(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191722
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】積層体およびそれを用いた包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20221221BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100115
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 悠華
(72)【発明者】
【氏名】山下 香往里
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD01
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3E086BB90
4F100AA20C
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4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】マテリアルリサイクル性に優れ、製袋適性を備えた積層体を提供する。
【解決手段】少なくとも基材層とシーラント層を備えた積層体であって、前記基材層は150℃で熱処理した際のMD熱収縮率が20.0%未満のポリオレフィンであり、前記シーラント層はポリオレフィンであり、前記シーラント層の融点は前記基材層よりも10℃以上低く、前記積層体に占めるポリオレフィン含有量は90質量%以上であることを特徴とする積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層とシーラント層を備えた積層体であって、
前記基材層は150℃で熱処理した際のMD熱収縮率が20.0%未満のポリオレフィンであり、
前記シーラント層はポリオレフィンであり、
前記シーラント層の融点は前記基材層よりも10℃以上低く、
前記積層体に占めるポリオレフィン含有量は90質量%以上であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記基材層と前記シーラント層との間にガスバリア層を備えたことを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
請求項1または2記載の積層体の前記シーラント層形成面同士を熱融着して設けられた包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用の積層体及びこれを用いた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
包装体は、包装する内容物の性質、内容物の量、内容物の変質を保護するための後処理、包装体を運搬する形態、包装体を開封する方法、廃棄する方法などによって、さまざまな素材が組み合わせて用いられている。
【0003】
たとえば、スタンディングパウチは、店頭の商品棚で商品を目立たせることが可能で、採用の範囲が広がっている。スタンディングパウチが、途中で折れ曲がることなく、全面が見えるようにするためには、パウチを構成する積層体に剛性が求められる。また、内容物が液体であれば、落下した際に破袋しないような強度が求められる。これらの機能に対応するため、ポリエステルフィルムやナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルムなどを組み合わせた積層体が用いられてきた。
【0004】
しかしながら、近年の環境問題への意識の高まりから、各種製品の省資源、再利用などの機能が求められるようになり、包装体に用いられる積層体にも同様の機能が求められている。
【0005】
各種素材が複合化された積層体を再利用する一つの方法は、各素材ごとに再分離する方法であるが、包装体として所定の強度を付与した積層体を分離するには熱的、化学的、機械的な各種作用を行う必要がある。また、分離された素材を分別するためにも、比重による物理的な作用や、素材ごとに異なる分光学的な手法などにより行わねばならないが、これら分離、分別の精度を上げようとするほど、よりエネルギーを費やすなど効率的ではなかった。
【0006】
他の手法として、もとの積層体を同系統の素材で構成して、積層体を一体の素材として再利用することが挙げられる。特に熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの各種系統の素材がある。それぞれが、分子量や、分子量分布、熱処理、配向、延伸などの状態、処理によりさまざまな特性を付与することができる。特にポリオレフィン系の素材は、融点が低いことから加工性もよく、また、共重合体などによりさまざまな素材が製造されていることから、用いやすい。そのため、これまでにも、さまざまな手法が提案されてきている。
【0007】
