(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191798
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20221221BHJP
H04N 21/442 20110101ALI20221221BHJP
H04N 21/44 20110101ALI20221221BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N21/442
H04N21/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100249
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中野 広大
(72)【発明者】
【氏名】戸部田 雅一
【テーマコード(参考)】
5C054
5C164
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054DA09
5C054EG01
5C054FC01
5C054FC12
5C054FE17
5C054HA19
5C164FA07
5C164UA04S
5C164UA42S
5C164UB01P
5C164UB26S
5C164UB41P
5C164YA12
(57)【要約】
【課題】通信負荷を軽減する。
【解決手段】監視システム40は、カメラ8が映す監視空間36としての車室6の撮影画像Vdを解析することにより、車室6に生じた異常を検知する画像解析装置10を備える。また、監視システム40は、カメラ8及び画像解析装置10とともに情報通信ネットワークのエッジEとなる車両1に設けられた画像配信装置12を備える。そして、画像配信装置12は、画像解析装置10により車室6の異常が検知された場合に、その車室6の撮影画像Vdを外部サーバ11に配信する。画像解析装置10は、撮影画像Vdを入力として車室6の疑似正常画像Vfを生成する生成モデル51と、撮影画像Vd及び疑似正常画像Vfを入力として車室6に生じた異常の検知判定を実行する判定モデル52と、を備えてなる。そして、生成モデル51には、車室6の正常画像を学習データとして学習済みの敵対的生成ネットワーク60の生成器61が用いられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラが映す監視空間の撮影画像を解析することにより前記監視空間に生じた異常を検知する画像解析装置と、
前記カメラ及び前記画像解析装置とともに情報通信ネットワークのエッジに設けられて前記異常が検知された場合に前記撮影画像を外部サーバに配信する画像配信装置と、
を備え、
前記画像解析装置は、
前記撮影画像を入力として前記監視空間の疑似正常画像を生成する生成モデルと、
前記撮影画像及び前記疑似正常画像を入力として前記異常の検知判定を実行する判定モデルと、を備えてなるとともに、
前記生成モデルには、前記監視空間の正常画像を学習データとして学習済みの敵対的生成ネットワークの生成器が用いられた監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記判定モデルは、前記撮影画像と前記疑似正常画像との誤差に基づいて前記異常の検知判定を実行すること、を特徴とする監視システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の監視システムにおいて、
前記判定モデルには、畳み込みニューラルネットワークが用いられること、
を特徴とする監視システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の監視システムにおいて、
前記監視空間は、車両の車室であること、を特徴とする監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラが映す監視空間の撮影画像を、情報通信ネットワークを介して監視する監視システムがある。例えば、特許文献1に記載の車両の状況管理システムは、車両の異常を示す記録イベントが発生した場合、その発生時の撮影画像を、携帯電話回線を介して確認することのできる構成となっている。そして、この従来例においては、人感センサを用いて、その監視空間に生じた記録イベントを検出する構成となっている、
