(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191495
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】光干渉断層撮像装置、撮像方法、及び、撮像プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G01N21/17 630
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171289
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2020556031の分割
【原出願日】2019-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2018212046
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中村 滋
(57)【要約】
【課題】光源等の動作条件の影響を受けにくい位置精度を有する光干渉断層撮像装置、撮像方法、及び、撮像プログラムを提供する。
【解決手段】光干渉断層撮像装置100は、波長掃引レーザ光源101と、物体光を測定対象物200の所定の走査範囲に照射する照射光学系105と、測定対象物200と照射光学系105との間に配置され、物体光を透過可能な透明基板106とを備え、測定対象物200に対向する透明基板106の表面には、透明基板106の厚さが変化する構造が形成されており、透明基板106の厚さが変化する構造は、透明基板106の中央に向かうにつれて透明基板106の厚さが段階的に変化するように形成された複数の段差である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長掃引レーザ光源と、
物体光を測定対象物の所定の走査範囲に照射する照射部と、
前記測定対象物と前記照射部との間に配置され、前記物体光を透過可能な透明基板と、
を備え、
前記測定対象物に対向する前記透明基板の表面には、当該透明基板の厚さが変化する構造が形成されており、前記透明基板の前記厚さが変化する構造は、前記透明基板の中央に向うにつれて前記透明基板の前記厚さが段階的に変化するように形成された複数の段差である、
光干渉断層撮像装置。
【請求項2】
前記波長掃引レーザ光源から出射された光を前記物体光と参照光に分岐する第1の分岐部と、
前記透明基板を透過して前記測定対象物に照射された後、前記測定対象物から散乱された物体光と、前記参照光との干渉光の強度比の変化に関する情報を生成する測定部と、
をさらに備える、請求項1に記載の光干渉断層撮像装置。
【請求項3】
前記測定部によって生成された前記干渉光の強度比の変化に関する情報に基づいて、前記測定対象物の深さ方向の構造データを取得する制御部をさらに備え、
前記制御部は、
前記照射部を制御して、前記測定対象物の前記深さ方向に直交する方向に沿って、前記物体光の照射位置を移動させながら、前記深さ方向の構造データを複数取得し、
取得した複数の前記深さ方向の構造データを、前記透明基板の表面に形成された前記構造の位置を基準として接続する、
請求項2に記載の光干渉断層撮像装置。
【請求項4】
前記複数の段差は、前記透明基板の中央に向うにつれて前記透明基板の前記厚さが段階的に減少するように、形成されている、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の光干渉断層撮像装置。
【請求項5】
前記複数の段差の幅及び高さは、走査方向及び前記測定対象物の深さ方向における空間分解能の所望する大きさに応じて、決定される、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の光干渉断層撮像装置。
【請求項6】
制御部が、
波長掃引レーザ光源から出射された光から分岐された物体光が、測定対象物に対向する表面に厚さが変化する構造が形成された透明基板を介して、前記測定対象物の所定の走査範囲に照射された後、前記測定対象物から散乱された物体光と、前記波長掃引レーザ光源から出射された光から分岐された参照光との干渉光の強度比の変化に関する情報に基づいて、前記測定対象物の深さ方向の構造データを取得し、
前記測定対象物の前記深さ方向に直交する方向に沿って、前記物体光の照射位置を移動させながら、前記深さ方向の構造データを複数取得し、
取得した複数の前記深さ方向の構造データを、前記透明基板の表面に形成された前記構造の位置を基準として接続し、
前記透明基板の前記厚さが変化する構造は、前記透明基板の中央に向うにつれて前記透明基板の前記厚さが段階的に変化するように形成された複数の段差である、
撮像方法。
【請求項7】
前記複数の段差は、前記透明基板の中央に向うにつれて前記透明基板の前記厚さが段階的に減少するように、形成されている、
請求項6に記載の撮像方法。
【請求項8】
前記複数の段差の幅及び高さは、走査方向及び前記測定対象物の深さ方向における空間分解能の所望する大きさに応じて、決定される、
請求項6又は7に記載の撮像方法。
【請求項9】
制御部に、
波長掃引レーザ光源から出射された光から分岐された物体光が、測定対象物に対向する表面に厚さが変化する構造が形成された透明基板を介して、前記測定対象物の所定の走査範囲に照射された後、前記測定対象物から散乱された物体光と、前記波長掃引レーザ光源から出射された光から分岐された参照光との干渉光の強度比の変化に関する情報に基づいて、前記測定対象物の深さ方向の構造データを取得する処理と、
