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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191584
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】行動評価システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20221221BHJP
   G10L 17/00 20130101ALI20221221BHJP
【FI】
G06Q50/10
G10L17/00 200C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099885
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】中村 克行
(72)【発明者】
【氏名】木口 雅史
(72)【発明者】
【氏名】松本 久功
(72)【発明者】
【氏名】牧 敦
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】
リアルタイムや対話直後の行動評価を行い得る行動評価装置及び方法を提案する。
【解決手段】
センサの出力に基づいて評価対象者の特定の行動を検知し、検知した行動に関する複数の評価項目をそれぞれ評価し、行動の評価項目ごとの評価結果を統合した統合評価を生成し、統合評価を出力するようにし、評価項目を、行動に関して重要な直列評価項目と、当該直列評価項目以外の並列評価項目に分けて管理し、評価項目を評価する際、評価対象者の行動に関する各直列評価項目を順番に評価し、当該行動がいずれかの直列評価項目について予め設定された条件を満たさなかった場合には当該行動に対する評価を終了し、すべての直列評価項目が当該直列評価項目について設定された条件を満たした場合には各並列評価項目をそれぞれ評価するようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象者の行動を評価する行動評価装置において、
センサの出力に基づいて前記評価対象者の特定の前記行動を検知する行動検知部と、
前記行動検知部が検知した前記行動に関する複数の評価項目をそれぞれ評価する行動詳細評価部と、
前記行動の前記評価項目ごとの評価結果を統合した統合評価を生成する行動評価統合部と、
前記統合評価を出力する行動出力部と
を備え、
前記評価項目は、
前記行動に関して重要な直列評価項目と、当該直列評価項目以外の並列評価項目に分けて管理され、
前記行動詳細評価部は、
前記評価対象者の前記行動に関する各前記直列評価項目を順番に評価し、当該行動がいずれかの前記直列評価項目について予め設定された条件を満たさなかった場合には当該行動に対する評価を終了し、すべての前記直列評価項目が当該直列評価項目について設定された前記条件を満たした場合には各前記並列評価項目をそれぞれ評価する
ことを特徴とする行動評価装置。
【請求項2】
前記センサの出力に基づいて、対話参加者の中から評価対象の評価対象者を推定する主体推定部をさらに備え、
前記行動検知部は、
前記主体推定部により評価対象として推定された前記評価対象者の特定の前記行動を検知する
ことを特徴とする請求項1に記載の行動評価装置。
【請求項3】
行動詳細評価部により算出された前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目ごとの評価結果に基づいて、前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目の中から前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目についてそれぞれ予め設定された選定条件を満たす前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目を選定する評価項目選定部をさらに備え、
前記行動評価統合部は、
前記評価項目選定部により選定された前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目ごとの評価結果を統合した前記統合評価を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の行動評価装置。
【請求項4】
前記選定条件は、過去の前記行動との類似度である
ことを特徴とする請求項3に記載の行動評価装置。
【請求項5】
評価対象の前記行動は、上司及び部下の対話時における行動であり、
前記評価対象者は、前記上司である
ことを特徴とする請求項1に記載の行動評価装置。
【請求項6】
前記行動は、相槌である
ことを特徴とする請求項5に記載の行動評価装置。
【請求項7】
評価対象の前記行動は、親子の対話時における行動であり、
前記評価対象者は、親である
ことを特徴する請求項1に記載の行動評価装置。
【請求項8】
前記行動は、子どもに対する直接的命令である
ことを特徴とする請求項7に記載の行動評価装置。
【請求項9】
評価対象者の行動を評価する行動評価装置により実行される行動評価方法であって、
センサの出力に基づいて前記評価対象者の特定の前記行動を検知する第1のステップと、
検知した前記行動に関する複数の評価項目をそれぞれ評価する第2のステップと、
前記行動の前記評価項目ごとの評価結果を統合した統合評価を生成する第3のステップと、
前記統合評価を出力する第4のステップと
を備え、
前記評価項目は、
前記行動に関して重要な直列評価項目と、当該直列評価項目以外の並列評価項目に分けて管理され、
前記第2のステップでは、
前記評価対象者の前記行動に関する各前記直列評価項目を順番に評価し、当該行動がいずれかの前記直列評価項目について予め設定された条件を満たさなかった場合には当該行動に対する評価を終了し、すべての前記直列評価項目が当該直列評価項目について設定された前記条件を満たした場合には各前記並列評価項目をそれぞれ評価する
ことを特徴とする行動評価方法。
【請求項10】
前記第1のステップでは、
前記センサの出力に基づいて、対話参加者の中から評価対象の前記評価対象者を推定し、
評価対象として推定した前記評価対象者の特定の前記行動を検知する
ことを特徴とする請求項9に記載の行動評価方法。
【請求項11】
前記第3のステップでは、
算出した前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目ごとの評価結果に基づいて、前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目の中から前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目についてそれぞれ予め設定された選定条件を満たす前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目を選定し、
選定した前記直列評価項目及び又は前記並列評価項目ごとの評価結果を統合した前記統合評価を生成する
ことを特徴とする請求項9に記載の行動評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は行動評価システム及び方法に関し、例えば、対話中のユーザの行動を評価する行動評価システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
複数人の対話において、話者一人ひとりの行動を評価できれば、対話中の話者の行動を支援できる。そこで、対話支援のための行動評価に向けて、話者やその相手の表情や身振り手振り、音声などの対話に関わる行動をカメラやマイクロホンなどのセンサにより信号(以下、これを行動信号と呼ぶ)として取得し、取得した行動信号に基づいて話者の行動の特徴量(以下、これを行動特徴量と呼ぶ)を算出し、その行動特徴量を話者の行動推定に活用する技術が提案されている。
【0003】
このような技術のうち、他者に対する人の言動を評価するため、被評価者の言動を認識する認識部と、被評価者の言動の切っ掛けとなる被評価者以外の者の状態である契機状態を検知する検知部と、認識部による被評価者の言動に関わる認識結果と検知部により検知された契機状態を利用して、被評価者の言動を評価する評価部とを情報処理装置に設けることが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/088369号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、人の行動を推定すると共に、その人の行動の切っ掛けとなる他者の状態である契機状態を検知し、人の行動に関わる認識結果と契機状態とを利用することで他者に対する人の言動を評価することができる。
【0006】
しかしながら、複数人の対話において、評価対象のユーザの行動を詳細に評価する場合、行動評価におけるシステムの処理量が膨大となることが想定されていない。対話中のユーザの行動を詳細かつ連続的に評価する場合、ユーザの表情、視線、顔の動き、身振り手振り、発話内容、音声の大きさや高さなどのいわゆるパラ言語情報と、その行動前後の対話相手のパラ言語情報とを同時に取得し、処理することで複数の評価項目を用いてユーザの行動を統合的に評価する必要がある。またユーザと対話相手とが既知の場合、以前のユーザと対話相手の行動も取得し、評価項目に含める必要がある。
【0007】
対象とする行動の評価項目が多数存在する場合、すべての評価項目による行動評価を直列的又は並列的に処理すると、システムによる処理量の低減が難しかったり、リアルタイムや対話直後の行動評価を行い難いという問題がある。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、リアルタイムや対話直後の行動評価を行い得る行動評価装置及び方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、評価対象者の行動を評価する行動評価装置において、センサの出力に基づいて前記評価対象者の特定の前記行動を検知する行動検知部と、前記行動検知部が検知した前記行動に関する複数の評価項目をそれぞれ評価する行動詳細評価部と、前記行動の前記評価項目ごとの評価結果を統合した統合評価を生成する行動評価統合部と、前記統合評価を出力する行動出力部とを設け、前記評価項目を、前記行動に関して重要な直列評価項目と、当該直列評価項目以外の並列評価項目に分けて管理され、前記行動詳細評価部が、前記評価対象者の前記行動に関する各前記直列評価項目を順番に評価し、当該行動がいずれかの前記直列評価項目について予め設定された条件を満たさなかった場合には当該行動に対する評価を終了し、すべての前記直列評価項目が当該直列評価項目について設定された前記条件を満たした場合には各前記並列評価項目をそれぞれ評価するようにした。
【0010】
また本発明においては、評価対象者の行動を評価する行動評価装置により実行される行動評価方法であって、センサの出力に基づいて前記評価対象者の特定の前記行動を検知する第1のステップと、検知した前記行動に関する複数の評価項目をそれぞれ評価する第2のステップと、前記行動の前記評価項目ごとの評価結果を統合した統合評価を生成する第3のステップと、前記統合評価を出力する第4のステップとを設け、前記評価項目を、前記行動に関して重要な直列評価項目と、当該直列評価項目以外の並列評価項目に分けて管理し、前記第2のステップでは、前記評価対象者の前記行動に関する各前記直列評価項目を順番に評価し、当該行動がいずれかの前記直列評価項目について予め設定された条件を満たさなかった場合には当該行動に対する評価を終了し、すべての前記直列評価項目が当該直列評価項目について設定された前記条件を満たした場合には各前記並列評価項目をそれぞれ評価するようにした。
【0011】
本発明の行動評価装置及び方法によれば、評価対象者の行動が重要な直列評価項目の条件を満たさない場合にはそれ以降の直列評価項目及び各並列評価項目の評価が行われないため、その分の行動評価装置の処理量を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リアルタイムや対話直後の行動評価を行い得る行動評価装置及び方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施の形態による行動評価システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施の形態による行動評価システムの論理構成を示すブロック図である。
図3】主体推定データベースの構成例を示す図表である。
図4】主体推定情報の構成例を示す図表である。
図5】行動検知データベースの構成例を示す図表である。
図6】評価メソッドの構成例を示す図表である。
図7】行動検知情報の構成例を示す図表である。
図8】行動詳細評価データベースの構成例を示す図表である。
図9】行動詳細評価結果の構成例を示す図表である。
図10】行動詳細結果の構成例を示す図表である。
図11A】主体推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図11B】主体推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図11C】主体推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図12】行動検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
図13】行動詳細評価処理の処理手順を示すフローチャートである。
図14】行動評価統合処理の処理手順を示すフローチャートである。
図15】行動出力処理の処理手順を示すフローチャートである。
図16】第2の実施の形態による行動評価システムの全体構成を示すブロック図である。
図17】第2の実施の形態による行動評価システムの論理構成を示すブロック図である。
図18】評価項目選定データベースの構成例を示す図表である。
図19】選定設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図20】評価項目選定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図21】行動評価設定画面の画面構成例を示す図である。
図22】編集画面の画面構成例を示す図である。
図23】具体例1における行動評価システムの動作概要を示す概念図である。
図24】具体例1における行動評価システムの論理構成を示すブロック図である。
図25】具体例2における行動評価システムの動作概要を示す概念図である。
図26】具体例2における行動評価システムの論理構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0015】
なお、本発明は以下の各実施の形態の内容に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。各実施の形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0016】
また各実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に別の実施の形態の構成を加えることも可能である。さらに各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。さらに、各構成、機能、処理部及び処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。
【0017】
(1)第1の実施の形態
(1-1)本実施の形態による行動評価システムの物理構成
