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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191765
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】飛行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 13/18 20060101AFI20221221BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20221221BHJP
   B64C 3/50 20060101ALI20221221BHJP
   B64C 33/00 20060101ALI20221221BHJP
   G01P 5/10 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B64C13/18 G
B64D27/24
B64C3/50
B64C33/00
G01P5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100201
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】矢熊 宏司
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 俊輔
(57)【要約】
【課題】飛行体の飛行を継続しつつ、飛行体におけるバッテリの電力消費を抑える。
【解決手段】
バッテリ17の電力で作動するモータ16の動力により飛行する飛行体10の表面に鉛直方向に間隔を置いて設けられ、気流Bの状態に対応する物理量をそれぞれ検出する一対の圧力センサ31,31と、一対のセンサ31,31による出力の差分に基づいて、飛行体10の飛行状態を制御するコントローラ32と、を備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力で作動する動力源の動力により飛行する飛行体の表面に鉛直方向に間隔を置いて設けられ、気流の状態に対応する物理量をそれぞれ検出する一対のセンサと、
前記一対のセンサによる出力の差分に基づいて、前記飛行体の飛行状態を制御する制御部と、
を備える飛行制御装置。
【請求項2】
前記一対のセンサは、前記飛行体の揚力が作用する部分の上空側表面及び地上側表面をそれぞれ流れる気流の気圧を検出する請求項1に記載の飛行制御装置。
【請求項3】
前記一対のセンサは、前記飛行体の揚力が作用する部分の上空側表面及び地上側表面をそれぞれ流れる気流の速度を検出する請求項1に記載の飛行制御装置。
【請求項4】
前記揚力が作用する部分は前記飛行体の主翼及び水平尾翼のうち少なくとも一方である請求項2又は3に記載の飛行制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記差分から前記飛行体に働く揚力を求める請求項1~4のいずれか1項に記載の飛行制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記飛行体の荷重に応じた重力以上である前記揚力の大きさが所定の基準値よりも大きい場合に、前記飛行体を滑空させるモードに前記飛行状態を制御し、前記飛行体の荷重に応じた重力以上である前記揚力の大きさが所定の基準値以下である場合に、前記飛行体を前記揚力が増加する姿勢とするモードに前記飛行状態を制御する請求項5に記載の飛行制御装置。
【請求項7】
前記一対のセンサは、前記一対のセンサ間を流れる気流の速度に応じた物理量をそれぞれ検出し、前記制御部は、前記差分から、前記飛行体の周りを地上側から上空側に流れる上昇気流の有無を判定し、前記上昇気流の有無に基づいて前記飛行状態を制御する請求項1に記載の飛行制御装置。
【請求項8】
前記一対のセンサは、ヒータを中心として対称にそれぞれ配置された測温センサであり、上下の前記測温センサは、前記一対のセンサ間を流れる気流を介して前記ヒータから伝わる熱量に応じた温度をそれぞれ検出する請求項7に記載の飛行制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記飛行体に搭載した角速度センサが検出する前記飛行体の飛行高度の変化を参酌して、前記差分から前記上昇気流の有無を判定する請求項7又は8に記載の飛行制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記飛行体の周りを地上側から上空側に流れる上昇気流によって前記飛行体の飛行高度又は飛行速度を上昇させるモードと、前記飛行体を滑空させるモードとの切り替えにより、前記飛行状態を制御する請求項7~9のいずれか1項に記載の飛行制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記飛行体の主翼及び尾翼のうち少なくとも一方の可動部分の動作により前記飛行状態を制御する請求項1~10のいずれか1項に記載の飛行制御装置。
【請求項12】
前記可動部分はフラップを含む請求項11に記載の飛行制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記飛行体の羽ばたき動作を行う主翼の動作により前記飛行状態を制御する請求項1~10のいずれか1項に記載の飛行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無人で飛行する飛行体は、例えば、軽貨物の搬送、薬剤の散布、高所での撮影等、様々な分野で利用され、あるいは、将来の利用が期待されている。無人の飛行体には、例えば、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle )、3つ以上の回転翼を有するマルチコプター等がある。
【0003】
大型の機体を有する無人航空機は、有人の航空機と同じくエンジンを動力とするが、小型の無人航空機では、プロペラをモータで回転させる電動式のものもある。マルチコプターの中では、4つの回転翼を有するクワッドコプターが、ドローン(Drone)と呼ばれて広く普及している。ドローンも回転翼をモータで回転させる電動式のものが多い。
【0004】
電動式の無人航空機では、電源として搭載されるバッテリの容量によって航行距離が制約される。無人航空機の航行距離の制約をバッテリの大容量化で解消しようとすると、バッテリの重量増加により電力消費が増えて、無人航空機の航行距離が減少するという悪循環が生じる。この悪循環を解消するために、特許文献1では、荷物の出荷先から配達先に中継基地を介して飛行する無人飛行体の荷物を収納するコンテナに設けた蓄電部を、無人飛行体の非移動時に中継基地で充電する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6084675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、飛行体の飛行を継続しつつ飛行体におけるバッテリの電力消費を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一つの態様による飛行制御装置は、
