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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191623
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20221221BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20221221BHJP
   H02P 8/40 20060101ALI20221221BHJP
   H02P 8/08 20060101ALI20221221BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H5/06 J
H02P8/40
H02P8/08
H02K7/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099949
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】岡 雄志
【テーマコード(参考)】
3F049
3F343
5H580
5H607
【Fターム(参考)】
3F049DA12
3F049EA24
3F049LA11
3F049LB02
3F343FA03
3F343FB00
3F343FC03
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JA01
3F343KB04
3F343KB06
3F343LA04
3F343LD10
3F343MA03
3F343MA13
3F343MA23
3F343MA45
3F343MA56
3F343MB13
3F343MC08
5H580AA05
5H580CA02
5H580FC06
5H607BB01
5H607BB10
5H607CC01
5H607EE28
(57)【要約】
【課題】 原稿の先端が分離ローラ104とピックアップローラ103との間に位置している状態でピックアップローラ103や分離ローラ104を駆動するモータの駆動を位相合わせを行うことなく開始すると、搬送ローラ106を駆動するモータが脱調したりジャムが発生したりしてしまう。
【解決手段】 センサS1が原稿を検知している場合、モータM2の位相合わせが完了した後にモータM1の駆動が開始される。一方、センサS1が原稿を検知していない場合、モータM2の位相合わせが完了する前にモータM1の駆動が開始される。この結果、読取の指示が入力されてから原稿を給送するまでの時間を短くしつつ、ジャムが発生することを抑制できモータM2が脱調することを抑制することができる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が積載される積載部と、
前記積載部に積載された原稿を給送するピックアップローラと、
前記原稿が搬送される搬送方向において前記ピックアップローラよりも下流に位置し、且つ、前記ピックアップローラに隣接する第1搬送ローラと、
前記ピックアップローラと前記第1搬送ローラとの間に設けられ、前記原稿を検知する検知手段と、
前記ピックアップローラ及び前記第1搬送ローラを駆動する第1ステッピングモータと、
前記搬送方向において、前記第1搬送ローラよりも下流に設けられた第2搬送ローラと、
前記第2搬送ローラを駆動する第2ステッピングモータと、
前記第2搬送ローラによって搬送された原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記第2ステッピングモータのロータの位相合わせを行った後に当該第2ステッピングモータの駆動を開始する制御手段であって前記第1ステッピングモータのロータの位相合わせを行うことなく前記第1ステッピングモータの駆動を開始する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記読取手段による原稿の画像の読取を開始する指示が入力されると、前記第2ステッピングモータの位相合わせを開始し、
前記制御手段は、前記検知手段が前記原稿を検知している場合は前記第2ステッピングモータの位相合わせが完了した後に前記第1ステッピングモータの駆動を開始し、前記検知手段が前記原稿を検知していない場合は前記第2ステッピングモータの位相合わせが完了する前に前記第1ステッピングモータの駆動を開始することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記画像読み取り装置は、前記第1ステッピングモータの駆動力を前記第1搬送ローラに伝達する第1ベルトと、前記第2ステッピングモータの駆動力を前記第2搬送ローラに伝達する第2ベルトと、を有し、
