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特開2022-191778正極の製造方法、正極およびリチウムイオン二次電池
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  • 特開-正極の製造方法、正極およびリチウムイオン二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191778
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】正極の製造方法、正極およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20221221BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221221BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221221BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/13
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100218
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】荒木 一浩
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 章裕
(72)【発明者】
【氏名】福島 忠広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩光
(72)【発明者】
【氏名】入野 真
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA18
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA24
5H050EA27
5H050EA28
5H050FA12
5H050FA16
5H050FA17
5H050GA10
5H050GA22
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池の直流抵抗を低減させることが可能な正極の製造方法を提供する。
【解決手段】正極の製造方法は、カーボン粒子と、第一のバインダと、第一の分散剤と、第一の溶媒とを混合して、第一の分散液を製造する工程と、カーボンナノチューブと、第二のバインダと、第二の分散剤と、第二の溶媒とを混合して、第二の分散液を製造する工程と、第一の分散液および第二の分散液の一方と、正極活物質とを混合して、第三の分散液を製造する工程と、第一の分散液および第二の分散液の他方と、第三の分散液とを混合して、第四の分散液を製造する工程と、第四の分散液を正極集電体に塗布して、正極合材層を形成する工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン粒子と、第一のバインダと、第一の分散剤と、第一の溶媒とを混合して、第一の分散液を製造する工程と、
カーボンナノチューブと、第二のバインダと、第二の分散剤と、第二の溶媒とを混合して、第二の分散液を製造する工程と、
前記第一の分散液および前記第二の分散液の一方と、正極活物質とを混合して、第三の分散液を製造する工程と、
前記第一の分散液および前記第二の分散液の他方と、前記第三の分散液とを混合して、第四の分散液を製造する工程と、
前記第四の分散液を正極集電体に塗布して、正極合材層を形成する工程と、を含む、正極の製造方法。
【請求項2】
前記第一の分散液と、正極活物質とを混合して、前記第三の分散液を製造し、
前記第二の分散液と、前記第三の分散液とを混合して、前記第四の分散液を製造する、請求項1に記載の正極の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の正極の製造方法により製造されている、正極。
【請求項4】
請求項3に記載の正極を有する、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極の製造方法、正極およびリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高エネルギー密度を有する蓄電デバイスとして、リチウムイオン二次電池が幅広く普及している。リチウムイオン二次電池は、正極と負極との間に、電解液が含浸しているセパレータまたは固体電解質層が配置されている。
【0003】
正極は、例えば、正極活物質と、導電助剤と、バインダと、分散剤と、溶媒とを含む分散液を正極集電体に塗布して正極合材層を形成することにより製造されるが、導電助剤として、カーボンナノチューブを用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-120845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、カーボンナノチューブは、凝集しやすいため、分散液を製造する際に、せん断力を印加して、カーボンナノチューブの凝集物を解砕する。しかしながら、分散液中でカーボンナノチューブが再凝集するため、正極におけるカーボンナノチューブと正極活物質との接触が減少して、リチウムイオン二次電池の直流抵抗が増大するという課題がある。
【0006】
