(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191799
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】回転機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/22 20060101AFI20221221BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H02K9/22 A
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100250
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】山岸 真之
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP02
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ12
5H609QQ13
5H609QQ20
5H609QQ23
5H609RR26
5H609RR36
5H609RR42
5H609RR43
5H609RR48
5H609RR59
5H609RR71
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータの下部の冷却効率を高める。
【解決手段】ステータコア、及び複数のコイルを具備するステータ3と、ステータ3の中空内に配置される回転可能なロータと、ステータ3よりも径方向の外側から、複数のコイルのそれぞれにおけるコイルエンド部3b2に向けてオイルを吐出する吐出孔52eとを備えるモータであって、ヒートパイプ62と、絶縁体65とを備え、絶縁体65が、複数のコイルエンド部3b2からなるコイルエンド群の周方向における全域のうち、少なくとも、径方向において吐出孔52eに対面する領域に対して回転軸線Aを中心にした点対称の位置にある領域A1と、ヒートパイプ62の一部とを封止する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア、及び複数のコイルを具備するステータと、前記ステータの中空内に配置される回転可能なロータと、前記ステータよりも径方向の外側から、複数の前記コイルのそれぞれにおけるコイルエンド部に向けて冷媒を吐出する吐出孔とを備える回転機であって、
熱交換器と、絶縁体とを備え、
前記絶縁体が、複数の前記コイルエンド部からなるコイルエンド群の周方向における全域のうち、少なくとも、径方向において前記吐出孔に対面する領域に対して回転軸線を中心にした点対称の位置にある領域と、前記熱交換器の一部とを封止する、
ことを特徴とする回転機。
【請求項2】
前記熱交換器が、円環状のヒートパイプであり、
前記ヒートパイプが、円環の内側に配置された前記コイルエンド群を囲む、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転機。
【請求項3】
前記ヒートパイプの周方向における全域のうち、前記絶縁体に封止される領域に対して回転軸線を中心にした点対称の位置にある領域が、前記ヒートパイプの内部を外部と遮断しつつ、前記吐出孔から吐出された冷媒を円環の外側から内側に向けて通過させる冷媒通路を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転機。
【請求項4】
前記冷媒通路の径が、前記吐出孔の径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項3に記載の回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、発電機等の回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコア、及び複数のコイルを具備するステータと、ステータの中空内に配置される回転可能なロータと、ステータよりも径方向の外側から、複数のコイルのそれぞれにおけるコイルエンド部に向けて冷媒を吐出する吐出孔とを備える回転機が、知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の回転機としての回転電機は、ロータ、ステータ、ケース、及び吐出孔たる冷却液供給部を備え、ロータの回転軸線を水平方向に沿わせる姿勢で配置される。円筒状のケースは、ロータ及びステータを収容する。ステータは、ステータコアに保持される複数のコイルを備える。それらコイルは、ロータの回転軸線と平行な方向(軸方向)に延在する姿勢でステータコアに保持される。複数のコイルのそれぞれにおける軸方向の中央部は、ステータコアに覆われるが、両端部のそれぞれは、ステータコアの軸方向の端面から突出する。このように突出する部分は、コイルエンド部と呼ばれる。吐出孔たる冷却液供給部は、複数のコイルエンド部よりも上方において、複数のコイルエンド部に向けて開口する態様で配置される。