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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191801
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20221221BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
E04B1/76 200B
E04B1/80 100P
E04B1/76 500Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100252
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】植村 敏正
(72)【発明者】
【氏名】福井 香里
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA02
2E001DB02
2E001DD01
2E001FA03
2E001FA14
2E001FA15
2E001FA16
2E001ND17
(57)【要約】
【課題】屋根直下の空間の環境を改善できる、建築物を提供する。
【解決手段】建築物は、フラットに構成される屋根10を有する。屋根10は、屋根下地材11と、屋根下地材11の上に配置される断熱層12と、断熱層12の上に配置される支持板13と、支持板13の上に配置されて支持板13に固定される勾配層14と、勾配層14の上に設けられる防水層15と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットに構成される屋根を有する建築物であって、
前記屋根は、屋根下地材と、前記屋根下地材の上に配置される断熱層と、前記断熱層の上に配置される支持板と、前記支持板の上に配置されて前記支持板に固定される勾配層と、前記勾配層の上に設けられる防水層と、を備える、
建築物。
【請求項2】
前記屋根の下方に設けられる第1室を備え、
前記第1室は、前記屋根下地材によって構成される天井と、内壁材によって構成される内壁面とを有し、前記内壁材は、前記屋根下地材を支持する軸部材の下面よりも高い位置まで延びる
請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
天井裏室を介して前記屋根の下方に設けられる第2室を備え、
前記第2室と前記天井裏室とは、前記第2室と前記天井裏室との間で空気が流通するように、天井板によって仕切られ、
前記第2室は、前記天井板によって構成される天井と、内壁材によって構成される内壁面とを有し、
前記内壁材は、前記屋根下地材を支持する軸部材の下面よりも高い位置まで延びる
請求項1に記載の建築物。
【請求項4】
天井裏室を介して前記屋根の下方に設けられる第2室を備え、
前記第2室と前記天井裏室とは、断熱材が積層される天井板によって仕切られる
請求項1に記載の建築物。
【請求項5】
前記断熱層は、前記屋根下地材の全面を覆うように構成される
請求項1~4のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項6】
前記断熱層は、前記屋根下地材の一部の領域を覆うように構成され、
前記屋根下地材の上に配置される追加勾配層を更に備え、
前記勾配層と前記追加勾配層とは、前記勾配層の上面と前記追加勾配層の上面とが連続するように、構成される
請求項1~4のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項7】
前記断熱層は、ベース部と、前記ベース部の上面よりも高い位置に配置される上面を有する少なくとも1つの段部とを有し、
前記勾配層は、前記ベース部に第1支持板を介して配置される第1勾配部と、前記段部に第2支持板を介して配置される第2勾配部とを有し、
前記第1勾配部と前記第2勾配部とは、前記第1勾配部の上面と前記第2勾配部の上面とが連続するように、構成される
請求項1~6のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項8】
前記建築物の外壁に設けられて前記屋根まで延びる排水管を備え、
前記屋根は、一方向に10m以上にわたって傾斜する1つの傾斜面を有し、
前記排水管は、前記建築物において、前記屋根の傾斜面の下流端が配置される第1外壁面に配置される
