(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191731
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】車両の背もたれ構造
(51)【国際特許分類】
A61G 3/00 20060101AFI20221221BHJP
A61G 3/08 20060101ALI20221221BHJP
A47C 7/42 20060101ALI20221221BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61G3/00
A61G3/08
A47C7/42
B60N3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100138
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関塚 誠
【テーマコード(参考)】
3B084
3B088
【Fターム(参考)】
3B084FA00
3B088CA01
(57)【要約】
【課題】背もたれで車椅子使用者に加わる衝撃を緩和でき、かつ、車両に背もたれを容易に着脱可能とし、かつ、コスト低減を図りやすい構造を実現する。
【解決手段】車両の背もたれ構造30は、車両の室内に固定され、水平方向に延びる横手すり部36と、柔軟な材料により形成されたクッション部41を有し、車両の室内に支持された状態で車椅子に着座した車椅子使用者の背中部を受け止める背もたれ40とを含む。背もたれ40は、下側に開口し、横手すり部36に係止される凹形状部43を有し、横手すり部36に取り外し可能に支持される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内に固定され、水平方向に延びる横手すり部と、
柔軟な材料により形成されたクッション部を備え、前記車両の室内に支持された状態で車椅子に着座した車椅子使用者の背中部を受け止める背もたれと、を備え、
前記背もたれは、下側に開口し、前記横手すり部に係止される凹形状部を有し、前記横手すり部に取り外し可能に支持される、
車両の背もたれ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の背もたれ構造において、
前記背もたれは、前記クッション部に包埋され、前記凹形状部の内面に沿って下側に開口した形状を有する補強パイプを含む、
車両の背もたれ構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両の背もたれ構造において、
前記横手すり部における前記車両の壁部側側面と前記壁部との間に固定され、前記横手すり部に対する結合側端部が前記横手すり部の延伸方向と直交する方向に延伸される手すり補強ブラケットを有し、
前記背もたれは、前記壁部側部分で下端が開口し、前記背もたれの前記壁部側端と前記凹形状部とを接続し、前記手すり補強ブラケットの前記結合側端部が係止されるブラケット係止溝を有する、
車両の背もたれ構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の背もたれ構造において、
前記背もたれは、前記車椅子を固定するためのベルトを収納可能な収納部を有する、
車両の背もたれ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の室内で車椅子に着座した車椅子使用者の背中部を受け止める背もたれを備える背もたれ構造に関し、特に、車椅子使用者に加わる衝撃の緩和と、背もたれの着脱の容易化と、コスト低減とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車椅子使用者座席を有するバスにおいて、車椅子に乗車した使用者の背中に対向するようにクッション性を有する背もたれが配置され、背もたれが支柱により床上に支持されることが記載されている。これにより、バスの急発進や追突による車椅子使用者への衝撃を緩和するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車椅子使用者が車椅子に着座した状態で乗車可能な車両において、背もたれが車両に対し容易に取り外しできないように固定されている場合には、車椅子使用者が乗車しない場合に、背もたれの配置スペースが無駄になる。一方、背もたれを、ネジ等の締結部材を用いて車両に取り付ける場合には、車両に背もたれを着脱する作業が面倒である。また、背もたれを車両に支持する構造のコストを下げたい要求がある。
【0005】
