(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191641
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 7/24 20060101AFI20221221BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20221221BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221221BHJP
B60L 58/15 20190101ALI20221221BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B60L7/24 D
B60L15/20 K
B60L50/60
B60L58/15
B60T8/17 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099978
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】土田 康平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 傑
【テーマコード(参考)】
3D246
5H125
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246BA05
3D246BA08
3D246DA01
3D246EA05
3D246GA22
3D246GB39
3D246GC14
3D246HA04A
3D246HA32A
3D246HA35A
3D246HA86A
3D246HA94A
3D246JA12
3D246JB53
3D246LA02Z
3D246LA12Z
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC14
5H125BE05
5H125CB03
5H125CB07
5H125EE27
5H125EE44
5H125EE53
(57)【要約】
【課題】回生ブレーキによって、より早く自動車を減速できるブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】バッテリ102から電力を供給される電動機103により駆動輪105を駆動し、バッテリ102を充電しつつ電動機103の回生ブレーキにより制動力を得る自動車100のブレーキ制御装置1において、変速処理部22により、回生ブレーキの作動時に、駆動輪105の回転数に対する電動機103の回転数が増大させられるため、回生ブレーキによって、より早く自動車100を減速できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから電力を供給される電動機により駆動輪を駆動し、前記バッテリを充電しつつ前記電動機の回生ブレーキにより制動力を得る自動車のブレーキ制御装置であって、
前記回生ブレーキの作動時に、前記駆動輪の回転数に対する前記電動機の回転数を増大させる変速処理部を備えたブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記回生ブレーキの作動時に、前記バッテリに充電できない余剰の電力を負荷に供給する過充電防止部をさらに備えた、請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記自動車のサービスブレーキにより制動力を得ることができないときに、前記回生ブレーキを作動させる非常ブレーキ作動部をさらに備えた、請求項1又は2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記回生ブレーキの作動時に、前記自動車の減速度を閾値以下に維持する減速度制御部をさらに備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリから電力を供給される電動機により駆動輪を駆動し、バッテリを充電しつつ電動機の回生ブレーキにより制動力を得る自動車が提案されている。例えば、特許文献1には、自動車のサービスブレーキにより制動力を得ることができないときに、回生ブレーキを作動させる装置が開示されている。特許文献1の装置では、回生ブレーキの作動時に、バッテリに充電できない余剰の電力が負荷に供給され、熱エネルギーに変換され、消費される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような技術では、サービスブレーキにより制動力を得ることが不可能なときに、回生ブレーキによって、より早く自動車を減速できる技術が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、回生ブレーキによって、より早く自動車を減速できるブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、バッテリから電力を供給される電動機により駆動輪を駆動し、バッテリを充電しつつ電動機の回生ブレーキにより制動力を得る自動車のブレーキ制御装置であって、回生ブレーキの作動時に、駆動輪の回転数に対する電動機の回転数を増大させる変速処理部を備えたブレーキ制御装置である。
【0007】
この構成によれば、バッテリから電力を供給される電動機により駆動輪を駆動し、バッテリを充電しつつ電動機の回生ブレーキにより制動力を得る自動車のブレーキ制御装置において、変速処理部により、回生ブレーキの作動時に、駆動輪の回転数に対する電動機の回転数が増大させられるため、回生ブレーキによって、より早く自動車を減速できる。
