IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特開2022-191671歩行訓練システム、制御方法、及びプログラム
<>
  • 特開-歩行訓練システム、制御方法、及びプログラム 図1
  • 特開-歩行訓練システム、制御方法、及びプログラム 図2
  • 特開-歩行訓練システム、制御方法、及びプログラム 図3
  • 特開-歩行訓練システム、制御方法、及びプログラム 図4
  • 特開-歩行訓練システム、制御方法、及びプログラム 図5
  • 特開-歩行訓練システム、制御方法、及びプログラム 図6
  • 特開-歩行訓練システム、制御方法、及びプログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191671
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】歩行訓練システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20221221BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61H1/02 R
A61H3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100037
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 宏史
(72)【発明者】
【氏名】松本 大河
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA08
4C046AA25
4C046AA26
4C046AA42
4C046AA45
4C046BB08
4C046CC01
4C046DD13
4C046DD36
4C046EE02
4C046EE03
4C046EE05
4C046EE17
4C046FF02
(57)【要約】
【課題】適切に歩行訓練を行うことができる歩行訓練システム、制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】歩行訓練システム1は、訓練者900の脚を上方かつ前方に引張する引張手段と、脚の遊脚終期の開始タイミングを判定するために設けられたセンサと、遊脚終期の開始タイミングから、引張手段の引張力を低減する制御手段と、を備えた歩行訓練システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練者の脚を上方かつ前方に引張する引張手段と、
前記脚の遊脚終期の開始タイミングを判定するために設けられたセンサと、
前記遊脚終期の開始タイミングから、前記引張手段の引張力を低減する制御手段と、を備えた歩行訓練システム。
【請求項2】
側面視において、前記脚の下腿が水平面に対して直角になったタイミングを、前記遊脚終期の開始タイミングとして判定する請求項1に記載の歩行訓練システム。
【請求項3】
前記遊脚終期の開始タイミングから立脚となるタイミングまでの期間において、前記脚に対する引張力を徐々に減少させていく請求項1、又は2に記載の歩行訓練システム。
【請求項4】
前記センサが、前記脚の膝関節角度を検出するために、前記脚に装着された脚装具に取り付けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の歩行訓練システム。
【請求項5】
前記センサが、前記訓練者の側方から脚を撮像するように配置されたカメラを備えている請求項1~4のいずれか1項に記載の歩行訓練システム。
【請求項6】
引張手段によって、訓練者の脚を上方かつ前方に引張するステップと、
センサの検出結果に基づいて、前記脚の遊脚終期の開始タイミングを判定するステップと、
前記遊脚終期の開始タイミングから、前記引張手段の引張力を低減するステップと、を備えた歩行訓練システムの制御方法。
【請求項7】
側面視において、前記脚の下腿が水平面に対して直角になったタイミングを、前記遊脚終期の開始タイミングとして判定する請求項6に記載の歩行訓練システムの制御方法。
【請求項8】
前記遊脚終期の開始タイミングから立脚となるタイミングまでの期間において、前記脚に対する引張力を徐々に減少させていく請求項6、又は7に記載の歩行訓練システムの制御方法。
【請求項9】
前記センサが、前記脚の膝関節角度を検出するために、前記脚に装着された脚装具に取り付けられており、
前記膝関節角度に基づいて、前記遊脚終期の開始タイミングが判定されている請求項6~8のいずれか1項に記載の歩行訓練システムの制御方法。
【請求項10】
前記センサが、前記訓練者の側方から脚を撮像するように配置されたカメラを備えており、
前記カメラの撮像画像に基づいて、前記遊脚終期の開始タイミングが判定されている請求項6~9のいずれか1項に記載の歩行訓練システムの制御方法。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載の制御方法を、前記歩行訓練システムの制御コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行訓練システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歩行訓練装置が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1、2でが、ワイヤ及びモータを有する引張部がユーザの脚部に引張力を与えている。特許文献1では、脚部の前方への振出しの開始時、又は振出している期間において、引張部が追加の引張力を発生させている。特許文献2では、制御装置が、歩行補助装置の重心位置の加速度と重量から慣性力を算出している。そして、制御装置が慣性力を低減擦るように前後の引張部を制御している。