更に、例えば、特許文献2には、学習済みの生成モデルに検知対象データを入力することにより得られる出力データと、その入力した検知対象データとの類似度に基づいて、この検知対象データの異常を検知する方法が記載されている。そして、このような構成を適用することで、より精度よく、その撮影画像に映る監視空間に生じた異常を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-190072号公報
【特許文献2】特開2019-3274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、情報通信ネットワークを介した監視空間の異常検知においては、その通信負荷の増大が重要な課題の一つとなっている。そして、上記従来技術もまた、必ずしも、この問題を十分に解決するとは言えないのが実情であることから、この点において、なお改善の余地が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する監視システムは、カメラが映す監視空間の撮影画像を解析することにより前記監視空間に生じた異常を検知する画像解析装置と、前記カメラ及び前記画像解析装置とともに情報通信ネットワークのエッジに設けられて前記異常が検知された場合に前記撮影画像を外部サーバに配信する画像配信装置と、を備え、前記画像解析装置は、前記撮影画像を入力として前記監視空間の疑似正常画像を生成する生成モデルと、前記撮影画像及び前記疑似正常画像を入力として前記異常の検知判定を実行する判定モデルと、を備えてなるとともに、前記生成モデルには、前記監視空間の正常画像を学習データとして学習済みの敵対的生成ネットワークの生成器が用いられることが好ましい。
【0006】
上記構成によれば、情報通信ネットワークのエッジにおいて、高精度の異常検知を行なうことができる。その結果、単に異常が疑われる、或いは検知結果を確定できない等の理由によって、頻繁に、その撮影画像が外部サーバに配信される状況を回避することができる。そして、これにより、通信負荷の増大を抑えることができる。
【0007】
特に、生成モデルに敵対的生成ネットワークの生成器を用いることで、例えば、変分自己符号化器等のオートエンコーダを用いた場合のような輪郭がぼやけることのない、鮮明な疑似正常画像を生成することができる。更に、撮影画像及び疑似正常画像を入力とした異常検知判定を行なうことにより、例えば、光量の変化等、外乱の影響を抑制することができる。そして、これにより、高精度の異常検知を行なうことができる。
【0008】
上記課題を解決する監視システムにおいて、前記判定モデルは、前記撮影画像と前記疑似正常画像との誤差に基づいて前記異常の検知判定を実行する。
即ち、入力された監視空間の撮影画像が、この監視空間に生じた異常を映す異常画像である場合、その異常が生じた部分を正しく生成することができない。従って、上記構成によれば、これにより生ずる撮影画像と疑似正常画像との誤差に基づいて、高精度の異常検知判定を行なうことができる。
【0009】
上記課題を解決する監視システムにおいて、前記判定モデルには、畳み込みニューラルネットワークが用いられることが好ましい。
上記構成によれば、高精度の異常検知判定を行なうことができる。
【0010】
上記課題を解決する監視システムにおいて、前記監視空間は、車両の車室であることが好ましい。
上記構成によれば、情報通信ネットワークのエッジに位置する車両において、高精度の異常検知を行なうことができる。その結果、車外の外部サーバに対して、頻繁に撮影画像が配信される状況を回避することができる。そして、これにより、通信負荷の増大を抑える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】異常画像を入力として生成された疑似正常画像のイメージ図。
【
図8】モデル形成の処理手順を示すフローチャート。
【
図9】監視システムの作用を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、監視システムの一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の車両1は、車両前後方向に延在する四角略箱状の車体2を有している。また、車体2の側面には、乗員の乗降口となるドア開口部3が設けられている。尚、このドア開口部3には、車両前後方向、相反する方向に開閉動作する一対のスライドドア4,4が設けられている。そして、車両1の乗員5は、車室6内に設けられたシート7に着座する「座位姿勢」、又は、例えば、図示しない吊り革や手すりを利用する等、「立位姿勢」で、この車両1に乗車する構成になっている。
