(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191576
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】高電圧 高圧力 直接印加型 核融合方式 / High voltage electric high pressure direct applying fusion / Thunderbolt nuclear fusion
(51)【国際特許分類】
G21B 1/03 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
G21B1/03
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099872
(22)【出願日】2021-06-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.THUNDERBOLT
(71)【出願人】
【識別番号】721005784
【氏名又は名称】深田 明美
(72)【発明者】
【氏名】深田 博幸
(72)【発明者】
【氏名】深田 明美
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料に電力源から直接印加して、絶縁破壊、電離などを伴う核融合反応を誘起させ、固体隔壁などより直接エネルギーを回収する持続可能なエネルギー発生方法を提供する。
【解決手段】絶縁体、または高抵抗、半導体などの性質を持つ、固体、液体、及び反応中における高圧縮気体状の高密度な状態の、目的とする量に容易に調整可能とした、多様な核融合燃料に対して、充分な高電圧で電力、即ち、電子を印加、放電し、高エネルギーの状態を、瞬間的、または持続的に生成し、燃料を物理的な隔壁、または一部開領域における機械的な加圧、爆縮などを併せることで高密度の状態を生成し、電力、即ち電子の原子に対する衝突により、原子に衝突電離を起こし、電離した原子核の衝突を促し、補助的に電磁波や光粒子などの照射を行い原子の振動を促し、核融合反応を誘起するものであり、その熱源を利用して多用途に適用するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本方式は、絶縁体、または高抵抗、半導体などの性質を持つ、固体、液体、及び反応中における高圧縮気体状の高密度な状態の、目的とする量に容易に調整可能とした、多様な核融合燃料に対して、充分な高電圧で電力、即ち、電子を印加、放電し、高エネルギーの状態を、瞬間的、または持続的に生成し、燃料を物理的な隔壁、または一部開領域における機械的な加圧、爆縮などを併せることで高密度の状態を生成し、電力、即ち電子の原子に対する衝突により、原子に衝突電離を起こし、電離した原子核の衝突を促し、補助的に電磁波や光粒子などの照射を行い原子の振動を促し、核融合反応を誘起するものであり、その熱源を利用して多用途に適用するものである。
【請求項2】
汎用熱源
本方式における、熱源として利用されるすべての用途に対して、産業用、家庭用などを問わず、動力、給湯、冷暖房、調理、その他の熱源利用で応用されるアプリケーションに対して、熱源の利用を可能とする。各部品の劣化を想定した上で、隔壁、電極などの自己修復性、動的修復性などを持つことにより、システムの連続使用を可能とする。
【請求項3】
熱交換式蒸気タービン・熱膨張直熱型タービン
本方式における、応用の基本形として、核融合反応で発生した熱を、熱交換により水やその他の冷媒を使って、タービン(Turbine)の動力エネルギーに変換し、排気(Exhaust)を回収し、復水器(Steam condenser)などの冷却装置を通して冷却し、循環させるシステムである。タービンの出力は、発電機などに留まらず、各種輸送機や、その他の動力源の利用を可能とする。
本方式における、タービンの駆動方式として、コンプレッサーなどにより大気中の空気を取り込んだ空気を、直接冷媒として加熱し、空気の熱膨張を図り、更に燃料の熱膨張と熱源としての効果を併せて運動エネルギーとし、タービンを駆動し、タービンの回転運動出力は、発電機、各種輸送機などの動力として使用し、その排熱を使ったコンバインドシステムによる熱効率の向上などを可能とする。
【請求項4】
ジェット推力装置
本方式において、タービンの回転運動に留まらず、燃料の反応に伴う超高温、超高圧物質の噴射エネルギーを併せて、熱膨張する空気の放散方向を絞ることにより、ジェット推力として各種輸送機、その他の動力源、推力として利用を可能とする。
【請求項5】
水中熱交換式熱膨張型推進装置
本方式において、水中に反応炉を配置することで、冷媒を大量の水により熱交換を実現すると伴に、水の熱膨張を活用して、流入する水流を予め作り、反応熱の熱交換により熱膨張する水の放散方向を絞ることにより、水流による推力を作り出し、船舶、潜水艇、その他の水流装置などの推力に利用を可能とする。
【請求項6】
内燃機関/カルノーサイクル装置
本方式において、燃料の量を調整し、発熱量を制限することにより、シリンダー、ピストン方式に限らず、ロータリー式など全ての内燃機関の熱源として利用を可能とする。また、熱源のみで差動するカルノーサイクル、スターリングエンジン(Stirling engine)の熱源としての利用も可能とする。
【請求項7】
溶鉱炉装置
本方式において、金属や他の物質などの溶融を行うための装置の、熱源として利用を可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
各種の、熱源利用関連分野、動力関連分野、発電関連分野、溶鉱炉関連分野、溶接断関連分野、発破関連分野、その他の産業用、家庭用の熱エネルギー応用分野
【背景技術】
【0002】
・ はじめに
物質はエネルギーである。
石油などの化石燃料は有限の資源であり、それを代替するエネルギー源の重要性については論判を要さない。地球的な観点では、石油の「可採年数」は、あと喫緊の数十年分しか無く、またウランなどの核分裂燃料も100年分程しか無い事は、多数の組織による調査で示されている通りである。
持続可能性の観点から、クリーンで半永続的な持続可能性を持つとされるエネルギー源として、水素などの小型な原子を核融合することで発生するエネルギーは、有力な候補の一つである。約1グラムの重水素から、理想的に約1グラムのヘリウムを生成した場合、約8000リットルの石油を燃焼するのに相当するエネルギーを発生する。また主要な燃料となる重水素は、天然水の約0.015%(約7000分の1)存在しており、地球全体の海水などの量を勘案すると、ほぼ無尽蔵にあるとされている。(現在の発電量を基準にして約1万年分との試算もある。)
然し、現在の発電ペースで、重水素が1万年分、存在するとしても、仮に今の100倍のペースで電力を消費すれば、100年で資源が尽きて仕舞う計算になる。現に、EV(電気自動車)等の移動体のエネルギー消費量は膨大であり、現在の石油代替を全て電力で賄うとすると、現在の100倍以上の電力が必要となり、1万年分/100≒100年分となり、重水素といえども無尽蔵なエネルギー源ではなくなると思量する。
そこで重水素よりも大量に存在する、反応への要求エネルギー量の大きな原子の核融合を可能にすることを視野に入れて、正に無尽蔵のエネルギー源を得る方法について思量した。
先ず、従来のITER(イーター)を始め、主要各国のトカマク型やヘリカル型、その応用型の核融合方式は、投入したエネルギー量を回収するには、原理的に不十分な方式である。そこで、エネルギー収支の向上を念頭に課題と目標を掲げ、高密度で多量の燃料に対して、超高エネルギー状態を作り、燃料の量を制御可能とし、隔壁の耐熱性と強度を維持しつつ高圧力状態を作り、熱交換により直接、エネルギーを効率よく回収する方式について考察した。
「ローソン条件」という、核融合反応を起こすための条件としての代表的な値は、温度(=1億度)、原子密度(=100兆個/cm3)、反応時間(=1秒)として提示されている。然し、太陽の中心部(約1600万度)や水素爆弾(約200万度)の実例を挙げる迄もなく、代表的なローソン条件の値は、厳密ではない。核融合反応を発生する条件としては、「核融合積」と呼ばれる、温度、密度、時間を組み合わせた「積」が重要である。実際に、太陽内部の温度は1億度に満たない1600万度程度であると云うが、2400 億気圧と云う圧力を重力により生成して気体状のプラズマを圧縮し、核融合反応を誘引している。但し、太陽サイズの恒星では、ブラックホールの様に原子が構造変化をして収縮するには至らないので、太陽内部の原子密度は超高圧縮下においても、イワユル、常温の固体、液体の原子密度に対して、最中心部でも最大20倍程度のオーダーであることが示されている。また水素爆弾においては、核融合反応の初期状態において200万度程度の状態で、瞬時において固体内部の隔壁による加圧により、爆縮で核密度を維持することにより、核融合反応を誘起している。即ち、短時間での反応を完了させることで、恒星に匹敵する原子の高密度状態を物理的に確保し、代表的なローソン条件の温度よりも低い熱エネルギー状態で核融合反応が発生している。
100兆個/cm3 = 10x10^14個/cm3 は、1気圧の大気中の2.68x10^19 / 1x10^14 = 2.68x10^05 = 26.8万分の1の密度でしかない。つまり代表的なローソン条件の値は真空状態に近い環境での原子密度である。この低密度の状態においては、原子の衝突を起こすのは極めて困難である為、自然界には太陽系には存在しない1億度と云う、太陽中心核(約1600万度)よりも1桁、水素爆弾(約200万度)よりも2桁も高い温度が条件となる。またこの真空に近い低密度の燃料から得られるエネルギー量は微々たるものしか期待できない。また隔壁とは非接触型であり、真空に近い炉中は断熱効果も高いので、エネルギーを回収する方法も非効率な方式しか、原理的に実装できない。
