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特開2022-191586ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置
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  • 特開-ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191586
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/10 20160101AFI20221221BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20221221BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20221221BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20221221BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20221221BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
B60W20/10
B60K6/46 ZHV
B60W10/08 900
B60L15/20 S
B60L50/61
B60L9/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099888
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信彦
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB52
3D202CC02
3D202DD02
3D202DD05
3D202DD50
3D202FF02
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA04
5H125BB00
5H125BD17
5H125CA02
5H125CA15
5H125CA18
5H125DD16
5H125EE42
5H125EE43
5H125EE52
5H125EE61
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】車体に生じるピッチングを利用してハイブリッド車両を改善する。
【解決手段】ハイブリッド車両1は、発電した電力をバッテリ8に供給可能な第1モータジェネレータ5と、前輪3の駆動源となる第2モータジェネレータ6と、後輪4の駆動源となる第3モータジェネレータ7と、第1モータジェネレータ5の駆動源となる内燃機関2と、を有している。ハイブリッド車両1は、走行中に所定の加速要求が発生した場合、駆動力の後輪分担率を当該加速要求前よりも大きくする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電した電力をバッテリに供給可能な第1電動機と、
上記バッテリからの電力が供給され、車両の前輪の駆動源となる第2電動機と、
上記バッテリからの電力が供給され、車両の後輪の駆動源となる第3電動機と、
上記第1電動機の駆動源となる内燃機関と、を有し、運転状態に応じて車両全体の駆動力を前輪と後輪に所定の割合で配分可能なハイブリッド車両において、
走行中に所定の加速要求が発生した場合、駆動力の後輪分担率を当該加速要求前よりも大きくするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項2】
走行中に所定の加速要求が発生した場合、駆動力の後輪分担率を100%とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項3】
走行中に所定の加速要求が発生した場合、後輪の駆動力をタイヤスリップ限界の駆動力とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項4】
タイヤスリップ限界の駆動力は、外気温、湿度及び車両に搭載されたナビゲーションシステムからの情報を用いて把握した周囲の環境に基づいて算出する請求項3に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項5】
所定の加速要求とは、所定車速以上の速度で走行中に、アクセル開度が全開となり、かつアクセル開度が全開になるまでのアクセル開度の変化速度が所定値以上の場合である請求項1~4のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項6】
車両に搭載されたナビゲーションシステムからの情報で車両が高速道路を走行中と判定されると、所定の加速要求が発生した場合に駆動力の後輪分担率を当該加速要求前よりも大きくすることを許可する請求項1~5のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項7】
走行中に所定の加速要求が発生した場合、初期の所定期間は、駆動力の前輪分担率を後輪分担率よりも大きくする請求項1~6のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項8】
走行中に所定の加速要求が発生した場合、上記バッテリが最大出力となった後の駆動力の後輪分担率を上記バッテリが最大出力となる前の駆動力の後輪分担率より大きくする請求項1~7のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項9】
