(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191642
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】営業所位置評価システム及び営業所位置評価方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20221221BHJP
【FI】
G06Q10/06 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099979
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】野中 久典
(72)【発明者】
【氏名】厚沢 輝佳
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 匡
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】多大な移動時間と固定費の発生を防いで、より適正な営業所の位置を決定することのできる営業所位置評価システム、及び、営業所位置評価方法を提供する。
【解決手段】営業所候補地から所定の移動時間内に移動可能な担当現場の割合に応じて担当現場評価を行う移動時間判定部と、過去の自然災害時における災害現場の割合に応じて自然災害時評価を行う自然災害時判定部と、契約料金と実質保全料金とから算出された各担当現場の利益率の平均値に応じて契約料金評価を行う契約料金判定部とを備える。そして、担当現場評価、自然災害時評価、及び契約料金評価を用いて、営業所候補地を評価する営業所位置評価部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリア内における営業所の設置位置を評価する営業所位置評価システムにおいて、
少なくとも1以上の営業所候補地が入力される入出力部と、
前記営業所候補地の担当エリア内にある担当現場のうち、前記営業所候補地から所定の移動時間内に移動可能な前記担当現場の割合に応じて担当現場評価を行う移動時間判定部と、
前記営業所候補地から所定の移動時間内に移動可能な前記担当現場のうち、過去の自然災害時における災害現場の割合に応じて自然災害時評価を行う自然災害時判定部と、
前記担当現場の契約料金と実質保全料金とから算出される利益率を用いて、前記担当エリア内にある前記担当現場の前記利益率の平均値を算出し、前記利益率の平均値に応じて契約料金評価を行う契約料金判定部と、
前記担当現場評価、前記自然災害時評価、及び前記契約料金評価を用いて、前記営業所候補地を評価する営業所位置評価部と、
を備える営業所位置評価システム。
【請求項2】
前記入出力部には、所定のエリア内に設置したい営業所の数と、少なくとも、前記設置したい営業所の数以上の営業所候補地が入力され、
前記担当現場評価、前記自然災害時評価、及び、前記契約料金評価は、前記入力された営業所の数に対応した前記営業所候補地の可能な組合せ毎に実行される
請求項1に記載の営業所位置評価システム。
【請求項3】
さらに、前記移動時間判定部は、前記担当エリア内にある故障対応時の優先順位が高い担当現場のうち、前記営業所候補地から所定の時間内に移動可能な前記担当現場の割合に応じて優先順位評価を行い、
前記営業所位置評価部では、前記優先順位評価、前記担当現場評価、前記自然災害時評価、及び前記契約料金評価を用いて、前記営業所候補地を評価する
請求項1に記載の営業所位置評価システム。
【請求項4】
前記担当現場評価の評価値は、前記自然災害時評価の評価値及び前記契約料金評価の評価値よりも高く設定されている
請求項1に記載の営業所位置評価システム。
【請求項5】
前記営業所位置評価部では、前記担当現場評価、前記自然災害時評価、及び前記契約料金評価におけるそれぞれの評価値に関する条件と、前記営業所候補地の固定費に関する条件とから、前記条件に適した営業所候補地を、営業所の設置位置として決定する
請求項1に記載の営業所位置評価システム。
【請求項6】
入力された1以上の営業所候補地について、
前記営業所候補地の担当エリア内にある担当現場のうち、前記営業所候補地から所定の移動時間内に移動可能な前記担当現場の割合に応じて担当現場評価を行い、
前記営業所候補地から所定の移動時間内に移動可能な前記担当現場のうち、過去の自然災害時における災害現場の割合に応じて自然災害時評価を行い、
