(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191728
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】水硬性混合物の表面処理装置および構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20221221BHJP
E04G 21/10 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G21/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100128
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良史
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳知
(72)【発明者】
【氏名】砂田 直孝
【テーマコード(参考)】
2E172
2E174
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DE01
2E172HA00
2E174AA03
2E174DA14
2E174EA07
(57)【要約】
【課題】水硬性混合物が積層されて構築される構造物の表面に積層される層の境界部分に線が残ることを防止できる水硬性混合物の表面処理装置および構造物の施工方法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物11(構造物)を施工する領域を移動しながら水硬性混合物2を吐出して積層する付加製造装置3(吐出装置)ととともに移動し、付加製造装置3から吐出された水硬性混合物2の側面22(表面)を均す水硬性混合物の表面処理装置1であって、水硬性混合物2の側面22に接触して側面22を均すハケ部5(均し部)と、付加製造装置3に取り付けられてハケ部5を支持するハケ支持部6(支持部)と、を有し、ハケ部5は、ハケ支持部6に対して水硬性混合物2が積層される積層方向に移動可能に構成され、付加製造装置3から吐出された水硬性混合物2の新設の層211よりも、下側(水硬性混合物2の既設の層212側)に配置可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を施工する領域を移動しながら水硬性混合物を吐出して積層する吐出装置とともに移動し、前記吐出装置から吐出された前記水硬性混合物の表面を均す水硬性混合物の表面処理装置であって、
前記水硬性混合物の表面に接触して前記表面を均す均し部と、
前記吐出装置に取り付けられて前記均し部を支持する支持部と、を有し、
前記均し部は、前記支持部に対して前記水硬性混合物が積層される積層方向に移動可能に構成され、前記吐出装置から吐出された前記水硬性混合物の新設の層よりも、前記新設の層が重なる既に設けられた前記水硬性混合物の既設の層側に配置可能である水硬性混合物の表面処理装置。
【請求項2】
前記均し部は、前記支持部に対して着脱可能である請求項1に記載の水硬性混合物の表面処理装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記均し部の前記積層方向に交差する方向の位置を調整可能である請求項1または2に記載の水硬性混合物の表面処理装置。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか一項に記載の水硬性混合物の表面処理装置を用いて構造物を施工する構造物の施工方法であって、
前記吐出装置で吐出された前記水硬性混合物の新設の層と、前記新設の層が重なる既に設けられた前記水硬性混合物の既設の層との境界部分に前記均し部を接触させ、前記境界部分を均す工程を有する構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性混合物の表面処理装置および構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設業界では慢性的な人手不足が懸念され、特にコンクリート構造物の施工では、省力化・省人化が喫緊の課題である。これを解決する方法のひとつとして、部材のプレキャスト化がある。また、近年では、建設用として、付加製造装置でコンクリート材料やモルタル材料を押し出して積層する方式(以下、積層式とする)や、型に付加製造装置でショットクリートを吹き付ける方式(以下、吹付式とする)の3Dプリンティング技術が研究されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
