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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191805
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】エンコーダ及び制御システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
G01D5/12 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100256
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小野 祥弥
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA01
2F077TT33
(57)【要約】
【課題】制御対象機器を保護することが可能なエンコーダ及び制御システムを提供する。
【解決手段】コントローラ(100)により駆動される制御対象機器(200)の動作を検出するエンコーダ(300)であって、制御対象機器(200)の動作を検出するセンシング部(310)と、センシング部(310)の検出結果から動作検出情報を生成する信号処理部(320)と、エンコーダ(300)内部の環境を検出して環境検出情報を生成する環境センサ部(330)と、コントローラ(100)との間で通信する通信部(340)と、制御部(301)と、を備え、制御部(301)は、動作検出情報と環境検出情報とを通信部(340)経由でコントローラ(100)に送信し、検出された環境が予め定められた条件に合致する場合、異常環境検出情報を生成し、異常環境検出情報を通信部(340)経由でコントローラ(100)に送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラ(100)により駆動される制御対象機器(200)の動作を検出するエンコーダ(300)であって、
前記制御対象機器の動作を検出するセンシング部(310)と、
前記センシング部(310)の検出結果から動作検出情報を生成する信号処理部(320)と、
前記エンコーダ(300)内部の環境を検出して環境検出情報を生成する環境センサ部(330)と、
前記コントローラ(100)との間で通信する通信部(340)と、
制御部(301)と、
を備え、
前記制御部(301)は、
前記動作検出情報を前記通信部(340)経由で前記コントローラ(100)に送信し、
検出された前記環境が予め定められた条件に合致する場合、異常環境検出情報を生成し、前記異常環境検出情報を前記通信部(340)経由で前記コントローラ(100)に送信する、
エンコーダ。
【請求項2】
前記環境センサ部(330)は、
相対湿度を検出する湿度センサ(330A)を備え、
前記湿度センサ(330A)により検出された相対湿度を用いて、前記エンコーダ(300)内部の環境として相対湿度に関する前記環境検出情報を生成する、
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
制御対象機器(200)の動作を検出して動作検出情報を生成すると共に、エンコーダ内部の環境を検出して環境検出情報を生成するエンコーダ(300)と、
前記エンコーダ(300)からの前記動作検出情報を参照して前記制御対象機器(200)を駆動するコントローラ(100)と、
を備え、
前記エンコーダ(300)は、
前記動作検出情報を前記コントローラ(100)に送信しており、
検出された前記環境が予め定められた条件に合致する場合、異常環境検出情報を生成し、前記異常環境検出情報を前記コントローラ(100)に送信し、
前記コントローラ(100)は、前記エンコーダ(300)から受信した前記異常環境検出情報に応じて前記制御対象機器(200)の動作を停止させる、
制御システム。
【請求項4】
制御対象機器(200)の動作を検出して動作検出情報を生成すると共に、エンコーダ内部の環境を検出して環境検出情報を生成するエンコーダ(300)と、
前記エンコーダ(300)からの前記動作検出情報を参照して前記制御対象機器(200)を駆動するコントローラ(100)と、
を備え、
前記エンコーダ(300)は、
前記エンコーダ(300)内部の環境として温度と相対湿度を検出して前記環境検出情報を生成し、
前記動作検出情報と前記環境検出情報とを前記コントローラ(100)に送信しており、
前記コントローラ(100)は、
前記エンコーダ(300)から受信した前記環境検出情報に含まれる前記温度と前記相対湿度とを参照して絶対湿度を算出し、
前記絶対湿度が予め定めた条件に合致すると判断した場合、前記制御対象機器(200)の動作を停止させる、
