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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191717
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】電源回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20221221BHJP
   H02H 9/04 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G05F1/56 310K
H02H9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100109
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安坂 信
【テーマコード(参考)】
5G013
5H430
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013AA04
5G013AA16
5G013BA02
5G013DA05
5G013DA10
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE06
5H430EE17
5H430EE18
5H430FF01
5H430FF12
5H430GG01
5H430HH03
5H430JJ07
(57)【要約】
【課題】低耐圧デプレッション型NMOSFETを使用しつつ効果的な構成を実現する。
【解決手段】電源回路(1)は、デプレッション型NMOSFET(1D)と、前記デプレッション型NMOSFETの第1端に接続される第1端と、入力電圧(VIN)の印加端に接続可能に構成される第2端と、を含むエンハンスメント型NMOSFET(1C)と、前記入力電圧の印加端と前記デプレッション型NMOSFETの第2端との間に接続可能に構成されるスイッチ(1E)と、前記入力電圧と所定電圧との大小関係に応じて前記スイッチのオンオフを切り替える切替え制御部(1A)と、前記入力電圧に応じたクランプ出力電圧(Vclp)を前記デプレッション型NMOSFETの制御電極に印加させるクランプ回路(1B)と、を有し、前記クランプ回路は、前記入力電圧の上昇に関わらず所定のクランプ電圧にクランプした前記クランプ出力電圧を出力可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デプレッション型NMOSFETと、
前記デプレッション型NMOSFETの第1端に接続される第1端と、入力電圧の印加端に接続可能に構成される第2端と、を含むエンハンスメント型NMOSFETと、
前記入力電圧の印加端と前記デプレッション型NMOSFETの第2端との間に接続可能に構成されるスイッチと、
前記入力電圧と所定電圧との大小関係に応じて前記スイッチのオンオフを切り替える切替え制御部と、
前記入力電圧に応じたクランプ出力電圧を前記デプレッション型NMOSFETの制御電極に印加させるクランプ回路と、
を有し、
前記クランプ回路は、前記入力電圧の上昇に関わらず所定のクランプ電圧にクランプした前記クランプ出力電圧を出力可能に構成される、電源回路。
【請求項2】
前記クランプ回路は、共通の前記クランプ出力電圧を前記デプレッション型NMOSFETの制御電極と前記エンハンスメント型NMOSFETの制御電極に印加させる、請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記クランプ回路は、前記入力電圧の印加端と電気的に接続可能に構成される第1端と、グランドの印加端に接続可能に構成される第2端と、を含む第1ツェナーダイオードを有し、
前記第1ツェナーダイオードの第1端は、前記デプレッション型NMOSFETの制御電極と前記エンハンスメント型NMOSFETの制御電極とに共通接続される、請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記クランプ回路は、別々の前記クランプ出力電圧を前記デプレッション型NMOSFETの制御電極と前記エンハンスメント型NMOSFETの制御電極に印加させる、請求項1に記載の電源回路。
【請求項5】
下記を満たす請求項4に記載の電源回路。
Vclamp1-Vth1>Vclamp2-(-Vth2)
Vclamp1:前記エンハンスメント型NMOSFETの制御電極に印加させる前記クランプ出力電圧のクランプ電圧、Vclamp2:前記デプレッション型NMOSFETの制御電極に印加させる前記クランプ出力電圧のクランプ電圧、Vth1:前記エンハンスメント型NMOSFETの閾値電圧、-Vth2:前記デプレッション型NMOSFETの閾値電圧。
