態2-1、2-2)
実施の形態2では、フォトマスクの製造方法について説明する。実施の形態2-1は、
実施の形態1-2のフォトマスクブランクを使用したフォトマスクの製造方法である。実
施の形態2-2は、実施の形態1-3のフォトマスクブランクを使用したフォトマスクの
製造方法である。
【0050】
以下、実施の形態2-1、2-2のフォトマスクの製造方法についての各工程を説明す
る。
【0051】
実施の形態2-1
1.第1レジスト膜パターン形成工程
第1レジスト膜パターン形成工程では、先ず、実施の形態1-2のフォトマスクブラン
ク10の遮光膜40上に、レジスト膜を形成する。ただし、フォトマスクブランク10が
、遮光膜40上にレジスト膜を備える場合、レジスト膜の形成は行わない。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、遮光膜40上に第1レジスト膜パター
ンを形成する。
【0052】
2.半透光性膜パターン形成用のマスクパターン形成工程(第1遮光膜パターン形成工程

マスクパターン形成工程では、第1レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜40をエ
ッチングして、半透光性膜パターン形成用のマスクパターンを形成する。遮光膜40をエ
ッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、遮光膜40をエッ
チングできるものであれば、特に制限されない。例えば、遮光膜40の材料が、クロム系
材料から構成される場合、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング
溶液や、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスからなるエッチングガスが挙げられる。また、遮
光膜40が遷移金属シリサイド系材料から構成される場合、フッ化水素酸、珪フッ化水素
酸、及びフッ化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも一つのフッ素化合物と、過酸化
水素、硝酸、及び硫酸から選ばれる少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング溶液や、
CFガス、CHFガス、SFガスなどのフッ素系ガスや、これらのガスにOガス
を混合したエッチングガスが挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、第1レジスト膜パタ
ーンを剥離する。なお、第1レジスト膜パターンの剥離は、後述する半透光性膜パターン
形成工程の後に行っても構わない。
【0053】
3.半透光性膜パターン形成工程
半透光性膜パターン形成工程では、上述のマスクパターン(第1遮光膜パターン)をマ
スクにして半透光性膜30をエッチングして、半透光性膜パターンを形成する。半透性膜
30をエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、半透光性
膜30をエッチングできるものであれば、特に制限されない。エッチング媒質については
、遮光膜40と同じであるので、説明は省略する。
【0054】
4.第2レジスト膜パターン形成工程
第2レジスト膜パターン形成工程は、半透光性膜パターン上に所定の遮光膜パターンを
形成するための工程で、第1遮光膜パターン(上述のマスクパターン)上に第2レジスト
膜パターンを形成する工程である。上述の工程で得られた半透光性膜パターン、第1遮光
膜パターンを覆うようにレジスト膜を形成する。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレー
ザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパター
ンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、第1遮光性膜パターン上に第2レジス
ト膜パターンを形成する。
【0055】
5.遮光膜パターン形成工程
第2レジスト膜パターンをマスクにして第1遮光膜パターンをエッチングして、半透光
性膜パターン上に遮光膜パターンを形成する。第1遮光膜パターンをエッチングするエッ
チング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、上述で説明した遮光膜40をエッチ
ングするエッチング媒質と同じなので説明は省略する。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、第2レジスト膜パタ
ーンを剥離して、実施の形態2-1のフォトマスクを得る。実施の形態2-1のフォトマ
スクは、透光性基板20上に半透光性膜パターン、及び遮光膜パターン40aが形成され
ていない領域が透光部、半透光性膜パターンのみが形成された領域が半透光部、半透光性
膜パターンと遮光膜パターン40aが積層された領域が遮光部とするフォトマスクとなる
【0056】
この実施の形態2-1のフォトマスクの製造方法によれば、半透光性膜の膜厚変動に対
する透過率の変動を小さく制御できる半透光性膜パターンを有するフォトマスクを製造す
ることができる。また、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動を小さく制御できる