本発明は、リチウムイオン二次電池の直流抵抗を低減させることが可能な正極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、正極の製造方法において、カーボン粒子と、第一のバインダと、第一の分散剤と、第一の溶媒とを混合して、第一の分散液を製造する工程と、カーボンナノチューブと、第二のバインダと、第二の分散剤と、第二の溶媒とを混合して、第二の分散液を製造する工程と、前記第一の分散液および前記第二の分散液の一方と、正極活物質とを混合して、第三の分散液を製造する工程と、前記第一の分散液および前記第二の分散液の他方と、前記第三の分散液とを混合して、第四の分散液を製造する工程と、前記第四の分散液を正極集電体に塗布して、正極合材層を形成する工程と、を含む。
【0008】
上記の正極の製造方法は、前記第一の分散液と、正極活物質とを混合して、前記第三の分散液を製造し、前記第二の分散液と、前記第三の分散液とを混合して、前記第四の分散液を製造してもよい。
【0009】
本発明の他の一態様は、正極において、上記の正極の製造方法により製造されている。
【0010】
本発明の他の一態様は、リチウムイオン二次電池において、上記の正極を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の直流抵抗を低減させることが可能な正極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の正極における正極合材層の表面のSEM像である。
図2】実施例3の正極における正極合材層の表面のSEM像である。
図3】比較例1の正極における正極合材層の表面のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
[正極の製造方法]
本実施形態の正極の製造方法は、カーボン粒子と、第一のバインダと、第一の分散剤と、第一の溶媒とを混合して、第一の分散液を製造する工程と、カーボンナノチューブと、第二のバインダと、第二の分散剤と、第二の溶媒とを混合して、第二の分散液を製造する工程と、を含む。また、本実施形態の正極の製造方法は、第一の分散液および第二の分散液の一方と、正極活物質とを混合して、第三の分散液を製造する工程と、第一の分散液および第二の分散液の他方と、第三の分散液とを混合して、第四の分散液を製造する工程と、第四の分散液を正極集電体に塗布して、正極合材層を形成する工程と、を含む。これにより、カーボンナノチューブに印加されるせん断力が低減されるため、第四の分散液中におけるカーボンナノチューブの再凝集が抑制される。その結果、正極におけるカーボンナノチューブと正極活物質との接触が増加して、リチウムイオン二次電池の直流抵抗が低減する。
【0015】
ここで、分散液の形態としては、特に限定されないが、例えば、ペースト、スラリー等が挙げられる。
【0016】
また、第三の分散液および第四の分散液を製造する際に、必要に応じて、溶媒を加えて、粘度を調整してもよい。溶媒は、第一の溶媒または第二の溶媒と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
さらに、正極合材層が形成された正極集電体を、必要に応じて、圧延してもよい。
【0018】
本実施形態の正極の製造方法は、第一の分散液と、正極活物質とを混合して、第三の分散液を製造し、第二の分散液と、第三の分散液とを混合して、第四の分散液を製造することが好ましい。これにより、カーボンナノチューブに印加されるせん断力がさらに低減されるため、第四の分散液中におけるカーボンナノチューブの再凝集がさらに抑制される。
【0019】
第一の分散液および第二の分散液の他方と、第三の分散液とをせん断速度5.2s-1以下で混合することが好ましい。これにより、カーボンナノチューブに印加されるせん断力がさらに低減されるため、第四の分散液中におけるカーボンナノチューブの再凝集がさらに抑制される。
【0020】
カーボン粒子としては、導電性を有していれば、特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、人工黒鉛粒子、天然黒鉛粒子等の黒鉛粒子等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0021】
カーボンブラックの市販品としては、デンカブラック(デンカ製)、ケッチェンブラック(ライオン製)等が挙げられる。
【0022】
カーボン粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、5nm以上100nm以下である。
【0023】
カーボンナノチューブの繊維径は、特に限定されないが、例えば、5nm以上10nm以下である。
【0024】
カーボンナノチューブの繊維長は、特に限定されないが、例えば、5μm以上20μm以下である。
【0025】
第一のバインダおよび第二のバインダとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0026】
ここで、第一のバインダおよび第二のバインダは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
第一の分散剤および第二の分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル等の高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0028】
ここで、第一の分散剤および第二の分散剤は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
第一の溶媒および第二の溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルホルムアミド(NMF)等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0030】
