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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191707
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/183 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
B62D1/183
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100092
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】岡 邦洋
(72)【発明者】
【氏名】野沢 康行
(72)【発明者】
【氏名】山口 良輔
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA86
3D030DD63
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で運転者の前方空間を広げることができるステアリング装置を提供すること。
【解決手段】ステアリング装置100は、軸部材121を有するコラム部120と、コラム部120が固定されたベース部材130と、ガイド部材200と、駆動装置140と、を備える。軸部材121は、端部に操作部材110が接続されており、かつコラム部120において、回転可能に支持されている。ガイド部材200は、ベース部材130の、車両の前後方向への移動をガイドする。駆動装置140は、ベース部材130の前後方向への移動を駆動する。ガイド部材200は、ベース部材130の前後方向へ移動をガイドし、かつ、コラム部120が固定されたベース部材130の重量の少なくとも一部を支持する複数の支持部材250を有する。駆動装置140の一部は、複数の支持部材250のうちの1つの支持部材250を兼ねる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、
操作部材が接続され、かつ回転可能に支持された軸部材を有するコラム部と、
前記コラム部が固定されたベース部材と、
前記ベース部材の、前記車両の前後方向への移動をガイドするガイド部材と、
前記ベース部材の前記前後方向への移動を駆動する駆動装置と、を備え、
前記ガイド部材は、前記ベース部材の前記前後方向へ移動をガイドし、かつ、前記コラム部が固定された前記ベース部材の重量の少なくとも一部を支持する複数の支持部材を有し、
前記駆動装置の一部は、前記複数の支持部材のうちの1つの支持部材を兼ねる、
ステアリング装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記1つの支持部材である送りねじを有し、前記送りねじを回転させることで、前記送りねじに螺合するナットが固定された前記ベース部材の前記前後方向の移動を駆動する、
請求項1記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記送りねじよりも後方に配置された後部レールを有し、
前記ベース部材は、前記ナットよりも後方に配置された当接部材であって、前記ベース部材が前記ガイド部材にガイドされて移動する場合に前記送りねじに干渉せず、かつ、前記ガイド部材の後端部において後部レールに当接しながら移動する当接部材を有する、
請求項2記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、
前記車両に固定された第一ガイド部材であって、前記1つの支持部材を兼ねる前記駆動装置の前記一部が配置された第一ガイド部材と、前記第一ガイド部材の後端部に設けられた連結部において連結された第二ガイド部材とを有し、
前記第二ガイド部材は、前記連結部において、前記第二ガイド部材によるガイド方向が前記前後方向に沿う展開姿勢、及び、前記ガイド方向が前記前後方向に沿わない格納姿勢の一方から他方に切り替え可能に軸支されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイール等の操作部材を移動させることで運転者の前方空間を広げることのできるステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転においてシステムが責任をもつ自動運転レベル4以上の状態では、運転者は、車両の操作に責任を持つ必要がないため、ステアリングホイールを持つ必要がなくなる。従って自動運転時にステアリングホイールが移動し運転者の前方の空間が広く確保されれば、運転者の快適性または安全性を高めることが出来る。例えば特許文献1には、3つの筒状のジャケットを備えるステアリング装置であって、内側のジャケットが外側のジャケットに対して軸方向にスライド可能に保持されたテレスコピック構造を有するステアリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0210632号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステアリング装置において、例えばステアリングホイール(操作部材)の安定的な支持等のためには、操作部材を支持する構造に、比較的に高い剛性または強度が求められる。これに対し、上記従来のステアリング装置では、操作部材が取り付けられた軸部材を支持する内側のジャケットが、外側のジャケットに支持されながら、当該外側のジャケットに対して摺動することで操作部材を出退させる構造が採用されている。従って、操作部材の出退に必要な伸縮量を確保しつつ、所定の剛性または強度を確保するために、例えばジャケットの厚みを厚くする、または、ジャケットにリブを設ける等の対策が必要となる。さらに、ステアリング装置には、当該出退を駆動するための機構部も備えられるため、操作部材の出退を支持及びガイドする部材の重量及び構造に、当該出退を駆動する部材の重量及び構造が加算される。従って、操作部材の出退を実行するステアリング装置では、構造の複雑化、または、コスト若しくは重量の増加が生じやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、本願発明者らが上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、簡易な構成で運転者の前方空間を広げることができるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るステアリング装置は、車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、操作部材が接続され、かつ回転可能に支持された軸部材を有するコラム部と、前記コラム部が固定されたベース部材と、前記ベース部材の、前記車両の前後方向への移動をガイドするガイド部材と、前記ベース部材の前記前後方向への移動を駆動する駆動装置と、を備え、前記ガイド部材は、前記ベース部材の前記前後方向へ移動をガイドし、かつ、前記コラム部が固定された前記ベース部材の重量の少なくとも一部を支持する複数の支持部材を有し、前記駆動装置の一部は、前記複数の支持部材のうちの1つの支持部材を兼ねる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成で運転者の前方空間を広げることができるステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係るステアリングシステムの構成概要を示す模式図である。