契約料金と実質保全料金とから算出される前記各担当現場の利益率から、前記担当エリア内にある前記担当現場の前記利益率の平均値を算出し、前記利益率の平均値に応じて契約料金評価を行い、
前記担当現場評価、前記自然災害時評価、及び前記契約料金評価を用いて、前記営業所候補地を評価する
営業所位置評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機の保全を担当する営業所の位置を評価する営業所位置評価システム、及び、営業所位置評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降機の故障や、昇降機での閉じ込め等が発生した場合、その昇降機の保全を担当する営業所から保守員が現場に派遣される。従来、それぞれの建物に設置された昇降機を保全する担当の営業所の位置は、営業所から保全対象となる昇降機が設置された現場までの移動時間を考慮して決定されている。
【0003】
特許文献1では、工場や事業所等の施設設置地点の候補位置に対して、候補位置から所定時間内で移動体が移動可能な範囲を特定し、その範囲内における所定の目的対象の数に基づいて候補位置の指標値を算出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の候補位置評価装置では、目的対象の数のみで営業所等の施設の候補位置の指標値を算出する方法が採られているため、都市部に営業所が固まってしまう可能性がある。さらには、余分な営業所を配置することにより、固定費が余計にかかってしまう可能性もある。
【0006】
そこで、本発明は、多大な移動時間の発生を防いで、より適正な営業所の位置を抽出することのできる営業所位置評価システム、及び、営業所位置評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の営業所位置評価システムは、少なくとも1以上の営業所候補地が入力される入出力部を備える。また、営業所候補地の担当エリア内にある担当現場のうち、営業所候補地から所定の移動時間内に移動可能な担当現場の割合に応じて担当現場評価を行う移動時間判定部を備える。また、営業所候補地から所定の移動時間内に移動可能な担当現場のうち、過去の自然災害時における災害現場の割合に応じて自然災害時評価を行う自然災害時判定部を備える。また、営業所候補地の担当エリア内にある各担当現場において、契約料金と実質保全料金とから算出された各担当現場の利益率から、担当エリア内にある前記担当現場の利益率の平均値を算出し、利益率の平均値に応じて契約料金評価を行う契約料金判定部とを備える。また、担当現場評価、自然災害時評価、及び契約料金評価を用いて、営業所候補地を評価する営業所位置評価部を備える。
【0008】
本発明の営業所位置評価方法は、入力された1以上の営業所候補地について、営業所候補地の担当エリア内にある担当現場のうち、営業所候補地から所定の移動時間内に移動可能な担当現場の割合に応じて担当現場評価を行う。また、営業所候補地から所定の移動時間内に移動可能な担当現場のうち、過去の自然災害時における災害現場の割合に応じて自然災害時評価を行う。また、契約料金と実質保全料金とから算出される各担当現場の利益率から、前記担当エリア内にある前記担当現場の前記利益率の平均値を算出し、利益率の平均値に応じて契約料金評価を行う。また、担当現場評価、前記自然災害時評価、及び前記契約料金評価を用いて、前記営業所候補地を評価する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現場への多大な移動時間の発生を防ぎ、より適正な営業所の位置を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る営業所位置評価システムの概略構成図である。
【
図2】「優先順位評価」において決定される評価点の一例を示す図である。
【
図3】「担当現場評価」において決定される評価点の一例を示す図である。
【
図4】「自然災害時評価」において決定される評価点の一例を示す図である。
【
図5】「契約料金評価」において決定される評価点の一例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態の営業所位置評価方法を示したフローである。
【
図7】指定営業所の数に対する営業所候補地の組合せ毎に算出された「移動時間評価」、「自然災害時評価」、及び「契約料金評価」を示した図である。
【