ここで、第一の溶媒および第二の溶媒は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、LiCoO、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O2、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O2、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li(Ni1/6Co4/6Mn1/6)O2、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO、硫化リチウム、硫黄等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0032】
正極集電体としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0033】
正極合材層中の正極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば、80質量%以上99質量%以下である。
【0034】
正極合材層中のカーボン粒子の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5質量%以上10質量%以下である。
【0035】
正極合材層中のカーボンナノチューブの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5質量%以上3質量%以下である。
【0036】
正極合材層中の第一のバインダおよび第二のバインダの総含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5質量%以上5質量%以下である。
【0037】
[正極]
本実施形態の正極は、本実施形態の正極の製造方法により製造されている。
【0038】
本実施形態の正極は、正極活物質の表面の少なくとも一部がカーボン粒子およびカーボンナノチューブで被覆されているが、カーボン粒子とカーボンナノチューブが凝集していないことが好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の直流抵抗がさらに低減される。
【0039】
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、本実施形態の正極と負極との間に、電解液が含浸しているセパレータまたは固体電解質層が配置されている。
【0040】
負極は、特に限定されないが、例えば、負極集電体と、負極合材層とを有する。
【0041】
負極集電体としては、特に限定されないが、例えば、銅箔等が挙げられる。
【0042】
負極合材層は、特に限定されないが、例えば、負極活物質と、導電助剤と、バインダとを含む。
【0043】
負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛、ハードカーボン、活性炭、Si、SiOx、Sn、SnOx等が挙げられる。
【0044】
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0045】
バインダとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0046】
電解液は、特に限定されないが、例えば、電解質と、溶媒と、添加剤とを含む。
【0047】
電解質としては、特に限定されないが、例えば、LiPF、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロホスフェート(LiDPF)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)等のリチウム塩が挙げられる。
【0048】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、γ-ブチロラクトン(GBL)等が挙げられる。
【0049】
添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PRS)等が挙げられる。
【0050】
セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、多孔質樹脂フィルム等を用いることができる。
【0051】
多孔質樹脂フィルムを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アラミド樹脂等が挙げられる。
【0052】
なお、多孔質樹脂フィルムは、セラミックコーティングが表面に施されていてもよい。
【0053】
セラミックコーティングを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、SiOx、Al等が挙げられる。
【0054】
固体電解質層を構成する固体電解質としては、特に限定されないが、例えば、酸化物系電解質、硫化物系電解質等が挙げられる。
【実施例0055】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
アセチレンブラックとしての、デンカブラック(デンカ製)と、PVDFとしての、KFポリマー#1100(クレハ製)と、分散剤と、NMPとを混合し、第一の分散液(スラリー)を得た。
【0057】
繊維長5~20μm、繊維径5~10nm、純度99%以上のカーボンナノチューブと、PVDFとしての、KFポリマー#1100(クレハ製)と、分散剤と、NMPとを混合し、第二の分散液(スラリー)を得た。
【0058】
第一の分散液と、正極活物質としての、平均粒径4μmのLiNi0.33Co0.33Mn0.33とを、プラネタリーミキサーを用いて、回転数20~25rpm(せん断速度2.1~2.6s-1)で撹拌混合し、第三の分散液(スラリー)を得た。