【請求項6】
前記クランプ回路は、
第1ツェナーダイオードと、
NMOSFETと、を含み、
前記第1ツェナーダイオードの第1端は前記デプレッション型NMOSFETの制御電極に接続され、第2端はグランドの印加端に接続可能に構成され、
前記NMOSFETの第1端は前記第1ツェナーダイオードの第1端に接続され、第2端は前記入力電圧の印加端に電気的に接続可能に構成され、制御電極は前記NMOSFETの第2端と短絡され、かつ前記エンハンスメント型NMOSFETの制御電極に接続される、請求項4または請求項5のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項7】
前記切替え制御部は、前記入力電圧と前記所定電圧とを比較するコンパレータである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項8】
前記切替え制御部は、
第1抵抗と、
第2抵抗と、
第3抵抗と、
第2ツェナーダイオードと、
第1NMOSFETと、
第2NMOSFETと、
PMOSFETと、を有し、
前記第1抵抗の第1端は前記入力電圧の印加端に接続可能に構成され、前記第1抵抗の第2端は前記第2ツェナーダイオードの第1端に接続可能に構成され、
前記第2抵抗の第1端は前記第2NMOSFETの第2端に接続され、前記第2抵抗の第2端は前記入力電圧の印加端に接続可能に構成され、
前記第3抵抗の第1端は前記PMOSFETの第2端に接続され、前記第3抵抗の第2端は前記グランド電位の印加端に接続可能に構成され、
前記第1NMOSFETの第2端は前記第2ツェナーダイオードの第2端に接続され、制御電極は前記第1NMOSFETの第2端と短絡され、第1端はグランドの印加端に接続可能に構成され、
前記第2NMOSFETの第1端は前記グランドの印加端に接続可能に構成され、制御電極は前記第1NMOSFETの制御電極に接続され、
前記PMOSFETの第1端は前記入力電圧の印加端に接続可能に構成され、制御電極は前記第2NMOSFETの第2端と前記第2抵抗とが接続されるノードに接続され、
前記PMOSFETの第2端と前記第3抵抗とが接続されるノードは、前記スイッチの制御端に接続可能に構成される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高耐圧のIC(集積回路)製品では、IC内部の内部電源回路により低電圧を生成し、生成された低電圧を供給する回路を後段に設置する場合が知られている。その場合、上記回路(低耐圧回路)では低耐圧素子を使用できるようになり、その結果、回路規模を小さくすることができ、ICのチップサイズを小さくすることができる。
【0003】
IC内部に設ける上記内部電源回路は、上記低耐圧回路が正常に動作できる範囲で安定していれば十分であるため、クランプ回路等で簡単に構成する場合も多い。例えば、特許文献1には、デプレッション型のNMOSFET(Nチャネル型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor))を使用したクランプ回路の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-23912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなデプレッション型NMOSFETを使用したクランプ回路では、高耐圧のデプレッション型NMOSFETを使用する必要がある。しかしながら、通常、デプレッション型NMOSFETは、CMOSFETまたはDMOSFETほど種類が用意されず、高耐圧素子を用意できない場合も多い。その場合は、高耐圧IC製品において、デプレッション型NMOSFETを用いたクランプ回路を使用できない場合も多い。
【0006】
上記状況に鑑み、本開示は、低耐圧のデプレッション型NMOSFETを使用しつつ効果的な構成を実現できる電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本開示に係る電源回路は、
デプレッション型NMOSFETと、
前記デプレッション型NMOSFETの第1端に接続される第1端と、入力電圧の印加端に接続可能に構成される第2端と、を含むエンハンスメント型NMOSFETと、
前記入力電圧の印加端と前記デプレッション型NMOSFETの第2端との間に接続可能に構成されるスイッチと、
前記入力電圧と所定電圧との大小関係に応じて前記スイッチのオンオフを切り替える切替え制御部と、
前記入力電圧に応じたクランプ出力電圧を前記デプレッション型NMOSFETの制御電極に印加させるクランプ回路と、
を有し、