バッテリの電力で作動する動力源の動力により飛行する飛行体の表面に鉛直方向に間隔を置いて設けられ、気流の状態に対応する物理量をそれぞれ検出する一対のセンサと、
前記一対のセンサによる出力の差分に基づいて、前記飛行体の飛行状態を制御する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、飛行体の飛行を継続しつつ、飛行体におけるバッテリの電力消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、第1実施形態及び第2実施形態に係る飛行制御装置を搭載した飛行体の説明図である。
図1B図1Bは、図1Aの主翼の上面及び下面に沿って流れる気流の説明図である。
図1C図1Cは、図1Aの主翼の上面及び下面に沿って流れる気流の説明図である。
図1D図1Dは、図1Bの主翼の上面及び下面にそれぞれ設けられるMEMSデバイスによる圧力センサの平面図である。
図1E図1Eは、図1Dの圧力センサの構造を模式的に示す説明図である。
図1F図1Fは、図1Dの圧力センサの感圧時の形状変化を模式的に示す説明図である。
図2A図2Aは、図1Aの飛行体を滑空させるモードにおける飛行体の飛行状態を模式的に示す説明図である。
図2B図2Bは、図1Aの飛行体を揚力が増加する姿勢とするモードにおける飛行体の飛行状態を模式的に示す説明図である。
図2C図2Cは、第1実施形態の変形例に係る飛行制御装置を搭載した飛行体の概略な構成を示す説明図である。
図3A図3Aは、航行速度が高い図1Aの飛行体が滑空するモードとなるように飛行状態を制御する場合の飛行体の姿勢を示す説明図である。
図3B図3Bは、航行速度が中程度である図1Aの飛行体が滑空するモードとなるように飛行状態を制御する場合の飛行体の姿勢を示す説明図である。
図3C図3Cは、航行速度が低い図1Aの飛行体が滑空するモードとなるように飛行状態を制御する場合の飛行体の姿勢を示す説明図である。
図4図4は、第1実施形態の飛行制御装置において図1Aのコントローラがメモリのプログラムにしたがって実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態及び第2実施形態の変形例に係る飛行制御装置を搭載した飛行体の説明図である。
図6図6は、図1Bの主翼の上面及び下面にそれぞれ設けられるMEMSデバイスによるフローセンサの構成を示す説明図である。
図7図7は、第2実施形態の飛行制御装置において図1Aのコントローラがメモリのプログラムにしたがって実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8A図8Aは、第3実施形態に係る飛行制御装置を搭載した飛行体の説明図である。
図8B図8Bは、図8Aの飛行体の高度又は速度を上昇させるモードにおける飛行体の飛行状態を示す説明図である。
図9図9は、第3実施形態の飛行制御装置において図8Aのコントローラがメモリのプログラムにしたがって実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第4実施形態に係る飛行制御装置を搭載した飛行体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、いくつかの実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
[第1実施形態]
図1Aは、第1実施形態に係る飛行体の説明図である。図1Aの飛行体10には、第1実施形態に係る飛行制御装置30が搭載されている。本実施形態の飛行体10は、機体11の左右に主翼12及び水平尾翼13を有しており、機体11の機尾の上部に垂直尾翼14を有している。
【0013】
飛行体10を飛行させるための推力は、機体11の機首のプロペラ15を回転させて得ることができる。プロペラ15は、例えば、機体11内のモータ16を動力源として回転させることができる。モータ16は、機体11内のバッテリ17の電力で作動させることができる。
【0014】
主翼12、水平尾翼13及び垂直尾翼14は、フラップ18~20をそれぞれ有している。フラップ18~20の動作により、飛行中の飛行体10の姿勢を調整することができる。フラップ18~20は、例えば、モータ16の動力を用いて動作させることができる。
【0015】
飛行体10がプロペラ15の回転で発生する推力により前進方向Aに飛行する際、飛行体10が受ける気流Bは二手に分かれる。分かれた後の気流Bは、図1Bに示すように、主翼12において、主翼12の上空側表面である上面21に沿う流れと、主翼12の地上側表面である下面22に沿う流れとになる。主翼12を過ぎた気流Bは、再び一つの流れに戻る。
【0016】
主翼12は、飛行体10の揚力が作用する部分に含まれる。主翼12は、気流Bの向きを下向きに変えて主翼12に上向きの揚力を発生させる翼形状を有している。この翼形状により、主翼12の上面21に沿う気流Bは、主翼12の前縁から後縁に至るまでの間に、下面22に沿う気流Bよりも長い距離を迂回して流れる。
【0017】
図1Cでは、主翼12の上面21及び下面22に沿って流れる気流Bの速度を、気流Bを示す線の太さで表している。気流Bを示す線の太さが太いほど、気流Bの速度が遅いことを示している。上面21に沿って流れる気流Bは、下面22に沿う気流Bよりも迂回して長い距離を流れる分、下面22に沿う気流Bよりも速度が速くなる。
【0018】
図1Cでは、主翼12の上面21及び下面22に沿って流れる気流Bの気圧を、上面21及び下面22に向かう矢印で表し、矢印の線の長さで、気圧の大きさを表している。気圧を示す線の長さが長いほど、気流Bの気圧が大きいことを示している。上面21に沿って流れる気流Bは、下面22に沿う気流Bよりも速度が速い分、下面22に沿う気流Bよりも気圧が低くなる。
【0019】
主翼12の上面21側と下面22側との気圧差により、主翼12には揚力Lが作用する。主翼12に作用する揚力Lは、主翼12に向かって流れる空気の一様流の方向Fに対して直交する向きとなる。
【0020】
本実施形態の飛行制御装置30は、図1Dに示す圧力センサ31と、図1Aに示す制御部としてのコントローラ32とを有している。
【0021】
本実施形態では、図1Dの圧力センサ31を、主翼12の上面21及び下面22にそれぞれ設けている。圧力センサ31は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスによって形成したものとすることができる。圧力センサ31は、図1Eに示すように、Si基板33に裏側からエッチング等で形成したダイヤフラム34と、図1Dに示すように、Si基板33及びダイヤフラム34に跨がって配置されたピエゾ抵抗素子によるブリッジ回路35とを有している。
【0022】
