(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191826
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20221221BHJP
H01R 13/648 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/52 301E
H01R13/648
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100284
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔦川 友佑
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰弘
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA04
5E021FA09
5E021FA14
5E021FB07
5E021FB20
5E021FC08
5E021LA09
5E021LA15
5E087EE11
5E087FF02
5E087FF12
5E087FF18
5E087GG13
5E087GG35
5E087JJ04
5E087JJ09
5E087LL12
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR06
5E087RR07
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】シール性の低下を抑制するシールドコネクタを提供すること。
【解決手段】シールドコネクタ1は、電線51の端部に端子52が接続された端子付電線5と、開口を有して端子付電線5が収容される本体部31、及び、開口を塞ぐように本体部31に組み付けられる蓋部32を有するハウジング3と、端子付電線5とハウジング3との間、及び、本体部31と蓋部32との間を一括してシールするパッキン4と、ハウジング3と密着するようにハウジング3に組み付けられるシールドシェル2と、を備え、シールドシェル2は、ハウジング3が圧入される筒状部を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部に端子が接続された端子付電線と、
開口を有して前記端子付電線が収容される本体部、及び、前記開口を塞ぐように前記本体部に組み付けられる蓋部を有するハウジングと、
前記端子付電線と前記ハウジングとの間、及び、前記本体部と前記蓋部との間を一括してシールするパッキンと、
前記ハウジングと密着するように前記ハウジングに組み付けられるシールドシェルと、を備え、
前記シールドシェルは、前記ハウジングが圧入される筒状部を有する、
シールドコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のシールドコネクタにおいて、
前記端子付電線と前記ハウジングとの前記間とは、
前記端子付電線と前記本体部との間、及び、前記端子付電線と前記蓋部との間である、
シールドコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシールドコネクタにおいて、
前記パッキン及び前記シールドシェルの前記筒状部は、前記ハウジングの少なくとも一部を前記ハウジングの径方向に沿って且つ周方向の全域に亘って挟み込むように位置している、
シールドコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のシールドコネクタにおいて、
前記パッキンの前記端子付電線と前記ハウジングとの間をシールしている箇所は、前記パッキンの中で最も肉厚が厚く、
前記ハウジングの前記少なくとも一部は、
前記パッキンの前記端子付電線と前記ハウジングとの間をシールしている箇所に対応する箇所である、
シールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線の端末に端子が接続された端子付電線と、端子付電線を保持するハウジングと、ハウジングに組み付けられるシールドシェルと、端子付電線とハウジングとの間をシールする防水栓と、を備えたシールドコネクタが提案されている。例えば、従来のシールドコネクタの一つは、端子付電線がハウジングに保持されるとともに、ハウジングに設けられた係合部とシールドシェルに設けられた被係合部とが係合される。そして、防水栓がハウジングの内周面と押圧接触することによって、ハウジングと電線との間をシールするように構成されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シールドコネクタに用いられるハウジングは一般的に樹脂材料から構成される。防水栓やパッキンといったシール部材は、端子付電線とハウジングとの間をシールするために、ハウジングの内周面と押圧接触するように構成される。例えば、このように構成されるシールドコネクタが高温環境下で用いられる場合、シール部材の弾性力(いわゆる面圧)の影響を受けてハウジングそのものが変形するおそれがある。
