(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191489
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】送電装置および通信方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20221220BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20221220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/10
H02J7/00 301D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170865
(22)【出願日】2022-10-25
(62)【分割の表示】P 2019085795の分割
【原出願日】2019-04-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七野 隆広
(57)【要約】
【課題】受電装置にリーダライタが実装されている場合の、無線電力伝送システムにおける受電装置と送電装置の好適な協調動作を実現する技術を提供する。
【解決手段】送電装置(100)から無線で電力を受電する受電装置(102)は、送電装置と通信する第一通信部(204)と、近距離無線通信が可能な他の装置の検出を実行する第二制御部(210)と、第二制御部による検出を実行するか否かを制御する第一制御部(201)を有する。第一制御部は、送電装置が検出機能を有していないと判断された場合であって、第二制御部による他の装置の検出状態が確定していない場合には第二制御部による検出を実行し、検出状態が確定している場合には第二制御部による検出を実行しないように制御する。第一通信部は、第二制御部の検出の結果に応じた信号を送電装置に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から無線で電力を受電する受電装置であって、
前記送電装置と通信する通信手段と、
近距離無線通信が可能な他の装置の検出を実行する検出手段と、
前記送電装置が前記他の装置を検出する検出機能を有するか否かを判断する判断手段と、
前記検出手段による前記検出を実行するか否かを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記判断手段により前記送電装置が前記検出機能を有していないと判断された場合であって、前記検出手段による前記他の装置の検出状態が確定していない場合には前記検出手段による検出を実行し、前記検出手段による前記検出状態が確定している場合には前記検出手段による検出を実行しないように制御し、
前記通信手段は、前記検出手段による検出の結果に応じた信号を前記送電装置に送信することを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記制御手段の制御によって前記検出手段が実行した前記検出の結果を、検出状態として保持する保持手段を有し、
前記保持手段は、保持している前記検出状態が前記制御手段により参照されたことに応じて、前記検出状態を消去することを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
送電装置の識別情報を取得する取得手段をさらに備え、
前記保持手段は、前記検出手段による検出が実行された場合に、その実行の前後で前記取得手段により取得された識別情報が一致しない場合は、保持されている検出状態を消去することを特徴とする請求項2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記検出手段が前記検出を実行する場合に、電力の送電を所定時間にわたって制限するように、前記通信手段を用いた通信により前記送電装置に要求する第一の要求手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項5】
前記第一の要求手段は、前記所定時間にわたって前記送電装置による電力の送電を停止することを要求することを特徴とする請求項4に記載の受電装置。
【請求項6】
前記第一の要求手段は、前記送電装置による送電電力の最大値を所定値以下に制限することを要求することを特徴とする請求項4に記載の受電装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記送電装置が前記検出機能を有していると判断された場合は、前記検出手段による前記検出を実行させないことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項8】
前記判断手段は、前記送電装置が前記検出機能を有している場合に、前記通信手段を用いて前記送電装置と通信することにより、前記送電装置において前記検出機能による検出状態を判断し、
前記制御手段は、前記検出機能による検出状態が未確定の場合に、前記検出手段に検出を実行させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記検出を実行する場合に、前記送電装置が前記検出機能を実行することを所定時間にわたって制限するように前記送電装置に要求することを特徴とする請求項8に記載の受電装置。
【請求項10】
前記制御手段が前記検出手段に検出を実行させて他の装置を検出した場合、または、前記判断手段により前記送電装置の前記検出機能が他の装置を検出したと判断された場合に、前記通信手段を用いて前記送電装置に送電を制限することを要求する第二の要求手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項11】
前記第二の要求手段は、前記送電装置による送電の停止を要求することを特徴とする請求項10に記載の受電装置。
【請求項12】
前記第二の要求手段は、無線により送電される電力の最大値を所定値以下に変更することを要求することを特徴とする請求項10に記載の受電装置。
【請求項13】
前記第二の要求手段は、他の装置が検出されたことを示す情報を前記要求に含めることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項14】
受電装置へ無線で電力を送電する送電装置であって、
前記受電装置と通信する通信手段と、
近距離無線通信することが可能な機能を有する他の装置を検出する検出手段と、
前記検出手段を有していることを示す情報と、前記検出手段による他の装置の検出状態を示す情報とを、前記受電装置からの問い合わせに応じて、前記通信手段を用いて前記受電装置へ通知する通知手段と、を備えることを特徴とする送電装置。
【請求項15】
無線電力伝送システムであって、
無線で電力を送電する送電装置と、
前記送電装置から無線で電力を受電する受電装置と、
前記送電装置と前記受電装置の間の通信を行う通信手段と、を備え、
前記受電装置は、
近距離無線通信が可能な他の装置の検出を実行する検出手段と、
前記送電装置が前記他の装置を検出する検出機能を有するか否かを判断する判断手段と、
前記検出手段による前記検出を実行するか否かを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記判断手段により前記送電装置が前記検出機能を有していないと判断された場合であって、前記検出手段による前記他の装置の検出状態が確定していない場合には前記検出手段による検出を実行し、前記検出手段による前記検出状態が確定している場合には前記検出手段による検出を実行しないように制御し、