前記第1ベルトのテンションの大きさは、前記第2ベルトのテンションの大きさよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第2搬送ローラは、前記第2搬送ローラに隣接することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2ステッピングモータのロータが第1の位相に引き付けられるように当該第2ステッピングモータのコイルに電流を供給した後に、前記第2ステッピングモータのロータが第2の位相に引き付けられるように当該第2ステッピングモータのコイルに電流を供給することにより前記第2ステッピングモータの位相合わせを行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置は、原稿に光を照射し、その反射光を読取部で読み取りガラスを介して検出することによって当該原稿の画像を読み取る。画像読取装置として、原稿給送装置(ADF)により搬送される原稿を読取部で読み取るものがある。
【0003】
特許文献1には、シートを搬送する搬送ローラの駆動にステッピングモータを用いる構成が記載されている。前記特許文献1では、モータの駆動を開始する前にモータの励磁相を切り替えていくことにより回転子の位相を所望の位相に引き付け(位相合わせ)、その後モータの駆動を開始する構成が記載されている。
【0004】
原稿給送装置においては、原稿の読取中に当該原稿を搬送している搬送ローラに当該搬送ローラを駆動するモータの駆動力を伝達するテンションベルトのテンションは、比較的大きい。これは、原稿読取中に搬送ローラが振動したり速度変動したりしないようにするためである。テンションベルトのテンションが大きいほどテンションベルトの劣化が激しくなる。そのため、原稿の読取中に当該原稿の搬送に対する影響が少ない搬送ローラ(ピックアップローラや分離ローラ)に当該搬送ローラを駆動するモータの駆動力を伝達するテンションベルトのテンションは、比較的小さい。
【0005】
モータが駆動する負荷の大きさが比較的小さい場合、位相合わせを行うことなくモータの駆動を開始できることが知られている。即ち、ピックアップローラや分離ローラを駆動するモータの駆動を位相合わせを行うことなく開始することにより、読取の指示が入力されてから原稿を給送するまでの時間を短くすることができることが知られている。なお、分離ローラよりも下流の搬送ローラを駆動するモータにおいては位相合わせが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-207733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7は、原稿の読取中にジャムが発生したことに起因して原稿の給送が停止された状態を示す図である。原稿の読取ジョブが開始される際、原稿の先端は位置150に位置している。しかしながら、原稿の読取中にジャムが発生したことに起因して原稿の給送が停止された場合、ジャム処理後にピックアップローラによって給送される原稿の先端は、分離ローラ104とピックアップローラ103との間(位置150よりも下流)に位置している可能性がある。このような状態で、ピックアップローラ103や分離ローラ104を駆動するモータの駆動を位相合わせを行うことなく開始すると、搬送ローラ106を駆動するモータの位相合わせが完了する前に原稿の先端が搬送ローラ106に到達してしまう可能性がある。この結果、搬送ローラ106を駆動するモータが脱調したりジャムが発生したりしてしまう。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、ジャムの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる画像読取装置は、
原稿が積載される積載部と、
前記積載部に積載された原稿を給送するピックアップローラと、
前記原稿が搬送される搬送方向において前記ピックアップローラよりも下流に位置し、且つ、前記ピックアップローラに隣接する第1搬送ローラと、
前記ピックアップローラと前記第1搬送ローラとの間に設けられ、前記原稿を検知する検知手段と、
前記ピックアップローラ及び前記第1搬送ローラを駆動する第1ステッピングモータと、
前記搬送方向において、前記第1搬送ローラよりも下流に設けられた第2搬送ローラと、
前記第2搬送ローラを駆動する第2ステッピングモータと、
前記第2搬送ローラによって搬送された原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記第2ステッピングモータのロータの位相合わせを行った後に当該第2ステッピングモータの駆動を開始する制御手段であって前記第1ステッピングモータのロータの位相合わせを行うことなく前記第1ステッピングモータの駆動を開始する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記読取手段による原稿の画像の読取を開始する指示が入力されると、前記第2ステッピングモータの位相合わせを開始し、
前記制御手段は、前記検知手段が前記原稿を検知している場合は前記第2ステッピングモータの位相合わせが完了した後に前記第1ステッピングモータの駆動を開始し、前記検知手段が前記原稿を検知していない場合は前記第2ステッピングモータの位相合わせが完了する前に前記第1ステッピングモータの駆動を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジャムの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態における画像読取装置の構成図である。