特許文献2では、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-35220号公報
【特許文献2】特開2018-75301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような歩行訓練装置では、より適切な引張力を与えることで、より効果的に歩行訓練を行うことができる。例えば、アシストが不要なタイミングでは引張力を与えてしまうと、効果的な訓練を行うことが困難になってしまう。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、適切に歩行訓練を行うための歩行訓練システム、制御方法、及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態における歩行訓練システムは、訓練者の脚を上方かつ前方に引張する引張手段と、前記脚の遊脚終期の開始タイミングを判定するために設けられたセンサと、前記遊脚終期の開始タイミングから、前記引張手段の引張力を低減する制御手段と、を備えている。
【0007】
上記の歩行訓練システムにおいて、側面視において、前記脚の下腿が水平面に対して直角になったタイミングを、前記遊脚終期の開始タイミングとして判定してもよい。
【0008】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記遊脚終期の開始タイミングから立脚となるタイミングまでの期間において、前記脚に対する引張力を徐々に減少させていくようにしてもよい。
【0009】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記センサが、前記脚の膝関節角度を検出するために、前記脚に装着された脚装具に取り付けられていてもよい。
【0010】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記センサが、前記訓練者の側方から脚を撮像するように配置されたカメラを備えていてもよい。
【0011】
本実施の形態における歩行訓練システムの制御方法は、引張手段によって、訓練者の脚を上方かつ前方に引張するステップと、センサの検出結果に基づいて、前記脚の遊脚終期の開始タイミングを判定するステップと、前記遊脚終期の開始タイミングから、前記引張手段の引張力を低減するステップと、を備えている。
【0012】
上記の歩行訓練システムの制御方法において、側面視において、前記脚の下腿が水平面に対して直角になったタイミングを、前記遊脚終期の開始タイミングとして判定するようにしてもよい。
【0013】
上記の歩行訓練システムの制御方法において、前記遊脚終期の開始タイミングから立脚となるタイミングまでの期間において、前記脚に対する引張力を徐々に減少させていくようにしてもよい。
【0014】
上記の歩行訓練システムの制御方法において、前記センサが、前記脚の膝関節角度を検出するために、前記脚に装着された脚装具に取り付けられており、前記膝関節角度に基づいて、前記遊脚終期の開始タイミングが判定されていてもよい。
【0015】
上記の歩行訓練システムの制御方法において、前記センサが、前記訓練者の側方から脚を撮像するように配置されたカメラを備えており、前記カメラの撮像画像に基づいて、前記遊脚終期の開始タイミングが判定されていてもよい。
【0016】
本実施の形態にかかるプログラムは、上記の制御方法を、前記歩行訓練システムの制御コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本開示により、適切に歩行訓練を行うための歩行訓練システム、制御方法、及びプログラムを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態にかかる歩行訓練システム1の概略斜視図である。
図2】脚装具の構成を示す斜視図である。
図3】歩行訓練システム1の制御ブロック図である。
図4】歩行サイクルのフェーズを説明するための図である。
図5】1歩行サイクルにおける引張力の変化を示すグラフである。
図6】判定用のセンサの具体例を説明するための図である。
図7】歩行訓練システムの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0020】
(システム構成)
図1は、実施形態にかかるリハビリ支援システムの一構成例を示す全体概念図である。本実施形態にかかるリハビリ支援システム(歩行訓練システム1)は、主に、歩行訓練装置100と、脚装具120によって構成される。
【0021】
歩行訓練装置100は、訓練者(ユーザ)900のリハビリ(リハビリテーション)を支援するリハビリ支援装置の一具体例である。歩行訓練装置100は、一方の脚に麻痺を患う片麻痺患者である訓練者900が、訓練スタッフ901の指導に従って歩行訓練を行うための装置である。ここで、訓練スタッフ901は、療法士(理学療法士)又は医師とすることができ、訓練者の訓練を指導又は介助などにより補助することから、訓練指導者、訓練介助者、訓練補助者などと称することもできる。
