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特開2022-191640凝縮器、空調機、露光装置、及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191640
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】凝縮器、空調機、露光装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20221221BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G03F7/20 501
F25B1/00 399Y
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099976
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】中道 亨
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197BA02
2H197BA03
2H197BA09
2H197BA11
2H197CA05
2H197CB16
2H197CC16
2H197CD12
2H197CD13
2H197DB16
2H197DB17
2H197HA03
2H197JA07
(57)【要約】
【課題】調整弁において動作回数が増加しても弁孔の開度の調整における精度の低下を抑制することができる凝縮器を提供する。
【解決手段】本発明に係る凝縮器は、第1の流体19と第2の流体21との間で熱交換を行うことで第1の流体19の温度を低下させる凝縮部17と、凝縮部17へ流れる第2の流体21の流量を調整する調整弁14と、凝縮部17へ流れる第2の流体21の温度を調整する温度調整部18と、凝縮部17から流れる第1の流体19の所定の物理量を計測する計測部16と、計測部16によって計測される第1の流体19の所定の物理量が所定の範囲を逸脱した際に調整弁14の開度を調整するように調整弁14を動作させると共に、動作の回数をカウントする制御部23、24であって、調整弁14の動作の回数が第1の回数以上になった際に、温度調整部18によって第2の流体21の温度を調整させる制御部23、24とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体と第2の流体との間で熱交換を行うことで該第1の流体の温度を低下させる凝縮部と、
該凝縮部へ流れる前記第2の流体の流量を調整する調整弁と、
前記凝縮部へ流れる前記第2の流体の温度を調整する温度調整部と、
前記凝縮部から流れる前記第1の流体の所定の物理量を計測する計測部と、
前記計測部によって計測される前記第1の流体の前記所定の物理量が所定の範囲を逸脱した際に前記調整弁の開度を調整するように前記調整弁を動作させると共に、該動作の回数をカウントする制御部であって、前記調整弁の該動作の回数が第1の回数以上になった際に、前記温度調整部によって前記第2の流体の前記温度を調整させる制御部と、
を備えることを特徴とする凝縮器。
【請求項2】
前記第2の流体の前記温度を計測する温度センサを備え、
前記制御部は、前記調整弁の前記動作の回数が前記第1の回数以上になった際に、前記温度センサによって計測される前記第2の流体の前記温度が所定の温度以下であれば、前記温度調整部によって前記第2の流体の前記温度を調整させることを特徴とする請求項1に記載の凝縮器。
【請求項3】
前記制御部は、前記調整弁の前記動作の回数が前記第1の回数以上になった際に、前記温度センサによって計測される前記第2の流体の前記温度が前記所定の温度より大きければ、所定の通知を行うと共に、前記凝縮器の動作を停止させることを特徴とする請求項2に記載の凝縮器。
【請求項4】
前記調整弁は、弁体に接続されている第1の歯車に対して噛合領域において噛合している第2の歯車を回転させることに伴って該第1の歯車が回転することで、前記調整弁の前記開度を調整するように構成されており、
前記制御部は、前記第2の流体の温度調整を行う際に、前記第1の歯車及び前記第2の歯車それぞれの前記噛合領域を形成する歯を変更するように前記第2の歯車を回転させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の凝縮器。
【請求項5】