制御システム。
【請求項5】
前記コントローラ(100)は、
前記温度、前記相対湿度、及び算出した前記絶対湿度の履歴を管理しており、
前記条件として、
・前記絶対湿度が閾値を超えている、
・前記絶対湿度が上昇傾向にある、
・前記絶対湿度の上昇発生間隔が短くなる傾向にある、
・前記絶対湿度において前記温度が低下した場合に露点に達する、
のいずれかにより判断する、
請求項4に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンコーダ及び制御システムに関し、特に、制御対象機器の動作を検出するエンコーダの信頼性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、制御対象機器としての回転機器をコントローラにより制御する場合、センシング部を有するエンコーダにより回転軸の回転を検出し、得られた角度信号に基づいてコントローラが回転機器の制御演算を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-118637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたエンコーダは、温度センサと湿度センサとを備えており、温度変化と湿度変化とから自身の寿命を推測し、推測した寿命をコントローラに通知する機能を備えている。
【0005】
ところで、水中環境あるいは水に近い環境で使用されるエンコーダは防水加工されて構成されているが、老朽化だけでなく、振動や水圧変化などの外部要因により防水性が低下することがある。
【0006】
防水性の低下によりエンコーダの内部に水が浸入した場合、回路の短絡による故障により、コントローラに悪影響を及ぼすことになる。そして、制御対象機器の稼働中に、エンコーダに不具合が生じた場合、制御対象機器の機能喪失、または制御対象機器の破損を招く恐れがある。
【0007】
このため、エンコーダ内部への水の浸入をコントローラに迅速に伝える必要がある。しかし、エンコーダ内部の水の浸入をコントローラに迅速に伝える仕組みが存在していなかった。
【0008】
本発明は、制御対象機器の動作を検出するエンコーダの内部への水の浸入を検出することにより、コントローラと制御対象機器とを保護することが可能なエンコーダ及び制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)この発明に係るエンコーダは、コントローラにより駆動される制御対象機器の動作を検出するエンコーダであって、制御対象機器の動作を検出するセンシング部と、センシング部の検出結果から動作検出情報を生成する信号処理部と、エンコーダ内部の環境を検出して環境検出情報を生成する環境センサ部と、コントローラとの間で通信する通信部と、制御部と、を備え、制御部は、動作検出情報を通信部経由でコントローラに送信し、検出された環境が予め定められた条件に合致する場合、異常環境検出情報を生成し、異常環境検出情報を通信部経由でコントローラに送信する。
【0010】
この発明に係るエンコーダにおいて、環境センサ部は、相対湿度を検出する湿度センサを備え、湿度センサにより検出された相対湿度を用いて、エンコーダ内部の環境として相対湿度に関する環境検出情報を生成する。
【0011】
(2)この発明に係る制御システムは、制御対象機器の動作を検出して動作検出情報を生成すると共に、エンコーダ内部の環境を検出して環境検出情報を生成するエンコーダと、エンコーダからの動作検出情報を参照して制御対象機器を駆動するコントローラと、を備え、エンコーダは、動作検出情報をコントローラに送信しており、検出された環境が予め定められた条件に合致する場合、異常環境検出情報を生成し、異常環境検出情報をコントローラに送信し、コントローラは、エンコーダから受信した異常環境検出情報に応じて制御対象機器の動作を停止させる。
【0012】
(3)この発明に係る制御システムは、制御対象機器の動作を検出して動作検出情報を生成すると共に、エンコーダ内部の環境を検出して環境検出情報を生成するエンコーダと、エンコーダからの動作検出情報を参照して制御対象機器を駆動するコントローラと、を備え、エンコーダは、エンコーダ内部の環境として温度と相対湿度を検出して環境検出情報を生成し、動作検出情報と環境検出情報とをコントローラに送信しており、コントローラは、エンコーダから受信した環境検出情報に含まれる温度と相対湿度とを参照して絶対湿度を算出し、絶対湿度が予め定めた条件に合致すると判断した場合、制御対象機器の動作を停止させる。
【0013】