太陽においては、水素だけでなく、より核融合反応への必要エネルギーが高い、比較的大きな原子の炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)などによる、連続したCNOサイクル型の核融合反応も、観測されている。より重い原子を核融合させるには、陽子の数に応じて、水素よりも更に高いエネルギーを印加が必要であり、より強いクーロン斥力を超越させるポテンシャル エネルギーにより核融合反応の誘起ができる。核融合反応に必要なエネルギーは、一つの目安として原子番号 1 の水素原子に対して約数KeV~10 KeVとされており、同様に原子番号 6 の炭素を核融合するには約50~60 KeVのエネルギーが必要とされている。水素を1としてその原子番号、つまり陽子の数に概ね比例した量の高いエネルギーを印加することで、より大きな原子の核融合反応の誘起が可能となる。つまり、CNOサイクルやそれよりも大きな原子を核融合するには、イワユル、代表的なローソン条件の温度や密度条件では不足で、より大きなエネルギー印加と高密度状態の持続が必要である。
核融合の基本は、原子核を衝突させることである。それに必要なのは、クーロン斥力、核力を超越して、原子核を衝突させるのに充分なエネルギーであり、それを実現する方法は多数ある。
・熱をエネルギー源とする、熱核融合は、原子のブラウン運動により、原子核同士を衝突させる。
・凝縮核融合は、金属などに水素同位体を浸透させた金属水素化物の状態で、原子レベルでの超高圧状を保ち、比較的低い熱エネルギーなどの印加により、水素同位体などの原子核を少量ずつ衝突させる。
・バブル核融合は、超音波によりキャビテーションを発生させ、破裂、凝縮時の運動エネルギーで重水などの原子核同士を衝突させる。
・焦電核融合は、焦電性結晶の静電場により、水素同位体イオンなどを加速し、水素同位体を含む金属水素化物に少量ずつ衝突させる。
・フューザーなどは、基本的に真空状態に近い密度のチャンバー内で、水素同位体ガスに対して放電し、少量ずつ衝突させる。
【0003】
そして、今回提案する方式は次のようなものとなる。
・本方式は、電気的に絶縁体、または絶縁体に準ずる性質を持つ、液体・固体などの高密度な状態の、高純度の核融合燃料を、適切な量に調整された状態に対して、絶縁破壊電圧を充分に超える高電圧で、電力(電子)を直接的に印加し、(自由電子ではない)電子の運動により、格子原子へ衝突させることによって、原子の衝突電離を発生させ、電子雪崩などを伴いながら、高エネルギーの状態を、瞬間的、または持続的に生成し、電離した原子核の運動を促し、更に補助的にマイクロウェーブなどの電磁波や光粒子などの照射を行い、原子核の振動を促し、更に、熱交換により熱管理される物理的な隔壁による機械的加圧、爆縮、また一部開領域における爆縮などを併せた高密度の状態で、原子核を衝突させる。
【0004】
基本的なアイデアは、「雷」からガンマ線が検出されていると云う報告がある。雷の発するガンマ線のエネルギーによって窒素(N)原子同位体が、短時間でベータ崩壊して、最小の反物質である陽電子と電子ニュートリノを放出し、この反物質の陽電子が電子と対消滅する際に、ガンマ線を発生すると説明されている。これはCNO サイクルという核融合反応の途中で5番目に発生する反応と等価であり、ガンマ線源もCNOサイクルの範囲で発生する。つまりこれらは、重水素よりもエネルギー要求量の高い核融合反応が、雷の電力により発生していると云うエビデンスになる。但し、雷は空気中、及び、水中の自由運動状態の環境における「非効率的」な核融合反応である。この反応を良い条件、環境で発生させることで、効率的に核融合反応を誘起する術について思量した。即ち、高純度の燃料を、高密度、高圧縮状態にした上で、(雷のように)充分な高電圧を掛けた状態を、充分な時間維持することにより、核融合反応を効率的に誘起することを基本思想とする。
またもう一つの基本的なアイディアは、一般的な中性子発生装置や重粒子発生装置などのエネルギー変換効率が1%程度であり、出力が不足し、且つ、ロスが多大となる課題が存在しており、数十台、数百台と並べているが、中性子発生などを燃料内で起こすことができれば、ビームなどに変換する必要性も無く、電力印加時にエネルギー変換も同時に行え、エネルギー変換のロスが発生するポイントを削減でき、更に、エネルギーのロスによる各種のエネルギー放散を、燃料内の他の原子へのエネルギー源とすることで、結果的に効率的に核融合反応を誘起することができるのではないかと思量し、そのアイディアを膨らませた。
【0005】
電子(電気)の力は偉大である。物理学的には、1個の電子(e)に1ボルト(V)を印加した時に生じるエネルギー 1 eV は、約1万度の温度に相当するエネルギーとなる。概略の説明として、1 eV(電子ボルト) = 1.602x10^-19 J(ジュール)、ボルツマン定数 : k = 1.381x10^-23 J/K (J/ケルビン)と定義されている。これをエネルギーkTと対応付けて 、k = 1.381x10^-23 J/K 、1.381x10^-23 T = 1.602x10^-19 i.e. T = 1.602x10^-19 / 1.381x10^-23 = 11,600 K(ケルビン)。即ち理論的には1 eV(電子ボルト)の電気は11,600 K ≒ 1万度に相当する。更に、1万倍した1万ボルトは、約1億度に相当し、代表的なローソン条件の1億度も現実的な数値となる。但し、電子の運動ベクトルを勘案しなくてはならず、同方向の流れではエネルギーは発生せず、衝突や偏向時に初めてエネルギーとして成立する、処が難題であった。
技術的な実現性の観点では、数万ボルトはガソリン車のスパークプラグの電圧と同等であり、安価に実現可能なオーダーである。雷の電圧は、1000万ボルトを超えるとも云われるが、これは温度換算では1000億度に相当し、代表的なローソン条件の温度条件である1億度を遥かに越える。雷のようにエネルギーが高ければ、密度や閉じ込め時間の条件が緩くてもガンマ線の検出、即ち核融合(CNO サイクル)が発生することを示唆している。尚、1000万ボルト程度を発生、制御する装置も、雷強電試験装置やその他で既に実用化されている。
1個の原子レベルの観点では、原子1個あたりで反応に必要なエネルギー量、及び、原子1個あたりで発生するエネルギー量は微々たるものである。この微々たるエネルギーを、例えば原子の数を1 mol (6.02x10^+23)の量で掛け算すると、約6,020該 倍 = 60,200,000京 倍 = 602,000,000,000兆 倍の膨大なエネルギー量となる。つまり、反応する原子の量を調整することで、発生量を調整可能とし、必要充分のエネルギーの核融合反応による発生をコントロールすることで、多様なアプリケーションに利用することができる。
また電力(電子)を直接、燃料となる物質に印加し、「燃料内でエネルギー変換」させることで、エネルギー変換によるロスの発生ポイントを最小化することにより、各種のコイルや発振器、電磁波や熱線、光粒子、レセプターなどの各装置でのエネルギー変換効率や、発熱などによるキャパシティ制限などの問題から解放され、超高電圧、超高電力をそのまま燃料に印加して、超高エネルギー状態を生成することが可能となる。
また電力を使う事で、瞬時に超高エネルギー状態を作ることができるので、初期状態において、気体状の燃料よりも800倍以上に密度の高い固体、液体の状態の燃料を使うことを可能とし、燃料の量の調整も容易にすることが可能となる。
また電力を印加した部分だけに集中して、超高エネルギー状態を生成することが可能となり、即ち、局所的に超高エネルギーの領域を作り出すことで、燃料とは別個に、隔壁や電極などは熱交換などによる熱管理を行うことで固体の状態を維持することを可能とする。これにより、固体の隔壁による機械的加圧、更に爆縮の効果による高圧状態の生成が可能となり、原子の高密度化が可能となる。
局所的に限定的な数の原子に対象を絞り、エネルギーを集中し、更に加圧、爆縮により高密度化を図ることで、1個の原子あたりのエネルギーの投入量と反応効率を高める余裕ができることにより、核融合反応の燃料を、水素同位体などに留まらず、核融合反応への要求エネルギー量が大きく、より反応が困難な、比較的大きな原子に対しても核融合反応を誘起させるエネルギー ポテンシャルを得ることが可能となる。
核融合の燃料における原則の観点では、物理学的に「鉄」よりも原子番号が小さく軽い原子は、核融合をすることで鉄の重さに近い原子となり、反応の際にエネルギーを放出して安定する性質がある。また、鉄よりも原子番号が大きく重い原子は、核分裂をすることで、鉄の重さに近い原子となり安定する性質がある。即ち、鉄よりも軽い原子は、核融合の燃料となるエネルギーのポテンシャルを有している。例えば「デロリアンのバナナの皮」なども想定の範囲内。
また水素同位体を含む化合物において、水中で水素イオン(H+)と、水酸化物イオン(OH-)を生成して電離する硫化水素(H2S / H2SO4)、塩化水素(HCl)、酢酸(CH3COOH)などの、電離する性質の物質においては、水素原子(H)は電離して水素イオン(H+)、即ち、陽子(p)の状態で存在しており、電離に要するエネルギーが不要となり、より小さいエネルギーで原子の衝突を誘起することが可能となる。
尚、水素同位体、ヘリウム、リチウムなどの、より小さく軽い原子の方が、より大きく重い原子よりもエネルギー ポテンシャルは高く、また比較的少ないエネルギーで核融合反応を誘起することが可能であり、より高品位なエネルギー源である。