【0014】
また、本実施形態の車両1には、その車室6内を撮影するカメラ8が設けられている。本実施形態の車両1において、このカメラ8は、車室6の前方位置において、その天井部9付近に設けられている。尚、このカメラ8には、例えば、赤外線カメラ等が用いられる。そして、本実施形態のカメラ8は、これにより、車両1の乗員5を、その車室6に設定された所定の方向から撮影する構成となっている。
【0015】
図3に示すように、本実施形態の車両1において、カメラ8が映す車室6の撮影画像Vdは、画像解析装置10に入力される。更に、この画像解析装置10は、入力された撮影画像Vdを解析することにより、その撮影画像Vdに映る車室6に生じた異常の検知判定を実行する。そして、本実施形態の車両1には、これにより車室6の異常が検知された場合に、そのカメラ8が映す車室6の撮影画像Vdを外部サーバ11に配信する画像配信装置12が設けられている。
【0016】
詳述すると、
図4に示すように、本実施形態の画像配信装置12は、情報通信ネットワーク13を介して車両1に接続された第1及び第2の外部サーバ11a,11bに対して、それぞれ、その車室6の撮影画像Vdを配信する。尚、情報通信ネットワーク13は、無線通信網やインターネット等により構成される。また、第1の外部サーバ11aには、その配信された車室6の撮影画像Vdについて、より高度な解析を行なうことのできる第2の画像解析装置20が実装されている。更に、第2の外部サーバ11bは、車両1の運行センター30に設置されている。そして、本実施形態の車両1には、これにより、その車室6を監視空間36とした重層的な監視システム40が構築されている。
【0017】
即ち、本実施形態の監視システム40は、先ず、情報通信ネットワーク13のエッジEとなる車両1に設けられた画像解析装置10において、そのカメラ8が映す車室6の撮影画像Vdに生じた異常が検知される。また、これにより第2の外部サーバ11bに配信された撮影画像Vdを、その第2の外部サーバ11bに実装された第2の画像解析装置20が解析する。そして、本実施形態の監視システム40は、これにより、その検知された異常の真偽を含め、車室6に発生した事象の詳細が分析される構成になっている。
【0018】
一方、第2の外部サーバ11bに配置された撮影画像Vdは、その運行センター30に設けられたディスプレイ41に表示される。更に、このディスプレイ41に表示された車室6の撮影画像Vdを、その運行センター30に待機するオペレータ42が確認する。そして、本実施形態の監視システム40は、これにより、撮影画像Vdに映る車室6の状況に対し、その管理者43であるオペレータ42が、速やかに対応することのできる構成となっている。
【0019】
(画像解析装置)
次に、車両1に設けられた画像解析装置10について説明する。
図3に示すように、本実施形態の画像解析装置10は、カメラ8が映す車室6の撮影画像Vdを入力として、車室6の疑似正常画像Vfを生成する生成モデル51を有している。また、この画像解析装置10は、カメラ8が映す車室6の撮影画像Vdとともに、その生成モデル51が生成する車室6の疑似正常画像Vfが入力される判定モデル52を有している。更に、本実施形態の画像解析装置10においては、この判定モデル52において、その撮影画像Vdに映る車室6に生じた異常の検知判定が実行される。そして、本実施形態の画像解析装置10は、この判定モデル52が実行する異常検知判定の結果を、異常判定信号Sとして、その画像配信装置12に出力する構成となっている。
【0020】
詳述すると、本実施形態の画像解析装置10において、これらの生成モデル51及び判定モデル52は、それぞれ、機械学習による学習済みの生成モデルLM1及び判定モデルLM2としての構成を有している。具体的には、本実施形態の生成モデル51は、車室6の正常画像を学習データとして、疑似正常画像Vfの生成を学習させた学習済みの生成モデルLM1である。そして、本実施形態の判定モデル52は、生成モデル51が生成する車室6の疑似正常画像Vfと、その入力となる車室6の撮影画像Vdとの誤差が大きい場合に、車室6の異常を検知したと判定するように学習させた学習済みの判定モデルLM2となっている。
