(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191691
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L23/12 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100071
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 順弘
(72)【発明者】
【氏名】仮屋崎 修一
(72)【発明者】
【氏名】土屋 恵太
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】配線基板SUB1は、絶縁層2e1と、絶縁層2e1上に形成された金属パターン2MP1と、金属パターン2MP1に接し、かつ、金属パターン2MP1を覆うように絶縁層2e1上に形成された絶縁層2e2と、絶縁層2e2上に形成された金属パターン2MP2と、金属パターン2MP2の一部分に接する有機絶縁膜と、を含む。金属パターン2MP1は、絶縁層2e1と接する下面MP1bと、絶縁層2e2と接する上面MP1tと、を有する。金属パターン2MP2は、絶縁層2e2と接する下面MP2bと、有機絶縁膜と接する上面MP2tと、を有する。金属パターン2MP2の上面MP2tの表面粗さは、金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1bのそれぞれの表面粗さよりも大きい。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起電極が配置されている第1面を備える半導体チップと、
前記半導体チップの前記第1面と対向する第2面を備える配線基板と、
を有し、
前記配線基板は、
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成された第1金属パターンと、
前記第1金属パターンに接し、かつ、前記第1金属パターンを覆うように前記第1絶縁層上に形成された第2絶縁層と、
前記突起電極と対向する第1部分、および前記第1部分の周囲にある第2部分を備え、前記第2絶縁層上に形成された第2金属パターンと、
前記第2金属パターンの前記第2部分に接し、かつ、前記第2金属パターンの前記第1部分が露出するように前記第2絶縁層上に形成された有機絶縁膜と、
を含み、
前記第1金属パターンは、
前記第1絶縁層と接する第1下面と、
前記第1下面の反対側に位置し、かつ、前記第2絶縁層と接する第1上面と、
を有し、
前記第2金属パターンは、
前記第2絶縁層と接する第2下面と、
前記第2部分において前記有機絶縁膜と接する第2上面と、
を有し、
前記第2金属パターンの前記第2上面の表面粗さは、前記第2金属パターンの前記第2下面、前記第1金属パターンの前記第1上面、および前記第1下面のそれぞれの表面粗さよりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記突起電極は、前記第1金属パターンと電気的に接続され、
前記第1金属パターンは、前記第2絶縁層を貫通するように形成されたビア配線を介して前記第2金属パターンと電気的に接続され、
前記第1金属パターンは、
前記ビア配線が接合されたビアランド部と、
前記ビアランド部と一体に形成され、かつ、第1方向に沿って延びる配線部と、
を含む、半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2金属パターンは、平面視において、前記半導体チップと重なる第1領域内に配置され、
前記第1金属パターンの前記配線部は、平面視において、前記第1領域から前記第1領域の周囲にある第2領域に向かって延びている、半導体装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記第1金属パターンおよび前記第2金属パターンは、信号伝送経路に含まれている、半導体装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記配線部の長さは、前記第2金属パターン、前記ビア配線、および前記ビアランド部のそれぞれの長さよりも長く、
前記信号伝送経路に流れる電気信号は、30GHz(ギガヘルツ)以上の高周波信号である、半導体装置。
【請求項6】
請求項4において、
第3絶縁層と、
前記第3絶縁層上に形成され、基準電位が供給される第3金属パターンと、
を更に含み、
前記第3金属パターンは、
前記第3絶縁層と接する第3下面と、
前記第3下面の反対側に位置し、前記第1絶縁層と接する第3上面と、
を有し、
前記第3金属パターンの前記第3上面の表面粗さは、前記第2金属パターンの前記第2下面、前記第1金属パターンの前記第1上面、および前記第1下面のそれぞれの表面粗さよりも大きい、半導体装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記有機絶縁膜の熱膨張率は、前記第2絶縁層の熱膨張率よりも大きい、半導体装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記有機絶縁膜の線膨張係数は、前記第2絶縁層の線膨張係数よりも大きい、半導体装置。
【請求項9】
請求項1において、
第3絶縁層と、
前記第3絶縁層上に形成され、基準電位が供給される第3金属パターンと、
を更に含み、
第3絶縁層はガラス繊維を含んでいるが、前記有機絶縁膜、前記第1絶縁層、および前記第2絶縁層のそれぞれはガラス繊維を含んでいない、半導体装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記有機絶縁膜の厚さは、前記第1絶縁層の厚さより薄い、半導体装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記第1金属パターンの前記第1上面の表面粗さは、前記第1金属パターンの前記第1下面の表面粗さよりも小さい、半導体装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記第2金属パターンの前記第1部分上には金属膜が形成され、
前記突起電極と前記金属膜とは、半田を介して互いに、かつ、電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記第2金属パターンは、前記第2上面に連なり、かつ、前記有機絶縁膜に接する側面を有し、