特許文献1には、基材と、中間層と、ヒートシール層と、を少なくとも備えた包装材料用積層体であって、前記基材、前記中間層および前記ヒートシール層が同一の材料により構成されており、前記基材および中間層は、延伸処理が施されたものであり、前記同一材料がポリオレフィンであることを特徴とする、包装材料用積層体が開示されている。この発明では積層体に強度と耐熱性を持たせるため、ポリオレフィン基材に延伸をかけているが、積層体全体がポリオレフィンで構成される場合、耐熱性は不十分であり、製袋のためのヒートシール時に積層体がゆがんで不良が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、マテリアルリサイクル性に優れ、製袋適性を備えた積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第一の態様は、少なくとも基材層とシーラント層を備えた積層体であって、前記基材層は150℃で熱処理した際のMD熱収縮率が10.0%以下のポリオレフィンであり、前記シーラント層はポリオレフィンであり、前記基材層の融点は前記シーラント層よりも10℃以上高く、前記積層体に占めるポリオレフィン含有量は90質量%以上であることを特徴とする積層体である。
【0011】
第一の態様によれば、積層体が製袋時の熱によってゆがむことなく、高速で製袋を行っても寸法にずれのない包装袋を得ることができる。
また、積層体に占めるポリオレフィン含有量は90質量%以上であるため、ポリオレフィン樹脂として再生可能であり、高いマテリアルリサイクル適性を備える。
【0012】
さらに、基材層とシーラント層との間にガスバリア層を備えることで、ガスバリア性を備えた積層体とすることができる。
【0013】
本発明の第二の態様は、上記積層体のシーラント層形成面同士を熱融着して設けられた包装袋である。この態様によれば、積層体が熱によってゆがむことなく、高速で製袋を行っても寸法にずれのない包装袋を得ることができる。
【0014】
本発明の第三の態様としては、第二の態様の包装袋であって、さらに前記シーラント層形成面同士に挟み込まれたポリオレフィン部材を備え、当該ポリオレフィン部材と前記シーラント層とは同じ樹脂であることを特徴とする包装袋である。
【0015】
第三の態様によれば、ポリオレフィン部材の熱融着部分付近も積層体が熱によってゆがむことなく、内容物及び気密性を保持するのに十分な強度で接着されている包装体を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の積層体は高いマテリアルリサイクル適性及び高い製袋適性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の積層体の一態様を示す断面図である。
【
図2】本発明の積層体の他の態様を示す断面図である。
【
図3】本発明の積層体の他の態様を示す断面図である。
【
図4】本発明の積層体の他の態様を示す断面図である。
【
図5】本発明の自立性包装袋の一態様である口栓付きガゼットパウチの概略図である。
【
図6】本発明の自立性包装袋の一態様である口栓付きスタンディングパウチの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の積層体の一態様である3層ラミネート積層体10の断面図である。3層ラミネート積層体10は基材1、ガスバリアフィルム層3、シーラント層5を備えている。基材1、ガスバリアフィルム層3、シーラント層5はそれぞれ接着層2および4を介して貼り合わされている。ガスバリアフィルム層3はガスバリアフィルム基材3-bとガスバリア層3-aを備える。3層ラミネート積層体10では基材1側にガスバリア層3-aが、シーラント層5側にガスバリア基材3-bが位置する構成となっている。
【0019】
図2は本発明の積層体の他の態様である3層ラミネート積層体20の断面図である。3層ラミネート積層体20は基材1、ガスバリアフィルム層3、シーラント層5を備えている。ガスバリアフィルム層3はガスバリアフィルム基材3-bとガスバリア層3-aを備える。3層ラミネート積層体10との違いは基材1側にガスバリア基材3-bが、シーラント層5側にガスバリア層3-aが位置する点である。
【0020】
図3は本発明の積層体の他の態様である3層ラミネート積層体30の断面図である。3層ラミネート積層体30は基材1、ガスバリアフィルム層3、シーラント層5を備えている。ガスバリアフィルム層3はガスバリアフィルム基材3-bとガスバリア層3-aを備える。3層ラミネート積層体20との違いは基材1側とガスバリアフィルム層3の位置関係が入れ替わっている点である。
【0021】
本発明の積層体が3層ラミネート積層体である場合、基材1またはガスバリア基材3bのいずれか、または双方がポリプロピレンである。基材1またはガスバリア基材3bのいずれか、または双方をポリプロピレンとする場合は後述する材料からポリプロピレンの範囲で選択することができる。
また、3層ラミネート積層体において、接着層2及び接着層4は任意構成であり、基材1あるいはシーラント層5を直接隣接する層に形成する場合は省略できる。
【0022】
図4は本発明の積層体の他の態様である2層ラミネート積層体40の断面図である。2層ラミネート積層体40はガスバリアフィルム層3及びシーラント層5を備えている。ガスバリアフィルム層3はガスバリアフィルム基材3-bとガスバリア層3-aを備える。2層ラミネート積層体40ではシーラント層5側にガスバリア層3-aが位置する構成となっている。
