(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191513
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172652
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2018180387の分割
【原出願日】2018-09-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0090641
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒョン スン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、キョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジ ホン
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させることができる積層セラミックキャパシタを提供する。
【解決手段】積層セラミックキャパシタは、誘電体層、及び誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むセラミック本体と、セラミック本体の外側に配置され、且つ第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極、及び第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極と、を含み、誘電体層は、コア(core)-シェル(shell)構造を有する誘電体グレインを含み、誘電体グレインは、母材主成分として、チタン酸バリウム(BaTiO3)を含み、副成分として、希土類元素であるジスプロシウム(Dy)と、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)を含み、誘電体グレインは、Dyが存在しない第1領域、及び第1領域を囲み、Dyが存在する第2領域を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むセラミック本体と、前記セラミック本体の外側に配置され、前記第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極、及び前記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極とを含み、
前記誘電体層は、コア(core)-シェル(shell)構造を有する誘電体グレインを含み、
前記誘電体グレインは、母材主成分として、チタン酸バリウム(BaTiO3)を含み、副成分として、希土類元素であるジスプロシウム(Dy)と、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)を含み、前記誘電体グレイン内のDy含有量は前記母材主成分100モルに対して4.0モル以下であり、
前記誘電体グレインは、前記Dyが存在しない第1領域、及び前記第1領域を囲み、前記Dyが存在する第2領域を含み、
前記第1及び第2内部電極の厚さは0.4μm以下である、積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記希土類元素は、Y、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Pm、Eu、Tb、Tm、Yb、Lu、及びSmのうち少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記誘電体グレインは、前記母材主成分100モルに対して前記マグネシウム(Mg)を1.0モル以下の含有量で含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記誘電体グレインは、前記母材主成分100モルに対して前記アルミニウム(Al)を4.0モル以下の含有量で含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記誘電体グレインのうち2つの誘電体グレインにおいてジスプロシウム(Dy)が存在しない前記第1領域のそれぞれの境界間の最短距離をLとすると、
前記最短距離(L)上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域におけるジスプロシウム(Dy)の濃度は、前記第2領域内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度よりも低い、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記第2領域は、前記コア-シェル構造のうちシェルに該当する、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
前記第2領域は、前記コア-シェル構造のうち、コアの少なくとも一部及びシェルの少なくとも一部にわたって配置される、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記第1領域は、前記コアの内部に存在するか、又は前記コアと一致する、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性を向上させることができる積層セラミックキャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ又はサーミスタなどのセラミック材料を用いる電子部品は、セラミック材料からなるセラミック本体を有し、本体内部に形成された内部電極と、上記内部電極と接続されるように、セラミック本体の表面に設置された外部電極と、を備える。
【0003】
最近では、電子製品の小型化や多機能化に伴い、チップ部品も小型化及び高機能化しつつあるため、積層セラミックキャパシタに対してもサイズが小さく、容量が大きい高容量製品が求められている。
【0004】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化をともに達成する方法としては、内部の誘電体層及び電極層の厚さを薄くして、多くの数を積層することが挙げられる。また、現在の誘電体層の厚さは0.6μm程度のレベルであって、引き続き薄いレベルへの開発が進められている。
【0005】
このような状況下では、誘電体層の耐電圧特性の確保が重要な問題となっており、併せて誘電体の絶縁抵抗劣化に伴う不良率の増加が問題として浮上している。
【0006】
かかる問題を解決するためには、積層セラミックキャパシタの構造的な側面だけでなく、誘電体組成の側面でも高信頼性を確保することができる方法が必要な実情である。
【0007】