積層式の3Dプリンティング技術は、吹付式の3Dプリンティング技術と比べて、型枠が不要である、自由曲面を精度良く作成することが可能で意匠の自由度が上がる、または内部で組成を変えることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-2744号公報
【特許文献2】特開2020-111941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、積層式の3Dプリンティング技術では、材料の流動性が非常に低く、押し出された材料はほとんど広がらないため、既に押し出された層と、その層の上に押し出される層との境界部分に線が残ってしまう。その結果、多数の層で構成されるコンクリート構造物は、表面(側面)に多数の線が残り、意匠性に影響が出ることがある。
【0006】
そこで、本発明は、水硬性混合物が積層されて構築される構造物の表面に積層される層の境界部分に線が残ることを防止できる水硬性混合物の表面処理装置および構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る水硬性混合物の表面処理装置は、構造物を施工する領域を移動しながら水硬性混合物を吐出して積層する吐出装置とともに移動し、前記吐出装置から吐出された前記水硬性混合物の表面を均す水硬性混合物の表面処理装置であって、前記水硬性混合物の表面に接触して前記表面を均す均し部と、前記吐出装置に取り付けられて前記均し部を支持する支持部と、を有し、前記均し部は、前記支持部に対して前記水硬性混合物が積層される積層方向に移動可能に構成され、前記吐出装置から吐出された前記水硬性混合物の新設の層よりも、前記新設の層が重なる既に設けられた前記水硬性混合物の既設の層側に配置可能である。
【0008】
本発明に係る構造物の施工方法は、上記の水硬性混合物の表面処理装置を用いて構造物を施工する構造物の施工方法であって、前記吐出装置で吐出された前記水硬性混合物の新設の層と、前記新設の層が重なる既に設けられた前記水硬性混合物の既設の層との境界部分に前記均し部を接触させ、前記境界部分を均す工程を有する。
【0009】
本発明では、水硬性混合物の表面処理装置が吐出装置に取り付けられた状態で積層方向に移動可能に構成された均し部を吐出装置から吐出された水硬性混合物の新設の層よりも、水硬性混合物の層が重なる既に設けられた水硬性混合物の既設の層側に配置可能である。このため、均し部を水硬性混合物の新設の層とその層が重なる既設の層との境界部分と接触する位置に配置した状態で吐出装置とともに移動させることができる。これにより、積層される水硬性混合物の層の境界部分が均し部によって均され、積層される水硬性混合物の層の境界部分に線ができることを防止できる。
また、積層された層間の隙間を無くすことができるため、構築された構造物に雨水や塵などが入り込むことを防止でき、構造物の劣化や汚損を防ぐことができる。
【0010】
また、本発明に係る水硬性混合物の表面処理装置では、前記均し部は、前記支持部に対して着脱可能であってもよい。
【0011】
このような構成とすることにより、支持部に取り付ける均し部の種類を変えることにより、構造物の表面の仕上げを変えることができる。
【0012】
また、本発明に係る水硬性混合物の表面処理装置では、前記支持部は、前記均し部の前記積層方向に交差する方向の位置を調整可能であってもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、吐出装置から吐出される水硬性混合物の形状や、均し部の形状に合わせて均し部を所望の位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水硬性混合物が積層されて構築される構造物の表面に積層される層の境界部分に線が残ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による水硬性混合物の表面処理装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による構造物の施工方法のベース部の上の層の吐出工程を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による構造物の施工方法のさらに上側の層の吐出工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による水硬性混合物の表面処理装置および構造物の施工方法について、
