(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191709
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】コンクリート混和材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 18/10 20060101AFI20221221BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20221221BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C04B18/10 A
C04B18/08 Z ZAB
C04B20/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100095
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(71)【出願人】
【識別番号】521205906
【氏名又は名称】社会環境イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】加納 純也
(72)【発明者】
【氏名】岩城 一郎
(72)【発明者】
【氏名】畑中 貢
(57)【要約】
【課題】石炭ガス化スラグをフライアッシュと同様の混和材として利用する。
【解決手段】第1工程S101で、石炭ガス化複合発電で用いるガスを作製する石炭ガス化炉で、ガスの生成の副産物として発生する石炭ガス化スラグを準備し、第2工程S102で、石炭ガス化スラグを粉砕して微粉としたコンクリート混和材を作製する。第2工程S102では、例えば、微粉の粒径を0.1μm以上300μm未満としてコンクリート混和材とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をガス化するための石炭ガス化炉で、副生成物として生成した石炭ガス化スラグを準備する第1工程と、
前記石炭ガス化スラグを粉砕して微粉としたコンクリート混和材を作製する第2工程と
を備えるコンクリート混和材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリート混和材の製造方法において、
前記第2工程は、前記微粉の粒径を0.1μm以上300μm未満とすることを特徴とするコンクリート混和材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート混和材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントと骨材とを混合したコンクリートの多くは、鉄筋との複合材料である鉄筋コンクリートに用いられている。コンクリートは、熱膨張率が鉄筋とほぼ等しく、圧縮に耐えるコンクリートと、引っ張りに耐える鉄筋との組み合わせは、力学特性上有利である。また、コンクリートおよび鉄筋は、ともに原材料が廉価である。このため、鉄筋コンクリートは、建設材料や土木材料として広く用いられている。また、自然環境下では腐食しやすい鉄筋を、アルカリ性のコンクリートで防護して錆を防ぐことも、コンクリートの役割の1つとなっている。このように、広く用いられているコンクリートは、セメント、骨材、水、および混和材などの各材料を、各々所定の配合比で配合して練混ぜして作製している。
【0003】
ところで、骨材として海砂が多く使用されているが、近年、生態系への影響や環境保全の観点などから、海砂の採取禁止や採取規制の強化が進められている。このため、近年、海砂に代わる良質な材料として、微粉砕した石炭を燃焼させたことにより発生する石炭灰(フライアッシュ)が、骨材補充混和材として用いられている。フライアッシュを用いると、コンクリートの施工時の流動性が増大するという利点がある。
【0004】
また、よく知られているように、フライアッシュをコンクリート混和材として用いることで、コンクリートの長期強度の増進、乾燥収縮の減少、アルカリシリカ反応の抑制、水和熱の減少、水密性の向上などの様々な効果が得られるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年使用できる石炭の品質の低下に伴い、現在発生するフライアッシュの中で、コンクリート混和材として利用できるものは、5%程度しか得られていない。一方、従来の石炭火力発電と比べ、発電効率が大幅に向上し、CO2排出量を抜本的に下げる技術として、石炭ガス化複合発電(IGCC)が注目されている。この発電に際して副産物として発生する石炭ガス化スラグが、コンクリートの骨材として用いられている。このスラグは、フライアッシュと同様の成分から構成されたものであるため、フライアッシュと同様の混和材として用いることが期待されている。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、石炭ガス化スラグをフライアッシュと同様の混和材として利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンクリート混和材の製造方法は、石炭をガス化するための石炭ガス化炉で、副生成物として生成した石炭ガス化スラグを準備する第1工程と、石炭ガス化スラグを粉砕して微粉としたコンクリート混和材を作製する第2工程とを備える。
【0008】
上記コンクリート混和材の製造方法の一構成例において、第2工程は、微粉の粒径を0.1μm以上300μm未満とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、石炭ガス化スラグを粉砕して微粉とするので、石炭ガス化スラグをフライアッシュと同様の混和材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るコンクリート混和材の製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るコンクリート混和材の製造方法について
図1を参照して説明する。
【0012】
このコンクリート混和材の製造方法は、まず、第1工程S101で、石炭ガス化複合発電で用いるガスを作製する石炭ガス化炉で、ガスの生成の副産物として発生する石炭ガス化スラグを準備する。石炭ガス化スラグは、例えば粒径が1~2mmの粉末(粉体)である。石炭ガス化スラグは、石炭をガス化する過程で発生する副産物であり、SiO2、Al2O3、CaO、Fe2O3、K2Oなどから構成されている。
【0013】
次に、第2工程S102で、石炭ガス化スラグを粉砕して微粉としたコンクリート混和材を作製する。例えば、よく知られたボールミルなどの乾式の粉砕装置(技術)を用いることで、石炭ガス化スラグを粉砕して微粉とすることができる。第2工程S102では、例えば、微粉の粒径を0.1μm以上300μm未満としてコンクリート混和材とする。得られたコンクリート混和材は、セメント、骨材、AE剤、水などの一般的なコンクリートの材料(原料)に加え、各々所定の配合比で配合して練混ぜしてコンクリートとすることができる。このコンクリートは、JIS規格のフライアッシュを用いた場合と同等の性能が得られる。
【0014】
石炭ガス化スラグは、世界最先端の石炭ガス化複合発電から発生するものである。石炭ガス化複合発電は、今後、発展していくことから、多くの石炭ガス化スラグが出回ることが予想されているが、現在、石炭ガス化スラグは、粗骨材利用用途での研究にとどまっていた。これに対し、石炭ガス化スラグを粉砕して微粉としたコンクリート混和材は、現在中々手に入らないJIS規格のフライアッシュと同等の性能であり、非常に有意義である。また、乾式の粉砕技術で得られた材料(微粉)であれば、コンクリートを作製するときの配合を決める上で非常に扱いやすいことも特徴である。
【0015】
以上に説明したように、本発明によれば、石炭ガス化スラグを粉砕して微粉としたので、石炭ガス化スラグをフライアッシュと同様の混和材として利用することができるようになる。
【0016】
JIS規格フライアッシュは、近年使用できる石炭の品質の低下に伴い、現在発生するフライアッシュ中のわずか5%しか得られていない。JIS規格のフライアッシュは、高耐久性コンクリート用材料としてよく知られているが、上記のことにより殆ど手に入らない状況となっている。一方、コンクリートの寿命は一般に50年と言われているが、使用される環境で寿命は大きく異なる。50年持たない場所も多く存在し、2030年には建設後50年を超えるインフラの割合が50%を超え、深刻な状況にある。また、コンクリートの点検は近接目視が基本であり、維持管理には非常に人的負担が大きい。高耐久性コンクリートを製造することはコンクリートの長寿命化につながり、上記の問題を解決する大きな要素になるため、本発明は、非常に意義のあることであると考えられる。
【0017】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。