前記制御部は、前記調整弁の前記動作の回数が前記第1の回数以上になった際に、所定の通知を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の凝縮器。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2の流体の温度調整を行った後、前記調整弁の前記動作の回数が前記第1の回数より多い第2の回数以上になった際に、所定の通知を行うと共に、前記凝縮器の動作を停止させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の凝縮器。
【請求項7】
前記所定の物理量は、圧力であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の凝縮器。
【請求項8】
前記温度調整部は、前記第2の流体を加温するヒーターであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の凝縮器。
【請求項9】
前記温度調整部は、前記凝縮部からの前記第2の流体の排出路と、前記第2の流体の供給部への前記第2の流体の回収路と、該供給部からの前記第2の流体の供給路とに接続される三方弁であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の凝縮器。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の凝縮器と、
前記第1の流体と第3の流体との間で熱交換を行うことで該第3の流体の温度を低下させる蒸発器と、
を備えることを特徴とする冷凍システム。
【請求項11】
前記第3の流体の温度を調整する空調機であって、
前記第3の流体の前記温度を低下させる請求項10に記載の冷凍システムを備えることを特徴とする空調機。
【請求項12】
原版に設けられたパターンを基板に転写するように前記基板を露光する露光装置であって、
該露光装置の露光空間に前記第3の流体を供給する請求項11に記載の空調機を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の露光装置によって基板を露光する工程と、
露光された前記基板を現像する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項14】
第1の流体と第2の流体との間で熱交換を行うことで該第1の流体の温度を低下させる凝縮部と、該凝縮部へ流れる前記第2の流体の流量を調整する調整弁であって、該調整弁は、前記第1の流体の所定の物理量が所定の範囲を逸脱した際に該調整弁の開度を調整するように動作する、調整弁とを備える凝縮器において前記調整弁の前記動作を制御する方法であって、
前記調整弁の前記動作の回数をカウントするステップと、
該カウントされた調整弁の動作の回数が第1の回数以上であるか判定するステップと、
前記カウントされた調整弁の動作の回数が該第1の回数以上であると判定された際に、前記第2の流体の温度を調整するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記調整するステップは、
前記カウントされた調整弁の動作の回数が前記第1の回数以上であると判定された際に、前記第2の流体の前記温度を計測するステップと、
該計測された第2の流体の温度が所定の温度以下であるか判定するステップと、
前記計測された第2の流体の温度が該所定の温度以下であると判定された際に、前記第2の流体の前記温度を調整するステップと、
を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記計測された第2の流体の温度が前記所定の温度より大きいと判定された際に、所定の通知を行うと共に、前記凝縮器の動作を停止させるステップを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記調整弁は、弁体に接続されている第1の歯車に対して噛合領域において噛合している第2の歯車を回転させることに伴って該第1の歯車が回転することで、前記調整弁の前記開度を調整するように構成されており、
前記方法は、前記調整するステップを行う際に、前記第1の歯車及び前記第2の歯車それぞれの前記噛合領域を形成する歯を変更するように前記第2の歯車を回転させるステップを含むことを特徴とする請求項14乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記調整弁の前記動作の回数が前記第1の回数以上になった際に、所定の通知を行うステップを含むことを特徴とする請求項14乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記調整するステップを行った後、前記調整弁の前記動作の回数をカウントするステップと、
前記カウントされた調整弁の動作の回数が前記第1の回数より多い第2の回数以上であるか判定するステップと、