本発明の目的は、車両の背もたれ構造において、背もたれで車椅子使用者に加わる衝撃を緩和でき、かつ、車両に背もたれを容易に着脱可能とし、かつ、コスト低減を図りやすい構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の背もたれ構造は、車両の室内に固定され、水平方向に延びる横手すり部と、柔軟な材料により形成されたクッション部を備え、前記車両の室内に支持された状態で車椅子に着座した車椅子使用者の背中部を受け止める背もたれと、を備え、前記背もたれは、下側に開口し、前記横手すり部に係止される凹形状部を有し、前記横手すり部に取り外し可能に支持される、車両の背もたれ構造である。
【0007】
本発明に係る車両の背もたれ構造によれば、車椅子使用者の背中部を、クッション部を備え横手すり部に係止される背もたれが受け止めることができるので、車両が急ブレーキをかけた場合等、車両の挙動が大きくなった場合でも背もたれで車椅子使用者に加わる衝撃を緩和することができる。また、背もたれを持ち上げることで横手すり部から容易に取り外すことができると共に、横手すり部に凹形状部を係止させることで背もたれを横手すり部に容易に取り付けることができる。また、背もたれの車両への支持に横手すり部を使用できるので、車両に背もたれの支持のための専用の部品を設ける必要がない。これにより、コスト低減を図りやすい。
【0008】
本発明に係る車両の背もたれ構造において、前記背もたれは、前記クッション部に包埋され、前記凹形状部の内面に沿って下側に開口した形状を有する補強パイプを含む構成としてもよい。
【0009】
上記構成によれば、クッション部に包埋され凹形状部の内面に沿って下側に開口した形状を有する補強パイプにより、凹形状部の形状を維持しやすくなるので、横手すり部からの背もたれの脱落が生じにくくなる。
【0010】
また、本発明に係る車両の背もたれ構造において、前記横手すり部における前記車両の壁部側側面と前記壁部との間に固定され、前記横手すり部に対する結合側端部が前記横手すり部の延伸方向と直交する方向に延伸される手すり補強ブラケットを有し、前記背もたれは、前記壁部側部分で下端が開口し、前記背もたれの前記壁部側端と前記凹形状部とを接続し、前記手すり補強ブラケットの前記結合側端部が係止されるブラケット係止溝を有する構成としてもよい。
【0011】
上記構成によれば、手すり補強ブラケットの横手すり部に対する結合側端部がブラケット係止溝に係止されることにより、背もたれが横手すり部の延伸方向にずれ動くことが抑制されると共に、車両に、背もたれが横手すり部の延伸方向に移動することを抑制するための専用の部品を設ける必要がない。
【0012】
また、本発明に係る車両の背もたれ構造において、前記背もたれは、前記車椅子を固定するためのベルトを収納可能な収納部を有する構成としてもよい。
【0013】
上記構成によれば、ベルトの不要時に収納部にベルトを収納できると共に、車椅子使用者が乗車しない場合にベルトと背もたれとを一体で保管できるので、ベルトの保管作業及び車椅子使用者の乗車準備作業の容易化を図れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両の背もたれ構造によれば、背もたれで車椅子使用者に加わる衝撃を緩和でき、かつ、車両に背もたれを容易に着脱可能とし、かつ、コスト低減を図りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の背もたれ構造が搭載された車両の室内の斜視図である。
【
図2】
図1の室内において、車椅子使用者の背中部に背もたれが対向配置された状態を、左右方向に見た図である。
【
図3】横手すり部の一部で、補強ブラケットを介して車両の壁部に固定される部分を、仕切り板部を省略して示す斜視図である。
【
図4】背もたれ構造を車両後側から見た斜視図である。
【
図5】背もたれ構造を車両前側から見た斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態の別例の背もたれ構造において、背もたれの下側部分を省略して車両前側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態の車両の背もたれ構造を説明する。この説明において、具体的な形状、材料、個数、配置位置等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、仕様に応じて適宜変更することができる。また、各図に示す矢印F、矢印U、矢印Rは、車両の前方向、上方向、右方向をそれぞれ示している。また、各矢印F,矢印U,矢印Rの反対方向は、車両の後方向、下方向、左方向をそれぞれ意味する。
【0017】
図1は、実施形態の背もたれ構造30が搭載された車両1の車室2内の斜視図である。
図2は、車室2内において、車椅子使用者100の背中部101に背もたれ40が対向配置された状態を、車両の左右方向に見た図である。
【0018】