【0023】
本発明の積層体が2層ラミネート積層体である場合、ガスバリア基材3bはポリプロピレンである。ガスバリア基材3bをポリプロピレンとする場合は後述するガスバリア基材の材料からポリプロピレンの範囲で選択することができる。
また、2層ラミネート積層体において、接着層4は任意構成であり、シーラント層5を直接ガスバリアフィルム層に形成する場合は省略できる。
【0024】
[基材層]
本発明の基材層は150℃で熱処理した際のMD熱収縮率が10.0%以下のポリオレフィンである。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0025】
基材層を構成するポリエチレンとしては、蒸着加工、印刷加工、製袋加工、充填適性などを考慮すると、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。また、柔軟性などの物性を向上させるために、例えば、共押出法により形成される、高密度ポリエチレン(HDPE)/中密度ポリエチレン(MDPE)/低密度ポリエチレン(LDPE)/中密度ポリエチレン(MDPE)/高密度ポリエチレン(HDPE)のような多層構成フィルムを、基材層として用いてもよい。
【0026】
ポリプロピレンとしては、延伸ポリプロピレンが挙げられる。一般的に、ポリプロピレンは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ターポリマーに大別され、用途や要求性能に合わせてポリマー種が選択されるが、積層体の基材層として用いる場合は、ホモポリマーのポリプロピレンが好ましい。ホモポリマーを最表面に備えたり、ナイロンなどの耐熱性樹脂を最表面に積層したポリプロピレン基材を用い、その耐熱性の面を最外層に配した積層体は耐熱性が向上するため、製袋時に疑似接着や温度不足によるシール強度不足の問題を低減できる。また、易接着性やシール性を付与する目的で、コア層であるホモポリマー上に、共押出法によりコポリマーやターポリマーをスキン層として形成した多層構成フィルムを、基材層として用いてもよい。
【0027】
基材層を構成するポリオレフィンフィルムは、延伸フィルムであってよく、非延伸フィルムであってよい。但し、耐衝撃性、耐熱性、耐水性、寸法安定性等の観点から、ポリオレフィンフィルムは延伸フィルムであってよい。これによりホット充填やレトルト・ボイル処理を施す用途に、積層体をより好適に用いることができる。延伸方法としては特に限定されず、インフレーションによる延伸、一軸延伸、二軸延伸等、寸法が安定したフィルムが供給可能であれば、どのような方法でもよい。
【0028】
中でも高剛性でかつ高耐熱の二軸延伸ポリプロピレンを用いることが好ましく、このようなものとして、150℃で熱処理した際のMD熱収縮率が20%未満、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下のものを用いることができる。
【0029】
ポリプロピレンフィルムの融点はシーラント層に比べて高い方がよく、10℃以上、好ましくは20℃以上高いとよい。基材層の融点としては150℃以上、より好ましくは160℃以上であるとよい。基材層の融点は示差走査熱量計(DSC)を使用して測定することができる。MD熱収縮率と融点との双方を満たすことで、製袋適性が良く、サイズやピッチのずれの少ない包装袋とすることができる。
【0030】
ポリオレフィンフィルムの厚さは特に限定されない。用途に応じ、当該厚さを6μm以上、好ましくは9μm以上、より好ましくは12μm以上とすることができる。また、厚みを200μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは38μm以下とすることができる。この範囲であれば優れた耐衝撃性と優れたガスバリア性とを得ることができる。
【0031】
基材層を構成する樹脂は、石油由来のものに限定されず、その一部又は全部が生物由来の樹脂材料(例えば、バイオマス由来のエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレン)であってもよい。バイオマス由来のポリエチレンの製造方法は、例えば、特表2010-511634号公報に開示されている。基材は、市販のバイオマスポリエチレン(ブラスケム社製グリーンPE等)を含んでもよいし、使用済みのポリオレフィン製品やポリオレフィン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)を原料とするメカニカルリサイクルポリオレフィンを含んでもよい。
【0032】
基材層は、ポリオレフィン樹脂以外の成分を含んでいてもよい。かかる成分としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、生分解性の樹脂材料(例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉等)などが挙げられる。基材層は、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の添加剤を含んでもよい。基材層におけるポリオレフィン樹脂以外の成分の量は、基材層の全量を基準として、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
