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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191724
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】検出システム及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20221221BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G01N15/14 A
G01N33/53 D
G01N15/14 K
G01N15/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100121
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】平岡 類
(72)【発明者】
【氏名】有本 聡
(72)【発明者】
【氏名】管野 天
(57)【要約】
【課題】複数種類の標的物質を個別に検出しやすくすること。
【解決手段】検出システム100は、送液部170と、隔離部180と、検出部150と、を備える。送液部170は、それぞれ互いに異なる標的物質に特異的に結合する性質を有する特定物質で修飾された誘電体粒子であって、互いに誘電泳動に対する挙動が異なる複数種類の修飾粒子5を含む試料を、流路4の上流から下流へと流す。隔離部180は、流路4を流れる試料に誘電泳動を作用させることで、複数種類の修飾粒子5のうちの一の種類の修飾粒子5と、他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離する。検出部150は、隔離部180により隔離された一の種類の修飾粒子5から対応する標的物質を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ互いに異なる標的物質に特異的に結合する性質を有する特定物質で修飾された誘電体粒子であって、互いに誘電泳動に対する挙動が異なる複数種類の修飾粒子を含む試料を、流路の上流から下流へと流す送液部と、
前記流路を流れる前記試料に前記誘電泳動を作用させることで、前記複数種類の修飾粒子のうちの一の種類の修飾粒子と、他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離する隔離部と、
前記隔離部により隔離された前記一の種類の修飾粒子から対応する前記標的物質を検出する検出部と、を備える、
検出システム。
【請求項2】
前記一の種類の修飾粒子は、前記誘電体粒子が前記標的物質と結合した複合体粒子と、前記複合体粒子を形成していない前記誘電体粒子である未結合粒子と、を含む、
請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記一の種類の修飾粒子は、前記誘電体粒子が前記標的物質と結合した複合体粒子を含み、
前記他の粒子は、前記複合体粒子を形成していない前記誘電体粒子である未結合粒子を含む、
請求項1に記載の検出システム。
【請求項4】
前記流路は、2つの分岐路を有し、
前記隔離部は、前記一の種類の修飾粒子と、前記他の粒子とをそれぞれ前記2つの分岐路に分かれて流れるように隔離する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項5】
前記隔離部は、前記一の種類の修飾粒子が前記下流へと流れないように捕集し、前記他の粒子を前記流路の前記下流へ流すことにより隔離する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項6】
前記隔離部は、複数であって、
前記誘電泳動を前記試料に作用させるために印加される交流電圧の周波数は、前記上流側にある前記隔離部よりも、前記下流側にある前記隔離部の方が低い、
請求項1~5のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項7】
前記隔離部は、前記試料に不均一な電場を生成することにより、前記誘電泳動を前記試料に作用させる、
請求項1~6のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項8】
前記特定物質は、抗体である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項9】
それぞれ互いに異なる標的物質に特異的に結合する性質を有する特定物質で修飾された誘電体粒子であって、互いに誘電泳動に対する挙動が異なる複数種類の修飾粒子を含む試料を、流路の上流から下流へと流し、
前記流路を流れる前記試料に前記誘電泳動を作用させることで、前記複数種類の修飾粒子のうちの一の種類の修飾粒子と、他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離し、
隔離された前記一の種類の修飾粒子から対応する前記標的物質を検出する、
検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばウイルス等の標的物質を検出するための検出システム及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近接場を用いて、微小な標的物質を高感度に検出する光学的検出方法等が提供されている。例えば、特許文献1では、標的物質と磁性粒子及び蛍光粒子との結合によって形成された結合体を近接場が形成された検出板の表面から遠ざける方向に移動させる第1の磁場の印加によって生じる光信号の低減等を計測することで標的物質が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/187744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の検出方法では、1種類の標的物質を検出対象としている。したがって、特許文献1の検出方法では、例えば複数種類の標的物質が存在する場合に、これらを個別に検出することは難しい。
【0005】
そこで、本開示は、複数種類の標的物質を個別に検出しやすい検出システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る検出システムは、送液部と、隔離部と、検出部と、を備える。前記送液部は、それぞれ互いに異なる標的物質に特異的に結合する性質を有する特定物質で修飾された誘電体粒子であって、互いに誘電泳動に対する挙動が異なる複数種類の修飾粒子を含む試料を、流路の上流から下流へと流す。前記隔離部は、前記流路を流れる前記試料に前記誘電泳動を作用させることで、前記複数種類の修飾粒子のうちの一の種類の修飾粒子と、他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離する。前記検出部は、前記隔離部により隔離された前記一の種類の修飾粒子から対応する前記標的物質を検出する。
【0007】
本開示の一態様に係る検出方法は、それぞれ互いに異なる標的物質に特異的に結合する性質を有する特定物質で修飾された誘電体粒子であって、互いに誘電泳動に対する挙動が異なる複数種類の修飾粒子を含む試料を、流路の上流から下流へと流す。前記検出方法では、前記流路を流れる前記試料に前記誘電泳動を作用させることで、前記複数種類の修飾粒子のうちの一の種類の修飾粒子と、他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離する。前記検出方法では、隔離された前記一の種類の修飾粒子から対応する前記標的物質を検出する。
【0008】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る検出システム等によれば、複数種類の標的物質を個別に検出しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る検出システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る検出部を含む構成についての説明図である。
