(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191670
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】X線CT装置及び画像生成方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20221221BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100036
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】豊田 哲弘
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA02
2G001HA08
2G001HA14
2G001JA08
(57)【要約】
【課題】汎用性のあるモータ等を用いた回転手段を使用する場合において、より高精度の計測を行うことができるX線CT装置及び画像生成方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかるX線CT装置1は、X線源11及びX線検出器12と被写体とを相対的に回転させながら、被写体を撮像するX線CT装置1であって、X線源11とX線検出器12との位置関係を示す幾何学パラメータを用いて、キャリブレーション用被検体40にX線を照射することによって得られる理論像を算出する理論像算出部と、キャリブレーション用被検体40の理論像と、キャリブレーション用被検体40にX線を照射することによって得られた透過画像とのずれ量に基づいて、補正量を算出する補正量算出部と、補正量を用いて被写体の透過画像を補正する画像補正部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を載置するテーブルと、
前記被写体に対してX線を照射するX線源と、
前記被写体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器が検出したX線量に基づいて、前記被写体の透過画像を生成する透過画像生成部と、を備え、
前記X線源及び前記X線検出器と被写体とを相対的に回転させながら、前記被写体を撮像するX線CT装置であって、
前記X線源と前記X線検出器との位置関係を示す幾何学パラメータを用いて、キャリブレーション用被検体にX線を照射することによって得られる理論像を算出する理論像算出部と、
前記キャリブレーション用被検体の理論像と、前記キャリブレーション用被検体にX線を照射することによって得られた透過画像とのずれ量に基づいて、補正量を算出する補正量算出部と、
前記補正量を用いて前記被写体の透過画像を補正する画像補正部と、
を備えるX線CT装置。
【請求項2】
前記X線源と、前記X線検出器とを把持する把持装置と、
前記把持装置の動作と、前記テーブルの回転動作との少なくともいずれか一方を制御する制御部と、
をさらに備えた、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記補正量を用いて補正された前記被写体の透過画像に基づいて、前記被写体の3D画像を生成する3D画像生成部をさらに備えた、
請求項1又は2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
テーブルに載置した被写体に対して、X線源からX線を照射するステップと、
前記被写体を透過したX線をX線検出器によって検出するステップと、
前記X線検出器が検出したX線量に基づいて、前記被写体の透過画像を生成するステップと、を備え、
前記X線源及び前記X線検出器と前記被写体とを相対的に回転させながら前記被写体を撮像するX線CT装置を用いた画像生成方法であって、
前記被写体を撮像する前に、キャリブレーション用被検体を用いて前記X線CT装置のキャリブレーションを行う際、
前記X線源と前記X線検出器との位置関係を示す幾何学パラメータを用いて、キャリブレーション用被検体にX線を照射することによって得られる理論像を算出するステップと、
前記キャリブレーション用被検体の理論像と、前記キャリブレーション用被検体にX線を照射することによって得られた透過画像とのずれ量に基づいて、補正量を算出するステップと、
前記補正量を用いて前記被写体の透過画像を補正するステップと、
