(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191610
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】吸引器システム及び吸引器システムの使用方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20221221BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61M1/00 111
A61M1/00 103
A61G12/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099931
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】509205629
【氏名又は名称】新鋭工業販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】石原 史城
【テーマコード(参考)】
4C077
4C341
【Fターム(参考)】
4C077DD12
4C077DD19
4C077EE04
4C077GG11
4C077KK25
4C077PP18
4C341LL12
4C341LL22
(57)【要約】
【課題】袋の取り替え作業が簡略化された吸引器システムを提供する。
【解決手段】本発明の吸引器システム1は、陰圧を導入するための陰圧導入口21を有する容器部2と;容器内2に設置されて吸引された液状廃棄物を貯留する袋部3と;容器部2の頂部を塞いで容器部2内の陰圧を維持する蓋部4であって、袋部3と一体に形成されている、蓋部4と;を備えている。このような構成であるから、袋部3と蓋部4を一体にして廃棄/設置できるため、袋部3の取り替え作業が簡略化された吸引器システムとなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧を導入するための陰圧導入口を有する容器部と;
前記容器部内に設置されて吸引された液状廃棄物を貯留する袋部と;
前記容器部の頂部を塞いで前記容器部内の陰圧を維持する蓋部であって、前記袋部と一体に形成されている、蓋部と;
を備える、吸引器システム。
【請求項2】
前記蓋部は、液状廃棄物を前記袋部内へ導入するための廃棄物導入経路と、前記容器部の内部空間と前記袋部の内部空間とを連通する連通経路と、前記連通経路の途中に配置されて空気は通すようにされ液状廃棄物は通さないようにされたフィルタと、を有する、請求項1に記載された吸引器システム。
【請求項3】
前記袋部及び蓋部は、前記容器部に対して取付け/取外し自在に形成されて、前記袋部及び前記蓋部を一体になったまま廃棄できるようになっている、請求項1又は請求項2に記載された吸引器システム。
【請求項4】
前記容器部は、前記容器部の頂部側が壁面から離れるように前傾して前記壁面に取り付けられている、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された吸引器システム。
【請求項5】
前記蓋部には持ち手が形成されて、前記袋部及び前記蓋部を一体になったまま手で持って前記容器部から上方に引き抜くことができるようになっている、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載された吸引器システム。
【請求項6】
前記容器部は透明に形成され、前記袋部には、前記容器部内に設置された状態の正面側に画像又は着色が印刷されるとともに側面側は透明とされる、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された吸引器システム。
【請求項7】
前記容器部には、第1端部が吸引カテーテルに接続され、第2端部が前記廃棄物導入経路に接続される接続ホースを保持するためのホルダが設置される、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載された吸引器システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載された吸引器システムの使用方法であって、
使用済の蓋部及び袋部を一体で取り外す工程と、
未使用の蓋部及び袋部を一体で取り付ける工程と、