前記第2金属パターンの側面の表面粗さは、前記第2金属パターンの前記第2下面、前記第1金属パターンの前記第1上面、および前記第1下面のそれぞれの表面粗さよりも大きい、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属膜と、金属膜に接する接着剤との密着性を向上させる観点から金属膜の表面を粗面化する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置に対する性能向上の要求の一つとして、電気信号の伝送速度の高速化の要求、あるいは、装置の小型化の要求がある。ところが、伝送速度の高速化を図れば、半導体装置のサイズは増大する傾向がある。伝送速度の高速化に伴う電子装置のサイズの増大を抑制させるためには、多数の信号伝送経路を高密度で実装する技術、例えば、多数の端子が高密度で配置された場合でも、隣り合う端子同士の短絡を防止できる技術が必要である。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態による半導体装置は、突起電極が配置されている第1面を備える半導体チップと、上記半導体チップの上記第1面と対向する第2面を備える配線基板と、を有する。上記配線基板は、第1絶縁層と、上記第1絶縁層上に形成された第1金属パターンと、上記第1金属パターンに接し、かつ、上記第1金属パターンを覆うように上記第1絶縁層上に形成された第2絶縁層と、上記突起電極と対向する第1部分、および上記第1部分の周囲にある第2部分を備え、上記第2絶縁層上に形成された第2金属パターンと、上記第2金属パターンの上記第2部分に接し、かつ、上記第2金属パターンの上記第1部分が露出するように上記第2絶縁層上に形成された有機絶縁膜と、を含む。上記第1金属パターンは、上記第1絶縁層と接する第1下面と、上記第1下面の反対側に位置し、かつ、上記第2絶縁層と接する第1上面と、を有する。上記第2金属パターンは、上記第2絶縁層と接する第2下面と、上記第2部分において上記有機絶縁膜と接する第2上面と、を有する。上記第2金属パターンの上記第2上面の表面粗さは、上記第2金属パターンの上記第2下面、上記第1金属パターンの上記第1上面、および上記第1下面のそれぞれの表面粗さよりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
上記一実施の形態によれば、電子装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施の形態である半導体装置を含む電子装置の構成例を示す説明図である。
【
図2】
図1に示す電子装置が備える回路の構成例を示す説明図である。
【
図3】
図1に示す二個の半導体装置のうちの一方の半導体装置一実施の形態の半導体装置の上面図である。
【
図5】
図3に示すカバー部材を取り除いた状態で配線基板上の半導体装置の内部構造を示す平面図である。
【
図7】
図6に示す配線基板の上面側の拡大平面図である。
【
図10】
図7に対応する拡大平面において、
図9に示す第2層目の配線層に配置された金属パターンの構造例を示す拡大平面図である。
【
図11】
図9に対する変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0010】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0011】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0012】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0013】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0014】
<電子装置>
まず、
図1および
図2を用いて、以下で説明する本実施の形態の半導体装置の使用例について説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置を含む電子装置の構成例を示す説明図である。また、
図2は、
図1に示す電子装置が備える回路の構成例を示す説明図である。なお、
図1では、半導体装置PKG1と半導体装置PKG2とが電気的に接続されていることを明示的に示すため、
図2に示す信号伝送経路SGPを太線により模式的に示す。
【0015】
図1に示す電子装置(電子機器)EDV1は、配線基板(マザーボード、実装基板)MB1と、配線基板MB1に搭載された半導体装置PKG1および半導体装置PKG2と、を有する。半導体装置PKG1と半導体装置PKG2とは、配線基板MB1に形成された信号伝送経路SGPを介して、互いに、かつ、電気的に接続されている。信号伝送経路SGPを介して伝送される信号には、半導体装置PKG1から出力される信号SGTと、半導体装置PKG1に入力される信号SGRとが含まれる。また、信号伝送経路SGPには、信号SGTが伝送される信号伝送経路SGPTと、信号SGRが伝送される信号伝送経路SGPRと、が含まれる。
【0016】
図1に示す例では、信号SGTは、半導体装置PKG1から出力され、かつ、半導体装置PKG2に入力される。また、信号SGRは、半導体装置PKG2から出力され、かつ、半導体装置PKG1に入力される。ただし、信号SGTの出力先や信号SGRの出力元は、
図1に示す例には限定されず、種々の変形例がある。
図1に示す半導体装置PKG1と半導体装置PKG2とは、同様の構造なので、以下では代表的に半導体装置PKG1について説明する。
【0017】
図2に示すように、電子装置EDV1は、複数の信号伝送経路SGPを有する。信号伝送経路SGPは、例えば15Gbps(Gigabit per second)以上の伝送速度で信号が伝送される、高速伝送経路(高速信号伝送経路)である。なお、1本の信号伝送経路により15Gbpsの伝送速度を実現する場合は、例えば、信号伝送経路SGPに流れる電気信号の周波数は、30GHz(ギガヘルツ)以上とする必要がある。また、本実施の形態では、高速伝送経路である信号伝送経路SGPの一例として、複数の信号伝送経路SGPのそれぞれに異なる信号が伝送される、所謂、シングルエンド構造の伝送経路を取り上げて説明する。ただし、以下で説明する技術は、差動対を構成する一対の信号伝送経路を介して一つの信号を伝送する、差動方式の伝送経路にも適用できる。
【0018】
図2に示すように、半導体装置PKG1が有する半導体チップ(半導体部品、電子部品)CHP1は、複数の電極(電極端子)を備えている。半導体チップCHP1が有する複数の電極は、出力信号(送信信号)である信号SGT(
図1参照)が伝送される信号電極(信号電極端子)Txを含む。また、半導体チップCHP1が有する複数の電極は、入力信号(受信信号)である信号SGR(