前記カウントされた調整弁の動作の回数が該第2の回数以上であると判定された際に、所定の通知を行うと共に、前記凝縮器の動作を停止させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項14乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝縮器に関し、特に空調機に用いられる凝縮器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の流量を調整するために、当該流体が通過する弁孔を当該弁孔に形成された弁座に対して弁体を着脱させることによって開閉する調整弁が用いられている。
そのような調整弁では、動作、すなわち当該弁体の着脱を繰り返すことによって当該弁座の摩耗が進行してしまい、当該弁孔の開閉における制御性が低下する虞があることが知られている。
【0003】
特許文献1は、弁孔を開放するために弁体を移動させる位置を累積動作回数に応じて変更することで、弁孔の開閉における制御性の低下を抑制する調整弁を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-205484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、凝縮器における制水弁では、通常動作において弁孔を完全に閉鎖することは無く、すなわち開度が略一定である弁孔の当該開度を微調整する制御が行われる。
そのため、そのような制水弁としては、互いに噛合するモータ歯車と弁体に接続されている弁体歯車とを設け、当該モータ歯車を回転させることによって当該弁体歯車が回転することで、弁孔の開度を調整する調整弁がよく用いられる。
【0006】
すなわちそのような調整弁では、弁孔の開度が所定の大きさを中心として微調整されるように、モータ歯車と弁体歯車との間の噛合領域のまわりで双方が微少な角度だけ回転する動作が繰り返される。
そのため、そのような調整弁では、動作の回数が増加するにつれて、噛合領域において当該モータ歯車及び当該弁体歯車それぞれの歯が摩耗してしまう。
【0007】
そして、噛合領域において双方の歯が摩耗してしまうと、モータ歯車の回転に応じた弁体歯車の回転量のばらつきが大きくなってしまい、弁孔の開度の調整精度が低下することとなる。
そこで本発明は、調整弁において動作回数が増加しても弁孔の開度の調整における精度の低下を抑制することができる凝縮器を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る凝縮器は、第1の流体と第2の流体との間で熱交換を行うことで第1の流体の温度を低下させる凝縮部と、凝縮部へ流れる第2の流体の流量を調整する調整弁と、凝縮部へ流れる第2の流体の温度を調整する温度調整部と、凝縮部から流れる第1の流体の所定の物理量を計測する計測部と、計測部によって計測される第1の流体の所定の物理量が所定の範囲を逸脱した際に調整弁の開度を調整するように調整弁を動作させると共に、動作の回数をカウントする制御部であって、調整弁の動作の回数が第1の回数以上になった際に、温度調整部によって第2の流体の温度を調整させる制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、調整弁において動作回数が増加しても弁孔の開度の調整における精度の低下を抑制することができる凝縮器を提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一実施形態に係る凝縮器を備える冷凍システムの模式的構成図及び当該凝縮器の動作を説明するためのブロック図。
図2】第一実施形態に係る凝縮器に設けられている調整弁の動作機構を示す模式図。
図3】第一実施形態に係る凝縮器における動作を示すフローチャート。
図4】第二実施形態に係る凝縮器を備える冷凍システムの模式的構成図及び当該凝縮器の動作を説明するためのブロック図。
図5】第三実施形態に係る凝縮器における動作を示すフローチャート。
図6】本実施形態に係る凝縮器を備える露光装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本実施形態に係る凝縮器を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお以下に示す図面は、本実施形態を容易に理解できるようにするために、実際とは異なる縮尺で描かれている。
[第一実施形態]
図1(a)は、第一実施形態に係る凝縮器を備える冷凍システム100の模式的構成図を示している。
【0012】
図1(a)に示されているように、冷凍システム100では、蒸発器11において冷媒19(第1の流体)と空気13(第3の流体)とが互いに熱交換を行う。なお、空気13は液体であってもよい。