図2図2は、実施の形態に係るステアリング装置の外観を示す第1の斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係るステアリング装置の外観を示す第2の斜視図である。
図4図4は、図2に対応するステアリング装置の模式図である。
図5図5は、図3に対応するステアリング装置の模式図である。
図6図6は、実施の形態に係るステアリング装置を、駆動装置が配置された側から見た場合の側面図である。
図7図7は、実施の形態に係る回動機構部の第1の状態を示す側面図である。
図8図8は、実施の形態に係る回動機構部の第2の状態を示す側面図である。
図9図9は、実施の形態に係る回動機構部の第3の状態を示す側面図である。
図10図10は、実施の形態に係るステアリング装置の一部を示す部分拡大図である。
図11図11は、実施の形態に係るベース部材と第一ガイド部材との構造上の関係を示す斜視図である。
図12図12は、実施の形態に係るベース部材と第二ガイド部材との構造上の関係を示す斜視図である。
図13図13は、実施の形態に係る第一レール及び第二レールの端部形状の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るステアリング装置の実施の形態(変形例を含む)について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ及びステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0010】
図面は、本発明を示すために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図である場合があり、つまり、実際の形状、位置関係、及び比率とは異なる場合がある。さらに、以下の実施の形態において、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行である、とは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0011】
(実施の形態)
[1.ステアリングシステムの構成概要]
まず、図1を参照しながら、本実施の形態のステアリング装置100を備えるステアリングシステム10の構成概要を説明する。図1は、実施の形態に係るステアリングシステム10の構成概要を示す模式図である。
【0012】
本実施の形態に係るステアリングシステム10は、例えば手動運転モードと自動運転モードとを切り替えることができる乗用車、バス、トラック、建機、または農機などの車両に搭載される装置である。
【0013】
ステアリングシステム10は、図1に示すように、運転者に操作される操作部材110を有するステアリング装置100と、転舵輪710を転舵させる転舵機構部102とを備える。ステアリングシステム10は、例えば手動運転モードにおいて、操作部材110の回転角などをセンサ等で読み取り、センサ等の信号に基づいて軸体730が左右に往復動することで転舵輪710を転舵するシステムである。このようなシステムは、例えばSBW(Steer By Wire)システムと呼ばれる。
【0014】
ステアリングシステム10において、車両の操舵に関する動作及び処理における上流側に位置するステアリング装置100では、操作部材110に軸部材121が連結されており、軸部材121には、反力発生装置125による回転駆動力が作用する。反力発生装置125による回転駆動力により、運転者が操作部材110を操作する際の反力が操作部材110に与えられる。また、反力発生装置125による回転駆動力は、操作部材110の回転位置を、転舵輪710の転舵角と同期させるためにも用いられる。
【0015】
ステアリング装置100の下流に位置する転舵機構部102では、軸体730の車両の幅方向(図1における左右方向)の移動により、タイロッド711を介して軸体730に接続された転舵輪710が転舵する。具体的には、手動運転モードでは、ステアリング装置100から送信される操作部材110の回転角等を示す信号に基づき、転舵用アクチュエータ750が動作する。これにより、軸体730が車両の幅方向に移動し、転舵輪710が転舵する。つまり、操作部材110の操作に応じて、転舵輪710が転舵する。自動運転モードでは、車両が備える自動運転のためのコンピュータ(図示せず)から送信される信号等に基づいて転舵用アクチュエータ750が動作し、これにより、操作部材110の操作によらず、転舵輪710が転舵する。図1では、転舵用アクチュエータ750の駆動力をベルトを用いて軸体730に伝達する構成が例示されているが、転舵用アクチュエータ750の駆動力の軸体730への伝達方法に特に限定はない。例えば、転舵用アクチュエータ750の回転軸に固定されたピニオン歯車を介して、転舵用アクチュエータ750の駆動力が軸体730に伝達されてもよい。
【0016】
[2.ステアリング装置の基本構成]
次に、図2図5を参照しながら、実施の形態に係るステアリング装置100の基本構成について説明する。
【0017】
図2は、実施の形態に係るステアリング装置100の外観を示す第1の斜視図である。図3は、実施の形態に係るステアリング装置100の外観を示す第2の斜視図である。図2では、コラム部120が格納位置にある場合のステアリング装置100が図示されており、図3では、コラム部120が通常位置にある場合のステアリング装置100が図示されている。ステアリング装置100が備えるコラム部120は、方向指示器を作動させるスイッチ及び運転者によって操作されるウインカーレバー等の他の部材を有しているが、これら他の部材の図示及び説明は省略する。図4は、図2に対応するステアリング装置100の模式図であり、図5は、図3に対応するステアリング装置100の模式図である。図4及び図5では、車両に搭載された状態のステアリング装置100の側面図が簡易的に表されている。さらに、図4及び図5では、以下の説明で登場する「運転者」の一例である運転者500が、斜線を付した領域で模式的に表されている。図2図5では、ステアリング装置100の基本構成を分かりやすく図示するために、ガイド部材200の一部を回動させる回動機構部150の図示は省略されている。回動機構部150については図6等を用いて後述する。さらに、図2以降の図(図13を除く)では、図示の簡単のために、第一レール212及び第二レール222それぞれの端部に設けられた先細り部の図示は省略されている。先細り部については、図13を用いて後述する。
【0018】
本実施の形態に係るステアリング装置100は、図2図5に示すように、コラム部120と、コラム部120が固定されたベース部材130と、ベース部材130の、車両の前後方向への移動をガイドするガイド部材200とを備える。
【0019】
コラム部120は、回転可能に支持された軸部材121を有し、軸部材121の端部には操作部材110が接続されている。なお、図2及び図3では、操作部材110は、おおよその外形が破線で表されており、後述する図6以降の図では図示が省略されている。
【0020】
