(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191476
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/08 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
E03D11/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170285
(22)【出願日】2022-10-25
(62)【分割の表示】P 2021030148の分割
【原出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】石見 亘
(57)【要約】
【課題】リム部に1つ形成されるリム吐水口部によりボウル部後方へ吐水がされる場合にボウル部からの水跳ねを抑制できる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器は、汚物受け面の上縁に形成されたリム部を備えたボウル部8を備え、リム部10は、上面視でボウル部の右側及び左側において配置された直線部50と、ボウル部の右側及び左側の直線部を繋ぐ円弧部52と、洗浄水源から供給される洗浄水をボウル部内に吐水してボウル部内に旋回流を形成するリム吐水部14と、を備え、リム吐水部14は、供給された洗浄水が通水するリム通水路46を形成すると共に、このリム通水路の下流端に洗浄水を後方に向けて吐水するリム吐水口部48を形成し、リム吐水口部48は、リム部10に1つ形成され、直線部50において直線部の延びる方向に向かってボウル部8後方へ吐水するように形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
ボウル部であって、ボウル形状の汚物受け面と、上記汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、上記汚物受け面と上記リム部を結ぶように全周に設けられた棚面と、を備えた上記ボウル部を備え、
上記リム部は、
上面視で上記ボウル部の右側及び左側において配置された直線部と、
上記直線部の前端部及び後端部において上記ボウル部の右側及び左側の上記直線部を繋ぐ円弧部と、
上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記ボウル部内に吐水して上記ボウル部内に旋回流を形成するリム吐水部と、を備え、
上記リム吐水部は、供給された洗浄水が通水するリム通水路を形成すると共に、このリム通水路の下流端に洗浄水を後方に向けて吐水するリム吐水口部を形成し、
上記リム吐水部の上記リム吐水口部は、上記リム部に1つ形成され、上記直線部において上記直線部の延びる方向に向かって上記ボウル部後方へ吐水するように形成されることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記リム通水路は、
上記リム部の内部を前方に向けて延びる外側部と、
上記外側部の下流端から内側に屈曲する屈曲部と、
上記屈曲部から後方に向かって上記リム吐水口部まで延びる内側部とを備える、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記リム通水路の上記外側部は、上記屈曲部に接続する屈曲部側直線部を備える、請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記リム通水路の上記内側部は、上記リム吐水口部に接続する吐水部側直線部を備える、請求項2又は3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記リム通水路の上記屈曲部は、上記直線部と上記直線部の前方側の上記円弧部との連結部分より後方側に設けられている、請求項2乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記ボウル部は、さらに、上記リム吐水口部の後方側において上記リム吐水口部から上記直線部の延びる方向に延びるリム吐水部通水路を備え、上記リム吐水部通水路の天井面は、上記ボウル部の内側から外側に向けてオーバハング状に形成され、上記リム吐水部通水路は、上記ボウル部の内側から外側に向けて切り欠くように形成される、請求項1乃至5の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているように、水洗大便器において、ボウル部の棚部の前方から見て左側の中央部の少し後方側に第1吐水口が形成され、前方から見て右側後方側に第2吐水口が形成され、これらの第1吐水口及び第2吐水口が同一方向に旋回する旋回流を形成するものが知られている。
【0003】
また、特許文献2に示すように、折り返し部分を有する流路からの吐水口を含む3つの吐水口からの吐水により便鉢部内に旋回流を形成する水洗大便器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-152468号公報
【特許文献2】特開2017-20213号公報
【特許文献3】特開2017-160671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1及び2に記載されている従来の水洗大便器に対し、1つの後方向きのリム吐水口からの吐水によりボウル部を洗浄することが検討された。例えば、特許文献3に示すように、リム吐水口から後方に向けて吐水され、ボウル部内に旋回流が形成される水洗大便器が検討された。
しかしながら、1つの後方向きのリム吐水口からの吐水によりボウル部を洗浄する流れを形成しようとすると、ボウル部の後方のリム部の曲りの曲率が変化する部分における水撥ねを生じやすいという問題があった。また、リム部に1つ形成されるリム吐水部により比較的強力な旋回流をボウル部内に形成しにくいためボウル部の洗浄性能が低くなりやすいという問題が生じる。
また、例えば新たにリム部の右側及び左側において配置された直線部とこれらの直線部を繋ぐ円弧部とを備えるボウル部を形成し、このボウル部において、1つの後方向きのリム吐水口からの吐水によりボウル部を洗浄することを検討しようとする場合においても、同様に、ボウル部の後方のリム部の曲りの曲率が変化する部分における水撥ねを生じやすいという問題やボウル部の洗浄性能が低くなりやすいという問題が生じることとなった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、リム部に1つ形成されるリム吐水口部によりボウル部後方へ吐水がされる場合にボウル部からの水跳ねを抑制できる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施形態は、 洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル部であって、ボウル形状の汚物受け面と、上記汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、上記汚物受け面と上記リム部を結ぶように全周に設けられた棚面と、を備えた上記ボウル部を備え、上記リム部は、上面視で上記ボウル部の右側及び左側において配置された直線部と、上記直線部の前端部及び後端部において上記ボウル部の右側及び左側の上記直線部を繋ぐ円弧部と、上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記ボウル部内に吐水して上記ボウル部内に旋回流を形成するリム吐水部と、を備え、上記リム吐水部は、供給された洗浄水が通水するリム通水路を形成すると共に、このリム通水路の下流端に洗浄水を後方に向けて吐水するリム吐水口部を形成し、上記リム吐水部の上記リム吐水口部は、上記リム部に1つ形成され、上記直線部において上記直線部の延びる方向に向かって上記ボウル部後方へ吐水するように形成されることを特徴としている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、リム部が、上面視で上記ボウル部の右側及び左側において配置された直線部と、上記直線部の前端部及び後端部において上記ボウル部の右側及び左側の上記直線部を繋ぐ円弧部と、を備えるボウル部において、上記リム吐水口部は、上記リム部に1つ形成され、上記直線部において上記直線部の延びる方向に向かって上記ボウル部後方へ吐水するように形成される。
これにより、リム部に1つ形成されるリム吐水口部により比較的強力な旋回流をボウル部内に形成するときに、リム吐水口部から吐水された洗浄水が直線部において直線部の延びる方向に向かって整流されることができ、直線部とこの直線部の後方の円弧部とを連結する曲率変化部分における水撥ねを抑制できる。よって、リム部に配置された直線部と直線部を繋ぐ円弧部とを備えるボウル部において、リム部に1つ形成されるリム吐水口部によりボウル部後方へ吐水がされる場合にボウル部からの水跳ねを抑制できる。
【0008】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記リム通水路は、上記リム部の内部を前方に向けて延びる外側部と、上記外側部の下流端から内側に屈曲する屈曲部と、上記屈曲部から後方に向かって上記リム吐水口部まで延びる内側部とを備える。
このように構成された本発明の一実施形態においては、リム通水路の外側部、屈曲部及び内側部によりリム部の内部においてUターンするように屈曲されたリム通水路が形成されることができ、リム吐水口部までのリム通水路の長さを比較的短くでき、洗浄水の水勢の低下を抑制でき、比較的強力な洗浄水の水勢を維持したままリム吐水口部からの洗浄水の吐水を行い、ボウル部の洗浄性能をより向上させることができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記リム通水路の上記外側部は、上記屈曲部に接続する屈曲部側直線部を備える。
このように構成された本発明の一実施形態においては、リム通水路の外側部は、屈曲部に接続する屈曲部側直線部を備えるので、外側部が屈曲部に接続する湾曲部を備えている場合に比べて、外側部における洗浄水の圧力損失を低減でき、比較的強力な洗浄水の流れをリム吐水口部まで供給できる。また、リム通水路を通る洗浄水が屈曲部側直線部により直線的に整流された状態で屈曲部へ流入されるので、洗浄水が乱れた状態で屈曲部へ流入される場合と比べて、屈曲部における洗浄水の圧力損失を低減でき、比較的強力な洗浄水の流れをリム吐水口部まで供給できる。
【0010】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記リム通水路の上記内側部は、上記リム吐水口部に接続する吐水部側直線部を備える。
このように構成された本発明の一実施形態においては、リム通水路の内側部は、リム吐水口部に接続する吐水部側直線部を備えるので、内側部がリム吐水口部に接続する湾曲部を備えている場合に比べて、内側部における洗浄水の圧力損失を低減でき、比較的強力な洗浄水の流れをリム吐水口部まで供給できる。また、リム通水路を通る洗浄水が吐水部側直線部により直線的に整流された状態でリム吐水口部から吐水されるので、洗浄水が乱れた状態でリム吐水口部から吐水される場合と比べて、より整流された状態の洗浄水を吐水でき、曲率変化部分における水撥ねをより抑制できる。また、洗浄水がより直線的に整流された状態でリム吐水口部から吐水されるので、リム吐水口部から吐水された洗浄水の圧力損失を低減でき、より強力な旋回流をボウル部内に形成できる。
【0011】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記リム通水路の上記屈曲部は、上記直線部と上記直線部の前方側の上記円弧部との連結部分より後方側に設けられている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、屈曲部は、上記直線部と上記直線部の前方側の上記円弧部との連結部分より後方側に設けられている。これにより、屈曲部を直線部と上記直線部の前方側の上記円弧部との連結部分より前方側に設ける場合と比べて、屈曲部を円弧部側のリム部内で屈曲させることなく、屈曲部を直線部側のリム部内で屈曲させることができるので、屈曲部の圧力損失を低減させることができる。また、屈曲部を円弧部側のリム部内で屈曲させることにより円弧部側のリム部の幅が比較的大きく形成され、外観の美観が低下されることや、ボウル部の汚物受け面等の大きさが縮小されること等が生じることを抑制できる。
【0012】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ボウル部は、さらに、上記リム吐水口部の後方側において上記リム吐水口部から上記直線部の延びる方向に延びるリム吐水部通水路を備え、上記リム吐水部通水路の天井面は、上記ボウル部の内側から外側に向けてオーバハング状に形成され、上記リム吐水部通水路は、上記ボウル部の内側から外側に向けて切り欠くように形成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ボウル部は、さらに、上記リム吐水口部の後方側において上記リム吐水口部から上記直線部の延びる方向に延びるリム吐水部通水路を備え、上記リム吐水部通水路の天井面は、上記ボウル部の内側から外側に向けてオーバハング状に形成され、上記リム吐水部通水路は、上記ボウル部の内側から外側に向けて切り欠くように形成される。これにより、リム吐水口部から吐水された洗浄水が、上方に水跳ねを生じることを天井面により抑制しながら、リム吐水部通水路において直線部の延びる方向に向かって整流でき、直線部とこの直線部の後方の円弧部とを連結する曲率変化部分における水撥ねをより抑制できる。よって、リム部に配置された直線部と直線部を繋ぐ円弧部とを備えるボウル部において、リム部に1つ形成されるリム吐水部によりボウル部後方へ吐水する場合のボウル部からの水跳ねをより抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、リム部に1つ形成されるリム吐水口部によりボウル部後方へ吐水がされる場合にボウル部からの水跳ねを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態による水洗大便器の平面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図3のリム導水路の屈曲部の近傍の様子を示す部分拡大断面図である。