図2】第1実施形態における画像読取装置の制御構成図である。
図3】原稿Pが給送される様子を示す図である。
図4】原稿Pに後続する原稿P´が給送される様子を示す図である。
図5】モータM1、M2に採用するステッピングモータの構造図である。
図6】搬送される原稿の画像を読み取る際のモータの起動方法を示すフローチャートである。
図7】原稿の読取中にジャムが発生したことに起因して原稿の給送が停止された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の形状及びそれらの相対配置などは、この発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲が以下の実施の形態に限定される趣旨のものではない。
【0013】
〔第1実施形態〕
[画像読取装置]
図1は、原稿給送装置201及び読取装置202を有する画像読取装置200の断面図である。原稿給送装置201は、読取装置202に対して回動可能である。
【0014】
給送部としてのピックアップローラ103は、積載部としてのトレイ102に積載されている原稿101を原稿給送装置201の内部に給送する。分離ローラ104及び105は、ピックアップローラ103により複数の原稿101が同時に給送されることを防ぐために設けられ、ピックアップローラ103に隣接して設けられる。ピックアップローラ103及び分離ローラ104は、モータM1によって駆動される。なお、トレイ102には、トレイ102上の原稿の有無を検出するセンサS0が設けられている。
【0015】
ピックアップローラ103の回転軸は、分離ローラ104の回転軸と揺動アームを介して接続されている。ピックアップローラ103は、トレイ102上の原稿に接触しない退避位置と、トレイ102上の原稿に接触する接触位置と、に揺動アームにより移動可能である。揺動アームは図示しないモータによって駆動される。
【0016】
搬送路に給送された原稿101は、搬送ローラ106、107等によって搬送される。なお、搬送ローラ106はモータM2によって駆動される。
【0017】
ピックアップローラ103と分離ローラ104との間にはセンサS1が設けられ、分離ローラ104と搬送ローラ106との間にはセンサS2が設けられている、さらに、搬送ローラ106と搬送ローラ107との間には、センサS3が設けられている。センサS1、S2、S3については後述する。
【0018】
読取位置には透明なガラス108が配置されており、ガラス108に対して搬送路と逆側には読取部109Aが設けられる。読取部109Aは、LED110、イメージセンサ111及び光学部品群112を有する。イメージセンサ111は、主走査方向に渡り、R(赤)、G(緑)、B(青)の光を受光する複数の画素を有している。
【0019】
読取部109Aは、以下のようにして原稿101の表面(第1面)の画像を読み取る。具体的には、光源としてのLED110は、ガラス108を介して原稿101の表面に光を照射(出射)する。光学部品群112は、ガラス108を介して受信する原稿101からの反射光をイメージセンサ111に導く。イメージセンサ111は、受光する反射光に基づきアナログ画像データを出力する。なお、イメージセンサ111は、主走査方向に渡る1ライン分の画像を同時に読み取る。したがって、原稿101を搬送しながら、複数回、イメージセンサ111により1ライン分の画像を読み取ることで、イメージセンサ111は、原稿101全体を含む画像データを出力することができる。読取部109Aの図示しないA/D変換部は、アナログ画像データをデジタル画像データに変換して画像処理部201(図2)に出力する。
【0020】
読取部109Aの読取位置を通過した原稿101は、読取部109Bの読取位置に向けて搬送される。読み取り部109Bの読取位置には透明なガラス118が配置されており、ガラス118に対して搬送路とは逆側には読取部109Bが設けられている。読取部109Bは、読取部109Aと同様の構成であり、原稿101の裏面(第2面)の画像を読み取る。
【0021】
読取部109Bの読取位置を通過した原稿101は、排紙ローラ120により排紙トレイ121に排出される。
【0022】
<制御構成>
図2は、画像形成装置100の制御構成の例を示すブロック図である。
【0023】
CPU203は、不揮発性メモリ209に格納されているプログラムを実行することで画像読取装置200を制御する。
【0024】
モータM1、M2は、センサS0、S1、S2、S3の出力に応じてCPU203により制御される。
【0025】
操作部202は、ユーザインタフェースを提供する。CPU203は、使用する記録媒体の種類(以下、紙種と称する)等の設定をユーザが行うための操作画面を、操作部202に設けられた表示部に表示するように、操作部202を制御する。
【0026】
読取部109A及び109Bは、デジタル画像データを画像処理部201に出力する。この画像データは、反射光の強度が大きいほど高い数値となる。
【0027】
<給送動作>
図3は、原稿Pが給送される様子を示す図である。退避位置に位置しているピックアップローラ103は、原稿の画像の読みとりを開始する指示が操作部202から入力されると、CPU203によって図3(a)に示す接触位置へと移動する。なお、原稿がトレイ102上に載置される際、原稿の先端は位置150に位置する。