【0005】
特許文献1に記載のシールドコネクタを例にして説明すると、ハウジングの内周面は防水栓と押圧接触しているため、防水栓の弾性力によってハウジングにはハウジングの径方向外側に向かう力が掛かる。このため、ハウジングは、径が広がるような変形が生じるおそれがある。このようにハウジングに変形が生じると、ハウジングと防水栓との間には隙間が生じることになる。つまり、コネクタ(シールドコネクタも含む)のシール性が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、シール性の低下を抑制するシールドコネクタの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るシールドコネクタは、下記[1]~[4]を特徴としている。
[1]
電線の端部に端子が接続された端子付電線と、
開口を有して前記端子付電線が収容される本体部、及び、前記開口を塞ぐように前記本体部に組み付けられる蓋部を有するハウジングと、
前記端子付電線と前記ハウジングとの間、及び、前記本体部と前記蓋部との間を一括してシールするパッキンと、
前記ハウジングと密着するように前記ハウジングに組み付けられるシールドシェルと、を備え、
前記シールドシェルは、前記ハウジングが圧入される筒状部を有する、
シールドコネクタであること。
[2]
上記[1]に記載のシールドコネクタにおいて、
前記端子付電線と前記ハウジングとの前記間とは、
前記端子付電線と前記本体部との間、及び、前記端子付電線と前記蓋部との間である、
シールドコネクタであること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のシールドコネクタにおいて、
前記パッキン及び前記シールドシェルの前記筒状部は、前記ハウジングの少なくとも一部を前記ハウジングの径方向に沿って且つ周方向の全域に亘って挟み込むように位置している、
シールドコネクタであること。
[4]
上記[3]に記載のシールドコネクタにおいて、
前記パッキンの前記端子付電線と前記ハウジングとの間をシールしている箇所は、前記パッキンの中で最も肉厚が厚く、
前記ハウジングの前記少なくとも一部は、
前記パッキンの前記端子付電線と前記ハウジングとの間をシールしている箇所に対応する箇所である、
シールドコネクタであること。
【0008】
上記[1]の構成のシールドコネクタについて以下に説明する。本構成のシールドコネクタは、端子付電線と、ハウジングと、パッキンと、シールドシェルと、を備えている。ハウジングは端子付電線が収容される本体部及び本体部の開口を塞ぐように組み付けられる蓋部を有し、パッキンは端子付電線とハウジングとの間及び本体部と蓋部との間を一括してシールする。そして、シールドシェルがハウジングと密着するように組み付けられる。加えて、シールドシェルはハウジングが圧入される筒状部を有している。これにより、例えば本構成のシールドコネクタが高温環境下で用いられる場合、パッキンの弾性力によってハウジングがハウジングの径方向外側に向かう力が掛かってもシールドシェルが密着しているため、ハウジングの径方向に広がる変形が抑制される。つまり、ハウジングとパッキンとの間に隙間が生じるおそれが抑制される。更に、シールドシェルの筒状部にハウジングが圧入されるため、ハウジングの本体部が蓋部に向かって押し付けられ且つ蓋部が本体部に向かって押し付けられた状態が維持される。これにより、本体部と蓋部との組付状態が適正に維持され、引いてはシールドコネクタのシール性が適正に維持される。この結果、本構成のシールドコネクタは、シール性の低下が抑制される。
【0009】
上記[2]の構成のシールドコネクタによれば、パッキンが端子付電線とハウジングとの間である端子付電線と本体部との間、及び、端子付電線と蓋部との間をシールしているため、ハウジングが本構成のハウジングのように本体部と蓋部との二つの部材から構成される場合にもシール性に優れる。
【0010】
上記[3]の構成のシールドコネクタによれば、ハウジングの少なくとも一部がパッキン及びシールドシェルの筒状部によってハウジングの径方向沿って且つハウジングの周方向の全域に亘って挟み込まれているため、パッキンによってハウジングがシールされるとともに、シールドシェルによってハウジングの変形が抑制される。
【0011】