【0033】
上述した基材層は、3層ラミネート積層体であって最外層に基材が配される積層体において、基材として好ましく用いることができる。3層ラミネート積層体あるいは2層ラミネート積層体であって最外層にガスバリアフィルム層のガスバリア基材が配される積層体にあっては、ガスバリア基材として好ましく用いることができる。
【0034】
[シーラント層]
シーラント層は、積層体においてヒートシールによる封止性を付与する層であり、ポリオレフィンを含有する。また、シーラント層におけるポリオレフィンの含有量は、例えば、40質量%上であり、70質量%以上である。上限は100質量%であってよく、90質量%であってもよい。シーラント層のポリオレフィンの含有量が70質量%以上であることで、積層体のポリオレフィンの含有量(積層体の全量基準)を90質量%以上としやすく、モノマテリアルを実現しやすい。
【0035】
シーラント層を構成する樹脂材料として、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を使用することができる。シーラント層がポリエチレンの場合は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができる。また、剛性を付与するなどの目的で、ガスバリア層3を高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)とし、内容物側を低密度ポリエチレン(LDPE)となるように共押出された積層構成のフィルムも使用可能である。さらに、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を単独で、あるいはブレンドまたは共押出等で積層して使用することができる。シーラント層の厚さは、例えば、40μm以上150μm以下である。なお、シーラント層として、バイオマス由来のポリオレフィンを使用してもよく、例えばエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレンを一部又は全部に含むシーラントフィルムを使用してもよい。このようなシーラントフィルムは例えば特開2013-177531号に開示されている。また、シーラント層は、使用済みのポリオレフィン製品やポリオレフィン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)を原料とするメカニカルリサイクルポリオレフィンを含んでいてもよい。
【0036】
積層体のシーラント層同士が対面した状態で配置し、その周縁部の少なくとも一部をヒートシールすることによって包装袋を作製することができる。包装袋の態様として、ピロー袋、スタンディングパウチ、ガゼットパウチ、三方シール袋、四方シール袋、口栓付きパウチ(スタンディングパウチ、ガゼットパウチ、三方シール袋等)等が挙げられる。このとき耐熱性の基材を用いることで製袋時の疑似接着(本来接着されるべきでないところが張り付いてしまう不良)や、基材とシーラントとの融点の差が小さいことで十分な接着温度や時間をかけられずシール強度不足となってしまうことを防ぐことができる。耐熱性の高い基材としてはポリオレフィンフィルムが好ましく、特に、積層体の最外層側となる基材面にナイロン層を備えたものや、ホモポリプロピレン層を備えたものが好ましい。
【0037】
シーラント層は基材との融点差が10度以上あることが好ましく、20℃以上あるとより好ましく、50℃以上であると一層好ましい。シーラント層そのものの融点としては140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
積層体は、包装袋の他に、例えば、容器等の包装製品、化粧シート、トレー等のシート成形品、光学フィルム、樹脂板、各種ラベル材料、蓋材、及びラミネートチューブ等の各種用途に適用することができる。
【0038】
本発明の積層体は、基材とガスバリアフィルム層の間、ガスバリアフィルム層とシーラント層の間には接着層を備えていてもよい。
接着層を構成する接着剤は、接着方法に合わせて選定することができ、例えば、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤などを用いることができる。接着層を設けることで、基材とシーラント層、あるいはガスバリアフィルム層と基材、ガスバリアフィルム層とシーラント層との層間密着性を高くしてデラミネーションしにくくなり、パウチとしての耐圧性や耐衝撃性を保持することができる。例えば、一液硬化型もしくは二液硬化型ウレタン系接着剤等の接着剤で貼りあわせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼りあわせるノンソルベントドライラミネート法、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、貼りあわせるエクストルージョンラミネート法等、を挙げることができる。
【0039】
