(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191800
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】車両用シフトポジション決定装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/12 20100101AFI20221221BHJP
F16H 59/04 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H59/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100251
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】遊磨 隆史
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552NA01
3J552NB01
3J552NB08
3J552PB03
3J552QC01
3J552RA19
3J552SB02
3J552TA10
3J552TB13
3J552VA62W
3J552VA62X
3J552VA76W
3J552VA76X
(57)【要約】
【課題】実際にはシフトポジションセンサが正常であるにもかかわらず、誤ってフェールセーフ処理が実行されることを抑制できるようにした車両用シフトポジション決定装置を提供する。
【解決手段】CPU22は、シフトポジションセンサ40a,40b,40cのいずれか1つに異常が生じる場合、残りの2つの検知結果が一致することを条件に、その検知結果を制御に用いるシフトポジションに決定する。CPU22は、残りの2つの検知結果が不一致となる状態の継続時間が規定時間以上となる場合、制御に用いるシフトポジションをNポジションとする。CPU22は、不一致となるときの検知結果にNポジションが含まれる場合に含まれない場合よりも規定時間を長くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速装置を備えた車両に適用され、
前記車両は、シフト操作部材、および2つ以上のシフトポジションセンサを備え、
前記シフト操作部材は、複数のポジションのそれぞれに変位可能であって且つ、1つ以上の走行ポジションへと変位する際、ニュートラルポジションを経由するものであり、
前記2つ以上のシフトポジションセンサは、それぞれ、前記シフト操作部材の変位を検知するものであり、
一致判定処理および決定処理を実行し、
前記一致判定処理は、前記2つ以上のシフトポジションセンサのそれぞれの検知結果が一致するか否かを判定する処理であり、
前記決定処理は、前記一致判定処理によって一致すると判定される場合、当該検知結果にかかるシフトポジションを制御に用いるシフトポジションとして決定する処理であって且つ、フェールセーフ処理を含み、
前記フェールセーフ処理は、前記一致判定処理によって一致しないと判定される状態が規定時間以上継続する場合、ニュートラルポジションを制御に用いるシフトポジションとして決定する処理であり、
前記規定時間を、前記検知結果の中にニュートラルポジションを検知した結果がある場合にない場合よりも長くした車両用シフトポジション決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シフトポジション決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、シフトレバーの操作がなされた後、ユーザがシフトレバーを解放すると、中立位置に復帰するシフトレバーが記載されている。中立位置と、DポジションおよびRポジションとの間には、Nポジションが存在する。したがって、ユーザがシフトレバーを中立位置からDポジションまたはRポジションに変位させる場合、Nポジションを経由する。そして、ユーザがシフトレバーを解放すると、シフトレバーが中立位置に戻る。
【0003】
また、同文献には、シフトレバーの位置を検知するセンサを複数備え、センサに異常が生じる場合には、Nポジションに切り替えるフェールセーフ処理を実行することが記載されている(段落「0004」)。また、同文献には、センサから出力される信号が固着する異常が生じる場合には、シフトレバーの操作がなされることで初めて異常が発覚することが記載されている。これは、そのような異常が生じる場合、シフトレバーの操作によって、センサの検知結果に不一致が生じることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数のセンサのそれぞれの個体差および経年劣化によって、それらセンサの応答性には差異が生じうる。そのため、シフトレバーが操作される場合には、一時的に複数のセンサの検知結果に不一致が生じるおそれがある。特に、上記構成においてシフトレバーをDポジションおよびRポジションのいずれかに変位させる場合には、検知結果がNポジションおよびDポジションの双方を含んだり、NポジションおよびRポジションの双方を含んだりする不一致が生じうる。そしてその場合にNポジションに切り替えたのでは、センサが正常であるにもかかわらず、車両を走行させることができなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
