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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191534
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】内燃機関のピストン
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/22 20060101AFI20221221BHJP
   F01P 3/10 20060101ALI20221221BHJP
   F16J 1/09 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F02F3/22 A
F01P3/10 A
F16J1/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019208178
(22)【出願日】2019-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 康雄
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 圭太郎
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA09
3J044BC01
3J044CA04
3J044DA09
(57)【要約】
【課題】排出された冷却材がシリンダに付着することを抑制することができる内燃機関のピストンを提供する。
【解決手段】ピストン11は、ピストンヘッド3と、筒部4と、を備えている。ピストンヘッド3には、クーリングチャンネル5と、流入孔51と、排出孔52が形成されている。排出孔52は、クーリングチャンネル5と底面部35を連通し、クーリングチャンネル5を通過した冷却材が排出される。また、排出孔52の延在方向L1は、シリンダの内壁面から離れる方向に傾斜している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状に形成され、冠面を有するピストンヘッドと、
前記ピストンヘッドの前記冠面の反対側の底面部から連続し、シリンダの内壁面と対向するスカート部を有する筒部と、を備え、
前記ピストンヘッドには、
その内部において冷却材が通過する円環状のクーリングチャンネルと、
前記クーリングチャンネルと前記底面部を連通し、前記冷却材が導入される流入孔と、
前記クーリングチャンネルと前記底面部を連通し、前記クーリングチャンネルを通過した前記冷却材が排出される排出孔と、が形成され、
前記排出孔における前記クーリングチャンネルから前記底面部に向かう延在方向は、前記シリンダの内壁面から離れる方向に傾斜している
内燃機関のピストン。
【請求項2】
前記排出孔の前記延在方向は、前記ピストンヘッドの中心を通り、前記シリンダ内を移動する方向と平行をなす中心軸線に対して傾斜している
請求項1に記載の内燃機関のピストン。
【請求項3】
前記排出孔の前記延在方向における前記中心軸線に対する傾斜角度は、1度以上に設定される
請求項2に記載の内燃機関のピストン。
【請求項4】
前記筒部は、
ピストンピンが挿入されるピン孔が形成されたピンボス部を有し、
前記排出孔の前記延在方向は、前記ピン孔及び前記ピストンピンに干渉しない向きに設定される
請求項3に記載の内燃機関のピストン。
【請求項5】
前記排出孔は、
前記クーリングチャンネル側の開口である第1開口と、
前記底面部側の開口である第2開口と、
前記第1開口と前記第2開口を接続する連通路と、を有し、
前記第2開口の中心は、前記クーリングチャンネルよりも前記ピストンヘッドの中心側に位置している
請求項4に記載の内燃機関のピストン。
【請求項6】
前記第2開口は、前記ピストンピンに接続されるコネクティングロッドが移動する軌跡である第1軸線と重ならない位置に形成される
請求項5に記載の内燃機関のピストン。
【請求項7】
前記第1開口は、前記第1軸線と重ならない位置に形成される
請求項6に記載の内燃機関のピストン。
【請求項8】
前記第1開口は、前記第1軸線上に形成され、
前記排出孔の前記延在方向は、前記中心軸線及び前記第1軸線に対して傾斜する
請求項6に記載の内燃機関のピストン。
【請求項9】
前記排出孔は、複数形成される
請求項1に記載の内燃機関のピストン。
【請求項10】
前記ピストンヘッドは、前記中心軸線が鉛直方向と直交し、かつ水平方向と平行に配置され、
前記排出孔は、前記ピストンヘッドの前記中心よりも前記鉛直方向の下側に形成される
請求項2に記載の内燃機関のピストン。
【請求項11】
前記排出孔の前記延在方向は、前記水平方向に対して所定の傾斜角度で上方に向けて傾斜する
請求項10に記載の内燃機関のピストン。
【請求項12】
前記流入孔は、前記ピストンヘッドの前記中心よりも前記鉛直方向の上側に形成される