をさらに備える画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線CT装置及び画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、計測用X線CT(Computed Tomography)装置は、外観によって確認することが困難な部品の欠陥や、溶接の不良などの検査に用いられている。X線CT装置は、高い計測精度が要求されることから、キャリブレーションを正確に行うことが重要である。X線CT装置の基本特性のキャリブレーションは、キャリブレーション用被検体を撮影することによって得られた画像から求められた各種のパラメータを用いて行われる。
【0003】
特許文献1には、X線CT装置において、キャリブレーション用被検体を、回転手段を用いて撮影した画像から、画像上の回転中心位置及び回転角を算出し、補正テーブルを予め作成することによって、被写体の画像を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたX線CT装置では、キャリブレーションにおいて、回転手段の回転軸の回転中における「ぶれ」が考慮されていないため、当該「ぶれ」によって計測誤差が残り、精度良くキャリブレーションを行うことができない虞がある。そのため、特許文献1に開示されたX線CT装置は、産業用ロボットなどに用いられるようなX線CTへの利用を想定した精度を有していない一般的なモータによる回転手段のキャリブレーションを精度良く行うことが困難である。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、産業用ロボットのような一般的なモータ等を用いた汎用性がある回転手段を使用しても、高精度の計測を行うことができるX線CT装置、画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるX線CT装置は、被写体を載置するテーブルと、前記被写体に対してX線を照射するX線源と、前記被写体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器が検出したX線量に基づいて、前記被写体の透過画像を生成する透過画像生成部と、を備え、前記X線源及び前記X線検出器と被写体とを相対的に回転させながら、前記被写体を撮像するX線CT装置であって、前記X線源と前記X線検出器との位置関係を示す幾何学パラメータを用いて、キャリブレーション用被検体にX線を照射することによって得られる理論像を算出する理論像算出部と、前記キャリブレーション用被検体の理論像と、前記キャリブレーション用被検体にX線を照射することによって得られた透過画像とのずれ量に基づいて、補正量を算出する補正量算出部と、前記補正量を用いて前記被写体の透過画像を補正する画像補正部と、を備える。
【0008】
本発明にかかる画像生成方法は、テーブルに載置した被写体に対して、X線源からX線を照射するステップと、前記被写体を透過したX線をX線検出器によって検出するステップと、前記X線検出器が検出したX線量に基づいて、前記被写体の透過画像を生成するステップと、を備え、前記X線源及び前記X線検出器と前記被写体とを相対的に回転させながら前記被写体を撮像するX線CT装置を用いた画像生成方法であって、前記被写体を撮像する前に、キャリブレーション用被検体を用いて前記X線CT装置のキャリブレーションを行う際、前記X線源と前記X線検出器との位置関係を示す幾何学パラメータを用いて、キャリブレーション用被検体にX線を照射することによって得られる理論像を算出するステップと、前記キャリブレーション用被検体の理論像と、前記キャリブレーション用被検体にX線を照射することによって得られた透過画像とのずれ量に基づいて、補正量を算出するステップと、前記補正量を用いて前記被写体の透過画像を補正するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、産業用ロボットのような一般的なモータ等を用いた汎用性がある回転手段を使用しても、高精度の計測を行うことができるX線CT装置、画像生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明における実施形態1にかかるX線CT装置の構成図である。
【
図2】本発明における実施形態2にかかるX線CT装置における被写体のX線透過画像のイメージを示す図である。
【
図3】本発明における実施形態2にかかるX線CT装置において、X線の照射方向に対して垂直な方向に、キャリブレーション用被検体の中心軸に対して回転軸に距離Lの「ぶれ」が生じた場合の撮像系とX線透過画像のイメージを示す図である。
【