本方式は、電力、即ち、電子をエネルギー源として、燃料に直接印加して、絶縁破壊、電離などを伴い、核融合反応を誘起させ、尚且つ、固体の隔壁などより直接エネルギーを回収することで、トカマク型などと比べてエネルギー効率を桁違いに上げ、且つ、重水素などに限らず、多様な燃料の利用を可能とすることにより、持続可能なエネルギー源を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】Direct energy conversion assembly for nuclear fusion systemsInventor : Alfred Y. Wong Charles Rinzler David A. Woodbury(高温プラズマから(回転装置を使って)電力に、ダイレクトに変換するもの。)https://patents.google.com/patent/US20180033499A1/
【特許文献2】Method for Generating Electrical Energy by Laser-Based Nuclear Fusion and Laser ReactorInventor : Heinrich Hora(核融合で発生した磁力を電力に、ダイレクトに変換するもの。)https://patents.google.com/patent/US20170125129A1/en
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】雷が反物質の雲をつくる!?雷の原子核反応を陽電子と中性子で解明榎戸輝揚 京都大学白眉センター特定准教授、和田有希 東京大学大学院理学系研究科博士課程学生 (理化学研究所仁科加速器研究センター)、古田禄大 同博士課程学生、湯浅孝行 博士 (元理化学研究所)、中澤知洋 東京大学大学院理学系研究科講師、土屋晴文日本原子力研究開発機構研究副主幹、佐藤光輝 北海道大学大学院理学研究院講師https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17112301/
【非特許文献2】CNOサイクルhttps://ja.wikipedia.org/wiki/CNO%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB
【非特許文献3】磁場閉じ込め方式 (トカマク型、ヘリカル型、RFP、スフェロマック、FRC、磁気ミラー型、カスプ、など)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A3%81%E5%A0%B4%E9%96%89%E3%81%98%E8%BE%BC%E3%82%81%E6%96%B9%E5%BC%8F
【非特許文献4】慣性閉じ込め方式 (レーザー核融合、重イオン慣性核融合、フューザー核融合、など)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%85%A3%E6%80%A7%E9%96%89%E3%81%98%E8%BE%BC%E3%82%81%E6%96%B9%E5%BC%8F
【非特許文献5】磁化標的核融合https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A3%81%E5%8C%96%E6%A8%99%E7%9A%84%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88
【非特許文献6】磁気絶縁方式慣性核融合https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A3%81%E6%B0%97%E7%B5%B6%E7%B8%81%E6%96%B9%E5%BC%8F%E6%85%A3%E6%80%A7%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88
【非特許文献7】バブル核融合https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88
【非特許文献8】焦電核融合 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A6%E9%9B%BB%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88
【非特許文献9】ミューオン触媒核融合https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%AA%E3%83%B3%E8%A7%A6%E5%AA%92%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88
【非特許文献10】常温核融合 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%B8%E6%B8%A9%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88
【非特許文献11】A Review of Direct Energy Conversion for Fusion Reactors (核融合で発生したエネルギーを、ダイレクトに変換するもの)https://inis.iaea.org/collection/NCLCollectionStore/_Public/08/297/8297401.pdf
【非特許文献12】炭素燃焼過程https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%AD%E7%B4%A0%E7%87%83%E7%84%BC%E9%81%8E%E7%A8%8B
【非特許文献13】核融合積https://atomica.jaea.go.jp/dic/detail/dic_detail_769.html
【非特許文献14】ローソン条件 Extension into the "triple product"https://en.wikipedia.org/wiki/Lawson_criterion#Extension_into_the_%22triple_product%22
【非特許文献15】核融合反応https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88%E5%8F%8D%E5%BF%9C
【非特許文献16】エネルギー源としての核融合反応富永 五郎https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/23619/files/sk010005004.pdf
【非特許文献17】核融合燃料の高密度圧縮の展開大阪大学レーザーエネルギー学研究センター 白神 宏之https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/32/5/32_5_306/_pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先ずは既存の核融合技術における課題を明確化する。
既存の核融合技術における課題として、次のような課題がある。
1. エネルギー効率
a. 1億度以上に燃料を加温し、超高温プラズマを生成する、膨大な電力エネルギーが必要 (磁場閉じ込め型、慣性閉じ込め型、など)
b. 光粒子ビームを加速、凝集させる強力な磁力線を得る為のエネルギーが必要 (磁場閉じ込め型、焦電核融合方式、など)
c. 超電導コイルを(1ヶ月以上掛けて)極低温に冷凍する電力エネルギーが必要 (磁場閉じ込め型、など)
d. レーザービームなどの発振器におけるエネルギー変換効率が低く、実効値の何倍、何十倍もの電力エネルギーが必要 (慣性閉じ込め型、など)
e. レーザービームなど、外部から加熱する際に、バレットの耐熱性と熱伝導率が相反 (慣性閉じ込め型、など)
f. 直接的に、超高温プラズマから、電力を回収する方法はあるが、直接的に、超高温プラズマ状態を作り出すのは困難 (
【特許文献1】Direct energy conversion assembly for nuclear fusion systems、
【特許文献2】Method for Generating Electrical Energy by Laser-Based Nuclear Fusion and Laser Reactor、など)
【0009】
2. エネルギー量
a. 真空に近い状態の希薄な燃料から発生するエネルギー量が微小。 (磁場閉じ込め型、焦電核融合方式、など)
b. 金属水素化物中から発生できるエネルギー量が微小。 (凝縮核融合方式、焦電核融合方式、など)
c. レーザー発振器におけるエネルギー変換効率、発熱などに起因するエネルギー絶対量の限界 (慣性閉じ込め型、など)
d. キャビテーションは、温度が上がり沸騰すると燃料が気化するため、発生しなくなる (バブル核融合方式)
【0010】
3. 密度
a. 真空に近い状態とするため、燃料の密度を上げることができない。 (磁場閉じ込め型、焦電核融合方式、フューザー、など)
b. 金属水素化物中における燃料密度を上げることができない。 (凝縮核融合方式、焦電核融合方式、など)
【0011】
4. 時間
a. マイクロウェーブ発振器の発熱などにより、超高エネルギー状態を長時間維持することができない。 (磁場閉じ込め型、など)
b. 磁場閉じ込めコイルの発熱などにより、超高エネルギー状態を長時間維持することができない。 (磁場閉じ込め型、など)
c. レーザー発振器の発熱などにより、超高エネルギー状態を長時間維持することができない。 (慣性閉じ込め型、など)
【0012】
5. 熱交換
a. 真空に近い状態では、真空断熱効果があり、隔壁に触れない、炉中の燃料から、熱エネルギーのエネルギー回収が困難 (磁場閉じ込め型、など)
b. 金属が(低温の)個体を維持しつつ発熱するため、大量の熱エネルギー回収が困難 (凝縮核融合方式、焦電核融合方式、など)
