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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191695
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】クロスローラ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20221221BHJP
   F16C 19/34 20060101ALI20221221BHJP
   F16C 33/34 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/34
F16C33/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100076
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片渕 恵太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀司
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA26
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA63
3J701BA01
3J701BA52
3J701FA15
3J701FA31
3J701GA32
3J701XB03
3J701XB17
3J701XB24
3J701XB26
(57)【要約】
【課題】大きな荷重が加わる片側の軌道面のモーメント負荷能力を高めることにより、長寿命化と高剛性化がなされたクロスローラ軸受を提供する。
【解決手段】クロスローラ軸受1は、外輪2と、内輪3と、複数のローラ4とを備える。外輪軌道面5は、第1外輪軌道面5Aと、第2外輪軌道面5Bとを含む。内輪軌道面6は、第1内輪軌道面6Aと、第2内輪軌道面6Bとを含む。軸方向AXに沿った断面において、第1外輪軌道面5Aの長さである第1外輪軌道面長さC1および第2外輪軌道面5Bの長さである第2外輪軌道面長さC2は互いに異なっているか、あるいは第1内輪軌道面6Aの長さである第1内輪軌道面長さB1および第2内輪軌道面6Bの長さである第2内輪軌道面長さB2は互いに異なっているかの、少なくともいずれかである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
V溝状の外輪軌道面が内径側に形成された外輪と、
前記外輪軌道面と対向するV溝状の内輪軌道面が外径側に形成された内輪と、
前記外輪軌道面と、前記内輪軌道面との間に、周方向の全周に亘って配置された複数のローラとを備え、
前記外輪軌道面は、軸方向についての中央に対する一方側に形成される第1外輪軌道面と、前記一方側と反対側の他方側に形成される第2外輪軌道面とを含み、
前記内輪軌道面は、前記軸方向についての中央に対する前記一方側に形成される第1内輪軌道面と、前記他方側に形成される第2内輪軌道面とを含み、
前記軸方向に沿った断面において、前記第1外輪軌道面の長さである第1外輪軌道面長さおよび前記第2外輪軌道面の長さである第2外輪軌道面長さは互いに異なっているか、あるいは前記第1内輪軌道面の長さである第1内輪軌道面長さおよび前記第2内輪軌道面の長さである第2内輪軌道面長さは互いに異なっているかの、少なくともいずれかである、クロスローラ軸受。
【請求項2】
前記第1外輪軌道面長さおよび前記第2外輪軌道面長さは互いに異なっており、かつ前記第1内輪軌道面長さおよび前記第2内輪軌道面長さは互いに異なっている、請求項1に記載のクロスローラ軸受。
【請求項3】
前記第1外輪軌道面長さよりも前記第2外輪軌道面長さの方が長く、前記第2内輪軌道面長さよりも前記第1内輪軌道面長さの方が長い、請求項2に記載のクロスローラ軸受。
【請求項4】
前記第1外輪軌道面と前記第2外輪軌道面との間に形成される外輪逃げ溝と、前記第1外輪軌道面との第1外輪交点部は、前記外輪逃げ溝と前記第2外輪軌道面との第2外輪交点部よりも前記内径側に位置し、
前記第1内輪軌道面と前記第2内輪軌道面との間に形成される内輪逃げ溝と、前記第1内輪軌道面との第1内輪交点部は、前記内輪逃げ溝と前記第2内輪軌道面との第2内輪交点部よりも前記内径側に位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載のクロスローラ軸受。
【請求項5】
前記外輪の最も前記内径側の端面である外輪端面と、前記第1外輪軌道面との第3外輪交点部は、前記内輪の最も前記外径側の端面である内輪端面と、前記第1内輪軌道面との第3内輪交点部よりも、前記軸方向についての前記中央に近い側に位置し、
前記内輪端面と前記第2内輪軌道面との第4内輪交点部は、前記外輪端面と前記第2外輪軌道面との第4外輪交点部よりも、前記軸方向についての前記中央に近い側に位置する、請求項1~4のいずれか1項に記載のクロスローラ軸受。
【請求項6】
前記第1外輪軌道面、前記第2外輪軌道面、前記第1内輪軌道面および前記第2内輪軌道面に連続するようにクラウニングが形成され、
前記断面において、前記第1外輪軌道面および前記第1内輪軌道面のいずれかに連続する前記クラウニングである一方側クラウニングと、前記第2外輪軌道面および前記第2内輪軌道面のいずれかに連続する前記クラウニングである他方側クラウニングとの外観態様が異なる、請求項1~3のいずれかに記載のクロスローラ軸受。
【請求項7】
前記第1外輪軌道面と前記第2外輪軌道面との間に形成される外輪逃げ溝と前記第1外輪軌道面との第1外輪交点部、前記外輪逃げ溝と前記第2外輪軌道面との第2外輪交点部、前記第1内輪軌道面と前記第2内輪軌道面との間に形成される内輪逃げ溝と前記第1内輪軌道面との第1内輪交点部、および前記内輪逃げ溝と前記第2内輪軌道面との第2内輪交点部にはクラウニングが形成され、
前記外輪の最も前記内径側の端面である外輪端面と前記第1外輪軌道面との第3外輪交点部、前記外輪端面と前記第2外輪軌道面との第4外輪交点部、前記内輪の最も前記外径側の端面である内輪端面と前記第1内輪軌道面との第3内輪交点部、および前記内輪端面と前記第2内輪軌道面との第4内輪交点部には前記クラウニングが形成され、
前記断面において、前記第1外輪交点部の前記クラウニングである第1外輪クラウニングと前記第2外輪交点部の前記クラウニングである第2外輪クラウニングとの外観態様が異なり、
前記断面において、前記第3外輪交点部の前記クラウニングである第3外輪クラウニングと前記第4外輪交点部の前記クラウニングである第4外輪クラウニングとの外観態様が異なり、
前記断面において、前記第1内輪交点部の前記クラウニングである第1内輪クラウニングと前記第2内輪交点部の前記クラウニングである第2内輪クラウニングとの外観態様が異なり、
前記断面において、前記第3内輪交点部の前記クラウニングである第3内輪クラウニングと前記第4内輪交点部の前記クラウニングである第4内輪クラウニングとの外観態様が異なる、請求項1~3のいずれかに記載のクロスローラ軸受。
【請求項8】
前記複数のローラの本数は奇数である、請求項1~7のいずれか1項に記載のクロスローラ軸受。
【請求項9】
前記複数のローラは、柱状に延在する転動面を含み、
