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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191795
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】部材取付構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
F16B5/02 U
F16B5/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100245
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄒 榕
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA02
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001HA08
3J001JA10
(57)【要約】
【課題】線膨張係数の異なる複数の部材を締結具によって締結した構造物において、追加の部品を設けることなく、熱変形によって締結部に生じる応力集中を抑制する。
【解決手段】本開示に係る部材取付構造は、第1部材1と当該第1部材1よりも線膨張係数の小さい第2部材2とを締結具によって締結する部材取付構造である。第1部材1には、締結具が取り付けられる凹状の取付部6が形成される。第2部材2には、切込み5によって可動部7が形成される。可動部7は、締結具によって取付部6に締結され、取付部6とともに変位可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と当該第1部材よりも線膨張係数の小さい第2部材とを締結具によって締結する部材取付構造であって、
前記第1部材には、前記締結具が取り付けられる凹状の取付部が形成され、
前記第2部材には、切込みによって可動部が形成され、
前記可動部は、前記締結具によって前記取付部に締結され、前記取付部とともに変位可能であることを特徴とする部材取付構造。
【請求項2】
前記可動部の根本に、丸穴部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の部材取付構造。
【請求項3】
第1部材と当該第1部材よりも線膨張係数の小さい第2部材とを締結具によって締結する部材取付構造であって、
前記第1部材には、前記締結具が取り付けられる凹状の取付部が形成され、
前記第2部材には、半島状の可動部が形成され、
前記可動部は、前記締結具によって前記取付部に締結され、前記取付部とともに変位可能であることを特徴とする部材取付構造。
【請求項4】
第1部材と当該第1部材よりも線膨張係数の小さい第2部材とを締結具によって締結する部材取付構造であって、
前記第1部材は平板状であり、当該第1部材の平坦面に前記締結具が取り付けられ、
前記第2部材には、半島状の可動部が形成され、
前記可動部は、前記締結具によって前記第1部材に締結され、前記第1部材とともに変位可能であることを特徴とする部材取付構造。
【請求項5】
前記可動部の根本に、R部が形成されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の部材取付構造。
【請求項6】
前記可動部には、当該可動部の先端部分を構成する先端部と当該可動部の根元部分を構成する根元部とが含まれ、
前記先端部は、前記締結具によって前記第1部材に接して固定され、
前記根元部の幅は、前記先端部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の部材取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部材取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
線膨張係数の異なる複数の部材を締結具によって締結した構造物の周囲温度が変化すると、熱変形によって締結部に応力集中が発生する。例えば、特許文献1には、締結部における応力が許容値以下となるように構造物をデザインする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-151155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、樹脂パネルの熱変形による内側方向への変位を規制する規制手段を設けたことを特徴とするものである。特許文献1に記載の技術においては、規制手段を設ける必要がある。このため、部品点数が増えてコストが高くなり、組付け工数が嵩んでしまうという課題がある。また、規制手段を設けるためのスペースが必要となるため、設計の自由度が低くなってしまうという課題もある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものである。本開示の目的は、線膨張係数の異なる複数の部材を締結具によって締結した構造物において、追加の部品を設けることなく、熱変形によって締結部に生じる応力集中を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る部材取付構造は、第1部材と当該第1部材よりも線膨張係数の小さい第2部材とを締結具によって締結する部材取付構造である。
第1部材には、締結具が取り付けられる凹状の取付部が形成され、第2部材には、切込みによって可動部が形成される。可動部は、締結具によって取付部に締結され、取付部とともに変位可能である。
または、第1部材には、締結具が取り付けられる凹状の取付部が形成され、第2部材には、半島状の可動部が形成される。可動部は、締結具によって取付部に締結され、取付部とともに変位可能である。
