IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図1
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図2
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図3
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図4
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図5
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図6
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図7
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図8
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図9
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図10
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図11
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図12
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191693
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 515
H01G4/30 201C
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100073
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】和泉 達也
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AC03
5E001AC06
5E001AE00
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE04
5E082EE16
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】絶縁破壊が生じにくい積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサ1は、長さ方向及び幅方向に延びる内部電極50を含む内部電極層5と、長さ方向及び幅方向に延び且つ100モルのZrに対して100モル以上101モル以下のCaを含む誘電体層4とが、積層方向に交互に積層された内層部6を備える積層体2、及び、積層体2の長さ方向の両側の端面にそれぞれ配置された2つの外部電極3、を備え、内部電極層5は、長さ方向の一方が外部電極3の一方に接続され、長さ方向の他方が外部電極3の他方と非接続であり、且つ、幅方向の中央部における長さL1、幅方向の端部における長さL2としたときに、L2<L1となるように、長さ方向の他方の幅方向に延びる端辺W0が湾曲した曲線形状を有する内部電極50を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向及び幅方向に延びる内部電極を含む内部電極層と、前記長さ方向及び前記幅方向に延び且つ100モルのZrに対して100モル以上101モル以下のCaを含む誘電体層とが、積層方向に交互に積層された内層部を備える積層体、及び、
前記積層体の前記長さ方向の両側の端面にそれぞれ配置された2つの外部電極、を備え、
前記内部電極層は、
前記長さ方向の一方が前記外部電極の一方に接続され、
前記長さ方向の他方が前記外部電極の他方と非接続であり、且つ、
前記幅方向の中央部における長さL1、前記幅方向の端部における長さL2としたときに、L2<L1となるように、前記長さ方向の他方の幅方向に延びる端辺が湾曲した曲線形状を有する内部電極を含む、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記内部電極は、
最大幅をWmaxとしたときに、Wmax<L2である、
請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記内部電極は、
最大幅をWmaxとしたときに、
0.2Wmax<L2-L1<0.4Wmax、かつ、
Wmax<0.6L2である、
請求項1又は請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記誘電体層は、100モルのZrに対して、1.3モル以上4.4モル以下のTiを含む、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記積層体の前記幅方向の側面から前記内部電極の前記幅方向の端部までの距離は、2.0μm以上60μm以下であり、
