IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-パウチ 図1
  • 特開-パウチ 図2
  • 特開-パウチ 図3
  • 特開-パウチ 図4
  • 特開-パウチ 図5
  • 特開-パウチ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191721
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
   A61M 35/00 20060101AFI20221221BHJP
   B65D 75/58 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
B65D75/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100113
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浦川 直也
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】坂本 果穂
【テーマコード(参考)】
3E067
4C267
【Fターム(参考)】
3E067AA12
3E067AB77
3E067AB81
3E067AB83
3E067BA13A
3E067BB12A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067CA04
3E067CA07
3E067CA16
3E067CA24
3E067EA06
3E067EE59
3E067FB07
3E067FC01
3E067GD06
3E067GD08
4C267AA62
4C267AA64
4C267BB06
4C267BB13
4C267BB32
4C267CC01
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
(57)【要約】
【課題】薬液が含浸された液体保持シートを内容物として収納し、ピンセット等を使用することなく薬液の塗布が可能で、また意図しない部分に薬液の付着をさせることなく、必要な箇所への薬液の塗布が可能なパウチを提供することを課題とする。
【解決手段】パウチは内部に、内容物を収納可能かつ密封された空間を有しており、この空間に薬液が含浸された液体保持シートを収納可能であり、左右の側端部及びパウチ上辺でイージーピール可能にシールされており、胴部の下部において、ボトムフィルムが、左右の側端部がイージーピール可能にシールされており、ボトムフィルムの両端部には、ボトムフィルムを部分的に欠損させたポンス穴が形成され、易開封機構による開封予定線が設けてあり、ボトムフィルムのパウチ内部に面した部分には、薬液が含浸された液体保持シートが積層されていることを特徴とするパウチである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムを基材として、イージーピールにシール可能なシーラント層を有する積層フィルムからなる矩形のパウチであって、
パウチは前側胴部フィルム、後ろ側胴部フィルム、及びボトムフィルムから構成されており、
これらで囲まれたパウチ内部に、内容物を収納可能かつ密封された空間を有して、この空間に薬液が含浸された液体保持シートを収納するパウチであり、
前記前側胴部フィルムと前記後ろ側胴部フィルムは、シーラント層同士を対向させて重ねられ、左右の側端部及びパウチ上辺でイージーピール可能にシールされており、
胴部の下部において、前側胴部フィルムと後ろ側胴部フィルムとの間に、前記ボトムフィルムが中央の折り線で、シーラント層を外側にして二つ折りに折り込まれて、前記前側胴部フィルムと前記後ろ側胴部フィルムの間で、左右の側端部がイージーピール可能にシールされており、
パウチ下辺において、前側胴部フィルム及び後ろ側胴部フィルムと、前記ボトムフィルムとは接着されて、これらのシール部と接着部でパウチは密封されており、
前記ボトムフィルムの両端部には、ボトムフィルムを部分的に欠損させたポンス穴が形成され、
ポンス穴の部分では、前記前側胴部フィルムと前記後ろ側胴部フィルムの両側端部のシーラント層同士が直接シールされており、
また、前記表側胴部フィルムの両端からポンス穴の外側を囲んで、易開封機構による開封予定線が設けてあり、
前記ボトムフィルムのパウチ内部に面した部分には、薬液が含浸された液体保持シートが積層されていることを特徴とするパウチ。
【請求項2】
前記二つ折りに折り込まれたボトムフィルムの内側の対向する面の、左右両側端部にはシール可能なニスが塗布してあり、この部分がシールされていることを特徴とする、請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
前記積層フィルムには、ガスバリア層が積層されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のパウチ。
【請求項4】
前記前側胴部フィルムと前記後ろ側胴部フィルム間、及びそれらと前記ボトムフィルム間のピール強度は、1N/15mm~12N/15mmの範囲であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載のパウチ。
【請求項5】
前記液体保持シートの素材は、不織布であることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載のパウチ。
【請求項6】
前記液体保持シートと前記ボトムフィルムとの積層は、粘着剤を介して積層されていることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチに関するものである。特に外用薬液のパッケージで薬液塗布時に持ち手など、患部以外の部分に外用塗布薬の薬液が付着することなく、使用することができるパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パウチは、プラスチックフィルムあるいはその積層フィルムを用いた包装容器であって、例えば液体用の容器としても用いられ、飲料のほかレトルト食品などの食品分野でも広く用いられているほか、日用品やトイレタリーの分野でも、あるいは医療分野においても、さまざまな商品がスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアの商品棚をにぎわしている。
【0003】
パウチの利点は、缶や瓶などの容器に比べて、価格が安いことや、さまざまな要求品質に対してきめ細かい材料設計で対応できる点、あるいは内容物充填前、及び流通や保管においても軽量で省スペースであることが挙げられる。またパウチは、廃棄物を減らすという観点からも環境適応型の容器であるといえる。
【0004】
またパウチの外側から見える層への高精細の印刷によって、商品のイメージアップを図ることができ、内容物に関する必要な情報を表示することが可能であり、バーコードの印刷などは、商品の流通や在庫管理、マーケティング情報の源泉ともなっている。
【0005】