【0028】
図3(b)に示すように、ピックアップローラ103によって給送された原稿Pの先端がセンサS2によって検知されると、CPU203はピックアップローラ103を退避位置へと移動させる。
【0029】
その後、原稿Pは分離ローラ104によって搬送ローラ106へと搬送される。原稿Pの先端がセンサS3によって検知されると、CPU203はモータM1を停止させる。即ち、図3(c)に示すように、ピックアップローラ103と分離ローラ104の駆動が停止される。分離ローラ104にはワンウェイクラッチが設けられており、モータM1が停止した後は、搬送ローラ106によって搬送される原稿Pに連れまわる。
【0030】
図3(d)に示すように、原稿Pの先端がセンサS3によって検知されてから所定時間が経過すると、CPU203はピックアップローラ103を接触位置に移動させる。
【0031】
その後、原稿Pの後端がセンサS1を通過すると、CPU203はモータM1の駆動を開始する。即ち、原稿Pに後続する原稿P´の給送が開始される。
【0032】
図4は、原稿Pに後続する原稿P´が給送される様子を示す図である。図4(a)に示すように、原稿P´の先端が位置150にある状態においては、原稿Pの後端がセンサS1を通過したことが検出される。一方、図4(b)に示すように、給送された原稿Pとの摩擦力により原稿P´が搬送方向に進むと、原稿Pの後端がセンサS2を通過してもセンサS1は原稿P´を検出した状態になる。このような場合、CPU203は、図4(c)に示すように、原稿Pの後端がセンサS2を通過すると、モータM1の駆動を開始する。即ち、原稿Pに後続する原稿P´の給送が開始される。つまり、CPU203は、センサS1、S2のいずれかが、原稿「有」状態から原稿「無」状態に変化すると、モータM1の駆動を開始する。
【0033】
<モータの起動>
図5は、モータM1、M2に採用するステッピングモータの構造図である。ロータ806の周囲を取り囲むように、ステータ805が配置されている。ステータ805はステータポール(以下、ポール)801、802、803、804を有し、それぞれコイルが巻かれている。ポール801にはA相コイルが、ポール803には/A相コイルが巻かれている。ポール802にはB相コイルが、ポール804には/B相コイルが巻かれている。
【0034】
A相に電流を流すとA相に相当するポール801に励磁がかかり、A相に逆向きの電流を流すと/A相に相当するポール803に励磁がかかる。
【0035】
B相に電流を供給するとB相に相当するポール802に励磁がかかり、B相に逆向きの電流を供給すると/B相に相当するポール804に励磁がかかる。
【0036】
図5(a)は、2相励磁モードにおけるロータ806の初期位置を示す図である。A相のポール801及び/B相のポール804を励磁し、ロータ806がポール801及び804に引き寄せられ、その中間の位置で静止する。この状態を所定時間の間、維持し、ロータ806の位置を安定させる。これを前励磁と呼ぶ。
【0037】
この状態から、図5(b)のようにA相のポール801の励磁がOFFすると同時に、/A相に相当するポール803を励磁することで、ロータ806がポール804に引き寄せられる。続いて図5(c)のように、/B相のポール804及び/A相のポール803を励磁することで、ロータ806がポール804及び803に引き寄せられた状態となる。
【0038】
同様に、図5(d)のように、/A相のポール803及びB相のポール802を励磁することで、ロータ806がポール803及び802に引き寄せられた状態となり、更に、図5(e)のように、B相のポール802及びA相のポール801を励磁することで、ロータ806がポール802及び801に引き寄せられた状態となる。この後は、図5(a)の状態に戻り、A相のポール801及び/B相のポール804を励磁することで、ロータ806がポール801及び804に引き寄せられる。
【0039】
このように、コイルを順次2相ずつ励磁することで、図5(a)から図5(e)の状態が繰り返され、ロータ806が時計回りに回転する。この励磁パターンを2相励磁パターンと呼ぶ。
【0040】
本実施形態では、常に図5(a)の状態から回転駆動を開始する。このように、モータドライバ204~207は、CPU201から指示された励磁モードに従って常に決まった励磁パターンで励磁すればよいので、モータドライバの構成が複雑化しない。その一方で、モータの駆動の停止や励磁モードの変更は、励磁パターンが一巡することを待たずに任意のタイミングで行うため、ロータ806のステータ805に対する位相は必ずしも一致しない。前述したように、モータドライバ204~207は、モータの駆動停止後に再度モータの回転駆動を開始する際、ロータ806がどの位相で停止しているかにかかわらず、前述した励磁パターンでモータを励磁する。ステッピングモータの立ち上げは、励磁パターンを遷移させる駆動パルスの周波数を自起動周波数から線形的に増加させることにより行う。そのため、立ち上げ時のロータ806の位相によっては、ロータ806はステータ805の励磁に追従できず、脱調や振動が発生することがある。
【0041】