この発明に係る制御システムにおいて、コントローラは、温度、相対湿度、及び算出した絶対湿度の履歴を管理しており、条件として、絶対湿度が閾値を超えている、絶対湿度が上昇傾向にある、絶対湿度の上昇発生間隔が短くなる傾向にある、絶対湿度において温度が低下した場合に露点に達する、のいずれかにより判断する。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るエンコーダによれば、制御対象機器の動作を検出するエンコーダの内部への水の浸入を検出するため、コントローラと制御対象機器とを保護することが可能になる。
【0015】
この発明に係る制御システムによれば、制御対象機器の動作を検出するエンコーダの内部への水の浸入をコントローラ側で判断するため、コントローラと制御対象機器とを保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1におけるエンコーダを含む制御システムの構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1における制御システムの処理手順を示すフローチャートである。
図3】実施の形態2におけるエンコーダを含む制御システムの構成を示す構成図である。
図4】実施の形態2における制御システムの処理手順を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2における制御システムの条件判定及び対策決定について処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のエンコーダ及び制御システムの実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0018】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1における制御システム1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施の形態1におけるエンコーダ300を含む制御システム1の構成を示す構成図である。
【0019】
[制御システム1の構成]
図1において、制御システム1は、主に、コントローラ100と、制御対象機器200と、エンコーダ300とを備えている。
【0020】
コントローラ100は、エンコーダ300からの動作検出情報と環境検出情報とを参照して、駆動信号を制御対象機器200に供給する。コントローラ100は、制御対象機器200に駆動信号を供給することにより、制御対象機器200の状態、例えば、回転方向、回転速度、回転角度、回転停止などを制御する。
【0021】
制御対象機器200は、コントローラ100から供給される駆動信号を物理的運動に変換する機械要素であり、例えば、モータなどの回転機器が該当する。制御対象機器200が回転機器である場合、固定された状態の固定子と、固定子に対して回転可能な回転子と、回転子の回転を外部に供給可能な駆動軸とを備える。
【0022】
エンコーダ300は、制御対象機器200の動作を検出して動作検出情報を生成すると共に、エンコーダ300内部の環境を検出して環境検出情報を生成する。エンコーダ300には、制御部301と、センシング部310と、信号処理部320と、環境センサ部330と、通信部340と、記憶部350とが設けられている。
【0023】
制御部301は、エンコーダ300の各部を制御している。具体的には、制御部301は、動作検出情報と環境検出情報とを生成する制御、動作検出情報と環境検出情報とをコントローラ100へ送信する制御、環境が予め定められた条件に合致する場合に異常環境検出情報を生成してコントローラ100へ送信する制御、を行っている。
【0024】
センシング部310は、制御対象機器200の可動部に取り付けられ、制御対象機器200の動作を検出し、検出結果を信号処理部320へ供給する。例えば、センシング部310は、制御対象機器200が回転機器である場合、回転機器の回転軸の回転状態を検出するように設けられている。
【0025】
信号処理部320は、センシング部310の検出結果から、コントローラ100が処理可能な回転方向、回転速度及び回転角度などについての動作検出情報を生成し、生成した動作検出情報を通信部340へ供給する。
【0026】
環境センサ部330は、エンコーダ300内部の環境を検出し、コントローラ100が処理可能な環境検出情報を生成し、生成した環境検出情報を制御部301へ供給する。実施の形態1において、環境センサ部330は、エンコーダ300内のいずれかの位置に設けられた湿度センサ330Aを含んで構成されており、エンコーダ300内部の環境として相対湿度を検出して環境検出情報を生成し、生成した環境検出情報を制御部301へ供給する。
【0027】
通信部340は、コントローラ100との間で通信する通信手段である。通信部340は、制御部301の制御に従って、制御対象機器200の動作を検出した動作検出情報と、エンコーダ300内部の環境を検出した環境検出情報と、環境が予め定められた条件に合致する場合に生成される異常環境検出情報とを、コントローラ100に送信する。また、通信部340は、コントローラ100からリクエスト信号を受信し、受信したリクエスト信号を制御部301に供給する。
