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特開2022-191761生体情報測定システム、および測定端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191761
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】生体情報測定システム、および測定端末
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20221221BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61B5/00 D
G08C17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100196
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】谷井 恵一
(72)【発明者】
【氏名】亘理 聡一
【テーマコード(参考)】
2F073
4C117
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA31
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC09
2F073CC12
2F073CD11
2F073DD02
2F073DE02
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE01
2F073EE11
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG04
2F073GG05
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB06
4C117XD22
4C117XD26
4C117XE03
4C117XE06
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE20
4C117XE23
4C117XE24
4C117XE37
4C117XF03
4C117XG01
4C117XG05
4C117XH01
4C117XH16
4C117XJ13
4C117XJ26
4C117XJ45
4C117XJ52
4C117XJ55
4C117XL01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定端末自体の小型軽量化をより進めるとともに、本体機器との間の迅速なデータ通信を可能とする生体情報測定システムを提供する。
【解決手段】測定対象者の体に装着されて前記測定対象者の生体情報を測定する測定端末10と、前記測定端末から、生体データを受け取る本体機器20とを有し、前記測定端末は、前記測定端末の動作を制御する制御部15と、時間情報を生成する基準クロック12と、前記生体データを記憶する記憶部16と、前記生体データを生成する生体データ生成部13と、前記生体情報を測定する時間間隔を変更する測定間隔変更部14と、前記記憶部に記憶された前回の通信接続成立時以降の全ての前記生体データと、前記測定対象者の生体情報を測定した経過時間情報とを、前記本体機器へと送信するデータ送信部17とを備え、前記測定タイミングデータが、前回生体情報を測定してからの測定間隔を示す時間情報である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象者の体に装着されて前記測定対象者の生体情報を測定する測定端末と、
前記測定端末と短距離通信手段により接続されて、前記測定端末から、前記測定対象者の生体情報の測定値と当該生体情報が測定された時間を示す測定タイミングデータとを含む生体データを受け取る本体機器とを有し、
前記測定端末は、
前記測定端末の動作を制御する制御部と、
時間情報を生成する基準クロックと、
前記生体データを記憶する記憶部と、
所定の時間間隔で前記測定対象者の生体情報を測定して前記生体データを生成する生体データ生成部と、
前記生体情報の測定値に基づいて生体情報を測定する時間間隔を変更する測定間隔変更部と、
前記本体機器との通信接続が成立した際に、前記記憶部に記憶された前回の通信接続成立時以降の全ての前記生体データと、前記測定対象者の生体情報を測定した直前の測定時からの経過時間を示す経過時間情報とを、前記本体機器へと送信するデータ送信部とを備え、
前記測定タイミングデータが、前回生体情報を測定してからの測定間隔を示す時間情報であることを特徴とする、生体情報測定システム。
【請求項2】
前記測定タイミングデータが、複数段階に区分された分単位の時間間隔であり、前記生体データは、前記測定タイミングデータを、前記区分を示す記号データに置き換えて含んでいる、請求項1に記載の生体情報測定システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記本体機器との通信接続が成立し前記生体データの送信が完了した後に、前記記憶部に記憶されていた前記生体データを消去する、請求項1または2に記載の生体情報測定システム。
【請求項4】
前記本体機器は、前記測定端末から送信された生体データについて、それぞれの生体データに含まれる前記測定タイミングデータを時刻データに変換し、前記生体情報の測定値と前記時刻データとを含む測定結果データを生成する、請求項1から3のいずれかに記載の生体情報測定システム。
【請求項5】
前記本体機器は、前記測定端末との通信接続が成立した時に、一つ前の通信接続成立時からの経過時間と前記タイミングデータの積算値とを比較して前記測定端末での前記タイミングデータの較正を行う、請求項1から4のいずれかに記載の生体情報測定システム。
【請求項6】