前記内部電極の厚みは、1.0μm以上4.0μm以下である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記長さ方向の寸法が、0.2mm以上2.0mm以下であり、
前記積層方向の寸法が、0.1mm以上1.2mm以下であり、
前記幅方向の寸法が、0.1mm以上1.2mm以下である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記内部電極層を、30層以上50層以下含む、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記内層部を前記積層方向に3等分した場合、3等分した前記内層部のうちの中央部に含まれる前記内部電極層の枚数は、前記中央部の両側部に含まれる前記内部電極層の数より少ない、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記内部電極層は、
前記内部電極を1枚含む内部電極一連層と、
前記内部電極を2枚含み、互いの間に所定の間隔が開けられた内部電極二連層と、
が交互に配置されている、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
前記内部電極層は、
前記内部電極を2枚含み、互いの間に所定の間隔が開けられた内部電極二連層と、
前記内部電極を3枚含み、互いの間に所定の間隔が開けられた内部電極三連層と、
が交互に配置されている、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項11】
前記内部電極層は、
一方の前記外部電極に接続された第1内部電極層と、
他方の前記外部電極に接続された第2内部電極層と、を含み、
前記第1内部電極層と前記第2内部電極層とが、2層ずつ交互に配置されている、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、静電容量の温度変化が小さい積層セラミックコンデンサが求められ、抵抗温度係数を小さくするために、CaおよびZrを含む誘電体層が使用された積層セラミックコンデンサが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-153778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、CaおよびZrを含む誘電体層が使用された積層セラミックコンデンサは、相対的に高い電圧が印加されると、絶縁破壊が生じることがある。
【0005】
本発明は、絶縁破壊が生じにくい積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、長さ方向及び幅方向に延びる内部電極を含む内部電極層と、前記長さ方向及び前記幅方向に延び且つ100モルのZrに対して100モル以上101モル以下のCaを含む誘電体層とが、積層方向に交互に積層された内層部を備える積層体、及び、前記積層体の前記長さ方向の両側の端面にそれぞれ配置された2つの外部電極、を備え、前記内部電極層は、前記長さ方向の一方が前記外部電極の一方に接続され、前記長さ方向の他方が前記外部電極の他方と非接続であり、且つ、前記幅方向の中央部における長さL1、前記幅方向の端部における長さL2としたときに、L2<L1となるように、前記長さ方向の他方の幅方向に延びる端辺が湾曲した曲線形状を有する内部電極を含む、積層セラミックコンデンサを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、絶縁破壊が生じにくい積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1の概略斜視図である。
図2図1に示す第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1のII-II線に沿った断面図である。
図3図1に示す第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1のIII-III線に沿った断面図である。
図4】第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1の第1内部電極層5Aを通るLW断面図である。
図5】第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1の第2内部電極層5Bを通るLW断面図である。
図6】第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明するフローチャートである。
図7】第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1において、誘電体層4に含まれるCaとTiのモル数を変更した実施例の耐湿性と絶縁抵抗とを測定した結果を示す表である。
図8】第2実施形態の積層セラミックコンデンサ201の、第1実施形態の図2に対応する断面図である。
図9】第3実施形態の積層セラミックコンデンサ301の、第1実施形態の図2に対応する断面図である。
図10】積層セラミックコンデンサ301のLW断面図であり、(A)は内部電極一連層51を通る断面図、(B)は内部電極二連層52を通る断面図である。
