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特開2022-191828荷役車両管理システム、サーバ、荷役車両管理方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191828
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】荷役車両管理システム、サーバ、荷役車両管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20221221BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221221BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20221221BHJP
   G16Y 20/00 20200101ALI20221221BHJP
   G06Q 10/08 20120101ALI20221221BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
G08G1/09 F
G08G1/00 D
G08G1/00 X
G16Y20/00
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100286
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 皓輝
(72)【発明者】
【氏名】滝井 康生
(72)【発明者】
【氏名】田中 準二
【テーマコード(参考)】
3F333
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333FA01
3F333FA02
3F333FA08
5H181AA07
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF35
5H181LL07
5H181MC27
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】車載器と、施設内に設置されたビーコンとを連携させて、荷役車両の挙動を解析した結果を活用可能とする。
【解決手段】荷役車両管理システム1は、荷役車両に搭載された車載器10と、車載器10が収集したデータを解析するサーバ80とを備える。車載器10は、施設内の所定エリアに設置されたビーコンBから発せられるビーコンIDを含む電波を受信するビーコン受信部15と、受信した電波の強度に基づいて、所定エリア内に荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報を取得する時刻取得部(RTC部21、CPU11)と、受信した電波からビーコンIDを抽出する抽出部(CPU11)と、時刻情報及びビーコンIDを記録する記録部17と、を有する。サーバ80は、記録部が記録した時刻情報及び識別情報に基づいて、荷役車両の挙動を解析する解析部(CPU81)と、解析された結果を出力する出力部(通信部82)と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役車両に搭載された車載器と、前記車載器が収集したデータを解析するサーバと、を備える荷役車両管理システムであって、
前記車載器は、
施設内の所定エリアに設置された発信機から発せられる、前記発信機の識別情報を含む電波を受信する受信部と、
受信した前記電波の強度に基づいて、前記所定エリア内に前記荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報を取得する時刻取得部と、
受信した前記電波から前記識別情報を抽出する抽出部と、
取得した前記時刻情報、及び、抽出した前記識別情報を記録する記録部と、を有し、
前記サーバは、
前記記録部が記録した前記時刻情報及び前記識別情報に基づいて、前記荷役車両の挙動を解析する解析部と、
解析された結果を出力する出力部と、を有する、
荷役車両管理システム。
【請求項2】
前記解析部は、前記進入時刻から、前記荷役車両が前記所定エリアに進入した進入回数を求め、
前記出力部は、前記発信機の識別情報と、前記進入回数とを対応付けて出力する、
請求項1に記載の荷役車両管理システム。
【請求項3】
前記車載器の前記時刻取得部は、受信した前記電波の強度に基づいて、前記荷役車両が前記所定エリアから退出した退出時刻を示す時刻情報を、さらに取得し、
前記サーバの前記解析部は、前記進入時刻及び前記退出時刻から、前記荷役車両が前記所定エリア内に滞在していた滞在時間を算出し、
前記サーバの前記出力部は、前記所定エリアにおける前記滞在時間を、前記解析された結果として出力する、
請求項1又は2に記載の荷役車両管理システム。
【請求項4】
前記サーバは、目標値と前記解析部による解析結果との比較により、前記荷役車両の挙動を評価する評価部をさらに有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の荷役車両管理システム。
【請求項5】
前記所定エリアは、第一エリア及び第二エリアを含み、
前記車載器は、前記荷役車両に危険挙動が発生した場合にトリガを発生させ、前記荷役車両近傍の状況を表す映像及び前記荷役車両の車両データを含む情報をトリガ情報として記録し、前記トリガ情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記トリガ情報を受信し、
前記解析部は、前記トリガ情報を加味して、前記荷役車両が前記第一エリアから前記第二エリアへ移動するまでの移動時間を、前記荷役車両の挙動として解析し、
前記評価部は、前記解析結果に基づいて、前記施設内におけるレイアウトの効率と安全性とを評価する、
請求項4に記載の荷役車両管理システム。
【請求項6】
前記車載器は、前記荷役車両に危険挙動が発生した場合にトリガを発生させ、前記荷役車両近傍の状況を表す映像及び前記荷役車両の車両データを含む情報をトリガ情報として記録し、前記トリガ情報を前記サーバに送信し、
前記受信部は、前記荷役車両のドライバーに所持されたビーコンから発せられる、前記ドライバーの識別情報を含む電波を受信し、
前記サーバは、
前記トリガ情報を受信し、
前記解析部は、前記トリガ情報を加味して、前記ドライバーごとに求めた、前記荷役車両が前記所定エリア内に滞在していた滞在時間を、前記荷役車両の挙動として解析し、
前記評価部は、前記解析結果に基づいて、前記ドライバーの作業効率と安全性とを評価する、
請求項4に記載の荷役車両管理システム。
【請求項7】
前記サーバは、前記解析部による解析及び前記評価部による評価を含む一連の処理を、二回以上行い、二回目以降は前記目標値を更新する、
請求項4~6のいずれか一項に記載の荷役車両管理システム。
【請求項8】
荷役車両に搭載された車載器が収集したデータを解析するサーバであって、
前記車載器は、
施設内の所定エリアに前記荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報、及び、前記所定エリアに設置された発信機の識別情報を記録し、
前記サーバは、
前記車載器から取得した前記時刻情報及び前記識別情報に基づいて、前記荷役車両の挙動を解析する解析部と、
解析された結果を、通信端末に送信する通信部と、を有する、
サーバ。
【請求項9】
荷役車両に搭載された車載器と、前記車載器が収集したデータを解析するサーバと、を備える荷役車両管理システムにおける荷役車両管理方法であって、
施設内の所定エリアに設置された発信機から発せられる、前記発信機の識別情報を含む電波を受信し、
受信した前記電波の強度に基づいて、前記所定エリア内に前記荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報を取得し、
受信した前記電波から前記識別情報を抽出し、
取得した前記時刻情報、及び、抽出した前記識別情報に基づいて、前記荷役車両の挙動を解析し、
解析された結果を出力する、
荷役車両管理方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項9に記載された荷役車両管理方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両管理システム、サーバ、荷役車両管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫や工場等内では、フォークリフトによって荷物が運搬される。倉庫等において効率よく荷物の運搬を行うための技術が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
特許文献1は、荷物を載せるパレットに無線タグを用いて物品を管理する物品位置管理システムを開示する。特許文献2は、第1信号、第2信号及び第3信号の受信状態に基づいて、ユーザの稼働状況又はフォークリフトの稼働状況を解析する情報処理システムを開示する。第1信号は携帯端末の現在位置を示し、第2信号はフォークリフトにおける物品の積載状態を示し、第3信号はフォークリフトにおけるユーザの搭乗状態を示す。特許文献3は、作業者が携帯するビーコンからの電波受信状態に応じて、作業者による積荷作業が終了したことを通知する作業管理システムを開示する。
【0003】
特許文献1~3の技術はいずれも、位置の把握等にビーコン信号を用いている。ビーコン信号を利用した技術として特許文献4に示すものもある。特許文献4は車両の乗務員が所持したビーコンを利用して、トラックの運行データを記録する運行管理装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-127298号公報
【特許文献2】特開2020-19628号公報
【特許文献3】特開2021-33551号公報
【特許文献4】特開2020-140356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1~4においては、倉庫内に配置されたビーコンから発せられるビーコン信号と車載器が収集するデータとを組み合わせて活用する点において、改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車載器と、施設内に設置されたビーコンとを連携させて、荷役車両の挙動を解析した結果を活用可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る荷役車両管理システム、サーバ、荷役車両管理方法、及びプログラムは、下記(1)~(10)を特徴としている。