請求項6または7に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラット屋根を有する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フラット屋根の構造が開示されている。フラット屋根は、金属成形板と、補強板と、勾配断熱材と、防水シートとを備える。金属成形板、補強板、勾配断熱材、および、防水シートは、梁の上に順に積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-88774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、屋根直下の空間は、夏場、高温高湿になり易い。例えば、夏場、屋根直下での天井裏にカビが発生する虞がある。また、天井裏に冷媒配管が配置される場合、冷媒配管が結露し、冷媒配管からに落ちる水によって天井が濡れる虞がある。このようなことから、屋根直下の空間環境の改善が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する建築物は、フラットに構成される屋根を有する建築物であって、前記屋根は、屋根下地材と、前記屋根下地材の上に配置される断熱層と、前記断熱層の上に配置される支持板と、前記支持板の上に配置されて前記支持板に固定される勾配層と、前記勾配層の上に設けられる防水層と、を備える。この構成によれば、屋根の断熱性が向上することによって屋根直下の空間に熱が伝達することが抑制されるため、屋根直下の空間の環境を改善できる。
【0006】
(2)上記(1)の建築物において、前記屋根の下方に設けられる第1室を備え、前記第1室は、前記屋根下地材によって構成される天井と、内壁材によって構成される内壁面とを有し、前記内壁材は、前記屋根下地材を支持する軸部材の下面よりも高い位置まで延びる。
【0007】
この構成によれば、第1室は、屋根下地材まで広がるため、屋根下地材の下に天井板を設ける場合に比べて、室内を広くできる。また、内壁材が屋根下地材の近くまで延びるため、室内の断熱性を向上できる。
【0008】
(3)上記(1)の建築物において、天井裏室を介して前記屋根の下方に設けられる第2室を備え、前記第2室と前記天井裏室とは、前記第2室と前記天井裏室との間で空気が流通するように、天井板によって仕切られ、前記第2室は、前記天井板によって構成される天井と、内壁材によって構成される内壁面とを有し、前記内壁材は、前記屋根下地材を支持する軸部材の下面よりも高い位置まで延びる。
【0009】
この構成によれば、内壁材が屋根下地材の近くまで延びるため、室内の断熱性を向上できる。第2室と天井裏室との間で空気が流通するため、天井裏室は、第2室と同じ環境になる。また、断熱性が高い屋根と内壁材とによって外部からの熱の伝達が抑制されるため、天井裏室に熱がこもることが抑制される。このようにして、天井裏室の環境が改善される。
【0010】
(4)上記(1)の建築物において、天井裏室を介して前記屋根の下方に設けられる第2室を備え、前記第2室と前記天井裏室とは、断熱材が積層される天井板によって仕切られる。
【0011】
この構成によれば、断熱性が高い屋根によって外部からの熱の伝達が抑制されるため、天井裏室に熱がこもることが抑制される。天井板には断熱材が積層されているため、第2室の断熱性を向上できる。
【0012】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つの建築物において、前記断熱層は、前記屋根下地材の全面を覆うように構成される。この構成によれば、屋根直下の空間に外部から熱が伝わることを抑制できるため、屋根直下の空間の環境を改善できる。
【0013】
(6)上記(1)~(4)のいずれか1つの建築物において、前記断熱層は、前記屋根下地材の一部の領域を覆うように構成され、前記屋根下地材の上に配置される追加勾配層を更に備え、前記勾配層と前記追加勾配層とは、前記勾配層の上面と前記追加勾配層の上面とが連続するように、構成される。この構成によれば、屋根の傾斜面は、勾配層の上面と追加勾配層の上面とによって構成されるため、屋根の傾斜面を広くできる。