前記測定対象物の前記深さ方向に直交する方向に沿って、前記物体光の照射位置を移動させながら、前記深さ方向の構造データを複数取得する処理と、
取得した複数の前記深さ方向の構造データを、前記透明基板の表面に形成された前記構造の位置を基準として接続する処理と、
を実行させ、
前記透明基板の前記厚さが変化する構造は、前記透明基板の中央に向うにつれて前記透明基板の前記厚さが段階的に変化するように形成された複数の段差である、
撮像プログラム。
【請求項10】
前記複数の段差は、前記透明基板の中央に向うにつれて前記透明基板の前記厚さが段階的に減少するように、形成されている、
請求項9に記載の撮像プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉断層撮像装置、撮像方法、及び、撮像プログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の表面近傍の断層撮像を行う技術として、光コヒーレンス・トモグラフィー(Optical Coherence Tomography: OCT)技術がある。当該OCT技術では、光ビームを測定対象物に照射した際の測定対象物の内部からの散乱光(以下、「後方散乱光」とも称する)と参照光との干渉を利用して、測定対象物の表面近傍の断層撮像を行う。近年、当該OCT技術の医療診断や工業製品検査への適用が拡大している。
【0003】
OCT技術では、測定対象物に照射され散乱されてくる物体光と参照光との干渉を利用して、測定対象物において物体光が散乱される部分(光散乱点)の光軸方向すなわち深さ方向における位置を特定する。これにより、測定対象物の深さ方向に空間分解した構造データを得る。物体光は、多くの場合、測定対象物の表面だけで100%反射されることはなくある程度内部まで伝搬してから後方に散乱される。このため、測定対象部の内部の深さ方向に空間分解した構造データを得ることが可能になる。OCT技術には、Time Domain(TD-OCT)方式、Fourier Domain(FD-OCT)方式があるが、高速・高感度という点でFD-OCT方式の方が有望である。FD-OCT方式では、物体光と参照光とを干渉させる際に、広い波長帯域の干渉光スペクトルを測定し、これをフーリエ変換することで深さ方向の構造データを得る。干渉光スペクトルを得る方式として、分光器を用いるSpectral Domain(SD-OCT)方式と、波長を掃引する光源を用いるSwept Source(SS-OCT)方式がある。
【0004】
さらに、物体光ビームを当該測定対象物の深さ方向に垂直な面内方向にスキャンすることにより、当該面内方向に空間分解し、且つ、深さ方向に空間分解した断層構造データを得ることできる。これにより、測定対象物の三次元の断層構造データを得ることが可能になる。通常は、ガルバノミラー等によって物体光ビームのスキャンが行われ、1本の物体光ビームの照射位置が移動される。
【0005】
OCT技術は、これまでに、眼科診断における眼底の断層撮像装置として実用化されると共に、生体の様々な部位に対する非侵襲の断層撮像装置として適用検討が進められている。例えば、特許文献1や特許文献2では、OCTを活用した真皮指紋読取の技術が開示されている。
【0006】
図6に、SS-OCT方式の光干渉断層撮像装置の典型的な構成を示す。波長掃引レーザ光源501から、波長掃引された光パルスが生成される。レーザ光源501から出射された光は、サーキュレータ502を経由して分岐合流器503において物体光R1と参照光R2に分岐される。物体光R1はファイバコリメータ504、スキャンミラーとレンズから成る照射光学系505を経て、測定対象物200に照射される。そして、測定対象物200において散乱された物体光R3は、分岐合流器503へ戻る。他方、参照光R2は参照光ミラー507を経て、分岐合流器503へ戻る。したがって、分岐合流器503では、測定対象物200から散乱された物体光R3と参照光ミラー507から反射された参照光R4とが干渉し、干渉光R5,R6が得られる。そのため、物体光R3と参照光R4との位相差によって干渉光R5と干渉光R6との強度比が決定される。干渉光R5はサーキュレータ502を経て、干渉光R6は直接に、二入力のバランス型受光器508へ入力される。
【0007】
波長掃引レーザ光源501から出射される光の波長変化に伴って干渉光R5と干渉光R6との強度比が変化する。これにより、バランス型受光器508における光電変換出力を干渉光スペクトルとして測定することができる。この干渉光スペクトルを測定しフーリエ変換することによって、深さ方向(Z方向)の異なる位置における後方散乱光(物体光)の強度を示すデータを得ることができる(以下、測定対象物200のある位置の深さ方向(Z方向)の後方散乱光(物体光)の強度を示すデータを得る動作を、「Aスキャン」と称する)。
【0008】
また、照射光学系505によって物体光ビームR1の照射位置が移動され、測定対象物200がスキャンされる。照射光学系505によって物体光ビームR1の照射位置を走査線方向(X方向)に移動させながらAスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続することにより、走査線方向と深さ方向との二次元の後方散乱光(物体光)の強度のマップが断層構造データとして得られる(以下、走査線方向(X方向)にAスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続する動作を、「Bスキャン」と称する)。
【0009】