【0028】
記憶部350は、制御部301の制御に従って、環境センサ部330で生成される環境検出情報を履歴として記憶する。また、記憶部350は、異常環境検出情報を生成する際の予め定められた条件を記憶する。
【0029】
[実施形態1の制御システム1の信号処理手順]
次に、実施の形態1における制御システム1の信号処理手順について図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1における制御システム1の処理手順を示すフローチャートである。
【0030】
まず、ステップS111において、コントローラ100は、制御対象機器200に駆動信号を供給し、動作開始を指示する。この後、処理はステップS121に進む。
【0031】
ステップS121において、制御対象機器200は、コントローラ100から供給される駆動信号に応じて、回転運動等の所定の動作を行う。この後、処理はステップS131に進む。
【0032】
ステップS131において、エンコーダ300内のセンシング部310は、制御対象機器200の動作を検出し、検出結果を信号処理部320へ供給する。例えば、制御対象機器200が回転機器である場合、センシング部310は、回転機器の回転軸の回転状態を検出し、検出した回転状態についての検出結果を信号処理部320へ供給する。
信号処理部320は、センシング部310の検出結果から動作検出情報を生成し、生成した動作検出情報を通信部340へ供給する。例えば、制御対象機器200が回転機器である場合、信号処理部320は、センシング部310の検出結果から、角度情報を動作検出情報として生成し、生成した動作検出情報を通信部340へ供給する。この後、処理はステップS132に進む。
【0033】
ステップS132において、環境センサ部330は、湿度センサ330Aによるエンコーダ300内部の環境としての相対湿度に関する検出結果を用いて、相対湿度に関する環境検出情報を生成し、生成した環境検出情報を制御部301へ供給する。この環境検出情報には、相対湿度の値のほかに、検出時刻を含めてもよい。この後、処理はステップS133に進む。
【0034】
ステップS133において、通信部340は、信号処理部320により生成された動作検出情報と、環境センサ部330により生成された相対湿度に関する環境検出情報とをコントローラ100に送信する。通信部340は、動作検出情報と環境検出情報とを、予め定めたタイミングで所定のフォーマットに従って、シリアル通信等によりコントローラ100へ送信する。なお、タイミングによって、動作検出情報のみ送信、動作検出情報と環境検出情報の送信、のようにしてもよい。この後、エンコーダ300において処理はステップS134に進み、コントローラ100において処理はステップS112に進む。
【0035】
ステップS112において、コントローラ100は、シリアル通信等によりエンコーダ300から送られてくる動作検出情報と環境検出情報とを受信する。この後、処理はステップS113に進む。
【0036】
ステップS113において、コントローラ100は、エンコーダ300から受信した動作検出情報を処理して制御対象機器200の動作の制御を行うと共に、環境検出情報の確認または記憶を行う。
【0037】
一方、ステップS134において、エンコーダ300において、制御部301は、湿度センサ330Aにより検出された相対湿度が予め定められた条件に合致するかを判定する。予め定められた条件とは、エンコーダ300の内部に水が浸入した場合の初期の相対湿度を想定して決定されており、例えば、相対湿度70%等である。検出された相対湿度が予め定められた条件に到達していない場合(ステップS134でNO)は、ステップS131以降の処理を繰り返す。検出された相対湿度が予め定められた条件に合致する場合(ステップS134でYES)は、処理はステップS135に進む。
【0038】
ステップS135において、エンコーダ300では、内部への水の浸入を想定したアラームに相当する異常環境検出情報を、制御部301が生成する。制御部301は、この異常環境検出情報に、異常であることを示す状態情報のほかに、相対湿度の数値または検出時刻を含めてもよい。制御部301は、生成した異常環境検出情報を、通信部340経由でコントローラ100に送信する。
エンコーダ300は、異常環境検出情報の送信後であっても、制御対象機器200の動作継続中において、ステップS131~S133、または、ステップS131~S135の処理を繰り返し実行する。この後、処理はステップS114に進む。
【0039】