図1参照)が伝送される信号電極(信号電極端子)Rxを含む。なお、以下では、信号電極Txまたは信号電極Rxの総称として、信号電極Sxと記載する場合がある。
【0019】
図2では、半導体装置PKG1が備える複数の信号伝送経路SGPのうち、2本の出力信号伝送経路SGPTおよび2本の入力信号伝送経路SGPRを代表的に示している。しかし、半導体装置PKG1が備える信号伝送経路SGPの数は、
図2に示す数より多い。
【0020】
また、半導体チップCHP1が有する複数の電極は、基準電位(第1電位)VSSが供給される電極(基準電位電極、第1電位電極)Vsと、電源電位(第2電位)VDDが供給される電極(電源電位電極、第2電位電極)Vdと、を含む。電極Vsは、基準電位供給経路VSPの一部分を構成する。電極Vdは、電源電位供給経路VDPの一部分を構成する。半導体チップCHP1(詳しくは、半導体チップCHP1が備える回路)には、電極Vdを介して電源電位VDDが供給される。また、半導体チップCHP1(詳しくは、半導体チップCHP1が備える回路)には、電極Vsを介して基準電位VSSが供給される。半導体チップCHP1が備える複数の回路のうちの少なくとも一部は、電源電位VDDと基準電位VSSとの電位差により生成される駆動電圧により駆動される。基準電位VSSは例えば接地電位であって、電源電位VDDは基準電位VSSより高い。
【0021】
<半導体装置>
図3は、
図1に示す二個の半導体装置のうちの一方の半導体装置一実施の形態の半導体装置の上面図である。
図4は、
図3に示す半導体装置の下面図である。また、
図5は、
図3に示すカバー部材を取り除いた状態で配線基板上の半導体装置の内部構造を示す平面図である。また、
図6は、
図3のA-A線に沿った断面図である。
【0022】
本実施の形態の半導体装置PKG1は、配線基板SUB1と、配線基板SUB1に搭載された半導体チップCHP1(
図5参照)と、を有する。また、半導体装置PKG1は、半導体チップCHP1上に配置された放熱シートTIMと、半導体チップCHP1の全体、放熱シートTIMの全体、および配線基板SUB1の一部分を覆うカバー部材LIDと、を有する。なお、図示は省略するが、以下で説明する技術は、放熱シートTIMやカバー部材LIDを有していない半導体装置に適用することも可能である。
【0023】
図6に示すように、配線基板SUB1は、半導体チップCHP1が搭載された上面(面、主面、チップ搭載面)2t、上面2tとは反対側の下面(面、主面、実装面)2bを有する。また、配線基板SUB1は、上面2tおよび下面2bのそれぞれの外縁に連なる複数の側面2s(
図3~
図5参照)を有する。本実施の形態の場合、配線基板SUB1の上面2t(
図3参照)および下面2b(
図4参照)はそれぞれ四角形である。上面2tは、半導体チップCHP1の表面3tと対向するチップ搭載面である。
【0024】
配線基板SUB1は、チップ搭載面である上面2t側の端子(パッド2PD)と実装面である下面2b側の端子(ランド2LD)とを電気的に接続する複数の配線層(
図6に示す例では6層)WL1、WL2、WL3、WL4、WL5、およびWL6を有する。各配線層は、上面2tと下面2bとの間にある。各配線層は、電気信号や電力を供給する経路である配線などの導体パターンを有する。また各配線層の間には、絶縁層2eが配置されている。各配線層は、絶縁層2eを貫通する層間導電路であるビア配線2v、あるいはスルーホール配線2THWを介して互いに、かつ、電気的に接続されている。なお、本実施の形態では、配線基板SUB1の一例として8層の配線層を備える配線基板を例示しているが、配線基板SUB1が備える配線層の数は8層には限定されない。例えば5層以下、あるいは7層以上の配線層を備える配線基板を変形例として用いることができる。
【0025】
また、複数の配線層のうち、最も上面2t側に配置された配線層WL1は、有機絶縁膜SR1に覆われる。有機絶縁膜SR1には、開口部が設けられ、配線層WL1に設けられた複数の複数のパッド2PDは、開口部において、有機絶縁膜SR1から露出している。また、複数の配線層のうち、配線基板SUB1の下面2b側に最も近い位置に配置された配線層WL6には、複数のランド2LDが設けられる、配線層WL6は、有機絶縁膜SR2に覆われる。有機絶縁膜SR1および有機絶縁膜SR2のそれぞれは、ソルダレジスト膜である。配線層WL1に設けられる複数のパッド2PDと、配線層WL6に設けられる複数のランド2LDのそれぞれは、配線基板SUB1が備える各配線層に形成された導体パターン(配線2dや大面積の導体パターン)、ビア配線2v、およびスルーホール配線2THWを介して電気的に接続されている。
【0026】
配線2d、パッド2PD、ビア配線2v、ビアランド2vL(後述する
図9参照)、スルーホール配線2THW、ランド2LD、および導体パターン2CPのそれぞれは、例えば銅または銅を主成分とする金属材料から成る。
【0027】
また、配線基板SUB1は、例えば、ガラス繊維に樹脂を含浸させたプリプレグからなる絶縁層(コア材、コア絶縁層)2CRの上面2Ctおよび下面2Cbに、それぞれ複数の配線層をビルドアップ工法により積層することで、形成されている。また、絶縁層2CRの上面2Ct側にある配線層WL3と下面2Cb側にある配線層WL4とは、上面2Ctと下面2Cbのうちの一方から他方までを貫通するように設けられた複数の貫通孔(スルーホール)に埋め込まれた、複数のスルーホール配線2THWを介して電気的に接続されている。
【0028】
図6に示す例では、配線基板SUB1はコア材である絶縁層2CRの上面2Ct側、および下面2Cb側にそれぞれ複数の配線層を積層した配線基板を示している。ただし、
図6に対する変形例として、プリプレグ材などの硬い材料からなる絶縁層2CRを有さず、絶縁層2eと配線2dなどの導体パターンを順に積層して形成する、所謂、コアレス基板を用いても良い。コアレス基板を用いた場合、スルーホール配線2THWは形成せず、各配線層は、ビア配線2vを介して電気的に接続されている。
【0029】
また、
図6に示す例では、複数のランド2LDのそれぞれには、半田ボール(半田材、外部端子、電極、外部電極)SBが接続されている。半田ボールSBは、半導体装置PKG1を図示しないマザーボードに実装する際に、マザーボード側の複数の端子(図示は省略)と複数のランド2LDを電気的に接続する、導電性部材である。半田ボールSBは、例えば、鉛(Pb)入りのSn-Pb半田材、あるいは、Pbを実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田からなる半田材である。鉛フリー半田の例としては、例えば錫(Sn)のみ、錫-ビスマス(Sn-Bi)、または錫-銅-銀(Sn-Cu-Ag)、錫-銅(Sn-Cu)などが挙げられる。ここで、鉛フリー半田とは、鉛(Pb)の含有量が0.1wt%以下のものを意味し、この含有量は、RoHS(Restriction of Hazardous Substances)指令の基準として定められている。
