(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191662
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】情報表示システム
(51)【国際特許分類】
G09F 21/04 20060101AFI20221221BHJP
G09F 19/22 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G09F21/04 A
G09F19/22 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100017
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 薫
(72)【発明者】
【氏名】赤石 誉幸
(72)【発明者】
【氏名】古田 詩央莉
(57)【要約】
【課題】これまでに無い効果的な注意喚起や広告の提示等が実現できる情報表示システムを提供する。
【解決手段】車両Vが交差点ISの手前から交差点ISに近づく状態において、情報取得部21が、車両Vの形状の情報、車速の情報、車両制御情報等を取得する。情報識別部22が、これらの情報に応じた画像を要求する情報を生成し、この要求情報が通信部23からクラウドサーバ3に送信される。クラウドサーバ3が、要求に応じた画像をデータベース41,42から抽出し、この画像の情報が投影制御部24から投影装置25に送信される。投影装置25の移動体投影用プロジェクタ25bが、投影制御部24からの制御信号を受けて、車両Vの移動に追従して注意喚起や広告の提示等の画像の投影を行う。これにより、効果的な注意喚起や広告の提示等を行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を含む所定領域の情報を取得する情報取得部と、該情報取得部が取得した情報に基づいて表示する情報を特定する表示情報特定部と、該表示情報特定部によって特定された情報の画像を所定領域に投影する投影手段とを備えた情報表示システムであって、
前記移動体の移動に追従して前記投影手段から該移動体に向けて前記画像の投影を行わせる投影制御部を備えていることを特徴とする情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報表示システムに係る。特に、本発明は、取得した情報に基づいて特定された画像(例えば注意喚起や広告の提示等を目的とした画像)の投影表示を行う際における当該画像の表示形態の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、取得した情報に基づいて周囲の人(例えば車両の運転者や歩行者等)に対する注意喚起等を目的とした画像の投影表示を行う情報表示システムが知られている。
【0003】
この特許文献1には、撮像装置やプロジェクタ等を搭載したドローンを使用し、プロジェクタから路面上に向けて注意喚起等を目的とした画像を投影(投影表示)することが開示されている。具体的には、ドローンが飛行した状態で撮像装置によって下方の交差点や道路等の地上を撮影し、この撮影した情報に基づいて特定された画像(注意喚起等のための画像)を、プロジェクタから下方領域である道路の路面に投影表示するようにしている。また、この特許文献1には、信号機の無い交差点の路面に対して、横断歩道の画像や車両を一旦停止させるための停止標識の画像を投影表示すること、高速道路の路面に対して、落下物が存在していることを知らせる画像や動物が侵入していることを知らせる画像や渋滞が発生していることを知らせる画像を投影表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の発明者らはこの種の情報表示システムにおける画像の表示形態として路面以外の領域に画像を表示することについて考察を行った。そして、本発明の発明者らは、効果的な注意喚起や広告の提示等を行う手法として、路面等の固定された物体に対する画像投影よりも、移動している物体に対する画像投影を行うことで、これまでに無い効果的な注意喚起や広告の提示(訴求効果の高い広告の提示)等が実現できるといった新たな知見を得た。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、これまでに無い効果的な注意喚起や広告の提示等が実現できる情報表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、移動体を含む所定領域の情報を取得する情報取得部と、該情報取得部が取得した情報に基づいて表示する情報を特定する表示情報特定部と、該表示情報特定部によって特定された情報の画像を所定領域に投影する投影手段とを備えた情報表示システムを対象とし、前記移動体の移動に追従して前記投影手段から該移動体に向けて前記画像の投影を行わせる投影制御部を備えていることを特徴とする。