図4】本発明における実施形態2にかかるX線CT装置において、X線の照射方向に対して垂直な平面上において、キャリブレーション用被検体の中心軸に対して回転軸に角度θの「ぶれ」が生じた場合の撮像系とX線透過画像のイメージを示す図である。
【
図5】本発明における実施形態2にかかるX線CT装置において、X線照射方向に、キャリブレーション用被検体の中心軸に対して回転軸に角度θの「ぶれ」が生じた場合の撮像系とX線透過画像のイメージを示す図である。
【
図6】本発明における実施形態2にかかるX線CT装置の構成図である。
【
図7】本発明における実施形態2の変形例にかかるX線CT装置の構成図である。
【
図8】本発明における実施形態3にかかるX線CT装置の構成図である。
【
図9】本発明における実施形態3の変形例にかかるX線CT装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<実施形態1>
<X線CT装置1の構成>
本実施形態におけるX線CT装置1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態にかかるX線CT装置1の構成図である。X線CT装置1は、撮像部10、制御演算部20及び表示装置30を備える。X線CT装置1は、キャリブレーション用被検体40を含む被写体と、被写体を撮像する撮像系とを相対的に回転させながら被写体を撮像する。本実施形態において、X線CT装置1は、キャリブレーション用被検体40を、テーブル16に載置して回転させる把持装置15が把持した状態で、撮像する。以下、X線CT装置1の各構成要素について、キャリブレーション用被検体40を撮像する場合を想定して説明するが、キャリブレーション用被検体40以外の被写体を撮像する場合においても同じ動作をするものとする。
【0013】
キャリブレーション用被検体40は、有限のX線透過率を持つ材質を用いて形成される。キャリブレーション用被検体40は、テーブル16の回転軸cとキャリブレーション用被検体40の中心軸とが一致するように配置するための位置決め手段を備えてもよい。また、キャリブレーション用被検体40は、X線透過画像上の上下左右の位置と角度と拡大率が特定できる既知の形状あればよい。図示するキャリブレーション用被検体40は、丸棒状に削り出したX線吸収係数の大きい材質であって、段差を有し、その直径が変化する形状である。あるいは、キャリブレーション用被検体40は、既知の直径を持った球状のX線吸収係数の大きい材質を既知の間隔で直線状に配置した形状であってもよいが、これらの形状に限らず様々な形状であってもよい。
【0014】
撮像部10は、X線源11、X線検出器12、ブラケット13、把持装置14、把持装置15及びテーブル16を備える。制御演算部20は、撮像部制御手段21、画像収集手段22、幾何学パラメータ収集手段23、理論像計算手段24、X線透過画像補正量計算手段25、補正量記録手段26、X線透過画像補正手段27、再構成手段28及び画像表示手段29を備える。
【0015】
撮像部10は、撮像系であるX線源11及びX線検出器12を用いて、キャリブレーション用被検体40のX線透過画像を取得する。制御演算部20は、撮像部10の各要素を制御し、取得したキャリブレーション用被検体40のX線透過画像を補正し、補正後のX線透過画像に基づいて3D画像を生成する。表示装置30は、キャリブレーション用被検体40の3D画像を表示する。X線CT装置1は、コーンビームX線CT装置であってもよいがこれに限らず、ヘリカルCT装置等の様々なX線CT装置であってもよい。
【0016】
X線源11は、キャリブレーション用被検体40に対してX線を照射する。X線検出器12は、キャリブレーション用被検体40を透過したX線を検出する。X線検出器12は、取得したキャリブレーション用被検体40のX線透過画像を制御演算部20に出力する。図示するX線検出器12は、キャリブレーション用被検体40のX線透過画像である2次元画像を取得するフラットパネルディテクターである。あるいは、X線検出器12は、X線透過像を可視光像に変換するイメージインテンシファイアとCMOSセンサなどの可視光センサとの組み合わせや、1次元画像を得るX線ラインセンサなどでもよく、様々な形態を用いることができる。
【0017】
ブラケット13は、X線源11とX線検出器12とを連結する。把持装置14は、ブラケット13を介してX線源11及びX線検出器12を把持し、キャリブレーション用被検体40に対する撮像系(X線源11及びX線検出器12)の位置を調整する。把持装置15は、キャリブレーション用被検体40を把持する。
