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特開2022-191688判定装置、判定方法、コンピュータプログラム及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191688
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法、コンピュータプログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
A61B7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100062
(22)【出願日】2021-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「先進的医療機器・システム等技術開発事業 術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器・システム開発」「術中の迅速な呼吸異常評価のための連続呼吸音モニタリングシステムの研究開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317007266
【氏名又は名称】エア・ウォーター・バイオデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭秀
(72)【発明者】
【氏名】垣内 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓央
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しつつ、生体音を正しく検出しているかを判定する。
【解決手段】判定装置(20)は、対象(1)の生体音の検出時に、生体音を含む第1音情報を取得する第1センサ(11)と、第1センサより対象から離れた位置に配置され、対象の周囲の音を含む第2音情報を取得する第2センサ(12)とを有する生体音検出装置(10)が生体音を正しく検出しているかを判定する。当該判定装置は、第1音情報及び第2音情報を取得する取得手段(21a、21b)と、第1音情報に含まれる低周波成分である第1低周波成分を抽出するとともに、第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分を抽出する抽出手段(24a、24b)と、第1低周波成分と第2低周波成分との比較結果に基づいて、生体音検出装置が生体音を正しく検出しているか否かを判定する判定手段(27)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の生体音の検出時に、前記生体音を含む第1音情報を取得する第1センサと、前記第1センサより前記対象から離れた位置に配置され、前記対象の周囲の音を含む第2音情報を取得する第2センサとを有する生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているかを判定する判定装置であって、
前記第1音情報及び前記第2音情報を取得する取得手段と、
前記第1音情報に含まれる低周波成分である第1低周波成分を抽出するとともに、前記第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分を抽出する抽出手段と、
前記第1低周波成分と前記第2低周波成分との比較結果に基づいて、前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする判定装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記比較結果として、前記第1低周波成分と前記第2低周波成分との相関係数を算出し、
前記判定手段は、前記相関係数が所定閾値より小さい場合に前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出していないと判定し、前記相関係数が前記所定閾値より大きい場合に前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出していると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
対象の生体音の検出時に、前記生体音を含む第1音情報を取得する第1センサと、前記第1センサより前記対象から離れた位置に配置され、前記対象の周囲の音を含む第2音情報を取得する第2センサとを有する生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているかを判定する判定方法であって、
前記第1音情報及び前記第2音情報を取得する取得工程と、
前記第1音情報に含まれる低周波成分である第1低周波成分を抽出するとともに、前記第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分を抽出する抽出工程と、
前記第1低周波成分と前記第2低周波成分との比較結果に基づいて、前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているか否かを判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする判定方法。
【請求項4】
前記判定工程は、前記比較結果として、前記第1低周波成分と前記第2低周波成分との相関係数を算出する算出工程を含み、
前記判定工程では、前記相関係数が所定閾値より小さい場合に前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出していないと判定され、前記相関係数が前記所定閾値より大きい場合に前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出していると判定される
ことを特徴とする請求項3に記載の判定方法。
【請求項5】
対象の生体音の検出時に、前記生体音を含む第1音情報を取得する第1センサと、前記第1センサより前記対象から離れた位置に配置され、前記対象の周囲の音を含む第2音情報を取得する第2センサとを有する生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているかを判定する判定装置のコンピュータを、
前記第1音情報及び前記第2音情報を取得する取得手段と、
前記第1音情報に含まれる低周波数成分である第1低周波成分を抽出するとともに、前記第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分を抽出する抽出手段と、