【0008】
この特定事項により、投影手段から移動体に向けての画像の投影は、投影制御部の制御により移動体の移動に追従しながら行われる。つまり、移動体の移動に伴って、投影手段から投影される画像も移動していくことになる。このため、路面等の固定された物体に対して画像を投影していた従来技術に比べて、効果的な注意喚起や広告の提示等を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、特定された情報を投影手段からの画像の投影によって所定領域に表示させるに際し、移動体の移動に追従して該移動体に向けて画像の投影を行うようにしている。このため、路面等の固定された物体に対して画像を投影していた従来技術に比べて、効果的な注意喚起や広告の提示等を行うことができ、これまでに無い情報表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る情報表示システムの概略構成を示す図である。
【
図2】情報表示システムにおける情報表示動作の手順を示すフローチャート図である。
【
図3】投影可否判断のための論理回路を示す概念図である。
【
図4】情報表示システムによって広告の提示が行われている状況の一例を示す交差点周辺の図である。
【
図5】情報表示システムによって車両の運転者に対する注意喚起が行われている状況の一例を示す交差点周辺の図である。
【
図6】変形例において、情報表示システムによって歩行者に対する注意喚起が行われている状況の一例を示す交差点周辺の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、道路の交差点においてその周囲の人(車両の運転者や歩行者等)に対する注意喚起や広告の提示を行うための情報表示システムとして本発明を適用した場合について説明する。また、本実施形態では、情報表示システムが、移動体(本実施形態の場合は車両)に向けて画像の投影(投影表示)を行う機能を有しているだけでなく路面上に画像の投影を行う機能も有している場合を例に挙げて説明する。
【0012】
-情報表示システムの概略構成-
図1は、本実施形態に係る情報表示システム1の概略構成を示す図である。この
図1は、移動体である車両Vが交差点ISの手前から交差点ISに近づく状態を示しており、図中における実線、一点鎖線、二点鎖線の順で車両Vが交差点ISに近づいていく状態となっている。
【0013】
図1に示すように、情報表示システム1は、交差点ISに設置されたシステムユニット2、クラウドサーバ(システム管理サーバ)3、データベース41,42を含んだ構成となっている。以下、それぞれについて説明する。
【0014】
システムユニット2は、図示しない信号機、電柱、街灯、歩道橋、交差点付近の建物等に設置されている。後述するように、システムユニット2は、交差点IS内の路面上や交差点IS付近の車両Vに向けて投影装置(投影手段)25から画像を投影するものであることから、交差点IS付近の比較的高い位置に設置されていることが好ましい。本実施形態にあっては、システムユニット2が信号機に設置された場合を例に挙げて説明する(
図4を参照)。
【0015】
図1に示すように、システムユニット2は、情報取得部21、情報識別部(本発明でいう表示情報特定部を構成する機能部)22、通信部23、投影制御部24、投影装置25を備えており、これらが信号線によって接続されて相互に情報の送受信が可能となっている。また、これらは周知のBluetooth(登録商標)等の通信手段によって無線通信により相互に情報の送受信が可能な構成となっていてもよい。
【0016】
情報取得部21は、交差点ISに近づいてくる車両Vや交差点ISの周辺(交差点ISの周辺の路面の状態や歩行者等)を撮影して画像データを生成するカメラや、レーザを走査することにより車両Vまでの距離を計測して3次元距離画像を取得するLidar(Light Detection and Ranging)等を備えている。前記カメラとしては、CCD(Charge Coupled Device)カメラや赤外線カメラ等が採用可能である。
【0017】