さらに、照射光学系505によって物体光ビームR1の照射位置を走査線方向だけでなく走査線に垂直な方向(Y方向)にも移動させながらBスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続することにより、三次元の断層構造データが得られる(以下、走査線に垂直な方向(Y方向)にBスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続する動作を、「Cスキャン」と称する)。
【0010】
Aスキャンにおいて中心波長λ0、波長範囲Δλの標本点数Nの干渉光スペクトルを取得し、当該干渉光スペクトルに対して離散フーリエ変換を行うことにより、λ0
2/Δλを長さの単位とする、深さ方向の構造データが得られる。また、Aスキャンの周期をΔT、Bスキャンにおける物体光ビームR1の走査線方向の速さをVとすると、V/ΔTを長さの単位とする走査線方向の構造データ(断層構造データ)が得られる。すなわち、OCTによる測定で得られた三次元の断層構造データにおける位置精度は、波長掃引レーザ光源やガルバノスキャナなどの動作条件によって決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0363630号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0083742号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
眼底の断層撮像装置では、5mm四方程度の範囲で測定が行われる。しかし、生体の他の部位では比較的広範囲の測定が求められることも多い。例えば、指紋読取では少なくとも1.5cm四方程度の範囲の測定を求められることが多い。上述したように、OCTによる測定で得られた三次元の断層構造データにおける位置精度は、波長掃引レーザ光源やガルバノスキャナなどの動作条件によって決まる。そのため、動作条件の変動が位置精度に影響する。例えば、物体光ビームの照射位置をX方向に移動させる際の初期位置がBスキャン毎にずれると、複数のBスキャンデータを接続して構成される三次元の断層構造データは不正確になってしまう。Bスキャン画像同士の比較処理を行って接続する方法もあるが、処理演算量の増大を招く。
【0013】
本開示の目的は、光源等の動作条件の影響を受けにくい位置精度を有する光干渉断層撮像装置、撮像方法、及び、撮像プログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様に係る光干渉断層撮像装置は、波長掃引レーザ光源と、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を物体光と参照光に分岐する第1の分岐部と、前記物体光を測定対象物の所定の走査範囲に照射する照射部と、前記測定対象物と前記照射部との間に配置され、前記物体光を透過可能な透明基板と、前記透明基板を透過して前記測定対象物に照射された後、前記測定対象物から散乱された物体光と、前記参照光との干渉光の強度比の変化に関する情報を生成する測定部と、前記測定部によって生成された前記干渉光の強度比の変化に関する情報に基づいて、前記測定対象物の深さ方向の構造データを取得する制御部と、を備え、前記透明基板の表面には、当該透明基板の厚さが変化する構造が形成されており、前記制御部は、前記照射部を制御して、前記測定対象物の前記深さ方向に直交する方向に沿って、前記物体光の照射位置を移動させながら、前記深さ方向の構造データを複数取得し、取得した複数の構造データを、前記透明基板の表面に形成された前記構造の位置を基準として接続する。
【0015】
本発明の第2の態様に係る撮像方法は、波長掃引レーザ光源から出射された光を物体光と参照光に分岐し、表面に厚さが変化する構造が形成された透明基板を介して、前記物体光を測定対象物の所定の走査範囲に照射し、前記測定対象物から散乱された物体光と、前記参照光との干渉光の強度比の変化に関する情報を生成し、制御部が、前記干渉光の強度比の変化に関する情報に基づいて、前記測定対象物の深さ方向の構造データを取得し、前記測定対象物の前記深さ方向に直交する方向に沿って、前記物体光の照射位置を移動させながら、前記深さ方向の構造データを複数取得し、取得した複数の前記深さ方向の構造データを、前記透明基板の表面に形成された前記構造の位置を基準として接続する。
【0016】
本発明の第3の態様に係る非一時的なコンピュータ可読媒体は、制御部に、波長掃引レーザ光源から出射された光から分岐された物体光が、表面に厚さが変化する構造が形成された透明基板を介して、測定対象物の所定の走査範囲に照射された後、前記測定対象物から散乱された物体光と、前記波長掃引レーザ光源から出射された光から分岐された参照光との干渉光の強度比の変化に関する情報に基づいて、前記測定対象物の深さ方向の構造データを取得する処理と、前記測定対象物の前記深さ方向に直交する方向に沿って、前記物体光の照射位置を移動させながら、前記深さ方向の構造データを複数取得する処理と、取得した複数の前記深さ方向の構造データを、前記透明基板の表面に形成された前記構造の位置を基準として接続する処理と、を実行させる撮像プログラムを格納する。
【発明の効果】
【0017】
光源等の動作条件の影響を受けにくい位置精度を有する光干渉断層撮像装置、撮像方法、及び、撮像プログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る光干渉断層撮像装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る光干渉断層撮像装置の一例を示す図である。