前記第1低周波成分と前記第2低周波成分との比較結果に基づいて、前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているか否かを判定する判定手段と、
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているかを判定する判定装置、判定方法、コンピュータプログラム及び記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、チェストピース内の聴診音センサの周囲に、一又は複数の接触検出センサ対を配置し、対となっている接触検知センサの接触検出結果に基づいて、聴診音を適切に取得できる接触状態か否かを判定する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/143116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、少なくとも一つの接触検出センサ対(即ち、2つの接触検出センサ)を、聴診音センサとは別に用意する必要があり、例えば製品コストが比較的高くなるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、コストを抑制しつつ、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているかを判定することができる判定装置、判定方法、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の判定装置は、上記課題を解決するために、対象の生体音の検出時に、前記生体音を含む第1音情報を取得する第1センサと、前記第1センサより前記対象から離れた位置に配置され、前記対象の周囲の音を含む第2音情報を取得する第2センサとを有する生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているかを判定する判定装置であって、前記第1音情報及び前記第2音情報を取得する取得手段と、前記第1音情報に含まれる低周波成分である第1低周波成分を抽出するとともに、前記第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分を抽出する抽出手段と、前記第1低周波成分と前記第2低周波成分との比較結果に基づいて、前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているか否かを判定する判定手段と、を備える。
【0007】
本発明の判定方法は、上記課題を解決するために、対象の生体音の検出時に、前記生体音を含む第1音情報を取得する第1センサと、前記第1センサより前記対象から離れた位置に配置され、前記対象の周囲の音を含む第2音情報を取得する第2センサとを有する生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているかを判定する判定方法であって、前記第1音情報及び前記第2音情報を取得する取得工程と、前記第1音情報に含まれる低周波成分である第1低周波成分を抽出するとともに、前記第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分を抽出する抽出工程と、前記第1低周波成分と前記第2低周波成分との比較結果に基づいて、前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているか否かを判定する判定工程と、を含む。
【0008】
本発明のコンピュータプログラムは、上記課題を解決するために、対象の生体音の検出時に、前記生体音を含む第1音情報を取得する第1センサと、前記第1センサより前記対象から離れた位置に配置され、前記対象の周囲の音を含む第2音情報を取得する第2センサとを有する生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているかを判定する判定装置のコンピュータを、前記第1音情報及び前記第2音情報を取得する取得手段と、前記第1音情報に含まれる低周波数成分である第1低周波成分を抽出するとともに、前記第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分を抽出する抽出手段と、前記第1低周波成分と前記第2低周波成分との比較結果に基づいて、前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているか否かを判定する判定手段と、として機能させる。
【0009】
本発明の記録媒体は、上記課題を解決するために、上述した本発明のコンピュータプログラムが記録されている。
【0010】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る判定装置の構成を示す図である。
図2】実施例に係る判定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(判定装置)
判定装置に係る実施形態について説明する。実施形態に係る判定装置は、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているかを判定する。生体音検出装置は、第1センサ及び第2センサを有する。第1センサは、対象の生体音の検出時に、生体音を含む第1音情報を取得する。第2センサは、対象の生体音の検出時に、第1センサより対象から離れた位置に配置される。第2センサは、対象の周囲の音を含む第2音情報を取得する。
【0013】
ここで、第1音情報は、生体音に係る音情報を主に含むが、対象の周囲の音に係る音情報も含み得る。第2音情報は、対象の周囲の音に係る音情報を主に含むが、生体音に係る音情報も含み得る。ところで、第1音情報に含まれ得る対象の周囲の音に係る音情報は、生体音に係る音情報にとってはノイズになる。対象の周囲の音に係る音情報を主に含む第2音情報を参照すれば、第1音情報に含まれるノイズを除去又は低減することができる。尚、ノイズを除去又は低減する手法については、判定装置の本質的特徴ではないので、その説明は省略する。
【0014】
判定装置は、取得手段、抽出手段及び判定手段を備えて構成されている。取得手段は、生体音検出装置から第1音情報及び第2音情報を取得する。抽出手段は、第1音情報に含まれる低周波成分である第1低周波成分を抽出する。抽出手段はまた、第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分を抽出する。尚、音情報から低周波成分を抽出する方法には、既存の技術を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。判定手段は、第1低周波成分と第2低周波成分との比較結果に基づいて、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているか否かを判定する。
