(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191811
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】接続装置
(51)【国際特許分類】
F25B 41/42 20210101AFI20221221BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20221221BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F25B41/42
B60H1/32 621A
B60H1/22 671
B60H1/32 621C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100262
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 邦義
(72)【発明者】
【氏名】高杉 勇
(72)【発明者】
【氏名】池島 陽平
(72)【発明者】
【氏名】倉田 俊
(72)【発明者】
【氏名】岡田 圭
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA34
3L211CA18
3L211CA19
3L211DA26
3L211DA28
(57)【要約】
【課題】圧力損失を抑制可能な接続装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
冷媒が循環する冷凍サイクル装置において、少なくとも1つの流入配管および少なくとも1つの流出配管を接続させる接続装置は、筐体110と、筐体の内部に冷媒を流入させる上流側流路部120、130と、筐体の内部に流入した冷媒を筐体の外部へ流出させる下流側流路部140と、複数の上流側流路部から流入する冷媒を下流側流路部に合流させる合流部141、142および上流側流路部から流入する冷媒を複数の下流側流路部に分岐させる分岐部のどちらかとを備える。合流部を有する場合、複数の上流側流路部の少なくとも1つは、下流方向に対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びている。分岐部を有する場合、複数の下流側流路部の少なくとも1つは、上流方向に対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環する冷凍サイクル装置(10)において、少なくとも1つの流入配管(11a、11b、11d、11e)および少なくとも1つの流出配管(11c)を接続させて、前記流入配管から流入する冷媒を前記流入配管よりも冷媒流れ下流側に設けられる前記流出配管へ導く接続装置であって、
筐体(110、210、310)と、
前記流入配管に対して一対一に接続されるとともに、前記筐体の内部に冷媒を流入させる上流側流路部(120、130、220、230、240、320、330、510)と、
前記流出配管に対して一対一に接続されるとともに、前記上流側流路部に連通しており、前記筐体の内部に流入した冷媒を前記筐体の外部へ流出させる下流側流路部(140、250、350、520、530)と、
複数の前記上流側流路部から流れる冷媒を前記下流側流路部に合流させる合流部(141、142、251、252、351)および前記上流側流路部から流入する冷媒を複数の前記下流側流路部に分岐させる分岐部(540)のどちらか一方と、を備え、
前記合流部を有する場合、前記合流部から前記下流側流路部の冷媒流れ下流側に向かって前記下流側流路部が延びる方向を下流方向としたとき、複数の前記上流側流路部の少なくとも1つは、前記下流方向に対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びており、
前記分岐部を有する場合、前記分岐部から前記上流側流路部の冷媒流れ上流側に向かって前記上流側流路部が延びる方向を上流方向としたとき、複数の前記下流側流路部の少なくとも1つは、前記上流方向に対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びている接続装置。
【請求項2】
複数の前記流入配管に接続される複数の前記上流側流路部を有し、
1つの前記流出配管に接続される1つの前記下流側流路部を有し、
複数の前記上流側流路部は、前記下流方向に対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びている請求項1に記載の接続装置。
【請求項3】
複数の前記上流側流路部は、前記下流方向に対して0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれた方向に沿って延びる第1傾斜上流側流路部(120)と、前記第1傾斜上流側流路部が延びる方向とは異なる方向であって、前記下流方向に対して0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれた方向に沿って延びる第2傾斜上流側流路部(130)とで構成されている請求項2に記載の接続装置。
【請求項4】
前記下流側流路部は、前記第1傾斜上流側流路部が接続される部位より冷媒流れ下流側の内径が前記第1傾斜上流側流路部の内径より大きく、前記第2傾斜上流側流路部が接続される部位よりも冷媒の流れ下流側の内径が前記第2傾斜上流側流路部の内径より大きい請求項3に記載の接続装置。
【請求項5】
前記冷凍サイクル装置は、車両用空調装置に適用されるものであって、吸い込んだ冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(12)と、前記圧縮機から吐出した吐出冷媒を熱源として、空調対象空間へ送風される送風空気を加熱する加熱部(13、30)と、前記加熱部から流出した冷媒を蒸発させて前記加熱部にて加熱される前の前記送風空気を冷却する空調用熱交換器(14)と、前記加熱部から流出した冷媒を蒸発させて前記送風空気とは異なる冷却対象物を冷却する冷却部(16、40)とを含み、
複数の前記流入配管は、前記空調用熱交換器から流出した冷媒が流れる空調流入配管(11a)と、前記冷却部から流出した冷媒が流れる冷却部流入配管(11b)であって、
前記流出配管は、前記圧縮機に冷媒を導く圧縮機流出配管(11c)であって、
前記第1傾斜上流側流路部は、前記空調流入配管に接続されており、
前記第2傾斜上流側流路部は、前記冷却部流入配管に接続されており、
前記下流側流路部は、前記圧縮機流出配管に接続されており、
前記第1傾斜上流側流路部の前記下流方向に対して延びる方向は、前記第2傾斜上流側流路部の前記下流方向に対して延びる方向よりも小さい請求項3または4に記載の接続装置。
【請求項6】
複数の前記上流側流路部は、前記下流方向に沿って延びる直列上流側流路部(220、320)と、前記直列上流側流路部が延びる方向とは異なる方向であって、前記下流方向に対して0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれた方向に沿って延びる傾斜上流側流路部(230、330)とで構成されている請求項2に記載の接続装置。
【請求項7】
前記下流側流路部は、前記傾斜上流側流路部が接続される部位よりも冷媒の流れ下流側の内径が前記傾斜上流側流路部の内径より大きい請求項6に記載の接続装置。
【請求項8】
前記冷凍サイクル装置は、車両用空調装置に適用されるものであって、吸い込んだ冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(12)と、前記圧縮機から吐出した吐出冷媒を熱源として、空調対象空間へ送風される送風空気を加熱する加熱部(13、30)と、前記加熱部から流出した冷媒を蒸発させて前記加熱部にて加熱される前の前記送風空気を冷却する空調用熱交換器(14)と、前記加熱部から流出した冷媒を蒸発させて前記送風空気とは異なる冷却対象物を冷却する冷却部(16、40)とを含み、
前記複数の流入配管は、前記空調用熱交換器から流出した冷媒が流れる空調流入配管(11a)と、前記冷却部から流出した冷媒が流れる冷却部流入配管(11b)であって、
前記流出配管は、前記圧縮機に冷媒を導く圧縮機流出配管(11c)であって、
前記直列上流側流路部は、前記空調流入配管に接続されており、
前記傾斜上流側流路部は、前記冷却部流入配管に接続されており、
前記下流側流路部は、前記圧縮機流出配管に接続されている請求項6または7に記載の接続装置。
【請求項9】
複数の前記上流側流路部は、前記下流方向に沿って延びる直列上流側流路部(220)と、前記直列上流側流路部が延びる方向とは異なる方向であって、前記下流方向に対して0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれた方向に沿って延びる第1傾斜上流側流路部(230)と、前記直列上流側流路部が延びる方向および前記第1傾斜上流側流路部が延びる方向とは異なる方向であって、前記下流方向に対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれた方向に沿って延びる第2傾斜上流側流路部(240)とで構成されている請求項2に記載の接続装置。
【請求項10】
前記下流側流路部は、前記第1傾斜上流側流路部が接続される部位よりも冷媒の流れ下流側の内径が前記第1傾斜上流側流路部の内径より大きく、前記第2傾斜上流側流路部が接続される部位よりも冷媒の流れ下流側の内径が前記第2傾斜上流側流路部の内径より大きい請求項9に記載の接続装置。
【請求項11】
前記冷凍サイクル装置は、車両用空調装置に適用されるものであって、吸い込んだ冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(12)と、前記圧縮機から吐出した吐出冷媒を熱源として、運転席が設けられる第1対象空間および前記第1対象空間とは異なる第2対象空間へ送風される送風空気を加熱する加熱部(13、30)と、前記加熱部から流出した冷媒を蒸発させて前記加熱部にて加熱される前の前記第1対象空間へ吹き出される前記送風空気を冷却する第1空調用熱交換器(14a)と、前記加熱部から流出した冷媒を蒸発させて前記加熱部にて加熱される前の前記第2対象空間へ吹き出される前記送風空気を冷却する第2空調用熱交換器(14b)と、前記加熱部から流出した冷媒を蒸発させて前記送風空気とは異なる冷却対象物を冷却する冷却部(16、40)とを含み、
前記複数の流入配管は、前記第1空調用熱交換器から流出した冷媒が流れる第1空調流入配管(11d)と、前記第2空調用熱交換器から流出した冷媒が流れる第2空調流入配管(11e)と、前記冷却部から流出した冷媒が流れる冷却部流入配管(11b)とであって、
前記流出配管は、前記圧縮機に冷媒を導く圧縮機流出配管(11c)であって、
前記直列上流側流路部は、前記第1空調流入配管に接続されており、
前記第1傾斜上流側流路部は、前記冷却部流入配管に接続されており、
前記第2傾斜上流側流路部は、前記第2空調流入配管に接続されており、
前記下流側流路部は、前記圧縮機流出配管に接続されている請求項9または10に記載の接続装置。
【請求項12】
前記第2対象空間は、後部座席が設けられる空間であって、
前記冷却対象物は、車両が駆動するための電力を供給するバッテリであって、
前記第1傾斜上流側流路部は、前記第2傾斜上流側流路部よりも冷媒流れ上流側で前記下流側流路部に合流する請求項11に記載の接続装置。
【請求項13】
前記冷凍サイクル装置は、オイルが混入された冷媒を循環させるものであって、
冷媒が循環する冷媒回路を切り替えることで、前記冷凍サイクル装置の運転モードを、前記複数の流入配管の全てに冷媒が流れる運転モードと、前記複数の流入配管のうち少なくとも1つの流入配管に冷媒が流れない運転モードとに切り替え可能であって、
前記下流側流路部は、前記下流側流路部の冷媒流れ最下流側が前記圧縮機へ冷媒を吸入させる冷媒吸入口(12a)よりも鉛直方向上側に設けられている請求項5、8、11または12に記載の接続装置。
【請求項14】
前記下流側流路部は、前記下流側流路部の冷媒流れ最下流側が、前記上流側流路部の冷媒流れ最上流側よりも鉛直方向下側に設けられている請求項1ないし13のいずれか1つに記載の接続装置。
【請求項15】
前記上流側流路部の内径は、接続される前記流入配管の冷媒流れ最下流部に対応した大きさで形成され、
前記下流側流路部の内径は、前記上流側流路部の内径よりも大きく、かつ、前記流出配管の冷媒流れ最上流部に対応した大きさで形成されている請求項1ないし14のいずれか1つに記載の接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒が循環する冷媒循環サイクルを構成する複数の部品が連通するように接続する接続装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の接続装置は、3方向の位置関係にある冷媒配管同士を連通させる構造となっている。具体的に、特許文献1に記載の接続装置は、T字状であって、冷媒配管が接続される継手部が両端に設けられるとともに、当該両端の継手部に直交する位置にも冷媒配管が接続される継手部が設けられている。
【0005】
このような構成の接続装置では、例えば、冷媒を流入させる流入配管が両端の継手部に接続され、冷媒を流出させる流出配管が残りの継手部に接続された場合、両端の継手部から流入した冷媒が合流して衝突するとともに、冷媒の流れ方向が90°曲げられる。このような冷媒の衝突および冷媒の流れ方向の変化は、圧力損失の要因となるため、抑制されることが望ましい。
【0006】
本開示は、圧力損失を抑制可能な接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
冷媒が循環する冷凍サイクル装置(10)において、少なくとも1つの流入配管(11a、11b、11d、11e)および少なくとも1つの流出配管(11c)を接続させて、流入配管から流入する冷媒を流入配管よりも冷媒流れ下流側に設けられる流出配管へ導く接続装置であって、
筐体(110、210、310)と、
流入配管に対して一対一に接続されるとともに、筐体の内部に冷媒を流入させる上流側流路部(120、130、220、230、240、320、330、510)と、
流出配管に対して一対一に接続されるとともに、上流側流路部に連通しており、筐体の内部に流入した冷媒を筐体の外部へ流出させる下流側流路部(140、250、350、520、530)と、
複数の上流側流路部から流れる冷媒を下流側流路部に合流させる合流部(141、142、251、252、351)および上流側流路部から流入する冷媒を複数の下流側流路部に分岐させる分岐部(540)のどちらか一方と、を備え、
合流部を有する場合、合流部から下流側流路部の冷媒流れ下流側に向かって下流側流路部が延びる方向を下流方向としたとき、複数の上流側流路部の少なくとも1つは、下流方向に対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びており、
分岐部を有する場合、分岐部から上流側流路部の冷媒流れ上流側に向かって上流側流路部が延びる方向を上流方向としたとき、複数の下流側流路部の少なくとも1つは、上流方向に対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びている。
【0008】
これによれば、接続装置が内部で冷媒を合流させる構成である場合は、上流側流路部が所定の合流基準方向に対して90°ずれて延びる構成に比較して、上流側流路部から下流側流路部に合流する際の冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制することができる。
【0009】
これに対して、接続装置が内部で冷媒を分岐させる構成である場合は、下流側流路部が所定の分岐基準方向に対して90°ずれて延びる構成に比較して、上流側流路部から流入した冷媒が分岐する際の冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用空調装置の制御装置を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る接続装置の斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る接続装置と圧縮機との位置関係を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る接続装置の圧力損失および接続装置の製造コストと接続部径比との関係を示す関係図である。
【
図7】第1実施形態に係る接続装置の急上流路部から冷媒が流入する際の冷媒の流れ方向を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る接続装置の低上流路部から冷媒が流入する際の冷媒の流れ方向を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る接続装置の急上流路部および低上流路部から冷媒が流入する際の冷媒の流れ方向を示す図である。
【
図12】第2実施形態に係る接続装置の斜視図である。
【
図14】第2実施形態に係る接続装置の筐体の内部を流れる冷媒の流れ方向を示す図である。
【
図15】第3実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【
図16】第3実施形態に係る接続装置の斜視図である。
【
図18】第3実施形態に係る接続装置の筐体の内部を流れる冷媒の流れ方向を示す図である。
【
図19】第3実施形態の第3の変形例に係る接続装置の断面図である。
【
図20】第3実施形態の第4の変形例に係る接続装置の断面図である。
【
図21】第4実施形態に係る接続装置の斜視図である。
【
図22】その他の実施形態に係る接続装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~11を参照して説明する。本実施形態では、本発明に係る接続装置100が、後述するモータジェネレータ62から走行用の駆動力を得る電気自動車に搭載された車両用空調装置1に適用されている。この車両用空調装置1は、空調対象空間である車室内に送風する送風空気の加熱および冷却を行うだけでなく、電動モータ等に電力を供給するバッテリ60を冷却する機能も有する。したがって、本実施形態の冷凍サイクル装置10における送風空気とは異なる冷却対象物は、バッテリ60である。
【0014】
車両用空調装置1は、
図1に示すように、冷凍サイクル装置10、高温側熱媒体回路30、低温側熱媒体回路40、室内空調ユニット50等を備えている。
【0015】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、様々な運転モード用の冷媒回路に切替可能に構成されている。具体的に、冷凍サイクル装置10は、冷媒回路を空調用の運転モードの冷媒回路として、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路等に切替可能に構成されている。また、冷凍サイクル装置10は、空調用の各運転モードにおいて、バッテリ60を冷却する冷媒回路とバッテリ60の冷却を行わない冷媒回路とに切替可能に構成されている。さらに、冷凍サイクル装置10は、空調を行わず、バッテリ60を冷却する冷却モードの冷媒回路にも切替可能に構成されている。
【0016】
また、冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用しており、圧縮機12から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷凍サイクル装置10は、ヒートポンプサイクルである。
【0017】
さらに、冷媒には圧縮機12を潤滑するためのオイル(すなわち、冷凍機油)が混入されている。オイルは、例えば、液冷媒に相溶性を有するポリアルキレングリコールオイル(すなわち、PAGオイル)が採用される。オイルは、その一部が冷媒とともにサイクル内を循環する。
【0018】
冷凍サイクル装置10は、
図1に示すように、冷媒を流すための冷媒循環通路11を有している。そして、冷媒循環通路11には、冷媒を圧縮する圧縮機12と、冷媒と熱媒体との間で熱交換させる水-冷媒熱交換器13、室内蒸発器14、チラー16と、冷媒の圧力を制御する蒸発圧力調整弁15、第1膨張弁17a、第2膨張弁17bが設けられている。また、冷媒循環通路11には、冷媒の流れを複数の冷媒通路に分岐させる冷媒分岐部18および複数の冷媒通路から流れる冷媒を合流させて下流側の冷媒通路へ流す接続装置100が設けられている。さらに、冷媒循環通路11には、冷媒循環通路11を流れる冷媒の温度を検出する第1冷媒温度センサ19a~第3冷媒温度センサ19cと、冷媒循環通路11を流れる冷媒の圧力を検出する第1冷媒圧力センサ19d~第3冷媒圧力センサ19fが設けられている。
【0019】
圧縮機12は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機12は、車室の前方に配置されて電動モータ等が収容される駆動装置室内に配置されている。駆動装置室は、車両走行用の駆動力の発生あるいは調整のために用いられる機器(例えば、後述するモータジェネレータ62)等の少なくとも一部が配置される空間を形成している。
【0020】
圧縮機12は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータで回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機12は、後述する制御装置70から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。圧縮機12の吐出口には、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路の入口側が接続されている。
【0021】
また、圧縮機12の吐出口側の冷媒循環通路11には、圧縮機12から吐出された冷媒の温度を検出する第1冷媒温度センサ19aおよび圧縮機12から吐出された冷媒の圧力を検出する第1冷媒圧力センサ19dが設けられている。第1冷媒温度センサ19aは、圧縮機12から吐出された冷媒が異常温度である場合に当該異常温度を検出するものであって、圧縮機12を保護するために設けられている。第1冷媒圧力センサ19dは、圧縮機12から吐出された冷媒が異常圧力である場合に当該異常圧力を検出するものであって、圧縮機12を保護するために設けられている。
【0022】
第1冷媒温度センサ19aは、圧縮機12から吐出された冷媒の温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。第1冷媒圧力センサ19dは、圧縮機12から吐出された冷媒の圧力に応じた検出信号を制御装置70に送信する。
【0023】
水-冷媒熱交換器13は、圧縮機12から吐出された高圧冷媒と高温側熱媒体回路30を循環する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱する加熱用の熱交換器である。水-冷媒熱交換器13は、圧縮機12から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、高温側熱媒体回路30を循環する高温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。本実施形態の水-冷媒熱交換器13は、いわゆるサブクール型の熱交換器を採用している。このため、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路には、凝縮部13a、レシーバ部13b、および過冷却部13cが設けられている。
【0024】
凝縮部13aは、圧縮機12から吐出された高圧冷媒と高温側熱媒体回路30を循環する高温側熱媒体とを熱交換させて、高圧冷媒を凝縮させる凝縮用の熱交換部である。レシーバ部13bは、凝縮部13aから流出した冷媒の気液を分離して分離された液相冷媒を蓄える受液部である。過冷却部13cは、レシーバ部13bから流出した液相冷媒と高温側熱媒体とを熱交換させて、液相冷媒を過冷却する過冷却用の熱交換部である。また、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路の出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する冷媒分岐部18の流入口側が接続されている。
【0025】
冷媒分岐部18は、1つの流入口および2つの流出口を有し、1つの流入口から流入した冷媒を一方および他方の流出口に流出させる三方継手部である。冷媒分岐部18は、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
【0026】
冷媒分岐部18の一方の流出口には、第1膨張弁17aの入口側が接続されている。冷媒分岐部18の他方の流出口には、第2膨張弁17bの入口側が接続されている。
【0027】
第1膨張弁17aは、少なくとも車室内の冷房を行う運転モード時に、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路から流出した高圧冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量(すなわち、質量流量)を調整する冷房用減圧部である。第1膨張弁17aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0028】
本実施形態の第1膨張弁17aは、弁体の開口面積を調整することで絞り開度を0~100%の範囲で変更可能に構成されている。すなわち、第1膨張弁17aは、弁開度を全開(すなわち、絞り開度を100%)にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能を有する。また、第1膨張弁17aは、弁開度を全閉(すなわち、絞り開度を0%)にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。第1膨張弁17aの出口には、室内蒸発器14の冷媒入口側が接続されている。
【0029】
第2膨張弁17bは、少なくとも車室内の暖房を行う運転モード時に、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する暖房用減圧部である。第2膨張弁17bは、基本的構成が第1膨張弁17aと同様である。第2膨張弁17bの出口には、チラー16の冷媒通路の入口側が接続されている。
【0030】
そして、第1膨張弁17aおよび第2膨張弁17bは、この全開機能および全閉機能によって、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。したがって、第1膨張弁17aおよび第2膨張弁17bは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。第1膨張弁17aおよび第2膨張弁17bは、制御装置70から出力される制御信号(すなわち、制御パルス)によって、その作動が制御される。