前記通信手段は、前記検出手段による検出の結果に応じた信号を前記送電装置に送信することを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項16】
送電装置から無線で電力を受電する受電装置であって、前記送電装置と通信する通信手段を備える受電装置の制御方法であって、
近距離無線通信が可能な他の装置の検出を実行する検出工程と、
前記送電装置が前記他の装置を検出する検出機能を有するか否かを判断する判断工程と、
前記検出工程における前記検出を実行するか否かを制御する制御工程と、を備え、
前記制御工程では、前記判断工程により前記送電装置が前記検出機能を有していないと判断された場合であって、前記検出工程による前記他の装置の検出状態が確定していない場合には前記検出工程による検出を実行し、前記検出工程による前記検出状態が確定している場合には前記検出工程による検出を実行しないように制御し、
前記通信手段により、前記検出工程による検出の結果に応じた信号を前記送電装置に送信することを特徴とする受電装置の制御方法。
【請求項17】
受電装置へ無線で電力を送電する送電装置であって、前記受電装置と通信する通信手段を備える送電装置の制御方法であって、
近距離無線通信することが可能な機能を有する他の装置を検出する検出工程と、
前記検出工程を実行する機能を有していることを示す情報と、前記検出工程による他の装置の検出状態を示す情報とを、前記受電装置からの問い合わせに応じて、前記通信手段を用いて前記受電装置へ通知する通知工程と、を備えることを特徴とする送電装置の制御方法。
【請求項18】
コンピュータを、請求項1乃至13のいずれか1項に記載された受電装置、または、請求項14に記載された送電装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置、送電装置およびそれらの制御方法、無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。無線電力伝送システムを構成する送電装置および受電装置のための規格として、非接触充電規格の標準化団体WPCが策定する規格(以後、WPC規格と言う)がある。なお、WPCは、Wireless Power Consortiumの略である。一方、近距離無線通信のための規格として、NFC規格が知られている。NFCは、Near Field Communicationの略である。
【0003】
NFC規格において、搬送波を送電し当該搬送波に変調をかけることで、通信相手となる機器を検出する為のメッセージを送信することポーリング(polling)と言う。ポーリングは、NFC規格のリーダライタという機能を有する装置により送信される。また、リーダライタが送信するポーリングを受信し、リーダライタが送電する搬送波に負荷変調をかけてこのポーリングに応答する機能を有する機器をNFCタグと言う。
【0004】
特許文献1では、NFC規格準拠のリーダライタ機能を有し、WPC規格に準拠した送電装置が行うポーリングに対して、NFCタグ機能を有するWPC規格準拠の受電装置が応答を送信する構成が記載されている。特許文献1では、無線電力とNFC通信(ポーリングおよび応答)が干渉することで生じるNFC通信の不具合を回避する為に、送電装置がNFC通信を行うときに無線電力を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
送電装置にNFCタグが近接している状態で無線電力伝送が実行されると、送電装置から出力される送電電力によってNFCタグがダメージを受ける可能性がある。特許文献1のように、送電装置がリーダライタ機能を有していれば、送電装置がポーリングによりNFCタグの存在を検出し、送電する電力を制限することでNFCタグが被るダメージを回避できる。同様に、受電装置がリーダライタ機能を有していれば、送電装置がリーダライタ機能を有していなくても、NFCタグの有無に応じて無線電力伝送を適切に制御することができる。しかしながら、受電装置にリーダライタ機能が実装された場合において、NFCタグへのダメージを回避するための受電装置と送電装置の協調動作についての提案は、現在までなされていない。
【0007】
本発明は、受電装置にリーダライタが実装されている場合の、無線電力伝送システムにおける受電装置と送電装置の好適な協調動作を実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による受電装置は、以下の構成を備える。すなわち、
送電装置から無線で電力を受電する受電装置であって、
前記送電装置と通信する通信手段と、
近距離無線通信が可能な他の装置の検出を実行する検出手段と、
前記送電装置が前記他の装置を検出する検出機能を有するか否かを判断する判断手段と、
前記検出手段による前記検出を実行するか否かを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記判断手段により前記送電装置が前記検出機能を有していないと判断された場合であって、前記検出手段による前記他の装置の検出状態が確定していない場合には前記検出手段による検出を実行し、前記検出手段による前記検出状態が確定している場合には前記検出手段による検出を実行しないように制御し、
前記通信手段は、前記検出手段による検出の結果に応じた信号を前記送電装置に送信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受電装置にリーダライタが実装されている場合の、無線電力伝送システムにおける受電装置と送電装置の好適な協調動作が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は実施形態によるシステム構成例を示す図、(b)は実施形態による受電装置の構成例を示すブロック図。
【
図2】実施形態による送電装置の構成例を示すブロック図。
【
図3】受電装置の制御部による動作を示すフローチャート。
【
図4】第一制御部と第二制御部間のNFCに関する通信の概念図。
【
図5】送電装置の制御部による動作を示すフローチャート。
【
図6】実施形態による無線充電システムの動作シーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1(a)は実施形態による無線電力伝送システムの構成例を示す図である。WPC規格準拠の送電装置100にWPC規格準拠の受電装置102が載置されている。受電装置102は、送電装置100から無線で送電された電力を受電する。本実施形態の送電装置100と受電装置102は、WPC規格に準拠しており、さらにWPC規格v1.2.3に記載された機能を有する。送電装置100は受電装置102を検出可能である。受電装置102は自身に接続されている負荷(例えば充電可能なバッテリ)へ送電装置100から受電した電力を供給できる。NFCタグ101は、送電装置100に近接している場合、送電装置100が送電する無線電力の影響を受け得る。
【0013】
図1(b)は、実施形態による受電装置102の構成例を示すブロック図である。受電装置102は、NFCのリーダライタを実装している。なお、本実施形態では送電装置100と受電装置102はWPC規格に準拠しているものとして説明するが、これに限定されるものではなく、他の無線電力伝送規格に準拠したものであってもよい。