【0008】
この場合、回生ブレーキの作動時に、バッテリに充電できない余剰の電力を負荷に供給する過充電防止部をさらに備えることが好適である。
【0009】
この構成によれば、過充電防止部により、回生ブレーキの作動時に、バッテリに充電できない余剰の電力が負荷に供給されるため、バッテリの過充電を防止できる。
【0010】
また、自動車のサービスブレーキにより制動力を得ることができないときに、回生ブレーキを作動させる非常ブレーキ作動部をさらに備えることが好適である。
【0011】
この構成によれば、非常ブレーキ作動部により、自動車のサービスブレーキにより制動力を得ることができないときに、回生ブレーキが作動させられるため、サービスブレーキの故障時にも制動力を得ることができる。
【0012】
また、回生ブレーキの作動時に、自動車の減速度を閾値以下に維持する減速度制御部をさらに備えることが好適である。
【0013】
この構成によれば、減速度制御部により、回生ブレーキの作動時に、自動車の減速度が閾値以下に維持されるため、自動車の乗員への影響を低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のブレーキ制御装置によれば、回生ブレーキによって、より早く自動車を減速できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るブレーキ制御装置を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係るブレーキ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置について、図面を用いて詳細に説明する。
図1に示されるブレーキ制御装置1は、自動車100に搭載され、自動車100のブレーキを制御する。自動車100は、FCスタック101及びバッテリ102から電力を供給される電動機103により駆動輪105を駆動し、バッテリ102を充電しつつ電動機103の回生ブレーキにより制動力を得る。
【0017】
なお、
図1において、各構成要素の細い直線による接続は、CAN(ControllerArea Network)等の通信回路による接続を意味する。
図1において、各構成要素の二重線による接続は、電気回路による接続を意味する。
図1において、各構成要素の太い直線による接続は、動力軸等の動力伝達機構による接続を意味する。
【0018】
自動車100は、FCスタック101、バッテリ102、電動機103、変速機104及び駆動輪105を備える。FC(fuel cell)スタック(stack)101は、水素と空気中の酸素とを反応させて発電する燃料電池の複数のセルが積層されたものであり、電動機103に電力を供給する。変速機104は、電動機103の回転数に対する駆動輪105の回転数及び駆動輪105の回転数に対する電動機103の回転数を変更する機械的装置である。変速機104は、無段階変速機(ContinuouslyVariable Transmission)でもよい。
【0019】
ブレーキ制御装置1は、FC-ECU10、EV-ECU20、INV-ECU30、サービスブレーキトルク検出部40及びブレーキレジスタ50を備える。FC-ECU10、EV-ECU20及びINV-ECU30は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read OnlyMemory]、RAM[Random Access Memory]及びHDD(Hard disk drive)等を有する電子制御ユニット(ECU:ElectronicControl Unit)である。FC(fuel cell)-ECU10は、FCスタック101の動作を制御する。
【0020】
EV(Electronic Vehicle)-ECU20は、自動車100の走行及び自動車100のブレーキを制御する。EV-ECU20は、非常ブレーキ作動部21、変速処理部22、過充電防止部23及び減速度制御部24を有する。EV-ECU20では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、上記の非常ブレーキ作動部21等の各部の制御を実行する。EV-ECU20は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0021】
非常ブレーキ作動部21は、自動車100のサービスブレーキにより制動力を得ることができないときに、回生ブレーキを作動させる。自動車100のブレーキペダルの踏量及び自動車100のサービスブレーキによる制動力(ブレーキトルク)は、サービスブレーキトルク検出部40により検出される。サービスブレーキトルク検出部40により自動車100のブレーキペダルが踏まれたことが検出されているにもかかわらず、サービスブレーキトルク検出部40によりサービスブレーキによるブレーキトルクが検出されないときは、非常ブレーキ作動部21は、変速処理部22、過充電防止部23及び減速度制御部24と協働して回生ブレーキを作動させる。
【0022】
なお、非常ブレーキ作動部21は、自動車100のブレーキペダルが踏まれていることが検出されているにもかかわらず、加速度センサにより自動車100の減速度が検出されないときに、回生ブレーキを作動させてもよい。
【0023】