また、情報取得部21は、無線通信機としてのITS(Intelligent Transport System)装置を備えており、当該ITS装置と通信可能なITSコネクトユニット(図示省略)を搭載した車両Vが交差点ISに近づいてきた場合に、このITSコネクトユニットとの間での通信が可能となっている。この通信は例えばV2I(Vehicle-to-roadside-Infrastructure)通信であって専用周波数を用いた狭域無線通信が適用可能である。
【0018】
カメラやLidar、ITS装置によって取得可能な情報としては、車両Vの形状(車種)の情報、車速の情報、車両制御情報、画像投影の許可情報、交差点ISの周辺の情報等が挙げられる。
【0019】
車両Vの形状(例えばエンジンフードやサイドドアやバックドア等の表面形状)はカメラやLidarによって撮影された画像から認識することが可能である。また、ITSコネクトユニットとの間での通信によって車種を特定する(車種情報を通信によって取得する)ことにより車両Vの形状を認識するようになっていてもよい。つまり、車種と車両Vの形状とを関連付けたデータベースを予め備えさせ、通信によって車種を特定することにより車両Vの形状が認識できるようになっていてもよい。また、車速は、カメラやLidarによって撮影された画像から単位時間当たりの車両Vの移動量を認識することで算出することができる。また、ITSコネクトユニットとの間での通信によって車両Vから車速の情報(車載の車速センサによって検出された車速の情報)を取得するようになっていてもよい。車両制御情報としては、運転者によるアクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み量の情報(車載のアクセル開度センサやブレーキペダルスイッチによって検出された情報)が挙げられ、この情報もITSコネクトユニットとの間での通信によって車両Vから取得することができる。更に、本実施形態に係る情報表示システム1は、車両Vの外面(エンジンフードやサイドドアやバックドア等)に画像の投影を行うものであるが、運転者によっては、自己の車両Vに画像が投影されることを望まない場合もある。このため、ITSコネクトユニットを搭載した車両Vにあっては車内に画像投影拒否スイッチが設けられており、このスイッチがON操作されることで(または車載モニタ上でのモード切替画面において画像投影拒否ボタンが表示可能となっており、この画像投影拒否ボタンをタップすることで)画像投影を拒否することが可能である。そして、この画像投影拒否スイッチ等がON操作されている(画像投影を拒否するモードとなっている)か否かの情報(前記画像投影の許可情報)もITSコネクトユニットとの間での通信によって取得することができるようになっている。交差点ISの周辺の情報としては、カメラやLidarによって取得された画像データに基づいた交差点ISの周辺の路面の状態や、歩行者の位置や速度や進行方向等の情報が挙げられる。これら取得された情報は、情報取得部21から情報識別部22に送信される。
【0020】
情報識別部22は、情報取得部21から各種情報(車両Vの形状の情報、車速の情報、車両制御情報、画像投影の許可情報、交差点ISの周辺の情報等)を受信し、これら情報から、交差点ISの周辺の道路の状況(交通量、天候、事故発生の有無等)や、交差点ISに近づいてくる車両Vの状況(車両Vの形状や位置や速度や進行方向等)や、路面の状態等を識別する。尚、交差点ISの周辺の道路の状況としての天候の情報は、前述の如く情報取得部21によって取得されるようになっていてもよいし、後述するクラウドサーバ3が気象情報として取得するようになっていてもよい。
【0021】
また、この情報識別部22は、これら情報(識別情報)を通信部23に送信する機能、後述するクラウドサーバ3によって抽出された情報を通信部23を介して受信する機能、この受信した情報から、投影装置25によって投影すべき画像を特定して、その情報を投影制御部24に送信する機能を備えている。情報識別部22から通信部23に送信される識別情報は、通信部23によってクラウドサーバ3に送信されることになるが、このクラウドサーバ3に送信される情報としては、情報取得部21によって取得された情報に応じた画像を要求する情報も含まれる。
【0022】
通信部23は、クラウドサーバ3との間でネットワークを介して相互に無線通信可能に構成されており、情報識別部22から受信した各種情報(車両Vの形状の情報、車速の情報、車両制御情報、画像投影の許可情報、交差点ISの周辺の情報等に加えて画像を要求する情報)をクラウドサーバ3に向けて無線送信する。また、通信部23は、クラウドサーバ3がデータベース41,42から抽出した情報(前記要求に応じた画像の情報)を当該クラウドサーバ3から受信し、その情報を情報識別部22に送信する。