【0031】
室内蒸発器14は、第1膨張弁17aにおいて減圧された低圧冷媒と後述する送風機53から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。室内蒸発器14は、後述する室内空調ユニット50の空調ケース51内に配置されている。また、室内蒸発器14の冷媒出口には、室内蒸発器14から流出した冷媒を接続装置100に導く空調流入配管11aが接続されている。本実施形態において、室内蒸発器14は空調用熱交換器として機能する。
【0032】
空調流入配管11aは、冷媒が流れる冷媒通路を形成するものであって、冷媒流れ上流側が室内蒸発器14に接続されており、冷媒流れ下流側が接続装置100に接続されている。空調流入配管11aは、冷媒を接続装置100の内部へ流入させる流入配管である。
【0033】
空調流入配管11aは、室内蒸発器14の冷媒出口および接続装置100の冷媒入口に挿入可能な大きさで構成されている。具体的に、本実施形態では、空調流入配管11aは、入口側から出口側に至るまでの外径が15.88mmである冷媒配管が採用されている。これに対して、室内蒸発器14の冷媒出口の内径および接続装置100に冷媒を流入させる後述する急流入口121の内径は、15.88mmより僅かに大きく形成されている。
【0034】
なお、空調流入配管11aは、入口側から出口側に至るまでの外径が15.88mmとは異なる大きさの冷媒配管が採用されてもよい。この場合、冷凍サイクル装置10は、入口側の外径と出口側の外径とが互いに異なる大きさを有する冷媒配管変換部材を室内蒸発器14および接続装置100に取り付けて、室内蒸発器14および接続装置100に空調流入配管11aを接続させる構成でもよい。
【0035】
また、空調流入配管11aには、室内蒸発器14から流出された冷媒の温度を検出する第2冷媒温度センサ19bおよび室内蒸発器14から流出された冷媒の圧力を検出する第2冷媒圧力センサ19eが設けられている。さらに、空調流入配管11aには、室内蒸発器14から流出された冷媒の圧力を調整する蒸発圧力調整弁15が設けられている。
【0036】
第2冷媒温度センサ19bは、室内蒸発器14から流出された冷媒の温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。第2冷媒圧力センサ19eは、室内蒸発器14から流出された冷媒の圧力に応じた検出信号を制御装置70に送信する。
【0037】
蒸発圧力調整弁15は、室内蒸発器14の着霜を抑制するために、室内蒸発器14における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に維持する機能を果たす。蒸発圧力調整弁15は、室内蒸発器14の出口側冷媒の圧力の増加に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構で構成されている。これにより、蒸発圧力調整弁15は、室内蒸発器14における冷媒が蒸発する温度を、室内蒸発器14の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(例えば、1℃)以上に維持している。
【0038】
チラー16は、第2膨張弁17bにおいて減圧された低圧冷媒と低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発部である。チラー16は、第2膨張弁17bから流出された低圧冷媒を流通させる冷媒通路と、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。チラー16の冷媒通路の出口には、チラー16から流出した冷媒を接続装置100に導く冷却部流入配管11bが挿入されている。
【0039】
冷却部流入配管11bは、冷媒が流れる冷媒通路を形成するものであって、冷媒流れ上流側がチラー16に接続されており、冷媒流れ下流側が接続装置100に接続されている。冷却部流入配管11bは、接続装置100の内部へ冷媒を流入させる流入配管である。
【0040】
冷却部流入配管11bは、チラー16の冷媒通路の出口および接続装置100の冷媒入口に挿入可能な大きさで構成されている。具体的に、本実施形態では、冷却部流入配管11bは、入口側から出口側に至るまでの外径が15.88mmである冷媒配管が採用されている。これに対して、チラー16の冷媒通路の出口の内径および接続装置100に冷媒を流入させる後述する低流入口131の内径が15.88mmより僅かに大きく形成されている。冷却部流入配管11bの外径は、空調流入配管11aと同じ外径である。
【0041】
なお、冷却部流入配管11bは、入口側から出口側に至るまでの外径が15.88mmとは異なる大きさの冷媒配管が採用されてもよい。この場合、冷凍サイクル装置10は、入口側の外径と出口側の外径とが互いに異なる大きさを有する冷媒配管変換部材をチラー16および接続装置100に取り付けて、チラー16および接続装置100に冷却部流入配管11bを接続させる構成でもよい。また、冷却部流入配管11bは、空調流入配管11aとは外径が異なる冷媒配管が採用されてもよい。
【0042】
冷却部流入配管11bには、チラー16の冷媒通路から流出された冷媒の温度を検出する第3冷媒温度センサ19cおよびチラー16の冷媒通路から流出された冷媒の圧力を検出する第3冷媒圧力センサ19fが設けられている。
【0043】
第3冷媒温度センサ19cは、チラー16の冷媒通路から流出された冷媒の温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。第3冷媒圧力センサ19fは、チラー16の冷媒通路から流出された冷媒の圧力に応じた検出信号を制御装置70に送信する。
【0044】
接続装置100は、空調流入配管11aおよび冷却部流入配管11bから流入する冷媒を合流させて、空調流入配管11aおよび冷却部流入配管11bよりも冷媒流れ下流側に設けられる圧縮機流出配管11cへ導く冷媒配管接続部材である。接続装置100は、冷媒を接続装置100の内部に流入させる急流入口121、低流入口131および接続装置100の内部に流入した冷媒を流出させる冷媒流出口143を有する。
【0045】
接続装置100は、急流入口121に空調流入配管11aが接続され、低流入口131に冷却部流入配管11bが接続され、冷媒流出口143に圧縮機流出配管11cが接続されている。接続装置100の詳細については後述する。
【0046】
圧縮機流出配管11cは、冷媒が流れる冷媒通路を形成するものであって、冷媒流れ上流側が接続装置100に接続されており、冷媒流れ下流側が圧縮機12に接続されている。圧縮機流出配管11cは、接続装置100から流出した冷媒を圧縮機12へ導く流出配管である。
【0047】
圧縮機流出配管11cは、圧縮機12の冷媒吸入口12aおよび接続装置100の冷媒流出口143に挿入可能な大きさで構成されている。具体的に、本実施形態では、圧縮機流出配管11cは、入口側から出口側に至るまでの外径が19.05mmである冷媒配管が採用されている。これに対して、圧縮機12の冷媒吸入口12aの内径および接続装置100の冷媒流出口143の内径は、19.05mmより僅かに大きく形成されている。圧縮機流出配管11cの外径は、空調流入配管11aおよび冷却部流入配管11bの外径よりも大きい。
【0048】
なお、圧縮機流出配管11cは、入口側から出口側に至るまでの外径が19.05mmとは異なる大きさの冷媒配管が採用されてもよい。この場合、冷凍サイクル装置10は、入口側の外径と出口側の外径とが互いに異なる大きさを有する冷媒配管変換部材を接続装置100および圧縮機12に取り付けて、接続装置100および圧縮機12に圧縮機流出配管11cを接続させる構成でもよい。また、圧縮機流出配管11cは、空調流入配管11aおよび冷却部流入配管11bと同じ外径の冷媒配管や空調流入配管11aおよび冷却部流入配管11bより外径が小さい冷媒配管が採用されてもよい。
【0049】
次に、高温側熱媒体回路30について説明する。高温側熱媒体回路30は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側熱媒体回路30には、水-冷媒熱交換器13の水通路、高温側熱媒体ポンプ31、電気ヒータ32、高温側流量調整弁33、高温側ラジエータ34、ヒータコア35、高温側熱媒体合流部36が配置されている。さらに、高温側熱媒体回路30には、高温側熱媒体回路30を流れる高温側熱媒体の温度を検出する第1高温側熱媒体温度センサ37aおよび第2高温側熱媒体温度センサ37b等が配置されている。
【0050】
高温側熱媒体ポンプ31は、高温側熱媒体を水-冷媒熱交換器13の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。高温側熱媒体ポンプ31は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0051】
水-冷媒熱交換器13の水通路の出口には、電気ヒータ32が接続されている。また、水-冷媒熱交換器13の水通路の出口側の冷媒通路には、水-冷媒熱交換器13の水通路の出口から流出された高温側熱媒体の温度を検出する第1高温側熱媒体温度センサ37aが設けられている。第1高温側熱媒体温度センサ37aは、水-冷媒熱交換器13の水通路の出口から流出された高温側熱媒体の温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。
【0052】
電気ヒータ32は、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出した高温側熱媒体を加熱する補助加熱装置である。高温側熱媒体回路30では、電気ヒータ32として、PTC素子(すなわち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータが採用されている。電気ヒータ32は、制御装置70から出力される制御電圧によって、発熱量が制御される。電気ヒータ32の冷媒出口には、互いに連通可能な3つの流入出口を有する高温側流量調整弁33の流入口側が接続されている。
【0053】
高温側流量調整弁33は、1つの流入口および2つの流出口を有し、高温側ラジエータ34へ流入させる高温側熱媒体の流量に対するヒータコア35へ流入させる高温側熱媒体の流量である高温側流量比を調整する高温側流量比調整部である。また、高温側流量調整弁33は、回転位置を変更可能に構成された弁体と、この弁体の回転位置を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の弁装置である。
【0054】
高温側流量調整弁33は、弁体の回転位置を調整することで、高温側流量比を調整する。また、高温側流量調整弁33は、弁体の回転位置を調整することで、高温側流量調整弁33の内部へ流入した高温側熱媒体を、高温側ラジエータ34およびヒータコア35のいずれか一方のみへ流出させることもできる。
【0055】
そして、高温側流量調整弁33は、高温側流量比を調整することで、高温側熱媒体の使用態様を変更することができる。高温側熱媒体回路30は、例えば、高温側流量調整弁33によりヒータコア35に流入する高温側熱媒体の流量を増加させることで、高温側熱媒体の熱を送風空気の加熱に使用して車室内を暖房することができる。これに対して、高温側熱媒体回路30は、例えば、高温側流量調整弁33により高温側ラジエータ34に流入する高温側熱媒体の流量を増加させることで、高温側熱媒体の熱を外気に放出することができる。高温側流量調整弁33は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0056】
高温側流量調整弁33の一方の流出口には、高温側ラジエータ34の熱媒体入口側が接続されている。高温側流量調整弁33の他方の流出口には、ヒータコア35の熱媒体入口側が接続されている。また、高温側流量調整弁33の他方の流出口側の冷媒通路には、ヒータコア35へ流入する前の高温側熱媒体の温度を検出する第2高温側熱媒体温度センサ37bが設けられている。第2高温側熱媒体温度センサ37bは、高温側流量調整弁33から流出されヒータコア35へ流入する前の高温側熱媒体の温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。
【0057】
高温側ラジエータ34は、水-冷媒熱交換器13において加熱された高温側熱媒体と不図示の外気ファンから送風された外気とを熱交換させる高温側外気熱交換部である。高温側ラジエータ34は、駆動装置室内の前方側に配置されている。高温側ラジエータ34の熱媒体出口には、高温側熱媒体合流部36の一方の流入口側が接続されている。
【0058】
ヒータコア35は、水-冷媒熱交換器13において加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器14を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア35は、室内空調ユニット50の空調ケース51内に配置されている。ヒータコア35の熱媒体出口には、高温側熱媒体合流部36の他方の流入口側が接続されている。
【0059】
高温側熱媒体合流部36は、2つの流入口および1つの流出口を有し、2つの流入口から流入した冷媒を合流させて1つの流出口へ流出させる三方継手部である。高温側熱媒体合流部36の流出口には、高温側熱媒体ポンプ31の吸入口側が接続されている。高温側熱媒体合流部36は、高温側ラジエータ34およびヒータコア35それぞれから流入した高温側熱媒体を高温側熱媒体ポンプ31に導く。
【0060】
このように構成される高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体ポンプ31および高温側流量調整弁33が、ヒータコア35へ流入する高温側熱媒体の流量を調整することによって、ヒータコア35における高温側熱媒体の送風空気への放熱量を調整する。すなわち、高温側熱媒体回路30は、ヒータコア35における送風空気の加熱量を調整することができる。
【0061】
つまり、本実施形態では、水-冷媒熱交換器13および高温側熱媒体回路30の各構成機器によって、圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として、送風空気を加熱する加熱部が構成されている。
【0062】
次に、低温側熱媒体回路40について説明する。低温側熱媒体回路40は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体と同様の流体を採用することができる。低温側熱媒体回路40には、チラー16の水通路、低温側熱媒体ポンプ41、電池側三方弁42、低温側ラジエータ43、バッテリ60の冷却水通路、電気機器用通路44が配置されている。また、低温側熱媒体回路40には、複数の冷媒通路から流れる低温側熱媒体を合流させる第1低温側熱媒体合流部45a、第2低温側熱媒体合流部45bおよび冷媒の流れを複数の冷媒通路に分岐させる低温側熱媒体分岐部46が設けられている。さらに、低温側熱媒体回路40には、低温側熱媒体回路40を流れる低温側熱媒体の温度を検出する第1低温側熱媒体温度センサ47a~第3低温側熱媒体温度センサ47cが設けられている。
【0063】
低温側熱媒体ポンプ41は、低温側熱媒体をチラー16の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。低温側熱媒体ポンプ41の基本的構成は、高温側熱媒体ポンプ31と同様である。低温側熱媒体ポンプ41の熱媒体吐出側には、チラー16の水通路の入口側が接続されている。チラー16の水通路の出口には、電池側三方弁42の流入口側が接続されている。
【0064】
電池側三方弁42は、1つの流入口および2つの流出口を有し、低温側ラジエータ43へ流入させる低温側熱媒体の流量に対するバッテリ60の冷却水通路へ流入させる低温側熱媒体の流量の低温側流量比を調整する低温側流量比調整部である。電池側三方弁42は、一方の流出口に第1低温側熱媒体合流部45aを介して低温側ラジエータ43の熱媒体入口側が接続されており、他方の流出口にバッテリ60の冷却水通路の入口側が接続されている。電池側三方弁42および後述する機器側三方弁44cは、基本的構成が高温側流量調整弁33と同様である。
【0065】
電池側三方弁42は、弁体の回転位置を調整することで、低温側流量比を調整する。また、電池側三方弁42は、内部へ流入した低温側熱媒体を、低温側ラジエータ43およびバッテリ60の冷却水通路のいずれか一方のみへ流出させることもできる。
【0066】
例えば、電池側三方弁42は、一方の流出口を全閉し、他方の流出口を開放することで、チラー16の水通路の出口から流出した低温側熱媒体の全流量を、バッテリ60の冷却水通路を通過させて、機器用ポンプ44bの吸入側へ戻す。これに対して、電池側三方弁42は、一方の流出口を開放し、他方の流出口を全閉することで、チラー16の水通路の出口から流出した低温側熱媒体の全流量を、低温側ラジエータ43を通過させて、機器用ポンプ44bの吸入側へ戻す。電池側三方弁42は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0067】
また、電池側三方弁42の他方の流出口側の冷媒通路には、バッテリ60の冷却水通路に流入する前の低温側熱媒体の温度を検出する第1低温側熱媒体温度センサ47aが設けられている。第1低温側熱媒体温度センサ47aは、チラー16の水通路の出口から流出してバッテリ60の冷却水通路に流入する前の低温側熱媒体の温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。
【0068】
第1低温側熱媒体合流部45aは、基本的構成が高温側熱媒体合流部36と同様の三方継手部である。第1低温側熱媒体合流部45aは、一方の流入口に電池側三方弁42の一方の流出口側が接続されており、他方の流入口に電気機器用通路44の冷媒流れ下流側が接続されるとともに、流出口に低温側ラジエータ43の熱媒体入口側が接続されている。第1低温側熱媒体合流部45aは、電池側三方弁42および電気機器用通路44から流入する冷媒を低温側ラジエータ43へ導く。
【0069】
低温側ラジエータ43は、電池側三方弁42から流出した低温側熱媒体と不図示の外気ファンから送風された外気とを熱交換させる低温側外気熱交換部である。低温側ラジエータ43は、駆動装置室内の前方側であって、高温側ラジエータ34の外気流れ下流側に配置されている。
【0070】
したがって、低温側ラジエータ43は、高温側ラジエータ34通過後の外気と低温側熱媒体とを熱交換させる。低温側ラジエータ43は、高温側ラジエータ34と一体的に形成されていてもよい。低温側ラジエータ43の熱媒体出口には、低温側熱媒体分岐部46を介して第2低温側熱媒体合流部45bの一方の流入口側が接続されている。
【0071】
また、低温側ラジエータ43の熱媒体出口側の冷媒通路には、低温側ラジエータ43から流出した低温側熱媒体の温度を検出する第2低温側熱媒体温度センサ47bが設けられている。第2低温側熱媒体温度センサ47bは、低温側ラジエータ43から流出した低温側熱媒体の温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。第2低温側熱媒体温度センサ47bは、低温側ラジエータ43から流出した低温側熱媒体の温度に基づいて低温側ラジエータ43への着霜の有無を判定するために設けられている。
【0072】
低温側熱媒体分岐部46は、1つの流入口および2つの流出口を有し、当該流入口から流入した冷媒を分岐させて一方の流出口および他方の流出口から流出させる三方継手部である。低温側熱媒体分岐部46は、一方の流出口に第2低温側熱媒体合流部45bの一方の流入口側が接続されており、他方の流出口に電気機器用通路44の冷媒流れ上流側が接続されている。低温側熱媒体分岐部46は、低温側ラジエータ43から流入する冷媒を第2低温側熱媒体合流部45bおよび電気機器用通路44へ導く。
【0073】
第2低温側熱媒体合流部45bは、一方の流入口に低温側熱媒体分岐部46の一方の流出口側が接続されており、他方の流入口にバッテリ60の冷却水通路の出口側が接続されるとともに、流出口に低温側熱媒体ポンプ41の吸入口側が接続されている。第2低温側熱媒体合流部45bは、低温側ラジエータ43およびバッテリ60の冷却水通路から流入する冷媒を低温側熱媒体ポンプ41へ導く。
【0074】
バッテリ60は、複数の電気機器に供給される電力を蓄える。バッテリ60は、複数の不図示の電池セルを電気的に直列的あるいは並列的に接続することによって形成された組電池である。電池セルは、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)である。バッテリ60は、複数の電池セルを略直方体形状となるように積層配置して専用ケースに収容したものである。
【0075】
この種の二次電池は、作動時(すなわち、充放電時)に発熱する。二次電池は、高温になると劣化が進行しやすい。さらに、二次電池は、低温になると化学反応が進行しにくく出力が低下しやすい。このため、二次電池の温度は、二次電池の充放電容量を充分に活用することのできる適切な温度範囲内(例えば、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されていることが望ましい。
【0076】
そこで、本実施形態では、バッテリ60の専用ケースの内部に低温側熱媒体を流通させる冷却水通路が形成されている。当該冷却水通路の通路構成は、専用ケースの内部で複数の通路を並列的に接続した通路構成となっている。これにより、冷却水通路は、全ての電池セルを均等に温度調整できるように形成されている。したがって、本実施形態のバッテリ60は、冷却対象物である。バッテリ60の冷却水通路の出口には、第2低温側熱媒体合流部45bの他方の流入口側が接続されている。
【0077】
したがって、低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体ポンプ41および電池側三方弁42が、バッテリ60の冷却水通路へ流入する低温側熱媒体の流量を調整することによって、低温側熱媒体がバッテリ60から奪う吸熱量を調整することができる。つまり、本実施形態では、チラー16および低温側熱媒体回路40の各構成機器によって、第2膨張弁17bから流出した冷媒を蒸発させて、バッテリ60を冷却する冷却部が構成されている。
【0078】
さらに、本実施形態の低温側熱媒体回路40には、電気機器用通路44が接続されている。電気機器用通路44は、低温側ラジエータ43の熱媒体出口側から流出した冷媒を、再び低温側ラジエータ43の熱媒体入口側へ戻す熱媒体通路であって、一方側が低温側熱媒体分岐部46に接続され、他方側が第1低温側熱媒体合流部45aに接続されている。電気機器用通路44には、機器用通路合流部44a、機器用ポンプ44b、インバータ61の冷却水通路、モータジェネレータ62の冷却水通路、トランスアクスル装置63の冷却水通路、機器側三方弁44c等が配置されている。
【0079】
機器用通路合流部44aは、基本的構成が第1低温側熱媒体合流部45aおよび第2低温側熱媒体合流部45bと同様の三方継手部である。機器用通路合流部44aは、一方の流入口に低温側熱媒体分岐部46の他方の流出口が接続されており、他方の流入口に低温側ラジエータ43を迂回させるバイパス通路44dの冷媒流れ下流側が接続されている。また、機器用通路合流部44aの流出口には、機器用ポンプ44bの吸入口側が接続されている。機器用通路合流部44aは、低温側熱媒体分岐部46およびバイパス通路44dから流入する冷媒を機器用ポンプ44bへ導く。
【0080】
機器用ポンプ44bは、低温側ラジエータ43から流出した低温側熱媒体の少なくとも一部を、インバータ61の冷却水通路へ圧送する水ポンプである。機器用ポンプ44bは、基本的構成が低温側熱媒体ポンプ41と同様である。
【0081】
インバータ61は、バッテリ60に直接的に接続された複数の電気機器の1つである。インバータ61は、バッテリ60から出力された直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ62へ供給する電力変換装置である。さらに、インバータ61は、モータジェネレータ62が発生させた交流電力を直流電力に変換してバッテリ60側へ出力することもできる。インバータ61は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0082】
インバータ61は、作動時に発熱する。インバータ61は、高温になると電気回路の劣化が進行しやすい。このため、インバータ61の温度は、電気回路の保護が可能な基準耐熱温度(例えば、130℃以下)より低い温度に維持されている必要がある。
【0083】
そこで、本実施形態では、インバータ61の外殻を形成するハウジング部に低温側熱媒体を流通させる冷却水通路が形成されている。インバータ61の冷却水通路は、低温側熱媒体とインバータ61とを熱交換させる熱交換部である。インバータ61の冷却水通路の出口には、モータジェネレータ62の冷却水通路の入口側が接続されている。
【0084】
モータジェネレータ62は、バッテリ60に間接的に接続された複数の電気機器の1つである。モータジェネレータ62は、インバータ61から供給された電力によって走行用の駆動力を出力する走行用電動モータである。さらに、モータジェネレータ62は、車両の減速中や降坂走行時に回生電力を発生させる発電装置である。
【0085】
モータジェネレータ62は、作動時に発熱する。モータジェネレータ62は、高温になると電気回路の劣化が進行しやすい。さらに、モータジェネレータ62は、低温になると摺動抵抗が増して円滑な回転駆動力を出力しにくくなる。このため、モータジェネレータ62の温度は、電気回路の保護と円滑な回転駆動力の出力を行うことのできる適切な温度範囲内(例えば、80℃以上、かつ、130℃以下)に維持されている必要がある。
【0086】
そこで、本実施形態では、モータジェネレータ62の外殻を形成するハウジング部に低温側熱媒体を流通させる冷却水通路が形成されている。モータジェネレータ62の冷却水通路は、低温側熱媒体とモータジェネレータ62とを熱交換させる熱交換部である。モータジェネレータ62の冷却水通路の出口には、トランスアクスル装置63の冷却水通路の入口側が接続されている。
【0087】
トランスアクスル装置63は、バッテリ60に間接的に接続された複数の電気機器の1つである。トランスアクスル装置63は、トランスミッションとファイナルギア・ディファレンシャルギアを一体化した装置である。
【0088】
トランスアクスル装置63は、作動時に発熱する。トランスアクスル装置63は、高温になると電気回路の劣化が進行しやすい。さらに、トランスアクスル装置63は、低温になるとトランスアクスル装置63を潤滑するためのオイルが循環し難くなる。このため、トランスアクスル装置63の温度は、電気回路の保護と円滑なオイル循環を行うことのできる適切な温度範囲内(例えば、-10℃以上、かつ、60℃以下)に維持されている必要がある。