【0022】
歩行訓練装置100は、主に、全体の骨格を成すフレーム130に取り付けられた制御盤133と、訓練者900が歩行するトレッドミル131と、を備える。さらに、脚装具120は、訓練者900の麻痺側の脚部である患脚に装着される。図1では、脚装具120は、訓練者900の右脚に装着されている。
【0023】
フレーム130は、床面に設置されるトレッドミル131上に立設されている。トレッドミル131は、不図示のモータによりリング状のベルト132を回転させる。トレッドミル131は、訓練者900の歩行を促す装置であり、歩行訓練を行う訓練者900は、ベルト132に乗り、ベルト132の移動に合わせて歩行動作を試みる。なお、訓練スタッフ901は、例えば図1に示すように訓練者900の背後のベルト132上に立って一緒に歩行動作を行うこともできるが、通常、ベルト132を跨いだ状態で立つなど、訓練者900の介助を行い易い状態に居ることが好ましい。
【0024】
フレーム130は、制御盤133や、訓練用モニタ138を支持している。制御盤133は、モータやセンサの制御を行う全体制御部210を収容する。訓練用モニタ138は、例えば、液晶パネルであり、訓練の進捗状況等を訓練者900へ提示する。また、フレーム130は、訓練者900の頭上部前方付近で前側引張部135を、頭上部付近でハーネス引張部112を、頭上部後方付近で後側引張部137を、それぞれ支持している。また、フレーム130は、訓練者900が掴むための手摺り130aを含む。
【0025】
手摺り130aは、訓練者900の左右両側に配置されている。それぞれの手摺り130aは、訓練者900の歩行方向と平行な方向に配置されている。手摺り130aは、上下位置、及び左右位置が調整可能となっている。つまり、手摺り130aは、その高さ及び幅を変更する機構を含むことができる。さらに、手摺り130aは、例えば歩行方向の前方側と後方側とで高さを異ならせるように調整することで、その傾斜角度を変更できるように構成することもできる。例えば、手摺り130aは、歩行方向に沿って徐々に高くなるような傾斜角度を付すことができる。
【0026】
また、手摺り130aには、訓練者900から受ける荷重を検出する手摺りセンサ218が設けられている。例えば、手摺りセンサ218は、電極がマトリックス状に配置された抵抗変化検出型の荷重検出シートとすることができる。また、手摺りセンサ218は、3軸の加速度センサ(x,y,z)と3軸のジャイロセンサ(roll,pitch,yaw)とを複合させた6軸センサとすることもできる。但し、手摺りセンサ218の種類や設置位置は問わない。
【0027】
カメラ140は、訓練者900の全身を観察するための撮像部としての機能を担う。カメラ140は、訓練用モニタ138の近傍に、訓練者と相対するように設置されている。カメラ140は、訓練中の訓練者900の静止画や動画を撮影する。カメラ140は、訓練者900の全身を捉えられる程度の画角となるような、レンズと撮像素子のセットを含む。撮像素子は、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサであり、結像面に結像した光学像を画像信号に変換する。
【0028】
前側引張部135と後側引張部137の連携した動作により、脚装具120の荷重が患脚の負担とならないように当該荷重を相殺し、更には、設定の程度に応じて患脚の振出し動作をアシストする。
【0029】
前側ワイヤ134は、一端が前側引張部135の巻取機構に連結されており、他端が脚装具120に連結されている。前側引張部135の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、患脚の動きに応じて前側ワイヤ134を巻き取ったり繰り出したりする。同様に、後側ワイヤ136は、一端が後側引張部137の巻取機構に連結されており、他端が脚装具120に連結されている。後側引張部137の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、患脚の動きに応じて後側ワイヤ136を巻き取ったり繰り出したりする。このような前側引張部135と後側引張部137の連携した動作により、脚装具120の荷重が患脚の負担とならないように当該荷重を相殺し、更には、設定の程度に応じて患脚の振出し動作をアシストする。
【0030】
前側ワイヤ134、及び前側引張部135は訓練者900の脚を上方かつ前方に引張する第1引張手段となる。後側ワイヤ136、及び後側引張部137は訓練者900の脚を上方かつ後方に引張する第2引張手段となる。前側引張部135、及び後側引張部137は後述するように歩行フェーズに応じた引張力で、前側ワイヤ134と後側ワイヤ136を引っ張る。また、歩行フェーズに応じて、引張力の動作パターンが設定されていてもよい。
【0031】
例えば、訓練スタッフ901は、オペレータとして、重度の麻痺を抱える訓練者に対しては、アシストするレベルを大きく設定する。アシストするレベルが大きく設定されると、前側引張部135は、患脚の振出しタイミングに合わせて、比較的大きな力で前側ワイヤ134を巻き取る。訓練が進み、アシストが必要でなくなったら、訓練スタッフ901は、アシストするレベルを最小に設定する。アシストするレベルが最小に設定されると、前側引張部135は、患脚の振出しタイミングに合わせて、脚装具120の自重をキャンセルするだけの力で前側ワイヤ134を巻き取る。
【0032】