ステップS114において、コントローラ100が異常環境検出情報を受信しない場合(ステップS114でNO)、処理はステップS111へと戻る。コントローラ100は、エンコーダ300から送られてくる異常環境検出情報を受信した場合(ステップS114でYES)、内容を解析することにより、実行すべき対策を決定する。
【0040】
ここで、コントローラ100は、実行すべき対策は、異常環境検出情報に相対湿度の値が含まれている場合、例えば、以下の(a)~(b)のようになる。
(a)相対湿度が70~79%であれば、制御対象機器200の動作を継続したまま、コントローラ100の表示部における注意情報の報知を行う、
(b)相対湿度が80~100%であれば、制御対象機器200の動作の速やかな停止を指示する。
なお、70%、80%、100%等の数値は任意に選択することが可能である。また、実行すべき対策として、異常環境検出情報に相対湿度の値の情報が含まれない場合、安全を考慮して、上記(b)と同様に「速やかな停止」を採用することが好ましい。
【0041】
ステップS115において、コントローラ100は、異常環境検出情報に関連して制御対象機器200の停止する必要があるかに応じて、決定した対策を実行する。ここで、制御対象機器200を停止する必要がなく(ステップS115でNO)、対策が注意喚起であれば処理はステップS116に進む。
【0042】
ステップS116において、コントローラ100は制御対象機器200の動作を継続したまま、コントローラ100の表示部に注意情報の報知を行う。ここで、注意情報の報知とは、エンコーダ300の内部に水の浸入の可能性があることについての、ランプ、画像、または文字による表示、音声または警報音による注意の喚起である。
【0043】
一方、ステップS115において、コントローラ100は、異常環境検出情報に関連して制御対象機器200の停止する必要がある場合(ステップS115でYES)、処理はステップS117に進む。
【0044】
ステップS117において、コントローラ100は、制御対象機器200の動作を停止するように指示する。すなわち、コントローラ100は、制御対象機器200への駆動信号の供給を停止する。これにより、コントローラ100の処理も停止する。この後、処理はステップS122に進む。
【0045】
ステップS122において、制御対象機器200は、コントローラ100からの駆動信号の供給停止により、動作を停止する。この後、処理はステップS136に進む。
【0046】
エンコーダ300は、制御対象機器200の動作継続中においてステップS131~S135の動作検出処理を繰り返し実行しているが、ステップS136において、制御対象機器200の動作停止を受けて(ステップS136でYES)、動作検出処理を終了する。なお、エンコーダ300は、コントローラ100からの命令を受けて動作検出処理を終了してもよい。
【0047】
以上の実施形態1におけるエンコーダ300とコントローラ100との一連の処理により、制御対象機器200の動作を検出するエンコーダ300の内部への水の浸入を異常環境検出情報により検出し、制御対象機器200とエンコーダ300を停止させて、コントローラ100と制御対象機器200とを保護することが可能になる。
【0048】
また、コントローラ100は、エンコーダ300からの異常環境検出情報に相対湿度の値が含まれていれば、相対湿度の値に応じて、注意情報の報知と、制御対象機器200の動作の速やかな停止とを選択して実行することが可能になり、コントローラ100と制御対象機器200とを適切に保護することが可能になる。
【0049】
実施の形態2.
次に、実施の形態2における制御システム1の構成について、図3を参照して説明する。図3は、実施の形態2におけるエンコーダ300を含む制御システム1の構成を示す構成図である。
【0050】
[制御システム1の構成]
図3において、制御システム1は、主に、コントローラ100と、制御対象機器200と、エンコーダ300とを備えている。なお、図3において、制御システム1の構成について、図1と同一物には同一符号を付している。よって、重複した説明を省略し、図1と異なる部分を説明する。
【0051】
環境センサ部330は、エンコーダ300内部の環境として温度と相対湿度とを検出し、コントローラ100が処理可能な(ステップS115でYES)。すなわち、実施の形態2において、環境センサ部330は、エンコーダ300内のいずれかの位置に設けられた湿度センサ330Aと温度センサ330Bとを含んで構成されており、エンコーダ300内部の環境として相対湿度と温度とを検出して環境検出情報を生成し、生成した環境検出情報を制御部301へ供給する。
【0052】
[実施形態2の制御システム1の信号処理手順]
次に、実施の形態2における制御システム1の信号処理手順について図4を用いて説明する。図4は、実施の形態2における制御システム1の処理手順を示すフローチャートである。