図1において、1は全体として本実施の形態による行動評価システムを示す。行動評価システム1は、評価対象となるユーザ(以下、これを評価対象ユーザ又は評価対象者と呼ぶ)の対話時における表情や身振り手振り及び音声などの行動を評価するシステムである。この行動評価システム1は、第1及び第2の行動情報取得装置2A,2Bと、行動評価装置3と、入力装置4及び出力装置5とを備えて構成される。
【0018】
第1の行動情報取得装置2Aは、評価対象ユーザの対話時の行動に関する情報を取得し、取得した情報を主行動信号として行動評価装置3に出力する1又は複数のセンサから構成される。また第2の行動情報取得装置2Bは、評価対象ユーザ以外の話者(評価対象ユーザの対話相手)の対話時の行動に関する情報を取得し、取得した情報を副行動信号として行動評価装置3に出力する1又は複数のセンサから構成される。
【0019】
本実施の形態の場合、第1及び第2の行動情報取得装置2A,2Bは、それぞれユーザの表情を撮影するカメラと、ユーザの発話音声を集音するマイクロホンとから構成され、これらのカメラから出力された画像信号と、マイクロホンから出力された音声信号とが主行動信号や副行動信号として行動評価装置3に出力されるものとする。
【0020】
ただし、主行動信号及び副行動信号は、主体の推定、行動の検知、行動の詳細評価のために用いることが可能な評価対象ユーザや評価対象ユーザ以外の話者の行動に関する情報の信号であれば、画像信号や音声信号に限定されない。例えば、主行動信号及び副行動信号が、評価対象ユーザや評価対象ユーザ以外の話者に装着した加速度センサから出力される身体の動きに関する加速度信号や、家電や家具などに装着した電力センサや加速度センサなどから出力される電力信号や加速度信号、さらには室温や湿度等の外部環境などの計測信号であってもよい。
【0021】
また主行動信号及び副行動信号は、評価対象ユーザ及び評価対象ユーザ以外の話者の行動を評価できるものであれば、画像信号及び音声信号のいずれか一方だけであってもよく、さらには画像信号及び音声信号の両方又はいずれか一方と、他の計測信号とであってもよい。
【0022】
さらに評価対象ユーザ以外の話者は複数人であってもよい。この場合には評価対象ユーザ以外の各話者にそれぞれ対応させて第2の行動情報取得装置2Bが設けられ、これら第2の行動情報取得装置2Bがそれぞれ対応する話者について取得した当該話者の行動に関する各種情報がそれぞれ副行動信号として行動評価装置3に与えられることになる。
【0023】
行動評価装置3は、CPU(Central Processing Unit)6、メモリ7及び記憶装置8などの情報処理資源を備えた汎用のコンピュータ装置から構成される。CPU6は、行動評価装置3全体の動作を統括的に制御するプロセッサである。
【0024】
またメモリ7は、例えば半導体メモリから構成され、CPU6のワーキングメモリとして利用される。後述の主体推定プログラム10、行動検知プログラム11、行動詳細評価プログラム12、行動評価統合プログラム13、行動出力プログラム14及び通信プログラム15は、行動評価装置3の起動時や必要時に記憶装置から読み出されてメモリ7に格納されて保持される。
【0025】
記憶装置8は、ハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)などの大容量の不揮発性の記憶装置から構成され、各種プログラムや長期的に保存が必要な各種情報を保持するために利用される。後述の主体推定データベース20、行動検知データベース21、評価メソッド22及び行動詳細評価データベース23もこの記憶装置8に格納されて保持される。
【0026】
入力装置4は、マウスやキーボードなどから構成され、行動評価装置3に各種情報を入力したり、各種設定を行うために利用される。出力装置5は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示装置から構成される。出力装置5は、行動評価装置3から与えられた画面データに基づいて各種画面を表示する。
【0027】
(1-2)本実施の形態による行動評価装置の論理構成
次に、行動評価装置3の論理構成について説明する。これに際して、行動評価装置3に搭載された行動評価機能について説明する。この行動評価機能は、第1及び第2の行動情報取得装置2A,2Bから与えられた主行動信号及び副行動信号に基づいて、いずれの話者が評価対象ユーザであるかを推定し、その評価対象ユーザの特定の評価対象の行動(以下、これを評価行動と呼ぶ)を検知してその評価行動を評価し、評価結果に基づいて評価対象ユーザの行動を支援する機能である。
【0028】
本実施の形態においては、各評価行動に対して複数の評価項目が予め設定されており1つの評価行動を多面的及び統合的に評価する。例えば、「笑う」という評価行動については、「場所(笑っても良い場所か否か)」、「話題(笑っても良い話題か否か)」、「共感(相手と共感できているか否か)」といった複数の評価項目が予め設定され、これらの評価項目ごとに「笑う」という評価対象ユーザの行動を多面的及び統合的に評価する。
【0029】
ただし、1つの評価行動について複数の評価項目を評価する場合、かかる評価の演算量が多くなり、特に、対話相手が複数存在する場合などにリアルタイムでの評価が困難となる問題がある。
【0030】
そこで本行動評価装置3では、評価行動ごとに、その評価項目のうちの特に重要な1又は複数の評価項目を直列評価項目とし、それ以外の評価項目を並列評価項目として管理する。例えば、対話中の「笑う」という行動については、「場所」や「話題」を弁えずに笑うことは対話相手とのコミュニケーションをとる上で問題であり、このような項目については直列評価項目として管理する。これに対して、評価対象ユーザが笑ったことに起因して対話相手の「発話を一時的に妨げた」ことは対話相手とのコミュニケーションをとる上でそれほど重要な問題ではないため、このような項目については並列評価項目として管理する。
【0031】
そして直列評価項目については、その優先順位に基づいて順番に評価し、評価対象ユーザの評価行動がいずれかの直列評価項目の条件を満たしていないと判断した段階でその評価行動に対する評価を終了する。また並列評価項目については、すべての直列評価項目についての評価を終了した後に順番に評価を行い、評価対象ユーザの評価行動がいずれかの並列評価項目の条件を満たしていない場合においてもすべての並列評価項目についての評価を実行する。
【0032】
このように評価行動を評価することにより、評価対象ユーザの行動評価に要する演算量を低減させてリアルタイムでの行動評価を行うことが可能となる。
【0033】
図2は、このような行動評価機能が搭載された本実施の形態による行動評価装置3の論理構成を示す。この図2に示すように、本行動評価装置3は、入力部30、演算部31、記憶部32及び出力部33を備える。
【0034】
入力部30は、主行動信号入力部40及び副行動信号入力部41から構成され、演算部31は、主体推定部42、行動検知部43、行動詳細評価部44、行動評価統合部45及び行動出力部46から構成される。また記憶部32は、メモリ7(図1)及び記憶装置8(図1)が提供する記憶領域であり、主体推定データベース20、行動検知データベース21、評価メソッド22、行動詳細評価データベース23、行動詳細評価結果24及び行動評価統合結果25が格納される。
【0035】
主行動信号入力部40及び副行動信号入力部41は、行動評価装置3のCPU6(図1)がメモリ7に保持された通信プログラム15を実行することにより具現化される機能部である。主行動信号入力部40は、第1の行動情報取得装置2Aから与えられた主行動信号に対してA/D(Analog/Digital)変換などの所定の信号処理を施した後に演算部31の主体推定部42、行動検知部43及び行動詳細評価部44に出力する。また副行動信号入力部41は、第2の行動情報取得装置2Bから与えられた副行動信号に対して主行動信号入力部と同様の信号処理を施した後に演算部31の主体推定部42、行動検知部43及び行動詳細評価部44に出力する。
【0036】
主体推定部42は、行動評価装置3のCPU6がメモリ7に保持された主体推定プログラム10(図1)を実行することにより具現化される機能部である。主体推定部42は、主行動信号入力部40から与えられた主行動信号と、副行動信号入力部41から与えられた副行動信号と、主体推定データベース20に予め格納されている主体情報とに基づいて、対話参加者の中から評価対象ユーザを推定する機能を有する。具体的に、主体推定部42は、主行動信号及び副行動信号のうちのいずれが評価対象ユーザ由来の行動信号であるかを推定し、推定結果に基づく主体推定情報47を行動検知部43に出力する。
【0037】
図3は、主体推定データベース20の構成例を示す。主体推定データベース20は、評価対象ユーザについて予め取得された、その評価対象ユーザの顔の特徴点(目、口、鼻及び顔の輪郭など)の配置や、評価対象ユーザの声紋及び言語など、評価対象ユーザを推定するための各種情報(以下、これを、適宜、主体情報と呼ぶ)が格納されたデータベースであり、事前にユーザや専門家等により作成される。なお、主体推定データベース20を評価対象ユーザごとに作成するようにしてもよい。
【0038】
本実施の形態の主体推定データベース20は、主体名欄20A、取得先信号名欄20B、主体特徴量名欄20C及び主体特徴量欄20Dを備えたテーブル構造を有する。図3の主体推定データベース20では、1つの行が予め評価対象ユーザについて取得されて登録された当該評価対象ユーザの1つの主体情報に対応する。
【0039】
そして主体名欄20Aには、評価対象ユーザの名称が主体名として格納される。主体名は、評価対象ユーザ個人を特定する情報であっても、評価対象ユーザの属性を表す情報であってもよい。例えば、職場における上司と部下との面談で上司を支援する場合には主体名を「上司」としても良く、また親子の対話で親を支援する場合には主体名を「親」としてもよい。
【0040】
また取得先信号名欄20Bには、かかる評価対象ユーザについて予め取得されて登録された、評価対象ユーザの各特徴量の名称(「主体特徴量名」)が格納される。図3は、このような特徴量として、評価対象ユーザの顔における目、鼻、口及び顔の輪郭などの特徴点の配置(「顔特徴点の配置」)や、その評価対象ユーザの声紋(「声紋」)、及び、その評価対象ユーザが実際に発話する可能性がある言葉(「言語」)等が主体推定データベースに登録されている例を示している。
【0041】
主体特徴量名欄20Cには、主行動信号や副行動信号を構成する各種信号(ここでは画像信号及び音声信号)のうちの対応する特徴量を取得可能な信号の信号種別(画像信号の場合には「画像」、音声信号の場合には「音声」)が格納される。
【0042】
さらに主体特徴量欄20Dには、評価対象ユーザから予め取得した対応する特徴量名の特徴の値(特徴量)が格納される。かかる特徴量として、例えば「顔特徴点の配置」であれば、評価対象ユーザの顔における目、鼻、口及び輪郭などの各特徴点の座標が格納され、「声紋」であれば、評価対象ユーザの音声の時系列データに対する周波数スペクトルが格納され、言語であれば、事前に設定した合言葉やその評価対象ユーザの氏名などの言葉が格納される。
【0043】
従って、図3の例の場合、事前に画像信号(「画像」)から取得した、「xx xx」という評価対象ユーザの顔における各特徴点の配置(座標)は、それぞれ「1,100,100」、「2,105,115」、……「100,680,620」、その評価対象ユーザの音声の時系列データに対する周波数スペクトルは「1,0.01,100」、「2,0.01,110」、……、「3000,5.00,620」であり、その評価対象ユーザが発話する可能性がある言葉として「xx xx」や「○○」、「△△」、……、「□□」が主体情報として主体推定データベースに登録されていることが示されている。
【0044】
また図4は、上述のように主体推定部42から出力される主体推定情報47の構成例を示す。この図4に示すように、主体推定情報47は、主行動信号名47A、主行動信号取得時間47B、主行動信号値47C、主行動特徴量名47D、主行動特徴量47E及び主体スコアA47Fと、副行動信号名47G、副行動信号取得時間47H、副行動信号値47I、副行動特徴量名47J、副行動特徴量47K及び主体スコアB47Lと、主体推定結果47Mとを含む。
【0045】
主行動信号名47A及び副行動信号名47Gは、それぞれそのとき主体(評価対象ユーザ)を推定するのに利用した主行動信号や副行動信号の信号種別(「画像」及び又は「音声」)を表す。主行動信号が画像信号及び音声信号の双方を含む場合には、画像信号及び音声信号を「主行動信号名1」、「主行動信号名2」のように番号を付与して区別するようにしてもよい。
【0046】
主行動信号取得時間47B及び副行動信号取得時間47Hは、それぞれ主行動信号や副行動信号を取得した時間を表す。この「時間」は、例えば主行動信号や副行動信号の計測開始時刻からの経過時間である。また主行動信号値47C及び副行動信号値47Iは、それぞれ主行動信号入力部40(図2)や副行動信号入力部41(図2)が第1又は第2の行動情報取得装置2A,2B(図2)から与えられた主行動信号や副行動信号を対応する「時間」にサンプリングすることにより得られた主行動信号や副行動信号の値(サンプリング値)である。
【0047】
主行動特徴量名47D及び副行動特徴量名47Jは、それぞれ評価対象ユーザを推定するために利用した特徴量の名称(主行動特徴量名、副行動特徴量名)を表す。主行動特徴量名47D及び副行動特徴量名47Jとしては、上述のように「顔特徴点の配置」や、「声紋」及び「言語」などがある。なお、主行動特徴量名47Dや副行動特徴量名47Jとしては、評価対象ユーザを特定できる情報であれば、かかる評価対象ユーザや当該評価対象ユーザ以外の話者に入力装置4(図1)からの入力を要求した場合に取得した情報などが含まれていてもよい。
【0048】
主行動特徴量47E及び副行動特徴量47Kは、主行動特徴量名47Dの特徴量や副行動特徴量名47Jの特徴量の具体的な値である。例えば、主行動特徴量名47Dや副行動特徴量名47Jの値が「顔特徴点の配置」である場合には、評価対象ユーザの顔における目、鼻、口及び輪郭などの各特徴点の座標が該当し、主行動特徴量名47Dや副行動特徴量名47Jの値が「声紋」である場合には、音声の時系列データに対する周波数スペクトルが該当する。また主行動特徴量名47Dや副行動特徴量名47Jの値が「言語」である場合には、事前に設定した合言葉やそのユーザの氏名などの言葉が該当する。
【0049】
主体スコアA47F及び主体スコアB47Lは、それぞれ主行動信号値47Cの各値や副行動信号値47Iの各値と、主体推定データベース20に格納された同じ特徴量名の特徴の値(主体特徴量)との類似度を表す。主体スコアA47Fの値が主体スコアB47Lの値よりも大きい場合には、主行動信号の特徴量が主体推定データベース20に格納された対応する主体特徴量と類似しており、主行動信号の取得元の話者が評価対象ユーザである確率が高いことを意味する。また、逆に、主体スコアB47Lの値が主体スコアA47Fの値よりも大きい場合には、副行動信号の特徴量が主体推定データベース20に格納された対応する主体特徴量と類似しており、副行動信号の取得元の話者が評価対象ユーザである確率が高いことを意味する。
【0050】
主体推定結果47Mは、主行動信号及び副行動信号のうち、いずれが評価対象ユーザから取得した行動信号であるかの推定結果を表す。ここまでの説明では、主行動信号入力部40に入力する主行動信号は評価対象ユーザから取得した行動信号であり、副行動信号入力部41に入力する副行動信号は評価対象ユーザ以外の話者から取得した行動信号であることを前提としてしているが、実際には、主体推定部42がかかる推定結果を得るまでは、主行動信号及び副行動信号のうちのいずれが評価対象ユーザから取得した行動信号であるかが分からない。
【0051】
そこで、主行動信号入力部40及び副行動信号入力部41にそれぞれ入力する各行動信号をランダム又は固定的に主行動信号又は副行動信号に仮設定したり、前回の情報を参照してこれらの行動信号を主行動信号又は副行動信号に仮設定した上で、主体推定部42の主体推定結果に従って主行動信号入力部40及び副行動信号入力部41にそれぞれ入力する各行動信号のうちのいずれが評価対象ユーザから取得した行動信号(主行動信号)であるかを確定させる。