図11】第4実施形態の積層セラミックコンデンサ401の、第1実施形態の図2に対応する断面図である。
図12】積層セラミックコンデンサ401のLW断面図であり、(A)は内部電極二連層52Bを通る断面図、(B)は内部電極三連層53を通る断面図である。
図13】第5実施形態の積層セラミックコンデンサ501の、第1実施形態の図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ1について説明する。図1は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1の概略斜視図である。図2は、図1に示す第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1のII-II線に沿った断面図である。図3は、図1に示す第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1のIII-III線に沿った断面図である。
【0010】
(積層セラミックコンデンサ1)
積層セラミックコンデンサ1は、略直方体形状で、積層体2と、積層体2の両端に設けられた一対の外部電極3とを備える。積層体2は、複数の誘電体層4と複数の内部電極層5とが積層された内層部6を含む。
【0011】
以下の説明において、積層セラミックコンデンサ1の向きを表わす用語として、積層セラミックコンデンサ1において、一対の外部電極3が設けられている方向を長さ方向Lとする。誘電体層4と内部電極層5とが積層されている方向を積層方向Tとする。長さ方向L及び積層方向Tのいずれにも交差する方向を幅方向Wとする。なお、実施形態においては、幅方向Wは長さ方向L及び積層方向Tのいずれにも直交している。積層セラミックコンデンサ1は、長さ方向Lの寸法が、0.2mm以上2.0mm以下であり、積層方向Tの寸法が、0.1mm以上1.2mm以下であり、幅方向Wの寸法が、0.1mm以上1.2mm以下である。
【0012】
また、以下の説明において、積層体2の6つの外周面のうち、積層方向Tに相対する一対の外周面を主面Aとし、幅方向Wに相対する一対の外周面を側面Bとし、長さ方向Lに相対する一対の外周面を第1端面CAと第2端面CBとする。なお、第1端面CAと第2端面CBとを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて端面Cとして説明する。
【0013】
(積層体2)
積層体2は、内層部6と、内層部6の両方の主面A側に配置される外層部7と、を備える。
【0014】
(内層部6)
内層部6は、複数の誘電体層4と、複数の内部電極層5とが積層されている。内層部6は、内部電極層5及び誘電体層4を、それぞれ30層以上50層以下含む。
【0015】
(誘電体層4)
誘電体層4は、Zr(ジルコニウム)100モルに対して、Ca(カルシウム)を100モルから101モル含む、例えばCaZrO(ジルコン酸カルシウム)等のセラミック材料で製造されている。Zr及びCaを含むセラミック材料は、静電容量の温度変化が小さいため、温度係数Tc[ppm/℃]が小さいという特性を有している。また、誘電体層4は、Zr100モルに対して、Ti(チタン)を1.3モル以上4.4モル以下含むことが好ましく、Tiを1.5モル以上4.0モル以下含むことがより好ましい。
例えば、誘電体層4は、CaZrO(ジルコン酸カルシウム)のZrの一部がTiに置換されたセラミック材料である。このセラミック材料において、Zr100モルに対して、Ti(チタン)を1.3モル以上4.4モル以下含むことが好ましく、Tiを1.5モル以上4.0モル以下含むことがより好ましい。
【0016】
(内部電極層5)
内部電極層5は、それぞれ厚みが1.0μm以上4.0μm以下である複数の第1内部電極層5Aと複数の第2内部電極層5Bとを備える。第1内部電極層5Aと第2内部電極層5Bとは交互に配置されている。なお、第1内部電極層5Aと第2内部電極層5Bとを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて内部電極層5として説明する。内部電極層5の詳細については後述する。
内部電極層5に使用される金属材料としては、Cu又はCu合金が使用される。内部電極層5にCu又はCu合金が使用されることによって、内部電極層5の比抵抗が抑制される。その結果、積層セラミックコンデンサ1のESR(等価直列抵抗)は抑制される。
【0017】
(外層部7)
外層部7は、内層部6の両方の主面A側に配置され、内層部6の誘電体層4と同じ誘電体セラミック材料で製造されている。
【0018】
(外部電極3)
外部電極3は、積層体2の第1端面CAに設けられた第1外部電極3Aと、積層体2の第2端面CBに設けられた第2外部電極3Bとを備える。なお、第1外部電極3Aと第2外部電極3Bとを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて外部電極3として説明する。外部電極3は、端面Cだけでなく、主面A及び側面Bの端面C側の一部も覆っている。
【0019】
(内部電極層5の詳細)