変速装置を備えた車両に適用され、前記車両は、シフト操作部材、および2つ以上のシフトポジションセンサを備え、前記シフト操作部材は、複数のポジションのそれぞれに変位可能であって且つ、1つ以上の走行ポジションへと変位する際、ニュートラルポジションを経由するものであり、前記2つ以上のシフトポジションセンサは、それぞれ、前記シフト操作部材の変位を検知するものであり、一致判定処理および決定処理を実行し、前記一致判定処理は、前記2つ以上のシフトポジションセンサのそれぞれの検知結果が一致するか否かを判定する処理であり、前記決定処理は、前記一致判定処理によって一致すると判定される場合、当該検知結果にかかるシフトポジションを制御に用いるシフトポジションとして決定する処理であって且つ、フェールセーフ処理を含み、前記フェールセーフ処理は、前記一致判定処理によって一致しないと判定される状態が規定時間以上継続する場合、ニュートラルポジションを制御に用いるシフトポジションとして決定する処理であり、前記規定時間を、前記検知結果の中にニュートラルポジションを検知した結果がある場合にない場合よりも長くした車両用シフトポジション決定装置である。
【0007】
上記構成では、検知結果が一致しないと判定される状態が規定時間以上継続する場合に、ニュートラルポジションを制御に用いるシフトポジションに決定する。これにより、シフトポジションセンサに異常が生じた場合にフェールセーフ処理を実行できる。ところで、上記構成では、上記1つ以上の走行ポジションへとシフトレバーを操作する場合にNポジションを経由する。そのため、走行ポジションへとシフトレバーを操作する際、2つ以上のシフトポジションセンサのそれぞれの検知結果の応答遅れに差異が生じる場合、検知結果に不一致が生じる。しかし、シフトポジションセンサが正常であれば、その不一致は速やかに解消される。そこで上記構成では、検知結果が一致しない場合であって且つ検知結果にNポジションが含まれる場合に含まれない場合よりも規定時間を長くした。これにより、実際にはシフトポジションセンサが正常であるにもかかわらず、誤ってフェールセーフ処理が実行されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態にかかる車両の駆動系および制御装置の構成を示す図。
【
図2】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図3】同実施形態にかかる作用を説明するタイムチャート。
【
図4】同実施形態にかかる作用を説明するタイムチャート。
【
図5】同実施形態にかかる作用を説明するタイムチャート。
【
図6】同実施形態にかかる作用を説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示す車両VCは、車両VCの推力生成装置としての原動機10を備えている。原動機10は、内燃機関または、内燃機関および回転電機を備える。原動機10の出力軸は、変速装置12の入力軸12aに機械的に連結されている。変速装置12の出力軸12bは、駆動輪14に機械的に連結されている。
【0010】
制御装置20は、制御対象としての変速装置12の制御量である変速比を制御する。制御装置20は、CPU22、ROM24、周辺回路26、および通信線28を備えている。CPU22、ROM24、および周辺回路26は、通信線28を介して互いに通信可能とされている。なお、周辺回路26は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路、電源回路、およびリセット回路等を含む。制御装置20は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22が実行することにより変速比を制御する。
【0011】
制御装置20は、シフトレバー30の操作によって指定されるシフトポジションに基づき、変速比を制御する。シフトレバー30は、ドライブポジション(Dポジション)、ニュートラルポジション(Nポジション)、リバースポジション(Rポジション)、およびブレーキポジション(Bポジション)を指示するためのシフト操作部である。
図1には、Dポジション、Nポジション、Rポジション、およびBポジションが、それぞれ、「D」、「N」、「R」、および「B」と記載されている。ここで、Dポジションは、前進走行のポジションである。Nポジションは、原動機10と駆動輪14との動力伝達を遮断するポジションである。Rポジションは、後退走行のポジションである。Bポジションは、エンジンブレーキを生じさせるポジションである。