c. 希薄な重水素ガス、重水などに、高周波電力を印加するだけでは、エネルギー効率の向上と回収が困難 (フューザー、など)
【0013】
6. 持続可能性
a. 重水素の資源量は10,000年分程度との試算があるも、今後の化石燃料の代替し、EVなどにより電力使用量が100倍になると、100年分程しか持続可能性が無くなる (磁場閉じ込め型、焦電核融合方式、焦電核融合方式、凝縮核融合方式、バブル核融合方式、水素爆弾、など)
b. 核分裂方式のプライマリ利用による、ウランやプルトニウムなどの核燃料、運用、廃棄物の管理が困難で、可採年数的にも100年分しかなく持続可能性が無い (水素爆弾、など)
【0014】
7. コスト
a. 超高温プラズマを生成するマイクロウェーブシステムの初期、及び運用コストが膨大 (磁場閉じ込め型、など)
b. 超高温プラズマを閉じ込める、超伝導コイルなどのシステムの初期、及び運用コストが膨大 (磁場閉じ込め型、など)
c. 超高温プラズマを生成するレーザーシステムの初期、及び運用コストが膨大 (慣性閉じ込め型、など)
d. 金属水素化物や電極などで使用する、パラジウム、プラチナなどの金属の初期、及び運用コストが膨大 (凝縮核融合方式、焦電核融合方式、など)
【0015】
{特許文献1} Direct energy conversion assembly for nuclear fusion systems、{特許文献2} Method for Generating Electrical Energy by Laser-Based Nuclear Fusion and Laser Reactor、{非特許文献11} A Review of Direct Energy Conversion for Fusion Reactors などにおいては、超高温プラズマが生成された後、そのプラズマから、直接、電力エネルギーに変換する方法の提案がなされている。これはこれで価値のある提案ではあるが、そもそも超高温プラズマを核融合反応で生成することが困難なのであるからして、核融合反応を発生させるためのエネルギー効率には寄与しないという課題がある。
【0016】
従来の磁場閉じ込め型や、慣性閉じ込め型、その応用型などの熱(=運動エネルギー)による核融合における課題の観点では、そもそも1億度以上の温度のプラズマ状態に加温するのに、そもそも膨大な電力エネルギーを要する。それに加えて磁場閉じ込め型やその応用型では、炉中のイオンプラズマのビームを加速、凝集させる強力な磁力線を作るための電力エネルギーや、更に、その超電導コイルを(1ヶ月以上掛けて)極低温に冷凍する電力エネルギーも膨大であり、何れも所要電力エネルギー量が膨大となる課題がある。また、荷電プラズマイオンの凝集には、強力な電磁力を使うが、原子は炉中で自由運動できる状態にあり、高密度を維持する事は原理的にも電磁力を発生する装置のリソース的にも困難が伴う。磁場閉じ込め型では、超高温プラズマ燃料に近接する物質は、全て超高温のプラズマ化してしまうため、機械的な力での加圧は原理的に不可能であり、また構造的、原理的に爆縮効果を得ることは不可能という課題がある。
【0017】
また「真空」に近い炉中の「微量」の燃料から核融合反応により生成されるエネルギーは、微量の熱エネルギーしかないという課題がある。また真空に近い炉中では断熱効果により、発生した熱を回収するのが困難となる課題がある。また極低温の超伝導コイルと超高温プラズマを共存させた状態でのエネルギー回収は極めて困難という課題がある。
【0018】
レーザー型などの慣性閉じ込め型も同様に、レーザー発振器のエネルギー効率から発振機側の熱問題が先に発生するため、高出力のレーザーを長時間、安定して発生させるのは困難を伴うという課題がある。
また慣性閉じ込め型で使用するバレットなどでは、熱エネルギーは外部より「隔壁を経て」燃料に伝達させるので、隔壁の温度は燃料と同時に高くなる為、隔壁自体も加熱により液化、気化、プラズマ化してしまう。よって低中温時のエネルギーの集中は可能だが、超高温時においてはバレット隔壁による物理的な凝集や圧縮は不可能となる。更に、爆縮に耐える耐熱、耐圧強度を持たせる事と、熱エネルギーの伝達効率は相反するので、原子への加圧、爆縮は原理的に困難を伴う。
即ち、磁場閉じ込め型、慣性閉じ込め型などの熱核融合方式では、大量のエネルギーを消費し、微量のエネルギーしか産まず、エネルギーの回収も困難であるという、エネルギーの回収率が原理的に少ないと云う課題がある。
【0019】
従来の水素爆弾などにおける核融合方式の課題の観点では、ウランやプルトニウムなどの核分裂をプライマー燃料とするので、重金属核物質の取り扱い、廃棄物、その他において、従来の核分裂方式と同じ問題が発生する。また同じく、ウランなどの核燃料の可採年数に依存するので、持続可能性も担保できない。即ち、既存の水素爆弾方式の核融合反応は、核分裂方式の持つ、廃棄物管理が困難で、持続可能性が無いと云う課題をそのまま包含する。
【0020】
凝縮核融合方式における課題の観点では、金属に水素を浸透させた状態で原子を閉じ込め、熱エネルギーなどを印加して、継続的に少量の原子核融合反応を得るが、金属に含有される水素同位体の含有率、含有量と、金属の耐熱性に依存するので、原理的に大容量のエネルギーを得ることは困難である。即ち、凝縮核融合方式は、微小なエネルギーの回収は可能であるが、燃料を媒介する金属への重水素浸透などのコストやその燃料密度、個体金属を維持しつつ発熱するという、大量の熱エネルギーを回収するのは原理的に困難と云う、課題がある方式である。
【0021】
バブル核融合方式における課題の観点では、超音波によりキャビテーションを発生させて、凝縮時の運動エネルギーで軽い原子核同士を衝突させると云う、極めてローコストなエネルギー発生が期待できるが、これも大規模なエネルギーを得るには、高温状態になることで、燃料は沸騰して気化し、キャビテーションが発生しなくなる。即ち、バブル核融合方式は、温度が上がり沸騰すると燃料が気化してキャビテーションが発生しなくなるため、原理的に大量のエネルギーを回収することは困難と云う課題がある。
【0022】
焦電核融合方式における課題の観点では、焦電性結晶の静電場により、重水素(またはトリチウム)イオンを加速し、重水素(またはトリチウム)を含む金属水素化物に衝突させて核融合反応を発生させるので、投入エネルギー量は比較的少ない。然し、イオン化した燃料の密度は低く、また金属水素化物中の水素も表面上の水素のみが衝突対象となるために、内部の水素は燃料とはならず、燃料効率、エネルギー効率が悪いなどの課題がある。
【0023】
重水素ガス、重水などに、高圧電力を印加し、穏やかな常温核融合を成功させているものがある。然し、重水素ガスや重水などにおいては自由運動する状態での反応であり、圧縮は考慮されず、且つ、エネルギーの集中も考慮されず、また構造的に爆縮なども考慮されておらず、大量のエネルギーを得るのは技術的に困難を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本方式は、絶縁体、または高抵抗、半導体などの性質を持つ、固体、液体、及び反応中における高圧縮気体状の高密度な状態の、目的とする量に容易に調整可能とした、多様な核融合燃料に対して、充分な高電圧で電力、即ち、電子を印加、放電し、高エネルギーの状態を、瞬間的、または持続的に生成し、燃料を物理的な隔壁、または一部開領域における機械的な加圧、爆縮などを併せることで高密度の状態を生成し、電力、即ち電子の原子に対する衝突により、原子に衝突電離を起こし、電離した原子核の衝突を促し、補助的に電磁波や光粒子などの照射を行い原子の振動を促し、核融合反応を誘起するものであり、その熱源を利用して多用途に適用するものである。
以下、本方式の物理学の観点からの理論的な裏付け、及び既存の核融合方式における課題を解決するための手段を示す。
【0025】
本方式は、常温核融合ではなく、超高エネルギー核融合反応方式である。
エネルギー状態の観点では、理論的に1個の電子において、1 eV(電子ボルト)の電気は、温度に換算すると11,600 K(ケルビン) ≒ 1万度に相当するエネルギーを持つ。よって、電力をエネルギー源として直接、燃料物質に印加することにより、1億度相当であれば1万ボルト(10 KeV)、100億度相当であれば100万ボルト(1 MeV)のエネルギーを、核融合燃料に印加することで、1個の電子に対して高エネルギー状態を瞬時に生成できる。
【0026】
本方式では、原子の温度、即ち、運動エネルギーを、超高圧の電力、即ち、電子の運動により、瞬時に高めることを可能とする。
【0027】
電力を使う上での条件の観点としては、電子の運動ベクトルにおいて、衝突や偏向が発生した際にのみ、エネルギーが発生する。電気を通す導電体中の自由電子では、電子による原子への衝突は発生せず、エネルギーは発生しない。電気を通さない絶縁体には自由電子が無く、電子の移動は絶縁体の格子原子に衝突し、運動を阻まれることで、電子の流れ(電流)はなくなる。電子自体は、負の電荷を持つため、原子核の陽子の持つ正の電荷に対して反発するクーロン斥力が働き、且つ、導電体などにおける自由電子は、原子核とは干渉せず、自由に原子の隙間を通り抜けることができる。自由電子ではない電子は、原子と衝突し、その際にエネルギーを発生する。
【0028】
絶縁体の燃料に対しては、絶縁破壊電圧を超える充分に高い電圧で、電力を印加することによって、絶縁体の原子に対して自由電子ではない電子が衝突してエネルギーを発生し、原子が衝突電離を起こし、更に電子雪崩を伴い、場合によっては量子トンネル効果を伴い、電離した原子核同士の衝突により励起され、超高エネルギーの状態を生成する。
【0029】
絶縁体ではなく半導体や高抵抗、不純物の多い核融合燃料の場合、電離を起こすのに余分な電力エネルギー印加が必要となり、エネルギー効率が下がるが、部分的には同様の原理による反応が期待される。尚、本方式においては、核融合燃料の原子、分子などの組成については、本方式において核融合反応を誘起する全ての物質を対象とする。