圧力センサ31は、図1Fに示すように、圧力センサ31の外側からの圧力Pでダイヤフラム34が変形し、ブリッジ回路35の抵抗値が各ピエゾ抵抗素子の変形で変化することで、ダイヤフラム34を変形させた圧力Pの大きさを検出することができる。
【0023】
圧力センサ31は、図1Bに示すように、主翼12の上面21及び下面22の楕円で囲んだ位置に、ダイヤフラム34のブリッジ回路35が外側を向くように設けられる。圧力センサ31は、上面21及び下面22に沿った気流Bの流れを変化させないように、上面21及び下面22に埋め込んで設けることが望ましい。
【0024】
上面21及び下面22の各圧力センサ31は、飛行体10の飛行中において、気流Bの向きと直交する方向に並び、飛行体10の上空及び地上を結ぶ方向に間隔を置いた箇所にそれぞれ配置される。各圧力センサ31は、飛行体10の飛行中において、上面21及び下面22にそれぞれ沿って流れる気流Bの状態に対応する物理量として、各気流Bの気圧をそれぞれ検出する。
【0025】
コントローラ32は、例えば、飛行体10の外部との間で無線通信可能な通信モジュール、CPU(中央処理装置)等の電子部品を有する処理回路等をボード上に搭載したコンピュータによって構成することができる。
【0026】
コントローラ32は、例えば、不図示の操縦者の操作により操縦装置等から送信された操縦信号に対応して、モータ16によるプロペラ15の回転及び各フラップ18,19の動作により、飛行体10の飛行状態を制御することができる。飛行体10の飛行状態は、例えば、飛行体10の飛行速度、飛行方向及び飛行高度を含むものとすることができる。
【0027】
コントローラ32は、左右の主翼12に設けた上面21及び下面22の圧力センサ31による出力に基づいて、予め定められたパターンで飛行体10が飛行するように、飛行体10の飛行状態を不図示の操作者に頼らず自動で制御するものとしてもよい。本実施形態では、コントローラ32が飛行体10の飛行状態を自動で制御するものとする。
【0028】
コントローラ32は、主翼12の上面21及び下面22にそれぞれ設けた圧力センサ31による出力の差分に基づいて、飛行体10の飛行状態を制御することができる。図1Cに示すように、主翼12の表面に沿って流れる気流Bの気圧は、上面21の方が下面22よりも低くなる。主翼12には、上面21の気圧と下面22の気圧との差分に応じた上向きの揚力Lが作用する。
【0029】
左右の主翼12に作用する揚力Lが、飛行体10の荷重に応じた重力と等しければ、飛行体10は水平飛行する。飛行体10の荷重に応じた重力よりも左右の主翼12に作用する揚力Lが大きいと、飛行体10は浮上する。飛行体10の荷重に応じた重力よりも左右の主翼12に作用する揚力Lが小さいと、飛行体10は降下する。
【0030】
主翼12の上面21の圧力センサ31が検出した気圧に応じた出力と、主翼12の下面22の圧力センサ31が検出した気圧に応じた出力との差分は、主翼12に作用する揚力Lに応じた値となる。
【0031】
コントローラ32は、上面21及び下面22の各圧力センサ31による出力の差分から、主翼12に作用する揚力Lを求めることができる。コントローラ32は、求めた揚力Lと飛行体10の重力とを比較し、その比較結果に応じて飛行体10の飛行状態を制御することができる。
【0032】
コントローラ32は、例えば、図2Aに示す、飛行体10を滑空させる滑空モードと、飛行体10を揚力Lが増加する姿勢とする揚力増加モードとの切り替えにより、飛行体10の飛行状態を制御することができる。
【0033】
図2Aの滑空モードはグライディングモードとも呼ばれる。滑空モードでは、飛行体10は、機体11の機首を下げて飛行高度を徐々に下げながら飛行する。滑空モードでは、プロペラ15の回転により発生する推力を落としても、飛行速度を維持して飛行体10を飛行させることができる。滑空モードでは、水平飛行又は揚力増加モードによる飛行よりも、飛行体10の飛行中にモータ16が消費するバッテリ17の電力が抑えられる。
【0034】
飛行体10の揚力増加モードによる飛行姿勢は、例えば、図2Bに示すように、飛行体10の機体11の機首を上げた姿勢とすることができる。飛行体10の機首を上げることで、主翼12及び水平尾翼13の迎え角を正側に増やし、主翼12に作用する揚力Lを増加させて、飛行体10の揚力Lを増加させることができる。揚力増加モードでは、主翼12に作用する揚力Lの増加により、飛行体10が滑空に移行できる高度に飛行体10の飛行高度を増加させる。
【0035】
コントローラ32は、飛行体10の荷重に応じた重力以上である揚力Lの大きさが、所定の基準値よりも大きい場合に、図2Aの滑空モードとなるように飛行体10の飛行状態を制御する。コントローラ32は、飛行体10の荷重に応じた重力以上である揚力Lの大きさが、所定の基準値以下である場合に、揚力増加モードとなるように飛行体10の飛行状態を制御する。
【0036】
所定の基準値は、例えば、飛行体10の飛行状態を滑空モードに保つか、滑空モードを終えて揚力増加モードに切り替える必要があるかを判定するのに適した値とすることができる。所定の基準値は、飛行体10の既知の重量から予め把握しておいた飛行体10の荷重に応じた重力に基づいて決定することができる。所定の基準値は、例えば、飛行体10の荷重に応じた重力よりも大きい値に定めることができる。
【0037】
コントローラ32は、飛行体10の荷重に応じた重力を、例えば、飛行体10の既知の重量から予め把握し、内部のメモリ等に記憶させておくことができる。コントローラ32は、求めた揚力Lが所定の基準値よりも大きいか否かを、例えば、重力に基づいて定めた閾値と求めた揚力Lとの比較で判定することができる。閾値は、飛行体10の荷重に応じた重力よりも大きい値とすることができる。
【0038】
コントローラ32は、例えば、主翼12及び水平尾翼13のうち少なくとも一方のフラップ18,19の動作により、飛行体10のモードを切り替えることで、飛行体10の飛行状態を制御することができる。
【0039】
主翼12、水平尾翼13に作用する揚力Lは、飛行体10の飛行速度の二乗に比例する。コントローラ32は、機首を上げて飛行体10を揚力増加モードに切り替える場合、飛行体10の飛行速度が速ければ、図3Aに示すように、機体11の機首を僅かに上げるだけでも、主翼12、水平尾翼13に作用する揚力Lを増加させることができる。
【0040】
飛行体10の飛行速度が中程度であれば、コントローラ32は、主翼12、水平尾翼13に作用する揚力Lを増加させるために、図3Bに示すように、飛行速度が速い場合よりも機体11の機首が大きく上がるように制御する必要がある。飛行体10の飛行速度が遅ければ、コントローラ32は、主翼12、水平尾翼13に作用する揚力Lを増加させるために、図3Cに示すように、飛行速度が中程度である場合よりも機体11の機首が大きく上がるように制御する必要がある。
【0041】