【0023】
クラウドサーバ3は、通信部23を介して情報識別部22から受信した情報(画像を要求する情報を含む)に基づいて、データベース41,42から、交差点IS内の路面や車両Vに投影する画像として前記要求に適した画像(注意喚起のための画像または広告を提示するための画像)を抽出する。例えば、交差点ISにおける信号機の状態(何れの信号機が赤となっているか等)、交差点ISに向かって走行してくる車両Vの車速、交差点ISの周辺の歩行者の数等に応じ、現時点で交差点IS内の路面や車両Vへの投影に適した画像をデータベース41,42から抽出することになる。そして、クラウドサーバ3は、この抽出した画像を、通信部23を介して情報識別部22に向けて送信する。
【0024】
データベース41,42としては、車両情報および路面情報を格納した第1データベース41と、画像情報(注意喚起のための画像の情報および広告を提示するための画像の情報)を格納した第2データベース42とが含まれている。クラウドサーバ3は、前記画像の要求に応じ、各データベース41,42に格納されているデータを参照して、特定の画像を抽出し、その画像の情報を通信部23を介して情報識別部22に向けて送信することになる。
【0025】
投影制御部24は、情報識別部22から受信した情報(クラウドサーバ3によって抽出されて情報識別部22に送信された情報)を受信し、この情報に基づいて投影装置25を制御する。
【0026】
投影装置25は、プロジェクタ25a,25bを備えている。
図1に示すものは、路面投影用プロジェクタ25aおよび移動体投影用プロジェクタ25bを備えている。路面投影用プロジェクタ25aは、路面上に画像を投影するためのものであり、投影制御部24から受信した画像情報に従って例えば交差点ISの中央部に向けて画像を投影するようになっている。移動体投影用プロジェクタ25bは、移動体に画像を投影するためのものである。本実施形態にあっては、移動体としての車両Vに画像を投影するものであり、投影制御部24から受信した画像情報に従って例えば車両Vの外面であるエンジンフードやサイドドアやバックドア等に画像の投影を行うようになっている。
【0027】
特に、移動体投影用プロジェクタ25bから車両Vに画像を投影する手法としてはプロジェクションマッピングが使用される。このプロジェクションマッピングは、コンピュータで作成したCG(Computer Graphics)をプロジェクタから出力して現実の立体物に映像をマッピングするものとして知られている技術である。本実施形態にあっては、情報取得部21によって車両Vの形状の情報が取得されるようになっているので、情報識別部22から受信した画像の情報を車両Vの形状(画像を投影しようとする車両Vの特定の領域の表面形状)に応じて画像を加工することにより、当該車両Vの特定の領域に画像が投影されるようになっている。また、このプロジェクションマッピングによる画像の投影範囲は交差点IS内の所定範囲内となっている。
【0028】
尚、
図1に示すシステムユニット2は、投影装置25が路面投影用プロジェクタ25aおよび移動体投影用プロジェクタ25bを備えたものとなっているが、交差点ISに複数のシステムユニット2が設置されている場合には、一部のシステムユニット2にあっては、路面投影用プロジェクタ25aおよび移動体投影用プロジェクタ25bのうち一方のみを備えている場合もある。
【0029】
そして、本実施形態の特徴として、前記投影制御部24は、投影装置25の移動体投影用プロジェクタ25bから車両Vに向けての画像の投影が車両Vの移動に追従して行われるようにしている。具体的に、移動体投影用プロジェクタ25bには、画像の投影方向を変更可能とする図示しない機構部を備えている。この機構部の構成としては、移動体投影用プロジェクタ25bの投写レンズの光軸をモータ等によって可変とし、このモータの作動によって画像の投影方向を可変とするものが挙げられる。また、回動自在な複数のミラーを使用して画像の投影方向を変更可能とする構成とされていてもよい。
【0030】
そして、投影制御部24は、情報取得部21によって認識されている車両Vの位置の情報を情報識別部22を介して受信し、車両Vの位置に向けて画像の投影方向が変更されるように前記モータに作動指令信号を出力する。これにより、移動体投影用プロジェクタ25bからの画像の投影が車両Vの移動に追従して行われることになり、車両Vの移動に伴って、移動体投影用プロジェクタ25bから投影される画像も移動していくようになっている。例えば車両Vのサイドドアに画像を投影する場合にあっては、車両Vが移動してもサイドドアへの画像の投影が継続されるように移動体投影用プロジェクタ25bから投影される画像が移動されることになる。また、