分、基板面内の透過率均一性がより良好な半透光性膜パターンを有するフォトマスクを製
造することができる。
【0057】
実施の形態2-2
1.レジスト膜パターン形成工程
レジスト膜パターン形成工程では、先ず。実施の形態1-3のフォトマスクブランク1
0の半透光性膜30上にレジスト膜を形成する。ただし、フォトマスクブランク10が、
半透光性膜30上にレジスト膜を備える場合、レジスト膜の形成は行わない。使用するレ
ジスト膜材料は、特に制限されない。後述する350nm~436nmの波長域から選択
されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レ
ジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレー
ザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパター
ンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、半透光性膜30上にレジスト膜パター
ンを形成する。
【0058】
2.半透光性膜パターン形成工程
半透光性膜パターン形成工程では、レジスト膜パターンをマスクにして半透光性膜30
をエッチングして、半透光性膜パターンを形成する。半透光性膜パターンは、例えば、隣
接する遮光膜パターン40aを跨ぐように、半透光性膜パターンを形成する。半透光性膜
をエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、半透光性膜3
0をエッチングできるものであれば、特に制限されない。エッチング媒質については、実
施の形態2-1と同じであるので、説明は省略する。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、レジスト膜パターン
を剥離して、実施の形態2-2のフォトマスクを得る。実施の形態2-2のフォトマスク
は、透光性基板20上に遮光膜パターン40a、及び半透光性膜パターンが形成されてい
ない領域が透光部、半透光性膜パターンのみが形成された領域が半透光部、遮光膜パター
ン40aと半透光性膜パターンが積層された領域が遮光部とするフォトマスクとなる。
【0059】
この実施の形態2-2のフォトマスクの製造方法によれば、半透光性膜の膜厚変動に対
する透過率の変動を小さく制御できる半透光性膜パターンを有するフォトマスクを製造す
ることができる。また、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動を小さく制御できる
分、基板面内の透過率均一性がより良好な半透光性膜パターンを有するフォトマスクを製
造することができる。
【0060】
実施の形態3
実施の形態3では、表示装置の製造方法について説明する。表示装置は、以下のマスク
載置工程とパターン転写工程とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
1.載置工程
載置工程では、実施の形態2-1、2-2で製造されたフォトマスクを露光装置のマス
クステージに載置する。ここで、フォトマスクは、露光装置の投影光学系を介して表示装
置基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
【0061】
2.パターン転写工程
パターン転写工程では、実施の形態2-1、2-2で製造されたフォトマスクに露光光
を照射して、表示装置基板上に形成されたレジスト膜に、遮光膜パターンが形成された遮
光部と、半透光性膜パターンが形成された半透光部と、半透光性膜パターンが形成されて
いない透光部によりパターンを転写する。露光光は、313nm~436nmの波長域か
ら選択される複数の波長の光を含む複合光や、313nm~436nmの波長域からある
波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光である。例えば、露光光は、i線、
h線及びg線を含む複合光や、j線、i線、h線及びg線を含む混合光や、i線の単色光
である。露光光として複合光を用いると、露光光強度を高くしてスループットを上げるこ
とができるため、表示装置の製造コストを下げることができる。
【0062】
この実施の形態3の表示装置の製造方法によれば、フォトマスクを使用してパターン転
写を行った後、フォトマスクの洗浄を繰り返し行っても光学特性(露光光に対する透過率
)の変動を小さくすることができる、つまり、半透光性膜パターンの膜厚変動に対する透
過率の変動が小さいので、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じない
表示装置を製造することができる。
【0063】
尚、上述の実施の形態1-1、1-2、1-3のフォトマスクブランク、及び実施の形
態2-1、2-2のフォトマスクの製造方法により製造されたフォトマスクは、等倍露光
のプロジェクション露光用のフォトマスクブランク、及びフォトマスクで使用することも
できるし、また、近接露光のプロキシミティ露光用のフォトマスクブランク、及びフォト
マスクで使用することもできる。特に、本発明は、フォトマスクの繰り返し洗浄において
も、光学特性(露光光に対する透過率)の変動が小さいことから、近接露光のプロキシミ
ティ露光用のフォトマスクブランク、及びフォトマスクにおいて最大限の効果を発揮する
ことができる。