【0052】
主体推定結果47Mが「主行動信号」であれば何もせず、主体推定結果47Mが「副行動信号」であれば、これ以降の処理において、主行動信号入力部40から出力される行動信号を副行動信号、副行動信号入力部41から出力される行動信号を主行動信号として取り扱う。
【0053】
よって、主行動信号入力部40や副行動信号入力部41が行動信号を取得した段階ではこれらの行動信号を主行動信号や副行動信号として区別せずに行動信号Aや行動信号Bのように区別し、主体推定部42の主体推定結果を得た後に、行動信号A及び行動信号Bのうちの該当する一方を主行動信号、他方を副行動信号として区別して取り扱うようにしてもよい。
【0054】
また主体推定結果47Mは、主体スコアA及び主体スコアBの相関関係(大小関係)に基づいて主行動信号及び副行動信号を決定するのではなく、一方の行動信号にのみ基づいていずれの行動信号が主行動信号であるかを推定するようにしてもよい。具体的には、一方の行動信号の主体スコアが予め専門家等により設定された閾値を超えた場合には、その行動信号を主行動信号として推定し、かかる一方の行動信号の主体スコアがかかる閾値を超えなかった場合には、他方の行動信号を主行動信号として推定するようにすればよい。
【0055】
なお主行動信号名47Aや主行動信号値47Cなどにおいて、主体推定情報47で複数種類存在する項目がある場合には、例えば「主行動信号名1」や、「主行動信号1」のように番号を付与することで区別できるようにする。主体スコアAなどが複数存在する場合には、これらを「主体スコアA1」、「主体スコアA2」、……のように区別し、これらのスコアの平均値や最高値などを算出することにより、複数の主体スコアAを統合し、主体推定結果47Mの算出に用いる。
【0056】
図2の説明に戻って、行動検知部43は、行動評価装置3のCPU6(図1)がメモリ7(図1)に保持された行動検知プログラム11(図1)を実行することにより具現化される機能部である。行動検知部43は、主体推定部42から与えられた主体推定情報47(図4)と、行動検知データベース21及び評価メソッド22とに基づいて、そのときの評価対象ユーザの行動を検知し、検知結果を行動検知情報48として行動詳細評価部44に出力する。
【0057】
図5は、かかる行動検知データベース21の構成例を示す。行動検知データベース21は、評価対象ユーザのそのときの行動を主体推定情報47に基づいて検知するための各種行動ごとの特徴量が行動特徴量として格納されたデータベースであり、予め専門家等により事前に作成される。なお、行動検知データベース21を評価対象ユーザごとにそれぞれ作成するようにしてもよい。
【0058】
本実施の形態の行動検知データベース21は、行動名欄21A、行動特徴量名欄21B、行動特徴量欄21C、行動検知基準欄21D及び行動検知閾値欄21Eを備えたテーブル構造を有する。図5の行動検知データベース21では、1つの行が1種類の行動に対応する。
【0059】
そして行動名欄21Aには、「立つ」、「座る」、「寝る」、「歩く」及び「笑う」などの各種行動の名称(行動名)がそれぞれ格納される。行動名としては、事前に設定した評価対象ユーザが取り得る行動や、評価対象ユーザが前回行った行動の行動名などが登録される。なお、行動名として、対話に関係しない一般的な行動の行動名が含まれていてもよい。
【0060】
また行動特徴量名欄21Bには、対応する行動を検知する際に利用可能な行動特徴量の名称が行動特徴量名として格納される。このような行動特徴量名としては、例えば「立つ」、「座る」、「寝る」及び「歩く」という行動であれば「姿勢」、「笑う」という行動であれば「顔特徴点の配置」、「声量」及び「言語」などがある。
【0061】
さらに行動特徴量欄21Cには、評価対象ユーザが対応する行動名の行動を行っていると判断するための行動特徴量の基準(以下、これを行動特徴量基準と呼ぶ)となる値が格納される。例えば、行動特徴量名が「姿勢」である場合には、その姿勢を取った場合における人の特定関節の位置座標の時系列データが行動特徴量基準として格納される。
【0062】
さらに行動検知基準欄21Dには、評価対象ユーザが対応する行動名の行動を行っていると判断するための基準(以下、これを行動検知基準と呼ぶ)が格納され、行動検知閾値欄21Eには、評価対象ユーザがその行動を行っていると判断するための閾値(以下、これを行動検知閾値と呼ぶ)が格納される。
【0063】
よって、例えば図5では、「立つ」、「座る」、「寝る」又は「歩く」といった行動については、行動検知基準が「相関係数(類似度)」であるため、主体推定情報47に含まれる主行動特徴量と、行動検知データベース21におけるその行動に対応する行の行動特徴量欄21Cに格納された行動特徴量との「相関係数(類似度)」がその行の行動検知閾値欄21Eに格納された行動検知閾値を超えている場合には、評価対象ユーザがその行動を行っていると判断できることが示されている。
【0064】
また図5では、「笑う」という行動については、主体推定情報47に含まれる主行動特徴量の主行動特徴量名が「顔特徴点の配置」である場合には、主体推定情報47に含まれる主行動特徴量と、行動検知データベース21における行動名が「笑う」で、行動特徴量名欄21Bに「顔特徴点の配置」が格納された行の行動特徴量欄21Cに格納された行動特徴量との「相関係数(類似度)」がその行の行動検知閾値欄21Eに格納された行動検知閾値を超えているときに、評価対象ユーザが「笑う」という行動を行っていると判断できることが示されている。
【0065】
さらに図5では、主体推定情報47に含まれる主行動特徴量の主行動特徴量名が「声量」である場合には、主体推定情報47に含まれる主行動特徴量が、行動検知データベース21における行動名が「笑う」で、行動特徴量名欄21Bに「声量」が格納された行の行動特徴量欄21Cに格納された行動特徴量や、その行の行動検知閾値欄21Eに格納された行動検知閾値よりも大きい(行動検知基準が「大小」)ときも、評価対象ユーザが「笑う」という行動を行っていると判断できることが示されている。
【0066】
加えて、図5では、主体推定情報47に含まれる主行動特徴量の主行動特徴量名が「言語」である場合には、主体推定情報47に含まれる主行動特徴量が、行動検知データベース21における行動名が「笑う」で、行動特徴量名欄21Bに「言語」が格納された行の行動特徴量欄21Cに格納された行動特徴量や、その行の行動検知閾値欄21Eに格納された行動検知閾値と一致(行動検知基準が「一致」)したときにも、評価対象ユーザが「笑う」という行動を行っていると判断することができたことが示されている。
【0067】
図6は、評価メソッド22の一例を示す。評価メソッド22は、事前に専門家などにより設定された評価対象とすべき行動の一覧であり、本行動評価装置1により行動評価を行い得る各種シチュエーション(例えば、「コミュニケーション一般」、「ビジネス」、「子育て」など)にそれぞれ対応させて作成される。図6では、「コミュニケーション一般」用の評価メソッド22の一例であり、「笑う」という行動と、「怒鳴る」という行動とが、評価行動として設定されている例を示している。
【0068】
図7は、行動検知部43から行動詳細評価部44に出力される上述の行動検知情報48の構成例を示す。行動検知情報48は、主行動信号名48A、主行動信号取得時間48B、主行動信号値48C、主行動特徴量名48D、主行動特徴量48E、主行動名48F及び主行動検知結果48Gの各情報を含む。
【0069】
主行動名48Fは、行動検知部43が検知した評価対象ユーザのそのときの行動の名称(行動名)を表す。また主行動信号名48Aは、その行動を検知するために利用した主行動信号の信号種別を表す。
【0070】
主行動信号取得時間48B及び主行動信号値48Cは、それぞれ図4について上述した主体推定情報47の主行動信号取得時間47B及び主行動信号値47Cと同様の定義及び形式の情報である。また主行動特徴量名48D及び主行動特徴量48Eは、それぞれかかる行動を検知するために利用した主体推定情報47に含まれていた主行動特徴量名47D(図4)及び主行動特徴量47E(図4)の各値を表す。
【0071】
主行動検知結果48Gは、行動検知部43が検知した行動が評価メソッド22で定義された評価行動であるか否かを表す情報である。行動検知部43が検知した対応する行動が評価行動である場合には主行動検知結果48Gが「評価対象」に設定され、評価行動でない場合には主行動検知結果48Gが「非評価対象」に設定される。
【0072】
図2の説明に戻って、行動詳細評価部44は、行動評価装置3のCPU6(図1)がメモリ7(図1)に保持された行動詳細評価プログラム12(図1)を実行することにより具現化される機能部である。行動詳細評価部44は、行動検知部43から与えられた行動検知情報48と、行動詳細評価データベース23に格納された情報とに基づいて、行動検知部43により検知された評価対象ユーザの行動のうちの評価行動について、その評価行動がそれぞれその評価行動に関して予め設定されている各直列評価項目及び各並列評価項目の条件をそれぞれ満たすか否かを評価する機能を有する。そして行動詳細評価部44は、かかる評価結果を行動詳細評価結果24として記憶部32に格納する。
【0073】
なお本実施の形態においては、行動詳細評価部44として、かかる評価行動の各直列評価項目についての評価を行う直列評価項目用と、かかる評価行動の各並列評価項目についての評価を行う並列評価項目用との少なくとも2つの行動詳細評価部44を設けるものとするが、1つの行動詳細評価部44によりかかる評価行動の各直列評価項目及び各並列評価項目についての評価を行うようにしてもよい。
【0074】
図8は、行動詳細評価データベース23の構成例を示す。行動詳細評価データベース23は、評価メソッド22(図6)で定義された各評価行動についてそれぞれ予め設定された幾つかの直列評価項目及びその直列評価項目を満たすための条件と、幾つかの並列評価項目及びその並列評価項目を満たすための条件とが格納されたデータベースであり、予め専門家等により作成される。
【0075】
この行動詳細評価データベース23は、評価行動名欄23AX,23AYと、直列評価項目ごとの直列評価項目名欄23BX、直列評価特徴量名欄23CX、直列評価特徴量欄23DX、直列評価基準欄23EX及び直列評価閾値欄23FXと、並列評価項目ごとの並列評価項目名欄23BY、並列評価特徴量名欄23CY、並列評価特徴量欄23DY、並列評価基準欄23EY及び並列評価閾値欄23FYとを備えたテーブル構造を有する。図8の行動詳細評価データベース23では、上段の1つの行が1又は複数の直列評価項目に対応し、下段の1つの行が1又は複数の並列評価項目に対応する。
【0076】
そして評価行動名欄23AX,23AYには、評価メソッド22で定義された評価行動の名称(評価行動名)が格納され、直列評価項目名欄23BX及び並列評価項目名欄23BYには、それぞれ対応する直列評価項目又は並列評価項目の項目名が格納される。
【0077】
また直列評価特徴量名欄23CX、直列評価特徴量欄23DX、直列評価基準欄23EX及び直列評価閾値欄23FXと、並列評価特徴量名欄23CY、並列評価特徴量欄23DY、並列評価基準欄23EY及び並列評価閾値欄23FYとには、図5について上述した行動検知データベース21の行動特徴量名欄21B、行動特徴量欄21C、行動検知基準欄21D又は行動検知閾値欄21Eにそれぞれ格納された情報と同様の、それぞれ対応する直列評価項目又は並列評価項目について予め設定された情報が格納される。これらの情報は、対応する評価行動名欄23AX,23AYに評価行動名が格納された評価行動の詳細を評価するために用いるデータである。
【0078】
図9は、行動詳細評価結果24の構成例を示す。この図9に示すように、行動詳細評価結果24は、評価行動名24AX,24AYと、直列評価項目ごとの直列評価項目名24BX、直列評価特徴量名24CX、直列評価結果24DX及び直列評価特徴結果24EXと、並列評価項目ごとの並列評価項目名24BY、並列評価特徴量名24CY、並列評価結果24DY及び並列評価特徴結果24EYとの各情報を含む。
【0079】
評価行動名24AX,24AYと、直列評価項目名24BX及び並列評価項目名24BYと、直列評価特徴量名24CX及び並列評価特徴量名24CYとは、いずれも図8について上述した行動詳細評価データベース23の評価行動名欄23AX,23AYと、直列評価項目名欄23BX及び並列評価項目名欄23BYと、直列評価特徴量名欄23CX及び並列評価特徴量名欄23CYとのうちの対応する欄に格納された情報と同様の情報である。
【0080】
直列評価結果24DXは、対応する評価行動に対する対応する直列評価項目の評価結果である。直列評価結果24DXは、主行動信号及び副行動信号のうちの評価対象ユーザから取得した行動信号を用いて、評価行動名24AX及び直列評価特徴量名24CXの各値に合った行動詳細評価用の特徴量を算出し、その行動詳細評価用の特徴量と直列評価特徴量との関係を算出し、直列評価基準を参照して、その関係が直列評価閾値を満たす場合に、条件を満たすことを意味する値(以下、「OK」とする)に設定され、直列評価閾値を満たさない場合に、条件を満たさないことを意味する値(以下、「NG」とする)に設定される。
【0081】
なお直列評価項目が複数存在する場合、これらの直列評価項目を「直列評価項目1」、「直列評価項目2」などのようにして区別し、これらを例えば番号が小さい直列評価項目から順番に評価するなど、事前に設定した優先順位に基づいて評価する。2番目以降の直列評価項目は、それ以前のすべての直列評価項目が「OK」に設定されている場合にのみ評価を行い、直前の直列評価項目が「NG」に設定されている場合には、それ以降の直列評価項目についての評価は行わない。
【0082】
並列評価結果24DYは、対応する評価行動に対する対応する並列評価項目の評価結果である。並列評価結果24DYとして設定される値は、直列評価結果24DXと同様に「OK」又は「NG」である。並列評価項目が複数存在する場合、すべての直列評価項目の直列評価結果24DXの値が「OK」であれば、他の並列評価項目の並列評価結果24DYに関わりなく、すべての並列評価項目が評価されてその並列評価結果24DYとして「OK」又は「NG」がそれぞれ設定される。
【0083】
直列評価特徴結果24EX及び並列評価特徴結果24EYは、それぞれ直列評価結果24DX又は並列評価結果24DYを算出する際に、主行動信号及び又は副行動信号を用いて、評価行動名24AYの値及び直列評価特徴量名24CXの値に合った行動詳細評価用の特徴量を算出し、その行動詳細評価用の特徴量と直列評価特徴量名24CXの値との関係を算出することにより得られた情報である。直列評価特徴結果24EX及び並列評価特徴結果24EYは、それぞれ対応する直列評価結果24DX及び並列評価結果24DYを算出した場合にのみ算出する。算出しなかった場合には、その値を設定しなくても良く、また「N/A」などのデータが存在しないことを示す情報を設定するようにしてもよい。
【0084】
図2の説明に戻って、行動評価統合部45は、行動評価装置3のCPU6(図1)がメモリ7(図1)に保持された行動評価統合プログラム13(図1)を実行することにより具現化される機能部である。行動評価統合部45は、記憶部32に格納されている行動詳細評価結果24に基づいて、評価対象ユーザがそのとき行った行動に対して行動評価装置3がその評価対象ユーザ等に提示する統合な評価結果を行動評価統合結果25として生成し、これを記憶部32に格納する。
【0085】
図10は、行動評価統合結果25の構成例を示す。この図10に示すように、行動評価統合結果25は、出力信号名25A及びインタフェース出力内容25Bの各情報を含む。
【0086】