上記[4]の構成のシールドコネクタについて以下に述べる。パッキンの端子付電線とハウジングとの間をシールしている箇所は、パッキンの中で最も肉厚が厚いように構成される。ハウジングにおけるパッキンの上記箇所に対応する箇所は、最もパッキンの弾性力が掛かる。このため、ハウジングの上記箇所がパッキン及びシールドシェルによって挟み込まれていることによって、上記〔2〕と同様に、ハウジングの変形が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、シール性の低下を抑制するシールドコネクタを提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るシールドコネクタを前方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すシールドコネクタを後方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すシールドコネクタの分解斜視図である(一部図示省略)。
【
図4】
図4は、
図3に示す端子付電線及びパッキンの斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すハウジングの本体部を後方から見た斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、
図3に示すシールドシェルを前方から見た分解斜視図であり、
図9(b)は、
図3に示すシールドシェルを後方から見た分解斜視図である。
【
図10】
図10(a)は、
図8に示す蓋部のリブの拡大正面図であり、
図10(b)は、他の実施形態に係るシールドコネクタの
図10(a)に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本実施形態に係るシールドコネクタ1は、例えば車両のパネル等に取り付けられて、インバータやモータ等と接続される。以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るシールドコネクタ1について説明する。
【0016】
以下、説明の便宜上、
図1~
図10に示すように、「前後方向」、「上下方向」、「幅方向」、「前」、「後」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、シールドコネクタ1及び相手側コネクタ(図示省略)の嵌合方向と一致している。シールドコネクタ1の嵌合方向正面側(相手側コネクタに近づく側)を「前方」と呼び、シールドコネクタ1の嵌合方向解除側(相手側コネクタから遠ざかる側)を「後方」と呼ぶ。具体的には、
図1において、左方向及び右方向がそれぞれ前方及び後方である。更に、ハウジング3の径方向を単に「径方向」といい、ハウジング3の周方向を単に「周方向」という。
【0017】
図1~
図3に示すように、シールドコネクタ1は、シールドシェル2と、ハウジング3と、パッキン4と、端子付電線5と、を含んで構成される。シールドシェル2、ハウジング3、パッキン4、及び、端子付電線5の各々は、シールドコネクタ1である。なお、
図1に示す例では、シールドコネクタ1と相手側コネクタとの間をシールするシール部材6がハウジング3の前方部分に設けられている。
【0018】
図4及び
図5に示すように、パッキン4は、端子付電線5とハウジング3との間をシールする軸シール部41、及び、後述するハウジング3の本体部31と蓋部32との間をシールする面シール部42を有している。
【0019】
軸シール部41は、パッキン4の中で最も肉厚が厚いように構成される。即ち、軸シール部41は、面シール部42よりも肉厚が厚い。なお、本実施形態では、肉厚とはハウジング3の径方向に沿った厚さのことを指す。軸シール部41には、端子付電線5が挿通される孔部41aが幅方向に沿って複数設けられている(本例では、3箇所)。面シール部42は、略矩形C字状の形状を有している。
【0020】
パッキン4は、軸シール部41及び面シール部42によって環状の形状を有するとともに、端子付電線5とハウジング3との間、及び、本体部31と蓋部32との間の間を一括してシールする(
図5及び
図6参照)。なお、端子付電線5とハウジング3との間とは、具体的には、端子付電線5と本体部31との間、及び、端子付電線5と蓋部32との間のことである。
【0021】
端子付電線5は、前後方向に延びる電線51と、電線51の端末(本例では、前端部)に接続される端子52とを有している。端子52は、電線51との接続箇所を除いては上下方向に延びている。つまり、本実施形態では、端子52は、電線51に対して略垂直に構成される。端子付電線5は、後述するようにパッキン4の孔部41aに挿通されてから、ハウジング3に収容される(
図3及び
図5~
図6参照)。
【0022】
