(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191565
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】洗浄料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20221221BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20221221BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221221BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20221221BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20221221BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20221221BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221221BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20221221BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20221221BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20221221BHJP
C11D 3/33 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q19/10
A61K8/86
A61K8/60
A61K8/44
A61K8/9789
A61K8/37
C11D1/68
C11D3/20
C11D3/22
C11D3/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099852
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(72)【発明者】
【氏名】高橋 理一
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC012
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC581
4C083AC582
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD191
4C083AD492
4C083CC22
4C083CC23
4C083CC38
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4H003AC03
4H003BA12
4H003DA02
4H003EB02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB07
4H003EB12
4H003EB37
4H003EB41
4H003EB43
4H003EB46
4H003ED02
4H003FA27
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は多価アルコールまたは多価アルコール誘導体と、アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含有する洗浄料組成物の経時による臭いの発生を抑制することである。
【解決手段】下記(A)成分~(D)成分 を含有することを特徴とする洗浄料組成物。
(A)成分:水
(B)成分:グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グリセリン誘導体、ポリグリセリン誘導体、糖、糖誘導体、糖アルコール又は糖アルコール誘導体から選ばれる1種又は2種以上
(C)成分:アミノ酸及び/又はアミノ酸誘導体
(D)成分:加水分解オリーブ葉エキス及び/又はオニイチゴ根エキス
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分~(D)成分 を含有することを特徴とする洗浄料組成物。
(A)成分:水
(B)成分:グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グリセリン誘導体、ポリグリセリン誘導体、糖、糖誘導体、糖アルコール又は糖アルコール誘導体から選ばれる1種又は2種以上
(C)成分:アミノ酸及び/又はアミノ酸誘導体
(D)成分:加水分解オリーブ葉エキス及び/又はオニイチゴ根エキス
【請求項2】
(C)成分としてアルギニン及び/又はアルギニン誘導体を含有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄料組成物。
【請求項3】
(A)成分の含有量が0.0001質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄料組成物。
【請求項4】
(B)成分としてグリセリン、ジグリセリン、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の洗浄料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異臭が抑制された洗浄料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄料組成物においてグリセリン、ジグリセリン、糖、糖アルコールなどの特定の多価アルコールまたは多価アルコール誘導体は、保湿性や使用感、安定性の向上などを目的に広く使用されている。またポリグリセリン誘導体であるポリグリセリン脂肪酸エステルは洗い流し機能の向上、泡の弾力性向上などに使用されている。さらにアミノ酸、アミノ酸誘導体、またはアミノ酸系界面活性剤を併用することで保湿性、使用感、洗い流し性などの機能性を向上させることで製品の価値を高めることが出来るが、特定の多価アルコールまたは多価アルコール誘導体と組み合わせると経時で臭いが発生することが問題であった。これを改善するために、香料や化学合成成分が使用されているが、香料は強い香りのために使用用途が限定されてしまい、また化学合成成分の使用は安全性面で懸念が残るため、改善が求められていた。そのため、天然由来抽出物に注目が集まっているが、特定の多価アルコールまたは多価アルコール誘導体とアミノ酸、アミノ酸誘導体またはアミノ酸界面活性剤を含有する洗浄料組成物では十分な臭い改善効果が得られないことがしばしば課題であった。