具体的には、空気13と冷媒19との間で熱交換が行われることで、温度センサ12によって計測される空気13の温度が所定の温度まで低下するように、膨張弁10によって冷媒19の流量が調整される。
【0013】
そして流量が調整された冷媒19は、低温低圧の液体状態に変化した後に蒸発器11を通過することで、空気13との間において熱交換を行う。
次に、空気13との間において熱交換を行った冷媒19は、圧縮器15において高温高圧の気体状態に変化する。
【0014】
また、供給部60からは例えば冷却水である液体21(第2の流体)が供給され、高温高圧の気体状態に変化した冷媒19は、凝縮部17において液体21との間において熱交換を行うことで、低温高圧の液体状態に変化した後、再び膨張弁10に進行する。
一方、凝縮部17において冷媒19との間において熱交換を行うことで高温になった液体52は、凝縮部17から排出された後、供給部60によって回収される。以降、上記のサイクルが繰り返される。
【0015】
ここで調整弁制御部23は、凝縮部17において液体21との間で熱交換を行った冷媒19の圧力が目標の大きさになるように、冷媒19の圧力を監視する圧力センサ16からの計測値に基づいて調整弁14の開度を制御することで液体21の流量を調整する。
【0016】
本実施形態に係る凝縮器は、調整弁14、圧力センサ16(計測部)、凝縮部17、ヒーター18(温度調整部)、温度センサ20、調整弁制御部23(制御部)及び加温制御部24(制御部)から構成される。
【0017】
図2(a)は、本実施形態に係る凝縮器に設けられている調整弁14の動作機構を示す模式図である。
【0018】
図2(a)に示されているように、調整弁14では、モータ歯車27(第2の歯車)と不図示の弁体に接続されている弁体歯車28(第1の歯車)とが噛合領域14aにおいて互いに噛み合う構造が形成されている。
そして、調整弁制御部23から出力される開度信号に応じて、モータ歯車27が所定の位置まで回転することによって弁体歯車28が所定の位置まで回転することで、弁体が移動し、調整弁14の開度が変更される。
【0019】
冷凍システム100では、上記のサイクルを繰り返す際に、調整弁14を流れる液体21の流量や温度に大きい変動は発生しない。
従って、モータ歯車27と弁体歯車28とが噛合領域14aにおいて噛み合いながら、それぞれ微少な回転をするのみであるように、調整弁14は、略同一の開度で動作し続ける、すなわち噛合領域14aを変化させずに動作することとなる。
【0020】
そのため調整弁14が動作し続けると、噛合領域14aを大きく変えないままモータ歯車27と弁体歯車28とがそれぞれ微少な回転角範囲での回転を行うことで、双方の歯において摩耗が進行してしまう。
図2(b)は、噛合領域14aにおいて歯の摩耗が進行したときのモータ歯車27及び弁体歯車28を示している。
【0021】
そして、モータ歯車27及び弁体歯車28それぞれにおいて摩耗部29a及び29bが形成されると、噛合領域14aにおいてモータ歯車27と弁体歯車28とが互いに噛み合わなくなり、調整弁14が動作しなくなってしまう。
【0022】
本実施形態に係る凝縮器において、調整弁14の開度は、凝縮部17における液体21の流量の大きさに対応している。
また、凝縮部17における液体21によって冷媒19を冷却する能力は、液体21の流量と温度とに依存することになる。
換言すると、冷媒19の圧力値は、液体21の流量と温度とによって決定され、すなわち、液体21の温度が変更されると、それに応じて液体21の流量を変更するように調整弁14の開度が調整されることで、冷媒19の圧力値が維持されることとなる。
【0023】
そこで本実施形態に係る凝縮器では、調整弁14の上記のような動作不能を抑制するために、以下に示すように、所定のタイミングにおいて調整弁14を流れる液体21をヒーター18によって加温すると共に、調整弁14の開度を変更する。
【0024】
これにより、モータ歯車27と弁体歯車28とがそれぞれ回転することで、モータ歯車27及び弁体歯車28それぞれが、摩耗部29a及び29bが形成されている歯とは異なる歯で噛合領域14aを新たに形成することができる。
図2(c)は、そのようにモータ歯車27と弁体歯車28とがそれぞれ回転したときのモータ歯車27及び弁体歯車28を示している。
【0025】
図1(b)は、本実施形態に係る凝縮器の動作を説明するためのブロック図を示している。
【0026】
図1(b)に示されているように、調整弁制御部23は、調整弁14に出力する調整弁開度34と、出力した調整弁開度34で動作した調整弁14の弁動作回数31とを記憶する記憶手段22を有している。
そして調整弁制御部23は、記憶手段22において記憶されている情報、すなわち調整弁開度34及び弁動作回数31を加温制御部24に送信する。
【0027】