前記生体情報が前記測定対象者の体温である、請求項1から5のいずれかに記載の生体情報測定システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載された生体情報取得システムに用いられ、測定対象者の体に装着されて前記測定対象者の生体情報を測定する測定端末であって、
前記測定端末は、
前記測定端末の動作を制御する制御部と、
時間情報を生成する基準クロックと、
前記生体データを記憶する記憶部と、
所定の時間間隔で前記測定対象者の生体情報を測定して前記生体データを生成する生体データ生成部と、
前記生体情報の測定値に基づいて生体情報を測定する時間間隔を変更する測定間隔変更部と、
前記本体機器との通信接続が成立した際に、前記記憶部に記憶された前回の通信接続成立時以降の全ての前記生体データと、前記測定対象者の生体情報を測定した直前の測定時からの経過時間を示す経過時間情報とを、前記本体機器へと送信するデータ送信部とを備え、
前記測定タイミングデータが、前回生体情報を測定してからの測定間隔を示す時間情報であることを特徴とする、測定端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、測定対象者に小型の測定端末を装着して、一定の期間にわたって当該測定対象者の体温、心拍数、発汗量などの生体情報の変化を把握する際に用いられる生体情報測定システムと当該システムに用いられる測定端末に関し、特に、測定対象者に装着される測定端末でのデータ処理における情報量を低減して、データの記憶時や測定端末からのデータ送信時における機器の負荷を低減した生体情報測定システムと測定端末に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の期間、例えば数日間から2週間程度にわたって測定対象者に体温計を装着して、体温の変化を把握する体温測定システムが知られている。
【0003】
このような体温測定システムにおいては、体温計と、体温計との間の無線または有線の通信によってデータが転送される本体機器とを有していて、体温計での測定結果は、随時、または、一定の時間間隔でまとめて、若しくは、測定期間が終了した後に一度に、のいずれかのタイミングでこの本体機器に送信されて管理される。
【0004】
一定期間測定対象者の体表に密着して配置される必要があることから、体温計には小型軽量であることが強く求められる。このため、測定結果を記憶する記憶部の大きさ、すなわち容量に制限があり、また、測定の都度本体機器にデータを送信する方法では、送信部が頻繁に動作することとなって体温計での電力負荷が増大し、体温計が備える動作電源としてのバッテリーの容量が大きくなるという問題がある。
【0005】
従来、測定対象者に装着される体温計と、体温計での測定結果を無線通信で受け取る本体機器である体温表示装置とを有する体温測定システムにおいて、体温を測定する間隔を広げてデータ量を小さくする一方、体温計に測定対象者の心拍数を検出する機能を備えて、体温と心拍数とから測定対象者の体調が悪いと判断された場合には、体温を測定する間隔を短くするものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014- 64751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された従来の体温測定システムでは、測定対象者の心拍数を把握することで、体温の変化のみによる判断よりも正確に測定対象者の体調変化を検知でき、体温計での体温測定頻度を高くすることで、測定対象者の体温変化を正確に追跡することができる。
【0008】
しかし、上記従来の体温測定システムの場合、体温計で把握された測定対象者の体温データについては特に考慮されていない。このため、例えば測定対象者の体調が良くない状態が続けば、測定頻度が高い状態で体温を測定することとなり、測定結果を示す情報量が増大して体温計内部の記憶容量が圧迫されるとともに、体温計と体温表示装置との間での無線通信時のデータ量が大きくなってデータ送信時間が長くなってしまう。なお、このデータ容量に関する課題は、体温測定システムに限られたものではなく、心拍数や発汗量などの測定対象者の生体情報を継続して測定する生体情報測定システム全体に共通するものである。
【0009】
本願は、上記従来技術の有する課題を解決することを目的とするものであり、測定対象者が装着した測定端末における測定結果を示すデータ量を削減して、測定端末自体の小型軽量化をより進めるとともに、測定端末と本体機器との間の迅速なデータ通信を可能とする生体情報測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願で開示する生体情報測定システムは、測定対象者の体に装着されて前記測定対象者の生体情報を測定する測定端末と、前記測定端末と短距離通信手段により接続されて、前記測定端末から、前記測定対象者の生体情報の測定値と当該生体情報が測定された時間を示す測定タイミングデータとを含む生体データを受け取る本体機器とを有し、前記測定端末は、前記測定端末の動作を制御する制御部と、時間情報を生成する基準クロックと、前記生体データを記憶する記憶部と、所定の時間間隔で前記測定対象者の生体情報を測定して前記生体データを生成する生体データ生成部と、前記生体情報の測定値に基づいて生体情報を測定する時間間隔を変更する測定間隔変更部と、前記本体機器との通信接続が成立した際に、前記記憶部に記憶された前回の通信接続成立時以降の全ての前記生体データと、前記測定対象者の生体情報を測定した直前の測定時からの経過時間を示す経過時間情報とを、前記本体機器へと送信するデータ送信部とを備え、前記測定タイミングデータが、前回生体情報を測定してからの測定間隔を示す時間情報であることを特徴とする。
【0011】