なお、図示を省略しているが、外部からのノイズの侵入等を抑制するために電線51の外周には編組が設けられている。
【0023】
端子付電線5及びパッキン4は、後述するようにハウジング3に収容される。つまり、例えばシールドコネクタ1が高温環境下で使用される場合、パッキン4の弾性力によってハウジング3には径方向外側に向かう力が掛かる(
図5及び
図6の矢印Y1~矢印Y4を参照)。
【0024】
本実施形態では、軸シール部41は面シール部42よりも肉厚が厚いため、特にハウジング3の軸シール部41に対応する箇所(後述する被挟込部30)においては、パッキン4の弾性力の影響を受けやすい。
【0025】
本実施形態に係るシールドコネクタ1は、上述した状況を鑑みて、パッキン4の弾性力を起因とするハウジング3の変形を抑制することによって、シールドコネクタ1のシール性の低下を抑制するように構成される。
初めに、シールドコネクタ1を構成する各要素について以下に説明する。
【0026】
まず、ハウジング3について説明する。ハウジング3は、樹脂材料から構成される樹脂成形体である。
図7に示すように、ハウジング3は、端子付電線5を収容する本体部31と、本体部31に組み付けられる蓋部32と、を有している。ハウジング3は、本体部31と蓋部32とが上下方向に組み付けられることによって構成される。
【0027】
図7及び
図8に示すように、本体部31は、収容部311と、係合突起312と、被係合部313と、フード部314とを有している。収容部311は、下方が開口しており、複数の端子付電線5(本例では3つ)が収容される。収容部311には、収容される複数の端子付電線5に対応して複数の収容室(本例では、3つ)が設けられている。
【0028】
収容部311は、端子付電線5のパッキン4が装着されている箇所を収容する第一部分311aと、端子付電線5のパッキン4(特に軸シール部41)が装着されている箇所よりも後方に位置する電線51を収容する第二部分311bとから構成される。
【0029】
係合突起312は、収容部311(第一部分311a)の幅方向及び前方の壁部に設けられており、後述する蓋部32の被係合部322と係合する。被係合部313は、収容部311(第二部分311b)の後方の壁部に設けられ、後方の壁部から下方に向かって延びている。被係合部313は、後述する蓋部32の係合突起(図示省略)と係合される。
【0030】
フード部314は、収容部311の上方の壁部の前端部に連設されて、開口が前後方向に貫通する略楕円筒状の形状を有している。フード部314の前端部は、収容部311の前端部よりも前方に突出している。フード部314の前端部の外周面には、シールドコネクタ1と相手側コネクタとの嵌合時に双方の間をシールするシール部材6が装着されている(
図1参照)。
【0031】
本体部31には、収容部311の上方の壁部とフード部314の下方の壁部とを連通する孔部315が設けられ、孔部315には端子52が挿通される。端子52の先端部(即ち、相手側コネクタの端子(図示省略)と接続される部分)は、孔部315に挿通されてフード部314の内側に位置している(
図2参照)。
【0032】
図7に示すように、蓋部32は、上方が開口しており、収容部311に端子付電線5が収容されると、収容部311の開口を塞ぐように本体部31に組み付けられる。蓋部32は、本体部31の第一部分311aの開口を塞ぐ第一部分32aと、本体部31の第二部分311bの開口を塞ぐ第二部分32bとから構成される。
【0033】
蓋部32が本体部31に組み付けられると、本体部31の第一部分311a及び蓋部32の第一部分32aによってハウジング3の第一部分3aが構成され、本体部31の第二部分311b及び蓋部32の第二部分32bによって第二部分3bが構成される。
【0034】
ハウジング3の第一部分3aは端子付電線5のパッキン4が装着されている箇所を収容し、第二部分3bは端子付電線5のパッキン4(特に軸シール部41)が装着されている箇所よりも後方に位置する電線51を収容している。
【0035】
蓋部32は、リブ321と、被係合部322と、係合突起(図示省略)とを有している。リブ321は、蓋部32(特に第一部分32a)の底壁の外周面に設けられており、上記外周面から下方に突出するとともに前後方向に延びている。リブ321は、正面視矩形状(
図10(a)参照)の略直方体状の形状を有している。リブ321は、後述するように、シールドシェル2がハウジング3に組み付けられる際に圧入リブの役割を果たす。
【0036】
被係合部322は、蓋部32(特に第一部分32a)の幅方向及び前方の壁部に設けられ、各壁部から上方に向かって延びている。被係合部322は、本体部31の係合突起312と係合される。係合突起は、蓋部32(特に第二部分32b)の後方の壁部に設けられており、本体部31の被係合部313と係合される。