【
図3A】本発明の実施の形態1に係る構造付き透明基板の一例を示す斜視図である。
【
図3B】本発明の実施の形態1において測定されたBスキャン画像の一例である。
【
図4A】本発明の実施の形態1に係る構造付き透明基板の一例を示す斜視図である。
【
図4B】本発明の実施の形態1において測定されたBスキャン画像の一例である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る光干渉断層撮像装置の一例を示す図である。
【
図6】関連する光干渉断層撮像装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る光干渉断層撮像装置100の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、光干渉断層撮像装置100は、波長掃引レーザ光源101、サーキュレータ102、第1の分岐部としての分岐合流器103、照射部としての照射光学系105、構造付き透明基板106、参照光ミラー107、測定部としてのバランス型受光器108、制御部110等を備える。
【0020】
波長掃引レーザ光源101から出射された光は、分岐合流器103によって物体光R1と参照光R2とに分岐される。分岐合流器103から出力された物体光R1は、照射光学系105を経て、構造付き透明基板106に入射する。
【0021】
構造付き透明基板106の表面には、当該透明基板106の厚さが変化する構造(例えば、後述する、溝部106A,106Bや段差106C等の構造)が形成されている。
【0022】
構造付き透明基板106に入射した物体光R1は、構造付き透明基板106を透過して、測定対象物200に照射される。そして、測定対象物200によって物体光R1が散乱されて、測定対象物200から後方(物体光R1の照射方向と反対の方向)に散乱する。そして、測定対象物200から散乱された物体光(後方散乱光)R3は、構造付き透明基板106及び照射光学系105を経て、分岐合流器503へ戻る。
【0023】
分岐合流器103から出力された参照光R2は、参照光ミラー107によって反射され、分岐合流器103へ戻る。
【0024】
したがって、分岐合流器103において、測定対象物200から散乱された物体光R3と参照光ミラー107から反射された参照光R4とが干渉し、干渉光R5,R6が得られる。そのため、物体光R3と参照光R4との位相差によって干渉光R5と干渉光R6との強度比が決定される。
【0025】
干渉光R5及び干渉光R6は、二入力のバランス型受光器108へ入力される。バランス型受光器108は、干渉光R5と干渉光R6の強度比の変化に関する情報を生成し、当該情報を制御部110に入力する。
【0026】
制御部110は、バランス型受光器108によって生成された干渉光R5,R6の強度比の変化に関する情報に基づいて、測定対象物200の深さ方向(Z方向)の構造データを取得する。また、制御部110は、照射光学系105を制御して、測定対象物200の深さ方向(Z方向)に直交する方向(X方向及びY方向の少なくとも一方の方向)に沿って、物体光R1の照射位置を移動させながら、深さ方向の構造データを複数取得する。換言すれば、制御部110は、測定対象物200のX方向及びY方向の少なくとも一方の方向に沿った異なる位置における深さ方向の構造データを複数取得する。そして、制御部110は、取得した複数の構造データを、構造付き透明基板106の表面に形成された構造(例えば、後述する、溝部106A,106Bや段差106C等の構造)の位置を基準として接続して、二次元又は三次元の断層構造データを取得する。
【0027】
以上に説明した本発明に係る光干渉断層撮像装置100によれば、制御部110が、構造付き透明基板106の構造(例えば、後述する、溝部106A,106Bや段差106C等の構造)の位置を基準として、複数の測定対象物200の異なる位置における深さ方向の構造データを接続して、二次元又は三次元の断層構造データを取得する。そのため、光源等の動作条件の影響によって、深さ方向の構造データを取得する際の初期位置がずれても、複数の構造データをより正確に接続することができる。これにより、光源等の動作条件の影響を受けにくい位置精度を有する光干渉断層撮像装置100を提供することができる。
【0028】
実施の形態1
本発明の実施の形態1に係る光干渉断層撮像装置100について説明する。
図2は、実施の形態1に係る光干渉断層撮像装置100の一例を示す図である。
図2に示すように、光干渉断層撮像装置100は、波長掃引レーザ光源101、サーキュレータ102、分岐合流器103、ファイバコリメータ104、照射光学系105、構造付き透明基板106、参照光ミラー107、バランス型受光器108、光スペクトルデータ生成部109、制御部110等を備える。
【0029】
波長掃引レーザ光源101は、波長掃引された光パルスを生成する。具体的には、波長掃引レーザ光源101は、持続時間10μsの間に波長が1250nmから1350nmまで増加する光パルスを生成する。また、波長掃引レーザ光源101は、当該光パルスを、20μs毎に50kHz繰り返して生成する。
【0030】
レーザ光源101から出射された光は、サーキュレータ102を経由して分岐合流器103において物体光R1と参照光R2に分岐される。
【0031】