請求項10に記載の内燃機関のピストン。
【請求項13】
前記排出孔の内壁面のうち少なくとも前記鉛直方向の下側に位置する内壁面が前記水平方向に対して傾斜している
請求項10に記載の内燃機関のピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、シリンダ内を往復運動するピストンが設けられている。また、内燃機関は、ピストンを冷却させるために、ピストンに向けて冷却材としてオイルを噴射させている。このような、ピストンとしては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、その内部にピストンリングに対応して環状のクーリングチャンネルが設けられているとともに、該クーリングチャンネル内のオイルを排出するためのオイル排出口が形成されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-278251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、クーリングチャンネルの排出孔から排出された冷却材がシリンダに付着し、付着した冷却材によりピストンの動きが妨げられる、という問題を有していた。
【0006】
本目的は、上記の問題点を考慮し、排出された冷却材がシリンダに付着することを抑制することができる内燃機関のピストンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するため、ピストンは、円板状に形成され、冠面を有するピストンヘッドと、筒部と、クーリングチャンネルと、を備えている。筒部は、ピストンヘッドの冠面の反対側の底面部から連続し、シリンダの内壁面と対向するスカート部を有する。ピストンヘッドには、円環状のクーリングチャンネルと、流入孔と、排出孔が形成されている。クーリングチャンネルは、ピストンヘッドの内部において冷却材が通過する。流入孔は、クーリングチャンネルと底面部を連通し、冷却材が導入される。排出孔は、クーリングチャンネルと底面部を連通し、クーリングチャンネルを通過した冷却材が排出される。また、排出孔におけるクーリングチャンネルから底面部に向かう延在方向は、シリンダの内壁面から離れる方向に傾斜している。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の内燃機関のピストンによれば、排出された冷却材がシリンダの内壁に付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態例にかかるピストンを備えた内燃機関を示す断面図である。
図2】第1の実施の形態例にかかるピストンを示すもので、図2Aは縦断面図、図2B図2AのA-A線断面図である。
図3】第1の実施の形態例にかかるピストンを底面側から見た平面図である。
図4図3に示すB-B線断面図である。
図5】第2の実施の形態例にかかるピストンを底面側から見た平面図である。
図6図5に示すC-C線断面図である。
図7】第3の実施の形態例にかかるピストンを底面側から見た平面図である。
図8図7に示すD-D線断面図である。
図9】第4の実施の形態例にかかるピストンを底面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、内燃機関のピストンの実施の形態例について、図1図9を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0011】
1.第1の実施の形態例
1-1.内燃機関の構成
まず、第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる内燃機関の構成について図1を参照して説明する。
図1は、内燃機関を示す断面図である。
【0012】
図1に示す内燃機関1は、シリンダを水平に配置する水平対向エンジンに適用されるものである。図1に示すように、内燃機関1は、シリンダブロック21と、シリンダヘッド22と、ピストン11と、コネクティングロッド24を備えている。シリンダブロック21には、円筒状のシリンダ20が形成されている。ピストン11は、シリンダ20内を摺動する。
【0013】
ピストン11は、シリンダ20とシリンダブロック21で形成された燃焼室S1内に流入した燃料とガスの混合気を圧縮する。そして、ピストン11は、燃焼室S1内に生じた燃焼圧力によりシリンダ20内を往復運動する。
【0014】
また、ピストン11には、コネクティングロッド24がピストンピン23を介して接続されている。また、コネクティングロッド24は、不図示のクランクシャフトに接続されている。そして、ピストン11の往復運動がクランクシャフトにより回転運動に変換される。なお、ピストン11の詳細な構成については後述する。
【0015】