歩行訓練装置100は、装具110、ハーネスワイヤ111、及びハーネス引張部112を主な構成要素とする、安全装置としての転倒防止ハーネス装置を備える。装具110は、訓練者900の腹部に巻き付けられるベルトであり、例えば面ファスナによって腰部に固定される。装具110は、吊具であるハーネスワイヤ111の一端を連結する連結フック110aを備え、ハンガーベルトと称することもできる。訓練者900は、連結フック110aが後背部に位置するように、装具110を装着する。
【0033】
ハーネスワイヤ111は、一端が装具110の連結フック110aに連結されており、他端がハーネス引張部112の巻取機構に連結されている。ハーネス引張部112の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、ハーネスワイヤ111を巻き取ったり繰り出したりする。このような構成により、転倒防止ハーネス装置は、訓練者900が転倒しそうになった場合に、その動きを検知した全体制御部210の指示に従ってハーネスワイヤ111を巻き取り、装具110により訓練者900の上体を支えて、訓練者900の転倒を防ぐ。
【0034】
装具110は、訓練者900の姿勢を検出するための姿勢センサ217を備える。姿勢センサ217は、例えばジャイロセンサと加速度センサを組み合わせたものであり、装具110が装着された腹部の重力方向に対する傾斜角を出力する。
【0035】
管理用モニタ139は、フレーム130に取り付けられており、主に訓練スタッフ901が監視及び操作するための表示入力装置である。管理用モニタ139は、例えば液晶パネルであり、その表面にはタッチパネルが設けられている。管理用モニタ139は、訓練設定に関する各種メニュー項目や、訓練時における各種パラメータ値、訓練結果などを表示する。また、管理用モニタ139の近傍には、非常停止ボタン232が設けられている。訓練スタッフ901が非常停止ボタン232を押すことで、歩行訓練装置100が非常停止する。
【0036】
全体制御部210は、訓練設定に関する設定パラメータ、訓練結果として脚装具120から出力された運脚に関する各種データなどを含みうるリハビリデータを生成する。このリハビリデータには、訓練スタッフ901又はその経験年数や熟練度等を示すデータ、訓練者900の症状、歩行能力、回復度等を示すデータ、脚装具120の外部に設けられたセンサ等から出力された各種データなどを含むことができる。
【0037】
次に、脚装具120について、図2を用いて説明する。図2は、脚装具120の一構成例を示す概略斜視図である。脚装具120は、主に、制御ユニット121と、患脚の各部を支える複数のフレームと、足裏に掛かる荷重を検出するための荷重センサ222と、を備える。
【0038】
制御ユニット121は、脚装具120の制御を行う補助制御部220を含み、また、膝関節の伸展運動及び屈曲運動を補助するための駆動力を発生させる不図示のモータを含む。患脚の各部を支えるフレームは、上腿フレーム122と、上腿フレーム122に回動自在に連結された下腿フレーム123と、を含む。また、このフレームは、下腿フレーム123に回動自在に連結された足平フレーム124と、前側ワイヤ134を連結するための前側連結フレーム127と、後側ワイヤ136を連結するための後側連結フレーム128と、を含む。
【0039】
上腿フレーム122と下腿フレーム123は、図示するヒンジ軸H周りに相対的に回動する。制御ユニット121のモータは、補助制御部220の指示に従って回転して、上腿フレーム122と下腿フレーム123がヒンジ軸H周りに相対的に開くように加勢したり、閉じるように加勢したりする。制御ユニット121に収められた角度センサ223は、例えばロータリエンコーダであり、ヒンジ軸H周りの上腿フレーム122と下腿フレーム123の成す角を検出する。下腿フレーム123と足平フレーム124は、図示するヒンジ軸H周りに相対的に回動する。相対的に回動する角度範囲は、調整機構126によって事前に調整される。
【0040】
前側連結フレーム127は、上腿の前側を左右方向に伸延し、両端で上腿フレーム122に接続するように設けられている。また、前側連結フレーム127には、前側ワイヤ134を連結するための連結フック127aが、左右方向の中央付近に設けられている。後側連結フレーム128は、下腿の後側を左右方向に伸延し、両端でそれぞれ上下に伸延する下腿フレーム123に接続するように設けられている。また、後側連結フレーム128には、後側ワイヤ136を連結するための連結フック128aが、左右方向の中央付近に設けられている。
【0041】
上腿フレーム122は、上腿ベルト129を備える。上腿ベルト129は、上腿フレームに一体的に設けられたベルトであり、患脚の上腿部に巻き付けて上腿フレーム122を上腿部に固定する。これにより、脚装具120の全体が訓練者900の脚部に対してずれることを防止している。
【0042】
荷重センサ222は、足平フレーム124に埋め込まれた荷重センサである。荷重センサ222は、訓練者900の足裏が受ける垂直荷重の大きさと分布を検出し、例えばCOP(Center Of Pressure:荷重中心)を検出するように構成することもできる。荷重センサ222は、例えば、電極がマトリックス状に配置された抵抗変化検出型の荷重検出シートである。
【0043】