出力信号名25Aは、行動評価統合結果25をユーザに提示する際の出力信号の信号種別を表す情報であり、行動評価統合結果25の内容を画像としてユーザに提示する場合には画像信号を表す「画像」に設定され、行動評価統合結果25の内容を音声によりユーザに提示する場合には音声信号を表す「音声」に設定される。かかる出力信号の信号種別は、例えば専門家が決定した信号種別を適用しても良く、さらには前回の発話を出力した際の出力信号の信号種別を適用するようにしても、また行動評価装置3に接続されている出力装置5を用いて出力可能な信号種別を適用するようにしてもよい。
【0087】
インタフェース出力内容25Bは、評価対象ユーザがそのとき行った評価行動について行動評価装置3がその評価対象ユーザ等に提示する、評価対象ユーザの行動に対する統合的な評価結果の内容である。インタフェース出力内容25Bは、行動詳細評価部44により生成された図9について上述した行動詳細評価結果24の評価行動名24AX、直列評価項目名24BX、直列評価結果24DX、並列評価項目名24BY及び並列評価結果24DYなどの各値を用いて行動評価統合部45が1又は複数生成する。
【0088】
インタフェース出力内容25Bは、例えば、行動詳細評価結果24の一部をそのまま用いてもよいし、事前に専門家やユーザが設定した情報に基づいて、直列評価項目名24BX及び並列評価項目名24BYの各値や、直列評価結果24DX及び並列評価結果24DYの各値に対応する文章などの形態で生成してもよい。例えば、行動詳細評価結果24が図9のように、「笑う」という評価行動について、直列評価項目名24BXの値が「場所」、直列評価結果24DXの値が「OK」であった場合、これらの値をそのままインタフェース出力内容25Bとして設定してもよいし、「OK:笑っても良い場所です」のような文章形態のインタフェース出力内容25Bを生成するようにしてもよい。
【0089】
またインタフェース出力内容25Bは、予め設定された文章を行動詳細評価結果24の直列評価結果24DXの値や並列評価結果24DYの値に応じて調整するようにしてもよい。例えば、インタフェース出力内容25Bを、「笑う」という評価行動について、直列評価項目名24BXの値が「場所」、直列評価結果24DXの値が「OK」である場合には「OK:笑っても良い場所です」という文章として生成するのに対して、直列評価項目名24BXの値が「場所」、直列評価結果24DXの値が「NG」である場合には「NG:笑ってはいけない場所です」という文章として生成するようにしてもよい。
【0090】
また直列評価項目及び並列評価項目ごとに、それぞれその行動詳細評価結果24における直列評価結果24DX又は並列評価結果24DYの値が「OK」のときのインタフェース出力内容25Bと、「NG」のときのインタフェース出力内容25Bとを事前に専門家やユーザが設定しておき、これらを直列評価結果24DXや並列評価結果24DYの値に応じて対応する一方のインタフェース出力内容25Bをそのまま利用するようにしてよい。さらには、エンコーダ及びデコーダやトランスフォーマなどの自然言語処理ツールを用いて、評価対象ユーザや当該評価対象ユーザ以外の話者の発話内容を言語化したり、その言語化した文字列の一部又は全部を用いて新たな文字列を作成するなどしてインタフェース出力内容を生成するようにしてもよい。
【0091】
インタフェース出力内容25Bの総数は、行動詳細評価結果24に直列評価結果24DX又は並列評価結果24DYが含まれる直列評価項目及び並列評価項目の総数よりも多くても少なくてもよく、さらには同じ数であってもよい。例えば、インタフェース出力内容25Bを、行動詳細評価結果24に直列評価結果24DX又は並列評価結果24DYが含まれる直列評価項目及び並列評価項目にそれぞれ対応させて生成するようにしてもよく、これに加えて、特定の直列評価項目や並列評価項目の直列評価結果24DX又は並列評価結果24DYの値が「OK」の場合に「素晴らしい行動です」といったインタフェース出力内容25Bを生成するようにしてもよい。さらには行動詳細評価結果24に直列評価結果24DX又は並列評価結果24DYが含まれる直列評価項目や並列評価項目のうち、対応する直列評価結果24DX又は並列評価結果24DYが「OK」又は「NG」となっている直列評価項目や並列評価項目に対応するインタフェース出力内容25Bのみを生成するようにしてもよい。
【0092】
図2の説明に戻って、行動出力部46は、行動評価装置3のCPU6(図1)がメモリ7(図1)に保持された行動出力プログラム14(図1)を実行することにより具現化される機能部である。行動出力部46は、記憶部32に格納された行動評価統合結果25を読み出し、その全部又は一部の情報に基づいて図21について後述する行動評価設定画面80や図22について後述する編集画面120の画面データを生成する機能を有する。行動出力部46は、生成した画面データを出力部33を介して出力装置5に出力する。なお、行動出力部46は、出力装置5が複数存在する場合には、事前に専門家等により設定された設定内容に従って、行動評価統合結果25の出力信号名に合った出力装置5を選択して出力する。なお、行動出力部46が、演算部31の各機能部において作成した情報の一部又は全部を出力部33を介して出力装置5に出力するようにしてもよい。
【0093】
出力部33は、他の行動評価装置や表示装置又はスピーカなどに対話情報を出力する機能部であり、VGA(Video Graphics Array)端子、HDMI(Hight-Definition Multimedia Interface)(登録商標)端子及びUSB(Universal Serial Bus)端子などから構成される。
【0094】
(1-3)各機能部の具体的な処理内容
次に、上述した行動評価装置3の各機能部の具体的な処理内容について説明する。なお、以下においては、各種処理の処理主体を機能部(「……部」)として説明するが、実際上は、行動評価装置3のCPU6がその機能部に対応するプログラムを実行することは言うまでもない。
【0095】
(1-3-1)主体推定部の処理
図11A図11Cは、主体推定部42(図2)により実行される主体推定処理の処理内容を示す。主体推定部42は、この図11A図11Cに示す処理手順に従って、主行動信号入力部40(図2)から与えられた主行動信号と、副行動信号入力部41(図2)から与えられた副行動信号とのうちのいずれが評価対象ユーザから取得した行動信号であるかを推定する。
【0096】
実際上、主体推定部42は、行動評価装置3の電源が投入されるとこの図11A図11Cに示す主体推定処理を開始し、まず、主行動信号入力部40が主行動信号を受信したか否かを判断する(S1)。そして主体推定部42は、この判断で否定結果を得ると、主行動信号入力部40が主行動信号を受信するのを待ち受ける。
【0097】
なおステップS1において、主行動信号入力部40に加えて、副行動信号入力部41(副行動信号入力部41が複数ある場合には、そのうちの予め設定されたすべての副行動信号入力部41)が副行動信号を受信した場合にのみ主体推定部42がステップS1で肯定結果を得るようにしてもよい。
【0098】
そして主体推定部42は、やがて主行動信号入力部40が主行動信号を受信し、その主行動信号が主行動信号入力部から与えられることによりステップS1で肯定結果を得ると、その主行動信号の「画像」又は「音声」などの主行動信号名を取得すると共に、その主行動信号の所定の主行動信号取得時間ごとの信号値(サンプリング値)を順次取得する(S2)。この際、主行動信号が画像信号及び音声信号などの複数種別の信号を含む場合には、これらすべての信号種別の信号について、その信号名と、主行動信号取得時間ごとの信号値とをそれぞれ順次取得する。
【0099】
続いて、主体推定部42は、この後使用する変数iの値を「1」に設定し(S3)、この後、i番目の種類の主行動特徴量(「顔特徴点の配置」、「声紋」又は「言語」など)が存在するか否かを判断する(S4)。なお、「i番目の種類の主行動特徴量」とは、図3について上述した主体推定データベース20の最上段から数えてi段目の行に格納されている主行動特徴量を指す。以下においても同様である。
【0100】
そして主体推定部42は、この判断で肯定結果を得るとステップS2で取得した主行動信号の主行動信号取得時間ごとの信号値(サンプリング値)に基づいてi番目の種類の主行動特徴量を算出すると共に、その主行動特徴量名を取得する(S5)。なお、主行動特徴量名の取得は、ステップS6などの他のステップで行うようにしてもよい。
【0101】
さらに主体推定部42は、変数iの値をインクリメント(1だけ増加)する(S6)。そして主体推定部42は、ステップS4に戻り、この後、ステップS4で否定結果を得るまでステップS4~ステップS6の処理を繰り返す。この繰返し処理により主体推定データベース20に主体特徴量名が登録された各種類の主体特徴量が順次算出される。
【0102】
そして主体推定部42は、やがて主体推定データベース20に主体特徴量名が登録されたすべての種類の主体特徴量を算出し終えることによりステップS4で肯定結果を得ると、変数iを「1」にリセットした後(S7)、i番目の種類の主行動特徴量の主体スコア(図4の「主体スコアA」であり、以下、これをi番目の主体スコアAと呼ぶ)を算出済みであるか否を判断する(S8)。
【0103】
主体推定部42は、この判断で否定結果を得ると、主体推定データベース20に登録されているi番目の種類の主行動特徴量と、ステップS5で算出したi番目の主行動特徴量とに基づいてi番目の主体スコアAを算出する(S9)。この主体スコアAの算出手法としては、既存の種々の算出手法を利用することができる。
【0104】
また主体推定部42は、変数iの値をインクリメントした後(S10)、ステップS8に戻り、この後、ステップS8で肯定結果を得るまでステップS8~ステップS10の処理を繰り返す。この繰返し処理により主体推定データベース20に登録された各種類の主体特徴量に対する主体スコアAが順次算出される。
【0105】
そして主体推定部42は、やがて主体推定データベース20に登録された各種類の主体特徴量に対する主体スコアAを算出し終えることによりステップS8で肯定結果を得ると、ステップS11に進み、この後、ステップS11~ステップS20をステップS1~ステップS10と同様に処理する。なお、ステップS11~ステップS20では、主行動信号に変えて副行動信号を対象とし、変数iに代えて変数jを用いて処理を行う。このようなステップS11~ステップS20の処理により、副行動信号に基づいて、主体推定データベース20に登録された各種類の主体特徴量に対する主体スコアBが算出される。
【0106】
そして主体推定部42は、やがて主体推定データベース20に登録された各種類の主体特徴量に対する主体スコアBを算出し終えることによりステップS18で肯定結果を得ると、ステップS9で算出した各主体スコアAの平均値を算出すると共に、ステップS19で算出した主体スコアBで算出した各主体スコアBの平均値を算出するようにして主体スコアA及び主体スコアBをそれぞれ統合する(S21)。
【0107】
続いて、主体推定部42は、以上までの処理結果に基づいて主行動信号入力部40から与えられた主行動信号と、副行動信号入力部41から与えられた副行動信号のうちのいずれが評価対象ユーザ由来の行動信号であるか判定する(S22)。具体的に、主体推定部42は、ステップS21で統合した主体スコアA及び主体スコアBを比較し、主体スコアAの方が大きい場合には主行動信号を評価対象ユーザ由来の行動信号であると判断し、主体スコアBの方が大きい場合には副行動信号を評価対象ユーザ由来の行動信号であると判断する。
【0108】
次いで、主体推定部42は、ステップS22の判定結果に基づいて、主行動信号が評価対象ユーザ由来の行動信号であると判定したか否かを判断する(S23)。そして主体推定部42は、この判断で肯定結果を得ると、以上までの処理結果に基づいて上述の主体推定情報47(図4)を生成し、生成した主体推定情報47を行動検知部43に出力した後(S25)、この主体推定処理を終了する。
【0109】
なお、この場合、主体推定部42は、ステップS25において、主行動信号入力部40から与えられた主行動信号に基づいて得られた各種情報を図4について上述した主体推定情報47の主行動信号名47A、主行動信号取得時間47B、主行動信号値47C、主行動特徴量名47D、主行動特徴量47E及び主体スコアA47Fに当て嵌め、副行動信号入力部41から与えられた副行動信号に基づいて得られた各種情報を副行動信号名47G、副行動信号取得時間47H、副行動信号値47I、副行動特徴量名47J、副行動特徴量47K及び主体スコアB47Lに当て嵌めるようにして主体推定情報47を生成する。
【0110】
これに対して、主体推定部42は、ステップS23の判断で否定結果を得ると、主行動信号入力部40から与えられた主行動信号を副行動信号とし、副行動信号入力部41から与えられた副行動信号を主行動信号とするよう主行動信号及び副行動信号を入れ替える(S24)。そして主体推定部42は、入れ替え後の主行動信号及び副行動信号に基づいて上述の主体推定情報47を生成し、生成した主体推定情報47を行動検知部43に出力した後(S25)、この主体推定処理を終了する。
【0111】
なお、この場合、主体推定部42は、ステップS25において、副行動信号入力部41から与えられた副行動信号に基づいて得られた各種情報を主体推定情報47の主行動信号名47A、主行動信号取得時間47B、主行動信号値47C、主行動特徴量名47D、主行動特徴量47E及び主体スコアA47Fに当て嵌め、主行動信号入力部40から与えられた主行動信号に基づいて得られた各種情報を副行動信号名47G、副行動信号取得時間47H、副行動信号値47I、副行動特徴量名47J、副行動特徴量47K及び主体スコアB47Lに当て嵌めるようにして主体推定情報47を生成する。
【0112】
このようして主体推定部42は、主行動信号入力部40から与えられた主行動信号と、副行動信号入力部41から与えれた副行動信号とに基づいて主体スコア及び主体推定結果を含む主体推定情報47を生成する。これにより話者の中から評価対象ユーザを推定することができる。
【0113】
なお、対話を開始してから2回目以降の主体推定処理については、それまでに実行した主体推定処理により得られた主体推定情報47をも用いて最新の主体推定情報47を生成するようにしてもよい。また主体推定部42において、主行動信号や副行動信号について、それぞれ複数の計測機器や計測チャネル(計測点)を用いて複数の信号を取得する場合には、複数の機器やチャネルの信号の平均値を算出するなどして、これら複数の信号を用いるようにすればよい。
【0114】
(1-3-2)行動検知部の処理
図12は、行動検知部43により実行される行動検知処理の処理内容を示す。行動検知部43は、この図12に示す処理手順に従って、評価対象ユーザの行動を検知する。
【0115】
実際上、行動検知部43は、行動評価装置3の電源が投入されるとこの図12に示す行動検知処理を開始し、まず、図11A図11Cについて上述した主体推定処理のステップS1~ステップS6やステップS11~ステップS16と同様にして、主行動信号入力部40から与えられた主行動信号に基づいて各種の主行動特徴量を算出する(S30~S35)。なお、この場合における「主行動信号」とは、主体推定部42により評価対象ユーザ由来として推定された行動信号である。
【0116】
続いて、行動検知部43は、主体推定部42から与えられた主体推定情報47に含まれる主行動特徴量名及び主行動特徴量と、行動検知データベース21(図5)に登録されている対応する行動特徴量名及び行動特徴量とを、行動検知データベース21におけるその行動特徴量名の行動検知基準及び行動検知閾値に従って比較することにより、そのとき評価対象ユーザが行っていると推測される行動の行動名(主行動名)を算出する(S36)。この際、行動検知部43は、算出可能な主行動名が複数存在する場合(主体推定情報47が複数種類の主行動特徴量名及び主行動特徴量を含む場合)には、そのとき評価対象ユーザが行っていると推測されるすべての行動の行動名を算出する。
【0117】