前記複数のローラは、前記断面において前記転動面の延在する方向が前記軸方向に対して第1方向に傾斜するように配置される複数の第1ローラと、前記断面において前記転動面の延在する方向が前記軸方向に対して前記複数の第1ローラと交差する第2方向に傾斜するように配置される複数の第2ローラとを有し、
前記複数の第1ローラと前記複数の第2ローラとの本数が異なる、請求項1~8のいずれか1項に記載のクロスローラ軸受。
【請求項10】
前記複数の第1ローラは前記複数の第2ローラよりも大きなモーメント荷重を受け、
前記複数の第1ローラは前記複数の第2ローラよりも本数が多い、請求項9に記載のクロスローラ軸受。
【請求項11】
前記複数のローラは総ころ形として配置される、請求項1~10のいずれか1項に記載のクロスローラ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クロスローラ軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロスローラ軸受は、外輪と内輪との間に複数のローラが組み込まれている。複数のローラは、外輪が回転する周方向について、たとえば交互に傾斜方向が変わるように組みこまれている。ここでの傾斜方向は、外輪が回転する軸が延びる軸方向に沿った断面における傾斜方向である。複数のローラは柱状に延在する転動面を含んでいる。当該転動面が延在する方向が、軸方向およびそれに垂直な方向に対して傾斜した方向である。このためここでは転動面が延在する方向を、軸方向に沿った断面における傾斜方向と記している。このような構成を有するクロスローラ軸受は、大きなラジアル荷重、スラスト荷重、モーメント荷重を支えることができる。クロスローラ軸受は、ロボットの減速機などに用いられている。クロスローラ軸受は、たとえば特開平08-093757号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-093757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットに用いられる減速機は、出力側で荷重を受ける場合がほとんどであり、入力側で荷重を受ける場合は少ない。つまりロボットに用いられる減速機は、軸方向(左右方向)についての一方側(左側または右側)のモーメント荷重を他方側に比べて大きく受けることが多い。このため、減速機に用いられるクロスローラ軸受は、外輪が一方側から荷重を受ける場合、軸方向に沿った断面にてたとえばV字のような形状を有する溝状の外輪軌道面および内輪軌道面のうち、軸方向の一方側の外輪軌道面、およびこれに対向する(一方側とは反対側の)他方側の内輪軌道面が大きな荷重を受ける。また複数のローラのうち、上記一方側の外輪軌道面および他方側の内輪軌道面に転動面が接触するように挟まれたローラが大きな荷重を受ける。これに対して上記と反対側、すなわち他方側の外輪軌道面、一方側の内輪軌道面、およびそれらに転動面が接触するように挟まれたローラが受ける荷重は少ない。
【0005】
たとえば特開平08-093757号公報においては、軸方向の一方側に形成される外輪軌道面と、他方側に形成される外輪軌道面とは、その外観態様が、外輪軌道面の軸方向についての中央に対して互いに対称であると考えられる。内輪軌道面についても同様である。すなわち外輪軌道面および内輪軌道面は、軸方向の一方側と他方側とで、大きなモーメント荷重を負荷する能力であるモーメント負荷能力は同等である。この場合、たとえば軸方向についての一方側の外輪軌道面およびこれに対向する他方側の内輪軌道面が大きなモーメント荷重を受ければ、これらの軌道面が早期剥離する。またこれらの軌道面に接触するローラの転動面が早期剥離する。
【0006】
本開示は以上の課題に鑑みなされたものである。その目的は、大きな荷重が加わる片側の軌道面のモーメント負荷能力を高めることにより、長寿命化と高剛性化とがなされたクロスローラ軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従ったクロスローラ軸受は、外輪と、内輪と、複数のローラとを備える。外輪は、V溝状の外輪軌道面が内径側に形成されている。内輪は、外輪軌道面と対向するV溝状の内輪軌道面が外径側に形成されている。複数のローラは、外輪軌道面と、内輪軌道面との間に、周方向の全周に亘って配置されている。外輪軌道面は、軸方向についての中央に対する一方側に形成される第1外輪軌道面と、一方側と反対側の他方側に形成される第2外輪軌道面とを含む。内輪軌道面は、軸方向についての中央に対する一方側に形成される第1内輪軌道面と、他方側に形成される第2内輪軌道面とを含む。軸方向に沿った断面において、第1外輪軌道面の長さである第1外輪軌道面長さおよび第2外輪軌道面の長さである第2外輪軌道面長さは互いに異なっているか、あるいは第1内輪軌道面の長さである第1内輪軌道面長さおよび第2内輪軌道面の長さである第2内輪軌道面長さは互いに異なっているかの、少なくともいずれかである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、大きな荷重が加わる片側の軌道面のモーメント負荷能力を高めることにより、長寿命化と高剛性化とがなされたクロスローラ軸受を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るクロスローラ軸受の一部を切り欠きローラの配置態様を示した概略正面図である。
図2図1中のII-II線に沿う部分の概略断面図である。
図3図1中のIII-III線に沿う部分の概略断面図である。
図4】比較例における図2に示す領域の概略断面図である。
図5】実施の形態2における図2に示す領域の概略断面図である。
図6図5におけるクラウニングを有する第1外輪交点部CC1および第2外輪交点部CC2の構成を示す概略拡大断面図である。
図7図5におけるクラウニングを有する第3外輪交点部CC3および第4外輪交点部CC4の構成を示す概略拡大断面図である。
図8図5におけるクラウニングを有する第1内輪交点部CB1および第2内輪交点部CB2の構成を示す概略拡大断面図である。
図9図5におけるクラウニングを有する第3内輪交点部CB3および第4内輪交点部CB4の構成を示す概略拡大断面図である。
図10図5の第1外輪交点部CC1および第2外輪交点部CC2として面取り部が形成された構成を示す概略拡大断面図である。
図11図5の第1外輪交点部CC1および第2外輪交点部CC2が1点として形成された構成を示す概略拡大断面図である。
図12】実施の形態3に係るクロスローラ軸受の一部を切り欠きローラの配置態様を示した概略正面図である。
図13】実施の形態3のクロスローラ軸受の周方向に並ぶ複数のローラを横方向に並べた概略図である。
図14】実施の形態3の比較用に、実施の形態1のクロスローラ軸受の周方向に並ぶ複数のローラを横方向に並べた概略図である。
図15】実施の形態4に係るクロスローラ軸受の一部を切り欠きローラの配置態様を示した概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態について図に基づいて説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るクロスローラ軸受の一部を切り欠いた概略正面図である。なお図1においては、その一部すなわちハッチングを施した部分については、その内部を正面から見た態様を示している。図2は、図1中のII-II線に沿う部分の概略断面図である。図3は、図1中のIII-III線に沿う部分の概略断面図である。なお以下の説明における軸方向AXは、クロスローラ軸受の外輪が回転する軸が延びる方向であり、図1の紙面奥行方向、図2および図3の左右方向である。以下の説明における径方向RAは、軸方向AXに対し直交する方向であり、図1の軸8から外輪の径に沿う(外輪の接線に直交する)ように放射状に延びる方向であり、図2の上下方向である。以下の説明における周方向CFは、外輪および内輪が回転する方向に沿い、軸8を中心とする円弧に沿う方向である。