一方、積層セラミックキャパシタの誘電体層の信頼性を確保するための方法として、ジスプロシウム(Dy)のような希土類元素を多く添加することが挙げられる。ジスプロシウム(Dy)の場合、主にチタン酸バリウム(BaTiO3)のAサイトを置換して酸素空孔の濃度を減少させることで、シェル領域を構成し、かかるシェル領域は、誘電体グレインの粒界での電子の流れを防ぐ障壁として作用して漏れ電流を防ぐ役割を果たす。
【0008】
この際、上記ジスプロシウム(Dy)元素が酸素空孔濃度を効果的に低下させ、漏れ電流の障壁として作用するためには、誘電体グレインの位置別におけるジスプロシウム(Dy)の濃度を正確に調節する必要があるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、信頼性を向上させることができる積層セラミックキャパシタに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むセラミック本体と、上記セラミック本体の外側に配置され、且つ第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極、及び上記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極と、を含み、上記誘電体層は、内部にジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域、及び第1領域を囲む第2領域で構成される誘電体グレインを含み、上記誘電体グレインのうち2つの誘電体グレインにおいてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域のそれぞれの境界間の最短距離をLとすると、上記最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域におけるジスプロシウム(Dy)の濃度は、上記第2領域内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度よりも低い積層セラミックキャパシタを提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むセラミック本体を含み、上記誘電体層は、コア(core)-シェル(shell)構造を有する誘電体グレインを含み、上記誘電体グレインは、上記コア(core)の内部にジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域を含み、上記第1領域の外側には、上記第1領域を囲む第2領域が配置され、上記誘電体グレインのうち2つの誘電体グレインにおいてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域のそれぞれの境界間の最短距離をLとすると、上記最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域におけるジスプロシウム(Dy)の濃度は、上記第2領域内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度よりも低い積層セラミックキャパシタを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によると、セラミック本体内の誘電体層に含まれる誘電体グレインの位置別におけるジスプロシウム(Dy)の濃度を制御することにより、漏れ電流を低減するとともに絶縁抵抗(IR)の劣化を抑制して、信頼性を向上させることができる。
【0014】
特に、誘電体グレイン内部においてジスプロシウム(Dy)が存在しない領域外部におけるジスプロシウム(Dy)の濃度、及び誘電体グレインと誘電体グレインとの間の一定距離内に存在する領域におけるジスプロシウム(Dy)の濃度を調節することにより、漏れ電流を低減するとともに絶縁抵抗(IR)劣化を抑制して、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0017】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図であり、
図2は
図1のI-I'線に沿った断面図であり、
図3は
図2の「A」領域の拡大図であり、
図4は
図3の「B」領域の拡大図である。
【0018】
図1~
図4を参照すると、本実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、セラミック本体110を有し、上記セラミック本体110の内部に形成される複数の第1及び第2内部電極121、122と、上記セラミック本体110の外表面に形成される第1及び第2外部電極131、132と、を含む。
【0019】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100において、「長さ方向」とは
図1の「L」方向、「幅方向」とは「W」方向、「厚さ方向」とは「T」方向と定義することができる。ここで、「厚さ方向」は、誘電体層を積み上げる方向、すなわち、「積層方向」と同一の概念で用いることができる。
【0020】
上記セラミック本体110の形状に特に制限はないが、図面に示すように、直方体形状であることができる。
【0021】
上記セラミック本体110の内部に形成された複数の内部電極121、122は、セラミック本体の一面又は上記一面と向かい合う他面に一端が露出する。
【0022】
上記内部電極121、122は、互いに異なる極性を有する第1内部電極121及び第2内部電極122を一対にすることができる。
【0023】
第1内部電極121の一端はセラミック本体の一面に露出してもよく、第2内部電極122の一端は上記一面と向かい合う他面に露出してもよい。
【0024】
上記セラミック本体110の一面及び上記一面と向かい合う他面には、第1及び第2外部電極131、132がそれぞれ形成され、上記内部電極と電気的に連結されることができる。
【0025】
上記第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、上記第1及び第2内部電極121、122は、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)のうち1つ以上の物質を含む導電性ペーストを用いて形成されることができる。
【0026】
上記第1及び第2外部電極131、132は、静電容量を形成するために上記第1及び第2内部電極121、122と電気的に連結されることができる。上記第2外部電極132は、上記第1外部電極131の電位とは異なる電位に連結されることができる。
【0027】
上記第1及び第2外部電極131、132に含有される導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、又はこれらの合金を用いることができる。
【0028】