(1)荷役車両に搭載された車載器と、前記車載器が収集したデータを解析するサーバと、を備える荷役車両管理システムであって、
前記車載器は、
施設内の所定エリアに設置された発信機から発せられる、前記発信機の識別情報を含む電波を受信する受信部と、
受信した前記電波の強度に基づいて、前記所定エリア内に前記荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報を取得する時刻取得部と、
受信した前記電波から前記識別情報を抽出する抽出部と、
取得した前記時刻情報、及び、抽出した前記識別情報を記録する記録部と、を有し、
前記サーバは、
前記記録部が記録した前記時刻情報及び前記識別情報に基づいて、前記荷役車両の挙動を解析する解析部と、
解析された結果を出力する出力部と、を有する、
荷役車両管理システム。
(2)前記解析部は、前記進入時刻から、前記荷役車両が前記所定エリアに進入した進入回数を求め、
前記出力部は、前記発信機の識別情報と、前記進入回数とを対応付けて出力する、
上記(2)に記載の荷役車両管理システム。
(3)前記車載器の前記時刻取得部は、受信した前記電波の強度に基づいて、前記荷役車両が前記所定エリアから退出した退出時刻を示す時刻情報を、さらに取得し、
前記サーバの前記解析部は、前記進入時刻及び前記退出時刻から、前記荷役車両が前記所定エリア内に滞在していた滞在時間を算出し、
前記サーバの前記出力部は、前記所定エリアにおける前記滞在時間を、前記解析された結果として出力する、
上記(1)又は(2)に記載の荷役車両管理システム。
(4)前記サーバは、目標値と前記解析部による解析結果との比較により、前記荷役車両の挙動を評価する評価部をさらに有する、
上記(1)~(3)のいずれか一に記載の荷役車両管理システム。
(5)前記所定エリアは、第一エリア及び第二エリアを含み、
前記車載器は、前記荷役車両に危険挙動が発生した場合にトリガを発生させ、前記荷役車両近傍の状況を表す映像及び前記荷役車両の車両データを含む情報をトリガ情報として記録し、前記トリガ情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記トリガ情報を受信し、
前記解析部は、前記トリガ情報を加味して、前記荷役車両が前記第一エリアから前記第二エリアへ移動するまでの移動時間を、前記荷役車両の挙動として解析し、
前記評価部は、前記解析結果に基づいて、前記施設内におけるレイアウトの効率と安全性とを評価する、
上記(4)に記載の荷役車両管理システム。
(6)前記車載器は、前記荷役車両に危険挙動が発生した場合にトリガを発生させ、前記荷役車両近傍の状況を表す映像及び前記荷役車両の車両データを含む情報をトリガ情報として記録し、前記トリガ情報を前記サーバに送信し、
前記受信部は、前記荷役車両のドライバーに所持されたビーコンから発せられる、前記ドライバーの識別情報を含む電波を受信し、
前記サーバは、
前記トリガ情報を受信し、
前記解析部は、前記トリガ情報を加味して、前記ドライバーごとに求めた、前記荷役車両が前記所定エリア内に滞在していた滞在時間を、前記荷役車両の挙動として解析し、
前記評価部は、前記解析結果に基づいて、前記ドライバーの作業効率と安全性とを評価する、
上記(4)に記載の荷役車両管理システム。
(7)前記サーバは、前記解析部による解析及び前記評価部による評価を含む一連の処理を、二回以上行い、二回目以降は前記目標値を更新する、
上記(4)~(6)のいずれか一に記載の荷役車両管理システム。
(8)荷役車両に搭載された車載器が収集したデータを解析するサーバであって、
前記車載器は、
施設内の所定エリアに前記荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報、及び、前記所定エリアに設置された発信機の識別情報を記録し、
前記サーバは、
前記車載器から取得した前記時刻情報及び前記識別情報に基づいて、前記荷役車両の挙動を解析する解析部と、
解析された結果を、通信端末に送信する通信部と、を有する、
サーバ。
(9)荷役車両に搭載された車載器と、前記車載器が収集したデータを解析するサーバと、を備える荷役車両管理システムにおける荷役車両管理方法であって、
施設内の所定エリアに設置された発信機から発せられる、前記発信機の識別情報を含む電波を受信し、
受信した前記電波の強度に基づいて、前記所定エリア内に前記荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報を取得し、
受信した前記電波から前記識別情報を抽出し、
取得した前記時刻情報、及び、抽出した前記識別情報に基づいて、前記荷役車両の挙動を解析し、
解析された結果を出力する、
荷役車両管理方法。
(10)コンピュータに、上記(9)に記載された荷役車両管理方法を実行させるためのプログラム。
【0008】
上記(1)の構成の荷役車両管理システム、上記(8)の構成のサーバ、上記(9)の構成の荷役車両管理方法、及び上記(10)の構成のプログラムによれば、車載器と、施設内に設置されたビーコンとを連携させて、荷役車両の挙動を解析し、解析結果を、ユーザが所持する通信端末等に出力できる。よって、管理者やサービス提供者等のユーザは、解析結果を利用して、効率や安全性の改善を図ることができる。また、解析結果を、施設内(倉庫内、構内)のレイアウト改善や、荷役車両の導線管理に利用できる。
【0009】
上記(2)の構成の荷役車両管理システムによれば、所定エリアへの進入回数を見える化できる。したがって、例えば荷物保管場所周辺を所定エリアに設定し、所定エリアへの進入回数が多い場合には荷物保管場所を分散させる等、レイアウト改善に役立てることができる。
【0010】
上記(3)の構成の荷役車両管理システムによれば、所定エリアにおける滞在時間を見える化できる。また、所定エリアにおける複数回の滞在時間を把握して、平均滞在時間を求め、標準作業時間を設定することにより、作業の標準化に向けて運転者を指導できるので、作業効率改善を図ることができる。
【0011】
上記(4)の構成の荷役車両管理システムによれば、サーバが評価部を有し、評価結果が出力されるので、ユーザは評価結果を利用して、効率や安全性の改善を図ることができる。上記(5)の構成の荷役車両管理システムによれば、施設内レイアウトの効率と安全性が評価され、上記(6)の構成の荷役車両管理システムによれば、施設内レイアウトの効率と安全性が評価される。
【0012】
上記(7)の構成の荷役車両管理システムによれば、サーバが、荷役車両の挙動に関する解析及び評価を含む一連の処理を、目標値を更新しながら繰り返し行うことにより、効率及び安全性のさらなる改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車載器と、施設内に設置されたビーコンとを連携させて、荷役車両の挙動を解析した結果を活用できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態の解析システムの構成を表す図である。
図2図2は、作業中のフォークリフトの外観及び荷物の例を示す側面図である。
図3図3は、カメラとフォークリフトとの関係の代表例を示す側面図である。
図4図4は、車載器の動作例を示すフローチャートである。
図5図5は、車載器の動作例を示すフローチャートである。
図6図6は、画像解析の一例を示す図である。
図7図7は、車載器の動作例を示すフローチャートである。
図8図8は、サーバによる解析の要求例を説明するための図である。
図9図9は、サーバによる解析結果の一例を示す図である。
図10図10は、サーバによる解析結果の一例を示す図である。
図11図11は、サーバによる解析結果の一例を示す図である。
図12図12は、サーバによる解析結果の一例を示す図である。
図13図13は、サーバによる解析結果の一例を示す図である。
図14図14は、サーバによる解析結果の一例を示す図である。
図15図15は、倉庫内における固定ビーコンの設置例を示す図である。
図16図16は、荷役車両管理システムにおけるPDCAサイクルの一例を説明するための図である。
図17図17は、サーバに蓄積されたデータの活用例を示す図である。
図18図18は、サーバによる解析結果の一例を示すグラフである。
図19図19は、サーバによる解析結果の一例を示すグラフである。
図20図20は、サーバによる解析結果の一例を示すグラフである。
図21図21は、サーバによる解析結果の一例を示すグラフである。
図22図22は、サーバによる解析結果の一例を示す図である。
図23図23は、サーバによる評価結果の一例を示すグラフである。
図24図24は、サーバによる評価結果の一例を示すグラフである。
図25図25は、サーバによる解析結果の一例を示すグラフである。
図26図26は、サーバによる解析結果の一例を示すグラフである。
図27図27は、サーバによる解析結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
<システムの構成>
本発明の一実施形態における荷役車両管理システム1の構成を図1に示す。図1に示した荷役車両管理システムは、主として、倉庫等の施設内においてフォークリフトのような荷役車両を運転して荷物の運搬作業を行う場合の運転支援のために利用される。
【0018】
図1に示した荷役車両管理システム1は、顧客側の設備として、各々の荷役車両に搭載した状態で使用される車載器10と、各荷役車両、作業者、作業内容等を管理するために所定の事務所に設置される事務所PC30(通信端末)とを含む。また荷役車両管理システム1は、車載器10から収集した各種データに基づく解析を行い、解析結果を事務所PC30に送信するサーバ80を、解析サービス提供者側の設備として含む。荷役車両管理システム1は、複数の顧客の事務所等に設置される複数の事務所PC30及び複数の車載器10を含む。各顧客は、一例として、各事務所PC30に予め組み込まれた荷役車両管理用ソフトウェアである専用アプリを利用することにより、サーバ80から提供される解析サービスを利用できる。
詳細については後述するが、本実施形態の車載器10は、通常のドライブレコーダ機能に加え、安全運転及び効率の良い稼働に役立つ機能を備えている。具体的には、車載器10は、施設内に設置された複数のビーコン(発信機)から発せられる電波を受信して、荷役車両の運搬状況(稼働状況)を監視し、記録する。また、車載器10は、バッテリ管理機能を備え、バッテリ寿命の延長及びバッテリ交換回数の削減に役立つ。
【0019】