【
図7】
図4のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部及び棚部を示す平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態による水洗大便器の棚部における洗浄水の流れを説明するための棚部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成図である。また、
図2は、本発明の一実施形態による水洗大便器の平面図であり、
図3は
図1のIII-III線に沿った断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、水道等の主給水源W0(洗浄水源)から供給された洗浄水が通水する主給水路2と、陶器製の便器本体4と、洗浄水供給装置6と、を備えている。水洗大便器1は、主給水源W0から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する。
以下、本発明の一実施形態における説明において、水洗大便器1を使用する使用者側(水洗大便器1を使用するために水洗大便器1の前に立っている使用者側)から見て手前側を前方側とし、使用者から見て奥側を後方側とし、水洗大便器1を前方から見て右側を右側とし、前方から見て左側を左側として説明している。
【0016】
つぎに、
図1及び
図2に示すように、便器本体4は、汚物を受けるボウル部8と、このボウル部8の上縁に形成されるリム部10と、ボウル部8の底部から延びる排水トラップ部である排水トラップ管路12と、を備えている。
また、洗浄水供給装置6は、詳細については後述するが、便器本体4のボウル部8よりも後方側に設けられており、主給水路2から供給された洗浄水を便器本体4に供給可能にする機能部である。この機能部は、より具体的には、電力により作動し、便器本体4のボウル部8への洗浄水の吐止水を制御する機能を含む。
【0017】
ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面9と、汚物受け面9の上縁に形成されたリム部10と、汚物受け面9とリム部10とを結ぶように全周に設けられた棚面11と、を備えている。棚面11は、汚物受け面9とリム部10との間に平坦面として形成され、内向きにやや下り傾斜を形成している。棚面11は、リム部10の内側でリム部10と並ぶようにほぼ平行に延びる。従って、棚面11は、後述する右側直線部50a及び左側直線部50bの内側においては直線状部分を形成し、後述する前方側及び後方側の円弧部52の内側においては円弧状部分を形成している。
【0018】
つぎに、
図2及び
図3に示すように、ボウル部8のリム部10は、洗浄水源から供給される洗浄水をボウル部8内に吐水してボウル部8内に旋回流を形成するリム吐水部14を備えている。リム吐水部14は、便器本体4のボウル部8の左右の何れか一方の側(例えば便器本体4を前方側から見て右側)のリム部10に設けられている。また、リム吐水部14は、供給された洗浄水が通水するリム通水路46を形成すると共に、このリム通水路46の下流端に洗浄水を後方に向けて吐水するリム吐水口部48を形成している。リム通水路46は、リム部10の内部のリム導水路を形成している。リム通水路46は、は、便器本体4の左右一方側(例えば、便器本体4を前方側から見て右側)のリム部10の内部において、便器本体4の後方側から前方に向かって延びた後、その途中から後方側に向かって屈曲する、いわゆる、Uターン形状となっている。さらに、リム通水路46の上流側には、詳細は後述する洗浄水供給装置6のリム側給水路2aが接続されている。このリム側給水路2aからリム通水路46に供給された洗浄水は、リム吐水口部48から後方に向けてボウル部8内に吐出され、リム吐水が行われるようになっている。
【0019】
つぎに、
図1及び
図2に示すように、便器本体4のボウル部8の外側面から底部にかけてジェット導水路16が形成されている。このジェット導水路16の下流側は、ボウル部8の底部における排水トラップ管路12の入口部12aに向かって指向しており、ジェット導水路16の下流端には、ジェット吐水口16aが設けられている。
また、便器本体4のジェット導水路16の上流側には、詳細は後述する洗浄水供給装置6のジェット側給水路2bが設けられている。このジェット側給水路2bから便器本体4のジェット導水路16に供給された洗浄水は、ジェット吐水口16aから排水トラップ管路12に向けて吐出され、ジェット吐水が行われるようになっている。
ここで、
図1に示すように、洗浄水供給装置6のリム側給水路2aの上流側は、主給水路2の分岐部Bの切替弁18(詳細は後述する)に接続されている。
一方、
図1に示すように、洗浄水供給装置6のジェット側給水路2bの上流側は、洗浄水供給装置6の貯水タンク20の下流側に設けられた洗浄水供給装置6の加圧ポンプ22(詳細は後述する)に接続されている。
【0020】
つぎに、便器本体4の排水トラップ管路12は、ボウル部8の下方に接続され汚物を排出する排水路を形成する。排水トラップ管路12は、ボウル部8の底部に設けられた入口部12aと、この入口部12aから上昇するトラップ上昇管12bと、このトラップ上昇管12bから下降するトラップ下降管12cとからなり、トラップ上昇管12bとトラップ下降管12cとの間が頂部12dとなっている。また、
図1に示すように、排水トラップ管路12のトラップ下降管12cの出口部12eは、便器本体4の後方かつ下方に配置された排水ソケットSの入口部に接続されている。さらに、
図1に示すように、排水ソケットSの後方側の出口部は、便器本体4の後方の壁(図示せず)側から延びる排水管Dの入口部に接続されている。汚物受け面9と排水トラップ管12の連結部の上方に溜水が形成されている。なお、本実施例では、排水トラップ管路12から水洗大便器1の後方の壁の排水管Dに排水する態様が示されているが、壁排水に限定されず、床に排水する排水ソケットを接続し、床に設けられた排水管へ排水してもよい。
【0021】
つぎに、
図1により、本実施形態による水洗大便器1の洗浄水供給装置6の各構成について概略的に説明する。
まず、
図1に示すように、洗浄水供給装置6は、主給水路2の上流側から下流側に向かって、止水栓24、分岐金具26、バルブユニット28、及び、切替弁18をそれぞれ備えている。
つぎに、バルブユニット28は、定流量弁30、ダイヤフラム式の主弁32、及び、ソレノイドバブル等の電磁弁34をそれぞれ備えている。
また、洗浄水供給装置6は、コントローラ36を備えている。コントローラ36は、CPU等の演算装置及びメモリ等の記憶装置を内蔵し、所定の制御プログラム等に基づいて電気的に接続された機器の制御を行うことができる。本実施形態においては、コントローラ36は、バルブユニット28の開閉弁(電磁弁34)の開閉操作、切替弁18の切替操作、及び、加圧ポンプ22の回転数や作動時間等を制御する制御部として機能することができるようになっている。
【0022】