加温制御部24は、調整弁制御部23から受信した弁動作回数31が所定の動作回数以上になった際に、設けられている判断部32によって、設けられている操作部33への制御出力をオンにする。
そして操作部33への制御出力がオンにされたことに伴って、操作部33は、調整弁14の開度を現在の調整弁開度34から所定の開度まで大きくするために、ヒーター18の出力を増大させる。
なお、ここでいう所定の開度とは、例えば現在の調整弁開度34に対して+5%だけ増大した開度である。
【0028】
これにより、出力が増大したヒーター18が液体21を加温すると、圧力センサ16によって計測される冷媒19の圧力値は減少するため、調整弁制御部23は、調整弁開度34が増大するように調整弁14をさらに開放させる。
そして、調整弁開度34が当該所定の開度に到達すると、操作部33は、ヒーター18の出力の増大を終了することで、ヒーター18の出力が維持される。
【0029】
また判断部32は、液体21の温度を検出する温度センサ20からの計測値に基づいて、ヒーター18によって加温された液体21の温度を監視している。
そして、液体21の温度が限界温度まで上昇した場合には、調整弁開度34が限界開度に到達した状態であり、すなわち調整弁開度34をそれ以上大きくすることはできないため、ヒーター18の出力の増大は行われず、ヒーター18の出力が維持される。
【0030】
図3は、本実施形態に係る凝縮器における動作を示すフローチャートである。なお図3に示されるフローチャートにおける各ステップの動作は、調整弁制御部23または加温制御部24によって行われる。
【0031】
まず、本実施形態に係る凝縮器の動作が開始されると、所定の開度に調整された調整弁14の動作回数をカウントする(ステップS1)。
ここで調整弁14は、圧力センサ16によって計測された冷媒19の圧力が所定の閾値を超えたとき、換言すると上限値と下限値との間の所定の範囲を逸脱したときに、液体21の流量を調整するように1回動作するとする。
【0032】
次に、調整弁14の動作回数が所定の回数(第1の回数)、例えば8000万回以上になったか判定する(ステップS2)。
ここで所定の回数は、例えば調整弁14の寿命が5年であったとき、その半分の2.5年において想定される調整弁14の動作回数から設定される。
【0033】
もし、調整弁14の動作回数が8000万回未満であると判定した場合には(ステップS2のNo)、ステップS1に戻り、調整弁14の動作回数のカウントを継続する。
一方、調整弁14の動作回数が8000万回以上であると判定した場合には(ステップS2のYes)、次に液体21の温度が所定の温度、例えば26℃以下か判定する(ステップS3)。
ここでいう所定の温度とは、それに対応する調整弁14の調整弁開度34が限界値、すなわち調整弁14をそれ以上開放することができない温度である。
【0034】
もし、液体21の温度が26℃より大きいと判定した場合には(ステップS3のNo)、調整弁14の交換を通知すると共に、本実施形態に係る凝縮器ひいては冷凍システム100の動作を停止し(ステップS9)、処理を終了する。
一方、液体21の温度が26℃以下であると判定した場合には(ステップS3のYes)、液体21を加温する(ステップS4)。
【0035】
次に、液体21の加温に伴って調整弁14の開度を増大させ(ステップS5)、調整弁14の開度が所定の開度、例えば現在の開度に対して+5%まで増大したか判定する(ステップS6)。
【0036】
もし、調整弁14の開度が現在の開度に対して+5%未満であると判定した場合には(ステップS6のNo)、ステップS3に戻り、液体21の温度が26℃以下か再び判定する。
一方、調整弁14の開度が現在の開度に対して+5%以上になったと判定した場合には(ステップS6のYes)、調整弁14の動作回数のカウントを再び開始する(ステップS7)。
【0037】
そして、調整弁14の動作回数が所定の回数(第2の回数)、例えば1億6000万回以上になったか判定する(ステップS8)。
ここで所定の回数は、例えば調整弁14の寿命が5年であったとき、その5年において想定される調整弁14の動作回数から設定される。
【0038】
もし、調整弁14の動作回数が1億6000万回未満であると判定した場合には(ステップS8のNo)、ステップS7に戻り、調整弁14の動作回数のカウントを継続する。
一方、調整弁14の動作回数が1億6000万回以上であると判定した場合には(ステップS8のYes)、調整弁14の交換を通知すると共に、本実施形態に係る凝縮器ひいては冷凍システム100の動作を停止し(ステップS9)、処理を終了する。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る凝縮器では、調整弁14の動作回数が所定の回数以上であり、且つ液体21の温度が所定の温度以下であるときに、ヒーター18を用いて液体21を加温させる制御を行う。