図1に示す例では、キャリブレーション用被検体40は、テーブル16を介して、把持装置15に把持されている。把持装置15は、テーブル16と、キャリブレーション用被検体40を把持し、これらを回転軸c周りに回転させることによって複数の撮像方向からのX線透過画像の取得を可能にする。なお、X線CT装置1は、把持装置15に自動ピッキング機能を付加することによって大量の被写体の撮像を自動で実行できる。
【0018】
把持装置14、15の配置及び姿勢は制御演算部20によって制御される。回転軸cと撮像系(X線源11及びX線検出器12)との相対的な位置及び回転角度は、キャリブレーション用被検体40の3D画像生成の際に使用される幾何学パラメータとして出力される。すなわち、幾何学パラメータは、撮像系(X線源11及びX線検出器12)とキャリブレーション用被検体40との位置関係を示すパラメータである。例えば、幾何学パラメータは、回転軸cを基準とするX線源11の位置及びX線検出器12の位置である。より具体的には、幾何学パラメータは、撮像部10の各要素の相対位置を示すパラメータであり、例えば回転軸cを基準としたX線源11の位置及び角度並びにX線検出器12の位置及び角度等である。幾何学パラメータにより、X線の焦点位置等を算出可能である。なお、実際には、撮像部10の各要素の相対位置すなわち幾何学パラメータは設計値に対して設置誤差を含んでいる。しかしながら、これらの誤差は既知の3次元計測器などを用いて計測でき、キャリブレーションを行う前に幾何学パラメータを修正できる。
【0019】
撮像部制御手段21は、撮像部10の各要素を制御する。撮像部制御手段21は、X線照射手段211、検出器制御手段212、把持装置制御手段213、214を備える。X線照射手段211は、X線の透過力である照射電力や照射量などのX線の出力条件を制御する。また、X線照射手段211は、照射するX線のON/OFFを制御する。検出器制御手段212は、X線検出器12が検出するX線の露光時間等を示す取得条件を制御する。把持装置制御手段213、214は、把持装置14、15の動作をそれぞれ制御する。
【0020】
画像収集手段22は、X線検出器12及び検出器制御手段212が生成し、出力するX線透過画像を収集し、格納する。幾何学パラメータ収集手段23は、各撮像姿勢及び方向における撮像系の幾何学パラメータを収集し、格納する。理論像計算手段24は、撮像系の位置関係を示す幾何学パラメータを用いて、キャリブレーション用被検体40の理論像を算出する。理論像は、幾何学パラメータとキャリブレーション用被検体40の形状とから理論的に算出できる。すなわち、理論像はキャリブレーション用被検体40にX線を照射することによって得られる理論的な寸法を有する像である。
【0021】
X線透過画像補正量計算手段25は、理論上のキャリブレーション用被検体40の理論像及びキャリブレーション用被検体40のX線透過画像のずれ量に基づいて、補正量を計算する。ずれ量は、X線透過画像における回転軸対するキャリブレーション用被検体40の位置ずれ量とキャリブレーション用被検体40のずれ角度が含まれる。撮像されたキャリブレーション用被検体40は、幾何学パラメータを用いて理論像に基づいた画像に補正することができる。しかしながら、回転軸cの「ぶれ」に起因するX線透過画像内におけるキャリブレーション用被検体40のずれは補正できない。そこで、X線透過画像補正量計算手段25によって計算された補正量を用いて、X線透過画像内におけるキャリブレーション用被検体40のずれを補正することができる。
【0022】
補正量記録手段26は、X線透過画像補正量計算手段25が計算したX線透過画像の補正量を記録する。X線透過画像補正手段27は、補正量を用いてキャリブレーション用被検体40のX線透過画像を補正する。X線透過画像補正手段27は、補正量を用いてキャリブレーション用被検体40の透過画像を補正しても、完全に理論像とは一致しない可能性もある。そのため、X線透過画像補正手段27は、ビニングなどの手法を用いて、キャリブレーション用被検体40のX線透過画像の不鮮明さを改善するよう調整してもよい。再構成手段28は、補正量を用いて補正されたキャリブレーション用被検体40のX線透過画像に基づいて、被写体の3D画像を生成する。画像表示手段29は、表示装置30にキャリブレーション用被検体40の3D画像を表示させる。
【0023】