さらに、バルブユニット28の定流量弁30は、主給水路2における止水栓24から分岐金具26を通過した洗浄水について、所定の流量以下に絞るためのものである。
ちなみに、分岐金具26においては、水洗大便器1に対して局部衛生洗浄装置(図示せず)が設けられた形態では、局部衛生洗浄装置(図示せず)に洗浄水を供給するための給水管(図示せず)が接続可能にもなっている。
さらに、バルブユニット28においては、電磁弁34がコントローラ36の制御により開弁操作されると、主弁32が開弁し、定流量弁30から主弁32を通過した洗浄水が、主給水路2の下流側の分岐部Bの切替弁18に供給されるようになっている。
ここで、切替弁18は、主給水路2の洗浄水をリム側給水路2aとタンク側給水路2cの双方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であり、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更することができるようになっている。
【0023】
つぎに、洗浄水供給装置6は、主給水路2から供給された洗浄水を便器本体4に供給可能にするタンク装置Tを備えている。このタンク装置Tは、便器本体4の後方に連結されて主給水路2から供給された洗浄水を貯水する貯水タンク20と、この貯水タンク20内の洗浄水を便器本体4に圧送する加圧ポンプ22と、を備えている。
さらに、主給水路2の下流側の分岐部Bの下流側には、便器本体4のリム通水路46に連通するリム側給水路2a、及び、貯水タンク20に接続されるタンク側給水路2cがそれぞれ設けられている。
これにより、主給水源W0から主給水路2の分岐部Bに供給された洗浄水は、リム側給水路2aへのリム給水及びタンク側給水路2cへのタンク給水の少なくともいずれか一方の給水として利用されるようになっている。
【0024】
また、洗浄水供給装置6には、タンク側給水路2cの下流側から加圧ポンプ22まで延びるポンプ給水路2d、及び、加圧ポンプ22から下流側に延びるジェット側給水路2bがそれぞれ設けられている。
これらにより、本実施形態の水洗大便器1では、主給水路2から供給された水道直圧の洗浄水が、洗浄水供給装置6のリム側給水路2aから便器本体4のリム通水路46を経てリム吐水口部48に供給され、リム吐水口部48からの吐水(いわゆる、「リム吐水」)が可能になっている。
さらに、主給水路2から洗浄水供給装置6に供給された洗浄水は、洗浄水供給装置6のタンク側給水路2c、貯水タンク20、ポンプ給水路2d及び加圧ポンプ22を経た後、ジェット側給水路2bから便器本体4のジェット導水路16を経てジェット吐水口16aに供給され、ジェット吐水口16aからの吐水(いわゆる、「ジェット吐水」)が可能になっている。
すなわち、本実施形態の水洗大便器1は、主給水路2から供給された水道直圧の洗浄水によるリム吐水と、貯水タンク20から加圧ポンプ22により加圧された洗浄水によるジェット吐水とを併用することができる、いわゆる、ハイブリット式の水洗大便器1として機能するようになっている。
【0025】
つぎに、貯水タンク20の内部には、上側フロートスイッチ38及び下側フロートスイッチ40がそれぞれ配置されている。これらのフロートスイッチ38,40により貯水タンク20内の水位を検出することができるようになっている。
例えば、上側フロートスイッチ38は、貯水タンク20内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、この上側フロートスイッチ38のオン状態をコントローラ36が検知して、電磁弁34を閉弁させるようになっている。
一方、下側フロートスイッチ40においては、貯水タンク20内の水位が、上側フロートスイッチ38が検知する所定の貯水水位よりも低い所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、この下側フロートスイッチ40のオン状態をコントローラ36が検知して、加圧ポンプ22を停止させるようになっている。
また、加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水をポンプ給水路2dに吸引し、このポンプ給水路2dから洗浄水をジェット側給水路2bに加圧することにより、ジェット吐水口16aから吐出させるためのものである。
【0026】
これらの構造により、通常の便器洗浄時においては、コントローラ36が、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作等を検知し、電磁弁34、切替弁18、加圧ポンプ22を順次作動させるようになっている。
これにより、リム吐水口部48及びジェット吐水口16aからの吐水が順次開始されて、ボウル部8内を洗浄した洗浄水は、ボウル部8内の汚物と共に排水トラップ管路12から排出されるようになっている。
さらに、コントローラ36は、洗浄終了後、電磁弁34を開放し、切替弁18がタンク側給水路2c側に切り替えられ、主給水路2内の洗浄水が貯水タンク20に補給されるようになっている。
そして、貯水タンク20内の水位が上昇し、上側フロートスイッチ38が規定の貯水量を検出すると、コントローラ36が電磁弁34を閉弁させることにより、主弁32が主給水路2を閉鎖し、給水が停止されるようになっている。
また、これらの洗浄水供給装置6(機能部)の各機器は、便器本体4のボウル部8よりも後方側の領域内における後方機能収納部V0(
図2参照)に収納されるようになっている。
【0027】
つぎに、
図1~
図3を参照して、本実施形態による水洗大便器1の便器本体4におけるボウル部8の構造について具体的に説明する。
ボウル部8のリム部10は、上面視でボウル部8の右側及び左側において並ぶようにほぼ同じ方向に向けて配置された直線部50と、直線部50の前端部及び後端部においてボウル部8の右側及び左側の直線部50を繋ぐ円弧部52とを備えている。
【0028】
リム部10の直線部50は、上面視で、ボウル部8の右側において前後方向に直線状に延びる右側直線部50aと、ボウル部8の左側において前後方向に直線状に延びる左側直線部50bとを備える。右側直線部50a及び左側直線部50bは、それぞれ、前方側の円弧部52と直線部50との連結部分62と、後方側の円弧部52と直線部50との連結部分62との間に配置されている。連結部分62は、円弧状の円弧部52と直線状の直線部50とを連結する曲率変化部分を形成している。なお、直線部50は、ボウル部8の右側及び左側において互いに略平行に延びている。直線部50は、ボウル部8の右側及び左側において同じ長さで並ぶように形成されていなくてもよい。リム部10の直線部50は、直線状に形成されるため棚面11に乗った洗浄水が、リム部10の直線部50などに衝突することによる水撥ねやエネルギー損失を生じることを抑えることができ、ボウル部8に比較的強力な洗浄水の流れを形成するように洗浄水を吐水することができる。直線部50は、直線状であることが好ましいが、洗浄水がリム部10の直線部50などに衝突し水撥ねなどが生じない程度に湾曲していても、大凡の直線状であればよい。
【0029】
また、