【0012】
図1図3を参照して、本実施の形態のクロスローラ軸受1は、外輪2と、内輪3と、複数のローラ4とを主に備えている。外輪2、内輪3および複数のローラ4は、いずれも鋼製である。外輪2および内輪3は、いずれも図1の正面図において円環形状を有している。外輪2と内輪3とはいずれも軸8を中心としており、両者は同心円状に配置されている。外輪2は内輪3よりも径が大きい。このため外輪2は軸8に対し内輪3の外側(外径側)に配置される。以下では径方向RAについて軸8から離れる方向を外径側、軸8に近づく方向を内径側とする。
【0013】
外輪2は、内径側に外輪軌道面5が形成されている。すなわち外輪2の径方向RAについての内輪3に対向する面として、外輪軌道面5が形成されている。外輪軌道面5は、図2の断面図、すなわち軸方向AXに沿った断面において、V字のような形状すなわちV溝状を有している。V溝状の外輪軌道面5は、第1外輪軌道面5Aと、第2外輪軌道面5Bとを含む。第1外輪軌道面5Aは、クロスローラ軸受1の軸方向AXについての中央CTR(図2図3参照)に対する一方側(図2図3のように外輪2を内輪3より上側に見たときの左側であり、以下単に左側という)に形成されている。第2外輪軌道面5Bは、クロスローラ軸受1の軸方向AXについての中央CTRに対する他方側(図2図3のように外輪2を内輪3より上側に見たときの右側であり、以下単に右側という)に形成されている。外輪軌道面5は、第1外輪軌道面5A、第2外輪軌道面5Bともに、クロスローラ軸受1の周方向CFについての1周の全体にわたって(周方向CFの全周に亘って)配置された円環状となるように形成されている。
【0014】
内輪3は、外径側に内輪軌道面6が形成されている。すなわち内輪3の径方向RAについての外輪2の特に外輪軌道面5に対向する面として、内輪軌道面6が形成されている。内輪軌道面6は、外輪軌道面5と同様に、V溝状を有している。V溝状の内輪軌道面6は、第1内輪軌道面6Aと、第2内輪軌道面6Bとを含む。第1内輪軌道面6Aは、クロスローラ軸受1の中央CTRに対する一方側(図2図3での左側)に形成されている。第2内輪軌道面6Bは、クロスローラ軸受1の軸方向AXについての中央CTRに対する他方側(図2図3での右側)に形成されている。内輪軌道面6は、第1内輪軌道面6A、第2内輪軌道面6Bともに、クロスローラ軸受1の周方向CFについての1周の全体にわたって(周方向CFの全周に亘って)配置された円環状となるように形成されている。
【0015】
第1外輪軌道面5A、第2外輪軌道面5B、第1内輪軌道面6Aおよび第2内輪軌道面6Bはいずれも、軸方向AXに対して45°傾斜している。外輪軌道面5(5A,5B)は、外輪2の最も内径側の端面である外輪端面21に達するように延びている。内輪軌道面6(6A,6B)は、内輪3の最も外径側の端面である内輪端面31に達するように延びている。少なくとも本実施の形態では、外輪軌道面5と外輪端面21との境界、および内輪軌道面6と内輪端面31との境界については考慮しない。
【0016】
図2図3の断面図において、第1外輪軌道面5Aの長さである第1外輪軌道面長さC1と、第2外輪軌道面5Bの長さである第2外輪軌道面長さC2とを考える。また第1内輪軌道面6Aの長さである第1内輪軌道面長さB1と、第2内輪軌道面6Bの長さである第2内輪軌道面長さB2とを考える。本実施の形態においては、第1外輪軌道面長さC1および第2外輪軌道面長さC2は互いに異なっているか、あるいは第1内輪軌道面長さB1および第2内輪軌道面長さB2は互いに異なっているかの、少なくともいずれかである。上記は、C1とC2とは等しいがB1とB2とが異なる場合と、C1とC2とは異なるがB1とB2とが等しい場合と、C1とC2とが異なりかつB1とB2とが異なる場合とを含んでいる。なお図2図3においては、C1とC2とが異なりかつB1とB2とが異なっている。また図2図3においては、C1よりもC2の方が長く、B2よりもB1の方が長い。つまり図2図3においては、1対の外輪軌道面のうち長い方である第2外輪軌道面5Bと、1対の内輪軌道面のうち長い方である第1内輪軌道面6Aとが互いに対向する(長い方の軌道面同士が互いに対向する)。1対の外輪軌道面のうち短い方である第1外輪軌道面5Aと、1対の内輪軌道面のうち短い方である第2内輪軌道面6Bとが互いに対向する(短い方の軌道面同士が互いに対向する)。図2図3では、中央CTRに対して、外輪軌道面5と内輪軌道面6とが互いに非対称である。
【0017】
図2図3の断面図において、長さの大小関係が左右逆転していてもよい。すなわちC2よりもC1の方が長くてもよい。B1よりもB2の方が長くてもよい。
【0018】
第1外輪軌道面5Aと第2外輪軌道面5Bとの間には、外輪逃げ溝7Aが形成されている。第1内輪軌道面6Aと第2内輪軌道面6Bとの間には、内輪逃げ溝7Bが形成されている。少なくとも本実施の形態では外輪逃げ溝7Aと、第1外輪軌道面5Aおよび第2外輪軌道面5Bとの境界については考慮せず、これらは互いに連続するように繋がっているとする。内輪逃げ溝7Bと、第1内輪軌道面6Aおよび第2内輪軌道面6Bとの境界についても同様である。外輪逃げ溝7Aと内輪逃げ溝7Bとを併せて逃げ溝7とする。逃げ溝7は、外輪軌道面5、内輪軌道面6の底部すなわち外輪軌道面5の径方向RAの最も外径側および内輪軌道面6の径方向RAの最も内径側に、径方向RAに沿って延びている。逃げ溝7は、周方向CFの全周に亘って連続するように形成されている。
【0019】
図2図3においては、たとえばC1とC2とを異なるものとするために、第1外輪軌道面5Aと第2外輪軌道面5Bとの間の外輪逃げ溝7Aの位置を中央CTRに対して第1外輪軌道面5A側にずらしている。中央CTRに対する外輪逃げ溝7Aの軸方向AX中心の位置のずれは、外輪2の軸方向AXの寸法の2%以上10%以下であることが好ましく、3%以上7%以下であることがより好ましい。同様に、第1内輪軌道面6Aと第2内輪軌道面6Bとの間の内輪逃げ溝7Bの位置を中央CTRに対して第2内輪軌道面6B側にずらしている。中央CTRに対する内輪逃げ溝7Bの軸方向AX中心の位置のずれは、内輪3の軸方向AXの寸法の2%以上10%以下であることが好ましく、3%以上7%以下であることがより好ましい。また図2図3では外輪端面21とこれに対向する内輪端面31との軸方向AXの寸法を異なるものとしている。この寸法差は、外輪端面21とこれに対向する内輪端面とのうち長い方の寸法の20%以上80%以下とすることが好ましく、30%以上50%以下であることがより好ましい。上記方法によりC1とC2との寸法、およびB1とB2との寸法が調整されてもよい。
【0020】
複数のローラ4は、外輪軌道面5と内輪軌道面6との間に、周方向CFの全周に亘って配置されている。複数のローラ4は、図1のように外輪2が内輪3の外径側にアセンブリされた状態で、外輪2または内輪3に形成された図示されないローラ貫通孔を通じて、外輪軌道面5と内輪軌道面6との間に設けられている。ローラ4は、たとえば円柱形を有しており、互いに間隔をあけて配置される1対の円形である円形端面41と、上記1対の円形端面41の一方から他方まで柱状に延在する側面としての転動面42とを含んでいる。複数のローラ4は、複数の第1ローラ4Aと、複数の第2ローラ4Bとを有している。