また、本願で開示する測定端末は、本願で開示するいずれかの生体情報取得システムに用いられ、測定対象者の体に装着されて前記測定対象者の生体情報を測定する測定端末であって、前記測定端末は、前記測定端末の動作を制御する制御部と、時間情報を生成する基準クロックと、前記生体データを記憶する記憶部と、所定の時間間隔で前記測定対象者の生体情報を測定して前記生体データを生成する生体データ生成部と、前記生体情報の測定値に基づいて生体情報を測定する時間間隔を変更する測定間隔変更部と、前記本体機器との通信接続が成立した際に、前記記憶部に記憶された前回の通信接続成立時以降の全ての前記生体データと、前記測定対象者の生体情報を測定した直前の測定時からの経過時間を示す経過時間情報とを、前記本体機器へと送信するデータ送信部とを備え、前記測定タイミングデータが、前回生体情報を測定してからの測定間隔を示す時間情報であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により、本願で開示する生体情報測定システムは、測定端末で測定された生体情報と紐つけられて取り扱われる測定タイミングデータを、測定間隔を示す時間情報とすることで、取り扱うデータ量を削減することができる。このため、測定端末が備える記憶部の容量の増大を抑え、本体機器とのデータ通信におけるデータ量が小さくなるので、測定端末の小型軽量化や測定対象者を拘束する時間を短くすることができる。
【0013】
また、本願で開示する測定端末は、上記生体情報測定システムに用いられる測定端末として、小型、軽量化することができ、装着する測定対象者にかける負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態にかかる体温測定システムの各部の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態にかかる体温測定システムに用いられる体温計の構成を示す分解斜視図である。
図3図3は、本実施形態にかかる体温測定システムに用いられる体温計の動作面に注目した各部材の関係を説明するための模式図である。
図4図4は、本実施形態にかかる体温測定システムの体温計を測定対象者が装着している状態を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の生体情報測定システムは、測定対象者の体に装着されて前記測定対象者の生体情報を測定する測定端末と、前記測定端末と短距離通信手段により接続されて、前記測定端末から、前記測定対象者の生体情報の測定値と当該生体情報が測定された時間を示す測定タイミングデータとを含む生体データを受け取る本体機器とを有し、前記測定端末は、前記測定端末の動作を制御する制御部と、時間情報を生成する基準クロックと、前記生体データを記憶する記憶部と、所定の時間間隔で前記測定対象者の生体情報を測定して前記生体データを生成する生体データ生成部と、前記生体情報の測定値に基づいて生体情報を測定する時間間隔を変更する測定間隔変更部と、前記本体機器との通信接続が成立した際に、前記記憶部に記憶された前回の通信接続成立時以降の全ての前記生体データと、前記測定対象者の生体情報を測定した直前の測定時からの経過時間を示す経過時間情報とを、前記本体機器へと送信するデータ送信部とを備え、前記測定タイミングデータが、前回生体情報を測定してからの測定間隔を示す時間情報である。
【0016】
このようにすることで、本願で開示する生体情報測定システムでは、測定結果である生体情報とともに管理される当該生体情報を取得した測定タイミングデータを、前回の測定時からの測定間隔を示す時間情報として把握する。このため、時間情報を絶対時間として把握する場合と比較して、測定端末内で処理されるデータ情報量を効果的に低減でき、データを記憶する記憶部の容量の低減や、データ送信時の通信時間の短縮を行うことができる。
【0017】
本開示の生体情報測定システムにおいて、前記測定タイミングデータが、複数段階に区分された分単位の時間間隔であり、前記生体データは、前記測定タイミングデータを、前記区分を示す記号データに置き換えて含んでいることが好ましい。このようにすることで、生体データに含まれる測定タイミングデータのデータ量をさらに低減することができる。
【0018】
また、前記制御部は、前記本体機器との通信接続が成立し前記生体データの送信が完了した後に、前記記憶部に記憶されていた前記生体データを消去することが好ましい。このようにすることで、測定端末の記憶部の容量を小さく抑えることができ、測定端末の小型軽量化を行うことができる。
【0019】
さらに、前記本体機器は、前記測定端末から送信された生体データについて、それぞれの生体データに含まれる前記測定タイミングデータを時刻データに変換し、前記生体情報の測定値と前記時刻データとを含む測定結果データを生成することが好ましい。このようにすることで、本体機器で取り扱われる測定結果データが、測定タイミングを明確に把握可能な時刻データとなって、生体情報の測定結果の管理が容易となる。
【0020】
さらにまた、前記本体機器は、前記測定端末との通信接続が成立した時に、一つ前の通信接続成立時からの経過時間と前記タイミングデータの積算値とを比較して前記測定端末での前記タイミングデータの較正を行うことが好ましい。このようにすることで、測定端末内の基準クロックデータが正確ではない場合でも、測定された生体情報の測定タイミングデータを正確なものとして把握することができる。
【0021】
なお、前記生体情報としては、測定対象者の体温のほか、心拍数、呼吸数、血糖値、血圧、血中酸素飽和度、発汗量などの情報を例示することができる。特に、体温は、様々な状況下で測定することが求められる生体情報であるので、本発明を適用することがより望ましい。
【0022】
本開示の測定端末は、上記下本開示の生体情報測定システムに用いられ、測定対象者の体に装着されて前記測定対象者の生体情報を測定する測定端末であって、前記測定端末は、前記測定端末の動作を制御する制御部と、時間情報を生成する基準クロックと、前記生体データを記憶する記憶部と、所定の時間間隔で前記測定対象者の生体情報を測定して前記生体データを生成する生体データ生成部と、前記生体情報の測定値に基づいて生体情報を測定する時間間隔を変更する測定間隔変更部と、前記本体機器との通信接続が成立した際に、前記記憶部に記憶された前回の通信接続成立時以降の全ての前記生体データと、前記測定対象者の生体情報を測定した直前の測定時からの経過時間を示す経過時間情報とを、前記本体機器へと送信するデータ送信部とを備え、前記測定タイミングデータが、前回生体情報を測定してからの測定間隔を示す時間情報である。