【0014】
第一制御部201は、例えば、1つまたは複数のプロセッサを有し、受電装置102の全体を制御する。プロセッサの一例は、所定のプログラムを実行することで種々の機能を実現するCPU(Central Processing Unit)である。受電部203は、送電装置100が送電する無線電力を、受電コイル205を介して受電する。受電部203は、受電コイル205で受電された交流電圧/交流電流を直流電圧/直流電流に変換して充電部209に供給する。また受電部203が出力する直流電圧/直流電流は第一制御部201を駆動する電源としても使用される。
【0015】
第一通信部204は、第一制御部201の制御下で、無線で送電装置100と通信する。本実施形態では、第一通信部204は、負荷変調を行い、受電コイル205を介して受電する無線電力の電磁波に信号を重畳し、送電装置100に信号を送信する。負荷変調は周波数変調でも振幅変調でもよい。メモリ208は第一制御部201の演算結果を記憶する。なお、第一通信部204は、Bluetooth(登録商標) Low Energy(以後、「BLE」と言う)規格に準拠する通信を行ってもよい。また、第一通信部204は、IEEE802.11規格シリーズの無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee等の通信方式によって通信を行われてもよい。
【0016】
第二通信部としての、近距離無線通信の一例であるNFC202はNFCのリーダライタであり、第二制御部210に実装されたプログラムにより制御される。NFC202は、NFC規格に準拠した回路と、NFC用コイルで構成される。NFC202を制御する第二制御部210は、NFC202の動作に関する情報を第一制御部201との間で送受信する機能を持つ。NFC202は、NFC202と通信することが可能な機能を有する他の装置(例えばNFCタグ)を検出することができる。また、第二制御部210およびNFC202はバッテリ207より電源供給を受けて動作する。
【0017】
UI206は受電装置102のユーザインターフェースであり、各種情報をユーザに通知する機能を持つ。なお、本実施形態では、UI206は第二制御部210から制御されるものとして説明するが、これに限られるものではない。例えば、UI206は第一制御部201によって制御されてもよいし、図示しない他の制御部によって制御されてもよい。充電部209は受電部203から供給される電力をバッテリ207へ供給しバッテリ207の充電を制御する。
【0018】
なお、
図1(b)では、第一通信部204、受電部203、第一制御部201を別体として示しているが、これらのいくつかもしくは全てがパッケージ化され1つの部品として実装されていてもよい。また、NFC202と第二制御部210を別体として示しているが、これらがパッケージ化され1つの部品として実装されていてもよい。すなわち、上述した各構成は、後述する機能を実現できれば、それを実現するための形態等に制約はない。
【0019】
図2は実施形態による送電装置100の構成例を示すブロック図である。
図2において、第三制御部301は、1つまたは複数のプロセッサを有し、送電装置100の全体を制御する。そのようなプロセッサの一例は、プログラムを実行することで種々の機能を実現するCPUである。電源部307は、バッテリまたは外部電源(例えば商用電源)からの電力を用いて、少なくとも第三制御部301、第四制御部309および送電部303が動作するための電源を供給する。
【0020】
送電部303は、送電コイル305を介して受電装置102へ伝送するための交流電圧/交流電流を発生させる。具体的には、送電部303は、電源部307が供給する直流電圧を、FET(Field Effect Transistor)を使用したハーフブリッジもしくはフルブリッジ構成のスイッチング回路で交流電圧に変換する。送電部303はFETのON/OFFを制御するゲ-トドライバを含む。送電部303はWPC規格に対応した受電装置102の充電部209に15ワットの電力を供給する能力を有している。
【0021】
第三通信部304は、第三制御部301の制御下で、無線で受電装置102と通信する。本実施形態では、第三通信部304は、負荷変調を行って、送電コイル305を介して無線送電される電力の電磁波に信号を重畳して、受電装置102に信号を送信する。なお、第三通信部304は、Bluetooth(登録商標) Low Energy(以後、「BLE」と言う)規格に準拠する通信を行ってもよい。また、第三通信部304は、IEEE802.11規格シリーズの無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee等の通信方式によって通信を行われてもよい。
【0022】
メモリ308は第三制御部301の演算結果を記憶する。NFC302はNFCのリーダライタである。第四制御部309は、NFC302を制御する。また、第四制御部309は、NFC302の動作に関する情報を、受電装置102の第二制御部210との間で送受信する機能を持つ。UI306は、送電装置100が備えるユーザインターフェースであり、各種情報をユーザに通知する機能を持つ。
【0023】
以上のような構成を備えた本実施形態の無線電力伝送システムの動作について、以下、説明する。
【0024】
上述したように、送電装置100と受電装置102はともにNFCのリーダライタ機能を有する。送電装置100および受電装置102の近傍にNFCタグ101が存在する場合、NFCタグ101は、WPC規格に基づいた無線電力伝送の影響を受ける。したがって、NFCタグ101がそのような影響を受けないように、送電装置100と受電装置102が協調動作をする。より具体的には、送電装置100と受電装置102は、無線による電力の送受電に先立ってポーリングによりNFCタグ101の存在を検出し、その検出結果に応じて無線電力伝送の実行の可否を決定する。
【0025】
また、送電装置100および受電装置102のリーダライタが同時にポーリングした場合、ポーリング同士が干渉してNFCタグ101がポーリングを正しく受信することができず、ポーリングに応答できない場合がある。その場合、送電装置100および受電装置102は、NFCタグ101が近傍に存在していてもこれを検出することができない。その結果、NFCタグ101が近傍に存在しているのにもかかわらず送電装置100と受電装置102の間で無線電力伝送が開始し、NFCタグ101を損傷してしまう可能性がある。このような課題を解決する為には、送電装置100と受電装置102が協調して動作してNFCタグ101を検出することが重要である。具体的には、送電装置100および受電装置102は以下のような処理を行う。なお、リーダライタは、NFCタグを検出するための検出機能の一例である。
【0026】
[1]送電装置がリーダライタを持っていない場合は、受電装置102がリーダライタを動作させてNFCタグを検出する、
[2]送電装置がリーダライタを持っているが、ポーリング処理を実行していない場合は、受電装置102がポーリング処理を行う、
[3]送電装置がリーダライタを持っており、ポーリング処理を実行済みの場合は、受電装置102はポーリング処理を行わない。
以上の[1]~[3]の協調動作により、送電装置100と受電装置102のポーリングが干渉してNFCタグ101を正しく検出できないという課題が解決され得る。以下、[1]~[3]のそれぞれの協調動作について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