【0030】
また、
図4に示すように複数の半田ボールSBは、行列状(アレイ状、マトリクス状)に配置されている。また、
図4では図示を省略するが、複数の半田ボールSBが接合された複数のランド2LD(
図6参照)も行列状(マトリクス状)に配置されている。このように、配線基板SUB1の実装面側に、複数の外部端子(半田ボールSB、ランド2LD)を行列状に配置する半導体装置を、エリアアレイ型の半導体装置と呼ぶ。エリアアレイ型の半導体装置は、配線基板SUB1の実装面(下面2b)側を、外部端子の配置スペースとして有効活用することができるので、外部端子数が増大しても半導体装置の実装面積の増大を抑制することが出来る点で好ましい。つまり、高機能化、高集積化に伴って、外部端子数が増大する半導体装置を省スペースで実装することができる。
【0031】
また、半導体装置PKG1は、配線基板SUB1上に搭載された半導体チップCHP1を備えている。
図6に示すように、半導体チップCHP1のそれぞれは、複数の突起電極3BPが配列された表面(主面、上面)3t、表面3tとは反対側の裏面(主面、下面)3bを備える。また半導体チップCHP1は、表面3tおよび裏面3bと交差する複数の側面3sを備える。半導体チップCHP1は、
図5に示すように平面視において配線基板SUB1よりも平面積が小さい四角形の外形形状を成す。
図5に示す例では、半導体チップCHP1が配線基板SUB1の上面2tの中央部に搭載され、かつ、半導体チップCHP1の4個の側面3sのそれぞれが、配線基板SUB1の4個の側面2sのそれぞれに沿って延びている。
【0032】
また、半導体チップCHP1の表面3t側には、複数の電極(パッド、電極パッド、ボンディングパッド)3PDが形成されている。
図6に示す例では、半導体チップCHP1は、表面3tが配線基板SUB1の上面2tと対向した状態で、配線基板SUB1上に搭載されている。このような搭載方式は、フェイスダウン実装方式、あるいはフリップチップ接続方式と呼ばれる。
【0033】
図示は省略するが、半導体チップCHP1の主面(詳しくは、半導体チップCHP1の基材である半導体基板の素子形成面に設けられた半導体素子形成領域)には、複数の半導体素子(回路素子)が形成されている。複数の電極3PDは、半導体チップCHP1の内部(詳しくは、表面3tと図示しない半導体素子形成領域の間)に配置された配線層に形成された配線(図示は省略)を介して、この複数の半導体素子と、それぞれ電気的に接続されている。
【0034】
半導体チップCHP1(詳しくは、半導体チップCHP1の基材)は、例えばシリコン(Si)から成る。また、表面3tには、半導体チップCHP1の基材および配線を覆う絶縁膜(後述する
図9に示すパッシベーション膜3PF)が形成されており、複数の電極3PDのそれぞれの一部は、このパッシベーション膜に形成された開口部において、パッシベーション膜から露出している。また、複数の電極3PDは、それぞれ金属からなり、本実施の形態では、例えばアルミニウム(Al)からなる。
【0035】
また、
図6に示すように、複数の電極3PDにはそれぞれ突起電極3BPが接続され、半導体チップCHP1の複数の電極3PDと、配線基板SUB1の複数のパッド2PDとは、複数の突起電極3BPを介して、それぞれ電気的に接続されている。突起電極(バンプ電極)3BPは、半導体チップCHP1の表面3t上に突出するように形成された金属部材(導電性部材)である。突起電極3BPは、本実施の形態では、電極3PD上に、例えば銅から成る柱状電極(所謂カッパーピラー電極)が形成され、柱状電極の先端に半田材が積層され構造を備える。柱状電極の先端に積層された半田材としては、上記した半田ボールSBと同様に、鉛入りの半田材や鉛フリー半田を用いることができる。
【0036】
半導体チップCHP1を配線基板SUB1に搭載する際には、複数のパッド2PDに半田との接合性が良好な接合材(例えば下地金属膜や半田ペースト)を予め形成しておく。柱状電極の先端の半田材とパッド2PD上の接合材とを接触させた状態で加熱処理(リフロー処理)を施すことで、半田が一体化して、突起電極3BPが形成されている。また、本実施の形態に対する変形例としては、ニッケル(Ni)からなる柱状電極、あるいは電極3PD上に下地金属膜を介してマイクロ半田ボールが形成された、所謂半田バンプを突起電極3BPとして用いてもよい。
【0037】
また、
図6に示すように半導体チップCHP1と配線基板SUB1の間には、アンダフィル樹脂(絶縁性樹脂)UFが配置されている。アンダフィル樹脂UFは、半導体チップCHP1の表面3tと配線基板SUB1の上面2tの間の空間を塞ぐように配置されている。複数の突起電極3BPのそれぞれはアンダフィル樹脂UFにより封止されている。また、アンダフィル樹脂UFは、絶縁性(非導電性)の材料(例えば樹脂材料)から成り、半導体チップCHP1と配線基板SUB1の電気的接続部分(複数の突起電極3BPの接合部)を封止するように配置されている。このように、複数の突起電極3BPと複数のパッド2PDとの接合部をアンダフィル樹脂UFで覆うことで、半導体チップCHP1と配線基板SUB1の電気的接続部分に生じる応力を緩和させることができる。また、半導体チップCHP1の複数の電極3PDと複数の突起電極3BPとの接合部に生じる応力についても緩和させることができる。さらには、半導体チップCHP1の半導体素子(回路素子)が形成された主面を保護することもできる。
【0038】
また、半導体チップCHP1の裏面3bには、カバー部材(リッド、ヒートスプレッダ、放熱部材)LIDが配置されている。カバー部材LIDは、例えば、配線基板SUB1よりも熱伝導率が高い金属板であって、半導体チップCHP1で発生した熱を外部に排出する機能を備えている。また、カバー部材LIDは、放熱シートTIMを介して半導体チップCHP1と熱的に接続されている。放熱シートTIMは、半導体チップCHP1およびカバー部材LIDのそれぞれと接触している。
【0039】
<配線基板のパッドの周辺構造>
次に、
図6に示す突起電極3BPの接続部分周辺の詳細な構造について説明する。
図7は、
図6に示す配線基板の上面側の拡大平面図である。
図8は、
図7のB-B線に沿った拡大断面図である。
図9は、
図7のC-C線に沿った拡大断面図である。
図10は、
図7に対応する拡大平面において、
図9に示す第2層目の配線層に配置された金属パターンの構造例を示す拡大平面図である。
図8および