【0089】
そこで、本実施形態では、トランスアクスル装置63の外殻を形成するハウジング部に低温側熱媒体を流通させる冷却水通路が形成されている。トランスアクスル装置63の冷却水通路は、低温側熱媒体とトランスアクスル装置63とを熱交換させる熱交換部である。トランスアクスル装置63の冷却水通路の出口には、機器側三方弁44cの流入口側が接続されている。
【0090】
また、トランスアクスル装置63の冷却水通路の出口側の冷媒通路には、トランスアクスル装置63から流出した低温側熱媒体の温度を検出する第3低温側熱媒体温度センサ47cが設けられている。第3低温側熱媒体温度センサ47cは、トランスアクスル装置63から流出した低温側熱媒体の温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。
【0091】
機器側三方弁44cは、1つの流入口および2つの流出口を有し、低温側ラジエータ43へ流入させる低温側熱媒体の流量に対するバイパス通路44dへ流入させる低温側熱媒体の流量の低温側流量比を調整する低温側流量比調整部である。機器側三方弁44cは、一方の流出口に第1低温側熱媒体合流部45aの他方の流入口が接続されており、他方の流出口にバイパス通路44dの冷媒流れ上流側が接続されている。
【0092】
機器側三方弁44cは、弁体の回転位置を調整することで、低温側ラジエータ43へ流入させる低温側熱媒体の流量と、バイパス通路44dへ流入させる低温側熱媒体の流量との流量比を調整する。また、機器側三方弁44cは、内部へ流入した低温側熱媒体を、低温側ラジエータ43およびバイパス通路44dのいずれか一方のみに流出させることもできる。
【0093】
機器側三方弁44cは、一方の流出口を全閉し、他方の流出口を開放することで、トランスアクスル装置63の冷却水通路から流出した低温側熱媒体の全流量を、低温側ラジエータ43を迂回させて、機器用ポンプ44bの吸入側へ戻す。これに対して、機器側三方弁44cは、一方の流出口を開放し、他方の流出口を全閉することで、トランスアクスル装置63の冷却水通路から流出した低温側熱媒体の全流量を、低温側ラジエータ43を通過させて、機器用ポンプ44bの吸入側へ戻す。機器側三方弁44cは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0094】
このように、電池側三方弁42および機器側三方弁44cは、低温側熱媒体回路40の回路構成を切り替える低温側熱媒体回路切替部としての機能を兼ね備えている。
【0095】
次に、室内空調ユニット50について説明する。室内空調ユニット50は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット50は、車室内最前部の計器盤(すなわち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0096】
室内空調ユニット50は、
図1に示すように、その外殻を形成する空調ケース51内に形成された空気通路内に内外気切替装置52、送風機53、室内蒸発器14、ヒータコア35、蒸発器温度センサ54、エアミックスドア56等を収容したものである。
【0097】
空調ケース51は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。空調ケース51は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)で成形されている。
【0098】
空調ケース51の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置52が配置されている。内外気切替装置52は、空調ケース51内へ導入する空気を内気(すなわち、車室内空気)と外気(すなわち、車室外空気)とに切り替えるものである。
【0099】
内外気切替装置52は、空調ケース51内へ内気を導入させる内気導入口52aおよび外気を導入させる外気導入口52bの開口面積を、内外気切替ドア52cによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させるものである。内外気切替ドア52cは、内外気切替ドア52c用の不図示の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。内外気切替装置52の送風空気流れ下流側には、送風機53が配置されている。
【0100】
送風機53は、内外気切替装置52を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風するものである。送風機53は、遠心多翼ファン53aを電動モータ53bで駆動する電動送風機である。送風機53は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
【0101】
送風機53の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器14およびヒータコア35が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器14は、ヒータコア35よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
【0102】
また、室内蒸発器14には、室内蒸発器14における冷媒蒸発温度(すなわち、蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ54が設けられている。具体的に、蒸発器温度センサ54は、室内蒸発器14の熱交換フィン温度を検出している。蒸発器温度センサ54は、室内蒸発器14の冷媒蒸発温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。
【0103】
空調ケース51内には、室内蒸発器14通過後の送風空気を、ヒータコア35を迂回して流す冷風バイパス通路55が設けられている。空調ケース51内の室内蒸発器14の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア35の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア56が配置されている。
【0104】
エアミックスドア56は、室内蒸発器14通過後の送風空気のうち、ヒータコア35側を通過する送風空気の風量と冷風バイパス通路55を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア56は、エアミックスドア56用の不図示の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0105】
空調ケース51内の冷風バイパス通路55の送風空気流れ下流側には、混合空間57が配置されている。混合空間57は、ヒータコア35によって加熱された送風空気と冷風バイパス通路55を通過して加熱されていない送風空気とを混合させる空間である。
【0106】
さらに、空調ケース51の送風空気流れ下流部には、混合空間57で混合された送風空気(すなわち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。
【0107】
この開口穴としては、いずれも不図示のフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0108】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたいずれも不図示のフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口に接続されている。
【0109】
したがって、エアミックスドア56が、ヒータコア35を通過させる風量と冷風バイパス通路55を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間57で混合される空調風の温度が調整される。そして、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(すなわち、空調風)の温度が調整される。
【0110】
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、いずれも不図示のフェイスドア、フットドア、およびデフロスタドアが配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整するものである。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整するものである。デフロスタドアは、フロスタ開口穴の開口面積を調整するものである。
【0111】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置を構成するものである。これらのドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0112】
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
【0113】
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開とするとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0114】
さらに、乗員が後述する操作パネル71に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開としてデフロスタ吹出口からフロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0115】
次に、本実施形態の制御装置70の概要について、
図2を用いて説明する。制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、制御装置70は、ROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器等の作動を制御する。なお、制御装置70のROMおよびRAMは、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。
【0116】
また、制御装置70の入力側には、
図2に示すように、上記した第1冷媒温度センサ19a~第3冷媒温度センサ19c、第1冷媒圧力センサ19d~第3冷媒圧力センサ19fが接続されている。また、制御装置70の入力側には、上記した第1高温側熱媒体温度センサ37a、第2高温側熱媒体温度センサ37b、第1低温側熱媒体温度センサ47a~第3低温側熱媒体温度センサ47c、蒸発器温度センサ54が接続されている。さらに、制御装置70の入力側には、内気温センサ72、外気温センサ73、日射センサ74等が接続されている。制御装置70には、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
【0117】
内気温センサ72は、車室内温度(内気温)を検出する内気温検出部である。外気温センサ73は、車室外温度(外気温)を検出する外気温検出部である。日射センサ74は、車室内へ照射される日射量を検出する日射量検出部である。
【0118】
さらに、制御装置70の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル71が接続され、この操作パネル71に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0119】
操作パネル71に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、室内蒸発器14での送風空気の冷却またはヒータコア35での送風空気の加熱を要求するエアコンスイッチがある。また、各種操作スイッチとしては、送風機53の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度を設定する温度設定スイッチ、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード切替スイッチ等がある。
【0120】
また、制御装置70の出力側には、
図2に示すように、圧縮機12、高温側熱媒体ポンプ31、低温側熱媒体ポンプ41、機器用ポンプ44b、送風機53、エアミックスドア56、電気ヒータ32が接続されている。また、制御装置70の出力側には、第1膨張弁17a、第2膨張弁17b、高温側流量調整弁33、電池側三方弁42、機器側三方弁44cを動作させる電動アクチュエータが接続されている。さらに、制御装置70の出力側には、インバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63等が接続されている。本実施形態の制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器等の動作を制御する。
【0121】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態の車両用空調装置1は、車室内に送風する送風空気を加熱および冷却するだけでなく、バッテリ60を冷却する機能を有している。このため、冷凍サイクル装置10では、冷媒回路を切り替えて、以下の運転モードでの運転を行うことができる。
【0122】
これらの運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、乗員の操作によって操作パネル71のオートスイッチが投入されて、車室内の自動制御が設定された際に、内気温センサ72、外気温センサ73、日射センサ74等が検出する検出信号に基づいて制御装置70によって実行される。
【0123】
(1)冷房モード
冷房モードは、バッテリ60の冷却を行うことなく車室内の冷房を行う運転モードである。
【0124】
冷房モードにおいて、制御装置70は、冷凍サイクル装置10を冷房モードの冷媒回路に切り替える。具体的に、制御装置70は、第1膨張弁17aを絞り状態とするとともに、第2膨張弁17bを全閉状態とする。制御装置70は、第2冷媒温度センサ19bおよび第2冷媒圧力センサ19eから送信される検出信号に基づいて、室内蒸発器14の出口側冷媒の過熱度が予め定められる目標過熱度となるように、第1膨張弁17aの開度を決定する。
【0125】
また、制御装置70は、高温側流量調整弁33へ流入する高温側熱媒体がヒータコア35へ流出せず、高温側ラジエータ34へのみ流出するように高温側流量調整弁33の弁体の回転位置を調整する。さらに、制御装置70は、機器側三方弁44cへ流入する低温側熱媒体がバイパス通路44dへ流出せず、低温側ラジエータ43へのみ流出するように機器側三方弁44cの弁体の回転位置を調整する。また、制御装置70は、電池側三方弁42を全閉状態にする。
【0126】
さらに、制御装置70は、室内蒸発器14を通過した送風空気の全風量が冷風バイパス通路55を通過するように、エアミックスドア56の電動アクチュエータを作動させる。そして、制御装置70は、圧縮機12、高温側熱媒体ポンプ31、機器用ポンプ44b、送風機53が作動するため制御信号を出力する。
【0127】
したがって、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13→冷媒分岐部18→第1膨張弁17a→室内蒸発器14→空調流入配管11a→接続装置100→圧縮機流出配管11c→圧縮機12の順に冷媒が循環する。そして、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、第2膨張弁17bが全閉されるため、冷却部流入配管11bに冷媒が流れない。
【0128】
また、冷房モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体ポンプ31によって、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出した高温側熱媒体が高温側ラジエータ34に流れて高温側熱媒体ポンプ31の吸入口側に戻る。
【0129】
そして、冷房モードの低温側熱媒体回路40では、機器用ポンプ44b→インバータ61の冷却水通路→モータジェネレータ62の冷却水通路→トランスアクスル装置63の冷却水通路→低温側ラジエータ43→機器用ポンプ44bの順に低温側熱媒体が循環する。
【0130】
このように、冷房モードにおいて、接続装置100には、室内蒸発器14から流出した冷媒が空調流入配管11aを介して急流入口121から流入するが、低流入口131からは冷媒が流入しない。そして、接続装置100は、急流入口121から流入した冷媒を冷媒流出口143から流出させて圧縮機流出配管11cへ導く。
【0131】
また、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器13が圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として高温側熱媒体を加熱し、第1膨張弁17aが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器14において送風機53が送風した送風空気から吸熱して冷媒を蒸発させて送風空気を冷却する。
【0132】
また、冷房モードの高温側熱媒体回路30では、高温側ラジエータ34が水-冷媒熱交換器13で加熱された高温側熱媒体を放熱する。そして、冷房モードの低温側熱媒体回路40では、低温側ラジエータ43がインバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれの発熱によって加熱された低温側熱媒体を放熱する。
【0133】
したがって、冷房モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器14にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことで、車室内の冷房を行うことができる。また、冷房モードの車両用空調装置1では、低温側ラジエータ43によって冷却された低温側熱媒体を低温側熱媒体回路40で循環させることで、インバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれを冷却することができる。
【0134】
(2)暖房モード
暖房モードは、バッテリ60の冷却を行うことなく、車室内の暖房を行う運転モードである。
【0135】
暖房モードにおいて、制御装置70は、冷凍サイクル装置10を暖房モードの冷媒回路に切り替える。具体的に、制御装置70は、第1膨張弁17aを全閉状態とするとともに、第2膨張弁17bを絞り状態とする。制御装置70は、第3冷媒温度センサ19cおよび第3冷媒圧力センサ19fから送信される検出信号に基づいて、チラー16の出口側冷媒の過冷却度が予め定められる目標過冷却度となるように、第2膨張弁17bの開度を決定する。
【0136】
また、制御装置70は、高温側流量調整弁33へ流入する高温側熱媒体が高温側ラジエータ34へ流出せず、ヒータコア35へのみ流出するように高温側流量調整弁33の弁体の回転位置を調整する。
【0137】
さらに、制御装置70は、電池側三方弁42へ流入する低温側熱媒体がバッテリ60の冷却水通路へ流出せず、低温側ラジエータ43へのみ流出するように電池側三方弁42の弁体の回転位置を調整する。そして、制御装置70は、機器側三方弁44cへ流入する低温側熱媒体が低温側ラジエータ43へ流出せず、バイパス通路44dへのみ流出するように機器側三方弁44cの弁体の回転位置を調整する。
【0138】
また、制御装置70は、室内蒸発器14を通過した送風空気の全風量がヒータコア35を通過するように、エアミックスドア56の電動アクチュエータを作動させる。さらに、制御装置70は、ヒータコア35から流出した高温側熱媒体の温度が予め定めた基準温度以上となるように、第1高温側熱媒体温度センサ37aから送信される検出信号に基づいて、電気ヒータ32の加熱能力を必要に応じて調整する。
【0139】
そして、制御装置70は、第2高温側熱媒体温度センサ37bから送信される検出信号に基づいて、圧縮機12の回転数を調整する。また、制御装置70は、高温側熱媒体ポンプ31、低温側熱媒体ポンプ41、送風機53が作動するため制御信号を出力する。
【0140】
したがって、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13→冷媒分岐部18→第2膨張弁17b→チラー16→冷却部流入配管11b→接続装置100→圧縮機流出配管11c→圧縮機12の順に冷媒が循環する。そして、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、第1膨張弁17aが全閉されるため、空調流入配管11aに冷媒が流れない。
【0141】
また、暖房モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体ポンプ31によって、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出した高温側熱媒体がヒータコア35に流れて高温側熱媒体ポンプ31の吸入口に戻る。
【0142】
そして、暖房モードの低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体ポンプ41によって、チラー16の水通路から流出した低温側熱媒体が低温側ラジエータ43に流れて低温側熱媒体ポンプ41の吸入口に戻る。さらに、暖房モードの低温側熱媒体回路40では、機器用ポンプ44b→インバータ61の冷却水通路→モータジェネレータ62の冷却水通路→トランスアクスル装置63の冷却水通路→バイパス通路44d→機器用ポンプ44bの順に低温側熱媒体が循環する。
【0143】
このように、暖房モードにおいて、接続装置100には、チラー16から流出した冷媒が冷却部流入配管11bを介して低流入口131から流入するが、急流入口121からは冷媒が流入しない。そして、接続装置100は、低流入口131から流入した冷媒を冷媒流出口143から流出させて圧縮機流出配管11cへ導く。
【0144】
また、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器13が圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として高温側熱媒体を加熱し、第2膨張弁17bが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10では、チラー16が低温側熱媒体回路40を流れる低温側熱媒体から吸熱して低温側熱媒体を冷却する。
【0145】
また、暖房モードの高温側熱媒体回路30では、水-冷媒熱交換器13および電気ヒータ32によって加熱された高温側熱媒体がヒータコア35において送風機53から送風された送風空気と熱交換して、送風空気を加熱する。
【0146】
そして、暖房モードの低温側熱媒体回路40では、低温側ラジエータ43が、高温側ラジエータ34を通過した外気から吸熱することで低温側熱媒体を加熱する。そして、当該加熱された低温側熱媒体は、チラー16において冷凍サイクル装置10を循環する冷媒と熱交換して冷媒を加熱する。さらに、暖房モードの低温側熱媒体回路40では、インバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれの自己発熱によって加熱された低温側熱媒体をバイパス通路44dを経由して循環させることができる。
【0147】
したがって、暖房モードの車両用空調装置1では、ヒータコア35にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことで、車室内の暖房を行うことができる。さらに、加熱された低温側熱媒体と冷媒とを熱交換して冷媒を加熱することで、冷凍サイクル装置10を循環する冷媒の加熱を行うことができる。
【0148】
また、インバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれの作動によって発生する熱をインバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63の加熱に用いることができる。
【0149】
(3)除湿暖房モード
除湿暖房モードは、バッテリ60の冷却を行うことなく車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0150】
除湿暖房モードにおいて、制御装置70は、冷凍サイクル装置10を除湿暖房モードの冷媒回路に切り替える。具体的に、制御装置70は、第1膨張弁17aを絞り状態とする。制御装置70は、第2冷媒温度センサ19bおよび第2冷媒圧力センサ19eから送信される検出信号に基づいて、室内蒸発器14の出口側冷媒の過熱度が予め定められる目標過熱度となるように、第1膨張弁17aの開度を決定する。
【0151】
また、制御装置70は、温度設定スイッチによって設定される車室内の目標温度等に応じて、第2膨張弁17bを絞り状態または全閉状態とする。制御装置70は、第2膨張弁17bを絞り状態とする際に、第3冷媒温度センサ19cおよび第3冷媒圧力センサ19fから送信される検出信号に基づいて、チラー16の出口側冷媒の過冷却度が予め定められる目標過冷却度となるように、開度を決定する。
【0152】
また、制御装置70は、高温側流量調整弁33へ流入する高温側熱媒体が、高温側ラジエータ34およびヒータコア35へ流出するように高温側流量調整弁33の弁体の回転位置を調整する。制御装置70は、温度設定スイッチによって設定される車室内の目標温度等に応じて、高温側流量調整弁33の弁体の回転位置を調整して、高温側ラジエータ34およびヒータコア35それぞれへ流出する高温側熱媒体の流量を変化させる。
【0153】
さらに、制御装置70は、第2膨張弁17bを絞り状態とする際に、電池側三方弁42へ流入する低温側熱媒体がバッテリ60の冷却水通路へ流出せず、低温側ラジエータ43へのみ流出するように電池側三方弁42の弁体の回転位置を調整する。また、制御装置70は、第2膨張弁17bを全閉状態とする際には、電池側三方弁42を全閉状態とする。
【0154】
そして、制御装置70は、機器側三方弁44cへ流入する低温側熱媒体が低温側ラジエータ43およびバイパス通路44dへ流出するように機器側三方弁44cの弁体の回転位置を調整する。制御装置70は、第3低温側熱媒体温度センサ47cから送信される検出信号に基づいて機器側三方弁44cの弁体の回転位置を調整することで、低温側ラジエータ43およびバイパス通路44dそれぞれへ流入させる低温側熱媒体の流量を調整する。
【0155】
