(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191790
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】異常検出装置、異常検出方法、および異常検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221221BHJP
【FI】
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100236
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向 雲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096DA01
5L096DA04
5L096FA69
5L096FA76
5L096GA06
5L096GA30
5L096HA11
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】異常検出精度の向上を図る。
【解決手段】異常検出装置10は、取得部22と、第1導出部24と、第2導出部26と、異常度導出部28と、を備える。取得部22は、入力データを取得する。第1導出部24は、自然データを用いて学習された学習済深層モデルを用いて入力データから導出した第1特徴量と、対象データを用いて学習された予測モデルを用いて入力データから導出した第2特徴量と、の差分に応じた第1異常度を導出する。第2導出部26は、第2特徴量に基づいて、入力データにおける第1領域と少なくとも一部が第1領域に非重複の第2領域との相対位置関係の推定結果に基づく第2異常度を導出する。異常度導出部は、第1異常度および第2異常度から、入力データの総合異常度を導出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データを取得する取得部と、
自然データを用いて学習された学習済深層モデルを用いて前記入力データから導出した第1特徴量と、対象データを用いて学習された予測モデルを用いて前記入力データから導出した第2特徴量と、の差分に応じた第1異常度を導出する第1導出部と、
前記第2特徴量に基づいて、前記入力データにおける第1領域と少なくとも一部が前記第1領域に非重複の第2領域との相対位置関係の推定結果に基づく第2異常度を導出する第2導出部と、
前記第1異常度および前記第2異常度から、前記入力データの総合異常度を導出する異常度導出部と、
を備える異常検出装置。
【請求項2】
前記第2導出部は、
前記第1領域の前記第2特徴量と前記第2領域の前記第2特徴量との差分に基づいて、前記第1領域と前記第2領域との可能な相対位置関係の各々が正解相対位置関係である確からしさを前記相対位置関係の前記推定結果として導出する、
請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記第2導出部は、
前記確からしさに基づいて、前記相対位置関係が正解相対位置関係である推定確率と確率100%との差分、前記推定確率の負の対数尤度、または前記確からしさのエントロピーを、前記第1領域の前記第2異常度として導出する、
請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
第1異常度は、前記第1特徴量と前記第2特徴量との距離が大きいほど単調非減少する値である、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記入力データ、前記第1異常度、前記第2異常度、および前記総合異常度の少なくとも1つを表示部に表示する表示制御部、
を備える請求項1~請求項4の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、
前記入力データ上に、前記第1異常度、前記第2異常度、および前記総合異常度の少なくとも1つを重畳して前記表示部に表示する、
請求項5に記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、
前記入力データ上に、前記第1異常度、前記第2異常度、および前記総合異常度の少なくとも1つを個別に前記表示部に表示する、
請求項5に記載の異常検出装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、
前記入力データにおける各要素に対応する位置に、各要素の前記第1異常度、前記第2異常度、および前記総合異常度の少なくとも1つを重畳して前記表示部に表示する、
請求項5または請求項6に記載の異常検出装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、
前記入力データにおける各要素に対応する位置に、各要素の前記第1異常度、前記第2異常度、および前記総合異常度の少なくとも1つを個別に前記表示部に表示する、
請求項5または請求項7に記載の異常検出装置。
【請求項10】
前記予測モデルは、正常データである前記対象データを用いて予め学習されてなる、
請求項1~請求項9の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項11】
前記第2導出部は、
前記第1領域の前記第2特徴量と前記第2領域の前記第2特徴量との差分から位置推定モデルを用いて前記推定結果を導出し、
前記位置推定モデルは、正常データを用いて予め学習されてなる、
請求項1~請求項10の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項12】
前記入力データは画像データである、
請求項1~請求項11の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項13】
入力データを取得するステップと、
自然データを用いて学習された学習済深層モデルを用いて前記入力データから導出した第1特徴量と、対象データを用いて学習された予測モデルを用いて前記入力データから導出した第2特徴量と、の差分に応じた第1異常度を導出するステップと、
前記第2特徴量に基づいて、前記入力データにおける第1領域と少なくとも一部が前記第1領域に非重複の第2領域との相対位置関係の推定結果に基づく第2異常度を導出するステップと、
前記第1異常度および前記第2異常度から、前記入力データの総合異常度を導出するステップと、
を含む異常検出方法。
【請求項14】
入力データを取得するステップと、
自然データを用いて学習された学習済深層モデルを用いて前記入力データから導出した第1特徴量と、対象データを用いて学習された予測モデルを用いて前記入力データから導出した第2特徴量と、の差分に応じた第1異常度を導出するステップと、
前記第2特徴量に基づいて、前記入力データにおける第1領域と少なくとも一部が前記第1領域に非重複の第2領域との相対位置関係の推定結果に基づく第2異常度を導出するステップと、