発電した電力をバッテリに供給可能な第1電動機と、
上記バッテリからの電力が供給され、車両の前輪の駆動源となる第2電動機と、
上記バッテリからの電力が供給され、車両の後輪を駆動源となる第3電動機と、
上記第1電動機の駆動源となる内燃機関と、
運転状態に応じて車両全体の駆動力を前輪と後輪に所定の割合で配分可能な第1制御部と、
走行中に所定の加速要求が発生した場合、駆動力の後輪分担率を当該加速要求前よりも大きくする第2制御部と、を有するハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、内燃機関と電動モータの駆動力によって駆動されるハイブリッド車両において、車体のピッチ振動を抑制するために、電動モータによる車両の駆動力(モータ駆動力)を増減し、ピッチ振動の程度に応じて内燃機関よる車両の駆動力(エンジン駆動力)とモータ駆動力との配分を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-114821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1は、車体に生じるピッチ振動を抑制する技術であり、車体に生じるピッチ振動を積極的に利用しようとするものではない。
【0005】
つまり、ハイブリッド車両においては、車体に生じるピッチ振動(ピッチング)を利用した改善に関して更なる検討の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両は、発電した電力をバッテリに供給可能な第1電動機と、前輪の駆動源となる第2電動機と、後輪の駆動源となる第3電動機と、上記第1電動機の駆動源となる内燃機関と、を有し、運転状態に応じて車両全体の駆動力を前輪と後輪に所定の割合で配分可能なものであって、走行中に所定の加速要求が発生した場合、駆動力の後輪分担率を当該加速要求前よりも大きくする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハイブリッド車両は、所定の加速要求があった場合に、駆動力の後輪分担率が大きくなるので、ピッチングにより疑似的な加速を演出することが可能となり、運転者が加速感を損なうことなく運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用されるハイブリッド車両のパワートレインの一構成例を示した説明図。
図2】ハイブリッド車両のピッチングを模式的に説明した説明図。
図3】車速から算出される加速度と、加速度センサで検出される加速度との関係性の一例を模式的に示した特性図。
図4】走行中に所定の加速要求があった場合のハイブリッド車両の加速度の変化を示す特性図。
図5】走行中に所定の加速要求があった場合の後輪の駆動力配分の変化を示した特性図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明が適用されるハイブリッド車両1のパワートレインの一構成例を示した説明図である。
【0010】
ハイブリッド車両1は、内燃機関2を直接の動力源としては使用しないいわゆるシリーズハイブリッド車両である。すなわち、本実施例のハイブリッド車両1おいては、内燃機関2が発電専用であり、駆動輪が電動機を駆動源としている。また、このハイブリッド車両1は、いわゆる4輪駆動車両であり、車両全体の駆動力を前輪3と後輪4に所望の割合で配分することが可能となっている。
【0011】
すなわち、ハイブリッド車両1は、発電用の内燃機関2と、内燃機関2に駆動される第1モータジェネレータ5と、前輪3の駆動源である第2モータジェネレータ6と、後輪4の駆動源である第3モータジェネレータ7と、第1モータジェネレータ5で発電した電力を充電可能なバッテリ8と、を有し、前輪3と後輪4がそれぞれ異なる電動機を駆動源としている。
【0012】
内燃機関2は、第1モータジェネレータ5と連動するよう接続されている。内燃機関2は、始動時に第1モータジェネレータ5をスタータとして使用してもよい。また、内燃機関2は、第1モータジェネレータ5とは異なる専用のスタータモータにより始動するようにしてもよい。
【0013】
第1モータジェネレータ5は、第1電動機に相当するものであり、主に発電用となるモータジェネレータである。第1モータジェネレータ5で発電された電力は、図示せぬインバータを介してバッテリ8もしくは第2、第3モータジェネレータ6、7に供給される。つまり、第1モータジェネレータ5で発電した電力は、運転状態に応じて、例えばバッテリ8に充電するのではなく第2、第3モータジェネレータ6、7に直接供給することも可能である。
【0014】
第2モータジェネレータ6は、第2電動機に相当するものであり、主に走行用となるモータジェネレータである。第2モータジェネレータ6は、主としてバッテリ8からの電力が供給され、前輪3の駆動源となる。第2モータジェネレータ6の回転は、第1ギヤ列11を介しての前輪3に伝達される。第1ギヤ列11は、第2モータジェネレータ6の回転軸が直結される第1入力軸12と、前輪3に接続される第1出力軸13と、を有している。第1ギヤ列11は、第1入力軸12から第1出力軸13にトルクが伝達可能となるように構成されている。
【0015】