を備える、吸引器システムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療現場において廃棄する必要のある液状廃棄物を吸引して凝固させ、廃棄するための、吸引器システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療現場では、血液や体液などを含む液状廃棄物は、吸引器を用いて容器や袋に集められて廃棄・焼却処分されることが多い。一方で、液状廃棄物には細菌等が含まれている場合があり、容器や収集袋が破損したり、液状廃棄物を容量を超えて過剰に吸引したりした場合に、液状廃棄物が外部に漏れて、医療従事者や別の患者に二次感染するおそれがある。
【0003】
このような二次感染を防止するために、袋内に吸水性材料(凝固剤)を配置して、液状廃棄物を凝固させる技術が知られている。例えば、特許文献1に記載されたキャニスターボトルでは、袋の内側に凝固剤を保持したフロートを設置することにより、液状廃棄物を袋内で凝固させて袋ごと廃棄処理できるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1を含む従来の吸引器では、袋の取り替え作業において、キャニスターヘッドを開放する工程、その後に液状廃棄物が貯留された古いライナー(袋及び蓋を含む)を取り外す工程、新しいライナーを取り付ける工程、最後にキャニスターヘッドを閉じる工程、という4段階の工程が必要となる。したがって、多忙な医療現場においては、取り替え作業が簡略化(省力化)されることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、袋の取り替え作業が簡略化された吸引器システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、第1の発明の吸引器システムは、陰圧を導入するための陰圧導入口を有する容器部と;前記容器部内に設置されて吸引された液状廃棄物を貯留する袋部と;前記容器部の頂部を塞いで前記容器部内の陰圧を維持する蓋部であって、前記袋部と一体に形成されている、蓋部と;を備えている。
【0008】
第2の発明の吸引器システムでは、前記蓋部は、液状廃棄物を前記袋部内へ導入するための廃棄物導入経路と、前記容器部の内部空間と前記袋部の内部空間とを連通する連通経路と、前記連通経路の途中に配置されて空気は通すようにされ液状廃棄物は通さないようにされたフィルタと、を有する。
【0009】
第3の発明の吸引器システムでは、前記袋部及び蓋部は、前記容器部に対して取付け/取外し自在に形成されて、前記袋部及び前記蓋部を一体になったまま廃棄できるようになっている。
【0010】
変形例の発明の吸引器システムでは、前記容器部の前記陰圧導入口には、コネクタ部が嵌合され、前記コネクタ部には、空気は通すようにされ液状廃棄物は通さないようにされたフィルタが設置されることも可能である。
【0011】
第4の発明の吸引器システムでは、前記容器部は、前記容器部の頂部側が壁面から離れるように前傾して前記壁面に取り付けられている。
【0012】
第5の発明の吸引器システムでは、前記蓋部には持ち手が形成されて、前記袋部及び蓋部を一体になったまま手で持って前記容器部から上方に引き抜くことができるようになっている。
【0013】
第6の発明の吸引器システムでは、前記容器部は透明に形成され、前記袋部には、前記容器部内に設置された状態の正面側に画像又は着色が印刷されるとともに側面側は透明とされる。
【0014】
第7の発明の吸引器システムでは、前記容器部には、第1端部が吸引カテーテルに接続され、第2端部が前記廃棄物導入経路に接続される接続ホースを保持するためのホルダが設置される。
【0015】
第8の発明の吸引器システムの使用方法は、使用済の蓋部及び袋部を一体で取り外す工程と、未使用の蓋部及び袋部を一体で取り付ける工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
このように、第1の発明の吸引器システムは、陰圧を導入するための陰圧導入口を有する容器部と;容器内に設置されて吸引された液状廃棄物を貯留する袋部と;容器部の頂部を塞いで容器部内の陰圧を維持する蓋部であって、袋部と一体に形成されている、蓋部と;を備えている。このような構成であるから、袋部と蓋部を一体にして廃棄/設置できるため、袋部の取り替え作業が簡略化された吸引器システムとなる。
【0017】