図3図3は、実施の形態に係る粒子種についての説明図である。
図4図4は、実施の形態に係る電極セットの構成を示す平面図である。
図5図5は、実施の形態に係る隔離部の構成についての説明図である。
図6図6は、実施の形態における交流電圧の設定周波数を示すグラフである。
図7図7は、実施の形態における各周波数における粒子種ごとの析出パターンの説明図である。
図8図8は、実施の形態に係る検出システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施の形態の第1変形例に係る検出システムの概略構成を示す図である。
図10図10は、実施の形態の第2変形例に係る検出システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
【0013】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0014】
また、以下において、平行及び垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、矩形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。
【0015】
また、以下において、標的物質を検出するとは、標的物質を見つけ出して標的物質の存在を確認することに加えて、標的物質の量(例えば数又は濃度等)又はその範囲を測定することを含む。
【0016】
(実施の形態)
実施の形態では、液体中で複合体粒子及び未結合粒子が誘電泳動(DEP:Dielectrophoresis)によって分離され、分離された複合体粒子に含まれる標的物質が検出される。
【0017】
誘電泳動とは、不均一な電場にさらされた誘電体粒子に力が働く現象である。この力は、粒子の帯電を要求しない。
【0018】
標的物質とは、検出の対象となる物質であり、例えば病原性タンパク質等の分子、ウイルス(外殻タンパク質等)、又は細菌(多糖等)などである。標的物質は、被検物あるいは検出対象物と呼ばれる場合もある。実施の形態においては、標的物質として、複数種類の標的物質が同時に存在する場合に、これらの複数種類の標的物質のそれぞれを個別に検出する検出方法について説明する。以下に説明する実施の形態では、2種類の標的物質が存在する場合について説明するが、標的物質の種類はこれに限られない。本開示の検出システム及び検出方法は、3種類以上の標的物質に対して適用することもできる。
【0019】
以下に、誘電泳動を用いた複数種類の標的物質の検出を実現する検出システム及び検出方法の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
[検出システムの構成]
まず、検出システム100の構成について図1図5を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係る検出システム100の概略構成を示す図である。図2は、実施の形態に係る検出部150を含む構成についての説明図である。図3は、実施の形態に係る粒子種についての説明図である。図4は、実施の形態に係る電極セット1111の構成を示す平面図である。図5は、実施の形態に係る隔離部180の構成についての説明図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、検出システム100は、分離部110と、電源120と、光源130と、撮像素子140と、検出部150と、反応部160と、送液部170と、隔離部180と、を備える。実施の形態では、図1に示すように、検出部150は2つ存在し、説明の便宜上、後述する流路4の上流側にある検出部150を「第1検出部151」、下流側にある検出部150を「第2検出部152」という。なお、図1では図示を省略しているが、各検出部150には、図2に示す電源120等の検出部150以外の構成が共に設けられている。また、実施の形態では、図1に示すように、隔離部180は2つ存在し、説明の便宜上、後述する流路4の上流側にある隔離部180を「第1隔離部181」、下流側にある隔離部180を「第2隔離部182」という。
【0022】
分離部110は、流路4を介して流れ込む試料10を収容する容器であり、空間1121を内部に有する。分離部110は、空間1121内で、複数種類の修飾粒子5のうちの一の種類の修飾粒子5について、複合体粒子3と未結合粒子2とを試料10中で誘電泳動により分離する。ここでは、分離部110は、複合体粒子3と未結合粒子2とを位置的に分離する。ただし、分離部110での分離は、あくまで空間1121内での位置的な分離であって、複合体粒子3と未結合粒子2とが互いに異なる場所へ隔離されるわけではない。試料10は、未結合粒子2を含み、標的物質1が含まれる場合、標的物質1と未結合粒子2によって形成された複合体粒子3をさらに含む。また、試料10には、夾雑物6が混入する場合がある。
【0023】
実施の形態では、図3中に矩形で示す第1標的物質11、及び三角形で示す第2標的物質12が、送液部170から供給される試料10中に含まれている。以下、第1標的物質11、及び第2標的物質12を総称して標的物質1と記載する場合がある。これらの標的物質1のそれぞれに対応するように、実施の形態では、第1誘電体粒子21、及び第2誘電体粒子22が試料10に収容され反応に供される。
【0024】
第1誘電体粒子21は、第1基材21aの表面が、第1標的物質11に特異的に結合する性質を有する第1特定物質21bで修飾されることで作製される。同様に、第2誘電体粒子22は、第2基材22aの表面が、第2標的物質12に特異的に結合する性質を有する第2特定物質22bで修飾されることで作製される。このように、第1基材21a、及び第2基材22aのそれぞれは、誘電体粒子における標的物質に特異的に結合する性質を有する物質を除く基材部分である。また、以下、第1誘電体粒子21、及び第2誘電体粒子22を総称して誘電体粒子と記載する場合がある。また、以下、第1特定物質21b、及び第2特定物質22bを総称して特定物質20と記載する場合がある。
【0025】
なお、第1基材21a、及び第2基材22aのそれぞれは、粒子形状であり、互いに異なる粒径を有する。また、例えば、第1基材21a、及び第2基材22aのそれぞれは、対応する第1特定物質21b、及び第2特定物質22bに比べて十分に大きいサイズである。これにより、第1誘電体粒子21、及び第2誘電体粒子22は、異なる誘電率を有する。したがって、第1誘電体粒子21、及び第2誘電体粒子22は、誘電泳動特性が互いに異なるようになる。
【0026】
なお、一の粒径と他の粒径とが異なるとは、一の粒径を決定する粒度分布のメジャーピークと、他の粒径を決定する粒度分布のメジャーピークとが一致しないことを意味する。したがって、一の粒子種の粒径と他の粒子種の粒径とが異なる場合においても、一の粒子種の一部と他の粒子種の一部とが同じ粒径を有する場合がある。
【0027】
また、第1誘電体粒子21、及び第2誘電体粒子22の誘電泳動特性に差異を与える条件として、粒径の異なる基材を用いる例を説明するが、粒子の材質(互いに誘電率又は導電率が異なる)、表面電荷状態、表面官能基の選択など、その他の構成を適用してもよい。この場合は、第1誘電体粒子21、及び第2誘電体粒子22は同じ粒径の基材から構成されてもよい。
【0028】
誘電体粒子とは、印加された電場によって分極することができる粒子である。誘電体粒子は、例えば、蛍光物質を含んでもよい。後述する光源130から、当該蛍光物質を励起する波長の光が照射された場合、蛍光発光の波長帯の光を検出することで、誘電体粒子の検出を行うことができる。なお、誘電体粒子に用いられる各基材部分は、蛍光物質を含む基材に限定されない。例えば基材として、蛍光物質を含まないポリスチレン粒子、ガラス粒子等が用いられてもよい。
【0029】