なお、車載器10と事務所PC30との間は、ネットワークを介して接続されていなくてもよく、その場合、車載器10は、車載器10で記録したデータを保持するメモリカード65を読み込む構成にする。
【0020】
事務所PC30は、事務所に設置された汎用のコンピュータ装置で構成され、荷役車両の稼働状況や接触事故が生じやすい特定地点の情報などを管理する。図1の例では、車載器10と事務所PC30との間で行われるデータ通信は、基地局71、サーバ80(解析装置)及びネットワーク70によって中継される。基地局71と車載器10との間の無線通信については、LTE(Long Term Evolution)/5G(5th Generation)等のモバイル通信網(携帯回線網)で行われてもよいし、無線LAN(Local Area Network)で行われてもよく、いずれかを選択的に使用できる。また、ネットワーク70は、インターネット等のネットワーク(パケット通信網)であり、事務所PC30とサーバ80との間で行われるデータ通信を中継する。
【0021】
車載器10は、様々な信号の入力又は出力を可能にするために、様々なインタフェース(I/F)12A、12B、13、14、16、19、及び29を備えている。
速度I/F12Aは、車両側に搭載されている車速センサ51の出力する車速パルス信号を入力するための機能を有する。エンジン回転I/F12Bは、車両側から出力されるエンジン回転パルス信号を入力するための機能を有する。外部入力I/F13は様々な外部信号の入力に利用され、バッテリ電圧計53の出力するバッテリ電圧値や、フォークリフトの荷物保持部(爪)の昇降動作を示す操作信号等を入力するための機能を有する。
【0022】
センサ入力I/F14は、様々なセンサの信号を入力するために利用される。図1の例では、Gセンサ28及びジャイロセンサ52がセンサ入力I/F14に接続されている。
Gセンサ28は、この車載器10を搭載する車両に加わった様々な方向の加速度の大きさを検知する。Gセンサ28の出力に基づいて、制御部11はフォークリフト90の急減速、急加速を検出する。ジャイロセンサ52は、この車載器10を搭載するフォークリフト90のピッチ軸、ヨー軸、及びロール軸の各軸周りの回転角速度を検知することにより、
ピッチ角、ヨー角、及びロール角の各変化を示す信号を出力できる。ジャイロセンサ52及びGセンサ28の出力に基づいて、制御部11はフォークリフト90の急旋回を検出する。
【0023】
アナログ入力I/F29は、様々なアナログ信号の入力に利用される。アナログ入力I/F29に、バッテリ電圧計53の出力するバッテリ電圧値が入力され得る。制御部11は、バッテリ電圧計53の出力に基づいてバッテリの電圧状況を監視する。また、アナログ入力I/F29に、構内・屋外の気温を計測する気温計の出力が入力され得る。制御部11は、気温計の出力を、例えば、ドライバーの体調管理(異常検知)に用いることができる。
カメラI/F16は、カメラ23A、23Bを接続するための機能を有している。すなわち、カメラ23A、23Bが出力する映像信号をそれぞれ取り込んで、コンピュータの処理に適した所定のデジタル画像データにそれぞれ変換する機能を有している。
【0024】
音声I/F19は、音声による注意喚起などに利用可能な所定の音声信号を生成する機能を有している。
【0025】
車載器10における主要な機能を実現する制御部11は、マイクロコンピュータ(CPU)のプロセッサを主体とする電子回路により構成されている。このマイクロコンピュータは、不揮発メモリ26Aなどに予め保持されているプログラムを実行することにより、後述する車載器10の制御機能を実現する。
【0026】
制御部11(CPU11)の入力に、上述の各インタフェース12A、12B、13、14、16、及び29が接続されている。また、制御部11の出力に音声I/F19を介してスピーカ20が接続されている。
【0027】
また、ビーコン受信部15、記録部17、表示部27、電源部25、通信部24、不揮発メモリ26A、揮発メモリ26B、カードI/F18、RTC部21、スイッチ入力部22、及びGPS受信部9が制御部11に接続されている。
【0028】
ビーコン受信部15は、所定範囲内に位置するビーコンからの電波をアンテナ15aを介して受信する。ビーコンには、ドライバービーコン、固定ビーコン、移動ビーコンが含まれる。
ドライバービーコンは、ドライバーに所持される例えばカード型のビーコンであり、ドライバーIDを含むビーコン信号を発する。ドライバービーコンを所持したドライバーが車載器10に近接する(例えば運転席に座る)ことにより、制御部11がドライバーIDを自動認識し、ドライバーを特定する。すなわち、ドライバーが、自身のドライバーIDが記憶されたドライバービーコンを所持して運転席に乗り込むだけで、車載器10がドライバーIDを認識するため、ドライバーに特定の操作を行わせることなく、人別のデータ管理が可能となる。
【0029】
固定ビーコンであるビーコンBA、BB、BC、・・・(以下、ビーコンBという。)は、施設内の所定エリアRA、RB、RC・・・(以下、エリアRという。)にそれぞれ固定配置される(図15参照。)。ビーコンBは、フォークリフト90の現在位置を表す情報を得るために利用される。各ビーコンBは、固有の識別情報(ビーコンID)を有する。各ビーコンBは、ビーコンIDを含むビーコン信号(電波)を、専用アプリ上で設定したアドバタイズ間隔で、それぞれ発する。図15に示す各エリアRAは、各ビーコンBの電波が届く範囲、すなわち、受信強度が所定値以上である検知範囲を表す。事務所PC30及びサーバ80は、ビーコンBの各識別情報と、各ビーコンBが設置された施設内における各位置との対応を把握しており、識別情報から施設内におけるビーコンBの位置を特定できる。なお、車載器10は、現在位置の情報を把握するために、ビーコンBからのビーコン信号に加えて、後述するGPS受信部9が受信した信号に基づく測位を行ってもよい。
【0030】
移動ビーコンは、ドライバー以外の他者に所持されたビーコンであり、他者がフォークリフト90に近接したことを検知するために利用される。移動ビーコンは、ドライバーID、作業者ID等の個人を特定する識別情報を含むビーコン信号を発する。
【0031】
記録部17は、例えばカメラ23A、23Bが出力する映像の画像データなどを自動的に記録して一定時間保持するために利用される。
表示部27は、車載器10の操作に必要な文字などの可視情報や、運転操作に関する注意喚起の情報などをドライバーが視認できるように表示するために利用できる。
【0032】
電源部25は、車両側から供給される電源電力に基づいて安定した電源電力を生成し、生成した電源電力を、制御部11を含む車載器10内の各回路に対して供給する。
通信部24は、この車載器10と基地局71との間でデータ通信するための無線通信機能を提供する。
【0033】
不揮発メモリ26Aは、半導体メモリにより構成され、制御部11のマイクロコンピュータが実行可能なプログラムや、制御上必要になる各種定数データ、テーブルなどを予め保持している。
揮発メモリ26Bは、制御部11が処理中に生成するデータなどを一時的に保持するために利用される。
【0034】
カードI/F18には、ドライバーが所持するメモリカード65が挿抜自在に接続される。制御部11は、カードI/F18に装着されたメモリカード65からデータを読み出すことができ、制御部11が生成した各種データをカードI/F18を介してメモリカード65に書き込むこともできる。
【0035】
RTC(real time clock)部21は、時計の機能を有する集積回路により構成されている。すなわち、RTC部21は、現在時刻の情報を生成したり、経過時間などを把握することができる。
スイッチ入力部22は、車載器10の操作に必要な各種スイッチの状態を表す信号を入力するために利用される。
【0036】
GPS受信部9は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を、アンテナ9aを介して受信する。GPS受信部9が受信した複数の受信信号に基づいて、フォークリフト90の現在位置を表す位置情報を計算して得ることができる。また、GPS受信部9が受信した信号に基づく位置情報を用いて、荷役車両の移動を検知することができる。
【0037】
制御部11は、ビーコンBから発せられる電波を受信した際、言い換えれば、ビーコン受信部15が受信した電波の強度(受信強度)が所定値以上である場合、RTC部21で生成された現在時刻の情報を取得する。制御部11は、ビーコン受信部15が受信した電波の強度(受信強度)以外に、電波信号の発信タイミング(時間間隔)や信号の周波数帯、送信時の電力値(送信電力)により、RTC部21で生成された現在時刻の情報を取得することもできる。制御部11は、受信強度が所定値以上である電波からビーコンIDを抽出して、このビーコンIDに対応するエリアR内に荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報を取得する。制御部11が取得した時刻情報及び抽出したビーコンID(以下、「ビーコンID取得結果」ともいう。)は、車載器10が生成するファイルに記録されて、記録部17に記録される。この車載器生成ファイルには、例えば0.5秒間隔で、時刻情報及びビーコンIDが記録される。車載器生成ファイルには、車載器10が収集した各種I/Fからの入力信号等に基づく車速等の車両データ、及び、映像データを含む後述するトリガ情報が含まれる。
具体的な例として、車載器生成ファイルには、日時(日付、時刻)、ドライバーID(乗務員認証情報)、車載器10又は乗務員認証情報から取得した業務開始時刻の情報が含まれる。また、車載器生成ファイルには、エリア内に荷役車両が進入した進入時刻、エリア内から荷役車両が退出した退出時刻、トリガ情報、各時刻における車載バッテリの残存量、の情報も含まれる。記録部17に記録された車載器生成ファイルは、1日に1回、例えば荷役車両の業務終了後に、通信部24によってサーバ80へ送信される。
尚、通信部24によるサーバ80への送信に代えて、記録部17に記録された車載器生成ファイルが、メモリカード65に保存され、例えば1日に1回、事務所PC30に読み込まれ、事務所PC30からサーバ80へ送信されてもよい。
【0038】
事務所PC30は、汎用のオペレーティングシステムで動作するPCである。事務所PC30は、荷役車両の危険挙動を含む運転状況や、稼働状況等を把握・管理するための管理装置として利用できる。
事務所PC30は、制御部(CPU)31、通信部32、表示部33、記憶部34、カードI/F35、操作部36、出力部37、音声I/F38、及び外部I/F48を有する。