これにより調整弁14の開度が変更されるため、モータ歯車27及び弁体歯車28それぞれが、摩耗部29a及び29bが形成されている歯とは異なる歯で噛合領域14aを新たに形成することができる。
【0040】
なお、上記では一例として、1回だけ、すなわち寿命の半分の動作回数をカウントしたときのみにおいて調整弁14の開度を変更した後、動作回数が寿命に到達すると調整弁14を交換するようにしているが、これに限られない。
すなわち、調整弁14の開度を変更する動作回数を別の値に設定してもよく、調整弁14の開度を複数回にわたって段階的に変更しても構わない。
【0041】
また上記では、調整弁14の開度を変化するために、液体21を加温する、すなわち液体21の温度を上昇させるためのヒーター18を設けているが、これに限らず、液体21の温度を下降させるためのクーラーを設けても構わない。
また上記では、冷凍システム100における凝縮器を用いて本実施形態を説明しているが、これに限らず空気13の温度を上昇させる加熱システムにも本実施形態を適用することができる。
【0042】
また上記では、凝縮部17において液体21との間で熱交換を行った冷媒19の圧力が目標の大きさになるように、冷媒19の圧力を監視する圧力センサ16を設け、圧力センサ16からの計測値に基づいて調整弁14の開度を制御しているが、これに限られない。
例えば、凝縮部17において液体21との間で熱交換を行った冷媒19の温度又は流量が目標の大きさになるように、冷媒19の温度又は流量を監視するセンサを設け、当該センサからの計測値に基づいて調整弁14の開度を制御しても構わない。
換言すると、本実施形態に係る凝縮器では、熱交換を行った冷媒19の所定の物理量が目標の大きさになるように、冷媒19の当該物理量を計測する計測部を設け、当該計測部からの計測値に基づいて調整弁14の開度を制御しても構わない。
【0043】
また上記では、モータ歯車27及び弁体歯車28から構成される調整弁14を用いた構成について説明しているが、これに限られない。
例えば、別の歯の噛合構造を用いた調整弁や、動作に伴って摩耗が生じる別の機械的結合構造を用いた調整弁にも、本実施形態を適用することができる。
【0044】
[第二実施形態]
図4(a)は、第二実施形態に係る凝縮器を備える冷凍システム200の模式的構成図を示している。
なお本実施形態に係る凝縮器は、ヒーター18の代わりに凝縮部17からの液体52の排出路において三方弁51を設けていること以外は、第一実施形態に係る凝縮器と同一の構成であるため、同一の部材には同一の符番を付して、説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係る凝縮器では、図4(a)に示されているように、三方弁51(加温部)が、凝縮部17からの液体52の排出路と、供給部60への液体52の回収路と、供給部60からの液体21の供給路に接続される合流路とに接続するように設けられている。
【0046】
すなわち本実施形態に係る凝縮器では、凝縮部17から排出された高温の液体52(第2の流体)を、三方弁51によって、供給部60への液体52の回収路と、供給部60からの液体21の供給路とに分配することができる。
これにより、凝縮部17から排出された高温の液体52の少なくとも一部を、供給部60からの供給路を流れる液体21に混合させることで、凝縮部17へ進行する液体21を加温することができる。
【0047】
図4(b)は、本実施形態に係る凝縮器の動作を説明するためのブロック図を示している。
なお本実施形態に係る凝縮器では、三方弁51の開度の初期状態として、供給部60からの液体21の供給路に接続される合流路に対しては全閉になっている一方で、供給部60への液体52の回収路に対しては全開になっている。
【0048】
図4(b)に示されているように、調整弁制御部23は、調整弁14に出力する調整弁開度34と、出力した調整弁開度34で動作した調整弁14の弁動作回数31とを記憶する記憶手段22を有している。
そして調整弁制御部23は、記憶手段22において記憶されている情報、すなわち調整弁開度34及び弁動作回数31を加温制御部24に送信する。
【0049】
加温制御部24は、調整弁制御部23から受信した弁動作回数31が所定の動作回数以上になった際に、設けられている判断部53によって、設けられている操作部54への制御出力をオンにする。
そして操作部54への制御出力がオンにされたことに伴って、操作部54は、調整弁14の開度を現在の調整弁開度34から所定の開度まで大きくするために、三方弁51の開度を液体21の供給路への合流路へ向けて変更させる。
なお、ここでいう所定の開度とは、例えば現在の調整弁開度34に対して+5%だけ増大した開度である。