【0037】
ハウジング3は、後述するようにシールドシェル2及びパッキン4によって径方向に沿って且つ周方向の全域に亘って挟み込まれる被挟込部30を有している。被挟込部30は、具体的にはハウジング3の軸シール部41を収容している(即ち、軸シール部41と押圧接触している)箇所である。
【0038】
ハウジング3は、弾性変形可能な片持ち梁状のロックアーム33を更に備える。ロックアーム33は、本体部31(特に第一部分311a)の幅方向の壁部にそれぞれ設けられ、後述するシールドシェル2の係合孔24と係合される。
以上がハウジング3についての説明である。
【0039】
次に、シールドシェル2について説明する。シールドシェル2は、金属材料から構成されて、外部からのノイズの侵入等を抑制する。シールドシェル2は、ハウジング3の後方から前後方向に沿ってハウジング3の外周面を摺動しながら組み付けられる。このため、シールドシェル2は、ハウジング3の外周形状に対応する形状を有している。
【0040】
図9に示すように、シールドシェル2は、ハウジング3の第一部分3a(フード部314も含む)に装着される第一部材21と、ハウジング3の第二部分3bに装着される第二部材22とを有している。第一部材21と第二部材22とは、締結部材23を介して締結されるともに電気的に接続される。
【0041】
第一部材21は、ハウジング3の被挟込部30の外周面と密着する筒状部211が設けられている。筒状部211には、ハウジング3が圧入される。筒状部211は、前方に開口する有底の略矩形筒状の形状を有している。筒状部211の底壁212には、孔部213が設けられている。孔部213は、ハウジング3の第二部分3bが挿通可能な大きさに構成される。底壁212の幅方向の両端には、第二部材22と締結するための締結孔214がそれぞれ設けられている。
【0042】
第一部材21は、筒状部211の前方に連設される前端部215を更に有している。前端部215は、ハウジング3のフード部314を外周面と密着する。前端部215の前端縁には締結孔217を有するフランジ部216が設けられている。締結孔217は、シールドコネクタ1が導電性部材(図示省略)に締結固定される際に締結部材(図示省略)が挿通される孔である。導電性部材とは、例えば車両のパネル等が挙げられる。
【0043】
第二部材22は、ハウジング3の第二部分3bの周囲を覆う筒状部221と、筒状部221の前端縁に設けられるフランジ部222とを有している。筒状部221は、開口が前後方向に貫通する略楕円筒状の形状を有する。フランジ部222は、第一部材21の締結孔214に対応する位置に締結孔223がそれぞれ設けられている。
【0044】
シールドシェル2は、端子付電線5の電線51の外周を覆う編組(図示省略)と電気的に接続される必要がある。このため、シールドシェル2の後端(即ち、筒状部221)の外周面には、編組の端末をシールドシェル2に接地させる加締めリング7が装着される。これにより、編組とシールドシェル2とが電気的に接続される。更に、上述したように、シールドシェル2は導電性部材(例えば車両のパネル等)に締結固定されるため、編組、シールドシェル2及び導電性部材がそれぞれ電気的に接続される。
【0045】
シールドシェル2は、ハウジング3のロックアーム33と係合する係合孔24が設けられている。係合孔24は、ロックアーム33に対応する位置にそれぞれ設けられている。
以上がシールドシェル2についての説明である。
【0046】
次いで、シールドコネクタ1の製造工程について説明する。最初に端子付電線5にパッキン4が装着される。端子付電線5にパッキン4を装着する工程としては、端子付電線5の後端がパッキン4の孔部41aに挿通させてもよいし、電線51をパッキン4に装着した後に電線51の端末に端子52が接続されてもよい。
【0047】
端子付電線5にパッキン4が装着された後、端子付電線5及びパッキン4がハウジング3の本体部31に収容される。端子付電線5及びパッキン4が本体部31に収容されると、本体部31の開口を塞ぐように本体部31に蓋部32が組み付けられる。
【0048】
なお、本実施形態では、従来のシールドコネクタとは異なり、端子52が電線51に対して略垂直に構成されているため、ハウジング3は本体部31及び蓋部32の2つの部材を有しており、更には本体部31に対して蓋部32が上下方向に沿って組み付けられるように構成されている。
【0049】
端子付電線5及びパッキン4がハウジング3に収容された状態では、ハウジング3の内周面とパッキン4とは押圧接触している。つまり、パッキン4は、端子付電線5とハウジング3との間、及び、本体部31と蓋部32との間を一括してシールしている(
図5も参照)。
【0050】