次いで、行動検知部43は、ステップS36で算出した主行動名と、評価メソッド22(図6)に登録されている各評価行動名とに基づいて、評価対象ユーザが行った行動のうちの評価対象の行動(評価行動)のみを抽出し、抽出した評価行動についての行動検知情報48を生成する(S37)。そして行動検知部43は、生成した行動検知情報を行動詳細評価部44に出力した後(S38)、この行動検知処理を終了する。
【0118】
なお、対話を開始してから2回目以降の行動検知処理については、それまでに実行した行動検知処理により得られた行動検知情報をも用いて最新の行動検知情報を生成するようにしてもよい。
【0119】
(1-3-3)行動詳細評価部の処理
図13は、行動詳細評価部44により実行される行動詳細評価処理の処理内容を示す。行動詳細評価部44は、この図13に示す処理手順に従って、行動検知部43が検知した評価対象ユーザの行動うちの評価行動を詳細に評価する。
【0120】
実際上、行動詳細評価部44は、行動評価装置3の電源が投入されるとこの図13に示す行動詳細評価処理を開始し、まず、行動検知部43が評価メソッド22において定義された評価対象の行動(評価行動)を検知したか否かを判断する(S40)。この判断は、行動検知部43から与えられた行動検知情報48のいずれかの行動に対する主行動検知結果が「評価対象」となっているか否かを判定することにより行われる。
【0121】
そして行動詳細評価部44は、この判断で否定結果を得ると、この後、行動検知部43が評価行動を検知するのを待つ。これに対して行動詳細評価部44は、ステップS40の判断で肯定結果を得ると、行動検知部43が検知した評価行動の行動名(以下、これを評価行動名と呼ぶ)を取得する(S41)。評価行動名は、行動検知情報48から取得しても、また行動検知部43から直接取得するようにしてもよい。
【0122】
続いて、行動詳細評価部44は、この後使用する変数iの値を「1」に設定し(S42)、この後、行動詳細評価データベース23(図8)を参照して、ステップS41で取得した評価行動名の評価行動(以下、これを対象評価行動と呼ぶ)に関するi番目の種類の直列評価項目が存在するか否か(行動詳細評価データベース23に対象評価行動のi番目の直列評価項目に関する条件が格納されているか否か)を判断する(S43)。
【0123】
行動詳細評価部44は、この判断で肯定結果を得ると現在の変数iの値が2以上であるか否かを判断する(S44)。そして行動詳細評価部44は、この判断で否定結果を得るとステップS46に進む。これに対して、行動詳細評価部44は、ステップS43の判断で肯定結果を得ると、(i-1)番目の種類の直列評価項目の直列評価結果が「OK」(つまり、対象評価行動が1つ前の直列評価項目の条件を満たしている)であるか否かを判断する(S45)。
【0124】
そして行動詳細評価部44は、この判断で肯定結果を得ると、主行動信号及び又は副行動信号を利用し、行動詳細評価データベース23を参照して、評価行動のi番目の直列評価項目についての直列評価結果を算出する。また、この際、行動詳細評価部44は、この後の行動詳細評価結果24の作成に利用すべく、i番目の種類の直列評価項目の直列評価項目名、直列評価特徴量名、直列評価特徴結果をそれぞれ取得する(S46)。
【0125】
さらに行動詳細評価部44は、変数iをインクリメントした後(S47)、ステップS43に戻り、この後、ステップS43又はステップS45で否定結果を得るまでステップS43~ステップS47の処理を繰り返す。この繰返し処理により、いずれかの直列評価項目の直列評価結果が「NG」となる場合にはそれまでの各直列評価項目、すべての直列評価項目の直列評価結果が「OK」であった場合にはすべての直列評価項目に対する直列評価結果を得ることができる。
【0126】
そして行動詳細評価部44は、やがていずれかの直列評価項目の直列評価結果が「NG」となったことにより次の直列評価項目に対するステップS45の判断で否定結果を得ると、当該次の直列評価項目及び当該次の直列評価項目以降の各直列評価項目の直列評価結果と、対象評価行動の各並列評価項目の並列評価結果とを評価対象外であったことを表す「N/A」などの値に設定した、これまでの評価結果を踏まえた行動詳細評価結果を生成して記憶部に格納した後(S53)、この行動詳細評価処理を終了する。
【0127】
これに対して行動詳細評価部44は、対象評価行動に関する少なくとも最後の直列評価項目を除く他のすべての直列評価項目に対する直列評価結果を得ることができたことによりステップS43で否定結果を得ると、対象評価行動における(i-1)番目の種類の直列評価項目(つまり対象評価行動に関する最後の直列評価項目)の直列評価結果が「OK」であったか否かを判断する(S48)。
【0128】
そして行動詳細評価部44は、この判断で否定結果を得ると、対象評価行動に関する最後の直列評価項目の直列評価結果と、対象評価行動の各並列評価項目の並列評価結果とを評価対象外であったことを表す「N/A」などの値に設定した、これまでの評価結果を踏まえた行動詳細評価結果24を生成して記憶部32に格納した後(S53)、この行動詳細評価処理を終了する。
【0129】
これに対して、行動詳細評価部44は、ステップS48の判断で肯定結果を得ると、変数iを「1」にリセットし(S49)、この後、行動詳細評価データベース23を参照して、対象評価行動に関するi番目の種類の並列評価項目が存在するか否か(行動詳細評価データベース23に対象評価行動のi番目の並列評価項目に関する条件が格納されているか否か)を判断する(S50)。
【0130】
行動詳細評価部44は、この判断で肯定結果を得ると、主行動信号及び又は副行動信号を利用し、行動詳細評価データベース23を参照して、評価行動のi番目の並列評価項目についての並列評価結果を算出する(S51)。この際、行動詳細評価部44は、この後の行動詳細評価結果24の作成に利用すべく、i番目の種類の並列評価項目の並列評価項目名、並列評価特徴量名、並列評価特徴結果をそれぞれ取得する。
【0131】
さらに行動詳細評価部44は、変数iをインクリメントした後(S52)、ステップS50に戻り、この後、ステップS50で否定結果を得るまでステップS50~ステップS52の処理を繰り返す。この繰返し処理により、すべての並列評価項目の並列評価結果を得ることができる。
【0132】
そして行動詳細評価部44は、やがて対象評価行動に関するすべての並列評価項目に対する並列評価結果(最後の並列評価項目が「NG」であった場合を含む)を得ることができたことによりステップS50で肯定結果を得ると、これまでの評価結果を踏まえた行動詳細評価結果24を生成して記憶部32に格納した後(S53)、この行動詳細評価処理を終了する。
【0133】
このように行動詳細評価部44は、直列評価及び並列評価の組合せによりユーザの行動の詳細を評価する。行動の前提条件や必須要素などの重要度の高い評価項目を直列評価項目に設定し、他の評価項目を並列評価項目に設定して、直列評価が所定の基準を満たした場合にのみ並列評価項目を評価することにより、処理を低減することができる。これにより、対話中のユーザの行動を詳細かつ連続的に評価する場合であっても、リアルタイムや対話直後の行動を評価したり、システムによる処理量を低減することができる。
【0134】
なお終了するまでにすべての並列評価結果を算出できるのであれば、並列評価項目が複数存在する場合の評価順序は問わない。並列評価項目のうち、割り当てられた番号が最も大きい並列評価項目から評価してもよい。
【0135】
(1-3-4)行動評価統合部の処理
図14は、行動評価統合部45により実行される行動評価統合処理の処理内容を示す。行動評価統合部45は、この図14に示す処理手順に従って、評価対象ユーザのそのときの行動を評価した行動評価統合結果25(図10)を生成し、生成した行動評価統合結果25を記憶部32に格納する。
【0136】
実際上、行動評価統合部45は、行動評価装置3の電源が投入されるとこの図14に示す行動評価統合処理を開始し、まず、行動詳細評価部44が新たな行動詳細評価結果24(図9)を算出したか否かを判断する(S60)。そして行動評価統合部45は、この判断で否定結果を得ると、行動詳細評価部44が新たな行動詳細評価結果24を算出するのを待ち受ける。
【0137】
なお、対話を開始してから2回目以降の行動評価統合処理である場合には、例えば前回の行動詳細評価結果24との差分を算出してその差分において行動詳細評価結果24が含まれているか否かを判断することにより、最新の情報のみを用いて行動詳細評価部44が新たな行動詳細評価結果24を算出したか否かを判断するようにしてもよい。
【0138】
そして行動評価統合部45は、やがて行動詳細評価部44が行動詳細評価結果24を算出し終えることによりステップS60で肯定結果を得ると、その行動詳細評価結果24を取得する(S61)。行動詳細評価結果24の取得方法としては、行動詳細評価部44から直接取得しても、また行動詳細評価部44が記憶部32に格納した行動詳細評価結果24を読み出すようにして取得するようにしてもよい。
【0139】
次いで、行動評価統合部45は、この後使用する変数iを「1」に設定し(S62)、この後、行動詳細評価結果24を参照して、i番目の種類のインタフェース出力内容があるか否かを判断する(S63)。そのとき生成可能なインタフェース出力内容の種類は、上述のように事前に専門家やユーザにより決定されていても、行動詳細評価結果24に直列評価結果や並列評価結果が含まれる直列評価項目及び並列評価項目の数により決定しても、さらには各直列評価項目及び各並列評価項目の直列評価結果や並列評価結果に応じて決定されるものであってもよい。
【0140】
そして行動評価統合部45は、この判断で肯定結果を得ると、行動詳細評価結果24を参照してi番目のインタフェース出力内容に応じた信号種別の出力信号名(「画像」又は「音声」など)を決定すると共に(S64)、そのインタフェース出力内容を生成する(S65)。なおステップS64及びステップS65の順番を逆にしてもよい。
【0141】
続いて、行動評価統合部45は、変数iをインクリメントし(S66)、この後、ステップS63に戻る。そして行動評価統合部45は、この後、ステップS63で否定結果を得るまでステップS63~ステップS66の処理を繰り返す。この繰返し処理により、行動詳細評価結果24に基づいて生成可能なすべてのインタフェース出力内容がそれぞれ生成される。
【0142】
そして行動評価統合部45は、やがて生成可能なすべてのインタフェース出力内容を生成し終えることによりステップS63で否定結果を得ると、以上までの処理により得られた情報に基づいて行動評価統合結果25を生成すると共に、生成した行動評価統合結果25を記憶部32に格納し(S67)、この後、この行動評価統合処理を終了する。
【0143】
なお、対話を開始してから2回目以降の行動評価統合処理である場合には、以前の行動評価統合処理により得られた行動評価統合結果25を更新するようにして最新の行動評価統合結果25を生成するようにしてもよい。
【0144】
(1-3-5)行動出力部の処理
図15は、行動出力部46により実行される行動出力処理の処理内容を示す。行動出力部46は、この図15に示す処理手順に従って、行動評価統合部45が生成した行動評価統合結果25を出力部33を介して出力装置5に出力する。
【0145】
実際上、行動出力部46は、行動評価装置3の電源が投入されるとこの図15に示す行動詳細評価処理を開始し、まず、行動評価統合部45が行動評価統合結果25を生成し終えたか否かを判断する(S70)。この判断は、記憶部32に新たな行動評価統合結果25が格納されたか否かを判定することにより行うことができる。
【0146】
続いて、行動出力部46は、かかる行動評価統合結果25を取得する(S71)。行動評価統合結果25は、記憶部32から読み出すことで取得しても、行動評価統合部45から直接取得するようにしてもよい。
【0147】
次いで、行動出力部46は、ステップS71で取得した行動評価統合結果25に含まれるインタフェース出力内容25B(図10)をすべて出力部33に出力する(S72)。行動評価装置3に接続されている出力装置5が複数存在する場合などに対応するため、インタフェース出力内容25Bと併せて出力信号名も出力部33に出力するなど、他の情報の一部又は全部を併せて出力部33に出力するようにしてもよい。
【0148】
また前回のインタフェース出力内容25Bの出力から短時間で次のインタフェース出力内容25Bを出力する場合には、一定の時間をかけてインタフェース出力内容25Bを変更したり、ユーザから入力装置4(図1)の操作などで前回のインタフェース出力内容25Bを確認したことに関する情報を受け付けたり、前回と今回のインタフェース出力内容25Bを統合して出力するようにしてもよい。
【0149】
続いて、行動出力部46は、出力部33に出力したインタフェース出力内容25Bが出力装置5に出力されるのを待ち受け(S73)、やがてかかるインタフェース出力内容25Bが出力装置5に出力されると、この行動出力処理を終了する。
【0150】
(1-4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態では、評価対象ユーザの評価行動に関する評価項目を、評価行動に関して重要な直列評価項目と、当該直列評価項目以外の並列評価項目に分けて管理し、評価対象ユーザの評価行動について、各直列評価項目をその優先順位の順番で評価し、当該評価行動がいずれかの直列評価項目について予め設定された条件を満たさなかった場合には当該行動に対する評価を終了し、すべての直列評価項目が当該直列評価項目について設定された前記条件を満たした場合には各並列評価項目をそれぞれ評価する。
【0151】
従って、本実施の形態の行動評価装置3によれば、評価対象者の行動が重要な直列評価項目の条件を満たさない場合にはそれ以降の直列評価項目及び各並列評価項目の評価が行われないため、その分の行動評価装置の処理量を低減することができ、かくしてリアルタイムや対話直後の行動評価を行うことが可能となる。
【0152】
(2)第2の実施の形態
(2-1)本実施の形態による行動評価システムの構成
第1の実施の形態による行動評価システム1では、行動評価装置3の行動詳細評価部44(図2)において、すべての直列評価項目が「OK」であればすべての並列評価項目を評価し、これら直列評価項目及び並列評価項目の評価結果に基づいて行動評価統合部45(図2)が行動評価統合結果25(図10)を算出するようにしている。
【0153】
これに対して、本実施の形態の行動評価システム1では、行動評価統合部45が行動評価統合結果25を算出する際に利用する評価項目(直列評価項目及び並列評価項目であり、以下、同じ)を選定する機能が追加されている。これにより、例えば評価精度が低い評価項目や、特徴量が閾値付近の値を示した評価項目など、不確かな評価項目の評価を除いた上で行動評価統合部45に行動評価統合結果25を算出させることで、行動評価統合部45の処理量を低減させたり、対話中のユーザの行動を的確に支援することが可能となる。
【0154】
図1との対応部分に同一符号を付した図16は、このような機能が行動評価装置51に搭載された第2の実施の形態による行動評価システム50を示す。この行動評価システム50は、行動評価装置51において、設定信号入力プログラム52、選定設定プログラム53及び評価項目選定プログラム54が追加的にメモリ7に格納され、さらに評価項目選定データベース55が追加的に記憶装置8に格納される点が第1の実施の形態の行動評価装置3と相違する。
【0155】
図2との対応部分に同一符号を付した図17は、本実施の形態による行動評価装置51の論理構成を示す。この図17に示すように、本行動評価装置51は、機能部として設定信号入力部70、演算部61に選定設定部71及び評価項目選定部72が入力部60に追加されている点と、上述の評価項目選定データベース55が追加的に設けられている点とが第1の実施の形態の行動評価装置3と相違する。
【0156】