コラム部120は、より具体的には、軸部材121を回転可能に支持し、かつ、軸部材121に反力を与える反力発生装置125を備えている。反力発生装置125は、タイヤと操作部材とが機械的に接続されている従来の車両において、運転中に操作部材に生じる力などを反力として再現する装置である。反力発生装置125は、軸部材121に与える回転駆動力を発生するアクチュエータ等を有しており、軸部材121を介して操作部材110に反力を与える。また、反力発生装置125は、操作部材110のステアリング軸S周りの回転位置を制御することもできる。ステアリング軸Sは、軸部材121の回転中心を通り、車両の前後方向に延びる仮想軸(図3参照、本実施の形態ではX軸に平行)である。
【0021】
なお、「車両の前後方向」とは、一般に、車両の直進方向と平行な方向、運転席の背もたれとステアリング装置100との並び方向、または、車両の前部と後部とを結ぶ方向等である。例えば、運転者の上半身に対する操作部材110の位置は、「前方」である。また、軸部材121及び操作部材110の回転中心であるステアリング軸Sは、「車両の前後方向」と厳密に一致している必要はない。例えば車両が水平な路面に停止している状態において、操作部材110がやや上を向くように、ステアリング軸Sが水平方向に対して傾けられていてもよい。また、例えば「操作部材110が車両の前後方向に移動する」という場合も同様であり、その移動の軌跡は、「車両の前後方向」と厳密に一致している必要はない。例えば、運転者から見て、操作部材110が、運転者の前方の所定の位置と、さらにその前方かつ斜め下方の位置との間を移動する場合であっても、「操作部材110は、車両の前後方向に移動する」と表現される。このことは、操作部材110の移動の軌跡が直線か曲線か等に関わらず適用される。また、「車両の前後方向」は、以下、単に「前後方向」とも表現される。
【0022】
操作部材110は、運転者が手動で操作する部材であり、軸部材121の軸方向の端部(運転者側の端部)に着脱可能に取り付けられる。操作部材110は、ステアリング軸Sを中心に回転し、これに伴って、操作部材110に連結された軸部材121もステアリング軸Sを中心に回転する。手動運転モードでは、この回転量等に基づいて、上述のように、車両の1以上の転舵輪710が転舵される。コラム部120は、図示しないウインカーレバー等を操作部材110と反力発生装置125との間に有している。運転者は、操作部材110を操作する場合、コラム部120が有するウインカーレバー等の操作も行うことができる。なお、操作部材110の形状及びサイズは、図2及び図3に示される形状及びサイズには限定されない。例えば、操作部材110は、環状のリム、軸部材に取り付けられるハブ、及び、リムとハブとを接続する1以上のスポークを有するステアリングホイールであってもよい。
【0023】
本実施の形態では、操作部材110が取り付けられたコラム部120は、ベース部材130によって下方から支持される。具体的には、ベース部材130は、反力発生装置125が固定されたベース本体131と、ベース本体131に固定された第一当接部材135とを有する。第一当接部材135は、本実施の形態では、ガイド部材200に当接しながら前後方向に移動する部材である。第一当接部材135では、少なくともガイド部材200が有するレールに当接する部分が、例えば当該レールに対して低摩擦で摺動する樹脂材料で形成されている。これにより、第一当接部材135は、当該レールに対して滑らかに摺動することができ、その結果、ベース部材130の前後方向の移動は、安定してガイドされる。
【0024】
コラム部120は、ベース部材130の前後方向の移動に伴って移動する。これにより、コラム部120は、運転者による操作部材110の操作のための位置である通常位置(図3及び図5参照)と、通常位置よりも前方の格納位置(図2及び図4参照)との間で移動することができる。コラム部120の位置の基準に特に限定はないが、例えば、コラム部120が有する軸部材121の後端部の位置(前後方向における操作部材110の位置と略同一)で規定される。コラム部120の格納位置は、例えば図4及び図5に示すように、運転者500の前方に位置するダッシュボード400の内部空間410のいずれかに設定される。
【0025】
本実施の形態に係るステアリング装置100は、コラム部120の前後方向の移動を駆動するための駆動装置140を備えている。駆動装置140は、図2及び図3に示すように、移動用アクチュエータ141と、送りねじ145と、伝達機構部142とを有している。移動用アクチュエータ141は、コラム部120(直接的にはベース部材130)の移動のための駆動力を発生するモータである。送りねじ145は、ベース部材130の一部に螺合し、回転することでベース部材130に前後方向の外力を与える棒状の部材である。伝達機構部142は、移動用アクチュエータ141による駆動力を送りねじ145に伝達する歯車等を有する機構部である。このように構成された駆動装置140が動作することで、ベース部材130は、コラム部120を伴って前後方向に直動する。つまり、ベース部材130は、ガイド部材200にガイドされながら、かつ、駆動装置140から前後方向の駆動力を受けながら前後方向に移動する。駆動装置140の各種の動作は、図示しない制御装置によって制御される。
【0026】
このように構成されたステアリング装置100において、駆動装置140が有する送りねじ145は、ベース部材130に駆動力を与える部材として機能する他、ベース部材130を支持する支持部材250としても機能する。具体的には、図3に示すように、ベース部材130は、構造的には、コラム部120とは反対側(本実施の形態では下側)に配置された一対の支持部材250に支持され、かつ、ガイドされて移動するよう構成されている。当該一対の支持部材250の内の一方の少なくとも一部は、送りねじ145が兼ねている。つまり、第一レール212と送りねじ145とは、ベース部材130等の重量を支える一対の支持部材250として機能する。これにより、コラム部120を前後方向に移動させることで運転者に対してコラム部120を出退させるステアリング装置100における構成の簡素化(小型化または軽量化等を含む)が図られる。また、駆動装置140は、例えば図3に示すように、接続部材149によってガイド部材200に接続されており、接続部材149は、Z軸方向に平行に配置された軸体によって駆動装置140を回動可能に軸支している。つまり、送りねじ145は、Z軸周りの自由度を持つ状態でガイド部材200に支持されている。これにより、送りねじ145は、送りねじ145、ガイド部材200、及びベース部材130等が有する公差または微小な変形を吸収しながら、ベース部材130の支持及び移動の駆動、並びに、その移動のガイドを適切に実行することができる。
【0027】
また、本実施の形態において、ベース部材130の前後方向の移動(コラム部120の出退)をガイドするガイド部材200は、図2図5に示すように、そのガイド方向の途中で折り曲げ可能な構造を有している。具体的には、これらの図に示すように、ガイド部材200は、車両に固定された第一ガイド部材210と、第一ガイド部材210の後端部に設けられた連結部218(図2参照)において連結された第二ガイド部材220とを有する。
【0028】