【実施例0064】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。なお、各実施例、比較例の半透光性膜や遮光膜
の各膜は、スパッタリング法で行われ、成膜装置としてインライン型スパッタリング装置
を用いて成膜した。但し、本発明を実施するにあたっては、特にこの成膜法や成膜装置に
限定されるわけではない。
(実施例1)
(実験例1-1、1-2、1-3)
実験例1-1~1-3は、半透光性膜の材料がモリブデンシリサイド系材料であって、
露光光の代表波長であるh線(波長405nm)において、透過率が40%となる設定膜
厚に対して、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が小さくなる所定の屈折率nと
消衰係数kを有する半透光性膜を選定するための実験例である。
【0065】
(光学シミュレーション及び半透光性膜の選定)
先ず、膜厚変動に対する透過率の変動が小さい、所定の屈折率nと消衰係数kを有する
半透光性膜を選定するため、透光性基板上に、成膜条件を変えて成膜した屈折率nと消衰
係数kが異なる複数種類の半透光性膜を成膜した。
半透光性膜の成膜は、FPD用フォトマスクブランクを製造する際に使用するインライ
ン型スパッタリング装置を使用して行われ、成膜された半透光性膜の屈折率nと消衰係数
kをn&kアナライザーで測定するために、152mm×152mmのサイズの合成石英
ガラス材料からなる透光性基板(ダミー基板)に対して行った。
【0066】
実験例1-1~1-3における半透光性膜の成膜条件、及び半透光性膜の屈折率nと消
衰係数kは、以下の通りである。尚、実験例1-1~1-3における半透光性膜の膜厚は
、100nmとした。屈折率nと消衰係数kは、露光光の代表波長であるh線(波長40
5nm)の値である。
[実験例1-1]
スパッタリングターゲット:モリブデンシリサイドターゲット(Mo:Si=11:8
9)
成膜ガス:アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:N:He=1
8:12:50)
ガス圧力:1.6Pa
半透光性膜の屈折率n:2.431、消衰係数k:0.315
【0067】
[実験例1-2]
スパッタリングターゲット:モリブデンシリサイドターゲット(Mo:Si=8:92

成膜ガス:アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar
:N:He:NO=18:13:50:4)
ガス圧力:1.6Pa
半透光性膜の屈折率n:2.300、消衰係数k:0.157
【0068】
[実験例1-3]
スパッタリングターゲット:モリブデンシリサイドターゲット(Mo:Si=20:8
0)
成膜ガス:アルゴンガスと窒素ガスの混合ガス(Ar:N=18:11)
ガス圧力:0.6Pa
半透光性膜の屈折率n:2.650、消衰係数k:0.530
【0069】
次に、上記実験例1-1~1-3の半透光性膜の屈折率nと消衰係数kをもとに、半透
光性膜の透過率が40%となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化させたときの
半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレーションを行った。
【0070】
実験例1-1における、半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレーション
結果を表1及び図4に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
以上の結果の通り、実験例1-1の半透光性膜は、半透光性膜の透過率が40%(0.
40)となる設定膜厚に対して、±3.5nmの範囲で変動した場合において、露光波長
の代表波長である405nmにおける透過率の変動が±2.0%に抑えることができた。
これは、半透光性膜の透過率が40%となる設定膜厚に対して、±3.5nmの範囲にお
いて、該半透光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率が減少する傾向となっていること
が、露光波長の代表波長である405nmにおける透過率の変動が±2.0%に抑えられ
た要因の一つと考える。
なお、図4において、膜厚85.5nmにおける透過率は38.0%(0.38)であ
る。
【0073】
次に、実験例1-2における、半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレー
ション結果を表2及び図5に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
以上の結果の通り、実験例1-2の半透光性膜は、半透光性膜の透過率が40%(0.
40)となる設定膜厚に対して、±20nmの範囲で変動した場合において、露光波長の
代表波長である405nmにおける透過率の変動が±2.0%に抑えることができたが、
半透光性膜の位相差が120度を超える値となってしまった。
【0076】
次に、実験例1-3における、半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレー
ション結果を表3及び図6に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
以上の結果の通り、実験例1-3の半透光性膜は、半透光性膜の透過率が40%(0.