次に、図3を参照しながら、歩行訓練装置100のシステム構成例について説明する。図3は、歩行訓練装置100のシステム構成例を示すブロック図である。図3に示すように、歩行訓練装置100は、全体制御部210、トレッドミル駆動部211、操作受付部212、表示制御部213、及び引張駆動部214を備えることができる。また、歩行訓練装置100は、ハーネス駆動部215、画像処理部216、姿勢センサ217、手摺りセンサ218、通信接続IF(インターフェース)219、入出力ユニット231、及び脚装具120を備えることができる。
【0044】
全体制御部210は、例えばMPU(Micro Processing Unit)であり、システムメモリから読み込んだ制御プログラムを実行することにより、装置全体の制御を実行する。全体制御部210は、後述する判定部210a、入出力制御部210c、及び通知制御部210dを有することができる。
【0045】
トレッドミル駆動部211は、ベルト132を回転させるモータとその駆動回路を含む。全体制御部210は、トレッドミル駆動部211へ駆動信号を送ることにより、ベルト132の回転制御を実行する。全体制御部210は、例えば、訓練スタッフ901によって設定された歩行速度に応じて、ベルト132の回転速度を調整する。
【0046】
操作受付部212は、訓練スタッフ901からの入力操作を受け付けて、操作信号を全体制御部210へ送信する。訓練スタッフ901は、操作受付部212を構成する、装置に設けられた操作ボタンや管理用モニタ139に重畳されたタッチパネル、付属するリモコン等を操作する。この操作により、電源のオン/オフやトレーニングの開始の指示を与えることや、設定に関する数値の入力やメニュー項目の選択を行うことができる。なお、操作受付部212は、訓練者900からの入力操作を受け付けることもできる。
【0047】
表示制御部213は、全体制御部210からの表示信号を受け取って表示画像を生成し、訓練用モニタ138又は管理用モニタ139に表示する。表示制御部213は、表示信号に従って、トレーニングの進捗を示す画像や、カメラ140で撮影したリアルタイム映像を生成する。
【0048】
引張駆動部214は、前側引張部135を構成する、前側ワイヤ134を引張するためのモータとその駆動回路と、後側引張部137を構成する、後側ワイヤ136を引張するためのモータとその駆動回路と、を含む。全体制御部210は、引張駆動部214へ駆動信号を送ることにより、前側ワイヤ134の巻き取りと後側ワイヤ136の巻き取りをそれぞれ制御する。また、巻き取り動作に限らず、モータの駆動トルクを制御することにより、各ワイヤの引張力を制御する。全体制御部210は、例えば、荷重センサ222や角度センサの検出結果から患脚が歩行サイクルにおけるタイミングを検出し、そのタイミングに同期して各ワイヤの引張力を増減させることにより、患脚の振出し動作をアシストする。
【0049】
ハーネス駆動部215は、ハーネス引張部112を構成する、ハーネスワイヤ111を引張するためのモータとその駆動回路を含む。全体制御部210は、ハーネス駆動部215へ駆動信号を送ることにより、ハーネスワイヤ111の巻き取りと、ハーネスワイヤ111の引張力を制御する。全体制御部210は、例えば、訓練者900の転倒を予測した場合に、ハーネスワイヤ111を一定量巻き取って、訓練者の転倒を防止する。
【0050】
画像処理部216は、カメラ140に接続されており、カメラ140から画像信号を受け取ることができる。画像処理部216は、全体制御部210からの指示に従って、カメラ140から画像信号を受け取り、受け取った画像信号を画像処理して画像データを生成する。また、画像処理部216は、全体制御部210からの指示に従って、カメラ140から受け取った画像信号に画像処理を施して、特定の画像解析を実行することもできる。例えば、画像処理部216は、トレッドミル131に接する患脚の足の位置(立脚位置)を、画像解析により検出する。具体的には、例えば、足平フレーム124の先端近傍の画像領域を抽出し、当該先端部と重なるベルト132上に描かれた識別マーカを解析することにより、立脚位置を演算する。
【0051】
姿勢センサ217は、上述の通り訓練者900の腹部の重力方向に対する傾斜角を検出して、検出信号を全体制御部210へ送信する。全体制御部210は、姿勢センサ217からの検出信号を用いて、訓練者900の姿勢、具体的には体幹の傾斜角を演算する。なお、全体制御部210と姿勢センサ217は、有線で接続されていても良いし、近距離無線通信で接続されていても良い。
【0052】
手摺りセンサ218は、手摺り130aに加わる荷重を検出する。つまり、訓練者900が両脚で自身の体重を支えきれない分の荷重が手摺り130aに加わる。手摺りセンサ218は、この荷重を検出して、検出信号を全体制御部210へ送信する。
【0053】
全体制御部210は、制御に関わる様々な演算や制御を実行する機能実行部としての役割も担う。判定部210aは、各種センサから取得したデータを用いて、歩行サイクルにおける歩行フェーズを判定する。
【0054】
歩行サイクルにおけるフェーズについて、図4を用いて説明する。図4は歩行サイクルにおける各フェーズを模式的に示す側面図である。ここでは、歩行の各フェーズは、ランチョ・ロス・アミーゴ方式を参考にしている。また、脚装具120を装着した右脚を基準として、遊脚期と立脚期を規定している。つまり、右脚が床面から離地している期間を遊脚期として、右脚が床面に接地している期間を立脚期としている。なお、床面は水平面であると仮定する。
【0055】