第一ガイド部材210は、車両に固定された状態において前後方向に延在する第一レール212と、第一レール212が固定された第一基体211とを有する。第一基体211は、図示しないボルト及びナット等によって車両の車体に固定される。これにより、ステアリング装置100が車両に取り付けられる。第一基体211の後端部、つまり、運転者側の端部に連結部218が設けられており、連結部218は、第二ガイド部材220を軸支する軸支部材218aを有している。
【0029】
第二ガイド部材220は、図2及び図4に示す格納姿勢と、図3及び図5に示す展開姿勢とが切り替え可能なように、連結部218に配置された軸支部材218aに回動可能に軸支されている。第二ガイド部材220は、第二レール222と、第二レール222が固定された第二基体221とを有する。第二レール222は、ベース部材130の第一当接部材135の移動をガイドすることでベース部材130の移動をガイドする。第二ガイド部材220は、展開姿勢である場合、第二ガイド部材220によるガイド方向、つまり、第二レール222の延在方向が前後方向に沿う姿勢となる。より詳細には、第二ガイド部材220が展開姿勢である場合、第二レール222は、第一レール212の延長線上に位置し、かつ、ベース部材130の少なくとも一部は、第二レール222と第一レール212との境界を越えて移動することができる。
【0030】
[3.ステアリング装置の構成及び動作の詳細]
本実施の形態では、一部が回動するガイド部材200における回動動作に、駆動装置140によるベース部材130の移動のための駆動力を利用している。つまり、第二ガイド部材220は、駆動装置140による駆動力を利用して回動し、その結果、ガイド部材200は、前後方向における長さを伸縮させる。以下、上述の図2図5に加えて図6図13を参照しながら、本実施の形態に係るステアリング装置100の動作及び構成の詳細について説明する。
【0031】
図6は、実施の形態に係るステアリング装置100を、駆動装置140が配置された側(Y軸プラス方向)から見た場合の側面図である。図7図9は、実施の形態に係る回動機構部150の第1~第3の状態を示す側面図である。図10は、実施の形態に係るステアリング装置100の一部を示す部分拡大図である。図10では、第二ガイド部材220の回動を所定の回動位置で停止させる停止構造を示すために、ステアリング装置100における第一ガイド部材210の連結部218及びその周辺が図示されている。図11は、実施の形態に係るベース部材130と第一ガイド部材210との構造上の関係を示す斜視図である。図11では、当該構造上の関係を分かりやすく示すために、第一ガイド部材210をYZ平面に平行な面で切断して図示している。図12は、実施の形態に係るベース部材130と第二ガイド部材220との構造上の関係を示す斜視図である。図11及び図12では、コラム部120の図示は省略されている。図13は、実施の形態に係る第一レール212及び第二レール222の端部形状の一例を示す側面図である。図13では、ベース部材130が有する第一当接部材135のおおよその外形、及び、第一当接部材135を前後方向に貫通する溝部135aが、破線で模式的に表されている。
【0032】
図6に示すように、本実施の形態に係るステアリング装置100が備えるベース部材130は、送りねじ145を貫通させ、かつ、送りねじ145と螺合するナット134を有している。ナット134は、ベース部材130におけるベース本体131にY軸周りの回動が許容された状態で固定されており、送りねじ145が回転することで、送りねじ145から前後方向の駆動力を受ける。ナット134が前後方向の駆動力を受けることで、ナット134が固定されたベース本体131は前後方向に移動し、これに伴って、ベース本体131に固定されたコラム部120も前後方向に移動する。この移動の際、ベース部材130が備える第一当接部材135が、第一レール212及び第二レール222の少なくとも一方に当接した状態が維持される。これによりベース部材130は前後方向に適切に移動し、その結果、コラム部120の位置が、格納位置(図4参照)及び通常位置(図5参照)の一方から他方に切り替えられる。
【0033】
コラム部120が、格納位置及び通常位置の一方から他方に移動する場合(出退する場合)、ガイド部材200は、一部が回動することにより全長を縮ませる、または、全長を伸ばす。具体的には、コラム部120が格納位置にある場合、ガイド部材200の後方部分を形成する第二ガイド部材220は、図4に示すように、前後方向に沿う姿勢の第一ガイド部材210に対して起立した姿勢(格納姿勢の一例)である。これにより、運転者500の前方の空間は、操作部材110及びステアリング装置100が存在しない空間となる。その後、例えば運転者の所定の指示によりコラム部120が通常位置まで進出する場合、第二ガイド部材220は、回動することで、そのガイド方向が前後方向に沿う展開姿勢となる。これにより、コラム部120はガイド部材200にガイドされながら通常位置まで進出できる。
【0034】
このような第二ガイド部材220の回動は、回動機構部150によって駆動される。回動機構部150は、例えば、図7図9に示されるようにリンク機構によって実現される。具体的には、本実施の形態に係る回動機構部150は、ベース部材130に固定されたローラ152と、ローラ152に係合するU字形状を有する係合部材151と、係合部材151及び第二ガイド部材220を連結する連結部材155とを有する。係合部材151は、第一ガイド部材210に固定されたピン153によって回動可能に軸支されている。連結部材155の、係合部材151と接続される端部には、係合部材151に固定されたピン154が貫通して配置されている。これにより、連結部材155及び係合部材151の一方は、他方に対して、ピン154を中心とする回動が可能である。連結部材155の、第二ガイド部材220と接続される端部には、第二ガイド部材220に固定されたピン156が貫通して配置されている。これにより、連結部材155及び第二ガイド部材220の一方は、他方に対して、ピン156を中心とする回動が可能である。このように構成された回動機構部150の動作例を以下に説明する。
【0035】
図7に示すように、コラム部120が格納位置にある場合、ローラ152が係合した状態の係合部材151は、第二ガイド部材220を、コラム部120の後方において起立した姿勢に維持する。具体的には、係合部材151は、ローラ152と前後方向の両方で係合しており、これにより、係合部材151は、ピン153を中心とする回動がローラ152によって規制される。さらに、比較的に逆効率の小さい送りねじ145がベース部材130の移動の駆動に用いられていることで、ベース部材130の前後方向の移動は、ナット134(図6参照)に螺合する送りねじ145によって規制される。これにより、ベース部材130に固定されたローラ152の移動及び係合部材151の回動が規制される。その結果、連結部材155を介して係合部材151と連結された第二ガイド部材220は、軸支部材218aを中心とする回動が規制され、格納姿勢に維持される。
【0036】
図7に示す位置にあるベース部材130が、駆動装置140の駆動力によって後方(X軸プラス方向)に移動した場合、ベース部材130に固定されたローラ152は、図8に示すように、係合部材151のピン153より上の部分を後向きに押す。これにより、係合部材151は、連結部材155を後方に向けて押すように、ピン153を中心として図8における時計回りに回動する。その結果、第二ガイド部材220は、図8に示すように、軸支部材218aを中心として後方に傾くように回動する。
【0037】