パウチの中には、自立性を持たせたものも商品化されており、一般にスタンディングパウチと呼ばれている。自立性を有することにより商品の展示、陳列などに利点を有するほか、使い勝手にも利点を有し、たとえば、内容物の取り出しにおいても一層の利便性が図られてきた。
【0006】
パウチからの内容物の取り出しは、一般的にパウチの一部を手指などで引き裂くか、刃物などを用いて切り裂くなどして、開口部を形成し開口部から取り出すことが可能である。この場合、内容物が液体であれば、内容液を注ぎ出して取り出すことができ、内容物が例えば菓子などの個体であれば、つまみ出して取り出すなどすることができる。
【0007】
そのほかにも、スパウトを装着するなどして、繰り返しの開閉を可能にしてあるパウチもあり、開封を容易にするための易開封機構を備えたパウチも利便性が高く、幅広く用いられている。
【0008】
また、特許文献1には、ウエットティッシュを密封したパウチの提案がなされている。これは、ウエットティッシュは不織布等の含浸基材にアルコール等の液体を含浸したもので、例えば手指をぬぐうために使用する。このためパウチからウエットティッシュを取り出す際には、手指でこれをつまんで取り出すことが一般的である。
【0009】
しかしながら、液体の中には手指で触れることに支障のあるものがある。例えばヨードチンキは着色しており、手指に付着した場合には付着部位の着色、あるいは着色を落とすことが容易ではなく不都合である。また医療用の液体の中には、例えば外用薬液などは、手指による接触、汚染を忌避するものもある。
【0010】
このように、手指でつまんで取り出すことができない場合には、液体を含浸した液体保持シートをピンセット等でつまんでパウチから取り出し、かつピンセット等でつまんだま
ま液体を塗布する。
【0011】
しかし、このようにピンセット等でつまんだ状態でパウチからの取り出し、塗布、廃棄に至るすべての作業を行うことは、煩雑である。またこのようにすべての作業をピンセット等でつまんだ状態で行おうとすると、不用意に意図しない部位に液体を付着させたり、飛散させる恐れもある。あるいはピンセット等から液体保持シートを落としてしまう恐れもあって、熟練を必要とする作業である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2019―189292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、薬液が含浸された液体保持シートを内容物として収納し、ピンセット等を使用することなく薬液の塗布が可能で、また意図しない部分に薬液の付着をさせることなく、必要な箇所への薬液の塗布が可能なパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
プラスチックフィルムを基材として、イージーピールにシール可能なシーラント層を有する積層フィルムからなる矩形のパウチであって、
パウチは前側胴部フィルム、後ろ側胴部フィルム、及びボトムフィルムから構成されており、
これらで囲まれたパウチ内部に、内容物を収納可能かつ密封された空間を有して、この空間に薬液が含浸された液体保持シートを収納するパウチであり、
前記前側胴部フィルムと前記後ろ側胴部フィルムは、シーラント層同士を対向させて重ねられ、左右の側端部及びパウチ上辺でイージーピール可能にシールされており、
胴部の下部において、前側胴部フィルムと後ろ側胴部フィルムとの間に、前記ボトムフィルムが中央の折り線で、シーラント層を外側にして二つ折りに折り込まれて、前記前側胴部フィルムと前記後ろ側胴部フィルムの間で、左右の側端部がイージーピール可能にシールされており、
パウチ下辺において、前側胴部フィルム及び後ろ側胴部フィルムと、前記ボトムフィルムとは接着されて、これらのシール部と接着部でパウチは密封されており、
前記ボトムフィルムの両端部には、ボトムフィルムを部分的に欠損させたポンス穴が形成され、
ポンス穴の部分では、前記前側胴部フィルムと前記後ろ側胴部フィルムの両側端部のシーラント層同士が直接シールされており、
また、前記表側胴部フィルムの両端からポンス穴の外側を囲んで、易開封機構による開封予定線が設けてあり、
前記ボトムフィルムのパウチ内部に面した部分には、薬液が含浸された液体保持シートが積層されていることを特徴とするパウチである。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、
前記二つ折りに折り込まれたボトムフィルムの内側の対向する面の、左右両側端部にはシール可能なニスが塗布してあり、この部分がシールされていることを特徴とする、請求項1に記載のパウチである。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、
前記積層フィルムには、ガスバリア層が積層されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のパウチである。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、
前記前側胴部フィルムと前記後ろ側胴部フィルム間、及びそれらと前記ボトムフィルム間のピール強度は、1N/15mm~12N/15mmの範囲であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載のパウチである。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、
前記液体保持シートの素材は、不織布であることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載のパウチである。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、
前記液体保持シートと前記ボトムフィルムとの積層は、粘着剤を介して積層されていることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載のパウチである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薬液が含浸された液体保持シートを内容物として収納し、ピンセット等を使用することなく薬液の塗布が可能で、また意図しない部分に薬液の付着をさせることなく、必要な箇所への薬液の塗布が可能なパウチの提供が可能である。
【0021】
すなわち、本発明によるパウチがプラスチックフィルムを基材として、イージーピールにシール可能なシーラント層を有する積層フィルムからなる矩形のパウチであることによって、耐水性を有し、したがって内容物に液体あるいは例えば液体保持シートを収納することが可能であり、イージーピール可能にシールされたシーラント層は、手指等で容易に剥離してパウチを開封することが可能である。
【0022】
パウチは前側胴部フィルム、後ろ側胴部フィルム、及びボトムフィルムから構成されており、これらで囲まれたパウチ内部に、内容物を収納可能かつ密封された空間を有していることによって、この空間に薬液が含浸された液体保持シートの安定した収納が可能である。
【0023】