主翼12の全体が機体11に対して、中心軸の周りに上下方向に回転できる場合、例えば、図2Cに示すように、主翼12を実線の位置から仮想線の位置へ下向きに回転させると、主翼12の迎え角が正側に増える。主翼12の迎え角が正側に増えると、主翼12が下側から受ける向かい風によって、主翼12に作用する揚力が増える。コントローラ32は、主翼12を上下方向に回転させて、主翼12に作用する揚力を増減させることで、飛行体10のモードを滑空モードと揚力増加モードとの間で切り替える。
【0042】
水平尾翼13の全体が機体11に対して、中心軸の周りに上下方向に回転できる場合、例えば、水平尾翼13を実線の位置から仮想線の位置へ下向きに回転させると、水平尾翼13の迎え角が正側に増える。水平尾翼13の迎え角が正側に増えると、水平尾翼13が下側から受ける向かい風によって、水平尾翼13に作用する揚力が増える。コントローラ32は、水平尾翼13を上下方向に回転させて、水平尾翼13に作用する揚力を増減させることでも、飛行体10のモードを滑空モードと揚力増加モードとの間で切り替えることができる。
【0043】
主翼12及び水平尾翼13は、例えば、不図示の動力伝達機構を介してモータ16から伝わる動力によって、それぞれ回転させることができる。コントローラ32は、例えば、主翼12及び水平尾翼13の少なくとも一方を回転させることで、飛行体10のモードを切り替えて、飛行体10の飛行状態を制御することができる。
【0044】
コントローラ32は、飛行体10の飛行速度が速いほど、主翼12及び水平尾翼13の小さい角度の回転で、主翼12及び水平尾翼13に作用する揚力Lを増減させることができる。
【0045】
コントローラ32は、例えば、図1のプロペラ15の回転による飛行体10の推力を変化させて、飛行体10の飛行速度を増減させることでも、主翼12及び水平尾翼13に作用する揚力Lを増減させることができる。コントローラ32は、主翼12及び水平尾翼13に作用する揚力Lの増減により、飛行体10のモードを切り替え、飛行体10の飛行状態を制御することができる。例えば、コントローラ32は、プロペラ15の回転数を増加させることで、飛行体10のモードを滑空モードから推力増加モードに切り替えることができる。
【0046】
本実施形態の飛行制御装置30では、主翼12の上面21及び下面22の圧力センサ31が、上面21及び下面22に沿って流れる気流Bの気圧をそれぞれ検出する。コントローラ32は、各圧力センサ31の出力の差分から、主翼12の上面21側及び下面22側の気圧差を求め、求めた気圧差から、主翼12に作用する揚力Lを求める。
【0047】
コントローラ32は、求めた揚力Lが所定の基準値よりも大きく、飛行体10の荷重に応じた重力を十分上回る大きさである場合に、飛行体10が滑空モードで飛行するように飛行体10の飛行状態を制御する。この制御により、コントローラ32は、飛行体10の飛行中にモータ16が消費するバッテリ17の電力を抑える。
【0048】
コントローラ32は、求めた揚力Lが所定の基準値以下であり、飛行体10の荷重に応じた重力を十分上回る大きさではない場合に、飛行体10が揚力増加モードで飛行するように飛行体10の飛行状態を制御する。この制御により、コントローラ32は、飛行体10の飛行高度を増加させる。
【0049】
コントローラ32は、メモリに記憶させたプログラムをCPUに実行させることで、上述した制御を、例えば、図4のフローチャートに示す手順で行うことができる。この手順は、コントローラ32が周期的に繰り返し行うことができる。
【0050】
コントローラ32は、主翼12の上面21側及び下面22側の気流Bの圧力を、上面21及び下面22の各圧力センサ31の出力から検出する(ステップS11)。コントローラ32は、検出した上面21側及び下面22側の気流Bの圧力差から、主翼12に作用する揚力Lを求める(ステップS13)。コントローラ32は、求めた揚力Lが所定の基準値よりも大きいか否かによって、求めた揚力Lが、飛行体10の荷重に応じた重力を十分上回る大きさであるか否かを判定する(ステップS15)。
【0051】
求めた揚力Lが、飛行体10の荷重に応じた重力を十分上回る大きさであると判定した場合に(ステップS15でYES)、コントローラ32は、飛行体10を滑空させる図2Aの滑空モードで飛行体10の飛行状態を制御する(ステップS17)。求めた揚力Lが、飛行体10の荷重に応じた重力を十分上回る大きさでないと判定した場合に(ステップS15でNO)、コントローラ32は、主翼12に作用する揚力Lを増加させる図2Bのモードで飛行体10の飛行状態を制御する(ステップS19)。ステップS17又はステップS19の後、コントローラ32は、一連の処理を終了する。
【0052】
コントローラ32が飛行体10の飛行状態を以上のように制御することで、飛行体10を長い距離に亘り滑空させて、推力発生のためにプロペラ15をモータ16が回転させる距離を減らし、飛行体10のバッテリ17の電力消費を抑えることができる。
【0053】
[第1実施形態の変形例]
第1実施形態において、飛行体10は、例えば、図5に示す変形例のように、機体11側の付け根を中心にして左右の主翼12を羽ばたき動作させるものであってもよい。変形例の飛行体10は、羽ばたき動作時に、左右の主翼12を、左右に展開した静止位置から上下方向に繰り返し回転させる。
【0054】
変形例の飛行体10は、滑空モードでは、左右の主翼12を静止位置に固定して滑空する。変形例の飛行体10は、揚力増加モードでは、左右の主翼12を羽ばたき動作させ、主翼12に作用する揚力Lの増加により飛行高度を増加させる。
【0055】
変形例の飛行体10の飛行制御装置30は、図1Dの圧力センサ31とコントローラ32とを有している。
【0056】
変形例の飛行体10では、一対のセンサとしての圧力センサ31を、機体11の上部及び下部にそれぞれ設けている。
【0057】
機体11の上部及び下部の各圧力センサ31は、飛行体10の飛行中において、気流Bの向きと直交する方向に並び、飛行体10の上空及び地上を結ぶ方向に間隔を置いた箇所にそれぞれ配置される。各圧力センサ31は、飛行体10の飛行中において、機体11の上部及び下部にそれぞれ沿って流れる気流Bの状態に対応する物理量として、各気流Bの気圧をそれぞれ検出する。
【0058】
コントローラ32は、機体11の上部及び下部の圧力センサ31による出力の差分に基づいて、飛行体10のモードを切り替えることで、飛行体10の飛行状態を制御することができる。コントローラ32は、飛行体10の飛行状態の制御を、例えば、図4のフローチャートに示す手順で行うことができる。
【0059】
図5では、羽ばたき動作により上下方向に回転させる対象が主翼12である場合を示したが、羽ばたき動作により上下方向に回転させる対象は水平尾翼13でもよい。主翼12及び水平尾翼13の両方を羽ばたき動作させる対象としてもよい。
【0060】
以上に説明した変形例でも、飛行制御装置30が飛行体10の飛行状態を制御することで、飛行体10を長い距離滑空させて、モータ16が主翼12及び水平尾翼13の少なくとも一方を羽ばたき動作させる距離を減らすことができる。主翼12及び水平尾翼13を羽ばたき動作させる距離を減らすことで、飛行体10のバッテリ17の電力消費を抑えることができる。