【0023】
このようにすることで、測定端末内部で取り扱われる生体データの情報量が低減されるため、長時間装着していても測定対象者にかける負担が小さな測定端末を実現することができる。
【0024】
以下、本願で開示する生体情報測定システムとこの生体情報システムで使用される測定端末について、具体的な実施形態を用いて説明する。
【0025】
なお、本発明により、例えば、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標3「すべての人に健康と福祉を」に寄与することができる。
【0026】
(実施の形態)
本実施形態で例示して説明する生体情報測定システムは、測定対象者の生体情報として体温を測定する体温測定システムである。より具体的には、測定端末である体温計を測定対象者の体表に触れるように装着した状態で、所定の測定期間(一例として2週間)にわたって継続して測定対象者の体温の変化を生体データとして取得するシステムを例示する。
【0027】
図1は、本実施形態にかかる体温測定システムの各部の構成例を示すブロック図である。
【0028】
なお図1は、本実施形態にかかる体温測定システムの測定端末である体温計10と、本体機器であるスマートフォン20とについて、その動作内容や機能面の観点から構成部材を記載したものである。このため、図1に示すそれぞれのブロックは物理的な構成、例えば、それぞれの機能を実現する回路素子の構成をブロックとして示すものではない。このため、図1では、一つの構成部材として示されているブロックを複数の回路ブロックで、場合によっては異なる回路基板上に分散して構成されている場合があり、反対に、図1に示す複数のブロックを一つの回路素子で実現している場合もあり得る。
【0029】
本実施形態にかかる体温測定システムは、測定対象者の体表に装着されて体温を測定する測定端末である体温計10と、この体温計10と短距離無線通信で接続されて体温計10で測定された測定対象者の体温の情報を受け取る本体機器であるスマートフォン20とを有している。
【0030】
体温計10は、測定対象者の体温を計測する生体情報取得部11、体温計10内部での時間情報の基準となるクロック信号を出力する基準クロック12、生体情報取得部11で取得された測定対象者の体温の測定値と、その測定値が得られた測定タイミングを表す測定タイミングデータとを組み合わせて生体データを生成する生体データ生成部13、測定対象者の体温の変化に基づいて体温を測定する測定時間の間隔を変更する測定間隔変更部14、生体データ生成部13で生成された生体データを記憶する記憶部16、記憶部16に記憶された生体データを本体機器であるスマートフォン20へと送信するデータ送信部17、スマートフォン20から送信される測定タイミングデータの校正値などを受信するデータ受信部18、これら体温計10内の各部の動作を制御する制御部15を備えている。
【0031】
図2は、本実施形態にかかる体温測定システムの体温計の構成を説明するための分解斜視図である。
【0032】
また、図3は、本実施形態にかかる体温測定システムの体温計の特に動作面に注目した各部材の関係を説明するための模式図である。
【0033】
さらに、図4は、本実施形態にかかる体温測定システムの体温計を測定対象者が装着している状態を示すイメージ図である。
【0034】
本実施形態にかかる体温測定システムの体温計10は、測定対象者30の体表に密着して配置される。また、例えば2週間の測定期間の間、測定対象者30に装着された状態が続くことになるため、測定対象者30の負担にならないように、小型軽量であることが強く求められる。さらに、測定対象者30が入浴したり、汗をかいたりすることにより、体温計10が水や水分に晒された場合でも、正常に動作して体温を測定することができるように、防水処置が施されている。
【0035】
図2に分解斜視図を示すように、体温計10は、ポリプロピレンなどの樹脂製の上側筐体1と下側筐体2とが外殻を構成していて、この外殻の内部に回路基板3や電池6が組み込まれた状態で、上側筐体1と下側筐体2との接続部分が超音波圧着されて内部を水密に保っている。なお、図2に示す体温計10の場合、その外径は22mm、厚さは4.5mmである。
【0036】
体温計10が備える生体情報取得部10である体温測定部は、基板3上に配置されたチップタイプの温度センサ4と、温度センサ4の温度感知部と測定対象者30の体表とを熱的に接続する金属端子5によって構成されている。金属端子5の図2中の下端側の部分は下側筐体2に形成された同径の開口部内に埋め込まれるようになっていて、金属端子5の下端面は下側筐体2の下面と同じ位置にあって、体温計10が測定対象者30の体表に装着された際に、金属端子5の下端面が測定対象者30の皮膚に直接触れるようになっている。また、金属端子5の温度を温度センサ4でより確実に検出することができるように、金属端子5と温度センサ4との間には伝熱グリスが塗布されている。
【0037】
体温計10で測定された測定対象者30の体温の測定値は、測定された時間を示す時間情報である測定タイミングデータと関連付けられる必要がある。体温計10における時間情報は、水晶振動子により構成された基準クロック12によって生成される。
【0038】
基準クロック12に用いられる水晶振動子としては、例えば、汎用されている32MHzタイプのものを好適に使用することができる。なお、後述のように、本実施形態の体温測定システムでは、体温計10とスマートフォン20との間の無線通信がブルートゥース(Bluetooth:登録商標、以下この注記は省略する)規格を用いて行われる。このため、基準クロック12としては、ブルートゥース規格に対応した±50ppm以内の精度を有するものを用いることが好ましい。