本発明によるパウチの構成は、胴部の上部において、前側胴部フィルムと後ろ側胴部フィルムは、シーラント層同士を対向させて重ねられ、左右の側端部及び上辺でイージーピール可能にシールされている。また、胴部の下部において、前側胴部フィルムと後ろ側胴部フィルムとの間に、ボトムフィルムが中央の折り線で、シーラント層を外側にして二つ折りに折り込まれて、前側胴部フィルムと後ろ側胴部フィルムの、左右の側端部がイージーピール可能にシールされ、パウチ下辺において、前側胴部フィルム及び後ろ側胴部フィルムと、前記ボトムフィルムとは接着されて、これらのシール部と接着部でパウチは密封されている。
【0024】
このような構成であることによって、パウチ上部において、前側胴部と後ろ側胴部は、周縁部の剥離によって分離することができ、パウチ下部においては、前側胴部と後ろ側胴部はボトムフィルムとの剥離によって分離することが可能である。すなわちパウチは、前側胴部フィルムを大きく剥離して開口部を形成し、内容物の液体保持シートを露出させることが可能である。
【0025】
また、ボトムフィルムの両端部には、ボトムフィルムを部分的に欠損させたポンス穴が形成され、ポンス穴の部分では、前側胴部フィルムと後ろ側胴部フィルムの両側端部のシ
ーラント層同士が直接シールされていることによって、前側胴部フィルム、後ろ側胴部フィルム、及びボトムフィルムは、開封後もバラバラに分解することなく、この部分で重なった状態で一体化することができる。
【0026】
また、表側胴部フィルムの両端からポンス穴の外側を囲んで、易開封機構による開封予定線が設けてあることによって、ポンス穴の部分を迂回して、前側胴部の剥離、開封を行うことができ、前側胴部フィルム、後ろ側胴部フィルム、及びボトムフィルムは、開封後もバラバラに分解することなく、この部分で一体化したままの状態を保持することができる。
【0027】
ボトムフィルムのパウチ内部に面した部分には、薬液が含浸された液体保持シートが積層されていることによって、前側胴部フィルムを大きく剥離して開口部を形成し、内容物の液体保持シートを露出させることが可能である。
【0028】
また、胴部の下部において、前側胴部フィルムと後ろ側胴部フィルムとの間に、ボトムフィルムが中央の折り線で、シーラント層を外側にして二つ折りに折り込まれていることによって、この部分に手指を挿入可能な窪みが形成され、ボトムフィルムを薬液保持シートが積層されている側とは反対側から支持して、薬液が含浸された液体保持シートを押し付けて、薬液による手指の汚染や飛散を起こすことなく、被塗布物体に薬液を塗布することが可能である。
【0029】
また特に請求項2に記載の発明によれば、本発明によるパウチにおいて、二つ折りに折り込まれたボトムフィルムの内側の対向する面の、左右両側端部にはシール可能なニスが塗布してあり、この部分がシールされていることによって、ボトムフィルムの両端はシールされ、ポンス穴のみでパウチ下部を一体化させる場合に比べて、より強固に前側胴部フィルム、後ろ側胴部フィルム、及びボトムフィルムを、この部分で一体化した状態とすることができる。
【0030】
この場合には手指を挿入可能な窪みは、閉じた状態の袋状の窪みが形成されるため、薬液による手指の汚染の防止により一層効果的である。
【0031】
また特に請求項3に記載の発明によれば、積層フィルムには、ガスバリア層が積層されていることによって、内容物へのパウチ外側の環境からの影響を少なくし、内容物の劣化や変質を防止し、長期保存性を向上させることが可能である。また薬液の薬効成分の外部への散逸も防止することができる。
【0032】
また特に請求項4に記載の発明によれば、前側胴部フィルムと前記後ろ側胴部フィルム間、及びそれらと前記ボトムフィルム間のピール強度は、1N/15mm~12N/15mmの範囲であることによって、パウチの容易な開封性を損なうことなく、また輸送や取り扱いなど外力がかかる状況においても予期せぬ破袋や開封が発生することなく、実用上使い勝手の良いパウチとすることができる。
【0033】
また特に請求項5に記載の発明によれば、液体保持シートの素材は、不織布であることによって、内容物の薬液を十分に含ませた状態でパウチに収納することが可能である。また開封後に、塗布薬液を被塗布物体に塗布する際にも、不織布に含浸した状態であることによって、薬液の均一な塗布に効果的であり、利便性がより高いものとすることが可能である。
【0034】
また、特に請求項6に記載の発明によれば、液体保持シートと前記ボトムフィルムとの積層は、粘着剤を介して積層されていることによって、液体保持シートが、ボトムシート
に固定され、開封後に、塗布薬液を被塗布物体に塗布する際にも、容易な塗布が可能であって、利便性高いパウチとすることが可能である。あるいは、粘着剤層の粘着力を調整することによって、必要な場合には液体保持シートをボトムシートから分離することのできる構成にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明に係るパウチの一実施態様を説明するための、平面(一部斜視)模式図である。
図2図2は、本発明に係るパウチの他の実施態様を説明するための、平面(一部斜視)模式図である。
図3図3は、本発明に係るパウチの一実施態様において、その構成を説明するための、パウチ中央部の断面模式図である。
図4図4は、本発明に係るパウチの一実施態様において、その開封の様子を説明するための、パウチ中央部の断面模式図である。
図5図5は、本発明に係るパウチの一実施態様において、その開封の様子と、手指でボトムフィルムを介して一方の面の薬液の塗布をする様子を説明するための、パウチ中央部の断面模式図である。
図6図6は、本発明に係るパウチの一実施態様において、その開封の様子と、手指でボトムフィルムを介して、もう一方の面の薬液の塗布をする様子を説明するための、パウチ中央部の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を図1図6を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0037】
図1は、本発明に係るパウチの一実施態様を説明するための、平面(一部斜視)模式図である。
【0038】
本発明は、包装材料のひとつであるパウチに関するものである。このパウチ(100)は、プラスチックフィルムを基材として、イージーピールにシール可能なシーラント層を有する積層フィルムから構成される、矩形のパウチ(100)である。
【0039】
パウチ(100)は前側胴部フィルム(1)、後ろ側胴部フィルム(2)、及びボトムフィルム(3)の3つのパーツから構成されている。これらはシールによって製袋されている。このシール部はイージーピールにシールされて製袋されており、シール部は手指等を用いて容易に剥離可能である。
【0040】
また、パウチ(100)は、前側胴部フィルム(1)、後ろ側胴部フィルム(2)、及びボトムフィルム(3)で構成されており、これらで囲まれた内部に、内容物を収納可能で、かつ密封された空間を有しており、この空間に薬液が含浸された液体保持シート(4)を収納することができる。
【0041】