【0021】
即ち、
図5及び
図6に示すように、本実施形態の生成モデル51は、入力された車室6の撮影画像Vdが、この車室6に生じた異常を映す異常画像Vaである場合、その異常が生じた部分を正しく生成することができない。例えば、
図5に例示する撮影画像Vdは、姿勢を崩した乗員5が車室6のフロアに座り込んだ異常状態を映す異常画像Vaとなっている。この場合、
図6に示すように、生成モデル51による疑似正常画像Vfでは、この乗員5の撮像範囲αが正しく生成できなくなっている。そして、本実施形態の画像解析装置10は、これにより生ずる撮影画像Vdと疑似正常画像Vfとの誤差に基づいて、その判定モデル52が車室6に生じた異常を検知する構成になっている。
【0022】
さらに詳述すると、
図3に示すように、本実施形態の画像解析装置10において、生成モデル51は、学習済みの敵対的生成ネットワーク60の生成器61を用いて構成されている。
【0023】
即ち、
図7に示すように、敵対的生成ネットワーク60は、偽画像FIを生成する生成器61と、その偽画像FIの真偽を識別する識別器62と、を備えて構成される。尚、「敵対的生成ネットワーク」の英語表記は、「GAN(Generative adversarial networks)」である。そして、「生成器」は「generator」であり、「識別器」は「discriminator」である。
【0024】
また、敵対的生成ネットワーク60においては、重み学習LWによって、識別器62は、正しく偽画像FIの真偽を識別するように、生成器61は、識別器62を欺くような偽画像FIを生成するように、それぞれの学習が進められる。尚、重み学習LWにおける「重み付け」には、例えば、「損失関数(Loss function)」が用いられる。即ち、これにより「敵対的」或いは「切磋琢磨」等と表現される態様で、これらの生成器61及び識別器62の学習が進む。そして、敵対的生成ネットワーク60には、これにより、その生成器61が極めて精巧な偽画像FIの生成能力を獲得するという特徴がある。
【0025】
即ち、本実施形態の画像解析装置10において、敵対的生成ネットワーク60の生成器61が生成する偽画像FIは、車室6の疑似正常画像Vfである。また、敵対的生成ネットワーク60には、実画像RIを生成器61の入力とする「pix2pix」が用いられる。そして、本実施形態の画像解析装置10は、これにより、その車室6の撮影画像Vdを学習データとして、その生成モデル51に用いる敵対的生成ネットワーク60の生成器61を学習させることが可能になっている。
【0026】
また、
図3に示すように、本実施形態の画像解析装置10において、判定モデル52は、学習済みの畳み込みニューラルネットワーク70を用いて構成されている。尚、「畳み込みニューラルネットワーク」の英語表記は、「CNN(Convolutional Neural Network)」である。そして、本実施形態の画像解析装置10は、これらの生成モデル51及び判定モデル52について、それぞれ、機械学習を行うことで、その学習済みの生成モデルLM1及び判定モデルLM2を形成する構成となっている。
【0027】
(モデル形成方法)
次に、本実施形態の監視システム40における生成モデル51及び判定モデル52の形成方法について説明する。
【0028】
図8に示すように、画像解析装置10の生成モデル51及び判定モデル52を形成する際には、先ず、実際の車両1で撮影された車室6の撮影画像Vdを取得する(ステップ101)。具体的には、このステップ101では、学習データに用いる車室6の撮影画像Vdとして、車室6に異常がない場合の正常画像Vn及び車室6に異常が生じた場合の異常画像Vaを取得する。尚、「正常」「異常」の判定基準としては、例えば、車室6内の乗員5について、その安全が確保されているか等、監視空間36内に位置する人Hの状態に基づいて設定される。続いて、このステップ101において取得した車室6の撮影画像Vdを用いて、正常画像Vnのみを集めた撮影画像VdのデータセットDS1を作成する(ステップ102)。そして、同じく上記ステップ101において取得した車室6の撮影画像Vdを用いて、正常画像Vn及び異常画像Vaが混在する撮影画像VdのデータセットDS2を作成する(ステップ103)。