図9では、突起電極3BPとパッド2PDとの位置関係を示すため、複数のパッド2PDのそれぞれに接続された突起電極3BPを図示している。
【0040】
図7に示す配線基板SUB1の上面2t、および
図6に示す複数の配線層のそれぞれは、半導体チップCHP1側から視た平面視において、半導体チップCHP1と重なる領域CHR1(
図7参照)と、半導体チップCHP1と重ならず、かつ、領域CHR1の周囲にある領域CHR2(
図7参照)と、を備える。また、複数の配線層のそれぞれは、領域CHR1と領域CHR2との境界であって、かつ、平面視において半導体チップCHP1の側面3s(
図5参照)のいずれか一つと重なる境界線CBL1(
図7参照)を備える。以下の説明において、境界線CBL1を用いて説明している文章は、「境界線CBL1」の部分を、「半導体チップCHP1側から視た平面視における半導体チップCHP1の側面3sの一つ」と読み替えることができる。
【0041】
図7に示すように複数のパッド2PDは、半導体チップCHP1(
図6参照)と重なる領域CHR1内に、行列状(アレイ状、マトリクス状)に配置されている。平面図による図示は省略するが、
図8に示すように、半導体チップCHP1の表面3tに配列されている複数の突起電極3BPと複数のパッド2PDとのそれぞれは、互いに対向する位置に配置されている。同様に、半導体チップCHP1の表面3tに配列された複数の電極3PDと複数のパッド2PDとのそれぞれは、互いに対向する位置に配置されている。
【0042】
図7に示す複数のパッド2PDのそれぞれは、突起電極3BP(
図8参照)と対向する中央部(部分)PDcおよび中央部PDcの周囲にある周縁部(部分)PDpを有している。複数のパッド2PDのそれぞれの周縁部(部分)PDpは、有機絶縁膜SR1に覆われ、かつ、複数のパッド2PDのそれぞれの中央部(部分)PDcは、有機絶縁膜SR1に形成された開口部SRhにおいて有機絶縁膜SR1から露出する。
図9に示すように、パッド2PDのうち、開口部SRhから露出する部分が、突起電極3BPに接合されている。配線基板SUB1が有する複数のパッド2PDは、電気信号の伝送経路(例えば
図2に示す信号伝送経路SGP)、基準電位供給経路VSP(
図2参照)、または電源電位供給経路VSD(
図2参照)に含まれる。
【0043】
図8に示すように、半導体チップ3の表面3t側には、パッシベーション膜3PFが形成されている。パッシベーション膜3PFは、表面3tを持つ無期絶縁膜である。パッシベーション膜3PFには開口部PFhが形成され、開口部PFhにおいて、電極3PDがパッシベーション膜3PFから露出している。突起電極3BPの一方の端部は、電極3PDに接している。突起電極3BPの他方の端部は、半田から成る接合材3BMに接している。
【0044】
配線基板SUB1の上面2t側には、有機絶縁膜SR1が形成されている。有機絶縁膜は、半田の濡れ広がりを抑制する特性を備える、ソルダレジスト膜である。有機絶縁膜SR1は上面2tを持っている。有機絶縁膜SR1には、複数の開口部SRhが形成され、開口部SRhにおいてパッド2PDが有機絶縁膜SR1から露出している。パッド2PDの露出面上には、金属膜2UBMが形成されている。金属膜2UBMは、アンダーバンプメタルと呼ばれ、突起電極3BPとパッド2PDとの電気的な接続特性を向上させるために設けられる膜である。突起電極3BPと金属膜2UBMは、半田(接合材3BM)を介して電気的に接続されている。
【0045】
図1および
図2を用いて説明したように、信号伝送経路SGPには高周波信号が伝送されるので、信号伝送経路SGPには、ノイズ対策が必要である。例えば、
図9に示す例では、信号伝送経路SGP(
図2参照)の一部分を構成する配線2dは、配線層WL2(
図6参照)に配置されている。配線基板SUB1の厚さ方向において、配線2dは、配線層WL1に形成された導体パターン2CPと、配線層WL3(
図6参照)に形成された導体パターン2CPとの間に配置されている。導体パターン2CPには基準電位が供給されている。基準電位が供給される導体パターンは、グランドプレーンと呼ばれる。
図9に例示する配線構造は、ストリップライン構造と呼ばれ、配線2dを挟むように配置されたグランドプレーンが、配線2dに高周波信号が伝送されることにより発生する電磁波が周囲に拡散することを防止する電磁シールドとして機能する。
【0046】
また、高速での信号伝送の用途に用いられる半導体装置PKG1の場合、一つの信号伝送経路SGPの高周波化の他、信号伝送経路SGPの数を増加させることによりバス幅を広くする要求もある。信号伝送経路SGPを増加させるためには、パッド2PDの数を増加させる必要がある。しかし、半導体装置に対する小型化の要求から、パッド2PDを増加した場合でも半導体装置PKG1の全体のサイズの増加は抑制する必要がある。この結果、複数のパッド2PDの配置密度が増大する。
図7に示す例では、複数のパッド2PDのそれぞれの直径2PDDは、例えば、90μm~150μm程度、これに対し、互いに隣り合うパッド2PDの中心間距離2PDPの最小値は、直径2PDDに対して110%~130%程度である。
【0047】
図7に示すように、複数のパッド2PDの配置密度を高くすると、隣り合うパッド2PD同士の短絡を防止する技術が必要になる。例えば、
図8に示す例において、有機絶縁膜SR1とパッド2PDとの密着界面が剥離すると、剥離により発生した隙間に半田が侵入する場合がある。剥離が平面方向に進展すると、剥離の進展の程度によっては、互いに隣り合うパッド2PDが剥離により生じた隙間により連通する場合がある。この連通した隙間に半田が侵入すると、半田を介して隣り合うパッド2PDが短絡する懸念が生じる。
【0048】
上記のような短絡を防止する観点からは、パッド2PDと有機絶縁膜SR1との密着性を向上させることが好ましい。そこで、本願発明者は、パッド2PDのうち、有機絶縁膜SR1と接する面を粗面化することにより、パッド2PDと有機絶縁膜SR1との剥離を抑制する検討について検討した。
【0049】
ところで、金属パターンと樹脂などの有機材料を含む絶縁層との密着性を向上させることは、金属パターンの損傷を保護する観点から好ましい。金属パターンと絶縁層との剥離を防止することができれば、剥離の進展に起因する外力により、金属パターンが破断することを防止できる。この観点からは、粗面化された金属パターンは、
図8に示すパッド2PDのみではなく、配線層WL2(
図6参照)に形成された複数の配線2dのそれぞれと絶縁層2e2との密着界面も、粗面化されていることが好ましい。
【0050】