図1-
図3に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による水硬性混合物の表面処理装置1は、モルタルやコンクリート材料などの水硬性混合物を吐出して積層しコンクリート構造物11(構造物)を構築する3Dプリンティング技術を採用した付加製造装置3(吐出装置)とともに使用される。本実施形態のコンクリート構造物11は、壁状の構造物で水平方向に延びる複数の層21が上下方向(図の矢印Zの方向)に重なってできている。各層21は、水平方向に移動する付加製造装置3のノズル31から吐出された水硬性混合物2で構築されている。各層21は、長尺の板状または棒状で、それぞれの上下方向から見た平面視形状が略同じ形となっている。
【0017】
本実施形態では、上述しているように、水硬性混合物2の層21が積層される積層方向が上下方向であり、ノズル31は水平方向に移動する。以下の説明では、ノズル31が移動する水平方向(図の矢印Xの方向)を移動方向または前後方向と表記し、移動方向に直交する水平方向(図の矢印Yの方向)を幅方向と表記する。前後方向では、ノズル31が進む側を前側と表記し、その反対側を後側と表記する。幅方向は、構築された壁状のコンクリート構造物11の壁面に直交する方向である。
【0018】
図1に示すように、付加製造装置3は、水硬性混合物2を吐出するノズル31と、ノズル31を移動可能に支持するノズル支持部(不図示)と、を有している。ノズル31には、図示しないタンクから水硬性混合物2が供給される。
本実施形態による水硬性混合物の表面処理装置1は、付加製造装置3とともに移動し、ノズル31から吐出された水硬性混合物2の表面22を均す装置であり、付加製造装置3に取り付けられるアタッチメントである。本実施形態では、水硬性混合物の表面処理装置1は、水硬性混合物2の側面を均している。水硬性混合物2の側面とは、幅方向を向く面となる。以下では、水硬性混合物の表面処理装置1が均す水硬性混合物の表面22を「側面22」と表記する。
【0019】
水硬性混合物の表面処理装置1は、ノズル31から吐出された水硬性混合物2の側面22に接触して均すハケ部5(均し部)と、ハケ部5を支持するハケ支持部6(支持部)と、を有している。
ハケ支持部6は、ノズル支持部に固定されノズル支持部とともに移動する。ハケ支持部6は、ハケ部5を水硬性混合物2の上下方向(積層方向)に移動可能に支持する。ハケ支持部6は、ノズル31の後側に配置される。ハケ支持部6は、ノズル支持部に固定される固定部61と、ハケ部5が取り付けられるハケ取付部62と、固定部61とハケ取付部62とを接続する接続部63と、を有している。
【0020】
固定部61は、ノズル支持部に固定される第1固定部611と、接続部63が取り付けられる第2固定部612と、を有している。第1固定部611と第2固定部612とは、連結されている。
第2固定部612は、長尺の平板状であり、上下方向に延び、板面が幅方向を向く向きに配置されている。第2固定部612には、幅方向に貫通する丸孔の第1孔部613が上下方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、第2固定部612には、3つの第1孔部613が上下方向に間隔をあけて設けられている。3つの第1孔部613を上側から下側に向かって第1孔部613a、613b、613cとする。
【0021】
接続部63は、断面逆T字形状からなり、第2固定部612に取り付けられる第1接続部631と、ハケ取付部62が取り付けられる第2接続部632と、を有している。第1接続部631と第2接続部632とは、連結されている。
第1接続部631は、長尺の平板状であり、上下方向に延び、板面が幅方向を向く向きに配置されている。第1接続部631には、幅方向に貫通する上下方向に延びる第1長孔部633が形成されている。
【0022】
第1接続部631と第2固定部612とは、幅方向に重なって配置され、ピンやボルトなどの第1固定具71によって上下方向に相対移動可能に固定される。なお、第1接続部631と第2固定部612とは、幅方向および前後方向の相対移動が拘束される。
【0023】