内部電極層5は、第1内部電極層5Aと第2内部電極層5Bとが、間に誘電体層4を挟んで互いに交互に配置されている。第1内部電極層5Aは第1内部電極50Aを含み、第2内部電極層5Bは第2内部電極50Bを含む。第1内部電極50Aと2内部電極50Bとは、長さ方向Lに逆向きであるが、同形で同じサイズである。図4は第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1を、第1内部電極層5Aを通る長さ方向L及び幅方向Wに延びる面で切断したLW断面図である。図5は第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1を、第2内部電極層5Bを通る長さ方向L及び幅方向Wに延びる面で切断したLW断面図である。
【0020】
第1内部電極層5Aに含まれる第1内部電極50Aは、長さ方向Lの一方が積層体2の第1端面CAに露出して第1外部電極3Aに接続され、長さ方向Lの他方は積層体2の第2端面CBに露出せずに第2外部電極3Bと非接続である。
【0021】
第2内部電極層5Bに含まれる第2内部電極50Bは、長さ方向Lの一方が積層体2の第2端面CBに露出して第2外部電極3Bに接続され、長さ方向Lの他方は積層体2の第1端面CAに露出せずに第1外部電極3Aと非接続である。
【0022】
第1内部電極50Aの第2外部電極3Bと非接続である側の端辺W0と、第2内部電極50Bの第1外部電極3Aと非接続である側の端辺W0とは、湾曲した曲線形状を有する。そして、第1内部電極50Aと第2内部電極50Bとは、幅方向Wの中央部における長さL1、幅方向Wの端部における長さL2としたときに、L2<L1である。
なお、第1内部電極50Aと第2内部電極50Bにおいて、端辺W0は幅方向Wの中央部を通る長さL1の直線に対して略線対称であり、幅方向Wの端部を通る両側辺は、同じ長さL2である。
また、曲線形状とは図4に示すように端辺W0に直線状の部分が存在しないもののみならず、端辺W0の幅方向の中央を通る所定範囲が直線状で、その直線状の部分と両側辺とのなす角部が丸められているものも含む。そして、第1内部電極50A及び第2内部電極50Bの最大幅をWmaxとしたときに、端辺W0の幅方向中央部での曲率半径は、Wmaxの70%以上である。
【0023】
第1内部電極50Aと第2内部電極50Bとは互いの大部分が重なるように交互に配置され、交互に配置されている部分は、電荷が蓄えられる対向部となる。第1内部電極50Aの第2内部電極50Bと重ならない部分は、第1外部電極3A側に延びて引き出し部となり、第2内部電極50Bの第1内部電極50Aと重ならない部分は、第2外部電極3B側に延びて引き出し部となる。
【0024】
第1内部電極50A及び第2内部電極50Bは積層体2の幅方向Wの側面Bに露出しておらず、積層体2の幅方向Wの両側の側面Bから第1内部電極50A及び第2内部電極50Bそれぞれの幅方向Wの端部までの間の距離Wgは2.0μm以上60μm以下であり、この部分はサイドギャップ部となる。
【0025】
また、第1内部電極50A及び第2内部電極50Bの最大幅をWmaxとしたときに、Wmax<L2である。なお、実施形態で第1内部電極50A及び第2内部電極50Bは、湾曲した端辺W0以外の部分において一定幅であるので、第1内部電極50A及び第2内部電極50Bの幅が最大幅Wmaxである。
【0026】
さらに、第1内部電極50A及び第2内部電極50Bにおいて、
0.2Wmax<L2-L1<0.4Wmax、かつ、Wmax<0.6L2である。
【0027】
(積層セラミックコンデンサ1の製造方法)
図6は第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明するフローチャートである。
【0028】
(セラミックグリーンシート印刷工程S1)
図示するように、ステップS1において、セラミックス粉末、バインダ及び溶剤を含むセラミックスラリーがキャリアフィルム上にシート状に成形された帯状のセラミックグリーンシートに第1内部電極50A及び第2内部電極50Bとなる内部電極パターンが印刷される。
【0029】
(積層工程S2)
内部電極パターンが積層方向Tに隣り合う素材シート間において長さ方向Lにおいて半ピッチずつずれた状態になるように、複数の素材シートが積み重ねられる。さらに、複数枚積層された素材シートの積層方向Tの両側にそれぞれ、外層部7となる外層部用セラミックグリーンシートが積み重ねられる。
【0030】
(マザーブロック形成工程S3)
続いて、複数枚積層された素材シートの積層方向Tの両側にそれぞれ外層部7となる外層部用セラミックグリーンシートが積み重ねられたものを熱圧着することでマザーブロックが形成される。
【0031】
(マザーブロック分割工程S4)
次いで、マザーブロックが分割されて複数の積層体2が製造される。
【0032】
(外部電極形成工程S5)
積層体2の両端部に外部電極3が形成される。
【0033】
(焼成工程S7)
そして、設定された焼成温度で、窒素雰囲気中で所定時間加熱され、外部電極3が積層体2に焼き付けられ、図1に示す積層セラミックコンデンサ1が製造される。
【0034】
まず、第1実施形態の効果について説明する前に、比較形態として、内部電極層5の幅方向Wの両端の側辺の長さL2と、内部電極層5の幅方向Wの中央部における長さL1とが等しく、内部電極層5の長さ方向Lにおける、外部電極3と非接続となる側の端辺が直線で、内部電極層5が略矩形の積層セラミックコンデンサについて説明する。