前記第1異常度および前記第2異常度から、前記入力データの総合異常度を導出するステップと、
をコンピュータに実行させるための異常検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、異常検出装置、異常検出方法、および異常検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像などの入力データに含まれる異常を検出するシステムが知られている。例えば、入力データと、入力データの特徴から復元した出力データと、の誤差分を用いて正常性を判定する技術が開示されている。また、例えば、学習済み深層モデルを用いて導出した特徴量と予測モデルを用いて導出した特徴量との予測誤差分を用いて異常検出を行う方法が開示されている。
【0003】
しかしながら従来技術では、入力データに含まれる局所的には正常領域であるが他の領域との位置関係では異常である領域を異常として検出することは困難であった。このため、従来技術では、異常検出精度が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Uninformed Students:Student-Teacher Anomaly Detection with Discriminative Latent Embeddings,CVPR,2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、異常検出精度の向上を図ることができる、異常検出装置、異常検出方法、および異常検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の異常検出装置は、取得部と、第1導出部と、第2導出部と、異常度導出部と、を備える。取得部は、入力データを取得する。第1導出部は、自然データを用いて学習された学習済深層モデルを用いて前記入力データから導出した第1特徴量と、対象データを用いて学習された予測モデルを用いて前記入力データから導出した第2特徴量と、の差分に応じた第1異常度を導出する。第2導出部は、前記第2特徴量に基づいて、前記入力データにおける第1領域と少なくとも一部が前記第1領域に非重複の第2領域との相対位置関係の推定結果に基づく第2異常度を導出する。異常度導出部は、前記第1異常度および前記第2異常度から、前記入力データの総合異常度を導出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図10】異常検出処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、異常検出装置、異常検出方法、および異常検出プログラムを詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の異常検出装置10の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0011】
異常検出装置10は、入力データに含まれる異常を検出する装置である。入力データの詳細は後述する。
【0012】
異常検出装置10は、記憶部12と、UI(ユーザ・インターフェース)部14と、通信部16と、制御部20と、を備える。記憶部12、UI部14、通信部16、および制御部20は、バス18などを介して通信可能に接続されている。
【0013】
記憶部12は、各種の情報を記憶する。記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。記憶部12は、異常検出装置10の外部に設けられた記憶装置であってもよい。例えば、記憶部12は、ネットワークなどを介して異常検出装置10に接続された外部の情報処理装置に搭載されていてもよい。
【0014】
UI部14は、各種の情報を表示する表示機能、およびユーザによる操作指示を受付ける入力機能、を備える。本実施形態では、UI部14は、表示部14Aと入力部14Bと有する。表示部14Aは、各種の情報を表示するディスプレイである。入力部14Bは、ユーザによる操作入力を受付けるデバイスである。入力部14Bは、例えば、マウスなどのポインティングデバイス、キーボードなどである。なお、UI部14は、表示部14Aおよび入力部14Bを一体的に構成したタッチパネルであってもよい。
【0015】
通信部16は、ネットワークなどを介して外部の情報処理装置と通信する通信機能部である。
【0016】
制御部20は、情報処理を実行する。制御部20は、取得部22と、第1導出部24と、第2導出部26と、異常度導出部28と、表示制御部30と、を備える。
【0017】
取得部22、第1導出部24、第2導出部26、異常度導出部28、および表示制御部30は、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のICなどのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。また、上記各部の少なくとも1つを、ネットワークを介して異常検出装置10に接続された外部の情報処理装置に設けた構成としてもよい。
【0018】
取得部22は、入力データを取得する。
【0019】
入力データは、異常検出装置10で異常を検出する対象となるデータである。入力データは、静止画像データ、動画像データなどの視覚情報である。入力データは、時間情報を含まないテンソルデータであることが好ましい。
【0020】
なお、取得部22は、時間情報を含むテンソルデータを取得してもよい。この場合、取得部22は、取得したテンソルデータを、時間情報を含まない形式に変換することで、入力データを取得すればよい。
【0021】
本実施形態では、入力データが、3次元のテンソルデータとして表現されたカラーの静止画像データである形態を一例として説明する。なお、以下では、カラーの静止画像データを、単に、画像と称して説明する場合がある。
【0022】
図2A~
図2Cは、正常データ32および入力データ35の一例を示す模式図である。
図2A~
図2Cには、正常データ32および入力データ35が、複数のケーブルを束ねた結束ケーブルの断面の画像である形態を一例として示す。
【0023】
図2Aは、正常データ32の一例を示す模式図である。正常データ32は、学習に用いる正常データの画像の一例である。
図2Aに示すように、例えば、正常データ32が、3本のケーブルの各々の断面領域である領域32A、領域32B、領域32C、を含む場合を想定する。
【0024】
図2Bは、異常入力データ34の一例を示す模式図である。異常入力データ34は、位置異常領域34Aおよび形状異常領域34Cを含む入力データ35の一例である。
【0025】
詳細には、異常入力データ34に含まれる、位置異常領域34A、正常領域34B、および形状異常領域34Cの各々の相対位置関係は、正常データ32の領域32A、領域32B、および領域32Cの各々の相対位置関係に一致する。