第1接続部631と第2固定部612とは、以下のように固定される。第2接続部612の3つの第1孔部613のうちの下側2つの第1孔部613b,613cと第1接続部631の第1長孔部633とが幅方向に重なって配置され、幅方向に重なった下側2つの第1孔部613b,613cそれぞれと第1長孔部633とに第1固定具71が挿通される。第1接続部631は、第2固定部612に対して、第1長孔部633の上端633aが3つの第1孔部613のうちの中央の第1孔部613bに挿通された第1固定具71と接触する高さから、第1長孔部633の下端633bが3つの第1孔部613のうちの最下の第1孔部613cに挿通された第1固定具71と接触する高さの範囲において上下方向に移動可能である。すなわち、接続部63、ハケ取付部62およびハケ部5は、固定部61およびノズル支持部に対して上記の高さの範囲において上下方向に移動可能である。以下では、接続部63、ハケ取付部62およびハケ部5を合わせて可動部4とする。
【0024】
図1および
図3では、第1長孔部633の上端633aが3つの第1孔部613のうちの中央の第1孔部613bに挿通された第1固定具71と接触しており、第1接続部631が第2固定部612に対して移動可能な上下範囲の最下に配置されている状態を示している。
図2では、第1接続部631が第2固定部612に対して移動可能な上下範囲の中間位置に配置されている状態を示している。
なお、可動部4は、重力によって第2固定部612に対して下方へ移動可能な構成となっている。換言すると、可動部4は、重力以外の外力が作用しない場合は、第1長孔部633の上端633aが3つの第1孔部613のうちの中央の第1孔部613bに挿通された第1固定具71と接触する最下の位置に配置される。また、重力以外の外力が作用した場合は、例えば可動部4は、ハケ部5の下端がベース部12(後述する)と接触したり、接続部63の下面またはハケ取付部62の下面が積層された水硬性混合物2と接触したりすると、その高さに配置される。
【0025】
第2接続部632は、長尺の平板状であり、板面が上下方向を向く向きで第1接続部631の下端部の幅方向の両側それぞれに接続されている。換言すると幅方向の一方側の第2接続部632は、第1接続部631の下端部から幅方向の一方側に突出し、幅方向の他方側の第2接続部632は、第1接続部631の下端部から幅方向の他方側に突出している。各第2接続部632には、上下方向に貫通し幅方向に延びる第2長孔部634がそれぞれ形成されている。
【0026】
ハケ取付部62は、長尺の平板状であり、板面が水平面となる向きに配置される。ハケ取付部62は、各第2接続部632それぞれに1つずつ固定される。ハケ取付部62には、上下方向に貫通し幅方向に延びる第3長孔部621が形成されている。
【0027】
第2接続部632とハケ取付部62とは、上下方向に重なって配置され、第2接続部632の第2長孔部634と、ハケ取付部62の第3長孔部621とに挿通されたピンやボルトなどの第2固定具72(
図1に破線で図示)でいずれの方向の相対移動が拘束されるように固定されている。本実施形態では、ハケ取付部62が第2接続部632の下側に重なっている。第2接続部632の第2長孔部634およびハケ取付部62の第3長孔部621は、第2固定具72の径よりも長く形成されている。第2接続部632とハケ取付部62とは、それぞれの長孔部の一部どうしが第2固定具72を挿通できるように重なっていれば互いに固定可能である。ハケ取付部62は、第2接続部632と面が重なるように配置されれば、第2接続部632に対する水平面内の角度は、所望の角度とすることができる。これにより、ハケ取付部62を第2接続部632に対して固定する位置および角度は、それぞれの長孔部の長さ範囲において調整可能である。
【0028】
ハケ部5は、2つのハケ取付部62にそれぞれ1つずつ固定される。ハケ部5は、水硬性混合物2の側面22に接触するハケ本体51と、ハケ本体51に固定されてハケ取付部62に固定されるL字形のブラケット52と、を有している。
ブラケット52は、L字形の一方の片(第1片53)がハケ取付部62に固定され、他方の片(第2片54)がハケ本体51に固定される。第1片53および第2片54は、それぞれ平板状である。ブラケット52は、第1片53の板面が水平面となり、第2片54が第1片53の一端面から下側に突出する向きに延在される。
【0029】
第1片53には、上下方向に貫通する第2孔部55が形成されている。第1片53は、ハケ取付部62と上下方向重なって配置され、ハケ取付部62の第3長孔部621と第1片53の第2孔部55に挿通されたピンやボルトなどの第3固定具73(
図1に破線で図示)によって固定される。ハケ部5は、ブラケット52の第1片53がハケ取付部62と面が重なるように配置されれば、ハケ取付部62に対する水平面内の角度は、所望の角度とすることができる。これにより、ハケ部5をハケ取付部62に対して固定する位置および角度は、ハケ取付部62の第3長孔部621の範囲において調整可能である。
【0030】