【0021】
図2の断面図において、第1ローラ4Aは、一点鎖線で示す中心L1の延びる方向に転動面42が延びる。中心L1は第1方向に延びている。図3の断面図において、第2ローラ4Bは、一点鎖線で示す中心L2の延びる方向に転動面42が延びる。第1方向および第2方向は、いずれも軸方向AXに対して45°傾斜している。ただし第1方向と第2方向とは互いにほぼ直交するように交差している。第1ローラ4Aの転動面42は第2外輪軌道面5Bおよび第1内輪軌道面6Aに接触し、第2ローラ4Bの転動面42は第1外輪軌道面5Aおよび第2内輪軌道面6Bに接触する。ただし1対の円形端面41は、外輪軌道面5および内輪軌道面6の双方に同時に接触することがないように、ローラ4の中心L1,L2の延びる方向についての寸法が決められる。これによりローラ4はスムーズに転動し得る。図1に示すように、本実施の形態の複数のローラ4は、第1ローラ4Aと第2ローラ4Bとが、周方向CFについて1本ずつ交互に配置されてもよい。図1においては第1ローラ4Aと第2ローラ4Bとが12本ずつ、合計24本のローラ4が配置されている。
【0022】
複数のローラ4は、総ころ形として配置されている。つまり周方向CFについて隣り合う1対のローラ4の間には、周方向CFの間隔を保持するための保持器または間座が設けられていない。これにより、保持器または間座を設けた場合と比較してより多くのローラ4を外輪軌道面5と内輪軌道面6と間に配置できる。このため総ころ形のクロスローラ軸受1は、その負荷容量を高くすることができる。さらに総ころ形のクロスローラ軸受1は、剛性を向上できるとともに、その一層の長寿命化を図れる。ただしクロスローラ軸受1には周方向CFに隣り合う1対のローラ4の間に保持器または間座が設けられてもよい。
【0023】
以上に述べる本実施の形態のクロスローラ軸受1は、次に述べる特徴を有してもよい。第1外輪軌道面長さC1は第2軌道面長さC2よりも2%以上20%未満だけ長く、第2内輪軌道面長さB2は第1内輪軌道面長さB1よりも2%以上20%未満だけ長く形成されてもよい。その中でも、C1はC2よりも2%以上10%未満だけ長く、B2はB1よりも2%以上10%未満だけ長く形成されてもよい。その中でも特に、C1はC2より、B2はB1より2%以上5%未満だけ長く形成されてもよい。ただしC1,C2の大小関係は逆転してもよい。
【0024】
第1ローラ4Aの転動面42の延在する第1方向と、第2ローラ4Bの転動面42の延在する第2方向とは直交するように(中心L1と中心L2とのなす角度がほぼ90°となるように)交差することが好ましい。ただしこの条件を満たす限り、たとえば図2図3の断面にて第1外輪軌道面5Aと第2外輪軌道面5Bとが軸方向AXに対してなす角度は45°でなくてもよい。たとえば図2図3の断面にて、第1外輪軌道面5Aおよび第2内輪軌道面6Bは軸方向AXに対して50°の方向に延び、第2外輪軌道面5Bおよび第1内輪軌道面6Aは軸方向AXに対して40°の方向に延びてもよい。このように軌道面長さの短い第1外輪軌道面5Aおよび第2内輪軌道面6Bの軸方向AXに対する角度は、軌道面長さの長い第2外輪軌道面5Bおよび第1内輪軌道面6Aの軸方向AXに対する角度以上であることが好ましい。
【0025】
次に、図4の比較例を参照しながら、本実施の形態の作用効果を説明する。
【0026】
図4は、比較例における図2に示す領域の概略断面図である。図4を参照して、以降ではクロスローラ軸受の概略断面図は、図2のような(転動面42が大きな荷重を受ける)第1ローラ4Aの領域のみ図示される。しかし第2ローラ4Bが接触する領域の軌道面についてもこれと同様である。比較例において、実施の形態1(図2)と同一の構成要素には同一の符号を付し、特徴および機能等が同一である限りその説明を繰り返さない。図4の比較例では、第1外輪軌道面長さC1と、第2外輪軌道面長さC2とが等しく、かつ第1内輪軌道面長さB1と、第2内輪軌道面長さB2とが等しい。図4に示すように、通常は各長さC2,B1の全体にわたって第1ローラ4Aの転動面42が接触し、各長さC1,B2の全体にわたって第2ローラ4Bの転動面42が接触する。クロスローラ軸受がロボットの減速機に用いられ、たとえば外輪2に対して軸方向AXの片側のモーメント荷重がより大きく加わり、第2外輪軌道面5Bおよび第1内輪軌道面6Aが第1外輪軌道面5Aおよび第2内輪軌道面6Bより大きな荷重を受ける場合を考える。この場合、第2外輪軌道面5B、第1内輪軌道面6A、第1ローラ4Aの転動面42が、第1外輪軌道面5A、第2内輪軌道面6B、第2ローラ4Bの転動面42より早期剥離することがある。
【0027】
そこで本実施の形態のクロスローラ軸受1は、外輪2と、内輪3と、複数のローラ4とを備える。外輪2はV溝状の外輪軌道面5が内径側に形成される。内輪3は外輪軌道面5と対向するV溝状の内輪軌道面6が外径側に形成される。複数のローラ4は、外輪軌道面5と内輪軌道面6との間に、周方向CFの全周に亘って配置される。外輪軌道面5は、軸方向AXについての中央CTRに対する一方側(たとえば左側)に形成される第1外輪軌道面5Aと、一方側と反対側の他方側(たとえば右側)に形成される第2外輪軌道面5Bとを含む。内輪軌道面6は、軸方向AXについての中央CTRに対する一方側に形成される第1内輪軌道面6Aと、他方側に形成される第2内輪軌道面6Bとを含む。軸方向AXに沿った断面において、第1外輪軌道面5Aの長さである第1外輪軌道面長さC1および第2外輪軌道面5Bの長さである第2外輪軌道面長さC2は互いに異なっているか、あるいは第1内輪軌道面6Aの長さである第1内輪軌道面長さB1および第2内輪軌道面6Bの長さである第2内輪軌道面長さB2は互いに異なっているかの、少なくともいずれかである。
【0028】
このようにすれば、たとえばC2がC1より長くなる。これにより、第2外輪軌道面5Bが第1外輪軌道面5Aより大きな荷重を受ける場合に、第2外輪軌道面5Bおよびこれに接触する第1ローラ4Aの転動面42の早期剥離を抑制できる。第2外輪軌道面5Bは第1外輪軌道面5Aよりも寸法が長いために面積が大きくなり、モーメント荷重により軌道面が受ける単位面積当たりの圧力が小さくなるためである。内輪3についても同様で、たとえばB1がB2より長くなれば、第1内輪軌道面6Aおよびこれに接触する第1ローラ4Aの転動面42の早期剥離を抑制できる。寸法の長い軌道面が大きな荷重を受けることにより、クロスローラ軸受1のモーメント負荷能力が高くなる。このためクロスローラ軸受1の損傷を防ぎ、かつ軸受全体の剛性を高められる。この結果、長寿命化と高剛性化がなされたクロスローラ軸受1を提供できる。
【0029】
上記クロスローラ軸受1において、第1外輪軌道面長さC1および第2外輪軌道面長さC2は互いに異なっており、かつ第1内輪軌道面長さB1および第2内輪軌道面長さB2は互いに異なっていてもよい。たとえばC2がC1より長く、かつB1がB2より長くてもよい。たとえば第2外輪軌道面5Bが第1外輪軌道面5Aより大きな荷重を受け、第1内輪軌道面6Aが第2内輪軌道面6Bより大きな荷重を受ける場合、第2外輪軌道面5Bおよびこれに接触する第1ローラ4Aの転動面42の早期剥離を抑制できる。また第1外輪軌道面5Aおよびこれに接触する第2ローラ4Bの転動面42の早期剥離を抑制できる。
【0030】