第3モータジェネレータ7は、第3電動機に相当するものであり、主に走行用となるモータジェネレータである。第3モータジェネレータ7は、主としてバッテリ8からの電力が供給され、前輪3の駆動源となる。第3モータジェネレータ7の回転は、第2ギヤ列14を介しての後輪4に伝達される。第2ギヤ列14は、第3モータジェネレータ7の回転軸が直結される第2入力軸15と、後輪4に接続される第2出力軸16と、を有している。第2ギヤ列14は、第2入力軸15から第2出力軸16にトルクが伝達可能となるように構成されている。
【0016】
第1、第2、第3モータジェネレータ5、6、7は、それぞれ上記インバータを介してバッテリ8に接続されている。ハイブリッド車両1は、運転者の要求等に応じてパワートレイン全体の制御を行うパワートレインコントローラ21を有している。
【0017】
パワートレインコントローラ21には、ハイブリッド車両1の加速度を検出する加速度センサ22、ハイブリッド車両1の車速を検出する車速センサ23、外気温を検出可能な温度センサ24、ハイブリッド車両1の周囲の湿度を検出可能な湿度センサ25等の各種センサ類からの検出信号が入力されている。また、パワートレインコントローラ21には、ハイブリッド車両1の運転支援用のカーナビゲーションシステム26からの情報が入力されている。パワートレインコントローラ21は、車速センサ23の検出値を用いてハイブリッド車両1の加速度を算出可能である。
【0018】
パワートレインコントローラ21は、第1制御部及び第2制御部としてのモータコントローラ31を介して各モータジェネレータ5、6、7の制御を行う。パワートレインコントローラ21は、エンジンコントローラ32を介して内燃機関2の制御を行う。モータコントローラ31は、車両全体の駆動力を前輪3と後輪4に所望の割合に配分することが可能である。
【0019】
なお、第2、第3モータジェネレータ6、7は、ハイブリッド車両1の減速時に発電機として機能する。すなわち、第2、第3モータジェネレータ6、7は、車両減速時の回生エネルギーを電力としてバッテリ8に充電可能な発電電動機である。
【0020】
ここで、本実施例のハイブリッド車両1は、内燃機関2と駆動輪である前輪3及び後輪4が直接的(機械的)に連結されていない。そのため、ハイブリッド車両1は、第2、第3モータジェネレータ6、7の急激な回転数変化が内燃機関2によって阻害されることがなく、レスポンスのよい加速感を得ることができる。
【0021】
しかしながら、ハイブリッド車両1は、走行中の急激な加速要求に対応できる加速性能を実現するためには、加速度の最大値を高くすることが求められる。
【0022】
加速度の最大値を高くするためには、第2、第3モータジェネレータ6、7に供給する電力量を増やすことが考えられる。ここで、第2、第3モータジェネレータ6、7に供給する電力量を増やすためには、内燃機関2の出力を上げる必要があり、内燃機関2のコストの増加や重量増加を招く虞がある。
【0023】
また、ハイブリッド車両1は、走行中の急激な加速要求に対応して早期に内燃機関2が最大出力となるようにすれば、発電量を確保できるものの内燃機関2の機関回転数が急激に上昇し、エンジン音に対して車速が追従せず、音振性能の悪化を招く虞がある。
【0024】
ハイブリッド車両1の乗員は、車速の増加にともない加速感を感じるが、ハイブリッド車両1の幅方向に沿った軸周りの回転挙動であるピッチングによっても疑似的な加速感を感じる。ピッチングによる疑似的な加速感は、図2に示すように、前輪3が浮き上がる方向にハイブリッド車両1が回転しようとすることで発生する。
【0025】
つまり、加速度センサ22で検出される加速度、すなわち乗員が感じる加速度は、ハイブリッド車両1の車速から算出される加速度と必ずしも一致するものではなく、ピッチングによる疑似的な加速感が加味されたものとなっている。
【0026】
図3は、上述したハイブリッド車両1において、車速から算出される加速度(図3中の破線)と、加速度センサ22で検出される加速度(図3中の実線)との関係性の一例を模式的に示した特性図である。
【0027】
加速度センサ22で検出される加速度は、ハイブリッド車両1にピッチングが生じていると、図3に示すように車速から算出される加速度よりも大きな値となる。
【0028】
そこで、本実施例のハイブリッド車両1は、走行中に所定の急激な加速要求が発生した場合、駆動力の後輪分担率を上記加速要求前よりも大きくして、ピッチングによる疑似的な加速感を発生させる。つまり、モータコントローラ31は、走行中に所定の急激な加速要求が発生した場合、駆動力の後輪分担率を上記加速要求前よりも大きくする。
【0029】
所定の急激な加速要求とは、例えば、所定車速以上の速度で走行中に、アクセル開度(スロットル開度)が全開となり、かつアクセル開度が全開になるまでのアクセル開度の変化速度が所定値以上の場合である。
【0030】
なお、ハイブリッド車両1は、例えばパワートレインコントローラ21がカーナビゲーションシステム26からの情報で高速道路を走行中と判定した場合に、所定の急激な加速要求が発生した場合に駆動力の後輪分担率を上記加速要求前よりも大きくすることを許可している。
【0031】
これにより、ハイブリッド車両1の乗員は、所定の急激な加速時にハイブリッド車両1の駆動力の後輪分担率を大きくすることで、車速による加速感に加え、車両のピッチングによる加速感を得ることになる。
【0032】
つまり、ハイブリッド車両1は、所定の急激な加速要求があった場合に、駆動力の後輪分担率が大きくなるので、ハイブリッド車両1のピッチングにより疑似的な加速を演出することが可能となり、運転者が加速感を損なうことなく運転することができる。
【0033】
ハイブリッド車両1は、走行中に所定の急激な加速要求が発生した場合、例えば駆動力の後輪分担率を100%としてもよい。
【0034】