図3は、受電装置102の第一制御部201による処理を示すフローチャートである。
図5は、送電装置100の第三制御部301による処理を示すフローチャートである。
図3、
図5のフローチャートを用いて本実施形態による受電装置102および送電装置100の動作について説明する。なお、
図5のS502~S512はNegotiationフェーズの間に送電装置100が実行する処理(S512でNOと判定されるまでの間の処理)の一部を示している。まず、上述した3つの協調動作のうちの[1]について説明する。[1]は、送電装置100がリーダライタを持っていない(
図2において、送電装置100がNFC302および第四制御部309を有していない)ケースである。この場合、送電装置100は、S502でリーダライタ機能を有していないことを通知し、
図5のS503~S505の処理を実行する機能を有していない。
【0028】
送電装置100は、WPC規格で定義されているDigital Pingを送電する(S501)。受電装置102が送電装置100からDigital Pingを受電すると、第一制御部201が起動する(S401)。ここで、Digital Pingの電力の大きさは、少なくとも送電コイル305の近傍に存在する受電装置102の第一制御部201が起動するのに十分な電力である。
【0029】
Digital Pingによって起動した第一制御部201は、第一通信部204を制御して、受電したDigital Pingの大きさを示すSignal Strength Packetを送電装置100に送信する。Signal Strength PacketはWPC規格で定義されているパケットであり、受電コイル205を介して送電装置100へ送信される。
【0030】
次に、第一制御部201は、第一通信部204を制御して、自身の識別情報を含むID Packetを送電装置100に送信する。ID Packetは、WPC規格で定義されたパケットであり、第一制御部201が準拠しているWPC規格のバージョン情報や、第一制御部201の固体識別番号などを含む。さらに、第一制御部201は、第一通信部204を制御してConfiguration Packetを送電装置100に送信する。Configuration Packetは、WPC規格で定義されたパケットであり、第一制御部201がサポートしている機能に関する情報を含む。
【0031】
第一制御部201は、Configuration Packetに対する応答として、送電装置100の第三制御部301からACKを受信する。ここでACKとはWPC規格で定義された信号であり、送電装置100が、Configuration Packetに含まれている情報を正しく受信し、かつその内容を了承したことを示す。第一制御部201は送電装置100からのACKを受信するとNegotiationフェーズに遷移する。第三制御部301はACKを送信するとNegotiationフェーズに遷移する。Negotiationフェーズでは、受電装置102と送電装置100との間で無線電力伝送に関する交渉が行われる。
【0032】
次に、Negotiationフェーズにおいて、第一制御部201は、送電装置100がNFCタグを検出するためのリーダライタ機能(検出機能)を有しているかどうかを送電装置100に問い合わせる(S402)。この問い合わせには、WPC規格で定義され、送電装置に対する問い合わせを示すGeneral Request Packetのうちの、General Request Packet(Capability)を用いることができる。General Request Packet(Capability)は、送電装置の能力情報を問い合わせるためのパケットである。なお、NFCタグの検出機能の有無に関する問い合わせに用い得るパケットは、上述のパケットに限られるものではない。例えば、WPC規格で定義されているパケットのうち、Packet typeが定義されていないReserved PacketやProprietary Packetを、NFCタグの検出機能の有無に関する問い合わせとして定義して用いてもよい。或いは、WPC規格で定義されているSpecific RequestやGeneral Requestのうちの、Packet typeが定義されていないReserved PacketやProprietary Packetが用いられてもよい。
【0033】
送電装置100の第三制御部301は、受電装置102からの上記問い合わせに応じて、リーダライタ機能を有しているか否かを示すパケットを通知する(S502)。ここでは、リーダライタ機能を有していないことが通知される。以上のようなS402の判断処理を実行する第一制御部201は、第一通信部204を用いて送電装置100と通信し、送電装置100がNFCタグ(他の装置)を検出する機能を有するか否かを判断するための構成の一例である。なお、
図6により後述するが、本実施形態では、上述の機能の問い合わせと応答には、General Request Packet(Capability)とCapabilityパケットが用いられる。第一制御部201が、送電装置100からNFCタグの検出機能を持っていない(NFCのリーダライタを持っていない)旨の応答を受信した場合(S402でNO)、処理はS403に進む。こうして、第一制御部201は、送電装置100がNFCタグの検出機能を持っていないと判断した場合、第二制御部210にNFCタグ検出を行ったかどうかとその検出の結果について問い合わせる(S403)。以下、このような問い合わせを、状態確認と称する。
【0034】
ここで、上述した状態確認における、第二制御部210からの応答について
図4を用いて説明する。
図4は、第一制御部201と第二制御部210との間のNFCタグの検出に関する状態確認のための通信の内容を示す図である。状態確認の問い合わせに対する応答は、2ビットで構成される。Bit0は、ポーリングを行ったかどうかを示す。ここでいうポーリングとは、第一制御部201からのポーリング指示に基づいて、NFC202およびNFC用のコイル(不図示)を介して実行されるポーリングである。Bit0が「0」の場合、第二制御部210は第一制御部201からの指示によるポーリングを実行していないことを示す。またbit0が「1」であれば、第二制御部210が第一制御部201からの指示に応じてポーリングを実行したことを示す。また、bit1は、上述のポーリングを実行した結果、NFCタグを検出したかどうかを示す。bit1が「0」であれば、第二制御部210はNFCタグを検出していないことを示す。またbit1が「1」であれば、第二制御部210はNFCタグを検出したことを示す。
【0035】
ここでは、第二制御部210はポーリング処理を実行しておらず且つNFCタグを検出していないこと、すなわちNFCタグの検出状態が未確定であることを示す「00」を、状態確認に対する応答として第一制御部201に通知したとする。なお、bit0が「0」であれば、ポーリングが未実行であるので、bit1の状態に関わらず、NFCタグの検出状態が未確定であると判断するようにしてもよい。第一制御部201は、状態確認の問い合わせに対して第二制御部210からポーリングを実行していない(NFCタグの検出状態が未確定である)旨の応答「00」を受けると、第二制御部210にポーリングの実行を指示する(S404でYES、S405でNO、S406)。以上のように、第一制御部201は、送電装置100がNFCタグを検出する機能を有していないと判断された場合であって、NFC202によるNFCタグの検出状態が未確定の場合に、第二制御部210とNFC202を用いてNFCタグの検出を実行する。