【0012】
なお、パーキングポジション(Pポジション)は、ユーザによるPスイッチ42の操作によって選択される。詳しくは、Pスイッチ42が操作されると、同操作に応じた出力信号Dpを取得した制御装置20が、制御に用いるシフトポジションをPポジションとする。
【0013】
シフトレバー30は、図中、「H」にて示すHポジションに自動で復帰する機構を有する。たとえば、ユーザがDポジションを選択する場合、Hポジションに位置するシフトレバー30がNポジションを経由してDポジションまで操作される。そしてユーザがシフトレバー30を解放すると、シフトレバー30は、自然にHポジションに戻る。そのため、制御装置20は、シフトポジションセンサ40a~40cの出力信号Da,Db,Dcに基づき、シフトレバー30の変位を監視する。
【0014】
制御装置20は、シフトポジションセンサ40a~40cが正常の場合、それらの検知結果に基づき、シフトレバー30の操作によってユーザが指定したシフトポジションを決定する。制御装置20は、シフトポジションセンサ40a~40cのいずれか1つに異常が生じる場合、表示器44を操作して、その旨をユーザに通知する。そして、制御装置20は、残りの2つのセンサの検知結果に基づき、シフトポジションを決定する。
【0015】
図2に、シフトポジションセンサ40a~40cのいずれか1つに異常が生じた場合の処理の手順を示す。
図2に示す処理は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって、各処理のステップ番号を表現する。
【0016】
図2に示す一連の処理において、CPU22は、まずシフトポジションセンサ40a~40cのいずれか1つに異常が生じているときであるか否かを判定する(S10)。CPU22は、異常が生じていると判定する場合(S10:YES)、残りの2つセンサによるシフトポジションの検知結果が異なるか否かを判定する(S12)。すなわち、CPU22は、たとえばシフトポジションセンサ40cの異常が確定している場合、シフトポジションセンサ40a,40bの出力信号Da,Dbが異なるか否かを判定する。そして、CPU22は、それら一対の検知結果が一致すると判定する場合(S12:NO)、検知結果がNポジション以外であるか否かを判定する(S14)。CPU22は、Nポジション以外であると判定する場合(S14:YES)、変速装置12を制御するうえで用いる変数としてのシフトポジションに、一致した検知結果を代入する(S16)。すなわち、CPU22は、シフトレバー30の操作によって指示されたシフトポジションがそれら2つのセンサの検知結果であるとして、同検知結果を実際のシフトポジションに採用する。
【0017】
一方、CPU22は、Nポジションであると判定する場合(14:NO)、2つのセンサの検知結果がNポジションで一致している状態の継続時間が第1閾値T1に達したか否かを判定する(S18)。この処理は、制御に用いるシフトポジションをNポジションに切り替える条件が成立するか否かを判定する処理である。すなわち、シフトレバー30をDポジションまたはRポジションに操作する場合、Nポジションを経由する。そのため、2つのセンサの検知結果が一致することで直ちにNポジションに切り替えたのでは、ユーザの意思に反した切り替えとなるおそれがある。そのため、Nポジションで一致している状態の継続時間が第1閾値T1以上となることを、Nポジションへの切り替えの条件とする。CPU22は、第1閾値T1以上経過したと判定する場合(S18:YES)、S16の処理に移行する。
【0018】
一方、CPU22は、残りの2つセンサによるシフトポジションの検知結果が異なると判定する場合(S12:YES)、制御に用いるシフトポジションがPポジションであるか否かを判定する(S20)。そして、CPU22は、Pポジションであると判定する場合(S20:NO)、Pポジションを維持する(S22)。すなわち、CPU22は、2つのセンサの検知結果が一致しない場合、シフトレバー30がHポジションからどこに向けて操作されたのか不明であるとして、Pポジションを維持する。
【0019】
これに対し、CPU22は、制御に用いるシフトポジションがPポジションではないと判定する場合(S20:YES)、2つのセンサの検知結果のいずれかがNポジションであるか否かを判定する(S24)。そして、CPU22は、2つのセンサの検知結果のいずれもNポジションではないと判定する場合(S24:NO)、2つのセンサの検知結果が異なる状態の継続時間が第2閾値T2に達したか否かを判定する(S26)。そしてCPU22は、第2閾値T2に達したと判定する場合(S26:YES)、変速装置12を制御するうえで用いる変数としてのシフトポジションに、Nポジションを代入する(S28)。この処理は、前進と後退とのうちのユーザの意思と反対のポジションによる制御がなされることを回避することを狙ったものである。
【0020】