【0039】
制御部31は、事務所PC30の各部を統括的に制御する。通信部32は、ネットワーク70を介してサーバ80と通信可能である。表示部33は、各荷役車両の稼働管理に利用可能な様々な情報を表示することができる。記憶部34は、各荷役車両に搭載された車載器10が生成した車載器生成ファイルや、サーバ80から提供される各種解析結果及び評価結果等を取得して管理することができる。
【0040】
カードI/F35には、メモリカード65が挿抜自在に装着される。カードI/F35は、車載器10で記録された様々なデータをメモリカード65から入力するために利用される。操作部36は、キーボードやマウス等を有し、事務所PC30の管理者の操作を受け付ける。出力部37は、各種データを出力する。音声I/F38には、マイク41及びスピーカ42が接続される。管理者は、マイク41及びスピーカ42を用いて音声通話を行うことも可能である。
【0041】
外部I/F48には、運行データデータベース(DB)、ハザードマップデータベース(DB)といった外部記憶装置(図示せず)等が接続可能である。ハザードマップDBは、フォークリフトのような荷役車両による、危険挙動(ヒヤリハット)や事故が発生した地点を表すデータなどを保持することができる。
【0042】
サーバ80は、制御部(CPU)81、通信部82、及び記憶部83を有し、車載器生成ファイルに含まれる、車載器10が収集したデータを解析する。通信部82は、基地局71を介して車載器10と通信を行う。また、通信部82は、ネットワーク70を介して、事務所PC30と通信を行ってもよい。記憶部83は、各種データを記憶可能なメモリであり、車載器10から送信された車載器生成ファイルを記憶する。また、記憶部83は、事務所PC30から送信された運行データを記憶してもよい。制御部81は、サーバ80の各部を統括的に制御する。サーバ80は、複数の事務所PC30から送信された、各荷役車両の各車載器生成ファイルを、通信部82にて受信して記憶部83に保存する。尚、サーバ80は、インターネット上の複数のサーバによって構成された、いわゆるクラウドサーバであってもよい。
【0043】
制御部81は、受信した車載器生成ファイルに対して解析を行うことにより、各荷役車両の挙動を解析する。記憶部83に保存される車載器生成ファイルには、荷役車両がいずれかのエリアRに進入した時刻を示す時刻情報、及び、そのエリアRに対応するいずれかのビーコンBのビーコンIDが含まれる。制御部81は、記憶部83に保存された車載器生成ファイルに基づいて、各ビーコンBの検知範囲内における荷役車両の滞留時間や、ビーコンIDの取得結果の時系列データから、荷役車両の移動経路や、ビーコンBから他のビーコンBへの移動回数を算出する。解析結果の詳細については後述する。
尚、ビーコンBは、特性上、電波の乱れがあるため、短い間隔でビーコンID取得結果が変わる可能性がある。そこで、任意で連続取得回数を設定し、その設定に基づき、同一ビーコンIDが連続取得された場合のみ、そのビーコンBの検知範囲内に車載器10、すなわち車載器10を搭載した荷役車両が存在したとみなす。
【0044】
各解析結果(各種レポート、ヒヤリハットデータ等)は、記憶部83に記憶され、かつ、通信部82により、各事務所PC30や、管理者等が所持する携帯端末等の通信端末に送信される。
【0045】
また、サーバ80の制御部81は、事務所PC30から受信した、フォークリフト90のバッテリの電圧状況及び稼働状況を示すバッテリ情報に対して、バッテリの交換に関する予測情報を生成する。この予測情報は、記憶部83に記憶され、かつ、通信部82により事務所PC30に送信される。
【0046】
上記の構成により、車載器10と施設内に設置された複数のビーコンBを通信連携し、特定のエリアR内での安全運転状況や、作業時間、作業回数、時刻等の情報を、車載器10により収集する。車載器10は、これらの情報を、ドライバーを特定する情報に紐づけて、運転記録データ及び映像データとして収集し、サーバ80へ送信する。
【0047】
車載器10から各種情報を受信したサーバ80は、特定エリアR内での人別(ドライバー別)の荷役車両の挙動すなわち稼働状況を可視化した解析結果を映像データとともに、事務所PC30や管理者の携帯端末(以下、事務所PC30等ともいう。)へ送信する。例えば、サーバ80は、ドライバーごとに、ビーコンBから他のビーコンBへの移動時間や、積卸エリアでの滞留時間を算出し、映像データとともに事務所PC30等へ送信する。
【0048】
管理者は、事務所PC30等に表示された解析結果や映像データを確認し、特定エリアRにおける安全かつ最適な作業時間の標準化を行うことができる。したがって、管理者は、移動や積卸に平均時間以上かかっているドライバーに指導することで、移動や積卸に要する時間の平滑化を図ることができる。また、作業が早くても安全上問題があるドライバーについても、映像データ等を用いた指導を行い、平準化を図ることができる。このように、作業の効率化及び安全の両側面から、エリアでの最適な作業の平準化を図ることができる。また、算出された、ビーコンBから他のビーコンBへの移動回数等を、倉庫内のレイアウトの最適化を図るために活用することもできる。
【0049】
<荷役車両の具体例>
作業中のフォークリフトの外観及び荷物の例を図2に示す。図2において左側がフォークリフトの前進方向を表し、右側が後退方向を表し、紙面に垂直な方向がフォークリフトの幅方向(フォークリフトの進行方向に対する左右方向)を表している。
【0050】
図2に示すように、フォークリフト90は、運転席の前方に長く突出する複数の(本実施形態では2つの)爪91及びバックレスト92を有している。爪91及びバックレスト92は、マスト93に沿って上下方向に昇降可能な状態でマスト93に支持されている。また、フォークリフト90は、所定の昇降機構を駆動することにより、爪91及びバックレスト92の位置を上下方向に駆動することができる。また、フォークリフト90には、爪91及びバックレスト92を支持しているマスト93の傾斜角度を変更する駆動機構が備わっており、爪91及びバックレスト92のチルト角を調整することができる。さらに、フォークリフト90は、運転席の上部を覆うヘッドガード94を有する。
【0051】
一方、フォークリフト90で運搬しようとする様々な荷物100は、一般的には地面98上に配置された載置台であるパレット110上に載置された状態で保管されている。したがって、この荷物100を実際に運搬する際には、図2のように爪91を下方に下げた状態でフォークリフト90をパレット110に向かって前進させ、パレット110の内側に爪91を通した状態にする。その状態でフォークリフト90が爪91を上方に持ち上げると、パレット110上に載置されている荷物100をパレット110と共に持ち上げることができる。そして、荷物100及びパレット110を持ち上げた状態でフォークリフト90を移動すれば、荷物100及びパレット110を運搬することができる。
【0052】
ところで、フォークリフト90を運転する際には、ドライバーは事故防止のために、走行中に爪91を昇降する二重操作が禁止されており、また、爪91の状態を常時把握しておくことが必要である。車載器10は、通常のトリガ(急旋回、急減速、急加速)による画像記録に加え、この二重操作や、爪91に保持された荷物の有無、荷物落下、及びフォークリフト90の幅方向における荷物の揺れ(以下、単に「荷物の揺れ」とも称する)を検出する機能を有する。
【0053】
<カメラの取り付け位置、撮影範囲>
ドライバーの様子などを撮影するためのカメラ23Aと、爪91や荷物などを撮影するためのカメラ23Bとフォークリフト90との関係の代表例を図3に示す。
【0054】
図3に示した例では、車載器10に内蔵されたカメラ23Aが、ヘッドガード94の前方に取り付けられ、撮影方向は、水平方向に対して45度程度下方に傾斜した方向を向くように調整してある。つまり、図3に示した撮影範囲23aの領域が撮影対象になるので、フォークリフト90のドライバーをカメラ23Aで撮影することができる。また、図3に示した例では、カメラ23Bがマスト93の上部に設置され、撮影方向は、水平方向に対して45度程度下方に傾斜した方向を向くように調整してある。つまり、図3に示した撮影範囲23bの領域が撮影対象になるので、フォークリフト90の爪91や、運搬するパレット110及び荷物100をカメラ23Bで撮影することができる。カメラ23Bの撮影範囲23bについては、荷物100及びパレット110の略全域を同時に撮影できるように、例えば120度程度の広い範囲にしておくことが望ましい。
【0055】
<車載器の動作例>
図1に示した車載器10の動作例を図4に示す。車載器10は、図2及び図3に示したフォークリフト90に搭載され、制御部11が車載器10の各機能部と連動して図4に示す動作を行う。制御部11は、荷物の運搬状況を監視する機能と、運搬状況が所定の条件を満たした場合に、フォークリフト90近傍の状況を表す画像等の情報を記録するためのトリガを発生させるトリガ発生機能とを有する。図4は、フォークリフト90の稼働状況(荷物の有無)及び危険挙動(二重操作、荷物の落下、荷物の揺れ)が発生した場合に、フォークリフト90近傍の状況を表す情報を記録する動作を示す。
【0056】
ドライバービーコンを所持したドライバーが認証されると、車載器10は、図4に示す動作を開始する。車載器10は、速度I/F12A、エンジン回転I/F12B、外部入力I/F13、センサ入力I/F14、及びカメラI/F16からの入力に基づいて、荷物(荷物100及びパレット110)の運搬状況を監視する(ステップS1)。S1の処理の詳細は、後述する。
【0057】
車載器10は、二重操作、荷物の有無、荷物の落下、及びフォークリフト90の幅方向における荷物の揺れのいずれか少なくとも一を検出するまで、運搬状況を監視し、検出した場合(S2でYES)、トリガを発生させる(S3)。車載器10は、発生した事象が、二重操作、荷物の有無、荷物の落下、及び荷物の揺れのいずれであるかを示すトリガ種別、その事象が発生した時刻、及びその事象が発生した時点のフォークリフト90(自車両)の位置情報を、トリガ情報として、記録部17に一時的に記録する。トリガ情報は、メモリカード65に記録されてもよいし、揮発メモリ26Bに記録されてもよい。
【0058】