シリンダブロック21には、ウォータジャケット27が形成されている。ウォータジャケット27には、シリンダブロック21及びシリンダ20を冷却させるための冷却水が流れる。さらに、シリンダブロック21内には、オイルジェット装置28が設けられている。オイルジェット装置28は、後述するピストン11の流入孔51に向けて冷却材としてオイルOを噴射する。
【0016】
シリンダヘッド22は、燃焼室S1内に混合ガスを導入する吸気ポート22aと、燃焼後のガスを排気する排気ポート22bが形成されている。また、シリンダヘッド22には、吸気バルブ25と、排気バルブ26が装着されている。吸気バルブ25は、吸気ポート22aに開閉可能に配置されている。また、排気バルブ26は、排気ポート22bに開閉可能に配置されている。
【0017】
1-2.ピストンの構成例
次に、ピストン11の詳細な構成について図1から図4を参照して説明する。
図2Aはピストン11の縦断面図、図2B図2AのA-A線断面図、図3はピストン11を底面側から見た平面図、図4図3に示すB-B線断面図である。
【0018】
以下、後述するピストンヘッド3の中心Q1を通り、ピストン11の移動方向と平行な軸線を中心軸線T1とする。中心Q1を通り、中心軸線T1と直交し、かつ鉛直方向Z1と平行な軸線を第1軸線X1とする。そして、中心Q1を通り、中心軸線T1及び第1軸線X1と直交する軸線を第2軸線Y1とする。ピストン11の中心軸線T1及び第2軸線Y1は、鉛直方向Z1に対して直交し、水平方向と平行をなしている。
【0019】
図1から図4に示すように、ピストン11は、円板状のピストンヘッド3と、筒部4とを有している。ピストンヘッド3は、燃焼室S1及びシリンダヘッド22と対向する冠面30を有している。冠面30は、平坦状に形成されており、第1軸線X1方向及び第2軸線Y1方向と平行に配置される。
【0020】
ピストンヘッド3の外周面には、3つのリング溝31、32、33が形成されている。3つのリング溝31、32、33は、ピストンヘッド3の軸方向に沿って所定の間隔を空けて形成されている。3つのリング溝31、32、33は、ピストンヘッド3の周方向に連続して形成されている。3つのリング溝31、32、33には、それぞれ円環状のピストンリングR1、R2、R3が取り付けられる。
【0021】
ピストンヘッド3の内部には、クーリングチャンネル5が形成されている。クーリングチャンネル5は、ピストンヘッド3の周方向に沿って連続する円環状の空洞部である。クーリングチャンネル5には、オイルジェット装置28から噴射されたオイルOが通過する。これにより、ピストンヘッド3が冷却される。
【0022】
また、ピストンヘッド3における冠面30とは反対側の底面部35には、流入孔51と、排出孔52が形成されている。なお、流入孔51及び排出孔52の詳細な構成については、後述する。
【0023】
筒部4は、ピストンヘッド3における底面部35の外周部から連続して形成されている。そして、筒部4は、底面部35から冠面30とは反対方向に向けて突出している。筒部4は、第1スカート部41と、第2スカート部42と、第1ピンボス部43と、第2ピンボス部44とを有している。
【0024】
第1スカート部41及び第2スカート部42は、円弧状に形成されている。そして、第1スカート部41と第2スカート部42は、第1軸線X1方向で対向している。また、図1に示すように、第1スカート部41及び第2スカート部42は、シリンダ20の内壁面20aと対向する。
【0025】
第1ピンボス部43は、第1スカート部41の周方向の一端部と第2スカート部42の周方向の一端部を接続するように配置されている。第2ピンボス部44は、第1スカート部41の周方向の他端部と第2スカート部42の周方向の他端部を接続するように配置されている。第1ピンボス部43は、第1軸線X1よりも第2軸線Y1方向の一側に配置され、第2ピンボス部44は、第1軸線X1よりも第2軸線Y1方向の他側に配置されている。そして、第1ピンボス部43と第2ピンボス部44は、第2軸線Y1方向で間隔を空けて対向する。
【0026】
また、第1ピンボス部43及び第2ピンボス部44は、平板状に形成されている。さらに、第1ピンボス部43及び第2ピンボス部44は、その厚さが第1スカート部41及び第2スカート部42よりも厚く形成されている。
【0027】
第1ピンボス部43における底面部35とは反対側の端部には、第1ピン孔43aが形成されており、第2ピンボス部44における底面部35とは反対側の端部には、第2ピン孔44aが形成されている。そして、図3に示すように、第1ピン孔43a及び第2ピン孔44aは、第2軸線Y1方向で対向する。また、第1ピン孔43a及び第2ピン孔44aの中心は、第2軸線Y1上に位置する。
【0028】
第1ピン孔43aには、ピストンピン23の一端部が挿入され、第2ピン孔44aには、ピストンピン23の他端部が挿入される。そして、ピストンピン23は、その軸方向を第2軸線Y1方向と平行にした状態で、第1ピンボス部43と第2ピンボス部44に支持される。また、第1ピンボス部43と第2ピンボス部44の間には、ピストンピン23に支持されるコネクティングロッド24が配置される。そして、コネクティングロッド24は、第1軸線X1上で移動する。