設定信号入力部70は、行動評価装置51のCPU6(図16)がメモリ7(図16)に保持された設定信号入力プログラム52を実行することにより具現化される機能部である。設定信号入力部70は、ユーザや専門家などが入力装置4を介して入力した、評価行動ごとの評価項目を選定するための条件(以下、これを選定条件と呼ぶ)を設定信号として取り込み、取り込んだ設定信号を選定設定部71に受け渡す。
【0157】
選定設定部71は、行動評価装置51のCPU6がメモリ7に保持された選定設定プログラム53(図16)を実行することにより具現化される機能部である。選定設定部71は、設定信号入力部70から与えられた設定信号に基づいて、評価項目の選定条件が格納された評価項目選定データベース55を作成し、作成した評価項目選定データベース55を記憶部32に格納する。
【0158】
評価項目選定部72は、行動評価装置51のCPU6がメモリ7に保持された評価項目選定プログラム54(図16)を実行することにより具現化される機能部である。評価項目選定部72は、評価項目選定データベース55に格納された上述の選定条件と、行動詳細評価部44が算出した行動詳細評価結果24とに基づいて、各直列評価項目及び各並列評価項目の中から対応する選定条件を満たすすべての直列評価項目や並列評価項目をそれぞれ選定し、かかる選定条件を満たさない直列評価項目や並列評価項目の評価結果を、記憶部32に格納された行動詳細評価結果24から削除する。この結果、行動詳細評価結果24のうちのこのとき削除されなかった評価項目の評価結果のみに基づいて行動評価統合部45により行動評価統合結果25が生成され、これが記憶部32に格納される。
【0159】
評価項目選定データベース55は、上述のようにユーザや専門家などにより設定された評価行動ごとの評価項目の選定条件が格納されたデータベースであり、図18に示すように、評価行動名欄55Aと、1又は複数の直列評価選定基準欄55B及び直列評価選定閾値欄55Cのペアと、1又は複数の並列評価選定基準欄55D及び並列評価選定閾値欄55Eのペアとを備えたテーブル構造を有する。図18の評価項目選定データベース55では、1つの行が1つの評価行動に対応する。
【0160】
そして評価行動名欄55Aには、評価メソッド22で定義された評価行動の名称(評価行動名)が格納される。また直列評価選定基準欄55B及び並列評価選定基準欄55Dには、それぞれ直列評価項目や並列評価項目を選定するための基準(以下、これらをそれぞれ直列評価選定基準又は並列評価選定基準と呼ぶ)が格納され、直列評価選定閾値欄55C及び並列評価選定閾値欄55Eには、それぞれ対応する直列評価項目又は並列評価項目を評価項目として選定するための閾値(以下、これらをそれぞれ直列評価選定閾値又は並列評価選定閾値と呼ぶ)が格納される。
【0161】
そして評価項目選定部72は、直列評価選定基準欄55B又は並列評価選定基準欄55Dに格納された直列評価選定基準又は並列評価選定基準と、その直列評価選定基準欄55B又は並列評価選定基準欄55Dとペアを構成する直列評価選定閾値欄55C又は並列評価選定閾値欄55Eに格納された直列評価選定閾値又は並列評価選定閾値との組合せを上述の選定条件として、かかる選定条件を満たすか否かによって対応する直列評価項目や並列評価項目を行動詳細評価結果24から削除すべきか否かを判断する。
【0162】
例えば図18のように、直列評価選定基準が「閾値との差」、直列評価選定閾値が「10」となっている場合、評価項目選定部72は、図8について上述した行動詳細評価データベース23における直列評価閾値と、図9について上述した行動詳細評価結果24の直列評価特徴結果との差が±10以内であるときには、その直列評価結果を行動詳細評価結果24から削除すべきと判断して、その直列評価結果を行動詳細評価結果24から削除する。
【0163】
直列評価結果に「NG」などの評価基準を満たさない結果が設定されており、その直列評価項目以降の直列評価項目や並列評価項目を評価しなかった場合には、その直列評価項目以降の直列評価項目は並列評価項目を評価する。
【0164】
例えば、並列評価選定基準が「過去の特徴量との類似度」であり、並列評価選定閾値が「0.9」である場合、過去の対話における並列評価特徴結果24EY(図9)を参照し、過去の並列評価特徴結果24EYと、今回の対話の並列評価特徴結果の類似度(過去の行動との類似度)を算出し、その中で「0.9」を超える類似度を示す並列評価結果を出力したか否かに関する情報(選定結果)を取得し、その並列評価結果を出力していれば出力し、出力していなければ出力しないようにする。
【0165】
並列評価選定閾値を満たす並列評価特徴結果が複数存在する場合には、最も高い類似度を示した並列評価特徴結果の選定結果を取得したり、複数の並列評価特徴結果の選定結果のうち多い方の選定結果を算出したりして、出力の有無を決定する。
【0166】
並列評価特徴結果の類似度は、例えば、発話内容(文字列)であれば、文字列の類似度データベースなどを用いて文字列間の類似度を算出したり、数値であれば、並列評価特徴結果間の商を算出し、その商と「1」との差の絶対値の逆数を算出したりするなどして取得する。この場合、過去の対話における並列評価特徴結果を事前に保存しておくなど、直列評価選定基準や並列評価選定基準に基づいて評価する際に必要な情報やデータベースは記憶部に保存しておいてもよい。
【0167】
なお本実施の形態においては、直列評価選定基準及び直列評価選定閾値と、並列評価選定基準及び並列評価選定閾値との双方を設定するようにした場合について説明したが、特徴量間の基準や閾値を規格化するなどにより、評価項目ごとに選定基準や選定閾値を設定せずに、複数の評価項目の選定基準や選定閾値を統一するようにしてもよい。
【0168】
例えば、個人差や試行差などにより、閾値により「OK」及び「NG」を完全に区別できない場合などに、評価項目ごとに評価特徴量に応じた評価確率(例えば「OK」が60%、「NG」が40%など)を算出し、その評価確率が十分に離れている場合(例えば「OK」及び「NG」の差が30%以上の場合)にのみ、その評価結果を行動詳細評価結果に含めるようにしてもよい。
【0169】
また同じ評価行動名における過去の選定結果を取得し、過去の選定結果と同様に評価項目を選定するなど、評価項目ごとではなく、評価行動そのものの情報を用いて評価項目を行動詳細評価結果に含めるか否かを判断するようにしてもよい。さらに、「並列評価結果1」が「OK」であれば「並列評価結果2」は「NG」とするなど、他の評価項目の評価結果を用いて各評価項目を行動詳細評価結果に含めるか否かを判断するようにしてもよい。
【0170】
なお、評価項目選定データベースには、事前に専門家などの判断によりマウスやキーボードで入力した情報を、設定信号入力部により取得した設定信号を用いて入力する情報があってもよいし、それらの情報を選定設定部以外の機能部が取得するようにしてもよい。例えば評価項目選定部が評価項目選定データベースに情報を追加するようにしてもよい。
【0171】
(2-2)各機能部の具体的な処理内容
次に、上述した行動評価装置の各機能部の具体的な処理内容について説明する。なお、以下においても、各種処理の処理主体を機能部(「……部」)として説明するが、実際上は、行動評価装置のCPUがその機能部に対応するプログラムを実行することは言うまでもない。
【0172】
(2-2-1)選定設定部の処理
図19は、ユーザや専門家などにより入力装置が操作されて上述の選定条件が設定され、その結果として設定信号入力部70から設定信号が選定設定部71に与えられた場合に、選定設定部71により実行される選定設定処理の処理内容を示す。選定設定部71は、この図19に示す処理手順に従って、かかる設定信号に応じた評価項目選定データベース55を生成して記憶部32に格納する。
【0173】
実際上、選定設定部71は、行動評価装置51の電源が投入されるとこの図19に示す選定設定処理を開始し、まず、設定信号入力部70から設定信号が与えられるのを待ち受ける(S80)。
【0174】
そして選定設定部71は、やがて設定信号入力部70から設定信号が与えられると、その設定信号を取得する(S81)。なお、設定信号が複数種類存在する場合には、ステップS81の後にすべての設定信号を取得したか否かを判断するステップを追加して、取得していない場合にはステップS81に戻り、すべての設定信号を取得するまでステップS81の処理を繰り返すようにしてもよい。
【0175】
次いで、設定設定部71は、ステップS81で取得した設定信号に基づいて評価項目選定データベース55を生成し、生成した評価項目選定データベース55を記憶部32に格納した後(S82)、この選定設定処理を終了する。
【0176】
なお、2回目以降の選定設定処理の場合には、以前の情報から変更があった場合のみ最新の評価項目選定データベース55に更新するなど、以前の評価項目選定データベース55も利用して新たな評価項目選定データベース55を生成するようにしてもよい。
【0177】
また、例えば前回の対話における評価項目選定データベース55を用いるなどの場合には、設定信号以外の情報をトリガにして選定設定部71が選定設定処理を開始してもよいし、設定信号以外の情報をも用いて評価項目選定データベース55を生成するようにしてもよい。
【0178】
(2-2-2)評価項目選定部の処理
図20は、評価項目選定部72により実行される評価項目選定処理の処理内容を示す。評価項目選定部72は、この図20に示す処理手順に従って、行動詳細評価部44により記憶部32に格納された行動詳細評価結果24のうちの選定条件を満たさない評価項目を削除する。
【0179】
実際上、評価項目選定部72は、行動評価装置51の電源が投入されるとこの図20に示す評価項目選定処理を開始し、まず、行動詳細評価部44が新たな行動詳細評価結果24を記憶部32に格納したか否かを判断する(S90)。そして評価項目選定部72は、この判断で否定結果を得ると、行動詳細評価部44が新たな行動詳細評価結果24を記憶部32に格納するのを待ち受ける。
【0180】
なお、このステップS90の処理は、行動詳細評価部44などの他の機能部が行ってもよい。また対話を開始してから2回目以降の評価項目選定処理である場合には、評価項目選定部72は、例えば以前の行動詳細評価結果24との差分を算出して、その差分において行動詳細評価結果24が含まれているか否かを判断するなどにより、最新の情報のみを用いてステップS90の判断を行うようにしてもよい。
【0181】
そして評価項目選定部72は、やがて行動詳細評価部44が新たな行動詳細評価結果24を記憶部32に格納すると、その行動詳細評価結果24を取得する(S91)。この際、評価項目選定部72は、かかる行動詳細評価結果24を行動詳細評価部44から直接取得するようにしてもよい。
【0182】
続いて、評価項目選定部72は、この後使用する変数iの値を「1」に設定し(S92)、この後i番目の種類の直列評価結果が存在するか否かを判断する(S93)。ここでの「i番目の種類の直列評価結果」とは、図9について上述した行動詳細評価結果24に含まれる各直列評価結果24DXの値(直列評価結果)のうち、先頭から数えてi番目の直列評価結果を指す。以下においても同様である。
【0183】
そして評価項目選定部72は、この判断で肯定結果を得ると、評価項目選定データベース55を参照して、かかるi番目の種類の直列評価結果が、評価項目選定データベース55に登録されているその直列評価結果に対応するすべての選定条件を満たしているか否かを判断する(S94)。そして評価項目選定部72は、この判断で肯定結果を得るとステップS96に進む。
【0184】
これに対して、評価項目選定部72は、この判断で否定結果を得ると、i番目の種類の直列評価結果を記憶部32に格納されている行動詳細評価結果24から削除する(S95)。なお、削除するのではなく、行動詳細評価結果24のi番目の種類の直列評価結果24DX(図9)として、行動評価統合部45が行動評価統合処理の対象としないよう、「N/A」などの行動評価統合処理の対象外であることを表す情報を追加するようにしてもよい。
【0185】
次いで、評価項目選定部72は、変数iをインクリメントする(S96)。そして評価項目選定部72は、ステップS93に戻り、この後ステップS93で否定結果を得るまでステップS93~ステップS96の処理を繰り返す。この繰返し処理により、行動詳細評価結果24に含まれるすべての直列評価項目について、それぞれ対応するすべての選定条件を満たすか否かがそれぞれ判断される。
【0186】
そして評価項目選定部72は、やがて行動詳細評価結果24に含まれるすべての直列評価項目について、対応するすべての選定条件を満たすか否かを判定し終えることによりステップS93で否定結果を得ると、変数iの値を「1」にリセットし(S97)、この後、対象を行動詳細評価結果24に含まれる各並列評価項目に切り替えて、ステップS98~ステップS101をステップS93~ステップS96と同様に処理する。
【0187】
そして評価項目選定部72は、やがて行動詳細評価結果24に含まれるすべての並列評価項目について、対応するすべての選定条件を満たすか否かを判定し終えることによりステップS98で否定結果を得ると、この評価項目選定処理を終了する。
【0188】
このように、例えば評価精度が低い評価項目や特徴量が閾値付近の値を示した評価項目など、不確かな評価項目の評価を評価項目選定部72が行動詳細評価結果24から除去することにより、この後の行動評価統合部45により実行される行動評価統合処理(図14)において確からしい評価項目のみを利用することができる。これにより行動評価装置51の処理量を低減させたり、対話中のユーザの行動を的確に支援することができる。
【0189】
なお、評価項目選定部72において、並列評価項目が複数存在する場合の評価順序は問わない。並列評価項目のうち、割り振られた番号が最も大きい並列評価項目から評価してもよい。終了するまでにすべての並列評価結果が算出されていれば、動作順序は問わない。
【0190】
また本実施の形態においては、行動詳細評価部44が行動詳細評価結果24を記憶部32に格納したタイミングで評価項目選定部72が動作する場合について説明したが、行動詳細評価部44と評価項目選定部72とを統合してもよい。行動詳細評価部44と評価項目選定部72とを統合した場合、例えば、行動詳細評価部44において評価行動名を取得した後に、過去の同様の評価行動名を参照して評価項目を選定する、直接評価結果や並列評価結果を算出する度にその評価項目の要否を選定するなどにより、処理量が削減されるように図20の処理手順を組み替えてもよい。
【0191】
(2-3)第2の実施の形態の変形例
なお記憶部32に格納された情報の一部を、過去の評価対象ユーザの主体推定情報47や行動検知情報48、行動詳細評価結果24、行動評価統合結果25などの評価対象ユーザに関するデータベースを用いて、事前の学習により設定してもよい。例えば、演算部61に行動学習部などの新たな機能部を追加したり、他の機能部に機能を追加することで、適切なデータベースを設定し、評価項目などの適切な評価基準や評価閾値を算出するようにしてもよい。
【0192】
また過去の評価対象ユーザの主体推定情報47や行動検知情報48、行動詳細評価結果24、行動評価統合結果25などの評価対象ユーザ(又は評価対象ユーザと同じ/類似する属性の話者)に関するデータベースをユーザや専門家に出力し、推定や検知、評価の成否などの入力を受け付けることで、推定や検知、評価の精度を改善したり、望ましくない出力結果の入力を受け付けることで、評価項目の選定条件を修正したりしてもよい。
【0193】
さらに記憶部32やデータベースに評価対象ユーザという項目を作成し、評価対象ユーザや評価対象ユーザの属性に関する情報を入力することで、例えば、評価対象ユーザ本人や共通する属性をもつユーザから取得した情報のみを使用するなどにより、特定の評価対象ユーザに関するデータのみを用いて、事前の学習を行ったり、主体の推定や行動の検知、行動の詳細評価などを行ったりしてもよい。
【0194】
さらには、事前の学習を行うためのデータが十分に蓄積しているか否かを専門家や事前に専門家が入力した情報により判断し、データが十分に蓄積していない場合には、学習用のデータを作成するようにユーザに指示したり、他のユーザや過去の発話データを用いて学習用のデータを取得したりするなどにより、データを取得してもよい。