上記の第1特定物質21b、及び第2特定物質22bは、いずれも、対応する1種類の標的物質1に対して特異的に結合する抗体で実現される。つまり、実施の形態では、特定物質20は、抗体である。例えば、それぞれの基材表面の官能基と抗体の定常領域とが化学的に結合される(修飾される)ことで誘電体粒子が形成される。なお、第1特定物質21b、及び第2特定物質22bとしては、抗体に限らず、例えば、DNAアプタマー、酵素、又は、受容体などを用いることもできる。また、特異的に結合する性質とは、少なくとも、対応する標的物質との結合親和性が、試料10の系内の他の物質よりも高ければよい。より好ましくは、第1特定物質21bと、第2標的物質12との交差反応がなく、第2特定物質22bと、第1標的物質11との交差反応がないとよい。
【0030】
複合体粒子3とは、標的物質1の1つと、当該標的物質1の1つに対応する誘電体粒子の1つとが結合した複合体である。つまり、複合体粒子3では、標的物質1に特異的に結合する性質を有する特定物質20を介して、標的物質1と誘電体粒子とが結合されている。実施の形態では、第1標的物質11と第1誘電体粒子21とにより、第1複合体粒子31が形成され、第2標的物質12と第2誘電体粒子22とにより、第2複合体粒子32が形成される。
【0031】
未結合粒子2とは、複合体粒子3を形成していない誘電体粒子である。つまり、未結合粒子2は、標的物質1に結合していない誘電体粒子である。未結合粒子2は、フリー(F)成分とも呼ばれる。一方、複合体粒子3に含まれる未結合粒子2部分に相当する誘電体粒子は、バインド(B)成分とも呼ばれる。以下、未結合粒子2、及び複合体粒子3を総称して修飾粒子(ここでは、抗体修飾粒子)5と記載する場合がある。
【0032】
ここで、分離部110の内部構成について説明する。図2に示すように、分離部110は、第1基板111と、スペーサ112と、第2基板113と、を備える。
【0033】
第1基板111は、例えばガラス又は樹脂製のシートである。第1基板111は、空間1121の底を規定する上面を有し、当該上面には、電源120から交流電圧が印加される電極セット1111が形成される。電極セット1111は、第1電極1112及び第2電極1113を含み、第1基板111上に不均一な電場(電場勾配ともいう)を生成することができる。つまり、電極セット1111は、電場勾配を発生する(又は形成する)電場勾配発生部の一例である。
【0034】
ここで、第1基板111上の電極セット1111の形状及び配置について、図4を参照しながら説明する。図4では、撮像素子140側から平面視した場合の電極セット1111の構成が示されている。なお、図4では、簡略化のため、電極セット1111の一部分を示す概略構成図が示されている。
【0035】
上記に説明したように、電極セット1111は、第1基板111上に配置された第1電極1112と第2電極1113とを有する。第1電極1112及び第2電極1113の各々は、電源120と電気的に接続されている。
【0036】
第1電極1112は、第1方向(図4では紙面左右方向)に延びる第1基部1112aと、第1方向と交差する第2方向(図4では紙面上下方向)に第1基部1112aから突出する2つの第1凸部1112bと、を備える。2つの第1凸部1112bの間には、第1凹部1112cが形成されている。2つの第1凸部1112bは、第2電極1113(特に後述する第2凸部1113b)に対向して配置されている。2つの第1凸部1112b及び第1凹部1112cの各々の第1方向の長さ及び第2方向の長さは、例えば、いずれも約10マイクロメートルである。なお、2つの第1凸部1112b及び第1凹部1112cのサイズは、これに限定されない。
【0037】
第2電極1113の形状及びサイズは、第1電極1112の形状及びサイズと実質的に同一である。つまり、第2電極1113も、第1方向(図4では紙面左右方向)に延びる第2基部1113aと、第1方向と交差する第2方向(図4では紙面上下方向)に第2基部1113aから突出する2つの第2凸部1113bと、を備える。2つの第2凸部1113bの間には、第2凹部1113cが形成されている。2つの第2凸部1113bは、第1電極1112(特に、第1凸部1112b)に対向して配置されている。
【0038】
このような第1電極1112及び第2電極1113に交流電圧が印加されることで、第1基板111上に不均一な電場が生成される。第1電極1112に印加される交流電圧と、第2電極1113に印加される交流電圧とは、実質的に同一であってもよく、位相差が設けられてもよい。印加される交流電圧の位相差としては、例えば180度を用いることができる。
【0039】
なお、電極セット1111の位置は、第1基板111上に限定されない。電極セット1111は、空間1121中の試料10の近傍に配置されればよい。ここで、試料10の近傍とは、電極セット1111に印加された交流電圧によって試料10内に電場を生成することができる範囲を意味する。つまり、電極セット1111は、空間1121内で試料10に直接接していてもよく、空間1121の外側から、試料10を含む領域に電場を形成してもよい。
【0040】
図4に示すように、不均一な電場により、第1基板111上に、電界強度が相対的に高い第1電場領域Aと電界強度が相対的に低い第2電場領域Bとが形成される。第1電場領域Aは、第2電場領域Bよりも高い電界強度を有する領域であり、対向する第1凸部1112b及び第2凸部1113bの間の領域である。
【0041】
電界強度は、電場を生成する電極どうしの電極間距離に依存する。電界強度は、電極間距離が長いほど低くなり、電極間距離が短いほど高くなる。第1凸部1112bと第2凸部1113bの第1方向における端部同士が対向した位置は、電極セット1111の中で、第1電極1112及び第2電極1113の間の距離が最も短い位置となり、最も電界強度が高くなる。第1電場領域Aは、このような第1電極1112及び第2電極1113の間の距離が最も短い位置を含む所定の範囲の領域である。
【0042】
また、第2電場領域Bは、第1電場領域Aよりも低い電界強度を有する領域であり、対向する第1凹部1112c及び第2凹部1113cの間の領域内に形成される。この領域は、第1電極1112及び第2電極1113の間の距離が最も長い位置であり、特に、第1凹部1112c又は第2凹部1113cに近いほど電界強度が低くなる。第2電場領域Bは、特に電界強度の低い第1凹部1112c及び第2凹部1113cの底を含む領域である。
【0043】
以上のように構成された電極セット1111を用いた場合における誘電体粒子の正析出及び負析出について、図4を用いて説明する。電極セット1111に印加される交流電圧の周波数、又は誘電体粒子を取り囲む外液のイオン種等によって、誘電体粒子は、電界強度の高い第1電場領域Aか、又は電界強度の低い第2電場領域Bに集積する。このとき、誘電泳動時の挙動(すなわち正析出をするか、又は、負析出をするか)は、クラウジウス・モソッティ係数の実部によって決定される。誘電泳動時の諸条件によって、クラウジウス・モソッティ係数の実部が正の数値となる場合、誘電体粒子は、正の誘電泳動(pDEP)の作用により、第1電場領域Aに正析出する。一方、誘電泳動時の諸条件によって、クラウジウス・モソッティ係数の実部が負の数値となる場合、誘電体粒子は、負の誘電泳動(nDEP)の作用により、第2電場領域Bに負析出する。
【0044】
スペーサ112は、第1基板111上に配置される。スペーサ112には、空間1121の形状に対応する貫通孔が形成されている。言い換えると、空間1121は、第1基板111及び第2基板113に挟まれた貫通孔によって形成される。上記したように、空間1121には、流路4を介して流れ込む試料10が導入される。スペーサ112は、貫通孔を囲む外壁であり、空間1121を規定する内側面を有する。スペーサ112は、例えば、第1基板111及び第2基板113との密着性が高い樹脂等の材料で構成される。
【0045】