または、第1部材は平板状であり、当該第1部材の平坦面に締結具が取り付けられ、第2部材には、半島状の可動部が形成される。可動部は、締結具によって第1部材に締結され、第1部材とともに変位可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、線膨張係数の異なる複数の部材を締結具によって締結した構造物において、追加の部品を設けることなく、熱変形によって締結部に生じる応力集中を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による部材取付構造を構成する第1部材および第2部材の一例を示す斜視図である。
図2】実施の形態1による部材取付構造を構成する第1部材と第2部材との関係を示す分解斜視図である。
図3図2におけるSA-SA矢視断面図である。
図4】実施の形態1による部材取付構造の変形例を示す分解斜視図である。
図5】実施の形態2による部材取付構造を構成する第1部材と第2部材との関係を示す分解斜視図である。
図6図5におけるSB-SB矢視断面図である。
図7】実施の形態2による部材取付構造の変形例を示す分解斜視図である。
図8】実施の形態3による部材取付構造を構成する第1部材と第2部材との関係を示す分解斜視図である。
図9図8におけるSC-SC矢視断面図である。
図10】実施の形態3による部材取付構造の変形例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る部材取付構造の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。各図における同一の符号は、同一の部分または相当する部分を示す。本開示では、重複する説明については、適宜に簡略化または省略する。なお、本開示は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではなく、以下の実施の形態によって開示される構成のあらゆる組合せおよび変形例を含み得るものである。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による部材取付構造を構成する第1部材1および第2部材2の一例を示す斜視図である。第1部材1の線膨張係数を、第1線膨張係数とする。第2部材2の線膨張係数を、第2線膨張係数とする。第2線膨張係数は、第1線膨張係数よりも小さい。第1線膨張係数は、例えば、30~400(10-6/℃)である。第2線膨張係数は、例えば、1~30(10-6/℃)である。
【0011】
図2は、実施の形態1による部材取付構造を構成する第1部材1と第2部材2との関係を示す分解斜視図である。第1部材1と第2部材2とは、ボルト3およびナット4等の締結具によって締結される。第1部材1には、ボルト3等の締結具が取り付けられる凹状の取付部6が形成されている。
【0012】
図3は、図2におけるSA-SA矢視断面図である。図3(a)は、通常時の状態を示している。図3(b)および図3(c)は、熱変形時の状態を示している。
【0013】
一例として、第1部材1の取付部6は、SA-SA断面において、U字状に形成されている。第1部材1のうち、U字形状の取付部6の底面である取付面以外の部分は、第2部材2と離れている。
【0014】
上述した通り、第1線膨張係数は第2線膨張係数よりも大きい。このため、第1部材1および第2部材2の周囲温度が変化した場合において、第1部材1の熱変形量は、第2部材2の熱変形量よりも大きくなる。第1部材1の取付部6では、熱応力による変形が拘束されるため、応力集中が発生する。
【0015】
本実施の形態では、第2部材2に切込み5が形成されている。第2部材2には、この切込み5によって可動部7が形成されている。可動部7は、第1部材1の取付部6とともに変位可能である。この可動部7によって、第1部材1と第2部材2との締結部に生じる応力集中を抑制することができる。
【0016】
ここで、第1部材1および第2部材2の具体的な材料、寸法および温度変化によって生じる応力集中の例について説明する。第1部材1は、例えば、ポリカーボネート系ポリマーアロイ樹脂(PCABS)からなる板材である。PCABSの線膨張係数は、55(10-6/℃)である。第2部材2は、例えば、冷間圧延鋼板(SECC)である。SECCの線膨張係数は12(10-6/℃)である。
【0017】
第1部材1および第2部材2のそれぞれの外形寸法は、例えば、800mm×400mmである。第1部材1の板厚は、例えば、3mmである。第2部材2の板厚は、例えば、1.6mmである。一例として、矩形状の板状の第1部材1の四隅および前後左右中心と矩形状の板状の第2部材2の四隅および前後左右中心とが、締結具によって締結される。
【0018】
可動部7の幅Wは、例えば、12mmである。可動部7の長さLは、例えば、40mmである。
【0019】
上記の材料および寸法例において、第1部材1および第2部材2の周囲温度が25℃から40℃に変化した場合、第1部材1の取付部6に発生する最大応力は13MPa程度となる。第2部材2に切込み5および可動部7を形成しない場合のシミュレーション結果では、第1部材1の取付部6に発生する最大応力は16MPa程度となる。また、上記の材料および寸法例において、第1部材1および第2部材2の周囲温度が20℃から-5℃に変化した場合、第1部材1の取付部6に発生する最大応力は10MPa程度となる。第2部材2に切込み5および可動部7を形成しない場合のシミュレーション結果では、第1部材1の取付部6に発生する最大応力は25MPa程度となる。このように、第2部材2に切込み5および可動部7を形成することで、第1部材1の取付部6に生じる応力集中を抑制することができる。
【0020】