図1は、車両Vのエンジンフードに画像を投影する場合を示しており、車両Vが図中の実線、一点鎖線、二点鎖線の順で移動していくのに伴って、移動体投影用プロジェクタ25bからの画像の投影方向も、図中の実線、一点鎖線、二点鎖線の順で変更されるようになっている。
【0031】
-情報表示動作-
次に、前述の如く構成された情報表示システム1による情報表示動作について説明する。
図2は、この情報表示動作の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、交差点ISに近づいてくる車両Vが認識されることに伴って実行される。
【0032】
先ず、ステップST1において、情報取得部21により、カメラやLidar、ITS装置によって各種情報(車両Vの形状の情報、車速の情報、車両制御情報、画像投影の許可情報、交差点ISの周辺の情報等)を取得する。
【0033】
ステップST2では、情報識別部22が、情報取得部21からの各種情報を受信することにより、交差点ISの周辺の道路の状況(交通量、天候、事故発生の有無等)や、交差点ISに近づいてくる車両Vの状況(車両Vの形状や位置や速度や進行方向等)や、路面の状態を識別する。これにより、この識別結果に応じた画像を要求する情報が生成されることになる。
【0034】
ステップST3では、通信部23が、情報識別部22において生成された要求情報(識別結果に応じた画像を要求する情報)をクラウドサーバ3に送信する。
【0035】
ステップST4では、クラウドサーバ3が、情報識別部22から受信した情報(画像を要求する情報を含む)に基づいて、データベース41,42から、交差点ISの路面や車両Vに投影する画像として前記要求に応じた画像を抽出する。
【0036】
ステップST5では、クラウドサーバ3が抽出した画像の情報を投影制御部24が情報取得部21および情報識別部22を介して受信し、この画像が交差点ISの路面や車両Vに投影可能であるか否かを判断する。以下、この画像の投影が可能であるか否かの判断(画像の投影可否判断)を行う手法について具体的に説明する。
【0037】
(画像の投影可否判断)
図3は、画像の投影可否判断のための論理回路を示す概念図である。
【0038】
この
図3に示すように、画像の投影可否判断は、道路状況の条件、車両の条件、路面の条件に基づいて行われる。つまり、道路状況の条件として画像投影に問題が無いこと(以下、道路条件が成立という)、車両の条件として画像投影対象にできる車両であること(以下、車両条件が成立という)、路面の条件として画像投影対象にできる路面状態であること(以下、路面条件が成立という)が挙げられ、車両条件および路面条件の少なくとも一方が成立しており(
図3におけるOR回路を参照)、且つ道路条件が成立している(
図3におけるAND回路を参照)場合に限り、交差点ISの路面や車両Vへの画像の投影が可能であるとされる。
【0039】
具体的に、道路条件としては、交通量条件、天候条件、事故の有無条件が挙げられる。交通量条件は、交通量が極端に少ない場合や渋滞等によって画像が連続投影となることで交通の妨げとなる可能性がある場合には不成立とされ、それ以外の場合(交通量が比較的多く、且つ画像を投影しても交通の妨げとならない場合)には成立とされる。天候条件は、雨、霧、雪等の影響によって、画像の投影を行った場合に運転者が眩惑されてしまう可能性がある場合には不成立とされ、それ以外の場合には成立とされる。また、事故の有無条件は、事故が発生していたり、画像が事故処理の妨げになる場合には不成立とされ、それ以外の場合には成立とされる。そして、交通量条件、天候条件、事故の有無条件が共に成立しており画像の投影に問題がないと判断された場合にはAND回路に向けて「1」が出力され、これら条件のうち少なくとも一つでも成立しておらず画像の投影に問題があると判断された場合にはAND回路に向けて「0」が出力される。
【0040】
また、車両条件としては、当該車両Vが緊急車両でなく、他の広告を提示している車両(所謂サイネージ搭載車両等)ではなく、画像の投影を行った場合に運行の妨げとなる可能性のある車両(介護車両等)ではなく、且つ前記画像投影拒否スイッチがON操作されていない(画像投影を拒否するモードとなっていない)場合には画像投影対象にできる車両であると判断されてOR回路に向けて「1」が出力され、これら条件のうち少なくとも一つでも成立しておらず(例えば車両Vが緊急車両である場合)画像投影対象にできない(対象外)車両であると判断された場合にはOR回路に向けて「0」が出力される。
【0041】