変速処理部22は、回生ブレーキの作動時に、変速機104に指令信号を送信することにより、駆動輪105の回転数に対する電動機103の回転数(減速比)を増大させる。
【0024】
過充電防止部23は、回生ブレーキの作動時に、バッテリ102に充電できない余剰の電力をブレーキレジスタ(負荷)50に供給する。過充電防止部23は、バッテリ102の充電状況(SOC:StateOf Charge)をバッテリ102の温度、バッテリ102の電圧及びバッテリ102に流出入する電流の積算値等から取得する。ブレーキレジスタ50は、バッテリ102に充電できない余剰の電力を熱エネルギーに変換して消費する電気抵抗である。なお、ブレーキレジスタ50は、バッテリ102に充電できない余剰の電力を消費可能な他の種類の電気的負荷であってもよい。
【0025】
減速度制御部24は、回生ブレーキの作動時に、INV-ECU30及び変速機104に指令信号を送信することにより、回生ブレーキの制動力(ブレーキトルク)を制御し、自動車100の減速度を閾値以下に維持する。INV-ECU30は、FCスタック101及びバッテリ102から電動機103に供給される電力及び電動機103からバッテリ102及びブレーキレジスタ50に供給される電力を変換する不図示のインバータを制御する。減速度の閾値は、ブレーキペダルの踏量に応じて、例えば、0.1~0.3G程度の値に設定される。
【0026】
以下、本実施形態のブレーキ制御装置1の動作について説明する。以下の説明では、自動車100が走行中である状況を想定する。
図2に示されるように、自動車100のブレーキペダルが踏まれ、自動車100のサービスブレーキがオンとなる(S1)。サービスブレーキトルク検出部40により、自動車100のブレーキペダルの踏量及び自動車100のサービスブレーキによるブレーキトルクが検出される(S2)。
【0027】
サービスブレーキトルク検出部40により自動車100のブレーキペダルが踏まれたことが検出されているにもかかわらず、サービスブレーキトルク検出部40によりサービスブレーキによるブレーキトルクが検出されないとき、つまり、自動車のサービスブレーキにより制動力を得ることができないときは(S3)、非常ブレーキ作動部21は、回生ブレーキが作動させる(S4)。
【0028】
回生ブレーキの作動時に、変速処理部22は、不図示の車速センサにより自動車100が変速機104による変速が可能な車速であるか否かを判定する(S5)。この判定は、変速不可能な車速で変速した場合における電動機103のギア等の破損を防ぐためのものである。
【0029】
自動車の車速が変速可能な車速である場合は(S5)、回生ブレーキの作動時に、変速処理部22は、変速機104に指令信号を送信することにより、駆動輪105の回転数に対する電動機103の回転数を増大させる(S6)。減速度制御部24は、サービスブレーキトルク検出部40により検出されたブレーキペダルの踏量に基づいて、自動車100の減速度(の閾値)を算出する(S7)。減速度制御部24は、INV-ECU30及び変速機104に指令信号を送信することにより、回生ブレーキのブレーキトルクを制御し、自動車100の減速度を閾値以下に維持する(S8)。
【0030】
過充電防止部23は、取得されたバッテリ102の充電状況が満充電に近く、バッテリ102に充電できない余剰の電力が存在するときは(S9)、バッテリ102に充電できない余剰の電力をブレーキレジスタ50に供給する(S10)。
【0031】
一方、自動車の車速が変速不可能な車速である場合は(S5)、駆動輪105の回転数に対する電動機103の回転数を増大させることなく、上記のS7~S10と同様にS11~S14の工程が、自動車の車速が変速可能な車速になるまで実行される(S5)。自動車の車速が変速可能な車速になった場合は(S5)、上記のS7~S10の工程が実行される。
【0032】
本実施形態によれば、バッテリ102から電力を供給される電動機103により駆動輪105を駆動し、バッテリ102を充電しつつ電動機103の回生ブレーキにより制動力を得る自動車100のブレーキ制御装置1において、変速処理部22により、回生ブレーキの作動時に、駆動輪105の回転数に対する電動機103の回転数が増大させられるため、回生ブレーキによって、より早く自動車100を減速できる。
【0033】
また、本実施形態によれば、過充電防止部23により、回生ブレーキの作動時に、バッテリ102に充電できない余剰の電力がブレーキレジスタ50に供給されるため、バッテリ102の過充電を防止できる。
【0034】
また、本実施形態によれば、非常ブレーキ作動部21により、自動車100のサービスブレーキにより制動力を得ることができないときに、回生ブレーキが作動させられるため、サービスブレーキの故障時にも制動力を得ることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、減速度制御部24により、回生ブレーキの作動時に、自動車100の減速度が閾値以下に維持されるため、自動車100の乗員への影響を低減できる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【符号の説明】
【0037】
1…ブレーキ制御装置、10…FC-ECU、20…EV-ECU、21…非常ブレーキ作動部、22…変速処理部、23…過充電防止部、24…減速度制御部、30…INV-ECU、40…サービスブレーキトルク検出部、50…ブレーキレジスタ(負荷)、100…自動車、101…FCスタック、102…バッテリ、103…電動機、104…変速機、105…駆動輪。