また、制御装置70は、車室内へ送風される送風空気の温度が目標吹出温度に近づくように、エアミックスドア56の電動アクチュエータを作動させてヒータコア35側および冷風バイパス通路55を通過させる送風空気の風量を調整する。さらに、制御装置70は、ヒータコア35から流出した高温側熱媒体の温度が予め定めた基準温度以上となるように、第1高温側熱媒体温度センサ37aから送信される検出信号に基づいて、電気ヒータ32の加熱能力を必要に応じて調整する。
【0156】
そして、制御装置70は、第2高温側熱媒体温度センサ37bから送信される検出信号に基づいて、圧縮機12の回転数を調整する。また、制御装置70は、高温側熱媒体ポンプ31、機器用ポンプ44b、送風機53が作動するため制御信号を出力する。なお、制御装置70は、第2膨張弁17bを絞り状態とする際に、低温側熱媒体ポンプ41が作動するための制御信号を出力し、第2膨張弁17bを全閉状態とする際に、低温側熱媒体ポンプ41が作動するための制御信号を出力しない。
【0157】
したがって、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13→冷媒分岐部18→第1膨張弁17a→室内蒸発器14→空調流入配管11a→接続装置100→圧縮機流出配管11c→圧縮機12の順に冷媒が循環する。
【0158】
また、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、第2膨張弁17bが絞り状態になると、冷媒分岐部18で冷媒が分岐して流れる。この場合、冷凍サイクル装置10では、冷媒分岐部18で分岐した冷媒が第2膨張弁17b→チラー16→冷却部流入配管11b→接続装置100→圧縮機流出配管11c→圧縮機12の順に流れる。
【0159】
そして、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10において、第2膨張弁17bが全閉状態になると、冷却部流入配管11bに冷媒が流れない。
【0160】
また、除湿暖房モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体ポンプ31によって、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出した高温側熱媒体が高温側ラジエータ34およびヒータコア35に流れる。そして、高温側ラジエータ34およびヒータコア35から流出した高温側熱媒体は、高温側熱媒体合流部36で合流し、高温側熱媒体ポンプ31の吸入口に戻る。
【0161】
また、除湿暖房モードの低温側熱媒体回路40では、第2膨張弁17bが絞り状態の際に、低温側熱媒体ポンプ41によって、チラー16の水通路から流出した低温側熱媒体が低温側ラジエータ43に流れて低温側熱媒体ポンプ41の吸入口に戻る。さらに、除湿暖房モードの低温側熱媒体回路40では、機器用ポンプ44b→インバータ61の冷却水通路→モータジェネレータ62の冷却水通路→トランスアクスル装置63の冷却水通路の順に低温側熱媒体が流れ、機器側三方弁44cに流入する。そして、機器側三方弁44cに流入した低温側熱媒体は、機器側三方弁44cの弁体の回転位置に応じて、低温側ラジエータ43およびバイパス通路44dに流れて、機器用ポンプ44bの吸入口に戻る。
【0162】
このように、除湿暖房モードにおいて、接続装置100には、室内蒸発器14から流出した冷媒が空調流入配管11aを介して急流入口121から流入する。また、第2膨張弁17bが絞り状態になると、接続装置100には、チラー16から流出した冷媒が冷却部流入配管11bを介して低流入口131から流入する。これに対して、第2膨張弁17bが全閉状態になると、接続装置100には、低流入口131からは冷媒が流入しない。
【0163】
そして、接続装置100は、急流入口121および低流入口131から流入した冷媒を冷媒流出口143から流出させて圧縮機流出配管11cへ導く。
【0164】
また、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器13が圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として高温側熱媒体を加熱し、第1膨張弁17aが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器14が、送風機53から送風された送風空気から吸熱して冷媒を蒸発させて送風空気を冷却および除湿する。
【0165】
また、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、第2膨張弁17bが絞り状態の際に、第2膨張弁17bが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10では、チラー16が、低温側熱媒体回路40を流れる低温側熱媒体から吸熱して低温側熱媒体を冷却する。
【0166】
また、除湿暖房モードの高温側熱媒体回路30では、高温側ラジエータ34が水-冷媒熱交換器13で加熱された高温側熱媒体を放熱する。さらに、除湿暖房モードの高温側熱媒体回路30では、水-冷媒熱交換器13および電気ヒータ32によって加熱された高温側熱媒体がヒータコア35において送風機53から送風された送風空気と熱交換して、送風空気を加熱する。
【0167】
また、除湿暖房モードの低温側熱媒体回路40では、第2膨張弁17bが絞り状態の際には、暖房モードと同様に、外気から吸熱して加熱された低温側熱媒体がチラー16において冷媒と熱交換して冷媒を加熱する。さらに、除湿暖房モードの低温側熱媒体回路40では、インバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれの自己発熱にて加熱された低温側熱媒体の一部の流量がバイパス通路44dに流れ、残りの流量が低温側ラジエータ43に流す。
【0168】
したがって、除湿暖房モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器14にて冷却および除湿され、ヒータコア35にて再加熱された送風空気が車室内へ吹き出される。これにより、車両用空調装置1は、車室内の除湿暖房を行うことができる。
【0169】
また、加熱された低温側熱媒体と冷媒とを熱交換して冷媒を加熱することで、冷凍サイクル装置10を循環する冷媒の加熱を行うことができる。さらに、低温側ラジエータ43によって冷却された低温側熱媒体を低温側熱媒体回路40で循環させることで、インバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれを冷却したり加熱したりすることができる。
【0170】
(4)冷却モード
冷却モードは、車室内の冷房および暖房を行うことなく、バッテリ60の冷却を行う運転モードである。
【0171】
冷却モードにおいて、制御装置70は、冷凍サイクル装置10を冷却モードの冷媒回路に切り替える。具体的に、制御装置70は、第1膨張弁17aを全閉状態とするとともに、第2膨張弁17bを絞り状態とする。制御装置70は、第3冷媒温度センサ19cおよび第3冷媒圧力センサ19fから送信される検出信号に基づいて、チラー16の出口側冷媒の過冷却度が予め定められる目標過冷却度となるように、第2膨張弁17bの開度を決定する。
【0172】
また、制御装置70は、高温側流量調整弁33へ流入する高温側熱媒体がヒータコア35へ流出せず、高温側ラジエータ34へのみ流出するように高温側流量調整弁33の弁体の回転位置を調整する。
【0173】
さらに、制御装置70は、電池側三方弁42へ流入する低温側熱媒体がバッテリ60の冷却水通路へ流入するように電池側三方弁42の弁体の回転位置を調整する。制御装置70は、第1低温側熱媒体温度センサ47aから送信される検出信号に基づいて電池側三方弁42の弁体の回転位置を調整することで、バッテリ60の冷却水通路へ流入する低温側熱媒体の流量を変化させる。
【0174】
そして、制御装置70は、機器側三方弁44cへ流入する低温側熱媒体がバイパス通路44dへ流出せず、低温側ラジエータ43へのみ流出するように機器側三方弁44cの弁体の回転位置を調整する。また、制御装置70は、圧縮機12、高温側熱媒体ポンプ31、低温側熱媒体ポンプ41、機器用ポンプ44bが作動するため制御信号を出力する。
【0175】
したがって、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13→冷媒分岐部18→第2膨張弁17b→チラー16→冷却部流入配管11b→接続装置100→圧縮機流出配管11c→圧縮機12の順に冷媒が循環する。そして、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、第1膨張弁17aが全閉されるため、空調流入配管11aに冷媒が流れない。
【0176】
また、冷却モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体ポンプ31によって、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出した高温側熱媒体が高温側ラジエータ34に流れて高温側熱媒体ポンプ31の吸入口に戻る。
【0177】
そして、冷却モードの低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体ポンプ41によって、チラー16の水通路から流出した低温側熱媒体がバッテリ60の冷却水通路に流れて低温側熱媒体ポンプ41の吸入口に戻る。また、冷却モードの低温側熱媒体回路40では、機器用ポンプ44b→インバータ61の冷却水通路→モータジェネレータ62の冷却水通路→トランスアクスル装置63の冷却水通路→低温側ラジエータ43→機器用ポンプ44bの順に低温側熱媒体が循環する。
【0178】
このように、冷却モードにおいて、接続装置100には、チラー16から流出した冷媒が冷却部流入配管11bを介して低流入口131から流入するが、急流入口121からは流入しない。そして、接続装置100は、低流入口131から流入した冷媒を冷媒流出口143から流出させて圧縮機流出配管11cへ導く。
【0179】
また、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器13が圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として高温側熱媒体を加熱し、第2膨張弁17bが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10では、チラー16が低温側熱媒体回路40を流れる低温側熱媒体から吸熱して冷媒を蒸発させて低温側熱媒体を冷却する。
【0180】
また、冷却モードの高温側熱媒体回路30では、高温側ラジエータ34が水-冷媒熱交換器13で加熱された高温側熱媒体を放熱する。そして、冷却モードの低温側熱媒体回路40では、チラー16で冷却された低温側熱媒体がバッテリ60の冷却水通路においてバッテリ60から吸熱する。さらに、冷却モードの低温側熱媒体回路40では、低温側ラジエータ43がインバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれの発熱によって加熱された低温側熱媒体を放熱する。
【0181】
したがって、冷却モードの車両用空調装置1では、チラー16で冷却された低温側熱媒体をバッテリ60の冷却水通路に循環させて、バッテリ60の冷却を行うことができる。また、冷却モードの車両用空調装置1では、低温側ラジエータ43によって冷却された低温側熱媒体を低温側熱媒体回路40で循環させることで、インバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれを冷却することができる。
【0182】
ところで、本実施形態の車両用空調装置1は、上述の各空調モードで作動する際に、バッテリ60の冷却が必要となる運転条件では、それぞれの空調モードに冷却モードを組合せた運転モードを実行することができる。バッテリ60の冷却が必要となる運転条件とは、例えば、バッテリ60が作動することによって、バッテリ60の温度が所定のバッテリ基準温度より温度が高くなった場合である。
【0183】
以下に、空調モードに冷却モードを組合せた運転モードの一例として、冷房モードに冷却モードを組合せた冷房冷却モードについて、説明する。なお、本実施形態の車両用空調装置1は、暖房モードに冷却モードを組合せた運転モードおよび除湿暖房モードに冷却モードを組合せた運転モードでも作動可能である。
【0184】
(5)冷房冷却モード
冷房冷却モードは、車室内の冷房を行うとともに、バッテリ60の冷却を行う運転モードである。
【0185】
冷房冷却モードにおいて、制御装置70は、冷凍サイクル装置10を冷房冷却モードの冷媒回路に切り替える。具体的に、制御装置70は、第1膨張弁17aおよび第2膨張弁17bを絞り状態とする。
【0186】
制御装置70は、第2冷媒温度センサ19bおよび第2冷媒圧力センサ19eから送信される検出信号に基づいて、室内蒸発器14の出口側冷媒の過熱度が予め定められる目標過熱度となるように、第1膨張弁17aの開度を決定する。また、制御装置70は、第3冷媒温度センサ19cおよび第3冷媒圧力センサ19fから送信される検出信号に基づいて、チラー16の出口側冷媒の過冷却度が予め定められる目標過冷却度となるように、第2膨張弁17bの開度を決定する。
【0187】
また、制御装置70は、高温側流量調整弁33へ流入する高温側熱媒体がヒータコア35へ流出せず、高温側ラジエータ34へのみ流出するように高温側流量調整弁33の弁体の回転位置を調整する。
【0188】
さらに、制御装置70は、電池側三方弁42へ流入する低温側熱媒体がバッテリ60の冷却水通路へ流入するように電池側三方弁42の弁体の回転位置を調整する。制御装置70は、第1低温側熱媒体温度センサ47aから送信される検出信号に基づいて電池側三方弁42の弁体の回転位置を調整することで、バッテリ60の冷却水通路へ流入する低温側熱媒体の流量を変化させる。
【0189】
そして、制御装置70は、機器側三方弁44cへ流入する低温側熱媒体がバイパス通路44dへ流出せず、低温側ラジエータ43へのみ流出するように機器側三方弁44cの弁体の回転位置を調整する。
【0190】
また、制御装置70は、室内蒸発器14を通過した送風空気の全風量が冷風バイパス通路55を通過するように、エアミックスドア56の電動アクチュエータを作動させる。そして、制御装置70は、圧縮機12、高温側熱媒体ポンプ31、低温側熱媒体ポンプ41、機器用ポンプ44b、送風機53が作動するため制御信号を出力する。
【0191】
したがって、冷房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、冷媒が圧縮機12→水-冷媒熱交換器13→冷媒分岐部18の順に流れ、冷媒分岐部18で分岐される。そして、冷媒分岐部18で分岐された一方の冷媒は、第1膨張弁17a→室内蒸発器14→空調流入配管11a→接続装置100→圧縮機流出配管11c→圧縮機12の順に流れる。また、冷媒分岐部18で分岐された他方の冷媒は、第2膨張弁17b→チラー16→冷却部流入配管11b→接続装置100→圧縮機流出配管11c→圧縮機12の順に流れる。
【0192】
また、冷房冷却モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体ポンプ31によって、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出した高温側熱媒体が高温側ラジエータ34に流れて高温側熱媒体ポンプ31の吸入口側に戻る。
【0193】
そして、冷房冷却モードの低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体ポンプ41によって、チラー16の水通路から流出した低温側熱媒体がバッテリ60の冷却水通路に流れて低温側熱媒体ポンプ41の吸入口に戻る。また、冷房冷却モードの低温側熱媒体回路40では、機器用ポンプ44b→インバータ61の冷却水通路→モータジェネレータ62の冷却水通路→トランスアクスル装置63の冷却水通路→低温側ラジエータ43→機器用ポンプ44bの順に低温側熱媒体が循環する。
【0194】
このように、冷房冷却モードにおいて、接続装置100には、室内蒸発器14から流出した冷媒が空調流入配管11aを介して急流入口121から流入する。さらに、接続装置100は、チラー16から流出した冷媒が冷却部流入配管11bを介して低流入口131から流入する。そして、接続装置100は、急流入口121および低流入口131から流入した冷媒を冷媒流出口143から流出させて圧縮機流出配管11cへ導く。
【0195】
また、冷房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器13が圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として高温側熱媒体を加熱し、第1膨張弁17aおよび第2膨張弁17bが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器14が、送風機53から送風された送風空気から吸熱して冷媒を蒸発させて送風空気を冷却する。さらに、冷凍サイクル装置10では、チラー16が低温側熱媒体回路40を流れる低温側熱媒体から吸熱して冷媒を蒸発させて低温側熱媒体を冷却する。
【0196】
また、冷房冷却モードの高温側熱媒体回路30では、高温側ラジエータ34が水-冷媒熱交換器13で加熱された高温側熱媒体を放熱する。
【0197】
そして、冷房冷却モードの低温側熱媒体回路40では、チラー16で冷却された低温側熱媒体がバッテリ60の冷却水通路においてバッテリ60から吸熱する。さらに、冷却モードの低温側熱媒体回路40では、低温側ラジエータ43がインバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれの発熱によって加熱された低温側熱媒体を放熱する。
【0198】
したがって、冷房冷却モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器14にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことで、車室内の冷房を行うことができる。さらに、チラー16で冷却された低温側熱媒体をバッテリ60の冷却水通路に循環させて、バッテリ60の冷却を行うことができる。そして、冷却モードの車両用空調装置1では、低温側ラジエータ43によって冷却された低温側熱媒体を低温側熱媒体回路40で循環させることで、インバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれを冷却することができる。
【0199】
続いて、接続装置100の詳細について、
図3~
図11を参照して説明する。ここで、
図3等に示す上下を示す矢印は、接続装置100が使用されている状況での重力の方向を基準とした上下方向DR1を示している。また、
図3等に示す前後、左右を示す各矢印は、接続装置100において便宜的に前と決めた方向を基準とする前後方向DR2および左右方向DR3を示すものである。なお、上下方向DR1は、製造、販売、輸送等、接続装置100が実際に使用されていない状況での接続装置100の姿勢を限定するものでない。また、前後方向DR2および左右方向DR3は、接続装置100の姿勢を限定するものでない。そして、
図4は、接続装置100の前後方向DR2における中心を通り、前後方向DR2に直交する面の断面形状を示している。
【0200】
接続装置100は、
図3および
図4に示すように、筐体110と、筐体110の内部に形成された冷媒通路である急上流路部120、低上流路部130、下流側流路部140を備えている。
【0201】
筐体110は、前後方向DR2に延び、当該前後方向DR2に直交する面の断面形状が五角形状である五角柱形状であって、例えば、樹脂材料で構成されている。筐体110は、上下方向DR1の下側に設けられた底面部111と、底面部111の左右方向DR3の両側端部それぞれから上下方向DR1に沿って上側に向かって延びる右側面部112および左側面部113とを有する。
【0202】
さらに、筐体110は、右側面部112の上下方向DR1の端部のうち、上側の端部から左右方向DR3の左側に傾斜して上下方向DR1の上側に延びる右斜面部114を有する。また、筐体110は、左側面部113の上下方向DR1の端部のうち、上側の端部から左右方向DR3の右側に傾斜して上下方向DR1の上側に延びる左斜面部115を有する。
【0203】
前後方向DR2に直交する面の断面形状において、右斜面部114および左斜面部115は、底面部111の左右方向DR3の中心を通り上下方向DR1に沿って延びる直線を対象軸とした左右対称な形状であって、互いの傾斜する角度が同じである。また、右斜面部114の右側面部112が連なる側とは反対側の端部が、左斜面部115の左側面部113が連なる側とは反対側の端部に、連なっている。なお、筐体110は、アルミニウム等の金属材料で構成されていてもよい。
【0204】
図4に示すように、筐体110の内部には、右斜面部114の表面から底面部111に向かって底面部111まで貫通しないで延びる急上流路部120が形成されている。また、筐体110の内部には、左斜面部115の表面から右側面部112に向かって右側面部112まで貫通しないで延びる低上流路部130が形成されている。さらに、筐体110の内部には、底面部111の表面から上下方向DR1の上側に向かって右斜面部114および左斜面部115まで貫通しないで延びる下流側流路部140が形成されている。
【0205】
急上流路部120は、右斜面部114の表面のうち、上下方向DR1の中心より上側の部位から底面部111の左右方向DR3の中心より左側の部位に向かって延びている。また、急上流路部120は、急上流路部120の両端部のうち、右斜面部114の表面に位置付けられる側とは反対側の端部に、下流側流路部140の両端部のうち、底面部111の表面に位置付けられる側とは反対側の端部が、接続されている。すなわち、急上流路部120は、急上流路部120の上下方向DR1の下側の端部に、下流側流路部140の上下方向DR1の上側の端部が、接続されている。
【0206】
低上流路部130は、左斜面部115の表面のうち、上下方向DR1の中心より下側の部位から右側面部112の上下方向DR1の中心より下側の部位に向かって延びている。また、低上流路部130は、低上流路部130の両端部のうち、左斜面部115の表面に位置付けられる側とは反対側の端部に、下流側流路部140における両端部とは異なる冷媒通路の途中の部位が、接続されている。すなわち、低上流路部130は、低上流路部130の上下方向DR1の下側の端部に、下流側流路部140の上下方向DR1の上側端部と下側端部との間の部位が、接続されている。
【0207】
そして、急上流路部120および低上流路部130は、互いに直接接続されておらず、下流側流路部140を介して接続されている。このため、低上流路部130を流れる冷媒は、急上流路部120を流れる冷媒に、直接合流しない。本実施形態において、急上流路部120が第1傾斜上流側流路部として機能し、低上流路部130が第2傾斜上流側流路部として機能する。
【0208】
急上流路部120は、空調流入配管11aから流出した冷媒を筐体110の内部に導くための冷媒通路を形成するものであって、空調流入配管11aと一対一で接続される。急上流路部120は、冷媒流れ上流側に急上流路部120に冷媒を流入させる急流入口121を有し、冷媒流れ下流側に下流側流路部140に連通する急合流口122を有する。
【0209】
また、急上流路部120は、下流側流路部140が延びる方向とは異なる方向に沿って直線状に延びている。急上流路部120が延びる方向については後述する。
【0210】
急上流路部120は、急上流路部120の内径である第1内径φ1が空調流入配管11aの外径より僅かに大きく形成され、急流入口121から急上流路部120の内部へ空調流入配管11aを挿入可能に形成されている。
【0211】
急上流路部120は、第1内径φ1が冷媒流れ上流側から冷媒流れ下流側に至るまで等しく形成されている。第1内径φ1は、急上流路部120が延びる方向に直交する方向の断面形状における直径である。
【0212】
低上流路部130は、冷却部流入配管11bから流出した冷媒を筐体110の内部に導くための冷媒通路を形成するものであって、冷却部流入配管11bと一対一で接続される。低上流路部130は、冷媒流れ上流側に低上流路部130に冷媒を流入させる低流入口131を有し、冷媒流れ下流側に下流側流路部140に連通する低合流口132を有する。
【0213】
また、低上流路部130は、下流側流路部140が延びる方向および急上流路部120が延びる方向とは異なる方向に沿って直線状に延びている。低上流路部130が延びる方向については後述する。
【0214】
低上流路部130は、低上流路部130の内径である第2内径φ2が冷却部流入配管11bの外径より僅かに大きく形成され、低流入口131から低上流路部130の内部へ冷却部流入配管11bを挿入可能に形成されている。
【0215】
低上流路部130は、第2内径φ2が冷媒流れ上流側から冷媒流れ下流側に至るまで等しく形成されている。第2内径φ2は、低上流路部130が延びる方向に直交する方向の断面形状における直径である。本実施形態では、第1内径φ1と第2内径φ2とが互いに等しい大きさで形成されている。
【0216】
下流側流路部140は、急上流路部120および低上流路部130を介して筐体110の内部に流入された冷媒を筐体110の外部へ流出させるための冷媒通路を形成するものである。下流側流路部140は、圧縮機流出配管11cと一対一で接続される。
【0217】
下流側流路部140は、冷媒流れ上流側に急上流路部120を流れる冷媒を下流側流路部140に合流させる第1合流部141を有する。また、下流側流路部140は、第1合流部141よりも冷媒流れ下流側に、低上流路部130を流れる冷媒を下流側流路部140に合流させる第2合流部142を有する。そして、下流側流路部140は、冷媒流れ最下流側に圧縮機流出配管11cが挿入される冷媒流出口143を有する。
【0218】
また、下流側流路部140は、底面部111の表面の略中央から、右斜面部114および左斜面部115が連なる部位に向かって、上下方向DR1に沿って直線状に延びている。すなわち、本実施形態の下流側流路部140が延びる方向は、左右方向DR3および前後方向DR2を含まず、上下方向DR1に沿っている。
【0219】
ここで、冷媒流出口143の中心を通り、下流側流路部140が延びる方向に沿う直線L1と、急流入口121の中心を通り、急上流路部120が延びる方向に沿う直線L2とが交差する部分を第1合流部141とする。また、冷媒流出口143の中心を通り、下流側流路部140が延びる方向に沿う直線L1と、低流入口131の中心を通り、低上流路部130が延びる方向に沿う直線L3とが交差する部分を第2合流部142とする。
【0220】