液体保持シート(4)はパウチ(100)内部にあって、パウチ(100)外側からは不可視であるが、図1に示す例において、パウチ(100)の中央部に破線で囲われ、網掛された部分として示してある。
【0042】
また、パウチ(100)は胴部の上部において、前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)は、シーラント層同士を対向させて重ねられ、左右の側端部(6)及びパウチ上辺(5)でイージーピール可能にシールされている。
【0043】
また、胴部の下部においては、前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)との間に、ボトムフィルム(3)が中央の折り線(7)で、シーラント層を外側にして二つ折りに折り込まれて、前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)の、左右の側端部がイージーピール可能にシールされ、パウチ下辺(8)において、前側胴部フィルム(1)及び後ろ側胴部フィルム(2)と、ボトムフィルム(3)とは接着されて、これら胴部の上部、及び下部の、シール部と接着部でパウチ(100)は製袋され、密封されている。
【0044】
但し、図1は、パウチを前側胴部フィルム(1)側から見た平面図であって、ボトムフィルム(3)は前側胴部フィルム(1)の向こう側に折りたたまれてあるため不可視であり、図1中において中央の折り線(7)が破線で示されている。
【0045】
ボトムフィルム(3)の両側の側端部(6)には、ボトムフィルム(3)を部分的に欠損させたポンス穴(9)が形成されており、ポンス穴(9)の部分では、前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)の両側の側端部(6)のシーラント層同士が直接シールされて、ポンス穴(9)及びその周辺では、前側胴部フィルム(1)、後ろ側胴部フィルム(2)、及びボトムフィルム(3)は重なって一体化している。
【0046】
また、表側胴部フィルム(1)の両端からポンス穴(9)の外側を囲んで、易開封機構による開封予定線(10)が設けてある。この開封予定線(10)は、前側胴部フィルム(1)を剥離する際に、表側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)がシールされているポンス穴(9)の部分を迂回して、前側胴部フィルム(1)とボトムフィルム(3)とを、開封予定線(10)に沿って円滑に剥離することに効果的である。
【0047】
すなわち、開封予定線(10)は、パウチ(100)の周縁部がイージーピール可能にシールされ製袋された状態で、パウチ(100)を開封するにあたって、前側胴部フィルム(1)と、後ろ側胴部フィルム(2)を剥離し、開封して内容物の液体保持シート(4)を露出させる際に、ポンス穴(9)で一体になっている部分を迂回して、剥離を妨げることなく、前側胴部フィルム(1)を容易に剥離して、パウチ(100)を大きく開封することを可能にする。
【0048】
また、開封予定線(10)の易開封機構は、その方式に特段の制約を設けるものではなく、例えばミシン目でもよく、ハーフカットによるものも可能であり、適宜選択することができる。
【0049】
ボトムフィルム(3)のパウチ(100)内部に面した部分には、薬液が含浸された液体保持シート(4)が積層されていることによって、パウチ(100)を開封して大きく開口部を形成し、薬液が含浸された液体保持シート(4)を露出させた際に、必要な箇所例えば、患部を治療するための薬液の塗布が可能になる。
【0050】
この薬液の塗布については、図1に示す例において、パウチ底部(12)に手指を挿入して、ボトムフィルム(3)を介して液体保持シート(4)を、被塗布物体に接触させて薬液を塗布することが可能である。この薬液の塗布の様子については、図5及び図6を用いて、更に詳細な説明を加える。
【0051】
図2は、本発明に係るパウチの他の実施態様を説明するための、平面(一部斜視)模式図である。
【0052】
図2に示す例は、二つ折りに折り込まれたボトムフィルム(3)の内側の対向する面の
、左右両側端部(13)にはシール可能なニスが塗布してあり、左右両側端部(13)がシールされている例である。
【0053】
この部分がシールされていることによって、前側胴部フィルム(1)、後ろ側胴部フィルム(2)、及びボトムフィルム(3)が重なって一体化している部分は、図2に示す左右両端部(13)の矩形全体となり、ポンス穴(9)による一体化部分より広くまた強固であるため、より強力に一体化することが可能である。
【0054】
すなわち図2に示す例は、パウチ(100)がパウチ底部(12)を外部からの入口として、ボトムフィルム(3)の左右両側端部(13)がシールされて、パウチ(100)下部に閉じた窪みを形成している例である。
【0055】
また、ボトムフィルム(3)に、図2に示す左右両端部(13)の矩形のシール部を設ける場合には、ポンス穴(9)及び開封予定線(10)はなくてもかまわない。仮に生産の都合などによって、ポンス穴(9)及び開封予定線(10)がこの位置にあっても、図1に示す例とパウチ(100)の剥離、開封に関する機能においては変わりなく、あっても構わない。
【0056】
ここで、本発明によるパウチ(100)を構成する各要素の材料に関して説明を加える。ここで説明を加える構成要素は、プラスチックフィルム、ガスバリア層、シーラント層、印刷層である。
【0057】
本発明によるパウチ(100)は、シーラント層を備えるプラスチックフィルムからなる。すなわち、基材としてプラスチックフィルムを用い、シーラント層を有する積層フィルムからなるものである。この積層フィルムには、保存性の向上などを目的としたガスバリア層を含むことができる。また、そのほかにも紫外線の遮断など、必要な機能を有する層を含むことができる。
【0058】
パウチ(100)を構成する積層フィルムに、ガスバリア層が積層されていることによって、内容物へのパウチ(100)外側の環境からの影響を少なくし、内容物の劣化や変質を防止し、長期保存性を向上させることが可能である。また薬液の薬効成分の外部への散逸も防止することができる。
【0059】
一般にプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、パウチの用途に応じて適宜選択される。
【0060】
特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルムとする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。そのほか延伸ポリアミドフィルムを用いる場合には、積層フィルムに突き刺しに対する強靭性や、衝撃に対する強靭性を付与することができる。
【0061】
またプラスチックフィルムは、接着剤層を介して他の層と積層して積層フィルムとすることができる。したがって積層フィルムの層構成やその材料構成、厚さなどは、パウチに対する要求品質に応じて適宜設計することができる。
【0062】