【0195】
さらに評価対象ユーザと、評価対象ユーザ以外の話者の一対一の対話ではなく、同じ対話において複数のユーザが同時にシステムを利用する場合には、システム間で他の評価対象ユーザに対するシステムの出力内容を共有し、他の評価対象ユーザに対する出力内容も出力するなどにより対話を支援するようにしてもよい。
【0196】
(2-4)第2の実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の行動評価システム50では、行動評価装置51の行動評価統合部45が行動評価統合結果25を算出する際に利用すべき評価項目を評価項目選定データベース55に基づいて評価項目選定部72が選定するため、例えば評価精度が低い評価項目や、特徴量が閾値付近の値を示した評価項目など、不確かな評価項目の評価を除いた上で行動評価統合部45に行動評価統合結果25を算出させることができる。
【0197】
よって、本実施の形態の行動評価システム50によれば、第1の実施の形態の行動評価システム1により得られる効果に加えて、行動評価統合部45の処理量を低減させたり、対話中のユーザの行動を的確に支援することができるという効果をも得ることができる。
【0198】
(3)第3の実施の形態
本実施の形態では、第1の実施の形態の行動評価システム1や第2の実施の形態の行動評価システム50において、出力装置5に表示される各種画面の画面構成について説明する。
【0199】
図21は、第1の実施の形態の行動評価システム1や第2の実施の形態の行動評価システム50において、所定操作により出力装置5に表示させ得る行動評価設定画面80を示す。この行動評価設定画面80は、上述した行動評価機能に関する各種設定を行うためのGUI(Graphical User Interface)画面であり、主体情報設定領域81、主行動特徴量設定領域82、副行動特徴量設定領域83、評価メソッド設定領域84、行動詳細評価項目設定領域85、評価項目選定及びデータベース選択領域86、行動評価統合方式設定領域87と、複数の画面選択ボタン88A~88C及び設定保存ボタン89とを備えて構成される。なお第1の実施の形態の場合には、評価項目選定及びデータベース選択領域86は省略される。
【0200】
主体情報設定領域81は、主体設定欄90、主体推定データベース設定欄91及び行動検知データベース設定欄92を備える。そして行動評価設定画面80では、入力装置4(図16)を介して所望する評価対象ユーザのユーザ名や、対象とするユーザの役職名や立場名を主体設定欄90に入力することにより、そのユーザ名のユーザを評価対象ユーザとして設定することができる。
【0201】
また行動評価設定画面80では、所望する主体推定データベース20(図3)のデータベース名を主体推定データベース設定欄91に入力することにより、予め登録されている1又は複数の主体推定データベース20の中から評価対象ユーザの行動評価の際に利用すべき主体推定データベース20としてそのデータベース名の主体推定データベース20を設定することができる。
【0202】
さらに行動評価設定画面80では、所望する行動検知データベース21(図5)のデータベース名を行動検知データベース設定欄92に入力することにより、予め登録されている1又は複数の行動検知データベース21の中から評価対象ユーザの行動評価の際に利用すべき行動検知データベース21としてそのデータベース名の行動検知データベース21を設定することができる。
【0203】
また主行動特徴量設定領域82は、主行動特徴量数欄93及び複数の主行動特徴量設定ボタン94と、各主行動特徴量設定ボタン94にそれぞれ対応させて設けられた複数の主行動信号名欄95及び主行動特徴量名欄96とを備えて構成される。
【0204】
そして行動評価設定画面80では、所望する主行動特徴量設定ボタン94をクリックしてその主行動特徴量設定ボタン94を選択状態に表示を切り替えさせた後(図21の例では白丸から黒丸に切り替えさせた後)に、その主行動特徴量設定ボタン94に対応する主行動信号名欄95に所望する主行動信号の信号名、その主行動特徴量設定ボタン94に対応する主行動特徴量名欄96に所望する主行動特徴量名をそれぞれ入力することによって、その主行動信号名の主行動信号からその主行動特徴量名の主行動特徴量を取得すべきことを設定することができる。また、このようにして主行動信号名及び主行動特徴量名を設定した主行動特徴量の数が主行動特徴量数欄93に表示される。
【0205】
同様に、副行動特徴量設定領域83は、副行動特徴量数欄97及び複数の副行動特徴量設定ボタン98と、副行動特徴量設定ボタン98にそれぞれ対応させて設けられた複数の副行動信号名欄99及び副行動特徴量名欄100とを備えて構成される。
【0206】
そして行動評価設定画面80では、所望する副行動特徴量設定ボタン98をクリックしてその副行動特徴量設定ボタン98を選択状態に表示を切り替えさせた後(図21の例では白丸から黒丸に切り替えさせた後)に、その副行動特徴量設定ボタン98に対応する副行動信号名欄99に所望する副行動信号の信号名、その副行動特徴量設定ボタン98に対応する副行動特徴量名欄100に所望する副行動特徴量名をそれぞれ入力することによって、その副行動信号名の副行動信号からその副行動特徴量名の副行動特徴量を取得すべきことを設定することができる。また、このようにして副行動信号名及び副行動特徴量名を設定した副行動特徴量の数が副行動特徴量数欄97に表示される。
【0207】
評価メソッド設定領域84は、評価メソッド設定欄101及び評価メソッド選択欄102を備えて構成される。そして評価メソッド設定欄101には、予め用意された1又は複数種類の評価メソッドの中からそのとき使用すべき評価メソッドとして入力された評価メソッドの名称が表示される。
【0208】
また評価メソッド選択欄102には、行動評価において使用すべき評価メソッド22の各種類にそれぞれ対応させてトグルボタン103が設けられており、これらトグルボタン103の中から所望する種類の評価メソッド22に対応するトグルボタン103をクリックするようにして選択状態に切り替えさせる(図21の例では白丸から黒丸に切り替えさせる)ことにより、そのトグルボタン103に対応する種類の評価メソッド22を行動評価において使用すべき評価メソッド22として設定することができる。
【0209】
一方、行動詳細評価項目設定領域85は、行動詳細評価項目数欄104と、行動詳細評価項目設定欄105とを備えて構成される。そして行動詳細評価項目設定欄105には、予め設定されている複数の行動詳細評価項目にそれぞれ対応させて複数の行動詳細評価項目設定ボタン106が表示されると共に、これら複数の行動詳細評価項目にそれぞれ対応させてそれぞれトグルボタン形式の直列選択ボタン107及び並列選択ボタン108と、優先順位設定領域109とが表示される。
【0210】
そして行動詳細評価項目設定欄105では、かかる複数の行動詳細評価項目設定ボタン106の中から直列評価項目又は並列評価項目とすべき行動詳細評価項目に対応する各行動詳細評価項目設定ボタン106をクリックしてその行動詳細評価項目設定ボタン106を選択状態に表示を切り替え(図21の例では白丸から黒丸に切り替え)させた後に、直列選択ボタン107及び並列選択ボタン108のいずれか一方をクリックしてその直列選択ボタン107又は並列選択ボタン108の表示を選択状態に切り替え(図21の例では白丸から黒丸に切り替え)させることによって、その行動詳細評価項目設定ボタン106に対応する行動詳細評価項目を、直列評価項目(直列選択ボタン107が選択状態に表示されている場合)又は並列評価項目(並列選択ボタン108が選択状態に表示されている場合)として設定することができる。
【0211】
また上述のようにしていずれかの行動詳細評価項目を直列評価項目として設定した場合、そのとき直列評価項目として選択された1又は複数の行動詳細評価項目の中でのその行動詳細評価項目の優先順位を設定することができ、このとき設定された優先順位が優先順位設定領域109に表示される。
【0212】
評価項目選定及びデータベース選択領域86は、評価項目有無選択用の第1及び第2のトグルボタン110A,110Bと、評価項目選定データベース設定欄111とを備えて構成される。そして評価項目選定及びデータベース選択領域86では、第1のトグルボタン110Aをクリックして当該第1のトグルボタン110Aを選択状態に切り替え(図21の例では白丸から黒丸に切り替え)させることによって、評価項目の選定を「あり」に設定することができ、第2のトグルボタン110Bをクリックして当該第2のトグルボタン110Bを選択状態に切り替え(図21の例では白丸から黒丸に切り替え)させることによって、評価項目の選定を「なし」に設定することができる。
【0213】
また、評価項目の選定を「あり」に設定した場合、予め登録されている1又は複数の評価項目選定データベース55(図18)のデータベース名を入力装置4を用いて評価項目選定データベース設定欄111に入力することによって、そのデータベース名の評価項目選定データベース55を、上述のように評価項目選定部72が評価項目を選定する際に使用すべき評価項目選定データベース55として設定することができる。
【0214】
さらに行動評価統合方式設定領域87には、行動評価統合方式設定欄112が設けられている。そして行動評価統合方式設定領域87では、所望する行動評価の統合方式の中から所望する統合方式を入力装置4を用いて行動評価統合方式設定欄112に入力することによって、その行動評価統合方式を行動評価統合部45が行動評価を統合する際の方式として設定することができる。
【0215】
画面選択ボタン88A~88Cは、そのとき出力装置5に表示させる画面を選択するためのボタンであり、図12の例は、「設定」と表記された画面選択ボタン88Bがクリックされた結果、この行動評価設定画面80が表示されている例を示している。
【0216】
そして行動評価設定画面80では、上述のようにして評価対象ユーザや、主行動特徴量、副行動特徴量、評価メソッド、行動評価詳細項目、評価項目及び評価項目選定データベース55、並びに、行動評価統合方式をそれぞれ設定した後に設定保存ボタン89をクリックすることにより、これらの設定の設定内容を保存(図16の記憶装置8に格納)させることができる。
【0217】
一方、図22は、例えば図21について上述した行動評価設定画面80の画面選択ボタン88A~88Cのうちの「編集」と表記された画面選択ボタン88Cをクリックするなどの所定の操作により出力装置5に表示させ得る編集画面120の画面構成を示す。この編集画面120は、主体推定データベース20(図3)や過去の行動詳細評価結果24(図9)などを編集するための画面であり、編集対象指定領域121と、現在情報表示領域122と、修正内容指定領域123と、複数の画面選択ボタン124A~124Cと、編集保存ボタン125とを備えて構成される。
【0218】
編集対象指定領域121には、編集対象設定欄130が設けられている。そして編集画面120では、入力装置4を用いて所望する編集対象を表す文字列を編集対象設定欄130に入力することにより、その文字列により特定される主体推定データベース20や過去の行動詳細評価結果24などを編集対象として設定することができる。
【0219】
また現在情報表示領域122には、編集対象として選択された主体推定データベース20や過去の行動詳細評価結果24などについて現在保存されている情報が表示される。
【0220】
さらに修正内容指定領域123には、修正項目指定欄131及び修正情報指定欄132が設けられている。そして編集画面120では、入力装置4を用いて、現在情報表示領域122に表示された情報のうちのそのとき修正したい項目を修正項目指定欄131に入力すると共に、その項目の修正後の内容を修正情報指定欄132に入力することによって、その項目をその内容を修正すべきことを設定することができる。
【0221】
そして編集画面120では、上述のように編集内容を設定した上で編集保存ボタン125をクリックすることによって、そのときその編集画面120上で設定された編集内容を保存(図16の記憶装置8に格納)させることができる。
【0222】
なお、画面選択ボタン124A~124Cは、行動評価設定画面80の画面選択ボタン88A~88Cと同じ機能を有するものであるため、ここでの説明は省略する。
【0223】
このように本行動評価装置51では、ユーザの行動評価に関する設定や、変更、追加又は削除などの編集を行動評価設定画面80や編集画面120を用いて容易に行うことができる。またユーザの行動評価に用いる情報や、過去に算出されたデータを容易に表示することができるため、これらの情報に基づいてユーザや専門家からのフィードバックを受けることで、その情報やデータを変更、追加又は削除することができる。
【0224】
なお、これらの設定の一部又は全部を評価項目選定データベース55(図18)に保存するように選定設定部71(図17)などの演算部61(図17)が動作するようにしてもよいし、機能部及び情報を新たに設けるようにしてもよい。また行動評価設定画面80や編集画面120として、この他の情報を表示、追加、削除又は置換できるような画面構成を採用するようにしてもよく、行動評価設定画面80や編集画面120の画面構成としては、この他種々の画面構成を広く適用することができる。
【0225】
(4)具体例
(4-1)具体例1
次に、第1及び第2の実施の形態における行動評価システム1,50を、会社などの職場における上司と部下との1on1ミーティングにおける上司の相槌評価に用いる例を、具体例1として説明する。ここで、1on1ミーティングとは、部下の育成やモチベーション向上を目的とした、部下のための定期的かつ高頻度な対話のことをいう。1on1ミーティングにおける上司の行動は、部下との信頼関係の構築、部下の育成やモチベーション向上において重要であるため、1on1ミーティングにおける上司の行動を評価し、支援することは有用である。以下、第1及び第2の実施の形態と重複部分の説明を省略して説明する。
【0226】
図23は、具体例1において、上司の相槌を評価する場合の行動評価システム1,50の動作概要を示す。具体例1では、第1及び第2の実施の形態における行動検知データベース21(図5)として、1on1ミーティング中の上司の行動を検出するために作成された上司の行動データベース140、評価メソッド22(図6)として、1on1ミーティング用の評価メソッド22である1on1メソッド141を用いる。
【0227】
また行動詳細評価データベース23(図8)を評価項目ごとに分割し、行動詳細評価データベース23として、話題データベース142、上司と部下との発話履歴(上司部下発話履歴)143、話題の観点データベース144、部下の発話データベース145、部下の発話履歴146、相槌リズムデータベース147、及び、上司の行動履歴148を用いる。
【0228】
そして、具体例1では、これらの情報を利用して行動詳細評価項目のうち、直列評価項目として、1on1ミーティングに適した話題であるか、適切な観点で対話してるかを評価し、並列評価項目として、部下が上司の相槌を待っている状態であるか、相槌のリズムは適切か、適切な頻度で相槌をしているかなどを評価することにより、相槌の詳細を評価する。
【0229】
1on1ミーティングでは、適切な話題と観点で対話することが前提条件となるため、直列評価項目として話題と観点の評価を行い、それぞれ前提条件を満たしている場合に、並列評価項目として、部下が上司の相槌を待っている状態であるか、相槌のリズムは適切か、適切な頻度で相槌をしているかなどの相槌の詳細を評価する。
【0230】
図24は、具体例1における行動評価システム1,50の論理構成を示す。図24では、第1及び第2の実施の形態における主行動信号入力部40(図2図17)として上司行動入力部150、副行動信号入力部41(図2図17)として部下行動入力部151が設けられている。また主体推定部42(図2図17)として上司推定部152、行動検知部43(図2図17)として上司の行動検知部153、行動詳細評価部44(図2図17)として第1~第7の詳細評価部154A~154Gが設けられている。