本実施形態では、第1合流部141および第2合流部142は、下流側流路部140において、互いに異なる位置に設けられている。具体的に、第1合流部141は、第2合流部142よりも下流側流路部140における冷媒流れ上流側となる位置に設けられる。第1合流部141は、急上流路部120を流れる冷媒が流れ込む部分である。
【0221】
第2合流部142は、第1合流部141を介して急上流路部120から下流側流路部140に流入した冷媒と低上流路部130から下流側流路部140に流入する冷媒とが流れ込む部分である。本実施形態では、第1合流部141および第2合流部142が合流部として機能する。
【0222】
また、下流側流路部140は、冷媒流れ最下流側である冷媒流出口143が急上流路部120の冷媒流れ最上流側である急流入口121よりも上下方向DR1の下側の位置に設けられている。さらに、下流側流路部140は、冷媒流出口143が低上流路部130の冷媒流れ最上流側である低流入口131よりも上下方向DR1の下側の位置に設けられている。換言すれば、冷媒流出口143は、急流入口121および低流入口131よりも鉛直方向下側に位置付けられている。
【0223】
また、冷媒流出口143は、開口する方向が鉛直方向の下向きとなるように底面部111に形成されている。そして、接続装置100は、
図5に示すように、接続装置100が車両用空調装置1に適用された際に、冷媒流出口143が圧縮機12の冷媒吸入口12aよりも鉛直方向上側となる位置に配置される。
【0224】
下流側流路部140は、下流側流路部140の内径である第3内径φ3が圧縮機流出配管11cの外径より僅かに大きく形成され、冷媒流出口143から下流側流路部140の内部へ圧縮機流出配管11cを挿入可能に形成されている。
【0225】
下流側流路部140は、第3内径φ3が第1合流部141から第2合流部142を経由し、冷媒流出口143に至るまで等しく形成されている。第3内径φ3は、下流側流路部140が延びる方向に直交する方向の断面形状における直径である。また、第3内径φ3は、第1内径φ1および第2内径φ2よりも大きく形成されている。すなわち、下流側流路部140は、第1合流部141よりも冷媒流れ下流側の内径が第1内径φ1よりも大きく、且つ、第2合流部142よりも冷媒流れ下流側の内径が第2内径φ2よりも大きく形成されている。
【0226】
換言すれば、下流側流路部140は、第1合流部141よりも冷媒流れ下流側において、冷媒流れ方向に直交する方向の断面の流路断面積が、急上流路部120における冷媒流れ方向に直交する方向の断面の流路断面積よりも大きい。また、下流側流路部140は、第2合流部142よりも冷媒流れ下流側において、冷媒流れ方向に直交する方向の断面の流路断面積が、低上流路部130における冷媒流れ方向に直交する方向の断面の流路断面積よりも大きい。
【0227】
ここで、急上流路部120の内径および低上流路部130の内径に対する下流側流路部140の内径の比率について、
図6のグラフを参照して説明する。接続装置100を冷媒が通過する際の圧力損失および接続装置100の製造コストは、急上流路部120の内径および低上流路部130の内径に対する下流側流路部140の内径の比率に応じて変化する。なお、上記のように、本実施形態では、急上流路部120の内径が第1内径φ1、低上流路部130の内径が第2内径φ2、下流側流路部140の内径が第3内径φ3である。
【0228】
接続装置100は、第1内径φ1および第2内径φ2に比較して第3内径φ3が大きい。ところで、下流側流路部140を流れる冷媒の速度は、下流側流路部140の内径が大きいほど遅くなる。このため、下流側流路部140を流れる冷媒の速度は、下流側流路部140の内径が第1内径φ1および第2内径φ2より大きい場合、第1内径φ1および第2内径φ2に等しい場合比較して遅くなる。そして、下流側流路部140を流れる冷媒の速度は、第1内径φ1および第2内径φ2に比較して第3内径φ3が大きいほど遅くなる。
【0229】
換言すれば、第1内径φ1および第2内径φ2に対する第3内径φ3の比率が大きいほど、下流側流路部140を流れる冷媒の速度が遅くなる。
【0230】
また、下流側流路部140を冷媒が流れることによって発生する圧力損失は、下流側流路部140を流れる冷媒の速度が遅いほど小さくなる。このため、
図6に示すように、接続装置100の内部で発生する圧力損失は、第1内径φ1および第2内径φ2に対する第3内径φ3の比率が大きいほど小さくなる。以下、第1内径φ1および第2内径φ2に対する第3内径φ3の比率を接続部径比σとも呼ぶ。
【0231】
これに対して、接続装置100の製造コストの観点では、接続装置100の内部に冷媒通路を形成する際、急上流路部120および低上流路部130と、下流側流路部140とを同じ内径で形成することが最も望ましい。急上流路部120および低上流路部130と下流側流路部140とを異なる内径で形成するためには、例えば、異なる大きさの冷媒通路を形成するための工具等が必要になり、製造コスト増加の要因になるからである。
【0232】
したがって、
図6に示すように、接続装置100の製造コストは、接続部径比σの値が1となるように接続装置100における冷媒入口側から冷媒出口側に至るまでの内径を全て等しくすると最も小さくなる。すなわち、第1内径φ1と第2内径φ2と第3内径φ3とが互いに等しい場合、接続装置100の製造コストは、最も小さくなる。
【0233】
しかしながら、本実施形態では、圧縮機流出配管11cは、上記のように、空調流入配管11aおよび冷却部流入配管11bよりも外径が大きいものが採用されている。このため、仮に、第1内径φ1、第2内径φ2、第3内径φ3を等しい大きさとすると、冷媒流出口143に圧縮機流出配管11cを接続するため、入口側の外径と出口側の外径とが異なる冷媒配管変換部材を冷媒流出口143に取り付ける等の対応が必要となる。これは、冷媒配管変換部材を取り付ける等対応を接続装置100の製造コストに含めるとした場合、接続装置100の製造コストの増加の要因となるため好ましくない。
【0234】
これに対して、急上流路部120の内径が空調流入配管11aの外径に対応し、低上流路部130の内径が冷却部流入配管11bの外径に対応し、下流側流路部140の内径が圧縮機流出配管11cの外径に対応したとする。この場合、内径が異なる冷媒通路を形成するための製造コストの増加の要因を含むが、冷媒配管変換部材の取り付け等の対応が不要になるため、接続装置100全体としての製造コストの増加を比較的抑制することができる。
【0235】
このため、本実施形態では、急上流路部120の内径、すなわち、第1内径φ1が空調流入配管11aの外径に対応する大きさで形成されている。具体的に、急上流路部120の内径は、空調流入配管11aを挿入可能なように、空調流入配管11aの外径15.88mmより僅かに大きく形成されている。換言すれば、急上流路部120における空調流入配管11aが接続される部位の内径は、空調流入配管11aの冷媒流れ最下流部に対応する大きさで形成されている。
【0236】
また、低上流路部130の内径、すなわち、第2内径φ2は、冷却部流入配管11bが挿入可能なように、冷却部流入配管11bの外径に対応する大きさで形成されている。具体的に、低上流路部130の内径は、冷却部流入配管11bの外径15.88mmより僅かに大きく形成されている。換言すれば、低上流路部130における冷却部流入配管11bが接続される部位の内径は、冷却部流入配管11bの冷媒流れ最下流部に対応する大きさで形成されている。
【0237】
そして、下流側流路部140の内径、すなわち、第3内径φ3は、圧縮機流出配管11cの外径に対応する大きさで形成されている。具体的に、下流側流路部140の内径は、圧縮機流出配管11cが挿入可能なように、圧縮機流出配管11cの外径19.05mmより僅かに大きく形成されている。換言すれば、下流側流路部140における圧縮機流出配管11cが接続される部位の内径は、圧縮機流出配管11cの冷媒流れ最上流部に対応する大きさで形成されている。このようにして決定される本実施形態の接続部径比σの値は1.20である。
【0238】
以上より、
図6に示すように、接続部径比σの値が1より大きくになるにしたがい接続装置100の製造コストは増加するが、接続部径比σの値である1.20以下では、製造コストの増加は比較的抑制できる。そして、接続部径比σが1以上1.20以下の範囲において、当該接続部径比σの増加に伴う製造コストの増加の大きさは、接続部径比σの増加に伴う圧力損失の減少の大きさよりも小さい。
【0239】
このため、本実施形態のように、接続部径比σの値が約1.20となるように第1内径φ1、第2内径φ2、第3内径φ3それぞれを設定することによって、圧力損失を抑制しつつ、接続装置100の製造コストを比較的抑制することができる。
【0240】
また、仮に、接続部径比σの値を1.20よりも大きくするため、下流側流路部140の内径を圧縮機流出配管11cの外径に対応する大きさよりもさらに大きくしたとする。この場合、接続装置100を製造するためには、接続装置100の内部に内径が異なる冷媒通路を形成するための製造コストの増加に加えて、冷媒流出口143に圧縮機流出配管11cを接続するための冷媒配管変換部材の取り付け等の対応も必要となる。
【0241】
したがって、接続装置100の製造コストは、接続部径比σの値が1.20よりも大きくなると、急激に増加する。換言すれば、第1内径φ1が空調流入配管11aの外径に対応し、第2内径φ2が冷却部流入配管11bの外径に対応する場合において、第3内径φ3が圧縮機流出配管11cの外径に対応する大きさよりも大きくなるほど、製造コストは増加する。そして、接続部径比σの値が1.20よりも大きい範囲において、接続部径比σの増加に伴う製造コストの増加の大きさは、接続部径比σの増加に伴う圧力損失の減少の大きさよりも遥かに大きい。
【0242】
このため、第1内径φ1が空調流入配管11aの外径に対応し、第2内径φ2が冷却部流入配管11bの外径に対応する場合において、接続部径比σの値が約1.20になるように第3内径φ3を設定することが望ましい。
【0243】
続いて、急上流路部120および低上流路部130が延びる方向の詳細について、下流側流路部140が延びる方向を用いて説明する。ここで、上下方向DR1に沿う方向であって、第1合流部141および第2合流部142から下流側流路部140の冷媒流れ下流側に向かって延びる方向を下流方向とし、当該下流方向とは反対方向を所定の合流基準方向DRCとする。当該所定の合流基準方向DRCは、第1合流部141および第2合流部142を基準として上下方向DR1に沿って上側に向かう方向である。
【0244】
図4に示すように、急上流路部120は、第1合流部141を基準として、所定の合流基準方向DRCに対して、0°より大きく90°より小さい第1角度θ1だけずれて延びている。ここで、所定の合流基準方向DRCに対してずれて第1合流部141から延びる角度とは、
図4に示す断面図において、上下方向DR1の上側を0°とし、時計回り方向を正の方向とする角度である。第1角度θ1は、第1合流部141を中心として、所定の合流基準方向DRCと急上流路部120が延びる方向とによって成される角度である。
【0245】
本実施形態では、第1角度θ1が0°より大きく90°より小さい角度(本実施形態では、30°)となるように急上流路部120が延びている。このように、急上流路部120は、第1合流部141から上下方向DR1の上側および左右方向DR3の右側に向かって所定の合流基準方向DRCに対して30°だけずれて延びている。急上流路部120が延びる方向は、左右方向DR3および上下方向DR1を含むが、前後方向DR2を含まない。
【0246】
なお、急上流路部120は、第1角度θ1が30°よりも大きい角度(例えば80°)や30°よりも小さい角度(例えば20°)となる構成であってもよい。ただし、第1角度θ1は、0°より大きく90°より小さい角度において、できるだけ小さい角度であることが望ましい。例えば、第1角度θ1は、65°以下であることが望ましい。さらに言えば、第1角度θ1は、45°以下であることが望ましい。
【0247】
これに対して、低上流路部130は、第2合流部142を基準として、所定の合流基準方向DRCに対して、0°より大きく90°より小さい第2角度θ2だけずれて延びている。ここで、所定の合流基準方向DRCに対してずれて第2合流部142から延びる角度とは、
図4に示す断面図において、上下方向DR1の上側を0°とし、反時計回り方向を正の方向とする角度である。第2角度θ2は、第2合流部142を中心として、所定の合流基準方向DRCと低上流路部130が延びる方向とによって成される角度である。
【0248】
本実施形態では、第2角度θ2が0°より大きく90°より小さい角度であって、且つ、第1角度θ1より大きい角度(本実施形態では、60°)となるように低上流路部130が延びている。このように、低上流路部130は、第2合流部142から上下方向DR1の上側および左右方向DR3の左側に向かって所定の合流基準方向DRCに対して60°だけずれて延びている。低上流路部130が延びる方向は、左右方向DR3および上下方向DR1を含むが、前後方向DR2を含まない。
【0249】
なお、低上流路部130は、第1角度θ1よりも大きい角度であれば、第2角度θ2が60°よりも大きい角度(例えば85°)や60°よりも小さい角度(例えば50°)となる構成であってもよい。ただし、第2角度θ2は、0°より大きく90°より小さい角度において、できるだけ小さい角度であることが望ましい。例えば、第2角度θ2は、80°以下であることが望ましい。さらに言えば、第2角度θ2は、70°以下であることが望ましい。
【0250】
また、直線L1と直線L2とよって成される角度は、第1角度θ1と第2角度θ2との合計である。そして、直線L1と直線L2とよって成される角度は、第1角度θ1および第2角度θ2よりも小さい。
【0251】
次に、上記構成における接続装置100において、冷凍サイクル装置10が各運転モードで作動する際における筐体110の内部を流れる冷媒の流れについて
図7~
図9を参照して説明する。
【0252】
上述のように、冷房モードにおいて、接続装置100には、冷媒が空調流入配管11aを介して急流入口121から流入するのに対して、低流入口131からは冷媒が流入しない。また、除湿暖房モードにおいて、第2膨張弁17bが全閉状態とされる場合、接続装置100には、冷媒が空調流入配管11aを介して急流入口121から流入するのに対して、低流入口131からは冷媒が流入しない。
【0253】
そして、急流入口121から流入した冷媒は、
図7に示す冷媒流れF1に示すように、急上流路部120が延びる方向に沿って流れ、急合流口122から下流側流路部140に流入する際に、30°だけ冷媒の流れ方向が変えられる。そして、下流側流路部140に流入した冷媒は、下流側流路部140が延びる方向に沿って流れ、冷媒流出口143から圧縮機流出配管11cへ流出する。
【0254】
また、暖房モードおよび冷却モードにおいて、接続装置100には、冷媒が冷却部流入配管11bを介して低流入口131から流入するのに対して、急流入口121からは冷媒が流入しない。そして、低流入口131から流入した冷媒は、
図8に示す冷媒流れF2に示すように、低上流路部130が延びる方向に沿って流れ、低合流口132から下流側流路部140に流入する際に、60°だけ冷媒の流れ方向が変えられる。そして、下流側流路部140に流入した冷媒は、下流側流路部140が延びる方向に沿って流れ、冷媒流出口143から圧縮機流出配管11cへ流出する。
【0255】
また、冷房冷却モードにおいて、接続装置100には、冷媒が空調流入配管11aを介して急流入口121から流入するとともに、冷却部流入配管11bを介して低流入口131から流入する。また、除湿暖房モードにおいて、第2膨張弁17bが絞り状態とされる場合、接続装置100には、冷媒が空調流入配管11aを介して急流入口121から流入するとともに、冷却部流入配管11bを介して低流入口131から流入する。
【0256】
急流入口121から流入した冷媒は、
図9に示す冷媒流れF3に示すように、急上流路部120が延びる方向に沿って流れる。急上流路部120が延びる方向に沿って流れる冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分および左右方向DR3の左方向の流速ベクトル成分を有する。冷媒の流速ベクトルとは、冷媒流れの速度ベクトルを示すものである。
【0257】
そして、急上流路部120を流れる冷媒は、急合流口122から下流側流路部140に流入する際に、低合流口132から流入する冷媒と衝突することなく、30°だけ冷媒の流れ方向が変えられる。
【0258】
また、低流入口131から流入した冷媒は、
図9に示す冷媒流れF4に示すように、低上流路部130が延びる方向に沿って流れる。低上流路部130が延びる方向に沿って流れる冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分および左右方向DR3の右方向の流速ベクトル成分を有する。
【0259】
そして、低上流路部130を流れる冷媒は、低合流口132から下流側流路部140に流入する際に、急合流口122から下流側流路部140に流入した冷媒と合流して衝突するとともに60°だけ冷媒の流れが変えられる。そして、急合流口122および低合流口132から下流側流路部140に流入した冷媒は、下流側流路部140が延びる方向に沿って流れ、冷媒流出口143から圧縮機流出配管11cへ流出する。急合流口122および低合流口132から下流側流路部140に流入した冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分を有し、他の方向の流速ベクトル成分をほぼ有さない。以下、筐体110の内部で冷媒の衝突が発生する冷凍サイクル装置10の運転モードを冷媒衝突発生モードとも呼ぶ。
【0260】
ここで、冷媒衝突発生モードにおいて冷媒が衝突する際の圧力損失および冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失について、
図10に示す第1の比較用接続装置101および
図11に示す第2の比較用接続装置102と比較して説明する。
【0261】
図10に示す第1の比較用接続装置101は、外殻が上下方向DR1の上側に突出するT字状であって、内部に冷媒が流れる冷媒通路が形成されている。
【0262】
具体的に、第1の比較用接続装置101は、左右方向DR3の右側の表面から左側に向かって延びて形成される比較用第1上流路部101aと、左右方向DR3の左側の表面から右側に向かって延びて形成される比較用第2上流路部101bを有する。比較用第1上流路部101aの左右方向DR3の左側の端部と比較用第2上流路部101bの左右方向DR3の右側の端部とは、第1の比較用接続装置101の左右方向DR3の略中央で接続されている。
【0263】
また、第1の比較用接続装置101は、比較用第1上流路部101aと比較用第2上流路部101bとが接続される部位から上下方向DR1の上側に向かって延びて形成される比較用下流路部101cを有する。比較用下流路部101cは、比較用第1上流路部101aと比較用第2上流路部101bとが接続される部位から第1の比較用接続装置101の上下方向DR1の上側の表面まで貫通して形成されている。
【0264】
比較用下流路部101cは、上下方向DR1の下側の端部が、比較用第1上流路部101aおよび比較用第2上流路部101bに接続されている。また、比較用第1上流路部101aおよび比較用第2上流路部101bが延びる方向は、比較用下流路部101cが延びる方向に対して直交している。すなわち、比較用第1上流路部101aおよび比較用第2上流路部101bは、比較用下流路部101cに合流する部位から比較用下流路部101cの冷媒流れ下流側に向かう方向に対して90°だけずれて延びている。
【0265】
そして、第1の比較用接続装置101は、比較用第1上流路部101aに空調流入配管11aが接続され、比較用第2上流路部101bに冷却部流入配管11bが接続され、比較用下流路部101cに圧縮機流出配管11cが接続される。
【0266】
このように構成される第1の比較用接続装置101において、空調流入配管11aから冷媒が流入すると、
図10に示す冷媒流れF10に示すように、比較用第1上流路部101aを流れる冷媒は、左右方向DR3の右側から左側に向かって流れる。これに対して、冷却部流入配管11bから冷媒が流入すると、
図10に示す冷媒流れF11に示すように、比較用第2上流路部101bを流れる冷媒は、左右方向DR3の左側から右側に向かって流れる。
【0267】
すなわち、比較用第1上流路部101aを流れる冷媒および比較用第2上流路部101bを流れる冷媒は、互いに相反する方向に流れる。そして、比較用第1上流路部101aおよび比較用第2上流路部101bを流れる冷媒は、比較用下流路部101cに合流する際に衝突する。
【0268】
また、比較用第1上流路部101aおよび比較用第2上流路部101bを流れる冷媒は、比較用下流路部101cに合流する際に冷媒の流れ方向が90°変えられて、
図10に示す冷媒流れF12に示すように、上下方向DR1の上側に向かって流れる。
【0269】
このような冷媒が合流する際の衝突および冷媒の流れ方向の変化は、冷媒が第1の比較用接続装置101の内部を流れる際の圧力損失の要因となる。
【0270】
また、
図11に示す第2の比較用接続装置102は、外殻が直方体形状であって、内部に冷媒が流れる冷媒通路が形成されている。
【0271】
具体的に、第2の比較用接続装置102は、左右方向DR3の右側の表面から左側に向かって形成される比較用第1上流路部102aと、前後方向DR2の後ろ側の表面から前側に向かって形成される比較用第2上流路部102bを有する。比較用第1上流路部102aの左右方向DR3の左側の端部と比較用第2上流路部102bの前後方向DR2の前側の端部とは、第2の比較用接続装置102の左右方向DR3および前後方向DR2の略中央で接続されている。
【0272】
また、第2の比較用接続装置102は、比較用第1上流路部102aと比較用第2上流路部102bとが接続される部位から上下方向DR1の下側に向かって延びて形成される比較用下流側流路部102cを有する。比較用下流側流路部102cは、比較用第1上流路部102aと比較用第2上流路部102bとが接続される部位から第2の比較用接続装置102の上下方向DR1の下側の表面まで貫通して形成されている。
【0273】
比較用下流側流路部102cは、上下方向DR1の上側の端部が、比較用第1上流路部102aおよび比較用第2上流路部102bに接続されている。また、比較用第1上流路部102aおよび比較用第2上流路部102bが延びる方向は、比較用下流側流路部102cが延びる方向に対して直交している。すなわち、比較用第1上流路部102aおよび比較用第2上流路部102bは、比較用下流側流路部102cに合流する部位から比較用下流側流路部102cの冷媒流れ下流側に向かう方向に対して90°だけずれて延びている。
【0274】
そして、第2の比較用接続装置102は、比較用第1上流路部102aに空調流入配管11aが接続され、比較用第2上流路部102bに冷却部流入配管11bが接続され、比較用下流側流路部102cに圧縮機流出配管11cが接続される。
【0275】
このように構成される第2の比較用接続装置102において、空調流入配管11aから冷媒が流入すると、
図11の冷媒流れF20に示すように、比較用第1上流路部102aを流れる冷媒は、左右方向DR3の右側から左側に向かって流れる。これに対して、冷却部流入配管11bから冷媒が流入すると、
図11の冷媒流れF21に示すように、比較用第2上流路部102bを流れる冷媒は、前後方向DR2の後ろ側から前側に向かって流れる。
【0276】
そして、比較用第1上流路部102aおよび比較用第2上流路部102bを流入した冷媒は、比較用下流側流路部102cに合流する際に衝突する。
【0277】
また、比較用第1上流路部102aおよび比較用第2上流路部102bを流れる冷媒は、比較用下流路部101cに合流する際に冷媒の流れ方向が90°変えられて、
図11に示す冷媒流れF22に示すように、上下方向DR1の下側に向かって流れる。
【0278】
このような冷媒が合流する際の衝突および冷媒の流れ方向の変化は、冷媒が第2の比較用接続装置102の内部を流れる際の圧力損失の要因となる。
【0279】
冷媒の衝突による圧力損失は、衝突前におけるそれぞれの冷媒の流速ベクトルを上下方向DR1、前後方向DR2、左右方向DR3にベクトル分解した際に、互いに相反する方向の流速ベクトル成分を多く含むほど大きくなる。これに対して、当該圧力損失は、衝突前におけるそれぞれの冷媒の流速ベクトルを上下方向DR1、前後方向DR2、左右方向DR3にベクトル分解した際に、互いに同じ方向の流速ベクトル成分を多く含むほど小さくなる。
【0280】
ここで、第1の比較用接続装置101および第2の比較用接続装置102において、空調流入配管11aおよび冷却部流入配管11bに接続される冷媒通路を上流側の冷媒通路、圧縮機流出配管11cが接続される冷媒通路を下流側の冷媒通路とする。
【0281】
そして、冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失は、上流側の冷媒通路を流れる冷媒の流れ方向に対して、下流側の冷媒通路を流れる冷媒の流れ方向の差が大きいほど大きくなる。換言すれば、上流側の冷媒通路が下流側の冷媒通路と合流する部位から下流側の冷媒通路の冷媒流れ下流側に向かう方向を基準の方向とした際に、上流側の冷媒通路の延びる方向が当該基準の方向から離れるほど大きくなる。
【0282】
第1の比較用接続装置101では、比較用第1上流路部101aおよび比較用第2上流路部101bを流れる冷媒が互いに相反する方向に流れて衝突するため、冷媒が合流する際の衝突による圧力損失が大きくなり易い。また、第1の比較用接続装置101では、比較用第1上流路部101aおよび比較用第2上流路部101bを流れる冷媒が比較用下流路部101cに合流する際、それぞれの冷媒の流れ方向が90°変えられる。このため、さらに圧力損失が大きくなり易い。
【0283】
これに対して、第2の比較用接続装置102では、比較用第1上流路部102aおよび比較用第2上流路部102bを流れる冷媒が互いに相反する方向の流速ベクトルを含まない。このため、第1の比較用接続装置101に比較して衝突による圧力損失が抑制される。
【0284】
しかしながら、第2の比較用接続装置102は、比較用第1上流路部102aおよび比較用第2上流路部102bを流れる冷媒が比較用下流側流路部102cに合流する際、それぞれの冷媒の流れ方向が90°変えられる。このため、圧力損失が大きくなり易い。
【0285】
ところで、複数の冷媒配管から流入する冷媒を合流させて、冷媒流れ下流側の冷媒配管へ導く所謂、冷媒配管接続ブロックでは、製造の容易さの観点から冷媒が合流して衝突する際に冷媒の流れ方向が90°変えられる構成が採用され易い。しかしながら、このような冷媒が合流する際の衝突および冷媒の流れ方向の変化は、冷媒配管接続ブロックの内部を冷媒が流れる際の圧力損失の要因となる。
【0286】