第2基板113は、例えばガラス又は樹脂製の透明なシートであり、スペーサ112上に配置される。例えば、第2基板113としては、ポリカーボネート基板を用いることができる。第2基板113には、空間1121に繋がる供給孔1131及び排出孔1132が板面を貫通するように形成されている。試料10は、供給孔1131を介して空間1121に供給され、排出孔1132を介して空間1121から排出される。なお、第2基板113を備えずに分離部110を構成してもよい。つまり、第2基板113は、必須の構成要素ではない。例えば、分離部110が容器として成立するための空間1121は、底及び内側面をそれぞれ規定する第1基板111及びスペーサ112のみで形成される。
【0046】
電源120は、交流電源であり、第1基板111の電極セット1111に交流電圧(正弦波又は矩形波を含む)を印加する。電源120は、交流電圧を供給できればどのような電源であってもよく、特定の電源に限定されない。また、交流電圧は外部電源から供給されてもよく、この場合、電源120は、検出システム100に含まれなくてもよい。
【0047】
光源130は、空間1121内の試料10に照射光131を照射する。照射光131は、透明な第2基板113を介して試料10中に照射される。試料10からは、照射光131に応じた検出光132が生じ、当該検出光132が検出されることで、試料10に含まれる誘電体粒子の検出が行われる。例えば、上記したように、誘電体粒子に蛍光物質が含まれる場合、照射光131として励起光を照射することで蛍光物質が励起され、蛍光物質から発せられた蛍光を検出光132として検出する。
【0048】
光源130としては、公知の技術を特に限定することなく利用することができる。例えば半導体レーザ、ガスレーザ等のレーザを光源130として用いることができる。光源130から照射される照射光131の波長としては、標的物質1に含まれる物質との相互作用が小さい波長が用いられる。例えば、標的物質1がウイルスである場合、400nm~2000nmの波長の照射光131が選択される。また、照射光131の波長としては、半導体レーザが利用できる波長(例えば600nm~850nm)が用いられてもよい。
【0049】
なお、光源130は、検出システム100に含まれなくてもよい。例えば、誘電体粒子のサイズが大きい場合には、レンズ等の光学素子を組み合わせて観察が可能となり、蛍光発光等の発光現象を用いなくてもよい。つまり、誘電体粒子に蛍光物質が含まれなくてもよく、この場合、光源130から照射光131が照射されなくてもよい。太陽及び蛍光灯等を光源130として、照射される外光を利用して誘電体粒子の検出を行うことができる。
【0050】
撮像素子140は、CMOSイメージセンサ及びCCDイメージセンサ等であり、試料10から生じた検出光132を受光することで、画像を生成して出力する。撮像素子140は、例えば、カメラ(不図示)等に内蔵されて第1基板111の板面に水平に配置され、カメラに含まれるレンズ等の光学素子(不図示)を介して、電極セット1111に対応する箇所を撮像する。このように、撮像素子140は、分離部110によって未結合粒子2と分離された複合体粒子3を撮影して、複合体粒子3に含まれる標的物質1を検出するために用いられる。
【0051】
誘電体粒子が蛍光物質を含む例では、撮像素子140は、誘電体粒子に含まれる蛍光物質から発せられた蛍光を撮像する。なお、検出システム100は、撮像素子140の代わりに、フォトディテクタを備えてもよい。この場合、フォトディテクタは、第1基板111上の、誘電泳動によって分離された複合体粒子3が集まる領域から、蛍光等の検出光132を検出すればよい。なお、このように撮像素子140に代えてフォトディテクタが用いられる場合、検出部150は、検出光132の強度に基づいて、誘電体粒子に結合する標的物質1の検出を行ってもよい。
【0052】
検出システム100は、光源130と分離部110との間、及び/又は、分離部110と撮像素子140との間に、光学レンズ及び/又は光学フィルタを備えてもよい。例えば、光源130からの照射光131を遮断し、かつ、検出光132を通過させることができるロングパスフィルタが、分離部110と撮像素子140との間に設置されてもよい。
【0053】
検出部150は、撮像素子140から出力された画像を取得し、当該画像に基づき、試料10中に含まれる誘電体粒子の検出を行う。特に、実施の形態における検出システム100では、複合体粒子3のそれぞれと未結合粒子2のそれぞれとを個別に計数できる。例えば、検出部150は、一の種類の修飾粒子5として、第1複合体粒子31を形成する第1誘電体粒子21と、未結合粒子2となっている第1誘電体粒子21とを区別して検出することができる。ここで、複合体粒子3の数は、所定の結合比等によって標的物質1の数に対応している。したがって、検出部150は、画像に基づき誘電体粒子の検出を行うことで、複合体粒子3に含まれる標的物質1を検出することができる。
【0054】
例えば、検出部150は、予め撮像された誘電体粒子を含まない対照画像を用いて、取得した画像と対照画像との比較により、輝度値の異なる輝点を検出する。具体的に、検出光132として発光を検出する場合、対照画像に対して取得された画像中の輝度値の高い点を輝点とし、検出光132として透過光及び散乱光等を検出する場合、対照画像に対して取得された画像中の輝度値の低い点を輝点として検出すればよい。このようにして、検出部150は、試料10中の複合体粒子3を検出し、対応する標的物質1を検出する。
【0055】
ここで、後述するように、分離部110には、隔離部180により隔離された一の種類の修飾粒子5を含む試料10が、流路4を介して流れ込む。したがって、検出部150は、隔離部180により隔離された一の種類の修飾粒子5から対応する標的物質1を検出することになる。実施の形態では、第1検出部151は、一の種類の修飾粒子5としての第1複合体粒子31から対応する第1標的物質11を検出し、第2検出部152は、一の種類の修飾粒子5としての第2複合体粒子32から対応する第2標的物質12を検出する。
【0056】
検出部150は、例えば、プロセッサ等の回路とメモリ等の記憶装置とを用いて、上記画像解析のためのプログラムが実行されることで実現されるが、専用の回路によって実現されてもよい。検出部150は、例えば、コンピュータに内蔵される。
【0057】
反応部160は、試料10を収容する容器であって、複数種類の標的物質1と、これらに対応する複数種類の誘電体粒子とが結合して複数種類の複合体粒子3を形成する結合反応の場である。反応部160では、複数種類の標的物質1と、各標的物質1と比較して多量の複数種類の誘電体粒子とを導入する。これにより、反応部160では、各種類について、標的物質1が誘電体粒子と結合することで生じる複合体粒子3と、標的物質1と反応しなかった未結合粒子2と、を含む試料10が生成される。つまり、反応部160で生成された試料10には、複数種類の修飾粒子5(実施の形態では、第1誘電体粒子21及び第1複合体粒子31、並びに第2誘電体粒子22及び第2複合体粒子32)が含まれることになる。反応部160で生成された後の試料10は、送液部170に供給される。
【0058】
送液部170は、送液ポンプを備えており、反応部160から供給される試料10を流路4へ輸送する。これにより、試料10が流路4を流れる。つまり、送液部170は、複数種類の修飾粒子5を含む試料10を、流路4の上流から下流へと流す。なお、流路4は、例えば水平面上に設置されている。このため、試料10は、重力に従って自然落下することで流路4を上流から下流へと流れるわけではなく、送液部170により輸送されることで流路4を上流から下流へと流れる。また、流路4を流れる試料10の単位時間当たりの流量は、送液部170により適宜調整可能であってもよい。また、試料10を流路4へ輸送する状態と、流路4への輸送を停止する状態とを送液部170により適宜切り替え可能であってもよい。
【0059】
隔離部180は、流路4を流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、複数種類の修飾粒子5のうちの一の種類の修飾粒子5と、他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離する。複数種類の修飾粒子5は、それぞれ互いに異なる標的物質1に特異的に結合する性質を有する特定物質20で修飾された誘電体粒子であって、互いに誘電泳動に対する挙動が異なっている。つまり、一の種類の修飾粒子5の特定物質20に結合する標的物質1の種類と、他の種類の修飾粒子5の特定物質20に結合する標的物質1の種類とは、互いに異なっている。