図8】営業所位置評価部から出力される営業所位置の総合評価の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る営業所位置評価システム及び営業所位置評価方法の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0012】
1.営業所位置評価システムの構成
まず、本発明の一実施形態に係る営業所位置評価システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る営業所位置評価システム10の概略構成図である。
【0013】
本実施形態の営業所位置評価システム10は、入出力部5と、移動時間算出部15と、現場データベース(以下、現場DB)11と、移動時間データベース(以下、移動時間DB)12と、災害対応データベース(以下、災害対応DB)13と、契約料金データベース(契約料金DB)14とを備える。さらに、営業所位置評価システム10は、移動時間判定部1と、自然災害時判定部2と、契約料金判定部3と、営業所位置評価部4とを備える。
【0014】
[入出力部]
入出力部5には、営業所にいる営業員Aが操作する外部端末6や、本社にいる担当員Bの外部端末7や、支社にいる担当員Cの外部端末8との間で情報の入出力がなされる。具体的には、入出力部5には、外部端末6、7、8のいずれかから、営業所の位置を変更したいエリア(以下、対象エリアと記す)と、その対象エリアに設置したい営業所の数(以下、指定営業所数と記す)が入力される。さらに、入出力部5には、入力された対象エリアに応じて、営業所の設置が可能な営業所候補地が入力される。
【0015】
営業所候補地は、例えば、対象エリアが入力された後、入力された対象エリアがメッシュコードにてメッシュ状に分割され、その分割された各エリアの中心位置に自動的に設定される。その他、営業所候補地は、対象エリアや指定営業所数を入力した営業員Aや担当員B、Cによって具体的に設定されるものでもよい。営業所候補地は、指定営業所数と同じ数かそれよりも多く設定される。本実施形態では、営業所位置評価システム10において、営業所候補地が、営業所の設置位置として適しているか否かの評価が為される。
【0016】
入出力部5は、後述する営業所位置評価部4によって決定された営業所の位置を外部端末6、7、又は/及び8に出力する。
【0017】
[移動時間算出部]
移動時間算出部15は、入出力部5を介して入力された営業所候補地と、その営業所候補地の担当エリア内における現場(以下、担当現場)までの移動時間を算出する。ここでは、営業所候補地の担当エリアは、メッシュコードによって分割されたエリア内である。移動時間算出部15は、後述する現場DB11から、営業所候補地の担当エリア内にある担当現場の住所、移動手段を抽出し、営業所候補地から担当現場までの移動時間を算出する。営業所候補地が複数ある場合には、すべての営業所候補地について、担当現場までの移動時間を算出する。移動時間算出部15で算出された移動時間は、移動時間DB12に登録される。
【0018】
[現場DB]
現場DB11は、保全対象となる昇降機が設置されたすべての現場の情報が蓄積されたデータベースである。現場の情報としては、現場の住所、現場への移動手段、及び、建物用途を含む。建物用途としては、例えば、商業施設、病院等の医療施設、又は学校等が挙げられる。
【0019】
[移動時間DB]
移動時間DB12は、移動時間算出部15によって算出された移動時間に関する情報が蓄積されるデータベースである。移動時間DB12に蓄積されている移動時間の情報は、例えば、営業員Aや担当員B、Cがそれぞれの外部端末6、7、8から対象エリアと、指定営業所数とを入力した際に移動時間算出部15において算出され登録される。
【0020】
[災害対応DB]
災害対応DB13は、保全対象である各現場での過去の自然災害時の状態についての情報が蓄積されたデータベースである。自然災害時の状態としては、例えば、昇降機内への閉じ込めや、昇降機の停止などが挙げられる。
【0021】
[契約料金DB]
契約料金DB14は、保全対象である各現場の契約料金に関する情報が蓄積されたデータベースである。契約料金とは、各現場のそれぞれの昇降機の保全のために毎月保全会社に支払わられる料金である。また、契約料金DB14は、保全対象である各現場において、過去に実際に保全のために支払われた保全料金(実質保全料金BP)に対するその現場の契約料金Xの比(以下、X/BP)が、現場毎に蓄積されている。X/BPが高いほど、実質保全料金BPに対する契約料金Xが高く、利益率が高い現場と判断できる。一方、X/BPが低いほど、実質保全料金BPに対する契約料金Xが低く、利益率が低い現場と判断できる。