図3に示すようなリム吐水部14の中央近傍の高さの水平断面において、リム部10の直線部50は、リム吐水口部48よりも前側且つ便器本体内側において前後方向に延びる右側前側直線部50cと、リム吐水口部48よりも後側且つ便器本体外側において前後方向に延びる右側後側直線部50dとを備えている。リム吐水口部48は、便器本体4の中央(ボウル部8を前後方向に二等分するように左右方向に延びる中心横断線E)より後方側の便器本体4の後方領域に設けられている。
【0030】
右側前側直線部50cと右側後側直線部50dとは互いに並ぶように配置されている。右側前側直線部50cと右側後側直線部50dとは互いに略平行に延びている。右側直線部50aにおいて後方向きにリム吐水口部48が形成されるため右側前側直線部50cと右側後側直線部50dとが内側と外側に段状に並ぶようにずれて形成される。右側前側直線部50cと右側後側直線部50dとは前後にずれて配置されており、右側前側直線部50cと右側後側直線部50dとは同じ長さで並ぶように形成されていなくてもよい。右側前側直線部50c及び右側後側直線部50dは概ね前後方向に延びる右側直線部50aを形成している。右側前側直線部50c及び右側後側直線部50dは左側直線部50bと並ぶように略平行に延びている。また、右側前側直線部50c及び右側後側直線部50dは、便器本体4の前後方向の中央断面Cとも並ぶように略平行に延びている。さらに、右側前側直線部50c及び右側後側直線部50dは、後述するリム通水路46の外側部56及び内側部60のそれぞれとも並ぶように略平行に延びている。
【0031】
円弧部52は、概ね一つの曲率半径によって規定される単一の円弧として規定されている。右側直線部50aの前方側の連結部分62と、左側直線部50bの前方側の連結部分62との間で円弧部52が前方側に突出するように形成されている。また、右側直線部50aの後方側の連結部分62と、左側直線部50bの後方側の連結部分62との間で円弧部52が後方側に突出するように形成されている。円弧部52は、主として一つの曲率半径によって規定される単一の円弧として規定され、両端部が別の曲率半径によって規定される別の円弧として規定されてもよい。このように、円弧部52は、一部が別の曲率半径によって規定される別の円弧として規定され、複合的な円弧として形成されていてもよい。また、円弧部52は、全体が複数の曲率半径によって規定される複数の円弧により規定されてもよい。また、円弧部52は、前方側の円弧部のみが上述のような所定の円弧として規定されていてもよい。なお、直線部50の前後方向の長さよりも、直線部50と円弧部52の連結部分62から円弧部52の前端(又は後端)までの前後方向の長さ(円弧部52の半径)は、長く形成されている。直線部50の長さよりも円弧部52の半径を長くすることにより、直線部50から円弧部52に洗浄水が流れる場合に変化が緩やかになるため、直線部50から円弧部52へ流れる洗浄水の飛びちりを抑えることができる。また、前方の円弧部52の半径(直線部50と前方側の円弧部52の連結部分62から前方の円弧部52の前端までの前後方向の長さ)よりも後方の円弧部52の半径(直線部50と後方側の円弧部52の連結部分62から後方の円弧部52の後端までの前後方向の長さ)の方が長くなっており、立位での排泄や座位での排泄において、後方側のボウル面が広いため排泄時の安心感を増すことができる。
【0032】
リム通水路46は、リム部10の内部を前方に向けて延びる外側部56と、外側部56の下流端から内側に屈曲する屈曲部58と、屈曲部58から後方に向かってリム吐水口部48まで延びる内側部60とを備える。
【0033】
外側部56は便器本体4の後方領域から便器本体4の中央(ボウル部8を前後方向に二等分するように左右方向に延びる中心横断線E)より前方側の前方領域まで延びている。外側部56は内側部60よりも外側に位置する流路を形成している。
図5に示すように、外側部56の外側部分外側壁56aと、外側部分内側壁56bとは、並ぶように略平行に延び両側壁の間隔はほぼ一定とされている。外側部56の天井面と底面ともほぼ並ぶように略平行に形成され、外側部56内の流路断面積は外側部56においてほぼ一定に保たれるようになっている。外側部56は前後方向に直線状に延びる流路を形成している。外側部56は、屈曲部58に接続する屈曲部側直線部56cを備える。屈曲部側直線部56cは少なくとも屈曲部58まで直線状に延びる流路を形成する。屈曲部側直線部56cは、屈曲部58に至る直前の洗浄水の流れを直線状に整流させることができる。
【0034】
屈曲部58は、後方から延びる外側部56と、再び後方に向けて延びる内側部60とを接続するように上面視でU字状の流路を形成している。よって、屈曲部58は、後方から流入する洗浄水の流れを後方に向けて流出させるように形成される。屈曲部58は、直線部50と直線部50の前方側の円弧部52との連結部分62より後方側に設けられている。よって、屈曲部58は、直線状に延びているリム部10内においてUターン形状に形成される。よって、屈曲部58のUターン形状が湾曲しているリム部10内においていびつに形成され圧力損失を増大させることを抑制できる。屈曲部58は、便器本体4の中心横断線Eより前方側の前方領域に位置している。
【0035】
図4に示すように、屈曲部58は、上面視で内側部60と外側部56との間に設けられた中間部66から中間部66の延びる方向側において最も離れた頂部68を備える。頂部68は、中間部66の延びる方向側に最も突出した頂部を形成している。頂部68は中間部66の中心に沿って延ばされた仮想中心線Fよりも外側部56側に形成されている。頂部68は中間部66よりも外側に形成されている。頂部68は、上面視で弧形状に形成される。頂部68は、上面視で中間部66と対向する壁面上に形成される。中間部66の屈曲部58側の端部66aも、上面視で弧形状に形成される。中間部66の屈曲部58側の端部66aの曲率半径は、頂部68の曲率半径よりも小さい。これにより、頂部68において曲げられた洗浄水が、矢印F1に示すように頂部68から中間部66の端部66aに向けて戻る流れが、矢印F2に示すように中間部66の内側部60側の面66bから剥離することにより圧力損失を生じて水勢が弱まったり流れの乱れを生じたりすることをさらに抑制し、矢印F3に示すように中間部66の内側部側の面66bに沿って流れることができる。
【0036】
リム通水路46の外側部56は、中間部66よりも前方側まで延びるように形成されると共に、外側部56は、内側部60よりも前方側まで延びるように形成される。外側部56の外側部分外側壁56aは、中間部66の端部66aよりも前方側まで直線状の壁面を形成し、外側部56を形成している。一方、内側部60の内部内側壁60bは、中間部66の端部66aの近傍まで直線状の壁面を形成している。このように、外側部56が、中間部66よりも前方側まで一旦延びてから、屈曲部58が形成されることにより、頂部68から中間部66の端部66aに向けて戻る流れが、中間部66の内側部側の面66bと成す角が比較的小さな鋭角となり、この内側部側の面66bから剥離しにくくできる。また、外側部56が中間部66よりも前方側まで延びるように形成されていない場合と比べて、外側部56が、中間部66よりも前方側まで一旦延びてから曲がるので屈曲部58の流路断面積を比較的大きく形成しやすくできる。これにより、外側部56から内側部60に向けて流路の幅がより広がり且つ流路断面積がよりおおきくなるように変化する際に、外側部56から屈曲部58への流路断面積の変化を抑制でき、また、屈曲部58中の、屈曲部58から内側部60への流路断面積の変化を抑制できる。よって、外側部56から屈曲部58を介して内側部60に至る流路断面積の変化を抑制できる。例えば、