【0060】
特に、実施の形態では、一の種類の修飾粒子5は、複合体粒子3を形成していない誘電体粒子である未結合粒子2を更に含んでおり、隔離部180は、一の種類の修飾粒子5としての複合体粒子3及び未結合粒子2と、他の粒子とを互いに異なる場所へ隔離する。つまり、分離部110では、誘電泳動により分けられた粒子(ここでは、複合体粒子3と未結合粒子2)が同じ空間1121内に留まるのに対して、隔離部180では、誘電泳動により分けられた粒子(ここでは、一の種類の修飾粒子5と、他の粒子)が同じ場所に留まらず、互いに異なる場所へ隔離される。
【0061】
実施の形態では、流路4は、図1に示すように2つの第1分岐路43Aと、2つの第2分岐路43Bと、を有している。2つの第1分岐路43Aは、いずれも1つの流路4から分岐した流路であり、一方の第1分岐路43Aは第1検出部151に繋がっている。2つの第2分岐路43Bは、いずれも他方の第1分岐路43Aから分岐した流路であり、一方の第2分岐路43Bは第2検出部152に繋がっている。以下、第1分岐路43A及び第2分岐路43B、並びに後述する第3分岐路43C及び第4分岐路43Dを総称して分岐路43と記載する場合がある。
【0062】
流路4において、2つの第1分岐路43Aに分岐する手前における内壁には、第1電極セット41Aが設けられており、第1電極セット41Aには、第1電源42Aから交流電圧が印加されている。また、流路4において、2つの第2分岐路43Bに分岐する手前における内壁には、第2電極セット41Bが設けられており、第2電極セット41Bには、第2電源42Bから交流電圧が印加されている。以下、第1電極セット41A及び第2電極セット41B、並びに後述する第3電極セット41C及び第4電極セット41Dを総称して電極セット41と記載する場合がある。また、以下、第1電源42A及び第2電源42B、並びに後述する第3電源42C及び第4電源42Dを総称して電源42と記載する場合がある。
【0063】
実施の形態では、検出システム100は、隔離部180を複数(ここでは、2つ)備えている。2つの隔離部180のうちの第1隔離部181は、第1電極セット41Aに第1電源42Aから交流電圧を印加し、流路4を流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、一の種類の修飾粒子5(ここでは、第1誘電体粒子21及び第1複合体粒子31)と、他の粒子(ここでは、第2誘電体粒子22、第2複合体粒子32、及び夾雑物6)とを互いに異なる場所(ここでは、2つの第1分岐路43A)へと隔離する。一の種類の修飾粒子5は、2つの第1分岐路43Aのうちの一方の第1分岐路43Aを介して第1検出部151に対応する分離部110へと流れ込み、他の粒子は、他方の第1分岐路43Aへと流れ込む。
【0064】
また、第2隔離部182は、第2電極セット41Bに第2電源42Bから交流電圧を印加し、第1分岐路43Aを流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、一の種類の修飾粒子5(ここでは、第2誘電体粒子22及び第2複合体粒子32)と、他の粒子(ここでは、夾雑物6)とを互いに異なる場所(ここでは、2つの第2分岐路43B)へと隔離する。一の種類の修飾粒子5は、2つの第2分岐路43Bのうちの一方の第2分岐路43Bを介して第2検出部152に対応する分離部110へと流れ込み、他の粒子は、他方の第2分岐路43Bを流れて流路4から排出される。
【0065】
つまり、実施の形態では、流路4は、2つの分岐路43を有している。そして、隔離部180は、一の種類の修飾粒子5と、他の粒子とをそれぞれ2つの分岐路43に分かれて流れるように隔離している。
【0066】
ここで、隔離部180による一の種類の修飾粒子5と他の粒子との隔離について図5を用いて説明する。図5に示すように、各隔離部180が備える電極セット41は、流路4において互いに対向する一対の内壁のうちの一方の内壁に設けられており、2つの櫛歯状の第1電極411及び第2電極412を有する。これら第1電極411及び第2電極412は、それぞれ分離部110における電極セット1111の第1電極1112及び第2電極1113と形状が実質的に同じである。なお、電極セット41における第1電極411及び第2電極412のサイズは、電極セット1111における第1電極1112及び第2電極1113のサイズと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0067】
各隔離部180において、第1電極411及び第2電極412のうちいずれか一方の電極をグランドに接続して電源42から交流電圧を印加することで、電極セット41の前方を流れる試料10内に不均一な電場を生成する。つまり、隔離部180は、試料10に不均一な電場を生成することにより、誘電泳動を試料10に作用させる。これにより、試料10に含まれる誘電体粒子のうち正析出される誘電体粒子が電極セット41へ寄ることで、正析出される誘電体粒子(図5では第1誘電体粒子21及び第1複合体粒子31)と、その他の粒子(図5では第2誘電体粒子22及び第2複合体粒子32)とが2つの分岐路43に分かれて流れることになる。
【0068】
ここで、誘電体粒子が正析出するか負析出するかは、電極セット1111又は電極セット41に印加される交流電圧の周波数に依存する。以下、図6及び図7を用いて、実施の形態における誘電体粒子の析出について説明する。図6は、実施の形態における交流電圧の設定周波数を示すグラフである。図7は、実施の形態における各周波数における粒子種ごとの析出パターンの説明図である。
【0069】
図6のグラフにおいて、縦軸は、クラウジウス・モソッティ係数の実部(Real-part of Clausius-Mossotti factor)を示し、横軸は、電極セット1111又は電極セット41に印加される交流電圧の周波数を示す。上記したように、クラウジウス・モソッティ係数の実部が正であれば、誘電体粒子には正の誘電泳動が作用し、電界強度のより高い領域に誘電体粒子が移動する。逆に、クラウジウス・モソッティ係数の実部が負であれば、誘電体粒子には負の誘電泳動が作用し、電界強度のより低い領域に誘電体粒子が移動する。
【0070】
また、図6では、未結合粒子2である第1誘電体粒子21に対応するグラフG1が一点鎖線で示され、第1複合体粒子31に対応するグラフG2が破線で示されている。また、未結合粒子2である第2誘電体粒子22に対応するグラフG3が実線で示され、第2複合体粒子32に対応するグラフG4が点線で示されている。なお、図6では、紙面左右方向に延びる細い実線によって、クラウジウス・モソッティ係数の実部が0の位置を示している。
【0071】
図6に示すように、複合体粒子3及び未結合粒子2のそれぞれは、印加される交流電圧の周波数が低周波側でクラウジウス・モソッティ係数の実部が正となっている。また、印加される交流電圧の周波数が高周波側でクラウジウス・モソッティ係数の実部が負となっている。したがって、印加される交流電圧の周波数を低周波側から高周波側へと変化させることでクラウジウス・モソッティ係数の実部が正から負に変化する。このとき、複合体粒子3及び未結合粒子2のそれぞれは、クラウジウス・モソッティ係数の実部が正から負に変化する周波数点が異なっている。
【0072】
したがって、この例では、印加される交流電圧の周波数を低周波側から高周波側へと変化させるのみで、複合体粒子3及び未結合粒子2のそれぞれを正析出から負析出へと順次変化させることが可能となる。
【0073】