図5(f)は、モータを2相励磁で駆動し、図5(d)のように、/A相のポール803及びB相のポール802を励磁することで、ロータ806がポール803及び802に引き寄せられた状態となったところで停止したときのロータ806の位相の例を示す図である。
【0042】
この状態から前述した2相励磁の励磁パターンで時計回りに回転させるように駆動しようとすると、まず、A相のポール801及び/B相のポール804を励磁し、ロータ806がポール801及び804に引き寄せられ、その中間の位置に移動することを期待する。しかし、ロータ806がちょうど180°反対の位相にあり、更にメカ駆動系の特徴により、例えばモータの駆動力を伝達するタイミングベルト(不図示)のテンションが高い場合、ロータ806が、時計回りと、半時計回りのどちらへも動かないことが有りうる。
【0043】
この状態から前述した2相励磁の励磁パターンを開始すると、次に、図5(b)のようにA相のポール801の励磁がOFFすると同時に、/A相に相当するポール803を励磁することで、ロータ806がポール804に引き寄せられる。続いて図5(c)のように、/B相のポール804及び/A相のポール803を励磁すると、ロータ806がポール804及び803に引き寄せられる。この結果、ロータ806が反時計回りに動こうとする力が働いた後に、時計回りに動こうとする力が働くことになり、脱調が発生してしまう。
【0044】
これを防止するため、本実施形態では、ステッピングモータの立ち上げを行う前に、ロータ806とステータ805の位相合わせ動作を行う。ここで、位相合わせとは、前述の前励磁を行い図5(a)の励磁を行った後、図5(b)、図5(c)のように、これから行う励磁モードの励磁パターンを1サイクル分実行し、再度、ロータ806が安定する時間を待つ処理を示す。これにより、確実に、これから行う励磁モード(励磁パターン)に対応した励磁開始位相の次の位置、つまり図5(c)の位相で、ステータ805とロータ806の位相を合わせることを言う。
【0045】
本実施例においては、M2はモータからローラを駆動する為に構成されるタイミングベルト(不図示)のテンションが高く、モータ相合わせが必要だが、M1についてはテンションが低いため、モータ相合わせの必要が無い。タイミングベルトは、モータの駆動力を負荷に伝達するベルトとして機能する。テンションとは、ベルトの張架力に対応する。
【0046】
図6は、本実施形態における搬送される原稿の画像を読み取る際のモータの起動方法を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートの処理は、搬送される原稿の画像を読み取る指示が入力されるとCPU203によって実行される。
【0047】
CPU203は、S101において、モータM2の位相合わせを開始する。
【0048】
S102において、センサS1が原稿を検知している場合は、処理はS104に進む。
【0049】
また、S102において、センサS1が原稿を検知していない場合は、S103において、CPU203はトレイ102上の原稿の給送を開始する。
【0050】
S104において、モータM2の位相合わせが完了すると、S105において、CPU203は、モータM2の駆動を開始する。
【0051】
S106において、モータM1が駆動中である場合は、CPU203は、このフローチャートの処理を終了する。
【0052】
一方、S106において、モータM1が駆動中でない場合は、CPU203は、トレイ102上の原稿の給送を開始し、このフローチャートの処理を終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態では、搬送される原稿の画像を読み取る指示が入力されると、モータM2の位相合わせが開始される。センサS1が原稿を検知している場合、即ち、原稿の先端がピックアップローラ103と分離ローラ104との間に位置している場合は、モータM2の位相合わせが完了した後にモータM1の駆動が開始される(給送が開始される)。一方、センサS1が原稿を検知していない場合、即ち、原稿の先端が位置150に位置している場合は、モータM2の位相合わせが完了する前にモータM1の駆動が開始される(給送が開始される)。この結果、読取の指示が入力されてから原稿を給送するまでの時間を短くしつつ、ジャムが発生することを抑制できモータM2が脱調することを抑制することができる。なお、読取の指示が入力されたことに起因して原稿の給送が開始される場合は原稿の先端は位置150に位置している。一方、ジャムが発生し、且つ、当該ジャムが処理された後に原稿の給送が再開される場合は、原稿の先端がピックアップローラ103と分離ローラ104との間に位置していることがある。
【0054】
なお、本実施形態では、CPU203がモータM1、M2を制御したが、この限りではない。例えば、モータM1を制御するモータ制御部とモータM2を制御するモータ制御部が別個に設けられていても良く、モータM1を制御するモータ制御部とモータM2を制御するモータ制御部をまとめて制御手段と呼んでも良い。
【符号の説明】
【0055】
102 トレイ
103 ピックアップローラ
104、105 分離ローラ
106 搬送ローラ
111 イメージセンサ
203 CPU
M1、M2 モータ
S1 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7