分岐合流器103から出力された物体光R1は、ファイバコリメータ104、スキャンミラーとレンズから成る照射光学系105を経て、構造付き透明基板106に入射する。構造付き透明基板106に入射した物体光R1は、構造付き透明基板106を透過して、測定対象物200に照射される。そして、測定対象物200によって物体光R1が散乱されて、測定対象物200から後方(物体光R1の照射方向と反対の方向)に散乱する。そして、測定対象物200から散乱された物体光(後方散乱光)R3は、ファイバコリメータ104、照射光学系105、構造付き透明基板106を経て、分岐合流器503へ戻る。
分岐合流器103から出力された参照光R2は、参照光ミラー107によって反射され、分岐合流器103へ戻る。
したがって、分岐合流器103において、測定対象物200から散乱された物体光R3と参照光ミラー107から反射された参照光R4とが干渉し、干渉光R5,R6が得られる。そのため、物体光R3と参照光R4との位相差によって干渉光R5と干渉光R6との強度比が決定される。
【0032】
干渉光R5はサーキュレータ102を経て、干渉光R6は直接に、二入力のバランス型受光器108へ入力される。なお、バランス型受光器108は2つのフォトダイオードが直列に接続され、その接続が出力(差動出力)となっている受光器である。また、バランス型受光器108の帯域は1GHz以下である。
また、分岐合流器103で分岐されてから再び合流するまでの物体光の光路長と参照光の光路長とは概略等しい。光路長に大きな差があると物体光R1,R3と参照光R2,R4とに周波数差(波長差)がバランス型受光器108の帯域より大きくなり、物体光R3と参照光R4との位相差によって干渉光R5と干渉光R6との強度比の検出が不可能になる。物体光R1,R3と参照光R2,R4とに周波数差が生じる場合、当該周波数差をバランス型受光器108の光電変換の帯域よりも小さくなるように、物体光の光路長と参照光の光路長とを調整する。
【0033】
光スペクトルデータ生成部109は、波長掃引レーザ光源101から信号と、バランス型受光器108から入力される信号に基づいて、干渉光スペクトルを生成する。具体的には、波長掃引レーザ光源101から光スペクトルデータ生成部109に、当該波長掃引レーザ光源101から出射される光の波長変化に関する情報が入力される。また、バランス型受光器108から光スペクトルデータ生成部109に、干渉光R5,R6との強度比の変化に関する情報が入力される。そして、光スペクトルデータ生成部109は、波長掃引レーザ光源101から出射される光の波長変化に関する情報と、干渉光R5,R6との強度比の変化に関する情報とに基づいて、干渉光スペクトルを生成する。また、光スペクトルデータ生成部109は、生成した干渉光スペクトルを制御部110に入力する。
【0034】
制御部110は、図示しないCPU(Central Processing Unit)及び図示しない記憶部等を備える。そして、CPUが記憶部に格納されたプログラムを実行することにより、制御部110における全ての処理が実現する。
また、制御部110のそれぞれの記憶部に格納されるプログラムは、CPUに実行されることにより、制御部110のそれぞれにおける処理を実現するためのコードを含む。なお、記憶部は、例えば、このプログラムや、制御部110における処理に利用される各種情報を格納することができる任意の記憶装置を含んで構成される。記憶装置は、例えば、メモリ等である。
【0035】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0036】
具体的には、制御部110は、光干渉断層撮像装置100の各部を制御する。
例えば、制御部110は、物体光R1が構造付き透明基板106の異なる厚さの領域を通過するように、照射光学系105を制御する。また、制御部110は、照射光学系105が測定対象物200をスキャンする周期及び速度を制御する。
また、制御部110は、光スペクトルデータ生成部109によって生成された干渉光スペクトルをフーリエ変換することによって、測定対象物200の深さ方向(Z方向)の異なる位置における後方散乱光(物体光)の強度を示すデータを取得する。具体的には、制御部110は、干渉光スペクトルから、干渉光R5,R6の強度の波長依存性を算出し、当該干渉光R5,R6の強度の波長依存性に基づいて、測定対象物200から散乱された物体光R3の強度の、測定対象物200の深さに対する依存性を抽出する。
また、制御部110は、照射光学系105を制御して、物体光ビームR1の照射位置を走査線方向(X方向)に移動させながらAスキャン動作を繰り返し行わせる。そして、制御部110は、物体光ビームR1の照射位置を走査線方向(X方向)に移動させながらAスキャン動作を繰り返し行うことによって得られた測定結果を接続する。
また、制御部110は、照射光学系105を制御して、物体光ビームR1の照射位置を走査線方向だけでなく走査線に垂直な方向(Y方向)にも移動させながらBスキャン動作を繰り返し行わせる。そして、制御部110は、物体光ビームR1の照射位置を走査線方向及び走査線に垂直な方向(Y方向)に移動させながらBスキャン動作を繰り返し行うことによって得られた測定結果を接続する。
【0037】
上述したように、波長掃引レーザ光源101から出射される光の波長変化に伴って干渉光R5と干渉光R6との強度比が変化する。そして、光スペクトルデータ生成部109によって、バランス型受光器108における光電変換出力を干渉光スペクトルとして測定される。そして、制御部110が、当該干渉光スペクトルをフーリエ変換することによって、深さ方向(Z方向)の異なる位置における後方散乱光(物体光)の強度を示すデータを取得する(以下、測定対象物200のある位置の深さ方向(Z方向)の後方散乱光(物体光)の強度を示すデータを得る動作を、「Aスキャン」と称する)。