前記クランプ回路は、前記入力電圧の上昇に関わらず所定のクランプ電圧にクランプした前記クランプ出力電圧を出力可能に構成される。なお、上記構成において、上記第1端はソースに相当し、上記第2端はドレインに相当し、上記制御電極はゲートに相当する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電源回路によれば、低耐圧のデプレッション型NMOSFETを使用しつつ効果的な構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る電源回路の回路構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る電源回路の動作例を示すグラフである。
図3図3は、第2実施形態に係る電源回路の回路構成を示す図である。
図4図4は、第2実施形態に係る電源回路の動作例を示すグラフである。
図5図5は、第2実施形態に係る電源回路の別の動作例を示すグラフである。
図6図6は、第3実施形態に係る電源回路の回路構成を示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係る電源回路のより具体的な構成例を示す図である。
図8図8は、第2実施形態に係る電源回路のより具体的な構成例を示す図である。
図9図9は、第2実施形態の変形例を示す図である。
図10図10は、第1比較例に係る電源回路の回路構成を示す図である。
図11図11は、第1比較例に係る電源回路の動作を示すグラフである。
図12図12は、第2比較例に係る電源回路の回路構成を示す図である。
図13図13は、第2比較例に係る電源回路の動作を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1.比較例>
まず、本開示に係る例示的な実施形態について説明する前に、比較例について説明する。図10は、第1比較例に係る電源回路11の回路構成を示す図である。
【0011】
図10に示すように、電源回路11は、ツェナーダイオード11Aと、抵抗11Bと、エンハンスメント型NMOSFET11Cと、を有している。
【0012】
電源回路11は、高耐圧IC製品に設けられる内部電源回路であり、高電圧である入力電圧VINに基づき低電圧である出力電圧VREGを生成し、生成された出力電圧VREGを後段側の低耐圧回路110に供給する。なお、これは、本明細書中の他の電源回路についても同様である。
【0013】
抵抗11Bの一端は、入力電圧VINの印加端に接続される。抵抗11Bの他端は、ツェナーダイオード11Aのカソードに接続される。ツェナーダイオード11Aのアノードは、グランド電位の印加端に接続される。抵抗11Bとツェナーダイオード11Aとが接続されるノードN11は、エンハンスメント型NMOSFET11Cのゲートに接続される。エンハンスメント型NMOSFET11Cのドレインは、入力電圧VINの印加端に接続される。エンハンスメント型NMOSFET11Cのソースに出力電圧VREGが生成される。
【0014】
図11は、上記のような図10に示す電源回路11の動作を示すグラフである。図11に示すグラフでは、VIN(横軸)の上昇に対するVIN(縦軸)の挙動と、VIN(横軸)の上昇に対するVREG(縦軸)の挙動を示している。
【0015】
入力電圧VINが0Vから上昇する場合、ノードN11(ツェナーダイオード11Aのカソード)の電圧がツェナーダイオード11Aのツェナー電圧Vzに達するまでは、ツェナーダイオード11Aはオフ状態であるため、ノードN11の電圧は入力電圧VINと一致する。このとき、出力電圧VREG=VIN-Vthとなる(Vth:エンハンスメント型NMOSFET11Cの閾値電圧(Vgsの閾値電圧))。従って、図11に示すように、VREGは、VINよりもVthだけ低い電圧で上昇する。
【0016】
そして、ノードN11の電圧がツェナー電圧Vzに達すると、以降は入力電圧VINが上昇してもノードN11の電圧はツェナー電圧Vzで一定となる。従って、図11に示すように、出力電圧VREGは、VREG=Vz-Vthでクランプされて一定となる。
【0017】
上記のような電源回路11は、高耐圧のエンハンスメント型NMOSFET11Cを使用したクランプ回路により構成される。しかしながら、このようなクランプ回路では、回路構成上、VIN-Vth以下のVREGしか生成することができない。その結果、VINの減電時に低耐圧回路110が動作するための最低動作電圧の条件が厳しくなってしまう。
【0018】
例えば、低耐圧回路110の最低動作電圧が3V、エンハンスメント型NMOSFET11CのVth=1Vとした場合、IC全体としてはVIN=3V+1V=4Vが最低動作電圧となってしまう。
【0019】