本実施形態では、ブラケット52は、第1片53がハケ取付部62の下側に配置され、第2片54が第1片53よりも下側に突出している。第2片54に固定されたハケ本体51は、ハケ取付部62の下側に配置されている。
【0031】
ハケ部5は、ハケ取付部62に対して着脱可能である。本実施形態では、上記と同様のブラケット52を有する異なる形態のハケ部をハケ取付部62に取り付け可能である。例えば、材質(毛質)や毛量が異なるハケ部を取り付け可能である。また、ハケ部5は各ハケ取付部62の少なくとも1つに取り付けられれば良く、個数は適宜変更可能である。
【0032】
本実施形態による水硬性混合物の表面処理装置1では、ハケ取付部62を接続部63に固定する際に、第2接続部632の第2長孔部634およびハケ取付部62の第3長孔部621の長さ範囲において接続部63に対するハケ取付部62の位置および角度を調整することができる。ハケ部5をハケ取付部62に固定する際に、ハケ取付部62の第3長孔部621の長さ範囲においてハケ取付部62に対するハケ部5の位置および角度をすることができる。このように、固定部61に対して、接続部63、ハケ取付部62、ハケ部5の位置や角度を調整することで、ノズル31に対するハケ部5の位置や角度を調整することができる。
【0033】
水硬性混合物の表面処理装置1は、ノズル31に対して以下のように配置される。接続部63の第2接続部632は、ノズル31の吐出口の後方で、ノズル31から吐出された水硬性混合物2の上側となる位置に配置される。ハケ本体51は、ノズル31から吐出された水硬性混合物2の新設の層211と、その下側の既に設けられた水硬性混合物2の既設の層212との境界部分213に接触可能な高さまで上下方向に移動できるように配置される。
【0034】
本実施形態による構造物の施工方法は、上記の付加製造装置3および水硬性混合物の表面処理装置11を用いて行う。
まず、コンクリート構造物11の下端に、付加製造装置3のノズル31から吐出される水硬性混合物2を積層するためのベース部12(プリントベース)を構築する。ベース部12は、上下方向から見た平面視形状がコンクリート構造物11の平面視形状よりも幅方向の両側に大きく構築される。
【0035】
続いて、
図2に示すように、ベース部12の上に付加製造装置3のノズル31から水硬性混合物2を吐出する。
ベース部12の上にノズル31および第2接続部632が配置され、ハケ本体51がノズル31の上方に配置されるように付加製造装置3および水硬性混合物の表面処理装置11を設置する。ノズル31をベース部12に沿って移動させながら、ノズル31から水硬性混合物2を吐出し、ベース部12の上に水硬性混合物2の層21を構築する。このとき、可動部4は、ハケ部5の下端部がベース部12の上面と接触し、ベース部12の上面に沿って移動する。ハケ部5のハケ本体51は、ベース部12の上に吐出された水硬性混合物2の側面22に接触し側面22を均している。可動部4は、ノズル31および固定部61に対して移動可能な高さ範囲の中間の高さに配置される。
【0036】
続いて、ノズル31を移動させ、既にベース部12の上に設けられた水硬性混合物2の層21(既設の層212)の上に新たな水硬性混合物2の層21(新設の層211)を構築する。このとき、ノズル31および固定部61が上昇するが、可動部4は、接続部の下面63またはハケ取付部62の下面が積層された水硬性混合物2の上面と接触する高さとなる。これにより、ハケ本体51が既設の層212および新設の層211の側面22と接触する高さに配置される。ノズル31とともにノズル31の移動方向(前後方向)移動するハケ本体51が既設の層212と新設の層211との境界部分213を均し、既設の層212と新設の層211との境界部分213に線が残ることを防止できる。
【0037】
そして、
図3に示すように、積層された水硬性混合物2の層21(既設の層212)の上に新たな水硬性混合物2の層21(新設の層211)を順次構築して、所定の高さとなるまで水硬性混合物2の層21を積層する。このときも可動部4は、接続部の下面63またはハケ取付部62の下面が積層された水硬性混合物2の上面と接触する高さとなり、ハケ本体51が既設の層212および新設の層211の側面22と接触する高さに配置される。これにより、上記と同様に既設の層212と新設の層211との境界部分213に線が残ることを防止できる。