【0036】
このとき、第一制御部201は、NFC202を用いたNFCタグの検出を実行する場合に、送電装置100による電力の送電を所定時間にわたって制限するように、第一通信部204を用いた通信により送電装置100に要求する。例えば、第一制御部201はポーリングがDigital Pingの影響をうけないようにするために、Digital Pingの送電を一時中断し、所定時間後に再開することを要求するデータを送電装置100に送信する(S407)。送電の一時中断の要求には、WPC規格で定義された、送電停止を要求するEnd Power Transmission(EPT)パケットを用いることができる。第一制御部201は、送電の一時中断を示す情報要素が付加されたEPTを送電装置100に送信する。
【0037】
なお、本実施形態では、一時中断を示す情報要素を含むEPTパケットをEPT(中断)と表現する。また、送電の中断から再開までの所定時間は、少なくとも第二制御部210が第一制御部201からポーリング指示を受けてから、NFC202を用いてポーリングを送信し、その応答を受信するまでに要する時間よりも長いものとする。
【0038】
EPT(中断)を受信した送電装置100はDigital Pingの送電を一旦停止する(S508、S509)。これにより、送電装置100が行うポーリングとそれに対する応答がDigital Pingの影響を受けないようにすることができる。なお、一時中断を行う期間(上述の所定時間)は、あらかじめ送電装置100に設定されていてもよいし、所定時間を指定する情報がEPT(中断)に含まれていてもよい。所定時間を指定する情報がEPT(中断)に含まれている場合、送電装置100は、EPT(中断)により指定された所定時間だけ、Digital Pingの送電を停止する。第二制御部210は、Digital Pingが停止したことを検出すると、NFC202にポーリングの送信を開始させ、ポーリング処理を実行する(S408)。第二制御部210は、このポーリング処理によるNFCタグの検出結果を記憶する。この後、受電装置102は、送電装置100から、Digital Pingの送電を受けた場合、NFCタグの検出結果に従う信号を送電装置100に送信する。具体的には、受電装置102は、NFCタグを検出した場合は、EPTパケットにNFCタグを検出したことを示す情報要素を格納したEPT(NFC)パケットを、送電装置100に送信する。また、NFCタグを検出しなかった場合、Signal Strength Packet等を送信する。
【0039】
なお、上記では、NFCタグ101の検出において(ポーリングの実行において)送電装置100による送電を停止するようにしたがこれに限られるものではない。例えば、送電電力の最大値を所定値以下に制限することを要求してもよい。その場合、送電電力の最大値は、ポーリングに影響を与えない範囲で決定される。また、当該要求において、送電電力の最大値を受電装置102から送電装置へ通知するようにしてもよい。
【0040】
ここで、ポーリングの結果、NFCタグ101から応答を受信し、第二制御部210がNFCタグを検出したとする。第二制御部210は、この検出状態を示す情報(NFC関連情報という)を保持する。上述の所定時間が経過すると、送電装置100から再び受電されたDigital Pingにより第一制御部201が再起動し(S401)、上述したS402~S405を実行する。S405で、第一制御部201は、第二制御部210に対してNFCタグの検出に関する状態確認を行い、第二制御部210がポーリングを実行済みであるか否か(NFCタグの検出状態が確定しているか否か)を判断する。第二制御部210は、第一制御部201のポーリング指示によりNFCタグを検出したので、ポーリングを実行済み(bit0が「1」)で、NFCタグを検出した(bit1が「1」)ことを示す「11」を第一制御部201に送信する。
【0041】
第一制御部201は、NFCタグを検出したことを第二制御部210から通知されるため、Digital Pingの送電を制限することを送電装置100に要求する(S404、S405、S409でYES、S410)。具体的には、受電装置102は、EPTパケットにNFCタグを検出したことを示す情報要素を格納したEPT(NFC)パケットを、送電装置100に送信する。EPT(NFC)を受信した送電装置100の第三制御部301は、無線による送電を停止する(S510、S511)。なお、上記では、EPT(NFC)パケットにより送電装置100による送電を停止したがこれに限られるものではない。例えば、送電電力の最大値を所定値以下に制限することを要求してもよい。その場合、送電される電力の最大値は、NFCタグにダメージを与えない範囲で決定される。また、当該要求において、送電電力の最大値を受電装置102から送電装置へ通知するようにしてもよい。
【0042】
一方、第二制御部210から状態確認に対する応答が受信されなかった場合(S404でNO)、第一制御部201は、送電装置100に対してEPTを送信する(S411)。EPTを受け付けた送電装置100は、無線電力伝送を停止する。第一制御部201が第二制御部210から状態確認に対する応答を受信できない状況とは、例えば、バッテリ残量がない為に第二制御部210が動作を停止している場合に起こり得る。そのような場合、受電装置102はNFCタグの有無を確認することができない。よってNFCタグが送電装置100の近傍に存在し送電により損傷を受ける可能性をより確実に回避する為に、第一制御部201は送電装置100による送電を停止させる。なお、S411に関して、完全に送電を停止させることに替えて、送電電力の最大値を所定値以下に制限することを送電装置100に要求するようにしてもよい。このようにすれば、NFCタグに損傷を与えない程度の小さい電力の送電が行われるので、その電力でバッテリ207を充電することができる。
【0043】
以上のように受電装置102が動作することで、送電装置100がリーダライタを持っていない場合には、受電装置102がリーダライタを動作させることによりNFCタグを検出することができる。さらに、本実施形態では、NFCタグ検出を行ったかどうかやその結果を示すNFC関連情報を、バッテリ207から電力供給される第二制御部210が記憶するようにしている。このため、以下のように好適な制御が実現される。
【0044】
仮にNFC関連情報を第一制御部201の内部の図示しない揮発メモリに記憶していた場合、EPT(中断)の送信によりDigital Pingが停止した段階で、第一制御部201および揮発メモリはリセットされてしまう。その結果、再起動後の状態確認(S403)において、本来はポーリング処理済みでNFCタグを検出したことを示す「11」に基づいて判断されるべきところが、リセットされた状態の「00」に基づいて判断されてしまう。バッテリ207から電源供給を受け、Digital Pingの停止によってリセットされない第二制御部210がNFC関連情報を記憶することで、この課題を解決している。なお、第二制御部210は、保持しているNFC関連情報(リーダライタによるNFCタグの検出状態)が第一制御部201により参照されたことに応じて、そのNFC関連情報を消去する。この点については、
図6により後述する。
【0045】