上記クロスローラ軸受1において、第1外輪軌道面長さC1よりも第2外輪軌道面長さC2の方が長く、第2内輪軌道面長さB2よりも第1内輪軌道面長さB1の方が長くてもよい。外輪軌道面5、内輪軌道面6はV溝状であるため、一方側の第1外輪軌道面5Aと他方側の第2内輪軌道面6Bとが対向し、他方側の第2外輪軌道面5Bと一方側の第1内輪軌道面6Aとが対向する。このため互いに斜め方向に対向する1対の軌道面を2組有するうちの一方が長い方の軌道面同士となり、他方が短い方の軌道面同士となる。この結果、長い方の軌道面同士が対向する組に、大きなモーメント荷重が加わるローラ4の転動面42が接触するようにローラ4を配置することにより、上記のように軌道面および転動面の早期剥離を抑制できる。
【0031】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2における図2に示す領域の概略断面図である。図5を参照して、本実施の形態のクロスローラ軸受1は、基本的に実施の形態1のクロスローラ軸受1と同様の構成である。したがって図5は、図2と同様の外観態様である。このため以下において実施の形態1(図2)と同一の構成要素には同一の符号を付し、特徴および機能等が同一である限りその説明を繰り返さない。ただし本実施の形態においては、実施の形態1にて考慮しなかった、逃げ溝7と外輪軌道面5、内輪軌道面6との境界について検討している。
【0032】
具体的には、外輪逃げ溝7Aと第1外輪軌道面5Aとの間の第1外輪交点部CC1は、外輪逃げ溝7Aと第2外輪軌道面5Bとの第2外輪交点部CC2よりも内径側に位置する。内輪逃げ溝7Bと第1内輪軌道面6Aとの間の第1内輪交点部CB1は、内輪逃げ溝7Bと第2内輪軌道面6Bとの第2内輪交点部CB2よりも内径側に位置する。
【0033】
外輪端面21と第1外輪軌道面5Aとの第3外輪交点部CC3は、内輪端面31と第1内輪軌道面6Aとの第3内輪交点部CB3よりも、軸方向AXについての中央CTRに近い側に位置する。つまり中央CTRから第3外輪交点部CC3までの軸方向AXについての距離は、中央CTRから第3内輪交点部CB3までの軸方向AXについての距離よりも短い。内輪端面31と第2内輪軌道面6Bとの第4内輪交点部CB4は、外輪端面21と第2外輪軌道面5Bとの第4外輪交点部CC4よりも、軸方向AXについての中央CTRに近い側に位置する。
【0034】
図5においては、たとえば第1外輪交点部CC1は、外輪逃げ溝7Aと第1外輪軌道面5Aとの境界の1点として図示されている。他の各外輪交点部および各内輪交点部についても同様である。各外輪交点部および各内輪交点部は、2つの領域の境界の1点として形成されてもよい。しかしたとえば、次に述べるように、上記の各外輪交点部および各内輪交点部には、クラウニングが形成されてもよい。これについて図6図9を用いて説明する。なお図6図9においてはすべて、図5の一部を拡大した態様が示されている。
【0035】
図6は、図5におけるクラウニングを有する第1外輪交点部CC1および第2外輪交点部CC2の構成を示す概略拡大断面図である。図6を参照して、第1外輪軌道面5Aの外径側に連続するように第1外輪クラウニングOR1が形成されている。第1外輪クラウニングOR1の第1外輪軌道面5Aと反対側は外輪逃げ溝7Aに連続している。第1外輪交点部CC1は第1外輪クラウニングOR1により形成されている。言い換えれば第1外輪交点部CC1として第1外輪クラウニングOR1が形成されている。
【0036】
第2外輪軌道面5Bの外径側に連続するように第2外輪クラウニングOR2が形成されている。第2外輪クラウニングOR2の第2外輪軌道面5Bと反対側は外輪逃げ溝7Aに連続している。第2外輪交点部CC2は第2外輪クラウニングOR2により形成されている。言い換えれば第2外輪交点部CC2として第2外輪クラウニングOR2が形成されている。
【0037】
図7は、図5におけるクラウニングを有する第3外輪交点部CC3および第4外輪交点部CC4の構成を示す概略拡大断面図である。図7を参照して、第1外輪軌道面5Aの内径側に連続するように第3外輪クラウニングOR3が形成されている。第3外輪クラウニングOR3の第1外輪軌道面5Aと反対側は外輪端面21に連続している。第3外輪交点部CC3は第3外輪クラウニングOR3により形成されている。言い換えれば第3外輪交点部CC3として第3外輪クラウニングOR3が形成されている。
【0038】
第2外輪軌道面5Bの内径側に連続するように第4外輪クラウニングOR4が形成されている。第4外輪クラウニングOR4の第2外輪軌道面5Bと反対側は外輪端面21に連続している。第4外輪交点部CC4は第4外輪クラウニングOR4により形成されている。言い換えれば第4外輪交点部CC4として第4外輪クラウニングOR4が形成されている。
【0039】
図8は、図5におけるクラウニングを有する第1内輪交点部CB1および第2内輪交点部CB2の構成を示す概略拡大断面図である。図8を参照して、第1内輪軌道面6Aの内径側に連続するように第1内輪クラウニングIR1が形成されている。第1内輪クラウニングIR1の第1内輪軌道面6Aと反対側は内輪逃げ溝7Bに連続している。第1内輪交点部CB1は第1内輪クラウニングIR1により形成されている。言い換えれば第1内輪交点部CB1として第1内輪クラウニングIR1が形成されている。
【0040】
第2内輪軌道面6Bの内径側に連続するように第2内輪クラウニングIR2が形成されている。第2内輪クラウニングIR2の第2内輪軌道面6Bと反対側は内輪逃げ溝7Bに連続している。第2内輪交点部CB2は第2内輪クラウニングIR2により形成されている。言い換えれば第2内輪交点部CB2として第2内輪クラウニングIR2が形成されている。
【0041】
図9は、図5におけるクラウニングを有する第3内輪交点部および第4内輪交点部の構成を示す概略拡大断面図である。図9を参照して、第1内輪軌道面6Aの外径側に連続するように第3内輪クラウニングIR3が形成されている。第3内輪クラウニングIR3の第1内輪軌道面6Aと反対側は内輪端面31に連続している。第3内輪交点部CB3は第3内輪クラウニングIR3により形成されている。言い換えれば第3内輪交点部CB3として第3内輪クラウニングIR3が形成されている。
【0042】
第2内輪軌道面6Bの内径側に連続するように第4内輪クラウニングIR4が形成されている。第4内輪クラウニングIR4の第2内輪軌道面6Bと反対側は内輪端面31に連続している。第4内輪交点部CB4は第4内輪クラウニングIR4により形成されている。言い換えれば第4内輪交点部CB4として第4内輪クラウニングIR4が形成されている。
【0043】
以上の各図において、一方側(左側)のクラウニングと、他方側(右側)のクラウニングとは、外観態様が異なっている。ここで外観態様が異なるとは、当該各クラウニングの形状の差異であってもよいし、軸方向についての寸法(長さ)の差異であってもよい。たとえば図6の第1外輪クラウニングOR1の軸方向の寸法ax1と第2外輪クラウニングOR2の軸方向の寸法ax2とが互いに異なってもよい。あるいはクラウニングのいわゆる落ち量が互いに異なるものであってもよい。落ち量とは、たとえば第1外輪クラウニングOR1の場合、外輪逃げ溝7Aとの境界から、第1外輪軌道面5Aとの境界における接線に下ろした垂線の長さ(距離)dr1で定義できる。第1外輪クラウニングOR1の落ち量dr1と、第2外輪クラウニングOR2の落ち量dr2とが異なってもよい。あるいは図7の第3外輪クラウニングOR3の寸法ax3と第4外輪クラウニングOR4の寸法ax4とが異なってもよいし、第3外輪クラウニングOR3の落ち量dr3と第4外輪クラウニングOR4の落ち量dr4とが異なってもよい。さらに図8図9の内輪クラウニングについても同様である。