接着層は、塩素を含まないことが好ましい。接着層が塩素を含まないことで、接着剤やリサイクル後の再生樹脂が着色したり、加熱処理によって臭いが発生したりすることを防ぐことができる。接着層としてバイオマス材料を含む接着剤を使用すると環境配慮の観点から好ましい。環境配慮の観点から、接着は溶剤を使用しない方法が好ましい。
【0040】
[ガスバリアフィルム層]
ガスバリアフィルム層は少なくともガスバリア基材とガスバリア層を備えている。ガスバリアフィルム層は、例えば、ガスバリア基材であるポリオレフィンフィルムと、蒸着又はコーティングによるガスバリア層とを備えている。
【0041】
ガスバリア層としては、ポリビニルアルコール等を含むガスバリアコーティングや、無機酸化物又は金属の蒸着層が挙げられる。無機酸化物として、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。金属として、例えば、アルミニウムが挙げられる。蒸着層は、例えば物理気相成長法、化学気相成長法等によって形成することができる。
【0042】
ガスバリア基材には、基材層として記載した材料を用いることができる。ガスバリア基材の厚さは、例えば、5μm以上であり、10μm以上である。また、800μm以下であり、500μm以下、100μm以下であってよい。ガスバリア基材の融点は示差走査熱量計(DSC)を使用して測定することができる。積層体が3層ラミネート積層体である場合、ガスバリア基材は、基材と同程度の融点を示すことが好ましい。一方で、ガスバリア基材は、シーラント層よりも20℃以上高い融点を有することが好ましく、より好ましくは25℃以上高い融点を有するものとする。ガスバリア基材の融点は、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは125℃以上である。
【0043】
積層体が2層ラミネート積層体である場合、ガスバリア基材は、150℃で熱処理した際のMD熱収縮率が20%未満、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下のポリオレフィンを用いることができる。かつ、この場合のガスバリア基材の融点はシーラント層に比べて高い方がよく、10℃以上、好ましくは20℃以上高いとよい。基材層の融点としては150℃以上、より好ましくは160℃以上であるとよい。MD熱収縮率と融点との双方を満たすことで、製袋適性が良く、サイズやピッチのずれの少ない包装袋とすることができる。耐熱性の高いガスバリア基材としてはポリオレフィンフィルムが好ましく、特に、積層体の最外層となるガスバリア層非形成面側にナイロン層を備えたものや、ホモポリプロピレン層を備えたものが好ましい。このような物性のポリオレフィンとして、具体的には高剛性でかつ高耐熱の二軸延伸ポリプロピレンを用いることができる。
【0044】
ガスバリア基材の材質としては、基材と同様に、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂が挙げられる。また、基材と同様に、バイオマス由来の樹脂や、メカニカルリサイクル樹脂を用いてもよい。また、基材と同様に、ポリオレフィン樹脂以外の成分や添加剤を、積層フィルムのリサイクル性を妨げない範囲で含むことができる。このガスバリア基材は、蒸着層が形成される面に、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の表面処理が施されていてもよい。ガスバリア基材は耐熱性の観点から延伸基材を用いることが好ましい。一軸延伸ポリオレフィンを用いた場合は、易引裂き性を保持するために基材層と延伸方向をそろえることが好ましい。
【0045】
本開示に係る積層体は、基材とガスバリア層の間、ガスバリア層とシーラント層の間、基材とシーラント層との間にアンカーコート層(図示しない)を備えていてもよい。アンカーコート層は、積層体のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層でよく、アンカーコート剤を用いて形成することができる。アンカーコート剤としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。アンカーコート剤としては、耐熱性及び層間接着強度の観点から、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0046】
アンカーコート層の厚さは特に限定されないが、0.05μm以上であり、2μm以下の範囲であることが好ましい。0.05μmより厚いことで、層間の接着強度向上が期待できる。2μmより薄いことで積層体に占めるポリオレフィンの割合が増加し、積層体のリサイクル適性が向上する。
【0047】