【0061】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る飛行制御装置は、第1実施形態と同じ図1Aの飛行体10に搭載される。第2実施形態に係る飛行制御装置30は、図6のフローセンサ36と、図1Aに示す制御部としてのコントローラ32とを有している。
【0062】
本実施形態では、図1Dの第1実施形態の圧力センサ31に代えて、図6のフローセンサ36を、図1Bの主翼12の上面21及び下面22にそれぞれ設けている。フローセンサ36は、例えば、MEMSデバイスによって形成したものとすることができる。フローセンサ36は、Si基板37上に配置した多層薄膜メンブレン構造体38上のヒータ39、ヒータ39を中心として対象にそれぞれ配置された測温センサとしての一対のサーモパイル40,40、及び、温度補償用の周囲温度センサ41を有している。
【0063】
フローセンサ36は、フローセンサ36の表面を流れる空気によって移動するヒータ39の熱で、各サーモパイル40,40に起電力を発生させることで、両サーモパイル40,40の起電力の差分から空気の流速を検出することができる。周囲温度センサ41は、フローセンサ36の表面を流れる空気の温度に応じた起電力を発生する。周囲温度センサ41の起電力は、各サーモパイル40,40の起電力から空気の温度分の起電力を減じて温度補償するのに利用される。
【0064】
フローセンサ36は、圧力センサ31の代わりに、図1Bに示すように、主翼12の上面21及び下面22の楕円で囲んだ位置に、ヒータ39、サーモパイル40及び周囲温度センサ41が外側を向くように設けられる。フローセンサ36は、上面21及び下面22に沿った気流Bの流れを変化させないように、上面21及び下面22に埋め込んで設けることが望ましい。
【0065】
上面21及び下面22の各フローセンサ36は、飛行体10の飛行中において、気流Bの向きと直交する方向に並び、飛行体10の上空及び地上を結ぶ方向に間隔を置いた箇所にそれぞれ配置される。各フローセンサ36は、飛行体10の飛行中において、上面21及び下面22にそれぞれ沿って流れる気流Bの状態に対応する物理量として、各気流Bの速度をそれぞれ検出する。
【0066】
コントローラ32は、主翼12の上面21及び下面22にそれぞれ設けたフローセンサ36による出力の差分に基づいて、飛行体10の飛行状態を制御することができる。図1Cに示すように、主翼12の表面に沿って流れる気流Bの速度は、上面21の方が下面22よりも遅くなる。主翼12には、上面21の気流Bの速度と下面22の気流Bの速度との差分に応じた上向きの揚力Lが作用する。
【0067】
主翼12の上面21のフローセンサ36が検出した気流Bの速度に応じた出力と、主翼12の下面22のフローセンサ36が検出した気流Bの速度に応じた出力との差分は、主翼12に作用する揚力Lに応じた値となる。
【0068】
コントローラ32は、上面21及び下面22の各フローセンサ36による出力の差分から、主翼12に作用する揚力Lを求めることができる。コントローラ32は、求めた揚力Lと飛行体10の重力とを比較し、その比較結果に応じて飛行体10の飛行状態を制御することができる。第2実施形態のコントローラ32が行う飛行体10の飛行状態の制御は、第1実施形態のコントローラ32が行う飛行体10の飛行状態の制御と同じ内容とすることができる。
【0069】
本実施形態の飛行制御装置30では、主翼12の上面21及び下面22のフローセンサ36が、上面21及び下面22にそれぞれ沿って流れる気流Bの速度を検出する。コントローラ32は、各フローセンサ36の出力の差分から、主翼12の上面21側の気流B及び下面22側の気流Bの速度差を求め、求めた速度差から、主翼12に作用する揚力Lを求める。
【0070】
コントローラ32は、メモリに記憶させたプログラムをCPUに実行させることで、上述した制御を、例えば、図7のフローチャートに示す手順で行うことができる。この手順は、コントローラ32が周期的に繰り返し行うことができる。
【0071】
コントローラ32は、主翼12の上面21側及び下面22側の気流Bの速度を、上面21及び下面22の各フローセンサ36の出力から検出する(ステップS21)。コントローラ32は、検出した上面21側及び下面22側の気流Bの速度差から、主翼12に作用する揚力Lを求める(ステップS23)。以後、コントローラ32は、図4のステップS15~19と同じ手順で処理を実行し、一連の処理を終了する。
【0072】
本実施形態の飛行制御装置30でも、コントローラ32が、主翼12の上面21側及び下面22側の気流Bの速度から求めた揚力Lに応じて、飛行体10の飛行状態を第1実施形態と同様に制御すると、第1実施形態の飛行制御装置30と同様の効果が得られる。
【0073】
[第2実施形態の変形例]
第2実施形態においても、飛行体10を、図5に示す変形例の飛行体10とすることができる。変形例の飛行体10とする場合、フローセンサ36は、第1実施形態の変形例の飛行体10における圧力センサ31と同じく、機体11の上部及び下部にそれぞれ設けられる。
【0074】
機体11の上部及び下部の各フローセンサ36は、飛行体10の飛行中において、気流Bの向きと直交する方向に並び、飛行体10の上空及び地上を結ぶ方向に間隔を置いた箇所にそれぞれ配置される。各フローセンサ36は、飛行体10の飛行中において、機体11の上部及び下部にそれぞれ沿って流れる気流Bの状態に対応する物理量として、各気流Bの速度をそれぞれ検出する。
【0075】
コントローラ32は、機体11の上部及び下部のフローセンサ36による出力の差分に基づいて、飛行体10のモードを切り替えることで、飛行体10の飛行状態を制御することができる。コントローラ32は、飛行体10の飛行状態の制御を、例えば、図7のフローチャートに示す手順で行うことができる。
【0076】
以上に説明した変形例でも、飛行制御装置30が飛行体10の飛行状態を制御することで、飛行体10を長い距離滑空させて、モータ16が主翼12を羽ばたき動作させる距離を減らし、飛行体10のバッテリ17の電力消費を抑えることができる。
【0077】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る飛行制御装置は、第1実施形態及び第2実施形態と同じ図1Aの飛行体10に搭載される。第3実施形態の飛行制御装置30は、図6のフローセンサ36と、図1Aに示す制御部としてのコントローラ32とを有している。本実施形態の飛行制御装置30では、フローセンサ36を1つだけ用い、フローセンサ36の一対のサーモパイル40,40を、飛行体10の機体11の表面の上部及び下部に分けて配置する。
【0078】
図8Aに示すように、フローセンサ36は、機体11の上部及び下部の楕円で囲んだ位置に、一対のセンサとしてのサーモパイル40がそれぞれ配置され、両サーモパイル40,40の間にヒータ39が配置されるように、機体11に設けられる。フローセンサ36は、ヒータ39、サーモパイル40及び周囲温度センサ41が外側を向くように、機体11の表面に設けられる。フローセンサ36のヒータ39、サーモパイル40及び周囲温度センサ41は、機体11の表面に沿った気流Bの流れを変化させないように、機体11の表面に埋め込んで設けることが望ましい。