【0015】
上述したように、第2センサにより取得された第2音情報にも、生体音に係る情報が含まれることがある。これは、生体音検出装置が対象に適切に接している場合、当該生体音検出装置全体に生体音に係る生じる振動が伝搬し、該振動が第2センサにより検出されるからである。また、生体音に係る周波数は比較的低い。生体音検出装置が対象に適切に接している場合、第2音情報に生体音に係る情報が含まれているため、第2低周波成分は第1低周波成分に比較的似ている。他方で、生体音検出装置が対象に適切に接していない場合、第2低周波成分は第1低周波成分から比較的乖離している。従って、第1低周波成分と第2低周波成分とを比較することにより、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているか否かを判定することができる。
【0016】
上述したように、第2センサにより取得された第2音情報は、例えば、第1センサにより取得された第1音情報に含まれるノイズの除去又低減に用いることができる。つまり、当該判定装置では、例えばノイズ除去等に用いられる第2音情報を、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているかの判定にも用いている。言い換えれば、当該判定装置は、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているかを判定するために、生体音検出装置に専用の部材を設ける必要はない。従って、当該判定装置によれば、コストを抑制しつつ、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているかを判定することができる。
【0017】
(判定方法)
判定方法に係る実施形態について説明する。実施形態に係る判定方法は、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているかを判定する。生体音検出装置の構成は、上述した判定装置に係る実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0018】
判定方法は、取得工程、抽出工程及び判定工程を含む。取得工程では、第1音情報及び第2音情報が取得される。抽出工程では、第1音情報に含まれる低周波成分である第1低周波成分が抽出される。また、抽出工程では、第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分が抽出される。判定工程では、第1低周波成分及び第2低周波成分との比較結果に基づいて、前記生体音検出装置が前記生体音を正しく検出しているか否かが判定される。
【0019】
当該判定方法によれば、上述した実施形態に係る判定装置と同様に、コストを抑制しつつ、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているかを判定することができる。
【0020】
(コンピュータプログラム)
コンピュータプログラムに係る実施形態について説明する。実施形態に係るコンピュータプログラムは、対象の生体音の検出時に、生体音検出装置が生体音を正しく検出しているかを判定する判定装置のコンピュータを、第1音情報及び第2音情報を取得する取得手段と、前1音情報に含まれる低周波数成分である第1低周波成分を抽出するとともに、第2音情報に含まれる低周波成分である第2低周波成分を抽出する抽出手段と、第1低周波成分と第2低周波成分との比較結果に基づいて、生体音検出装置が生体音を正しく検出しているか否かを判定する判定手段と、として機能させる。尚、生体音検出装置の構成は、上述した判定装置に係る実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0021】
当該コンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを格納するRAM(Random Access Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(DVD Read Only Memory)等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムを、判定装置を構成するコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを、通信手段を介してダウンロードした後に実行させれば、上述した実施形態に係る判定装置を比較的容易にして実現することができる。これにより、上述した実施形態に係る判定装置と同様に、コストを抑制しつつ、生体音検出装置が対象の生体音を正しく検出しているかを判定することができる。
【0022】
ここで、当該コンピュータプログラムが記録された、例えばCD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体が、記録媒体に係る実施形態の一例に相当する。
【実施例0023】
判定装置に係る実施例について図1及び図2を参照して説明する。本実施例では、被験者1の生体音を連続モニタリングするシステムにおいて、生体音検出装置10が生体音を正しく検出しているかを判定する判定装置20について説明する。
【0024】
生体音検出装置10は、第1センサ11及び第2センサ12を有する。第1センサ11及び第2センサ12は、例えばマイクロホンや加速度センサなど、生体音を取得可能なセンサであればよい。被験者1の生体音の検出時には、第1センサ11が第2センサ12よりも被験者1の近くに配置されるように(言い換えれば、第2センサ12が第1センサ11よりも被験者1から離れた位置に配置されるように)、生体音検出装置10が被験者1に取り付けられる。
【0025】
第1センサ11は、被験者1の生体音を含む第1音情報を取得する。第2センサ12は、被験者1の周囲の音を含む第2音情報を取得する。ここで、第1音情報及び第2音情報は、例えばWAVE形式等のデジタルオーディオであってよい。
【0026】
判定装置20は、取得部21a及び21b、周波数変換部22a及び22b、パワー変換部23a及び23b、低域取得部24a及び24b、相関係数算出部25、閾値処理部26並びに検知部27を備えて構成されている。取得部21aは、第1センサ11により取得された第1音情報を取得する。取得部21bは、第2センサ12により取得された第2音情報を取得する。
【0027】
取得部21aにより取得された第1音情報は、周波数変換部22aに送られる。周波数変換部22aは、第1音情報に対して周波数変換処理を施す。周波数変換部22aは、周波数変換処理を施した第1音情報を、パワー変換部23aに送る。パワー変換部23aは、周波数変換処理が施された第1音情報に対してパワー変換処理を施す。この結果、第1音情報に係るパワースペクトル(即ち、周波数毎の音圧レベルを示すグラフ)が生成される。