【0026】
位置異常領域34Aは、位置異常を示す領域である。位置異常を示す領域とは、正常データ32に含まれる正常な領域32Bと同じパターンであるが、他の領域に対する相対位置関係が異常な領域である。
【0027】
相対位置関係とは、入力データ35に含まれるある領域と、該領域に少なくとも一部が非重複の他の領域と、の相対的な位置関係を意味する。パターンとは、領域内の1または複数の要素によって表される色および形を意味する。言い換えると、パターンは、領域内に含まれる1または複数の物体の色および形を意味する。このため、相対位置関係が異常であるとは、入力データ35において該相対位置関係にある2つの領域におけるパターンの組み合わせが、正常データ32には存在しないことを意味する。
【0028】
本実施形態では、位置異常領域34Aを、相対位置関係が異常な領域の一例として示す。位置異常領域34Aは、局所的には、正常データ32に含まれる領域32Bと同じパターンであり、パターンとしては正常な領域である。さて、位置異常領域34Aと正常領域34Bとの相対位置関係を考える。この相対位置関係における2つの領域34Aおよび34Bのパターンの組み合わせは正常データ32には存在しない。したがって、位置異常領域34Aと正常領域34Bとの相対位置関係は異常である。同様に、位置異常領域34Aと形状異常領域34Cの相対位置関係も異常と判断できる。
【0029】
正常領域34Bは、形状異常を含まない領域である。正常領域34Bは、正常データ32に含まれる領域32Bとパターンが一致する。
【0030】
形状異常領域34Cは、形状異常を含む領域である。形状異常領域34Cのパターンは、正常データ32には存在しない。
図2Bには、一例として、形状異常領域34Cとして、ケーブルの一部に割れの生じた画像領域を示す。
【0031】
図2Cは、正常入力データ36の一例を示す模式図である。正常入力データ36は、形状異常および位置異常を含まない、正常データ32と略同一の入力データ35の一例である。
【0032】
詳細には、正常入力データ36に含まれる、正常領域36A、正常領域36B、および正常領域36Cは、正常データ32の領域32A、領域32B、および領域32Cと各々のパターンが一致する。正常領域36A、正常領域36B、および正常領域36Cの各々の相対位置関係は、領域32A、領域32B、および領域32Cの各々の相対位置関係に一致する。言い換えると、正常領域36A、正常領域36B、および正常領域36Cは、形状異常および相対位置関係の異常を含まない正常領域である。
【0033】
取得部22は、異常入力データ34および正常入力データ36などの入力データ35を取得する。取得部22は、記憶部12から入力データ35を読み取ることで、入力データ35を取得する。取得部22は、通信部16を介して外部の情報処理装置から入力データ35を取得してもよい。
【0034】
【0035】
第1導出部24は、学習済深層モデルを用いて入力データ35から導出した第1特徴量と、予測モデルを用いて入力データ35から導出した第2特徴量と、の差分に応じた第1異常度を導出する。
【0036】
図3は、第1導出部24の一例の機能ブロック図である。
【0037】
第1導出部24は、第1特徴量算出部24Aと、第2特徴量算出部24Bと、差分算出部24Cと、第1異常度導出部24Dと、を備える。
【0038】
第1特徴量算出部24Aは、学習済深層モデル23を用いて、入力データ35から第1特徴量を算出する。
【0039】
学習済深層モデル23は、入力データ35を入力とし第1特徴量を出力とする学習済深層モデルであり、自然データを用いて予め学習されている。
【0040】
自然データとは、入力データ35に限定されない様々な種類のデータである。言い換えると、自然データとは、異常検出装置10で異常を検出する対象の対象データに限定されない様々な種類のデータである。例えば、異常検出装置10で異常を検出する対象の対象データが、
図2A~
図2Cに示す結束ケーブルの断面の画像である形態を想定する。この場合、自然データは、結束ケーブルの断面の画像、他の工業製品などの画像、動物の画像、風景の画像、などの様々な種類のデータである。
【0041】
学習済深層モデル23は、例えば、公知の畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)、などのアルゴリズムを用いて学習されたモデルである。
【0042】
第1特徴量算出部24Aは、入力データ35を学習済深層モデル23へ入力することで、学習済深層モデル23からの出力として、入力データ35の要素ごとの第1特徴量を得る。
【0043】
要素とは、入力データ35や正常データ32を複数の領域に分割した各領域を意味する。具体的には、例えば、要素は、1または複数の画素から構成される。本実施形態では、1つの要素が、複数の画素からなる領域である形態を一例として説明する。
【0044】
第1特徴量とは、学習済深層モデル23によって出力される、入力データ35の要素ごとの特徴量である。第1特徴量は、例えば、ユークリッド空間における特徴量である。第1特徴量は、埋め込み特徴量と称される場合がある。
【0045】
第2特徴量算出部24Bは、予測モデル25を用いて、入力データ35から第2特徴量を算出する。
【0046】
予測モデル25は、入力データ35を入力とし第2特徴量を出力とする学習モデルである。予測モデル25は、対象データを用いて予め学習されている。
【0047】
対象データとは、異常検出装置10で異常を検出する対象の種類のデータである。すなわち、本実施形態では、対象データは、
図2A~
図2Cに示す結束ケーブルの断面の画像である。本実施形態では、予測モデル25は、対象データの内、
図2Aを用いて説明した複数の正常データ32を用いて予め学習されてなることが好ましい。
【0048】
予測モデル25は、例えば、CNN、RNN、LSTM、などのアルゴリズムを用いて学習されたモデルである。
【0049】
第2特徴量算出部24Bは、入力データ35を予測モデル25へ入力することで、予測モデル25からの出力として、入力データ35の要素ごとの第2特徴量を得る。
【0050】
第2特徴量とは、予測モデル25によって出力される、入力データ35の要素ごとの特徴量である。第2特徴量は、例えば、ユークリッド空間における特徴量である。第2特徴量は、埋め込み特徴量と称される場合がある。
【0051】
差分算出部24Cは、第1特徴量と第2特徴量との差分を算出する。差分算出部24Cは、第1特徴量算出部24Aから受付けた第1特徴量と、第2特徴量算出部24Bから受付けた第2特徴量と、の差分を要素ごとに算出する。
【0052】
本実施形態では、第1特徴量および第2特徴量の各々が、ユークリッド空間における特徴量である形態を一例として説明する。このため、第1特徴量と第2特徴量との差分は、ユークリッド空間における距離、すなわち、ユークリッド距離に相当する。
【0053】