【0022】
本実施形態では、上述した現場DB11、移動時間DB12、災害対応DB13、契約料金DB14に蓄積された情報を用いて、営業所候補地に関する評価を行う。ところで、入出力部5に入力される指定営業所数と、営業所候補地の数とが同じである場合には、指定営業所に対する営業所候補地の可能な組合せは1通りである。したがって、この場合、営業所位置評価システム10では、その一つの営業所候補地の組合せに対して、後述する移動時間評価、自然災害評価、契約金評価を行う。
【0023】
一方、例えば、指定営業所数が「3」で、営業所候補地が、地点a、地点b、地点c、地点dの4つであった場合、営業所候補地の可能な組合せは、(a、b、c)、(a、b、d)、(a、c、d)、(b、c、d)の4つとなる。したがって、この場合には、営業所位置評価システム10では、その4つの組合せに対して、後述する移動時間評価、自然災害評価、契約金評価を行う。
【0024】
[移動時間判定部]
移動時間判定部1は、現場DB11及び移動時間DB12に蓄積された情報から、「優先順位評価」における評価点(
図2参照)と、「担当現場評価」における評価点(
図3参照)とを決定する。
【0025】
「優先順位評価」は、保全対象としての優先順位が高い現場(以下、優先現場)までの移動時間によって判定される評価値である。「優先順位評価」における評価点を決定する場合、まず、移動時間判定部1は、現場DB11から病院等の優先順位が高い優先現場を抽出すると共に、移動時間DB12から、各営業所候補地からそれぞれの担当エリア内にある優先現場までの移動時間を抽出する。
【0026】
次に、移動時間判定部1は、営業所候補地までの移動時間が所定の時間(本実施形態では30分)以内である優先現場数の割合を算出する。営業所候補地までの移動時間が30分以内である優先現場数の割合は、営業所候補地の担当エリア内にあるすべての優先現場数に対する、移動時間が30分以内である優先現場数によって算出される。
【0027】
そして、移動時間判定部1は、移動時間が30分以内である優先現場の割合別に「優先順位評価」の評価点(評価値)を決定する。
図2は、「優先順位評価」において決定される評価点の一例を示す図である。
図2に示すように、例えば、移動時間が所定の30分以内である優先現場数の割合が90%以上である場合には評価点8点、80%以上90%未満である場合には評価点5点、80%未満である場合には評価点2点とする。そして、移動時間判定部1では、指定営業所数に対応する営業所候補地の組合せ毎に「優先順位評価」の評価点が算出される(
図7参照)。
【0028】
一方、「担当現場評価」は、各営業所候補地から担当エリア内の保全対象となる担当現場までの移動時間によって判定される評価値である。「担当現場評価」における評価点を決定する場合、まず、移動時間判定部1は、移動時間DB12から各営業所候補地から担当エリア内にあるそれぞれの担当現場までの移動時間を抽出する。
【0029】
次に、移動時間判定部1は、営業所候補地の担当エリア内における担当現場までの移動時間が所定の時間(本実施形態では60分)以内にある担当現場数の割合を算出する。営業所候補地において、担当エリア内における担当現場までの移動時間が60分以内にある担当現場数の割合は、営業所候補地の担当エリア内にあるすべての担当現場数に対する移動時間が60分以内である担当現場数によって算出される。
【0030】
そして、移動時間判定部1は、移動時間が60分以内である担当現場数の割合別に「担当現場評価」の評価点(評価値)を決定する。
図3は、「担当現場評価」において決定される評価点の一例を示す図である。
図3に示すように、例えば、移動時間が所定の時間以内である担当現場数の割合が95%以上である場合には評価点10点、85%以上95%以下である場合には評価点6点、85%未満である場合には2点とする。そして、移動時間判定部1では、指定営業所数に対する営業所候補地の組合せ毎に、「担当現場評価」の評価点が算出される(
図7参照)。
【0031】
[自然災害時判定部]
自然災害時判定部2は、移動時間DB12と災害対応DB13とに蓄積された情報から、「自然災害時評価」における評価点(
図4参照)を決定する。
【0032】