また、NFC関連情報は、Digital Pingの停止によってリセットされない他の構成によって記憶されていても同様の効果が得られる。例えば、図示しない不揮発メモリにNFC関連情報が記憶されるように実装されてもよい。そのような不揮発メモリは第一制御部201の内部に実装されてもよいし、第一制御部201に接続されてもよい。また、送電装置100がNFC関連情報を記憶するようにしてもよい。送電装置100の内部回路は電源部307により電源供給を受けているので、Digital Pingを停止したとしても状態がリセットされることがないからである。その場合、NFC関連情報は、Negotiationフェーズにおいて送電装置100から受電装置102に通知され得る。
【0046】
次に、上述の3つの協調動作のうちの[2]について、
図3、
図5のフローチャートを参照して説明する。この動作は、送電装置100がNFCタグを検出する機能を有しているが、ポーリング処理が実行されていない場合の動作である。
【0047】
第一制御部201がGeneral Request Packet(Capability)の応答として送電装置100がリーダライタを持っている旨の応答を受信すると(S402でYES)、処理はS412に進む。送電装置100がリーダライタを有する場合には受電装置102はポーリングを実行しないよう制御してもよいが、本実施形態では、送電装置100におけるNFCタグの検出状態に応じて動作を切り替えることで、より好適な協調動作を実現する。まず、第一制御部201は、送電装置100がリーダライタを持っていると判断すると、送電装置100においてポーリングが実行済みとなっているかどうかを判断する(S412)。この判断は、Negotiationフェーズにおいて、NFC関連情報を送電装置100に問い合わせ、その応答を送電装置100から受信することで実現できる。そのために、
図4に示すbit0およびbit1に相当する情報を要求するパケット(NFC関連情報を問い合わせるパケット)を送電装置100に送信する。
【0048】
NFC関連情報を問い合わせるパケットとして、例えば、WPC規格で定義されているパケットのうち、Packet typeが定義されていないReserved PacketやProprietary Packetを定義することができる。また、WPC規格で定義されているGeneral RequestやSpecific Requestのうち、Packet typeが定義されていないReserved PacketやProprietary Packetが用いられてもよい。
【0049】
NFC関連情報の問い合わせを受けた送電装置100の第三制御部301は、第四制御部309にNFCタグ検出を行ったかどうかとその検出の結果を問い合わせることにより状態確認を行う(S503、S504)。第三制御部301は、
図4で説明した検出状態を示す情報を、第四制御部309から受け取り、この情報を含むパケットをNFC関連情報の問い合わせに対する応答として、第三通信部304を用いて送電装置100に送信する(S505)。
【0050】
送電装置100からの応答が、ポーリングを実行しておらずNFCタグを検出していないことを示す情報(「00」)であったとする(S412でNO)。この場合、第一制御部201は第二制御部210に対してポーリングを指示する(S406)。そして、上述したS407以降の処理により、第二制御部210がDigital Pingと干渉することなしにNFCタグを検出する。なお、送電装置100がポーリングを実行していない場合(S412NO)に、受電装置102が直ちにポーリングを実行する構成を説明したが、これに限られるものではない。S412でNOの場合に、第一制御部201がS403以降の処理を実行するようにしてもよい。
【0051】
また、第一制御部201は、NFC関連情報の問合せに続き、自身がNFCタグを検出する為の処理を行う(つまり、ポーリングを行う)ことを示すパケットを送電装置100に送信するようにしてもよい。ここで、WPC規格で定義されているパケットのうち、Packet typeが定義されていないReserved PacketやProprietary Packetを、自身がNFC検出処理を行う意思を示すパケットとして定義することができる。例えば、WPC規格で定義されているGeneral RequestやSpecific Requestのうちの、Packet typeが定義されていないReserved PacketやProprietary Packetが用いられてもよい。
【0052】
送電装置100はNFC検出処理を行う意思を示すパケットを受電装置102から受信した場合に、所定時間の間はポーリング処理を行わないようにしてもよい(S505、S507)。そうすることで、送電装置100のNFC302と受電装置102のNFC202が送信するポーリング同士が干渉することをより確実に回避することができる。ここで、所定時間とは、少なくとも第二制御部210がポーリング指示を受けてから、ポーリングを送信してその応答を受信するまでにかかる時間より長いものとする。
【0053】
続いて、上記3つの協調動作のうちの[3]について、
図3のフローチャートを参照して説明する。この動作は、送電装置100がリーダライタを持っており、送電装置100においてポーリング処理を実行済みの場合の動作である。
【0054】
第一制御部201が送信するNFC関連情報の問合せに対して、送電装置100からの応答が、ポーリングを実行しておりNFCタグを検出していないことを示す情報(
図5で「10」)であったとする(S412でYES、S413でNO)。この場合、第一制御部201は、送電装置100の近傍にNFCタグが存在しないことを確認できたとして、
図3に示される処理を終了し、送電装置100から受電装置102への無線電力伝送が実行される。
【0055】
また、送電装置100からの応答が、ポーリングを実行しておりNFCタグを検出したことを示す情報(
図4で「11」)であったとする。この場合、第一制御部201は、送電装置100の近傍にNFCタグが存在することを確認したとして、EPT(NFC)を送電装置100へ送信し、本処理を終了する。この場合、送電装置100からの送電が停止され、送電装置100から受電装置102への無線電力伝送は実行されない。
【0056】
なお、上記では、第一制御部201は、NFCタグの検出に応じてEPT(NFC)を送信し、送電装置100による送電を停止させる構成を説明したが、これに限られるものではない。例えば、EPT(NFC)の代わりに、NFCタグに損傷を与えない程度の小さい電力の送電を要求するパケットを送電装置100に送信し、その電力でバッテリ207を充電する構成としてもよい。
【0057】
次に、以上のように動作する本実施形態の受電装置102と送電装置100による無線電力伝送の動作シーケンスについて
図6を参照して説明する。
図6は実施形態による無線充電システムの動作シーケンス図である。
図6は、上記3つの協調動作のうちの[1]の場合の動作シーケンスを例示している。
【0058】
送電装置100の送電部303は、起動するとSelectionフェーズを開始し、送電コイル305を介してAnalog Pingを送電する(600)。Analog Pingとは送電コイル305の近傍に存在する物体を検出する為の微小な電力の信号である。送電装置100はAnalog Pingを送電した時の送電コイル305の電圧値または電流値を検出し、電圧がある閾値を下回るもしくは電流値がある閾値を超える場合に、物体が存在すると判断し、Pingフェーズに遷移する。Pingフェーズでは、送電装置100はAnalog Pingより大きい電力でDigital Pingを送電する(601)。