産業用ロボットのような一般的なモータ等の汎用性がある回転手段における回転軸は、「ぶれ」が考慮されていないため、当該「ぶれ」によって計測誤差が残り、精度良くキャリブレーションを行うことができない虞がある。これに対し、本実施形態におけるX線CT装置1は、一般的なモータ等の汎用性がある回転手段を用いた場合にも、精度良くキャリブレーションを行うことができる。本実施形態におけるX線CT装置1では、幾何学パラメータに基づいて算出されたキャリブレーション用被検体40の理論像を求める。そして、当該キャリブレーション用被検体40の理想像と実際に得られるキャリブレーション用被検体40のX線透過画像と比較し、理論像と一致するようにX線透過画像の角度と倍率の補正量を計算する。
【0024】
ここで、回転軸cの「ぶれ」に対するキャリブレーション用被検体40のX線透過画像の補正について、
図2~
図5を用いて説明する。
図2~
図5に示すように、キャリブレーション用被検体40はテーブル16に載置され、X線源11から照射されたX線を透過され、X線検出器12において検出される。
図2~
図5に示すX線透過画像における破線は、キャリブレーション用被検体40の理論像40aを示し、実線は、キャリブレーション用被検体40にX線を照射することによって得られた透過画像40bを示す。
【0025】
図2において、回転軸cとして回転する棒状のキャリブレーション用被検体40を撮像するものとし、キャリブレーション用被検体40の中心軸と回転軸cとは一致するように配置されているものとする。
図2は、回転軸cに「ぶれ」がない状態でキャリブレーション用被検体40を撮像した場合の撮像系とX線透過画像とのイメージである。そのため、キャリブレーション用被検体40の理論像40a及びキャリブレーション用被検体40にX線を照射することによって得られた透過画像40bは一致する。
【0026】
図3は、X線の照射方向に対して垂直な方向に、キャリブレーション用被検体40の中心軸に対して回転軸cに距離Lの「ぶれ」が生じた場合の撮像系とX線透過画像のイメージである。そのため、キャリブレーション用被検体40の理論像40a及び透過画像40bは、距離L×撮像倍率に相当する位置ずれが生じている。そのため、透過画像40bを、距離L×撮像倍率に相当する補正量によって回転軸c方向に移動させることによって補正する。
【0027】
図4は、X線の照射方向に対して垂直な平面上において、キャリブレーション用被検体40の中心軸に対して回転軸cに角度θの「ぶれ」が生じた場合の撮像系とX線透過画像のイメージである。そのため、キャリブレーション用被検体40の理論像40a及び透過画像40bは、回転軸cに対して角度θに相当する角度ずれが生じている。そのため、透過画像40bを、回転軸cを基準として角度θに相当する補正量によって回転させることによって補正する。
【0028】
図5は、X線照射方向に、キャリブレーション用被検体40の中心軸に対して回転軸cに角度θの「ぶれ」が生じた場合の撮像系とX線透過画像のイメージである。そのため、キャリブレーション用被検体40の理論像40a及び透過画像40bは、画像の上下において倍率が異なっていることから、透過画像40bの水平方向の走査線ごとに補正量を算出し、拡大又は縮小することによって補正する。
【0029】
上述したように、本実施形態におけるX線CT装置1は、キャリブレーション用被検体40の理論像と透過画像とを用いて算出した補正量を用いることによって、回転軸cの「ぶれ」を補正することができる。そのため、本実施形態におけるX線CT装置1によれば、作業用ロボットのモータ等を用いた汎用性のある回転手段を使用しても高精度の計測を行うことができる。
【0030】
<画像生成方法>
次に、
図1を参照して、本実施形態におけるX線CT装置1を用いた画像生成方法について説明する。
まず、被写体を撮像する際のX線CT装置1の動作について説明する。
まず、X線源11は、テーブル16に載置した被写体に対して、X線を照射する。
そして、X線検出器12は、被写体を透過したX線を検出し、検出したX線量に基づいて、被写体の透過画像を生成する。被写体の撮像は、X線源11及びX線検出器12と、被写体とを相対的に回転させながら行われる。
【0031】
次に、被写体を撮像する前に行うキャリブレーションについて説明する。キャリブレーションは、キャリブレーション用被検体40を用いて行われる。
まず、幾何学パラメータ収集手段23は、X線源11とX線検出器12との位置関係を示す幾何学パラメータを収集する。
次に、理論像計算手段24は、幾何学パラメータを用いて、キャリブレーション用被検体40にX線を照射することによって得られる理論像を算出する。
【0032】
そして、X線透過画像補正量計算手段25は、キャリブレーション用被検体40の理論像と、キャリブレーション用被検体40にX線を照射することによって得られた透過画像とのずれ量に基づいて、透過画像に適用する補正量を算出する。