【0028】
同様に、取得部21bにより取得された第2音情報は、周波数変換部22bに送られる。周波数変換部22bは、第2音情報に対して周波数変換処理を施す。周波数変換部22bは、周波数変換処理を施した第2音情報を、パワー変換部23bに送る。パワー変換部23bは、周波数変換処理が施された第2音情報に対してパワー変換処理を施す。この結果、第2音情報に係るパワースペクトルが生成される。
【0029】
尚、周波数変換処理及びパワー変換処理には、既存の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0030】
低域取得部24aは、第1音情報に係るパワースペクトルから低周波成分(例えば、周波数が数百ヘルツ以下の成分)を取得(抽出)する。同様に、低域取得部24bは、第2音情報に係るパワースペクトルから低周波成分を取得(抽出)する。低域取得部24aにより取得された低周波成分を「第1低周波成分」と称する。低域取得部24bにより取得された低周波成分を「第2低周波成分」と称する。
【0031】
相関係数算出部25は、第1低周波成分及び第2低周波成分と、次式とを用いて相関係数を算出する。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、“r”は相関係数であり、“x”は第1低周波成分のi番目のデータ値であり、“y”は第2低周波成分のi番目のデータ値であり、“n”は第1及び第2低周波成分に含まれているデータの総数である。“xバー”は第1低周波成分の平均値であり、“yバー”は第2低周波成分の平均値であり、“s”は第1低周波成分の標準偏差であり、“s”は第2低周波成分の標準偏差であり、“sxy”は第1及び第2低周波成分の共分散である。
【0034】
生体音検出装置10が被験者1に適切に接している場合、例えば被験者1の心音(即ち、生体音)が、第1センサ11及び第2センサ12の両方に伝わる。ここで、心音は主に数百ヘルツ以下の低周波成分からなる。このため、生体音検出装置10が被験者1に適切に接している場合、第1及び第2低周波成分の両方に心音に由来する成分が含まれることになる。この結果、生体音検出装置10が被験者1に適切に接している場合、上述した相関係数rは比較的大きな値となる。
【0035】
他方で、生体音検出装置10が被験者1に適切に接していない場合、例えば被験者1の心音は、第1センサ11及び第2センサ12に伝わりにくくなる。すると、第1及び第2低周波成分各々の心音に由来する成分が比較的少なくなる。この結果、生体音検出装置10が被験者1に適切に接していない場合、上述した相関係数rは比較的小さな値となる。
【0036】
閾値処理部26は、相関係数算出部25により算出された相関係数rと所定閾値とを比較する。ここで「所定閾値」は、生体音検出装置10が被験者1に適切に接しているか否かを決定する値であり、予め固定値として又は何らかの物理量若しくはパラメータに応じた可変値として設定されている。このような所定閾値は、実験又はシミュレーションによって、例えば生体音検出装置10の被験者1への接触の程度と、相関係数rとの関係を求め、該求められた関係に基づいて設定すればよい。
【0037】
閾値処理部26は、例えば相関係数rと所定閾値との大小関係を示す情報を、検知部27に送る。検知部27は、相関係数rが所定閾値より小さい場合、生体音検出装置10が被験者1に適切に接していないと判定する。つまり、生体音検出装置10が、被験者1の生体音を正しく検出してないと判定する。これにより、検知部27は、生体音検出装置10の不適切な接触状態を検知する。この場合、検知部27は、例えば警告音を発したり、警告メッセージを表示したりする。尚、検知部27は、相関係数rが所定閾値より大きい場合、特別な動作を行わなくてよい。
【0038】
判定装置20の動作について図2のフローチャートを参照して説明を加える。図2のステップS101の処理において、取得部21aは、第1センサ11により取得された第1音情報を取得し、取得部21bは、第2センサ12により取得された第2音情報を取得する。ステップS102の処理において、周波数変換部22aは、第1音情報に周波数変換処理を施し、周波数変換部22bは、第2音情報に周波数変換処理を施す。
【0039】
ステップS103の処理において、パワー変換部23aは、周波数変換処理が施された第1音情報にパワー変換処理を施し、パワー変換部23bは、周波数変換処理が施された第2音情報にパワー変換処理を施す。ステップS104の処理において、低域取得部24aは、上述した第1低周波成分を取得(抽出)し、低域取得部24bは、上述した第2低周波成分を取得(抽出)する。
【0040】
ステップS105の処理において、相関係数算出部25は相関係数rを算出する。ステップS106の処理において、閾値処理部26は、例えば相関係数rと所定閾値との大小関係を示す情報を、検知部27に送る。ステップS107の処理において、相関係数rが所定閾値より小さい場合、検知部27は、生体音検出装置10が被験者1に適切に接していないと判定する。つまり、検知部27は、生体音検出装置10が被験者1の生体音を正しく検出してないと判定する。このとき、検知部27は、生体音検出装置10の不適切な接触状態を検知したので(ステップS107:Yes)、例えば警告音を発したり、警告メッセージを表示したりする(ステップS108)。
【0041】
ステップS107の処理において、相関係数rが所定閾値より大きい場合、検知部27は、生体音検出装置10が被験者1に適切に接していると判定する。つまり、検知部27は、生体音検出装置10が被験者1の生体音を正しく検出していると判定する。この場合、生体音検出装置10の不適切な接触状態は検知されないので(ステップS107:No)、図2に示す動作は終了される。尚、図2に示す動作は、所定の周期で繰り返し行われる。
【0042】
本実施例において、「被験者1」が「対象」の一例に相当し、「取得部21a及び21b」が「取得手段」の一例に相当し、「低域取得部24a及び24b」が「抽出手段」の一例に相当し、「検知部27」が「判定手段」の一例に相当する。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う判定装置、判定方法、コンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1…被験者、10…生体音検出装置、11…第1センサ、12…第2センサ、20…判定装置、21a、21b…取得部、22a、22b…周波数変換部、23a、23b…パワー変換部、24a、24b…低域取得部、25…相関係数算出部、26…閾値処理部、27…検知部
図1
図2