【0059】
第二の分散液と、第三の分散液とを、プラネタリーミキサーを用いて、回転数20~25rpm(せん断速度2.1~2.6s-1)で撹拌混合した後、NMP溶媒を加えて粘度を調整し、第四の分散液(スラリー)を得た。
【0060】
正極集電体としての、厚さ12μmのAl箔に、第四の分散液を塗布し、乾燥させ、正極合材層を形成した後、圧延し、正極を得た。ここで、正極合材層を構成する正極合材の配合[質量%]は、以下の通りである。
【0061】
正極活物質:アセチレンブラック:カーボンナノチューブ:PVDF=95:1.5:1.5:2
正極の一部を切り出した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、正極合材層の表面を観察した。
【0062】
図1に、正極合材層の表面のSEM像を示す。ここで、図1(a)および(b)は、それぞれ倍率が1000倍および5000倍であるSEM像である。
【0063】
図1から、アセチレンブラックおよびカーボンナノチューブが凝集していないことがわかる。
【0064】
[実施例2]
第三の分散液および第四の分散液を得る際に、プラネタリーミキサーおよびディスパーを用いて、それぞれ回転数20~25rpm(せん断速度2.1~2.6s-1)および回転数500rpm(せん断速度52.3s-1)で撹拌混合した以外は、実施例1と同様にして、正極を得た。
【0065】
実施例1と同様にして、正極合材層の表面を観察したところ、アセチレンブラックおよびカーボンナノチューブが凝集していないことが確認された。
【0066】
[実施例3]
第三の分散液を得る際に、第一の分散液の代わりに、第二の分散液を用い、第四の分散液を得る際に、第二の分散液の代わりに、第一の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、正極を得た。
【0067】
実施例1と同様にして、正極合材層の表面を観察した。
【0068】
図2に、正極合材層の表面のSEM像を示す。ここで、図2は、倍率が1000倍であるSEM像である。
【0069】
図2から、アセチレンブラックおよびカーボンナノチューブが極僅かに凝集していることがわかる。
【0070】
[実施例4]
第三の分散液を得る際に、第一の分散液の代わりに、第二の分散液を用い、第四の分散液を得る際に、第二の分散液の代わりに、第一の分散液を用いた以外は、実施例2と同様にして、正極を得た。
【0071】
実施例1と同様にして、正極合材層の表面を観察したところ、アセチレンブラックおよびカーボンナノチューブが極僅かに凝集していることが確認された。
【0072】
[比較例1]
アセチレンブラックとしての、デンカブラック(デンカ製)と、繊維長5~20μm、繊維径5~10nm、純度99%以上のカーボンナノチューブと、PVDFとしての、KFポリマー#1100(クレハ製)と、分散剤と、NMPとを混合し、第一の分散液(スラリー)を得た。
【0073】
第一の分散液と、正極活物質としての、平均粒径4μmのLiNi0.33Co0.33Mn0.33とを、プラネタリーミキサーを用いて、20~25rpmで撹拌混合した後、NMP溶媒を加えて粘度を調整し、第二の分散液(スラリー)を得た。
【0074】
正極集電体としての、厚さ12μmのAl箔に、第二の分散液を塗布し、乾燥させ、正極合材層を形成した後、圧延し、正極を得た。ここで、正極合材層を構成する正極合材の配合[質量%]は、以下の通りである。
【0075】
正極活物質:アセチレンブラック:カーボンナノチューブ:PVDF=95:1.5:1.5:2
実施例1と同様にして、正極合材層の表面を観察した。
【0076】
図3に、正極合材層の表面のSEM像を示す。ここで、図3(a)および(b)は、それぞれ倍率が1000倍および5000倍であるSEM像である。
【0077】
図3から、アセチレンブラックおよびカーボンナノチューブが凝集していることがわかる。
【0078】
[比較例2]
第二の分散液を得る際に、プラネタリーミキサーおよびディスパーを用いて、それぞれ20~25rpmおよび500rpmで撹拌混合した以外は、比較例1と同様にして、正極を得た。
【0079】
実施例1と同様にして、正極合材層の表面を観察したところ、アセチレンブラックおよびカーボンナノチューブが凝集していることが確認された。
【0080】
次に、実施例および比較例の正極を用いて、リチウムイオン二次電池の直流抵抗(DCR)を評価した。
【0081】
[リチウムイオン二次電池のDCR]
負極活物質としての、グラファイトと、アセチレンブラックとしての、デンカブラック(デンカ製)と、スチレンブタジエンゴム(SBR)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、水と、を混合し、分散液(スラリー)を得た。
【0082】
負極集電体としての、厚さ4μmのCu箔に、分散液を塗布し、乾燥させ、負極合材層を形成した後、圧延し、負極を得た。
【0083】
セパレータを介して、正極と負極とを積層し、セパレータに電解液を含浸させた後、ラミネートフィルムで封止し、放電容量1Ahのリチウムイオン二次電池を得た。
【0084】
リチウムイオン二次電池の温度を60℃にした状態で、充電状態(SOC)50%に相当する開回路電圧(OCV)に調整した後、30Cに相当する30Aで10秒間放電し、式
[V(0s)-V(10s)]/I
により、DCRを算出した。
【0085】
表1に、リチウムイオン二次電池のDCRの評価結果を示す。ここで、DCRの値は、実施例1のDCRの値に対する相対値である。
【0086】
【表1】
【0087】
表1から、実施例1~4の正極は、比較例1、2の正極よりも、リチウムイオン二次電池のDCRが小さいことがわかる。
図1
図2
図3