「自然災害時評価」は、営業所候補地からの移動時間が所定の時間(本実施形態では60分に設定)以内の担当現場数に対する、過去の自然災害時の昇降機における閉じ込め又は/及び停止が発生した現場(以下、災害現場)の数によって判定される評価値である。「自然災害時評価」における評価点を決定する場合、まず、自然災害時判定部2は、移動時間DB12から営業所候補内からの移動時間が60分以内にある担当現場を抽出すると共に、災害対応DB13から、過去の災害現場を抽出する。
【0033】
次に、自然災害時判定部2は、営業所候補地からの移動時間が60分以内のすべての担当現場と、災害現場とを照合する。そして、自然災害時判定部2は、営業所候補地からの移動時間が60分以内の担当現場のうち、災害現場の割合を算出する。
【0034】
そして、自然災害時判定部2は、営業所候補地からの移動時間が60分以内の担当現場のうち、過去の災害現場でもある担当現場の割合毎に、「自然災害時評価」の評価点(評価値)を決定する。
図4は、「自然災害時評価」において決定される評価点の一例を示す図である。
図4に示すように、例えば、営業所候補地からの移動時間が60分以内である担当現場に対する災害現場の割合が50%以上である場合には評価点5点、30%以上50%未満である場合には評価点3点、30%未満である場合には評価点1点とする。このような評価値を設定することで、過去の自然災害時における災害現場への対応を優先することができる。そして、自然災害時判定部2では、指定営業所数に対する営業所候補地の組合せ毎に、「自然災害時評価」の評価点を算出する(
図7参照)。
【0035】
[契約料金判定部]
契約料金判定部3は、契約料金DB14に蓄積された情報から、「契約料金評価」における評価点(
図5参照)を決定する。
【0036】
「契約料金評価」は、営業所候補地の担当エリア内にある担当現場のX/BPの平均値に基づいて判定される評価値である。例えば、営業所から近い現場では、昇降機の故障時に担当者が即座に対応可能なため、契約を解約する可能性が低いと考えられる。また、X/BPの比率が高いほど利益率が高い。したがって、X/BPの比率が高い現場が多くあるエリアに営業所を設けた方が、利益率が高く、かつ、顧客の解約の可能性を低くすることができる。
【0037】
このような点に鑑み、契約料金判定部3では、まず、契約料金DB14から、対象エリアのすべての現場のX/BPを抽出する。そして、営業所候補地毎に、担当エリア内にある担当現場のX/BPの平均値を算出する。契約料金判定部3では、算出されたX/BPの平均値に応じて「契約料金評価」の評価点(評価値)を決定する。
図5は、「契約料金評価」において決定される評価点の一例を示す図である。
図5に示すように、例えば、X/BPの平均値が0.85以上である場合には評価点3、0.7以上0.85未満である場合には評価点2、0.7未満である場合には評価点1とする。このような評価値を設定することで、営業所を、より利益率の高い現場付近に優先して設置し、利益率の高い顧客の解約件数を低減することができる。契約料金判定部3では、指定営業所数に対する営業所候補地の組合せ毎に、「契約料金評価」の評価点を算出する(
図7参照)。
【0038】
ところで、本実施形態では、「優先順位評価」、「担当現場評価」、「自然災害時評価」、及び、「契約料金評価」のそれぞれの評価点の平均点が、「担当現場評価」>「優先順位評価」>「自然災害時評価」>「契約料金評価」となるように重み付けされている。これにより、担当エリア内にある担当現場の数が多い営業所候補地の評価点が高くなるように設定されている。
【0039】
[営業所位置評価部]
営業所位置評価部4は、移動時間判定部1、自然災害時判定部2、及び契約料金判定部3において算出されたそれぞれの評価点と、固定費の上限値とから、条件に合う営業所の位置を決定する。後述するが、営業所位置評価部4では、営業所候補地の組合せ毎に算出された「移動時間評価」における評価点、「自然災害時評価」における評価点、及び「契約料金評価」の評価点の合計点と、固定費(主に家賃)とから、営業所の位置を総合的に評価する(
図8参照)。これにより、最適な営業所の位置を決定することができる。
【0040】
2.営業所位置評価方法
以下に、本実施形態の営業所位置評価システム10を用いた営業所位置評価方法の一例について説明する。
図6は、本実施形態の営業所位置評価方法を示したフローである。
【0041】