次に、車載器10は、その事象が発生した時刻の前後における、カメラ23Bが撮影した、フォークリフト90近傍の状況を表す画像(映像)データ、及び、各種I/Fからの入力信号等に基づく車速等の車両データを、トリガ情報に紐づけて記録する(S4)。尚、車両データは後述する稼働データを含む。S3及びS4の処理で記録したデータをトリガ情報と総称する場合がある。S3及びS4の処理で記録したトリガ情報は、無線通信によってサーバ80に送信されてもよい。また、例えばカメラ23A、23Bが撮影した画像データを含む運行状況がリアルタイムでサーバ80に送信される場合には、車載器10は、S3の処理で記録したトリガ情報のみをサーバ80に送信してもよい。尚、ドライバーがドライバービーコンを所持していない場合でも、車載器10は上述した動作を開始できるが、ドライバー認証が行われた場合には、トリガ情報をドライバー別に記録し、管理することが可能となる。
【0059】
<画像解析によるトリガ検出>
図5及び図6を参照して、車載器10が、画像解析によるトリガ検出を行う動作を説明する。図5は、図4に示した、荷物の運搬状況の監視処理(S1)の詳細を示し、車載器10が、カメラ23Bが撮影した画像を解析して、荷物の有無、二重操作の有無、荷物の落下、及び荷物の揺れを検出する動作を示す。図6は、カメラ23Bが撮影した画像の一フレーム(画像201)を示す。
【0060】
車載器10は、画像201における走行検出範囲201aを解析する(S21)。走行検出範囲201aは、図6に示すように、画像201上方の左右端部近傍の二領域に設定される。車載器10は、連続する複数フレームの画像201における、走行検出範囲201aの双方に現れる変化に基づいて、フォークリフト90が走行中か否かを検出する。左右二箇所の走行検出範囲201aにおける変化をみることで、移動体の映り込み等による誤検出を防止できる。車載器10は、走行中であることを検出すると(S22でYes)、S23の処理に進む。
【0061】
次に車載器10は、画像201における荷物検出範囲201b-1~201b-3を解析する(S23)。荷物検出範囲201b-1、201b-2、201b-3は、画像201において、爪91の少なくとも一部を含む所定の領域に設定される。画像201において、爪91の先端側からバックレスト92側にかけて、荷物検出範囲201b-1、201b-2、201b-3が、それぞれ設定される。車載器10は、荷物検出範囲201b-1~201b-3のそれぞれにおいて、荷物(荷物100又はパレット110)に相当するパターンの認識を実行する。車載器10は、認識結果に基づいて、爪91の上に荷物が存在するか否か、すなわち、荷物の有無を識別する。ここで、画像201における、
認識された荷物が占める領域を荷物の領域と称する。車載器10は、荷物検出範囲201b-1~201b-3のうち、いずれにも荷物の領域が存在しない場合に(S24でNo)、荷物無しを検出する(S25)。車載器10は、荷物検出範囲201b-1~201b-3のうち、少なくともいずれか一に、荷物の領域の少なくとも一部が存在する場合に
(S24でYes)、荷物有りを検出する(S26)。
【0062】
車載器10は、荷物有りを検出した場合において、荷物の領域の一部が欠落するか、又は、荷物の領域の位置又は大きさが変化したか、を判断する(S27)。欠落及び変化のいずれもない場合には、車載器10は、二重操作、荷物の落下、及び荷物の揺れなしを検出する(S28)。荷物の領域の一部が欠落した場合、車載器10は、荷崩れ発生等による荷物の落下ありを検出する(S29)。画像201上における荷物の領域の位置又は大きさが前フレームの画像におけるものから変化した場合において、大きさが変化した場合には(S30でYES)、車載器10は、二重操作ありを検出する(S31)。画像201上における荷物の領域の大きさの変化は、マスト93に固定されたカメラ23Bと荷物との距離の変化を意味することから、車載器10は、走行中における爪91の昇降あり、すなわち、二重操作ありを検出する。一方、画像201上における荷物の領域の大きさが変化しない場合、すなわち、画像201上における荷物の領域の大きさが変化せず、画像201の左右方向(フォークリフト90の幅方向)の位置が変化した場合(S30でNO)、車載器10は、S32の処理に移行する。S32において、フォークリフト90の幅方向における荷物の領域の位置が変化したことから、車載器10は、フォークリフト90の幅方向における荷物の揺れを検出する(S32)。尚、図5に示した処理において、車載器10は、荷物有りを検出した(S26)後に二重操作有りを検出(S31)したが、荷物有無を検出することなく、二重操作有りを検出してもよい。例えば、車載器10は、フォークリフト90が走行中であることを検出した場合において、画像201における爪91の領域を検出し、爪91の領域の大きさが変化した場合に、爪91の昇降有り、すなわち、二重操作有りを検出できる。
【0063】
<操作信号によるトリガ検出>
図7を参照して、車載器10が操作信号によるトリガ(二重操作)検出を行う動作を説明する。車載器10は、速度I/F12A、エンジン回転I/F12B、外部入力I/F13、及びセンサ入力I/F14から入力される操作信号を取得する(S41)。車載器10は、フォークリフト90が走行中であることを示す操作信号を検出した場合(S42でYes)、S43の処理に進む。
【0064】
車載器10は、爪91の昇降を示す操作信号を検出しない場合(S43でNo)、二重操作なしを検出する(S44)。車載器10は、爪91の昇降を示す操作信号を検出した場合(S43でYes)、二重操作ありを検出する(S45)。このように、車載器10は、画像解析を行うことなく、二重操作を検出できる。
【0065】
上述のように、二重操作の有無は、図5に示した画像解析、及び、図7に示した操作信号による解析のいずれによっても検出可能である。尚、フォークリフト90が走行中であるか否かの検知には、上述した画像解析及び操作信号による解析に代えて、GPS受信部9が受信した信号(GPS信号)による解析を利用できる。また、画像解析、操作信号による解析、及びGPS信号による解析の少なくともいずれか二つを用いて、二重操作の有無を検出してもよい。
【0066】
図5及び図7において、二重操作あり、荷物の有無、荷物の落下あり、荷物の揺れありが検出された場合(S25、S26、S29、S31、S32、S45)、図4に示すように、トリガが発生され、トリガ情報が記録される(S3、S4)。トリガ情報はサーバ80に送信される。
【0067】
<サーバによる解析>
トリガ情報を受信したサーバ80は、トリガ情報をデータベース85に蓄積する。サーバ80の制御部81は、データベース85を参照して、所定期間内に発生したトリガのトリガ情報に基づいて、フォークリフト90の運行に関する解析を行う。サーバ80による解析は、データベース85に蓄積された、一台のフォークリフト90の一日分の運行又は複数日分の運行、及び/又は、複数台のフォークリフト90の一日分の運行又は複数日分の運行に関する情報に基づいて行われる。サーバ80は、事務所PC30の要求に応じた解析結果を、ネットワーク70を介して事務所PC30にて閲覧可能とする。解析結果として、フォークリフト90の運行に関する指導書、分析レポート、ランキング、ヒートマップ、及びヒヤリハットマップ等が挙げられる。
【0068】
図8は、事務所PC30がサーバ80に、指導書の発行を要求するための、入力画面例(画面202)を示す。画面202には、車両を指定する領域202a、乗務員(ドライバー)を指定する領域202b、日時範囲を指定する領域202c、202d、及び、要求を送信するための操作ボタン202eが含まれる。管理者は、車両又は乗務員、及び日時範囲を指定して、操作ボタン202eを操作することで、指導書の発行をサーバ80に要求する。尚、指導書以外の他の解析を希望する管理者は、事務所PC30において、図8の例と同様に必要な情報を入力して、サーバ80に送信することで、分析レポート等の他の解析を要求できる。
【0069】
サーバ80は、要求に従って、データベース85に蓄積されたトリガ情報等の各種情報を参照して、安全運転、効率稼働に対する指導書を作成する。サーバ80は、車載器10が行った画像解析に関する情報、ビーコンによる乗車時の乗務員認証情報、ビーコンによる人接近検知情報(接近警報情報)、Gセンサ28やジャイロセンサ52からの入力情報、後述するバッテリ管理情報、及び操作信号による解析情報に基づいて、指導書を作成することができる。サーバ80は、作成した指導書を、ネットワーク70を介して事務所PC30にて閲覧可能とする。また、サーバ80は、作成した指導書を、管理者等に宛てた電子メール等の形式で事務所PC30に送信してもよい。
【0070】
図9は、乗務員の一日の運行状況に関する分析レポートを示す画面例(画面203)である。サーバ80は、車載器10が行った画像解析に関する情報、ビーコンによる乗車時の乗務員認証情報、ビーコンによる人接近検知情報、Gセンサ28やジャイロセンサ52からの入力情報、後述するバッテリ管理情報、及び操作信号による解析情報に基づいて、分析レポートを作成する。画面203には、乗務員の氏名や運転したフォークリフト90の車両番号、運転時間等が表示され、運転状況を示す領域203a、危険挙動の内容(トリガ種別)を示す領域203bが含まれる。画面203には、運転状況として、荷物有りが検出された時間203a1と、荷物無しが検出された時間203a2とが区別して表示され、算出された荷役率が表示される。また、画面203には、危険挙動の発生頻度等に基づいて算出された安全点数が表示される。さらに、画面203には、「ブレーキをゆるやかにするとよいでしょう。」といった、安全運転や効率稼働に関するアドバイスが表示される。サーバ80は、作成した分析レポートを、ネットワーク70を介して事務所PC30にて閲覧可能とする。尚、サーバ80は、車両ごとの分析レポートを作成することもできる。管理者は、分析レポートを利用して、乗務員に安全運転や効率稼働のための具体的なアドバイスを与えることができる。
【0071】
図10は、フォークリフト90の運転に関する評価(運転評価)を示す画面例である。図10(a)は、一か月間における、対象乗務員の運転評価得点と、乗務員全体の平均点との遷移を示す画面例(画面204)である。図10(b)は、一か月間(図示の例では1日~5日)における、各乗務員の運転評価得点と、乗務員全体におけるランキングを示す画面例(画面205)である。サーバ80は、車載器10が行った画像解析に関する情報、ビーコンによる乗車時の乗務員認証情報、ビーコンによる人接近検知情報、Gセンサ28やジャイロセンサ52からの入力情報、及び操作信号による解析情報に基づいて、運転評価を作成する。サーバ80は、作成した運転評価を、ネットワーク70を介して事務所PC30にて閲覧可能とする。管理者が、運転評価を利用して乗務員を指導することにより、乗務員の安全運転意識を向上に役立つ。
【0072】