【0079】
機体11の上部及び下部の各サーモパイル40は、飛行体10の飛行中において、機体11の表面に沿って地上側から上空側に流れる上昇気流Uの向きに並び、飛行体10の上空及び地上を結ぶ方向に間隔を置いた箇所にそれぞれ配置される。両サーモパイル40は、飛行体10の飛行中において、各サーモパイル40に発生する起電力により、機体11の表面に沿って流れる上昇気流Uの状態に対応する物理量として、上昇気流Uの速度に応じてヒータ39から伝わる熱を検出する。
【0080】
コントローラ32は、機体11の上部及び下部にそれぞれ配置したサーモパイル40による出力の差分に基づいて、飛行体10の飛行状態を制御することができる。飛行体10が上昇気流Uの中を飛行している間は、機体11の機首を上げる姿勢にしなくても、あるいは、プロペラ15の回転を上げて飛行体10の飛行速度を上昇させなくても、上昇気流Uによって大きな揚力Lが主翼12に作用する。
【0081】
コントローラ32は、機体11の上部及び下部の各サーモパイル40による出力の差分から、機体11の表面に沿って流れる上昇気流Uの速度を求め、求めた上昇気流Uの速度から、上昇気流Uの有無を判定することができる。コントローラ32は、求めた上昇気流Uの速度が、上昇気流Uの存在を判定するための閾値を上回るか否かによって、上昇気流Uの有無を判定することができる。
【0082】
コントローラ32は、例えば、飛行体10に搭載した角速度センサ42が検出する飛行体10の飛行高度の変化を参酌して、上昇気流Uの有無を判定してもよい。
【0083】
例えば、飛行体10の飛行高度が下がると、機体11の周辺に、地上側から上空側に向かう気流が相対的に生じる。地上側から上空側に向かう相対的な気流の速度は、飛行高度の降下速度と同じ速度となる。機体11のサーモパイル40による出力の差分でコントローラ32が求める気流Bの速度は、飛行体10の降下により生じた相対的な気流の速度を含んでいる。
【0084】
コントローラ32は、例えば、角速度センサ42の出力から飛行体10の降下を検出した場合に、サーモパイル40による出力の差分から求めた気流Bの速度から、飛行体10の降下速度分を差し引いて、上昇気流Uの速度を求めることができる。コントローラ32は、飛行体10の降下速度分を差し引いて求めた上昇気流Uの速度が閾値を上回るか否かを判定することで、角速度センサ42が検出する飛行体10の飛行高度の変化を参酌して、上昇気流Uの有無を判定することができる。
【0085】
コントローラ32は、例えば、図2Aに示す滑空モードと図8Bに示すソアリングモードとの切り替えにより、飛行体10の飛行状態を制御することができる。
【0086】
図8Bのソアリングモードは、飛行体10は、上昇気流Uの中で旋回しながら飛行する。このモードでは、プロペラ15の回転により発生する推力を落としても、飛行速度を維持して飛行体10の飛行高度を上昇させ、あるいは、飛行高度を維持して飛行速度を上昇させることができる。このモードでは、プロペラ15の回転による推力を上げて飛行体10の飛行高度又は飛行速度を上昇させる場合に比べて、飛行体10の飛行中にモータ16が消費するバッテリ17の電力が抑えられる。
【0087】
コントローラ32は、機体11の周辺を流れる上昇気流Uが存在すると判定した場合に、図8Bのソアリングモードとなるように飛行体10の飛行状態を制御する。コントローラ32は、機体11の周辺を流れる上昇気流Uが存在しないと判定した場合に、図2Aの滑空モードとなるように飛行体10の飛行状態を制御する。
【0088】
コントローラ32は、主翼12及び水平尾翼13のうち少なくとも一方のフラップ18,19の動作と垂直尾翼14のフラップ20の動作とを制御して、図2Aのモードと図8Bのモードとを切り替えることで、飛行体10の飛行状態を制御することができる。
【0089】
本実施形態の飛行制御装置30では、機体11の上部及び下部のサーモパイル40が、機体11の周辺を流れる上昇気流Uの速度に応じてヒータ39から伝わる熱を検出する。コントローラ32は、各サーモパイル40の出力の差分から、両サーモパイル40,40間を流れる気流Bの速度を、機体11の周辺を流れる上昇気流Uの速度として求める。
【0090】
コントローラ32は、求めた速度から上昇気流Uが存在すると判定した場合に、飛行体10をソアリングモードで飛行するように飛行体10の飛行状態を制御し、バッテリ17の消費を抑えつつ飛行体10の飛行高度又は飛行速度を上昇させる。コントローラ32は、求めた速度から上昇気流Uが存在しないと判定した場合に、飛行体10を滑空させるモードで飛行するように飛行体10の飛行状態を制御し、飛行体10の飛行中にモータ16が消費するバッテリ17の電力を抑える。
【0091】
飛行体10の飛行高度が降下した場合に、角速度センサ42が検出する飛行体10の飛行高度の変化を参酌し、飛行体10の飛行高度の降下により相対的に生じる地上側から上空側への気流の速度分を差し引いて、上昇気流Uの有無を判定してもよい。
【0092】
コントローラ32は、メモリに記憶させたプログラムをCPUに実行させることで、上述した制御を、例えば、図9のフローチャートに示す手順で行うことができる。この手順は、コントローラ32が周期的に繰り返し行うことができる。
【0093】
コントローラ32は、機体11の周辺を流れる上昇気流Uの速度を、機体11の上部及び下部の各サーモパイル40の出力の差分から検出する(ステップS31)。コントローラ32は、検出した上昇気流Uの速度から、上昇気流Uの有無を判定する。
【0094】
コントローラ32は、角速度センサ42の出力を参酌して上昇気流Uの有無を判定してもよい。角速度センサ42の出力を参酌する場合、コントローラ32は、飛行体10の飛行高度の降下により相対的に生じる地上側から上空側への気流の速度分を、ステップS31で検出した上昇気流Uの速度から差し引く。コントローラ32は、差し引き後の上昇気流Uの速度から、上昇気流Uの有無を判定する(ステップS33)。
【0095】
上昇気流Uが存在しないと判定した場合に(ステップS35でNO)、コントローラ32は、飛行体10を滑空させる図2Aの滑空モードで飛行体10の飛行状態を制御する(ステップS37)。上昇気流Uが存在すると判定した場合に(ステップS35でYES)、コントローラ32は、飛行体10を上昇気流Uの中で旋回しながら飛行させる図8Bのソアリングモードで飛行体10の飛行状態を制御する(ステップS39)。ステップS37又はステップS39の後、コントローラ32は、一連の処理を終了する。
【0096】
コントローラ32が飛行体10の飛行状態を以上のように制御することで、飛行体10を長い距離に亘り滑空させて、推力発生のためにプロペラ15をモータ16が回転させる距離を減らし、飛行体10のバッテリ17の電力消費を抑えることができる。
【0097】
[第4実施形態]