第1異常度導出部24Dは、第1特徴量と第2特徴量との差分に応じた第1異常度を算出する。第1異常度は、第1特徴量と第2特徴量との距離が大きいほど単調非減少する値であればよい。
【0054】
第1異常度導出部24Dは、例えば、第1特徴量と第2特徴量との差分の二乗、または、第1特徴量と第2特徴量との差分を、第1異常度として導出する。
【0055】
具体的には、例えば、第1異常度導出部24Dは、下記式(1)により第1異常度を算出する。
【0056】
【0057】
式(1)中、σrは、第1異常度を表す。dは、第1特徴量と第2特徴量との差分を表す。iは、入力データ35における要素の位置を示す。Xは、第1特徴量を意味する。Yは、第2特徴量を意味する。式(1)中の式(A)は、XのL2ノルムを表す。L2ノルムは、Xのベクトル成分の差分の2乗和の平方根である。
【0058】
本実施形態では、第1異常度導出部24Dは、入力データ35の要素ごとに第1異常度を導出する。すなわち、第1異常度導出部24Dは、要素ごとの第1特徴量と第2特徴量との差分に応じて、要素ごとに第1異常度を導出する。
【0059】
図4A~
図4Cは、第1異常度の導出の一例の説明図である。
図4A~
図4Cには、1つの要素に相当する領域が位置異常領域34A~形状異常領域34Cの各々の領域である形態を一例として示す。
【0060】
図4Aは、入力データ35の一例である異常入力データ34の模式図である。
図4Aに示す異常入力データ34は、
図2Bに示す異常入力データ34と同様である。
【0061】
図4Bは、入力データ35として異常入力データ34を用いた場合の、正常領域34Bおよび形状異常領域34Cの各々の特徴量の差分の一例の説明図である。
図4Bには、特徴量空間Sに第1特徴量および第2特徴量を配置した例を示す。特徴量空間Sは、ユークリッド空間である。すなわち、特徴量空間Sは、埋め込み特徴量を規定する複数の要因方向によって規定される多次元空間である。
【0062】
例えば、差分算出部24Cは、異常入力データ34の正常領域34Bの第1特徴量X1と第2特徴量Y1との差分d1を算出する。同様に、差分算出部24Cは、異常入力データ34の形状異常領域34Cの第1特徴量X2と第2特徴量Y2との差分d2を算出する。
【0063】
図4Cは、入力データ35として異常入力データ34を用いた場合の、位置異常領域34Aおよび正常領域34Bの各々の特徴量の差分の一例の説明図である。
図4Cには、特徴量空間Sに第1特徴量および第2特徴量を配置した例を示す。
【0064】
例えば、差分算出部24Cは、異常入力データ34の正常領域34Bの第1特徴量X1と第2特徴量Y1との差分d1を算出する。同様に、差分算出部24Cは、異常入力データ34の位置異常領域34Aの第1特徴量X3と第2特徴量Y3との差分d3を算出する。
【0065】
図4Bに示すように、正常領域34Bの第1特徴量X
1と第2特徴量Y
1との差分d
1と、形状異常である形状異常領域34Cの第1特徴量X
2と第2特徴量Y
2との差分d
2とは、大きく異なるものとなる。一方、
図4Cに示すように、正常領域34Bの第1特徴量X
1と第2特徴量Y
1との差分d
1と、相対位置関係が異常である位置異常領域34Aの第1特徴量X
3と第2特徴量Y
3との差分d
3は、略同じ値となる。
【0066】
このため、これらの特徴量の差分d1~差分d3の各々から導出した要素ごとの第1異常度を、異常入力データ34の総合異常度として用いると、位置異常領域34Aのような相対位置関係が異常の領域を、異常として検出することは困難である。
【0067】
そこで、本実施形態の異常検出装置10は、第2導出部26を備える。
【0068】
図1に戻り説明を続ける。第2導出部26は、第2特徴量に基づいて、入力データ35における第1領域と第2領域との相対位置関係の推定結果に基づく第2異常度を導出する。
【0069】
図5は、第2導出部26の一例の機能ブロック図である。第2導出部26は、相対位置特定部26Aと、差分算出部26Bと、推定結果算出部26Cと、第2異常度算出部26Dと、を備える。
【0070】
相対位置特定部26Aは、入力データ35の相対位置を特定する。相対位置とは、入力データ35における第1領域と、入力データ35における第2領域と、の相対的な位置を表す。
【0071】
第1領域とは、入力データ35を複数の領域に分割した領域の各々を表す。第1領域には、1または複数の要素が含まれる。第2領域とは、入力データ35における、第1領域に対して少なくとも一部が非重複の領域である。第2領域は、第1領域と同じ大きさおよび外形の領域であり、第1領域と少なくとも一部が非重複の領域であればよい。第1領域および第2領域のサイズは、たとえば、カーネルサイズの大きさの領域とする。
【0072】
図6は、相対位置の一例の説明図である。相対位置特定部26Aは、入力データ35を複数の領域に分割した各領域の各々を第1領域Qとして特定する。そして、相対位置特定部26Aは、特定した第1領域Qの各々に対して、互いに異なる複数の方向の領域を第2領域Pとして特定する。本実施形態では、1つの第1領域Qに対して、互いに異なる8方向に隣接する1~8の8個の相対位置の第2領域Pを特定する形態を一例として説明する。
【0073】
第1領域Qおよび第2領域Pは、それぞれ、1または複数の要素からなる領域である。本実施形態では、第1領域Qおよび第2領域Pは、それぞれ、1つの要素の領域である形態を一例として説明する。上述したように、本実施形態では、1つの要素は、複数の画素からなる領域である。また、本実施形態では、第1領域Qおよび第2領域Pは、それぞれ、正常データ32の領域32A~領域32Bの各々と同じ大きさおよび外形の領域である形態を一例として説明する。
【0074】
図5に戻り説明を続ける。差分算出部26Bは、入力データ35に含まれる複数の第1領域Qの各々について、第1領域Qの第2特徴量と、第1領域Qに対する複数の相対位置の各々の第2領域Pの第2特徴量の各々と、の差分を算出する。本実施形態では、差分算出部26Bは、1つの第1領域Qの第2特徴量と、この第1領域Qに対して、互いに異なる8方向に隣接する相対位置の各々の領域である8個の第2領域Pの各々の第2特徴量と、の差分を算出する。
【0075】
推定結果算出部26Cは、差分算出部26Bで算出された差分に基づいて、第1領域Qと第2領域Pとの可能な相対位置関係の各々が正解相対位置関係である確からしさを、相対位置関係の推定結果として算出する。確からしさは、例えば、確率で表される。
【0076】
図2Aおよび
図2Bを用いて説明する。
図2Bに示す異常入力データ34における位置異常領域34Aを第1領域Qとして特定した場面を想定する。この場合、第1領域Qである位置異常領域34Aに対する、6の方向の相対位置(
図6参照)の第2領域Pである正常領域34Bとの相対的な位置関係が、該第1領域Qと6の方向の第2領域Pとの正解相対位置関係となる。
【0077】
可能な相対位置関係とは、相対位置特定部26Aにより特定した、第1領域Qと、第1領域Qに対して、互いに異なる複数の方向の第2領域Pとの、すべての相対位置関係(