図5に示すような外側部56の流路断面積と、
図6に示すような屈曲部58の流路断面積との間の変化が比較的小さくなっており、さらに、
図6に示すような屈曲部58の流路断面積と、
図7に示すような屈曲部58の流路断面積との間の変化が比較的小さくなっている。このようにして、外側部56から屈曲部58にかけての流路断面積の変化を比較的小さくしている。
【0037】
内側部60は便器本体4の前方領域から便器本体4の中心横断線Eより後方側の後方領域まで延びている。内側部60は便器本体4の中央近傍まで延びている。内側部60の内部外側壁60aと、内部内側壁60bとは、並ぶように略平行に延び両側壁の間隔はほぼ一定とされている。内側部60の天井面と底面ともほぼ並ぶように略平行に形成され、内側部60内の流路断面積は内側部60においてほぼ一定に保たれるようになっている。内側部60の上面視における横幅W1は、外側部56の上面視における横幅W2よりも大きい。内側部60は前後方向に直線状に延びる流路を形成している。内側部60は、リム吐水口部48に接続する吐水部側直線部60cを備える。吐水部側直線部60cは少なくともリム吐水口部48まで直線状に延びる流路を形成する。吐水部側直線部60cは、リム吐水口部48に至る直前の洗浄水の流れを直線状に整流させることができる。内側部60は例えば、40mm~60mmの範囲内の長さに形成される。なお、内側部60は中心横断線Eより前方側の前方領域までで終端するように延びていてもよい。
【0038】
リム吐水口部48は、単一のリム吐水部としてリム部10の内周面に1つのみ形成され、直線部50において直線部50の延びる方向に向かってボウル部後方へ吐水するように形成される。リム吐水口部48は、内側部60の後方端部分の開口を形成する。リム吐水口部48の開口方向は、内側部60の吐水部側直線部60cの流路の延びる方向とほぼ同じ方向である。右側後側直線部50dは、内側部60の内部外側壁60aの後方に同一直線上に位置し、ほぼ面一に内部外側壁60aと接続されている。よって、洗浄水が、リム吐水口部48から流出する際に内部外側壁60aから右側後側直線部50dに沿って直線的に流出することができる。右側後側直線部50dは、内側部60の内部内側壁60bと並ぶように略平行に延びている。よって、直線状に吐水される洗浄水の乱れを抑制できる。右側後側直線部50dは、例えば、100mm~120mmの範囲内の長さに形成される。
【0039】
ボウル部8は、さらに、リム吐水口部48の後方側においてリム吐水口部48から、直線部50、例えば右側後側直線部50dの延びる方向に延びるリム吐水部通水路64を備えている。
図1に示すように、リム吐水部通水路64の天井面64aは、ボウル部8の内側から外側に向けてオーバハング状に形成され、リム吐水部通水路64は、ボウル部8の内側の開口部分から外側の壁面に向けてコの字状に切り欠くようにコの字状の切欠き形状通路として形成される。リム吐水口部48の下流側のリム吐水部通水路64は、オーバハング状に形成されているため、吐水された洗浄水の水跳ねを抑えて洗浄水を棚面11へ流すようになっている。言い換えるとリム吐水口部48の下流側に棚面11と同一の高さでオーバハング部に囲まれたリム吐水部通水路64が設けられている。
リム吐水口部48が設けられていない左側直線部50bの前後方向の長さ(前後の連結部分62の間の左側直線部50bの前後方向の長さ)よりも右右側後側直線部50dは、短く形成されており、オーバハング状に形成されたリム吐水部通水路64内に円弧部52との連結部分62が設けられている。上面視では、右側後側直線部50dと円弧部52との連結部分62は、及び左側直線部50bと円弧部52との連結部分62と、中央断面Cを挟んで左右方向にほぼ対称に形成されているが、右側後側直線部50dと円弧部52との連結部分62は、右側直線部50aと円弧部52との連結部分62よりも前方側に配置されている。そのため、リム吐水部48から吐水されてすぐの強力な洗浄水が、オーバハング状のリム吐水部通水路64内で連結部分62の曲率変化部へ衝突するため、ボウル部8の外への水跳ねを抑制することができる。また、リム吐水部通水路64内に形成された円弧部は、後方側の円弧部52よりも緩やかな曲率半径を備え、右側後側直線部50dからリム吐水部通水路64内の円弧部を経由して後方側の円弧部52に洗浄水を旋回させるため、エネルギー損失や水撥ねを低減しながら洗浄水を旋回させることができる。
【0040】
次に、
図8及び
図9により、ボウル部8の棚面11の構造等について詳細に説明する。
図8は本発明の実施形態による水洗大便器のボウル部及び棚部を示す平面図であり、
図9は本発明の実施形態による水洗大便器の棚部における洗浄水の流れを説明するための棚部の概略平面図である。
【0041】
先ず、
図8に示すように、ボウル部8の棚面11は、上面視で、ボウル部8の右側及び左側において平行に延びる右側直線部40a及び左側直線部40bと、これらの右側及び左側直線部40a,40bの前端に接続された前方円弧部42と、右側直線部40aと左側直線部40bの後端に接続された後方円弧部44とにより形成されている。
具体的には、右側直線部40aの前端と前方円弧部42は連結部46aにより連結され、右側直線部40aの後端と後方円弧部44は、連結部46bにより連結され、後方円弧部44と左側直線部40bの後端は連結部46cにより連結され、左側直線部40bの前端は前方円弧部42と連結部46dにより連結されている。
【0042】
ここで、前方円弧部42と後方円弧部44は、両者ともに、単一の曲率半径R1により形成されている。
なお、これらの前方円弧部42と後方円弧部44は、複数の曲率半径を組み合わせて形成するようにしてもよい。
【0043】
より具体的に説明すると、
図8に示すように、ボウル部8の棚面11は、前部側及び後部側のそれぞれにおいて、前後方向に延びる中心線C1(中央断面C)に対して左右略対称の形状であり、さらに、左右の幅方向に延びる略中心線C2に対して前後略対称の形状となっている。また、前方円弧部42は、中心O1を持つ単一の半径R1の半円形状となっており、同様に、後方円弧部44は、中心O2を持つ単一の半径R2の半円形状となっている。
【0044】
さらに、