【0053】
まず、ステップS111において、コントローラ100は、制御対象機器200に駆動信号を供給し、動作を指示する。この後、処理はステップS121に進む。
【0054】
ステップS121において、制御対象機器200は、コントローラ100から供給される駆動信号に応じて、回転運動等の所定の動作を行う。この後、処理はステップS131に進む。
【0055】
ステップS131において、エンコーダ300内のセンシング部310は、制御対象機器200の動作を検出し、検出結果を信号処理部320へ供給する。例えば、制御対象機器200が回転機器である場合、センシング部310は、回転機器の回転軸の回転状態を検出し、検出した回転状態についての検出結果を信号処理部320へ供給する。
信号処理部320は、センシング部310の検出結果から動作検出情報を生成し、生成した動作検出情報を通信部340へ供給する。例えば、制御対象機器200が回転機器である場合、信号処理部320は、センシング部310の検出結果から、角度情報を動作検出情報として生成し、生成した動作検出情報を通信部340へ供給する。この後、処理はステップS132に進む。
【0056】
ステップS132において、環境センサ部330は、湿度センサ330Aと温度センサ330Bによるエンコーダ300内部の環境としての相対湿度と温度に関する検出結果を用いて、相対湿度と温度に関する環境検出情報を生成し、生成した環境検出情報を制御部301へ供給する。この環境検出情報には、相対湿度と温度のほかに、検出時刻を含めてもよい。この後、処理はステップS133に進む。
【0057】
ステップS133において、通信部340は、信号処理部320により生成された動作検出情報と、環境センサ部330により生成された相対湿度と温度に関する環境検出情報とをコントローラ100に送信する。通信部340は、動作検出情報と環境検出情報とを、予め定めたタイミングで所定のフォーマットに従って、シリアル通信等によりコントローラ100へ送信する。なお、タイミングによって、動作検出情報のみ送信、動作検出情報と環境検出情報の送信、のようにしてもよい。
この後、エンコーダ300において処理はステップS136の停止判定に進み、コントローラ100において処理はステップS112に進む。
【0058】
ステップS112において、コントローラ100は、シリアル通信等によりエンコーダ300から送られてくる動作検出情報と環境検出情報とを受信する。この後、処理はステップS113に進む。
【0059】
ステップS113において、コントローラ100は、エンコーダ300から受信した動作検出情報を処理して制御対象機器200の動作の制御を続けると共に、受信した環境検出情報を処理して時系列に記憶することで履歴を管理する。この後、処理はステップS114に進む。
【0060】
ステップS114において、コントローラ100は、受信した環境検出情報に含まれる相対湿度と温度の情報を用いて絶対湿度を算出し、算出した絶対湿度が予め定められた条件に合致するかを判定する。
【0061】
予め定められた条件は以下の(a)~(d)である。
(a)絶対湿度が閾値を超えている、
(b)絶対湿度は閾値を超えていないが、履歴に存在する低温まで温度が低下した状態において露点に達することで結露が生じる可能性がある、
(c)絶対湿度は閾値を超えていないが、履歴により絶対湿度が上昇傾向にある、
(d)絶対湿度は閾値を超えていないが、絶対湿度の上昇と下降を繰り返す履歴があり、絶対湿度の上昇発生間隔が短くなる傾向にある、
のいずれかである。
【0062】
条件に応じて取り得る対策は以下の(e)~(g)である。
(e)条件(a)または(b)に該当するため、速やかに制御対象機器200を停止させる、
(f)条件(c)または(d)に該当するため、コントローラ100の表示部に注意情報の報知を行う、
(g)条件に合致しないため、何もしない。
以上のように条件の判定と対策の選択をした後、処理はステップS115に進む。
【0063】
ステップS115において、コントローラ100は、予め定められた条件のうち該当するものに応じて選択された必要な対策をとる。上記対策(g)の場合(ステップS115でNO)、処理はステップS111へと戻る。
上記条件(c)または(d)に該当する場合(ステップS115でYES(注意))、上記対策(f)として、処理はステップS116に進む。
上記条件(a)または(b)に該当する場合(ステップS115でYES(停止))、上記対策(e)として、処理はステップS117に進む。
【0064】
ステップS116において、コントローラ100は、制御対象機器200の動作を継続したまま、コントローラ100の表示部に注意情報の報知を行う。ここで、注意情報の報知とは、エンコーダ300の内部に水の浸入の可能性があることについての、ランプ、画像、または文字による表示、音声または警報音による注意の喚起である。