【0039】
生体データ生成部13は、生体情報取得部11で取得された生体情報である測定対象者30の体温の測定値と、その測定値が取得された時間を示す時間情報である測定タイミングデータとを結びつけて生体データである体温データを生成する。本実施形態にかかる体温測定システムでは、体温の測定値と結びつけられる時間情報として、コンピュータシステムで通常使用されているユニックス(UNIX:登録商標)タイムを用いるのではなく、前回の体温測定時からの経過時間、すなわち、体温の測定間隔を表す時間情報を測定タイミングデータとして用いる。
【0040】
体温データは、測定対象者の体温が測定される度に、そのときの体温の測定値と前回の測定時との測定間隔、すなわち、一つ前の測定時からの経過時間であるタイミングデータとが結びつけられて生成されていく。生成された生体データは、記憶部16に順次記憶されていく。
【0041】
本実施形態にかかる体温測定システムでは、被測定者の体温を測定する間隔が予め定められている。基本的な体温の測定間隔は、一例として、30分、1時間、2時間等々の比較的長い間隔に設定されている。しかし、例えば、測定対象者の体調が悪くなった場合などは、体温の測定間隔を、15分、10分、5分、1分など、測定者の体温の変化を測定する当初目的に応じて、適宜より短い測定間隔に設定が変更される。測定間隔変更部14は、測定結果として得られる測定対象者30の体温の変化、例えば、測定提唱者の体温が高くなった場合には、測定間隔がより短くなるように変更する。また、測定対象者の体温が例えば36.8°を超えた場合には体温の測定間隔を第1段階短くし、さらに体温が37.5°を超えた場合にはさらにもう一段階測定間隔を短くするなど、必要に応じて閾値を複数個設けて体温の測定間隔を段階に分けて変更することができる。また、測定間隔変更部14は、測定対象者の体温が下がって閾値を下回った場合には、当初設定していた測定間隔に順次戻すなど、体温の測定間隔が長くなるように変更することもできる。
【0042】
制御部15は、体温計10に搭載された各回路部品の動作を制御する。制御部15は、ICチップ化されたマイコン(マイクロコンピュータ)や、各種演算回路素子の集合体として構成することができる。
【0043】
記憶部16は、生体データ生成部13で生成された体温データを記憶する。また、記憶部16は、生体情報取得部11が測定対象者の体温を測定する初期設定の測定間隔や、測定間隔変更部14において測定間隔を変更する基準となる閾値などの、体温計10が動作する際に制御部15やそれぞれの動作回路部が参照するデータが記憶される。なお、小型軽量であることが求められる体温計10に用いられる記憶部16としては、容量を大きくしすぎることはできず、例えば容量が64Kbit程度で消費電力の小さいメモリであるEEPROMを好適に使用することができ、フラッシュメモリを使用することもできる。また、記憶部16のデータ容量を小さく抑えるために、体温計10とスマートフォン20との間のデータ通信によって記憶部16内の体温データが送信された後には、送信された古い体温データを全て消去するような動作制御を行うことが好ましい。
【0044】
本実施形態にかかる体温測定システムの体温計10は、本体機器であるスマートフォン20との間の短距離無線通信の手段として、ブルートゥースを使用している。このため、体温計10のデータ送信部17とデータ受信部18とは、ブルートゥース規格に準じた送受信部である。
【0045】
スマートフォン20とのブルートゥース規格に基づく無線通信接続が成立すると、制御部15は、記憶部16で記憶されていた全ての体温データを、データ送信部17からスマートフォン20に送信する。このとき、制御部15は、基準クロック12の情報から、データ送信時点と、その直前における測定対象者の体温測定を行った測定時からの経過時間を把握して、同様にデータ送信部17からスマートフォン20へと送信する。
【0046】
なお、図2図3に示すように、体温計10は、その動作電源としてボタン型の電池6を備えている。電池6としては、ボタン型の一次電池の他にも、例えば空気電池や充放電可能な二次電池も使用可能ではあるが、空気電池の場合は、正極活物質として使用される酸素を取り入れる必要があるため、上下の筐体1、2が防水されてシーリングされている本実施形態の体温計の場合は、別途水分が侵入しないようにされた空気孔を設ける必要がある。また、二次電池を使用することで、体温計10を繰り返し使用することができるようになるが、小型の二次電池は容量が小さく頻繁に充電する必要性や充電時に発熱する可能性があるため、途切れなく継続して体温を測定する用途には不向きであり、二次電池よりも上記例示したボタン型の一次電池を用いることがより好ましい。
【0047】
図3に示されているように、本実施形態にかかる体温計10は、上下の筐体1、2の内部にフォトトランジスタ7が配置されている。筐体1、2の少なくともいずれか一方を、上述のようにポリプロピレンなどの一定以上の透光性を有する樹脂部材で構成するとともに、内部にフォトトランジスタ7を備えることで、フォトトランジスタ7が光を検知したら体温計10内部の電気回路が動作を開始するようにする。また、製造後すぐに体温計10を、光を通さない部材であるラミネートフィルム50などの内部に密封して保管することで、使用開始時にラミネートフィルム50から取り出すまでの間体温計10の動作を最低限の維持動作のみに限定して、体温計10が実際に使用される前に電池6が消耗する事態を効果的に回避することができる。
【0048】