冷却液供給部から吐出される冷媒としての冷却液は、複数のコイルエンド部のうち、最も上方に位置するコイルエンド部に付着した後、下方に向けて移動する過程で、他の複数のコイルエンド部の表面を順に伝っていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のコイルエンド部の表面を順に伝っていく冷却液は、それぞれのコイルエンド部の熱を奪うことで、ステータ及びロータを冷却することができる。しかしながら、冷却液は、複数のコイルエンド部の表面を順に伝っていく過程で徐々に昇温していき、ケース内の下部領域まで移動すると、コイルエンド部から良好に熱を奪うことが困難になる。このため、特許文献1に記載の回転電機においては、モータの下部を良好に冷却することが困難であるという課題がある。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回転機の下部の冷却効率を高めることができる回転機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、ステータコア、及び複数のコイルを具備するステータと、前記ステータの中空内に配置される回転可能なロータと、前記ステータよりも径方向の外側から、複数の前記コイルのそれぞれにおけるコイルエンド部に向けて冷媒を吐出する吐出孔とを備える回転機であって、熱交換器と、絶縁体とを備え、前記絶縁体が、複数の前記コイルエンド部からなるコイルエンド群の周方向における全域のうち、少なくとも、径方向において前記吐出孔に対面する領域に対して回転軸線を中心にした点対称の位置にある領域と、前記熱交換器の一部とを封止する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転機の下部の冷却効率を高めることができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るモータを示す分解斜視図である。
【
図2】同モータのロータ及びステータの軸方向の端面をリア側から示す図である。
【
図3】同ロータ及び同ステータの
図2におけるB-B’断面を、ハウジングの断面とともに示す断面図である。
【
図4】同ハウジングの収容空間内に配置されるリア側冷却ユニットを示す斜視図である。
【
図5】同ステータの複数のリア側コイルエンド部、及びリア側冷却ユニットの径方向の破断面を示す断面図である。
【
図6】同収容空間のリア側におけるオイルの挙動を説明するための図である。
【
図7】比較例に係るモータを用いたシミュレーションによる各部の熱分布を示す図である。
【
図8】実施形態に係るモータを用いたシミュレーションによる各部の熱分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を用いて、本発明を適用した回転機としてのモータの一実施形態について説明する。実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、各図において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、各図に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係るモータ1を示す分解斜視図である。モータ1は、インナーロータ型モータであり、円筒状のハウジング52、フロントカバー53、リアカバー54、シャフト55、ロータ(回転子)2、及びステータ(固定子)3を備える。ロータ2は、埋込磁石形回転子である。モータ1は、車両用モータなどといった高出力密度を要求される埋込磁石型同期型モーター(IPMSM:interior permanent magnet synchronous motor)である。モータ1は、EV(Electric Vehicle)車、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)車などの自動車に搭載されるものである。
【0012】
丸棒状のシャフト55は、円柱状のロータ2をロータ2の回転軸線Aに沿って貫通し、回転軸線A上に位置する。シャフト55は、ロータ2とともに回転軸線Aを中心にして一体的に回転駆動する。円筒状のハウジング52は、ヨークの役割を果たし、内周面で円筒状のステータ3を保持する。
【0013】
以下、回転軸線Aに沿った方向、及び回転軸線Aと平行な方向を、単に軸方向という。軸方向に沿った両側のうち、リア側を単にリア側といい、フロント側を単にフロント側という。また、回転軸線Aを中心とする周方向を単に周方向という。また、回転軸線Aを中心とする径方向を単に径方向という。
【0014】
ハウジング52は、回転軸線A方向の両端に開口を有する。ロータ2は、ハウジング52の内周面に保持されているステータ3の中空内に収容される。有底円筒状のフロントカバー53は、底部を軸方向(回転軸線Aと平行な方向)のフロント側に向けた状態で、ハウジング52のフロント側に接続される。この接続により、フロントカバー53は、底部に設けられたシャフト穴53cにシャフト55のフロント側を貫通させ、且つハウジング52のフロント側の開口を塞ぐ。