ハイブリッド車両1は、走行中に所定の急激な加速要求が発生した場合、例えば後輪4の駆動力をタイヤスリップ限界の駆動力としてもよい。つまり、ハイブリッド車両1は、走行中に所定の急激な加速要求が発生した場合、例えば後輪4の駆動力がタイヤスリップ限界の駆動力なるように駆動力の後輪分担率を設定してもよい。
【0035】
タイヤスリップ限界の駆動力は、例えば、外気温、湿度及びハイブリッド車両1に搭載されたナビゲーションシステムからの情報を用いて把握した周囲の環境に基づいて算出される。タイヤスリップ限界の駆動力は、例えば、外気温が低いほど、湿度が高いほど、走行路の曲率半径が小さいほど、小さくなる。
【0036】
また、上述した実施例のハイブリッド車両1は、走行中に所定の急激な加速要求が発生した場合、バッテリ8の出力電力が最大となるまでの初期の所定期間は、駆動力の前輪分担率を後輪分担率よりも大きくしてもよい。これによって、ハイブリッド車両1は、走行中に所定の急激な加速要求が発生した際に、車速を抑制することなく、増大傾向の加速感を得ることができる。
【0037】
図4は、走行中に所定の急激な加速要求があった場合のハイブリッド車両1の加速度の変化を示す特性図である。
【0038】
図4中に太実線で示す特性線P1は、駆動力の後輪分担率を高くした場合に加速度センサ22で検出される加速度の変化の一例を示している。図4中に破線で示す特性線P2は、加速要求の前後で前後輪の駆動力配分を一定とし、かつ立ち上がりの加速度のピーク値を抑制した場合の加速度の変化の一例を示している。図4中に細実線で示す特性線P3は、加速要求の前後で前後輪の駆動力配分を一定とした場合の加速度の変化の一例を示している。
【0039】
なお、図4における特性線P2は、時刻t1の直前までは特性線P1と重なり合い、時刻t2以降は特性線P3と重なり合っている。図4における特性線P3は、時刻t1までは特性線P1と重なり合っている。
【0040】
図5は、走行中に所定の急激な加速要求があった場合の後輪4の駆動力配分の変化を示した特性図である。図5中に実線で示す特性線Q1は、後輪分担率の高くする場合の後輪分担率の変化の一例を示している。図5中に破線で示す特性線Q2は、加速要求の前後で前後輪の駆動力配分を一定とした場合を示している。
【0041】
図4及び図5において、時刻t1は、急激な加速要求があった後にバッテリ8が最大出力となるタイミングである。図4及び図5において、時刻t2は、内燃機関2の出力上昇にともない第1モータジェネレータ5で発電された電力が第2、第3モータジェネレータ6、7に供給され始めるタイミングである。図4及び図5において、時刻t3は、内燃機関2が最大出力となり、システムが最大出力に到達するタイミングである。
【0042】
ハイブリッド車両1は、時刻t0~時刻t2の間、バッテリ8の出力(電力)のみで加速する。ハイブリッド車両1は、時刻t1~時刻t2の間、バッテリ8の出力(電力)のみで動作するため、車速上昇にともない余裕駆動力が減少して加速度が減衰(減少)する。ハイブリッド車両1は、時刻t2~時刻t3の間、バッテリ8の最大出力と内燃機関2の出力に応じて第1モータジェネレータ5で発電された電力とによって加速する。ハイブリッド車両1は、時刻t3以降、車速上昇にともない余裕駆動力が減少して加速度が減衰(減少)する。
【0043】
ハイブリッド車両1は、急減な加速時、車速の上昇により余裕駆動力が減少するため、バッテリ8の出力が最大となる時刻t1から所定期間(時刻t2まで)は加速度が減少する。
【0044】
ハイブリッド車両1は、バッテリ8の出力が最大となる時刻t1における加速度を低く抑え、特性線P2のように時刻t1以降も加速度が上昇可能となるようにすることも可能である。しかしながら、この場合には、バッテリ8の出力が最大となる時刻t1までの加速度が抑えられることになり、加速性能が悪化することになる。
【0045】
そこで、ハイブリッド車両1は、所定の急減な加速要求が発生した場合、特性線Q1のように、バッテリ8からの出力電力が最大となるバッテリ最大出力のタイミング(時刻t1)以降の駆動力の後輪分担率を上記加速要求前よりも大きくする。
【0046】
これにより、ハイブリッド車両1は、バッテリ8の出力が最大となる時刻t1における加速度を低く抑えることなく、特性線P1のように時刻t1以降も加速度センサ22で検出される加速度が上昇可能となるようにできる。ハイブリッド車両1は、時刻t1~時刻t2の間、ピッチングによる疑似的な加速度を発生させることで、運転者に良好な(増大傾向の)加速感を与えることができる。
【0047】
なお、ハイブリッド車両1は、所定の急減な加速要求が発生した場合、バッテリ8からの出力電力が最大となるバッテリ最大出力のタイミング(時刻t1)まで駆動力の前輪分担率を後輪分担率よりも大きくし、時刻t1以降の駆動力の後輪分担率を時刻t1以前の後輪分担率よりも大きくしてもよい。
【0048】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0049】
上述した実施例は、ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【符号の説明】
【0050】
1…ハイブリッド車両
2…内燃機関
3…前輪
4…後輪
5…第1モータジェネレータ
6…第2モータジェネレータ
7…第3モータジェネレータ
8…バッテリ
21…パワートレインコントローラ
22…加速度センサ
23…車速センサ
26…カーナビゲーションシステム
31…モータコントローラ
32…エンジンコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5