【0035】
このような比較形態の積層セラミックコンデンサの場合、内部電極層5における、端辺が側辺と端辺との間の角部は約90度となる。この場合、外部電極3に印加される電圧が大きくなると、第1内部電極50Aにおいて、積層体2の第2端面CBに露出せずに第2外部電極3Bと非接続である側の角部又は、第2内部電極50Bにおいて、積層体2の第1端面CAに露出せずに第1外部電極3Aと非接続である側の角部に電界が集中し、内部電極層5と本来接続される側でない外部電極3との間において絶縁破壊が生じる可能性がある。
【0036】
しかし、実施形態の積層セラミックコンデンサ1によると、第1内部電極50Aの第2外部電極3Bと非接続である側の端辺W0、及び、第2内部電極50Bの第1外部電極3Aと非接続である側の端辺W0は、湾曲した曲線形状を有する。
【0037】
したがって、内部電極層5における、側辺と端辺との間は、角部が存在せずに滑らかであるか、角部が存在しても90度より鈍角になる。ゆえに、外部電極3に印加される電圧が大きくなった場合であっても、比較形態と比べて側辺と端辺W0との間において、外部電極3と内部電極層5との間で絶縁破壊が生じる可能性が低減される。
【0038】
また、端辺W0は、角部以外の部分においても湾曲して尖った部分がないので、外部電極3と内部電極層5との間において絶縁破壊が生じる可能性が低い。
【0039】
上述のように、誘電体層4は、Zr100モルに対して、Ti(チタン)を1.3モル以上4.4モル以下含むことが好ましく、Tiを1.5モル以上4.0モル以下含むことがより好ましい。
【0040】
図7は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1において、誘電体層4に含まれるCaとTiの、Zr100モルに対するモル数を変更した実施例1から実施例13の耐湿性と絶縁抵抗とを測定した結果を示す表である。実施例1から実施例13は、全て第1内部電極50Aの第2外部電極3Bと非接続である側の端辺W0、及び、第2内部電極50Bの第1外部電極3Aと非接続である側の端辺W0が、湾曲した曲線形状を有する第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1である。
【0041】
それぞれ誘電体層4に含まれるCaとTiの、Zr100モルに対するモル数が異なる実施例1から実施例13の積層セラミックコンデンサ1をそれぞれ72個準備し、それぞれに対して150℃の多湿な環境で、積層セラミックコンデンサ1に200Vの直流電圧を2000時間加えた。
【0042】
その後、それぞれの実施例において72個中キャパシタンス(Cap)が規定値から外れた個数をカウントした。72個中キャパシタンスが規定値から外れた個数が25個以下であれば、その実施例の積層セラミックコンデンサ1の耐湿性は許容範囲であり、72個中キャパシタンスが規定値から外れた個数が0個であれば耐湿性は良好である。
【0043】
また、絶縁抵抗(IR)も測定し、IR<10^8を示した積層セラミックコンデンサ1は、絶縁破壊が生じ易いので不可(×)と判定し、10^8≦IR<10^9を示した積層セラミックコンデンサ1は絶縁抵抗が許容(△)である判定し、10^9≦IR<10^10示した積層セラミックコンデンサ1は絶縁抵抗が良好(〇)であると判定し、10^10≦IR示した積層セラミックコンデンサ1は絶縁抵抗がきわめて良好(◎)であると判定した。
【0044】
表に示すように、全実施例である実施例1から実施例13において72個中キャパシタンスが規定値から外れた個数が25個以下であった。ゆえに、実施形態の積層セラミックコンデンサ1は誘電体層4のTiの量にかかわらず、耐湿性は許容範囲であることが確認された。
【0045】
さらに、誘電体層4がZr100モルに対して、Tiを1.3モル以上4.4モル以下含む実施例2から実施例12において、72個中キャパシタンスが規定値から外れた個数はゼロであるので、誘電体層4がZr100モルに対して、Tiを1.3モル以上4.4モル以下含む積層セラミックコンデンサ1は、耐湿性の観点からより好ましいことが確認された。
【0046】
また、表に示すように、絶縁抵抗において、全実施例である実施例1から実施例13において、IR<10^8となるものはなかった。ゆえに、積層セラミックコンデンサ1は誘電体層4にTiの含有量にかかわらず、絶縁抵抗は許容範囲であることが確認された。
【0047】
誘電体層4にTiを1.3モル以上4.4モル以下含む実施例2から実施例12は10^8≦IR<10^9であるので、積層セラミックコンデンサ1は誘電体層4にTiを1.3モル以上4.4モル以下含むことが好ましいことが確認された。
【0048】
さらに、積層セラミックコンデンサ1は誘電体層4にTiを1.5モル以上4.0モル以下含む実施例3から実施例10は10^10≦IRとなるので、積層セラミックコンデンサ1は誘電体層4にTiを1.5モル以上4.0モル以下含むことがより好ましいことが確認された。
【0049】