【0029】
次に、流入孔51及び排出孔52について説明する。
流入孔51は、ピストンヘッド3を底面部35からクーリングチャンネル5にかけて貫通する貫通孔である。流入孔51は、クーリングチャンネル5と底面部35連通している。また、流入孔51は、略円形に開口しており、その軸方向が中心軸線T1方向、すなわち水平方向と平行に形成されている。
【0030】
流入孔51は、クーリングチャンネル5上で、かつ第1軸線X1と重ならない位置に形成されている。また、流入孔51は、中心Q1よりも鉛直方向Z1の上側に配置されている。この流入孔51には、オイルジェット装置28からオイルOが導入される。
【0031】
排出孔52は、ピストンヘッド3を底面部35からクーリングチャンネル5にかけて貫通する貫通孔であり、クーリングチャンネル5と底面部35を連通している。排出孔52からは、クーリングチャンネル5を通過したオイルOが排出される。また、排出孔52は、略円形に開口している。排出孔52は、中心Q1よりも鉛直方向Z1の下側に配置されている。
【0032】
排出孔52は、クーリングチャンネル5側の開口である第1開口52aと、底面部35側の開口である第2開口52bと、第1開口52aと第2開口52bを接続する連通路52cとを有している。第1開口52aは、その中心がクーリングチャンネル5上で、かつ第1軸線X1と重ならない位置に形成されている。
【0033】
また、第2開口52bは、その中心がクーリングチャンネル5よりもピストンヘッド3の中心Q1側で、かつ第1軸線X1と重ならない位置に形成されている。そのため、排出孔52における第1開口52a(クーリングチャンネル5)から第2開口52b(底面部35)に向かう方向である延在方向L1は、中心軸線T1に対して傾斜している。
【0034】
また、排出孔52の延在方向L1における中心軸線T1に対する傾斜角度θ1は、1度以上に設定されている。また、排出孔52の延在方向L1は、第1ピンボス部43、第2ピンボス部44のピン孔43a、44b及びピストンピン23に干渉しない向きに設定される。
【0035】
また、連通路52cの内壁面は、延在方向L1に沿って形成されているため、オイルOは、第2開口52bから延在方向L1に沿って排出される。そして、第2開口52bは、クーリングチャンネル5よりも中心Q1側に位置するため、排出孔52の延在方向L1は、ピストンヘッド3の外周部から離れる方向、すなわちシリンダ20の内壁面20aから離れる方向を向いている。これにより、オイルOをシリンダ20の内壁面20aから離れる方向に排出させることができる。その結果、排出孔52から排出されたオイルOがシリンダ20の内壁面20aに付着することを抑制することができる。
【0036】
上述したように、ピストン11は、その中心軸線T1が水平方向と平行をなし、鉛直方向Z1と直交する向きに配置される。そして、第2開口52bは、第1開口52aよりも鉛直方向Z1の上側に形成される。そのため、排出孔52の延在方向L1は、水平方向に対して所定の傾斜角度θ1で上方に向けて傾斜する。したがって、オイルOは、排出孔52から水平方向に対して傾斜角度θ1で上方に向けて排出される。
【0037】
これにより、排出孔52の延在方向L1を水平方向と平行に形成した場合よりも、排出孔52から排出されるオイルOの飛距離を伸ばすことができる。その結果、水平対向エンジンにピストン11を適用した場合でも、オイルOがシリンダ20内に溜まることを抑制することができる。
【0038】
さらに、第2開口52bが第1軸線X1と重ならない位置に形成されて、連通路52cの傾斜角度θ1が第1ピンボス部43、第2ピンボス部44及びピストンピン23に干渉しない範囲に設定されている。そのため、排出孔52から排出されたオイルOがピストンピン23や、コネクティングロッド24に付着することを抑制することができる。その結果、オイルOによってコネクティングロッド24の移動が阻害されることを抑制することができる。
【0039】
なお、上述した例では、連通路52cの内壁面全体を中心軸線T1に対して傾斜させた例を説明したが、これに限定されるものではない。連通路52cの内壁面のうち、ピストンヘッド3の外周面側の内壁面、すなわち鉛直方向Z1の下側の内壁面のみを中心軸線T1及び水平方向に対して傾斜させてもよい。このような構成においても、排出孔52からオイルOを、シリンダ20の内壁面20aから離れる方向に向けて排出することができる。
【0040】
上述した構成を有するピストン11は、金属材料、例えばAl-Si系のアルミニウム合金(AC8A等)を鋳造することにより形成されている。
【0041】
2.第2の実施の形態例
次に、図5及び図6を参照して第2の実施の形態例にかかるピストンについて説明する。
図5は、第2の実施の形態例にかかるピストンを底面側から見た平面図、図6は、図5に示すC-C線断面図である。