さらに、駆動装置140の駆動力によって、ベース部材130が図8に示す位置から後方に移動した場合、ベース部材130に固定されたローラ152は、係合部材151をさらに時計回りに回動させる。その結果、係合部材151は、図7に示す初期の姿勢から時計回りに90°回動する。これにより、連結部材155を介して係合部材151に接続された第二ガイド部材220は、図9に示すように、第二レール222が前後方向に沿う姿勢(展開姿勢)となる。係合部材151が初期の姿勢から時計回りに90°回動した姿勢となるタイミングは、ベース部材130が第一ガイド部材210にガイドされながら移動している途中である。従って、駆動装置140の駆動力によって後方に移動するベース部材130は、第二ガイド部材220が展開姿勢となった後に、第二ガイド部材220上に到達する。
【0038】
第二ガイド部材220が展開姿勢となった状態では、第二ガイド部材220のさらなる回動は機械的に規制される。具体的には、第二ガイド部材220が展開姿勢である場合、図10から分かるように、第一ガイド部材210の第一基体211における後端面215と、第二ガイド部材220の第二基体221における前端面225とが当接する。すなわち、第一ガイド部材210の後端面215が、第二ガイド部材220の回動を停止させる回動ストッパとして機能する。従って、ベース部材130及びコラム部120の重量、及び、運転者の操作によってコラム部120に与えられる下向きの外力による、第二ガイド部材220のさらなる回動が規制される。つまり、ステアリング装置100の通常の使用時における、コラム部120の安定的な支持のためのガイド部材200の剛性及び強度が確保される。
【0039】
ベース部材130は、第二ガイド部材220上に到達した後に、第二ガイド部材220における所定の後端位置で停止する。本実施の形態では、図9に示すように、ベース部材130の後端(進行方向の前端)が、第二ガイド部材220が有する第二レール222の後端に到達したときにベース部材130が停止する。具体的には、送りねじ145の後端部に移動ストッパ146(図6参照)が配置されており、移動ストッパ146に、ベース部材130のナット134が当接することで、ベース部材130が停止する。駆動装置140を制御する制御装置(図示せず)は、ベース部材130が停止することによる移動用アクチュエータ141の負荷トルクの増加を検出することで、移動用アクチュエータ141の動作を停止させる。ベース部材130を停止させる手法はこれに限定されず、例えば、ベース部材130の位置を検出するセンサの検出結果に基づいて、制御装置が駆動装置140を制御することで、ベース部材130を停止させてもよい。
【0040】
上記一連の動作によって、コラム部120は、運転者が操作部材110を操作するための通常位置まで進出する。具体的には、図9に示すように、X軸方向において、コラム部120の格納位置をP1とし、コラム部120の通常位置をP2とした場合、コラム部120は、P2とP1との差分である距離Mだけ移動する。なお、図9に示す通常位置P2は、ベース部材130を、前後方向の可動範囲における後端に位置させた場合の軸部材121の先端位置であり、この通常位置P2は一定である必要はない。例えば、運転者の所定の操作に応じて、ベース部材130を、当該可動範囲の一部である調整範囲内で移動させることで、コラム部120の通常位置が変更されてもよい。つまり、コラム部120の移動距離Mは可変であってもよい。これにより、運転者が操作部材110を操作する際の操作部材110の前後方向の位置を、運転者の好みに応じて調整させることができる。この調整の際の、ベース部材130の調整範囲内における前後方向の移動は、コラム部120を格納位置と通常位置との間で移動させる場合と同じく、駆動装置140によって駆動することができる。ステアリング装置100はさらに、ステアリング装置100の上下方向の傾きを変化させるチルト機構部を備えてもよい。チルト機構部は、例えば、ガイド部材200の上下方向の傾きを変化させる。これにより、操作部材110の上下方向の位置を、運転者の意図に応じて調整することができる。
【0041】
本実施の形態では、コラム部120が固定されたベース部材130は、第一ガイド部材210において、一対の支持部材250である第一レール212と送りねじ145とによって支持されている。しかし、第二ガイド部材220は、第一ガイド部材210に対して回動するため、送りねじ145を、第二ガイド部材220に配置することはできない。そこで、第二ガイド部材220におけるベース部材130の安定的なガイド及び支持を実現するために、本実施の形態では、第二ガイド部材220に、第二レール222に加え、後部レール223が配置されている。つまり、ガイド部材200は、送りねじ145よりも後方に配置された後部レール223を有している。ベース部材130は、後部レール223に当接しながら移動する第二当接部材136を有している。第二当接部材136は、図6に示すように、ナット134よりも後方に配置されている。
【0042】
本実施の形態では、後部レール223は、第二ガイド部材220が展開姿勢である状態において、送りねじ145と同一直線上(送りねじ145の延長線上)に並ぶ位置に配置されている。つまり、ベース部材130が第一ガイド部材210にガイドされる位置にある場合、第二当接部材136は、送りねじ145と干渉し得る位置に配置されている。
【0043】
しかしながら、本実施の形態では、第二当接部材136は、図11に示すように、送りねじ145を非接触で貫通させる溝部136aを有している。より詳細には、溝部136aは、送りねじ145の周方向の全域において、送りねじ145と接触しないサイズ及び形状に形成されている。従って、上面視(Z軸プラス方向から見た場合)において、ベース部材130が、送りねじ145に重複する位置にある場合であっても、送りねじ145は第二当接部材136には接触せず、ナット134(図6参照)と接触(螺合)する。
【0044】
つまり、例えば図6図8または図11に示す位置にベース部材130が位置している場合、送りねじ145は、ナット134と螺合していることで、ベース部材130から受ける重量を支持し、かつ、ベース部材130に移動のための駆動力を与えることができる。この状態では、ベース部材130の第二当接部材136は、送りねじ145に接触しないため、ベース部材130の支持及び移動のガイド等の役割を担っていない。しかし、ベース部材130が後方(運転者側)に移動することで、展開姿勢である第二ガイド部材220上に到達した後は、図12に示すように、後部レール223が、第二当接部材136の溝部136aに挿入され、溝部136aが後部レール223に対して摺動する。つまり、第二当接部材136は、後部レール223にガイドされながら移動することができる。具体的には、後部レール223と送りねじ145との並び方向(図12におけるX軸方向)から見た場合、後部レール223の、溝部136aを貫通する部分の大きさは、送りねじ145の外径よりも大きい。そのため、後部レール223が溝部136aに挿入された場合、後部レール223の外面は、溝部136aに当接できる。
【0045】
第二当接部材136では、少なくとも、溝部136aを形成する摺動部136b(図12参照)が、後部レール223に対して低摩擦で摺動する樹脂材料で形成されている。これにより、第二当接部材136は、後部レール223に対して滑らかに摺動することができ、その結果、第二ガイド部材220におけるベース部材130の前後方向の移動は、安定してガイドされる。