図6参照)を意味する。詳細には、可能な相対位置関係とは、第1領域Qである位置異常領域34Aに対する、6の方向の第2領域Pである正常領域34B、8の方向の第2領域Pである形状異常領域34Cを含めて、互いに異なる8方向に隣接する1~8の8個の相対位置関係となる。
【0078】
推定結果算出部26Cは、第1領域Qと第2領域Pとの第2特徴量の差分に基づいて、第1領域Qと第2領域Pとの可能な相対位置関係の各々が正解相対位置関係である確からしさを、該第1領域Qと第2領域Pとの相対位置関係の推定結果として算出する。
【0079】
図5に戻り説明を続ける。推定結果算出部26Cは、入力データ35における第1領域Qと第2領域Pとの第2特徴量の差分を位置推定モデル27へ入力する。そして、推定結果算出部26Cは、位置推定モデル27からの出力として、第1領域Qと第2領域Pとの可能な相対位置関係の各々が正解相対位置関係である確からしさを得る。そして、推定結果算出部26Cは、位置推定モデル27から得られた確からしさを、相対位置関係の推定結果として用いる。
【0080】
位置推定モデル27は、第1領域Qと第2領域Pとの第2特徴量の差分を入力とし、第1領域Qと第2領域Pの可能な相対位置関係の各々が正解相対位置関係である確からしさを表す値を出力とする学習モデルである。位置推定モデル27は、予め学習されたモデルであればよい。位置推定モデル27は、例えば、正常データ32を学習データとして用いて予め学習すればよい。
【0081】
推定結果算出部26Cは、入力データ35に含まれる複数の第1領域Qの各々ごとに、第1領域Qに対する複数の相対位置の第2領域Pの各々との第2特徴量の差分から、位置推定モデル27を用いて上記確からしさである推定結果を算出する。このため、本実施形態では、推定結果算出部26Cは、第1領域Qごとに、第1領域Qと8個の第2領域Pの各々との相対位置関係のそれぞれについて、確からしさを表す値(推定結果)を算出する。本実施形態では、確からしさを表す値を推定確率分布として表す形態を一例として説明する。
【0082】
第2異常度算出部26Dは、推定結果算出部26Cで算出された推定結果に基づいて、第2異常度を導出する。
【0083】
図7A~
図7Cは、第2導出部26による処理の一例の説明図である。
【0084】
図7Aは、異常入力データ34の一例を示す模式図である。
図7Aに示す異常入力データ34は、
図2Bに示す異常入力データ34と同様である。例えば、取得部22が入力データ35として異常入力データ34を取得した場合を想定する。
【0085】
第2導出部26の相対位置特定部26Aは、異常入力データ34の相対位置を特定する。すなわち、第2導出部26は、異常入力データ34に含まれる複数の第1領域Qの各々について、第1領域Qに対して少なくとも一部が非重複で且つ互いに第1領域Qに対する方向の異なる複数の相対位置の第2領域Pを特定する。
【0086】
例えば、相対位置特定部26Aは、位置異常領域34Aを第1領域Qとした場合、6の方向の相対位置の第2領域Pとして正常領域34Bを特定し、8の方向の相対位置の第2領域Pとして形状異常領域34Cを特定する。同様にして、相対位置特定部26Aは、第1領域Qである位置異常領域34Aに対して、1~5、7の方向の相対位置の各々の第2領域Pを特定する(
図6も参照)。
【0087】
図7Bは、第1領域Qである位置異常領域34Aと、位置異常領域34Aに対する6の方向の相対位置の第2領域Pである正常領域34Bと、の第2特徴量の差分の一例の説明図である。
図7Bには、第2特徴量を特徴量空間Sに配置して示す。
【0088】
この場合、差分算出部26Bは、位置異常領域34Aの第2特徴量Ybと、正常領域34Bの第2特徴量Yaと、の差分dyを、位置異常領域34Aである第1領域Qと該第1領域Qに対して6の方向に位置する第2領域Pとの第2特徴量の差分として算出する。同様にして、差分算出部26Bは、第1領域Qである位置異常領域34Aに対して、1~5、7~8の方向の各々の相対位置の第2領域Pとの第2特徴量の差分を算出する(
図6も参照)。
【0089】
図7Cは、推定結果の一例の説明図である。
図7C中、横軸は、第1領域Qに対する第2領域Pの可能な相対位置を意味する。縦軸は、推定確率を意味する。推定確率100%は、可能な相対位置関係の各々が正解相対位置関係に一致する時の確率を意味する。
【0090】
詳細には、
図7Cは、第1領域Qを位置異常領域34Aとし、第2領域Pを該第1領域Qに対して6の方向の相対位置の正常領域34Bとしたときに、位置推定モデル27によって出力される1~8の各々の方向の可能な相対位置に対する推定確率分布の一例を示す模式図である。
【0091】
第1領域Qである位置異常領域34Aと、該位置異常領域34Aに対する6の方向の相対位置の第2領域Pである正常領域34Bと、の相対位置関係が正常な相対位置関係である場合には、正解の相対位置である6の相対位置の推定確率100%となり、6以外の可能な相対位置の推定確率は0%となる。しかし、上述したように、位置異常領域34Aは他の領域(第2領域P)との相対位置関係が異常な領域である。このため、
図7Cに示すように、位置異常領域34Aと正常領域34Bにおいて、相対位置関係の推定確率の分布は、正常な相対位置関係である場合の、相対位置関係の推定確率の分布とは異なるものとなる。
【0092】
そこで、第2異常度算出部26Dは、推定結果算出部26Cによって入力データ35に含まれる複数の第1領域Qの各々毎に導出された、複数の第2領域Pの各々との相対位置関係ごとの推定結果に基づいて、該推定結果に関する第2異常度を導出する。
【0093】
詳細には、第2異常度算出部26Dは、上記確からしさに基づいて、相対位置関係が正解相対位置関係である推定確率と正解確率である確率100%との差分、推定確率の負の対数尤度、または確からしさのエントロピーを、第1領域Qの各々の相対位置関係ごとの第2異常度として算出する。
【0094】
例えば、第2異常度算出部26Dは、下記式(2)により第2異常度を算出する。
【0095】
【0096】
式(2)は、推定確率と正解確率である確率100%との差分を第2異常度として算出する式である。式(2)中、σpは、第2異常度を表す。P(y)は、正解の相対位置yの推定確率を表す。iは、入力データ35における第1領域Qの位置を示す。kは、iに対する相対位置を意味する。本実施形態では、kは、上述した8個の方向の各々の相対位置を示し、1~8の整数で表される。
【0097】
例えば、第2異常度算出部26Dは、
図7Cに示すように、推定確率と正解確率である確率100%との差分を、第2異常度として算出する。すなわち、推定結果算出部26Cが、第1領域Qである位置異常領域34Aと該第1領域Qに対して6の方向の相対位置の第2領域Pである正常領域34Bとの相対位置関係について、1~8の可能な相対位置の各々が正解相対位置関係である推定確率を算出した場合を想定する。すなわち、