図8において、位置Aはボウル部8の前端であり、位置Bはボウル部8の前端と右側直線部40aの前端との中間位置であり、位置Cは右側直線部40aの前端であり、位置Dは、右側直線部40aの中間位置であり、位置D1はリム吐水口部48の位置であり、位置Dと位置D1はほぼ同じ位置にある。位置Eは右側直線部40aの後端であり、位置Fは右側直線部40aの後端とボウル部8の後端との中間位置であり、位置Gはボウル部8の後端であり、位置Hはボウル部8の後端と左側直線部40bの後端との中間位置であり、位置Iは左側直線部40bの後端であり、位置Jは左側直線部40bの中間位置であり、位置Kは左側直線部40bの前端であり、位置Lは左側直線部40bの前端とボウル部8の前端との中間位置である。そのため、位置Dと位置Jを結ぶ線が略中心線C2を形成し、位置Aと位置Gを結ぶ線が中心線C1を形成している。また、略中心線C2から位置Aまでの前後方向の長さよりも略中心線C2から位置Gまでの前後方向の長さが長くなっている。このため、立位での排泄や座位での排泄において、後方側のボウル面が広いため排泄時の安心感を増すことができる。位置Cから位置Eまでの前後方向の長さと位置Iから位置Kまでの前後方向長さは、略一定であり、位置C(I)から位置E(K)までの前後方向の長さに対して、位置Eから位置Gまでの前後方向の長さは、長く形成されている。また、位置C(I)から位置E(K)までの前後方向の長さに対して、位置Cから位置Aまでの前後方向の長さは、長く形成されている。言い換えると右(左)側直線部の長さよりも前方円弧部42、後方円弧部42の半径R1、R2は、長くなっている。右(左)側直線部が、半径R1、R2よりも長い場合は、半径R1、R2が比較的短くなり、直線部から円弧部に洗浄水が流れる場合に変化が急になるため、洗浄水が飛び散る可能性がある。それに対し、右(左)側直線部の長さよりも前方円弧部42、後方円弧部42の半径R1、R2を、長くすることにより、直線部から円弧部に洗浄水が流れる場合に変化が緩やかになるため、洗浄水の飛びちりを抑えることができる。
【0045】
次に、
図9により、ボウル部8の棚面11を流れる洗浄水の挙動について説明する。
図9に示すように、右側直線部40aから後方円弧部44に流れる洗浄水の流れをF11とし、後方円弧部44から左側直線部40bに流れる洗浄水の流れをF12とし、左側直線部40bから前方円弧部42に流れる洗浄水の流れをF13とし、前方円弧部42から右側直縁部40aに流れる洗浄水の流れをF14とする。
【0046】
ここで、棚面11の右側直線部40aと左側直線部40bを流れる洗浄水は、流路抵抗が少ないので汚物受け面8に流下し難く、一方、前方円弧部42及び後方円弧部44を流れる洗浄水は、流れの方向が変化して流れが乱れるのでこの流れの乱れにより汚物受け面8に流下し易くなる。遠心力の影響よりも流れの乱れの影響の方が大きくなっている。
そのため、円弧部から直線部に流れる洗浄水の流れF12及びF14においては、洗浄水が棚面11から流下し難く、一方、直線部から円弧部に流れる洗浄水の流れF11及びF13においては、洗浄水が棚面11から流下し易くなる。このような洗浄水の挙動により、円弧部から直線部に洗浄水が流れる領域X1及び領域X2において、汚物受け面に不洗部が生じ易くなる。
【0047】
ここで、ボウル部8の後方領域(領域X2を含む)においては、リム吐水口部48が後方吐水をしており、位置D1に設けられているため、リム吐水口部48から比較的距離が近いので、洗浄水の勢いが強く乱れが大きいので後方円弧部44から洗浄水が流下し易いので不洗部は生じ難い。一方、ボウル部8の前方領域(領域X1を含む)においては、洗浄水の勢いが小さく乱れも少ないので、洗浄水は前方円弧部42から流下し難く、そのため、不洗部が生じ易い。本実施形態においては、
図9の領域X1、即ち、前方円弧部42から右側直線部40aに位置する棚面11に、リム吐水口部48に向かって上昇する傾斜面(上昇面)49が形成されている。このように、棚面11に上昇面49を形成したので、洗浄水の流速が低下し、それにより、リム吐水口部48(又は右側直線部40aの中央位置D)の領域にある棚面11の下方になる汚物受け面8に不洗部が生じるのを抑制することができる。
【0048】
つぎに、
図3及び
図4を参照して、本発明の一実施形態によるリム通水路46内の洗浄水の動作(作用)について説明する。
リム側給水路2aからリム通水路46に供給された洗浄水は、リム通水路46の外側部56内を前方側に向けて流れる。外側部56は前方側に向けて直線状に延びているので、洗浄水は、外側部56に沿って整流され、直線状に流れる。外側部56から外側部56の前方に位置する屈曲部58の頂部68に当たる洗浄水は、頂部68に沿って比較的なめらかに曲がり、中間部66側に折り返される。このとき、矢印F1に示すように頂部68から中間部66の端部66aに向けて戻る流れが、中間部66の内側部側の面66bに対してなす角αが鋭角になりやすく、矢印F1に示すような流れが面66bに対して沿いやすくできる。従って、中間部66の内側部60側において矢印F2に示すような洗浄水の剥離を抑制でき、矢印F3に示すような面66bに沿うような流れを形成しやすくできる。これにより、内側部60内及びさらに下流側においても、比較的強力且つ整流された流れを形成しやすくできる。
なお、仮にこのような屈曲部58の頂部68が所定の位置に形成されていない場合には、頂部68に沿って曲がり、中間部66側に折り返される流れが形成されにくくなる、又は洗浄水が中間部66の端部66aの周りを回り込む際に、中間部66の内側部60側の面66bから剥離する流れが形成されやすくなり、流れが面66bに沿いにくくなり、内側部60内において洗浄水の流れが乱れやすくなる。本実施形態においては、屈曲部58に所定の位置及び形状で頂部68が形成されることにより、このような洗浄水の乱れを低減することができ、所望の有利な効果を得ることができる。
【0049】
つぎに、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1における作用について説明する。
まず、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、リム部10が、上面視でボウル部8の右側及び左側において並ぶように配置された直線部50と、直線部50の前端部及び後端部においてボウル部8の右側及び左側の直線部50を繋ぐ円弧部52と、を備えるボウル部8において、リム吐水口部48は、リム部10に1つ形成され、直線部50において直線部50の延びる方向に向かってボウル部8後方へ吐水するように形成される。
これにより、リム部10に1つ形成されるリム吐水口部48により比較的強力な旋回流をボウル部8内に形成するときに、リム吐水口部48から吐水された洗浄水が直線部50において直線部50の延びる方向に向かって整流されることができ、直線部50とこの直線部50の後方の円弧部52とを連結する曲率変化部分における水撥ねを抑制できる。よって、リム部10の並ぶように延びる直線部50と直線部50を繋ぐ円弧部52とを備えるボウル部8において、リム部10に1つ形成されるリム吐水口部48によりボウル部8後方へ吐水がされる場合にボウル部8からの水跳ねを抑制できる。
また、リム部10に1つ形成されるリム吐水口部48により比較的強力な旋回流をボウル部8内に形成でき、直線部50とこの直線部50の後方の円弧部52とを連結する曲率変化部分から広がるように流下する洗浄水によりボウル部8の後方の汚物受け面を洗浄すると共に、ボウル部8の後方から前方側まで周回する旋回流も形成できる。よって、リム部10の並ぶように延びる直線部50と直線部50を繋ぐ円弧部52とを備えるボウル部8において、リム部10に1つ形成されるリム吐水口部48によりボウル部8後方へ吐水する場合のボウル部8の洗浄性能を向上させることができる。
【0050】