【0065】
ステップS117において、コントローラ100は、制御対象機器200の動作を停止するように指示する。すなわち、コントローラ100は、制御対象機器200への駆動信号の供給を停止する(ステップS136でYES)。これにより、コントローラ100の処理も停止する。
なお、上記条件(a)に該当する場合は緊急停止、上記条件(b)に該当する場合は区切りのよいタイミングでの停止、などと区別してもよい。この後、処理はステップS122に進む。
【0066】
ステップS122において、制御対象機器200は、コントローラ100からの駆動信号の供給停止により、動作を停止する。この後、処理はステップS136に進む。
【0067】
エンコーダ300は、制御対象機器200の動作継続中においてステップS131~S133の動作検出処理を繰り返し実行しているが、ステップS136において、制御対象機器200の動作停止を受けて動作検出処理を終了する。なお、エンコーダ300は、コントローラ100からの命令を受けて動作検出処理を終了してもよい。
【0068】
ここで、コントローラ100における、条件の判定と対策の選択(ステップS114)のサブルーチンについて図5を用いて詳細に説明する。図5は、実施の形態2における制御システム1の条件判定及び対策選択について処理手順を示すフローチャートである。
【0069】
まず、ステップS201において、コントローラ100は、シリアル通信等によりエンコーダ300から送られてくる環境検出情報から温度と相対湿度とを入手する。この後、処理はステップS202に進む。
【0070】
ステップS202において、コントローラ100は、入手した相対湿度と温度の情報を時系列に履歴として記憶し、管理する。この後、処理はステップS203に進む。
【0071】
ステップS203において、コントローラ100は、入手した相対湿度と温度の情報から絶対湿度を算出する。算出した絶対湿度についても履歴として記憶し、管理する。この後、処理はステップS204に進む。
【0072】
ステップS204において、コントローラ100は、絶対湿度が閾値を超えているかの条件(上記条件(a))を判定する。絶対湿度が閾値を超えている場合(ステップS204でYES)は処理がステップS208(上記対策(e))に進み、絶対湿度が閾値を超えていない場合(ステップS204でNO)は処理がステップS205に進む。
【0073】
ステップS205において、コントローラ100は、履歴に存在する低温まで温度が低下すると、相対湿度100%の露点に達することで結露が生じる可能性があるかの条件(上記条件(b))を判定する。露点に達する可能性がある場合(ステップS205でYES)は処理がステップS208(上記対策(e))に進み、露点に達する可能性がない場合(ステップS205でNO)は処理がステップS206に進む。
【0074】
ステップS206において、コントローラ100は、絶対湿度の履歴を参照すると、絶対湿度が上昇傾向にあるかの条件(上記条件(c))を判定する。絶対湿度が上昇傾向である場合(ステップS206でYES)は処理がステップS209(上記対策(f))に進み、絶対湿度が上昇傾向でない場合(ステップS206でNO)は処理がステップS207に進む。
【0075】
ステップS207において、コントローラ100は、絶対湿度の上昇と下降を繰り返す履歴がある場合、上昇の発生間隔が短くなる傾向にあるかの条件(上記条件(d))を判定する。
この判定において、上昇の発生間隔が短くなる傾向にある場合(ステップS207でYES)、処理がステップS209(上記対策(f))に進む。そして、上昇の発生間隔が短くなる傾向にない場合(ステップS207でNO)、処理がステップS210(上記対策(g))に進む。
【0076】
以上の実施形態2におけるエンコーダ300とコントローラ100との一連の処理により、制御対象機器200の動作を検出するエンコーダ300の内部への水の浸入を異常環境検出情報により検出し、制御対象機器200とエンコーダ300を停止させて、コントローラ100と制御対象機器200とを保護することが可能になる。
【0077】
すなわち、コントローラ100は、算出した絶対湿度と、管理している絶対湿度の履歴とに基づいて、予め定めた複数の条件のいずれに合致するかにより、注意情報の報知と、制御対象機器200の動作の速やかな停止とを選択して実行することが可能になり、コントローラ100と制御対象機器200とを適切に保護することが可能になる。
【0078】
[その他の実施の形態]
実施の形態3.
以上の実施の形態1では、エンコーダ300において異常環境検出情報を生成していたが、これをコントローラ100側で行うことも可能である。すなわち、コントローラ100の内部において、環境検出情報から以上環境検出情報を生成するための演算を行う。
実施の形態4.