このような課題を解消するために、図12に示すような第2比較例に係る電源回路12を構成することが考えられる。電源回路12の先述した電源回路11との構成上の相違点は、エンハンスメント型NMOSFET11Cの代わりに、デプレッション型NMOSFET12Cを用いたことである。
【0020】
図13は、図12に示す電源回路12の動作を示すグラフである。図13に示すグラフでは、VIN(横軸)の上昇に対するVIN(縦軸)の挙動と、VIN(横軸)の上昇に対するVREG(縦軸)の挙動を示している。
【0021】
入力電圧VINが0Vから上昇する場合、ノードN12(ツェナーダイオード12Aのカソード)の電圧がツェナーダイオード12Aのツェナー電圧Vzに達するまでは、ツェナーダイオード12Aはオフ状態であるため、ノードN12の電圧は入力電圧VINと一致する。このとき、出力電圧VREGはVINと一致する(VINに張り付く)。
【0022】
そして、ノードN12の電圧がツェナー電圧Vzに達すると、以降は入力電圧VINが上昇してもノードN12の電圧はツェナー電圧Vzで一定となる。従って、図13に示すように、出力電圧VREGは、VREG=Vz-(-Vth)でクランプされて一定となる(-Vth:デプレッション型NMOSFET12Cの閾値電圧)。VINがVzに達してからVz-(-Vth)に達するまでの間は、VREGはVINと一致する。
【0023】
このような電源回路12であれば、VREGはVINに追従する挙動となるため、低耐圧回路120の最低動作電圧≒VINの最低動作電圧となり、第1比較例のような課題は解消される。しかしながら、電源回路12の構成では、デプレッション型NMOSFET12Cを高耐圧素子により構成する必要があるが、通常、高耐圧のデプレッション型NMOSFETを用意できない場合も多い。
【0024】
<2.第1実施形態>
以下、上記のような課題を解消すべく考案された本開示の例示的な実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る電源回路1の回路構成を示す図である。
【0025】
図1に示すように、電源回路1は、コンパレータ1Aと、クランプ回路1Bと、エンハンスメント型NMOSFET1Cと、デプレッション型NMOSFET1Dと、PMOSFET(Pチャネル型MOSFET)1Eと、を有している。
【0026】
コンパレータ1Aの非反転入力端(+)には、入力電圧VINが印加される。コンパレータ1Aの反転入力端(-)には、基準電圧VREFが印加される。コンパレータ1Aの出力端は、PMOSFET1Eのゲートに接続される。これにより、コンパレータ1Aは、入力電圧VINと基準電圧VREFとの比較結果をPMOSFET1Eのゲートに出力する。入力電圧VINが基準電圧VREFよりも低い場合は、コンパレータ1Aの出力はローレベルであり、入力電圧VINが基準電圧VREF以上の場合は、コンパレータ1Aの出力はハイレベルである。コンパレータ1Aは、入力電圧VINと基準電圧VREF(所定電圧)との大小関係に応じて、スイッチとしてのPMOSFET1Eのオンオフを切り替える切替え制御部として機能する。
【0027】
なお、コンパレータ1Aには、必ずしも入力電圧VINを直接入力させなくてもよい。例えば、入力電圧VINを抵抗により分圧した電圧をコンパレータ1Aに入力させてもよい。
【0028】
PMOSFET1Eのソースは、入力電圧VINの印加端に接続される。PMOSFET1Eのドレインは、ノードNAでデプレッション型NMOSFET1Dのドレインに接続される。エンハンスメント型NMOSFET1Cのドレインは、入力電圧VINの印加端に接続される。エンハンスメント型NMOSFET1Cのソースは、ノードNBでデプレッション型NMOSFET1Dのソースに接続される。ノードNBは、低耐圧回路10に接続される。これにより、ノードNBに生成される出力電圧VREGが低耐圧回路10に供給される。
【0029】
クランプ回路1Bは、デプレッション型NMOSFET1Dのゲートとエンハンスメント型NMOSFET1Cのゲートに、共通のクランプ出力電圧Vclpを印加可能である。クランプ出力電圧Vclpは、入力電圧VINが上昇した場合に、所定のクランプ電圧Vclampにクランプされる。
【0030】
図2は、図1に示す電源回路1の動作を示すグラフである。図2の上段に示すグラフでは、VIN(横軸)の上昇に対するVIN(縦軸)の挙動と、VIN(横軸)の上昇に対するVREG(縦軸)の挙動を示している。図2の下段に示すグラフでは、VIN(横軸)の上昇に対するノードNAの電圧の挙動を示している。
【0031】
入力電圧VINが0Vから上昇する場合、入力電圧VINがPMOSFET1Eの閾値電圧Vth_pに達するまではPMOSFET1Eがオフ状態であるため、出力電圧VREGおよびノードNAの電圧は0Vである。