【0042】
この第2の実施の形態例にかかるピストン11Aが、第1の実施の形態例にかかるピストン11と異なる点は、排出孔を複数設けた点である。そのため、第1の実施の形態例にかかるピストン11と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0043】
図5及び図6に示すように、ピストン11Aは、ピストンヘッド3Aと、筒部4とを有している。ピストンヘッド3Aには、クーリングチャンネル5と、流入孔51と、第1排出孔52と、第2排出孔53が形成されている。なお、クーリングチャンネル5及ぶ流入孔51の構成は、第1の実施の形態例にかかるピストン11と同一であるため、その説明は省略する。
【0044】
第1排出孔52及び第2排出孔53は、中心Q1よりも鉛直方向Z1の下側に配置されている。第1排出孔52は、第1軸線X1よりも第2軸線Y1方向の一側に配置され、第2排出孔53は、第1軸線X1よりも第2軸線Y1方向の他側に配置されている。第1排出孔52は、第1の実施の形態例にかかる排出孔52と同一の構成を有しているため、その説明は省略する。
【0045】
第2排出孔53は、クーリングチャンネル5側の開口である第1開口53aと、底面部35側の開口である第2開口53bと、第1開口53aと第2開口53bを接続する連通路53cとを有している。第1開口53aは、クーリングチャンネル5上で、かつ第1軸線X1と重ならない位置に形成されている。また、第2開口53bは、クーリングチャンネル5よりも中心Q1側で、かつ第1軸線X1と重ならない位置に形成されている。そのため、第2排出孔53における第1開口53aから第2開口53bに向かう方向である延在方向L2は、中心軸線T1に対して傾斜している。
【0046】
また、第2排出孔53の延在方向L2における中心軸線T1に対する傾斜角度は、第1排出孔52と同様に、1度以上で、第1ピンボス部43、第2ピンボス部44及びピストンピン23に干渉しない範囲に設定される。これにより、第2排出孔53から排出されるオイルOも、シリンダ20の内壁面20aから離れる方向で、かつ鉛直方向の上方に向けて排出される。また、第2排出孔53から排出されたオイルOがピストンピン23や、コネクティングロッド24に付着することを抑制することができる。
【0047】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかるピストン11と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するピストン11Aによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるピストン11と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
第2の実施の形態例にかかるピストン11Aでは、排出孔を2つ設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、排出孔を3つ以上設けてもよい。なお、複数の排出孔は、少なくともピストンヘッド3Aの中心Q1よりも鉛直方向Z1の下側に配置される。
【0049】
3.第3の実施の形態例
次に、図7及び図8を参照して第3の実施の形態例にかかるピストンについて説明する。
図7は、第3の実施の形態例にかかるピストンを底面側から見た平面図、図8は、図7に示すD-D線断面図である。
【0050】
この第3の実施の形態例にかかるピストンが、第1の実施の形態例にかかるピストン11と異なる点は、排出孔の形状である。そのため、第1の実施の形態例にかかるピストン11と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0051】
図7及び図8に示すように、ピストン11Bは、ピストンヘッド3Bと、筒部4とを有している。ピストンヘッド3Bには、クーリングチャンネル5と、流入孔51と、排出孔62が形成されている。なお、クーリングチャンネル5及ぶ流入孔51の構成は、第1の実施の形態例にかかるピストン11と同一であるため、その説明は省略する。
【0052】
排出孔62は、クーリングチャンネル5側の開口である第1開口62aと、底面部35側の開口である第2開口62bと、第1開口62aと第2開口62bを接続する連通路62cとを有している。第1開口62a及び第2開口62bは、それぞれ矩形状に開口しており、連通路62cは、角筒状に形成されている。
【0053】
第1開口62a及び第2開口62bを形成する位置は、第1の実施の形態例にかかる第1開口52a及び第2開口52bと同様である。そのため、排出孔62における第1開口62aから第2開口62bに向かう方向である延在方向L3は、中心軸線T1に対して傾斜している。