立脚期の開始から順に、イニシャルコンタクトIC(初期接地)、ローディングレスポンスLR(荷重応答期)、ミッドスタンスMSt(立脚中期)、ターミナルスタンスTSt(立脚終期)となっている。遊脚期の開始から順に、プレスウィングPSw(前遊脚期)、イニシャルスイングISw(遊脚初期)、ミッドスイングMSw(遊脚中期)、ターミナルスイングTSw(遊脚終期)となる。したがって、1歩行サイクルが8つのフェーズに分類されている。
【0056】
イニシャルコンタクトICは、右足が地面に接触する瞬間で、歩行周期の終わりと始まりである。ローディングレスポンスLRは、イニシャルコンタクトICから、左足が地面から離れた瞬間までの期間である。ミッドスタンスMStは、左足が地面から離れた瞬間から右足の踵が床から離れた瞬間までの期間である。ターミナルスタンスTStは、右足の踵が離れた瞬間から左脚のイニシャルコンタクトIC(左足が地面に接触する瞬間)までの期間である。
【0057】
プレスウィングPSwは、左脚のイニシャルコンタクトIC(左足が地面に接触する瞬間)から右足のつま先が床から離れた瞬間までの期間である。イニシャルスイングISwは右足のつま先が床から離れた瞬間から両側の足関節が矢状面で交差した瞬間までの期間である。ミッドスイングMSwは両側の足関節が矢状面で交差した瞬間から右脚の下腿が床に対して直角になった瞬間までの期間である。ターミナルスイングTSwは右脚の下腿が床に対して直角になった瞬間から右脚のイニシャルコンタクトIC(右足が地面に接触する瞬間)の期間である。このように、1歩行サイクルは左右1歩ずつを合計2歩の期間となる。
【0058】
通信接続IF219は、全体制御部210に接続されたインターフェースであり、訓練者900の患脚に装着される脚装具120に指令を与えたり、センサ情報を受け取ったりするためのインターフェースである。
【0059】
脚装具120は、通信接続IF219と有線又は無線によって接続される通信接続IF229を備えることができる。通信接続IF229は、脚装具120の補助制御部220に接続されている。通信接続IF219、229は、通信規格に則った例えば有線LAN又は無線LAN等の通信インターフェースである。
【0060】
また、脚装具120は、補助制御部220、関節駆動部221、荷重センサ222、及び角度センサ223を備えることができる。補助制御部220は、例えばMPUであり、全体制御部210から与えられた制御プログラムを実行することにより、脚装具120の制御を実行する。また、補助制御部220は、脚装具120の状態を、通信接続IF219、229を介して全体制御部210へ通知する。また、補助制御部220は、全体制御部210からの指令を受けて、脚装具120の起動/停止等の制御を実行する。
【0061】
関節駆動部221は、制御ユニット121のモータとその駆動回路を含む。補助制御部220は、関節駆動部221へ駆動信号を送ることにより、上腿フレーム122と下腿フレーム123がヒンジ軸H周りに相対的に開くように加勢したり、閉じるように加勢したりする。このような動作により、膝の伸展動作及び屈曲動作をアシストしたり、膝折れを防止したりする。
【0062】
荷重センサ222は、上述の通り訓練者900の足裏が受ける垂直荷重の大きさと分布を検出して、検出信号を補助制御部220へ送信する。補助制御部220は、検出信号を受け取り解析することにより、遊脚/立脚の状態判別や切替り推定等を行う。
【0063】
角度センサ223は、上述の通りヒンジ軸H周りの上腿フレーム122と下腿フレーム123の成す角を検出して、検出信号を補助制御部220へ送信する。補助制御部220は、この検出信号を受け取って膝関節の開き角を演算する。
【0064】
入出力ユニット231は、例えばUSB(Universal Serial Bus)インターフェースを含み、外部の機器(外部通信装置300や他の外部機器)と接続するための通信インターフェースである。全体制御部210の入出力制御部210cは、入出力ユニット231を介して外部の機器と通信し、上述した全体制御部210内の制御プログラムや補助制御部220内の制御プログラムの書換え、コマンドの受け入れ、生成したリハビリデータの出力などを行う。歩行訓練装置100は、入出力制御部210cの制御により、入出力ユニット231及び外部通信装置300を介してサーバ500との通信を行うことになる。例えば、入出力制御部210cは、入出力ユニット231及び外部通信装置300を介して、リハビリデータをサーバ500に送信する制御やサーバ500からのコマンドを受信する制御を行うことができる。
【0065】
通知制御部210dは、訓練スタッフ901に対する通知が必要となった場面において、表示制御部213又は別途設けた音声制御部等を制御することで、管理用モニタ139又は別途設けたスピーカから通知を行う。この通知の詳細については後述するが、訓練スタッフ901に対する通知が必要となった場面とは、サーバ500から通知を行うためのコマンドを受信した場合とすることができる。
【0066】
判定部210aは各種センサの検出結果に応じて、歩行サイクルにおける各フェーズを判定する。例えば、判定部210aは、右脚のターミナルスイングTSw(遊脚終期)の開始タイミングを判定する。そして、判定部210aは、判定結果を引張駆動部214に出力する。例えば、側面視において、右脚の下腿が水平面に対して直角になったタイミングを遊脚終期の開始タイミングとしている。
【0067】
上記のように、判定部210aは、各種センサの検出データを収集している。判定部210aは、センサの検出データの時間変化を解析することで、歩行フェーズを判定する。歩行サイクルにおけるフェーズを判定するためのセンサとしては、例えば、角度センサ223や荷重センサ222が用いられる。もちろん、判定部210aは、1つのセンサの検出データに応じて、判定を行ってもよく、複数のセンサの検出データに応じて判定を行ってもよい。