そして、シールドシェル2は、ハウジング3の後方から、前後方向に沿って移動されてハウジング3に組み付けられる。具体的には、シールドシェル2の内周面がハウジング3の外周面に対して摺動するように、ハウジング3に対してシールドシェル2が移動される。換言すると、ハウジング3は、シールドシェル2の筒状部211に圧入される。
【0051】
このようにして、シールドシェル2がハウジング3に組み付けられることによって、ハウジング3の本体部31と蓋部32とは互いに突き合わされる向きにそれぞれ押圧される。これにより、本体部31と蓋部32との間のシール性が向上される。
【0052】
そして、シールドシェル2がハウジング3の所定の位置まで移動されると、ハウジング3のロックアーム33がシールドシェル2の係合孔24と係合される。これにより、シールドコネクタ1が得られる。
以上がシールドコネクタ1の製造工程について説明である。
【0053】
上述したように、シールドコネクタ1は、シールドシェル2がハウジング3と密着し、且つ、シールドシェル2及びパッキン4がハウジング3の被挟込部30を径方向に沿って且つ周方向の全域に亘って挟み込むように位置している。
【0054】
換言すると、
図6(b)に示すように、ハウジング3の被挟込部30は、内周面がパッキン4の軸シール部41と押圧接触し、外周面がシールドシェル2の内周面と密着している。これにより、シールドコネクタ1は、高温環境下で用いられる場合でも、優れた防水性を有するとともに、ハウジング3の径方向外側に広がる変形がシールドシェル2によって抑制される。
【0055】
本実施形態では、シールドシェル2の筒状部211にハウジング3が圧入されるため、シールドシェル2によってハウジング3は径方向内側に向かって押圧されて径が小さくなる。これにより、本体部31の係合突起312と蓋部32の被係合部322との係合状態が緩む(換言すると、係合突起312と被係合部322とが適正な係合状態でない)ことがある。しかしながら、ハウジング3の径が小さくなる際、パッキン4はハウジング3に径方向内側に向かって押圧されるため、これに伴いパッキン4は潰れるような弾性変形をする。このため、上述したように係合突起312と被係合部322とが適正な係合状態でない場合にもパッキンの弾性変形によってシールドコネクタ1のシール性が維持される。
【0056】
なお、本実施形態では、軸シール部41が面シール部42よりも肉厚が厚いため、ハウジング3のパッキン4と押圧接触している箇所の中でも軸シール部41と押圧接触している箇所(即ち、被挟込部30)が最もパッキン4の弾性力が掛かる。このため、少なくとも被挟込部30がパッキン4及びシールドシェル2によって挟み込まれるような構成とした。
【0057】
<作用・効果>
本実施形態に係るシールドコネクタ1は、端子付電線5と、ハウジング3と、パッキン4と、シールドシェル2と、を備えている。ハウジング3は端子付電線5が収容される本体部31及び本体部31の開口を塞ぐように組み付けられる蓋部32を有し、パッキン4は端子付電線5とハウジング3との間及び本体部31と蓋部32との間を一括してシールする。そして、シールドシェル2がハウジング3と密着するように組み付けられる。これにより、シールドコネクタ1が例えば高温環境下で用いられる場合、パッキン4の弾性力によってハウジング3にハウジング3の径方向外側に向かう力が掛かってもシールドシェル2が密着しているため、ハウジング3の径方向外側に広がる変形が抑制される。
【0058】
具体的には、
図6(b)に示すように、軸シール部41の弾性力によってハウジング3には径方向外側に向かう力が掛かるが(矢印Y3~矢印Y4参照)、シールドシェル2がハウジング3の外周面と密着していることによって、シールドコネクタ1が高温環境下で用いられる場合でもハウジング3の径方向外側に広がる変形がシールドシェル2によって抑制される。つまり、ハウジング3とパッキン4との間に隙間が生じるおそれが抑制される。
【0059】
加えて、シールドシェル2の筒状部211にハウジング3が圧入されるため、本体部31が蓋部32に向かって押し付けられ且つ蓋部32が本体部31に向かって押し付けられた状態が維持される。これにより、本体部31と蓋部32との組付状態が適正に維持され、引いてはシールドコネクタ1のシール性が適正に維持される。
【0060】
更に、本実施形態に係るシールドコネクタ1によれば、パッキン4が端子付電線5とハウジング3との間である端子付電線5と本体部31との間、及び、端子付電線5と蓋部32との間をシールしているため、ハウジングが本実施形態に係るハウジング3のように本体部31と蓋部32との二つの部材から構成される場合にもシール性に優れる。
【0061】
更に、本実施形態に係るシールドコネクタ1によれば、ハウジング3の少なくとも一部がパッキン4及びシールドシェル2の筒状部211によってハウジング3の径方向に沿って且つハウジング3の周方向の全域に亘って挟み込まれているため、パッキン4によってハウジング3がシールされるとともに、シールドシェル2によってハウジング3の変形が抑制される。