【0030】
電子、及び光粒子の運動によるエネルギーは、衝突や偏向などにより、運動ベクトルが変わる時に発生するので、ターゲットとなる燃料を、高純度の核融合燃料、または反応を補助する絶縁性の性質をもたらす化合物とし、全方位に衝突する対象を配置することで、原理的に電子の運動ベクトルの考慮は無視することができる。
【0031】
隔壁には、核融合燃料よりも電気抵抗率の高い物質を使用することで、核融合燃料へ電力エネルギーを集中的に印加することができる。
【0032】
本方式では、絶縁破壊電圧を充分に超える電圧で、対象の燃料の量に対して充分な電力を印加することにより、電子が格子原子に衝突することで、原子に対して衝突電離を誘起し、更に電子雪崩を伴い、場合によっては量子トンネル効果を伴い、電離した原子核同士の衝突を誘起し、超高エネルギー状態を瞬間的、または継続的に作り出し、エネルギー保存則に則り、クーロン斥力を超えるエネルギーを印加することにより、熱、及び電子の衝突により、運動エネルギーを伴う原子核の衝突を促すことにより、核融合反応を誘起する。
【0033】
補助的に、電磁波や光粒子ビームなどを使用して、運動エネルギー量を増加させ、エネルギー効率を向上させることができる。
【0034】
必要なエネルギー量は、エネルギー保存則に則り、燃料内に印加した電力に応じて高エネルギー状態が生成されるが、充分な高電圧であっても、電流が不足すると1個あたりの原子に印加されるエネルギー量が不足し、クーロン斥力、更に核力を超えて原子核の衝突を促すのに充分な電力エネルギーが必要である。
【0035】
原子番号1の重水素原子1個を、核融合反応させるのに必要なエネルギー量は、理論上10 KeV程度とされており、原子番号6の炭素原子1個を、核融合反応させるのに必要なエネルギー量は約6倍の50~60 KeV程度とされている。原子、及び分子の陽子の総数を目安に、1個の原子、分子あたりの陽子の総数を10 KeV +αで乗算し、更に形状と厚みより絶縁抵抗値を算出した絶縁破壊電圧と、エネルギーロスを考慮した上で加算して電圧を設定する。尚、1 eV(電子ボルト) = 1 V(ボルト)で電圧を算出する。
【0036】
1 A(アンペア)の電流は 6.25×10^18個の電子の移動に相当するので、燃料の原子量(1 mol = 6.02×10^23)を勘案して電流を算出し、さらにエネルギーロスを考慮した上で加算して、充分な電力エネルギーを印加する必要がある。但し、即時に印加することは必須ではなく、エネルギー保存則に則り、継続的に電力を印加することで、エネルギーロスは多くなるが、積算エネルギー量を得ることは容易となる。
【0037】
極少量の原子に集中的に、10 KeVの電力を作るのは、ガソリン車のスパークプラグ装置の応用で可能なレベルである。また大規模電力に関する技術的な実現性については、高圧直流送電 (HVDC: high-voltage, direct current)などで用いられる技術の応用が可能である。尚、中性子や重粒子などのビームで10 KeVを発生させるためには、それだけで膨大な設備とエネルギー量が必要だが、それらは不要となる。
【0038】
また、適用するアプリケーションに応じて、固体、液体の核融合燃料の量を調整することにより、エネルギー発生総量を適切に調整することを可能とし、小規模から大規模まで、多様な形態での核融合エネルギーの利用が可能となる。
【0039】
放電をする際に、核融合燃料に対して、陰極(カソード)側にはエアギャップを持たせることにより、電子の発熱と爆圧から、電極を保護するとともに、電子を核融合燃料に衝突させる対象を局所化することを可能とする。但し、エアギャップは必須ではなく、電極自体を隔壁として使用することにより、燃料を高密度状態に保つことも可能とする。
【0040】
使用する核融合燃料の種類によって、核融合反応により発生する物質、エネルギー量が変わり、ニュートリノ、陽電子、ガンマ線、アルファ線、ベータ線、中性子線、または電子を発生するものなどが存在し得るので、それらを効率的に熱エネルギー源に変換し、尚且つ、放射線を外部に漏らさず最大限に活用できる熱交換システム、及び、放射線防護設備が必要である。
【0041】
これらは放射線の透過力に応じて、透過力の強いニュートリノやガンマ線には鉛系、水素化合物で吸収力が上がる中性子線や陽電子には水を始めとした水素化合物、薄紙などで充分なアルファ線や、鉄板で充分なベータ線などは、他の隔壁で代替するなどして、複合的に水やHTGR(High Temperature Gas-cooled Reactor System)などを熱交換の冷媒と隔壁、及び防護壁を組み合わせることで、熱交換の効率を上げるとともに、放射線の防護の効率を上げることが可能となる。
【0042】
エネルギーの集中の観点では、電力を、固体、液体の核融合燃料に、電極から直接、電力を印加することでエネルギーを高める範囲を局所化し、熱、即ち、運動エネルギーの発生を局所化させることを可能とする。トカマク型などの磁場閉じ込め型核融合炉では、真空状態に近い原子密度の炉中で、加速器内の広範囲に存在する荷電プラズマ状態の燃料を衝突させ、核融合反応を誘起するが、対象物の燃料が非常に広範囲に存在し、且つ、常に運動状態にあるため、エネルギーの集中は原理的に困難を伴う。
本方式では、これにより隔壁や電極を低温に保った状態から、瞬時に核融合反応を誘起することを可能とする。
【0043】
原子密度の観点では、本方式では電力により瞬時に超高エネルギーを印加することにより、気体、プラズマ化する以前の、固体、液体状の高密度の燃料に対して、核融合反応に必要な超高エネルギー状態を瞬時に作ることができる。固体や液体の密度は、気体よりも、常温の1気圧下でおよそ800倍、高密度である。尚、超高温プラズマはシャルル・ボイルの法則より更に密度が下がる。太陽の中心では2400 億気圧と云う超高圧で、気体状のプラズマを圧縮しているが、太陽程度のサイズではブラックホールの様に原子の構造を崩壊させるには至っておらず、太陽内部も、中心部で常温の固体の最大20倍程度の密度レベルであるとされている。即ち、常温の固体、液体は太陽の中心と同程度の原子の密度には及ばないが、爆縮を勘案すると瞬間的には等価と見做してよく、代表的なローソン条件よりも比較的低い温度に相当する運動エネルギーでも核融合反応を可能とする。
【0044】
圧縮の観点では、本方式では隔壁や電極と、燃料におけるエネルギー状態は独立している。トカマク型、ヘリカル型などの磁場閉じ込め型や、慣性閉じ込め型方式では、超高温プラズマ燃料に近接する物質は、全て超高温のプラズマ化してしまうため、機械的な力での加圧は原理的に不可能である。荷電プラズマイオンの凝集には、強力な電磁力を使うが、原子は炉中で自由運動できる状態にあり、高密度を維持する事は原理的にも電磁力を発生する装置のリソース的にも困難が伴う。また構造的、原理的に爆縮効果を得ることは不可能である。
またレーザー型などの慣性閉じ込め型で使用するバレットでは、熱エネルギーは「隔壁を経て」燃料に伝達させるので、隔壁の温度は燃料と同様に高くなる為、隔壁自体も加熱により液化、気化、プラズマ化してしまう。よって低中温時のエネルギーの集中は可能だが、超高温時においてはバレット隔壁による物理的な凝集や圧縮は不可能となる。更に、爆縮に耐える耐熱耐圧強度を持たせる事と、熱エネルギーの伝達効率は相反するので、原子への加圧、爆縮は原理的に困難を伴う。
【0045】
本方式では隔壁や電極と、燃料におけるエネルギー状態は独立しているので、温度管理により、隔壁や電極を固体に保つことができ、物理的な隔壁で燃料を加圧することで、高密度な状態を生成、維持することを可能にする。固体、液体の燃料を固体、液体の隔壁で圧縮することで、気体状のプラズマを電磁力で凝縮、圧縮するよりも桁違いに高い密度を、桁違いに少ないエネルギーで生成することができる。燃料は核融合反応により、隔壁や電極を加温されるが、燃料の量と印加する電力量を適切に調整し、発生するエネルギー量を調整することが可能であり、また隔壁や電極の溶融、気化を、熱交換を行うことで回避するとともに、核融合反応で生じる熱エネルギーを効率的な回収を可能とする。
【0046】
用途に応じて、隔壁内において爆縮を起こすことにより、より圧力を高めることで、効率的に核融合反応を発生させることを可能とする。その際のベンチレーションの圧力、強度も、用途に応じて強弱をつけることができ、例えば発破の用途などにおいては、隔壁は破壊を前提に限界まで爆縮、加圧状態を維持するなども可能である。
【0047】
時間の観点では、雷の様に、超高圧電力によって、瞬時に、超高エネルギー状態を、集中して生成することができる。また容量の大きな核融合反応においては、電力エネルギーの印加時間を延ばすことで、エネルギー保存則に則り、燃料への充分なエネルギー印加を行うことができる。アレニウスの法則により、燃料、隔壁、電極が、加熱されるが、超高エネルギーを局所化し、短時間で反応させることで、高密度な固体、液体の状態の燃料に対して、固体の隔壁による加圧により、効果的に核融合反応を誘起できると云う効果をもたらす。
【0048】
トカマク型やヘリカル型などの熱核融合方式では、1億度以上の目的温度に達するまでの加熱時間が多大であり、時間を経るに伴い、エネルギーロスが発生する。本方式では加熱装置は必須とせず、電力エネルギーを直接、燃料に印加して高エネルギー状態を生成するので、瞬時に目的のエネルギー状態を生成することを可能にする。これにより加熱時間の長期化に伴う、熱エントロピーによるエネルギーロスを最小限に抑えることを可能とする。
【0049】