【0050】
これにより、当該合流路を介して供給部60からの液体21の供給路へ合流した液体52が液体21を加温することで、圧力センサ16によって計測される冷媒19の圧力値は減少する。
そのため、調整弁制御部23は、調整弁開度34が増大するように調整弁14をさらに開放させる。
そして、調整弁開度34が当該所定の開度に到達すると、操作部54は、三方弁51の開度の変更を終了することで、三方弁51の開度が維持される。
【0051】
また判断部53は、液体21の温度を検出する温度センサ20からの計測値に基づいて、三方弁51の開度の変更によって加温された液体21の温度を監視している。
そして、液体21の温度が限界温度まで上昇した場合には、調整弁開度34が限界開度に到達した状態であり、すなわち調整弁開度34をそれ以上大きくすることはできないため、三方弁51の開度の変更は行われず、三方弁51の開度が維持される。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る凝縮器では、調整弁14の動作回数が所定の回数以上であり、且つ液体21の温度が所定の温度以下であるときに、三方弁51を用いて液体21を加温させる制御を行う。
これにより調整弁14の開度が変更されるため、モータ歯車27及び弁体歯車28それぞれが、摩耗部29a及び29bが形成されている歯とは異なる歯で噛合領域14aを新たに形成することができる。
【0053】
[第三実施形態]
図5は、第三実施形態に係る凝縮器における動作を示すフローチャートである。
なお本実施形態に係る凝縮器は、第一又は第二実施形態に係る凝縮器と同一の構成であるため、同一の部材には同一の符番を付して、説明を省略する。
【0054】
まず、本実施形態に係る凝縮器の動作が開始されると、所定の開度に調整された調整弁14の動作回数をカウントする(ステップS11)。
ここで調整弁14は、圧力センサ16によって計測された冷媒19の圧力が所定の閾値を超えたとき、換言すると上限値と下限値との間の所定の範囲を逸脱したときに、液体21の流量を調整するように1回動作するとする。
【0055】
次に、調整弁14の動作回数が所定の回数、例えば8000万回以上になったか判定する(ステップS12)。
ここで所定の回数は、例えば調整弁14の寿命が5年であったとき、その半分の2.5年において想定される調整弁14の動作回数から設定される。
【0056】
もし、調整弁14の動作回数が8000万回未満であると判定した場合には(ステップS12のNo)、ステップS11に戻り、調整弁14の動作回数のカウントを継続する。
一方、調整弁14の動作回数が8000万回以上であると判定した場合には(ステップS12のYes)、次に液体21の温度が所定の温度、例えば26℃以下か判定する(ステップS13)。
【0057】
もし、液体21の温度が26℃より大きいと判定した場合には(ステップS13のNo)、調整弁14の開度が限界値に到達している。そのため、調整弁14の交換を通知すると共に、本実施形態に係る凝縮器ひいては冷凍システムの動作を停止し(ステップS20)、処理を終了する。
一方、液体21の温度が26℃以下であると判定した場合には(ステップS13のYes)、液体21を加温する(ステップS14)。
【0058】
次に、液体21の加温に伴って調整弁14の開度を増大させ(ステップS15)、調整弁14の開度が所定の開度、例えば現在の開度に対して+5%まで増大したか判定する(ステップS16)。
【0059】
もし、調整弁14の開度が現在の開度に対して+5%未満であると判定した場合には(ステップS16のNo)、ステップS13に戻り、液体21の温度が26℃以下か再び判定する。
一方、調整弁14の開度が現在の開度に対して+5%以上になったと判定した場合には(ステップS16のYes)、調整弁14の交換を通知した後(ステップS17)、調整弁14の動作回数のカウントを再び開始する(ステップS18)。
【0060】
そして、調整弁14の動作回数が所定の回数、例えば1億6000万回以上になったか判定する(ステップS19)。
ここで所定の回数は、例えば調整弁14の寿命が5年であったとき、その5年において想定される調整弁14の動作回数から設定される。
【0061】
もし、調整弁14の動作回数が1億6000万回未満であると判定した場合には(ステップS19のNo)、ステップS18に戻り、調整弁14の動作回数のカウントを継続する。
一方、調整弁14の動作回数が1億6000万回以上であると判定した場合には(ステップS19のYes)、調整弁14の交換を通知すると共に、本実施形態に係る凝縮器ひいては冷凍システムの動作を停止し(ステップS20)、処理を終了する。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る凝縮器では、調整弁14の動作回数が所定の回数以上であり、且つ液体21の温度が所定の温度以下であるときに、液体21を加温させる制御を行う。