以上より、積層セラミックコンデンサ1は誘電体層4にTiを1.3モル以上4.4モル以下含むことが好ましく、Tiを1.5モル以上4.0モル以下含むことがより好ましいことが確認された。
【0050】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の積層セラミックコンデンサ201の、第1実施形態の図2に対応する断面図である。第2実施形態の積層セラミックコンデンサ201は、内層部6を積層方向Tに、上部内層部61と、中央内層部62と、下部外層部63とに3等分した場合、中央内層部62に含まれる内部電極層5の枚数と、その両側に位置する上部内層部61及び下部外層部63のそれぞれに含まれる内部電極層5の枚数とが異なる。実施形態では、中央内層部62に含まれる内部電極層5の枚数が、上部内層部61及び下部外層部63に含まれる内部電極層5より少ない。
【0051】
第2実施形態の積層セラミックコンデンサ201は、この、内部電極層5の配分が均等でないこと以外、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1と同様である。すなわち、第2実施形態の積層セラミックコンデンサ201においても、内部電極層5に含まれる内部電極50は、幅方向Wの両端の長さL2が、内部電極層5の幅方向Wの中央部における長さL1より短く、内部電極50の長さ方向Lにおける、外部電極3と非接続となる側の端辺W0が湾曲した曲線形状を有する。
【0052】
ゆえに、第1実施形態と同様に、内部電極50における、側辺と端辺W0との間には、角部が存在せずに滑らかであるか、角部が存在しても90度より鈍角になる。ゆえに、外部電極3に印加される電圧が大きくなった場合であっても、側辺と端辺W0との間において、外部電極3と内部電極50との間で絶縁破壊が生じる可能性が低減される。
【0053】
さらに、第2実施形態の積層セラミックコンデンサ201は、中央内層部62に含まれる内部電極層5の枚数と、その両側の上部内層部61及び下部外層部63と、に含まれる内部電極層5の枚数が異ならせることにより、ESR(透過直列抵抗)の抑制、静電容量の調整などを容易に行うことができる。
【0054】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態の積層セラミックコンデンサ301の、第1実施形態の図2に対応する断面図である。第3実施形態の積層セラミックコンデンサ301は、1つの内部電極層5内に、1枚の内部電極511を含む内部電極一連層51と、1つの内部電極層5内に、互いの間に所定の間隔が設けられた内部電極521及び内部電極522の2枚の内部電極を含む内部電極二連層52と、が交互に配置されている。
【0055】
図10は積層セラミックコンデンサ301を、内部電極層5を通る長さ方向L及び幅方向Wに延びる面で切断したLW断面図であり、図10(A)は内部電極一連層51を通る断面図、図5は内部電極二連層52を通る断面図である。
【0056】
第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1において一つの内部電極層5は、それぞれが内部電極50を1枚含んでいた。そして、互いに隣り合う内部電極層5に含まれる内部電極50は、長さ方向Lに互いに逆向きであった。しかし、第3実施形態の積層セラミックコンデンサ301は、内部電極一連層51と内部電極二連層52とが間に誘電体層4を挟んで交互に配置されている。
【0057】
内部電極一連層51は、内部電極511を1枚含む。内部電極511は、長さ方向Lの一方の端辺と他方の端辺との両方が湾曲した曲線形状を有し、両方の端辺はいずれも端面Cに露出せず、外部電極3と接続されていない浮遊電極である。
【0058】
内部電極二連層52は、内部電極521及び内部電極522の2枚の内部電極を含む。内部電極521は、長さ方向Lの一方が積層体2の第1端面CAに露出して第1外部電極3Aに接続され、長さ方向Lの他方の端辺W0は、湾曲した曲線形状を有する。内部電極522は、長さ方向Lの一方が積層体2の第2端面CBに露出して第2外部電極3Bに接続され、長さ方向Lの他方の端辺W0は、湾曲した曲線形状を有する。内部電極521の端辺W0と、内部電極522の端辺W0とは、互いに間に間隔を開けて互いに対向している。
【0059】
第3実施形態においても、内部電極における外部電極3と非接続である端辺W0が湾曲した曲線形状を。ゆえに、外部電極3に印加される電圧が大きくなった場合であっても、側辺と端辺W0との間において、外部電極3と内部電極50との間で絶縁破壊が生じる可能性が低減される。
また、内部電極521と内部電極522との間においても、対向する端辺W0が互いに湾曲した曲線形状を有する。ゆえに、内部電極50に蓄えられる電圧が大きくなった場合であっても、端辺W0間において、絶縁破壊が生じる可能性が低減される。
【0060】
さらに、第3実施形態のような構造の場合、複数のコンデンサを貯列接続した形になるので耐電圧性能が向上する。
【0061】
(第4実施形態)
図11は、本発明の第4実施形態の積層セラミックコンデンサ401の、第1実施形態の図2に対応する断面図である。第4実施形態の積層セラミックコンデンサ401は、1つの内部電極層5内に、互いの間に所定の間隔が開けられた内部電極521B及び内部電極522Bの2枚の内部電極を含む内部電極二連層52Bと、1つの内部電極層5内に、互いの間に所定の間隔が開けられた内部電極531、内部電極532及び内部電極533の3枚の内部電極を含む内部電極三連層53と、が交互に配置されている。