40)となる設定膜厚に対して、±1.0nmの範囲で変動した場合において、露光波長
の代表波長である405nmにおける透過率の変動が±2.0%に抑えることができた。
実験例1-1の半透光性膜と比べ、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が大きい
結果となった。これは、半透光性膜の透過率が40%となる設定膜厚に対して、±3.5
nmの範囲において、該半透光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率も増加する傾向と
なっていることが、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が大きくなった要因の一
つと考える。
【0079】
(実施例1)
次に、実施例1のフォトマスクブランク10について説明する。実施例1のフォトマス
クブランク10における半透光性膜30として、上記実験例1-1の半透光性膜を選定し
た。
実施例1のフォトマスクブランクは、透光性基板20と、透光性基板20上に配置され
た半透光性膜30と、遮光膜40とを備える。透光性基板20として、大きさが800m
m×920mmであり、厚さが10mmである合成石英ガラス基板を用いた。
【0080】
実施例1のフォトマスブランクは、以下の方法により製造した。
先ず、透光性基板20である合成石英ガラス基板を準備した。合成石英ガラス基板の両
主表面は鏡面研磨されている。
次に、合成石英ガラス基板をインライン型スパッタリング装置に搬入し、上記実験例1
-1の成膜条件により、合成石英ガラス基板上に、モリブデンとケイ素と窒素とを有する
モリブデンシリサイド窒化物からなる半透光性膜30を形成した。この半透光性膜30の
膜厚は、露光光の代表波長である405nmにおいて、透過率が40%となるように、8
2nmとした。基板面内の11点×11点の測定点において、波長405nmの透過率を
測定したところ、透過率のばらつきは、±0.4%と非常に良好な値を示していた。この
一因として、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が±2.0%以内と非常に小さ
い値であることが寄与していると考えられる。
【0081】
また、得られた半透光性膜30について、アルカリ洗浄(アンモニア過水(APM)、
30℃、5分)を6回繰り返して洗浄を行い、半透光性膜30の膜厚変動による透過率変
化を評価した。その結果、アルカリ洗浄処理前に対して、半透光性膜30の透過率の変動
は、0.5%と非常に小さい値であった。尚、この評価は、同一の成膜条件により合成石
英ガラス基板上に形成した半透光性膜30(ダミー基板)に対して行った。以上の結果か
ら、実施例1の半透光性膜30は、膜厚変動に対する透過率の変動が極めて小さい半透光
性膜であると言える。
【0082】
次に、半透光性膜30上に以下の条件で遮光膜40を成膜した。先ず、アルゴンガスと
窒素ガスとの混合ガスを用いて、反応性スパッタリングにより、半透光性膜30上に、ク
ロムと窒素を含有するクロム窒化物層(CrN層)を形成した(膜厚15nm)。次に、
アルゴンガスとメタンガスとの混合ガスによる反応性スパッタリングにより、クロム窒化
物層上に、クロムと炭素を含有するクロム炭化物層(CrC層)を形成した(膜厚60n
m)。次に、アルゴンガスと一酸化窒素ガスを用いて、反応性スパッタリングにより、ク
ロム炭化物層上に、クロムと酸素と窒素を含有するクロム酸化窒化物層(CrON層)を
形成した(膜厚25nm)。以上のように、半透光性膜30上に、CrN層とCrC層と
CrON層の積層構造の遮光膜40を形成して、フォトマスクブランク10を得た。尚、
上記CrON層は、露光波長及び、レーザー描画波長に対して反射率を低減する表面反射
防止機能を有している。
【0083】
次に、上述のフォトマスクブランク10を用いて、上述の実施の形態2-1で説明した
方法によりフォトマスクを作製した。これにより、モリブデンシリサイド窒化物からなる
半透光性膜パターンのみが形成された領域の半透光部、半透光性膜パターンと、半透光性
膜パターン上にクロム系材料からなる遮光膜パターン40aが積層された領域の遮光部と
、半透光性膜パターン及び遮光膜パターンが形成されていない領域の透光部を有するフォ
トマスクを得た。
【0084】
以上のようにして得られた実施例1のフォトマスクは、基板面内の透過率均一性が良好
であり、かつ、膜厚変動に対する透過率の変動が小さい半透光性膜30が形成されたフォ
トマスクブランク10を用いて作製しているので、フォトマスクを繰り返し洗浄した場合
に、半透光性膜パターンの膜厚が減少した場合においても、半透光性膜パターンの透過率
の変動が小さくすることが可能となる。
したがって、実施例1のフォトマスクを使用して、表示装置を作製した場合においても
、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じることがない。