体温計10は、測定対象者30の皮膚に金属端子5が接触するように装着される。体温計10が所定の体温測定期間の間同じ状態で測定対象者の表皮に接触しているように維持するため、体温計10の全体を医療用のサージカルテープなどの粘着テープ40で覆って測定対象者30に貼り付けることが好ましい。なお、体温計10が直径22mmという所定の大きさを有しているため、測定対象者30の深部体温を測定することは困難であるが、なるべく体温計10が外気に晒されない部分に装着されることが好ましい。この観点から、体温計10の装着場所としては、測定対象者30の服内温度が検出でき、また、体温計10を装着していることによる違和感を、測定対象者が感じにくい場所であって、さらに、表皮の動きが比較的小さな場所として、胸から脇腹にかけての部分が好ましい。
【0049】
図4に、測定対象者が体温計を装着している状態のイメージ図を示す。
【0050】
図1に戻って、本実施形態の体温測定システムでは、測定端末である体温計10からのデータを受け取る本体機器としてスマートフォン20が用いられている。
【0051】
本体機器としてのスマートフォン20は、その携帯電話としての機能から、現在時刻を取得する現在時刻取得部21、液晶パネルや有機ELパネルなどの画像表示デバイスと表示する画像のデデータ処理を行う処理回路とを含む画像表示部24、使用されるアプリケーションソフトや写真や音声、メールなどでの通信記録などを記憶するRAMやCPUのキャッシュメモリなどの記憶部25、キャリア通信を行うデータ送信部26、データ受信部27とを備えている。なお、本実施形態の体温測定システムでは、測定端末である体温計10との間のデータの送受信をブルートゥース規格に基づいて行うが、ブルートゥース機器との接続を行うデータ送信部26とデータ受信部27も通常備えられている。
【0052】
測定結果データ生成部22は、体温計10とのデータ通信が成立したときに体温計10から送信された体温データのうち、体温が測定された時を示す時間情報である測定タイミングデータを、前回の測定時からの測定間隔を示す情報から、測定時を示す時刻情報に置き換えた測定結果データに変換する。体温データからの測定結果データへのデータ変換は、スマートフォン20にインストールされた本実施形態で示す体温測定システムを制御するアプリケーションソフトが行い、変換された測定結果データは順次スマートフォン20の記憶部25に記憶される。なお、体温データから測定結果データへのデータ変換の詳細については、後に詳述する。
【0053】
また、タイミングデータ較正部23は、測定結果データ生成部22により生成された測定結果データに基づいて、体温計10の基準クロック12のクロック周波数の検証を行う。そして、クロック周波数に誤差がある場合には、この誤差を較正する較正データが作成される。較正データは、データ送信部26からブルートゥース規格の通信を通じて体温計10のデータ受信部18に送信され、体温計10の制御部15は、以降得られた体温データに記録される時間情報としての測定タイミングデータを、較正データを用いて較正する。なお、タイミングデータ較正部23の機能も、本実施形態にかかる体温測定システムに対応するアプリケーションソフトによって実行される。また、タイミングデータの較正についての詳細については、後に詳述する。
【0054】
スマートフォン20は、体温計10との間のブルートゥース規格によるデータ通信が成立し、体温計10から記憶部16に記録されていた生体データの送受信が無事に行われたことを、スマートフォン20の画像表示部24で表示して、測定対象者30または、データ管理を行う監督者などに報知することができる。
【0055】
次に、本実施形態にかかる体温測定システムにおける、測定結果データの処理について説明する。
【0056】
上述したように、体温計10の生体データ生成部13は、予め定められた所定の測定タイミング毎に測定対象者30の体温を読み取る。読み取られた体温の測定値は、その測定が行われた測定時間を示す時間情報である測定タイミングデータとして、前回の測定時からの経過時間、すなわち、体温の測定間隔を基準クロックのクロック信号に基づいて把握する。そして、体温の測定値と測定タイミングデータとを紐つけて一つの生体データである体温データが生成される。
【0057】
本実施形態の体温測定システムでは、測定対象者の体温データを一定の測定期間にわたって測定し続ける。また、作成された体温データは、体温計10の記憶部16に順次保管されていき、体温計10と本体機器であるスマートフォン20との間にデータ通信が成立したタイミングで、記憶部16に記憶されていた体温データがブルートゥース規格でのデータ通信によってスマートフォン20へと送信される。小型軽量化が強く求められるとともに、測定対象者の便宜を図るために本体機器であるスマートフォン20とのデータ通信の頻度を下げることを考えると、体温計10内で取り扱われる体温データのデータサイズは小さいほど好ましい。
【0058】
そこで、本実施形態の体温測定システムでは、温度センサから温度情報として出力される体温の測定値について、25℃~41℃の温度範囲に限定することで8bitのデータ(分解能:0.0625℃)にパッキングしている。これにより、例えば温度センサ4が有する、16bitの規格で±256℃、分解能が0.0078125℃という標準の設定と比較して、体温情報に必要なデータサイズを半分にできる。本実施形態のように、温度センサを体温測定の用途に特化した場合には、上記した温度範囲25℃~41℃、分解能0.0625℃での温度データが取得できれば実用上の問題は生じない。
【0059】
次に、測定タイミングを示す時間情報は、標準クロック12のクロックデータから、一例として8bitの測定タイミングデータを生成する。このようにして得られた、8bitの温度データと8bitの測定タイミングデータとをまとめて、一つが16bitの体温データが生成される。
【0060】
なお、測定タイミングデータについては、上述のように基準クロックのクロック周波数データから、前回の測定時のデータとの差を求めて得ることができるが、このデータを秒単位ではなく分単位のデータすることで、測定間隔データ自体を小さな値とすることができ、結果として体温データをさらに小さくすることができる。また、この測定間隔について、例えば、1分間隔、5分間隔、10分間隔など、複数の異なる測定間隔を段階的に設定しておき、さらに、1分間隔を「1」、5分間隔を「2」、10分間隔を「3」というように記号化することで、測定タイミングデータを表すデータ量を一層小さいものにすることができ、体温データをより少ないデータ量で表すことができるようになる。