以上の実施の形態2では、
コントローラ100において絶対湿度を算出して各種判定を実行していたが、これをエンコーダ300で行うようにしてもよい。この場合、エンコーダ300内の制御部301が十分な処理能力を有している必要がある。
【0079】
[実施の形態により得られる効果]
実施の形態1のエンコーダ300は、制御対象機器200の動作を検出するセンシング部310の他に、エンコーダ300内部の環境を検出して環境検出情報を生成する環境センサ部330を備え、制御対象機器200の動作検出情報と、エンコーダ300内における環境検出情報と、エンコーダ300内における環境が予め定められた条件に合致する場合の異常環境検出情報とを生成し、コントローラ100に送信する。
このため、コントローラ100は、制御対象機器200の動作を検出しつつ、エンコーダ300の内部への水の浸入を検出するため、コントローラ100と制御対象機器200とを保護することが可能になる。
【0080】
エンコーダ300には、内部の環境として相対湿度を検出して環境検出情報を生成する環境センサ部330を備えるため、エンコーダ300に生じた湿度によって水の浸入を速やかに検出するため、コントローラ100と制御対象機器200とを保護することが可能になる。
【0081】
実施の形態1の制御システム1は、制御対象機器200の動作を検出して動作検出情報を生成すると共に、エンコーダ内部の環境を検出して環境検出情報を生成するエンコーダ300と、エンコーダ300からの動作検出情報を参照して制御対象機器200を駆動するコントローラ100とを備え、エンコーダ300は、検出された環境が予め定められた条件に合致する場合、異常環境検出情報を生成してコントローラ100に送信し、コントローラ100は、エンコーダ300から受信した異常環境検出情報に応じて制御対象機器200の動作を停止させる。
【0082】
このため、エンコーダ300の内部への水の浸入を異常環境検出情報により検出し、制御対象機器200とエンコーダ300を停止させて、コントローラ100と制御対象機器200とを保護することが可能になる。
また、コントローラ100は、エンコーダ300からの異常環境検出情報に相対湿度の値が含まれていれば、相対湿度の値に応じて、注意情報の報知と、制御対象機器200の動作の速やかな停止とを選択して実行することが可能になり、コントローラ100と制御対象機器200とを適切に保護することが可能になる。
【0083】
実施の形態2の制御システム1は、制御対象機器200の動作を検出して動作検出情報を生成すると共に、エンコーダ内部の環境を検出して環境検出情報を生成するエンコーダ300と、エンコーダ300からの動作検出情報を参照して制御対象機器200を駆動するコントローラ100とを備え、エンコーダ300は、内部の環境として温度と相対湿度を検出して環境検出情報を生成し、動作検出情報と環境検出情報とをコントローラ100に送信しており、コントローラ100は、エンコーダ300から受信した環境検出情報に含まれる温度と相対湿度とを参照して絶対湿度を算出し、絶対湿度が予め定めた条件に合致すると判断した場合、制御対象機器200の動作を停止させる。
【0084】
このため、エンコーダ300の内部への水の浸入を異常環境検出情報により検出し、制御対象機器200とエンコーダ300を停止させて、コントローラ100と制御対象機器200とを保護することが可能になる。
また、コントローラ100は、算出した絶対湿度と、管理している絶対湿度の履歴とに基づいて、予め定めた複数の条件のいずれに合致するかにより、注意情報の報知と、制御対象機器200の動作の速やかな停止とを選択して実行することが可能になり、コントローラ100と制御対象機器200とを適切に保護することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
実施の形態1及び2に示したようにエンコーダ300の内部への水の浸入を検出することができるため、水中環境あるいは水に近い環境で使用される制御対象機器200の動作を検出する用途に適している。また、相対湿度または絶対湿度により水の侵入を検出しているため、真水、海水、汚水、何らかの水溶液など各種に対応することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 制御システム、100 コントローラ、200 制御対象機器、300 エンコーダ、301 制御部、310 センシング部、320 信号処理部、330 環境センサ部、330A 湿度センサ、330B 温度センサ、340 通信部、350 記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5