図7には、いくつかの周波数点における複合体粒子3及び未結合粒子2のそれぞれの誘電泳動時の挙動がまとめられている。図7では、第1カラムに複合体粒子3又は未結合粒子2の種類(粒子種)が示されている。また、第2カラム~第5カラムに各周波数点における複合体粒子3又は未結合粒子2ごとの誘電泳動時の挙動が示されている。なお、第2カラム~第5カラムでは、「正」が粒子種と周波数点との組み合わせで正析出が生じることを示し、「負」が粒子種と周波数点との組み合わせで負析出が生じることを示している。なお、図7の周波数点(第1周波数F1~第4周波数F4)は、図6に紙面上下方向に延びる破線とともに示す周波数点(第1周波数F1~第4周波数F4)と対応している。
【0074】
例えば、第1周波数F1の交流電圧が印加された場合、第1複合体粒子31、第2複合体粒子32、第1誘電体粒子21、及び第2誘電体粒子22は、いずれも正析出が生じる。一方、第2周波数F2の交流電圧が印加された場合、第2複合体粒子32のみが負析出に変化するため、第2複合体粒子32を他の粒子と分離又は隔離することが可能である。このように、実施の形態では、第1周波数F1~第4周波数F4のそれぞれの交流電圧の印加によって、第1複合体粒子31、第2複合体粒子32、第1誘電体粒子21、及び第2誘電体粒子22のそれぞれを分離又は隔離することが可能である。
【0075】
実施の形態では、第1隔離部181は、第1電極セット41Aに第3周波数F3の交流電圧を印加する。これにより、正析出する一の種類の修飾粒子5(ここでは、第1誘電体粒子21(未結合粒子2)及び第1複合体粒子31(複合体粒子3))と、負析出する他の粒子(ここでは、第2誘電体粒子22、第2複合体粒子32、及び夾雑物6)とが隔離される。また、第2隔離部182は、第2電極セット41Bに第1周波数F1の交流電圧を印加する。これにより、正析出する一の種類の修飾粒子5(ここでは、第2誘電体粒子22(未結合粒子2)及び第2複合体粒子32(複合体粒子3))と、負析出する他の粒子(ここでは、夾雑物6)とが隔離される。つまり、実施の形態では、隔離部180は複数であって、誘電泳動を試料10に作用させるために印加される交流電圧の周波数は、上流側にある隔離部180(ここでは、第1隔離部181)よりも、下流側にある隔離部180(ここでは、第2隔離部182)の方が低い。
【0076】
また、実施の形態では、第1検出部151に対応する分離部110は、電極セット1111に第4周波数F4の交流電圧を印加する。これにより、正析出する第1誘電体粒子21と、負析出する第1複合体粒子31とが分離される。また、第2検出部152に対応する分離部110は、電極セット1111に第2周波数F2の交流電圧を印加する。これにより、正析出する第2誘電体粒子22と、負析出する第2複合体粒子32とが分離される。
【0077】
[動作]
以下、実施の形態に係る検出システム100の動作(検出方法)の一例について、図8を参照して説明する。図8は、実施の形態に係る検出システム100の動作(検出方法)の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理S101,S102は、検出システム100の動作(検出方法)を実行する前に行われる処理であり、検出システム100の動作(検出方法)に含まれなくてもよい。
【0078】
まず、試料10として用いる検出用検体を捕集する(S101)。これは、図示しない検体捕集部が動作することによって行われる。検体捕集部は、サイクロン式分離装置、又は、フィルタ式分離装置等によって流体から標的物質1を含み得る画分を分離することで検出用検体を捕集する。その他、検体捕集部としては、静電方式による捕集など、標的物質1を含み得る画分を分離するための公知の技術を任意に選択して適用することができる。なお、検体捕集部の構成によって異なるものの、標的物質1を含みうる画分を分離するための流体は、気体であってもよいし、液体でもよい。言い換えると、流体の性状に応じた検体捕集部を選択することで、検出システム100をあらゆる対象物に対して適用することができる。液体の画分が得られる場合には、得られた画分をそのまま試料10として用いることができる。また、気体の画分が得られる場合には、これをリン酸緩衝生理食塩水等の水溶液に懸濁して試料10とする。
【0079】
次に、試料10と、複数種類の標的物質1のそれぞれに対応する複数種類の誘電体粒子とを反応部160の容器内にともに収容して結合反応を生じさせる(S102)。これにより、試料10中に標的物質1が含まれる場合には、複合体粒子3が形成される。したがって、試料10には、複数種類の複合体粒子3と、複数種類の未結合粒子2とが含まれることになる。
【0080】
次に、反応部160から供給される試料10を、送液部170の備える送液ポンプを用いて流路4へ輸送することで、試料10を流路4の上流から下流へと流す(S103)。そして、隔離部180を動作させることにより、流路4を流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、一の種類の修飾粒子5と、他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離する(S104)。
【0081】
そして、検出部150を動作させることにより、隔離部180により隔離された一の種類の修飾粒子5を撮像素子140が撮像した画像に基づいて、試料10中の複合体粒子3に含まれる標的物質1を検出する(S105)。実施の形態では、検出部150を動作させる前に、分離部110を動作させることにより、一の種類の修飾粒子5について複合体粒子3と未結合粒子2とを誘電泳動により分離する処理が実行される。
【0082】
上記の処理S104,S105は、未だ隔離されていない標的物質1が存在している間、繰り返される(S106:No)。そして、全ての標的物質1が隔離されると(S106:Yes)、検出システム100の動作が終了する。
【0083】
実施の形態では、1回目の処理S104で、第1隔離部181により第1複合体粒子31及び第1誘電体粒子21が一の種類の修飾粒子5として隔離され、1回目の処理S105で、第1検出部151により第1複合体粒子31に含まれる第1標的物質11が検出される。また、実施の形態では、2回目の処理S104で、第2隔離部182により第2複合体粒子32及び第2誘電体粒子22が一の種類の修飾粒子5として隔離され、2回目の処理S105で、第2検出部152により第2複合体粒子32に含まれる第2標的物質12が検出される。
【0084】
[効果等]
以上のように、実施の形態に係る検出システム100は、送液部170と、隔離部180と、検出部150と、を備える。送液部170は、それぞれ互いに異なる標的物質1に特異的に結合する性質を有する特定物質20で修飾された誘電体粒子であって、互いに誘電泳動に対する挙動が異なる複数種類の修飾粒子5を含む試料10を、流路4の上流から下流へと流す。隔離部180は、流路4を流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、複数種類の修飾粒子5のうちの一の種類の修飾粒子5と、他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離する。検出部150は、隔離部180により隔離された一の種類の修飾粒子5から対応する標的物質1を検出する。
【0085】
これによれば、試料10中に複数種類の標的物質1が含まれている場合であっても、標的物質1を種類ごとに他の粒子とは異なる場所に隔離した上で検出することが可能である。このため、実施の形態に係る検出システム100では、複数の標的物質1を個別に検出しやすい、という利点がある。
【0086】
また、実施の形態に係る検出システム100では、一の種類の修飾粒子5は、誘電体粒子が標的物質1と結合した複合体粒子3と、複合体粒子3を形成していない誘電体粒子である未結合粒子2と、を含む。
【0087】
これによれば、一の種類の修飾粒子5として複合体粒子3のみを他の粒子と隔離する場合と比較して、隔離部180に要求される性能が低くて済むので、検出システム100を設計しやすい、という利点がある。
【0088】
また、実施の形態に係る検出システム100では、流路4は、2つの分岐路43を有する。そして、隔離部180は、一の種類の修飾粒子5と、他の粒子とをそれぞれ2つの分岐路43に分かれて流れるように隔離する。