第2の発明の吸引器システムでは、蓋部は、液状廃棄物を袋部内へ導入するための廃棄物導入経路と、容器部の内部空間と袋部の内部空間とを連通する連通経路と、連通経路の途中に配置されて空気は通すようにされ液状廃棄物は通さないようにされたフィルタと、を有する。このような構成であるから、袋部を廃棄・設置する際に、蓋部ごと廃棄・設置するだけで廃棄・設置が完了する。
【0018】
第3の発明の吸引器システムでは、袋部及び蓋部は、容器部に対して取付け/取外し自在に形成されていることで、袋部及び蓋部を一体になったまま廃棄できるようになっている。
【0019】
変形例の吸引器システムでは、容器部の陰圧導入口には、コネクタ部が嵌合され、コネクタ部には、空気は通すようにされ液状廃棄物は通さないようにされたフィルタが設置されることが可能である。このような構成であれば、仮に、容器部内に液状廃棄物が漏れ出たとしても、このコネクタ部において液状廃棄物を阻止することができる。
【0020】
第4の発明の吸引器システムでは、容器部は、容器部の頂部側が壁面から離れるように前傾して壁面に取り付けられているため、手前側から容器部内にアクセスしやすくなるため、いっそう袋部及び蓋部の交換がしやすくなる。
【0021】
第5の発明の吸引器システムでは、蓋部には持ち手が形成されて、袋部及び蓋部を一体になったまま手で持って容器部から上方に引き抜くことができるようになっているため、いっそう袋部及び蓋部の交換がしやすくなる。
【0022】
第6の発明の吸引器システムでは、前記容器部は透明に形成され、前記袋部には、前記容器部内に設置された状態の正面側に画像又は着色が印刷されるとともに側面側は透明とされる。このような構成であるから、正面から見た外観の意匠を向上させることができるうえに、容器部内の液状廃棄物の貯留量を視認することができる。加えて、容器部のデザインを変えることなく、使い捨てされる部材である袋部のデザインのみを変えることで、全体の印象を変えることができる。
【0023】
第7の発明の吸引器システムでは、容器部には、第1端部が吸引カテーテルに接続され、第2端部が廃棄物導入経路に接続される接続ホースを保持するためのホルダが設置される。このような構成であるから、袋部及び蓋部を交換する際に、第2端部側をホルダに保持させることができる。
【0024】
第8の発明の吸引器システムの使用方法は、使用済の蓋部及び袋部を一体で取り外す工程と、未使用の蓋部及び袋部を一体で取り付ける工程と、を備えている。このような構成であるから、袋部と蓋部を一体にして廃棄/設置できるため、袋部の取り替え作業が簡略化された吸引器システムの使用方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】吸引器の説明図である。(a)は上面図であり、(b)は底面図である。
【
図5】吸引器の説明図である。(a)は
図4(a)のB-B断面図であり、(b)は
図4(b)のC-C断面図である。
【
図6】袋部と蓋部が一体にされた状態の側面図である。
【
図7】蓋部の説明図である。(a)は下から見た図であり、(b)はD-D断面図であり、(c)はE-E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の実施例では、医療用の液状廃棄物の処理装置に適用可能な吸引器システム(1)について説明する。吸引器システム(1)では、手術中、治療中、入院中に発生する廃棄すべき血液や体液等、又は患部の洗浄に用いた生理食塩水等の液状廃棄物を袋部(3)内に吸引し、従来は袋部(3)のみが廃棄・焼却処分されるようになっている。
【実施例0027】
(全体構成)
まず、
図1~
図3を用いて本発明の吸引器システム1の全体構成を説明する。本発明に係る吸引器システム1は、
図1~
図3に示すように、陰圧を導入するための陰圧導入口21を有する容器部2と;容器部2内に設置されて吸引された液状廃棄物を貯留する袋部3と;容器部2の頂部を塞いで容器部2内の陰圧を維持する蓋部4であって、袋部3と一体に形成されている、蓋部4と;を備えている。
【0028】
後述するように、本実施例の吸引器システム1は、袋部3及び蓋部4が一体にされて、容器部2に対して取り付け/取外し自在に形成されているため、袋部3及び蓋部4が一体にされた状態で廃棄可能な、いわゆるディスポーザブル型の吸引器システム1である。
【0029】