【0085】
(比較例1)
比較例1のフォトマスクブランクにおける半透光性膜として、上記実験例1-3の半透
光性膜を選定した。半透光性膜の成膜は、上記実験例1-3の成膜条件により、合成石英
基板上に、モリブデンとケイ素と窒素とを有するモリブデンシリサイド窒化物からなる半
透光性膜を形成した。この半透光性膜の膜厚は、露光光の代表波長である405nmにお
いて、透過率が40%となるように、29nmとした。
基板面内の11点×11点の測定点において、波長405nmの透過率を測定したとこ
ろ、透過率のばらつきは、±0.7%となり、実施例1と比べると大きな値となった。
また、得られた半透光性膜30について、アルカリ洗浄(アンモニア過水(APM)、
30℃、5分)を6回繰り返して洗浄を行い、半透光性膜30の膜厚変動による透過率変
化を評価した。その結果、アルカリ洗浄処理前に対して、半透光性膜30の透過率の変動
は、1.6%となり大きな値であった。以上の結果から、比較例1の半透光性膜は、膜厚
変動に対する透過率変動が大きい半透光性膜である。
【0086】
次に、実施例1と同様に半透光性膜上に遮光膜を形成してフォトマスクブランクを作製
し、さらに、実施例1と同様にフォトマスクを作製した。
以上のようにして得られた比較例1のフォトマスクは、基板面内の透過率均一性が悪く
、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が大きいフォトマスクブランクを用いて作
製しているので、フォトマスクを繰り返し洗浄した場合に、半透光性膜パターンの膜厚が
減少した場合、半透光性膜パターンの透過率の変動が大きく、表示装置を作製した場合に
おいて、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じることになる。
【0087】
(実施例2)
(実験例2-1、2-2)
上記実験例1-3及び実験例1-1の半透光性膜の屈折率nと消衰係数kをもとに、半
透光性膜の透過率が30%(0.30)となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変
化させたときの半透光性膜の屈折率、位相差、裏面反射率のシミュレーションを行った。
【0088】
実験例1-3における、半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレーション
結果(実験例2-1)を表4及び図7に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
以上の結果の通り、実験例1-3(実験例2-1)の半透光性膜は、半透光性膜の透過
率が30%となる設定膜厚に対して±6.5nmの範囲で変動した場合において、露光波
長の代表波長である405nmにおける透過率変動幅が±2.0%に抑えることができた
。これは、半透光性膜の透過率が30%となる設定膜厚に対して、±6.5nmの膜厚の
範囲において、該半透光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率が減少する傾向となって
いることが、露光波長の代表波長である405nmにおける透過率の変動が±2.0%に
抑えられた要因の一つと考える。
【0091】
次に、実験例1-1における、半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレー
ション結果(実験例2-2)を表5及び図8に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
以上の結果の通り、実験例1-1(実験例2-2)の半透光性膜は、半透光性膜の透過
率が30%(0.30)となる設定膜厚に対して、±4.5nmの範囲で変動した場合に
おいて、露光波長の代表波長である405nmにおける透過率変動幅が±2.0%となり
、また、半透光性膜の位相差が120度を超える値となってしまった。上記実験例1-3
と比べ、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が大きい結果となってしまったのは
、該半透光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率も増加する傾向となっていることが、
半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が大きくなった要因の一つと考える。
【0094】
(実施例2)
次に、実施例2のフォトマスクブランク10について説明する。実施例2のフォトマス
クブランク10における半透光性膜30として、上記実験例1-3の半透光性膜を選定し
た。
半透光性膜30の成膜は、実験例1-3の成膜条件により、合成石英基板上に、モリブ
デンとケイ素と窒素とを有するモリブデンシリサイド窒化物からなる半透光性膜30を形
成した。この半透光性膜30の膜厚は、露光光の代表波長である405nmにおいて、透