第3実施形態では、プロペラ15をモータ16で回転させて推力を得る固定翼の飛行体10を上昇気流Uに乗せる飛行制御について説明した。以下の第4実施形態では、主翼の羽ばたき動作で推力を得る可動翼の飛行体を上昇気流Uに乗せる飛行制御について説明する。
【0098】
図10は、第4実施形態に係る飛行体の説明図である。図10の飛行体50には、第4実施形態に係る飛行制御装置30が搭載されている。本実施形態の飛行体50は、鶴の折り紙を模した鳥形状を有している。飛行体50は、胴部51の中間部に羽ばたき動作する左右一対の主翼52を取り付け、胴部51の最後部に尾翼53を有している。
【0099】
飛行体50を飛行させるための推力は、主翼52の羽ばたき動作によって得ることができる。主翼52は、例えば、胴部51内のモータ16及び動力伝達機構54によって羽ばたき動作させることができる。飛行体50は、重心移動用の錘及び方向変換用プロペラをさらに有していてもよい。図10における錘及び方向変換用のプロペラの図示は省略する。飛行体50は、例えば、錘の位置移動と方向変換用プロペラの回転との組み合わせで方向変換することができる。錘の位置移動及び方向変換用プロペラの回転には、例えば、モータ16を動力源として用いることができる。
【0100】
胴部51には、モータ16、バッテリ17、コントローラ32及び動力伝達機構54の他に、図6のフローセンサ36及び角速度センサ42が設けられている。
【0101】
本実施形態の飛行制御装置30は、フローセンサ36と、制御部としてのコントローラ32とを有している。フローセンサ36は、本実施形態でも、第3実施形態と同じく1つだけ使用される。フローセンサ36の一対のサーモパイル40,40は、図10における図示を省略するが、胴部51の上部及び下部にそれぞれ配置されている。フローセンサ36のヒータ39は、両サーモパイル40,40の中間に配置されている。フローセンサ36のヒータ39及び周囲温度センサ41も、図10における図示を省略する。
【0102】
胴部51の上部及び下部の各サーモパイル40は、飛行体50の飛行中において、胴部51の表面に沿って地上側から上空側に流れる上昇気流Uの向きに並び、飛行体50の上空及び地上を結ぶ方向に間隔を置いた箇所にそれぞれ配置される。両サーモパイル40は、飛行体50の飛行中において、各サーモパイル40に発生する起電力により、胴部51の表面に沿って流れる上昇気流Uの状態に対応する物理量として、上昇気流Uの速度に応じてヒータ39から伝わる熱を検出する。
【0103】
コントローラ32は、胴部51の上部及び下部にそれぞれ配置したサーモパイル40による出力の差分に基づいて、飛行体50の飛行状態を制御することができる。飛行体50が上昇気流Uの中を飛行している間は、主翼52を羽ばたき動作させなくても、上昇気流Uによって大きな揚力Lが主翼52に作用する。
【0104】
コントローラ32は、胴部51の上部及び下部の各サーモパイル40による出力の差分から、胴部51の表面に沿って流れる上昇気流Uの速度を求め、求めた上昇気流Uの速度から、上昇気流Uの有無を判定することができる。コントローラ32は、求めた上昇気流Uの速度が、上昇気流Uの存在を判定するための閾値を上回るか否かによって、上昇気流Uの有無を判定することができる。
【0105】
コントローラ32は、例えば、飛行体50に搭載した角速度センサ42が検出する飛行体50の飛行高度の変化を参酌して、上昇気流Uの有無を判定してもよい。
【0106】
コントローラ32は、例えば、角速度センサ42の出力から飛行体50の降下を検出した場合に、第3実施形態の場合と同様にして、飛行体50の降下速度分を差し引いた上昇気流Uの速度を求めることができる。コントローラ32は、飛行体10の降下速度分を差し引いて求めた上昇気流Uの速度が閾値を上回るか否かを判定することで、角速度センサ42が検出する飛行体10の飛行高度の変化を参酌して、上昇気流Uの有無を判定することができる。
【0107】
コントローラ32は、例えば、図2Aを参照して説明した滑空モードと、図8Bを参照して説明したソアリングモードとの切り替えにより、飛行体50の飛行状態を制御することができる。
【0108】
コントローラ32は、胴部51の周辺を流れる上昇気流Uが存在すると判定した場合に、ソアリングモードとなるように飛行体50の飛行状態を制御する。コントローラ32は、胴部51の周辺を流れる上昇気流Uが存在しないと判定した場合に、滑空モードとなるように飛行体50の飛行状態を制御する。
【0109】
コントローラ32は、例えば、不図示の錘の移動と方向変換用プロペラの回転とを組み合わせて制御し、滑空モードとソアリングモードとを切り替えることで、飛行体50の飛行状態を制御することができる。
【0110】
本実施形態の飛行制御装置30では、胴部51の上部及び下部のサーモパイル40が、胴部51の周辺を流れる上昇気流Uの速度に応じてヒータ39から伝わる熱を検出する。コントローラ32は、各サーモパイル40の出力の差分から、両サーモパイル40,40間を流れる気流Bの速度を、胴部51の周辺を流れる上昇気流Uの速度として求める。
【0111】
コントローラ32は、求めた速度から上昇気流Uが存在すると判定した場合に、飛行体50をソアリングモードで飛行するように飛行体50の飛行状態を制御し、バッテリ17の消費を抑えつつ飛行体50の飛行高度又は飛行速度を上昇させる。コントローラ32は、求めた速度から上昇気流Uが存在しないと判定した場合に、飛行体50を滑空モードで飛行するように飛行体50の飛行状態を制御し、飛行体50の飛行中にモータ16が消費するバッテリ17の電力を抑える。
【0112】
飛行体50の飛行高度が降下した場合に、角速度センサ42が検出する飛行体50の飛行高度の変化を参酌し、飛行体50の飛行高度の降下により相対的に生じる地上側から上空側への気流の速度分を差し引いて、上昇気流Uの有無を判定してもよい。
【0113】
コントローラ32は、メモリに記憶させたプログラムをCPUに実行させることで、上述した制御を、例えば、図9のフローチャートと同じ手順で行うことができる。この手順は、コントローラ32が周期的に繰り返し行うことができる。
【0114】
コントローラ32は、胴部51の周辺を流れる上昇気流Uの速度を、胴部51の上部及び下部の各サーモパイル40の出力の差分から検出する(ステップS31)。コントローラ32は、検出した上昇気流Uの速度から、上昇気流Uの有無を判定する。
【0115】
コントローラ32は、角速度センサ42の出力を参酌して上昇気流Uの有無を判定してもよい。角速度センサ42の出力を参酌する場合、コントローラ32は、飛行体50の飛行高度の降下により相対的に生じる地上側から上空側への気流の速度分を、ステップS31で検出した上昇気流Uの速度から差し引く。コントローラ32は、差し引き後の上昇気流Uの速度から、上昇気流Uの有無を判定する(ステップS33)。
【0116】