一般に、吸引器システム1は、医療施設において、自力で排痰できない患者の口や気道から痰などの分泌物を吸い取り、除去するための医療機器である。具体的には、壁掛式の吸引器システム1の場合は、医療ガス供給システムによって壁(の吸引アウトレット)から供給された陰圧を適切な圧力に調整する圧力調整器(レギュレータ、不図示)を介して陰圧が導入されるようになっている。そして、この陰圧を利用して患者の口や気道から分泌物を吸い取るように構成されている。なお、本実施例では特に説明しないが、吸引器システム1は、卓上式の吸引器の構成要素としても適用することもできる。
【0030】
吸引器システム1を使用する際には、容器部2の下部に設けた陰圧導入口21に嵌合されたコネクタ部5と、吸引アウトレットに接続された圧力調整器(不図示)と、が調整器ホース82を介して接続される。また、蓋部4の上部に設けた廃棄物導入口41aと、吸引カテーテル(不図示)と、が吸引ホース81を介して接続される。
【0031】
このように構成することで、吸引アウトレット、圧力調整器、調整器ホース82、コネクタ部5、容器部2、連通経路42、袋部3、廃棄物導入経路41、吸引カテーテルの順番で陰圧が伝達されて、患者の分泌物を除去するようになっている。
【0032】
(容器部の構成)
容器部2は、
図1~
図4に示すように、全体として円錐台形状の透明の、又は半透明のプラスチック容器である。より詳細に言えば、容器部2の断面形状は背面側(すなわち壁側)に平面部を有するD字状の断面となっている。そして、平面部となる背面側に壁への取付ブラケット22が形成されている。このように、容器部2の断面形状が、D字形状となっていることによって、同じ形状の蓋部4及び袋部3を設置した状態では、自動的に持ち手44が手前側に配置されるようになっている。
【0033】
この取付ブラケット22は、
図2に示すように、頂部側が本体部20から遠く、底部側が本体部20に近くなるように、本体部20に対して傾斜している。したがって、壁面に取り付けられた状態では、取付ブラケット22を介することで、容器部2は、容器部2の頂部側(上側)が壁面から離れるように前傾して壁面に取り付けられる。
【0034】
さらに、本実施例の容器部2には、本体部20の左右の側面に、袋部3内に貯留された液状廃棄物の貯留量の目安となる、目盛23が設けられている。容器部2の容量は、限定されるものではないが、例えば、1200(mm)までに100(mm)ごとに灰色の目盛と数字を付すことができる。ただし、目盛は、大まかな貯留量の目安がわかればよいので、数か所に所定の目印(楕円形の中に数字が記載された目印を含む)を付すだけであってもよい。後述するように、袋部3の側面側(正面から見て横側)には印刷がされないため、容器部2の外から目盛23と袋部3の内部の両方を視認することで、袋部3内の液状廃棄物の貯留量を推定することができる。
【0035】
また、容器部2の側面の上部には、第1端部が吸引カテーテルに接続され、第2端部が廃棄物導入経路に接続される吸引ホース81を保持するためのU字状のホルダ24が設置されている。このホルダ24は、後述するように、袋部3及び蓋部4を交換する際に、液だれしないように、吸引ホース81を一時的に上向き状態で保持するために使用される。
【0036】
一方、容器部2の底部には、
図4(b)に示すように、平面視でC字形状(一部が欠けた円形状)に延びる溝25が形成されており、溝25は最終的に陰圧導入口21まで繋がっている。このように、平面視でC字形状に形成された溝25であれば、折り畳まれた状態で容器部2内に配置された袋部3が展開する際に、溝25に没入して展開しにくくなることを防止できる。そうすると、容器部2内に均等に陰圧を導入することができる。
【0037】
そして、本実施例の陰圧導入口21には、透明なプラスチック製のコネクタ部5が嵌合されている。コネクタ部5は、周囲にパッキンが設置されて、陰圧導入口21に嵌合された状態で抜けにくくなっている。そして、コネクタ部5には、その内部に(下部)フィルタ51が設置されている。
【0038】
このフィルタ51は、通常のエアフィルタであり、空気をろ過する機能を有している。なお、フィルタ51として、蓋部4のフィルタ43と同様の、疎水性のフィルタ(超高分子量ポリエチレン等)を用いることもできる。
【0039】
(袋部の構成)