また、前述のように内容物の保存性を向上させることなどを目的として、パウチ(100)を構成する積層フィルム中に、ガスバリア層を設けることができる。たとえば、プラ
スチックフィルムの表面にガスバリア層を設けてなる、ガスバリアフィルムを用いることができる。
【0063】
またアルミニウムなどの金属箔や、金属蒸着膜もガスバリア層として有効ではあるものの、光学的には不透明であり、パウチ(100)の用途や内容物によって適宜選択して用いればよい。
【0064】
ガスバリアフィルムの場合には、用いられるプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルム基材とする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。
【0065】
ガスバリアフィルムの場合、ガスバリア層は無機化合物の蒸着層、及びウエットコーティング法による層で構成することができ、プラスチックフィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、ウエットコーティング層を順次設ける。
【0066】
ガスバリアフィルムのアンカーコート層には、例えばウレタンアクリレートを用いることができる。アンカーコート層の形成には、樹脂を溶媒に溶解した塗料をグラビアコーティングなど印刷手法を応用したコーティング方法を用いて塗膜形成するほか、一般に知られている他のコーティング方法を用いて塗膜形成することができる。
【0067】
蒸着層を形成する方法としては,SiOやAlOなどの無機化合物を真空蒸着法を用いて、アンカーコート層を設けたプラスチックフィルム上にコーティングし、真空蒸着法による無機化合物層を形成することができる。この層は、光学的に透明層である。ちなみに蒸着層の厚みは15nm~30nmが良い。
【0068】
この真空蒸着法による無機化合物層の上に、更にウエットコーティング法による層を形成することができ、その方法としては、水溶性高分子と、(a)一種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の、少なくともいずれかひとつを含む水溶液あるいは水/アルコール混合水溶液を主剤とするコーティング剤をフィルム上に塗布し、加熱乾燥してコーティング法による無機化合物層を形成しコーティング層とすることができる。このときコーティング剤にはシランモノマーを添加しておくことによってアンカーコート層との密着の向上を図ることができる。
【0069】
無機化合物層は真空蒸着法による層のみでもガスバリア性を有するが、ウエットコーティング法による無機化合物層を、真空蒸着法による無機化合物層に重ねて形成し、ガスバリア層とすることができる。
【0070】
これら2層の複合により、真空蒸着法による無機化合物層とウエットーティング法による無機化合物層との界面に両層の反応層を生じるか、或いはウエットコーティング法による無機化合物層が真空蒸着法による無機化合物層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成される。
【0071】
そのため、ガスバリアフィルムとしてより高いガスバリア性、耐湿性、耐水性を実現するとともに、外力による変形に柔軟に耐えられる可撓性を有するため、包装材料としての適性も具備することができる。
【0072】
またガスバリア層として、たとえばSiOを用いる場合にはその被膜は透明であるために、内容物をパウチ(100)の外側から目で見ることが可能である。これらは、用途、要求品質によって適宜使い分けをすればよい。また、パウチ(100)に印刷層を設ける場合でも、一部に印刷層を設けない部分を残しておくことによって、この部分を窓としてパウチ(100)内部を可視とすることも可能である。
【0073】
シーラント層は、2枚の積層フィルムをシーラント層同士が対向するように重ねて、加熱、加圧して例えばヒートシールすることによって互いを接着させ、パウチ(100)に製袋することを可能にする。
【0074】
また本発明においては、前側胴部フィルム(1)、後ろ側胴部フィルム(2)、及びボトムフィルム(3)の間のシールは、イージーピール可能にシールされるのであって、シーラント層もイージーピール可能な材質を選択するか、イージーピール可能にシールする条件でシールするものとする。
【0075】
一般にシーラント層の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を使用することができる。
【0076】
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0077】
シーラント層の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、積層フィルム上に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、積層フィルムの表面にシーラント層を形成することも可能である。
【0078】
続いて印刷層について説明を加える。すなわち必要に応じて、商品としてのイメージアップ、内容物についての必要な情報表示、また意匠性の向上などを目的として、プラスチックフィルムを基材とする積層フィルム中の、パウチ(100)外側から見える層に印刷層を設けることができる。印刷層はパウチ(100)の最外層になる面に設けるのでも構わない。
【0079】
また印刷層は、パウチ(100)の一部に設けるのでもよく、またパウチ(100)の全面にわたって設けるのでもよい。あるいは、印刷層を用いずに表示部を設ける方法としては、たとえばパウチ(100)の表面に、印刷されたシールを貼着することも可能である。
【0080】
ここで、印刷方法、及び印刷インキには、とくに制約を設けるものではないが、既知の印刷方法、材料の中からプラスチックフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、人体への安全性などを考慮すれば適宜選択してよい。
【0081】
印刷方法はたとえば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、シルクスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの既知の印刷方法から適宜選択して用いることができる。これらの中でも特にグラビア印刷法は、生産性、プラスチックフィルムへの印刷適性、及び絵柄の高精細度において好ましく用いることができる。
【0082】
図3は、本発明に係るパウチの一実施態様において、その構成を説明するための、パウチ中央部の断面模式図である。
【0083】
すなわち、図3に示す断面模式図は、図2において示すA―Bを通り、パウチの胴部に対して垂直な平面で切った断面を表している。この平面は、図3において断面模式図を囲む四角形で示されている。
【0084】
図1及び図2に示すように、本発明によるパウチ(100)は前側胴部フィルム(1)、後ろ側胴部フィルム(2)、及びボトムフィルム(3)から構成されており、これらで囲まれたパウチ(100)内部に、内容物を収納可能かつ密封された空間(11)を有しており、この空間(11)に、薬液が含浸された液体保持シート(4)を収納するパウチ(100)である。