そして、電気自動車に搭載された車両用空調装置1では、航続距離延長、急速充電の短時間化の観点から電池冷却の高性能化が要求されるため、冷凍サイクル装置10における圧力損失の抑制方法が課題となる。これに対して、圧力損失を抑制するための方法としては、冷凍サイクル装置10の各種構成機器を接続する冷媒配管の内径を大きくして、冷媒が流れる際の圧力損失を低減する方法がある。しかし、この方法は、冷媒配管のコストが増加することで冷凍サイクル装置10全体の製造コストの増加の要因となるため、好ましくない。このため、冷媒配管の内径を大きくすることなく圧力損失を抑制可能な冷媒配管接続ブロックが必要となる。
【0287】
これに対して、本実施形態の接続装置100は、急上流路部120が第1合流部141から所定の合流基準方向DRCに対して30°だけずれて延びている。また、接続装置100は、低上流路部130が第2合流部142から所定の合流基準方向DRCに対して60°だけ延びている。さらに、接続装置100は、第1合流部141が第2合流部142よりも冷媒流れ上流側となる位置に設けられている。
【0288】
このように形成される接続装置100では、第1合流部141よりも冷媒流れ上流側の下流側流路部140において、下流側流路部140に冷媒が流入しない。このため、第1合流部141において、急上流路部120を流れる冷媒が下流側流路部140に流入する際に、下流側流路部140に流入した冷媒は、急上流路部120とは異なる流路部から下流側流路部140に流入した冷媒に衝突しない。
【0289】
このため、急上流路部120を流れる冷媒が下流側流路部140に流入する際に、衝突による圧力損失が発生しない。
【0290】
また、低上流路部130を流れる冷媒が下流側流路部140に流入する際に、下流側流路部140に流入した冷媒は、第2合流部142において、急上流路部120から下流側流路部140に流入した冷媒と合流して衝突する。
【0291】
低上流路部130を流れる冷媒が第2合流部142に流入する直前における冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分および左右方向DR3の右方向の流速ベクトル成分を有する。これに対して、急上流路部120から下流側流路部140に流入した冷媒が第2合流部142に流入する直前における冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分を有し、他の方向の流速ベクトル成分をほぼ有さない。
【0292】
このように、低上流路部130から第2合流部142に流入する冷媒の流速ベクトルは、下流側流路部140における第2合流部142より冷媒流れ上流側を流れる冷媒の流速ベクトルに相反する方向の流速ベクトルを含まない。このため、冷媒が合流する際の衝突による圧力損失は、第1の比較用接続装置101に比べて抑制される。
【0293】
また、急上流路部120から下流側流路部140に流入する冷媒は、第1角度θ1だけ冷媒の流れ方向が変えられて、上下方向DR1の下側に向かって流れる。具体的に、急上流路部120から下流側流路部140に流入する冷媒は、冷媒の流れ方向が30°だけ変えられる。
【0294】
すなわち、急上流路部120から下流側流路部140に流入する際に変化する冷媒の流れ方向の変化量は、30°である。そして、当該変化量は、第1の比較用接続装置101および第2の比較用接続装置102における上流側の冷媒通路から下流側の冷媒通路に合流する際の冷媒の流れ方向の変更量である90°より小さい。
【0295】
そして、低上流路部130から下流側流路部140に流入する冷媒は、第2角度θ2だけ冷媒の流れ方向が変えられて、急上流路部120から流入した冷媒と合流して上下方向DR1の下側に向かって流れる。具体的に、低上流路部130から下流側流路部140に流入する冷媒は、冷媒の流れ方向が60°だけ変えられる。
【0296】
すなわち、低上流路部130から下流側流路部140に流入する際に変化する冷媒の流れ方向の変化量は、60°である。当該変化量は、第1の比較用接続装置101および第2の比較用接続装置102における上流側の冷媒通路から下流側の冷媒通路に合流する際の冷媒の流れ方向の変更量である90°より小さい。
【0297】
このため、本実施形態における冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失は、第1の比較用接続装置101および第2の比較用接続装置102における冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失に比べて抑制される。
【0298】
以上の如く、本実施形態の接続装置100では、急上流路部120が所定の合流基準方向DRCに対して第1角度θ1である30°だけずれて延びている。また、低上流路部130は、所定の合流基準方向DRCに対して、第2角度θ2である60°だけずれて延びている。このため、急上流路部120および低上流路部130それぞれから下流側流路部140に冷媒を合流させる際において、冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制することができる。
【0299】
(1)上記実施形態では、急上流路部120および低上流路部130のいずれも、所定の合流基準方向DRCに対して、0°より大きく90°より小さい角度だけずれて延びている。このため、急上流路部120および低上流路部130の一方が所定の合流基準方向DRCに対して0°より大きく90°より小さい角度ずれて延び、他方が所定の合流基準方向DRCに対して90°ずれて延びる構成よりも圧力損失を抑制できる。
【0300】
(2)上記実施形態では、下流側流路部140は、第1合流部141よりも冷媒流れ下流側の内径が急上流路部120の内径よりも大きく、且つ、第2合流部142よりも冷媒流れ下流側の内径が低上流路部130の内径よりも大きい。
【0301】
このため、下流側流路部140を流れる冷媒の速度は、第1合流部141よりも冷媒流れ下流側が急上流路部120の内径の大きさ以下、且つ、第2合流部142よりも冷媒流れ下流側が低上流路部130の内径の大きさ以下で形成される場合に比較して遅くなる。したがって、下流側流路部140の内径が急上流路部120および低上流路部130の内径の大きさ以下で形成される場合に比較して、下流側流路部140を冷媒が流れる際に発生する圧力損失を抑制することができる。
【0302】
(3)上記実施形態では、接続装置100は、急上流路部120に空調流入配管11aが接続されており、低上流路部130に冷却部流入配管11bが接続されており、下流側流路部140に圧縮機流出配管11cが接続されている。また、所定の合流基準方向DRCに対して急上流路部120が延びる方向は、所定の合流基準方向DRCに対して低上流路部130が延びる方向よりも小さい。すなわち、第1角度θ1は、第2角度θ2よりも小さい。
【0303】
ここで、電気自動車に搭載される車両用空調装置1は、比較的、バッテリ60を冷却するよりも車室内の空調を行うことが重視される。このため、冷媒衝突発生モードで作動する際の冷凍サイクル装置10では、冷却部流入配管11bよりも空調流入配管11aに多くの冷媒を流す必要がある。この場合、接続装置100には、低上流路部130からよりも急上流路部120から多くの冷媒が流入する。
【0304】
このため、下流側流路部140に合流する際の圧力損失は、低上流路部130から合流する際に発生する圧力損失よりも急上流路部120から合流する際に発生する圧力損失の方が冷凍サイクル装置10全体の圧力損失に与える影響が大きい。
【0305】
上記実施形態では、第1角度θ1が第2角度θ2よりも小さい。このため、下流側流路部140に合流する際の冷媒の流れ方向の変化量は、低上流路部130から下流側流路部140に合流する際よりも急上流路部120から下流側流路部140に合流する際の方が小さい。このため、急上流路部120から下流側流路部140に合流する際における冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失は、低上流路部130から下流側流路部140に合流する際における冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失より抑制できる。
【0306】
したがって、冷却部流入配管11bよりも空調流入配管11aに冷媒が多く流れる場合において、このように構成されていない場合に比較して、冷凍サイクル装置10全体の圧力損失を抑制することができる。
【0307】
(4)上記実施形態では、下流側流路部140の冷媒流れ最下流側が急上流路部120の冷媒流れ最上流側および低上流路部130の冷媒流れ最上流側よりも鉛直方向下側の位置に設けられている。換言すれば、冷媒流出口143は、急流入口121および低流入口131よりも鉛直方向に位置付けられている。
【0308】
ここで、上述のように、車両用空調装置1が除湿暖房モードにおける第2膨張弁17bが絞り状態および冷房モードで作動する場合、接続装置100には、冷媒が急流入口121から流入するのに対して、低流入口131からは流入しない。また、車両用空調装置1が暖房モードおよび冷却モードで作動する場合、接続装置100には、冷媒が低流入口131から流入するのに対して、急流入口121からは流入しない。
【0309】
このように、急流入口121または低流入口131のうち、どちらか一方の流入口からのみ冷媒が流入する場合、冷媒と一緒に筐体110の内部へ流入したオイルが、筐体110の内部を逆流して冷媒が流入しない他方の流入口から外部へ流出する虞がある。
【0310】
上記実施形態では、冷媒流出口143が急流入口121および低流入口131よりも鉛直方向下側に位置付けられているので、冷媒と一緒に筐体110の内部へ流入したオイルが鉛直方向下側に向かって流れ易くなる。このため、一方の流入口からのみ冷媒が流入する運転モードであっても、流入したオイルが筐体110の内部を逆流して、冷媒が流入しない側の流入口から流出することを抑制できる。
【0311】
さらに、冷媒流出口143は、接続装置100において、開口する方向が鉛直方向の下向きとなるように底面部111に形成されている。そして、冷媒流出口143は、接続装置100が車両用空調装置1の内部に設けられた際に、圧縮機12の冷媒吸入口12aよりも鉛直方向上側の位置に設けられている。
【0312】
このため、車両用空調装置1が作動を停止した場合において、冷媒流出口143から冷媒と一緒に流出したオイルが筐体110の内部を逆流し、急流入口121および低流入口131から流出することを抑制できる。
【0313】
(5)上記施形態では、急上流路部120の内径が空調流入配管11aの冷媒流れ最下流部に対応する大きさで形成されるとともに、低上流路部130の内径が冷却部流入配管11bの冷媒流れ最下流部に対応する大きさで形成されている。また、下流側流路部140の内径が、急上流路部120の内径および低上流路部130の内径より大きく、圧縮機流出配管11cの冷媒流れ最上流部に対応する大きさで形成されている。
【0314】
このため、急流入口121に空調流入配管11aを接続するための冷媒配管変換部材を取り付ける等対応や低流入口131に冷却部流入配管11bを接続するための冷媒配管変換部材を取り付ける等の対応が不要となる。また、冷媒流出口143に圧縮機流出配管11cを接続するための冷媒配管変換部材を取り付ける等の対応が不要となる。
【0315】
このため、下流側流路部140を冷媒が流れる際に発生する圧力損失を抑制しつつ、製造コストの増加を抑制することができる。
【0316】
(6)上記実施形態では、下流側流路部140において、第1合流部141および第2合流部142が異なる位置に設けられている。具体的に、第1合流部141は、第2合流部142よりも冷媒流れ上流側に位置付けられている。このため、急上流路部120および低上流路部130が下流側流路部140で合流する場合において、急上流路部120が合流する位置と低上流路部130が合流する位置とを異なる位置にすることができる。
【0317】
したがって、第1合流部141に接続された急上流路部120から合流する冷媒が下流側流路部140に合流する際に、低上流路部130から下流側流路部140に合流する冷媒に衝突することを避けることができる。したがって、このように構成されていない場合に比較して、下流側流路部140において冷媒が合流する際の衝突による圧力損失を抑制することができる。
【0318】
(7)上記実施形態では、下流側流路部140において、第1合流部141が第2合流部142よりも冷媒流れ上流側となる位置に設けられている。
【0319】
ところで、下流側流路部140では、下流側流路部140の流路途中の部位に合流する冷媒通路がある場合、下流側流路部140を流れる冷媒によって、当該合流する冷媒通路を流れる冷媒に対して下流側流路部140へ引き込む力が発生する。そして、当該下流側流路部140へ引き込む力は、下流側流路部140を流れる冷媒の流量が多いほど大きくなる。
【0320】
また、上記のように、バッテリ60を冷却するよりも車室内の空調を行うために用いられる事が多い車両用空調装置1の冷媒衝突発生モードにおいて、接続装置100には、低上流路部130からよりも急上流路部120から多くの冷媒が流入する。
【0321】
上記実施形態では、第1合流部141が第2合流部142よりも冷媒流れ上流側となる位置に設けられているので、急上流路部120から流入した冷媒が流れる下流側流路部140に低上流路部130を流れる冷媒が合流する。このため、低上流路部130よりも多くの冷媒が流れる急上流路部120から流入した冷媒の流れによって、冷媒通路途中から合流する低上流路部130を流れる冷媒に対して下流側流路部140へ引き込む力を発生させることができる。
【0322】
したがって、第1合流部141が第2合流部142よりも冷媒流れ下流側に設けられる構成に比較して、冷媒を下流側流路部140へ引き込む力を大きくできるので、冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制することができる。
(第1実施形態の第1の変形例)
上述の第1実施形態では、第1角度θ1が第2角度θ2よりも小さくなるように急上流路部120および低上流路部130が形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、急上流路部120および低上流路部130は、0°よりも大きく90°より小さい角度であれば、第1角度θ1が第2角度θ2よりも大きくなるように構成されていてもよい。また、急上流路部120および低上流路部130は、0°よりも大きく90°より小さい角度であれば、第1角度θ1と第2角度θ2とが同じ角度となるように構成されていてもよい。
(第1実施形態の第2の変形例)
上述の第1実施形態では、下流側流路部140において、第1合流部141が第2合流部142よりも冷媒流れ上流側に設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1合流部141は、下流側流路部140において、第2合流部142よりも冷媒流れ下流側となる位置に設けられる構成であってもよい。また、急上流路部120および低上流路部130が下流側流路部140に互いに等しい位置で合流する構成であってもよい。
【0323】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図12~
図14を参照して説明する。本実施形態では、空調流入配管11aの外径、筐体210の形状および筐体210の内部に形成される冷媒通路の形状が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0324】
本実施形態の空調流入配管11aは、入口側から出口側に至るまでの外径が19.05mmである冷媒配管が採用されている。空調流入配管11aの外径は、冷却部流入配管11bの外径より大きく、圧縮機流出配管11cの外径と同じ大きさである。すなわち、本実施形態の空調流入配管11aは、第1実施形態の空調流入配管11aよりも外径が大きい冷媒配管が採用されている。
【0325】
また、接続装置200は、
図12および
図13に示すように、筐体210を有し、筐体210の内部に冷媒通路である直列上流路部220、傾斜上流路部230、直列下流路部250が形成されている。
【0326】
本実施形態の筐体210は、前後方向DR2の大きさおよび左右方向DR3の大きさよりも上下方向DR1の大きさが大きい立方体形状で形成されている。筐体210は、上下方向DR1の上側に設けられた上面部211と、上下方向DR1の下側に設けられた下面部212とを有する。また、筐体210は、上面部211の左右方向DR3の右側端部から上下方向DR1の下側に向かって下面部212の左右方向DR3の右側端部まで延びる右面部213を有する。さらに、筐体210は、上面部211の左右方向DR3の左側端部から上下方向DR1の下側に向かって下面部212の左右方向DR3の左側端部まで延びる左面部214を有する。
【0327】
図12に示すように、筐体210の内部には、冷媒通路として、上面部211の表面から下面部212に向かって延びる直列上流路部220が形成されている。また、筐体210の内部には、右面部213の表面から左面部214に向かって左面部214まで貫通しないで傾斜して延びる傾斜上流路部230が形成されている。さらに、筐体210の内部には、下面部212の表面から上下方向DR1の上側に向かって延びる直列下流路部250が形成されている。
【0328】
直列上流路部220は、上面部211の表面の略中央から、下面部212の略中央に向かって、上下方向DR1に沿って直線状に延びている。また、直列上流路部220は、両端部のうち、上面部211の表面に位置付けられる側とは反対側の端部に、直列下流路部250の両端部のうち、下面部212の表面に位置付けられる側とは反対側の端部が、接続されている。さらに、直列上流路部220は、両端部のうち、上面部211の表面に位置付けられる側とは反対側の端部に、傾斜上流路部230の両端部のうち、右面部213の表面に位置付けられる側とは反対側の端部が、接続されている。
【0329】
傾斜上流路部230は、右面部213の表面のうち、上下方向DR1の中心より上側の部位から左面部214の上下方向DR1の中心より下側の部位に向かって延びている。また、傾斜上流路部230は、両端部のうち、右面部213の表面に位置付けられる側とは反対側の端部に、直列下流路部250の両端部のうち、下面部212の表面に位置付けられる側とは反対側の端部が、接続されている。さらに、傾斜上流路部230は、両端部のうち、右面部213の表面に位置付けられる側とは反対側の端部に、直列上流路部220の両端部のうち、上面部211の表面に位置付けられる側とは反対側の端部が、接続されている。
【0330】
すなわち、本実施形態では、直列上流路部220と、傾斜上流路部230と、直列下流路部250とが直接接続されている。具体的に、直列上流路部220の冷媒流れ最下流部と、傾斜上流路部230の冷媒流れ最下流部とが直列下流路部250の冷媒流れ最上流部において直接接続されている。このため、直列上流路部220から直列下流路部250に流れる冷媒と傾斜上流路部230から直列下流路部250に流れる冷媒とは、直列下流路部250に直接合流する。本実施形態において、直列上流路部220が直列上流側流路部として機能し、傾斜上流路部230が傾斜上流側流路部として機能し、直列下流路部250が下流側流路部として機能する。
【0331】
直列上流路部220は、空調流入配管11aから流出した冷媒を筐体210の内部に導くための冷媒通路を形成するものであって、直列下流路部250が延びる方向と同じ方向に沿って直線状に延びている。直列上流路部220は、冷媒流れ上流側に空調流入配管11aが接続される直列流入口221を有し、冷媒流れ下流側に直列下流路部250に連通する直列合流口222を有する。なお、
図13において、説明の便宜上、直列合流口222を破線で示している。直列上流路部220が延びる方向については後述する。
【0332】
また、直列上流路部220は、直列上流路部220の内径である第4内径φ4が空調流入配管11aの外径より僅かに大きく形成され、直列流入口221から直列上流路部220の内部へ空調流入配管11aを挿入可能に形成されている。具体的に、直列上流路部220の内径は、空調流入配管11aの外径19.05mmより僅かに大きく形成されている。
【0333】
直列上流路部220は、第4内径φ4が直列流入口221から直列合流口222に至るまで等しく形成されている。第4内径φ4は、直列上流路部220が延びる方向に直交する方向の断面形状における直径である。直列上流路部220の内径は、傾斜上流路部230の内径よりも大きく、かつ、直列下流路部250の内径と同じ大きさで形成されている。
【0334】
傾斜上流路部230は、冷却部流入配管11bから流出した冷媒を筐体210の内部に導くための冷媒通路を形成するものである。傾斜上流路部230は、直列上流路部220が延びる方向および直列下流路部250が延びる方向とは異なる方向に沿って直線状に延びている。
【0335】
傾斜上流路部230は、冷媒流れ上流側に冷却部流入配管11bが接続される傾斜流入口231を有し、冷媒流れ下流側に直列下流路部250に連通する傾斜合流口232を有する。傾斜上流路部230が延びる方向については後述する。
【0336】
傾斜上流路部230は、傾斜上流路部230の内径である第5内径φ5が冷却部流入配管11bの外径より僅かに大きく形成され、傾斜流入口231から傾斜上流路部230の内部へ冷却部流入配管11bを挿入可能に形成されている。具体的に、傾斜上流路部230の内径は、冷却部流入配管11bの外径15.88mmより僅かに大きく形成されている。
【0337】
傾斜上流路部230は、第5内径φ5が冷媒流れ上流側から冷媒流れ下流側に至るまで等しく形成されている。第5内径φ5は、傾斜上流路部230が延びる方向に直交する方向の断面形状における直径である。
【0338】
直列下流路部250は、直列上流路部220および傾斜上流路部230を介して筐体210の内部に流入された冷媒を筐体210の外部へ流出させるための冷媒通路を形成するものである。直列下流路部250は、下面部212の表面の略中央から、上面部211の略中央に向かって、上下方向DR1に沿って直線状に延びている。
【0339】
直列下流路部250が形成される位置は、前後方向DR2および左右方向DR3において直列上流路部220が形成される位置と一致している。すなわち、直列下流路部250は、直列上流路部220と同一直線上に形成されている。
【0340】
直列下流路部250は、冷媒流れ上流側に直列上流路部220および傾斜上流路部230を流れる冷媒を直列下流路部250に合流させる複数合流部251を有する。また、直列下流路部250は、冷媒流れ最下流側に圧縮機流出配管11cが接続される直列流出口253を有する。
【0341】
ここで、直列流出口253の中心を通り、直列下流路部250が延びる方向に沿う直線L4と、直列流入口221の中心を通り、直列上流路部220が延びる方向に沿う直線L5とが交差する部分を複数合流部251とする。複数合流部251は、直列流出口253の中心を通り、直列下流路部250が延びる方向に沿う直線L4と、傾斜流入口231の中心を通り、傾斜上流路部230が延びる方向に沿う直線L6とが交差する部分でもある。
【0342】
すなわち、本実施形態では、直列下流路部250において、直列上流路部220が合流する位置と傾斜上流路部230が合流する位置とが同じ位置に設けられている。そして、複数合流部251には、直列上流路部220および傾斜上流路部230それぞれを流れる冷媒が流れ込む部分である。本実施形態では、複数合流部251が合流部として機能する。
【0343】
また、直列下流路部250は、冷媒流れ最下流側である直列流出口253が直列上流路部220の冷媒流れ最上流側である直列流入口221よりも上下方向DR1の下側に設けられている。そして、直列下流路部250は、冷媒流れ最下流側である直列流出口253が傾斜上流路部230の冷媒流れ最上流側である傾斜流入口231よりも上下方向DR1の下側に設けられている。換言すれば、直列流出口253は、直列流入口221および傾斜流入口231よりも鉛直方向下側に位置付けられている。
【0344】
また、直列下流路部250は、直列下流路部250の内径である第6内径φ6が圧縮機流出配管11cの外径より僅かに大きく形成され、直列流出口253から直列下流路部250の内部へ圧縮機流出配管11cを挿入可能に形成されている。具体的に、直列下流路部250の内径は、圧縮機流出配管11cの外径19.05mmより僅かに大きく形成されている。
【0345】
直列下流路部250は、第6内径φ6が複数合流部251から直列流出口253に至るまで等しく形成されている。さらに、第6内径φ6は、第4内径φ4と等しく形成されている。これに対して、第6内径φ6は、第5内径φ5よりも大きく形成されている。すなわち、直列下流路部250は、複数合流部251よりも冷媒流れ下流側の内径が、直列上流路部220の内径に等しく、且つ、傾斜上流路部230の内径よりも大きく形成されている。
【0346】
換言すれば、直列下流路部250は、複数合流部251よりも冷媒流れ下流側において、冷媒流れ方向に直交する断面の流路断面積が、直列上流路部220における冷媒流れ方向に直交する方向の断面の流路断面積に等しい。また、直列下流路部250は、複数合流部251よりも冷媒流れ下流側において、冷媒流れ方向に直交する断面の流路断面積が、傾斜上流路部230における冷媒流れ方向に直交する方向の断面の流路断面積よりも大きい。
【0347】
本実施形態では、直列上流路部220の内径に対する直列下流路部250の内径の比率は、1である。これに対して、傾斜上流路部230の内径に対する直列下流路部250の内径の比率は、1.20である。
【0348】
続いて、直列上流路部220および傾斜上流路部230が延びる方向の詳細について、所定の合流基準方向DRCを用いて説明する。ここで、上下方向DR1に沿う方向であって、複数合流部251から直列下流路部250の冷媒流れ下流側に向かって延びる方向を下流方向とし、当該下流方向とは反対方向を所定の合流基準方向DRCとする。当該所定の合流基準方向DRCは、複数合流部251を基準として上下方向DR1に沿って上側に向かう方向である。
【0349】
上記に示すように、直列上流路部220は、直列下流路部250が延びる方向と同じ方向に沿って直線状に延びている。このため、直列上流路部220は、所定の合流基準方向DRCに沿って延びている。したがって、複数合流部251を中心として、所定の合流基準方向DRCと直列上流路部220が延びる方向とによって成される角度は0°である。そして、直列上流路部220が延びる方向は、左右方向DR3および前後方向DR2を含まない。
【0350】
これに対して、傾斜上流路部230は、複数合流部251を基準として、所定の合流基準方向DRCに対して、0°より大きく90°より小さい第3角度θ3だけずれて延びている。ここで、所定の合流基準方向DRCに対してずれて複数合流部251から延びる角度とは、