袋部3は、例えばポリエチレン製で可撓性を有する透明な袋であり、後述するようにその開口端部が円形のプラスチック製の蓋部4と熱溶着されて一体化されている。すなわち、蓋部4の本体部40の下部40bの側面には、リブが形成されており、このリブを利用して袋部3の上端の開口端部が強固に溶着されている。この袋部3は、底(マチ)を有する袋体である本体部30と、本体部30の内部に固定される凝固剤31と、を備えている。
【0040】
袋部3の本体部30は、搬送時(運搬時)には、折り畳まれて小さい状態で梱包されてテープ等によって仮止めされている。そして、折り畳まれた状態の袋部3及び蓋部4が容器部2内に配置されて陰圧が作用すると、陰圧によってテープ等の仮止めが外れて容器部2の内壁に密着するように展開する。このように容器部2内に展開することで、袋部3の内部に、液状廃棄物がスムーズに流れ込んで貯留されるようになる。
【0041】
なお、本体部30の高さ(上下方向の長さ)は、容器部2内で袋部3が浮いた状態となることが好ましい。換言すると、本体部30の高さは、スムーズに展開して液状廃棄物を貯留しやすくなるように、容器部2内に設置された状態で、容器部2の底に届かない程度、すなわち容器部2の高さよりもやや低い高さとすることが好ましい。
【0042】
さらに、本実施例の袋部3の本体部30の正面側には、画像(写真含む)、模様、及び/又は色彩が付されている(
図6のA部)。画像としては、例えば、子供用に動物のイラストを付したり、年配者用に草花の写真を印刷したり、病室の壁と同系統の配色で着色したりすることができる。一方、袋部3に側面側は、容器部2の外から袋部3内の液状廃棄物の貯留量を視認できるように、画像等は印刷されずに、透明、乃至半透明とされていることが好ましい(
図6のB部)。なお、袋部3の背面側には、画像や着色がされるとともに使用時の注意事項などを記載することができる。
【0043】
凝固剤31は、吸水性ポリマー等の吸水性材料から構成されるものであり、水溶性の小袋内に充填されて設置されている。凝固剤31は、本体部30の内部の上下方向の中央よりも上方に貼り付け固定されている。したがって、本体部30の内部に液状廃棄物が貯留されて、この凝固剤31の設置された満水状態近くの高さまで到達すると、水溶性の小袋が溶けることで、中身の凝固剤31が液状廃棄物と混合されて、液状廃棄物が凝固する。
【0044】
(蓋部の構成)
蓋部4は、例えば白色のプラスチック製であり、本体部40内に液状廃棄物を袋部3内へ導入するための廃棄物導入経路41と、容器部2の内部空間と袋部3の内部空間とを連通する連通経路42と、連通経路42の途中に配置されて空気は通すようにされ液状廃棄物は通さないようにされたフィルタ43と、を有している。
【0045】
より具体的に言うと、本体部40は、円形乃至D字形の平板状に形成された上部40aと、上部40aの下に配置されて瞳形の断面部を有する柱状に形成された下部40bと、から構成されている。
【0046】
上部40aは、周縁部に沿うように形成される半円形の持ち手44と、上方に突出して形成される廃棄物導入口41aと、廃棄物導入口41aを封止するためのキャップ45と、を備えている。より詳細に言うと、上部40aの容器部2の内面に接する側面には、例えば二重のリブが形成されており、蓋部4と容器部2との密着性をいっそう高めることができるようになっている。なお、蓋部4と容器部2の密着性を高めるために、ゴム製のパッキンをさらに配置することも可能である。
【0047】
そして、袋部3及び蓋部4を取り替える際には、持ち手43を手で把持することで、袋部3及び蓋部44を一体になったまま手で持って容器部2から上方に引き抜くことができるようになっている。その後、袋部3及び蓋部4を廃棄する際には、廃棄物導入口41aをキャップ45で封止した状態で運搬される。
【0048】
廃棄物導入経路41は、
図3、
図7(b)に示すように、蓋部4(の本体部40)を貫通する経路であり、袋部3内に開口する下端部には、逆止弁41bが設置されている。この逆止弁41bは、正方向(吸引ホース81から袋部3へ流れる方向)の液体は通すが、逆方向(袋部3から吸引ホース81へ流れる方向)の液体は通さないようになっている。したがって、一旦、袋部3内に流入した液状廃棄物は、吸引ホース81側へ逆流しないようになっている。
【0049】
連通経路42は、
図3、
図7(b)、(c)に示すように、L字形に屈曲した経路であり、一方の端部は容器部2内に繋がり、他方の端部は袋部3内に繋がっていることで、容器部2内の陰圧(負圧)を袋部3内に導入するようになっている。さらに、連通経路42の袋部3内へ繋がる他方の端部には、円筒容器状(有底筒状)に成形されたフィルタ43が嵌合されている。