過率が30%となるように、60nmとした。
基板面内の11点×11点の測定点において、波長405nmの透過率を測定したとこ
ろ、透過率のばらつきは±0.5%と非常に良好な値を示した。
また、得られた半透光性膜30について、アルカリ洗浄(アンモニア過水(APM)、
30℃、5分)を6回繰り返して洗浄を行い、半透光性膜30の膜厚変動による透過率変
化を評価した。その結果、アルカリ洗浄処理前に対して、半透光性膜30の透過率の変動
は、0.5%と非常に小さい値であった。尚、この評価は、同一の成膜条件により合成石
英ガラス基板上に形成した半透光性膜30(ダミー基板)に対して行った。以上の結果か
ら、実施例1の半透光性膜30は、膜厚変動に対する透過率の変動が極めて小さい半透光
性膜であると言える。
【0095】
次に、実施例1と同様に半透光性膜上に遮光膜を形成してフォトマスクブランクを作製
し、さらに実施例1と同様に実施例2のフォトマスクを作製した。これにより、モリブデ
ンシリサイド窒化物からなる半透光性膜パターンのみが形成された領域の半透光部、半透
光性膜パターンと、半透光性膜パターン上にクロム系材料からなる遮光膜パターン40a
が積層された領域の遮光部と、半透光性膜パターン及び遮光膜パターンが形成されていな
い領域の透光部を有するフォトマスクを得た。
【0096】
以上のようにして得られた実施例2のフォトマスクは、基板面内の透過率均一性が良好
であり、かつ、膜厚変動に対する透過率の変動が小さい半透光性膜30が形成されたフォ
トマスクブランク10を用いて作製しているので、フォトマスクを繰り返し洗浄した場合
に、半透光性膜パターンの膜厚が減少した場合においても、半透光性膜パターンの透過率
の変動が小さくすることが可能となる。
したがって、実施例2のフォトマスクを使用して、表示装置を作製した場合においても
、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じることがない。
【0097】
(実施例3)
(実験例3-1、3-2)
実験例3-1、3-2は、半透光性膜の材料がクロム系材料であって、露光光の代表波
長であるh線(波長405nm)において、透過率が30%(0.30)となる設定膜厚
に対して、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が小さくなる所定の屈折率nと消
衰係数kを有する半透光性膜を選定するための実験例である。
実験例3-1、3-2における半透光性膜の成膜条件、及び半透光性膜の屈折率nと消
衰係数kは、以下の通りである。尚、実験例3-1、3-2における半透光性膜の膜厚は
、100nmとした。屈折率nと消衰係数kは、露光光の代表波長であるh線(波長40
5nm)の値である。
【0098】
[実験例3-1]
スパッタリングターゲット:クロム
成膜ガス:アルゴンガスと二酸化炭素ガスの混合ガス(Ar:CO=20:90)
ガス圧力:0.3Pa
半透光性膜の屈折率n:2.36、消衰係数k:0.49
【0099】
[実験例3-2]
スパッタリングターゲット:クロム
成膜ガス:アルゴンガスと二酸化炭素ガスの混合ガス(Ar:CO=20:30)
ガス圧力:0.3Pa
半透光性膜の屈折率n:2.64、消衰係数k:0.39
【0100】
次に、上記実験例3-1、3-2の半透光性膜の屈折率nと消衰係数kをもとに、半透
光性膜の透過率が30%(0.30)となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化
させたときの半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレーションを行った。
実験例3-1における、半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレーション
結果を表6及び図9に示す。
【0101】
【表6】
【0102】
以上の結果の通り、実験例3-1の半透光性膜は、半透光性膜の透過率が30%となる
設定膜厚に対して、±4.0nmの範囲で変動した場合において、露光波長の代表波長で
ある405nmにおける透過率の変動が±2.0%に抑えることができた。これは、半透
光性膜の透過率が30%となる設定膜厚に対して、±3.5nmの範囲において、該半透
光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率が減少する傾向となっていることが、露光波長
の代表波長である405nmにおける透過率の変動が±2.0%に抑えられた要因の一つ
と考える。
【0103】
次に、実験例3-2における、半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレー
ション結果を表7及び図10に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
以上の結果の通り、実験例3-2の半透光性膜は、半透光性膜の透過率が30%(0.