【0061】
なお、上述したように、本実施形態の体温測定システムでは、測定間隔変更部14において、体温の測定結果に基づいて測定対象者の体調評価がなされて、体温を測定する間隔が変動する。このため、測定された体温の測定値とともに当該測定値が測定された時間の情報である測定タイミングデータとを紐つけて管理することが必要である。
【0062】
次に、前回の体温測定時との測定間隔の時間情報を測定タイミングデータとして有している体温データから、例えばUNIXデータとしての実際の測定時刻を表すデータを備えた測定結果データへと変換するデータ変換について説明する。
【0063】
体温計10の記憶部16でのデータ保管時や、体温計10とスマートフォン20との間の体温データの通信時における容量を低減するために、時間情報として測定間隔を使用されていた体温データは、標準的な時・分(・秒)形式の時間情報に変換することで、その後測定結果を示すデータとして一般的なデータ処理等を行うことができるようになる。
【0064】
上述したように、体温計10の制御部15は、本体機器であるスマートフォン20とのデータ通信が成立すると、記憶部16に記憶されていた全ての体温データと、直前の測定タイミングからデータ送信時までの経過時間情報である時間データとを送信する。
【0065】
以下では、測定結果データ生成部22での具体的なデータ変換例を説明する。なお、以下の例では、現在時刻は秒のデータを切り捨てた分単位のもので示す。
【0066】
まず、体温計10とスマートフォン20との間のデータ通信が行われた時刻(年・月・日・時・分)をTCとする。
【0067】
体温計10からは、複数の体温データTと、直前のタイミングで取得された最後の体温データ計測時からの経過時間情報TEが送信される。また、記憶部15に記憶されている体温データTについて、測定時間が新しい順にT(N)、T(N―1)、T(N-2)、・・・とし、さらに、それぞれの体温データTに含まれる測定間隔の時間情報である測定タイミングデータSを、それぞれS(N)、S(N-1)、S(N-2)、・・・と表すこととする。
【0068】
体温計10からのデータ通信時の直前に測定された体温データT(N)、すなわち送信された体温データTの内で最も新しい体温データの測定時刻J(N)は、J(N)=TC-TEである。
【0069】
その一つ前、すなわち、2番目に新しい体温データT(N-1)の測定時刻J(N-1)は、J(N-1)=J(N)-S(N)となる。もう一つ前、すなわち、3番目に新しい体温データT(N-2)の測定タイミングの測定時刻J(N-2)は、J(N-2)=J(N-1)-S(N-1)となる。以下、順次求められた体温データの体温測定時刻Jから、その体温データに含まれる一つ前の測定からの測定間隔を示す測定タイミングデータSを差し引くことで、順次一つ前の体温測定時刻Jが把握できる。
【0070】
このようにして、体温計10からまとめて送信された全ての体温データの測定時間情報を、一つ前の測定からの経過時間を表す情報から絶対的な時刻情報に変換することができ、これを測定期間の全体にわたって行うことで、測定対象者30の体温が、測定期間中にどのように変化したかをその測定時刻とともに把握することができる。
【0071】
本実施形態にかかる体温測定システムでは、体温計10の内部で取り扱われる体温測定結果を示す体温データにおいて、測定時間を表す測定タイミングデータを、このように前回の測定時からの測定間隔を表す時間情報とすることで、時間情報を最初から絶対的な時刻の情報として取り扱う場合と比較して、体温データの情報量(必要なbit数)を低減することができる。この時間情報の変換は、上記説明した方法によって、本体部であるスマートフォン20の測定結果データ生成部22で正しく行うことができる。このため、データの精度に影響を与えることなく、最初から時刻データとしての時間情報を持っている場合と比較して、体温計10内の記憶部16の容量を小さくすることができる。また、同じ容量の記憶部16内により多くの体温データを記憶することができる。さらに、複数の体温データをまとめてスマートフォン20へと送信する場合に、送信時間を短くすることができる。
【0072】
次に、本実施形態にかかる体温測定システムにおける、体温計10の基準クロック12からの時間データの較正について説明する。
【0073】
本実施形態の体温測定システムでは、体温計10とスマートフォン20との間のデータ通信が成立する度に、前回のデータ通信後に測定されて蓄積された体温データTの全てと、最後の測定タイミングからデータ通信の成立時までの経過時間を示す経過時間情報TEが送信される。このため、データ送信時の全ての体温データTにおける測定時間情報Sの総和ΣSとデータ送信までの経過時間情報TEとの和が、前回のデータ送信時から今回のデータ送信時までの体温計10内での経過時間TTとなる。
【0074】
一方で、スマートフォン側では、常に現在時刻データを把握していて、前回のデータ送信時刻TC(-1)と今回のデータ送信時刻TCとが判明している。このため、前回のデータ送信時と今回のデータ送信時の時間差TH=TC-TC(-1)を算出することができる。
【0075】
そして、体温計での経過時間TTと、測定間隔の正しい時間差THとを比較して、その差が大きい場合には、体温計10内の基準クロック12のクロック周波数が正確でないと判断することができる。
【0076】