【0015】
リアカバー54は、ハウジング52のリア側の開口を塞ぐように、ハウジング52のリア側端部に固定される。
【0016】
ロータ2の外周側には、エアギャップを隔ててステータ3が配置される。即ち、中空構造のステータ3は、その中空にロータ2を収容する。モータ1は、後述のコイルの電流制御によってステータ3の磁界を順番に切り替えることで、ロータ2の磁界との吸引力または反発力を生じせしめて、回転軸線Aを中心としてロータ2を回転駆動させる。
【0017】
ロータ2は、ロータコア2aと、複数の永久磁石2bとを有する。ロータ2のロータコア2aは、例えば、打ち抜き加工された珪素鋼板を軸方向に積層して形成される円筒状の部材である。ロータコア2aを構成する個々の珪素鋼板の間には絶縁性接着剤が介在しており、個々の珪素鋼板は互いに絶縁状態にある。そして、ロータコア2aの軸心部に形成される中空には、回転軸線Aに沿ってシャフト55が嵌入される。モータ1において、シャフト55は不図示の転がり軸受けによって回転自在に支持される。
【0018】
図2は、実施形態に係るモータのロータ2及びステータ3の軸方向の端面をリア側から示す図である。ステータ3は、円筒状のステータコア3aと、複数のポケットと、複数のコイル3bとを備える。複数のポケットのそれぞれは、ステータコア3aの内周面から径方向の外側に向けて窪む溝からなり、周方向に所定のピッチで並ぶ態様で配置される。すく数のポケットのそれぞれには、コイル3bが収容される。
【0019】
ロータ2は、ステータコア3aの中空内に配置され、ロータコア2aと、周方向に所定のピッチで並ぶ態様でロータコア2aに埋め込まれた複数の永久磁石2bとを備える。
【0020】
図3は、ロータ2及びステータ3の
図2におけるB-B’断面を、ハウジング52の断面とともに示す断面図である。なお、
図3においては、便宜上、後述のフロント側冷却ユニット、及びリア側冷却ユニットの図示が省略されている。
【0021】
モータ1は、図示のように、回転軸線Aを水平方向に沿わせる姿勢(以下、正規姿勢という)で配置される設計になっている。以下、正規姿勢で配置されたモータ1の各部において、上下方向における中点を境にした上側を、単に上側という。また、中点を境にした下側を、単に下側という。また、上側の部分を上部といい、下側の部分を下部という。
【0022】
図中の矢印Fはフロント側に向かう方向を示し、矢印Rはリア側に向かう方向を示している。ステータ3の複数のコイル3bは、軸方向の中央部がステータコア3aに覆われる。複数のコイル3bのそれぞれにおけるフロント側の端部は、フロント側コイルエンド部3b1であり、ステータコア3aのフロント側の端面からフロント側に向けて突出している。また、複数のコイル3bのそれぞれにおけるリア側の端部は、リア側コイルエンド部3b2であり、ステータコア3aのリア側の端面からリア側に向けて突出している。
【0023】
ハウジング52は、収容空間52aと、吸引口52bと、送出口52cと、フロント側吐出孔52dと、リア側吐出孔52eと、オイル流路52fとを備える。収容空間52aは、ロータ2、ステータ3、及びシャフト33を収容するための空間である。吸引口52bは、ハウジング52の下側端部における軸方向の中央に配置された開口である。
【0024】
オイル流路52fは、ハウジング52の頂部に設けられた中空からなる流路であり、軸線方向に延在している。送出口52cは、オイル流路52fの軸方向における中央に配置された開口である。フロント側吐出孔52dは、ハウジング52における収容空間52aとオイル流路52fとを隔てる隔壁におけるフロント側の端部に設けられた開口であり、下方を向いている。リア側吐出孔52eは、ハウジング52における収容空間52aとオイル流路52fとを隔てる隔壁におけるリア側の端部に設けられた開口であり、下方を向いている。
【0025】
収容空間52aの底部領域には、冷媒としてのオイル(不図示)が貯留されている。以下、収容空間52aの底部領域に貯留された状態のオイルを、貯留オイルという。収容空間52a内の貯留オイルは、吸引口52bを通じて不図示の電動オイルポンプに吸引された後、送出口52cを通じてオイル流路52f内に送出される。オイル流路52f内に送出されたオイルの一部は、図中矢印Cで示されるように、オイル流路52f内をフロント側に向けて流れた後、図中矢印Dで示されるように、フロント側吐出孔52dを通じて収容空間52a内に吐出される。また、オイル流路52f内に送出されたオイルの他の一部は、図中矢印Eで示されるように、オイル流路52f内をリア側に向けて流れた後、図中矢印Fで示されるように、リア側吐出孔52eを通じて収容空間52a内に吐出される。
【0026】
図4は、収容空間(
図3の52a)内に配置されるリア側冷却ユニット60を示す斜視図である。リア側冷却ユニット60は、円環状のヒートパイプ62と、絶縁性材料からなる絶縁体65とを備える。
【0027】
図5は、ステータ3の複数のリア側コイルエンド部3b2、及びリア側冷却ユニット60の径方向の破断面を示す断面図である。なお、