つぎに、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、リム通水路46の外側部56、屈曲部及び内側部60によりリム部10の内部においてUターンするように屈曲されたリム通水路46が形成されることができ、リム吐水口部48までのリム通水路46の長さを比較的短くでき、洗浄水の水勢の低下を抑制でき、比較的強力な洗浄水の水勢を維持したままリム吐水口部48からの洗浄水の吐水を行い、ボウル部8の洗浄性能をより向上させることができる。
【0051】
また、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、リム通水路46の外側部56は、屈曲部58に接続する屈曲部側直線部56cを備えるので、外側部56が屈曲部58に接続する湾曲部を備えている場合に比べて、外側部56における洗浄水の圧力損失を低減でき、比較的強力な洗浄水の流れをリム吐水口部48まで供給できる。また、リム通水路46を通る洗浄水が屈曲部側直線部56cにより直線的に整流された状態で屈曲部58へ流入されるので、洗浄水が乱れた状態で屈曲部58へ流入される場合と比べて、屈曲部58における洗浄水の圧力損失を低減でき、比較的強力な洗浄水の流れをリム吐水口部48まで供給できる。
【0052】
さらに、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、リム通水路46の内側部60は、リム吐水口部48に接続する吐水部側直線部60cを備えるので、内側部60がリム吐水口部48に接続する湾曲部を備えている場合に比べて、内側部60における洗浄水の圧力損失を低減でき、比較的強力な洗浄水の流れをリム吐水口部48まで供給できる。また、リム通水路46を通る洗浄水が吐水部側直線部60cにより直線的に整流された状態でリム吐水口部48から吐水されるので、洗浄水が乱れた状態でリム吐水口部48から吐水される場合と比べて、より整流された状態の洗浄水を吐水でき、曲率変化部分における水撥ねをより抑制できる。また、洗浄水がより直線的に整流された状態でリム吐水口部48から吐水されるので、リム吐水口部48から吐水された洗浄水の圧力損失を低減でき、より強力な旋回流をボウル部8内に形成できる。
【0053】
さらに、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、屈曲部58は、直線部50と直線部50の前方側の円弧部52との連結部分62より後方側に設けられている。これにより、屈曲部58を直線部50と直線部50の前方側の円弧部52との連結部分62より前方側に設ける場合と比べて、屈曲部58を円弧部52側のリム部10内で屈曲させることなく、屈曲部58を直線部50側のリム部10内で屈曲させることができるので、屈曲部58の圧力損失を低減させることができる。また、屈曲部58を円弧部52側のリム部10内で屈曲させることにより円弧部52側のリム部10の幅が比較的大きく形成され、外観の美観が低下されることや、ボウル部8の汚物受け面等の大きさが縮小されること等が生じることを抑制できる。
【0054】
さらに、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、ボウル部8は、さらに、リム吐水口部48の後方側においてリム吐水口部48から直線部50の延びる方向に延びるリム吐水部通水路64を備え、リム吐水部通水路64の天井面は、ボウル部8の内側から外側に向けてオーバハング状に形成され、リム吐水部通水路64は、ボウル部8の内側から外側に向けて切り欠くように形成される。これにより、リム吐水口部48から吐水された洗浄水が、上方に水跳ねを生じることを天井面により抑制しながら、リム吐水部通水路64において直線部50の延びる方向に向かって整流でき、直線部50とこの直線部50の後方の円弧部52とを連結する曲率変化部分における水撥ねをより抑制できる。よって、リム部10の並ぶように延びる直線部50と直線部50を繋ぐ円弧部52とを備えるボウル部8において、リム部10に1つ形成されるリム吐水部によりボウル部8後方へ吐水する場合のボウル部8からの水跳ねをより抑制できる。
【符号の説明】
【0055】
1 水洗大便器
4 便器本体
8 ボウル部
9 汚物受け面
10 リム部
11 棚面
14 リム吐水部
46 リム通水路
48 リム吐水口部
50 直線部
52 円弧部
56 外側部
56c 屈曲部側直線部
58 屈曲部
60 内側部
60c 吐水部側直線部
62 連結部分
64 リム吐水部通水路
64a 天井面
66 中間部
66a 端部
66b 面
68 頂部
【手続補正書】
【提出日】2022-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
ボウル形状の汚物受け面と、上記汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、上記汚物受け面と上記リム部を結ぶように全周に設けられた棚面と、を備えた上記ボウル部を有し、
上記リム部は、
上面視で上記ボウル部の右側及び左側において配置された直線部と、
上記直線部の前端部及び後端部において上記ボウル部の右側及び左側の上記直線部を繋ぐ円弧部と、
上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記ボウル部内に吐水して上記ボウル部内に旋回流を形成するリム吐水部と、を備え、
上記リム吐水部は、供給された洗浄水が通水するリム通水路と、このリム通水路の下流端に形成され洗浄水を吐水するリム吐水口部と、を備え、
上記リム吐水口部は、上記リム部の一方の側の直線部に1つ形成され、上記直線部の延びる方向に向かって吐水するように形成されることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記リム通水路は、
上記リム部の内部を前方に向けて延びる外側部と、
上記外側部の下流端から内側に屈曲する屈曲部と、
上記屈曲部から後方に向かって上記リム吐水口部まで延びる内側部と、を備える、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記リム通水路の上記外側部は、上記屈曲部に接続する屈曲部側直線部を備える、請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記リム通水路の上記内側部は、上記リム吐水口部に接続する吐水部側直線部を備える、請求項2又は3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記リム通水路の上記屈曲部は、上記直線部と上記直線部の前方側の上記円弧部との連結部分より後方側に設けられている、請求項2乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記ボウル部は、さらに、上記リム吐水口部の後方側において上記リム吐水口部から上記直線部の延びる方向に延びるリム吐水部通水路を備え、上記リム吐水部通水路の天井面は、上記ボウル部の内側から外側に向けてオーバハング状に形成され、上記リム吐水部通水路は、上記ボウル部の内側から外側に向けて切り欠くように形成される、請求項1乃至5の何れか1項に記載の水洗大便器。