【0062】
更に、本実施形態に係るシールドコネクタ1では、パッキン4の軸シール部41は、パッキンの中で最も肉厚が厚いように構成されているため、ハウジング3の中でも被挟込部30には最もパッキン4の弾性力が掛かる。このため、被挟込部30がパッキン4及びシールドシェル2によって挟み込まれることによって、ハウジング3の変形が抑制される。
【0063】
この結果、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、シール性の低下が抑制される。
【0064】
<他の形態>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0065】
本実施形態では、ハウジング3の軸シール部41と押圧接触している箇所(即ち、被挟込部30)のみがパッキン4及びシールドシェル2によって挟み込まれていたが、ハウジング3の面シール部42と押圧接触している箇所又はハウジング3全体がパッキン4及びシールドシェル2によって挟み込まれていてもよい。
【0066】
なお、本実施形態のように被挟込部30のみをパッキン4及びシールドシェル2によって挟み込むことによって、シールドコネクタ1のシール性の低下を抑制できることからも、製造コストの観点では本実施形態の態様が好ましい。
【0067】
図10(b)に示すように、リブ321の下方の壁部から更に下方に突出する突条部321aを設けてもよい。リブ321に突条部321aが設けられることによって、ハウジング3にシールドシェル2が組み付けられる際に、突条部321aが潰れてハウジング3とシールドシェル2との組付公差に応じた双方の間の相対移動(いわゆるガタツキ)が吸収される。
【0068】
突条部321aは、リブの延在方向(本例では、前後方向)に連続して延びるように設けられてもよいし、リブの延在方向に点在するように設けられてもよい。
【0069】
ここで、上述した本発明に係るシールドコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電線(51)の端部に端子(52)が接続された端子付電線(5)と、
開口を有して前記端子付電線が収容される本体部(31)、及び、前記開口を塞ぐように前記本体部に組み付けられる蓋部(32)を有するハウジング(3)と、
前記端子付電線(5)と前記ハウジング(3)との間、及び、前記本体部(31)と前記蓋部(32)との間を一括してシールするパッキン(4)と、
前記ハウジングと密着するように前記ハウジングに組み付けられるシールドシェル(2)と、を備え、
前記シールドシェル(2)は、前記ハウジング(3)が圧入される筒状部(211)を有する、
シールドコネクタ(1)。
[2]
上記[1]に記載のシールドコネクタ(1)において、
前記端子付電線(5)と前記ハウジング(3)との前記間とは、
前記端子付電線(5)と前記本体部(31)との間、及び、前記端子付電線(5)と前記蓋部(32)との間である、
シールドコネクタ(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のシールドコネクタ(1)において、
前記パッキン(4)及び前記シールドシェル(2)の前記筒状部(211)は、前記ハウジング(3)の少なくとも一部(被挟込部30)を前記ハウジングの径方向に沿って且つ前記ハウジングの周方向の全域に亘って挟み込むように位置している、
シールドコネクタ(1)。
[4]
上記[3]に記載のシールドコネクタ(1)において、
前記パッキン(4)の前記端子付電線(5)と前記ハウジング(3)との間をシールしている箇所(軸シール部41)は、前記パッキン(4)の中で最も肉厚が厚く、
前記ハウジング(3)の前記少なくとも一部(被挟込部30)は、
前記パッキン(4)の前記端子付電線(5)と前記ハウジング(3)との間をシールしている箇所(軸シール部41)に対応する箇所である、
シールドコネクタ(1)。
【符号の説明】
【0070】
1 シールドコネクタ
2 シールドシェル
3 ハウジング
3a,32a,311a 第一部分
3b,32b,311b 第二部分
4 パッキン
5 端子付電線
21 第一部材
22 第二部材
23 締結部材
24 係合孔
30 被挟込部
31 本体部
32 蓋部
33 ロックアーム
41 軸シール部
41a,213,315 孔部
42 面シール部
51 電線
52 端子
211,221 筒状部
212 底壁
214,217,223 締結孔
215 前端部
216,222 フランジ部
311 収容部
312 係合突起
313,322 被係合部
314 フード部
321 リブ
321a 突条部