【0044】
図5の各外輪交点部および各内輪交点部には、以上のようなクラウニングが形成されてもよい。あるいは、図5の各外輪交点部および各内輪交点部には、図2図3および図5図9の断面において曲線状であるクラウニングの代わりに、面取り部が形成されてもよい。これについて図10を用いて説明する。なお図10においては図5の一部を拡大した態様が示されている。
【0045】
図10は、図5の第1外輪交点部CC1および第2外輪交点部CC2として面取り部が形成された構成を示す概略拡大断面図である。図10を参照して、第1外輪軌道面5Aの外径側に連続するように第1外輪面取り部OC1が形成されている。第1外輪面取り部OC1は、たとえば図10の断面における第1外輪軌道面5Aと外輪逃げ溝7Aとが、曲線状のクラウニングの代わりに直線状に接続される部分である。この直線状に接続される第1外輪面取り部OC1は、これに隣接する第1外輪軌道面5Aおよび外輪逃げ溝7Aのそれぞれの部分との間に角度(α,β)を有している。たとえば当該角度(α,β)は、120°以上150°以下であってもよい。第1外輪面取り部OC1の第1外輪軌道面5Aと反対側は外輪逃げ溝7Aに連続している。第1外輪交点部CC1は第1外輪面取り部OC1により形成されている。第2外輪軌道面5Bの外径側に連続するように第2外輪面取り部OC2が形成されている。第2外輪面取り部OC2の第2外輪軌道面5Bと反対側は外輪逃げ溝7Aに連続している。第2外輪交点部CC2は第2外輪面取り部OC2により形成されている。
【0046】
図示されないが、図7図9に示す各外輪交点部および内輪交点部についても、図10と同様に、クラウニングの代わりに面取り部が形成されてもよい。第1外輪面取り部OC1などの面取り部についても、クラウニングと同様に軸方向AXの寸法および落ち量などを定義してもよく、これらの値が一方側(左側)の面取り部と他方側(右側)の面取り部との間で互いに異なってもよい。たとえば図10では、第1外輪面取り部OC1の軸方向の寸法をax5、落ち量をdr5としており、第2外輪面取り部OC2の軸方向の寸法をax6、落ち量をdr6としている。
【0047】
あるいは上記のように、図5の各外輪交点部および各内輪交点部には、クラウニングおよび面取り部のいずれも形成されなくてもよい。図11は、図5の第1外輪交点部CC1および第2外輪交点部CC2が1点として形成された構成を示す概略拡大断面図である。図11を参照して、図6図10の代わりに、たとえば図5と同様に、外輪逃げ溝7Aと第1外輪軌道面5Aとが直接接続されており、外輪逃げ溝7Aと第2外輪軌道面5Bとが直接接続されている。外輪逃げ溝7Aと第1外輪軌道面5Aとの接続される1点、すなわち外輪逃げ溝7Aと第1外輪軌道面5Aとの境界の1点が、第1外輪交点部CC1である。外輪逃げ溝7Aと第2外輪軌道面5Bとの接続される1点、すなわち外輪逃げ溝7Aと第2外輪軌道面5Bとの境界の1点が、第2外輪交点部CC2である。
【0048】
図示されないが、図7図9に示す各外輪交点部および内輪交点部についても、図11と同様に、クラウニングと面取り部とのいずれも形成されず、逃げ溝7と軌道面とが直接接続された1点(境界の1点)のみとして形成されてもよい。
【0049】
図6図11においては、一方側(左側)と他方側(右側)との外輪交点部または内輪交点部の双方が、クラウニング、面取り部、境界の1点のうちの同種のものとして示される。ただし図示されないがこのような態様に限らず、クラウニング、面取り部、境界の1点が適宜(任意に)組み合わせられた態様であってもよい。たとえば一方側(左側)には図6のように第1外輪交点部CC1としてクラウニングが形成され、他方側(右側)には図10のように第2外輪交点部CC2として面取り部が形成されてもよいし図11のように境界の1点が形成されてもよい。他の外輪交点部または内輪交点部についても上記と同様である。境界の1点の場合、第1外輪交点部CC1などの軸方向の寸法および落ち量はゼロとなる。
【0050】
図5図6図7図10図11)において図2と同様の寸法関係とする観点から、第1外輪交点部CC1よりも第2外輪交点部CC2が大きく、第3外輪交点部CC3よりも第4外輪交点部CC4が大きい。また図5図8図9)では、第2内輪交点部CB2よりも第1内輪交点部CB1が大きく、第4内輪交点部CB4よりも第3内輪交点部CB3が大きい。このような構成であってもよい。このような大小関係となるように、各部の軸方向の寸法および落ち量の大小関係が調整される。なお特に第1外輪交点部CC1、第3外輪交点部CC3、第2内輪交点部CB2、第4内輪交点部CB4は、反対側より小さく形成されてもよいため、図11のような1点として形成されてもよい。1点としての交点部は寸法がゼロとなるため、寸法がゼロでない交点部よりも小さくなるためである。
【0051】
次に、本実施の形態の作用効果を説明する。
【0052】
上記クロスローラ軸受1において、第1外輪軌道面5Aと第2外輪軌道面5Bとの間に形成される外輪逃げ溝7Aと、第1外輪軌道面5Aとの第1外輪交点部CC1は、外輪逃げ溝7Aと第2外輪軌道面5Bとの第2外輪交点部CC2よりも内径側に位置する。第1内輪軌道面6Aと第2内輪軌道面6Bとの間に形成される内輪逃げ溝7Bと、第1内輪軌道面6Aとの第1内輪交点部CB1は、内輪逃げ溝7Bと第2内輪軌道面6Bとの第2内輪交点部CB2よりも内径側に位置する。このようにすれば、実施の形態1(図2)のような各軌道面の長さの大小関係とすることができる。このため実施の形態1と同様に、片側の軌道面(たとえば右側の第2外輪軌道面5B)への大きなモーメント荷重によるモーメント負荷能力が高まる。このため大きなモーメント荷重が加わる側の軌道面および転動面42の早期剥離を抑制し、長寿命化と高剛性化とを実現できる。
【0053】
なお本実施の形態のように各外輪交点部および各内輪交点部がクラウニングまたは面取り部を有する場合、各外輪軌道面および各内輪軌道面の長さは、当該クラウニングまたは面取り部の軌道面に沿う方向の長さを含めてもよいし、含めなくてもよい。含める場合にはすべての交点部におけるクラウニングまたは面取り部を含め、含めない場合にはすべての交点部を含めずに、各外輪軌道面および各内輪軌道面の長さの大小関係が検討される。
【0054】
上記クロスローラ軸受1において、外輪2の最も内径側の端面である外輪端面21と、第1外輪軌道面5Aとの第3外輪交点部CC3は、内輪3の最も外径側の端面である内輪端面31と、第1内輪軌道面6Aとの第3内輪交点部CB3よりも、軸方向AXについての中央CTRに近い側に位置する。内輪端面31と第2内輪軌道面6Bとの第4内輪交点部CB4は、外輪端面21と第2外輪軌道面5Bとの第4外輪交点部CC4よりも、軸方向AXについての中央CTRに近い側に位置する。このようにすれば、実施の形態1(図2)のような各軌道面の長さの大小関係とすることができる。このため実施の形態1と同様に、大きなモーメント荷重が加わる側の軌道面および転動面42の早期剥離を抑制し、長寿命化と高剛性化とを実現できる。
【0055】
ここで再度、図4の比較例を参照しながら、本実施の形態の作用効果を説明する。
【0056】