【0038】
また、照射光学系105によって物体光ビームR1の照射位置が移動され、測定対象物200がスキャンされる。照射光学系105によって物体光ビームR1の照射位置を走査線方向(X方向)に移動させながらAスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続することにより、走査線方向と深さ方向との二次元の後方散乱光(物体光)の強度のマップが断層構造データとして得られる(以下、走査線方向(X方向)にAスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続する動作を、「Bスキャン」と称する)。
【0039】
さらに、照射光学系105によって物体光ビームR1の照射位置を走査線方向だけでなく走査線に垂直な方向(Y方向)にも移動させながらBスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続することにより、三次元の断層構造データが得られる(以下、走査線に垂直な方向(Y方向)にBスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続する動作を、「Cスキャン」と称する)。
なお、例えば、照射光学系105は、ラスタースキャンを用いて、測定対象物200をスキャンする。
【0040】
より具体的には、Aスキャンにおいて中心波長λ0、波長範囲Δλの標本点数Nの干渉光スペクトルを取得し、制御部110が当該干渉光スペクトルに対して離散フーリエ変換を行うことにより、λ0
2/Δλを長さの単位とする、深さ方向の構造データが得られる。また、Aスキャンの周期をΔT、Bスキャンにおける物体光ビームR1の走査線方向の速さをVとすると、V/ΔTを長さの単位とする走査線方向の構造データ(断層構造データ)が得られる。本実施の形態1では、例えば、深さ方向の空間分解能約10μm、走査線方向の空間分解能約10μmで測定を行うとする。
【0041】
図3Aは、構造付き透明基板106の一例を示す斜視図である。
図3Aに示すように、構造付き透明基板106は、表面に溝部等の構造が形成された透明基板である。
図3Aに示す構造付き透明基板106では、構造付き透明基板106の照射光学系105側の表面に、構造付き透明基板106の短辺(Y方向)に沿って溝部106Aが形成されている。また、構造付き透明基板106の溝部106Aの端部側の部分から、長辺(X方向)に沿って延出する溝部106Bが形成されている。なお、溝部106A,106Bは、構造付き透明基板106の測定対象物200側の面に形成されていてもよい。また、構造付き透明基板106の長辺がY方向に、短辺がX方向に沿っていてもよい。溝部106A、106Bの幅は、例えば、100μmであり、溝部106A、106Bの深さは、例えば、100μmである。本実施の形態1では、走査線方向及び深さ方向における空間分解能が約10μmであるため、上述の幅及び深さを有する溝部106A、106Bの構造を、断層構造データ上において、明確に同定することができる。すなわち、構造付き透明基板106における溝部106A、106Bの幅及び深さは、走査方向及び深さ方向における空間分解能の所望する大きさに応じて、決定される。
【0042】
図4Aは、構造付き透明基板106の他の例を示す斜視図である。
図4Aに示すように、構造付き透明基板106は、表面に段差等の構造が形成された透明基板である。
図4Aに示す構造付き透明基板106は、透明な枠体であり、枠体の短辺(Y方向)及び長辺(X方向)の照射光学系105側の表面に段差106Cが形成されている。また、当該段差106Cは、短辺(Y方向)及び長辺(X方向)に交差する方向にそって構造付き透明基板106の厚さが変化するように、形成されている。より具体的には、当該段差106Cは、構造付き透明基板106の中央に向かうにつれて、当該構造付き透明基板106の厚さが減少するように、形成されている。なお、段差106Cは、構造付き透明基板106の測定対象物200側の面に形成されていてもよい。また、構造付き透明基板106の長辺がY方向に、短辺がX方向に沿っていてもよい。段差106Cの幅は、例えば、100μmであり、段差106Cの高さは、例えば、100μmである。本実施の形態1では、走査線方向及び深さ方向における空間分解能が約10μmであるため、上述の幅及び高さを有する段差106Cの構造を、断層構造データ上において、明確に同定することができる。すなわち、構造付き透明基板106における段差106Cの幅及び高さは、走査方向及び深さ方向における空間分解能の所望する大きさに応じて、決定される。
【0043】
図3Bに、構造付き透明基板106が前に配置された測定対象物200から散乱された物体光R3(後方散乱光)の強度をX方向とZ方向の二次元でマッピングしたBスキャン画像IM1を示す。また、
図4Bに、構造付き透明基板106が前に配置された測定対象物200から散乱された物体光R3(後方散乱光)の強度をX方向とZ方向の二次元でマッピングしたBスキャン画像IM2を示す。
図3B及び
図4Bに示すように、Bスキャン画像では、測定対象物200の断層画像と共に構造付き透明基板106の表面(照射光学系105側の面)及び裏面(測定対象物200側の面)が観察される。これにより、制御部110は、構造付き透明基板106の表面及び裏面の位置を基準にして、Aスキャンによって得られた構造データを接続することができる。同様に、制御部110は、構造付き透明基板106の表面及び裏面の位置を基準にして、Bスキャンによって得られた断層構造データを接続することができる。