【0068】
引張駆動部214は、判定部210aの判定結果に応じて、ワイヤを駆動するための引張力指令値をモータなどに出力する。このようにすることで、ワイヤが、歩行フェーズに応じて適切な引張力を与えることができる。これにより、歩行フェーズに応じた適切ナ引張力で歩行動作をアシストすることができる。
【0069】
例えば、ターミナルスイングTSw(遊脚終期)の開始タイミングから前側ワイヤ134の引張力が低減するように、全体制御部210が引張駆動部214を制御する。これにより、遊脚終期において、振出し側の引張力を低減することができる。したがって、遊脚終期で脚が不要に振り出されることや、持ち上げられることを防ぐことができる。自然に立脚に移行することが可能となる。アシストが不要な遊脚後期において、引張駆動部214が適切な引張力を与えることができるため、訓練者900が効果的な訓練を行うことができる。
【0070】
図5は、前側引張部135に与えられる引張力指令値のパターンの一例を示す図である。図5において、時間t0が振出し開始タイミング、つまり遊脚期の開始タイミングとなる。具体的には、時間t0は、右足のつま先が床から離れた瞬間に対応する。また、図5の時間t1が遊脚終期の開始タイミングとなる。具体的には、右脚の下腿が水平面に対して直角になったタイミングに対応する。図5の時間t2は、立脚となるタイミング、つまり、イニシャルコンタクトICである。具体的には、時間t2は、右足が地面に接触するタイミングに相当する。時間t3は、次の歩行サイクルの時間t0に対応する。t0~t2までが遊脚期となり、t2~t3までが立脚期となる。
【0071】
図5では、時間t1から時間t2までの期間において、徐々に引張力が減少するように、引張駆動部214が、引張力指令値を出力している。全体制御部210は、遊脚終期の開始タイミングをトリガーとして、引張力が減少するように、引張駆動部214を制御する。時間t1から時間t2までの間、前側ワイヤ134の引張力が単調減少する。
【0072】
そして、時間t2から時間t3の間、引張力指令値が一定になる。つまり、立脚期には前側ワイヤ134の引張力が一定となる。右脚のイニシャルコンタクトIcから左脚のイニシャルコンタクトIcまでは、引張力が一定となる。立脚期の引張力は、遊脚期の引張力以下となる。時間t0から時間t1までの期間において、徐々に引張力が増加するように、引張駆動部214が、引張力指令値を出力している。したがって、時間t0から時間t1までの間、前側ワイヤ134の引張力が単調増加する。プレスウィングPSw~ミッドスイングMSwにかけて、引張力が増加していく。時間t1で引張力が最大となる。
【0073】
このように、判定部210aは、センサの検出結果に基づいて、歩行サイクルの歩行フェーズを判定している。全体制御部210は、判定部210aでの歩行フェーズの判定結果から、引張駆動部214の引張力を制御する。このようにすることで、遊脚終期に不要な引張力が与えられることを防ぐことができる。さらに、センサの検出結果から歩行フェーズを判定しているため、正確に歩行フェーズを検出することができる。よって、引張駆動部214が、実際の歩容に応じて、適切な引張力を与えることができる。
【0074】
なお、判定部210aは、イニシャルコンタクトIC、ローディングレスポンスLR、ミッドスタンスMSt、ターミナルスタンスTSt、プレスウィングPSw、イニシャルスイングISw、ミッドスイングMSw、ターミナルスイングTSwの全てを検出しなくても良い。つまり、判定部210aは、イニシャルコンタクトIC、ローディングレスポンスLR、ミッドスタンスMSt、ターミナルスタンスTSt、プレスウィングPSw、イニシャルスイングISw、ミッドスイングMSw、ターミナルスイングTSwの少なくとも一つを検出すればよい。また、歩行サイクルにおける歩行フェーズの定義は、ランチョ・ロス・アミーゴ方式以外のものを用いても良い。
【0075】
また、本実施の形態では、膝関節角度を検出するための角度センサ223が、脚装具120に取り付けられている。よって、角度センサ223が、正確に膝関節角度を検出することができる。角度センサ223の検出結果に基づいて、判定部210aが遊脚終期の開始タイミングを判定している。これにより、歩行フェーズの判定精度を向上することができる。このため、引張駆動部214が、前方かつ上方に適切な引張力を与えることができる。さらに、判定部210aは、脚の下腿が水平面に対して直角になったタイミングを、遊脚終期の開始タイミングとして判定する。このようにすることで、歩行フェーズを適切に判定することができる。
【0076】
このように、脚の遊脚終期の開始タイミングを判定するために設けられたセンサ(以下、歩行フェーズ判定用のセンサとする)は、角度センサ223を用いることができる。もちろん、歩行フェーズ判定用のセンサは、角度センサ223に限定されるものではない。例えば、図2図3で示した荷重センサ222を歩行フェーズ判定用のセンサとして用いてもよい。
【0077】
さらに、図6に示すように、脚装具120に設けられたジャイロセンサ142を歩行フェーズ判定用のセンサとして用いてもよい。図6は、センサの配置例を模式的に示す正面図である。図6では、歩行訓練システム1の前側ワイヤ134,前側引張部135などの構成が、適宜簡略されている。
【0078】