本開示に係る積層体は、例えば、文字情報や図柄などの印刷層(図示しない)を更に備えてもよく、グラビア印刷、フレキソ印刷などが可能である。印刷層は、3層ラミネート積層体の場合は基材とガスバリアフィルム層の間に設けられてもよい。2層ラミネート積層体の場合はガスバリアフィルム層とシーラント層との間に設けられていてもよい。ガスバリア基材のガスバリア層形成面とは反対側の面に設けられてもよい。印刷層を設ける場合は、印刷インキには塩素を含まないものを用いることで、印刷インキ成分がメカニカルリサイクルの再溶融時に着色したり、臭いが発生したりすることを防ぐ観点から好ましい。また、印刷インキに含まれるバインダ成分にはバイオマス材料を使用することが、環境配慮の観点から好ましい。また、印刷インキは水またはアルコールを溶剤に使用する水性インキであることが好ましく、有機溶剤を用いない水性フレキソ印刷を適用することが、環境配慮の観点から好ましい。
【0048】
本発明に係る包装形態の自立性包装袋の一態様として、ガゼットパウチが挙げられる。
図5は、本発明の自立性包装袋の一態様である口栓付きガゼットパウチの概略図である。口栓付きガゼットパウチ100は
図5に示すように2枚の側壁用積層体140と2枚の2つ折りした側壁用積層体150からなり、側壁用積層体140と側壁用積層体150の周縁がシールされている。このようなガゼットパウチの、パウチ本体部の上辺にスパウト104とキャップ104aからなる口栓を設けることで口栓付きガゼットパウチ100とすることができる。
【0049】
本発明に係る包装形態の自立性包装袋の他の態様として、スタンディングパウチが挙げられる。
図6は、本発明の自立性包装袋の他の態様である口栓付きスタンディングパウチの概略図である。口栓付きスタンディングパウチ200は
図6に示すように2枚の側壁用積層体201と、1枚の2つ折りした底用積層体202から構成され、周縁がシールされている包装袋である。このようなスタンディングパウチの、パウチ本体部の上辺にスパウトとキャップからなる口栓203を設けることで口栓付きスタンディングパウチ200とすることができる。
【0050】
上記当該の口栓付きスタンディングパウチ200の側壁用積層体201と底用積層体202は、同一の積層体構成であっても、異なるものであってもよい。内容物の種類や重量などによって調整することができる。
【0051】
本発明に係る自立性包装袋が備えるスパウトとキャップからなる口栓は、ポリオレフィンを用いることができる。これにより本包装体全体の再利用性が得られる。また、口栓は、射出成型や圧縮成形などの公知の成型方法で成型することができる。リサイクル適性を高める観点から、より好ましくはポリエチレンを用いることができる。
以下実施例に基づき、さらに詳細に説明する。
【実施例0052】
本発明に係る積層体を用い、自立性包装袋としてスタンディングパウチの側壁用積層体および底用積層体を以下の通り作製した。以下、実施例に基づいて本開示について更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
基材として二軸延伸ポリプロピレンフィルムA1(厚み20μm)を、ガスバリアフィルムとして酸化ケイ素蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルム(ガスバリア基材厚み18μm)を用いた。ガスバリア基材はOPPフィルム上にEVOH層を共押出により形成したものであり、EVOH層上にアクリルウレタンコーティングを施し、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、厚さ30μmの酸化ケイ素からなる透明な皮膜を設けたものである。
【0054】
基材とガスバリアフィルムを接着剤(三井化学株式会社製、銘柄A626)を介して貼り合わせた。接着剤層の厚みは3μmである。この時ガスバリア層は基材とは反対側に配した。さらにシーラント層として直鎖状低密度ポリエチレンB1(厚み60μm)を接着剤(三井化学株式会社製、銘柄A626)を介して貼り合わせた。接着剤層の厚みは3μmである。実施例1の積層体は基材/接着層/ガスバリアフィルム層/接着層/シーラント層からなる3層ラミネート積層体である。
【0055】
(実施例2)
基材として二軸延伸ポリプロピレンフィルムA1(厚み20μm)を、ガスバリアフィルムとして酸化アルミニウム蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルム(ガスバリア基材厚み18μm)を用いた。ガスバリア層はガスバリア基材上にアクリルウレタンコーティングを施し、その後電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、厚さ15μmの酸化アルミニウムからなる透明な皮膜を設けたものである。
【0056】
基材とガスバリアフィルムを接着剤(三井化学株式会社製、銘柄A626)を介して貼り合わせた。接着剤層の厚みは3μmである。この時ガスバリア層は基材とは反対側に配した。さらにシーラント層として直鎖状低密度ポリエチレンB1(厚み60μm)を接着剤(三井化学株式会社製、銘柄A626)を介して貼り合わせた。接着剤層の厚みは3μmである。実施例1の積層体は基材/接着層/ガスバリアフィルム層/接着層/シーラント層からなる3層ラミネート積層体である。
【0057】
(実施例3)
ガスバリアフィルム層として、酸化ケイ素蒸着未延伸ポリエチレンフィルム(ガスバリア基材厚み32μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2を得た。実施例2の積層体は基材/接着層/ガスバリアフィルム層/接着層/シーラント層からなる3層ラミネート積層体である。