体温計10での体温の測定間隔は、基準クロック12のクロック周波数に基づいて定められているため、基準クロック12のクロック周波数に誤差があると、特に、データ通信の間隔が広くなった際に、最初の内に取得された体温データにおける測定タイミングデータに誤差が含まれることとなる。このため、本実施形態の体温測定システムでは、上記タイミングデータ較正部23で求められた、TTとTHとの値の差が一定以上に大きい場合には、所定の較正値TKとして、TK=TT/THを求め、体温計10の生体データ生成部13における測定間隔を示す測定タイミングデータTSDをTSD=TS(N)/TKとすることで、体温計10内での時間情報を較正する。
【0077】
なお、この時間情報の較正は、体温計10へのフィードバックを行わずに、スマートフォン20側で体温データを測定結果データに変換する際の時刻データへの変換時に、較正データTKを掛け合わせることによって行うこともできる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態にかかる体温測定システムでは、体温計10内部におけるデータ処理で使用される測定時間を示す時間情報である測定タイミングデータを、前回の測定時からの測定間隔に基づく相対的なデータとして把握する。このことによって、体温データにおける測定時間を示す測定タイミングデータのデータ量を低減することができ、体温計10の小型軽量化、体温計とスマートフォン20とのデータ通信時間の短縮等を行うことができる。結果として、測定対象者30が装着する体温計10を小さくすることができ、また、体温計10とスマートフォン20とのデータ転送のための接続間隔を広げることができる。さらに、データ通信時間も短くなることで、測定対象者にかかる体温測定における負担を低減することができる。
【0079】
なお、測定端末である体温計と本体機器であるスマートフォンとのデータ通信は、上記例示したブルートゥース規格によるものには限られず、他のローカルルールでの無線通信や、近接配置した際の電磁誘導を利用したデータ通信方法など、端末機器と本体機器との間での短距離でのデータ通信が可能な各種の方法を採用することができる。
【0080】
また、本体機器は、上記例示したスマートフォンには限られない。体温計との間で所定の方式でのデータ通信が可能であること、さらに、体温計から送信された体温データを測定結果データに変換するデータ処理が可能であることの要件を満たせば、各種のパーソナルコンピュータ、タブレット端末を用いて、本実施形態にかかる体温測定システムを動作させるソフトウェアをインストールすることで、本体機器とすることができる。また、これらの汎用的な機器に限られず、本願で開示する体温測定システムに使用されるように特化された、専用の本体機器を用いることができる。
【0081】
なお、本体機器として、スマートフォンやパーソナルコンピュータ、タブレット端末を用いた場合には、それぞれの機器が備えるキャリア通信やネット回線への接続などの無線または有線の通信手段が利用できる。そして、例えばインターネット環境を経由して接続可能なクラウドサーバを別途配置して、それぞれの本体機器で取得された測定結果データをビッグデータとして集めることができる。このようにして集められた測定結果データの集合体は、測定対象者の体温の変化を示す情報として集積されて適宜データ解析されることにより、医療関係分野、スポーツ関係分野などのそれぞれの体温データ収集目的に応じた集合的データとして使用される。
【0082】
また、得られたビッグデータを用いて、個々の測定対象者の体温データに対する各種のフィードバック、例えば、医療関係分野であれば現在の体調評価値や、体調変化の危険度に対する警告表示、スポーツ関係分野であれば、現在の練習メニューによる負荷の大きさの表示や、体調変化による練習中止の勧告を行うことなどに用いることができる。
【0083】
また、スマートフォンの画像表示機能やデータ処理機能を使用することによって、複数の測定対象者から得られた測定結果データの集合体であるビッグデータを使用しなくても、それぞれの測定対象者の生体情報測定結果の表示や、同一の測定対象者の過去の測定結果との対比データを示すなどの、測定対象者への測定情報のフィードバックを行うことができる。
【0084】
これらの場合において、スマートフォンなどの本体機器が取得できる、気温データ、湿度データなどの環境データを、インターネット環境上のクラウドサーバに測定結果データと合わせて送信したり、測定対象者へのフィードバック情報に反映させたり、これらの環境情報に基づいてフィードバック情報を適宜加工したり、各種のバリエーションを付加して測定対象者に通知することができる。
【0085】
なお、上記実施形態では、本願で開示する生体情報測定システムとして、測定対象者から得られる生体情報として体温を測定する場合を例示したが、体温以外にも、心拍数や発汗量などの他の各種の生体情報を継続的に測定する測定システムとすることができる。この場合でも、測定された生体情報データと紐つけられる測定時間情報として、絶対的な時刻情報と比較してデータ量が小さい測定間隔を示す時間情報である測定タイミングデータを用いることで、測定端末の小型化やデータ通信時間の短縮化などの、上記の体温測定システムと同様の効果が得られる。
【0086】
なお、心拍数を把握する場合は、測定者の体表に板状の電極が接触するようにすること、また、発汗量を測定する場合には、微弱な電流が印加可能な所定の長さを有する電極を備えることなど、測定端末として、測定対象の生体情報を好適に取得できる各種センサを備えるべきであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本願で開示する生体情報測定システムは、測定タイミングを示す時間情報として測定間隔時間を表す情報を用いることで、測定端末の小型化やデータ通信量の低減が実現でき、測定対象者に与える負担が小さい生体情報測定システムとして有用である。
【符号の説明】
【0088】
10 体温計(測定端末)
12 水晶振動子(基準クロック)
13 体温データ生成部(生体データ生成部)
14 測定間隔変更部
15 制御部
16 記憶部
17 データ送信部
20 スマートフォン(本体機器)
図1
図2
図3
図4