ジャイロセンサ142は、脚部の角速度を検出する。脚装具120に取り付けられたセンサを歩行フェーズ判定用のセンサとして用いることで、判定精度を向上することができる。つまり、歩行フェーズを正確に判定することができる。このため、引張駆動部214が、歩行サイクルに応じて、より適切な引張力を与えることができる。また、脚装具120に脚の加速度を検出する加速度センサを設けてもよい。
【0079】
あるいは、ユーザの脚部を撮像するカメラ141を歩行フェーズ判定用のセンサとして用いても良い。例えば、カメラ141は、訓練者900の側方から脚を撮像するように配置されている。カメラ141は訓練の支障とならないように、フレーム130の外側に配置されている。判定部210aは、カメラ141の撮像画像に基づいて、歩行フェーズを判定する。これにより、判定精度を向上することができる。判定部210aは、カメラ141の撮像画像のみを用いて判定を行ってもよく、カメラ141の撮像画像と他のセンサの検出結果に判定を行ってもよい。また、その他のモーションセンサを歩行フェーズ判定用のセンサとして用いても良い。
【0080】
さらには、2つ以上のセンサを組み合わせて、歩行フェーズ判定用のセンサとして用いても良い。例えば、判定部210aは、ジャイロセンサ142の検出結果と角度センサ223の検出結果とに基づいて、脚の遊脚終期の開始タイミングを判定してもよい。判定部210aは、2つのセンサの検出結果に基づいて、脚の下腿が水平面に対して直角になったタイミングを検出する。そして、検出したタイミングを遊脚終期の開始タイミングに設定する。このようにすることで、歩行フェーズを簡便かつ適切に判定することができる。もちろん、歩行フェーズ判定用のセンサは、上記以外のセンサであってもよい。また、上記のセンサと上記以外のセンサを組み合わせて、歩行フェーズ判定用のセンサとして用いても良い。
【0081】
また、判定部210aは、膝関節が屈曲したタイミングから、脚の遊脚終期の開始タイミングを推定しても良い。例えば、判定部210aは、膝関節が屈曲したタイミングから所定時間経過後のタイミングを遊脚終期の開始タイミングとして判定しても良い。あるいは、判定部210aは、脚部のスイング速度から遊脚終期の開始タイミングを推定しても良い。例えば、判定部210aは、ジャイロセンサ142等の検出結果に基づいて、脚部のスイング速度を算出する。そして、判定部210aは、脚部のスイング速度から遊脚終期の開始タイミングを求めても良い。
【0082】
なお、上記の説明では、脚装具120が右脚に装着されているが、左脚に装着されていても良い。さらには、脚装具120が両脚に装着されていても良い。また、脚装具120は、膝関節を駆動する関節駆動部221や補助制御部220等を有する歩行補助装置として機能しているが、脚装具120の構成は特に限定されるものではあい。例えば、脚装具120は、受動関節機構のみを有するものであってもよい。
【0083】
本実施の形態にかかる歩行訓練システム1の制御方法について、図7を用い説明する。図7は制御方法を示すフローチャートである。まず、引張駆動部214が前方かつ上方二脚を引張する(S701)。そして、判定部210aがセンサの検出結果に応じて、遊脚終期の開始タイミングを判定する(S702)。そして、引張駆動部214が引張力を低減する(S703)。上記の処理が歩行訓練終了まで繰り返されても良い。つまり、各歩行サイクルで引張力指令値の制御パターンが同様になる。
【0084】
本実施の形態にかかる制御方法により、遊脚終期に過大な引張力が与えられることを防ぐことができる。さらに、センサの検出結果から歩行フェーズを判定しているため、正確に歩行フェーズを検出することができる。よって、引張駆動部214が、実際の歩容に応じて、適切な引張力を与えることができる。
【0085】
上記の歩行訓練システムの動作方法はコンピュータプログラムやハードウェアで実施可能である。全体制御部210はプログラムを格納するメモリや、プログラムを実行するプロセッサ等を備えている。全体制御部210がプログラムを実行することで、本実施の形態にかかる歩行訓練システム1の動作方法を実行することができる。
【0086】
上記処理のうちの一部又は全部は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい。つまり、全体制御部210を構成する制御コンピュータがプログラムを実行することで、上記の歩行訓練システム1の制御が実行される。上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0087】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1 歩行訓練システム
100 歩行訓練装置
110 装具
110a 連結フック
111 ハーネスワイヤ
112 ハーネス引張部
120 脚装具
121 制御ユニット
122 上腿フレーム
123 下腿フレーム
124 足平フレーム
130 フレーム
130a 手摺り
131 トレッドミル
132 ベルト
210 全体制御部
211 トレッドミル駆動部
214 引張駆動部
215 ハーネス駆動部
216 画像処理部
217 姿勢センサ
218 手摺りセンサ
221 関節駆動部
222 荷重センサ
223 角度センサ
224 補助駆動部
231 入出力ユニット
232 非常停止ボタン
900 訓練者
901 訓練スタッフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7