一方、CPU22は、2つのセンサの検知結果のいずれかがNポジションであると判定する場合(S24:YES)、S30の処理に移行する。CPU22は、S30の処理において、2つのセンサの検知結果が異なって且ついずれかの検知結果がNポジションである状態の継続時間が第3閾値T3に達したか否かを判定する。第3閾値T3は、第2閾値T2よりも大きい値に設定されている。そしてCPU22は、第3閾値T3に達したと判定する場合(S30:YES)、S28の処理に移行する。
【0021】
なお、CPU22は、S16,S22,S28の処理を完了する場合と、S10,S18,S26,S30の処理において否定判定する場合と、には、
図2に示した一連の処理を一旦終了する。
【0022】
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
図3~6に、シフトポジションセンサ40cに異常が生じた旨の判定が確定しているときの
図2に示した処理を例示する。
【0023】
図3は、シフトポジションがRポジションである状態においてシフトレバー30がDポジションに操作される場合の処理を示す。また、
図3は、シフトポジションセンサ40a,40bが正常である場合における
図2に示した処理を示す。
【0024】
図3に示すように、時刻t1にシフトレバー30の操作が開始されると、シフトポジションセンサ40aの出力信号Daは、Hポジションを検知しているときの値からNポジションを検知しているときの値に切り替わる。しかし、シフトポジションセンサ40bの出力信号Dbは、時刻t1よりも遅れた時刻t2において、Hポジションを検知しているときの値からNポジションを検知しているときの値に切り替わる。これは、シフトポジションセンサ40bの個体差または経年変化に起因した応答遅れのためである。ここで、応答遅れに起因してシフトポジションセンサ40a,40bの検知結果に不一致が生じる期間である、時刻t1~t2までの期間は、第3閾値T3よりも短い。そのため、CPU22は、制御に用いるシフトポジションをRポジションから変更しない。
【0025】
その後、時刻t3に、シフトレバー30がNポジションからDポジションに切り替わる。これに応じて、シフトポジションセンサ40aの出力信号Daは、Dポジションを示す値に切り替わる。しかし、シフトポジションセンサ40bの出力信号Dbは、時刻t3よりも遅れた時刻t4において、Dポジションを検知しているときの値に切り替わる。ここで、応答遅れに起因してシフトポジションセンサ40a,40bの検知結果に不一致が生じる期間である、時刻t3~t4までの期間は、第3閾値T3よりも短い。そのため、CPU22は、制御に用いるシフトポジションをRポジションから変更しない。ちなみに、時刻t2から時刻t3までの間隔は、シフトレバー30をHポジションからDポジションへと操作する際にNポジションを通過する時間間隔のため、上記第1閾値T1よりも短く、Nポジションへの切り替えはなされない。
【0026】
そして、CPU22は、時刻t4に、シフトポジションセンサ40a,40bの出力信号Da,Dbが、Dポジションを示す値で一致することにより、シフトポジションをDポジションに切り替える。
【0027】
このように、Nポジションを経由する過渡時においては、上記第3閾値T3の設定によって、残りのシフトポジションセンサ40a,40bのいずれかに異常が生じたと誤判定されることが抑制される。そのため、Dポジションへの切り替えが意図されているにもかかわらず、Nポジションに切り替えられることを抑制できる。
【0028】
図4は、シフトポジションがRポジションである状態においてシフトレバー30がDポジションに操作される場合の処理を示す。また、
図4は、シフトレバー30の操作途中で、シフトポジションセンサ40bの出力信号DbがRポジションを示す信号に固定される異常が生じた例を示す。なお、
図4において、時刻t3以前の動作は
図3と同様である。
【0029】
CPU22は、時刻t3に、シフトポジションセンサ40bの出力信号Dbが、Rポジションを示す値に切り替わると、シフトポジションセンサ40a,40bの検知結果が不一致であると判定する。そして、不一致となる状態の継続時間が第2閾値T2となる時刻t4において、シフトポジションをNポジションに切り替える。
【0030】
この場合、2つの検知結果にNポジションが含まれないことから、検知結果が不一致となることにより、迅速にNポジションに切り替えることができる。
図5は、シフトポジションがRポジションである状態においてシフトレバー30がDポジションに操作される場合の処理を示す。また、
図5は、シフトレバー30の操作途中で、シフトポジションセンサ40bの出力信号DbがNポジションを示す信号に固定される異常が生じた例を示す。なお、
図5において、時刻t3以前の動作は
図3と同様である。
【0031】