図4を参照して、比較例においては、第1外輪交点部CC1および第2外輪交点部CC2が、中央CTRに対して対称な外観態様を有している。つまり第1外輪交点部CC1と第2外輪交点部CC2とは、形状が等しく、長さおよび落ち量などのサイズが等しい。第3外輪交点部CC3および第4外輪交点部CC4、第1内輪交点部CB1および第2内輪交点部CB2、第3内輪交点部CB3および第4内輪交点部CB4についても同様である。たとえば第2外輪軌道面5Bおよび第1内輪軌道面6Aが第1外輪軌道面5Aおよび第2内輪軌道面6Bより大きな荷重を受ける場合を考える。この場合、大きな荷重を受ける軌道面の両端部に形成される交点部には応力集中が生じ、寿命の短縮が懸念される。
【0057】
そこで本実施の形態のクロスローラ軸受1は、たとえば上記実施の形態1のクロスローラ軸受1において、第1外輪軌道面5A、第2外輪軌道面5B、第1内輪軌道面6Aおよび第2内輪軌道面6Bに連続するようにクラウニングが形成されている。軸方向AXに沿った断面において、第1外輪軌道面5Aおよび第1内輪軌道面6Aのいずれかに連続するクラウニングである一方側クラウニング(第1外輪クラウニングOR1、第3外輪クラウニングOR3、第1内輪クラウニングIR1、第3内輪クラウニングIR3)を考える。第2外輪軌道面5Bおよび第2内輪軌道面6Bのいずれかに連続するクラウニングである他方側クラウニング(第2外輪クラウニングOR2、第4外輪クラウニングOR4、第2内輪クラウニングIR2、第4内輪クラウニングIR4)を考える。一方側クラウニングと、他方側クラウニングとの外観態様(形状、長さ、落ち量)が異なってもよい。
【0058】
このようにすれば、たとえば大きなモーメント荷重が生じる側の軌道面の両端部に形成されたクラウニングが、その反対側の軌道面の両端部に形成されたクラウニングよりも大きく(たとえば円弧の径が大きい)形成される。これにより、大きな荷重を受ける軌道面の両端部に形成される交点部に生じる応力集中が緩和され、当該交点部を起点とする軌道輪の剥離等を抑制できる。このため長寿命化と高剛性化とを実現できる。また実施の形態1と同様に、一方側および他方側の負荷荷重に応じた各軌道面の長さの大小関係を得ることができるため、軌道面などの早期剥離を抑制でき、長寿命化と高剛性化とを実現できる。なお、直前の段落に記す本実施の形態のクロスローラ軸受1においては、第1外輪軌道面5Aと第2外輪軌道面5Bとの間に形成される外輪逃げ溝7Aと、第1外輪軌道面5Aとの第1外輪交点部CC1は、外輪逃げ溝7Aと第2外輪軌道面5Bとの第2外輪交点部CC2よりも内径側に位置してもよい。第1内輪軌道面6Aと第2内輪軌道面6Bとの間に形成される内輪逃げ溝7Bと、第1内輪軌道面6Aとの第1内輪交点部CB1は、内輪逃げ溝7Bと第2内輪軌道面6Bとの第2内輪交点部CB2よりも内径側に位置してもよい。外輪2の最も内径側の端面である外輪端面21と、第1外輪軌道面5Aとの第3外輪交点部CC3は、内輪3の最も外径側の端面である内輪端面31と、第1内輪軌道面6Aとの第3内輪交点部CB3よりも、軸方向AXについての中央CTRに近い側に位置してもよい。内輪端面31と第2内輪軌道面6Bとの第4内輪交点部CB4は、外輪端面21と第2外輪軌道面5Bとの第4外輪交点部CC4よりも、軸方向AXについての中央CTRに近い側に位置してもよい。
【0059】
本実施の形態のクロスローラ軸受1は、たとえば上記実施の形態1のクロスローラ軸受1において、第1外輪軌道面5Aと第2外輪軌道面5Bとの間に形成される外輪逃げ溝7Aと第1外輪軌道面5Aとの第1外輪交点部CC1にはクラウニングが形成される。外輪逃げ溝7Aと第2外輪軌道面5Bとの第2外輪交点部CC2、第1内輪軌道面6Aと第2内輪軌道面6Bとの間に形成される内輪逃げ溝7Bと第1内輪軌道面6Aとの第1内輪交点部CB1、および内輪逃げ溝7Bと第2内輪軌道面6Bとの第2内輪交点部CB2にはクラウニングが形成される。外輪2の最も内径側の端面である外輪端面21と第1外輪軌道面5Aとの第3外輪交点部CC3、外輪端面21と第2外輪軌道面5Bとの第4外輪交点部CC4、内輪3の最も外径側の端面である内輪端面31と第1内輪軌道面6Aとの第3内輪交点部CB3、および内輪端面31と第2内輪軌道面6Bとの第4内輪交点部CB4にはクラウニングが形成される。軸方向AXに沿った断面において、第1外輪交点部CC1のクラウニングである第1外輪クラウニングOR1と第2外輪交点部CC2のクラウニングである第2外輪クラウニングOR2との外観態様が異なる。上記断面において、第3外輪交点部CC3のクラウニングである第3外輪クラウニングOR3と第4外輪交点部CC4のクラウニングである第4外輪クラウニングOR4との外観態様が異なる。上記断面において、第1内輪交点部CB1のクラウニングである第1内輪クラウニングIR1と第2内輪交点部CB2のクラウニングである第2内輪クラウニングIR2との外観態様が異なる。上記断面において、第3内輪交点部CB3のクラウニングである第3内輪クラウニングIR3と第4内輪交点部CB4のクラウニングである第4内輪クラウニングIR4との外観態様が異なる。以上のような構成であることが好ましい。
【0060】
このようにすれば、たとえば大きなモーメント荷重が生じる側の軌道面の両端部に形成されたクラウニングが、その反対側の軌道面の両端部に形成されたクラウニングよりも大きく(たとえば円弧の径が大きい)形成される。これにより、大きな荷重を受ける側のモーメント負荷能力が高くなり、軌道面の両端部に形成される交点部に生じる応力集中が緩和される。このため長寿命化と高剛性化が実現できる。また実施の形態1と同様に、一方側および他方側の負荷荷重に応じた各軌道面の長さの大小関係を得ることができるため、軌道面などの早期剥離を抑制でき、長寿命化と高剛性化とを実現できる。
【0061】
本実施の形態のクロスローラ軸受1は、上記実施の形態1のクロスローラ軸受1において、第1外輪軌道面5Aと第2外輪軌道面5Bとの間に形成される外輪逃げ溝7Aと、第1外輪軌道面5Aとの第1外輪交点部CC1は、外輪逃げ溝7Aと第2外輪軌道面5Bとの第2外輪交点部CC2よりも内径側に位置してもよい。第1内輪軌道面6Aと第2内輪軌道面6Bとの間に形成される内輪逃げ溝7Bと、第1内輪軌道面6Aとの第1内輪交点部CB1は、内輪逃げ溝7Bと第2内輪軌道面6Bとの第2内輪交点部CB2よりも内径側に位置してもよい。外輪2の最も内径側の端面である外輪端面21と、第1外輪軌道面5Aとの第3外輪交点部CC3は、内輪3の最も外径側の端面である内輪端面31と、第1内輪軌道面6Aとの第3内輪交点部CB3よりも、軸方向AXについての中央CTRに近い側に位置してもよい。内輪端面31と第2内輪軌道面6Bとの第4内輪交点部CB4は、外輪端面21と第2外輪軌道面5Bとの第4外輪交点部CC4よりも、軸方向AXについての中央CTRに近い側に位置してもよい。第1外輪軌道面5A、第2外輪軌道面5B、第1内輪軌道面6Aおよび第2内輪軌道面6Bに連続するようにクラウニングが形成されている。軸方向AXに沿った断面において、第1外輪軌道面5Aおよび第1内輪軌道面6Aのいずれかに連続するクラウニングである一方側クラウニング(第1外輪クラウニングOR1、第3外輪クラウニングOR3、第1内輪クラウニングIR1、第3内輪クラウニングIR3)を考える。第2外輪軌道面5Bおよび第2内輪軌道面6Bのいずれかに連続するクラウニングである他方側クラウニング(第2外輪クラウニングOR2、第4外輪クラウニングOR4、第2内輪クラウニングIR2、第4内輪クラウニングIR4)を考える。一方側クラウニングと、他方側クラウニングとの外観態様(形状、長さ、落ち量)が異なってもよい。第1外輪交点部CC1、第2外輪交点部CC2、第3外輪交点部CC3、第4外輪交点部CC4、第1内輪交点部CB1、第2内輪交点部CB2、第3内輪交点部CB3、第4内輪交点部CB4にはクラウニングが形成されている。軸方向AXに沿った断面において、第1外輪交点部CC1のクラウニングである第1外輪クラウニングOR1と第2外輪交点部CC2のクラウニングである第2外輪クラウニングOR2との外観態様が異なる。上記断面において、第3外輪交点部CC3のクラウニングである第3外輪クラウニングOR3と第4外輪交点部CC4のクラウニングである第4外輪クラウニングOR4との外観態様が異なる。上記断面において、第1内輪交点部CB1のクラウニングである第1内輪クラウニングIR1と第2内輪交点部CB2のクラウニングである第2内輪クラウニングIR2との外観態様が異なる。上記断面において、第3内輪交点部CB3のクラウニングである第3内輪クラウニングIR3と第4内輪交点部CB4のクラウニングである第4内輪クラウニングIR4との外観態様が異なる。以上のような構成であってもよい。