図5においては、
図3に示されるリア側吐出孔52eを、模式的な点線として示している。
【0028】
リア側冷却ユニット60のヒートパイプ62は、円環状のパイプ62と、作動液63とを備える。また、パイプ62は、中空62aと、オイル通路62bとを備える。中空62aの下部には、作動液63が貯留される。パイプ62の材質は、例えばりん脱酸銅である。
【0029】
リア側冷却ユニット60の絶縁体65は、複数のリア側コイルエンド部3b2からなるリア側コイルエンド群の領域A1と、ヒートパイプ62の下側の端部とを封止する。領域A1は、リア側コイルエンド群の周方向における全域のうち、少なくとも、径方向においてリア側吐出孔52eに対面する領域に対して回転軸線Aを中心にした点対称の位置にある領域である。
【0030】
回転機(
図1の1)の駆動中においては、不図示のオイルが絶縁体65に滴下される。複数(図示の例では48個)のリア側コイルエンド部3b2からなるリア側コイルエンド群における領域A1は、絶縁体65を介して前述のオイルによって冷却される。但し、オイルの温度がある程度まで高くなっているので、その冷却効率は、収容空間(
図3の52a)内の上部を重力方向に移動するオイルによるリア側コイルエンド群の上部の冷却効率よりも低い。
【0031】
リア側コイルエンド群の領域A1は、絶縁体65に付着したオイルによって冷却されることに加えて、リア側冷却ユニット60によっても冷却される。実施形態に係るモータ1によれば、このように、オイルによる冷却と、リア側冷却ユニット60による冷却とをリア側コイルエンド群の領域A1に施すことで、モータ1の下部の冷却効率を高めることができる。
【0032】
リア側冷却ユニット60のヒートパイプ62は、絶縁体65を介して、複数のリア側コイルエンド部3b2からなるリア側エンドコイル群の領域A1を冷却する。絶縁体65からヒートパイプ62のパイプ62に伝わった熱は、パイプ62の中空62aの下部に存在する作動液63に伝わる。この熱伝導によって昇温した作動液63の一部は、気化して作動気体になることで、パイプ62の中空62aの上部に移動する。
【0033】
図6は、ハウジング(
図3の52)の収容空間(
図3の52a)のリア側におけるオイルの挙動を説明するための図である。同図では、ステータ3及びリア側冷却ユニット60をリア側から示している。
【0034】
複数のリア側コイルエンド部3b2のうち、最も高い位置にある2つのリア側コイルエンド部3b2の真上には、パイプ62のオイル通路62bが位置しており、オイル通路62bの真上には、下方を向くリア側吐出孔52eが位置している。リア側吐出孔52eから吐出されたオイルの一部は、パイプ62のオイル通路62bを通過して、前述の2つのリア側コイルエンド部3b2に付着する。その後、オイルは、前述の2つのリア側コイルエンド部3b2よりも下方にあるリア側コイルエンド部3b2の表面に移動したり、重力方向に真っすぐ落下したりする過程で、複数のリア側コイルエンド部3b2を冷却する。
【0035】
パイプ62のオイル通路62bの口径は、リア側吐出孔52eの孔径よりも小さい。このため、リア側吐出孔52eから吐出されたオイルの一部は、オイル通路62bの内部に進入できずに、パイプ62の外周面に付着する。その後、オイルは、パイプ62の外周面を重力方向に向けて伝っていく。このとき、パイプ62の中空(
図5の62a)の上部に存在する作動気体の熱を、パイプ62を介して奪うことで、作動気体を冷却する。冷却された作動気体は、液化して冷却済みの作動液(
図5の63)になることで、比重を増加させて中空(
図5の62a)の下部に落下する。このとき、冷却済みの作動液63が、既に中空(
図5の62a)の下部に存在していた作動液63に混ざることで、作動液63の全体の温度を下げる。以上のような作動液63の挙動により、ヒートパイプ62は、駆動機構を用いることなく、リア側コイルエンド群の領域A1を速やかに冷却することができる。
【0036】
図5に示されるように、円環状のヒートパイプ62は、円環の内側に配置された複数のリア側コイルエンド部3b2からなるリア側コイルエンド群を囲む。かかる構成によれば、円環状のヒートパイプ62を、円柱状の収容空間(
図3の52a)内においてリア側コイルエンド群の径方向の外側に生じる僅かなデッドスペースに収容することで、ヒートパイプ62を付設することによるモータ1の大型化を抑えることができる。
【0037】
オイル通路62bは、円環状のヒートパイプ62の周方向における全域のうち、絶縁体65に封止される領域に対して回転軸線Aを中心にした点対称の位置にある領域A1に配置される。このオイル通路62bは、ヒートパイプ62の内部(中空62a)を外部と遮断しつつ、リア側吐出孔52eから吐出されたオイルを円環の外側から内側に向けて通過させる。かかる構成によれば、リア側吐出孔52eから吐出したオイルをオイル通路62bによってヒートパイプ62の円環の内側に導くことで、オイルの滴下によるリア側コイルエンド群の冷却を確実に実現することができる。
【0038】