図7Cに示すように、1つの第1領域Qと1つの第2領域Pにおいて、8個の可能な相対位置各々について正解相対位置関係である確からしさを表す値が得られる。これは典型的には確率分布として表される。
【0098】
この場合、第2異常度算出部26Dは、これらの1~8の可能な相対位置の各々の推定確率の内、位置異常領域34Aに対する正常領域34Bの正解の相対位置である6の方向の推定確率Pik(y)=P36(6)を特定する。そして、第2異常度算出部26Dは、上記式(2)を用いて、100%から推定確率P36(6)を減算した値を、第1領域Qである位置異常領域34Aと6の方向の相対位置の正常領域34Bとの相対位置関係の、第2異常度として算出する。
【0099】
なお、上述したように、第2異常度算出部26Dは、推定確率と正解確率である確率100%との差分、推定確率の負の対数尤度、または推定確率のエントロピーを、第1領域Qの各々の相対位置関係ごとの第2異常度として算出すればよい。
【0100】
例えば、第2異常度算出部26Dは、下記式(3)または式(4)により第2異常度を算出してもよい。
【0101】
【0102】
式(3)は、推定確率の負の対数尤度を第2異常度として算出する式である。式(3)中、σp、P(y)、i、およびkは、上記式(2)と同様である。
【0103】
【0104】
式(4)は、推定確率のエントロピーを第2異常度として算出する式である。式(4)中、σp、i、およびkは、上記式(2)と同様である。Pik(j)は、入力データ35における第1領域Qの位置iに対する相対位置kの第2領域Pの相対位置関係における、1~8の可能な相対位置jの推定確率である。
【0105】
そして、第2異常度算出部26Dは、1つの第1領域Qに対して、1~8の各々の方向の相対位置ごとに上記処理を行う。このため、本実施形態では、第2異常度算出部26Dは、1つの第1領域Qに対して、第2領域Pの数である8個の第2異常度を算出する。第2異常度算出部26Dは、たとえば、1つの第1領域Qに対して算出した8個の第2異常度の平均値を、第1領域Qである要素の第2異常度として用いる。
【0106】
図8A~
図8Cは、第2導出部26による処理の一例の説明図である。
【0107】
図8Aは、正常入力データ36の一例を示す模式図である。
図8Aに示す正常入力データ36は、
図2Cに示す正常入力データ36と同様である。例えば、取得部22が入力データ35として正常入力データ36を取得した場合を想定する。
【0108】
第2導出部26の相対位置特定部26Aは、正常入力データ36の相対位置を特定する。すなわち、第2導出部26は、正常入力データ36に含まれる複数の第1領域Qの各々について、第1領域Qに対して少なくとも一部が非重複で且つ互いに第1領域Qに対する方向の異なる複数の相対位置の第2領域Pを特定する。
【0109】
例えば、相対位置特定部26Aは、正常領域36Aを第1領域Qとした場合、6の方向の相対位置の第2領域Pとして正常領域36Bを特定し、8の方向の相対位置の第2領域Pとして正常領域36Cを特定する。同様にして、相対位置特定部26Aは、第1領域Qである正常領域36Aに対して、1~5、7の方向の相対位置の各々の第2領域Pを特定する(
図6も参照)。
【0110】
図8Bは、第1領域Qである正常領域36Aと、正常領域36Aに対する6の方向の相対位置の第2領域である正常領域36Bと、の第2特徴量の差分の一例の説明図である。
図8Bには、第2特徴量を特徴量空間Sに配置して示す。
【0111】
この場合、差分算出部26Bは、正常領域36Aの第2特徴量Ydと、正常領域36Bの第2特徴量Ycと、の差分dzを、正常領域36Aである第1領域Qと該第1領域Qに対して6の方向に位置する第2領域Pである正常領域36Bとの第2特徴量の差分として算出する。同様にして、差分算出部26Bは、第1領域Qである正常領域36Aに対して、1~5、7~8の方向の各々の相対位置の第2領域Pとの第2特徴量の差分を算出する(
図6も参照)。
【0112】
図8Cは、推定結果の一例の説明図である。
図8C中、横軸は、第1領域Qに対する第2領域Pの可能な相対位置を意味する。縦軸は、推定確率を意味する。すなわち、推定確率100%は、可能な相対位置関係の各々が正解相対位置関係に一致する時の確率を意味する。
【0113】
詳細には、
図8Cは、第1領域Qを正常領域36Aとし、第2領域Pを該第1領域Qに対して6の方向の相対位置の正常領域36Bとしたときに、位置推定モデル27によって出力される1~8の各々の方向の可能な相対位置に対する推定確率分布の一例を示す模式図である。
【0114】
上述したように、第1領域Qである正常領域36Aと、該正常領域36Aに対する6の方向の相対位置の第2領域Pである正常領域36Bと、の相対位置関係が、正常な相対位置関係である場合には、正解の相対位置である6の相対位置の推定確率100%となり、6以外の相対位置の推定確率は0%となる。このため、相対位置関係が正常な相対位置関係に略一致する正常領域36Aと正常領域36Bとの正解の相対位置である6の相対位置の推定確率P
ik(y)=P
36(6)は、
図7Cに示す位置異常領域34Aと正常領域34Bとの正解の相対位置である6の相対位置の推定確率P
ik(y)=P
36(6)より高くなる。
【0115】
第2異常度算出部26Dは、上記式(2)~式(4)の何れかを用いて、正常入力データ36の第1領域Qの各々ごとに第2異常度を算出する。
【0116】
このように、第2導出部26は、第2特徴量に基づいて、第1領域Qの各々ごとに第2異常度を算出する。第2異常度は、入力データ35における第1領域Qと、少なくとも一部が第1領域Qに非重複の第2領域Pと、の相対位置関係の推定結果に関する値である。このため、第2導出部26は、局所的には正常データ32に含まれる領域と同じパターンであり、形状としては正常な領域であっても、相対位置関係では異常な領域について、高い第2異常度を導出することができる。
【0117】
そして、第2導出部26は、入力データ35の第1領域Qごと、すなわち、要素ごとに導出した第2異常度を、異常度導出部28へ出力する。
【0118】
【0119】
異常度導出部28は、第1導出部24から要素ごとの第1異常度を取得する。また、異常度導出部28は、第2導出部26から要素ごとの第2異常度を取得する。
【0120】
異常度導出部28は、第1異常度および第2異常度から、入力データ35の総合異常度を算出する。
【0121】
例えば、異常度導出部28は、入力データ35に含まれる要素ごとに、第1異常度および第2異常度を特定する。そして、異常度導出部28は、各要素の第1異常度と第2異常度との和、または、各要素の第1異常度と第2異常度との乗算値、を、入力データ35に含まれる要素ごとの総合異常度として導出する。
【0122】
更に、異常度導出部28は、入力データ35に含まれる要素ごとの総合異常度の最大値を、入力データ35の全体の総合異常度として導出する。
【0123】
次に、表示制御部30について説明する。
【0124】