【0058】
(実施例4)
シーラント層として、直鎖状低密度ポリエチレンB1に替えて未延伸ポリプロピレンフィルムB2(厚み60μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3を得た。実施例4の積層体は基材/接着層/ガスバリアフィルム層/接着層/シーラント層からなる3層ラミネート積層体である。
【0059】
(実施例5)
シーラント層として、直鎖状低密度ポリエチレンB1に替えて未延伸ポリプロピレンフィルムB2(厚み60μm)を用いた以外は実施例2と同様にして、実施例3を得た。実施例5の積層体は基材/接着層/ガスバリアフィルム層/接着層/シーラント層からなる3層ラミネート積層体である。
【0060】
(比較例1)
基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルムA1(厚み20μm)に替えて二軸延伸ポリプロピレンフィルムA2(厚み20μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の3層ラミネート積層体を得た。
【0061】
(比較例2)
基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルムA1(厚み20μm)に替えて二軸延伸ポリプロピレンフィルムA2(厚み20μm)を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例2の3層ラミネート積層体を得た。
【0062】
(比較例3)
基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルムA1(厚み20μm)に替えて二軸延伸ポリプロピレンフィルムA2(厚み20μm)を用いた以外は実施例3と同様にして、比較例3の3層ラミネート積層体を得た。
【0063】
(比較例4)
基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルムA1(厚み20μm)に替えて二軸延伸ポリプロピレンフィルムA2(厚み20μm)を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例4の3層ラミネート積層体を得た。
【0064】
(比較例5)
基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルムA1(厚み20μm)に替えて二軸延伸ポリプロピレンフィルムA2(厚み20μm)を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例5の3層ラミネート積層体を得た。
【0065】
(比較例6)
シーラント層として、直鎖状低密度ポリエチレンB1に替えて未延伸ポリプロピレンフィルムB3(厚み60μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例6の3層ラミネート積層体を得た。
【0066】
(比較例7)
シーラント層として、直鎖状低密度ポリエチレンB1に替えて未延伸ポリプロピレンフィルムB3(厚み60μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例7の3層ラミネート積層体を得た。
【0067】
基材、シーラント層の融点を示差走査熱量計(DSC)を使用して測定した。基材とシーラント層の融点及び差を表1に記載した。
【0068】
【0069】
実施例1から3、比較例1から4の積層体を用いて、2枚の側壁用積層体と1枚の2つ折りした底用積層体からなり、周縁が熱シールされているスタンディングパウチを作製した。スタンディングパウチは高さ125mm、巾95mm、折込深さ(底用積層体の谷折り部分の深さ)28mmである。製袋可否の結果を表1に示す。側壁用積層体同士を貼り合わせた側面のシール巾の規格値に対して、巾のずれが、〇は5%以下、△は10%以下、×は15%以下であったことを示す。
【0070】
実施例1から3、比較例1から4の積層体を用いて、2枚の側壁用積層体と1枚の2つ折りした底用積層体の周縁を熱シールし、さらにポリエチレン製のスパウト部材を挟み込んで溶着し口栓付きスタンディングパウチを作製した。実施例1から3の包装袋では、精度よく、袋の外観も良好に溶着できた。
【0071】
(MD熱収縮率)
基材の熱収縮を測定した。250×250mmのフィルム中央に150×150mmの印をつけ、150℃のオーブン内で5min保持し、取り出した後にMD方向の長さを測定し、収縮率を表1に記載した。
【0072】
実施例1から5の積層体に関して、JIS K7126-2:2006に従って温度30℃相対湿度差70%における酸素透過度の測定を行った。評価結果を表1に記載した。
【0073】
実施例1から5の積層体に関して、JIS K7129Bに従って温度40℃相対湿度差90%における水蒸気透過度の測定を行った。評価結果を表1に記載した。
測定装置:モコン社 水蒸気透過度測定装置 PERMATRAN-W3/33。
【0074】
表1の結果より、実施例1から5はバリア性を保持した包装袋を提供することが可能であった。