また、路面条件としては、当該道路が工事中ではなく、水溜まりが存在しておらず、道路が冠水しておらず、積雪がなく、且つ通常以外の路面の描画物(例えば落書き等)がない場合には画像投影対象にできる路面であると判断されてOR回路に向けて「1」が出力され、これら条件のうち少なくとも一つでも成立しておらず(例えば水溜まりが存在している場合)には画像投影対象にできない路面であると判断されてOR回路に向けて「0」が出力される。
【0042】
そして、車両条件および路面条件の各出力において少なくとも一方の出力が「1」となっておれば、OR回路からAND回路に向けて「1」が出力される。一方、車両条件および路面条件の各出力において両方共に出力が「0」となっておれば、画像の投影は不可と判断される。
【0043】
また、OR回路からAND回路に向けて「1」が出力されている状況であっても道路条件の出力が「0」となっておれば、画像の投影は不可と判断される。また、OR回路からAND回路に向けて「1」が出力され且つ道路条件の出力が「1」となっておれば、交差点ISの路面や車両Vへの画像の投影が可能であると判断される。
【0044】
このようにして画像の投影可否判断がなされ、画像の投影が不可であり、ステップST5でNO判定された場合には、ステップST6に移り、画像の投影を中断してステップST12に移る。
【0045】
一方、画像の投影が可能であり、ステップST5でYES判定された場合には、ステップST7に移り、クラウドサーバ3が抽出した画像の情報の内容(投影内容)を判断する。具体的には、この画像の情報の内容が広告に該当するものであるか注意喚起に該当するものであるかを判断する。この判断は、クラウドサーバ3が抽出した画像の情報に併せて当該画像が広告に該当するものであるか注意喚起に該当するものであるかの情報も含まれており、その情報を読み取ることによって行われる。
【0046】
画像の情報の内容が広告に該当するものである場合には、ステップST8に移り、交差点ISにおける自動車用信号機が赤信号となっているか否かを判定する。より具体的には、交差点ISがスクランブル交差点である場合に、全ての自動車用信号機が赤信号となっており歩行者用信号機が青信号となっているか否かを判定する。このステップは、交差点IS内に車両Vが進入しない状況において広告を提示する画像を投影させるためのものである。
【0047】
この判定がNOの場合にはステップST7に戻るのに対し、この判定がYESである場合にはステップST9に移り、その広告を提示する画像(広告画像)を交差点ISの路面および車両Vに向けて投影する。つまり、路面投影用プロジェクタ25aから交差点ISの路面に向けて画像を投影し、移動体投影用プロジェクタ25bから車両Vに向けて画像を投影する。
【0048】
図4は、情報表示システム1によって広告の提示が行われている状況の一例を示す交差点IS周辺の図である。この
図4では、路面上や車両Vに食品(より具体的にはピザ)の広告画像が投影表示された状態を示している。より具体的には、信号機TL1に取り付けられたシステムユニット2Aから(当該システムユニット2Aにおける投影装置の路面投影用プロジェクタから)交差点ISの中央部に向けて食品の広告画像が投影されている。また、信号機TL2に取り付けられたシステムユニット2Bから(当該システムユニット2Bにおける投影装置の移動体投影用プロジェクタから)、交差点ISの手前で信号待ちしている車両V1の側面に向けて食品の広告画像が、交差点ISを通過した車両V2の側面に向けて笑顔の画像(食品のイメージを良くする広告画像)がそれぞれ投影されている。更に、信号機TL3に取り付けられたシステムユニット2Cから(当該システムユニット2Cにおける投影装置の移動体投影用プロジェクタから)交差点ISの手前で信号待ちしている車両V3の前面および交差点ISを通過した車両V4の背面それぞれに向けて笑顔の画像(食品のイメージを良くする広告画像)がそれぞれ投影されている。この場合、交差点ISの中央部に投影されていた食品の画像を笑顔の画像に向けて移動させ、笑顔の画像が食品を食しているイメージ画像を作り出す(複数の画像同士を連繋させる)画像を作り出すようにしてもよい。そして、前述したように投影装置25の移動体投影用プロジェクタ25bから車両V2,V4に向けての画像の投影は、車両V2,V4の移動に追従して行われる。具体的には、交差点ISを通過しながら走行している車両V2,V4に対し、該車両V2,V4の移動に追従するように移動体投影用プロジェクタ25bから車両V2,V4に向けて画像の投影が行われる。
【0049】