また、継続的な電力の印加や、隔壁や電極を熱交換などにより温度管理することで、連続的でより複雑な核融合反応である炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)と水素(H)を基にしたCNOサイクル型など、更に重い原子による核融合反応をも、電力、圧力、時間において、本方式においては、既存技術の応用で規格性能的に余裕があるので、実現可能なポテンシャルが見込まれる。
本方式では、多様な軽い原子を核融合反応の燃料として利用できるるポテンシャルを有し、継続可能性のあるエネルギー源とすることを可能とする。
【0050】
熱エネルギーの回収の観点では、本方式では、隔壁からの熱交換により行うことが可能である。トカマク型、ヘリカル型などの磁場閉じ込め型などにおける、真空に近い炉中からエネルギーを回収するのは、真空断熱効果により困難を来し、反応により発生した熱中性子などから間接的に回収することは可能だが、核融合反応で生じたエネルギーのごく一部でしかなく、核融合反応で発生する主だった大量のエネルギーを回収するのは構造的に困難を要する。
本方式では、隔壁や電極に接触、または包囲されている核融合燃料から、直接、熱交換で回収することを可能とする。
【0051】
温度、即ち、運動エネルギーの観点では、代表的なローソン条件の1億度と云うのは、真空状態に近い低密度における値である。燃料の原子密度が高い状態においては、より低い温度でも核融合反応が発生することは、太陽の中心温度でさえ、1億度に満たない1600万度でしかなく、水素爆弾の初期温度では200万度程度でも過剰に短時間にエネルギーを発していることから明白である。従来の真空状態に近い密度で核融合反応させる磁場閉じ込め型、それらの応用型などは、何れも1億度以上の超高温プラズマを前提としており、太陽系には自然には存在しない程の温度に加熱する必要があるり、そのエネルギー量は膨大である。
【0052】
燃料となる物質の観点では、軽い原子である水素、ヘリウム、ホウ素、窒素、酸素、などの他に、また化合物にして導電率を変えることでリチウム、ベリリウム、炭素など、鉄よりも軽い原子とその同位体の、固体、液体、及び高圧気体の分子、及び化合物が想定される。化合物としては、軽い原子の同位体(水素:1H、重水素:2H(D)、三重水素:3H(T)、ヘリウム:3He,4He、リチウム:Liなど)を含む全ての化合物が想定され、例えば水素同位体の化合物であるアンモニア(NH3)系、ヒドラジン(N2H4)系、水素化リチウム(LiH)系、水素化ベリリウム(BeH2)系、炭化水素化合物(CnH2n)系、水(H2O)系、その他、多様なバリエーションが想定される。
【0053】
但し、水素同位体を多く含む方が、核融合反応のエネルギー効率は良くなるが、常温で気体となる燃料の場合、例えば重水素などは高密度状態の液体にするために、-253℃の極低温にする必要があり、製造や管理に余計なエネルギーが必要であり、極低温からの発熱時におけるエネルギーロスや、取り扱いの困難さを考慮すると、重水素化リチウムや炭化水素化合物などの、化合物にすることで常温で液体、固体の高密度状態となることに優位性を見出すことができる。
【0054】
本方式では、燃料の種類を多様化することを可能とし、「物質はエネルギー」である原理に則り、持続可能なエネルギー源として利用可能とする。例えば、「デロリアンのバナナの皮」なども想定の範囲内。
【0055】
超高エネルギーに晒される隔壁自体の長期的な耐久性は余り期待できず、溶融、気化、導電性物質の隔壁付着による漏電などの問題が想定される。当初は1回利用毎に燃料と隔壁、電極をセットにしたバレット方式で、交換、自動連続装てんするなどの方式が想定される。将来的には、連続利用を前提として、ある程度は劣化することを想定した上で、隔壁、電極などの自己修復性、動的修復性などについて検討を行い、連続使用可能なアプリケーションに対応することを可能とする。
【0056】
隔壁の素材の観点では、電気抵抗が、燃料の物質よりも高い物質を使用する必要がある。隔壁の素材には、電気抵抗率の高い石英ガラス(SiO2)系、磁器セラミック系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、テフロン系、酸化ハフニウム系、その他の電気抵抗率が極めて高く、更に耐熱性の高い素材、または物質そのものが燃料となりえる素材を、重層、複合した構造で使用可能である。
【0057】
電極、及び導電体の素材の観点では、燃料に近接する部分には、電気抵抗が低いのは勿論、耐熱性、耐衝撃性の高い素材の使用が必須である。高圧電力の印加に対しては、比較的安価な部材を必要十分な大きさで、必要充分に物量を用いることで、汎用の安価な素材や装置を使い、物量を以て性能を担保し、更に熱交換により冷却を行うことで物質的に安定性を維持する、理論上可能である。電極においては耐熱性と圧力強度を持つ素材が望ましく、イリジウム、タングステン、モリブデン、また条件付きでグラファイトや銅など、耐熱性と強度を兼ね備えた素材などが、熱交換による冷却を前提として利用可能である。高価な超電導やレアメタル素材なども使用可能だが、必須とはしない。
【0058】
熱交換の観点では、隔壁や電極を充分な量の冷媒によって熱交換により冷却することで、核融合エネルギーの回収と、システムの物質的な維持を図ることを可能とする。熱交換の冷媒の観点では、基本的には水(軽水)が、安価で大量に使用可能で、中性子吸収率が一番高い水素を高濃度で含み、蒸気タービンなど既存の枯れた技術や装置を流用可能で、電気エネルギーへの変換するシステムも確立しており最適である。また水素化合物などを使用することで、水素が中性子線を吸収することで重水素、三重水素が生成、濃縮され、即ち高品位な燃料の再生産となり、回収、再利用により放射性廃棄物の極小化を図ることを可能とする。
【0059】
熱交換システムとして、エネルギー効率の高いナトリウムや、HTGRなどの高温ガス系などによる熱交換システムも、使用可能である。然し、必要十分な大量の軽水は、熱効率は劣るが、コストと安全面からメリットが十分あり、高価な熱交換冷媒システムは必須とはしない。構造的なヒントとして、ガソリンエンジンの冷却において、VR38DETTエンジンでは、シリンダーのスリーブを無くし、且つ、ウォータージャケットとの間隔を狭めて熱伝導率を高め、冷却水の流量を高めることで、熱交換率を高め、シリンダーの変形などを抑えている。その思想の延長線上で熱交換率をより高めることにより、隔壁や電極の保護を図ることは可能である。
【0060】
また熱交換の技術的実現性については、比較的単純な車載ラジエーターから、蒸気タービン装置、溶鉱炉、また水中における熱膨張による推力源、空気中における熱膨張における推力源、各種産業用や家庭用などの熱源システムなどを含めて、多様な用途への応用が可能である。
【0061】
初期コストの観点では、本方式は、電力を使って高エネルギー状態で核融合を誘起するので、超高温となる部分を局所化でき、更に熱交換などによる保護などを可能とすることにより、隔壁や電極に要求される耐熱性、耐圧性に対して、汎用品などの比較的リーズナブルな素材で構築することを可能とする。但し、性能が必要な部分には特殊な素材、開発品を使用することが望まれる場合もあるが、汎用品などを多数、大量に使用することで性能確保をすることも可能となる。
磁場閉じ込め型、慣性閉じ込め型などにおける、1億度を超える温度条件を満たす隔壁やエネルギー交換などの素材や設備は、自ずと高価な素材となり、またそれらを運用、コントロールするのに膨大な施設が必要となるため、初期コストは莫大な投資が必要となっている。
本方式では、熱条件が緩和されることにより、装置や設備を、既存の大量生産設備で提供される汎用品を使って構築することにより、初期コストの低減を図ることを可能とする。
【0062】
ランニングコストの観点では、本方式では、外部からの加熱、外部からの磁力線、外部からの光粒子ビームなどを必要とせず、単純に燃料のみをターゲットとして、超高圧電力を印加、放電するのみであり、よってエネルギーロスが発生する部分が最小化される。
トカマク型など磁場閉じ込め型では巨大な超電導コイルを数か月掛けて極低温に冷却し、巨大な電子レンジで超高温プラズマを加温し、更に巨大電磁石でプラズマイオンを凝集させるために、莫大な電力エネルギーを投入した末に、実験=運用は瞬時で終了するので、エネルギーコストも莫大である。また、常温核融合方式などで使用されるパラジウムなどの高価なレアメタル、貴金属などを要する核融合方式もあるが、それらは使用しない。
本方式は、電力を直接的に燃料に印加し、燃料内でエネルギー変換することにより、エネルギーロスを最小化し、高価なレアメタルなども不要とすることで、同量の燃料を核融合反応させるのに、ランニングコストを大幅に減らすことを可能とする。
【0063】
エネルギー量のコントロールの観点では、原子1個あたりの核融合反応に必要なエネルギー量、及び、発生するエネルギー量は相対的に極めて小さい。基本的な重水素(D:デューデリウム)の反応では、2個の原子を核融合反応に必要なエネルギー量は、約10 KeVとされており、発生するエネルギー量はおよそ3.27 MeVとされ、入力エネルギー量のおよそ300倍を理想的には発生する。目的とする用途に応じて、純粋な燃料で換算した原子の数を1 mol (=6.02x10^+23 ≒ 約6,020該 倍 = 60,200,000京 倍 = 602,000,000,000 兆)の個数とその反応効率を基準に、必要なエネルギー量を想定することが可能である。燃料の量を調整することで、隔壁の耐熱性、強度、サイズ、熱交換用冷媒などの流量を勘案し、必要十分な隔壁、電極、燃料、及び印加電力を調整、設定することで、小規模から大規模まで、多様な用途、形態の核融合反応の応用を実現する。尚、代表的なローソン条件の100兆個/cm3は1気圧の大気の26.8万分の1程度であり、極めて希薄で真空に近く、発生するエネルギーは微小となる。