【0050】
フィルタ43は、例えば超高分子量ポリエチレンであり、空気は通すようにされ、かつ、液状廃棄物は通さないようにされている。すなわち、フィルタ43は、液状廃棄物が袋部3内に貯留されて、袋部3の最上部まで到達すると、液状廃棄物に含まれる水分と接触して、連通経路42を封止(閉塞)するようにされている。
【0051】
(吸引器システムの使用方法)
次に、本実施例の吸引器システム1の使用方法について説明する。
1)事前に、蓋部4と袋部3を溶着してセットとして準備し、袋部3が折り畳まれた状態で梱包・運搬しておく。
2)使用場所では、袋部3が折り畳まれた状態の蓋部4と袋部3のセットを、容器部2内に上方から設置する。
3)圧力調整器とコネクタ部5を調整器ホース82によって接続する。
4)蓋部4の廃棄物導入口41aと吸引カテーテルを吸引ホース81によって接続する。
5)切換レバーが「OFF」であることを確認して、圧力調整器のアダプターを吸引アウトレットに接続する。
6)切替レバーを「ON」にしたうえで、調整ツマミを回して圧力を調整する。この際、袋部3が膨らんでいるかどうか確認することが好ましい。この状態になると、袋部3は容器部2の内面に密着するため、外部から容器部2内に設置された袋部3のデザインをはっきりと視認できるようになる。
7)実際に吸引器システム1を使用して液状廃棄物を吸引する。
8)使用しないときは、切替レバーを「OFF」にして、圧力調整器を吸引アウトレットから取り外す。
9)袋部3内に貯留された液状廃棄物を廃棄する。すなわち、吸引ホース81を蓋部4から取り外し、キャップ45を装着した後に、蓋部4及び袋部3を容器部2から引き抜く。この取替作業(廃棄作業)については後述する。
10)蓋部4及び袋部3を、施設内の基準に従って廃棄・焼却する。
【0052】
上記した1)~10)の工程のうち9)の廃棄する時期については、貯留された液状廃棄物が袋部3の最大容量に到達する前に、余裕を持って廃棄することが好ましい。ここにおいて、本実施例の袋部3には、正面側に画像が印刷され、側面側に印刷がされていないことに加えて、容器部2の側面には、目盛りが設けられるため、美観を損ねることがなく、貯留量を目視しやすくなっており、廃棄する際の目安になる。
【0053】
ただし、本実施例の吸引器システム1であれば、仮に袋部3の最大容量に到達した場合でも、蓋部4のフィルタ43に液状廃棄物が接触することで、フィルタ43が連通経路42を封止(閉塞)するようになっている。
【0054】
さらに、フィルタ43を超えて連通経路42を介して容器部2内に液状廃棄物が漏れ出たとしても、コネクタ部5に内蔵されたフィルタ51として疎水性フィルタを用いれば、液状廃棄物が接触することで、フィルタ51が陰圧導入口21を封止(閉塞)するように構成できる。このように、液状廃棄物と吸引アウトレットの間に、二重の封止ラインを形成することで、医療ガス供給システムを介した施設内全体への汚染を防止することが好ましい。
【0055】
(袋部及び蓋部の取替作業について)
ここで、本実施例の吸引器システム1を使用した場合の袋部3及び蓋部4の取替作業について説明する。
【0056】
前述したように、従来の袋と蓋を別体に備える構成では、少なくとも、蓋を開ける工程と、使用済の袋を取り外す工程と、未使用の袋を取り付ける工程と、蓋を閉める工程と、の4工程となっていた。これに対して、本実施例の吸引器システム1を使用すれば、袋部4と蓋部3が一体になっているため、使用済の蓋部4及び袋部3を取り外す工程と、未使用の蓋部4及び袋部3を取り付ける工程と、の2工程で取替作業が完了する。
【0057】
ここにおいて、この取替作業においては、容器部2が前傾しているため、前方(正面)からアクセスした場合に、袋部3及び蓋部4を出し入れしやすくなっている。加えて、蓋部4から取り外した吸引ホース81は、ホルダ24によって上向き状態で保持することができる。さらに、蓋部4の持ち手44を把持して持ち上げることで、いっそう袋部3及び蓋部4を出し入れしやすくなっている。
【0058】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0059】
例えば、実施例では特に説明しなかったが、袋部3には中身を別容器に廃棄する場合に切断(カット)用のガイドとなる、ガイドラインを印刷することもできる。