上記第1及び第2外部電極131、132の厚さは、用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されるものではないが、例えば、10~50μmであってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末であることができる。
【0030】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に、本発明の目的に応じて、様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0031】
上記誘電体層111は、焼結された状態であって、隣接する誘電体層同士の境界は確認できないほど一体化されることができる。
【0032】
上記誘電体層111上に第1及び第2内部電極121、122が形成されることができ、内部電極121、122は、焼結によって一誘電体層を間に挟んで、上記セラミック本体の内部に形成されることができる。
【0033】
誘電体層111の厚さは、キャパシタの容量設計に合わせて任意に変更することができる。本発明の一実施例では、焼成後の誘電体層の厚さが1層当たり0.4μm以下であることが好ましい。
【0034】
また、焼成後の上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは、1層当たり0.4μm以下であることが好ましい。
【0035】
図3を参照すると、上記誘電体層111は、内部にジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aと、第1領域11aを囲む第2領域11bとで構成された誘電体グレイン11を含む。
【0036】
上記誘電体グレイン11はABO3で表されるペロブスカイト構造を有する。
【0037】
上記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選択された1つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0038】
上記Bは、特に制限されるものではなく、上記ペロブスカイト構造においてBサイトに位置することができる物質であれば可能である。例えば、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選択された1つ以上を含むことができる。
【0039】
上記誘電体グレインは、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-xCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、又は上記希土類元素のいずれか、あるいはそれ以上が一部固溶されたBamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-xCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)からなる群より選択された1つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
最近では、電子製品の小型化や多機能化に伴い、チップ部品も小型化及び高機能化しつつあるため、積層セラミックキャパシタに対してもサイズが小さく、容量が大きい高容量製品が求められている。
【0041】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化をともに達成する方法としては、内部の誘電体層及び電極層の厚さを薄くして、多くの数を積層することが挙げられる。薄い誘電体層及び電極層が適用された積層セラミックキャパシタでは、誘電体層の耐電圧特性の確保が重要な問題となっており、併せて誘電体の絶縁抵抗劣化に伴う不良率の増加が問題として浮上している。
【0042】
かかる問題を解決するためには、積層セラミックキャパシタの構造的な側面だけでなく、誘電体組成の側面でも高信頼性を確保することができる方法が必要な実情である。
【0043】
上記信頼性低下の問題を改善させるためには、希土類元素が完全固溶されたペロブスカイト構造を有する酸化物を母材とする誘電体グレインを用いることがより好ましい。
【0044】
すなわち、積層セラミックキャパシタの誘電体層の厚さが薄くなるにつれて、ショート不良や信頼性不良などの問題点を解決するためには、ペロブスカイト構造を有する誘電体グレインの内部及び境界部などの各領域の希土類元素の含有量分布を調節することが要求される。
【0045】
一方、積層セラミックキャパシタの誘電体層の信頼性を確保するための方法として、ジスプロシウム(Dy)のような希土類元素を多く添加することが挙げられる。ジスプロシウム(Dy)の場合、主にチタン酸バリウム(BaTiO3)のAサイトを置換して酸素空孔の濃度を減少させることで、シェル領域を構成し、かかるシェル領域は、誘電体グレインの粒界での電子の流れを防ぐ障壁として作用して漏れ電流を防ぐ役割を果たす。
【0046】
この際、上記ジスプロシウム(Dy)元素が酸素空孔濃度を効果的に低下させ、漏れ電流の障壁として作用するためには、誘電体グレインの位置別におけるジスプロシウム(Dy)の濃度を正確に調節する必要があるのが実情である。
【0047】
図4を参照すると、上記誘電体グレイン11のうち2つの誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aのそれぞれの境界間の最短距離をLとすると、上記最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sにおけるジスプロシウム(Dy)の濃度は、上記第2領域11b内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度よりも低い。
【0048】
上記最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sとは、第1領域11aのそれぞれの境界間の最短距離(L)の1/2地点を中心に、対称に0.2Lの距離だけ離れた領域を意味する。
【0049】
つまり、上記最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sとは、上記最短距離(L)を示すために、誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aのそれぞれの境界間に引かれた仮想線の中心を基準に0.4Lの長さに対応する領域を意味する。
【0050】