このような広告画像の投影により、交差点ISの手前で信号待ちしている車両V1,V3の乗員や、交差点IS付近を歩行している歩行者Hに対して効果的な広告の提示(訴求効果の高い広告の提示)を行うことができる。
【0050】
ステップST7の判定において、画像の情報の内容が注意喚起に該当するものである場合には、ステップST10に移り、交差点ISにおける自動車用信号機が赤信号以外のものとなっているか否かを判定する。このステップは、交差点IS内に車両Vが進入してくる場合に運転者に対して注意喚起を行うための画像を投影させるためのものである。
【0051】
この判定がNOの場合にはステップST7に戻るのに対し、この判定がYESである場合にはステップST11に移り、その注意喚起の画像を交差点ISの路面に向けて投影する。
【0052】
図5は、情報表示システム1によって車両Vの運転者に対する注意喚起が行われている状況の一例を示す交差点IS周辺の図である。この
図5では、右折専用車線RLを有する交差点ISにおいて信号機TLの右折矢印が点灯している状況で、この右折専用車線RLを走行してきた車両Vの運転者に、右折矢印が消灯するタイミングでの自車両の位置を教示させるためのものとなっている。具体的には、現時点から右折矢印が消灯するタイミングまでの時間と、現在の車両Vの車速と車両制御情報(情報取得部21によって取得されている車速の情報および車両制御情報に基づく車両Vの加速度や減速度)を用いて、当該車両Vが交差点ISに進入した場合に右折矢印が消灯している状態で当該車両Vが走行している経路を路面上に画像投影によって表示するものである。
図5に示すものにあっては、破線の斜線を付した領域が右折矢印が消灯している状態で車両Vが走行している経路の領域となっている。つまり、現在の走行状態のまま交差点ISに進入した場合には、交差点内におけるAの位置に達したタイミングで右折矢印が消灯することを運転者に教示している。より具体的には、この破線の斜線を付した領域が赤色や黄色で塗り潰される画像が表示される。運転者は、この投影された画像を見ることで、交差点ISに進入すべきか否かを判断することになる。このような注意喚起のための画像の投影により、車両Vの運転者に対して効果的な注意喚起を行うことができる。
【0053】
尚、
図5では、車両Vの運転者に対する注意喚起を行うための画像の投影として、交差点ISの路面に向けて投影を行うものとしているが、先行する車両Vの背面(バックドア等)に対して注意喚起を行うための画像を投影するものとしてもよい。例えば、先行する車両Vの背面に、信号機が青から黄色に切り替わるまでの時間(現時点からの経過時間)を画像として投影(数字の画像の投影)するようにしてもよい。
【0054】
ステップST9での広告を提示する画像の投影またはステップST11での注意喚起のための画像の投影を行った後、ステップST12に移り、信号機が切り替わる等の状況変化を生じたか否かを判定する。状況変化が生じていない場合には、ステップST12でNO判定され、現在の画像の投影状態を維持する。一方、状況変化が生じ、ステップST12でYES判定された場合には、ステップST13に移り、現在の時間帯が深夜であるか否かを判定する。これは、歩行者が存在しない可能性のある時間帯であって広告の提示や注意喚起を行う必要性が低いことを判定するためのステップである。
【0055】
現在の時間帯が深夜であり、ステップST13でYES判定された場合には、本動作(情報表示動作)を終了する。一方、現在の時間帯が深夜ではなく、ステップST13でNO判定された場合には、リターンされて前記ステップST1からの動作を繰り返す。つまり、交差点ISに近づいてくる新たな車両Vが認識されることに伴って前述したステップST1からの処理動作が実行される。
【0056】
以上の動作が繰り返されることになる。
【0057】
-実施形態の効果-
以上説明したように、本実施形態では、投影装置25(より具体的には移動体投影用プロジェクタ25b)によって車両Vに画像を投影するに際し、車両Vの移動に追従して該車両Vに向けて画像の投影を行うようにしている。このため、路面等の固定された物体のみに対して画像を投影していた従来技術に比べて、効果的な注意喚起や広告の提示等を行うことができ、これまでに無い情報表示システムを提供することができる。
【0058】
-変形例-
次に、情報表示システム1における投影装置25の路面投影用プロジェクタ25aから路面上に画像の投影が行われる場合の変形例について説明する。本変形例は、歩行者に対して注意喚起を行うための画像の投影である。
【0059】