表示制御部30は、取得部22で取得した入力データ35、第1導出部24で導出された第1異常度、第2導出部26で導出された第2異常度、および異常度導出部28で導出された総合異常度、の少なくとも1つを表示部14Aに表示する。
【0125】
例えば、表示制御部30は、入力データ35の画像上に、第1異常度、第2異常度、および総合異常度の少なくとも1つを重畳して表示部14Aに表示する。詳細には、表示制御部30は、入力データ35の画像上における各要素に対応する位置に、各要素の第1異常度、第2異常度、および総合異常度の少なくとも1つを重畳して表示部14Aに表示する。
【0126】
具体的には、例えば、表示制御部30は、第1異常度、第2異常度、および総合異常度の各々について、入力データ35の各要素を異常度の値に応じた色および濃度で表したヒートマップを、表示部14Aに表示する。各ヒートマップは入力データ35の画像上に重畳して表示してもよいし、重畳せずに表示してもよい。
【0127】
図9Aは、表示画面50の一例の模式図である。例えば、表示制御部30は、入力データ35について、総合異常度のヒートマップと、第1異常度と第2異常度とを重畳したヒートマップと、第1異常度のヒートマップと、第2異常度のヒートマップと、を含む表示画面50を表示部14Aへ表示する。また、表示制御部30は、これらのヒートマップと共に、第1異常度、第2異常度、および総合異常度の各々の異常度の値を表す数値を更に表示してもよい。
【0128】
総合異常度のヒートマップを表示部14Aに表示することで、表示制御部30は、入力データ35の全体および入力データ35に含まれる要素ごとの総合異常度をユーザに対して容易に視認可能に提供することができる。また、第1異常度と第2異常度とを重畳したヒートマップを表示部14Aに表示することで、表示制御部30は、入力データ35に含まれる要素の各々の第1異常度および第2異常度を、ユーザに対して容易に視認可能に提供することができる。
【0129】
また、表示制御部30は、第1異常度、第2異常度、および総合異常度の少なくとも1つを個別に表示部14Aに表示してもよい。具体的には、第1異常度のヒートマップ、第2異常度のヒートマップ、および総合異常度のヒートマップの少なくとも1つを個別に表示部14Aに表示してもよい。例えば、
図9Aに示すように、表示制御部30は、第1異常度のヒートマップおよび第2異常度のヒートマップを個別に表示部14Aに表示してもよい。この場合、表示制御部30は、第1異常度のヒートマップおよび第2異常度のヒートマップの各々に、入力データ35の全ての要素の異常度の合計値に対する各要素の異常度の割合を、要素ごとに更に表示してもよい。
【0130】
図9Bは、表示画面52の一例の模式図である。表示画面52は、相対位置関係の異常である第2異常度を主に表示する表示画面の一例である。例えば、表示制御部30は、入力データ35において特定した複数の第1領域Qの各々ごとに、第1領域Qの第1異常度のヒートマップと、該第1領域Qに対する8方向の各々の相対位置の第2領域Pの第2異常度のヒートマップと、を含む表示画面50を表示部14Aへ表示する。
図9Bには、ある位置の第1領域Qの第1異常度と、該第1領域Qに対する8方向の各々の相対位置の第2領域Pの第2異常度と、の各々のヒートマップを表示する例を示す。
【0131】
そして、ユーザによる入力部14Bの操作指示などによって他の位置の第1領域Qが選択されると、表示制御部30は、選択された第1領域Qに応じた表示画面52を表示部14Aへ表示すればよい。なお、第1領域Qの第1異常度に替えて、第1領域Qに対する8個の方向の各々の相対位置の第2領域Pとの相対位置関係の第2異常度の平均値を、表示部14Aに表示してもよい。
【0132】
表示画面52を表示部14Aへ表示することで、表示制御部30は、相対値関係の異常度である第2異常度の導出根拠、および、第2異常度の導出に用いた第1領域Qに対する第2領域Pの相対位置を明白に表示することができる。
【0133】
このように、表示制御部30が取得部22で取得した入力データ35、第1導出部24で導出された第1異常度、第2導出部26で導出された第2異常度、および異常度導出部28で導出された総合異常度、の少なくとも1つを表示部14Aに表示する。このため、表示制御部30は、入力データ35の第1異常度、第2異常度、および総合異常度をユーザに対して分かりやすく視認可能に提供することができる。また、表示制御部30は、入力データ35における各要素について、第1異常度、第2異常度、および総合異常度を、ユーザに対して容易に把握可能に提供することが出来る。
【0134】
次に、異常検出装置10が実行する異常検出処理の手順を説明する。
【0135】
図10は、異常検出装置10が実行する異常検出処理の流れの一例を示す、フローチャートである。
【0136】
取得部22が、入力データ35を取得する(ステップS100)。
【0137】
第1特徴量算出部24Aは、学習済深層モデル23を用いて、ステップS100で取得した入力データ35から要素ごとの第1特徴量を算出する(ステップS102)。
【0138】
第2特徴量算出部24Bは、予測モデル25を用いて、ステップS100で取得した入力データ35から要素ごとの第2特徴量を算出する(ステップS104)。
【0139】
差分算出部24Cは、ステップS102で算出された第1特徴量と、ステップS104で算出された第2特徴量と、の差分を要素ごとに算出する(ステップS106)。
【0140】
第1異常度導出部24Dは、ステップS106で算出された第1特徴量と第2特徴量との差分に応じて第1異常度を算出する(ステップS108)。例えば、第1異常度導出部24Dは、第1特徴量と第2特徴量との差分の二乗を、第1異常度として算出する。
【0141】
相対位置特定部26Aは、ステップS100で取得した入力データ35の相対位置を特定する(ステップS110)。例えば、相対位置特定部26Aは、相対位置とは、入力データ35を複数の領域に分割した第1領域Qの各々について、第1領域Qに対して互いに異なる8方向に隣接する8個の相対位置の第2領域Pを特定する。
【0142】
差分算出部26Bは、入力データ35に含まれる複数の第1領域Qの各々について、第1領域Qの第2特徴量と、第1領域Qに対する複数の相対位置の各々の第2領域Pの第2特徴量の各々と、の差分を算出する(ステップS112)。
【0143】
推定結果算出部26Cは、ステップS112で算出された差分に基づいて、第1領域Qと第2領域Pの可能な相対位置関係の各々が正解相対位置関係である確からしさを、相対位置関係の推定結果として算出する(ステップS114)。
【0144】
第2異常度算出部26Dは、ステップS114で算出された推定結果に基づいて、第2異常度を算出する(ステップS116)。
【0145】