図11は、ヒヤリハットマップを示す画面例(画面206)であり、管理者が指定した期間(年間/月間等)において発生したヒヤリハット挙動の発生地点を示す。車載器10は、ヒヤリハット挙動(危険挙動)として、急加速、急減速、急旋回に加えて、二重操作、人接近、荷物落下、及び荷物の揺れの各イベントを検出しこれらのイベントに関するデータは、トリガ情報としてサーバ80のデータベース85に蓄積されている。サーバ80は、車載器10が行った画像解析に関する情報、ビーコンによる人接近検知情報、Gセンサ28やジャイロセンサ52からの入力情報、及び操作信号による解析情報に基づいて、ヒヤリハットマップを作成する。画面206は、フォークリフト90が運行する構内の地図において、固定ビーコン301の配置を示し、マークM1、M2が含まれる。マークM1、M2は、ヒヤリハット挙動の発生した箇所に、頻度の高さに応じた態様(例えば、色、濃淡、形状等)で表示される。サーバ80は、作成したヒヤリハットマップを、ネットワーク70を介して事務所PC30にて閲覧可能とする。ヒヤリハットマップは、ヒヤリハット挙動の発生箇所及び頻度を可視化できる。このため、管理者は、ヒヤリハットマップを危険個所の把握による事故防止対策に利用できる。
【0073】
図12は、ヒートマップを示す画面例(画面207)であり、管理者が指定した期間(年間/月間等)における車両(フォークリフト90)の混雑度を示す。サーバ80は、複数台のフォークリフト90に搭載された各車載器10が収集した車両位置情報に基づいて、ヒートマップを作成する。画面207は、フォークリフト90が運行する構内の地図において、固定ビーコン301の配置を示し、複数の円マークC1~C5が含まれる。円マークC1~C5は、車両の混雑度(とても高い、高い、普通、快適、ほとんど無人、等)に応じて異なる態様(例えば、色、濃淡等)で表示される。円マークC1~C5の大きさは、車両が混雑する範囲を大まかに示す。サーバ80は、作成したヒートマップを、ネットワーク70を介して事務所PC30にて閲覧可能とする。ヒートマップは、車両(フォークリフト90)の稼働が多い/少ない場所を視覚的に示す。このため、管理者は、ヒートマップを構内のレイアウト改善やフォークリフトの導線管理に役立てることができる。
【0074】
<バッテリ管理>
図13及び図14を参照して、バッテリ管理について説明する。車載器10は、フォークリフト90の稼働状況(稼働時間)及びバッテリ電圧計53の出力(電圧状況)を監視し、これらの情報(バッテリ情報)をサーバ80に送信する。サーバ80は、受信したバッテリ情報をデータベース85に蓄積する。サーバ80は、一台又は複数台のフォークリフト90のバッテリ情報(電圧状況)を事務所PC30に送信し、バッテリ電圧低下を知らせることができる。図13は、フォークリフト90のバッテリ電圧値を示す画面例(画面208)であり、複数台のフォークリフト90のバッテリ電圧値をそれぞれ示し、電圧値が規定値を下回る車両について強調表示208aがされている。サーバ80は、稼働時間とバッテリ電圧とに基づいて、例えば電費が所定値を下回るか否かを判断し、下回ると判定した場合に、強調表示208aをさせる。これにより、管理者に適切なバッテリ管理を促すことが可能となる。よって、適切なバッテリ管理によるバッテリ寿命の延長及びバッテリ交換回数の削減に役立つ。
【0075】
また、サーバ80は、データベース85に蓄積された複数台のフォークリフト90のバッテリ情報に基づいて、バッテリの交換時期に関する予測情報を生成し、事務所PC30にて閲覧可能とする。図14は、複数台のフォークリフト90のバッテリの交換検討結果を示す画面例(画面209)である。画面209は、車両番号を示す領域209a、稼働時間(稼働状況)を示す領域209b、電圧低下(稼働によって低下した電圧値)を示す領域209cを含む。また、画面209は、電費(電力量消費率、1kWh当たりの走行距離)を示す領域209d、及び交換予測(予測情報、バッテリ交換が必要となると予測される時期までの期間)を示す領域209eを含む。画面209において、電費が規定値を下回る車両について強調表示209fがされている。
【0076】
サーバ80は、電圧状況と稼働状況とに基づいて予測したバッテリ交換時期の情報を出力する。このため、管理者は、例えば、充電のタイミングや頻度を改善させるなどのバッテリ管理を効率的に行うことが可能となる。また、サーバ80を運用するサービス提供者は、データベース85に蓄積されたバッテリ情報を、より効率的にバッテリを使用するための新たな管理手法の提案に利用することができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の車載器10、サーバ80、及び荷役車両管理システム1によれば、フォークリフト90等の荷役車両に特有の事象をトリガとする記録を行うことができる。例えば、フォークリフト90を走行させながら爪91を昇降させる二重操作、荷物の有無、荷物の落下、又は、荷物の揺れが発生したことを検出した場合に、トリガを発生させ、フォークリフト90近傍の状況を示す画像等を記録できる。よって、管理者は、フォークリフト90の危険挙動や稼働状況を、容易に把握できる。したがって、安全運転支援及び効率の良い稼働支援が可能となる。また、フォークリフト90の稼働時間とバッテリ電圧とに基づくバッテリ管理が可能となるため、適切なバッテリ管理によるバッテリ寿命の延長及びバッテリ交換回数の削減に役立つ。
【0078】
また、本実施形態によれば、フォークリフトを運用する複数の顧客の車載器10から収集した情報を蓄積して、解析対象とすることで、サーバ80を運用するサービス提供者は、安全運転、効率稼働に対する一層専門的なアドバイスや提案を行うことが可能となる。
【0079】
<固定ビーコンを利用した荷役車両の挙動解析>
次に、図15図27を参照して、固定ビーコンを利用したフォークリフト90の挙動解析について説明する。以下、荷役車両管理システム1における荷役車両管理方法の説明が含まれる。尚、この荷役車両管理方法は、車載器10、サーバ80、及び事務所PC30等に予め組み込まれたプログラムにより実行される。
【0080】
図15は、倉庫内における固定ビーコンの設置例を示す図である。図15に示す倉庫には、トラックが駐車し、荷卸しや荷積みを行う荷卸・荷積み場101が複数設けられ、荷卸し・荷積み場101に隣接して仮置き場102が設けられる。仮置き場102は、荷卸・荷積み場101に駐車中のトラックから降ろされた荷物を、一時的に載置するための場所である。倉庫内には、仮置き場102に隣接する保管場所103が設けられる。保管場所103は、複数のエリアRB、RC、RD、RE、RF、RGを含み、仮置き場102に置かれた荷物が、荷物の配送先等に応じて定められたいずれかのエリアRB、RC、RD、RE、RF、RGに載置される。各エリアRA、RB、RC、RD、RE、RF、RGには、各エリアRをそれぞれカバーするビーコンBA、BB、BC、BD、BE、BF、BGがそれぞれ固定設置される。各エリアRには、所定の棚が設けられてもよいし、床面に荷物が載置されてもよい。
【0081】
倉庫内を走行するフォークリフト90が、エリアRAに進入すると、フォークリフト90に搭載された車載器10はビーコンBAから発せられる電波を受信し、この電波を受信した時刻を時刻情報として取得する。また車載器10は、受信した電波からビーコンBAのビーコンIDを抽出し、時刻情報及びビーコンIDを、車載器生成ファイルに記録する。車載器10は、フォークリフト90がエリアRA内に滞在している間、ビーコンBAからビーコンIDを含む電波を受信し、電波を受信した時刻を示す時刻情報とともに車載器生成ファイルに記録する。車載器10は、ビーコンBAから電波を受信できなかった、すなわち電波の受信強度が所定値未満だった場合、この時刻を示す情報を、フォークリフト90がエリアRA内から退出した退出時刻として車載器生成ファイルに記録する。同様に、エリアRAから退出したフォークリフト90がエリアRBに進入した時刻等が車載器生成ファイルに記録される。
【0082】
このように、車載器生成ファイルには、ビーコンID取得結果が時系列データとして記録され、フォークリフト90の作業終了後、例えば、一日の業務終了後に、車載器10からサーバ80に送信される。サーバ80は、複数の車載器10から受信した車載器生成ファイルをデータベース85に蓄積し、フォークリフト90の挙動解析に用いる。尚、車載器10は、サーバ80に、リアルタイムで車載器生成ファイルを送信してもよい。
【0083】
次に、図16を参照して、車載器10が取得、生成した車載器生成ファイルを用いて、サーバ80が解析(分析)・評価を行い、評価結果に基づく改善提案をサービス提供者が行い、改善した状態で再び業務を行う一連の流れ(PDCAサイクル)について説明する。図16は、荷役車両管理システム1におけるPDCAサイクルの一例を説明するための図である。
【0084】
まず、サーバ80は、車載器10及びビーコンBにより、倉庫内におけるフォークリフト90の稼働データを取得する(図16に示す「C」の処理)。稼働データは、特定エリアRへの入退回数及び入退時刻、特定エリアにおける滞在時間、エリア間における右左折回数又は前後の切り替えし回数、ドライバーIDに基づく乗務員情報(作業特性)、ドライバーの安全運転状況を示すトリガリスト、荷物の有無状態を含む。右左折回数は、左右へのハンドルの切り替えし回数を意味する。また、稼働データはフォークリフト90周辺の映像データを含む。また、サーバ80は、外部要因として、天気、曜日、季節、時間帯、積卸する荷姿、当日の作業計画(作業の過密状況)、突発作業の有無及び内容、を示す各データを把握する。
【0085】
次に、サーバ80は、車載器10とビーコンBとの連携により取得されたデータに基づいて、フォークリフト90の作業効率と安全運転を分析(解析)する(図16に示す「A」の処理)。サーバ80は、取得したデータを分析し、解析結果をデータベース85に蓄積し、かつ、事務所PC30等に出力する。サーバ80は、複数の車載器10が取得したデータに基づいて、例えばドライバー別の作業時間及び移動時間や、特定エリアの入退回数を示す解析結果を出力する。
【0086】
サーバ80は、ビーコンIDから倉庫内の位置情報を算出する。サーバ80は、所定エリア内にフォークリフト90が進入した進入時刻と退出した退出時刻から、滞在時間、作業時間、又は移動時間を算出する。サーバ80は、各エリア内にフォークリフト90が進入した進入時刻と退出した退出時刻から各エリアの入退回数を算出する。サーバ80は、車載器10が取得した稼働データ又は乗務員認証情報の時刻から、稼働時間を算出し、どのドライバーか、又はどのフォークリフト90かを示す情報に紐づけて把握する。サーバ80は、車載器10のトリガ情報から、右左折又は前後の切り替えし回数を算出し、どのドライバーか、又はどのフォークリフト90かを示す情報に紐づけて把握する。サーバ80は、車載器10のトリガ情報から、ヒヤリハット発生状況、すなわち、ヒヤリハットが発生した位置及び回数を算出し、どのドライバーか、又はどのフォークリフト90かを示す情報に紐づけて把握する。