【0059】
第一制御部201は、Digital Pingを受信すると、Signal Strength Packet、ID Packet、Configuration Packetを送電装置100に送信する(602、603、604)。送電装置100がConfiguration Packetに対してACKを送信し、受電装置102がこれを受信すると(605)、送電装置100と受電装置102はNegotiationフェーズに遷移する。Negotiationフェーズで、第一制御部201は、NFCタグの検出機能を有するか否かを問い合わせるGeneral Request(Capability)を送電装置100に送信する(606)。第一制御部201は、送電装置100がNFCタグの検出機能を有するか否かを示す情報を含むCapabilityを、送電装置100から受信する(607)。
【0060】
ここで、送電装置100がリーダライタ機能を持っていない(NFCタグを検出る機能を持っていない)とする。その場合、第一制御部201は、第二制御部210に対してNFCタグの検出に関する状態確認を行う(608)。
図6では、第二制御部210からポーリング処理を実行しておらず、且つ、NFCタグを検出していないことを示す「00」が受信される(609)。第二制御部210は、状態確認の要求に応答した後、保持されているNFCタグの検出状態(NFC関連情報)をリセット(消去)する(610)。
【0061】
状態確認により、第二制御部210から「00」が受信されると、第一制御部201は第二制御部210に対してポーリング指示を行う(611)。第二制御部210からポーリング指示に対するACKを受け取ると(612)、第一制御部201は、送電装置100に対してEPT(中断)を送信する(613)。EPT(中断)に応じて送電装置100がDigital Pingの送電を一時中断すると、第二制御部210はポーリング処理を行う(614)。ここで、NFCタグから応答を受信すると(615)、第二制御部210はNFCタグの検出状態(NFC関連情報)を更新し、保持する(616)。
【0062】
その後、第一制御部201は、送電装置100から再びDigital Pingを受信して再起動し(617)、第二制御部210に対して再び状態確認を行う(618)。この段階で、第二制御部210はポーリング処理を行い、NFCタグを検出していることを示すNFC関連情報を保持しているので、状態確認の応答として「11」(
図4)を第一制御部201に送信する(619)。第二制御部210は状態確認の応答を行うと、保持しているNFC関連情報をクリア(消去)する(620)。NFCタグの検出状態として「11」を受け取った第一制御部201は、送電装置100による送電を停止させるべく、EPT(NFC)を送電装置100に送信する(621)。
【0063】
なお、上述したように、第二制御部210は状態確認の応答を行った後に、すなわち、第一制御部201により参照されたことに応じて、NFC関連情報をクリアしている(620)。具体的には、第二制御部210は、検出状態「11」を第一制御部201に送信した後、検出状態を「00」に戻している。この理由は、第二制御部210が、第一制御部201の最新のポーリング指示(611)の直後に行ったポーリング(614)に対する情報(つまり、最新のNFC関連情報)を、応答(619)として第一制御部201に送信する必要があるからである。
【0064】
仮に保持されているNFC関連情報をクリアせず、直前に実行したポーリングの状態が保持された場合には、以下のような不具合が考えられる。例えば、状態確認(608)を受信した時点で、過去に実施されたポーリングによってNFCタグが検出されなかったこと(つまり、状態「10」)が保持されていたとする。第二制御部210から応答(609)として「10」が送信された場合、
図3のフローチャートに基づくと、第一制御部201はポーリング指示を行わない(S405でYES、S409でNO)。この場合、状態確認(608)が要求された時点でNFCタグが存在していると、このNFCタグを検出できないという不具合が生じる。第二制御部210が第一制御部201からの状態確認の要求に対する応答をした際に、保持されている状態をクリアする(「00」にする)ことによって、このような不具合を回避できる。すなわち、第二制御部210は、第一制御部201がNFCタグ101の検出を実行すると決定したことに応じて実行された検出の結果を検出状態として保持部(例えば、不揮発メモリ)に保持する。そして、第二制御部210は、この保持部に保持されている検出状態が第一制御部201によって参照されると、保持部から当該検出状態を消去するように動作する。
【0065】
また、EPT(中断)(613)によりDigital Pingが停止している間に、受電装置102が送電装置100から図示しない他の送電装置へ移動させられることがある。Digital Pingの停止中は第一制御部201が停止しているため、第一制御部201はこのような置き換えを検出することができない。
【0066】
仮にEPT(中断)を送信した直後に、受電装置102が送電装置100上からユーザによって取り除かれ、他の送電装置に置かれる前にポーリングを行った場合を考える。この場合、ポーリングを行った時点では近接したNFCタグが存在していない為、NFCに関する状態は「10」(ポーリング処理をした結果、NFCタグを検出していない)となる。その後、受電装置102が他の送電装置の上に置かれ、当該他の送電装置に近接するNFCタグが存在しているとする。その場合、他の送電装置に置かれた受電装置が動作を再開した際には、第一制御部201は第二制御部210から受け取るNFC関連情報が検出状態(「10」)を示すため、ポーリングは行われず、NFCタグが存在しないと判断される。この場合、第二制御部210は、NFCに関する状態を「00」として第一制御部201に通知するべきであるが、実際には状態「10」が記憶されており、状態の不一致が生じる。
【0067】
そこで、受電装置102の第一制御部201は、送電装置100の識別情報を取得し、NFC202によるNFCタグの検出を実行した場合に、その実行の前後で取得された識別情報が一致するかを確認する。そして、両者が一致しない場合は、第一制御部201は第二制御部210に保持されている検出状態を消去する。
【0068】
例えば、第一制御部201が、Digital Pingを受電して起動するたびに、送電装置100の識別情報を問い合わせる。具体的にはWPC規格で定義されているGeneral Request Packetのうち、送電装置の識別情報を問い合わせるパケットを送信し、送電装置の識別情報を受信する。そのようなパケットは、例えば、General Request Packet(Power Transmitter Identification)である。第一制御部201は、送電装置から前回取得された識別情報と今回取得された識別情報を比較し、識別情報が一致していなければ、NFC関連情報をクリアする指示を第二制御部210に行う。こうして、EPT(中断)を送信する前後(NFCタグの検出動作の前後)における送電装置の識別情報を比較することができ、上述した不具合が解消される。
【0069】