【0046】
さらに、第二ガイド部材220が展開姿勢である状態において、第二ガイド部材220を起こすように(図9における反時計回りに回動するように)、第二ガイド部材220に、外力が作用した場合を想定する。この場合、第二ガイド部材220を回動させるためには、連結部材155によって第二ガイド部材220に連結された係合部材151も反時計回りに回動させる必要がある。しかし、第二ガイド部材220が展開姿勢である場合、例えば、係合部材151の回動中心であるピン153と、係合部材151及び連結部材155を回動可能に連結するピン154と、連結部材155及び第二ガイド部材220を回動可能に連結するピン156とはX軸方向に平行な直線上に並ぶ(図9参照)。従って、ベース部材130が移動中であって、第二ガイド部材220に乗るまでの間は、ローラ152が、連結部材155を上から押さえながら移動することで、連結部材155の反時計回りの移動を抑制できる。これにより、第二ガイド部材220の反時計回りの回動は抑制される。そして第二ガイド部材220にベース部材130が乗ってしまえば、コラム部120及びベース部材130の重量、並びに、第二ガイド部材220の自重によって、第二ガイド部材220の反時計回りの回動は抑制される。
【0047】
本実施の形態に係るステアリング装置100において、通常位置にあるコラム部120を格納位置まで移動させる場合、回動機構部150、ベース部材130及びガイド部材200の状態、位置、または姿勢は、図9図8、及び図7の順に遷移する。
【0048】
つまり、ベース部材130が、図9に示す位置から図7に示す位置まで戻る場合、ベース部材130に固定されたローラ152が、係合部材151に係合するまでは、第二ガイド部材220は展開姿勢のままである。ベース部材130に固定されたローラ152が係合部材151に係合した後は、駆動装置140の駆動力によってベース部材130がさらに前方(X軸マイナス方向)に移動することで、係合部材151は、初期の姿勢に戻るように(図8における反時計回りに)回動する。これにより、連結部材155は前方かつ上方に引き上げられ、これに伴って、第二ガイド部材220は反時計回りに回動する。その後、ベース部材130は、コラム部120が図7に示す格納位置に到達するまで移動して停止する。この状態では、係合部材151は初期の姿勢に戻っており、その結果、連結部材155によって係合部材151と連結された第二ガイド部材220は、図7に示すように格納姿勢で停止する。
【0049】
このように、第二ガイド部材220を回動させることによるガイド部材200の伸縮に、コラム部120の出退のための駆動装置140による駆動力が利用されている。従って、ガイド部材200の伸縮及びコラム部120の出退のための構成の簡素化が図られる。さらに、駆動装置140による駆動力は、ベース部材130及び回動機構部150を介して機械的に第二ガイド部材220に伝達される。そのため、例えば、ガイド部材200の伸縮とコラム部120の出退とのソフトウェアによる同期制御は不要である。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態に係るステアリング装置100は、軸部材121を有するコラム部120と、コラム部120が固定されたベース部材130と、ガイド部材200と、駆動装置140と、を備える。軸部材121は、操作部材110が接続されており、かつコラム部120において、回転可能に支持されている。ガイド部材200は、ベース部材130の、車両の前後方向への移動をガイドする。駆動装置140は、ベース部材130の前後方向への移動を駆動する。ガイド部材200は、ベース部材130の前後方向へ移動をガイドし、かつ、コラム部120が固定されたベース部材130の重量の少なくとも一部を支持する複数の支持部材250を有する。駆動装置140の一部は、複数の支持部材250のうちの1つの支持部材250を兼ねる。
【0051】
このように本実施の形態に係るステアリング装置100では、ベース部材130をガイド部材200にガイドさせながら前後方向に移動させることができる。これにより、ベース部材130に固定されたコラム部120を、例えば、運転者が操作部材110を操作するための通常位置と、通常位置よりも前方の所定の格納位置との間で移動させることができる。また、このようなコラム部120の移動を駆動する駆動装置140の一部が、ベース部材130の移動をガイドし、かつ、ベース部材130等の重量を支持する部材として機能する。これにより、コラム部120の安定的な出退のための機構を簡素化することができる。このように、本態様に係るステアリング装置100によれば、簡易な構成で運転者の前方空間を広げることができる。
【0052】
本実施の形態において、駆動装置140は、1つの支持部材250である送りねじ145を有し、送りねじ145を回転させることで、送りねじ145に螺合するナット134が固定されたベース部材130の前後方向の移動を駆動する。
【0053】
この構成によれば、送りねじ145を回転させることでベース部材130の移動を駆動する、という簡素な構成で、ベース部材130の重量を支持しながら、かつ、比較的に小さい駆動力によって前後方向に直動させることができる。また、逆効率が比較的に小さい送りねじ145を用いることで、ベース部材130を停止させた状態において、送りねじ145のロック機能によってベース部材130を安定的に固定することができる。
【0054】
本実施の形態において、ガイド部材200は、送りねじ145よりも後方に配置された後部レール223を有する。ベース部材130は、ナット134よりも後方に配置された当接部材である第二当接部材136を有する。第二当接部材136は、ベース部材130がガイド部材200にガイドされて移動する場合に、送りねじ145に干渉せず、かつ、ガイド部材200の後端部において後部レール223に当接しながら移動する。
【0055】
この構成によれば、コラム部120を運転者側に進出させるために、ベース部材130をガイド部材200の後端部まで移動させる場合、後部レール223に第二当接部材136が当接した状態で移動する。つまり、ガイド部材200の後端部において、送りねじ145が配置されていない範囲に後部レール223が配置されており、後部レール223が、ベース部材130の移動をガイドし、かつ、支持することができる。従って、運転者が操作部材110を操作する際には、ベース部材130はより安定的にガイド部材200に支持される。言い換えると、操作部材110が運転者に操作される場合におけるベース部材130の支持に十分な剛性をガイド部材200に持たせることができる。
【0056】
本実施の形態において、ガイド部材200は、車両に固定された第一ガイド部材210と、第一ガイド部材210の後端部に設けられた連結部218において連結された第二ガイド部材220とを有する。第一ガイド部材210には、1つの支持部材250を兼ねる、駆動装置140の一部(本実施の形態では送りねじ145)が配置されている。第二ガイド部材220は、連結部218において、第二ガイド部材220によるガイド方向が前後方向に沿う展開姿勢、及び、ガイド方向が前後方向に沿わない格納姿勢の一方から他方に切り替え可能に軸支されている。
【0057】