ところが、本願発明者の検討によれば、信号伝送経路、特に高周波信号の伝送経路を構成する配線2dの表面粗さを粗くすると、伝送ロスが増大することが判った。また、高密度化のため、配線2dの配線幅が細くなる傾向がある。配線2dの配線幅が細い状態で、表面粗さを粗くすると、パターンを成形する際の精度低下の原因となる。信号伝送経路における配線パターンの形状精度が低下すれば、信号伝送特性にバラつきが生じる。
【0051】
上記した検討結果を踏まえ、本実施の形態の半導体装置PKG1の構造について
図9を用いて説明する。なお、以下の説明では、配線層WL1(
図6参照)に形成された金属パターンを金属パターン2MP2として説明する。金属パターン2MP2には、複数のパッド2PDのいずれかが該当する。また、配線層WL2(
図6参照)に形成された金属パターンを金属パターン2MP1として説明する。金属パターン2MP1には、ビアランド2vLと配線2dとが一体に形成されたパターンや導体パターン2CP(
図6参照)などが該当する。また、詳細は後述するが、配線層WL3(
図6参照)に形成された金属パターンを金属パターン2MP3として説明する。金属パターン2MP3には、電源電位または基準電位が供給される複数の導体パターン2CPや、
図6に示すスルーホール配線2THWに接続されたスルーホールランド(符号は省略)などが該当する。
【0052】
図9に示すように、半導体装置PKG1は、半導体チップCHP1と、半導体チップCHP1の表面3tと対向する上面2tを備える配線基板SUB1と、を有する。配線基板SUB1は、絶縁層2e1と、絶縁層2e1上に形成されている金属パターン2MP1と、を含む。また、配線基板SUB1は、金属パターン2MP1に接し、かつ金属パターン2MP1を覆うように絶縁層2e1上に形成されている絶縁層2e2と、絶縁層2e2上に形成されている金属パターン2MP2と、を含む。金属パターン2MP2は、突起電極3BPと対向する第1部分(
図7に示す中央部PDc)および第1部分の周囲にある第2部分(
図7に示す周縁部PDp)を備えている。また、配線基板SUB1は、金属パターン2MP2の第2部分に接し、かつ、金属パターン2MP2の第1部分が露出するように絶縁層2e2上に形成されている有機絶縁膜を含む。金属パターン2MP1は、絶縁層2e1と接する下面MP1bと、下面MP1bの反対側に位置し、絶縁層2e2と接する上面MP1tと、を有する。金属パターン2MP2は、絶縁層2e2と接する下面MP2bと、第2部分において有機絶縁膜と接する上面MP2tと、を有する。金属パターン2MP2の上面MP2tの表面粗さは、金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1b、のそれぞれの表面粗さよりも大きい。
【0053】
例えば、表面粗さの指標を算術平均粗さであるRaを用いて表すと以下のような範囲が好ましい。金属パターン2MP2の上面MP2tの表面粗さ(Ra)は、0.3μm以上が好ましい。一方、金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1b、のそれぞれの表面粗さRaは、0.3μm未満が好ましい。
【0054】
上記した算術平均粗さであるRaは、以下のようにして算出される。まず、表面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さLを抜き取る。次に、抜き取った部分の平均線の方向にX軸を、平均線に直交する方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表す。この時、算術平均粗さであるRaは以下の式により算出される。
【0055】
【0056】
上記した構成の場合、まず、有機絶縁膜SR1の剥離により、隣り合うパッド2PDの短絡が最も発生し易い配線層WL1(
図6参照)のパッド2PDの表面粗さを粗くする。一方、有機絶縁膜SR1に接しない金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1bのそれぞれの表面粗さは、パッド2PDの表面粗さよりも小さい。このため、例えば、
図9に示す配線2dに高周波信号が伝送された場合であっても、伝送ロスを低減させることができる。
【0057】
パッド2PD(すなわち金属パターン2MP2)の表面粗さを粗くする方法は、一例としてサンドブラスト処理を挙げることができる。無機材料から成る微粒子群をターゲットに衝突させることにより、ターゲットの表面粗さを粗くする方法である。
【0058】
表面粗さを粗くするための処理(以下、粗面化処理と記載する)を行う面は、少なくともパッド2PDの上面MP2tが含まれていることが好ましい。上面MP2tは、有機絶縁膜SR1の剥離の起点になり易い面である。また、上面MP2tにおいて剥離を防止できれば、半田からなる接合材3BMの侵入を防止できる。
【0059】
また、
図9に示す例では、金属パターン2MP2は、上面MP2tに連なり、かつ、有機絶縁膜SR1に接する側面MP2sを有する。金属パターン2MP2の側面2sの表面粗さは、金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1b、のそれぞれの表面粗さよりも大きい。金属パターン2MP2の側面2sの表面粗さは、上面MP2tの表面粗さと同程度であり、算術平均粗さであるRaは、0.3μm以上であることが好ましい。側面MP2sの表面粗さを上面MP2tの表面粗さと同程度にすることで、側面MP2sで発生した剥離が上面MP2t側に進展する剥離モードを防止することができる。ただし、図示は省略するが、
図9に対する変形例として、側面MP2sには粗面化処理が施されず、上面MP2tが選択的に粗面化処理された場合がある。この変形例の場合でも、上面MP2tを起点とする剥離は防止できる。
【0060】
また、配線層WL1(
図6参照)には、パッド2PDの他、導体パターン2CPなどの金属パターンが形成されている。パッド2PDの上面MP2tに対して粗面化処理を施す場合、配線層WL1に形成された複数のパッド2PDのみ、あるいは複数のパッド2PDのうちのいくつかに対して選択的に粗面化処理を施すこともできる。しかし、有機絶縁膜SR1と配線層WL1に形成された金属パターンとの剥離を抑制する観点からは、導体パターン2CPの上面を含め、配線層WL1に形成された複数の金属パターンの全てに対して粗面化処理を施すことが特に好ましい。この場合、配線層WL1に形成された全ての金属パターンの上面の表面粗さは、金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1b、のそれぞれの表面粗さよりも大きい。
【0061】
また、