なお、本実施形態では、可動部4が、接続部の下面63またはハケ取付部62の下面が積層された水硬性混合物2の上面と接触する高さとなると、ハケ本体51が既設の層212と新設の層211との境界部分213および、この既設の層212とさらに下側の既設の層214との境界部分215の両方に接触する位置に配置される。これにより、既にハケ本体51によって均された層21の境界部分215を、再度ハケ本体51で均すことができ、上下に重なる層21の境界部分215に線が残ることを確実に防止することができる。
ハケ本体51は、弾性変形可能であるため、既設の層212と新設の層211との間に段差が生じた場合も、ハケ本体51が弾性変形して既設の層212と新設の層211との境界部分213に接触し、その段差を均すことができる。
【0038】
次に、上記の本実施形態による水硬性混合物の表面処理装置および構造物の施工方法の作用・効果について説明する。
上記の本実施形態による水硬性混合物の表面処理装置1は、付加製造装置3に取り付けられた状態でハケ本体51をノズル31から吐出された水硬性混合物2の新設の層211よりも、その下の水硬性混合物2の既設の層212との境界部分213に接触できる高さに配置可能である。このため、ハケ本体51を水硬性混合物2の新設の層21とその層が重なる既設の層212との境界部分213と接触する位置に配置した状態で付加製造装置3とともに移動させることができる。これにより、積層される水硬性混合物2の層21の境界部分213がハケ本体51によって均され、積層される水硬性混合物2の層21の境界部分213に線ができることを防止できる。
また、積層された層21間の隙間を無くすことができるため、構築されたコンクリート構造物11に雨水や塵などが入り込むことを防止でき、コンクリート構造物11の劣化や汚損を防ぐことができる。
【0039】
また、本実施形態による水硬性混合物の表面処理装置1では、ハケ部5は、ハケ支持部6に対して着脱可能である。このような構成とすることにより、ハケ支持部6に取り付けるハケ部5の種類を変えることにより、コンクリート構造物11の側面22の仕上げを変えることができる。例えば、材質(毛質)や毛量が異なるハケ部を取り付けることにより、新設の層211と既設の層212との境界部分213の線を消しつつ、異なる模様を形成することができる。
【0040】
また、本実施形態による水硬性混合物の表面処理装置1では、ハケ支持部6は、ハケ本体51の水平方向の位置(積層方向に交差する方向の位置)を調整可能である。このような構成とすることにより、ノズル31から吐出される水硬性混合物2の形状や、ハケ本体51の形状に合わせてハケ本体51を所望の位置に配置することができる。
【0041】
以上、本発明による水硬性混合物の表面処理装置および構造物の施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、水硬性混合物2を積層する積層方向が上下方向であるが、水平方向や、水平方向に対して傾斜する方向であってもよい。
また、上記の実施形態では、ハケ部5は、ハケ支持部6に対して着脱可能であるが、ハケ支持部6に固定されていてもよい。
また、上記の実施形態では、ハケ支持部6は、ハケ本体51の水平方向の位置を調整可能であるが、ハケ本体51を調整可能な方向や範囲は、上記の実施形態以外であってもよい。
【0042】
また、上記の実施形態の水硬性混合物の表面処理装置1には、均し部として、ハケを採用しているが、ハケに代わってスポンジなどの新設の層211と既設の層212との境界部分213を均すことが可能な治具を設けてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、ハケ本体51を既設の層212と新設の層211との境界部分213および、この既設の層212とさらに下側の既設の層212との境界部分213の両方に接触する位置に配置している。これに対し、ハケ本体51を既設の層212と新設の層211との境界部分213を均すことが可能であれば、その下側の層21の境界部分213と接触しないように設置されてもよい。
【0044】
また、上下方向に移動可能な可動部4は、自動で行っても良く、例えば、モーター駆動、シリンダ駆動などの駆動源によって移動可能になされても構わない。
【0045】
また、ハケ部5をハケ取付部62に対して固定する位置および角度は、自動で行っても良く、例えば、モーター駆動、シリンダ駆動などの駆動源によって位置決め、または角度決めをしても構わない。
【符号の説明】
【0046】
1 水硬性混合物の表面処理装置
2 水硬性混合物
3 付加製造装置(吐出装置)
4 可動部
5 ハケ部(均し部)
6 ハケ支持部(支持部)
11 コンクリート構造物(構造物)
21 層
22 側面
31 ノズル
211 新設の層
212,214 既設の層
213,215 境界部分