上記最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sにおけるジスプロシウム(Dy)の濃度が、上記第2領域11b内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度よりも低くなるように調節することにより、チタン酸バリウム(BaTiO3)のAサイトを置換して酸素空孔の濃度を減らすことができ、漏れ電流を防いで信頼性を向上させることができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、上記2つの誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aのそれぞれの境界間の最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sにおけるジスプロシウム(Dy)の濃度は、上記第2領域11b内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度の50%以下であることができる。
【0052】
上記最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sにおけるジスプロシウム(Dy)の濃度が、上記第2領域11b内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度の50%以下となるように調節することにより、酸素空孔の濃度を減らすことができる。これにより、漏れ電流を防いで信頼性を向上させることができる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体グレイン11の第2領域11bとは、上記誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aを囲むように配置され、且つ上記第1領域11aの周辺部であって、ジスプロシウム(Dy)が存在する領域を意味する。
【0054】
また、上記誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aのそれぞれの境界間の最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sは、誘電体グレイン11において粒界(grain boundary)を超える領域であって、誘電体グレイン11と他の誘電体グレイン11との間に位置する領域によって決定される。
【0055】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体グレイン11は、コア(core)-シェル(shell)構造を有し、上記ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aは、上記コア(core)の内部に存在することができる。
【0056】
一般に、誘電体グレイン11がコア(core)-シェル(shell)構造を有する場合、コア(core)の内部には、添加剤元素として希土類などの元素が存在しないか、存在しても微量である。
【0057】
本発明の一実施形態によると、上記ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aは、コア(core)-シェル(shell)構造でコア(core)と一致してもよく、コア(core)の内部で一定の領域を占めてもよい。
【0058】
また、上記ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aを囲む第2領域11bは、ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aと対比するための領域であって、ジスプロシウム(Dy)が存在する領域として理解することができる。
【0059】
したがって、上記ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aを囲む第2領域11bは、コア(core)-シェル(shell)構造でシェル(shell)に該当することができるが、必ずしもこれに制限されるものではなく、シェル(shell)と一致しなくてもよい。
【0060】
図3及び4では、誘電体グレイン11の形状を楕円形に表示したが、これは説明の便宜のためのものであって、その形状が図面に示されたものに限定される必要はなく、完全な球形あるいは楕円形ではない球状、又は楕円形のような形状を有することができる。
【0061】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、超小型の高容量製品であって、上記誘電体層111の厚さは0.4μm以下、上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは0.4μm以下であることを特徴とするが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0062】
すなわち、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、超小型の高容量製品であるため、誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122の厚さは、従来の製品に比べて薄い薄膜で構成されており、薄い誘電体層及び電極層が適用された積層セラミックキャパシタでは、誘電体層の耐電圧特性の確保が重要な問題となっており、併せて誘電体の絶縁抵抗劣化に伴う不良率の増加が問題として浮上している。
【0063】
換言すると、従来の積層セラミックキャパシタの場合には、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタに含まれる誘電体層及び内部電極よりは比較的厚い厚さを有したため、誘電体グレインの位置別におけるジスプロシウム(Dy)の濃度を、本発明の一実施形態のように調節しなくても大きい問題にはならなかった。
【0064】
しかし、本発明の一実施形態のように、厚さが0.4μm以下の薄膜の誘電体層及び内部電極が適用される製品では、誘電体グレインの位置別におけるジスプロシウム(Dy)の濃度を、本発明の一実施形態のように調節しなければならない。
【0065】
すなわち、本発明の一実施形態のように、上記2つの誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aのそれぞれの境界間の最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sにおけるジスプロシウム(Dy)の濃度が、上記第2領域11b内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度の50%以下となるように調節することにより、誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122の厚さが0.4μm以下の薄膜の場合にも、酸素空孔の濃度を減らすことができ、これにより、漏れ電流を防いで信頼性を向上させることができる。
【0066】
但し、上記薄膜とは、誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122の厚さが0.4μm以下であることを意味するものではなく、従来の製品よりも薄い厚さの誘電体層及び内部電極を含む概念として理解することができる。
【0067】