図9に示すように、金属パターン2MP2の中央部(部分)上には金属膜2UBMが形成され、突起電極3BPと金属膜2UBMとは、半田(接合材3BM)を介して電気的に接続されている。この場合、金属パターン2MP2の上面MP2tと有機絶縁膜SR1との界面に剥離(界面剥離)が生じると、剥離が有機絶縁膜SR1内に伝搬(進行)し、この有機絶縁膜SR1内にまで伝搬した隙間に半田が侵入する可能性がある。
【0062】
また、上記した高周波信号の伝送経路において、配線パターンのように長く伸びるパターンでは、表面粗さを小さくすることにより伝送ロスを低減させる効果が特に大きい。
図9に示す例では、突起電極3BPは、金属パターン2MP1と電気的に接続されている。金属パターン2MP1は、絶縁層2e2を貫通するように形成されたビア配線2vを介して金属パターン2MP2と電気的に接続されている。金属パターン2MP1は、ビア配線2vが接合されたビアランド(ビアランド部)2vLと、ビアランド2vLと一体に形成され、かつ、X方向に沿って延びる配線(配線部)2dと、を含んでいる。
【0063】
また、
図7に示すように、金属パターン2MP2(
図9参照)に相当するパッド2PDは、平面視において、半導体チップCHP1と重なる領域CHR1内に配置されている。
図10に示すように、金属パターン2MP1の配線2dは、平面視において、領域CHR1から領域CHR1の周囲にある領域CHR2に向かって延びている。言い換えれば、配線2dは領域CHR1と領域CHR2との境界線CBL1を跨いでいる。さらに言い換えれば、平面視において、パッド2PDは、半導体チップCHP1(
図9参照)の側面3s(
図9参照)と重ならず、かつ、配線2dは、半導体チップCHP1の側面3sの一つと重なる。
【0064】
また、
図9に示す配線2dの長さは、金属パターン2MP2、ビア配線2v、およびビアランド部2vLのそれぞれの長さよりも長い。上記において、配線2dの長さとは、配線2dのうち、
図9に示すビアランド2vLとの接続部から、
図6に示す配線層WL2と配線層WL3とをつなぐビア配線2vとの接続部までの長さとして定義される。金属パターン2MP2の長さは、
図9に示す突起電極2BPとの接続部から配線層WL1と配線層WL2とを繋ぐビア配線2vとの接続部までの長さとして定義される。ビア配線2vの長さは、
図9に示すZ方向におけるビア配線2vの長さとして定義される。ビアランド2vLの長さは、ビアランド2vLのうち、配線層WL1と配線層WL2とを繋ぐビア配線2vとの接続部から、配線2dとの接続部までの長さとして定義される。また、金属パターン2MP1および金属パターン2MP2には、電気信号(例えば
図1に示す信号SGTまたは信号SGR)が伝送される。言い換えれば、金属パターン2MP1および金属パターン2MP2は、信号伝送経路SGP(
図2参照)に含まれる。また、本実施の形態では、信号伝送経路SGPに流れる電気信号は、30GHz(ギガヘルツ)以上の高周波信号である。そのため、30GHz以上の高周波信号の伝送経路のうち、この伝送経路のうちの他の部分よりも長く伸びる部分(配線2dに相当する部分)は、表面の粗さを大きくすると、この部分(配線2d)と接する絶縁層2e1や絶縁層2e2との密着性は向上するが、この粗面化による伝送ロスの影響を受けやすい。すなわち、高周波信号の表皮効果(高周波信号になるほど、配線の表面にしか電流が流れなくなる現象)による散乱損失が増加してしまう。一方、本実施の形態によれば、信号伝送経路を構成する配線2dの表面粗さは、例えば、金属パターン2MP2の上面MP2tの表面粗さよりも小さいので、伝送ロスを低減することができる。
【0065】
金属パターンと絶縁膜との剥離は、各部材を構成する材料に起因する線膨張係数の差に起因して発生する。このため、金属パターンと絶縁膜との線膨張係数の差が小さい場合には、剥離が発生し難く、線膨張係数の差が大きくなれば、剥離が発生し易い。例えば、
図9に示す例において、有機絶縁膜SR1の熱膨張率(具体的には、線膨張係数)は、絶縁層2e2の熱膨張率(具体的には、線膨張係数)よりも大きい。また、有機絶縁膜SR1の貯蔵弾性率は、絶縁層2e2の貯蔵弾性率よりも柔らかい。有機絶縁膜SR1には、電気的な絶縁特性に加えて、上記したようにソルダレジスト膜としての機能が要求される。また、有機絶縁膜SR1は、配線基板SUB1を構成する各材料のうち、最表面(最表層)に位置する膜であるため、保護膜としての機能も要求される。一方、有機絶縁膜SR1よりも配線基板SUB1の内層に位置する絶縁層2e1や絶縁層2e2には、電気的な絶縁特性に加えて、配線基板SUB1の反りや変形を抑制できるよう、高い剛性が要求される。このため、絶縁層2e2の熱膨張率が小さくなるように材料を選択することで、金属パターン2MP1の熱膨張率に近づけることが好ましい。これにより、金属パターン2MP1と絶縁層2e2との界面における剥離の発生を低減できる。一方、有機絶縁膜SR1と金属パターン2MP2との界面は、上記したように上面MP2tの表面粗さを大きくすることにより剥離の発生を抑制することができる。
【0066】
また、
図6に示す例のように、配線層WL3に形成された金属パターン(
図9に示す金属パターン2MP3)がコア絶縁層である絶縁層2CR上に形成されている場合、絶縁層2CRと金属パターン2MP3との界面における剥離は発生し難い。上記したように、絶縁層2CRはガラス繊維に樹脂を含浸させたプリプレグからなる絶縁層である。この場合、絶縁層2CRの線膨張係数を小さくすることができる。一方、有機絶縁膜SR1、絶縁層2e1、および絶縁層2e2は、ガラス繊維を含んでいない。このため、有機絶縁膜SR1、絶縁層2e1および絶縁層2e2のそれぞれの線膨張係数は、絶縁層2CRの線膨張係数よりも大きい。
【0067】
また、
図9に示すように、有機絶縁膜SR1の厚さTSRは、絶縁層2e2の厚さTe2より薄い。相対的に絶縁層2e2のよりも薄い有機絶縁膜SR1は、絶縁層2e2よりも環境温度に応じて膨張または収縮し易い。したがって、有機絶縁膜SR1と金属パターン2MP2との密着界面には、粗面化処理により剥離対策をすることが特に重要である。
【0068】
図11は、
図9に対する変形例である半導体装置を示す拡大断面図である。
図11に示す半導体装置PKG3は、以下で説明するように金属パターン2MP3の上面MP3tに粗面化処理が施されている点を除き、
図9に示す半導体装置PKG1と同様である。したがって、重複する説明は省略する。
図11に示す半導体装置PKG3は、コア絶縁層(絶縁層)2CR(
図6参照)と、絶縁層2CR上に形成された金属パターン2MP3と、を更に含んでいる。金属パターン2MP3は、配線層WL3(
図6参照)に形成された導体パターン2CPである。導体パターン2CPには、基準電位または電源電位が供給されるが、
図9に示す導体パターン2CPには基準電位が供給されている。金属パターン2MP3は、絶縁層2CR(