【0231】
さらに主体推定データベース20(図2図17)として上司推定データベース149、行動検知データベース21(図2図17)として上司の行動データベース140、評価メソッド22(図2図17)として1on1メソッド141が設けられている。さらに行動詳細評価データベース23(図2図17)として、図9の形式の行動詳細評価データベース23を評価項目ごとに分割するようにして生成した話題データベース142、上司部下発話履歴143、話題の観点データベース144、部下の発話データベース145、部下の発話履歴146、相槌リズムデータベース147、及び、上司の行動履歴148などが設けられている。
【0232】
上司推定部152は、評価対象ユーザとして「上司」を推定するが、特定の上司を推定する上司推定データベース149を用いて上司個人を推定してもよいし、上司及び部下の発話内容などにより一般的な上司を推定する上司推定データベース149を用いて上司の立場の話者を推定するようにしてもよい。
【0233】
上司の行動検知部153は、上司の行動データベース140と、1on1メソッド141とに基づいて、評価対象となる上司の行動(評価行動)を検知する。1on1メソッド141における上司の評価行動としては、話題を選ぶスキルと、話し方を工夫するスキルとがあり、そのうち話し方を工夫するスキルとして、相手の話に適切に反応するための沈黙、頷き、自然な笑顔、相槌、相手の話を返すための繰返し、要約、気持ちの表明、相手に質問するために具体化する、拡大化する、相手を認める、ほめるなどのスキルがある。本具体例1では、このうち相槌を検知した場合について説明する。
【0234】
具体例1の場合、第1~第7の行動詳細評価部154A~154Gにおける評価項目として、2つの直列評価項目と、5つの並列評価項目とがある。この場合における2つの直列評価項目は、「話題」及び「観点」である。「話題」については、話題データベース142と、上司の行動信号とから算出した発話内容(上司部下発話履歴143の情報)とを用いて話題を推定し、1on1ミーティングに適した話題で話しているかを評価する。「観点」については、話題の観点データベース144と、上司及び部下の行動信号から算出した発話内容や発話履歴とを用いて、コト(業務状況など)ではなくヒト(部下)に着目できているか(例えば、上司の質問や部下の回答から業務進捗の管理になっていないかなど)を評価する。
【0235】
また、かかる5つの並列評価項目は、「部下の発話状態」、「相槌のリズム」、「表情」、「頷きとの整合性」、「相槌の頻度」である。「部下の発話状態」については、部下の発話データベース145と、部下の行動信号から算出した部下の発話内容や発話履歴(部下の発話履歴146の情報)とを用いて、部下が上司の相槌を待っている状態であるか(部下の発話を中断させていないかなど)を評価する。部下の発話データベース145は、部下の発話履歴と部下の発話を中断させなかった確率の関係性に関する情報などを含む。
【0236】
「相槌のリズム」については、相槌リズムデータベース147と、上司の行動信号及び部下の行動信号から算出した上司の相槌の履歴や部下の発話履歴とを用いて、部下の発話を促進できるタイミングの相槌であるかを評価する。相槌リズムデータベース147は、部下の発話履歴と相槌との関係性を参照して、適切なリズムであった確率に関する情報などを含む。
【0237】
「表情」については、図示しない表情データベースと、上司の行動信号とから算出した上司の表情とを用いて、上司が自然な笑顔で相槌していたかを評価する。表情データベースは、口角や目尻などの顔の特徴点や、その変化と笑顔の程度の関係性に関する情報を含む。
【0238】
「頷きとの整合性」については、上司の行動信号から算出した頷きを検知し、頷きと相槌とのタイミングの差が閾値に収まっているかを評価する。相槌とのタイミングの差を規格化し、取得した数値を確率に変換して算出するようにしてもよい。
【0239】
「相槌の頻度」については、上司の行動信号から算出した相槌の履歴と、部下の行動信号から算出した発話履歴とを用いて、前回の相槌や以前の複数回の相槌の後に部下が十分に発話したかなどを評価する。
【0240】
これらの評価項目により、上司の相槌の詳細を評価し、その評価結果を出力する。各評価項目に用いるデータは、第1及び第2の実施の形態における行動詳細評価データベース23(図8)に格納されている対応する評価項目のデータと同じであるが、不足している情報があれば、各評価項目において新たな項目やデータを追加するようにしてもよい。評価結果の出力においては、評価した評価項目ごとに「OK」や「NG」に該当する情報を出力装置に出力してもよいし、「NG」が入力された評価項目の情報を統合して出力装置に出力するようにしてもよい。また、すべての評価項目に対する評価が「OK」であった場合には、「上手に相槌できています」などの統合した評価を出力装置5に出力するようにしてもよい。
【0241】
(4-2)具体例2
次に、第1及び第2の実施の形態における行動評価システム1,50を、家庭などにおける親子の相互交流シーンでの親の直接的命令の評価に用いる例を、具体例2として説明する。
【0242】
具体例2では、親子の相互交流の支援について、親子相互交流訓練法(PCIT:Parent-Child Interaction Training)のメソッドに基づいて評価した場合について説明する。親子相互交流訓練法とは、遊戯療法及び行動療法に基づく心理療法であり、親子の相互交流を深め、その質を高めることで、子どもの心や行動の問題や、育児に悩む親(養育者)に対して、改善するように働きかける方法である。親子の相互交流における親の行動は、子どもとの信頼関係の構築や、しつけなどの子どもの健全な成長において重要であるため、親子相互交流訓練法に基づいて親の行動を評価し、支援することは有用である。以下、第1及び第2の実施の形態と重複部分の説明を省略して説明する。
【0243】
図25は、具体例2において、親の直接的命令を評価する場合の行動評価システム1,50の動作概要を示す。具体例2では、第1及び第2の実施の形態における行動検知データベース21(図2図17)として親の行動データベース160、評価メソッド22として親子交流メソッド161を用いる。また行動詳細評価データベース23(図8)を評価項目ごとに分割し、行動詳細評価データベース23として、信頼関係データベース162、親子の交流履歴163、子の行動データベース164、発達段階データベース165、子の行動履歴166、言語表現データベース167、及び、親の発話履歴168などを用いる。
【0244】
そして具体例2では、これらの情報を利用して、行動詳細項目のうち、直列評価項目として子どもとの信頼関係を構築済みであるかを評価し、並列評価項目として子どもが命令を聞ける状態であるか、子どもの発達状態に合っており子どもが実行可能な命令内容であるか、適切な言語表現であるかなどを評価することにより、直接的命令の詳細を評価する。
【0245】
親子相互交流訓練法では、親子の信頼関係を構築することが直接的命令の前提条件となるため、直列評価項目として親子の信頼関係の評価を行い、前提条件を満たしている場合に、並列評価項目として子どもが親の直接的命令を聞ける状態であるか、子どもの発達状況にあった命令内容であったか、丁寧な言語表現で命令したか、などの直接的命令の詳細を評価する。
【0246】
図26は、具体例2における行動評価システムの論理構成を示す。図26では、第1及び第2の実施の形態における主行動信号入力部40(図2図17)として親の行動入力部170、副行動信号入力部41(図2図17)として子の行動入力部171が設けられている。また主体推定部42(図2図17)として親推定部172、行動検知部43(図2図17)として親の行動検知部173、行動詳細評価部44(図2図17)として第1~第8の詳細評価部174A~174Hが設けられている。
【0247】
さらに主体推定データベース20(図2図17)として親推定データベース169、評価メソッド22(図2図17)として親子交流メソッド161を用いると共に、行動詳細評価データベース23(図2図17)として、図9の形式の行動詳細評価データベース23を評価項目ごとに分割するようにして生成した信頼関係データベース162、親子の交流履歴163、子の行動データベース164、発達段階データベース165、子の行動履歴166、言語表現データベース167及び親の発話履歴168などが設けられている。
【0248】
親推定部172は、評価対象ユーザとして親を推定するが、特定の親を推定する親推定データベース169を用いて親個人を推定してもよいし、親と子どもの体型や発話内容などにより一般的な親を推定する親推定データベース169を用いて親の立場の話者を推定してもよい。
【0249】
親の行動検知部173は、親の行動データベース160と、親子交流メソッド161とに基づいて、評価対象となる親の行動を検知する。親子交流メソッド161において、評価対象とする親の行動としては、子どもとの信頼関係を構築するスキルと、子どもへの教育をするスキルとがあり、そのうち子どもとの信頼関係を構築するスキルとしては、命令しない、質問しない、批判しない、ほめる、繰り返す、真似をする、行動を説明する及び楽しむなどのスキルがある。本具体例2では、このうち直接的命令を検知した場合について説明する。
【0250】
具体例2の場合、第1~第8の行動詳細評価部174A~174Hにおける評価項目として、1つの直列評価項目と、7つの並列評価項目とがある。この場合における「1つの直列評価項目」は、「信頼関係」である。信頼関係については、信頼関係データベース162と、親子の行動信号から算出した親子の交流履歴163とを用いて、子どもの問題行動と、親の育児困難感とを評価する。このため信頼関係データベース162は、子どもの問題行動と、親の育児困難感とに関する評価項目を含む。信頼関係データベース162と、親子の交流履歴163とを用いて、親子の信頼関係のスコアを算出することで評価する。親子の信頼関係のスコアを規格化し、例えば、かかるスコアが「0」の場合を信頼関係がある確率が0%、かかるスコアが満点の場合を信頼関係がある確率が「100」%として、取得した数値を確率などに変換してもよい。
【0251】
また、かかる7つの並列評価項目は、「子どもの聞き入れ状態」、「子どもの発達状況」、「言語表現」、「声量」、「前後の説明」、「命令の必要性」及び「命令の頻度」である。「子どもの聞き入れ状態」については、子どもの行動データベース164と、子どもの行動信号から算出した子どもの行動履歴や行動内容(子の行動履歴166の情報)とを用いて、子どもが親の命令を聞き入れる状態であるかを評価する。子どもの行動データベース164は、子どもの行動とそれぞれの行動において親の命令に反応した割合などの、行動及び聞き入れ状態の関係に関する情報を含む。
【0252】
「子どもの発達状況」については、発達段階データベース165と、親子の行動信号とから算出した直接的命令の内容と、子どもの行動履歴や行動内容(子の行動履歴166の情報)とを用いて、子どもが実行可能な命令であるかを評価する。発達段階データベース165は、子どもが問題なく実施した行動と、その行動を実施した場合に問題なく実施できる行動とを紐付けた情報を含む。
【0253】
「言語表現」については、言語表現データベース167と、親の行動信号とから算出した直接的命令の文字列とを用いて、適切な言語表現であるか(丁寧語を使っているか、肯定的な言葉を使っているか、1回に1つだけの命令になっているか、具体的な命令内容であるかなど)を評価する。言語表現データベース167は、丁寧語や肯定的な言葉などの文字列を含む。
【0254】
「声量」については、親の行動信号から算出した親の音声エネルギーを用いて、閾値内の声量であるかを評価する。声量は、親子の行動信号から算出した親子の距離や、親と行動情報取得装置2A、2Bのマイクとの距離などで調整してもよい。
【0255】
「前後の説明」については、親の行動データベース160と、親の行動信号とから算出した親の発話履歴168とを用いて、親が直接的命令の前後に命令を実施した理由を説明しているかを評価する。
【0256】
また「命令の必要性」については、図示しない危険状況データベースと、子どもの行動信号とから算出した子どもの行動場所や行動内容(子の行動履歴166の情報)とを用いて、直接的命令を実施する必要があったかを評価する。危険状況データベースは、子どもの危険な状況(危険な場所や行動)に関する情報を含む。
【0257】
「命令の頻度」については、親の行動信号から算出した親の行動履歴を用いて、前回の直接的命令から一定時間(例えば30秒)以上経過しているかを評価する。
【0258】
これらの評価項目により、親の直接的命令の詳細を評価し、その評価結果を出力する。各評価項目に用いるデータは、第1及び第2の実施の形態における行動詳細評価データベース23に格納されている対応する評価項目のデータと同じであるが、不足している情報があれば、各評価項目において新たな項目やデータを追加するようにしてもよい。評価結果の出力においては、評価した評価項目ごとに「OK」や「NG」に該当する情報を出力装置に出力してもよいし、「NG」が入力された評価項目の情報を統合して出力装置5に出力するようにしてもよい。また、すべての評価項目に対する評価が「OK」であった場合には、「上手に直接的命令をできています」などの統合した評価を出力装置5に出力するようにしてもよい。
【0259】
(5)他の実施の形態
なお上述の第1及び第2の実施の形態においては、第1及び第2の実施の形態による行動評価機能を実現するためのすべての機能を1つのコンピュータ装置(行動評価装置3,51)に搭載するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、分散コンピューティングシステムを構成する複数のコンピュータ装置にかかる機能を分散させて搭載するようにしてもよい。
【0260】
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、行動評価設定画面80を図21のように構成し、編集画面120を図22のように構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の画面構成を広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0261】
本発明は人の行動を評価する種々の構成の行動評価システムに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0262】
1,50……行動評価システム、2A,2B……行動情報取得装置、3,51……行動評価装置、4……入力装置、5……出力装置、6……CPU、10……主体推定プログラム、11……行動検知プログラム、12……行動詳細評価プログラム、13……行動評価統合プログラム、14……行動出力プログラム、15……通信プログラム、20……主体推定データベース、21……行動検知データベース、22……評価メソッド、23……行動詳細評価データベース、24……行動詳細評価結果、25……行動評価統合結果、30,60……入力部、31,61……演算部、32……記憶部、40……主行動信号入力部、41……副行動信号入力部、42……主体推定部、43……行動検知部、44……行動詳細評価部、45……行動評価統合部、46……行動出力部、47……主体推定情報、48……行動検知情報、53……選定設定プログラム、54……評価項目選定プログラム、55……評価項目選定データベース、70……設定信号入力部、71……選定設定部、72……評価項目選定部、80……行動評価設定画面、120……編集画面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
図19
図20
図21
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図25
図26