例えば、受電装置102がEPT(中断)を送信(613)する前は、識別情報「aa」の送電装置100に置かれており、Digital Ping中断中に他の送電装置(識別情報「bb」)に置き換えられたとする。この場合、EPT(中断)の前と後(第一制御部201の再起動後)で送電装置の識別情報が不一致となる(aa≠bb)ため、NFCに関する状態が「00」にクリアされる。結果、第一制御部201は状態確認(619)の応答(619)として「00」を得ることとなり、他の送電装置に置かれたNFCタグを検出することが可能となる。
【0070】
一方、EPT(中断)(613)を送信する前は識別情報「aa」の送電装置に置かれており、Digital Ping中断後も同一の送電装置(識別情報「aa」)に置かれている場合は、EPT(中断)の前後の識別情報が一致するので、NFC関連情報はクリアされない。よってポーリング(614)後に更新されたNFCに関連する情報情報(619)を第一制御部201は受信するので、送電装置に置かれたNFCタグの有無を正しく検出することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態ではNFCリーダライタがNFCタグ検出に使用されることのみを説明したが、これに限られるものではない。例えば、受電装置102が実装される図示しない製品(例えばスマートフォン)において、リーダライタが別のアプリケーション(NFCタグの検出の用途以外)で使用されてもよい。
【0072】
なお、NFCリーダライタが他のアプリケーションで使用された場合に上述のNFC関連情報を記憶すると以下のような課題が生じ得る。すなわち、他のアプリケーションでリーダライタを使用してNFCタグと通信を行った場合、NFC関連情報は「11」に更新される。上述したように、第二制御部210は、状態確認に対する応答を送信しない限りNFC関連情報をクリアしない。そのため、この状態で送電装置100と受電装置102が近接すると、第一制御部201は状態確認(403)の応答として「11」を第二制御部210から受け取る。その結果、第一制御部201は送電装置100にEPT(NFC)を送信してしまい、送電装置100に近接するNFCタグが存在しない場合であっても受電装置102のバッテリ207を充電することができない。
【0073】
そこで、第二制御部210は、第一制御部201から、無線電力伝送を制御するためのポーリング指示を受けた直後のポーリングによる検出結果をNFC関連状態として記憶するようにし、そうでない場合はNFC関連状態を記憶しないようにする。そうすることで、他のアプリケーションでリーダライタを動作させたとしても、第二制御部210はNFC関連情報を更新することがなく、上記課題を解決することができる。
【0074】
<その他の実施形態>
上述した無線電力伝送システムにおいて、その無線電力伝送の方式は特に限定されない。例えば、無線電力伝送方式には、送電装置の共振器(共鳴素子)と受電装置の共振器(共鳴素子)との間の磁場の共鳴(共振)による結合によって電力を伝送する磁界共鳴方式を用いることができる。また電磁誘導方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レ-ザ-等を利用した電力伝送方式を用いることができる。
【0075】
また、送電装置および受電装置は例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、送電装置および受電装置は、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)やスマートフォンなどの情報処理装置であってもよい。
【0076】
また、
図3に示すフローチャ-トは、第一制御部201に電源が投入された場合に開始される。なお、
図3に示される処理は受電装置102のメモリに記憶されたプログラムを第一制御部201が実行することで実現される。また、
図5に示される処理は送電装置100のメモリに記憶されたプログラムを第三制御部301が実行することで実現される。また、
図3、
図5のフローチャ-トで示される処理の少なくとも一部がハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各ステップを実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。FPGAとは、Field Programmable GATE Arrayの略である。また、FPGAと同様にしてGATE Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。
【0077】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0078】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0079】
102:受電装置、201:第一制御部、202:NFC、203:受電部、204:第一通信部、205:受電コイル、206:UI、207:バッテリ、208:メモリ、209:充電部、210:第二制御部
【手続補正書】
【提出日】2022-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線で電力を送電する送電装置であって、
近距離無線通信(Near Field Communication)を行うタグの検出の行う検出手段と、
前記タグの検出が実行されたかを示す情報と、前記タグの検出の結果を示す情報と含む信号を送信する送信手段を有することを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記信号は、無線電力伝送に関する交渉を行う交渉フェーズにおいて、送信されることを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記信号は、受電装置から、前記送電装置の能力情報の問い合わせに応じて送信されることを特徴とする請求項1又は2に記載の送電装置。
【請求項4】
無線で電力を送電する送電装置が行う通信方法であって、
近距離無線通信(Near Field Communication)を行うタグの検出の行い、
前記タグの検出が実行されたかを示す情報と、前記タグの検出の結果を示す情報と含む信号を送信することを特徴とする通信方法。
【請求項5】
前記信号は、無線電力伝送に関する交渉を行う交渉フェーズにおいて、送信されることを特徴とする請求項4に記載の通信方法。
【請求項6】
前記信号は、受電装置から、前記送電装置の能力情報の問い合わせに応じて送信されることを特徴とする請求項4又は5に記載の通信方法。
【請求項7】
コンピュータに、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の通信方法を実行させるためのプログラム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本開示は、送電装置および通信方法、プログラムに関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本開示の一態様による送電装置は、以下の構成を有する。すなわち、
無線で電力を送電する送電装置であって、
近距離無線通信(Near Field Communication)を行うタグの検出の行う検出手段と、
前記タグの検出が実行されたかを示す情報と、前記タグの検出の結果を示す情報と含む信号を送信する送信手段を有する。