30)となる設定膜厚に対して、±2.5nmの範囲で変動した場合において、露光波長
の代表波長である405nmにおける透過率変動幅が±2.0%となり、また、半透光性
膜の位相差が120度を超える値となってしまった。上記実験例3-1と比べ、半透光性
膜の膜厚変動に対する透過率の変動が大きい結果となってしまったのは、該半透光性膜の
膜厚の増加に伴って、裏面反射率も増加する傾向となっていることが、半透光性膜の膜厚
変動に対する透過率の変動が大きくなった要因の一つと考える。
【0106】
(実施例3)
次に、実施例3のフォトマスクブランク10について説明する。実施例3のフォトマス
クブランク10における半透光性膜30として、上記実験例3-1の半透光性膜を選定し
た。
実施例3のフォトマスクブランクは、以下の方法により製造した。
先ず、透光性基板20である合成石英ガラス基板を準備した。合成石英ガラス基板の両
主表面は鏡面研磨されている。
【0107】
次に、合成石英ガラス基板をインライン型スパッタリング装置に搬入し、実施例1と同
様の成膜条件により、合成石英ガラス基板上に、遮光膜40を形成した。次に、遮光膜4
0上にレジスト膜を形成し、遮光部となる遮光膜パターン40aを形成するために、レー
ザー描画機により描画、現像処理を行い、レジスト膜パターンを形成した。次に、レジス
ト膜パターンをマスクにしてエッチング溶液を用いて遮光膜をエッチングして遮光膜パタ
ーン40aを形成した。
【0108】
次に、レジスト膜パターンを剥離して、合成石英ガラス基板上に、遮光膜パターン40
aを形成して、遮光膜パターン付き基板を得た。次に、上記実験例3-1の成膜条件によ
り、遮光膜パターン付き基板上に、クロムと炭素と酸素とを有するクロム炭化酸化物から
なる半透光性膜30を形成した。この半透光性膜30の膜厚は、露光光の代表波長である
405nmにおいて、透過率が30%となるように、74nmとした。
基板面内の11点×11点の測定点において、波長405nmの透過率を測定したとこ
ろ、透過率のばらつきは、±0.5%と非常に良好な値を示していた。また、得られた半
透光性膜30について、アルカリ洗浄(アンモニア過水(APM)、30℃、5分)を6
回繰り返して洗浄を行い、半透光性膜30の膜厚変動による透過率変化を評価した。その
結果、アルカリ洗浄処理前に対して、半透光性膜30の透過率の変動は、0.1%と非常
に小さい値であった。
【0109】
次に、上述の実施の形態2-2で説明した方法によりフォトマスクを作製した。これに
より、クロム炭化酸化物からなる半透光性膜パターンのみが形成された領域の半透光部、
クロム系材料からなる遮光膜パターン40aと半透光性膜パターンが積層された領域の遮
光部と、半透光性膜パターン及び遮光膜パターンが形成されていない領域の透光部を有す
るフォトマスクを得た。
【0110】
以上のようにして得られた実施例3のフォトマスクは、基板面内の透過率均一性が良好
であり、かつ、膜厚変動に対する透過率の変動が小さい半透光性膜30が形成されたフォ
トマスクブランク10を用いて作製しているので、フォトマスクを繰り返し洗浄した場合
に、半透光性膜パターンの膜厚が減少した場合においても、半透光性膜パターンの透過率
の変動が小さくすることが可能となる。
したがって、実施例3のフォトマスクを使用して、表示装置を作製した場合においても
、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じることがない。
【0111】
以上のように、本発明を実施の形態及び実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は
これに限定されない。当該分野における通常の知識を有するものであれば、本発明の技術
的思想内での変形や改良が可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0112】
10 フォトマスクブランク
20 透光性基板
30 半透光性膜
40 遮光膜
40a 遮光膜パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11