【0032】
そして、入力電圧VINが閾値電圧Vth_pに達すると、PMOSFET1Eがオン状態となり、出力電圧VREGおよびノードNAの電圧は入力電圧VINと一致する。クランプ回路1Bは、入力電圧VINがクランプ電圧Vclampに達するまでは、入力電圧VINと等しいクランプ出力電圧Vclpを出力する。これにより、入力電圧VINが上昇するときに、出力電圧VREGは入力電圧VINと一致する。このとき、VIN=VREGより、エンハンスメント型NMOSFET1Cはオフ状態である。
【0033】
そして、入力電圧VINがクランプ電圧Vclampに達すると、以降、クランプ回路1Bは、入力電圧VINの上昇に関わらずクランプ出力電圧Vclpをクランプ電圧Vclampで一定としてクランプする。入力電圧VINがクランプ電圧Vclampに達してからVIN=Vclamp-(-Vth2)(-Vth2:デプレッション型NMOSFET1Dの閾値電圧)に達するまでの間は、出力電圧VREGは入力電圧VINと一致する。入力電圧VINがVclamp-(-Vth2)に達すると、以降、入力電圧VINの上昇に関わらず、出力電圧VREGはVclamp-(-Vth2)で一定となる。すなわち、出力電圧VREGはクランプされる。
【0034】
そして、入力電圧VINが基準電圧VREFに達すると、コンパレータ1Aの出力がハイレベルに切り替わるため、PMOSFET1Eがオフ状態になる。すると、ノードNAの電圧は、デプレッション型NMOSFET1Dのバイアスにより出力電圧VREGとなる。また、エンハンスメント型NMOSFET1Cの制御により、出力電圧VREGは、VREG=Vclamp-Vth1(Vth1:エンハンスメント型NMOSFET1Cの閾値電圧)となる。Vclamp-Vth1<Vclamp-(-Vth2)である。
【0035】
本実施形態によれば、図2の下段に示すように、ノードNAの電圧(PMOSFET1Eがオン状態で入力電圧VINと等しい)がデプレッション型NMOSFET1Dの定格電圧VAに達する前にPMOSFET1Eをオフ状態に切り替えれば、デプレッション型NMOSFET1Dに定格電圧VA以上の電圧が印加されることはない。従って、デプレッション型NMOSFET1Dとして、低耐圧素子を用いることが可能となる。さらに、低耐圧回路10の最低動作電圧≒VINの最低動作電圧となり、第1比較例での課題も解消される。なお、エンハンスメント型NMOSFET1CとPMOSFET1Eには、高耐圧素子を用いる必要があるが、通常、高耐圧素子を用意できる場合が多い。
【0036】
なお、コンパレータ1Aにはヒステリシスを設けてもよい。これにより、入力電圧VINの変動による出力電圧VREGのチャタリングの発生を抑制できる。
【0037】
<3.第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係る電源回路2の回路構成を示す図である。図3に示すように、電源回路2は、コンパレータ2Aと、クランプ回路2Bと、エンハンスメント型NMOSFET2Cと、デプレッション型NMOSFET2Dと、PMOSFET2Eと、を有している。
【0038】
図3に示す電源回路2の第1実施形態との相違点は、クランプ回路2Bがエンハンスメント型NMOSFET2Cのゲートとデプレッション型NMOSFET2Dのゲートにそれぞれ別々の第1クランプ出力電圧Vclp1、第2クランプ出力電圧Vclp2を出力可能であることである。上記第1クランプ出力電圧Vclp1、第2クランプ出力電圧Vclp2には、それぞれ所定のクランプ電圧Vclamp1、Vclamp2を設定可能である。
【0039】
図4は、図3に示す電源回路2の動作の一例を示すグラフである。図4では、VIN(横軸)の上昇に対するVIN(縦軸)の挙動と、VIN(横軸)の上昇に対するVREG(縦軸)の挙動を示している。
【0040】
図3に示す構成であれば、図4に示すように、PMOSFET2Eのオンオフが切り替わる前後で出力電圧VREGは、VREG=Vclamp2-(-Vth2)、またはVREG=Vclamp1-Vth1となる。従って、クランプ電圧Vclamp1、Vclamp2それぞれの電圧値を調整することで、出力電圧VREGの切り替わるときの変動を抑制することができる。
【0041】
また、図5は、図3に示す構成において、Vclamp1-Vth1>Vclamp2-(-Vth2)と設定した場合の挙動を示している。この場合、PMOSFET2Eがオン状態のときに(VIN<VREF)、VREG=Vclamp2-(-Vth2)となってから、Vclp1-Vth1がVclamp2-(-Vth2)を上回り、VREG=Vclamp1-Vth1となる。これにより、PMOSFET2Eのオンオフ切替え前後で出力電圧VREGの変動を無くすことができる。