【0014】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つの建築物において、前記断熱層は、ベース部と、前記ベース部の上面よりも高い位置に配置される上面を有する少なくとも1つの段部とを有し、前記勾配層は、前記ベース部に第1支持板を介して配置される第1勾配部と、前記段部に第2支持板を介して配置される第2勾配部とを有し、前記第1勾配部と前記第2勾配部とは、前記第1勾配部の上面と前記第2勾配部の上面とが連続するように、構成される。この構成によれば、屋根の傾斜面は、第1勾配部の上面と第2勾配部の上面とによって構成されるため、屋根の傾斜面を広くできる。
【0015】
(8)上記(6)または(7)の建築物において、前記建築物の外壁に設けられて前記屋根まで延びる排水管を備え、前記屋根は、一方向に10m以上にわたって傾斜する1つの傾斜面を有し、前記排水管は、前記建築物において、前記屋根の傾斜面の下流端が配置される第1外壁面に配置される。
【0016】
建築物が、傾斜方向の長さが10m以上である屋根を有する場合、屋根面は、2つに分割される。2つの傾斜面は、互いに反対方向に傾斜する。このようなことから、排水管は、建築物の2つの外壁面に配置される。このような建築物の場合、多方向から排水管が見えるようになり、デザイン性に欠ける。この点、上記構成によれば、屋根の傾斜面の下流端が配置される第1外壁面に配置される。排水管は、第1外壁面に配置される。このため、第1外壁面を正面とする方向と反対の方向から建築物を見たとき、排水管は見えない。このように、建築物のデザイン性を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の建築物によれば、屋根直下の空間の環境を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の建築物の模式図。
図2】第1実施形態について、屋根の断面図。
図3】第2実施形態について、屋根の断面図。
図4】第3実施形態について、屋根の断面図。
図5】第4実施形態について、屋根の断面図。
図6】第5実施形態について、屋根の一例の断面図。
図7】第5実施形態について、屋根の他の例の断面図。
図8】建築物の参考例の平面図。
図9】第6実施形態について、建築物の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1および図2を参照して、本実施形態の建築物1を説明する。
建築物1は、フラットに構成される屋根10を有する。建築物1は、基礎2と、軸組3と、側壁4と、屋根10と、を備える。
【0020】
側壁4は、建築物1の側部を構成する。屋根10は、建築物1の上部を構成する。側壁4および屋根10は、軸組3によって支持される。軸組3は、軸組工法または枠組壁工法によって組まれる。軸組3は、ラーメン構造、または、梁勝ちラーメン構造を備えてもよい。軸組3は、軸部材5に組付けによって構成される。軸部材5は、梁、桁、および柱を含む。側壁4は、内壁材18と外壁材19とを有する。内壁材18と外壁材19との間には、断熱材17が設けられる。
【0021】
屋根10は、屋根下地材11と、断熱層12と、支持板13と、勾配層14と、防水層15と、を備える。
屋根下地材11は、軸組3を構成する軸部材5のうちで上部に配置されて水平に延びる部材によって支持される。屋根下地材11は、耐火性、および、断熱性を有する部材によって構成される。屋根下地材11は、軽量であることが好ましい。屋根下地材11の一例は、ALCパネルである。ALCは、autoclaved lightweight aerated concreteの略である。
【0022】
断熱層12は、屋根下地材11の上に配置される。断熱層12の上面は水平に構成される。断熱層12は、屋根下地材11の全面を覆うように構成される。
断熱層12は、断熱性樹脂材によって構成される。断熱性樹脂材として、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリフェノール樹脂、ウレタン樹脂、が挙げられる。断熱性樹脂材は、軽量であり、低吸水性であることが好ましい。断熱性樹脂材の一例として、押出法ポリスチレンフォームが使用される。断熱層12には、支持板13を支持する複数の固定材16が設けられる。複数の固定材16は、所定の間隔をあけて配置されて、屋根下地材11にビスで固定される。断熱性樹脂材は、固定材16の間に配置される。固定材16は、木材、または合板によって構成される。例えば、断熱層12の厚みは、30mm以上120mm以下である。
【0023】