図6参照)接する下面MP3b、および下面MP3bの反対側に位置し、絶縁層2e1と接する上面MP3tと、を有している。金属パターン2MP3の上面MP3tの表面粗さは、金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1b、のそれぞれの表面粗さよりも大きい。例えば、金属パターン2MP3には、金属パターン2MP2と同様の粗面化処理が施されており、上面MP3tの表面粗さ(Ra)は、0.3μm以上が好ましい。基準電位の供給経路については、信号伝送経路と比較して粗面化による伝送ロスの影響を受け難い。一方、金属パターン2MP3は、配線2dと比較すると、3倍以上の面積を備える大面積のパターンである。大面積の金属パターン2MP3は、熱収縮あるいは熱膨張した時に生じる応力の値が大きい。このため、応力に起因して金属パターン2MP3と絶縁層2e1との密着界面では剥離が発生し易い。そこで、金属パターン2MP3は、金属パターン2MP2と同様に、粗面化処理を施すことが好ましい。
【0069】
ただし、金属パターン2MP3と絶縁層2e1との間に剥離が発生した場合でも、直ちに絶縁不良等が発生する訳ではない。このため、粗面化処理の優先順位としては、金属パターン2MP3よりも金属パターン2MP1の方が高い。したがって、
図9に示す半導体装置PKG1のように、金属パターン2MP3の上面MP3tの表面粗さは、金属パターン2MP1の上面MP1tの表面粗さと同程度である場合もある。
【0070】
ところで、
図9では、金属パターン2MP2の上面MP2t、側面MP2s、および金属パターン2MP3の上面MP3t以外の金属パターンの面は、平坦な面として図示している。ただし、配線基板SUB1を製造する工程において、デスミア処理と呼ばれる処理を行った場合には、他の面も平坦面ではない場合がある。
図12は、
図11に対する変形例を示す拡大断面図である。なお、
図12に示す半導体装置PKG4は、以下で説明するデスミア処理に起因する凹凸面を備えている点を除き、
図11に示す半導体装置PKG3と同様である。したがって、重複する説明は省略する。
【0071】
配線基板SUB1の製造工程において、例えばビルドアップ工法を採用した場合、下層の配線層上に絶縁層を形成した後、ビア配線2vを設けるための穴あけ加工を施す。この時、穴あけ加工後に残った絶縁層の残渣を除去するため、例えば非処理面にプラズマを照射する。この処理をデスミア処理と呼ぶ(プラズマデスミア処理と呼ぶ場合もある)。デスミア処理を施すことにより、金属膜と絶縁層との密着性を向上させることができる。一方、デスミア処理では絶縁層にプラズマを照射するので、金属パターンの下地層である絶縁層の表面粗さは、デスミア処理をしない場合と比較すると大きくなる。このデスミア処理後に金属パターンを形成すると、金属パターンの下面は、デスミア処理された絶縁層の凹凸に倣って凹凸面になる。
【0072】
図12に示すように、金属パターン2MP1の下面MP1bおよび金属パターン2MP2の下面MP2bのそれぞれは、平坦面ではなくデスミア処理に起因する凹凸面を有している。ただし、デスミア処理に起因する凹凸面の場合、上記したサンドブラスト処理などの粗面化処理と比較すると、表面粗さが極端に大きくなることを抑制できる。したがって、
図12に示す変形例の場合でも、以下のことが言える。すなわち、金属パターン2MP2の上面MP2tの表面粗さは、金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1b、のそれぞれの表面粗さよりも大きい。また、金属パターン2MP2の側面2sの表面粗さは、金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1b、のそれぞれの表面粗さよりも大きい。また、金属パターン2MP3の上面MP3tの表面粗さは、金属パターン2MP2の下面MP2b、金属パターン2MP1の上面MP1t、および下面MP1b、のそれぞれの表面粗さよりも大きい。
【0073】
また、
図12に示す変形例の半導体装置PKG4においても、金属パターン2MP1に対して粗面化処理を施さない点は、
図9に示す半導体装置PKG1と同様である。このため、金属パターン2MP1の上面MP1tの表面粗さと下面MP1bの表面粗さとには以下の関係が成り立つ。すなわち、金属パターン2MP1の上面MP1tの表面粗さは、金属パターン2MP1の下面MP1bの表面粗さよりも小さい。また、金属パターン2MP1の上面MP1tの表面粗さは、金属パターン2MP2の上面MP2t、下面MP2b、および側面MP2sのそれぞれの表面粗さよりも小さい。
【0074】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0075】
2b 下面(面、主面、実装面)
2Cb 下面
2CP 導体パターン(導体プレーン)
2CR 絶縁層(コア材、コア絶縁層)
2Ct 上面
2d 配線(配線部)
2e,2e1,2e2 絶縁層
2LD ランド
2MP1,2MP2,2MP3 金属パターン
2PD パッド
2PDD 直径
2PDP 中心間距離
2s 側面
2t 上面(面、主面、チップ搭載面)
2THW スルーホール配線
2UBM 金属膜
2v ビア配線
2vL ビアランド(ビアランド部)
3 半導体チップ
3b 裏面(主面、下面)
3BM 接合材
3BP 突起電極(バンプ電極)
3PD 電極(パッド、電極パッド、ボンディングパッド)
3PF 絶縁膜
3PF パッシベーション膜
3s 側面
3t 表面(主面、上面)
CBL1 境界線
CHP1 半導体チップ(半導体部品、電子部品)
CHR1,CHR2 領域
EDV1 電子装置(電子機器)
LID カバー部材(リッド、ヒートスプレッダ、放熱部材)
MB1 配線基板(マザーボード、実装基板)
MP1b,MP2b,MP3b 下面
MP1t,MP2t,MP3t 上面
PDc 中央部(部分)
PDp 周縁部(部分)
PFh 開口部
PKG1,PKG2,PKG3,PKG4 半導体装置
Rx,Sx,Tx 信号電極(信号電極端子)
SB 半田ボール(半田材、外部端子、電極、外部電極)
SGP 信号伝送経路
SGPR 入力信号伝送経路
SGPT 出力信号伝送経路
SGR,SGT 信号(電気信号)
SR1,SR2 有機絶縁膜
SRh 開口部
SUB1 配線基板
TIM 放熱シート
UF アンダフィル樹脂(絶縁性樹脂)
Vd 電極(電源電位電極、第2電位電極)
VDD 電源電位(第2電位)
Vs 電極(基準電位電極、第1電位電極)
VSD 電源電位供給経路
VSP 基準電位供給経路
VSS 基準電位(第1電位)
WL1,WL2,WL3,WL3,WL4,WL5,WL6 配線層