【0029】
次に、生成モデル51に適用する生成器61を備えた学習用の敵対的生成ネットワーク60を構築する(ステップ104、
図3及び
図7参照)。そして、上記正常画像Vnのみを集めた撮影画像VdのデータセットDS1を学習データLDに使用して、その敵対的生成ネットワーク60の生成器61に、車室6の撮影画像Vdを入力とした疑似正常画像Vfの生成を学習させる(ステップ105)。
【0030】
上記のように、このステップ105においては、その生成器61の学習に合わせて、この生成器61とともに敵対的生成ネットワーク60を構成する識別器62の学習も進められる。例えば、生成器61の学習は、識別器62の出力を「真」に固定した教師なし学習により進められる。尚、識別器62の学習は、この生成器61の学習とは別に、正常画像Vnに与えられた「本物」の正解ラベルLB及び疑似正常画像Vfに与えられた「偽物」の正解ラベルLBを教師データとした教師あり学習により進められる(
図7参照)。そして、これにより、これら生成器61及び識別器62の敵対的学習が進み、再構成誤差が最小化されることで、その敵対的生成ネットワーク60の生成器61が精巧な車室6の疑似正常画像Vfを生成するようになる。
【0031】
このステップ105の学習工程を終了すると、次に、その敵対的生成ネットワーク60から学習済みの生成器61を抽出する(ステップ106)。そして、この抽出した学習済みの生成器61を、画像解析装置10の生成モデル51に適用する(ステップ107)。
【0032】
即ち、本実施形態の画像解析装置10は、上記ステップ105~ステップ107の実行によって、その生成モデル51が、疑似正常画像Vfの生成を学習した学習済みの生成モデルLM1としての構成を有するものとなる。次に、この学習済みの生成モデルLM1に対して、上記ステップ103で作成した正常画像Vn及び異常画像Vaが混在する撮影画像VdのデータセットDS2を入力することにより、疑似正常画像VfのデータセットDS3を生成する(ステップ108)。そして、その生成した疑似正常画像VfのデータセットDS3と、このデータセットDS3の元データである撮影画像VdのデータセットDS2とを使用して、その判定モデル52の学習工程を実行する(ステップ109)。
【0033】
具体的には、このステップ109における判定モデル52の学習工程は、疑似正常画像Vfと、その元データとなる車室6の撮影画像Vdと、を対にした教師あり学習により進められる。
【0034】
即ち、上記のように、元データとなる撮影画像Vdが正常画像Vnである場合、学習済みの生成モデルLM1は、誤差の小さい疑似正常画像Vfを生成することができる。しかしながら、元データとなる撮影画像Vdが異常画像Vaである場合、学習済みの生成モデルLM1は、正しく疑似正常画像Vfを生成することができず、その結果、元データとなる撮影画像Vdとの誤差が大きくなる。
【0035】
この点を踏まえ、疑似正常画像Vfの元データとなる撮影画像Vdが正常画像Vnである場合には、判定モデル52に対し、これらの疑似正常画像Vf及び撮影画像Vdとともに、教師データTDとして「正常」の正解ラベルLBを与える。また、疑似正常画像Vfの元データとなる撮影画像Vdが異常画像Vaである場合には、判定モデル52に対し、これらの疑似正常画像Vf及び撮影画像Vdとともに、教師データTDとして「異常」の正解ラベルLBを与える。これにより、その判定モデル52が、撮影画像Vdと疑似正常画像Vfとの誤差に基づいた車室6の異常検知判定を学習する。そして、本実施形態の画像解析装置10は、このステップ109の学習工程が終了することにより、その判定モデル52が、異常検知判定を学習した学習済みの判定モデルLM2としての構成を有するものとなる。
【0036】
次に、上記のように構成された本実施形態の監視システム40について、その作用を説明する。
即ち、
図9に示すように、本実施形態の監視システム40においては、先ず、画像解析装置10によって、そのカメラ8が映す車室6の撮影画像Vdが取得される(ステップ201)。続いて、この画像解析装置10において、その撮影画像Vdが生成モデル51に入力される(ステップ201)。そして、この生成モデル51が、その入力された車室6の撮影画像Vdに基づいて車室6の疑似正常画像Vfを生成する(ステップ203)。
【0037】