支持板13は、断熱層12の上に配置される。支持板13は、支持板13の上面が水平となるように設けられる。支持板13は、ビスまたは釘によって固定材16に固定される。支持板13は、勾配層14を支持する。支持板13は、ビスを打ち込むことができる部材であればよい。例えば、支持板13は、サイディング、または合板によって構成される。
【0024】
勾配層14は、屋根10の勾配を構成する層である。勾配は、横寸法に対する縦寸法の比率として定義される。一例では、勾配は、10/2200以上10/800以下である。勾配層14は、支持板13の上に配置されて支持板13に固定される。一例では、勾配層14は、所定の勾配を有する複数の勾配材によって構成される。複数の勾配材は、横方向に並べられる。一例では、勾配材は、複数の層を有する。例えば、勾配材は、ベース層、断熱樹脂層、不燃層、および、防水樹脂層を有する。勾配材は、ビスによって支持板13に固定される。勾配層14の最大厚は、勾配層14を固定するビスの長さによって規定される。例えば、勾配層14の最大厚は、140mm以下である。勾配層14の最小厚は、5mm以上である。
【0025】
防水層15は、勾配層14の上に設けられる。防水層15は、防水材の塗布、または、防水シートの貼り付けによって構成される。防水材として、ウレタン樹脂、または、FRP樹脂が挙げられる。FRP樹脂は、ガラス繊維などの補強材を含む樹脂である。防水シートとして、塩化ビニールシート、ゴム製シートが挙げられる。防水シートは、屋根下地材11に固定されるディスクに溶着される。ディスクは、金属板と樹脂との積層板である。ディスクは、勾配層14の上に置かれる。ディスクは、ビスまたは釘の打ち込みによって支持板13または屋根下地材11に固定される。
【0026】
図1を参照して、建築物1の構造を説明する。
建築物1において、屋根10の下方に設けられる第1室20を備える。本実施形態の建築物1は、天井裏室を有しない。
【0027】
第1室20は、天井21と、内壁面22とを有する。天井21は、屋根下地材11によって構成される。屋根下地材11の下面に化粧板が貼られてもよい。内壁面22は、内壁材18によって構成される。内壁材18は、上下方向に延びる軸部材5によって支持される。内壁材18は、屋根下地材11を支持する軸部材5の下面よりも高い位置まで延びる。具体的には、内壁材18の上端は、軸部材5としての梁または桁の下面よりも上方に位置する。内壁材18の上端と屋根下地材11との間の隙間は、パテ、コーキング材、またはシーリング材によって埋められる。内壁材18の一例は、石膏ボードである。内壁材18には、壁紙などが貼られる。
【0028】
第1室20には、天井21の下に配管25およびダクト26が配置される。配管25の例として、空気調和機の冷媒配管を通す配管、電気配線を通す配管、および、通信線を通す配管など、が挙げられる。ダクト26は、換気のための通路である。
【0029】
本実施形態の作用を説明する。
屋根10は、断熱層12を有する。このため、屋根直下に設けられる空間に熱が伝わることが抑制される。本実施形態では、屋根10の直下に第1室20が設けられる。天井裏室が設けられていないため、第1室20を広くできる。配管25およびダクト26は、第1室20と同じ環境に置かれる。このため、夏場において、配管25およびダクト26の周囲が高温高湿状態になることが抑制される。このようにして、配管25およびダクト26に結露が生じることが抑制される。
【0030】
本実施形態の効果を説明する。
(1)屋根10は、屋根下地材11と、屋根下地材11の上に配置される断熱層12と、断熱層12の上に配置される支持板13と、支持板13の上に配置されて支持板13に固定される勾配層14と、勾配層14の上に設けられる防水層15と、を備える。
【0031】
この構成によれば、屋根10の断熱性が向上することによって屋根直下の空間に熱が伝達することが抑制されるため、屋根直下の空間の環境を改善できる。例えば、冷媒配管を通す配管25は、冷媒によって冷やされるため、結露が生じ易い。特に、配管25が配置される空間の環境が高温高湿状態になると、多量の結露が生じ、配管25から水が滴り落ちる虞がある。この点で、上記構成によれば、夏場、屋根直下の空間が高温高湿状態になることを抑制されるため、冷媒配管を通す配管に結露が生じることが抑制される。また、高温高湿状態の場合、配管およびダクトを構成する部材を劣化させるが、上記構成によれば、このような劣化を抑制できる。また、勾配層14が支持板13に固定されるため、風による勾配層14の捲れ、または、勾配層14の飛散を抑制できる。
【0032】