【0054】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかるピストン11と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するピストン11Bによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるピストン11と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
また、排出孔の開口の形状は、円形に限定されるものではなく、第3の実施の形態例にかかる排出孔62のように矩形状や、楕円形状、多角形状等その他各種の形状に形成してもよい。
【0056】
4.第4の実施の形態例
次に、図9を参照して第4の実施の形態例にかかるピストンについて説明する。
図9は、第4の実施の形態例にかかるピストンを底面側から見た平面図。
【0057】
この第4の実施の形態例にかかるピストンが、第1の実施の形態例にかかるピストン11と異なる点は、排出孔を配置する位置である。そのため、第1の実施の形態例にかかるピストン11と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0058】
図9に示すように、ピストン11Cは、ピストンヘッド3Cと、筒部4とを有している。ピストンヘッド3Cには、クーリングチャンネル5と、流入孔51と、排出孔72が形成されている。なお、クーリングチャンネル5及ぶ流入孔51の構成は、第1の実施の形態例にかかるピストン11と同一であるため、その説明は省略する。
【0059】
排出孔72は、クーリングチャンネル5側の開口である第1開口72aと、底面部35側の開口である第2開口72bと、第1開口72aと第2開口72bを接続する連通路とを有している。第1開口72aは、その中心がクーリングチャンネル5上で、かつ第1軸線X1上に形成されている。そして、第1開口72aは、クーリングチャンネル5における鉛直方向Z1の最下部に形成されている。これにより、オイルOがクーリングチャンネル5の鉛直方向Z1の最下部に溜まることを防ぐことができる。
【0060】
第2開口72bは、その中心がクーリングチャンネル5よりもピストンヘッド3の中心Q1側で、かつ第1軸線X1と重ならない位置に形成されている。すなわち、第2開口52bは、第1軸線X1よりも第2軸線Y1方向の一側に形成されている。そして、排出孔72における第1開口72aから第2開口72bに向かう方向である延在方向は、中心軸線T1及び第1軸線X1方向に対して傾斜している。
【0061】
さらに、排出孔72の延在方向の向きは、第1軸線X1から離れる方向を向いている。そのため、オイルOは、第1軸線X1から離れる向きに排出される。これにより、第1開口72aを、コネクティングロッド24が移動する軌跡である第1軸線X1上に形成した場合でも、オイルOを、コネクティングロッド24から離れる向きに排出させることができる。
【0062】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかるピストン11と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するピストン11Cによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるピストン11と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
なお、第4の実施の形態例にかかる排出孔72を、第3の実施の形態例にかかる排出孔62と同様に、矩形状や、円形以外のその他各種の形状に形成してもよい。
【0064】
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0065】
上述した実施の形態例では、ピストンが適用される内燃機関として水平対向エンジンを適用したが、これに限定されるものではなく、シリンダが鉛直方向を向く直列エンジンや、V型エンジンにも適用できるものである。
【0066】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…内燃機関、 3、3A、3B、3C…ピストンヘッド、 4…筒部、 5…クーリングチャンネル、 11、11A、11B、11C…ピストン、 20…シリンダ、 20a…内壁面、 23…ピストンピン、 24…コネクティングロッド、 28…オイルジェット装置、 30…冠面、 31…リング溝、 35…底面部、 41、42…スカート部、 43、44…ピンボス部、 43a、44a…ピン孔、 51…流入孔、 52、62、72…排出孔、 52a…第1開口、 52b…第2開口、 52c…連通路、 53…第2排出孔、 O…オイル(冷却材)、 L1、L2、L3…延在方向、 Q1…中心、 T1…中心軸線、 X1…第1軸線、 Y1…第2軸線、 Z1…鉛直方向
図1
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図9