次に、同じく画像解析装置10において、生成モデル51により生成された疑似正常画像Vfが、この疑似正常画像Vfの元データである車室6の撮影画像Vdとともに、判定モデル52に入力される(ステップ204)。そして、この判定モデル52が、撮影画像Vdと疑似正常画像Vfとの誤差に基づいて、その撮影画像Vdに映る車室6の異常検知判定を実行する(ステップ205)。
【0038】
更に、この判定モデル52による異常検知判定の結果が「異常」であるか否かが判定される(ステップ206)。そして、この異常検知判定の結果が「異常」であった場合(ステップ206:YES)、その画像配信装置12によって、カメラ8が映す車室6の撮影画像Vdが、情報通信ネットワーク13を介して外部サーバ11に配信される(ステップ207)。
【0039】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)監視システム40は、カメラ8が映す監視空間36としての車室6の撮影画像Vdを解析することにより、その車室6に生じた異常を検知する画像解析装置10を備える。また、監視システム40は、カメラ8及び画像解析装置10とともに情報通信ネットワーク13のエッジEとなる車両1に設けられた画像配信装置12を備える。そして、この画像配信装置12は、画像解析装置10により車室6の異常が検知された場合に、その車室6の撮影画像Vdを外部サーバ11に配信する。画像解析装置10は、撮影画像Vdを入力として車室6の疑似正常画像Vfを生成する生成モデル51と、その撮影画像Vd及び疑似正常画像Vfを入力として車室6に生じた異常の検知判定を実行する判定モデル52と、を備えてなる。そして、生成モデル51には、車室6の正常画像Vnを学習データLDとして学習済みの敵対的生成ネットワーク60の生成器61が用いられる。
【0040】
上記構成によれば、情報通信ネットワーク13のエッジEとなる車両1において、高精度の異常検知を行なうことができる。その結果、単に異常が疑われる、或いは検知結果を確定できない等の理由によって、頻繁に、その撮影画像Vdが外部サーバ11に配信される状況を回避することができる。そして、これにより、通信負荷の増大を抑えることができる。
【0041】
特に、生成モデル51に敵対的生成ネットワーク60の生成器61を用いることで、例えば、変分自己符号化器等のオートエンコーダを用いた場合のような輪郭がぼやけることのない、鮮明な疑似正常画像Vfを生成することができる。尚、変分自己符号化器の英語表記は、「VAE(variational autoencoder)」である。更に、撮影画像Vd及び疑似正常画像Vfを入力とした異常検知判定を行なうことにより、例えば、光量の変化等、外乱の影響を抑制することができる。そして、これにより、高精度の異常検知を行なうことができる。
【0042】
(2)判定モデル52には、畳み込みニューラルネットワーク70が用いられる。
上記構成によれば、撮影画像Vdと疑似正常画像Vfとの誤差に基づいた高精度の異常検知判定を行なうことができる。
【0043】
(3)敵対的生成ネットワーク60には、「Pix2Pix」が用いられる。
上記構成によれば、再構成誤差の小さい精巧な車室6の疑似正常画像Vfを生成することができる。更に、「Pix2Pix」は、実画像RIを生成器61の入力とする。このため、車室6の撮影画像Vdを学習データとして、その生成器61を学習させることができる。そして、これにより、容易に、その学習済みの生成器61を画像解析装置10の生成モデル51に適用することができる。
【0044】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・上記実施形態では、カメラ8には、赤外線カメラが用いられることとしたが、その型式は任意に変更してもよい。例えば、可視光カメラ等を用いる構成であってもよい。そして、複数のカメラ8を用いて、その監視空間36を撮影する構成であってもよい。
【0046】
・上記実施形態では、敵対的生成ネットワーク60には、「Pix2Pix」を用いることとした。しかし、これに限らず、車室6の撮影画像Vdを入力として車室6の疑似正常画像Vfを生成することが可能であれば、敵対的生成ネットワーク60のモデルについては、任意に変更してもよい。例えば、撮影画像Vdの符号化処理を付加することで、「CGAN(Condition GAN)」を適用することもできる。
【0047】