以上に示したように、本実施の形態によれば、第2部材2に切込み5および可動部7を形成することで、追加の部品を設けることなく、熱変形によって締結部に生じる応力集中を抑制することができる。これにより、部材の損傷および寿命低下を回避することができる。また、追加部品を必要としないため、部品コストおよび組立工数を抑えることができる。また、追加部品を設置するためのスペースを必要としないため、製品体積の増加を回避できる。また、本実施の形態に係る部材取付構造は、第2部材2に切込み5を入れるという追加工のみで実現することができる。また、第1部材1を改造する必要なく、外観の変化を回避することもできる。
【0021】
図4は、実施の形態1による部材取付構造の変形例を示す分解斜視図である。図4の変形例において、第2部材2には、切込み5に代えて切込み51が形成されている。切込み51によって形成される可動部7には、当該可動部7の先端部分を構成する先端部と、当該可動部7の根元部分を構成する根元部とが含まれる。この先端部は、第1部材1の取付部6と接して、締結具によって取付部6に固定される。本変形例において、根元部の幅W1は、先端部の幅Wよりも小さい。本変形例であれば、可動部7の長さL1を上記の実施例における長さLより短くしても、応力集中を抑制する効果を十分に得ることができる。
【0022】
また、図2および図4に示すように、可動部7の根本には、丸穴部10が形成されていてもよい。これにより、可動部7の根本における応力集中を抑制することができる。
【0023】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。図5は実施の形態2による部材取付構造を構成する第1部材1と第2部材2との関係を示す分解斜視図である。図6は、図5におけるSB-SB矢視断面図である。図6(a)は、通常時の状態を示している。図6(b)および図6(c)は、熱変形時の状態を示している。実施の形態1と同一または相当する部分については、説明を簡略化および省略する。なお、図5においては、ボルト3およびナット4等の締結具の図示を省略している。
【0024】
本実施の形態では、実施の形態1において切込み5によって形成された可動部7に代えて、半島状の可動部8が形成されている。半島状の可動部8は、締結具によって取付部6に締結される。半島状の可動部8は、取付部6とともに変位可能である。本実施の形態によれば、可動部8を形成することによって、実施の形態1と同様に、追加の部品を設けることなく、熱変形によって締結部に生じる応力集中を抑制することができる。
【0025】
また、図5に示すように、可動部8の根本には、R部11が形成されていてもよい。これにより、可動部8の根本における応力集中を抑制することができる。
【0026】
また、図7は、実施の形態2による部材取付構造の変形例を示す分解斜視図である。本変形例において、第2部材2には、半島状の可動部8に代えて半島状の可動部81が形成されている。半島状の可動部81には、当該可動部81の先端部分を構成する先端部と、当該可動部81の根元部分を構成する根元部とが含まれる。この先端部は、第1部材1の取付部6と接して、締結具によって取付部6に固定される。本変形例において、根元部の幅W1は、先端部の幅Wよりも小さい。本変形例であれば、可動部81の長さL1を上記の実施例における可動部8の長さLより短くしても、応力集中を抑制する効果を十分に得ることができる。
【0027】
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。図8は実施の形態3による部材取付構造を構成する第1部材1と第2部材2との関係を示す分解斜視図である。図9は、図8におけるSC-SC矢視断面図である。図9(a)は、通常時の状態を示している。図9(b)および図9(c)は、熱変形時の状態を示している。上記の各実施の形態と同一または相当する部分については、説明を簡略化および省略する。なお、図8においては、ボルト3およびナット4等の締結具の図示を省略している。
【0028】
本実施の形態において、第1部材1は、平板状である。本実施の形態において、第1部材1には、凹状の取付部6は形成されていない。ボルト3等の締結具は、平板状の第1部材1の平坦面に取付けられる。例えば、ボルト3は、平板状の第1部材1の平坦面に形成された貫通孔であるねじ締結部9に挿入される。第2部材2には、実施の形態2と同様に半島状の可動部8が形成されている。可動部8は、締結具によって平板状の第1部材1に締結される。この可動部8によって、ねじ締結部9に生じる応力集中を抑制することができる。
【0029】
本実施の形態においては、図9等に示すように、第1部材1と第2部材2とが密着している。本実施の形態の構成は、防水性または防塵性などの密封性能が要求される製品に適用することが好適である。
【0030】
また、図10は、実施の形態3による部材取付構造の変形例を示す分解斜視図である。本変形例において、第2部材2には、半島状の可動部8に代えて半島状の可動部81が形成されている。半島状の可動部81には、当該可動部81の先端部分を構成する先端部と、当該可動部81の根元部分を構成する根元部とが含まれる。この先端部は、第1部材1の取付部6と接して、締結具によって取付部6に固定される。本変形例において、根元部の幅W1は、先端部の幅Wよりも小さい。本変形例であれば、可動部81の長さL1を上記の実施例における可動部8の長さLより短くしても、応力集中を抑制する効果を十分に得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 第1部材、 2 第2部材、 3 ボルト、 4 ナット、 5 切込み、 6 取付部、 7 可動部、 8 可動部、 9 ねじ締結部、 10 丸穴部、11 R部、 51 切込み、 81 可動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10