被写体を撮像する際、X線透過画像補正手段27は、X線透過画像補正量計算手段25が計算した補正量を用いて、被写体の透過画像を補正する。
【0033】
<実施形態2>
本実施形態におけるX線CT装置1の構成について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態にかかるX線CT装置1の構成図である。X線CT装置1は、撮像部10、制御演算部20及び表示装置30を備える。撮像部10はX線源11、X線検出器12、把持装置14、把持装置15及びテーブル16を備える。制御演算部20は、撮像部制御手段21、画像収集手段22、幾何学パラメータ収集手段23、理論像計算手段24、X線透過画像補正量計算手段25、補正量記録手段26、X線透過画像補正手段27、再構成手段28及び画像表示手段29を備える。
【0034】
実施形態1におけるX線CT装置1と異なる点は、ブラケット13を用いず、キャリブレーション用被検体40をテーブル16に載置して撮像する点である。把持装置14は、X線源11を把持し、キャリブレーション用被検体40に対するX線源11の位置を調整する。把持装置15は、X線検出器12を把持し、キャリブレーション用被検体40に対するX線検出器12の位置を調整する。把持装置制御手段213、214は、把持装置14、15それぞれの動作を制御する。
【0035】
また、撮像部制御手段21は、テーブル制御手段215を備える。テーブル制御手段215は、キャリブレーション用被検体40を配置するテーブル16の回転動作を制御する。テーブル16は、回転軸cに沿った360度回転運動をする。テーブル16は、キャリブレーション用被検体40を配置し、回転軸cとして回転することで複数の撮像方向からのX線透過画像の取得を可能にする。
【0036】
図7に、本実施形態におけるX線CT装置1の変形例を示す。
図7に示すように、テーブル16は回転せず、X線源11及びX線検出器12が、テーブル16の中心軸を回転軸として回転してもよい。把持装置制御手段213、214は、X線源11及びX線検出器12をそれぞれ回転させる。
【0037】
本実施形態におけるX線CT装置1によれば、ブラケット13を用いないことからX線源11及びX線検出器12の設置位置の自由度が高まり、撮像可能なキャリブレーション用被検体40のサイズ及び形状の制約が緩和される。
【0038】
<実施形態3>
本実施形態におけるX線CT装置1の構成について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態にかかるX線CT装置1の構成図である。X線CT装置1は、撮像部10、制御演算部20及び表示装置30を備える。撮像部10はX線源11、X線検出器12、ブラケット13,把持装置14及びテーブル16を備える。制御演算部20は、撮像部制御手段21、画像収集手段22、幾何学パラメータ収集手段23、理論像計算手段24、X線透過画像補正量計算手段25、補正量記録手段26、X線透過画像補正手段27、再構成手段28及び画像表示手段29を備える。
【0039】
実施形態2におけるX線CT装置1と異なる点は、ブラケット13を用いるとともに、把持装置15を用いない点である。把持装置14は、ブラケット13を介してX線源11及びX線検出器12を把持し、キャリブレーション用被検体40に対する撮像系(X線源11及びX線検出器12)の位置を調整する。
図8において示すように、テーブル制御手段215がテーブル16の回転を制御する。テーブル16は、キャリブレーション用被検体40を配置し、回転軸cとして回転することで複数の撮像方向からのX線透過画像の取得を可能にする。
【0040】
図9に、本実施形態におけるX線CT装置1の変形例を示す。
図9に示すように、テーブル16は回転せず、X線源11及びX線検出器12が、テーブル16の中心軸を回転軸として回転してもよい。把持装置制御手段213は、把持装置14を介してX線源11及びX線検出器12をそれぞれ回転させる。
【0041】
本実施形態におけるX線CT装置1によれば、把持装置をコンパクトにするとともに、テーブル16の制御が不要であるため、装置全体の制御が簡略化される。
【0042】
上記の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0043】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 X線CT装置
10 撮像部
11 X線源
12 X線検出器
13 ブラケット
14、15 把持装置
16 テーブル
20 制御演算部
30 表示装置
40 キャリブレーション用被検体
c 回転軸