【0085】
但し、この空間(11)は、図3には体積をもって広がった空間(11)として図示してあるが、内容物の液体保持シート(4)を充填後、パウチ(100)を密封する際に空気を抜いて密封することが可能で、その場合には薬液が含浸された、液体保持シート(4)のみで満たされた空間(11)とすることができる。
【0086】
前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)は、シーラント層同士を対向させて重ねられ、左右の側端部(6)及びパウチ上辺(5)でイージーピール可能にシールされている。左右の側端部(6)は、図3に示す例においては、断面模式図が中央部のものであるために不可視であるが、パウチ上辺(5)のシール部は、図3中シール部(14)で示されている。
【0087】
また、胴部の下部において、前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)との間に、ボトムフィルム(3)が中央の折り線(7)で、シーラント層を外側にして二つ折りに折り込まれて、前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)の、左右の側端部(6)がイージーピール可能にシールされ、パウチ下辺(8)において、前側胴部フィルム(1)及び後ろ側胴部フィルム(2)と、ボトムフィルム(3)とは接着されて、これらのシール部と接着部でパウチは密封されている。
【0088】
ここでも左右の側端部(6)は、図3に示す例においては、断面模式図が中央部のものであるために不可視であるが、パウチ下辺(8)の接着部は、前側胴部フィルム(1)とボトムフィルム(3)、また後ろ側胴部フィルム(2)とボトムフィルム(3)の接着部であって、図3中接着部(15)で示されている。
【0089】
ボトムフィルム(3)のパウチ(100)の内部空間(11)に面した部分には、薬液が含浸された液体保持シート(4)が積層されている。この薬液が含浸された液体保持シート(4)もまた、ボトムフィルム(3)と同様に中央で二つ折りにした形状となっている。
【0090】
液体保持シート(4)の素材は、不織布とすることができる。不織布は可撓性を有し、また不織布であることによって、内容物の薬液を十分に含んで、保持した状態でパウチに収納することが可能であり、また開封後に、塗布薬液を被塗布物体に塗布する際にも、均一な塗布を実現することにも有効である。
【0091】
不織布の材質には、特段の限定を加えるものではなく、オレフィン系、ポリエステル系、セルロース系などの繊維を用いることができる。不織布の坪量は特に限定しないが、5g/m~200g/mのものが使用でき、30g/m~100g/mのものがより望ましい。5g/m未満である場合には、十分な薬液を保持することができない恐れがあり、200g/mを超えるものはコスト的に望ましくない。
【0092】
また、液体保持シート(4)とボトムフィルム(3)との積層は、粘着剤を介して積層することができる。粘着剤を介して積層されていることによって、液体保持シート(4)が、ボトムシート(3)に固定され、開封後に、塗布薬液を被塗布物体に塗布する際にも利便性が高いものとすることができる。
【0093】
これは、塗布薬液を塗布する際に、液体保持シート(4)をパウチ(100)から分離して取り出すことなく、パウチ(100)に取り付けたまま直接塗布することを意図したものである。
【0094】
ただし、必要な場合には、粘着層の粘着力を調整することによって、液体保持シート(4)をボトムフィルム(3)から分離する構成とすることも可能である。
【0095】
すなわち、本発明によるパウチ(100)は、不織布に薬液を含ませて内部に収納することができ、取り出しにおいてピンセットや手指でつまみだす際の、意図しない部分への薬液の付着や飛散等のリスクを回避することを可能にするものであり、必要な箇所のみへの薬液の均一な塗布を可能にするものである。
【0096】
図4は、本発明に係るパウチの一実施態様において、その開封の様子を説明するための、パウチ中央部の断面模式図である。
【0097】
本発明によるパウチ(100)の開封は、前側胴部フィルム(1)を後ろ側胴部フィルム及びボトムフィルム(3)から、シール部を剥離して行うことができる。すなわち、パウチ周縁部において、前側胴部フィルム(1)及び後ろ側胴部フィルム及びボトムフィルム(3)はイージーピール可能にシールされており、手指等によっても容易にシール部を剥離して開封することが可能である。
【0098】
図4に示す例において、前側胴部フィルム(1)は、図4中破線の矢印の方向に、剥離することができる。この剥離によって、 ボトムフィルム(3)に積層された、薬液が含浸された液体保持シート(4)を大きく露出させることが可能である。
【0099】
この開封は、パウチ(100)の前側胴部フィルム(1)全体に及ぶものであって、前側胴部フィルム(1)、後ろ側胴部フィルム(2)及びボトムフィルム(3)は、パウチ(100)下部のボトムフィルム(3)に設けたポンス穴(9)によって、分離解体をすることなくこの部分で一体化されており、またポンス穴(9)の外側を囲んで、易開封機構による開封予定線(10)が設けてあるために、ポンス穴(9)に阻害されることなくパウチ下辺(8)に至る剥離、開封が可能である。
【0100】
イージーピールに関しては、前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)間、及びそれらとボトムフィルム(3)間のピール強度は、1N/15mm~12N/15mmの範囲とすることができる。
【0101】
我々は、本発明を考案する過程で鋭意検討を重ねた結果、ピール強度がこの範囲であれば、例えば取り扱いや輸送中の予期せぬ剥離がなく、かつ手指等による容易な剥離、開封も可能なパウチ(100)を実現できることを見出した。
【0102】
図5は、本発明に係るパウチの一実施態様において、その開封の様子と、手指でボトム
フィルムを介して一方の面の薬液の塗布をする様子を説明するための、パウチ中央部の断面模式図である。
【0103】
前側胴部フィルム(1)の、剥離、開封と同時に、或いはそれに引き続いて、手指(30)をパウチ底部(12)からパウチ(100)下部のボトムフィルム(3)で囲まれた窪みに差し入れて、ボトムフィルム(3)をパウチ(100)下部から支え、薬液が含浸された液体保持シート(4)を被塗布物体(20)に押し付けて、液体保持シート(4)に含浸された薬液の塗布を行うことができる。
【0104】
この塗布によって、薬液は図中の矢印(21)で示すように、液体保持シート(4)から直接被塗布物体(20)の表面に移動し塗布される。
【0105】
このとき手指(30)は、ボトムフィルム(3)に覆われているために、意図しない手指への薬液の付着のリスクを回避することができる。
【0106】
また、露出した液体保持シート(4)に含浸された薬液を、直接被塗布物体(20)に接触させて、必要な箇所のみに塗布することを可能にするものである。
【0107】