図13に示す断面図において、上下方向DR1の上側を0°とし、時計回り方向を正の方向とする角度である。第3角度θ3は、複数合流部251を中心として、所定の合流基準方向DRCと傾斜上流路部230が延びる方向とによって成される角度である。
【0351】
本実施形態では、第3角度θ3が45°となるように傾斜上流路部230が延びている。このように、本実施形態の傾斜上流路部230が延びる方向は、左右方向DR3および上下方向DR1を含むが、前後方向DR2を含まない。なお、第3角度θ3は、0°より大きく90°より小さい範囲内の大きさであれば、45°よりも大きい角度や45°よりも小さい角度が採用されてもよい。
【0352】
次に、冷凍サイクル装置10を冷媒衝突発生モードで作動させた際における本実施形態の接続装置200の内部を冷媒が流れる際の冷媒の流れおよび圧力損失について
図14を参照して説明する。本実施形態では、直列上流路部220を流れる冷媒は、
図14の冷媒流れF5に示すように、直列上流路部220が延びる方向に沿って上下方向DR1の下側に向かって流れる。直列上流路部220が延びる方向に沿って流れる冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分を有し、他の方向の流速ベクトル成分を有さない。すなわち、直列合流口222から直列下流路部250に流入する際の冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分を有し、他の方向の流速ベクトル成分をほぼ有さない。
【0353】
また、直列上流路部220は、直列下流路部250と同一直線上に設けられるとともに、直列下流路部250が延びる方向である上下方向DR1に沿って延びて形成されている。このため、本実施形態では、直列合流口222から直列下流路部250に流入する冷媒は、直列下流路部250に流入する際に、冷媒の流れ方向が略変えられない。
【0354】
また、傾斜上流路部230を流れる冷媒は、
図14の冷媒流れF6に示すように、傾斜上流路部230が延びる方向に沿って流れる。傾斜上流路部230が延びる方向に沿って流れる冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分および左右方向DR3の左方向の流速ベクトル成分を有し、前後方向DR2の流速ベクトル成分を有さない。すなわち、傾斜合流口232から直列下流路部250に流入する際の冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分および左右方向DR3の左方向の流速ベクトル成分を有し、前後方向DR2の流速ベクトルを有さない。
【0355】
また、直列下流路部250において、直列上流路部220が合流する位置と傾斜上流路部230が合流する位置とが同じ位置に設けられている。このため、本実施形態の接続装置200では、直列上流路部220を流れる冷媒が直列合流口222から直列下流路部250に流入する際に、傾斜上流路部230から直列下流路部250に流入する冷媒に衝突する構成となっている。
【0356】
そして、傾斜合流口232から直列下流路部250に流入する冷媒は、直列合流口222から直列下流路部250に流入した冷媒に合流して衝突するとともに、0°より大きく90°より小さい角度である第3角度θ3だけ冷媒の流れ方向が変えられる。本実施形態では、傾斜合流口232から直列下流路部250に流入した冷媒の流れ方向が45°だけ変えられる。
【0357】
以上の如く、本実施形態の接続装置200では、筐体210の形状および筐体210の内部に形成される冷媒通路の形状が第1実施形態と異なる。その他の接続装置200の構成および作動は、第1実施形態と同様である。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0358】
また、直列上流路部220は、直列下流路部250と同一直線上に設けられるとともに、直列下流路部250が延びる方向である上下方向DR1に沿って延びて形成されている。このため、直列合流口222から直列下流路部250に流入した冷媒は、冷媒の流れ方向を略変えられることなく、上下方向DR1の下側に向かって流れる。
【0359】
したがって、本実施形態の接続装置200では、直列上流路部220が所定の合流基準方向DRCに対してずれて延びる構成と比較して、冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制することができる。
【0360】
また、傾斜合流口232から直列下流路部250に流入する冷媒は、直列合流口222から直列下流路部250に流入した冷媒に合流して衝突するとともに、冷媒の流れ方向が45°だけ変えられる。そして、傾斜合流口232から直列下流路部250に流入した冷媒は、直列合流口222から流入した冷媒と一緒に上下方向DR1の下側に向かって流れる。
【0361】
このため、本実施形態の接続装置200では、傾斜上流路部230が所定の合流基準方向DRCに対して90°ずれて延びている場合に比較して、冷媒の流れ方向の変更量を小さくできるので、冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制することができる。
【0362】
また、本実施形態の接続装置200では、直列上流路部220から複数合流部251に流入する冷媒の流速ベクトルは、傾斜上流路部230から複数合流部251に流入する冷媒の流速ベクトルに相反する方向の流速ベクトルを含まない。このため、このような構成になっていない場合に比較して、冷媒が合流する際の衝突による圧力損失を抑制することができる。
【0363】
(1)上記実施形態では、直列下流路部250は、複数合流部251よりも冷媒流れ下流側の内径が傾斜上流路部230の内径よりも大きく形成されている。
【0364】
このため、直列下流路部250において、複数合流部251より冷媒流れ下流側を流れる冷媒の速度は、複数合流部251よりも冷媒流れ下流側の内径が傾斜上流路部230の内径に等しい場合に比較して遅くなる。したがって、直列下流路部250の内径が傾斜上流路部230の内径の大きさ以下で形成される場合に比較して、直列下流路部250を冷媒が流れる際に発生する圧力損失を抑制することができる。
【0365】
(2)上記実施形態では、接続装置200は、直列上流路部220に空調流入配管11aが接続されており、傾斜上流路部230に冷却部流入配管11bが接続されており、直列下流路部250に圧縮機流出配管11cが接続されている。
【0366】
ここで、上記のように、バッテリ60を冷却するよりも車室内の空調を行うために用いられる事が多い車両用空調装置1を冷媒衝突発生モードで作動させる場合、接続装置200には、傾斜上流路部230よりも直列上流路部220に多くの冷媒が流入する。
【0367】
上記実施形態では、直列下流路部250に合流する際に冷媒の流れ方向が略変化しない直列上流路部220に空調流入配管11aが接続されている。このため、傾斜上流路部230に空調流入配管11aが接続される構成に比較して、直列上流路部220および傾斜上流路部230から直列下流路部250に合流する際における冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制できる。
【0368】
このため、冷却部流入配管11bよりも空調流入配管11aに冷媒が多く流れる場合において、このように構成されていない場合に比較して、冷凍サイクル装置10全体の圧力損失を抑制することができる。
【0369】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図15~
図18を参照して説明する。本実施形態では、
図15に示すように、第2実施形態に比較して、冷凍サイクル装置10において後席空調ユニット80が追加されている。また、本実施形態では、後席空調ユニット80が追加されるのに伴い、筐体210の内部に後席空調ユニット80から流出する冷媒が流れる冷媒通路が追加されている。本実施形態では、第2実施形態と異なる部分について主に説明し、第2実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0370】
まず、後席空調ユニット80について説明する。後席空調ユニット80は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内のうち、主に後部座席が設けられる空間へ吹き出すためのものである。これに対して、室内空調ユニット50は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内のうち、主に運転席が設けられる空間へ吹き出す。本実施形態における第1対象空間は、運転席が設けられる空間である。また、本実施形態における第2対象空間は、運転席が設けられる空間とは異なる空間である。具体的に、第2対象空間は、後部座席が設けられる空間である。
【0371】
後席空調ユニット80は、
図15に示すように、その外殻を形成する後席空調ケース81内に形成された空気通路内に、後席蒸発器14bおよび後席ヒータコア88が配置されている。また、室内空調ユニット50には、空調ケース51内に室内蒸発器14の代わりに前席蒸発器14aが配置されている。
【0372】
前席蒸発器14aおよび後席蒸発器14bは、室内蒸発器14に相当するものであって、車室内に送風する送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。後席ヒータコア88は、ヒータコア35に相当するものであって、車室内に送風する送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。本実施形態では、前席蒸発器14aが第1空調用熱交換器として機能し、後席蒸発器14bが第2空調用熱交換器として機能する。
【0373】
後席空調ケース81は、後席内外気切替装置82、後席送風機83、後席蒸発器温度センサ84、後席エアミックスドア86を収容している。そして、後席空調ケース81の内部には、後席蒸発器14b通過後の送風空気を、後席ヒータコア88を迂回して流す後席冷風バイパス通路85が設けられている。さらに、後席空調ケース81の内部には、後席冷風バイパス通路85の送風空気流れ下流側に、後席混合空間87が配置されている。
【0374】
そして、後席空調ケース81の送風空気流れ下流側には、後部座席が設けられる空間へ吹き出すための開口穴が配置されている。この開口穴は、後部座席の乗員に向けて空調風を吹き出すための吹出口であって車室内の天井に設けられた不図示の後席吹出口に接続されている。
【0375】
後席エアミックスドア86が、後席ヒータコア88を通過させる風量と後席冷風バイパス通路85を通過させる風量との風量割合を調整することによって、後席吹出口から吹き出される送風空気の温度が調整される。
【0376】
後席内外気切替装置82、後席送風機83、後席蒸発器温度センサ84、後席エアミックスドア86は、内外気切替装置52、送風機53、蒸発器温度センサ54、エアミックスドア56それぞれと構成および機能が同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0377】
本実施形態において、冷凍サイクル装置10は、冷媒を後席空調ユニット80に循環させる冷媒通路を有する。また、高温側熱媒体回路30は、高温側熱媒体を後席空調ユニット80に循環させる高温側熱媒体通路を有する。
【0378】
具体的に、
図15に示すように、冷媒分岐部18の一方の流出口に接続される冷媒通路は、途中で分岐している。分岐する一方側の冷媒通路には、第1膨張弁17aの入口側が接続されている。分岐する他方側の冷媒通路には、第3膨張弁17cの入口側が接続されている。
【0379】
第1膨張弁17aの出口には、前席蒸発器14aの冷媒入口側が接続されている。そして、前席蒸発器14aの冷媒出口側には、前席蒸発器14aから流出した冷媒を接続装置200に導く前席空調流入配管11dが接続されている。前席空調流入配管11dは、冷媒流れ下流側が接続装置200の後述する直列流入口221に挿入されている。
【0380】
第3膨張弁17cは、主に後部座席が設けられる空間の冷房を行う運転モード時に、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する後席減圧部である。第3膨張弁17cは、基本的構成が第1膨張弁17aおよび第2膨張弁17bと同様である。第3膨張弁17cの出口には、後席蒸発器14bの冷媒入口側が接続されている。そして、後席蒸発器14bの冷媒出口側には、後席蒸発器14bから流出した冷媒を接続装置200に導く後席流入配管11eが接続されている。後席流入配管11eは、冷媒流れ下流側が接続装置200の後述する第2傾斜流入口241に挿入されている。
【0381】
本実施形態では、前席空調流入配管11dが第1空調流入配管として機能し、後席流入配管11eが第2空調流入配管として機能する。前席空調流入配管11dは、第2実施形態の空調流入配管11aに相当する。
【0382】
本実施形態の後席流入配管11eは、前席空調流入配管11dおよび圧縮機流出配管11cの外径より小さく、冷却部流入配管11bの外径と同じ外径であって、入口側から出口側に至るまでの外径が15.88mmである冷媒配管が採用されている。
【0383】
また、後席流入配管11eには、後席蒸発器14bから流出された冷媒の温度を検出する第4冷媒温度センサ19gおよび後席蒸発器14bから流出された冷媒の圧力を検出する第4冷媒圧力センサ19hが設けられている。さらに、後席流入配管11eには、後席蒸発器14bから流出された冷媒の圧力を調整する後席蒸発圧力調整弁15aが設けられている。
【0384】
第4冷媒温度センサ19g、第4冷媒圧力センサ19h、後席蒸発圧力調整弁15aは、第2冷媒温度センサ19b、第2冷媒圧力センサ19e、蒸発圧力調整弁15それぞれと構成および機能が同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0385】
そして、本実施形態の接続装置200では、
図16および
図17に示すように、後席蒸発器14bから流出し、後席流入配管11eを流れる冷媒を筐体210の内部へ流入させるための第2傾斜上流路部240が追加されている。
【0386】
また、高温側熱媒体回路30において、
図15に示すように、高温側流量調整弁33の他方の流出口に接続される高温側熱媒体通路は、途中で分岐している。分岐する一方側の高温側熱媒体通路には、ヒータコア35の熱媒体入口側が接続されている。分岐する他方側の高温側熱媒体通路には、後席ヒータコア88の熱媒体入口側が接続されている。
【0387】
また、分岐する他方側の高温側熱媒体通路には、後席ヒータコア88へ流入する前の高温側熱媒体の温度を検出する第3高温側熱媒体温度センサ37cが設けられている。第3高温側熱媒体温度センサ37cは、高温側流量調整弁33から流出され後席ヒータコア88へ流入する前の高温側熱媒体の温度に応じた検出信号を制御装置70に送信する。
【0388】
このように構成される冷凍サイクル装置10では、送風空気を冷却して運転席が設けられる空間および後部座席が設けられる空間へ吹き出すことによって車室内の冷房を行うが、バッテリ60の冷却を行わない全席冷房モードでも運転することができる。さらに、冷凍サイクル装置10は、送風空気を冷却して運転席が設けられる空間および後部座席が設けられる空間へ吹き出すことによって車室内の冷房を行うとともに、バッテリ60の冷却を行う全席冷房冷却モードで運転することができる。以下に、本実施形態の冷凍サイクル装置10が実行可能な運転モードの一例として、全席冷房冷却モードの作動について説明する。
【0389】
前席冷房冷却モードにおいて、制御装置70は、冷凍サイクル装置10を全席冷房冷却用モードの冷媒回路に切り替える。具体的に、制御装置70は、上記した冷房冷却モードにおける各構成機器の作動を行うのに加えて、第3膨張弁17cを絞り状態とする。制御装置70は、第4冷媒温度センサ19gおよび第4冷媒圧力センサ19hから送信される検出信号に基づいて、後席蒸発器14bの出口側冷媒の過熱度が予め定められる目標過熱度となるように、第3膨張弁17cの開度を決定する。
【0390】
したがって、全席冷房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13→冷媒分岐部18の順に冷媒が流れる。そして、冷媒分岐部18で分岐した一方の冷媒は、第1膨張弁17a→前席蒸発器14a→前席空調流入配管11d→接続装置200の順に流れるとともに、第3膨張弁17c→後席蒸発器14b→後席流入配管11e→接続装置200の順に流れる。
【0391】
そして、前席空調流入配管11dおよび後席流入配管11eから接続装置200に流入した冷媒は、接続装置200の内部で合流し、圧縮機流出配管11cを介して圧縮機12に流れる。
【0392】
また、冷媒分岐部18で分岐した他方の冷媒は、第2膨張弁17b→チラー16→冷却部流入配管11b→接続装置200→圧縮機流出配管11c→圧縮機12の順に流れる。
【0393】
また、全席冷房冷却モードの高温側熱媒体回路30では、冷房冷却モードと同様に、高温側熱媒体が流れる。そして、全席冷房冷却モードの低温側熱媒体回路40では、冷房冷却モードと同様に、低温側熱媒体が流れる。
【0394】
このように、全席冷房冷却モードにおいて、接続装置200には、前席蒸発器14aから流出した冷媒が前席空調流入配管11dを介して直列流入口221から流入する。また、接続装置200には、後席蒸発器14bから流出した冷媒が後席流入配管11eを介して第2傾斜流入口241から流入する。さらに、接続装置200は、チラー16から流出した冷媒が冷却部流入配管11bを介して傾斜流入口231から流入する。そして、接続装置200は、直列流入口221と、第2傾斜流入口241と、傾斜流入口231とから流入した冷媒を直列流出口253から流出させて圧縮機流出配管11cへ導く。
【0395】
また、前席冷房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、冷房冷却モードの作動に加えて、第3膨張弁17cが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10では、後席蒸発器14bが、後席送風機83から送風された送風空気から吸熱して冷媒を蒸発させて送風空気を冷却する。
【0396】
したがって、全席冷房冷却モードの車両用空調装置1では、前席蒸発器14aにて冷却された送風空気を運転席が設けられる空間へ吹き出すことで、運転席が設けられる空間の冷房を行うことができる。また、全席冷房冷却モードの車両用空調装置1では、後席蒸発器14bにて冷却された送風空気を後部座席が設けられる空間へ吹き出すことで、後部座席が設けられる空間の冷房を行うことができる。
【0397】
さらに、チラー16で冷却された低温側熱媒体を循環させて、バッテリ60の冷却を行うことができる。そして、冷却モードの車両用空調装置1では、低温側ラジエータ43によって冷却された低温側熱媒体を低温側熱媒体回路40で循環させることで、インバータ61、モータジェネレータ62、トランスアクスル装置63それぞれを冷却することができる。
【0398】
続いて、本実施形態の接続装置200の詳細について、
図16および
図17を参照して説明する。
図16および
図17に示すように、第2実施形態に比較して、筐体210の内部には、冷媒通路として、左面部214の表面から下面部212に向かって下面部212まで貫通しないで傾斜して延びる第2傾斜上流路部240が追加されている。
【0399】
第2傾斜上流路部240は、左面部214の表面のうち、上下方向DR1の中心より下側の部位から下面部212の左右方向DR3の中心より右側の部位に向かって延びている。また、第2傾斜上流路部240は、両端部のうち、左面部214の表面に位置付けられる側とは反対側の端部に、直列下流路部250における両端部とは異なる冷媒通路の途中の部位が、接続されている。
【0400】
すなわち、本実施形態では、第2傾斜上流路部240は、直列上流路部220および傾斜上流路部230とは直接接続されていない。具体的に、直列下流路部250における第2傾斜上流路部240が接続される部位は、直列上流路部220および傾斜上流路部230が直列下流路部250に接続される部位よりも冷媒流れ下流側となる。このため、第2傾斜上流路部240を流れる冷媒は、直列上流路部220および傾斜上流路部230を流れる冷媒とは、直接合流しない。
【0401】
第2傾斜上流路部240は、後席流入配管11eから流出した冷媒を筐体210の内部に導くための冷媒通路を形成するものである。第2傾斜上流路部240は、直列上流路部220、傾斜上流路部230、直列下流路部250それぞれが延びる方向とは異なる方向に沿って直線状に延びている。第2傾斜上流路部240は、冷媒流れ上流側に後席流入配管11eに連通する第2傾斜流入口241を有し、冷媒流れ下流側に直列下流路部250に連通する第2傾斜合流口242を有する。第2傾斜上流路部240が延びる方向については後述する。
【0402】
第2傾斜上流路部240は、第2傾斜上流路部240の内径である第7内径φ7が後席流入配管11eの外径より僅かに大きく形成されている。そして、第2傾斜上流路部240は、第2傾斜流入口241から第2傾斜上流路部240の内部へ後席流入配管11eを挿入可能に形成されている。具体的に、第2傾斜上流路部240の内径は、後席流入配管11eの外径15.88mmより僅かに大きく形成されている。
【0403】
第2傾斜上流路部240は、第7内径φ7が冷媒流れ上流側から冷媒流れ下流側に至るまで等しく形成されている。第7内径φ7は、第2傾斜上流路部240が延びる方向に直交する方向の断面形状における直径である。本実施形態では、第2傾斜上流路部240は、第7内径φ7が第4内径φ4および第6内径φ6よりも小さく、第5内径φ5に等しい大きさで形成されている。
【0404】
また、本実施形態の直列下流路部250は、複数合流部251よりも冷媒流れ下流側に、第2傾斜上流路部240を流れる冷媒を直列下流路部250に合流させる下流側合流部252を有する。
【0405】
ここで、直列流出口253の中心を通り、直列下流路部250が延びる方向に沿う直線L4と、第2傾斜流入口241の中心を通り、第2傾斜上流路部240が延びる方向に沿う直線L7とが交差する部分を下流側合流部252とする。
【0406】
本実施形態では、直列下流路部250において、直列上流路部220および傾斜上流路部230が合流する位置と、第2傾斜上流路部240が合流する位置とは、互いに異なる位置に設けられている。そして、複数合流部251には、直列上流路部220および傾斜上流路部230を流れる冷媒が流入する。また、下流側合流部252には、直列上流路部220および傾斜上流路部230から直列下流路部250に流入した冷媒と、第2傾斜上流路部240を流れる冷媒とが流入する。本実施形態では、複数合流部251および下流側合流部252が合流部として機能する。
【0407】
また、直列下流路部250は、第6内径φ6が、第7内径φ7よりも大きく形成されている。すなわち、直列下流路部250は、下流側合流部252よりも冷媒流れ下流側の内径が、第2傾斜上流路部240の内径よりも大きく形成されている。
【0408】
換言すれば、直列下流路部250は、下流側合流部252よりも冷媒流れ下流側において、冷媒流れ方向に直交する断面の流路断面積が、第2傾斜上流路部240における冷媒流れ方向に直交する断面の流路断面積よりも大きく形成されている。そして、直列流出口253は、第2傾斜流入口241よりも鉛直方向下側に位置付けられている。
【0409】
続いて、第2傾斜上流路部240が延びる方向の詳細について、所定の合流基準方向DRCを用いて説明する。当該所定の合流基準方向DRCは、上下方向DR1に沿って上側に向かう方向であって、複数合流部251および下流側合流部252を基準として上下方向DR1に沿って上側に向かう方向である。
【0410】
第2傾斜上流路部240は、下流側合流部252を基準として、所定の合流基準方向DRCに対して、0°より大きく90°より小さい第4角度θ4だけずれて延びている。ここで、所定の合流基準方向DRCに対してずれて下流側合流部252から延びる角度とは、
図17に示す断面図において、上下方向DR1の上側を0°とし、反時計回り方向を正の方向とする角度である。第4角度θ4は、下流側合流部252を中心として、所定の合流基準方向DRCと第2傾斜上流路部240が延びる方向とによって成される角度である。
【0411】
本実施形態では、第4角度θ4が第3角度θ3と同じ角度、すなわち45°となるように第2傾斜上流路部240が延びている。このように、本実施形態の第2傾斜上流路部240が延びる方向は、左右方向DR3および上下方向DR1を含むが、前後方向DR2を含まない。なお、第4角度θ4は、0°よりも大きく90°より小さい範囲内の大きさであれば、第3角度θ3よりも大きい角度や第3角度θ3よりも小さい角度が採用されてもよい。
【0412】
次に、冷凍サイクル装置10を全席冷房冷却モードで作動させた際における本実施形態の接続装置200の内部を冷媒が流れる際の冷媒の流れおよび圧力損失について
図18を参照して説明する。
【0413】
全席冷房冷却モードにおいて、接続装置200には、冷媒が前席空調流入配管11dを介して直列流入口221から流入する。また、接続装置200には、冷媒が冷却部流入配管11bを介して傾斜流入口231から流入する。さらに、接続装置200には、冷媒が後席流入配管11eを介して第2傾斜流入口241から流入する。
【0414】
そして、直列流入口221から流入した冷媒は、
図18の冷媒流れF7に示すように、直列上流路部220が延びる方向に沿って上下方向DR1の下側に向かって流れ、直列合流口222から直列下流路部250に流入する。また、傾斜流入口231から流入した冷媒は、
図18の冷媒流れF8に示すように、傾斜上流路部230が延びる方向に沿って流れ、傾斜合流口232から直列下流路部250に流入する。
【0415】
そして、直列合流口222および傾斜合流口232から直列下流路部250に流入する冷媒は、合流して互いに衝突し、その後、下流側合流部252に向かって、直列下流路部250が延びる方向に沿って上下方向DR1の下側に向かって流れる。
【0416】
直列合流口222から直列下流路部250に流入した冷媒は、直列下流路部250に流入する際に、冷媒の流れ方向が略変えられなく冷媒流れ下流側に向かって流れる。これに対して、傾斜合流口232から直列下流路部250に流入した冷媒は、直列下流路部250に流入する際に、第3角度θ3である45°だけ冷媒の流れ方向が変えられて冷媒流れ下流側に向かって流れる。
【0417】
複数合流部251から下流側合流部252に向かって流れる冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分を有し、他の方向の流速ベクトル成分を有さない。すなわち、直列下流路部250において、下流側合流部252よりも冷媒流れ上流側を流れ、下流側合流部252に流入する直前における冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分を有し、他の方向の流速ベクトル成分を有さない。