(2)建築物1の第1室20は、屋根下地材11によって構成される天井21と、内壁材18によって構成される内壁面22とを有する。内壁材18は、屋根下地材11を支持する軸部材5の下面よりも高い位置まで延びる。
【0033】
この構成によれば、第1室20は、屋根下地材11まで広がるため、屋根下地材11の下に天井板を設ける場合に比べて、室内を広くできる。また、内壁材18が屋根下地材11の近くまで延びるため、室内の断熱性を向上できる。
【0034】
(3)断熱層12は、屋根下地材11の全面を覆うように構成される。
この構成によれば、屋根直下の空間に外部から熱が伝わることを抑制できるため、屋根直下の空間の環境を改善できる。
【0035】
<第2実施形態>
図3を参照して、本実施形態の建築物1を説明する。
本実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、共通する構成の説明を省略する。
【0036】
建築物1は、フラットに構成される屋根10を有する。
建築物1は、基礎2と、軸組3と、側壁4と、屋根10と、を備える。屋根10の構造は、第1実施形態と同じである。
【0037】
建築物1は、第2室32を備える。第2室32は、天井裏室30を介して屋根10の下方に設けられる。第2室32は、天井21と、内壁面22とを有する。天井21は、天井板31によって構成される。内壁面22は、内壁材18によって構成される。
【0038】
天井板31は、屋根下地材11に設けられる部材(例えば、野縁)に吊るされる。天井裏室30には、配管25およびダクト26が配置される。第2室32と天井裏室30とは、第2室32と天井裏室30との間で空気が流通するように、天井板31によって仕切られる。
【0039】
天井板31は、石膏ボードによって構成される。この場合、天井裏室30の通気のために、天井板31と内壁材18との間には、隙間が設けられる。天井板31は、金網構造の桟であってもよい。天井板31は、板材、または、樹脂板であってもよい。
【0040】
内壁材18は、天井板31よりも高い位置まで延びる。具体的には、内壁材18は、屋根下地材11を支持する軸部材5の下面よりも高い位置まで延びる。内壁材18の上端は、軸部材5としての梁または桁の下面よりも上方に位置する。内壁材18の上端と屋根下地材11との間の隙間は、パテ、コーキング材、またはシーリング材によって埋められる。
【0041】
本実施形態の効果を説明する。
本実施形態の建築物1は、第1実施形態と同様の屋根構造を有するため、第1実施形態に準じた効果を奏する。加えて、建築物1は、天井裏室30を介して屋根10の下方に設けられる第2室32を備える。第2室32と天井裏室30とは、第2室32と天井裏室30との間で空気が流通するように、天井板31によって仕切られる。内壁材18は、屋根下地材11を支持する軸部材5の下面よりも高い位置まで延びる。
【0042】
この構成によれば、内壁材18が屋根下地材11の近くまで延びるため、室内の気密性を向上できる。また、第2室32と天井裏室30との間で空気が流通するため、天井裏室30は、第2室32と同じ空調環境になり易くなる。また、断熱性が高い屋根10と内壁材18とによって外部からの熱の伝達が抑制されるため、天井裏室30に熱がこもることが抑制される。このようにして、天井裏室30の環境が改善される。
【0043】
<第3実施形態>
図4を参照して、本実施形態の建築物1を説明する。
本実施形態において、第2実施形態と共通する構成については、第2実施形態と同一の符号を付し、共通する構成の説明を省略する。
【0044】
実施形態の建築物1は、次の点で、第2実施形態の建築物1と相違する。第2実施形態では、第2室32と天井裏室30とは、両室の間で空気が流通するように天井板31によって仕切られるが、本実施形態では、第2室32と天井裏室30とは、両室の間で空気が流通しないように天井板31によって仕切られる。さらに、第2室32と天井裏室30とは、断熱材17が積層される天井板31によって仕切られる。内壁材18は、天井板31まで延びる。
【0045】
本実施形態の効果を説明する。
断熱性が高い屋根10によって外部からの熱の伝達が抑制されるため、天井裏室30に熱がこもることが抑制される。天井板31には断熱材17が積層されているため、第2室32の断熱性を向上できる。
【0046】
<第4実施形態>
図5を参照して、本実施形態の建築物1を説明する。本実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、共通する構成の説明を省略する。本実施形態の屋根10は、次の点で、第1実施形態の屋根10と異なる。