本方式では、燃料と印加電力の量を調整することで、発生するエネルギー量を調整でき、小規模から大規模まで、多様性のある用途、規模でのエネルギー活用を可能とする。例えば、シリンダー内での連続的な爆発や、大規模な熱交換によるタービン駆動、溶鉱炉などの熱源、熱膨張によるジェットエンジンなど、熱源を利用する多様なアプリケーションが想定される。
【0064】
防護壁の観点では、放射線の透過力に応じて、透過力の強いニュートリノやガンマ線には鉛系、水素化合物で吸収力が上がる中性子線や陽電子には水を始めとした水素化合物、薄紙などで充分なアルファ線や、鉄板で充分なベータ線などは、他の隔壁で代替するなどして、複合的な構造により、放射線の漏洩を防止することが可能である。
【0065】
隔壁や電極の利用形態の観点では、核融合反応に対して連続して継続的に利用可能とするもの、1回の核融合反応で溶融し再利用できないもの、そのハイブリッド型などが想定されるが、用途と費用対効果に応じて適宜に使い分けることが想定される。ディスポーザブルな容器を大量生産し、安価に燃料を供給することが想定される。また連続利用による設備投資の効率的な回収も想定される。
【0066】
環境に対する観点としては、システムの覆遮隔壁に、中性子線を効率的に吸収する性質のある水素化合物(水、ポリマー素材など)を使うことで、放射線の遮蔽性能を効率的に高めると共に、中性子を吸収した水素が「燃料」となる重水素(デューデリウム)や三重水素(トリチウム)に変換され、即ち、これは燃料の再生産をする再生可能エネルギーであり、持続可能性を高める。また既存の他の原子炉などの減速材に使用する水で発生する重水素、三重水素を核融合燃料に転換することで、核廃棄物の問題も低減する。
【0067】
安全性の観点では、本核融合技術で、初期に主に使用すると想定される、重水素やヘリウムなどは、天然水や空気中に含まれるものである。且つ、人体や動物などへの影響は、希薄化すると全く影響が無い。但し、高濃度のヘリウムガスを吸入すると、ドナルドダックの様に発声音が高くなる症状が発生するが、不活性ガスであり排出後も人体などへの影響はない。また高濃度の水素は、人体などに対して抗酸化作用を齎すため、美白美容や医療などにも使用されており、安全性は既に担保されている。重水素は、基本的な効能は水素に準ずるものであり、重篤な不具合に繋がるエビデンスはない。三重水素の発生は、原理的に微量で、放射線を発するが半減期は12.3年で管理可能な範囲であり、また燃料として再利用サイクルに取り込む事により排出を最小限化できる。何れも風船への注入や燃料電池、その他、工業用など多用途、汎用に使用されている安全で一般的な物質であり、安全性は高い。
【発明の効果】
【0068】
本方式により、持続可能性の観点において、海水中などから可採年数が担保される重水素や、更に要求エネルギー量の大きいより重い原子や化合物の核融合燃料から、核融合反応を効率的に誘起し、熱交換により熱を効率的に回収し、エネルギーの投入と回収の効率を高めることにより、持続可能なエネルギー源を齎すことを可能とする。
【0069】
本方式により、エネルギー効率の観点において、各種光粒子ビーム、マイクロウェーブや電磁コイル、などを必須としないことにより、エネルギー変換するポイントを減らし、電力を燃料に直接印加して、燃料自体でエネルギー変換をすることで、装置の発熱などによるボトルネックを解消し、エネルギー効率とエネルギー投入の絶対量の両方を高めることを可能とする。
【0070】
本方式により、エネルギー変換の観点において、ボトルネックが無いので、必要に応じて電力エネルギーの量、印加時間を調整することにより、重水素よりもエネルギー要求量の多い原子、例えばCNOサイクルなどの核融合反応をも誘起できるポテンシャルを持つ。
【0071】
本方式により、エネルギー量の調整の観点において、固体、液体の燃料の量を調整することで、発生するエネルギー量を調整でき、小規模から大規模まで、熱源を利用する多様性のある用途、規模でのエネルギー活用を可能とする。
【0072】
用途の多様性の観点において、小規模から大規模まで、強力な熱源を元に、蒸気タービンやその他による各種動力エネルギーや、電気エネルギーへの変換するアプリケーションが想定される。
【0073】
また、同様に熱源を利用して、船舶などへ搭載する場合、水中での熱交換と、水の熱膨張により推進力を直接得る様なアプリケーションが想定される。
【0074】
また空気やガスを熱膨張により、ジェット推進力などの効果を発生させるアプリケーションも想定される。
【0075】
また、内燃機関での空気やガスの膨張により、連続的な発熱と熱交換を行うことで、ピストン運動やロータリー運動などの連続運動を発生させるアプリケーションなども想定される。
【0076】
また、各種の溶鉱炉などの熱源として、直接利用するアプリケーションも想定される。
【0077】
また、単純にカルノーサイクル、スターリングエンジンの熱源としての使用も想定される。
【0078】
また、産業用、家庭用などの冷暖房、調理、給湯、その他、熱源が必要となる全てのアプリケーションに応用が可能である。
勿論、膨大な量の燃料を投入することにより、膨大なエネルギー量を発生させることはできるが、無用なエネルギーの浪費は慎むのが肝要であり、暴走を制限する仕組み、安全保障の方法、制度については本特許とは別途の提案とする。
【0079】
初期コストの観点では、エネルギー源に電力を使うことで、既存の電力技術の流用、応用が可能となり、また熱条件が緩和されることで、隔壁や電極に要求される耐熱性、耐圧性に対しても、汎用品などの比較的リーズナブルな素材を多数、大量に使用することで性能確保をすることが可能となり、初期コストの低減を図ることを可能とする。
【0080】
ランニングコストの観点では、超高圧電力を、燃料内でエネルギー変換することにより、エネルギーロスを最小化し、また高価なレアメタルなども不要とすることで、同量の燃料を核融合反応させるのに、ランニングコストを大幅に減らすことを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0081】
物理学的な裏付けを、数として示す。
(数1)
ローソン条件(重水素で熱核融合反応を起こすための条件)で示される代表値
温度 : 1億度
原子密度 : 100兆個/cm3 = 1x10^14個/cm3
反応時間 : 1秒
【0082】
(数2)
既存の核融合反応温度が、代表的ローソン条件よりも低い温度で発生している例。
太陽内部 : 約1600万度 (約2400 億気圧)
水素爆弾 : 約200万度 (核分裂反応による爆縮)
(即ち、代表的なローソン条件よりも低い温度で、核融合反応が発生しているエビデンス。)
【0083】
(数3)
核融合積
核融合反応装置における、プラズマ温度(T)、プラズマ密度(n)、閉じ込め時間(τ)の
3つの量の積(n・τ・T)をいう。
即ち、密度が高くなれば、温度、時間の条件は低くても核融合反応が起こる。
【0084】
(数4)
大気圧下と代表的なローソン条件の原子密度比較
代表的なローソン条件の原子量 : 100兆個/cm3 = 1x10^14個/cm3
気温0度で1気圧における原子密度 : 1 (mol) / 22.4 (L) = 6.02x10^23(個) / 22,400(cm3) = 2.68x10^19(個/cm3) = 2.68該 (個/cm3) = 2,680,000,000兆 (個/cm3)
代表的なローソン条件と大気圧の原子量比 : 2.68x10^19 / 1x10^14 = 2.68x10^05 = 26.8万(倍)
即ち、代表的なローソン条件の値は、1気圧の大気中の約26.8万分の1で、真空状態に近い密度における条件値である。
【0085】
(数5)
液体水素と代表的なローソン条件の原子密度比較
代表的なローソン条件の原子量 : 100兆個/cm3 = 1x10^14個/cm3
1 mol : 6.02×10^23 個
水素分子の1 molあたりの体積 : 27 cm3
水素分子の1 cm3あたりの原子量 : 6.02×10^23 / 27 = 2.23x10^22 (個/cm3)
代表的なローソン条件と液体水素の原子量 : 2.23x10^22 / 1x10^14 = 2.23x10^08 = 2.23億(倍)
即ち、液体水素は代表的なローソン条件の約2億2300万倍の原子密度なので、理論上はおよそ2億分の1のエネルギーで核融合反応が誘起できる。
【0086】
(数6)
水素原子を核融合反応させるのに必要なエネルギー~{非特許文献15 より引用}
"~陽子(水素原子核)や他の軽い核に
高いエネルギー(数keV)
を与え入射粒子として加速し、標的となっている軽い核に当てると、核の電気的反発力や核力によって入射粒子は破壊を伴いながら、標的と融合し大きなエネルギーが解放されること、すなわち核融合反応(nuclear fusion)を発見~"
即ち、陽子数1の水素は、およそ数KeV~10 KeVで核融合反応が可能。
【0087】
(数7)
炭素原子を核融合反応させるのに必要なエネルギー~{非特許文献12 より引用}
"~炭素燃焼過程、炭素融合は炭素同士が融合する核融合反応。融合が始まるためには非常な高温
(6×10^8 K か 50 KeV) 、高密度(おおよそ2×10^8 kg/m
3
)
が必要~"
即ち、陽子数6の炭素は、およそ6億度、50 KeV、即ち、陽子数1の水素の約6倍のエネルギーで、核融合反応が必要。)
【0088】
(数8)
1個の電子(e)に1ボルト(V)を印加すると、約1万度の温度に相当するエネルギーとなる概説。
1 eV(電子ボルト) : 1.602x10^-19 J(ジュール)
ボルツマン定数 : k = 1.381x10^-23 J/K (J/ケルビン)
エネルギーと熱をkTと対応付けて
1.381x10^-23 x T = 1.602x10^-19
T = 1.602x10^-19 / 1.381x10^-23
= 11,600 K(ケルビン)
i.e.