【0418】
また、第2傾斜流入口241から流入した冷媒は、
図18の冷媒流れF9に示すように、第2傾斜上流路部240が延びる方向に沿って流れ、第2傾斜合流口242から直列下流路部250に流入する。
【0419】
第2傾斜上流路部240が延びる方向に沿って流れる冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分および左右方向DR3の右方向の流速ベクトル成分を有し、前後方向DR2の流速ベクトル成分を有さない。すなわち、第2傾斜上流路部240を流れ、下流側合流部252に流入する直前における冷媒の流速ベクトルは、上下方向DR1の下方向の流速ベクトル成分および左右方向DR3の右方向の流速ベクトル成分を有し、前後方向DR2の流速ベクトルを有さない。
【0420】
そして、第2傾斜合流口242から直列下流路部250に流入する冷媒は、直列合流口222および傾斜合流口232から直列下流路部250に流入した冷媒に合流して衝突する。そして、第2傾斜合流口242から直列下流路部250に流入した冷媒は、直列下流路部250に流入する際に、第4角度θ4である45°だけ冷媒の流れ方向が変えられて冷媒流れ下流側に向かって流れる。
【0421】
その後、直列流入口221、傾斜流入口231、第2傾斜流入口241それぞれから直列下流路部250に流入した冷媒は、下流側合流部252から上下方向DR1の下側に向かって流れ、直列流出口253から圧縮機流出配管11cへ流出する。
【0422】
以上の如く、本実施形態の接続装置200では、筐体210の形状および筐体210の内部に形成される冷媒通路の形状が第2実施形態と異なる。その他の接続装置200の構成および作動は、第2実施形態と同様である。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0423】
また、第2傾斜合流口242から直列下流路部250に流入する冷媒は、直列合流口222および傾斜合流口232から直列下流路部250に流入した冷媒に合流して衝突するとともに、冷媒の流れ方向が45°だけ変えられる。そして、第2傾斜合流口242から直列下流路部250に流入した冷媒は、直列合流口222および傾斜合流口232から流入した冷媒と一緒に上下方向DR1の下側に向かって流れる。
【0424】
このため、本実施形態の接続装置200では、第2傾斜上流路部240が所定の合流基準方向DRCに対して90°ずれて延びている場合に比較して、冷媒の流れ方向の変更量を小さくできる。したがって、冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制することができる。
【0425】
また、本実施形態の接続装置200では、複数合流部251から下流側合流部252向かって流れる冷媒は、第2傾斜上流路部240から直列下流路部250に流入する冷媒に対して互いに相反する方向の流速ベクトルを含まない。このため、このような構成になっていない場合に比較して、第2傾斜上流路部240から直列下流路部250に冷媒が合流する際の衝突による圧力損失を抑制することができる。
【0426】
(1)上記実施形態では、直列下流路部250は、下流側合流部252よりも冷媒流れ下流側の内径が第2傾斜上流路部240の内径よりも大きく形成されている。
【0427】
このため、直列下流路部250において、下流側合流部252より冷媒流れ下流側を流れる冷媒の流速は、下流側合流部252よりも冷媒流れ下流側の内径が第2傾斜上流路部240の内径の大きさ以下で形成される場合に比較して遅くなる。したがって、直列下流路部250の内径が第2傾斜上流路部240の内径の大きさ以下で形成される場合に比較して、直列下流路部250を冷媒が流れる際に発生する圧力損失を抑制することができる。
【0428】
(2)上記実施形態では、接続装置200は、直列上流路部220に前席空調流入配管11dが接続されている。
【0429】
ここで、電気自動車に搭載される車両用空調装置1は、比較的、バッテリ60を冷却するよりも車室内の空調を行うことが重視される。また、車両用空調装置1では、比較的、車室内のうち、後部座席が設けられた空間よりも運転席が設けられた空間の空調を行うことが重視される。さらに、車両用空調装置1では、比較的、後部座席が設けられた空間の空調を行うためよりもバッテリ60を冷却することが重視される。
【0430】
このため、全席冷房冷却モードで作動する冷凍サイクル装置10では、冷却部流入配管11bよりも前席空調流入配管11dに多くの冷媒を流し、後席流入配管11eよりも冷却部流入配管11bに多くの冷媒を流す必要がある。この場合、接続装置200には、3つの上流路部220、230、240のうち、直列上流路部220に最も多くの冷媒が流入する。そして、冷凍サイクル装置10全体において、直列下流路部250に合流する際に発生する圧力損失は、直列上流路部220、傾斜上流路部230、第2傾斜上流路部240の順に与える影響が大きい。
【0431】
上記実施形態では、3つの上流路部220、230、240のうち、冷媒の流れ方向が略変化しない直列上流路部220に前席空調流入配管11dが接続されている。このため、3つの上流路部220、230、240それぞれから直列下流路部250に冷媒が合流する際に、冷凍サイクル装置10全体としての冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制し易い。したがって、前席空調流入配管11dに最も冷媒が多く流れる場合において、このように構成されていない場合に比較して、冷凍サイクル装置10全体の圧力損失を抑制することができる。
【0432】
(3)上記実施形態では、直列下流路部250において、複数合流部251および下流側合流部252が異なる位置に設けられている。このため、3つの上流路部220、230、240が直列下流路部250で合流する場合において、直列上流路部220および傾斜上流路部230が合流する位置と第2傾斜上流路部240が合流する位置とをずらすことができる。
【0433】
したがって、複数合流部251に接続された上流路部220、230から直列下流路部250に冷媒が流入する際に、第2傾斜上流路部240から合流する冷媒に衝突することを避けることができる。これにより、このように構成されていない場合に比較して、直列下流路部250において冷媒が合流する際の衝突による圧力損失を抑制することができる。
【0434】
(4)上記実施形態では、接続装置200は、直列上流路部220に前席空調流入配管11dが接続されており、傾斜上流路部230に冷却部流入配管11bが接続されている。また、接続装置200は、第2傾斜上流路部240に後席流入配管11eが接続されている。そして、複数合流部251が下流側合流部252よりも冷媒流れ上流側となる位置に設けられている。
【0435】
また、上記したように、直列下流路部250では、直列下流路部250の冷媒流れ上流側から下流側に向かう途中の冷媒通路に対して合流する冷媒通路がある場合、当該合流する冷媒通路から流入する冷媒を直列下流路部250へ引き込む力が発生する。当該直列下流路部250へ引き込む力は、直列下流路部250を流れる冷媒の流れが多いほど大きくなる。
【0436】
そして、全席冷房冷却モードで作動する冷凍サイクル装置10では、第2傾斜上流路部240よりも傾斜上流路部230に多くの冷媒が流入するとともに、傾斜上流路部230よりも直列上流路部220に多くの冷媒が流入する。
【0437】
上記実施形態では、複数合流部251が下流側合流部252よりも冷媒流れ上流側となる位置に設けられている。このため、直列上流路部220および傾斜上流路部230から流入した冷媒が流れる直列下流路部250に第2傾斜上流路部240を流れる冷媒が合流する。したがって、このように構成されていない場合に比較して、直列下流路部250において、下流側合流部252よりも冷媒流れ上流側を流れる冷媒の流量を多くすることができる。このため、直列下流路部250を流れる冷媒によって、第2傾斜合流口242から直列下流路部250へ冷媒を引き込む力を大きくできるので、冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制することができる。
(第3実施形態の第1の変形例)
上述の第3実施形態では、第3角度θ3および第4角度θ4が同じ大きさで構成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、傾斜上流路部230は、第3角度θ3が第4角度θ4よりも小さくなるように構成されていてもよい。
【0438】
これによれば、傾斜上流路部230から直列下流路部250に合流する際の冷媒の流れ方向の変化量は、第2傾斜上流路部240から直列下流路部250に合流する際よりも小さくなる。このため、第2傾斜上流路部240から直列下流路部250に合流する際の冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失に比較して、傾斜上流路部230から直列下流路部250に合流する際の冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制できる。
【0439】
そして、後席流入配管11eよりも冷却部流入配管11bに冷媒が多く流れる場合において、このように構成されていない場合に比較して、冷凍サイクル装置10全体の圧力損失を抑制することができる。
(第3実施形態の第2の変形例)
上述の第3実施形態では、直列下流路部250の内径と直列上流路部220の内径が同じ大きさで形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、前席空調流入配管11dの外径が後席流入配管11eの外径および冷却部流入配管11bの外径と同じ大きさの場合、直列上流路部220の内径が直列下流路部250の内径よりも小さく形成される構成であってもよい。具体的に、直列上流路部220の内径は、傾斜上流路部230および第2傾斜上流路部240の内径と同じ大きさであってもよい。
(第3実施形態の第3の変形例)
上述の第3実施形態では、直列下流路部250が冷媒流れ最上流部から複数合流部251および下流側合流部252を経由し、直列流出口253に至るまでの内径が等しく形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、直列下流路部250は、
図19に示すように、冷媒流れ最上流部から複数合流部251および下流側合流部252を経由し直列流出口253に至るまで内径が段階的に大きくなるように構成されていてもよい。具体的に、直列下流路部250は、複数合流部251が設けられている部位の内径が冷媒流れ最上流部よりも大きく、下流側合流部252が設けられている部位の内径が複数合流部251が設けられている部位よりも内径が大きく形成されてもよい。
【0440】
これにより、直列下流路部250における冷媒の流速は、内径が大きくなるにしたがい、遅くなる。このため、直列下流路部250において、このように構成されていない場合に比較して、直列下流路部250を冷媒が流れる際に発生する圧力損失を抑制することができる。
(第3実施形態の第4の変形例)
上述の第3実施形態では、前席空調流入配管11d、冷却部流入配管11b、後席流入配管11eそれぞれの外径が入口側から出口側に至る等しく形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、
図20に示すように、前席空調流入配管11dは、流路途中の外径が冷媒流れ上流側から冷媒流れ下流側に向かって大きくなっており、出口側が直列上流路部220に挿入されるように形成されていてもよい。また、冷却部流入配管11bは、流路途中の外径が冷媒流れ上流側から冷媒流れ下流側に向かって大きくなっており、出口側が傾斜上流路部230に挿入されるように形成されていてもよい。また、後席流入配管11eは、流路途中の外径が冷媒流れ上流側から冷媒流れ下流側に向かって大きくなっており、出口側が第2傾斜上流路部240に挿入されるように形成されていてもよい。
【0441】
これにより、前席空調流入配管11dにおいて、外径が大きくなる部位より冷媒流れ下流側を流れる冷媒の流速は、外径が大きくなる部位より冷媒流れ上流側を流れる冷媒の流速よりも遅くなる。また、冷却部流入配管11bにおいて、外径が大きくなる部位より冷媒流れ下流側を流れる冷媒の流速は、外径が大きくなる部位より冷媒流れ上流側を流れる冷媒の流速よりも遅くなる。また、後席流入配管11eにおいて、外径が大きくなる部位より冷媒流れ下流側を流れる冷媒の流速は、外径が大きくなる部位より冷媒流れ上流側を流れる冷媒の流速よりも遅くなる。
【0442】
したがって、このように構成されていない場合に比較して、前席空調流入配管11d、冷却部流入配管11b、後席流入配管11eそれぞれを冷媒が流れる際に発生する圧力損失を抑制することができる。
【0443】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図21を参照して説明する。本実施形態の接続装置300は、筐体310の形状が第2実施形態と相違している。本実施形態では、第2実施形態と異なる部分について主に説明し、第2実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0444】
本実施形態の筐体310は、複数の円筒形状の冷媒通路形成部が連なって形成されている。具体的に、筐体310は、第1筒上流路部320および筒下流路部350を内部に形成する第1円筒部311と、第2筒上流路部330を内部に形成する第2円筒部312とで構成されている。
【0445】
図21に示すように、第1円筒部311は、中空円筒形状であって、上下方向DR1に沿って延びている。第1円筒部311は、内部に冷媒が流れる冷媒通路が形成されている。また、第1円筒部311は、上下方向DR1の両側が開口している。第1円筒部311は、上下方向DR1の一方側から流入した冷媒が内部の冷媒通路を流れ、上下方向DR1の他方側から流出可能な構成となっている。第1円筒部311の外周部の上下方向DR1の略中央には、第2円筒部312が連結されている。
【0446】
第2円筒部312は、中空円筒形状であって、第1円筒部311に連結されている部位を起点として上下方向DR1の上側および左右方向DR3の右側に向かって傾斜して延びている。第2円筒部312は、内部に冷媒が流れる冷媒通路が形成されている。また、第2円筒部312は、第2円筒部312が延びる方向の両側が開口している。第2円筒部312の内部の冷媒通路は、第1円筒部311に連結されている側の開口側を介して第1円筒部311の内部の冷媒通路に連通している。
【0447】
本実施形態では、接続装置300は、第1円筒部311の内部に第1筒上流路部320および筒下流路部350を有する。第1円筒部311の内部に形成された冷媒通路のうち、上下方向DR1の上端部から第2円筒部312の冷媒通路に連通する部位までが第1筒上流路部320である。第1筒上流路部320は、第2実施形態の直列上流路部220に相当する。本実施形態では、第1筒上流路部320が、直列上流側流路部として機能する。
【0448】
また、第1円筒部311の内部に形成された冷媒通路のうち、第2円筒部312の冷媒通路に連通する部位から上下方向DR1の下端部までが、筒下流路部350である。筒下流路部350は、第2実施形態の直列下流路部250に相当する。本実施形態では、筒下流路部350が、下流側流路部として機能する。
【0449】
すなわち、第1円筒部311の内部に形成された冷媒通路のうち、上下方向DR1の略中心よりも上側の部位が、接続装置300の内部に冷媒を流入させる第1筒上流路部320として構成されている。また、第1円筒部311の内部に形成された冷媒通路のうち、上下方向DR1の略中心よりも下側の部位が、接続装置300から冷媒を流出させる筒下流路部350として構成されている。
【0450】
そして、本実施形態では、接続装置300は、第2円筒部312の内部に第2筒上流路部330を有する。第2筒上流路部330は、第2実施形態の傾斜上流路部230に相当する。すなわち、第2円筒部312の内部に形成された冷媒通路が、接続装置300の内部に冷媒を流入させる第2筒上流路部330として構成されている。本実施形態では、第2筒上流路部330が、傾斜上流側流路部として機能する。
【0451】
第1筒上流路部320は、第1円筒部311が延びる方向、すなわち、上下方向DR1に沿って直線状に延びている。また、第1筒上流路部320は、上下方向DR1の上側の端部に、空調流入配管11aが接続される第1筒流入口321を有し、上下方向DR1の下側の端部に、筒下流路部350の上下方向DR1の上側の端部が、連通している。
【0452】
第2筒上流路部330は、第2円筒部312が延びる方向、すなわち、上下方向DR1の上側および左右方向DR3の右側に向かって傾斜して延びている。また、第2筒上流路部330は、両端部のうちの第1円筒部311の冷媒通路に連通する側の端部に、筒下流路部350の上下方向DR1の上側の端部が、接続されている。そして、第2筒上流路部330は、両端部のうちの第1円筒部311の冷媒通路に連通する側の端部とは反対側の端部に、冷却部流入配管11bが接続される第2筒流入口331を有する。
【0453】
筒下流路部350は、第1円筒部311が延びる方向、すなわち、上下方向DR1に沿って直線状に延びている。また、筒下流路部350は、上下方向DR1の上側の端部に、第1筒上流路部320および第2筒上流路部330が接続されており、上下方向DR1の下側の端部に、圧縮機流出配管11cが接続される円筒流出口353を有する。
【0454】
筒下流路部350は、冷媒流れ上流側に第1筒上流路部320および第2筒上流路部330を流れる冷媒を筒下流路部350に合流させる円筒合流部351を有する。本実施形態では、円筒合流部351が合流部として機能する。
【0455】
このように、第1筒上流路部320および第2筒上流路部330は、それぞれの筒下流路部350が接続される側の端部が互いに接続されている。すなわち、第1筒上流路部320の冷媒流れ最下流部および第2筒上流路部330の冷媒流れ最下流部は、筒下流路部350の冷媒流れ最上流部に直接接続されている。
【0456】
第1筒上流路部320は、所定の合流基準方向DRCに沿って延びている。したがって、円筒合流部351を中心として、所定の合流基準方向DRCと第1筒上流路部320が延びる方向とによって成される角度は0°である。これに対して、第2筒上流路部330は、所定の合流基準方向DRCに対して、45°だけずれて延びている。
【0457】
以上の如く、本実施形態の接続装置300では、筐体310の形状が第2実施形態と異なる。その他の接続装置300の構成および作動は、第2実施形態と同様である。これによれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0458】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0459】
上述の実施形態では、接続装置100、200、300が、複数の冷媒配管から流入する冷媒を合流させて1つの冷媒配管に導く構成である例について説明したが、これに限定されない。例えば、
図22に示すように、接続装置500は、1つの冷媒配管から流入する冷媒を接続装置500の内部で分岐させて、複数の冷媒配管に流出させる構成であってもよい。
【0460】
例えば、冷凍サイクル装置10において、冷媒分岐部18の代わりに接続装置500を配置する場合、接続装置500は、水-冷媒熱交換器13から流入する冷媒を分岐させて、第1膨張弁17aおよび第2膨張弁17bに導く構成であってもよい。
【0461】
この場合、
図22に示すように、接続装置500の内部には、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路の出口側から流出する冷媒を接続装置500に導く冷媒配管に接続される上流側流路部510が設けられる。また、接続装置500の内部には、接続装置500の内部に流入した冷媒を第1膨張弁17aの入口側に導く冷媒配管に接続される下流側流路部520と、第2膨張弁17bの入口側に導く冷媒配管に接続される下流側流路部530とが設けられる。
【0462】
ここで、上流側流路部510に流入した冷媒を分岐させる部位を分岐部540とし、分岐部540から上流側流路部510の冷媒流れ上流側に向かって上流側流路部510が延びる方向を上流方向とする。そして、上流方向とは反対の方向を所定の分岐基準方向DRC2とする。この場合、下流側流路部520および下流側流路部530は、所定の分岐基準方向DRC2に対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びている。
【0463】
これによれば、下流側流路部520および下流側流路部530が所定の分岐基準方向DRC2に対して90°ずれて延びている場合に比較して、冷媒の流れ方向の変更量を小さくできるので、冷媒の流れ方向が変化する際の圧力損失を抑制することができる。
【0464】
上述の実施形態では、接続装置100、200、300の内部に形成される上流路部の数量が2つまたは3つである例について説明したが、これに限定されない。例えば、接続装置100、200、300の内部には、上流路部が4つ以上形成される構成であってもよい。
【0465】
上述の実施形態では、接続装置100に形成される急上流路部120および低上流路部130が所定の合流基準方向DRCに対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びている例について説明したが、これに限定されない。例えば、接続装置100に形成される接続装置100に形成される急上流路部120および低上流路部130のうち、一方の上流路部は、所定の合流基準方向DRCに対して、90°だけずれて延びる構成でもよい。この場合、他方の上流路部は、所定の合流基準方向DRCに対して、0°より大きくかつ90°より小さい角度だけずれて延びる構成となる。
【0466】
上述の実施形態では、下流側流路部140の内径が急上流路部120の内径および低上流路部130の内径より大きく形成されている例について説明したが、これに限定されない。また、直列下流路部250の内径が傾斜上流路部230の内径および第2傾斜上流路部240の内径より大きく形成されている例について説明したが、これに限定されない。
【0467】
例えば、下流側流路部140の内径は、急上流路部120の内径および低上流路部130の内径より小さく形成されてもよい。また、直列下流路部250の内径は、傾斜上流路部230の内径および第2傾斜上流路部240の内径より小さく形成されてもよい。
【0468】
上述の実施形態では、急上流路部120に空調流入配管11aが接続され、低上流路部130に冷却部流入配管11bが接続され、下流側流路部140に圧縮機流出配管11cに接続される例について説明したが、これに限定されない。また、上述の実施形態では、直列上流路部220に前席空調流入配管11dが接続され、傾斜上流路部230に冷却部流入配管11bが接続され、第2傾斜上流路部240に後席流入配管11eが接続され、直列下流路部250に圧縮機流出配管11cに接続される例について説明したが、これに限定されない。各流路部120、130、140、220、230、240、250それぞれに接続される冷媒配管は、適宜変更可能である。
【0469】
上述の実施形態では、急上流路部120の内径および低上流路部130の内径に対する下流側流路部140の内径の比率が1.20である例について説明したが、これに限定されない。また、傾斜上流路部230の内径および第2傾斜上流路部240の内径に対する直列下流路部250の内径の比率が1.20である例について説明したが、これに限定されない。
【0470】
急上流路部120の内径および低上流路部130の内径に対する下流側流路部140の内径の比率は、それぞれに接続される冷媒配管の外径に応じて、適宜変更可能である。また、傾斜上流路部230の内径および第2傾斜上流路部240の内径に対する直列下流路部250の内径の比率は、それぞれに接続される冷媒配管の外径に応じて、適宜変更可能である。
【0471】
上述の実施形態では、冷媒流出口143が、急流入口121および低流入口131よりも鉛直方向下側に位置付けられている例について説明したが、これに限定されない。また、上述の実施形態では、直列流出口253が、直列流入口221、傾斜流入口231、第2傾斜流入口241よりも鉛直方向下側に位置付けられている例について説明したが、これに限定されない。
【0472】
接続装置100は、冷媒流出口143が、急流入口121および低流入口131よりも鉛直方向上側に位置付けられている構成でもよい。また、接続装置200は、直列流出口253が、直列流入口221、傾斜流入口231、第2傾斜流入口241よりも鉛直方向上側に位置付けられている構成でもよい。
【0473】
上述の実施形態では、急上流路部120、低上流路部130、直列上流路部220、傾斜上流路部230、第2傾斜上流路部240それぞれの内径が、自身が接続される冷媒配管の冷媒流れ最下流部に対応する大きさで形成されている例について説明したが、これに限定されない。また、上述の実施形態では、下流側流路部140、直列下流路部250それぞれの内径が、自身が接続される冷媒配管の冷媒流れ最上流部に対応する大きさで形成されている例について説明したが、これに限定されない。
【0474】
例えば、急上流路部120、低上流路部130、直列上流路部220、傾斜上流路部230、第2傾斜上流路部240それぞれの内径が、自身が接続される冷媒配管の冷媒流れ最下流部に対応しない大きさで形成されてもよい。また、下流側流路部140、直列下流路部250それぞれの内径が、自身が接続される冷媒配管の冷媒流れ最上流部に対応しない大きさで形成されてもよい。
【0475】
この場合、入口側の外径と出口側の外径とが互いに異なる大きさを有する冷媒配管変換部を用いることで、それぞれの上流路部およびそれぞれの下流路部を自身が接続される冷媒配管に接続することができる。
【0476】
上述の実施形態では、接続装置100、200、300の内部に形成されるそれぞれの冷媒通路が冷媒流れ上流側から下流側に至るまで直線状に形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、接続装置100、200、300の内部に形成されるそれぞれの冷媒通路は、曲線状に形成される部位を含んで形成されていてもよい。
【0477】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0478】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0479】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0480】
100 接続装置
110 筐体
120、130 上流側流路部
140 下流側流路部
141、142 合流部