これにより調整弁14の開度が変更されるため、モータ歯車27及び弁体歯車28それぞれが、摩耗部29a及び29bが形成されている歯とは異なる歯で噛合領域14aを新たに形成することができる。
【0063】
また本実施形態に係る凝縮器では、上記のステップS17において調整弁14の交換が通知された後、当該通知は継続される。
これにより、上記のステップS20において調整弁14の動作回数が寿命に到達する前に、作業者は、任意のタイミングで調整弁14の交換を実施することができる。
【0064】
以上、好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0065】
[露光装置]
図6は、本実施形態に係る凝縮器を備える露光装置900の構成図を示している。
【0066】
露光装置900は、ランプ点灯装置401、照明光学系402、スリット403、結像光学系404、原版ステージ405、投影光学系406、基板ステージ407及び空調機500を備えている。
【0067】
ランプ点灯装置401は、高圧水銀ランプ等の紫外線光を発する光源である。
照明光学系402は、第1折り曲げミラー501、第1コンデンサレンズ502、ハエノ目レンズ503、第2コンデンサレンズ504及び第2折り曲げミラー505を有している。
原版ステージ405は、原版Mを保持するマスクステージであり、図6中に示したY軸方向に駆動することができる。
【0068】
投影光学系406は、原版M上に描画されたパターンを感光剤が塗布された基板W上に投影転写するための投影光学系である。
なお、露光装置900では、オフナー(Offner)型光学系による投影光学系406を用いている。
オフナー型光学系の場合、良好な像領域を確保するために原版Mは円弧形状で照射される。また、基板Wへ到達する露光光の照射形状も円弧形状となっている。
原版Mを透過した光は、台形ミラー601、凹面ミラー602、凸面ミラー603、凹面ミラー602、台形ミラー601の順に反射した後に、基板Wに到達し、原版M上のパターンが基板W上に転写される。
【0069】
基板ステージ407は、基板Wを保持するウェハステージであり、原版ステージ405と同期させてY方向に駆動することにより基板Wの露光が行われる。
基板ステージ407は、Y方向に加えてX方向にも駆動することが可能であり、基板W上に複数のパネルを露光する場合にはX方向及びY方向に基板ステージ407を駆動させて露光を行う。
【0070】
ランプ点灯装置401から出射した露光光は、照明光学系402、スリット403及び結像光学系404を通過した後、原版ステージ405上に載置された原版Mを照射する。
そして、原版Mを透過した露光光は、投影光学系406を通過して、基板ステージ407に載置された基板Wを照射し、基板W上の露光領域に対して露光が行われる。
【0071】
また空調機500は、露光装置900の露光空間内の空調を行うために、温度が調整された空気13を当該露光空間内に供給する機能を有している。
そして、空調機500に設けられている第一乃至第三実施形態のいずれかに係る凝縮器を備える冷凍システム100によって空気13の冷却が行われる。
【0072】
[物品の製造方法]
本実施形態に係る物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。
本実施形態に係る物品の製造方法は、基板に塗布された感光剤に上記に示した露光装置900を用いて潜像パターンを形成するステップ(基板を露光する露光ステップ)を含む。
また、本実施形態に係る物品の製造方法は、該露光ステップで潜像パターンが形成された基板を現像する現像ステップ(加工ステップ)を含む。
更に、本実施形態に係る物品の製造方法は、該現像ステップで現像された基板に対して行う他の周知の製造ステップ(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、感光剤剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。
【0073】
本実施形態に係る物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。
【符号の説明】
【0074】
14 調整弁
16 圧力センサ(計測部)
17 凝縮部
18 ヒーター(温度調整部)
19 冷媒(第1の流体)
21 液体(第2の流体)
23 調整弁制御部(制御部)
24 加温制御部(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6