【0042】
<4.第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る電源回路3の回路構成を示す図である。図6に示すように、電源回路3は、コンパレータ3Aと、クランプ回路3Bと、エンハンスメント型NMOSFET3Cと、デプレッション型NMOSFET3Dと、PMOSFET3Eと、LDO(Low Dropout)電源部3Fと、を有している。
【0043】
第1、第2実施形態ではエンハンスメント型NMOSFETのゲートには、クランプ回路からの出力を印加させていたが、本実施形態では、エンハンスメント型NMOSFET3Cを含むLDO電源部3Fを構成している。
【0044】
LDO電源部3Fは、エンハンスメント型NMOSFET3Cと、エラーアンプE1と、分圧抵抗R1,R2と、を有している。分圧抵抗R1,R2は、デプレッション型NMOSFET3Dのソースとエンハンスメント型NMOSFET3Cのソースとが接続されるノードN3と、グランド電位の印加端との間に直列に接続される。分圧抵抗R1とR2とが接続される接続ノードNrは、エラーアンプE1の反転入力端(-)に接続される。エラーアンプE1の非反転入力端(+)には、基準電圧VREF2が印加される。エラーアンプE1の出力端は、エンハンスメント型NMOSFET3Cのゲートに接続される。
【0045】
このような構成により、入力電圧VINが上昇してPMOSFET3Eがオンからオフに切り替えられると、LDO電源部3Fの動作によりノードN3に所望の出力電圧VREGが生成される。具体的には、出力電圧VREGが分圧抵抗R1,R2により分圧されてエラーアンプE1に入力される帰還制御により、ノードNrの電圧が基準電圧VREF2と一致するように制御される。
【0046】
<5.クランプ回路の第1実施例>
図7は、第1実施形態に係る電源回路1(図1)においてクランプ回路1Bの具体的な構成例を示す図である。図7に示す構成例では、クランプ回路1Bは、ツェナーダイオードDiと、定電流回路CIと、を有している。
【0047】
入力電圧VINの印加端とツェナーダイオードDiのカソードとの間に定電流回路CIが配置される。ツェナーダイオードDiのアノードは、グランドの印加端に接続される。ツェナーダイオードDiのカソードは、デプレッション型NMOSFET1Dのゲートとエンハンスメント型NMOSFET1Cのゲートに共通接続される。
【0048】
このような構成により、入力電圧VINが上昇する場合に、ツェナーダイオードDiのツェナー電圧にクランプされたクランプ出力電圧VclpがツェナーダイオードDiのカソードに生成され、デプレッション型NMOSFET1Dのゲートとエンハンスメント型NMOSFET1Cのゲートに印加される。
【0049】
このようなクランプ回路1Bの構成により、シンプルな構成を実現できる。なお、ツェナーダイオードDiは、例えばMOSFETまたはバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。また、定電流回路CIは、例えば抵抗などに置き換えてもよい。
【0050】
<6.クランプ回路の第2実施例>
図8は、第2実施形態に係る電源回路2(図3)においてクランプ回路2Bの具体的な構成例を示す図である。図8に示す構成例では、クランプ回路2Bは、ツェナーダイオードDiと、定電流回路CIと、NMOSFET2Fと、を有している。
【0051】
入力電圧VINの印加端とNMOSFET2Fのドレインとの間に定電流回路CIが配置される。NMOSFET2Fのドレインとゲートは短絡される。NMOSFET2Fのソースは、ツェナーダイオードDiのカソードに接続される。ツェナーダイオードDiのアノードは、グランドの印加端に接続される。NMOSFET2Fのゲートは、エンハンスメント型NMOSFET2Cのゲートに接続される。ツェナーダイオードDiのカソードとNMOSFET2Fのソースとが接続されるノードNzは、デプレッション型NMOSFET2Dのゲートに接続される。
【0052】
このような構成により、入力電圧VINが上昇する場合に、ツェナーダイオードDiのツェナー電圧Vzにクランプされたクランプ出力電圧Vclp2がノードNzに生成され、デプレッション型NMOSFET1Dのゲートに印加される。すなわち、クランプ電圧Vclamp2=Vzとなる。また、NMOSFET2Fのゲートに生成されるクランプ出力電圧Vclp1は、ツェナー電圧VzからNMOSFET2Fの閾値電圧Vth_mだけ高い電圧にクランプされ、エンハンスメント型NMOSFET2Cのゲートに印加される。すなわち、クランプ電圧Vclamp1=Vz+Vth_mとなる。
【0053】