まず、営業員A又は担当員B、Cがそれぞれの外部端末6、7、8から、営業所の数や位置を変更したい対象エリアを選択して入力する(ステップS1)。次に、営業員A又は担当員B、Cがそれぞれの外部端末6、7、8から設置したい営業所の数(指定営業所数)、又は、指定営業所数及び営業所候補地を指定して入力する(ステップS2)。ステップS2において、指定営業所数のみが入力された場合には、対象エリアがメッシュコードによって分割され、その分割された各分割エリアの中心位置が営業所候補地として指定される。入力される指定営業所数は、例えば、「3」等の1指定であってもよく、「3、4、又は5」等の複数指定であってもよい。本実施形態では、指定営業所数の入力が1指定であった場合について説明する。
【0042】
そして、外部端末6、7又は8によって指定された対象エリア、指定営業所数、及び、営業所候補地が入出力部5を介して営業所位置評価システム10に入力される。
【0043】
次に、営業所位置評価システム10では、移動時間算出部15において、入力された各営業所候補地に対して、それぞれの担当エリア内にある担当現場までの移動時間を算出する。移動時間算出部15は、入力された営業所候補地の担当エリア内にある担当現場の住所、及び移動手段を現場DB11から抽出し、営業所候補地毎に、それぞれの営業所候補地から担当現場までの移動時間を算出して移動時間DB12に登録する。
【0044】
次に、営業所位置評価システム10において、指定営業所数に対応する営業所候補地の各組合せに対して、「移動時間評価」、「自然災害時評価」、「契約料金評価」を行う。
図7は、指定営業所の数に対する営業所候補地の組合せ毎に算出された「移動時間評価」、「自然災害時評価」、及び「契約料金評価」を示した図である。
図7の「組合せ」の項目は、指定営業所数に対する営業所候補地の各組合せを示す項目であり、その組合せ毎に、「移動時間評価」、「自然災害時評価」、「契約料金評価」の各評価点が示されている。本実施形態では、
図7に示すように、指定営業所数に対する営業所候補地の組合せのパターンが、A、B、C、D、E、F・・・の複数通りあるものとする。
【0045】
まず、本実施形態では、移動時間判定部1において、「優先順位評価」及び「担当現場評価」を行う(ステップS3)。移動時間判定部1は、指定営業所数に対する営業所候補地の組合せ毎に「優先順位評価」及び「担当現場評価」を行う。
【0046】
移動時間判定部1における「優先順位評価」及び「担当現場評価」の評価方法については、上述した通りである。「優先順位評価」では、
図7に示すように、各組合せにおいて、営業所候補地のそれぞれの担当エリア内のすべての優先現場数に対する、移動時間が所定時間(本実施形態では30分)以内である優先現場数の割合に応じて評価点が付与される。一方、「担当現場評価」では、
図7に示すように、各組合せにおいて、営業所候補地のそれぞれの担当エリア内のすべての担当現場数に対する、移動時間が所定時間(本実施形態では、60分)以内である担当現場数の割合に応じて評価点が付与される。
【0047】
また、ステップS3では「優先順位評価」の割合、「担当現場評価」の割合が所定値未満であるか否かの判定を行うと共に、所定値未満であるパターンの組み合わせについては、そのあとの処理を終了する。例えば、「優先順位評価」における割合が所定の割合未満(本実施形態では70%未満)である組合せにおいては、「優先順位評価」が低いため、これ以降の処理は行わないものとする。また、「担当現場評価」における割合が所定の割合未満(本実施形態では80%未満)である組合せにおいては、「担当現場評価」が低いため、これ以降の処理は行わないものとする。以下に
図7を用いて具体的に説明する。
【0048】
図7に示すように、例えば、Aパターンの組合せでは、「優先順位評価」が割合85%、評価点5点で、「担当現場評価」が割合94%、評価点6点である。
Bパターンの組合せでは、「優先順位評価」は、割合79%、評価点2点である。一方、「担当現場評価」は、割合95%、評価点10点である。
Cパターンの組合せでは、「優先順位評価」は、割合90%、評価点8点である。一方、「担当現場評価」は、割合93%、評価点6点である。
Dパターンの組合せでは、「優先順位評価」は、割合69%である。ここで、Dパターンでは、「優先順位評価」の割合が70%未満であるため、「担当現場評価」を行わずに、以降の処理を終了する。すなわち、Dパターンの営業所候補地の組合せは、候補から外される。
Eパターンでは、「優先順位評価」は、割合75%、評価点2点である。一方、「担当現場評価」は、割合79%、評価点2点である。ここで、Eパターンの「担当現場評価」における割合が80%未満であるため、Eパターンの組合せに対して評価点を付与する処理が終了する。すなわち、Eパターンの組合せに対しては、後述するステップS4及びステップS5の処理は行われず、Eパターンの営業所候補地の組合せは、候補から外される。