【0089】
これによれば、一の種類の修飾粒子5と、他の粒子とをより精度良く互いに異なる場所へと隔離しやすくなる、という利点がある。
【0090】
また、実施の形態に係る検出システム100では、隔離部180は、複数である。そして、誘電泳動を試料10に作用させるために印加される交流電圧の周波数は、上流側にある隔離部180よりも、下流側にある隔離部180の方が低い。
【0091】
これによれば、上流から下流に向かうにつれて、各隔離部180において正析出された一の種類の修飾粒子5を順番に隔離しやすくなる、という利点がある。
【0092】
また、実施の形態に係る検出システム100では、隔離部180は、試料10に不均一な電場を生成することにより、誘電泳動を試料10に作用させる。
【0093】
これによれば、試料10に生成された不均一な電場に基づいて、誘電泳動を作用させることができる、という利点がある。
【0094】
また、実施の形態に係る検出システム100では、特定物質20は、抗体である。
【0095】
これによれば、標的物質1と誘電体粒子との結合を抗原抗体反応によって高い特異性で形成させることができる、という利点がある。
【0096】
また、実施の形態に係る検出方法では、それぞれ互いに異なる標的物質1に特異的に結合する性質を有する特定物質20で修飾された誘電体粒子であって、互いに誘電泳動に対する挙動が異なる複数種類の修飾粒子5を含む試料10を、流路4の上流から下流へと流す。また、実施の形態に係る検出方法では、流路4を流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、複数種類の修飾粒子5のうちの一の種類の修飾粒子5と、他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離する。また、実施の形態に係る検出方法では、隔離された一の種類の修飾粒子5から対応する標的物質1を検出する。
【0097】
これによれば、試料10中に複数種類の標的物質1が含まれている場合であっても、標的物質1を種類ごとに他の粒子とは異なる場所に隔離した上で検出することが可能である。このため、実施の形態に係る検出方法では、複数の標的物質1を個別に検出しやすい、という利点がある。
【0098】
(変形例)
以上、本開示の1つ又は複数の態様に係る検出システム及び検出方法について、それぞれ実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0099】
[第1変形例]
図9は、実施の形態の第1変形例に係る検出システム100Aの概略構成を示す図である。本変形例に係る検出システム100Aは、4つの隔離部180A(第1隔離部181A、第2隔離部182A、第3隔離部183A、及び第4隔離部184A)を備えている点で、実施の形態に係る検出システム100と相違する。また、本変形に係る検出システム100Aは、4つの隔離部180Aとそれぞれ対応する4つの検出部150(第1検出部151、第2検出部152、第3検出部153、及び第4検出部154)を備えている点で、実施の形態に係る検出システム100と相違する。なお、図9では図示を省略しているが、各検出部150には、図2に示す電源120等の検出部150以外の構成が共に設けられている。
【0100】
また、本変形に係る検出システム100Aでは、流路4は、2つの第1分岐路43Aと、2つの第2分岐路43Bとの他に、2つの第3分岐路43Cと、2つの第4分岐路43Dと、を更に有している点で、実施の形態に係る検出システム100と相違する。2つの第3分岐路43Cは、いずれも第2分岐路43Bから分岐した流路であり、一方の第3分岐路43Cは第3検出部153に繋がっている。2つの第4分岐路43Dは、いずれも他方の第3分岐路43Cから分岐した流路であり、一方の第4分岐路43Dは第4検出部154に繋がっている。
【0101】
本変形例では、第1隔離部181Aは、第1電極セット41Aに第1電源42Aから第4周波数F4の交流電圧を印加し、流路4を流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、一の種類の修飾粒子5(ここでは、第1誘電体粒子21(未結合粒子2))と、他の粒子(ここでは、第1複合体粒子31、第2誘電体粒子22(未結合粒子2)、第2複合体粒子32、及び夾雑物6)とを互いに異なる場所(ここでは、2つの第1分岐路43A)へと隔離する。一の種類の修飾粒子5は、2つの第1分岐路43Aのうちの一方の第1分岐路43Aを介して第1検出部151に対応する分離部110へと流れ込み、他の粒子は、他方の第1分岐路43Aへと流れ込む。
【0102】
第1検出部151に対応する分離部110は、電極セット1111に第5周波数F5(>第4周波数F4)の交流電圧を印加する。これにより、第1誘電体粒子21が負析出されるため、第1検出部151は、第1誘電体粒子21を検出することが可能である。
【0103】
また、第2隔離部182Aは、第2電極セット41Bに第2電源42Bから第3周波数F3の交流電圧を印加し、第1分岐路43Aを流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、一の種類の修飾粒子5(ここでは、第1複合体粒子31)と、他の粒子(ここでは、第2誘電体粒子22(未結合粒子2)、第2複合体粒子32、及び夾雑物6)とを互いに異なる場所(ここでは、2つの第2分岐路43B)へと隔離する。一の種類の修飾粒子5は、2つの第2分岐路43Bのうちの一方の第2分岐路43Bを介して第2検出部152に対応する分離部110へと流れ込み、他の粒子は、他方の第2分岐路43Bへと流れ込む。
【0104】
第2検出部152に対応する分離部110は、電極セット1111に第4周波数F4の交流電圧を印加する。これにより、第1複合体粒子31が負析出されるため、第2検出部152は、第1複合体粒子31を検出し、かつ、第1複合体粒子31に含まれる第1標的物質11を検出することが可能である。
【0105】
また、第3隔離部183Aは、第3電極セット41Cに第3電源42Cから第2周波数F2の交流電圧を印加し、第2分岐路43Bを流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、一の種類の修飾粒子5(ここでは、第2誘電体粒子22(未結合粒子2))と、他の粒子(ここでは、第2複合体粒子32、及び夾雑物6)とを互いに異なる場所(ここでは、2つの第3分岐路43C)へと隔離する。一の種類の修飾粒子5は、2つの第3分岐路43Cのうちの一方の第3分岐路43Cを介して第3検出部153に対応する分離部110へと流れ込み、他の粒子は、他方の第3分岐路43Cへと流れ込む。
【0106】
第3検出部153に対応する分離部110は、電極セット1111に第3周波数F3の交流電圧を印加する。これにより、第2誘電体粒子22が負析出されるため、第3検出部153は、第2誘電体粒子22を検出することが可能である。
【0107】
また、第4隔離部184Aは、第4電極セット41Dに第4電源42Dから第1周波数F1の交流電圧を印加し、第3分岐路43Cを流れる試料10に誘電泳動を作用させることで、一の種類の修飾粒子5(ここでは、第2複合体粒子32)と、他の粒子(ここでは、夾雑物6)とを互いに異なる場所(ここでは、2つの第4分岐路43D)へと隔離する。一の種類の修飾粒子5は、2つの第4分岐路43Dのうちの一方の第4分岐路43Dを介して第4検出部154に対応する分離部110へと流れ込み、他の粒子は、他方の第4分岐路43Dを流れて流路4から排出される。
【0108】
第4検出部154に対応する分離部110は、電極セット1111に第2周波数F2の交流電圧を印加する。これにより、第2複合体粒子32が負析出されるため、第4検出部154は、第2複合体粒子32を検出し、かつ、第2複合体粒子32に含まれる第2標的物質12を検出することが可能である。
【0109】
以上のように、第1変形例に係る検出システム100Aでは、一の種類の修飾粒子5は、誘電体粒子が標的物質1と結合した複合体粒子3を含む。そして、他の粒子は、複合体粒子3を形成していない誘電体粒子である未結合粒子2を含む。