CPU22は、時刻t3に、シフトポジションセンサ40aの出力信号Daが、Dポジションを示す値に切り替わると、シフトポジションセンサ40a,40bの検知結果が不一致であると判定する。そして、不一致となる状態の継続時間が第3閾値T3となる時刻t4において、シフトポジションをNポジションに切り替える。
【0032】
このように、2つの検知結果が不一致であって且ついずれかがNポジションである場合であっても、その状態が第3閾値T3以上継続することにより、Nポジションに切り替えることができる。
【0033】
図6は、シフトポジションがPポジションである状態においてシフトレバー30がDポジションに操作される場合の処理を示す。また、
図6は、シフトレバー30の操作途中で、シフトポジションセンサ40bの出力信号DbがRポジションを示す信号に固定される異常が生じた例を示す。
【0034】
図6に示すように、時刻t1にシフトレバー30の操作が開始されると、シフトポジションセンサ40aの出力信号Daは、Hポジションを検知しているときの値からNポジションを検知しているときの値に切り替わる。しかし、シフトポジションセンサ40bの出力信号Dbは、時刻t1よりも遅れた時刻t2において、Hポジションを検知しているときの値からNポジションを検知しているときの値に切り替わる。そのため、CPU22は、時刻t1~t2の期間、シフトポジションセンサ40a,40bの検知結果が不一致であると判定する。しかし、CPU22は、現在のシフトポジションがPポジションであることから、現在のシフトポジションを維持する。
【0035】
その後、時刻t3に、シフトレバー30がDポジションに到達する。これにより、シフトポジションセンサ40aの出力信号Daは、Dポジションを示す値に切り替わるが、シフトポジションセンサ40bに異常が生じていることから、その出力信号DbがRポジションを示す値となる。そのため、CPU22は、時刻t3以降、シフトポジションセンサ40a,40bの検知結果が不一致であると判定する。しかし、CPU22は、現在のシフトポジションがPポジションであることから、現在のシフトポジションを維持する。
【0036】
このように、現在のポジションがPポジションである状態でシフトポジションセンサ40a,40bの検知結果に不一致が生じる場合には、Pポジションを維持することにより、誤ってPポジションが解除されることを抑制できる。
【0037】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。車両用シフトポジション決定装置は、制御装置20に対応する。シフト操作部材は、シフトレバー30に対応する。1つ以上の走行ポジションは、DポジションおよびRポジションに対応する。「2つ以上のシフトポジションセンサ」は、
図3~
図6におけるシフトポジションセンサ40a,40bに対応する。一致判定処理は、S12の処理に対応する。決定処理は、S14~S30の処理に対応する。フェールセーフ処理は、S20~S30の処理に対応する。ニュートラルポジションを検知した結果がない場合の規定時間は、第2閾値T2に対応する。ニュートラルポジションを検知した結果がある場合の規定時間は、第3閾値T3に対応する。
【0038】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0039】
・HポジションからNポジションを経由することで変位可能な走行ポジションとしては、DポジションおよびRポジションに限らない。たとえば、DポジションおよびRポジションの2つのうちのいずれか1つであってもよい。またたとえばBポジションであってもよい。さらにたとえば、Dポジション、RポジションおよびBポジションの3つであってもよい。またたとえば、DポジションおよびBポジションと、RポジションおよびBポジションとのいずれかであってもよい。もっとも、Nポジションを経由することで変位可能な走行ポジションとしては、Dポジション、RポジションおよびBポジションに限らない。
【0040】
・シフトレバー30としては、解放されることにより、中立位置としてのHポジションに復帰するものに限らない。たとえば、Dポジション、Rポジション等に変位されると、その位置にとどまる場合であっても、DポジションおよびRポジションの一方から他方に変位する際にNポジションを経由する場合には、第3閾値T3の設定が有効である。
【0041】
・S14の処理において肯定判定される場合に直ちにS16の処理を実行することは必須ではない。たとえば、同肯定判定される状態の継続時間が所定値以上である場合にS16の処理を実行してもよい。その場合、所定値は、第1閾値よりも小さい値とする。
【0042】
・上記実施形態では、第2閾値T2と第1閾値T1との大小関係について特に限定しなかったが、たとえば、第2閾値T2を第1閾値T1よりも小さい値としてもよい。
・原動機10が内燃機関を含むことは必須ではない。
【符号の説明】
【0043】
10…原動機
12…変速装置
12a…入力軸
12b…出力軸
14…駆動輪
20…制御装置
30…シフトレバー
40a,40b,40c…シフトポジションセンサ