アミノ酸またはその誘導体を皮膚外用剤に配合した際の経時的な変質による異臭をコウジ酸により抑制する技術が知られている(特許文献1)。
塩基性アミノ酸に由来する特異臭を除去するために、水溶性還元剤やキレート剤を添加しても良いことが知られている(特許文献2)。
多価アルコール、例えば、グリセリンやジグリセリンに対して、アミノ基を有する成分、例えば、アミノ酸又はその誘導体を共存させると高温保存時に異臭を発生させる蓋然性が高いが、その異臭の発生を銀により抑制する技術が開示されている(特許文献3)。
N-アシルアミノ酸誘導体を含有する皮膚外用剤について、オクトクリレンによる異臭抑制技術が開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-100112号公報
【特許文献2】特開平10-1692号公報
【特許文献3】特開2008-150329号公報
【特許文献4】特開2009-179599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は多価アルコールまたは多価アルコール誘導体と、アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含有する洗浄料組成物の経時による臭いの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)下記(A)成分~(D)成分 を含有することを特徴とする洗浄料組成物。
(A)成分:水
(B)成分:グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グリセリン誘導体、ポリグリセリン誘導体、糖、糖誘導体、糖アルコール又は糖アルコール誘導体から選ばれる1種又は2種以上
(C)成分:アミノ酸及び/又はアミノ酸誘導体
(D)成分:加水分解オリーブ葉エキス及び/又はオニイチゴ根エキス
(2)(C)成分としてアルギニン及び/又はアルギニン誘導体を含有することを特徴とする(1)に記載の洗浄料組成物。
(3)(A)成分の含有量が0.0001質量%以上10質量%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の洗浄料組成物。
(4)(B)成分としてグリセリン、ジグリセリン、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の洗浄料組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、多価アルコールまたは多価アルコール誘導体と、アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含有する洗浄料組成物の経時による臭いの発生を抑制することができた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の洗浄料組成物は、次の(A)~(D)成分を含有する。(A)成分:水、(B)成分:グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グリセリン誘導体、ポリグリセリン誘導体、糖、糖誘導体、糖アルコール又は糖アルコール誘導体から選ばれる1種又は2種以上、(C)成分:アミノ酸及び/又はアミノ酸誘導体、(D)成分:加水分解オリーブ葉エキス及び/又はオニイチゴ根エキス。
【0008】
本発明の洗浄料組成物は、皮膚や頭髪の汚れ、化粧料を除去するために用いられ、例えば、石けん、皮膚洗浄液、洗顔クリーム、クレンジングクリーム、クレンジング乳液、クレンジングリキッド、クレンジングオイル、シャンプー等が挙げられる。
【0009】
本発明の洗浄料組成物は(A)成分:水を含有する。水の含有量は0.0001質量%以上が好ましく、60質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がとくに好ましい。
【0010】
本発明の洗浄料組成物は(B)成分:グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グリセリン誘導体、ポリグリセリン誘導体、糖、糖誘導体、糖アルコール又は糖アルコール誘導体を含有する。ポリグリセリンの重合度は3~30が好ましい。グリセリン誘導体としては、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、レシチン、アルキルグリセリルエーテル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンエーテル脂肪酸エステル等が挙げられる。ポリグリセリン誘導体としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。糖としては、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、スクロース、マルトトリオース、アラビノース、トレハロース等が挙げられる。糖誘導体としては、セルロース、でんぷん、デキストリン、デキストラン、イヌリン、スフィンゴ糖脂質、フラボノイド配糖体、アスコルビン酸グルコシド、ヒアルロン酸、セルロースガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリクオタニウム-10、キサンタンガム、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、糖脂肪酸エステル等が挙げられる。糖アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。糖アルコール誘導体としては、ソルビタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
(B)成分は保湿性や使用感、安定性の向上、洗い流し機能の向上、泡の弾力性向上などのために配合される。しかしながら、(B)成分を配合すると、(C)成分を共存させた際に、経時的な異臭の発生が問題となる。(B)成分としてグリセリン、ジグリセリン、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステルを配合すると、特に(C)成分を共存させた際の異臭の発生が顕著である。
【0011】
本発明の洗浄料組成物に配合する(B)成分の濃度は、1質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上40質量%以下が特に好ましい。
【0012】