背もたれ構造30は、乗り合い自動車であるバス型の車両1に設けられる。車両1には、車椅子80に着座した車椅子使用者100が乗車可能である。背もたれ構造30は、車椅子使用者100の背中部101を、横手すり部36に支持された背もたれ40で受け止める。背もたれ40は、下側に開口し、横手すり部36に係止される凹形状部43を有し、横手すり部36に取り外し可能に支持される。これにより、車両1に背もたれ40が容易に着脱可能となり、かつ、コスト低減を図りやすい構造を実現できる。以下では、まず、車両1の車室2内の構成を説明し、その後、背もたれ構造30を詳しく説明する。
【0019】
車両1は、車室2内の前部に設けられた運転席3と、車室2内で運転席3より後側の位置に設けられた複数の乗客用のシート(図示せず)とを備える。車室2内において、運転席3の後側には壁部4が固定されている。壁部4は、仕切り板部5と、仕切り板部5の前側に設けられたフレーム構造7(
図2)とを含んで形成される。
図1ではフレーム構造の図示を省略する。仕切り板部5は、硬質樹脂材料や金属材料で形成される。仕切り板部5は、床から上方向に延びており、中間部に設けられて傾斜した傾斜部6で、斜め後側に向かって曲げられ、その傾斜部6より上側部分で上側に向かって延びている。仕切り板部5は、運転席3が配置された運転空間S1と、車椅子80を配置可能な車椅子配置空間S2とを仕切る役目を有する。
【0020】
フレーム構造7は、仕切り板部5の前側に隣接して配置され、上下方向に延びる複数の柱部と、横方向に延びる複数のフレームとを組み合わせることにより形成される。フレーム構造7は、仕切り板部5及び運転席3のそれぞれを支持する役目を有する。
【0021】
車椅子配置空間S2において、右端に設けられた車室壁8付近には、前後方向に延びる管状の端手すり9が設けられる。端手すり9の前後方向の複数位置は、端手すり9の下側に設けられた車体フレーム(図示せず)にブラケットを介して固定される。また、仕切り板部5の後側には、左右方向に延びる横手すり部36と上下方向に延びる上下手すり部35とが略L字形に連結されている。上下手すり部35の下端は車室2の床面に固定される。横手すり部36の右端は端手すり9に連結されるか、または端手すり9と分離して車体フレームに固定される。これにより、横手すり部36は、車室2内に固定される。
【0022】
図3は、横手すり部36の一部で、補強ブラケット37を介して壁部4に固定される部分を、仕切り板部を省略して示す斜視図である。横手すり部36は、延伸方向である左右方向中間部が補強ブラケット37で壁部4に固定される。補強ブラケット37は、略S字形に曲げられた管状であり、横手すり部36における壁部4側の前側面と壁部4との間に固定され、横手すり部36に対する結合側端部38が、横手すり部36の延伸方向と直交する前後方向に延伸される。より具体的には、補強ブラケット37は、一端に設けられたフランジ39が壁部4のフレーム構造7にねじ止め固定される。一方、横手すり部36の左右方向中間部には、T字形の継手69の嵌合部が固定され、継手69の嵌合部から直交する前後方向に分岐した差し込み口に手すり補強ブラケット37の結合側端部38が差し込まれて固定される。手すり補強ブラケット37は、仕切り板部5に形成された穴5a(
図2)を通じてフレーム構造7に固定される。
【0023】
端手すり9は、乗客が手で掴んで姿勢を保持するために使用される。端手すり9は、車椅子80を第1ベルトB1で固定するためにも使用される。横手すり部36は、後述のように背もたれ40を支持するために使用される。
【0024】
図4~
図7に示すように、背もたれ構造30は、上記の横手すり部36と、背もたれ40とを含んで構成される。背もたれ40は、クッション部41と、クッション部41に包埋された補強パイプ50とを有する。
図5では、補強パイプ50を斜線部で示している。クッション部41は、概略縦長のブロック状で、前側面の上下方向中間部に左右方向全長にわたって延びる溝部42を有する。また、後述のように横手すり部36に背もたれ40が支持された状態で、背もたれ40の位置が固定される。
【0025】
クッション部41の後側面には、上下方向の全長にわたって左右方向中央に向かって曲面状に窪んだ凹部46が形成される。これにより、車椅子使用者100の背中部101を凹部46に嵌まりやすくし、背もたれ40に対し背中部101が左右にずれ動くことを抑制できる。「背中部」とは、車椅子使用者100の背中自体、または、この背中と、車椅子80の背中側端に設けられ車椅子使用者100の背中を押し当て可能な背当てとを含む部分を意味する。
【0026】
クッション部41は、柔軟な材料、例えばポリウレタン等の発泡樹脂からなるスポンジ材により形成される。クッション部41は、スポンジ材の表面が、伸縮性を有し、略全面に密着されたカバーで覆われた構成としてもよい。例えば、カバーは、ポリウレタン系弾性繊維等の伸縮性を有する糸で編成された構成としてもよい。
【0027】
クッション部41に設けられた溝部42は、クッション部41の前面と、左右方向両端面とに開口し、上端部に、左右方向に延びる凹形状部43を有する。凹形状部43は、左右方向に直交する断面形状が略U字形であり、下側に開口する。これにより、