なお、クランプ電圧Vclamp1は、NMOSFET2Fに限らず、例えば抵抗またはバイポーラトランジスタにより調整してもよい。
【0054】
<7.切替え制御部の変形例>
図9は、先述した図8に示す構成の電源回路2の変形例を示す図である。図9に示す構成では、PMOSFET2Eのオンオフを切り替える切替え制御部として、コンパレータ2Aの代わりに、切替え制御部20Aを用いている。
【0055】
切替え制御部20Aは、ツェナーダイオードDiと、抵抗R20,R21,R22と、NMOSFET201,202と、PMOSFET203と、を有している。
【0056】
抵抗R20の一端は、入力電圧VINの印加端に接続される。抵抗R20の他端は、ツェナーダイオードDiのカソードに接続される。ツェナーダイオードDiのアノードは、NMOSFET201のドレインに接続される。NMOSFET201のドレインとゲートは、短絡される。NMOSFET201のソースは、グランドの印加端に接続される。NMOSFET202のソースは、グランドの印加端に接続される。NMOSFET202のゲートは、NMOSFET201のゲートに接続される。NMOSFET202のドレインは、抵抗R21の一端に接続される。抵抗R21の他端は、入力電圧VINの印加端に接続される。PMOSFET203のソースは、入力電圧VINの印加端に接続される。PMOSFET203のゲートは、抵抗R21とNMOSFET202のドレインとが接続されるノードに接続される。PMOSFET203のドレインは、抵抗R22の一端に接続される。抵抗R22の他端は、グランドの印加端に接続される。PMOSFET203のドレインと抵抗R22の一端とが接続されるノードは、PMOSFET2Eのゲートに接続される。
【0057】
このような構成により、入力電圧VINが上昇してVz+Vth_m2(Vz:ツェナーダイオードDiのツェナー電圧、Vth_m2:NMOSFET201の閾値電圧)以上となると、NMOSFET202がオン状態に切り替わり、PMOSFET203がオン状態に切り替わり、PMOSFET2Eがオフ状態に切り替わる。すなわち、切替え制御部20Aは、入力電圧VINと所定電圧(Vz+Vth_m2)との大小関係に応じて、スイッチとしてのPMOSFET2Eのオンオフを切り替える。
【0058】
このような構成の切替え制御部20Aによれば、コンパレータに比べて、基準電圧源が不要であり、また、必要な素子数を削減できる。なお、切替え制御部20Aは、第1実施形態に適用してもよい。
【0059】
<8.その他>
以上、例示的な実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内において、実施形態は種々に変形が可能である。
【0060】
<9.付記>
以上のように、例えば、本開示に係る電源回路(1)は、
デプレッション型NMOSFET(1D)と、
前記デプレッション型NMOSFETの第1端に接続される第1端と、入力電圧(VIN)の印加端に接続可能に構成される第2端と、を含むエンハンスメント型NMOSFET(1C)と、
前記入力電圧の印加端と前記デプレッション型NMOSFETの第2端との間に接続可能に構成されるスイッチ(1E)と、
前記入力電圧と所定電圧との大小関係に応じて前記スイッチのオンオフを切り替える切替え制御部(1A)と、
前記入力電圧に応じたクランプ出力電圧(Vclp)を前記デプレッション型NMOSFETの制御電極に印加させるクランプ回路(1B)と、
を有し、
前記クランプ回路は、前記入力電圧の上昇に関わらず所定のクランプ電圧にクランプした前記クランプ出力電圧を出力可能に構成される(第1の構成、図1等)。なお、MOSFETの第1端はソースに相当し、第2端はドレインに相当し、制御電極はゲートに相当し、以下同様である。
【0061】
また、上記第1の構成において、前記クランプ回路(1B)は、共通の前記クランプ出力電圧(Vclp)を前記デプレッション型NMOSFET(1D)の制御電極と前記エンハンスメント型NMOSFET(1C)の制御電極に印加させる構成としてもよい(第2の構成、図1)。
【0062】
また、上記第2の構成において、前記クランプ回路(1B)は、前記入力電圧(VIN)の印加端と電気的に接続可能に構成される第1端と、グランドの印加端に接続可能に構成される第2端と、を含む第1ツェナーダイオード(Di)を有し、前記第1ツェナーダイオードの第1端は、前記デプレッション型NMOSFETの制御電極と前記エンハンスメント型NMOSFETの制御電極とに共通接続される構成としてもよい(第3の構成、図7)。なお、ツェナーダイオードの第1端はカソードに相当し、第2端はアノードに相当し、以下同様である。
【0063】