1 eV = 11,600 K
即ち理論的には1 eV(電子ボルト)は、温度 11,600 K(ケルビン)、即ち、約1万度に相当する。よって1万倍した1万電子ボルトでは、約1億度に相当し、ローソン条件の1億度も現実的な数値となる。但し、電子ボルトの運動ベクトルを勘案しなくてはならず、同方向の流れではエネルギーは発生せず、衝突や偏向時に初めてエネルギーとして成立する、処が難題であった。
【0089】
(数9)
D-T反応に要する1原子あたり数KeV、即ち、
数万ボルトはガソリン車のスパークプラグの電圧と同等
であり、安価に実現可能なオーダーである。
【0090】
(数10)
雷の電圧は、1000万ボルトを超えるが、これは温度換算では1000億度に相当。
雷のようにエネルギーが高ければ、密度や閉じ込め時間の条件が緩くてもガンマ線の検出、即ち核融合(CNO サイクル)が発生することを示唆している。尚、1000万ボルト程度を発生、制御する装置も、雷強電試験装置やその他で既に実用化されている。
【0091】
(数11)
原子1個あたりで反応に必要なエネルギー量、及び、原子1個あたりで発生するエネルギー量は微小である。然し原子の数 1 mol (6.02x10^+23)の量で掛け算すると、下記の様に膨大なエネルギー量となる。つまり、反応する燃料の原子を、固体、液体化することで、エネルギー発生量を調整可能とし、核融合反応の出力をコントロールすることで、多様なアプリケーションに利用することができる。
原子1個あたり反応に必要な / 発生するエネルギー量は、mol数を元に調整する。
1 mol = 約6,020該 (倍) = 60,200,000京 (倍) = 602,000,000,000兆 (倍)
【0092】
(数12)
陽子数1の原子であるD-T反応に必要なエネルギーは下記で示される。
数KeV~10 KeV
陽子数6の炭素(C)1個の、核融合反応に必要なエネルギーは陽子数1の水素の約6倍で下記で示される。
50~60 KeV
【0093】
(数13)
1 A(アンペア)の電流は
1秒あたり 6.25×10^18 個の電子の移動
に相当する。対象で必要とする燃料の原子量(1 mol = 6.02×10^23)を勘案し、更に、エネルギーロスを考慮した上で加算して、電流を算出し、先の電圧と併せて充分な電力エネルギーを印加する必要がある。
但し、即時に原子数分の電力を全て印加することは必須ではなく、エネルギー保存則に則り、充分な電圧で継続的に電力を印加することで、アレニウスの法則に則りエネルギーロスは多くなるが、積算エネルギー量を得ることは容易となる。
【0094】
(数14)
上記より、電圧を求める近似式として下記式を提示する。更に燃料の形状と厚みより絶縁抵抗値を算出した絶縁破壊電圧と、エネルギーロスを考慮した上で、加算して電圧を設定する。
Vp (核融合反応要求電圧) = np (陽子数) x 10 KeV (陽子1個あたりの核融合エネルギー要求量)
【0095】
(数15)
同様に、電流を求める近似式として、下記式を提示する。更に燃料の体積と形状、エネルギーロスを考慮した上で、加算した電流を設定する。但し、即時に原子数分の電力を全て印加することは必須ではなく、エネルギー保存則に則り、充分な電圧で継続的に電力を印加することで、アレニウスの法則に則りエネルギーロスは多くなるが、積算エネルギー量を得ることは容易となる。
In (核融合反応要求電流) = 原子数 nn (アボガドロ数より算出) / 6.25×10^18 (1 A ,1秒あたりの電流の 電子数)
【0096】
(数16)
上記より、核融合要求電力を求める近似式として、下記式を提示する。更に燃料の体積と形状、エネルギーロスを考慮した上で、加算した電流と、前記の電圧を設定することで、核融合反応が誘起される。
Wpn (核融合要求電力) = Vp x In
【0097】
【数17】
閉じ込め時間、及びエネルギー印加時間については、代表的なローソン条件で示される式で求められ、隔壁の耐久性によって調整が必要となる。閉じ込め時間 T
E は、システムが環境にエネルギーを損失する速度を測定する。エネルギー密度 W 単位体積当たりのエネルギー含有量)を電力損失密度 P
loss(単位体積当たりのエネルギー損失率)で割ったものである。
【0098】
(数18)
エネルギーロスについても、ローソン条件で示される式で求められる。
Nは原子数密度、Tは温度。但し温度は1 eV = 11,600 K、即ち、約1万度に相当するものとする。
【0099】
(数19)
約1グラムの重水素から、理想的に約1グラムのヘリウムを生成した場合、約8000リットルの石油を燃焼するのに相当するエネルギーを発生する。
重水素は、天然水の約0.015%(約7000分の1)存在している。
地球全体の海水などの量を勘案すると、現在の発電量を基準にして約1万年分との試算あり。
【0100】
(数20)
炭素原子を核融合反応させる為に必要な、システム要件の試算
仮に10万ボルトの高圧伝送路の電力を使用する場合における、生成可能なエネルギー量を試算する。
A. 炭素の反応への要求エネルギー : 50KeV 及び、2×10^8 kg/m3 = 2x10^2 kg/cm3 = 200 kg/cm3
B. 想定されるシステム要件
1. 電圧 : 10万ボルト = 100 KV (絶縁破壊電圧にて100KeV相当)
2. 電流 : 1 A (仮定)
3. 電力 : 10万ワット = 100 KW(仮定)
4. 生成可能な相当温度 : 10億度 = 100K eV = 11,600 x 10K(キロ) K(ケルビン)
5. 原子密度(液体水素) : 2.23x10^22 個/cm3
6. 隔壁加圧強度 : 200+α kg/cm3
7. 電力印加時間 : 1 秒
Aの条件を、1~7において、実現する装置は既存の設備において存在する。
また、スペック的には、各々、10倍以上の余裕をもって実現可能である。
鉄よりも軽い原子の核融合反応には、10万ボルトの10倍の、100万ボルト、即ち、1MV、即ち、100億度相当のエネルギーと、液体燃料の高濃度な原子密度によって、重水素の要求エネルギー量の100倍に相当し、余裕を以て適用できる。
即ち、炭素やその他の、重水素よりも大きな核融合反応への要求エネルギー量の大きい原子へのエネルギーの供給は余裕がある。
よって、本方式は、鉄よりも軽い多様な原子を、核融合燃料として利用可能とするポテンシャルを持つ。
【産業上の利用可能性】
【0101】
図面にて示す。
【図面の簡単な説明】
【0102】
(
図1)基本構成図
本方式を実現するのに最低限必要な要素を示す図であり、超高圧電源部(High voltage electric supply)、電力伝送路、隔壁(Barrier / Bullet)、陰極側電極(Cathode)、固体/液体核融合燃料(Solid/Liquid Fusion fuel)、陽極側電極(Anode)、冷媒(Coolant)、必要に応じてベンチレーター弁(Valve)、マイクロウェーブや光粒子ビームなどの補助的原子振動増進装置(Auxiliary Nucleus vibration accelerator)を有するシステムの概念図である。雷に相当するような超高エネルギーの電力を、個体/液体の燃料に対して印加し、核融合反応を誘起する基本構成である。
但し、当初は耐久性の問題から1回利用毎に、燃料と隔壁、電極をセットにしたバレット方式で、交換、自動連続装てんするなどの方式を想定する。将来的には、連続利用を前提として、劣化することを想定した上で、隔壁、電極などの自己修復性、動的修復性などについて検討を行い、連続使用可能なアプリケーションに対応することを想定する。
【実施例0103】
(
図2)熱交換式蒸気タービン
本方式における、応用の基本形として、核融合反応で発生した熱を、熱交換により水やその他の冷媒を使って、タービン(Turbine)の動力エネルギーに変換し、排気(Exhaust)を回収し、復水器(Steam condenser)などの冷却装置を通して冷却し、循環させるシステムの概念図である。タービンの出力は、発電機などに留まらず、各種輸送機や、その他の動力源として使用可能である。