【0044】
また、構造付き透明基板106に形成されている溝部106A,106B又は段差106Cの寸法は既知であるため、制御部110は、当該溝部106A,106B又は段差106Cの寸法をX方向及びZ方向の位置や長さの基準として用いることができる。そのため、測定対象物200の断層画像における位置精度や長さ精度が向上する。また、Bスキャン画像を高精度で接続することにより、位置精度や長さ精度の高い三次元の断層構造データを得ることができる。
【0045】
以上に説明した実施の形態1に係る光干渉断層撮像装置100によれば、制御部110が、構造付き透明基板106の溝部106A,106B又は段差106C等の構造の位置を基準として、複数の測定対象物200の異なる位置における深さ方向の構造データを接続して、二次元又は三次元の断層構造データを取得する。そのため、光源等の動作条件の影響によって、深さ方向の構造データを取得する際の初期位置がずれても、複数の構造データをより正確に接続することができる。これにより、波長掃引レーザ光源101等の動作条件の影響を受けにくい位置精度を有する光干渉断層撮像装置100を提供することができる。
【0046】
また、制御部110は、照射光学系105を制御して、測定対象物200の深さ方向(Z方向)に直交する2方向であって、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)に沿って、物体光R1の照射位置を移動させながら、深さ方向の構造データを複数取得する。そのため、三次元の断層構造データを取得することができる。
【0047】
また、構造付き透明基板106の表面に、深さ方向(Z方向)に直交する方向(X方向及びY方向)に沿って溝部106A,106Bが形成されている。これにより、当該溝部106A,106Bの深さをZ方向の長さの基準として用いることができる。また、当該溝部106A,106Bの幅をX方向及びY方向の長さの基準として用いることができる。そのため、位置精度だけでなく、長さ精度の高い三次元の断層構造データを取得することができる。
【0048】
また、構造付き透明基板106の表面に、深さ方向(Z方向)に直交する方向(X方向及びY方向)に沿って、当該直交する方向に交差する方向に沿って構造付き透明基板106の厚さが変化するように、段差106Cが形成されていてもよい。これにより、当該段差106Cの高さをZ方向の長さの基準として用いることができる。また、当該段差106Cの幅をX方向及びY方向の長さの基準として用いることができる。そのため、位置精度だけでなく、長さ精度の高い三次元の断層構造データを取得することができる。
【0049】
実施の形態2
本発明の実施の形態2に係る光干渉断層撮像装置300について説明する。
図5は、実施の形態2に係る光干渉断層撮像装置300の一例を示す図である。
図5に示すように、光干渉断層撮像装置300は、波長掃引レーザ光源101、第2の分岐部としての多分岐器301、複数のサーキュレータ102、複数の分岐合流器103、複数のファイバコリメータ104、照射光学系105、構造付き透明基板106、参照光ミラー107、複数のバランス型受光器108、光スペクトルデータ生成部109、制御部110等を備える。なお、光干渉断層撮像装置300に備えられる、サーキュレータ102の数、分岐合流器103の数、ファイバコリメータ104の数、バランス型受光器108の数は、多分岐器301において波長掃引レーザ光源101から出射された光が分岐される数に応じて決定されればよく、図示した数に限定されるものではない。また、実施の形態2に係る光干渉断層撮像装置300に備えられる波長掃引レーザ光源101、サーキュレータ102、分岐合流器103、ファイバコリメータ104、照射光学系105、構造付き透明基板106、参照光ミラー107、バランス型受光器108、光スペクトルデータ生成部109、制御部110は、実施の形態1に係る光干渉断層撮像装置100に備えられる波長掃引レーザ光源101、サーキュレータ102、分岐合流器103、ファイバコリメータ104、照射光学系105、構造付き透明基板106、参照光ミラー107、バランス型受光器108、光スペクトルデータ生成部109、制御部110と同様であるため、同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0050】
多分岐器301は、波長掃引レーザ光源101から出射された光を複数の光に分岐する。また、多分岐器301は、分岐した複数の光に異なる遅延(位相差)を付与する。
図5に示す例では、多分岐器301は、波長掃引レーザ光源101から出射された光を3つの光R01,R02,R03に分岐し、分岐したそれぞれの光に異なる遅延(位相差)を付与する。
【0051】
多分岐器301から出力された複数の光R01,R02,R03は、それぞれ対応するサーキュレータ102を経由して、それぞれ対応する分岐合流器103に入力される。複数の分岐合流器103は、それぞれ、入力された複数の光R01,R02,R03を、物体光R11,R12,R13と参照光R21,R22,R23とに分岐する。
【0052】