上記誘電体グレイン11は、チタン酸バリウム系の主成分と、上述のように、希土類元素のジスプロシウム(Dy)の副成分と、を含み、その他の副成分として、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)をさらに含むことができる。
【0068】
上記誘電体グレインは、母材主成分として、チタン酸バリウム(BaTiO3)を含み、上記母材主成分100モルに対して上記マグネシウム(Mg)を0モル超1.0モル以下の含有量で含むことができる。
【0069】
一般に、マグネシウム(Mg)酸化物の場合には、チタン酸バリウムに添加されて誘電体グレインの粒成長を調節する特性を有すると知られている。
【0070】
すなわち、チタン酸バリウムに添加されたマグネシウム(Mg)酸化物の含有量が多い場合には誘電体グレインの粒成長が抑制され、添加量が少ない場合には逆に異常粒成長粒子が発生すると知られている。
【0071】
しかし、誘電体グレインの粒成長を効果的に制御することができるマグネシウム(Mg)の含有量については特に知られていないのが実情である。
【0072】
本発明の一実施形態によると、上記のように誘電体グレイン11が母材主成分100モルに対して0モル超1.0モル以下の含有量で上記マグネシウム(Mg)を含むことにより、信頼性を向上させるとともに高容量を確保することが可能となる。
【0073】
上記誘電体グレイン11に含まれるマグネシウム(Mg)の含有量が母材主成分100モルに対して0モルの場合には、各領域の誘電体グレインが過度に粒成長するようになり、信頼性が低下し、要求される目標容量を得ることができなくなるという問題がある。
【0074】
一方、上記誘電体グレイン11に含まれるマグネシウム(Mg)の含有量が母材主成分100モルに対して1.0モルを超える場合には、誘電体グレインの粒成長を過度に抑制するようになり、要求される容量の確保が困難になるという問題がある。
【0075】
上記誘電体グレイン11は、副成分元素として、アルミニウム(Al)をさらに含むことができる。
【0076】
上記誘電体グレイン11は、母材主成分として、チタン酸バリウム(BaTiO3)を含み、上記母材主成分100モルに対して上記アルミニウム(Al)を0モル超4.0モル以下の含有量で含むことができる。
【0077】
上記アルミニウム(Al)は、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下し、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0078】
上記アルミニウム(Al)の含有量が上記母材主成分100モルに対して4.0モルを超えると、焼結性及び緻密度を低下し、2次相を生成するなどの問題があり得るため好ましくない。
【0079】
その他、上記誘電体グレイン11は、副成分として、ジスプロシウム(Dy)以外の他の希土類元素を含むこともできる。
【0080】
ジスプロシウム(Dy)以外の他の希土類元素としては、Y、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Pm、Eu、Tb、Tm、Yb、Lu、及びSmのうち少なくとも1つであることができる。
【0081】
上記希土類元素は、積層セラミックキャパシタの信頼性が低下することを防ぐ役割を果たす。
【0082】
上記ジスプロシウム(Dy)を含み、Y、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Pm、Eu、Tb、Tm、Yb、Lu、及びSmのうち少なくとも1つの希土類元素は、上記母材主成分100モルに対して0モル超4.0モル以下の含有量で含むことができる。
【0083】
上記希土類元素の含有量が4.0モルを超える場合には、信頼性が低下するか、又は誘電体グレインの誘電率が低くなって高温耐電圧特性が悪くなるという問題が発生することがある。
【0084】
一方、本発明の他の実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111、及び上記誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含むセラミック本体110を含み、上記誘電体層111は、コア(core)-シェル(shell)構造を有する誘電体グレイン11を含み、上記誘電体グレイン11は、上記コア(core)の内部にジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aを含み、上記第1領域11aの外側には上記第1領域11aを囲む第2領域11bが配置され、上記誘電体グレイン11のうち2つの誘電体グレインにおいてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aのそれぞれの境界間の最短距離をLとすると、上記最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sにおけるジスプロシウム(Dy)の濃度は、上記第2領域11b内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度よりも低いことを特徴とする。
【0085】
特に、上記2つの誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aのそれぞれの境界間の最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sにおけるジスプロシウム(Dy)の濃度は、上記第2領域11b内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度の50%以下であることができる。
【0086】
上記最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sにおけるジスプロシウム(Dy)の濃度が、上記第2領域11b内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度の50%以下となるように調節することにより、酸素空孔の濃度を減らすことができ、これにより、漏れ電流を防いで信頼性を向上させることができる。
【0087】
本発明の他の実施形態によると、上記誘電体グレイン11の第2領域11bとは、上記誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aを囲むように配置され、且つ上記第1領域11aの周辺部であって、ジスプロシウム(Dy)が存在する領域を意味する。
【0088】
また、上記誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aのそれぞれの境界間の最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sは、誘電体グレイン11において粒界(grain boundary)を超える領域であって、誘電体グレイン11と他の誘電体グレイン11との間に位置する領域によって決定される。