本発明の洗浄料組成物は、(C)成分:アミノ酸又はアミノ酸誘導体を含有する。アミノ酸としては、アルギニン、グリシン、セリン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、チロシン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、バリン、ヒスチジン、トレオニン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、オルニチン、システイン、シスチン、テアニン等が挙げられる。アミノ酸誘導体としては、PPG-2アルギニン、ココイルアルギニンエチルPCA、塩酸ジヒドロキシプロピルアルギニン、塩酸アルキル(C12,14)オキシヒドロキシプロピルアルギニン、脂肪酸アシルグルタミン酸塩、脂肪酸アシルアスパラギン酸塩、脂肪酸アシルグリシン塩、脂肪酸アシルアラニン塩、ジラウロイルグルタミン酸リシン塩、オリゴペプチド、加水分解コラーゲン、コラーゲン、シルク、ホスファチジルセリン、トリメチルグリシン等が挙げられる。
(C)成分は、保湿性、使用感、洗い流し性などの機能性を向上させるために配合されるが、(B)成分と共存すると、経時的に異臭が発生する問題を有する。特に、アルギニン又はアルギニン誘導体が(B)成分と共存すると、経時的な異臭の発生が生じやすい。アルギニン誘導体としては、PPG-2アルギニン(化粧品表示名称)、ココイルアルギニンエチルPCA(化粧品表示名称)、ジヒドロキシプロピルアルギニンHCl(化粧品表示名称)、アルキル(C12,14)オキシヒドロキシプロピルアルギニンHCl(化粧品表示名称)が挙げられる。
【0013】
本発明の洗浄料組成物に配合する(C)成分の濃度は、0.001質量%以上50質量%以下が好ましく、0.01質量%以上30質量%以下がさらに好ましく、0.01質量%以上10質量%以下がとくに好ましい。
【0014】
本発明の洗浄料組成物は(D)成分:加水分解オリーブ葉エキス又はオニイチゴ根エキスを含有する。
加水分解オリーブ葉エキスは、オリーブOlea europaea Linne の葉のエキスを酸、酵素又はその他の方法で加水分解して得られるものである。
オニイチゴ根エキスは、オニイチゴRubus ellipticus Smithの根のエキスである。市販品の丸善製薬社製ヒマラヤンラズベリー抽出液BG80を、本発明に用いることもできる。
本発明の洗浄料組成物は(D)成分を配合することにより、経時的な異臭の発生を抑制することができる。本発明の洗浄料組成物に配合する(D)成分の濃度は0.0001質量%以上0.1質量%以下が好ましい。
【0015】
本発明の洗浄料組成物には、(A)~(D)成分以外に、通常洗浄料組成物に配合される油剤、界面活性剤、多価アルコール、水溶性高分子、油溶性高分子、有機粉体、無期粉体、保湿剤、香料、防腐剤、pH調整剤、着色剤、酸化防止剤等を配合することができる。
【実施例0016】
<参考試験>
PPG-2アルギニンとグリセリン、ジグリセリンを共存させたときの経時的な異臭の発生を確認した。
表1の組成で、PPG-2アルギニンとグリセリン、ジグリセリンを配合し、50℃で1か月保管後の異臭(焦げ臭い異臭)を評価した。乳酸は、組成物のpHがほぼ中性になるように配合した。PPG-2アルギニンを単独で配合した参考例1を基準として、PPG-2アルギニンとグリセリンを配合した参考例2、PPG-2アルギニンとジグリセリンを配合した参考例3の異臭を下記基準により5名の専門パネラーが評価した。
4点:参考例1と比較して異臭(焦げ臭さ)を感じない。
3点:参考例1と比較して異臭(焦げ臭さ)をほとんど感じない。
2点:参考例1と比較して異臭(焦げ臭さ)を少し感じる。
1点:参考例1と比較して異臭(焦げ臭さ)を感じる
評価点の平均値により、下記評価とした。
◎:3.6点以上
〇:2.6点以上3.4点以下
△:1.6点以上2.4点以下
×:1.4点以下
【0017】
【0018】
表1に示した通り、アミノ酸誘導体(PPG-2アルギニン)単独を基準として、アミノ酸誘導体とグリセリンの組み合わせ(参考例2)、アミノ酸誘導体とジグリセリンの組み合わせ(参考例3)を評価した結果、50℃1か月保管で異臭(焦げ臭さ)が生じた。
【0019】
<異臭抑制効果確認試験>
成分(B):グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グリセリン誘導体、ポリグリセリン誘導体、糖、糖誘導体、糖アルコール又は糖アルコール誘導体、と成分(C):アミノ酸及又はアミノ酸誘導体を含有させた洗浄料組成物(クレンジングオイル)の異臭抑制効果を評価した。
表2~4の組成でクレンジングオイルを調製し、(成分C)を含有しない参考例4を基準として、実施例1~4、参考例5、比較例1~19の50℃1か月保管後の異臭を下記基準により5名の専門パネラーが評価した。
4点:参考例4と比較して異臭(焦げ臭さ)を感じない。
3点:参考例4と比較して異臭(焦げ臭さ)をほとんど感じない。
2点:参考例4と比較して異臭(焦げ臭さ)を少し感じる。
1点:参考例4と比較して異臭(焦げ臭さ)を感じる
評価点の平均値により、下記評価とした。
◎:3.6点以上
〇:2.6点以上3.4点以下
△:1.6点以上2.4点以下
×:1.4点以下
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
表2~4に示した通り、(C)成分:アミノ酸誘導体を配合しない参考例4を基準として、(C)成分:アミノ酸誘導体と(B)成分を組み合わせ、さらに(D)成分を配合した実施例1~4は、50℃1か月保管で、異臭(焦げ臭さ)を感じない、または、ほとんど感じないものであった。一方、(D)成分を配合しない比較例1,2、(D)成分の代わりに、クエン酸、ローズマリー葉エキス、3-O-エチルアスコルビン酸、グルコシルルチン、加水分解コンキオリン、ダイズ芽エキス、クエン酸Na、トコフェリルリン酸Na、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸K 、メントール、ラベンダー花エキス、メマツヨイグサ種子エキス、ボタンエキス、テンニンカ果実エキス、チャ葉エキス、ウメ果実エキス、ムラサキシキブ果実エキスを配合した比較例4~19の洗浄料組成物は異臭(焦げ臭さ)を感じるものであった。(D)成分の代わりにオリーブ葉エキスを配合した比較例3は異臭(焦げ臭さ)を少し感じるものであった。尚、(B)成分を配合しない参考例5については、異臭(焦げ臭さ)を感じないものであった。この参考例5は、(B)成分であるジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20、オクタイソノナン酸ポリグリセリル-20 を抜去すると(A)成分と(C)成分が分離してしまうため、代わりにジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30 を加えて(A)成分と(C)成分を乳化したクレンジングオイルである。