Fパターンでは、「優先順位評価」は、割合82%、評価点5点である。一方、「担当現場評価」は、割合86%、評価点6点である。
【0049】
次に、自然災害時判定部2において、「自然災害評価」を行う(ステップS4)。自然災害時判定部2では、「優先順位評価」及び「担当現場評価」で処理が継続している各パターンの組合せについてのみ、「自然災害評価」を行う。
【0050】
自然災害時判定部2における「自然災害時評価」の評価方法については、上述した通りである。「自然災害時評価」では、営業所候補地の移動時間が所定の時間(本実施形態では60分に設定)以内の担当現場数に対する、過去の自然災害時の、昇降機における閉じ込め又は/及び停止が発生した災害現場の割合に応じて評価点が付与される。
【0051】
また、ステップS4では、「自然災害時評価」における割合が所定値未満であるか否かの判定を行い、所定値未満であるパターンの組み合わせについては、そのあとの処理を終了する。本実施形態では、例えば、「自然災害時評価」の割合が、20%未満である組合せにおいては、「自然災害時評価」が低いため、これ以降の処理は行わないものとする。以下に
図7を用いて具体的に説明する。
【0052】
Dパターン及びEパターンの組合せについてはすでに処理が終了しているため、「自然災害時評価」は行わない。
Aパターンの組合せにおける「自然災害時評価」は、割合50%、評価点5点である。
Bパターンの組合せにおける「自然災害時評価」は、割合30%、評価点1点である。
Cパターンの組合せにおける「自然災害時評価」は、割合45%、評価点2点である。
Fパターンの組合せにおける「自然災害時評価」は、割合19%、評価点1点である。ここで、Fパターンの組合せでは、「自然災害時評価」における割合が20%未満であるため、Fパターンの組合せに対する評価点を付与する処理が終了する。すなわち、Fパターンの組合せに対しては、後述するステップS5の処理が行われず、Fパターンの営業所候補地の組合せは候補から外される。
【0053】
次に、契約料金判定部3において、「契約料金評価」を行う(ステップS5)。契約料金判定部3では、自然災害時判定部2で処理が継続している各パターンの組合せについてのみ、「契約料金評価」を行う。
【0054】
契約料金判定部3における「契約料金評価」の評価方法については、上述した通りである。「契約料金評価」では、営業所候補地の担当エリア内にある担当現場のX/BPの平均値に基づいて評価点(評価値)が付与される。以下に
図7を用いて具体的に説明する。
【0055】
Dパターン、Eパターン、Fパターンのそれぞれの組合せについては、すでに処理が終了しているため、「契約料金評価」は行わない。
Aパターンの組合せでは、担当現場のX/BPの平均値が0.9であり、評価点3点である。
Bパターンの組合せでは、担当現場のX/BPの平均値が0.72であり、評価点2点である。
Cパターンの組合せでは、担当現場のX/BPの平均値が0.65であり、評価点1点である。
【0056】
以上のステップS3からステップS5において、営業所候補地に関する各評価が実行され、各評価における評価点が付与される。
【0057】
次に、営業所位置評価部4において、各パターンの組合せにおける「移動時間評価」、「自然災害時評価」、「契約料金評価」の各評価点の合計点を算出すると共に、固定費評価を行う。
図8は、営業所位置評価部4から出力される営業所位置の総合評価の一例を示す図である。
【0058】
営業所位置評価部4では、処理が継続している各パターンの各組合せのうち、評価点の合計点が、所定の点数(本実施形態では19点以上)の組合せを抽出して、その組合せにおける営業所候補地の固定費を算出する(ステップS6)。固定費は、主に家賃であり、例えば、営業員Aや担当員B、Cから外部端末6、7、8を介して入力されるデータをもとに算出される。
【0059】
図8に示すように、Aパターンの組合せでは、評価点の合計点が19点で、固定費は200万円である。Iパターンの組合せでは、評価点の合計点が20点で、固定費が280万円である。Jパターンの組合せでは、評価点の合計点が22点で、固定費は360万円である。なお、Iパターン及びJパターンは、
図7では記載を省略する他のパターンの組合せを示すものである。
【0060】