異常度導出部28は、総合異常度を導出する(ステップS118)。異常度導出部28は、ステップS100で取得した入力データ35に含まれる要素ごとに、ステップS108で導出された第1異常度およびステップS116で導出された第2異常度を特定する。そして、異常度導出部28は、各要素の第1異常度と第2異常度との和、または、各要素の第1異常度と第2異常度との乗算値、を、入力データ35に含まれる要素ごとの総合異常度として導出する。更に、異常度導出部28は、入力データ35に含まれる要素ごとの総合異常度の最大値を、入力データ35の全体の総合異常度として導出する。
【0146】
表示制御部30は、取得部22で取得した入力データ35、ステップS108で導出された第1異常度、ステップS116で導出された第2異常度、およびステップS118で導出された総合異常度、の少なくとも1つを表示部14Aに表示する(ステップS120)。
【0147】
そして、本ルーチンを終了する。
【0148】
以上説明したように、本実施形態の異常検出装置10は、取得部22と、第1導出部24と、第2導出部26と、異常度導出部28と、を備える。取得部22は、入力データ35を取得する。第1導出部24は、自然データを用いて学習された学習済深層モデル23を用いて入力データ35から導出した第1特徴量と、対象データを用いて学習された予測モデル25を用いて入力データ35から導出した第2特徴量と、の差分に応じた第1異常度を導出する。第2導出部26は、第2特徴量に基づいて、入力データ35における第1領域Qと少なくとも一部が第1領域Qに非重複の第2領域Pとの相対位置関係の推定結果に基づく第2異常度を導出する。異常度導出部28は、第1異常度および第2異常度から、入力データ35の総合異常度を導出する。
【0149】
図4Bを用いて説明したように、異常入力データ34の正常領域34Bの第1特徴量X
1と第2特徴量Y
1との差分d
1と、形状異常領域34Cの第1特徴量X
2と第2特徴量Y
2との差分d
2とは、大きく異なるものとなる。一方、
図4Cに示すように、正常領域34Bの第1特徴量X
1と第2特徴量Y
1との差分d
1と、相対位置関係が異常である位置異常領域34Aの第1特徴量X
3と第2特徴量Y
3との差分d
3は、略同じ値となる。
【0150】
このため、第1特徴量と第2特徴量との差分d1~差分d3の各々から導出した要素ごとの第1異常度を、異常入力データ34の総合異常度として用いると、位置異常領域34Aのような相対位置関係が異常の領域を、異常として検出することは困難である。
【0151】
一方、
図7Cおよび
図8Cを用いて説明したように、第2異常度は、相対位置関係が異常であると、相対位置関係が正常である場合に比べて高い異常度を示すものとなる。詳細には、相対位置関係が異常である位置異常領域34Aと正常領域34Bとの正解の相対位置の推定確率P
ik(y)=P
36(6)から導出した第2異常度は、例えば、
図7Cに示すものとなる。一方、相対位置関係が正常である正常領域36Aと正常領域36Bとの正解の相対位置の推定確率P
ik(y)=P
36(6)から導出した第2異常度は、例えば、
図8Cに示すものとなる。このように、第2異常度は、相対位置関係が異常の領域を異常として検出可能な異常度である。
【0152】
このため、異常度導出部28が、第1異常度および第2異常度から入力データ35の総合異常度を算出することで、入力データ35に含まれる相対位置関係が異常の領域についても、異常であることを表す異常度を算出することができる。
【0153】
従って、本実施形態の異常検出装置10は、異常検出精度の向上を図ることができる。
【0154】
また、入力データ35と入力データ35の特徴から復元した出力データとの誤差分を用いて正常性を判定する従来技術では、入力データ35の全要素の情報を深層特徴空間まで畳み込む必要があった。このため、このような従来技術では、局所的な情報で判断できる異常であっても過剰な情報を扱う必要があった。一方、本実施形態の異常検出装置10によれば、入力データ35の第1特徴量および第2特徴量を用いて導出した、第1異常度および第2異常度に基づいて総合異常度を導出する。
【0155】
このため、本実施形態の異常検出装置10は、上記効果に加えて、異常検出装置10の負荷軽減を図ることができる。
【0156】
本実施形態の異常検出装置10は、入力データ35に含まれる異常を検出する様々な用途に適用される。例えば、異常検出装置10は、物品を製造する製造ラインの各工程で異常を検出する装置などに適用される。この場合、入力データ35として物品の製造工程の各段階で得られる未完成物品および完成物品の各々の画像を用いることで、異常検出装置10は、画像に含まれる要素ごとの総合異常度を高精度に導出することができる。
【0157】
次に、上記実施形態の異常検出装置10のハードウェア構成の一例を説明する。
【0158】
図11は、上記実施形態の異常検出装置10のハードウェア構成図の一例である。
【0159】
上記実施形態の異常検出装置10は、CPU(Central Processing Unit)86、ROM(Read Only Memory)88、RAM(Random Access Memory)90、およびI/F82等がバス96により相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0160】
CPU81は、上記実施形態の異常検出装置10を制御する演算装置である。ROM88は、CPU86による各種処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM90は、CPU86による各種処理に必要なデータを記憶する。I/F82は、データを送受信するためのインターフェースである。
【0161】
上記実施形態の異常検出装置10では、CPU86が、ROM88からプログラムをRAM90上に読み出して実行することにより、上記各機能がコンピュータ上で実現される。
【0162】
なお、上記実施形態の異常検出装置10で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、HDD(ハードディスクドライブ)92に記憶されていてもよい。また、上記実施形態の異常検出装置10で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、ROM88に予め組み込まれて提供されていてもよい。
【0163】
また、上記実施形態の異常検出装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、上記実施形態の異常検出装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、上記実施形態の異常検出装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0164】
なお、上記には、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0165】
10 異常検出装置
22 取得部
24 第1導出部
26 第2導出部
28 異常度導出部
30 表示制御部