なお、リア側冷却ユニット60について説明したが、モータ1は、フロント側冷却ユニットも備える。フロント側冷却ユニットの構成は、リア側冷却ユニット60の構成とほぼ同じであるが、複数のフロント側コイルエンド部(
図3の3b1)からなるフロント側コイルエンド群をパイプによって囲む態様で配置される点が、リア側冷却ユニット60と異なる。
【0039】
本発明者は、実施形態に係るモータ1と、冷却ユニット(フロント側及びリア側)を備えない比較例に係るモータとで、冷却効率を比較するシミュレーションを実施した。
図7は、比較例に係るモータを用いたシミュレーションによる各部の熱分布を示す図である。
図8は、実施形態に係るモータ1を用いたシミュレーションによる各部の熱分布を示す図である。比較例に係るモータでは、ステータの下部の最高温度が520〔K〕に達しているのに対し、実施形態に係るモータ1では、ステータの下部の最高温度が約490〔K〕に留まっており、下部の温度を約30〔K〕下げることができている。
【0040】
本発明を、IPMSMに適用した例について説明したが、SPM(Surface Permanent Magnetic)モータにも、本発明適用が可能である。
【0041】
また、本発明を回転機としてのモータ1に適用した例について説明したが、本発明を回転機としての発電機(ダイナモ)に適用してもよい。
【0042】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の構成を適用し得る範囲内で、実施形態とは異なる構成を採用することもできる。本発明は、以下に説明する態様毎に特有の作用効果を奏する。
【0043】
〔第1態様〕
第1態様は、ステータコア(例えばステータコア3a)、及び複数のコイル(例えばコイル3b)を具備するステータ(例えばステータ)と、前記ステータの中空内に配置される回転可能なロータ(例えばロータ2)と、前記ステータよりも径方向の外側から、複数の前記コイルのそれぞれにおけるコイルエンド部(例えばフロント側コイルエンド部3b1、リア側コイルエンド部3b2)に向けて冷媒(例えばオイル)を吐出する吐出孔(例えばフロント側吐出孔52d、リア側吐出孔52e)とを備える回転機(例えばモータ1)であって、熱交換器(例えばヒートパイプ62)と、絶縁体(例えば絶縁体65)とを備え、前記絶縁体が、複数の前記コイルエンド部からなるコイルエンド群(例えばリア側コイルエンド群)の周方向における全域のうち、少なくとも、径方向において前記吐出孔に対面する領域に対して回転軸線を中心にした点対称の位置にある領域(例えば領域A1)と、前記熱交換器の一部とを封止する、ことを特徴とするものである。
【0044】
かかる構成においては、コイルエンド群を冷媒によって冷却することに加えて、熱交換器によっても冷却することで、回転機の下部の冷却効率を高めることができる。
【0045】
〔第2態様〕
第2態様は、第1態様の構成を備え、且つ、前記熱交換器が、円環状のヒートパイプ(例えばヒートパイプ62)であり、前記ヒートパイプが、円環の内側に配置された前記コイルエンド群を囲む、ことを特徴とする回転機である。
【0046】
かかる構成によれば、円環状のヒートパイプを、ハウジングの円柱状の収容空間内においてコイルエンド群の径方向の外側に生じる僅かなデッドスペースに収容することで、ヒートパイプを付設することによる回転機の大型化を抑えることができる。
【0047】
〔第3態様〕
第3態様は、第2態様の構成を備え、且つ、前記ヒートパイプの周方向における全域のうち、前記絶縁体に封止される領域に対して回転軸線を中心にした点対称の位置にある領域(例えば領域A2)が、前記ヒートパイプの内部を外部と遮断しつつ、前記吐出孔から吐出された冷媒を円環の外側から内側に向けて通過させる冷媒通路(例えばオイル通路62b)を備える、ことを特徴とする回転機である。
【0048】
かかる構成によれば、吐出孔から吐出した冷媒を冷媒通路によってヒートパイプの円環の内側に導くことで、冷媒の滴下によるコイルエンド群の冷却を確実に実現することができる。
【0049】
〔第4態様〕
第4態様は、第3態様の構成を備え、且つ、前記冷媒通路の径が、前記吐出孔の径よりも小さい、ことを特徴とする回転機である。
【0050】
かかる構成によれば、吐出孔から吐出した冷媒の一部を、ヒートパイプの外周面に付着させ、そのオイルによってヒートパイプ内の作動気体を冷却することで、作動気体を液化せしめて作動液全体の降温を図ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・モータ(回転機)、 2・・・ロータ、 3・・・ステータ、 3a・・・ステータコア、 3b・・・コイル、 3b1・・・フロント側コイルエンド部(コイルエンド部)、 3b2・・・リア側コイルエンド部、 52・・・ハウジング、 52a・・・収容空間、 52d・・・フロント側吐出孔(吐出孔)、 52e・・・リア側吐出孔(吐出孔)、 61・・・ヒートパイプ(熱交換器)、 62・・・パイプ、 62a・・・中空、 62b・・・オイル通路(冷媒通路)、 63・・・作動液