【0087】
事務所PC30等に表示された解析結果を確認した管理者は、作業効率と安全運転の指標を検討し、標準作業時間を設定する。
【0088】
サーバ80が取得したデータは、倉庫内特定エリアRでの作業時間を確認し、滞在時間と安全運転状況を調査するために活用できる。例えば、管理者は、特定のドライバーについて、例えば、作業が早くても、荒い運転は危険である、と判断できる。また、サーバ80が取得したデータは、各エリアRへの立ち寄り回数を確認し、荷物のピックアップ先の効率性を調査するために活用できる。例えば、管理者は、ピックアップ先に遠いところが多く、不効率になっていないかを判断できる。さらに、サーバ80が取得したデータは、運転状況より倉庫内のヒヤリハットエリアを特定し、倉庫内に潜む危険を調査するために活用できる。例えば、管理者は、ヒヤリハットが多発している場合には、倉庫内に危険個所が存在すると判断し、レイアウトの変更を検討できる。
【0089】
続いて、サーバ80による分析結果に基づいて、管理者又はサービス提供者が改善提案を行う(図16に示す「P」の処理)。管理者又はサービス提供者は、標準作業時間をもとに、仮置き場102での作業手順や荷物の保管場所変更を設定し、作業の平準化提案を行う。
【0090】
その後、改善提案に従って改善した状態で、再び業務を行う(図16に示す「D」の処理)。例えば、荷物の保管場所103をエリアRGからエリアRCに変更した新たなレイアウトで、定められた標準作業に従って、フォークリフト90による業務を実施する。このとき、サーバ80は、業務中の各種データを取得し(図16に示す「C」の処理)、検証して(図16に示す「A」の処理)、一連の処理であるPDCAサイクルを繰り返す。
【0091】
PDCAサイクルの二回目以降は、作業効率と安全運転の指標の目標値を更新して設定する。サーバ80は、したがって、荷役車両管理システム1における作業効率及び安全性を一層向上できる。
【0092】
図17は、サーバ80のデータベース85に蓄積されたデータの活用例を示す図である。サーバ80は、データベース85に蓄積されたデータを使い、標準パッケージ、カスタムパッケージ、外部コンサルパッケージ、及びリアルタイムパッケージの各パッケージに合わせたデータ集計・加工又は協業先のコンサル会社へのデータ提供を行う。
標準パッケージは、予めサービス提供者にて設定されたデータセットを含み、例えば、車両別、ドライバー別、エリア(ビーコン)別、・・・に集計・加工したデータ、及びこれらのデータを可視化したデータを含む。標準パッケージに含まれる可視化されたデータは、例えば、ビーコンB別の訪問回数(回)を示すグラフ、エリアRDからRAへのドライバー別の移動時間(分)、仮置き場102におけるドライバー別の作業時間(分)を含む。
カスタムパッケージは、顧客の要望に応じてカスタマイズされた各種データを含み、それらを可視化したデータを含む。
【0093】
図18から図21は、サーバ80が取得したデータを解析した結果を示すグラフである。
【0094】
図18は、各ビーコンBA、ビーコンBB、ビーコンBC、ビーコンBDごとの、ヒヤリハット情報を示す。ヒヤリハット情報は、フォークリフト90が、急旋回した回数、急加速した回数、急減速した回数を含む。車載器10から得られるヒヤリハット情報とビーコンBにより得られる情報とを組み合わせることで、ヒヤリハット頻出エリアの見える化と頻出原因の調査が行えるようになる。よって、安全性の向上が図れる。
【0095】
図19は、保管場所103におけるビーコンBDが設置されたエリアRBから、仮置き場102、すなわちビーコンBAが設置されたエリアRA、へのドライバー別の移動時間(分)を示す。図19は、各ドライバーについての1回目から5回目の各移動時間及び平均移動時間、並びに全体平均を示す。管理者は、ビーコンBDが設置されたエリアRBから仮置き場102までの移動時間と移動回数を把握することで、倉庫内における荷物保管エリアのレイアウト変更や、例えば全体平均を目標値とするドライバーの作業平準化を行うことができる。よって、業務の効率化が図れる。
【0096】
図20は、仮置き場102におけるドライバー別の作業時間(分)を示す。ビーコンBAが設置されたエリアRAである仮置き場102における車載器10の滞在時間を、仮置き場102における作業時間とみなす。管理者は、仮置き場での作業時間(荷積み、荷卸しなど)を把握することで、作業時間の見える化ができ、ドライバーに対する平準化への指導を行うことができる。よって、業務の効率化が図れる。
【0097】
図21は、ドライバー別の特定エリア間の移動時間を示す。図21に示すグラフは、左から順に、エリアAからエリアBへの経路、エリアAからエリアCへの経路、エリアAからエリアDへの経路、エリアAからエリアEへの経路、及び、エリアAからエリアFへの経路における各乗務員の移動時間をそれぞれ示す。このグラフによれば、経路ごとの移動時間のばらつき、最小値・最大値、平均値等を把握できるので、ドライバーの作業平準化に役立てることができる。
【0098】
図22は、倉庫内でのヒヤリハット発生状況を示す図である。サーバ80は、車載器10から取得したデータから、各ビーコンBが設置されている倉庫内のエリアを算出し、倉庫内のマップに、ヒヤリハットが発生した場所にマークM11、M12、M13を重畳して表示したマップを出力する。マークM11、M12、M13は、円の大きさでヒヤリハットの発生回数の多寡を表したり、円の色でヒヤリハットの種類(急加速、急減速、急旋回、人接近等)を表す。またマークM13は円の中にバツ印が付され、グラフGに示すように急加速が多発しており注意が必要なエリアであることが示されている。図22の図によれば、ヒヤリハットの発生状況を直感的に把握しやすい。
【0099】
図18から図22を参照して説明したように、サーバ80が、ヒヤリハット発生状況、エリア間におけるフォークリフト90の移動時間、特定エリア(仮置き場102)におけるフォークリフト90の滞在時間を見える化する。このため、サービス提供者は、顧客の現在の運用状況を把握できる。また、顧客においては、見える化されたデータに基づいた教育をドライバーに対して行うことで、安全性の向上や業務の更なる効率化を促すことができる。さらに、サーバ80は、車載器生成ファイルに含まれる、特定エリアに設置されたビーコンに関する進入時刻及び退出時刻を集計することにより、特定エリアへのフォークリフト90の訪問回数(入退回数)を求めることができる。尚、例えば各エリアが隣接して設けられた場合には、サーバ80は、エリアへの進入時刻のみを集計して、特定エリアへのフォークリフトの入退回数を求めてもよい。具体例として、エリアAへの進入後にエリアBへの進入が検知された、すなわち、エリアBに設置されたビーコンからの電波を車載器10が受信した場合には、サーバ80は、車載器10がエリアAを退出しかつエリアBへ進入したと判断して、入退回数を集計する。
【0100】
図23及び図24は、サーバ80による作業効率と安全性の評価結果を示す図である。
【0101】
図23は、ドライバー(作業者)の運転評価として、前述したPDCAサイクルを複数回行った場合における1週目~4週目についての解析結果及び評価結果を示す。
図23に示す解析結果AC1、AC2、AC3、AC4(以下、解析結果ACという。)は、PDCAサイクル1週目~4週目において、ドライバー別に、ビーコンBへの入退回数(回)、滞在時間(分)、及びトリガ記録数(回)を見える化したグラフである。各解析結果ACに示される、入退回数、トリガ記録数、滞在時間の各目標値は、管理者によって定められている。解析結果ACによれば、各ドライバーの入退回数、トリガ記録数、滞在時間を、目標値と比較しながら把握できる。
図23に示す評価結果EC1、EC2、EC3、EC4(以下、評価結果ECという。)は、各解析結果と目標値との比較による評価結果である。各評価結果ECにおいて、評価点を、入退回数が目標値よりも低い場合に加点、多い場合に減点し、トリガ記録数が目標値よりも少ない場合は加点、多い場合に減点し、滞在時間が目標値よりも短い場合は加点、長い場合は減点する。各評価結果ECは、入退回数、トリガ記録数、滞在時間について、評価点を加点及び/又は減点した集計結果に基づいて、ドライバーの作業効率及び安全を、A~Cランクで評価する。
【0102】
PDCAサイクル1週目についての評価結果EC1は、評価点が-3であり、効率が悪く安全でもないとして、ランクCとされる。PDCAサイクル2週目についての評価結果EC2は、評価点が-1であり、効率は悪いが安全であるとして、ランクBとされる。PDCAサイクル3週目についての評価結果EC3は、評価点が0であり、効率は良いが安全ではないとして、ランクBとされる。PDCAサイクル4週目についての評価結果EC4は、評価点が+3であり、効率が良く安全であるとして、ランクAとされる。
【0103】
図23に示すように、ドライバーの作業効率と安全を、取得データからA~Cランクで評価することにより、効率面と安全面の双方について改善を図ることができる。
【0104】
図24はレイアウトの効率と安全の評価として、前述したPDCAサイクルを複数回行った場合における1週目~4週目についての解析結果及び評価結果を示す。図24は、倉庫内においてビーコンAが設置されたエリアAを仮置き場とした場合の例を示す。
図24に示す解析結果ACa1、ACa2、ACa3、ACa4(以下、解析結果ACaという。)は、PDCAサイクル1週目~4週目において、複数の経路のそれぞれに関する、移動時間(分)、右左折回数(回)、及びトリガ記録数(回)を見える化したグラフである。複数の経路は、ビーコンAからビーコンBへの経路、ビーコンAからビーコンFへの経路、及び、ビーコンAからビーコンGへの経路である。各解析結果ACaに示される、移動時間、右左折回数、トリガ記録数の各目標値は、管理者によって定められている。解析結果ACaによれば、各経路における移動時間、右左折回数、トリガ記録数を、目標値と比較しながら把握できる。