【0089】
本発明の他の実施形態によると、上記誘電体グレイン11は、コア(core)-シェル(shell)構造を有し、上記ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aは、上記コア(core)の内部に存在することができる。
【0090】
一般に、誘電体グレイン11がコア(core)-シェル(shell)構造を有する場合、コア(core)の内部には、添加剤元素として希土類などの元素が存在しないか、存在しても微量である。
【0091】
本発明の他の実施形態によると、上記ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aは、コア(core)-シェル(shell)構造でコア(core)と一致してもよく、コア(core)の内部で一定の領域を占めてもよい。
【0092】
また、上記ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aを囲む第2領域11bは、ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aと対比するための領域であって、ジスプロシウム(Dy)が存在する領域として理解することができる。
【0093】
したがって、上記ジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aを囲む第2領域11bは、コア(core)-シェル(shell)構造でシェル(shell)に該当することができるが、必ずしもこれに制限されるものではなく、シェル(shell)と一致しなくてもよい。
【0094】
その他の特徴は、上述した本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの特徴と重複しているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0095】
以下では、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法について説明するが、これに制限されるものではない。
【0096】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法は、先ず、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末を含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して、複数個のセラミックグリーンシートを用意する。これにより、誘電体層を形成することができる。
【0097】
上記セラミックグリーンシートは、セラミック粉末、バインダー、溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法で数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することができる。
【0098】
上記セラミック粉末は、BaTiO3又はCa、Zr、Snなどが一部固溶された(Ba,Ca)(Ti,Ca)O3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3、Ba(Ti,Zr)O3、(Ba,Ca)(Ti,Sn)O3で表される主成分を含む。上記母材主成分は粉末の形で含まれることができる。
【0099】
上記セラミック粉末は、副成分として、ジスプロシウム(Dy)を含むことができ、上記母材主成分100モルに対して0モル超4.0モル以下の含有量で含むことができる。
【0100】
また、上記セラミック粉末は、副成分として、マグネシウム(Mg)を含むことができ、上記母材主成分100モルに対して0モル超1.0モル以下の含有量で上記マグネシウム(Mg)を含む。
【0101】
また、上記セラミック粉末は、副成分として、アルミニウム(Al)を含むことができ、上記母材主成分100モルに対して0モル超4.0モル以下の含有量で上記アルミニウム(Al)を含む。
【0102】
次に、ニッケル粒子の平均サイズが0.1~0.2μmであり、40~50重量部のニッケル粉末を含む内部電極用導電性ペーストを用意することができる。
【0103】
上記グリーンシート上に上記内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷工法で塗布して内部電極を形成した後、内部電極パターンが配置されたグリーンシートを積層してセラミック本体110を製作した。
【0104】
セラミック本体110の内部の誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122は、焼成後の厚さが0.4μm以下となるように製作した。
【0105】
次に、上記セラミック本体の外側に導電性金属及びガラスを含む第1及び第2外部電極を形成することができる。
【0106】
上記導電性金属は、特に制限されるものではないが、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、及びこれらの合金からなる群より選択された1つ以上であることができる。
【0107】
上記ガラスは、特に制限されるものではなく、一般の積層セラミックキャパシタの外部電極の製作に用いられるガラスと同一の組成の物質が使用されることができる。
【0108】
上記第1及び第2外部電極は、上記セラミック本体の外側面に形成されることにより、上記第1及び第2内部電極とそれぞれ電気的に連結されることができる。
【0109】
上記第1及び第2外部電極上に追加のメッキ層を形成することができる。
【0110】
上記メッキ層は、特に制限されるものではないが、例えば、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、及びこれらの合金からなる群より選択された1つ以上を含むことができる。
【0111】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111内の誘電体グレイン11のうち2つの誘電体グレイン11においてジスプロシウム(Dy)が存在しない第1領域11aのそれぞれの境界間の最短距離L上の1/2地点を中心に、±0.2Lの範囲内の領域Sにおけるジスプロシウム(Dy)の濃度が、上記第2領域11b内におけるジスプロシウム(Dy)の濃度の50%以下となるように調節することにより、酸素空孔の濃度を減らすことができ、これにより、漏れ電流を防いで信頼性を向上させることができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0113】
11 誘電体グレイン
100 積層セラミックキャパシタ
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極