この構成によれば、第二ガイド部材220の回動によってガイド部材200の全長を伸縮させることができる。つまり、コラム部120を所定の位置に格納する場合は、第二ガイド部材220を格納姿勢にすることで、ガイド部材200の全長を縮めることができる。これにより、運転者の前方空間を広げることができる。さらに、格納姿勢の第二ガイド部材220を展開姿勢にすることで、ガイド部材200の全長を伸ばすことができ、これにより、運転者が操作部材110を操作する通常位置にコラム部120を進出させることができる。従って、例えば、多段のスライド構造(テレスコピック構造を含む)でコラム部120を出退させる機構に比べ、軽量化または構造の簡素化等が容易であり、かつ、コラム部120を、運転者に対する出退に必要な距離だけ移動させることができる。
【0058】
本実施の形態では、第一ガイド部材210は、前後方向に延在する第一レール212を有し、第二ガイド部材220は、展開姿勢である場合に前後方向に延在する姿勢となる第二レール222を有する。第二レール222は、図9に示すように、第一レール212と前後方向に離間する位置に配置されている。具体的には、本実施の形態では、第一レール212及び第二レール222は、ともにベース部材130の第一当接部材135をガイドするために、同一直線上に並べられる。さらに、第二レール222を有する第二ガイド部材220は、図7及び図8に示すように、第二レール222が配置された側に向けて(図7及び図8では上向きに)回動する。従って、第二ガイド部材220が展開姿勢である状態において、仮に、第二レール222と第一レール212とが連続して配置されている場合、第二レール222と第一レール212とが干渉することで、第二ガイド部材220は回動できない。そのため、図9に示すように、第一レール212と第二レール222との間には、第一レール212と第二レール222とが離間した空間部分である離間部201が存在する。第一レール212と第二レール222との間に離間部201が存在することで、第二ガイド部材220の、展開姿勢から格納姿勢への切り替えの際に、第一レール212及び第二レール222の端部同士が干渉することがない。
【0059】
その一方で、コラム部120を格納位置と通常位置との間で移動させる場合、ベース部材130の第一当接部材135の少なくとも一部は、離間部201を越える必要がある。そのため、第一レール212及び第二レール222それぞれの離間部201に対向する端部と第一当接部材135との干渉が問題となる。そこで、本実施の形態では、図9に示すように、第一当接部材135は比較的長く形成されており、これにより、ベース部材130が前後方向の移動範囲における後端(例えば通常位置)まで移動した場合であっても、第一レール212に当接する状態が維持される。つまり、コラム部120が最も運転者に近い位置まで移動した場合であっても、ベース部材130の第一当接部材135は、図9に示すように、離間部201をまたいで前後方向に連続して存在する。従って、例えばコラム部120が通常位置にある場合、第一レール212の後端部は、第一当接部材135の溝部135a(図13参照)から抜け出ておらず、溝部135aの内部に位置している。そのため、コラム部120を通常位置から格納位置に戻すためにベース部材130を前方に移動させた場合であっても、第一レール212の後端部と、第一当接部材135の溝部135aの前端開口135cの周縁との干渉が発生しない。つまり、当該干渉に起因する異音または振動の発生が抑制される。その結果、コラム部120のスムーズな移動が実現される。さらに、第一当接部材135が、離間部201をまたいで第一レール212と第二レール222とに当接していることで、第二ガイド部材220の、格納姿勢に戻る方向の回動が規制される。つまり、第二ガイド部材220が展開姿勢である状態において、第二ガイド部材220に、図9における反時計回りに回動するように外力が作用した場合、第一当接部材135によって、第二ガイド部材220の反時計回りの回動を規制することができる。
【0060】
より詳細には、本実施の形態に係るステアリング装置100では、第一レール212及び第二レール222に、第一当接部材135と干渉することによる異音または振動の発生を、より確実に抑制するための先細り部が設けられている。本実施の形態では、第二レール222が有する第二先細り部222aは、第一レール212に近づくほど、一定の割合(傾斜)で外径が小さくなるように形成されており、つまり、側面視において台形となる形状に形成されている。この構成によれば、ベース部材130に固定された第一当接部材135を、第二レール222に当接する位置まで進行させた場合、第二レール222の前端部は、第二先細り部222aに案内されることで、スムーズに第一当接部材135における溝部135aの後端開口135bに挿入される。これにより、第二レール222の前端部と第一当接部材135とが干渉することによる異音または振動の発生がより確実に抑制される。
【0061】
本実施の形態ではさらに、第一レール212にも先細り部が設けられている。第一先細り部212aの、第一レール212の延在方向における長さLaは、第二レール222が有する先細り部である第二先細り部222aの、第二レール222の延在方向における長さLbよりも短い。本実施の形態に係る第一先細り部212aは、第二先細り部222aと同様に、第二レール222に近づくほど、一定の割合(傾斜)で外径が小さくなるように形成されており、つまり、側面視において台形となる形状に形成されている。
【0062】
この構成によれば、例えば長尺状の第一当接部材135が、長手方向に並ぶ複数の部材で形成されている場合、隣り合う2部材間に生じる継ぎ目(段差)と第一レール212との干渉が抑制される。つまり、第一当接部材135の溝部135aに、継ぎ目(段差)等による凹または凸が存在する場合、当該凹または凸と、第一レール212の後端部の角とが干渉し、異音または振動が発生する可能性がある。しかしながら、本実施の形態では、第一レール212の後端部には第一先細り部212aが設けられているため、第一レール212の後端部は、スムーズに当該凹または凸を乗り越えることができる。また、仮に、第一当接部材135が、前後で離間して配置された2つの当接部材で構成された場合であっても、第一レール212の後端部が、後方の当接部材の溝部に挿入される際に、第一先細り部212aに案内されることで、スムーズに当該溝部に挿入される。
【0063】
さらに、第一先細り部212aの長さLaは、第二先細り部222aの長さLbよりも短い。これにより、第一先細り部212aが第一当接部材135に接触しないことによるステアリング装置100の剛性の低下を抑制しつつ、第一当接部材135と第一レール212との干渉に起因する異音または振動が抑制される。
【0064】
第一先細り部212a及び第二先細り部222aの形状は、図13に示す形状には限定されず、例えば、半球状または角が丸められた形状(R形状)などの湾曲形状を有してもよい。つまり、第一先細り部212a及び第二先細り部222aの一方は、他方に近づくほど外径が小さくなる形状であれば、各種の形状が採用され得る。
【0065】
[4.変形例]
以上、本発明に係るステアリング装置について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したもの、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