【0062】
(実施の形態3)
図12は、実施の形態3に係るクロスローラ軸受の一部を切り欠きローラの配置態様を示した概略正面図である。図13は、実施の形態3のクロスローラ軸受の周方向に並ぶ複数のローラを横方向に並べた概略図である。図14は、実施の形態3の比較用に、実施の形態1のクロスローラ軸受の周方向に並ぶ複数のローラを横方向に並べた概略図である。図12および図13を参照して、本実施の形態のクロスローラ軸受1は、基本的に実施の形態1のクロスローラ軸受1と同様の構成である。このため以下において実施の形態1(図1)と同一の構成要素には同一の符号を付し、特徴および機能等が同一である限りその説明を繰り返さない。ただし本実施の形態においては、ローラ4の配置態様が実施の形態1とは異なっている。具体的には、本実施の形態においては、周方向CFについて、第1ローラ4Aが2本続けて並び、その隣に第2ローラ4Bが1本配置され、その隣に再び第1ローラ4Aが2本続けて並ぶことを繰り返している。2本の第1ローラ4Aと1本の第2ローラ4Bとが交互に配置され、合計24本のローラ4が配置されている。24本のローラ4は、16本の第1ローラ4Aと8本の第2ローラ4Bとから構成されている。この点において本実施の形態は、図14に示すように周方向について第1ローラ4Aと第2ローラ4Bとが1本ずつ交互に並び、第1ローラ4Aと第2ローラ4Bとが同数である実施の形態1と構成上異なっている。
【0063】
次に、本実施の形態の作用効果を説明する。
【0064】
上記クロスローラ軸受1において、複数のローラ4は、柱状に延在する転動面42を含む。複数のローラ4は、複数の第1ローラ4Aと、複数の第2ローラ4Bとを有する。複数の第1ローラ4Aは、軸方向AXに沿った断面において転動面42の延在する方向が軸方向AXに対して第1方向(図2にて中心L1の延びる方向)に傾斜するように配置される。複数の第2ローラ4Bは、軸方向AXに沿った断面において転動面42の延在する方向が軸方向AXに対して複数の第1ローラ4Aと交差する第2方向(図3にて中心L2の延びる方向)に傾斜するように配置される。複数の第1ローラ4Aと複数の第2ローラ4Bとの本数が異なる。
【0065】
このようにすれば、たとえば一方側(左側または右側)のモーメント荷重が他方側のモーメント荷重に比べて大きい場合、第1ローラ4Aおよび第2ローラ4Bのいずれか、より大きな荷重を受ける軌道面に転動面42が接触する側のローラの本数を、他方のローラの本数よりも大きくできる。これにより、より多数のローラにより、大きなモーメント荷重を負荷することができる。したがって大きな荷重を受ける軌道面のモーメント負荷能力を高くできる。以上により、ローラの本数が考慮されない場合に比べ、クロスローラ軸受1はより大きなモーメント荷重を負荷できる。
【0066】
上記クロスローラ軸受1において、図12および図13のように、複数の第1ローラ4Aは複数の第2ローラ4Bよりも大きなモーメント荷重を受け、複数の第1ローラ4Aは複数の第2ローラ4Bよりも本数が多くてもよい。ここで複数の第1ローラ4Aが複数の第2ローラ4Bよりも大きなモーメント荷重を受けるとは、複数の第1ローラ4Aの転動面42が接触する側の軌道面(第2外輪軌道面5Bおよび第1内輪軌道面6A)が、複数の第2ローラ4Bの転動面42が接触する側の軌道面(第1外輪軌道面5Aおよび第2内輪軌道面6B)よりも大きなモーメント荷重を受けることを意味する。この場合、複数の第1ローラ4Aの本数を複数の第2ローラ4Bの本数よりも多くすれば、より多数の第1ローラ4Aにより、大きなモーメント荷重を負荷することができる。したがって大きな荷重を受ける軌道面のモーメント負荷能力を高くできる。以上により、ローラの本数が考慮されない場合に比べ、クロスローラ軸受1はより大きなモーメント荷重を負荷できる。
【0067】
(実施の形態4)
図15は、実施の形態4に係るクロスローラ軸受の一部を切り欠きローラの配置態様を示した概略正面図である。図15を参照して、本実施の形態のクロスローラ軸受1は、基本的に実施の形態1のクロスローラ軸受1と同様の構成である。このため以下において実施の形態1(図1)と同一の構成要素には同一の符号を付し、特徴および機能等が同一である限りその説明を繰り返さない。ただし本実施の形態においては、複数のローラ4の総本数は23本であり奇数である。この点において、ローラ4の総本数が偶数の24本である実施の形態1~3と異なっている。
【0068】
図15においては、基本的には実施の形態1と同様に、周方向CFについて第1ローラ4Aと第2ローラ4Bとが交互に並ぶように配置されている。ただし図の上部において、2つ連続で第1ローラ4Aが並ぶ箇所が1か所存在する。このように複数の第1ローラ4Aが周方向CFについて連続して並ぶ箇所を有する場合には、ローラ4の総数は図12のように偶数にもなり得れば、図15のように奇数にもなり得る。
【0069】
本実施の形態のように複数のローラ4の本数は奇数であってもよい。このようにすればローラ4の総本数と寸法との選択肢が増え、クロスローラ軸受1の設計自由度が高められる。
【0070】
以上に述べた各実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
【0071】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 クロスローラ軸受、2 外輪、3 内輪、4 ローラ、5 外輪軌道面、5A 第1外輪軌道面、5B 第2外輪軌道面、6 内輪軌道面、7 逃げ溝、7A 外輪逃げ溝、7B 内輪逃げ溝、21 外輪端面、31 内輪端面、41 円形端面、42 転動面、AX 軸方向、CF 周方向、B1 第1内輪軌道面長さ、B2 第2内輪軌道面長さ、C1 第1外輪軌道面長さ、C2 第2外輪軌道面長さ、CB1 第1内輪交点部、CB2 第2内輪交点部、CB3 第3内輪交点部、CB4 第4内輪交点部、CC1 第1外輪交点部、CC2 第2外輪交点部、CC3 第3外輪交点部、CC4 第4外輪交点部、CTR 中央、L1,L2 中心、OC1 第1外輪面取り部、OC2 第2外輪面取り部、OR1 第1外輪クラウニング、OR2 第2外輪クラウニング、OR3 第3外輪クラウニング、OR4 第4外輪クラウニング、RA 径方向。
図1
図2
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図5
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図15