【0062】
図12は積層セラミックコンデンサ401を、内部電極層5を通る長さ方向L及び幅方向Wに延びる面で切断したLW断面図であり、図12(A)は内部電極二連層52Bを通る断面図、図5は内部電極三連層53を通る断面図である。
【0063】
第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1において一つの内部電極層5は、それぞれが内部電極50を1枚含んでいた。そして、互いに隣り合う内部電極層5に含まれる内部電極50は、長さ方向Lに互いに逆向きであった。しかし、第4実施形態の積層セラミックコンデンサ401は、内部電極二連層52Bと内部電極三連層53とが間に誘電体層4を挟んで交互に配置されている。
【0064】
内部電極二連層52Bは、内部電極521B及び内部電極522Bの2枚の内部電極を含む。内部電極521B及び内部電極522Bは、長さ方向Lの一方の端辺W0と、他方の端辺W0との両方が湾曲した曲線形状を有する。内部電極521Bの一方の端辺W0は、第1外部電極3Aから一定距離離間している。内部電極521Bの他方の端辺W0と、内部電極522Bの一方の端辺W0とは、互いに間に間隔を開けて互いに対向している。内部電極522Bの他方の端辺W0は、第2外部電極3Bから一定距離離間している。すなわち、内部電極521B及び内部電極522Bは、外部電極3と接続されていない浮遊電極である。
【0065】
内部電極三連層53は、内部電極531、内部電極532及び内部電極533の3枚の内部電極を含む。内部電極531は、長さ方向Lの一方が積層体2の第1端面CAに露出して第1外部電極3Aに接続され、長さ方向Lの他方の端辺W0は、湾曲した曲線形状を有する。内部電極533は、長さ方向Lの一方が積層体2の第2端面CBに露出して第2外部電極3Bに接続され、長さ方向Lの他方の端辺W0は、湾曲した曲線形状を有する。
【0066】
内部電極532は、内部電極531と内部電極533との間に配置され、長さ方向Lの一方の端辺と他方の端辺との両方が湾曲した曲線形状を有する。内部電極532の一方の端辺W0と内部電極531の端辺W0とは、互いに間に間隔を開けて互いに対向している。内部電極532の他方の端辺W0は内部電極533の端辺W0と、互いに間に間隔を開けて互いに対向している。すなわち、内部電極532は、外部電極3と接続されていない浮遊電極である。
【0067】
第4実施形態においても、内部電極における外部電極3と非接続である端辺W0が湾曲した曲線形状を。ゆえに、外部電極3に印加される電圧が大きくなった場合であっても、側辺と端辺W0との間において、外部電極3と内部電極50との間で絶縁破壊が生じる可能性が低減される。
また、内部電極521Bと内部電極522Bのとの間、内部電極531と内部電極532との間、内部電極532と内部電極533との間においても、対向する端辺W0が互いに湾曲した曲線形状を有する。ゆえに、内部電極5に蓄えられる電圧が大きくなった場合であっても、端辺W0間において、絶縁破壊が生じる可能性が低減される。
【0068】
さらに、第4実施形態のような構造の場合、複数のコンデンサを貯列接続した形になるので耐電圧性能が向上する。
【0069】
(第5実施形態)
図13は、本発明の第5実施形態の積層セラミックコンデンサ501の、第1実施形態の図2に対応する断面図である。第5実施形態の積層セラミックコンデンサ501は、第1実施形態と同様の形状を有する第1内部電極50Aと第2内部電極50Bと、を含む。第5実施形態の積層セラミックコンデンサ501が、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1と異なる点は、第1内部電極50Aと第2内部電極50Bとが、2層ずつ交互に配置されている点である。
【0070】
第5実施形態においても、第1内部電極50A及び第2内部電極50Bにおける、外部電極3と非接続である側の端辺W0が湾曲した曲線形状を有する。ゆえに、外部電極3に印加される電圧が大きくなった場合であっても、第1内部電極50Aと第1外部電極3Aとの間、及び第2内部電極50Bと第2外部電極3Bとの間で絶縁破壊が生じる可能性が低減される。
【符号の説明】
【0071】
1,201,301,401,501:積層セラミックコンデンサ
2:積層体
3:外部電極,3A:第1外部電極,3B:第2外部電極
4:誘電体層
6:内層部,61:上部内層部,62:中央内層部,63:下部外層部
7:外層部
5:内部電極層,5A:第1内部電極層,5B:第2内部電極層
50:内部電極,50A:第1内部電極,50B:第2内部電極
51:内部電極一連層,511:内部電極
52:内部電極二連層,521:内部電極,522:内部電極
52B:内部電極二連層,521B:内部電極,522B:内部電極
53:内部電極三連層,531:内部電極,532:内部電極,533:内部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13