図4、
図5に示すように、凹形状部43の内側に横手すり部36を係止させることが可能であり、背もたれ40は、横手すり部36に取り外し可能に支持される。
【0028】
また、クッション部41は、壁部側部分である前側部分に形成され、クッション部41の前側端と凹形状部43とを前後方向に接続するブラケット係止溝45を有する。ブラケット係止溝45は、前後方向に対し直交する断面形状が下側に開口した略U字形であり、前後方向に延びる。ブラケット係止溝45に結合側端部38が係止されるので、後述のように、背もたれ40が横手すり部36の延伸方向にずれ動くことが抑制される。
【0029】
図5~
図7に示すように、補強パイプ50は、クッション部41の内部で凹形状部43の内面付近に包埋される。補強パイプ50は、鉄等の金属製の管を曲げることにより形成され、両端の2つの第1U字形部51と、中間の第2U字形部52と、両U字形部51,52を連結する2つの直線部53とを含んでいる。第1U字形部51は、凹形状部43の内面に略沿って凹形状部43をまたぐように、下側に開口した形状を有する。このため、第1U字形部51により、凹形状部43の形状を維持しやすくなるので、横手すり部36に凹形状部43を係止した状態で横手すり部36からの背もたれ40の脱落が生じにくくなる。
【0030】
第2U字形部52は、ブラケット係止溝45の内面に略沿ってブラケット係止溝45をまたぐように、下側に開口した形状を有する。このため、第2U字形部52により、ブラケット係止溝45の形状を維持しやすくなるので、手すり補強ブラケット37の結合側端部38にブラケット係止溝45を係止した状態で、結合側端部38に対するブラケット係止溝45の外れが生じにくくなる。
【0031】
また、クッション部41の前面の上部には、縦長矩形の穴である2つの収納部47,48が形成される。2つの収納部47,48の一方には、車椅子80を車両1に固定するための後述の第1ベルトB1を収納可能である。2つの収納部47,48の他方には、車椅子80を車両1に固定する場合に、車椅子80に車椅子使用者100を固定するための後述の第2ベルトB2を収納可能である。
【0032】
車両1に車椅子使用者100が乗車する場合には、車椅子使用者100の乗車前に予め運転者等のバス事業会社の従業員が、背もたれ40を車椅子配置空間S2に運び、横手すり部36に背もたれ40を支持する。このとき、背もたれ40の溝部42の前端開口に横手すり部36を通過させてから、横手すり部36に凹形状部43を上側から係止させる。また、これと同時に、手すり補強ブラケット37の結合側端部38にブラケット係止溝45を上側から係止させる。この状態で、手すり補強ブラケット37の結合側端部38の左右方向両端は、ブラケット係止溝45の左右方向両面と接触する。これにより、結合側端部38がブラケット係止溝45に係止されることにより、背もたれ40が横手すり部36の延伸方向にずれ動くことが抑制される。また、車両1に背もたれ40が横手すり部36の延伸方向に移動することを抑制するための専用の部品を設ける必要がない。また、背もたれ40の前側面は、仕切り板部5の後側面に接触する。これにより、横手すり部36に背もたれ40が支持された状態で、背もたれ40の位置が固定される。
【0033】
この状態で、車椅子80に着座した車椅子使用者100は、車椅子配置空間S2に、車両後方に向いた状態で乗車し、背中部101を背もたれ40に押し付ける。背もたれ40は、車椅子使用者100の背中を直接受け止めてもよいし、車椅子80に設けられた背当てを介して車椅子使用者100の背中を受け止めてもよい。
【0034】
また、車椅子80の左右の車輪81を仕切り板部5の下部側面に押し付けた状態で、車椅子80の左のひじ掛けが第1ベルトB1を介して端手すり9に固定される。第1ベルトB1の一端に設けられたリング部が端手すり9にかけ渡されると共に、第1ベルトB1の他端に設けられたリング部が車椅子80の左のひじ掛けにかけ渡され、第1ベルトB1の長さが調整されることで、端手すり9と車椅子80との間で第1ベルトB1が引っ張られる。また、車椅子使用者100の胴部回りは、車椅子80の左右2つのハンドル軸83の外側にリング状にかけ渡された第2ベルトB2によって車椅子80に固定される。この第2ベルトB2により、車椅子使用者100の姿勢が保持される。
【0035】
一方、車両1に車椅子使用者100が乗車しない場合には、第1、第2ベルトB1、B2及び背もたれ40を車両1、または車椅子80から取り外し、各ベルトB1,B2は背もたれ40の収納部47,48に収納する。そして、背もたれ40は、車両に設けられた部品室、またはバス事業会社の保管場所等に保管しておく。これにより、車椅子配置空間S2から背もたれ40を取り除くことができるので、車椅子配置空間S2に多くの乗客が乗車できることにより、車室内の空間の有効利用を図れる。また、この状態で、横手すり部36は、乗客が手で掴んで姿勢を保持するために使用されてもよい。
【0036】