図6は、情報表示システムによって歩行者Hに対する注意喚起が行われている状況の一例を示す交差点周辺の図である。本変形例にあってはシステムユニット2が歩行者用信号機TLに設置されており、システムユニット2に備えられた投影装置25の路面投影用プロジェクタ25aから横断歩道CW上に画像が投影されるようになっている。ここでは、歩行者Hが
図6における奥側から手前側に横断する場合を例に挙げて説明する。
【0060】
具体的には、歩行者用信号機TLが青信号となっている場合に、現時点から赤信号に切り替わるまでの時間に応じて、投影によって色が変化する白線WLを切り替えるものとなっている。
図6に示すものにあっては、破線の斜線を付した領域が、投影によって色が変化している白線WLを示している。例えば、この破線の斜線を付した領域が赤色や黄色で塗り潰される画像が表示される。つまり、現時点で投影によって色が変化している白線WLよりも歩行者Hから見て奥側(渡り切る側)を横断している場合には、歩行者用信号機TLが赤信号に切り替わるまでに渡り切ることが可能であり、現時点で投影によって色が変化している白線WL上を横断している場合には、そのままの歩行状態(そのままの歩行速度で歩行を継続した場合)では、歩行者用信号機TLが赤信号に切り替わるまでに渡り切ることが不可能であることを歩行者Hに知らせるようにしている。この場合の歩行速度は情報取得部21によって取得されたものであってもよいし、一般的な人の歩行速度として予め設定されたものであってもよい。この投影によって色が変化する領域(白線WL上での領域)は時間の経過に伴って(赤信号に切り替わるまでの時間が短くなるのに伴って)拡大していく(渡り切る側に拡大していく)ことになる。
【0061】
これにより、横断歩道CWを渡っている歩行者Hおよび横断歩道CWを渡ろうとしている歩行者Hに対する注意喚起を行うことができる。例えば、横断歩道CWを渡っている歩行者Hにあっては、投影によって色が変化している白線WLよりも奥側(渡り切る側)を横断している状況であれば、そのままの歩行速度で歩行すればよいことを認識でき、投影によって色が変化している白線WL上を横断している状況であれば、歩行速度を速めて横断歩道CWを渡り切るかUターンして歩道に戻るかを選択する必要があることを認識できる。
【0062】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0063】
例えば、前記実施形態では、交差点ISにおいてその周囲の人(車両の運転者や歩行者等)に対する注意喚起や広告の提示を行うための情報表示システム1として本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、交差点以外の道路においてその周囲の人に対する注意喚起や広告の提示を行うための情報表示システムとして構築されたものであってもよい。例えば、自動車専用道路や高速道路に適用されるものや、駐車場に適用されるものであってもよい。
【0064】
また、前記実施形態では、広告として食品(具体的にはピザ)を提示する場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、その他の商品の広告を提示するものとしてもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、投影装置25が路面および車両Vそれぞれに画像を投影する場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、車両Vのみを対象として画像を投影するものであってもよい。
【0066】
また、前記実施形態では、本発明でいう表示情報特定部としての機能を情報識別部22に備えさせるようにしていたが、この機能を投影制御部24に備えさせるようにしてもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、投影装置25に接続された投影制御部24からの制御信号に応じて、車両Vの移動に追従して移動体投影用プロジェクタ25bから車両Vに向けて画像の投影を行うようにしていた。本発明はこれに限らず、投影装置25に図示しない投影制御部を内蔵させ、この投影制御部からの制御信号に応じて、車両Vの移動に追従して移動体投影用プロジェクタ25bから車両Vに向けて画像の投影を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、取得した情報に基づいて画像の投影表示を行う情報表示システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 情報表示システム
21 情報取得部
22 情報識別部(表示情報特定部)
24 投影制御部
25 投影装置
V 車両(移動体)