上昇気流Uが存在しないと判定した場合に(ステップS35でNO)、コントローラ32は、飛行体50を滑空させる滑空モードで飛行体50の飛行状態を制御する(ステップS37)。上昇気流Uが存在すると判定した場合に(ステップS35でYES)、コントローラ32は、飛行体50を上昇気流Uの中で旋回しながら飛行させるソアリングモードで飛行体50の飛行状態を制御する(ステップS39)。ステップS37又はステップS39の後、コントローラ32は、一連の処理を終了する。
【0117】
コントローラ32が飛行体50の飛行状態を以上のように制御することで、飛行体50を長い距離に亘り滑空させて、推力発生のために主翼52をモータ16の動力で羽ばたき動作させる距離を減らし、飛行体50のバッテリ17の電力消費を抑えることができる。
【0118】
[第4実施形態の変形例]
図10では、羽ばたき動作を行う飛行体50が鶴の折り紙を模した鳥形状であるものとしたが、羽ばたき動作を行う図5の飛行体10でも、第4実施形態の飛行体50と同様に、飛行体10を上昇気流Uに乗せる制御を行うことができる。
【0119】
図5の飛行体10を上昇気流Uに乗せる制御を行う場合は、図5の飛行体10の機体11の上部及び下部に、フローセンサ36の一対のサーモパイル40,40をそれぞれ配置する。図10では図示を省略するが、フローセンサ36のヒータ39、周辺温度センサ41及び角速度センサ42も、図10の飛行体50と同様に、図5の飛行体10の機体11にそれぞれ設ける。
【0120】
図5の飛行体10のコントローラ32は、図10の飛行体50のコントローラ32と同様の制御を、例えば、図9のフローチャートに示す手順で行うことができる。この制御により、図5の飛行体10のコントローラ32は、機体11の周辺を流れる上昇気流Uが存在しないと判定した場合に、飛行体10のモードを滑空モードとし、上昇気流Uが存在すると判定した場合に、飛行体10のモードをソアリングモードとする。
【0121】
コントローラ32が飛行体10の飛行状態を以上のように制御することで、飛行体10を長い距離に亘り滑空させて、推力発生のために主翼12及び水平尾翼13の少なくとも一方を羽ばたき動作させる距離を減らすことができる。主翼12及び水平尾翼13を羽ばたき動作させる距離を減らすことで、飛行体10のバッテリ17の電力消費を抑えることができる。
【0122】
本開示は上記の実施形態のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0123】
本開示に係る飛行制御装置は、以上の実施形態に限らず、例えば、ドローンを含むマルチコプター等、回転翼(ロータ)の回転により推力を得て飛行するヘリコプターと呼ばれる飛行体にも適用することができる。
【0124】
[付記]
以上に説明した実施形態によって、以下に示す各態様の発明が開示される。
【0125】
まず、第1の態様による発明として、
バッテリの電力で作動する動力源の動力により飛行する飛行体の表面に鉛直方向に間隔を置いて設けられ、気流の状態に対応する物理量をそれぞれ検出する一対のセンサと、
前記一対のセンサによる出力の差分に基づいて、前記飛行体の飛行状態を制御する制御部と、
を備える飛行制御装置が開示される。
【0126】
次に、第2の態様による発明として、前記一対のセンサは、前記飛行体の揚力が作用する部分の上空側表面及び地上側表面をそれぞれ流れる気流の気圧を検出する飛行制御装置が開示される。
【0127】
続いて、第3の態様による発明として、前記一対のセンサは、前記飛行体の揚力が作用する部分の上空側表面及び地上側表面をそれぞれ流れる気流の速度を検出する飛行制御装置が開示される。
【0128】
次に、第4の態様による発明として、前記揚力が作用する部分は前記飛行体の主翼及び水平尾翼のうち少なくとも一方である飛行制御装置が開示される。
【0129】
続いて、第5の態様による発明として、前記制御部は、前記差分から前記飛行体に働く揚力を求める飛行制御装置が開示される。
【0130】
次に、第6の態様による発明として、前記制御部は、前記飛行体の荷重に応じた重力以上である前記揚力の大きさが相対的に大きい場合に、前記飛行体を滑空させるモードに前記飛行状態を制御する飛行制御装置が開示される。第6の態様による発明では、前記制御部は、前記飛行体の荷重に応じた重力以上である前記揚力の大きさが相対的に小さい場合に、前記飛行体を前記揚力が増加する姿勢とするモードに前記飛行状態を制御する。
【0131】
続いて、第7の態様による発明として、前記一対のセンサは、前記一対のセンサ間を流れる気流の速度に応じた物理量をそれぞれ検出する飛行制御装置が開示される。第7の態様による発明では、前記制御部は、前記差分から、前記飛行体の周りを地上側から上空側に流れる上昇気流の有無を判定し、前記上昇気流の有無に基づいて前記飛行状態を制御する。
【0132】
次に、第8の態様による発明として、前記一対のセンサは、ヒータを中心として対称にそれぞれ配置された測温センサである飛行制御装置が開示される。第8の態様による発明では、上下の前記測温センサは、前記一対のセンサ間を流れる気流を介して前記ヒータから伝わる熱量に応じた温度をそれぞれ検出する。
【0133】
続いて、第9の態様による発明として、前記制御部は、前記飛行体に搭載した角速度センサが検出する前記飛行体の飛行高度の変化を参酌して、前記差分から前記上昇気流の有無を判定する飛行制御装置が開示される。
【0134】
次に、第10の態様による発明として、前記制御部は、モードの切り替えにより、前記飛行状態を制御する飛行制御装置が開示される。第10の態様による発明では、前記制御部は、前記飛行体の周りを地上側から上空側に流れる上昇気流によって前記飛行体の飛行高度又は飛行速度を上昇させるモードと、前記飛行体を滑空させるモードとを切り替える。
【0135】
続いて、第11の態様による発明として、前記制御部は、前記飛行体の主翼及び尾翼のうち少なくとも一方の可動部分の動作により前記飛行状態を制御する飛行制御装置が開示される。
【0136】
次に、第12の態様による発明として、前記可動部分はフラップを含む飛行制御装置が開示される。
【0137】
続いて、第13の態様による発明として、前記制御部は、前記飛行体の羽ばたき動作を行う主翼の動作により前記飛行状態を制御する飛行制御装置が開示される。
【符号の説明】
【0138】
10 飛行体
11 機体
12 主翼(揚力が作用する部分)
13 水平尾翼
14 垂直尾翼
15 プロペラ
16 モータ(動力源)
17 バッテリ
18,19 フラップ(可動部分)
20 フラップ
21 主翼上面(上空側表面)
22 主翼下面(地上側表面)
30 飛行制御装置
31 圧力センサ(一対のセンサ)
32 コントローラ(制御部)
33 Si基板
34 ダイヤフラム
35 ブリッジ回路
36 フローセンサ(一対のセンサ)
37 Si基板
38 多層薄膜メンブレン構造体
39 ヒータ
40 サーモパイル(一対のセンサ、測温センサ)
41 周囲温度センサ
42 角速度センサ
50 飛行体
51 胴部
52 主翼
53 尾翼
54 動力伝達機構
A 前進方向
B 気流
F 空気の一様流の方向
L 揚力
P 圧力
U 上昇気流
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10