上記の背もたれ構造30によれば、車椅子使用者100の背中部101を、クッション部41を備え横手すり部36に係止される背もたれ40が受け止めることができるので、車両1が急ブレーキをかけた場合等、車両1の挙動が大きくなった場合でも背もたれ40で車椅子使用者100に加わる衝撃を緩和することができる。また、背もたれ40を持ち上げることで横手すり部36から容易に取り外すことができると共に、横手すり部36に凹形状部43を係止させることで背もたれ40を横手すり部36に容易に取り付けることができる。これにより、車両1に背もたれ40を容易に着脱可能である。また、背もたれ40の車両1への支持に横手すり部36を使用できるので、車両1に背もたれ40の支持のための専用の部品を設ける必要がない。これにより、背もたれ構造30のコスト低減を図りやすい。
【0037】
また、背もたれ40が、車椅子80を車両1に固定するための第1ベルトB1、または車椅子使用者100の姿勢を保持するための第2ベルトB2を収納可能な収納部47,48を有する。このため、各ベルトB1,B2の不要時に各収納部47,48に第1ベルトB1または第2ベルトB2を収納できると共に、車椅子使用者100が乗車しない場合に各ベルトB1,B2と背もたれ40とを一体で保管できるので、各ベルトB1,B2の保管作業及び車椅子使用者100の乗車準備作業の容易化を図れる。
図5に示すように、収納部47,48は、大きさを異ならせる場合には、ベルトB1,B2のうち、長いベルトを大きい収納部47に収納し、短いベルトを小さい収納部48に収納することができる。
【0038】
なお、ブラケット係止溝45は、背もたれ40の左右方向中央に形成される場合に限定せず、背もたれ40の左右方向中央から左右方向一方側にずれた位置に形成されてもよい。
【0039】
図8は、実施形態の別例の背もたれ構造30aにおいて、背もたれ40aの下側部分を省略して車両前側から見た斜視図である。
図9は、背もたれ構造30aの
図8のB-B断面図である。本例の構成では、背もたれ40aの全体の左右方向一方側から見た形状は、下側に開口した略U字形である。これにより、背もたれ40aは、下側に開口し、横手すり部36に係止される凹形状部70を有する。背もたれ40aは、凹形状部70の上部で横手すり部36に取り外し可能に支持される。背もたれ40aの壁部側部分である前側部分では、下端が開口し、背もたれ40aの前側端と凹形状部70とを前後方向に接続するブラケット係止溝71が形成される。ブラケット係止溝71は、背もたれ40を前側から見た場合に上下方向に長い略U字形である。
【0040】
背もたれ40aを横手すり部36に係止する場合には、横手すり部36に背もたれ40aの凹形状部70を上側から係止すると共に、横手すり部36から、横手すり部36の延伸方向に対し直交する前後方向に延伸された結合側端部38に、背もたれ40aのブラケット係止溝71を上側から係止する。本例では、仕切り板部5bの後側面は、上下方向に沿っており、背もたれ40aの前側面はこの仕切り板部5bの後側面に接触させる。背もたれ40aのベルト収納用の収納部は、背もたれ40aの下側の図示しない位置に設けられる。本例の構成によれば、背もたれ40aがより単純な形状となる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図7の構成と同様である。
【0041】
なお、別例の構成として、上記の各例の背もたれ40、40aにおいて、補強パイプと、ブラケット係止溝と、収納部とのうち、いずれか1つ、または2つのみを備える構造としてもよい。
【0042】
また、上記の各例では、車椅子使用者100が車両1の後方に向いて車椅子80に着座した状態で車両に乗車する場合を説明したが、本発明はこれに限定せず、車椅子使用者は、車両の前方、または車幅方向に向いて車椅子に着座した状態で車両に乗車する構成としてもよい。この場合も、上記の各例と同様に、背もたれは、水平方向に延びる横手すり部に凹形状部が係止されることで、横手すり部に背もたれが支持される。例えば、車椅子使用者が車幅方向に向いて乗車する場合に、車両前後方向に延びる端手すりが横手すり部に相当し、端手すりに背もたれの凹形状部が係止されることにより背もたれが支持される。
【符号の説明】
【0043】
1 車両、2 車室、3 運転席、4 壁部、5 仕切り板部、5a 穴、5b 仕切り板部、6 傾斜部、7 フレーム構造、8 車室壁、30,30a 背もたれ構造、35 上下手すり部、36 横手すり部、37 手すり補強ブラケット、38 結合側端部、39 フランジ、40,40a 背もたれ、41 クッション部、42 溝部、43 凹形状部、45 ブラケット係止溝、46 凹部、47,48 収納部、49 前側突部、50 補強パイプ、51 第1U字形部、52 第2U字形部、53 直線部、69 継手、70 凹形状部、71 ブラケット係止溝、80 車椅子、81 車輪、83 ハンドル軸、100 車椅子使用者、101 背中部。