【0110】
これによれば、標的物質1が結合した複合体粒子3のみと、未結合粒子2を含む他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離することができるので、標的物質1をより精度良く検出しやすくなる、という利点がある。
【0111】
なお、本変形例では、各検出部150と対応する分離部110において、隔離された試料10に対して誘電泳動を作用させて分離しているが、誘電泳動を作用させなくてもよい。この場合、各検出部150において分離部110は不要である。また、本変形例では、第1誘電体粒子21に対応する第1検出部151、及び第2誘電体粒子22に対応する第3検出部153を備えているが、これらの検出部151,153を備えていなくてもよい。
【0112】
[第2変形例]
図10は、実施の形態の第2変形例に係る検出システム100Bの概略構成を示す図である。本変形例に係る検出システム100Bは、2つの検出部150(ここでは、第1検出部151、及び第2検出部152)にそれぞれ対応する分離部110が、2つの隔離部180B(ここでは、第1隔離部181B、及び第2隔離部182B)を兼ねている点で、実施の形態に係る検出システム100と相違する。また、本変形例に係る検出システム100Bでは、流路4が分岐路を有していない点で、実施の形態に係る検出システム100と相違する。
【0113】
本変形例では、隔離部180Bにおいて、電極セット1111は、例えば流路4の内壁(側壁又は底壁)に設けられている。そして、本変形例では、隔離部180Bは、試料10の流路4への輸送を停止させた状態で、電極セット1111に電源120から交流電圧を印加することで、試料10に対して誘電泳動を所定時間にわたって作用させ、正析出される誘電体粒子を電極セット1111にて捕集する。その後、隔離部180Bは、試料10の流路4への輸送を再開させることで、負析出される他の粒子を流路4の下流側へと流す。これにより、隔離部180Bでは、一の種類の修飾粒子5が捕集され、他の粒子が流路4の下流へと流されることで、一の種類の修飾粒子5と他の粒子とが互いに異なる場所へ隔離される。
【0114】
具体的には、第1隔離部181Bは、試料10の流路4への輸送を停止させた状態で、対応する電極セット1111に対応する電源120から第3周波数F3の交流電圧を印加し、試料10に誘電泳動を所定時間にわたって作用させる。これにより、第1隔離部181Bは、一の種類の修飾粒子5(ここでは、第1誘電体粒子21、及び第1複合体粒子31)を捕集する。その後、第1隔離部181Bは、試料10の流路4への輸送を再開させることで、他の粒子(ここでは、第2誘電体粒子22、第2複合体粒子32、及び夾雑物6)を流路4の下流へと流すことで、一の種類の修飾粒子5と他の粒子とを互いに異なる場所へ隔離する。
【0115】
そして、第1隔離部181Bにおいて、対応する電極セット1111に対応する電源120から第4周波数F4の交流電圧を印加する。これにより、正析出する第1誘電体粒子21と、負析出する第1複合体粒子31とが分離されるので、第1検出部151は、分離された第1複合体粒子31を検出し、かつ、第1複合体粒子31に含まれる第1標的物質11を検出することが可能である。
【0116】
また、第2隔離部182Bは、試料10の流路4への輸送を停止させた状態で、対応する電極セット1111に対応する電源120から第1周波数F1の交流電圧を印加し、試料10に誘電泳動を所定時間にわたって作用させる。これにより、第2隔離部182Bは、一の種類の修飾粒子5(ここでは、第2誘電体粒子22、及び第2複合体粒子32)を捕集する。その後、第2隔離部182Bは、試料10の流路4への輸送を再開させることで、他の粒子(ここでは、夾雑物6)を流路4の下流へと流すことで、一の種類の修飾粒子5と他の粒子とを互いに異なる場所へ隔離する。下流へと流された他の粒子は、流路4から排出される。
【0117】
そして、第2隔離部182Bにおいて、対応する電極セット1111に対応する電源120から第2周波数F2の交流電圧を印加する。これにより、正析出する第2誘電体粒子22と、負析出する第2複合体粒子32とが分離されるので、第2検出部152は、分離された第2複合体粒子32を検出し、かつ、第2複合体粒子32に含まれる第2標的物質12を検出することが可能である。
【0118】
以上のように、第2変形例に係る検出システム100Bでは、隔離部180Bは、一の種類の修飾粒子5が下流へと流れないように捕集し、他の粒子を流路4の下流へ流すことにより隔離する。
【0119】
これによれば、流路4を分岐させずとも、一の種類の修飾粒子5と他の粒子とを互いに異なる場所へと隔離することができる、という利点がある。
【0120】
なお、本変形例では、流路4に沿って複数(ここでは、2つ)の検出部150と、対応する複数(ここでは、2つ)の隔離部180Bが設けられているが、これに限られない。例えば、流路4には、1つの検出部150と、対応する1つの隔離部180Bとが設けられていてもよい。この場合、検出部150及び隔離部180Bよりも下流に流れた試料10は一旦回収され、再び検出部150及び隔離部180Bの上流から流すように循環させることで、試料10を複数回、検出部150及び隔離部180Bを通過させることが可能である。そして、試料10を通過させるごとに、隔離部180Bで印加する交流電圧の周波数を変化させることで、本変形例と同様に、一の種類の修飾粒子5と他の粒子とを隔離させることが可能である。
【0121】
[その他の変形例]
例えば、上記実施の形態において、第1電極の第1凸部と第2電極の第2凹部とが第2方向に対向する電極セットを用いて不均一な電場を生成してもよい。
【0122】
また、電極セットに含まれる電極の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。3つ以上の電極を含む電極セットを用い、隣り合う電極間に印加される交流電圧に位相差が設けられてもよい。このような電極セットは、Castellated電極と呼ばれる場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示は、例えば感染症等の原因となるウイルス等の標的物質を検出する検出システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 標的物質
2 未結合粒子
3 複合体粒子
4 流路
5 修飾粒子
6 夾雑物
10 試料
11 第1標的物質
12 第2標的物質
20 特定物質
21 第1誘電体粒子
21a 第1基材
21b 第1特定物質
22 第2誘電体粒子
22a 第2基材
22b 第2特定物質
31 第1複合体粒子
32 第2複合体粒子
41 電極セット
41A 第1電極セット
41B 第2電極セット
41C 第3電極セット
41D 第4電極セット
42 電源
42A 第1電源
42B 第2電源
42C 第3電源
42D 第4電源
43 分岐路
43A 第1分岐路
43B 第2分岐路
43C 第3分岐路
43D 第4分岐路
100,100A,100B 検出システム
110 分離部
111 第1基板
112 スペーサ
113 第2基板
120 電源
130 光源
131 照射光
132 検出光
140 撮像素子
150 検出部
151 第1検出部
152 第2検出部
153 第3検出部
154 第4検出部
160 反応部
170 送液部
180,180A,180B 隔離部
181,181A,181B 第1隔離部
182,182A,182B 第2隔離部
183A 第3隔離部
184A 第4隔離部
411 第1電極
412 第2電極
1111 電極セット
1112 第1電極
1112a 第1基部
1112b 第1凸部
1112c 第1凹部
1113 第2電極
1113a 第2基部
1113b 第2凸部
1113c 第2凹部
1121 空間
1131 供給孔
1132 排出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10