分岐合流器103から出力された複数の物体光R11,R12,R13は、ファイバコリメータ104、照射光学系105を経て、構造付き透明基板106に入射する。構造付き透明基板106に入射した物体光R11,R12,R13は、構造付き透明基板106を透過して、測定対象物200に照射される。より具体的には、照射光学系105は、複数の物体光R11,R12,R13を測定対象物200のX-Y平面においてそれぞれ異なる位置に照射させる。そして、測定対象物200によって物体光R11,R12,R13が散乱されて、測定対象物200から後方(物体光R11,R12,R13の照射方向と反対の方向)に散乱する。そして、測定対象物200から散乱された物体光(後方散乱光)R31,R32,R33は、ファイバコリメータ104、照射光学系105、構造付き透明基板106を経て、分岐合流器103へ戻る。
分岐合流器103から出力された複数の参照光R21,R22,R23は、参照光ミラー107によって反射され、分岐合流器103へ戻る。
したがって、分岐合流器103において、測定対象物200から散乱された物体光R31と参照光ミラー107から反射された参照光R41とが干渉し、干渉光R51及び干渉光R61が得られる。同様に、分岐合流器103において、測定対象物200から散乱された物体光R32,R33と参照光ミラー107から反射された参照光R42,R43とが干渉し、干渉光R52,R53及び干渉光R62,R63が得られる。そのため、物体光R31,R32,R33と参照光R41,R42,R43との位相差によって干渉光R51,R52,R53と干渉光R61,R62,R63との強度比が決定される。
【0053】
干渉光R51,R52,R53はサーキュレータ102を経て、干渉光R61,R62,R63は直接に、対応するバランス型受光器108へ入力される。そして、複数のバランス型受光器108から、それぞれ、干渉光R51と干渉光R61との強度比の変化に関する情報、干渉光R52と干渉光R62との強度比の変化に関する情報、干渉光R53と干渉光R63との強度比の変化に関する情報が光スペクトルデータ生成部109に入力される。
【0054】
光スペクトルデータ生成部109は、波長掃引レーザ光源101から出射される光R01の波長変化に関する情報と、干渉光R51とR61との強度比の変化に関する情報とに基づいて、干渉光スペクトルを生成する。同様に、光スペクトルデータ生成部109は、波長掃引レーザ光源101から出射される光R02,R03の波長変化に関する情報と、干渉光R52,R53とR62,R63との強度比の変化に関する情報とに基づいて、干渉光スペクトルを生成する。また、光スペクトルデータ生成部109は、生成した干渉光スペクトルを制御部110に入力する。
【0055】
制御部110は、複数の物体光R11,R12,R13を測定対象物200のX-Y平面においてそれぞれ異なる位置に照射させるように、照射光学系105を制御する。
また、制御部110は、光スペクトルデータ生成部109によって生成された干渉光スペクトルをフーリエ変換することによって、測定対象物200の深さ方向(Z方向)の異なる位置における後方散乱光(物体光)の強度を示すデータを取得する(Aスキャン)。
また、制御部110は、物体光ビームR11,R12,R13の照射位置を走査線方向(X方向)に移動させながらAスキャン動作を繰り返し行うことによって得られた測定結果を接続することにより、X方向とZ方向の二次元の断層構造データを生成する(Bスキャン)。
また、制御部110は、物体光ビームR11,R12,R13の照射位置を走査線方向及び走査線に垂直な方向(Y方向)に移動させながらBスキャン動作を繰り返し行うことによって得られた測定結果を接続することにより、X,Y,Z方向の三次元の断層構造データを生成する(Cスキャン)。
【0056】
以上に説明した実施の形態2に係る光干渉断層撮像装置300によれば、実施の形態1に係る光干渉断層撮像装置100と同様の効果が得られるのは勿論のこと、多分岐器301によって波長掃引レーザ光源101から出射された光を複数の光R01,R02,R03に分岐され、分岐合流器103によって当該複数の光R01,R02,R03が、それぞれ、複数の物体光R11,R12,R13と複数の参照光R21,R22,R23に分岐される。そのため、複数の物体光R11,R12,R13がそれぞれ測定対象物200のX-Y平面において異なる位置に照射される。これにより、測定対象物200のより広範囲の断層構造データを得ることができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0058】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0059】
この出願は、2018年11月12日に出願された日本出願特願2018-212046を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0060】
光源等の動作条件の影響を受けにくい位置精度を有する光干渉断層撮像装置、撮像方法、及び、撮像プログラムを提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
100,300 光干渉断層撮像装置
101 波長掃引レーザ光源
102 サーキュレータ
103 分岐合流器(第1の分岐部)
104 ファイバコリメータ
105 照射光学系(照射部)
106 構造付き透明基板
106A,106B 溝部
106C 段差
107 参照光ミラー
108 バランス型受光器(測定部)
109 光スペクトルデータ生成部
110 制御部
301 多分岐器(第2の分岐部)
R1,R3,R11,R12,R13,R31,R32,R33 物体光
R2,R4,R21,R22,R23,R41,R42,R43 参照光
R5,R6,R51,R52,R53,R61,R62,R63 干渉光
200 測定対象物