【0047】
屋根10において、断熱層12は、屋根下地材11の一部の領域を覆うように構成される。屋根10は、支持板13を介して断熱層12の上に配置される勾配層14に加えて、追加勾配層14Xを更に備える。追加勾配層14Xは、屋根下地材11の上に配置される。追加勾配層14Xは、勾配層14と同様に複数の勾配材によって構成される。追加勾配層14Xは、屋根下地材11において断熱層12によって覆われていない領域を覆う。勾配層14と追加勾配層14Xとは、勾配層14の上面と追加勾配層14Xの上面とが連続するように、構成される。勾配層14の上面と追加勾配層14Xの上面とは、面一の傾斜面を構成する。
【0048】
本実施形態の効果を説明する。
勾配層14を構成する勾配材はビスで固定されるため、勾配材の最大厚には制限がある。このため、勾配材について、傾斜方向の長さには制限がある。傾斜方向の長さとは、勾配の定義に使われる横寸法である。傾斜方向の長さの最大は、概ね10mである。このようなことから、従来技術では、屋根10において片流れの長さは10mに制限される場合がある。10m以上の広さの屋根10の場合、2つの傾斜面が山型または谷型に設けられる。各傾斜面は、10m以下に構成される。
【0049】
この点、本実施形態の構成によれば、屋根10の傾斜面は、勾配層14の上面と追加勾配層14Xの上面とによって構成されるため、屋根10の傾斜面を広くできる。具体的には、片流れの傾斜面を10m以上に構成できる。
【0050】
<第5実施形態>
図6および図7を参照して、本実施形態の建築物1を説明する。本実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、共通する構成の説明を省略する。本実施形態の屋根10は、次の点で、第1実施形態の屋根10と異なる。
【0051】
断熱層12は、ベース部41と、少なくとも1つの段部42とを有する。段部42は、ベース部41の上面よりも高い位置に配置される上面を有する。ベース部41の上面および段部42の上面は、水平に構成される。
【0052】
断熱層12は、複数の部材によって構成される。
一例では、図6に示されるように、断熱層12は、横方向に分割される。断熱層12は、ベース部41において段部42が設けられていない部分を含む第1ブロック12Aと、ベース部41において段部42が設けられている部分と段部42とを含む第2ブロック12Bとを備える。第1ブロック12Aの厚みは、第2ブロック12Bの厚みよりも小さい。第2ブロック12Bは、第1ブロック12Aに隣接するように配置される。
【0053】
勾配層14は、第1勾配部14Aと、第2勾配部14Bとを有する。第1勾配部14Aは、ベース部41において段部42が設けられていない部分に第1支持板13Aを介して配置される。第2勾配部14Bは、段部42に第2支持板13Bを介して配置される。第1支持板13Aおよび第2支持板13Bは、屋根下地材11の上に配置される固定材16(図2参照)にビスまたは釘で固定される。第1勾配部14Aは、勾配層14と同様に複数の勾配材によって構成される。第2勾配部14Bは、勾配層14と同様に複数の勾配材によって構成される。第1勾配部14Aと第2勾配部14Bとは、第1勾配部14Aの上面と第2勾配部14Bの上面とが連続するように、構成される。第1勾配部14Aの上面と第2勾配部14Bの上面とは、面一の傾斜面を構成する。
【0054】
他の例では、図7に示されるように、断熱層12は、上下方向に分割される。断熱層12は、ベース部41を含む第1層12Cと、段部42を含む第2層12Dとを備える。一例では、第1層12Cの厚みは、第2層12Dの厚みと等しい。第2層12Dは、第1層12Cの上面の一部分を残すようにして第1層12Cに積層される。第2層12Dは、中間支持板13Cを介して第1層12Cに積層される。中間支持板13Cは、屋根下地材11の上に配置される固定材16(図2参照)にビスまたは釘で固定される。第2層12Dは、段部42を構成する。
【0055】