また、パウチ(100)から液体保持シート(4)を取り出す必要がなく、ピンセットや手指でつまみだそうとする際の、飛び散りや付着のリスクも回避することができる。
【0108】
また、前掲の図2に示す例においては、二つ折りに折り込まれたボトムフィルム(3)の内側の対向する面の、左右両側端部(13)にはシール可能なニスが塗布してあり、左右両側端部(13)がシールされている例である。
【0109】
すなわち、前掲の図2に示す例では、パウチ(100)はパウチ底部(12)を外部からの入口として、ボトムフィルム(3)の左右両側端部(13)がシールされて、パウチ(100)下部に閉じた窪みを形成している例であり、前側胴部フィルム(1)、後ろ側胴部フィルム(2)及びボトムフィルム(3)は、左右両側端部(13)で、より強固に一体化している。したがって差し入れた手指(30)は、この窪み部分で完全に被覆されており、塗布にはより好適である。
【0110】
図6は、本発明に係るパウチの一実施態様において、その開封の様子と、手指でボトムフィルムを介して、もう一方の面の薬液の塗布をする様子を説明するための、パウチ中央部の断面模式図である。
【0111】
図5に示す例の薬液の塗布に引き続いて、液体保持シート(4)の反対側、すなわち後ろ側胴部フィルム(2)側も液体保持シート(4)を露出させて、塗布を行うことができる。
【0112】
すなわち、手指(30)をパウチ底部(12)からパウチ(100)下部の窪みに差し入れた状態で、ボトムフィルム(3)をパウチ(100)外側から支え、薬液が含浸された液体保持シート(4)の後ろ側胴部フィルム(2)側の液体保持シート(4)を、被塗布物体(20)に押し付けて、液体保持シート(4)に含浸された薬液の塗布を行うことができる。
【0113】
この塗布によって、薬液は図中の矢印(22)で示すように、液体保持シート(4)から直接被塗布物体(20)の表面に移動し塗布される。
【0114】
このときも同様に、手指(30)は、ボトムフィルム(3)に覆われているために、意
図しない手指への薬液の付着のリスクを回避することを可能にする。また、露出した液体保持シート(4)のもう一方の未使用の面に含浸された薬液を、直接被塗布物体(20)に接触させて、必要な箇所に塗布することを可能にするものである。
【0115】
また、パウチ(100)から液体保持シート(4)を取り出す必要がなく、ピンセットや手指等でつまみだそうとする際の、薬液の飛散や汚染のリスクも回避することができる。
【0116】
このように、本発明によれば、薬液が含浸された液体保持シート(4)を内容物として収納し、ピンセット等を使用することなく取り出しが可能で、また意図しない部分に薬液の付着をさせることなく、必要な箇所への薬液の塗布が可能なパウチ(100)を提供することが可能である。
【実施例0117】
以下本発明を、実施例1~3、比較例1~3によって更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0118】
評価用のパウチ(100)を試作し、評価した。
評価項目及び評価方法は下記のとおりである。
【0119】
・開封性
パネラー(30人)にパウチを開封してもらい、評価した。
27人以上が開封しやすいと判断した場合は〇評価とした。
それ以外は×評価とした。
【0120】
・輸送試験
JIS Z0200に基づき、パウチ(100)を段ボールに入れ、輸送試験を実施した。
ランダム振動試験を行い、レベル1の条件下で評価した。
パウチの封が開かなかったものを〇評価とした。
パウチの封が開いてしまったものを×評価とした。
【0121】
・塗布性
パネラー30人に、開封したパウチ(100)に収納された液体保持シート(4)の薬液を塗布してもらい、評価した。
27人以上が塗布しやすいと判断した場合には〇評価とした。
それ以外は×評価とした。
【0122】
評価項目すべてが〇評価の場合は、総合評価を〇評価とした。評価項目の内いずれかの項目に×評価があるものは総合評価を×評価とした。
【0123】
<実施例1>
評価用パウチの仕様は以下のとおりである。
形状は、図1に示す形状のパウチ(100)である。
パウチを構成する積層フィルムの層構成は下記のとおりである。
1.前側胴部フィルム及び後ろ側胴部フィルム:
パウチ外側になる面から
透明無機化合物蒸着ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/延伸ポリアミドフィルム(厚さ15μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
2.ボトムフィルム:
パウチ外側になる面から
ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
3.液体保持シート:
ポリプロピレン不織布(50g/m
とした。
【0124】
パウチを作成し、薬液を含浸させた液体保持シートを収納し密閉した。
イージーピールのシール強度は下記のとおりである。
前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)、およびそれらとボトムフィルム(3)の間のピール強度を、本発明による規定値(1N~12N/15mm)の範囲内で3.0N/15mmとした。
【0125】
<実施例2>
評価用パウチの仕様は以下のとおりである。
形状は、図1に示す形状のパウチ(100)である。
パウチを構成する積層フィルムの層構成は下記のとおりである。
1.前側胴部フィルム及び後ろ側胴部フィルム:
パウチ外側になる面から
透明無機化合物蒸着ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/延伸ポリアミドフィルム(厚さ15μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
2.ボトムフィルム:
パウチ外側になる面から
ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
3.液体保持シート:
ポリプロピレン不織布(50g/m
とした。
【0126】
パウチを作成し、薬液を含浸させた液体保持シートを収納し密閉した。
イージーピールのシール強度は下記のとおりである。
前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)、およびそれらとボトムフィルム(3)の間のピール強度を、本発明による規定値(1N~12N/15mm)の範囲内で10N/15mmとした。この部分は実施例1と異なる。
【0127】
<実施例3>
評価用パウチの仕様は以下のとおりである。
形状は、図1に示す形状のパウチ(100)である。
パウチを構成する積層フィルムの層構成は下記のとおりである。
1.前側胴部フィルム及び後ろ側胴部フィルム:
パウチ外側になる面から
透明無機化合物蒸着ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/延伸ポリアミドフィルム(厚さ15μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
2.ボトムフィルム:
パウチ外側になる面から
ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
3.液体保持シート:
ポリプロピレン不織布(50g/m
とした。
【0128】
パウチを作成し、薬液を含浸させた液体保持シートを収納し密閉した。
イージーピールのシール強度は下記のとおりである。
前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)、およびそれらとボトムフィルム(3)の間のピール強度を、本発明による規定値(1N~12N/15mm)の範囲内で1.5N/15mmとした。この部分は実施例1と異なる。
【0129】
<比較例1>
評価用パウチの仕様は以下のとおりである。
形状は、図1に示す形状のパウチ(100)である。
パウチを構成する積層フィルムの層構成は下記のとおりである。
1.前側胴部フィルム及び後ろ側胴部フィルム:
パウチ外側になる面から
透明無機化合物蒸着ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/延伸ポリアミドフィルム(厚さ15μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
2.ボトムフィルム:
パウチ外側になる面から
ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
3.液体保持シート:
ポリプロピレン不織布(50g/m
とした。
【0130】
パウチを作成し、薬液を含浸させた液体保持シートを収納し密閉した。
イージーピールのシール強度は下記のとおりである。
前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)、およびそれらとボトムフィルム(3)の間のピール強度を、本発明による規定値(1N~12N/15mm)の範囲外で0.5N/15mmとした。この部分は実施例と異なる。
【0131】
<比較例2>
評価用パウチの仕様は以下のとおりである。
形状は、図1に示す形状のパウチ(100)である。
パウチを構成する積層フィルムの層構成は下記のとおりである。
1.前側胴部フィルム及び後ろ側胴部フィルム:
パウチ外側になる面から
透明無機化合物蒸着ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/延伸ポリアミドフィルム(厚さ15μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
2.ボトムフィルム:
パウチ外側になる面から
ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ1
2μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
3.液体保持シート:
ポリプロピレン不織布(50g/m
とした。
【0132】
パウチを作成し、薬液を含浸させた液体保持シートを収納し密閉した。
イージーピールのシール強度は下記のとおりである。
前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)、およびそれらとボトムフィルム(3)の間のピール強度を、本発明による規定値(1N~12N/15mm)の範囲外で15N/15mmとした。この部分は実施例と異なる。
【0133】
<比較例3>
評価用パウチの仕様は以下のとおりである。
胴部の形状は、図1に示す形状のパウチ(100)である。但し、ボトムフィルムは用いていない。
パウチを構成する積層フィルムの層構成は下記のとおりである。
1.前側胴部フィルム及び後ろ側胴部フィルム:
パウチ外側になる面から
透明無機化合物蒸着ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/延伸ポリアミドフィルム(厚さ15μm)/イージーピールシーラント層(厚さ30μm)
とした。
2.ボトムフィルム:
ボトムフィルムは用いないで製袋を行った。この部分は実施例と異なる。
3.液体保持シート:
ポリプロピレン不織布(50g/m
とした。
【0134】
パウチを作成し、薬液を含浸させた液体保持シートを収納し密閉した。
イージーピールのシール強度は下記のとおりである。
前側胴部フィルム(1)と後ろ側胴部フィルム(2)、およびそれらとボトムフィルム(3)の間のピール強度を、本発明による規定値(1N~12N/15mm)の範囲内で3.0N/15mmとした。この部分は実施例1と同様である。
【0135】
評価結果を表1に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
表1に示す結果から、明らかなように、本発明において規定する範囲で作成したパウチ(実施例1~実施例3)は、すべての評価項目にたいして〇評価であり、したがって総合評価において〇評価である。
【0138】
これに対し本発明に規定する範囲を逸脱して作成したパウチ(比較例1~比較例3)は、評価項目のうちいずれかが×評価であって、したがって総合評価において×評価である。
【0139】
比較例1の場合にはピール強度が、本発明において規定する範囲を下回っており、輸送試験の結果、パウチの封が開いてしまう不具合が発生し×評価となった。
【0140】
また、比較例2の場合には、ピール強度が、本発明において規定する範囲を上回ってお
り、開封性評価の結果、開封に支障をきたす不具合が発生し×評価となった。
【0141】
また、比較例3の場合には、本発明によるボトムフィルムを設けておらず、これによって、パウチ底部から手指を差し入れての塗布が困難であり、薬液が手指に付着する不具合が発生し×評価となった。
【0142】
すなわち、本発明によるパウチ(100)は、シール部のピール強度を1N/15mm~12N/15mmの範囲内とすることによって、開封性もよく輸送にも適するパウチとすることができる。また、パウチ底部(12)から手指を入れて、ボトムフィルム(3)を介して液体保持シート(4)の薬液を被塗布物体(20)に塗布する方式をとることによって、意図しない箇所に薬液が付着したり、飛散することがなく、必要な箇所に塗布することができる。
【0143】
このようにして、本発明によれば、薬液が含浸された液体保持シートを内容物として収納し、ピンセット等を使用することなく薬液の塗布が可能で、また意図しない部分に薬液の付着をさせることなく、必要な箇所への薬液の塗布が可能なパウチを提供することが可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0144】
1・・・前側胴部フィルム
2・・・後ろ側胴部フィルム
3・・・ボトムフィルム
4・・・液体保持シート
5・・・パウチ上辺
6・・・側端部
7・・・中央の折り線
8・・・パウチ下辺
9・・・ポンス穴
10・・・開封予定線
11・・・空間
12・・・パウチ底部
13・・・左右両側端部
14・・・シール部
15・・・接着部
20・・・被塗布物体
21・・・矢印
22・・・矢印
100・・・パウチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6