また、上記第1の構成において、前記クランプ回路(2B)は、別々の前記クランプ出力電圧(Vclp1,Vclp2)を前記デプレッション型NMOSFET(2D)の制御電極と前記エンハンスメント型NMOSFET(2C)の制御電極に印加させる構成としてもよい(第4の構成、図3)。
【0064】
また、上記第4の構成において、下記を満たしてもよい(第5の構成、図5)。
Vclamp1-Vth1>Vclamp2-(-Vth2)
Vclamp1:前記エンハンスメント型NMOSFETの制御電極に印加させる前記クランプ出力電圧のクランプ電圧、Vclamp2:前記デプレッション型NMOSFETの制御電極に印加させる前記クランプ出力電圧のクランプ電圧、Vth1:前記エンハンスメント型NMOSFETの閾値電圧、-Vth2:前記デプレッション型NMOSFETの閾値電圧。
【0065】
また、上記第4または第5の構成において、前記クランプ回路(2B)は、
第1ツェナーダイオード(Di)と、
NMOSFET(2F)と、を含み、
前記第1ツェナーダイオードの第1端は前記デプレッション型NMOSFET(2D)の制御電極に接続され、第2端はグランドの印加端に接続可能に構成され、
前記NMOSFETの第1端は前記第1ツェナーダイオードの第1端に接続され、第2端は前記入力電圧(VIN)の印加端に電気的に接続可能に構成され、制御電極は前記NMOSFETの第2端と短絡され、かつ前記エンハンスメント型NMOSFET(2C)の制御電極に接続される構成としてもよい(第6の構成、図8)。
【0066】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記切替え制御部は、前記入力電圧(VIN)と前記所定電圧(VREF)とを比較するコンパレータ(1A)である構成としてもよい(第7の構成、図1)。
【0067】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記切替え制御部(20A)は、第1抵抗(R20)と、第2抵抗(R21)と、第3抵抗(R22)と、第2ツェナーダイオード(Di)と、第1NMOSFET(201)と、第2NMOSFET(202)と、PMOSFET(203)と、を有する。
前記第1抵抗の第1端は前記入力電圧(VIN)の印加端に接続可能に構成され、前記第1抵抗の第2端は前記第2ツェナーダイオードの第1端に接続可能に構成される。
前記第2抵抗の第1端は前記第2NMOSFETの第2端に接続され、前記第2抵抗の第2端は前記入力電圧の印加端に接続可能に構成される。
前記第3抵抗の第1端は前記PMOSFETの第2端に接続され、前記第3抵抗の第2端は前記グランド電位の印加端に接続可能に構成される。
前記第1NMOSFETの第2端は前記第2ツェナーダイオードの第2端に接続され、制御電極は前記第1NMOSFETの第2端と短絡され、第1端はグランドの印加端に接続可能に構成される。
前記第2NMOSFETの第1端は前記グランドの印加端に接続可能に構成され、制御電極は前記第1NMOSFETの制御電極に接続される。
前記PMOSFETの第1端は前記入力電圧の印加端に接続可能に構成され、制御電極は前記第2NMOSFETの第2端と前記第2抵抗とが接続されるノードに接続される。
前記PMOSFETの第2端と前記第3抵抗とが接続されるノードは、前記スイッチ(2E)の制御端に接続可能に構成される構成としてもよい(第8の構成、図9)。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示は、例えば、ICに含まれる内部電源に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 電源回路
1A コンパレータ
1B クランプ回路
1C エンハンスメント型NMOSFET
1D デプレッション型NMOSFET
1E PMOSFET
2 電源回路
2A コンパレータ
2B クランプ回路
2C エンハンスメント型NMOSFET
2D デプレッション型NMOSFET
2E PMOSFET
3 電源回路
3A コンパレータ
3B クランプ回路
3C エンハンスメント型NMOSFET
3D デプレッション型NMOSFET
3E PMOSFET
3F LDO電源部
10,20,30 低耐圧回路
11 電源回路
11A ツェナーダイオード
11B 抵抗
11C エンハンスメント型NMOSFET
12 電源回路
12A ツェナーダイオード
12B 抵抗
12C デプレッション型NMOSFET
20A 切替え制御部
110 低耐圧回路
120 低耐圧回路
201,202 NMOSFET
203 PMOSFET
CI 定電流回路
Di ツェナーダイオード
E1 エラーアンプ
R1,R2 分圧抵抗
R20,R21,R22 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13