図24に示す評価結果ECa1、ECa2、ECa3、ECa4(以下、評価結果ECaという。)は、各解析結果と目標値との比較による評価結果である。各評価結果ECaにおいて、評価点を、移動時間が目標値よりも長い場合に加点、短い場合に減点し、右左折回数が目標値よりも少ない場合は加点、多い場合に減点し、トリガ記録数が目標値よりも少ない場合は加点、多い場合は減点する。各評価結果ECaは、移動時間、右左折回数、トリガ記録数について、評価点を加点及び/又は減点した集計結果に基づいて、レイアウトの作業効率及び安全を、A~Cランクで評価する。
【0105】
PDCAサイクル1週目についての評価結果ECa1は、評価点が-3であり、効率が悪く安全でもないとして、ランクCとされる。PDCAサイクル2週目についての評価結果EC2aは、評価点が0であり、効率は悪いが安全であるとして、ランクBとされる。PDCAサイクル3週目についての評価結果EC3aは、評価点が0であり、効率は良いが安全ではないとして、ランクBとされる。PDCAサイクル4週目についての評価結果EC4aは、評価点が+3であり、効率が良く安全であるとして、ランクAとされる。
図24に示すように、レイアウトの作業効率と安全を、取得データからA~Cランクで評価することにより、効率面と安全面の双方について改善を図ることができる。
【0106】
尚、PDCAサイクルの2週目以降については、目標値を更新してもよい。例えば、PDCAサイクル1週目の解析結果及び評価結果に基づいて、管理者が新たな目標値を設定し、2週目の目標値を更新することにより、効率面と安全面について更なる改善を図ることができる。また、評価方法については、評価点やランク数を適宜設定できる。
【0107】
図25から図27は、サーバ80による可視化の他の例を示す。
【0108】
図25は、フォークリフト90別の稼働状況を示すグラフにおいて、荷物の有無を区別して表示することで見える化したグラフである。図25のグラフは、フォークリフト90の稼働管理に役立てることができる。
【0109】
図26は、倉庫内路面の安全について見える化したグラフである。図26は、トリガ情報から、X方向、Y方向、及びZ方向の各加速度g値、並びに、ヨー軸周りの回転角速度が、閾値GX1、GX2、GY1、GY2、GZ1、GZ2、YA1、YA2を越えたか又は下回ったか否かを可視化したものである。閾値を越えたか又は下回った箇所、すなわち加速度又は回転角速度が大きい箇所は、路面が痛んでいる箇所である。サーバ80は、図26のグラフで加速度又は回転角速度が大きい箇所について、ドライバーID、ビーコン取得データ(時刻情報及びビーコンID)、及びビーコンIDと倉庫内におけるビーコン設置場所との対応に基づいて、倉庫内での位置を特定する。このように、図26のグラフを利用して、倉庫内のメンテナンス計画に役立てることができる。
【0110】
図27は、バッテリの電圧値を見える化したグラフである。図27のグラフによれば、各フォークリフト90のバッテリBT1、BT2について、電圧が上下の各閾値V1、V2を超えて最大値又は最小値に近づいたか否かを、容易に把握できる。よって、業務中の電圧値が閾値V1又はV2を超えたドライバーに対して、電圧が閾値V2からV1の間となるように指導を行うことにより、バッテリの高寿命化を図ることができる。
【0111】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。上記実施形態では、サーバ80がフォークリフト90の挙動を解析し、解析結果について評価する例を示したが、サーバ80が行う処理の一部又は全部を事務所PC30等が実行してもよい。
【0112】
また、例えば、車載器10が、フォークリフト乗車中のドライバーを撮影した画像を解析することによってドライバーの体調変化を検知し、異常を通知することにより、冷凍・冷蔵、高温の環境下等での、ドライバーの健康管理に役立つ。
【0113】
さらに、サービス提供者は、解析、取得したデータを、例えば構内レイアウト改善コンサルタントやヘルスケアコンサルタント等の外部の専門業者に提供してもよい。サービス提供者と外部の専門業者とが協業することにより、付加価値の高いサービスを顧客に提供することが可能となる。
【0114】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る荷役車両管理システム、サーバ、荷役車両管理方法、及びプログラムの特徴をそれぞれ以下[1]~[10]に簡潔に纏めて列記する。
[1]荷役車両(フォークリフト90)に搭載された車載器(10)と、前記車載器が収集したデータを解析するサーバ(80)と、を備える荷役車両管理システム(1)であって、
前記車載器(10)は、
施設内の所定エリア(R)に設置された発信機(ビーコンB)から発せられる、前記発信機の識別情報(ビーコンID)を含む電波を受信する受信部(ビーコン受信部15)と、
受信した前記電波の強度に基づいて、前記所定エリア内に前記荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報を取得する時刻取得部(RTC部21、CPU11)と、
受信した前記電波から前記識別情報を抽出する抽出部(CPU11)と、
取得した前記時刻情報、及び、抽出した前記識別情報を記録する記録部(17)と、を有し、
前記サーバ(80)は、
前記記録部が記録した前記時刻情報及び前記識別情報に基づいて、前記荷役車両の挙動を解析する解析部(CPU81)と、
解析された結果を出力する出力部(通信部82)と、を有する、
荷役車両管理システム。
[2]前記解析部は、前記進入時刻から、前記荷役車両が前記所定エリアに進入した進入回数を求め、
前記出力部は、前記発信機の識別情報(ビーコンID)と、前記進入回数とを対応付けて出力する、
上記[1]に記載の荷役車両管理システム。
[3]前記車載器の前記時刻取得部は、受信した前記電波の強度に基づいて、前記荷役車両が前記所定エリアから退出した退出時刻を示す時刻情報を、さらに取得し、
前記サーバの前記解析部は、前記進入時刻及び前記退出時刻から、前記荷役車両が前記所定エリア内に滞在していた滞在時間を算出し、
前記サーバの前記出力部は、前記所定エリアにおける前記滞在時間を、前記解析された結果として出力する、
上記[1]又は[2]に記載の荷役車両管理システム。
[4]前記サーバは、目標値と前記解析部による解析結果との比較により、前記荷役車両の挙動を評価する評価部をさらに有する、
上記[1]~[3]のいずれか一に記載の荷役車両管理システム。
[5]前記所定エリアは、第一エリア及び第二エリアを含み、
前記車載器は、前記荷役車両に危険挙動が発生した場合にトリガを発生させ、前記荷役車両近傍の状況を表す映像及び前記荷役車両の車両データを含む情報をトリガ情報として記録し、前記トリガ情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記トリガ情報を受信し、
前記解析部は、前記トリガ情報を加味して、前記荷役車両が前記第一エリアから前記第二エリアへ移動するまでの移動時間を、前記荷役車両の挙動として解析し、
前記評価部は、前記解析結果に基づいて、前記施設内におけるレイアウトの効率と安全性とを評価する、
上記[4]に記載の荷役車両管理システム。
[6]前記車載器は、前記荷役車両に危険挙動が発生した場合にトリガを発生させ、前記荷役車両近傍の状況を表す映像及び前記荷役車両の車両データを含む情報をトリガ情報として記録し、前記トリガ情報を前記サーバに送信し、
前記受信部は、前記荷役車両のドライバーに所持されたビーコン(ドライバービーコン)から発せられる、前記ドライバーの識別情報(ドライバービーコンID)を含む電波を受信し、
前記サーバは、
前記トリガ情報を受信し、
前記解析部は、前記トリガ情報を加味して、前記ドライバーごとに求めた、前記荷役車両が前記所定エリア内に滞在していた滞在時間を、前記荷役車両の挙動として解析し、
前記評価部は、前記解析結果に基づいて、前記ドライバーの作業効率と安全性とを評価する、
上記[4]に記載の荷役車両管理システム。
[7]前記サーバは、前記解析部による解析及び前記評価部による評価を含む一連の処理を、二回以上行い、二回目以降は前記目標値を更新する、
上記[4]~[6]のいずれか一に記載の荷役車両管理システム。
[8]荷役車両(フォークリフト90)に搭載された車載器(10)が収集したデータを解析するサーバ(80)であって、
前記車載器は、
施設内の所定エリア(R)に前記荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報、及び、前記所定エリア(R)に設置された発信機(ビーコンB)の識別情報を記録し、
前記サーバは、
前記車載器から取得した前記時刻情報及び前記識別情報に基づいて、前記荷役車両の挙動を解析する解析部(CPU81)と、
解析された結果を、通信端末に送信する通信部(82)と、を有する、
サーバ(80)。
[9]荷役車両(フォークリフト90)に搭載された車載器(10)と、前記車載器が収集したデータを解析するサーバ(80)と、を備える荷役車両管理システム(1)における荷役車両管理方法であって、
施設内の所定エリア(R)に設置された発信機(ビーコンB)から発せられる、前記発信機の識別情報(ビーコンID)を含む電波を受信し(ビーコン受信部15)、
受信した前記電波の強度に基づいて、前記所定エリア内に前記荷役車両が進入した進入時刻を示す時刻情報を取得し(RTC部21、CPU11)、
受信した前記電波から前記識別情報を抽出し(CPU11)、
取得した前記時刻情報、及び、抽出した前記識別情報に基づいて、前記荷役車両の挙動を解析し、
解析された結果を出力する、
荷役車両管理方法。
[10]コンピュータに、上記[9]に記載された荷役車両管理方法を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0115】
1 解析システム
10 車載器
11、31、81 制御部(CPU)
15 ビーコン受信部
17 記録部
23A、23B カメラ
24、32、82 通信部
25 電源部
26A 不揮発メモリ
26B 揮発メモリ
28 Gセンサ
30 事務所PC
51 車速センサ
52 ジャイロセンサ
53 バッテリ電圧計
65 メモリカード
71 基地局
80 サーバ
85 データベース
90 フォークリフト
91 爪
92 バックレスト
93 マスト
94 ヘッドガード
100 荷物
101 荷卸・荷積み場
102 仮置き場
103 保管場所
110 パレット
301 固定ビーコン
B、BA、BB、BC、BD、BE、BE、BF、BG ビーコン
R、RA、RB、RC、RD、RE、RE、RF、RG エリア
図1
図2
図3
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