例えば、コラム部120が固定されたベース部材130の移動をガイドし重量を支持する支持部材250の数は3以上であってもよい。例えば、それぞれが支持部材250である2つの第一レール212を、互いに平行な姿勢でかつY軸方向に離間して第一基体211上に配置し、その2つの第一レール212の間に、これら2つの第一レール212と平行な姿勢で、送りねじ145を配置してもよい。この場合、ベース部材130における送りねじ145に対応する位置にナット134が固定されていればよい。つまり、ガイド部材200に3つの支持部材250を設けた場合、送りねじ145が、当該3つの支持部材250の内の1つの支持部材250を兼ねてもよい。
【0067】
ガイド部材200における第二ガイド部材220の回動方向及び回動角度は、図2図9に示す回動方向及び回動角度には限定されない。格納姿勢における第二ガイド部材220と第一ガイド部材210とのなす角は、図2及び図4に示すように、90°である必要はなく、90°よりも大きくてもよく、90°よりも小さくてもよい。例えば、ダッシュボード400に対するステアリング装置100の取り付け姿勢等に応じて、格納姿勢における第一ガイド部材210または車両に対する角度を決定してもよい。第二ガイド部材220は、コラム部120が格納位置(図4参照)にある場合、展開姿勢(図3参照)から、コラム部120の配置側とは反対方向(本実施の形態では下方)に向けて回動することで、格納姿勢に切り替えられてもよい。この場合であっても、第二ガイド部材220が回動することで、ステアリング装置100の全長を伸縮させることができる。
【0068】
ガイド部材200は伸縮しなくてもよい。ステアリング装置100が、例えば比較的に小型の車両に搭載される場合等において、操作部材110の出退時の移動距離が短い場合、ベース部材130を、長さが固定のガイド部材にガイドさせながら移動させてもよい。この場合であっても、駆動装置140の一部である送りねじ145等に、コラム部120が固定されたベース部材130の移動のガイド及び重量の支持を担わせることで、コラム部120の安定的な出退のための機構を簡素化することができる。
【0069】
ガイド部材200は、下方からコラム部120を支持するのではなく、例えば上方または側方(車両の幅方向)からコラム部120を支持してもよい。つまり、ステアリング装置100は、図4及び図5に示す姿勢とは上下が逆の姿勢で車両に取り付けられてもよく、図4及び図5に示す姿勢からX軸周りに90°回転させて姿勢で車両に取り付けられてもよい。いずれの場合であっても、駆動装置140の一部である送りねじ145に、コラム部120が固定されたベース部材130の重量の少なくとも一部を支持する支持部材250を兼ねさせることができる。さらに、第二ガイド部材220が回動することで、ステアリング装置100の全長を伸縮させることができる。
【0070】
駆動装置140は、送りねじ方式とは異なる方式によってベース部材130の移動を駆動してもよい。駆動装置140は、例えば、ベース本体131の下面に固定された棒体の伸縮または前後方向の移動によってベース部材130の前後方向の移動を駆動してもよい。この場合であっても、当該棒体を、ベース部材130の移動のガイド及び重量の支持を行う支持部材として機能させることができる。
【0071】
ベース部材130は、コラム部120と別体である必要はない。例えば、コラム部120が備える反力発生装置125が台座を有する場合、その台座が、ガイド部材200にガイドされながら前後方向に移動するベース部材130として機能してもよい。
【0072】
ベース部材130が有する第一当接部材135は、第一レール212及び第二レール222に対して摺動することは必須ではない。第一当接部材135は、例えば第一レール212及び第二レール222に当接しながら転動するローラ(車輪)を有してもよい。この場合であっても、第一当接部材135は、第一レール212及び第二レール222に当接しながら低摩擦で移動することができる。ベース部材130が有する第二当接部材136も同様であり、後部レール223に当接しながら転動するローラ(車輪)を有してもよい。
【0073】
回動機構部150は、図7図9とは異なる構造で第二ガイド部材220を回動させてもよい。例えば、回動機構部150は、駆動装置140から独立した駆動源(モータ等)を有し、その駆動源を用いて第二ガイド部材220の展開姿勢と格納姿勢との切り替えを行ってもよい。つまり、第二ガイド部材220の回動に、コラム部120の出退のための駆動力を利用することは必須ではない。
【0074】
第二ガイド部材220が有する後部レール223は、送りねじ145の延長線上に配置されなくてもよい。後部レール223を、送りねじ145の延長線上に配置しないことで、例えば、第二当接部材136に、送りねじ145との干渉を避けるための、溝部136aのような比較的に大きな内径の溝部(貫通孔)を設ける必要がない。従って、第二当接部材136のX軸方向に直交する断面の形状を、第一当接部材135のX軸方向に直交する断面の形状と共通化することができる。これにより、例えば、第二当接部材136の移動をガイドする後部レール223と、第一当接部材135の移動をガイドする第二レール222とを同一種類の部品で実現することができる。
【0075】
ガイド部材200は、第一ガイド部材210と第二ガイド部材220とに加え、第二ガイド部材220の後端部に接続されかつ、第二ガイド部材220に対して回動可能な第三ガイド部材を有してもよい。つまり、ガイド部材200は、ガイド方向における途中に、折り曲げ(または折り畳み)可能な箇所が2以上設けられていてもよい。これにより、ガイド部材200の全長の変化量(伸縮可能長さ)をさらに増加させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、運転者の前方空間を広げることができるステアリング装置として有用である。従って、手動運転が可能であり、かつ自動運転が可能な乗用車、バス、トラック、農機、建機など、車輪または無限軌道などを備えた車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
10:ステアリングシステム、100:ステアリング装置、102:転舵機構部、110:操作部材、120:コラム部、121:軸部材、125:反力発生装置、130:ベース部材、131:ベース本体、134:ナット、135:第一当接部材、135a,136a:溝部、135b:後端開口、135c:前端開口、136:第二当接部材、136b:摺動部、140:駆動装置、141:移動用アクチュエータ、142:伝達機構部、145:送りねじ、146:移動ストッパ、149:接続部材、150:回動機構部、151:係合部材、152:ローラ、153,154,156:ピン、155:連結部材、200:ガイド部材、201:離間部、210:第一ガイド部材、211:第一基体、212:第一レール、212a:第一先細り部、215:後端面、218:連結部、218a:軸支部材、220:第二ガイド部材、221:第二基体、222:第二レール、222a:第二先細り部、223:後部レール、225:前端面、250:支持部材、400:ダッシュボード、410:内部空間、500:運転者、710:転舵輪、711:タイロッド、730:軸体、750:転舵用アクチュエータ
図1
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