勾配層14は、第1勾配部14Aと、第2勾配部14Bとを有する。第1勾配部14Aは、ベース部41において段部42が設けられていない部分に第1支持板13Aを介して配置される。第2勾配部14Bは、段部42に第2支持板13Bを介して配置される。第1支持板13Aは、屋根下地材11の上に配置される固定材16にビスまたは釘で固定される。第2支持板13Bは、第1支持板13Aの上に配置される固定材16にビスまたは釘で固定される。第1勾配部14Aは、勾配層14と同様に複数の勾配材によって構成される。第2勾配部14Bは、勾配層14と同様に複数の勾配材によって構成される。第1勾配部14Aと第2勾配部14Bとは、第1勾配部14Aの上面と第2勾配部14Bの上面とが連続するように、構成される。第1勾配部14Aの上面と第2勾配部14Bの上面とは、面一の傾斜面を構成する。
【0056】
本実施形態の効果を説明する。
第4実施形態で説明したように、従来技術では、屋根10において片流れの長さは10mに制限される場合がある。この点、本実施形態の構成によれば、屋根10の傾斜面は、第1勾配部14Aの上面と第2勾配部14Bの上面とによって構成されるため、屋根10の傾斜面を広くできる。具体的には、片流れの傾斜面を10m以上に構成できる。
【0057】
<第6実施形態>
図8および図9を参照して、本実施形態の建築物1を説明する。
本実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、共通する構成の説明を省略する。
【0058】
建築物1は、排水管45を備える。排水管45は、屋根10の水を地面または下水に導く。排水管45は、建築物1の外壁に設けられる。排水管45は、地面から屋根10まで延びる。排水管45は、建築物1において、屋根10の傾斜面の下流端が配置される外壁面50に配置される。
【0059】
図8を参照して、参考例の建築物1を説明する。参考例の建築物1の屋根10は、傾斜方向の長さが10m以上である。屋根10は、勾配材だけで勾配層が構成される。勾配材の傾斜方向の長さは10mに制限されるため、屋根面46は、2つに分割される。屋根面46は、10m未満の2つの傾斜面47を有する。2つの傾斜面47は、互いに反対方向に傾斜する。参考例の建築物1では、排水管45は、第1外壁面51と、第1外壁面51の反対側の第2外壁面52との両面に、設けられる。このような建築物1の場合、多方向から排水管45が見えるようになり、デザイン性に欠ける。
【0060】
図9を参照して、本実施形態の建築物1を説明する。屋根10は、一方向に10m以上にわたって傾斜する1つの傾斜面47を有する。屋根10は、第4実施形態または第5実施形態の構造を有する。具体的には、屋根10は、断熱層12と、勾配層14と、追加勾配層14Xとを有する。または、屋根10は、段部42を有する断熱層12と、第1勾配部14Aと、第2勾配部14Bとを有する。これらの構造によって、屋根面46は、一方向に10m以上にわたって傾斜する、片流れの傾斜面47に構成される。排水管45は、建築物1において、屋根10の傾斜面47の下流端が配置される第1外壁面51に配置される。排水管45は、建築物1の側面のうちで、第1外壁面51以外の面には設けられない。
【0061】
本実施形態の効果を説明する。
本実施形態の建築物1によれば、排水管45は、屋根10の傾斜面47の下流端が配置される第1外壁面51に配置される。このため、第1外壁面51を正面とする方向と反対の方向から建築物1を見たとき、排水管45は見えない。このように、建築物1のデザイン性を向上できる。
【0062】
<変形例>
上記各実施形態は、建築物1が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。建築物1は、上記各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0063】
・断熱層12は、複数の段部42を有してもよい。複数の段部42は、階段のように段々に構成される。例えば、ベース部41に段部42に準じた第1段部が設けられ、第1段部に段部42に準じた第2段部が設けられる。このような断熱層12は、3つのブロックによって構成されたり、上下に積層される3個の層によって構成されたりする。
【符号の説明】
【0064】
1…建築物
5…軸部材
10…屋根
11…屋根下地材
12…断熱層
13…支持板
13A…第1支持板
13B…第2支持板
14…勾配層
14A…第1勾配部
14B…第2勾配部
14X…追加勾配層
15…防水層
17…断熱材
18…内壁材
20…第1室
21…天井
22…内壁面
30…天井裏室
31…天井板
32…第2室
41…ベース部
42…段部
45…排水管
47…傾斜面
51…第1外壁面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9