その後、営業所位置評価部4において、評価の合計点、及び、固定費に設定された条件に基づいて、営業所の位置を決定する(ステップS7)。ここでは、評価点の合計点、及び、固定費に設定された条件は、営業員Aや担当員B、Cによって予め設定されている条件である。この条件は、ステップS1の対象エリアの入力と同時に入力されるものであってもよく、ステップS6の後に入力されてもよい。
【0061】
例えば、営業所位置の条件について、評価点の合計点が20点以上であり、かつ、固定費が300万以下と設定されている場合には、
図8に示すように、Iパターンの組合せのみが条件を満たす。したがって、この場合、Iパターンの組合せの営業所候補地が、条件に合った営業所の位置として決定(抽出)される。
【0062】
ステップS7において、営業員Aや担当員B、Cによって予め設定されている最終的な条件に合う組合せの営業所候補地が無かった場合、再度、指定営業所数や、営業所候補地の住所、評価点の下限、固定費の上限等の条件を再設定する(ステップS1の処理に戻る)。これにより、設定された条件に応じた最適な営業所の位置(組合せ)を決定することができる。
【0063】
営業所位置評価部4は、設定された条件に適した営業所の位置(組合せ)の評価結果を、入出力部5を介して営業員A又は営業員B、Cの外部端末6、7又は8に送信する。例えば、ステップS1及びステップS2の入力が外部端末6から入力された場合には、評価結果を外部端末6に出力し、外部端末7から入力された場合には、評価結果を外部端末7に出力する。同様に、ステップS1及びステップS2の入力が外部端末8から入力された場合には、評価結果を外部端末8に出力する。
【0064】
また、本実施形態では、営業所候補地の複数の組合せから、最適な営業所位置を決定する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、ステップS2において、入力される営業所候補地の組合せが1つのパターンのみであっても、本実施形態の営業所位置評価システム10を用いることで、その営業所候補地が営業所の位置として最適かどうかを評価することができる。すなわち、本実施形態の営業所位置評価システム10は、複数の営業所候補地の中から最適な営業所位置を決定(抽出)するツールとしてだけではなく、選択された営業所候補地が営業所の位置として適しているか否かを判断するツールとして用いることもできる。
【0065】
さらに、本実施形態では、ステップS2における指定営業所数を1つだけ入力する例としたが、複数の異なる指定営業所数を入力してもよい。この場合、営業所位置評価システム10では、指定営業所数毎に、営業所候補地の組合せに応じた評価を実行することもできる。
【0066】
そして、本実施形態では、「優先順位評価」及び「担当現場評価」によって営業所候補地を評価することで、現場への移動時間が長く、営業所の位置として適切ではない営業所候補地を候補から外すことができる。これにより、より適切な移動時間内に現場へ移動することができる拠点に営業所を配置することができる。
【0067】
また、本実施形態では、「自然災害時評価」によって営業所候補地を評価することで、過去の自然災害時に、昇降機の閉じ込めや、停止等があった災害現場により早く到着可能な営業所候補地が高く評価される。これにより、自然災害時の対応を素早く行うことが可能な営業所の配置を実現することができる。
【0068】
また、本実施形態では、「契約料金評価」によって営業所候補地を評価することで、利益率の高い営業所候補地が高く評価される。これにより、利益率の高い顧客の解約を防止すると共に、安定した利益率の確保が可能となる。
【0069】
そして、本実施形態では、固定費に上限を設けて営業所候補地を評価することにより、多大な固定費の発生を防ぐことができる。
【0070】
以上のように、本実施形態では、多大な移動時間や固定費の発生を防ぎ、自然災害時の迅速な対応や、利益率の高い顧客の解約防止が可能となる営業所候補地を、最適な営業所位置として評価することができる。
【0071】
本実施形態では、移動時間算出部15を営業所位置評価システム10に設ける構成としたが、外部端末6、7、又は8において、移動時間を算出し、算出された移動時間を移動時間DB12に登録する構成としてもよい。
【0072】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…移動時間判定部、2…自然災害時判定部、3…契約料金判定部、4…営業所位置評価部、5…入出力部、6,7,8…外部端末、10…営業所位置評価システム、11…現場データベース、12…移動時間データベース、13…災害対応データベース、14…契約料金データベース、15…移動時間算出部