・上記実施形態では、畳み込みニューラルネットワーク70を用いて、撮影画像Vdと疑似正常画像Vfとの「誤差」に基づく異常検知判定を行なうこととした。しかし、これに限らず、撮影画像Vd及び疑似正常画像Vfを入力として「正常」又は「異常」の二値分類を行なう2入力1出力の判定モデル52を形成することができれば、その構成については任意に変更してもよい。例えば、「L1(L2)ノルムの差分」の閾値判別、或いは、「MSE/PSNR」「SSIM」のような二画像間の類似度の閾値判別等、ルールベースの判別を行なう構成であってもよい。また、「機械学習モデル」としては、例えば、「サポートベクターマシン(SVM)」や「決定木」等を用いることができる。そして、例えば、「深層学習モデル」としては、「多層パーセプトロン(MLP)」「残差ネットワーク(ResNet)」を用いることができる。
【0048】
・上記実施形態では、例えば、撮影画像Vdに映る乗員5の安全が確保されているか等を「正常」「異常」の判定基準に設定するとしたが、必ずしも、監視空間36内に位置する人Hの状態に限らず、その判定基準については、任意に設定してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、撮影画像Vdに映る車室6に生じた異常が検知された場合、情報通信ネットワーク13を介して車両1に接続された第1及び第2の外部サーバ11a,11bに対して、それぞれ、その車室6の撮影画像Vdが配信される。更に、第1の外部サーバ11aにおいては、車両1の画像解析装置10よりも高度な解析能力を有した第2の画像解析装置20による二次分析が行われる。そして、第2の外部サーバ11bが設置された車両1の運行センター30においては、その撮影画像Vdに映る車室6の状況に対し、管理者43であるオペレータ42が対応することとした。しかし、これに限らず、外部サーバ11に配信された撮影画像Vdの二次分析は、必ずしも行わなくともよい。また、運行センター30に待機したオペレータ42による撮影画像Vdの確認や、車室6の状況への対応が行われない完全自動化されたシステムに適用してもよい。そして、撮影画像Vdの配信を行なう外部サーバ11の数についてもまた、任意に変更してもよい。
【0050】
・上記実施形態では、カメラ8が映す車両1の車室6を監視空間36とした監視システム40に具体化した。しかし、これに限らず、建物の室内を監視空間36とする構成であってもよい。そして、例えば、屋外に監視空間36を設定する構成であってもよい。
【0051】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について、その効果とともに記載する。
(イ)前記敵対的生成ネットワークには、Pix2Pixが用いられること、を特徴とする。
【0052】
上記構成によれば、再構成誤差の小さい精巧な監視空間の疑似正常画像を生成することができる。更に、「Pix2Pix」は、実画像を生成器の入力とする。このため、監視空間の撮影画像を学習データとして、その生成器を学習させることができる。そして、これにより、容易に、その学習済みの生成器を画像解析装置の生成モデルに適用することができる。
【0053】
(ロ)カメラとともに情報通信ネットワークのエッジに設けられて前記カメラが映す監視空間の撮影画像を解析することにより前記監視空間に生じた異常を検知する画像解析装置と、前記異常が検知された場合に前記情報通信ネットワークを介して接続されたクラウドサーバに前記撮影画像の配信を実行する画像配信装置と、を備え、前記画像解析装置は、前記撮影画像を入力として疑似正常画像を生成する生成モデルと、前記撮影画像及び前記疑似正常画像を入力として前記異常の検知判定を実行する判定モデルと、を備えた監視システムのモデル形成方法であって、前記監視空間の正常画像を学習データとして敵対的生成ネットワークの生成器を学習させる工程と、前記学習済みの前記生成器を前記生成モデルに適用する工程と、を備える監視システムのモデル形成方法。
【符号の説明】
【0054】
1…車両
6…車室
8…カメラ
10…画像解析装置
11…外部サーバ
12…画像配信装置
13…情報通信ネットワーク
36…監視空間
40…監視システム
51…生成モデル
52…判定モデル
60…敵対的生成ネットワーク
61…生成器
E…エッジ
Vd…撮影画像
Vf…疑似正常画像
Vn…正常画像
LD…学習データ